以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図10に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態における液体噴射装置としてのインクジェット式プリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)10は、略箱状をなす本体フレーム11を備えると共に、該本体フレーム11内の略中央には、ターゲットとしての用紙Pに液体としてのインクを吐出(噴射)する液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド12が配設されている。
この記録ヘッド12の下面には、用紙Pの搬送方向(図1において矢印で示すX方向)と略直交する水平方向(図1の紙面に対して直交する方向であって、図2に矢印で示すY方向)に沿った用紙Pの液体噴射領域の全幅に亘って多数のノズル(液体噴射ノズル)13の開口が形成されている。この点で、本実施形態のプリンタ10は、用紙Pの搬送方向と交差する方向に往復移動するキャリッジに記録ヘッド12が配置されるタイプのプリンタと比較して、高速印刷が可能な所謂フルラインヘッドタイプのプリンタ10として構成されている。なお、記録ヘッド12の下面のうち多数のノズル13の開口が形成された領域の面が、ノズル形成面14とされている。
また、記録ヘッド12には、それぞれ異なる色のインクを貯留する複数のインクカートリッジ(図示略)が接続されている。そして、印刷中、各インクカートリッジに貯留されたインクは、所定圧にそれぞれ調整された状態で、随時、記録ヘッド12に各別に供給されるようになっている。また、記録ヘッド12は、記録ヘッド移動機構12aが駆動することにより、記録ヘッド12のノズル形成面14と所定間隔をおいて対向するメイン搬送路28に対して接近・離間する方向(図1では、上下方向)に移動可能となっている。なお、本実施形態では、記録ヘッド12は、搬送されてきた用紙Pが上記搬送方向と略直交する方向(図2のY方向)に位置ずれしていた場合、記録ヘッド移動機構12aの駆動に基づいて、その位置ずれ量に対応できる程度に上記搬送方向と略直交する方向へ移動するようになっている。
本体フレーム11内において、記録ヘッド12の下方には、用紙Pを搬送するための用紙搬送機構15と、後述するキャッピングシート16を搬送するためのシート搬送機構17とが配設されている。また、記録ヘッド12の直下位置であって、後述するメイン搬送路28よりも下方位置には、クリーニングなどのメンテナンス時に記録ヘッド12から吐出されたインクを回収するための回収部(「廃インクタンク」ともいう。)18が配設されている。ここで、キャッピングシート16とは、プリンタ10が印刷休止状態のときに記録ヘッド12のノズル形成面14に当接してノズル13内でのインクの乾燥を抑制したり、記録ヘッド12のクリーニングを実行したりするためのシートであって、その詳細については後述する。
用紙搬送機構15は、複数枚の用紙Pを積層状態で収容する給紙トレイ21と、印刷後の用紙Pを収容する排紙トレイ22と、給紙された用紙Pを記録ヘッド12のノズル形成面14の真下(ノズル形成面14に対向する位置)を通過させて搬送するための複数本(図2では2本)の無端状の搬送ベルト23とを含んで構成されている。これら各搬送ベルト23は、図1において紙面と直交する方向(上記Y方向)に沿って並置されている。また、各搬送ベルト23は、印刷開始後に駆動される駆動ローラ(搬送ローラ)24と、この駆動ローラ24と同一高さ位置で該駆動ローラ24に従動して回転する従動ローラ(搬送ローラ)25と、駆動ローラ24と従動ローラ25との中間位置の下方に位置するテンションローラ26とによってテンションが加えられた状態でそれぞれ掛装されている。すなわち、駆動ローラ24、従動ローラ25及びテンションローラ26は、これらの3つのローラ24,25,26に各搬送ベルト23が掛装された際に、該各搬送ベルト23が三角形状をなすようにそれぞれ配置されている。
さらに、駆動ローラ24と従動ローラ25との間には、複数(本実施形態では4つ)の補助搬送ローラ27が配置されている。そして、各搬送ベルト23は、駆動ローラ24と従動ローラ25との間において各補助搬送ローラ27により下方から水平に支持されたベルト部分の上面がメイン搬送路28として構成されている。このメイン搬送路28の上方であって記録ヘッド12よりも給紙トレイ21側となる位置には、印字開始検出センサ29が設けられている。この印字開始検出センサ29は、該印字開始検出センサ29の配置位置から記録ヘッド12のノズル形成面14の真下となる印刷位置(又は対向位置)まで用紙P(又はキャッピングシート16)を搬送する際の送り量をカウントする開始ポイントを得るために使用される。
