JP5094325B2 - 高強度複合金属材料およびその製造方法 - Google Patents

高強度複合金属材料およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、鋼層と銅系層が交互に積層して一体化した構造を有する積層方向の靭性に優れた高強度複合金属材料、およびその製造方法に関する。
高強度金属材料において、一般に「強度(硬さ)」と「靭性」はトレードオフの関係にあり、それらを高いレベルで両立させることは非常に難しい。汎用的な高強度金属材料としては、焼入れ・焼戻し処理、あるいは高温変態処理を施して変態相(マルテンサイト相やベイナイト相など)を生成させた鋼材を挙げることができる。これらは硬さが300〜750HVレベルの高強度を呈することから、機械構造部材、工具、刃物など、多くの高強度用途で広く使用されている。しかしながら、常温での2mmVノッチ衝撃値は高々100J/cm2程度であり、この種の鋼材でそれ以上の靭性を安定的に具備させることは困難である。
一方、靭性に特化した代表的な鋼材としてハットフィールド鋼(高Mnオーステナイト鋼)が挙げられる。この種の鋼材では常温での2mmVノッチ衝撃値が300J/cm2程度と極めて高い靱性を呈するものを得ることも可能である。しかし、その強度レベルは200HV程度にとどまる。また、この種の材料を冷間圧延すれば硬さが400HVを超える領域まで高強度化することはできるが、この場合、常温での2mmVノッチ衝撃値は200J/cm2を大きく下回るレベルまで低下してしまう。
非鉄金属材料においては析出強化などを利用して高強度化を図ったものが種々知られているが、一般に銅合金やアルミニウム合金などの一般的な非鉄金属材料で500〜750HVという強度レベルを実現することは容易でない。300〜500HVの強度レベルを実現する場合においては、同じ強度レベルの鋼材と比較するとコストが高くなり、また優れた靭性を具備させることは難しい。
特開2004−082667号公報
本発明は、汎用的な素材を用いて、これまで困難とされていた高いレベルで「高強度」および一定方向における「高靭性」を両立させた金属材料を提供することを目的とする。
上記目的は、厚さ0.05〜2mmの鋼層と厚さ0.001〜0.2mmの銅系層が交互に積層して各層が接合してなる複合金属材料であって、鋼層は焼入れ・焼戻し処理または恒温変態処理を経た変態相が50体積%以上を占める鋼、銅系層は溶融した後冷却した銅または銅合金で構成され、下記(1)式で定義される相当硬さHが300HV以上である、高強度複合金属材料によって達成される。
H=(Σ[Ts×Hs]+Σ[Tc×Hc])/(ΣTs+ΣTc) ……(1)
ここで、
Σ[Ts×Hs]; 各鋼層の厚さTs(mm)と硬さHs(HV)の積を全鋼層について合計したもの
Σ[Tc×Hc]; 各銅系層の厚さTc(mm)と硬さHc(HV)の積を全銅系層について合計したもの
ΣTs; 全鋼層厚さ(mm)
ΣTc; 全銅系層厚さ(mm)
本明細書では、この複合金属材料(積層体)において、各層の厚さ方向を「積層方向」と呼んでいる。鋼層の積層数は例えば5以上とすることが好ましい。各鋼層は同一鋼種で構成してもよいし異種の鋼種を混ぜて構成してもよい。各鋼層の厚さは同一であってもよいし異なっていても構わない。各銅系層についても同一種類の材料で構成してもよいし異種の材料で構成してもよい。また、各銅系層の厚さは同一であってもよいし異なっていても構わない。
