JP6390567B2 - ステンレスクラッド鋼板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、港湾構造物や造船、海水淡水化設備に代表される各種用途で使用される、耐海水腐食性に優れたステンレスクラッド鋼板の製造方法に関するものである。
近年、産業設備と構造物のニ−ズとしては耐久性と長寿命化およびメンテナンスフリーが指向されており、ステンレス鋼はこれらのニ−ズに適合した材料として注目を集めている。一方で、ステンレス鋼の主原料であるNiやMo、Crに代表される合金元素は、価格の高騰や価格の上下動があるため、無垢のステンレス鋼に代わり、ステンレス鋼の優れた耐食性をより経済的に利用でき、価格が安定しかつ安価な鋼材としてステンレスクラッド鋼が、最近、注目されている。
ステンレスクラッド鋼とは、合せ材にステンレス鋼、母材に普通鋼材と、二種類の性質の異なる金属を接合した複合鋼材である。クラッド鋼は、異種金属を金属学的に接合させたもので、めっきとは異なり剥離する心配がなく単一金属および合金では達し得ない新たな特性を持たせることができる。このように、ステンレスクラッド鋼は、ステンレス鋼材の使用量が少なくてすみ、かつ、全厚が合わせ材の金属組成である場合と同等の耐食性を確保できるため、経済性と機能性が両立できる利点を有する。
以上から、ステンレスクラッド鋼は非常に有益な機能性鋼材であると考えられており、近年そのニ−ズが各種産業分野で益々高まっている。特に、海水と接する環境で使用される港湾構造物や造船、浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備(以下、「FPSO」と云う。FPSO:Floating Production Storage and Offloading system)、海水淡水化設備等に代表される各種用途でステンレスクラッド鋼を使用する場合には、厳しい海水腐食環境下で使用されるため、耐海水腐食性が要求される。
ステンレス鋼の不動態皮膜は塩化物イオンにより破壊されやすくなり、その腐食形態は孔食またはすきま腐食の形態をとる。一方、硫酸やふっ酸などに代表される酸中では腐食形態が全面腐食を呈するのに対し、海水中では局部腐食となる。従って、局部腐食の起点を防止する特性として耐孔食性に対する配慮が極めて重要となる。
ステンレス鋼の耐孔食性は鋼中のCr、Mo、N量に影響され、一般的に孔食指数(PRE:Pitting Resistance EquivalentあるいはPI:Pitting Index)としてCr(質量%)+3Mo(質量%)+10N(質量%)やCr(質量%)+3.3Mo(質量%)+16N(質量%)などで整理され、孔食指数が高いほど、耐孔食性に優れるとされる。ただし、これが適用できるのは、析出物等を固溶させる熱処理を施した無垢のステンレス鋼に限られ、炭素鋼との複合材料であるステンレスクラッド鋼の合せ材の耐孔食性にそのまま適用することはできない。
ステンレスクラッド鋼は、従来、母材の機械的性質と合せ材の耐食性を両立するため、オフライン熱処理である焼ならしや固溶化熱処理が行われている。
特許文献1には、合せ材成分を規定したクラッド鋼板を1050℃以下に加熱し、30℃/min以上で冷却する固溶化熱処理を行うことで耐食性に優れたステンレスクラッド鋼板を製造する技術が開示されている。
また、特許文献2には、合せ材成分を規定したクラッド鋼を1100〜1250℃に加熱後熱間圧延を行い、800℃以上で圧延を終了し、その後1℃/sec以上で冷却することで耐食性に優れたステンレスクラッド鋼板を製造する技術が開示されている。
特開平09−104953公報 特開平02−254121公報
しかしながら、特許文献1に記載の技術は固溶化熱処理を行う場合、母材の機械的性質を確保するため、オフライン熱処理を行うことで製造工程が多くなるという問題がある。
特許文献2に記載の技術は、クラッド鋼板合せ材の成分、圧延終了の温度、および圧延終了後の冷却速度を規定している。しかしながら、母材成分について十分に検討がなされていないという問題がある。
本発明は、かかる事情に鑑み、オフライン熱処理を行うことなく、合せ材の耐海水腐食性と母材の機械的性質に優れたステンレスクラッド鋼板を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために、複数の成分(鋼組成)および複数の履歴で圧延から熱処理まで完了したステンレスクラッド鋼における合せ材の耐孔食性と母材の機械的性質に及ぼす鋼成分の検討を行って、以下の知見を得た。
