JP4960289B2 - 複層鋼 - Google Patents

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Description

本発明は、高強度を有すると同時に高延性を備える強度−延性バランスにすぐれた複層鋼に関するものである。
近年、自動車用材料には、省エネ化、高性能化、環境対策等の観点から軽量化が求められており、その主たる方策として、比重の小さい非鉄材料の利用による軽量化あるいは自動車用鋼材の高強度化による薄肉軽量化等の研究開発が行われている。
しかし、鋼材の代わりに比重の小さい非鉄材料、例えば、Al合金やMg合金などの合金、を用いると、鋼材に比して、強度や剛性等の機械的特性が十分でないため、鋼材と同等の機械的特性を得るためには、板厚を大にしなければならず、また、断面形状を複雑にしなければならないため、成形性の低下、異材接合における脆化、腐食などの問題も発生し、期待に応えられるほどに十分な軽量化効果を得ることができなかった。
一方、自動車用鋼材を高強度化することにより薄肉化を図った場合には、鋼を高強度化することに付随して派生する諸特性(延性、靭性、剛性、加工性、脆化特性、耐腐食性、耐環境性等)の低下という問題点を解消することが必要とされるが、特に、高強度化と高延性化は一般的に相反する特性であるため、高強度を有すると同時に高延性を備える所謂強度−延性バランスにすぐれた鋼材が強く求められてきた。
そのための一つの方策としては、特性の異なる複数の材料の複層化による材料の強度−延性バランスの改善が試みられている。本発明者らの一部は、鋼と他の材料との複層化材料として、組織、機械的特性の異なる鋼(炭素鋼、合金鋼、ステンレス鋼、高マンガン鋼等)を層状に複数層重ねあわせて圧延し、必要に応じ熱処理することにより、強度および延性をともに向上させた複層鋼を提案している(例えば、特許文献1)。
また、例えば、高炭素鋼と黄銅を、複数層重ねあわせて圧接、圧延して得た複層材料においても、高強度、高延性を示す複層材料が得られること(例えば、非特許文献1)が知られている。
特願2006−205283号 「METALLURGICAL TRANSACTIONS A」Vol.24A,July1993,p.1647−1653
上記特許文献1記載の従来技術(以下、従来技術1という)においては、鋼材の組み合わせ、積層層数、積層プロセスを工夫することにより、高強度・高延性の複層鋼が得られることが示されており、例えば、第1の層としてオーステナイト系ステンレス鋼を、また、第2の層としてマルテンサイト系ステンレス鋼を用い、第1の層と第2の層を合計で11層積層し、温間圧延および熱処理を行うことにより、強度(引張強さTS)が1220MPa、延性(伸びEL)が25%の複層鋼が得られることが示され、さらに、第1の層として高マンガン鋼を、また、第2の層として炭素鋼を用い、第1の層と第2の層を合計で11層積層し、熱間圧延および熱処理を行うことにより、強度(引張強さTS)が1150MPa、延性(延びEL)が34%の複層鋼が得られることが示されている。
しかし、上記従来技術1においては、第1の層及び第2の層がいずれもステンレス鋼同士の組み合わせからなる複層鋼、あるいは、第2の層が高マンガン鋼からなる複層鋼であって、いわば、特殊鋼材同士の組み合わせで高強度・高延性を達成するものである。これらの特殊鋼材は、製造プロセスの厳密な調整・管理が必要とされ、添加成分元素の価格も高価であることから、製造コストが高いという欠点がある。
一方、上記非特許文献1記載の従来技術(以下、従来技術2という)においては、高炭素鋼と黄銅との組み合わせからなる複層材料として、確かに、強度(700MPa程度)および延性(60%)の高い材料が得られているが、自動車用材料として要求される特性を満足するものであるか否かを考えた場合には、延性は十分であったとしても、700MPa程度の引張強さでは、強度特性が極めて不十分であるといわざるを得ず、これを自動車用材料として用いることは非常に難しい。また、従来技術2は、鋼材同士の組み合わせからなる複層鋼ではなく、材料コストも高くなる。