各鋼層の厚さTs(mm)および各銅系層の厚さTc(mm)は、当該複合金属材料の積層方向に平行な断面についての顕微鏡観察を実施して定めることができる。各鋼層の硬さHs(HV)および各銅系層の硬さHc(HV)は、一般には上記断面についてマイクロビッカース硬度計を用いた硬度測定を行うことにより求めることができる。ただし、薄いために精度よく測定できない場合は、同一組成の材料について同一の熱履歴を付与する処理を行ったサンプルを用いた測定値で代用しても構わない。銅系層が特に電気めっきに由来する銅で構成され、薄いために断面硬さが測定困難な場合は、Hc=85HVの値を使用して差し支えない。
また本発明では、厚さ0.05〜2mmの鋼層と厚さ0.001〜0.2mmの銅系層が交互に積層して各層が接合してなる複合金属材料であって、鋼層は焼入れ・焼戻し処理または恒温変態処理を経た変態相が50体積%以上を占める鋼、銅系層は銅または銅合金で構成され、前記(1)式で定義される相当硬さHが300HV以上であり、積層方向の厚さ(ΣTs+ΣTc)が10mm以上であり、Vノッチの深さ方向が積層方向に一致する衝撃試験片によって評価される常温(20℃)での2mmVノッチ衝撃値I(J/cm2)と前記相当硬さH(HV)の積I×Hが75000以上である高強度複合金属材料が提供される
また、上記の複合金属材料の製造方法として、本発明では、焼入れ・焼戻し処理または恒温変態処理により硬さ350HV以上となる化学組成を有する厚さ0.05〜2mmの鋼板をめっき原板とした銅めっき鋼板を、複数層に積層して、積層方向に荷重を付与しながら銅の融点以上1200℃以下の温度に保持し、銅が溶融した後冷却することにより、厚さ0.001〜0.2mmの銅層を介して鋼層が接合した積層体を得る工程、
その積層体を、鋼層の硬さが350HV以上となる条件の前記焼入れ・焼戻し処理または恒温変態処理に相当するヒートパターンの熱処理に供する工程、
を有する積層方向の靭性に優れた高強度複合金属材料の製造方法が提供される。
本発明によれば、比較的安価な汎用素材を用いて「高強度」および一定方向における「高靭性」を高いレベルで両立させた複合金属材料が実現された。その靭性は、当該複合金属材料を構成する元の素材からは考えられないほど飛躍的な向上している。
本発明の複合金属材料は、高強度と高靭性を有する金属材料の適用が望まれる種々の用途において、部材の薄肉化、構造の単純化、性能向上などに寄与しうると考えられる。そのような用途としては、例えば自動車や輸送機器の衝撃吸収部材、免震構造部材、防弾部材などが挙げられる他、様々な用途展開が期待される。また、市販の銅めっき鋼板を用いて製造することもできるため、素材コストは低く抑えられ、製造も比較的容易である。
図1に、本発明の複合金属材料の断面構造を模式的に示す。鋼層と銅系層が交互に積層している。隣り合う層どうしはタイトに接合している。その接合強さはロウ付けに匹敵する。銅系層は銅または銅合金の層である。銅系層が銅である場合は特に「銅層」と呼ぶこともある。積層数は、鋼層の数が少なくとも2以上であることが必要であるが、5以上のものが好適な対象となり、10以上とすることがより好ましい。図1には便宜状、鋼層の数が3のものを示してある。積層方向の端部は用途に応じて鋼層、銅系層のいずれかが選択される。一端部を鋼層、他の端部を銅系層としてもよい。鋼層の積層数がiである場合、銅系層の積層数はi−1、i、i+1のいずれかになる(ただしiは2以上の整数)。
本発明の複合金属材料は、積層方向の靭性が極めて高いことに大きな特徴がある。図2に、Vノッチ衝撃試験片の採取方向を模式的に示す。衝撃試験においてハンマーにより付与される衝撃方向が積層方向となる場合(図2(a))をフラットワイズ(Flat-wise)と呼び、それと直角方向となる場合(図2(b))をエッジワイズ(Edge-wise)と呼ぶ。積層方向の靭性はフラットワイズの衝撃試験で評価される。