また、給紙トレイ21と各搬送ベルト23との間には、給紙トレイ21からメイン搬送路28の一端側(図1における右端側である従動ローラ25側)までの間において用紙Pを案内するための第1ガイド板31が設けられている。そして、給紙トレイ21の上部には給紙トレイ21の最上部に収容された用紙Pを取り出すためのピックアップローラ32が設けられると共に、給紙トレイ21と第1ガイド板31との接続部分には、摩擦により重畳してピックアップされた用紙Pを確実に一枚だけ送るための分離ローラ対33が設けられている。
さらに、第1ガイド板31の上方位置には、分離ローラ対33を通過してきた用紙Pを検知する紙端検出センサ34と、用紙Pを第1ガイド板31上からメイン搬送路28へ送り出す際に駆動される紙ゲートローラ対35とが設けられている。そして、ピックアップローラ32、分離ローラ対33及び紙ゲートローラ対35がそれぞれ用紙Pをメイン搬送路28側へ送り出す方向(図1において矢印で示す回転方向)に回転することで、給紙トレイ21に収容された用紙Pがメイン搬送路28上へ供給されるようになっている。
さらに、各搬送ベルト23と排紙トレイ22の間には、メイン搬送路28の他端側(図1における左端側である駆動ローラ24側)から排紙トレイ22までの間において用紙Pを案内するため、及び、キャッピングシート16を後述するシートトレイ41側へ給送するためのセレクタ36が設けられている。このセレクタ36は、用紙搬送方向の下流側となる基端部(図1では左端部)36aを支点として回転可能に支持されている。そして、図1に実線で示す水平状態(閉状態)にあるときには、メイン搬送路28と排紙トレイ22とがセレクタ36を介して接続されるようになっている。その一方、セレクタ36が図1に破線で示すように上方に傾いた状態(開状態)にあるときには、メイン搬送路28と排紙トレイ22との接続が遮断されると共に、メイン搬送路28がシートトレイ41側への搬送路(第3ガイド板46)にセレクタ36を介して接続されるようになっている。
また、セレクタ36の基端部36aと排紙トレイ22との間には、印刷を終えた用紙Pを排紙トレイ22へ排出するための排紙ローラ対37が設けられている。したがって、セレクタ36が水平状態(閉状態)にある際に、各搬送ベルト23及び排紙ローラ対37が回転することによって、印刷後の用紙Pがメイン搬送路28から排紙トレイ22に排出されるようになっている。
さらに、従動ローラ25には帯電ローラ38が互いの周面の間に各搬送ベルト23を挟み込んで回転するように対応配置されると共に、駆動ローラ24には徐電ローラ39が互いの周面の間に各搬送ベルト23を挟み込んで回転するように対応配置されている。したがって、帯電ローラ38によって各搬送ベルト23は用紙P(及びキャッピングシート16)の支持面となる表面全体がマイナス電荷に変化するため、用紙P及びキャッピングシート16が各搬送ベルト23のメイン搬送路28上に吸着保持されるようになっている。
シート搬送機構17は、複数枚(例えば5枚〜10枚程度)のキャッピングシート16を積層状態で収容するシートトレイ41と、キャッピングシート16をシートトレイ41から記録ヘッド12のノズル形成面14の真下(ノズル形成面14に対向する位置)を通過させてシートトレイ41まで搬送するための各搬送ベルト23とを含んで構成されている。すなわち、上記用紙搬送機構15の各搬送ベルト23が、シート搬送機構17の搬送ベルトとして兼用されている。
シートトレイ41は、各搬送ベルト23の下方に配置されている。そして、シートトレイ41の一端側(図1における右端側)には、シートトレイ41とメイン搬送路28の一端側(図1における右端側である従動ローラ25側)までの間においてキャッピングシート16を案内するために緩やかに湾曲する第2ガイド板42が設けられている。この第2ガイド板42は、キャッピングシート16の案内方向と交差する方向にキャッピングシート16の幅寸法よりも少し短い間隔寸法をおいて平行に配置された一対の帯状板片にて構成されている。また、シートトレイ41の一端側下部(図1において右下隅)には、シートトレイ41の最下部に収容されたキャッピングシート16を第2ガイド板42側へ取り出すためのシート給送ローラ43が設けられている。
さらに、第2ガイド板42(具体的には、一対の帯状板片間)の搬送方向側端部には、キャッピングシート16を第2ガイド板42上からメイン搬送路28へ送り出す際に駆動されるシートゲートローラ対45が設けられている。そして、シート給送ローラ43、及びシートゲートローラ対45がそれぞれキャッピングシート16をメイン搬送路28側へ送り出す方向に回転することで、シートトレイ41に収容されたキャッピングシート16がメイン搬送路28上へ供給されるようになっている。
一方、シートトレイ41の他端側(図1における左端側)には、メイン搬送路28の他端側(図1における左端側である駆動ローラ24側)からシートトレイ41の他端側(図1における左端側)までの間においてキャッピングシート16を案内するための一部湾曲形状をなす第3ガイド板46が設けられている。