したがって、製造プロセスの簡易化を図ると同時に材料コストの低減を図るためにも、より安価かつ一般的な炭素鋼を用いて、高強度とともに高延性を有し、強度−延性バランスにすぐれた複層鋼の開発が強く望まれている。
本発明の複層鋼は、上記の要請に応えるべく開発されたものであって、
「(1) フェライト組織が最大の体積分率を占める引張強さTSの炭素鋼または低合金鋼からなる第1の層と、マルテンサイト組織が最大の体積分率を占める引張強さTSが1200MPa以上の炭素鋼または低合金鋼からなる第2の層を互いに積層し、さらに、上記第1の層を表層として合計3層以上を積層一体化して構成してなり、第1の層の層厚tと第2の層の層厚tの比(t/t)が1.2を超え、かつ、第2の層の引張強さTSと第1の層の引張強さTSの比(TS/TS)が1.2以上6以下であり、複層鋼全体としての引張強さが1050MPa以上、引張強さと全伸びの積が21000MPa・%以上であることを特徴とする複層鋼。
(2) 第1の層のそれぞれの層厚tが0.04mm以上であり、第2の層のそれぞれの層厚tが0.1mm以下であることを特徴とする前記(1)記載の複層鋼。
(3) 複層鋼の合計層厚が3.0mm以下であることを特徴とする前記(1)、(2)記載の複層鋼
(4) 第1の層が、質量%で、
C:0.0001〜0.20%、
Si:0.01〜2.0%、
Mn:0.01〜2.0%
を含有し、残部鉄及び不可避的不純物からなる炭素鋼であり、
第2の層が、質量%で、
C:0.05〜0.4%、
Si:0.05〜3.0%、
Mn:0.05〜3.0%
を含有し、残部鉄及び不可避的不純物からなる炭素鋼であることを特徴とする前記(1)〜(3)記載の複層鋼。
(5) 第1の層が、質量%で、
Nb:0.001〜0.1%、
Ti:0.001〜0.1%、
V:0.001〜0.5%、
Cr:0.001〜0.01%、
Ni:0.001〜0.01%、
Mo:0.01〜3.0%、
Cu:0.01〜1.0%、
の1種又は2種以上をさらに含有する低合金鋼であることを特徴とする前記(4)記載の複層鋼。
(6) 第2の層が、質量%で、
Nb:0.001〜0.1%、
Ti:0.001〜0.1%、
V:0.001〜0.5%、
Cr:0.001〜2.0%、
Ni:0.001〜2.5%、
Mo:0.01〜1.0%、
Cu:0.01〜1.0%、
の1種又は2種以上をさらに含有する低合金鋼であることを特徴とする前記(4)、(5)記載の複層鋼。」
を特徴とするものである。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の複層鋼は、第1の層と第2の層がそれぞれ炭素鋼(普通鋼あるいは普通炭素鋼ともいう)または低合金鋼(Nb,Ti,V,Cr,Ni,Mo,Cuの1種又は2種以上の合金元素の含有量の合計が5%以下の合金鋼をいう)からなり、第1の層と第2の層が、合計で3層以上積層一体化された構造として構成されている。
そして、第1の層は、フェライト組織が最大の体積分率を占める炭素鋼または低合金鋼(以下、「α鋼」で示す)からなり、一方、第2の層はマルテンサイト組織が最大の体積分率を占める炭素鋼または低合金鋼(以下、「Mar鋼」で示す)からなっている。
さらに、複層鋼全体としての高強度化を図るために、第2の層の構成材料として高い引張強さを有するMar鋼を用いるばかりでなく、複層鋼の第1の層および表層を構成するα鋼としても、少なくとも所定値以上の引張強さを備えなければならない。ここで、α鋼の引張強さをTSで示し、Mar鋼の引張強さをTSで示した場合、TSは1200MPa以上で、かつ、Mar鋼の引張強さTSとα鋼の引張強さTSの比の値(TS/TS)が1.2以上でかつ6以下を満足するようなTSの値でなければならない。
その一方で、本発明の複層鋼は単に強度を向上させるばかりでなく、同時にその延性も高めることが必要であるところ、第1の層および表層を構成するα鋼の層厚をt、また、第2の層を構成するMar鋼の層厚をtとした場合、第1の層(α鋼)の層厚tと第2の層(Mar鋼)の層厚tは、