(1)クラッド鋼を圧延する際、スラブ加熱の段階で合せ材中の金属間化合物を完全に固溶させることが必要であり、スラブ加熱温度を1150℃以上とする必要がある。
(2)スラブ加熱温度を1150℃以上にした場合、母材のオーステナイト粒の粗大化が発生しやすい。スラブ加熱段階で母材オーステナイト組織が粗大化すると、圧延・冷却後の母材組織も粗大化するため、靭性に悪影響を及ぼす。そこで、スラブ加熱温度を1150℃以上にした場合でも、母材のオーステナイト組織の粗大化が進行しないようにするためには、母材の成分組成、特に、C、N、Nb、Tiの含有量を適切に限定すればよい。
(3)圧延・冷却時に、合せ材中で金属間化合物が析出することを避けるためには、熱間圧延を950℃以上で終了させるとともに、熱間圧延終了後、直ちに、所定の冷却速度で圧延後のクラッド鋼板を冷却することが有効である。
本発明は、以上の知見をもとに完成されたものであり、その要旨は以下のとおりである。
[1]合せ材と母材とを有するステンレスクラッド鋼板の製造方法であって、前記合せ材は、質量%で、C:0.030%以下、Si:0.02〜1.50%、Mn:0.02〜2.00%、P:0.040%以下、S:0.030%以下、Cu:0.20%以下、Ni:22.0〜25.0%、Cr:22.0〜26.0%、Mo:3.5〜5.0%、N:0.10〜0.25%を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、さらに、下記式(1)を満足するステンレス鋼であり、前記母材は、質量%で、C:0.030〜0.100%、Si:0.10〜0.40%、Mn:1.20〜1.70%、P:0.015%以下、S:0.005%以下、Nb:0.010〜0.040%、Ti:0.003〜0.050%を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、さらに、下記式(2)で表される炭素当量Ceqが0.30〜0.40%であり、前記合せ材の素材と前記母材の素材を用いて組み立てられたクラッド圧延用スラブを1150〜1250℃に加熱し、引き続いて熱間圧延を実施し、前記熱間圧延を950℃以上の温度域で終了し、その後、1℃/秒以上の冷却速度で冷却することを特徴とするステンレスクラッド鋼板の製造方法。
Cr+3.3Mo+16N≧40.0 (1)
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 (2)
なお、各元素記号は各元素の含有量(質量%)を表し、含有しない場合は0とする。
[2]さらに、合せ材が質量%で、B:0.0010〜0.0055%を含有することを特徴とする[1]に記載のステンレスクラッド鋼板の製造方法。
本発明によれば、合せ材の耐海水腐食性と母材の機械的特性を両立した耐海水ステンレスクラッド鋼が得られる。したがって、港湾構造物やFPSOに代表される造船分野において、あるいは、淡水海水装置に代表されるような耐海水腐食性が要求される用途において、本発明によって製造されるステンレスクラッド鋼板を好適に用いることができる。
以下、本発明の構成を説明する。本発明のステンレスクラッド鋼板の製造方法は、耐海水腐食性を満足するため、合せ材の成分組成、母材の成分組成、製造条件等の規定が必要となる。
1.合せ材の成分組成について
まず、合せ材のステンレス鋼の成分組成を限定する理由を説明する。なお、成分%は、全て質量%を意味する。
C:0.030%以下
Cは、耐食性、特に溶接熱影響部(weld heat-affected zone)の耐食性の観点から、低いほど好ましく、0.030%以下に制限する必要がある。好ましくは、0.020%以下である。C量の下限は特に限定されない。なお、精錬コストの観点から、0.003%以上であることが好ましく、0.005%以上であることが、さらに好ましい。
Si:0.02〜1.50%
Siは脱酸のため必要な成分であり、その効果を得るためには、0.02%以上の含有が必要であり、0.10%以上含有することが好ましい。しかし、1.50%を超えると熱間加工性を著しく劣化させるため、Si量は0.02〜1.50%以下の範囲とし、0.60%以下であることが好ましく、0.42%以下であることがより好ましい。
Mn:0.02〜2.00%
Mnは脱酸のため必要な成分であり、その効果を得るためには、0.02%以上の含有が必要であり、0.40%以上含有することが好ましい。しかし、2.00%を超えると耐食性を劣化させるためMn量は2.00%以下とし、1.35%以下であることが好ましく、0.60%以下であることがより好ましい。