図3に、本発明の複合金属材料から切り出した2mmVノッチ衝撃試験片についてフラットワイズの衝撃試験に供した後の外観(図面代用写真)を例示する。これは後述実施例の本発明例No.3に該当するものである。この例では、各鋼層は同一の鋼種S55Cで構成されており、銅系層は銅である。両層のトータルの厚さ比率ΣTs/ΣTcは25程度であり、大部分が鋼層で占められている。通常のS55C鋼材(バルク材)の場合、この複合金属材料を作製したときの熱処理条件(焼入れ・焼戻し)では、硬さ450HV程度、2mmVノッチ衝撃値15J/cm2程度となる。ところがこの複合金属材料は、相当硬さ426HV程度を維持しながら、積層方向の2mmVノッチ衝撃値は229J/cm2という極めて高い値を示すようになる。これと同様の構造を有する積層体にオーステンパー処理を施した場合には、相当硬さ470HV、積層方向の2mmVノッチ衝撃値337J/cm2という驚異的な強靱性を呈する複合金属材料が得られる(後述実施例の本発明例No.1)。
このように、本発明の複合金属材料においては、鋼層および銅系層を構成する各材料の靱性からは考えられないほど顕著に積層方向の靱性が向上する。そのメカニズムに関しては現時点で十分に解明されていないが、試験後の衝撃試験片の観察から、靱性の低い鋼層で生じた亀裂が銅系層の存在によって隣の鋼層に伝播しにくい状態となっているものと推察される。このことは、エッジワイズの試験片による衝撃値はバルクの鋼材と同等の値となり、フラットワイズのような靱性向上が認められないことからも肯定される。なお、鋼層に同じ鋼種を用いた場合でも、焼入れ後に適切な焼戻しを行っていない場合(すなわち、焼入れ・焼戻し処理を経たとは言えない場合)には、フラットワイズであっても上記のような顕著な靱性向上は見られない。
鋼層の厚さは0.05〜2mm、銅系層の厚さは0.001〜0.2mm程度の範囲とすればよい。ただし、鋼層による高強度を十分に発揮させるためには、両層のトータルの厚さ比率ΣTs/ΣTcを4以上とすることが好ましい。一方、積層方向の靱性を顕著に向上させるにはΣTs/ΣTcを50以下とすることが効果的であり、30以下とすることがより好ましい。また、特性の均質化を図るためには、各鋼層および各銅系層をそれぞれ同種類の材料で構成した上で、各鋼層の厚さTsおよび各銅系層厚さTcはそれぞれ、Tsの平均値およびTcの平均値に対して±50%の範囲にあることが望ましく、±30%の範囲にあることがより好ましい。後述のように銅めっき鋼板を用いて積層体を形成させる場合には、各鋼層厚さは例えば0.1〜1mm、各銅層厚さは例えば5〜50μm程度の範囲に調整することが効率的である。
本発明の複合金属材料は、鋼層に高強度鋼を採用する。これによって高強度と積層方向の高靭性を兼ね備えたものが得られる。高強度鋼としては焼入れ・焼戻し処理または恒温変態処理によって高強度化されるタイプの鋼種を採用する。このタイプのものは、銅系層と接合する際の高温の熱処理を経た後に、所定の焼入れ・焼戻し処理または恒温変態処理を付与することによって「変態相」を生成させることができ、それによって高強度化される。「変態相」は鋼材を焼入れ・焼戻し処理または恒温変態処理に供することによってA1変態点より低い温度で生成する相である。焼入れ・焼戻し処理によって得られる変態相は代表的にはマルテンサイト相(焼戻しにより微細化したものを含む)である。恒温変態処理としては例えばオーステンパーが挙げられ、それによって得られる変態相は代表的にはベイナイト相である。処理によっては種類の異なる変態相が共存することもある。変態相の残部には通常、炭化物が存在するが、その他、残留オーステナイト相、初析フェライト相などが存在していても構わない。変態相は50体積%以上存在することが、高強度化にとって有利である。相当硬さ300HV以上(後述)を安定して実現するためには、焼入れ・焼戻し処理または恒温変態処理により硬さ350HV以上となる化学組成を有するものを使用することが好ましい。