/t>1.2
の関係を満足していなければならない。
つまり、第1の層(α鋼)の層厚tが第2の層(Mar鋼)の層厚tの1.2倍を超えない限り、仮に、複層鋼の高強度化が図れたとしても、複層鋼全体としての伸びの値(EL値)が著しく低下し、引張強さと全伸びの積は21000MPa・%未満にとどまるため、複層鋼にすぐれた強度−延性バランスを具備せしめることができないからである。
上記のとおり、本発明の複層鋼は、第1の層を層厚tのα鋼で構成し、また、第2の層を層厚tのMar鋼で構成し、t/t>1.2となるように第1の層および第2の層の層厚をそれぞれ定め、さらに、α鋼の引張強さをTS、Mar鋼の引張強さをTSとした場合に、1.2≦TS/TS≦6となるような鋼種の組み合せ等の調整によって、複層鋼全体としての引張強さが1050MPa以上、引張強さと全伸びの積が21000MPa・%以上である高強度、高延性かつ強度−延性バランスにすぐれた複層鋼を得ることができる。
そして、前記複層鋼は、例えば、以下の製造法によって製造することができる。
まず、相対的に強度TSは高いが延性の低いMar鋼からなる層厚tの第2の層を、相対的に延性に優れるが強度TSの低いα鋼からなる層厚tの第1の層で挟み、その上に、上記第2の層を積層し、この上に更に上記第1の層を積層し、このような積層工程を順次繰り返し、合計層数N層(但し、N≧3)であって、かつ、表層が延性に富む上記第1の層(α鋼)からなる積層体を形成する(なお、t/t>1.2、かつ、1.2≦TS/TS≦6の条件を満たすことが必要)。
その後、上記積層体に対して熱間圧延、冷間圧延等の圧延を行うことにより、積層体を一体化し複層鋼を得る。圧延温度、圧下率等の圧延条件については、上記積層体を圧延で一体化できる条件であれば良く、特に限定されるものではないが、各層間の密着強度を強固なものにするという点からは、熱間圧延温度は650〜1150℃、圧下率(圧延前の層の厚さに対する圧延後の層の厚さの減少率)は40〜60%とすることが望ましい。
本発明の複層鋼の層厚については、高強度、高延性を有するとともに軽量化を図るという観点から、第1の層(α鋼)のそれぞれの層厚tが0.04mm以上であり、第2の層(Mar鋼)のそれぞれの層厚tが0.1mm以下であることが望ましく、また、複層鋼の合計層厚は3.0mm以下とすることが望ましい。
本発明の複層鋼の第1の層を構成するα鋼、あるいは、第2の層を構成するMar鋼については、いずれも製造が容易でかつ安価な炭素鋼(普通鋼あるいは普通炭素鋼ともいう)または低合金鋼を使用する。
第1の層を構成するα鋼としては、引張強さは十分でないが延性にすぐれた鋼を用いることが必要であり、具体的には、C:0.0001〜0.10%、Si:0.01〜2.0%、Mn:0.01〜2.0%(いずれも質量%)、残部鉄及び不可避的不純物からなる成分組成を有する炭素鋼であって、その組織の主要相をフェライト組織とすることにより、例えば、引張強さがほぼ400〜1000MPaの特性を有する鋼である。後述するように更に合計量が5%以下のNb,Ti,V,Cr,Ni,Mo,Cuの1種又は2種以上からなる合金元素を含有してもよい。
一方、第2の層を構成するMar鋼としては、延性は低くても高引張強さを有する鋼を用いることが必要であり、具体的には、C:0.12〜0.4%、Si:0.05〜3.0%、Mn:0.05〜3.0%(いずれも質量%)、残部鉄及び不可避的不純物からなる成分組成を有する炭素鋼であって、上記α鋼に比してC含有量の高い炭素鋼、あるいは更に、α鋼に比してSi、Mn成分の含有量を相対的に増加させて、その組織の主要相をマルテンサイト組織とすることにより、引張強さを1200MPa以上に調整した鋼である。後述するように更に合計量が5%以下のNb,Ti,V,Cr,Ni,Mo,Cuの1種又は2種以上からなる合金元素を含有してもよい。