P:0.040%以下、S:0.030%以下
P、Sは熱間加工性の観点から低いほど好ましく、Pが0.040%、あるいは、Sが0.030%を超えると熱間加工性が損なわれる。このため、P量は0.040%以下、S量は0.030%以下とし、P量は0.030%以下、S量は0.010%以下、であることが、それぞれ好ましい。
Cu:0.20%以下
Cuは耐食性の観点から低いほど好ましく、0.20%以下に制限することが好ましく、0.10%以下であることがより好ましく、0.05%以下であることがさらに好ましい。
Ni:22.0〜25.0%
Niは、オーステナイト相の安定性の観点から、主にCrおよびMoとのバランスを確保する必要があり、このため、22.0%以上必要であり、22.5%以上であることが好ましい。一方、経済性および高Ni化に伴う熱間変形抵抗の増大を考慮して25.0%以下とし、24.5%以下であることが好ましい。
Cr:22.0〜26.0%
Crは耐孔食性、耐隙間腐食性向上のために有効であり、22.0%以上必要とし、23.0%以上であることが好ましく、24.0%以上であることがより好ましい。一方、26.0%を超えると、合せ材として製造する際およびクラッド圧延時やその冷却時にσ相の析出が著しく促進され、耐食性および熱間加工性が阻害されてしまう。このため、Cr量は26.0%以下とし、σ相析出をさらに抑制するためには25.5%以下であることが好ましい。
Mo:3.5〜5.0%
Moは耐孔食性、耐隙間腐食性の向上のために有効であり、3.5%以上必要とし、4.0%以上であることが好ましく、4.2%以上であることがより好ましい。一方、5.0%を超えると、合せ材として製造する際およびクラッド圧延時やその冷却時にσ相の析出が著しく促進され、耐食性および熱間加工性が阻害されてしまう。このため、Mo量は5.0%以下とし、σ相析出をさらに抑制するためには4.8%以下であることが好ましい。
N:0.10〜0.25%
Nは耐食性を高める効果があり、その効果を得るために0.10%以上必要とし、0.15%以上であることが好ましく、0.17%以上であることがより好ましい。一方、0.25%を超えると熱間加工性を低下させるため、N量は0.25%以下とし、0.23%以下であることが好ましい。
Cr+3.3Mo+16N≧40.0 (1)
Cr+3.3Mo+16Nが40.0以上であることは耐海水用途で用いられるステンレス鋼に必要とされる成分として公知であり、本発明のステレンスクラッド鋼板の合せ材においても40.0未満であると耐食性が劣化する。よって、Cr+3.3Mo+16Nを40.0以上とし、42.0以上であることが好ましい。
以上が本発明のステンレスクラッド鋼の合せ材の基本成分であり、残部はFeおよび不可避的不純物である。上記成分に加えて、Bについてはさらに以下のとおり含有させることができる。
B:0.0010〜0.0055%
Bは耐食性、熱間加工性向上のため有効であり、含有させる場合には0.0010%以上とすることが好ましく、0.0015%以上であることがより好ましい。一方0.0055%を超えると耐食性、熱間加工性が劣化する。よって、B量は0.0055%以下とすることが好ましく、0.0035%以下であることがより好ましい。
2.母材の成分組成について
次に、母材の炭素鋼を限定する理由を説明する。なお、成分%は、全て質量%を意味する。
C:0.030〜0.100%
Cは、鋼の強度を増加させるのに有用な元素である。本発明では強度を確保するため、C量は、0.030%以上とし、0.040%以上であることが好ましく、0.050%以上であることがより好ましい。一方、0.100%を超えると溶接性、靭性が低下するため、C量は0.100%以下とし、0.090%以下であることが好ましい。
Si:0.10〜0.40%
Siは脱酸のため必要な成分であり、その効果を得るためには、0.10%以上の含有が必要であり、0.20%以上であることが好ましい。しかし、0.40%を超えると靭性を著しく低下させるため、Si量は0.40%以下とし、0.30%以下であることが好ましい。
Mn:1.20〜1.70%
Mnは、鋼の強度を増加させるのに有用な元素である。本発明では強度を確保するため、Mn量は、1.20%以上とし、1.30%以上であることが好ましく、1.40%以上であることがより好ましい。一方、1.70%を超えて添加すると、靱性が著しく低下する。このため、Mn量は1.70%の範囲とし、1.60%以下であることが好ましい。