鋼層を構成する具体的な鋼種として、JISなどの規格鋼種を例示すれば、S10C,S35C,S55C,SCM435,SUP6,SK85,SK100,SK120,SUJ2,SUS420J2などが挙げられる。1つの積層体に複数の鋼種を混ぜて使用する場合は、同一の熱処理が採用できる鋼種を組み合わせる。
具体的な化学組成として以下のものが例示できる。
[1]質量%で、C:0.1〜1.5%、Mn:0.2〜2%、P:0.03%以下、S:0.03%以下、残部Feおよび不可避的不純物
[2]上記[1]において、さらにSi:2.5%以下を含有するもの
[3]上記[1]または[2]において、Cr:2%以下、Ni:2%以下、Mo:2%以下、Ti:0.5%以下、Nb:0.5%以下、V:0.5%以下、B:0.02%以下の1種以上を含有するもの
銅系層は、銅または銅合金で構成される。ここでいう銅合金は銅含有量が50質量%以上のものである。合金元素の添加によって融点が上昇する銅合金(例えばCu−Ni系)では、融点が概ね1150℃以下の組成範囲を採用する。銅系層は、積層体を形成した後に鋼層と一緒に焼入れ・焼戻し処理または恒温変態処理に供されるので、銅合金で構成する場合はそのような熱履歴を受けたときに脆い相が生成しない合金系であることが望ましい。好適な例としては純度90%以上の銅が挙げられ、電気銅めっきに由来する銅はこれに該当する。
本発明の複合金属材料は、前記(1)式で定義される相当硬さHが300HV以上であるものが対象となる。これより相当硬さが低い場合は上記のような鋼種と比較して強度不足となる場合がある。相当硬さHは350HV以上であることがより好ましく、400HV以上であるものが一層好ましい対象となる。相当硬さHは主として、鋼層と銅系層のトータルの厚さ比率ΣTs/ΣTc、および鋼層を構成する材料の硬さHs(HV)によってコントロールすることができる。本発明で規定される金属組織の鋼材を鋼層に使用する限り、鋼層の硬さHsと銅系層の硬さHcはHs>Hcの関係にあるので、(1)式から判るとおり、鋼層と銅系層のトータルの厚さ比率ΣTs/ΣTcを大きくすることによって相当硬さが増大する。
本発明の複合金属材料の積層方向の厚さ(ΣTs+ΣTc)は、1mm程度と薄くても積層方向の高靱性を享受することができるが、(ΣTs+ΣTc)が約10mm以上である場合には、フラットワイズの2mmVノッチ衝撃試験片を用いて、直接的に積層方向のVノッチ衝撃値を測定することができる。常温(20℃)での2mmVノッチ衝撃値I(J/cm2)と前記相当硬さH(HV)の積I×Hが75000以上であるものが本発明において特に好適な対象となる。単一鋼種からなるバルク材においてI×Hがこのように高い値を示す材料を実現することは極めて困難である。
本発明の複合金属材料は、隣り合う鋼層と銅系層がタイトに接合していることに特徴がある。このような接合構造を得るための方法として、各銅系層を構成する銅または銅合金をロウ材として利用することが極めて効果的である。ロウ材として薄い銅または銅合金のシートを鋼材の間に挟んで、ロウ材の融点以上に加熱する方法が挙げられる。しかし、より効率的な手法として、本発明では銅めっき鋼板を使用する方法を提供する。