なお、上記α鋼およびMar鋼のいずれにおいても、その延性(伸び)は、成分組成、熱処理条件等によって影響されるが、概ね、α鋼については、伸びは20〜45%、また、Mar鋼については、伸びは3〜10%のものとなる。
そして、本発明においては、引張強さ(TS)は十分でないが延性にすぐれたα鋼と、延性は低くてもすぐれた引張強さ(TS)を有するMar鋼(但し、1.2≦TS/TS≦6)とを、α鋼の層厚tとMar鋼の層厚tが、t/t>1.2となるように積層し、一体化することにより、α鋼とMar鋼がそれぞれ有する特性を相兼ね備えたすぐれた特性、すなわち、すぐれた高強度、高延性と強度−延性バランス、の複層鋼を得ることができる。
さらに、本発明の複層鋼の第1の層を構成するα鋼は、合計量が5%以下の合金成分(Nb:0.001〜0.1%、Ti:0.001〜0.1%、V:0.001〜0.5%、Cr:0.001〜0.01%、Ni:0.001〜0.01%、Mo:0.01〜3.0%、Cu:0.01〜1.0%の1種又は2種以上。いずれも質量%)を更に含有することができる。
これらの合金成分を、それぞれ上記のごとく定められた所定量含有することによって、α鋼それ自体の有する強度、延性、靭性等の機械的特性を調整することができる。ただ、引張強さTSについては、1.2≦TS/TS≦6を満足させることが必要であり、この値が6を超えたような場合には、例え、延性、靭性にすぐれた複層鋼が得られたとしても、強度−延性バランスを欠く好ましくない複層鋼が形成されることとなるので注意が必要であり、一方、良好な延性を確保するためには、TS/TS≧1.2とすることが必要である。
また、本発明の複層鋼の第2の層を構成するMar鋼としては、合計量が5%以下の合金成分(Nb:0.001〜0.1%、Ti:0.001〜0.1%、V:0.001〜0.5%、Cr:0.001〜2.0%、Ni:0.001〜2.5%、Mo:0.01〜1.0%、Cu:0.01〜1.0%の1種又は2種以上。いずれも質量%)を添加含有することができる。
これらの合金成分を、それぞれ上記のごとく定められた所定量含有することによって、Mar鋼の有する強度、延性、靭性等の機械的特性を調整することができるが、多量に添加含有させた場合には、鋼種が合金鋼の範疇となり、製造コストも高くなることから、添加含有する合金成分とその含有量を上記の如く定めた。
本発明の複層鋼は、第1の層を層厚tのα鋼で構成し、また、第2の層を層厚tのMar鋼で構成し、t/t>1.2となるように第1の層および第2の層の層厚をそれぞれ定め、さらに、α鋼の引張強さをTS、Mar鋼の引張強さをTSとした場合に、1.2≦TS/TS≦6となるように、鋼種を組み合わせる等によって強度比を調整することにより、第1の層および第2の層がそれぞれ有するすぐれた特性(即ち、第1層の有するすぐれた延性および第2層の有する高強度)を相兼ね備え、かつ、強度−延性バランスにすぐれた複層鋼を得ることができる。そして、複層鋼全体としては、引張強さが1050MPa以上、引張強さと全伸びの積が21000MPa・%以上を示すことから、例えば高強度、高延性が要求され、軽量化が求められる自動車用材料として好適な材料であるといえる。
本発明は、組織および機械的特性の異なるα鋼とMar鋼とを組み合わせて複層化してなる複層鋼であり、α鋼とMar鋼の強度の比および層厚の比を適正なものとすることにより、強度−延性バランスにすぐれ、しかも複層鋼全体としての高強度化・高延性化を図ることができる。
本発明者らは、まず、α鋼とMar鋼の強度の比TS/TSと、引張強さと全伸びの積TS×Elとの関係について検討を行った。その結果、図1に示すように、TS/TSが6以下になると、TS×Elが21000MPa・%以上になることがわかった。これは、Mar鋼の強度に対してα鋼の強度が低すぎると、強度−延性バランスが低下することを意味する。
次に、本発明者らは、α鋼とMar鋼の層厚の比t/tと、引張強さと全伸びの積TS×Elとの関係について検討を行った。その結果、図2に示すように、t/tが1.2を超えると、TS×Elが21000MPa・%以上になることがわかった。これは、Mar鋼の層厚よりも、α鋼の層厚を大きくすることによって、強度−延性バランスが向上することを意味する。