P:0.015%以下、S:0.005%以下
PおよびSは、いずれも、靭性の観点から低いほど好ましく、P量が0.015%、あるいは、S量が0.005%を超えると靭性が損なわれる。このため、P量は0.015%以下、S量は0.005%以下とし、P量は0.010%以下、S量は0.003%以下であることが、それぞれ、好ましい。
Nb:0.010〜0.040%
Nbは、Ti、C、Nと共に炭窒化物を形成し、加熱時のオーステナイト粒の粗大化を抑制して靭性を向上させる効果がある。この効果を発揮するためにNb量は0.010%以上であることが必要であり、0.020%以上であることが好ましい。一方、Nb量が0.040%を超えると、過剰に炭窒化物を生成し、かえって靭性を低下させるため、Nb量は0.040%以下とし、0.030%以下であることが好ましい。
Ti:0.003〜0.050%
Tiは、Nと共に窒化物を形成し、また、Nb、C、Nと共に炭窒化物を形成して、加熱時のオーステナイト粒の粗大化を抑制して靭性を向上させる効果がある。この効果を発揮するためにTi量は0.003%以上であることが必要であり、0.005%以上であることが好ましい。一方、Ti量が0.050%を超えると、過剰に炭窒化物を生成し、かえって靭性を低下させるため、Ti量は0.050%以下とし、0.030%以下であることが好ましい。
炭素当量(Ceq):0.30〜0.40%
母材およびHAZの強度を確保するためには、炭素当量Ceqを0.30%以上とする必要があり、0.32%以上であることが好ましい。一方、0.40%を超えると溶接性が低下し、またHAZ靱性が低下するため、炭素当量Ceqは、0.40%以下とし、0.38%以下であることが好ましい。なお、炭素当量Ceqは、下記式(2)で表される。
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 (2)
ただし、各元素記号は各元素の含有量(質量%)を表し、含有しない場合は0とする。
上記した元素以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。このほか、本発明の作用効果を阻害しない限り、不純物として、たとえば、Cu:0.10%以下、Ni:0.10%以下、Cr:0.20%以下、Mo:0.10%以下、V:0.02%以下、B:0.0003%以下、などが許容される。
また、本発明の作用効果を害しない限り、他の微量元素の含有を妨げない。たとえば、靱性改善の観点から、Ca:0.003%以下、Mg:0.02%以下、REM(希土類金属):0.02%以下の1種以上を含有させることができる。
本発明のステンレスクラッド鋼板は、この母材の片面または両面に合せ材として上記成分範囲のステンレス鋼がクラッドされたものである。
3.製造条件について
次に、製造条件について説明する。
本発明においては、上述した成分組成を有するステンレス鋼を合せ材の素材とし、上述した成分組成を有する炭素鋼を母材の素材として、クラッド鋼圧延用のスラブを組み立てる。スラブ組み立て方法としては、サンドイッチ方式、オープン方式、犠牲材方式、などを用いることができる。なお、ここで、クラッド鋼圧延用のスラブを組み立てるのに用いられる合せ材の素材とは、上述した成分組成を有し、圧延の総圧下率と圧延後の合せ材目標板厚とから計算される、クラッド鋼圧延前に必要な板厚を有するステンレス鋼を指す。また、クラッド鋼圧延用のスラブを組み立てるのに用いられる母材の素材とは、上述した成分組成を有し、圧延の総圧下率と圧延後の母材目標板厚とから計算される圧延前に必要な板厚を有する炭素鋼を指す。
本発明においては、このように組み立てられたクラッド鋼圧延用のスラブを加熱し、熱間圧延したのち、所定の条件で冷却する。
以下、本明細書において、特に断らない限り、温度や冷却速度の条件は、スラブなどの鋼材や鋼板の板厚方向の平均温度で規定するものとする。鋼材や鋼板の平均温度は、板厚、表面温度および冷却条件等から、シミュレーション計算等により求められる。例えば、差分法を用い、板厚方向の温度分布を計算することにより、鋼材や鋼板の平均温度が求められる。
スラブ加熱温度:1150〜1250℃