この場合、めっき原板として前述のように焼入れ・焼戻し処理または恒温変態処理により高強度化される鋼種からなる厚さ0.05〜2mmの鋼板を用い、これに電気銅めっきを施した銅めっき鋼板を用意する。通常、電気銅めっきは鋼板の両面に施されるが、銅めっきの目付量は、銅めっき層がロウ材となって厚さ0.001〜0.2mmの銅層を形成するに足る厚さとする。電気銅めっき鋼板を複数層に積層して、積層方向にある程度の荷重を付与しながら銅の融点以上1200℃以下の温度に保持し、めっき層の銅を溶融させ、その後冷却する。銅の融点は純銅の場合で1083℃であるから、通常、1150℃程度の炉温に設定された炉中に装入することにより、短時間で各層の銅(ロウ材)を溶融させることができる。1200℃を超える温度に加熱することは経済性を損ない、また銅の蒸発による炉内の汚染も大きくなるので好ましくない。この加熱中に付与する積層方向の荷重によって、銅層の厚さTcを制御することもできる。すなわち、荷重を高めるほど、鋼板の間から溶融状態で排除される銅(ロウ材)の量が多くなり、銅層の厚さは薄くなる。ただし、排除する銅の量があまり過剰になると銅の歩留が悪くなるので好ましくない。
このようにして得られた積層体について、鋼層の鋼を強化するための熱処理、すなわち鋼種に応じた焼入れ・焼戻し処理または恒温変態処理に相当するヒートパターンの熱処理を施すことによって、積層方向の靭性が顕著に向上した本願発明の複合金属材料が得られる。
下記の化学組成を有する鋼(S55C)をめっき原板とする板厚0.27mmの電気銅めっき鋼板を用意した。この鋼板は厚さ0.25mmのめっき原板の表面に無光沢Cuめっきを片面あたり0.01mmの厚さで施したものである。
〔鋼組成〕
質量%で、C:0.55%、Si:0.20%、Mn:0.80%、P:0.012%、S:0.008%、Cr:0.13%、残部Feおよび不可避的不純物
この銅めっき鋼板から100×50mmの切り板を採取し、その切り板100枚を高温真空炉の中に積み重ねてセットした。図4にセットの仕方を模式的に示す。定盤の上に切り板100枚を積み重ねた。その際、ずれ止めの鋼製ブロックを四方に配置した。積み重ねた切り板の上部に重錘を乗せ、めっき鋼板間の平均面圧(上から50枚目と51枚目の間に作用する面圧)が約40gf/cm2となるようにした。この状態にセットして真空引き後にAr雰囲気とした後、以下の条件でロウ付け熱処理を施した。
〔ロウ付け熱処理〕
常温から1000℃まで約3時間で昇温→1000℃×10分保持→1150℃まで昇温→1150℃×10分保持→炉内で常温まで冷却
ロウ付け熱処理により得られた積層体から、フラットワイズおよびエッジワイズの2mmVノッチ衝撃試験片を作製した。フラットワイズでは、試験片中の積層数(鋼層の数)が40となるようにした。この試験片について、以下の2種類の条件で熱処理を施した。
〔熱処理A〕
オーステンパー処理(鋼層500HV狙い); 810℃×20分保持→300℃×30分保持→空冷
〔熱処理B〕
焼入れ・焼戻し処理(鋼層450HV狙い); 850℃×20分保持→油冷(60℃)→400℃×60分保持→空冷
熱処理後の試験片について、鋼層および銅層の断面硬さをマイクロビッカース硬度計により測定した。また、銅層の平均厚さを測定した(鋼層の平均厚さは0.25mm一定)。これらの測定値を前記(1)式に代入することにより相当硬さを求めた。
また、熱処理後の2mmVノッチ衝撃試験片について、JIS Z2242に準拠した方法で20℃でのシャルピー衝撃試験を実施した。
結果を表1に示す。表1中には上記と同組成のS55Cバルク材に対して500HV狙いの焼入れ焼戻し処理を施した場合の2mmVノッチ衝撃値も併せて示す。図5には相当硬さと2mmVノッチ衝撃値の関係を示す。図5中には鋼材トップレベルの靭性を示す鋼種ハットフィールド鋼(高Mnオーステナイト鋼)バルク材のデータも併せて示す。