したがって、Mar鋼をα鋼によって拘束し、変形時のMar鋼のネッキングを回避するためには、各層の強度の差が大き過ぎないこと、軟質のα鋼の層厚を大きくすること、が必要である。
本発明の複層鋼は、強度TSは高いが延性の低いMar鋼からなる層厚tの第2の層を、相対的に延性に優れるが強度TSの低いα鋼からなる層厚tの第1の層で挟み、その上に、上記第2の層を積層し、この上に更に上記第1の層を積層し、このような積層工程を順次繰り返し、合計層数3〜21層で、かつ、表層を延性に富む上記第1の層(α鋼)からなる積層体とし、その後、これを圧延により一体化することにより形成した複層鋼である。
本発明では、積層一体化された複層鋼を製造するために、第1の層と第2の層とからなる積層体を形成した後、例えば、熱間圧延、冷間圧延、温間圧延、熱間圧延及び冷間圧延を併用した圧延、熱間圧延及び温間圧延を併用した圧延等、適宜の圧延方法により積層体を一体化する。特に、熱間圧延を用いた場合には、圧延時に、第1の層と第2の層との層間に拡散が生じ、その結果として、各層間の層間密着強度が向上するようになる。
なお、冷間圧延、温間圧延を行った場合であっても、圧延後に所定の熱処理を施すことにより、前記同様、層間に拡散が生じる結果、各層間の層間密着強度が向上し、複層鋼の強度の向上、延性の向上が図られるが、その際の熱処理温度の下限は600℃以上であることが望ましい。強度を高めるためには、圧延後、第2の層の組織がオーステナイトになる温度域以上、例えば、800℃以上に加熱し、水冷することが好ましい。
以下、具体的な実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
本発明では、第1の層として表1に示す3種のα鋼を用い、また、第2の層として同じく表1に示す4種のMar鋼を用いた。なお、それぞれの鋼の引張強さを同じく表1に示す。
Figure 0004960289
表1に示す第1の層と第2の層を、表3(表2のつづき)に示す組み合わせ、各層層厚、積層層数、合計層厚となるように積層して積層体を形成し、さらに、これらの積層体を、表2に示す条件で圧延及び/または熱処理し一体化することにより、実施例1〜12として示す本発明の複層鋼を製造した。
例えば、実施例1では、表1に示す第1の層として、厚さ1.3mmのα鋼、また、第2の層として、厚さ1.0mmのMar鋼を用い、第1の層を9層、第2の層を8層交互に積層し、表層が第1の層となるようにして、合計積層数17層、合計層厚19.7mmの積層体を形成した。
次いで、上記積層体を、表3に示す各層層厚、積層層数、合計層厚となるように、表2に示す条件で熱間圧延し、さらに、同じく表2に示す条件で熱処理することにより、実施例1の複層鋼を作製した。
そして、作製した実施例1の複層鋼の各層の層厚方向中心位置を光学顕微鏡で観察したところ、第1の層は、フェライト組織がほぼ100体積%を占めるα鋼であり、一方、第2の層はマルテンサイト組織がほぼ100体積%を占めるMar鋼であることを確認した。
得られた実施例1〜12の本発明複層鋼についての、t/tの値、TS/TSの値、さらに、複層鋼全体としての引張強さ(MPa)、伸び(%)および強度−延性バランス指標値(引張強さ(MPa)×伸び(%)の値)を、表3に示す。
表3の結果からも明らかなように、実施例1〜12の本発明複層鋼は、高強度とともに高延性を有し、しかも、強度−延性バランスに優れる複層鋼であることが確認された。
Figure 0004960289
Figure 0004960289
比較のため、表1および4に示す成分組成、金属組織、引張強さの鋼を、表5に示す組み合わせで第1の層および第2の層とし、これを表6(表5のつづき)に示す各層層厚、積層層数、合計層厚となるように積層体を形成し、この積層体を、表5に示す条件で圧延及び/または熱処理し一体化することにより、比較例21〜25として示す比較例の複層鋼を製造した。