前記の成分組成を満足するステンレス鋼であっても、金属間化合物が析出した場合、耐孔食性が低下する。クラッド圧延前のスラブ加熱においてはこれらの金属間化合物を固溶させる必要がある。加熱温度が1150℃未満であると金属間化合物が完全に固溶せず、圧延・冷却後も金属間化合物が残り、耐孔食性が低下する。このため、加熱温度は1150℃以上であることが必要であり、金属間化合物をより安定的に固溶させるために1200℃以上であることが好ましい。一方、加熱温度が1250℃を超えると、加熱時のスケール生成が過剰となることによって圧延時に表面疵が生じやすく、圧延後の手入れ負荷が増大する。このため、スラブ加熱温度は1250℃以下である必要があり、1240℃以下であることが好ましい。なお、スラブ加熱において、スラブ全体が上述の温度範囲に入ればよく、最高到達温度における保持時間は、特に必要とされない。
次いで、加熱されたスラブを熱間圧延する。
圧延後のクラッド鋼板の板厚に対するクラッド鋼圧延用スラブの厚さの比である圧下比は、合せ材と母材との密着性向上の観点から、3.0以上であることが好ましく、5.0以上であることがより好ましい。圧下比の上限は、特に限定されるものではないものの、現実的には10.0以下である。
圧延終了温度:950℃以上
圧延終了温度が950℃未満である場合、圧延中に合せ材の中に金属間化合物が析出し、この金属間化合物が圧延・冷却後も合せ材に残るため、耐孔食性を低下させる。このため、圧延終了温度は950℃以上であることが必要である。金属間化合物の析出をさらに抑制するためには、圧延終了温度は1000℃以上であることが好ましい。
圧延終了後のクラッド鋼板の合せ材において、金属間化合物が析出することを防ぐため、圧延終了後、ただちに冷却を開始することが好ましい。ここで、圧延終了後、冷却を開始するまでの時間は、25秒以下であることが好ましく、15秒以下であることがより好ましい。また、同じく、金属間化合物の析出を防ぐ観点から、圧延後の鋼板の温度が930℃以上の状態から冷却を開始することが好ましく、より好ましくは圧延後の鋼板の温度が940℃以上の状態から冷却を開始する。
圧延終了後の冷却速度:1℃/秒
圧延終了後の冷却速度が1℃/秒より低い場合、冷却時に合せ材中に金属間化合物が析出し、耐孔食性が低下する。よって、冷却速度は1℃/秒以上とし、より金属間化合物の析出を抑制するため、5℃/秒以上であることが好ましい。なお、ここで、冷却速度は、(冷却開始温度−500℃)を冷却開始から冷却停止までの時間で除した平均冷却速度とする。冷却速度の上限は特に限定されない。しかしながら、母材において低温変態組織が過度に生成することを避けるため、100℃/秒以下であることが好ましい。
冷却停止温度は、特に限定されない。なお、合せ材中で金属間化合物がほとんど析出しなくなり、実質的に耐孔食性に影響を及ぼさなくなる温度として、500℃以下まで上述の冷却速度で冷却することが好ましい。500℃以下の温度域では、上述の冷却を継続してもよく、また、上述の冷却を終了し、室温まで空冷してもよい。
室温近傍まで冷やされたクラッド鋼板は、クラッド圧延用スラブの組み立て方法に応じて、2枚のクラッド鋼板に、あるいは、クラッド鋼板と犠牲材とに、分離される。
以下に、本発明の実施例を説明する。
表1に示す成分組成からなるオ−ステナイト系ステンレス鋼を合せ材として、また、表2に示す成分組成からなる炭素鋼を母材として、それぞれ用いた。母材として板厚が115mmの炭素鋼、合せ材として板厚10mmのオーステナイト系ステンレス鋼を組み合わせて、厚みが(115+10+10+115)mmのスラブを組み立てた。
Figure 0006390567
Figure 0006390567
次いで、スラブ加熱温度:1100〜1240℃でクラッド圧延用のスラブを加熱した後、圧延終了温度:800〜1030℃の熱間圧延を施し、その後、冷却速度0.3〜7.0℃/sで500℃まで加速冷却することで、母材板厚23mm+合せ材板厚2mmのステンレスクラッド鋼を製造した。製造条件を表3に示す。なお、圧延終了から冷却開始までの時間は、15秒以内であった。
Figure 0006390567
以上により得られたステンレスクラッド鋼に対して、合せ材の耐孔食性を以下に示すJIS G 0578(ステンレス鋼の塩化第二鉄腐食試験方法(Method of ferric chloride tests for stainless steels)によりCPT(孔食発生臨界温度(Critical Pitting Temperature))を測定して評価した。