参考のため図6に上記ロウ付け熱処理後、および焼入れ・焼戻し(熱処理B)後の積層体について、断面の金属組織写真を示す。図6中の(b)は本発明例の複合金属材料である表1のNo.3に該当する。
本発明の複合金属材料は、その鋼層を構成するS55Cのバルク材と比べ、積層方向の靭性(衝撃値)が極めて高い。特に熱処理Aのオーステンパー処理を施したものは、相当硬さ470HVを有しながら鋼種IRS2水靭材を上回る積層方向の靭性を呈する。エッジワイズの衝撃試験ではバルク材と同等の靭性を呈した。
本発明の複合金属材料の断面構造を模式的に示した図。 Vノッチ衝撃試験片の採取方向を模式的に示した図。 本発明の複合金属材料から切り出した2mmVノッチ衝撃試験片についてフラットワイズの衝撃試験に供した後の外観を例示した図面代用写真。 ロウ付け熱処理での試料のセットの仕方を模式的に示した図。 相当硬さと2mmVノッチ衝撃値の関係を示したグラフ。 ロウ付け熱処理後および焼入れ・焼戻し(熱処理B)後の積層体断面の金属組織写真。

Claims (4)

  1. 厚さ0.05〜2mmの鋼層と厚さ0.001〜0.2mmの銅系層が交互に積層して各層が接合してなる複合金属材料であって、鋼層は焼入れ・焼戻し処理または恒温変態処理を経た変態相が50体積%以上を占める鋼、銅系層は溶融した後冷却した銅または銅合金で構成され、下記(1)式で定義される相当硬さHが300HV以上である、高強度複合金属材料。
    H=(Σ[Ts×Hs]+Σ[Tc×Hc])/(ΣTs+ΣTc) ……(1)
    ここで、
    Σ[Ts×Hs]; 各鋼層の厚さTs(mm)と硬さHs(HV)の積を全鋼層について合計したもの
    Σ[Tc×Hc]; 各銅系層の厚さTc(mm)と硬さHc(HV)の積を全銅系層について合計したもの
    ΣTs; 全鋼層厚さ(mm)
    ΣTc; 全銅系層厚さ(mm)
  2. 厚さ0.05〜2mmの鋼層と厚さ0.001〜0.2mmの銅系層が交互に積層して各層が接合してなる複合金属材料であって、鋼層は焼入れ・焼戻し処理または恒温変態処理を経た変態相が50体積%以上を占める鋼、銅系層は銅または銅合金で構成され、下記(1)式で定義される相当硬さHが300HV以上であり、積層方向の厚さ(ΣTs+ΣTc)が10mm以上であり、Vノッチの深さ方向が積層方向に一致する衝撃試験片による常温での2mmVノッチ衝撃値I(J/cm 2 )と前記相当硬さH(HV)の積I×Hが75000以上である高強度複合金属材料。
    H=(Σ[Ts×Hs]+Σ[Tc×Hc])/(ΣTs+ΣTc) ……(1)
    ここで、
    Σ[Ts×Hs]; 各鋼層の厚さTs(mm)と硬さHs(HV)の積を全鋼層について合計したもの
    Σ[Tc×Hc]; 各銅系層の厚さTc(mm)と硬さHc(HV)の積を全銅系層について合計したもの
    ΣTs; 全鋼層厚さ(mm)
    ΣTc; 全銅系層厚さ(mm)
  3. 鋼層の積層数が5以上である請求項1または2に記載の高強度複合金属材料。
  4. 焼入れ・焼戻し処理または恒温変態処理により硬さ350HV以上となる化学組成を有する厚さ0.05〜2mmの鋼板をめっき原板とした銅めっき鋼板を、複数層に積層して、積層方向に荷重を付与しながら銅の融点以上1200℃以下の温度に保持し、銅が溶融した後冷却することにより、厚さ0.001〜0.2mmの銅層を介して鋼層が接合した積層体を得る工程、
    その積層体を、鋼層の硬さが350HV以上となる条件の前記焼入れ・焼戻し処理または恒温変態処理に相当するヒートパターンの熱処理に供する工程、
    を有する高強度複合金属材料の製造方法。
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