得られた比較例21〜25の比較例複層鋼についての、t/tの値、TS/TSの値、さらに、複層鋼全体としての引張強さ(MPa)、伸び(%)および強度−延性バランス指標値(引張強さ(MPa)×伸び(%)の値)を、表6に示す。
Figure 0004960289
Figure 0004960289
Figure 0004960289
実施例1〜12の結果と、比較例21〜25の結果を対比してみると、
比較例21は、実施例1とt/tが異なるだけであるが、t/tが1.2以下になると、低強度で強度−延性バランスが劣っていることがわかる。また比較例22は、実施例1と比較して第1の層の強度が低く、TS/TSが6超であるため、強度に対して延性の低下が大きく、強度−延性バランスが低下している。比較例23は、実施例4と比較して、t/tが低いため、高強度ではあるものの、延性が低下し、強度−延性バランスが低下している。
以上の結果からわかるように、本発明の複層鋼は、すぐれた高強度およびすぐれた延性を相兼ね備え、しかも、強度−延性バランスにすぐれたものであることから、例えば、自動車用材料のように軽量でかつ高強度、良加工性が要求される材料としては好適なものといえる。
第1の層と第2の層の強度比と複層鋼の強度−延性バランスとの相関を示すグラフである。 第1の層と第2の層の層厚比と複層鋼の強度−延性バランスとの相関を示すグラフである。

Claims (6)

  1. フェライト組織が最大の体積分率を占める引張強さTSの炭素鋼または低合金鋼からなる第1の層と、マルテンサイト組織が最大の体積分率を占める引張強さTSが1200MPa以上の炭素鋼または低合金鋼からなる第2の層を互いに積層し、さらに、上記第1の層を表層として合計3層以上を積層一体化してなり、第1の層の層厚tと第2の層の層厚tの比(t/t)が1.2を超え、かつ、第2の層の引張強さTSと第1の層の引張強さTSの比(TS/TS)が1.2以上6以下であり、複層鋼全体としての引張強さが1050MPa以上、引張強さと全伸びの積が21000MPa・%以上であることを特徴とする複層鋼。
  2. 第1の層のそれぞれの層厚tが0.04mm以上であり、第2の層のそれぞれの層厚tが0.1mm以下であることを特徴とする請求項1記載の複層鋼。
  3. 複層鋼の合計層厚が3.0mm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の複層鋼
  4. 第1の層が、質量%で、
    C:0.0001〜0.10%、
    Si:0.01〜2.0%、
    Mn:0.01〜2.0%
    を含有し、残部鉄及び不可避的不純物からなる炭素鋼であり、
    第2の層が、質量%で、
    C:0.12〜0.4%、
    Si:0.05〜3.0%、
    Mn:0.05〜3.0%
    を含有し、残部鉄及び不可避的不純物からなる炭素鋼であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の複層鋼。
  5. 第1の層が、質量%で、
    Nb:0.001〜0.1%、
    Ti:0.001〜0.1%、
    V:0.001〜0.5%、
    Cr:0.001〜0.01%、
    Ni:0.001〜0.01%、
    Mo:0.01〜3.0%、
    Cu:0.01〜1.0%、
    の1種又は2種以上をさらに含有する低合金鋼であることを特徴とする請求項4記載の複層鋼。
  6. 第2の層が、質量%で、
    Nb:0.001〜0.1%、
    Ti:0.001〜0.1%、
    V:0.001〜0.5%、
    Cr:0.001〜2.0%、
    Ni:0.001〜2.5%、
    Mo:0.01〜1.0%、
    Cu:0.01〜1.0%、
    の1種又は2種以上をさらに含有する低合金鋼であることを特徴とする請求項4または5記載の複層鋼。
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