6mass%FeCl+1/20N HCl溶液中、試験温度:5℃間隔、浸漬時間:24時間で浸漬試験(immersion test)を行った。それぞれの試験温度において、浸漬試験を3回行い、発生した孔食のうちの最大孔食深さが0.025mmに達した場合は不合格とした。ある試験温度における浸漬試験において3回とも孔食が発生しなかった場合はその温度では合格とし、不合格となった最低温度をCPT(℃)とした。なお、CPTが60℃以上を良好と評価した。さらに好ましくは65℃以上である。
母材の機械的性質は、引張試験、および、シャルピー衝撃試験により評価した。引張試験は、クラッド鋼板から合せ材を切削加工した母材だけを採取し、その採取された母材について全厚のJIS Z 2241(2011)に準拠した1A号試験片を鋼板の圧延直角方向を長手として採取し、同じくJIS Z 2241(2011)に準拠して引張試験を実施し、2本の試験片について得られた結果の平均値を求めた。シャルピー衝撃試験は、母材の板厚1/4位置を中心として板厚10mmのJIS Z 2242(2005)に記載のVノッチ試験片を採取し、JIS Z 2242(2005)に準拠して、試験温度:0℃においてシャルピー衝撃試験を実施し、3本の試験片について得られた吸収エネルギーの平均値を求めた。
なお、機械的性質は、JIS G 3106に記載のSM490YBに準拠した特性、具体的には、0.2%耐力(YS):355MPa以上、引張強さ(TS):490〜610MPa、伸び(El):19%以上、シャルピー吸収エネルギー:試験温度0℃で27J以上、を目標とした。
表4に試験結果を示す。
Figure 0006390567
No.1〜7は発明例であり、合せ材CPTが目標値の60℃以上となっており、優れた耐海水腐食性を示している。また母材の機械的性質も目標値を満足している。No.8〜17は比較例である。No.8は合せ材中のCu量が多く、CPTが目標温度に達しなかった。No.9は合せ材のPI値が低く、CPTが目標温度に達しなかった。No.10は合せ材中のMo量が多く、CPTが目標温度に達しなかった。No.11は圧延終了温度が低く、CPTが目標温度に達しなかった。No.12は圧延終了温度が低く、CPTが目標温度に達しなかった。No.13は圧延終了温度が低く、CPTが目標温度に達しなかった。No.14は冷却速度が低く、CPTが目標温度に達しなかった。No.15は母材のCeqが高く、母材の機械的性質を満足しなかった。No.16は母材のCeqが低く、母材の機械的性質を満足しなかった。No.17は圧延終了温度が低く、母材のTi量が多く、CPTが目標温度に達せず、母材の機械的性質も満足しなかった。

Claims (2)

  1. 合せ材と母材とを有するステンレスクラッド鋼板の製造方法であって、
    前記合せ材は、質量%で、C:0.030%以下、Si:0.02〜1.50%、Mn:0.02〜2.00%、P:0.040%以下、S:0.030%以下、Cu:0.20%以下、Ni:22.0〜25.0%、Cr:22.0〜26.0%、Mo:3.5〜5.0%、N:0.10〜0.25%を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、さらに、下記式(1)を満足するステンレス鋼であり、
    前記母材は、質量%で、C:0.030〜0.100%、Si:0.10〜0.40%、Mn:1.20〜1.70%、P:0.015%以下、S:0.005%以下、Nb:0.010〜0.040%、Ti:0.003〜0.050%を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、さらに、下記式(2)で表される炭素当量Ceqが0.30〜0.40%であり、
    前記合せ材の素材と前記母材の素材を用いて組み立てられたクラッド圧延用スラブを1150〜1250℃に加熱し、引き続いて熱間圧延を実施し、前記熱間圧延を950℃以上の温度域で終了し、その後、1℃/秒以上の冷却速度で500℃以下まで冷却することを特徴とするステンレスクラッド鋼板の製造方法。
    Cr+3.3Mo+16N≧40.0 (1)
    Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 (2)
    なお、各元素記号は各元素の含有量(質量%)を表し、含有しない場合は0とする。
  2. さらに、合せ材が質量%で、B:0.0010〜0.0055%を含有することを特徴とする請求項1に記載のステンレスクラッド鋼板の製造方法。
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