この第3ガイド板46は、キャッピングシート16の案内方向と交差する方向にキャッピングシート16の幅寸法よりも少し短い間隔寸法をおいて平行に配置された一対の帯状板片にて構成されている。そして、上述したように、セレクタ36が上方に傾いた状態(図1に破線で示す状態であって、開状態)にあるときには、メイン搬送路28がセレクタ36を介して第3ガイド板46に接続されることになる。さらに、この第3ガイド板46におけるキャッピングシート16の搬送路の途中には、キャッピングシート16をシートトレイ41側へ搬送するためのシート搬送ローラ対48が設けられている。
また、第3ガイド板46のシートトレイ41側となる端部には、印刷開始後にキャッピングシート16を再びシートトレイ41へ排送するためのシート排送ローラ対49が設けられている。したがって、セレクタ36が上方に傾斜した状態(開状態)にある際に、各搬送ベルト23、シート搬送ローラ対48及びシート排送ローラ対49が回転することによって、キャッピングシート16がシートトレイ41側に排送されるようになっている。なお、本実施形態では、シートトレイ41におけるキャッピングシート16の収容位置が非対向位置に相当し、各搬送ベルト23のメイン搬送路28上における記録ヘッド12のノズル形成面14に対向する位置が対向位置に相当する。
次に、本実施形態のキャッピングシート16について図2〜図6に基づき以下説明する。
図2に示すように、キャッピングシート16は、平面視長方形形状をなすシート状部材であって、弾性材料(例えば、合成樹脂製)からなるシート本体50を備えている。このシート本体50は、キャッピングシート16が上記対向位置に配置された場合に記録ヘッド12のノズル形成面14に対する対向面50aを有している。そして、シート本体50の対向面50a上における縁部には、四角環状をなす縁側凸部51が突出形成されている。なお、シート搬送機構17においてキャッピングシート16の搬送時にシート本体50の対向面50a側に位置する各ローラ(シート搬送ローラ対48など)は、それらの周面がシート本体50における縁側凸部51に当接する。
また、シート本体50には、第1キャップ部52及び第2キャップ部53が、縁側凸部51に包囲された前記対向面50a上にキャッピングシート16の搬送方向一方側(図2では左側)から他方側(図2では右側)へ間隔をおいて交互に位置するように形成されている。なお、第1キャップ部52は、記録ヘッド12のクリーニングを実行するために内部容積が可変とされた吸引機能付きのキャップ部であり、第2キャップ部53は、記録ヘッド12のノズル形成面14に当接した場合に各ノズル13内の乾燥を抑制可能(即ち、ノズル形成面14をキャッピングすることが可能)とされた吸引機能無しの別キャップ部である。
第2キャップ部53は、図2及び図3に示すように、四角環状をなす放置用凸部54を備えると共に、該放置用凸部54は、シート本体50の対向面50a側に配置されている。この放置用凸部54は、その内側輪郭形状が記録ヘッド12のノズル形成面14における各ノズル13の形成部位よりも大きくなるように形成されている。そして、記録ヘッド12が、該記録ヘッド12の直下位置に配置された第2キャップ部53に向けて移動した場合には、該第2キャップ部53の図3における上端が記録ヘッド12のノズル形成面14(すなわち、各ノズル13の形成部位よりも外側の面)に当接するようになっている。すなわち、第2キャップ部53は、記録ヘッド12のノズル形成面14との間に密封空間を形成して該ノズル形成面14をキャッピングするようになっている。なお、放置用凸部54は、その高さ(図3における上下方向の高さ)が縁側凸部51の高さよりも低くなるように形成されている。
また、シート本体50において第2キャップ部53に対応する部位には、放置用凸部54によって囲まれた空間内と、シート本体50の非対向面側(図3では下面側)の空間とを常に連通させるための連通部としての大気開放孔55が形成されている。この大気開放孔55は、図3の左右方向における略中心部位であって、各搬送ベルト23に図3における左右方向から挟まれるような位置に形成されている。
第1キャップ部52は、図2及び図4に示すように、略矩形筒状をなすと共に、その内部の容積が可変可能な容積可変部56を備えている。この容積可変部56は、シート本体50の対向面50a側に配置されている。また、容積可変部56は、弾性材料からなるため、その上端部(図4における上端部であって、ノズル形成面14側に開口する開口端部)56aが記録ヘッド12によって下方に向けて押し下げられていない場合、その高さ(図4における上下方向の高さ)が内部の容積を増大させる方向へ付勢されている。したがって、本実施形態では、容積可変部56の側壁により、該容積可変部56の上端部56aを記録ヘッド12のノズル形成面14に向けて付勢する付勢手段が構成されている。
さらに、容積可変部56は、その上端部56aの開口形状が記録ヘッド12のノズル形成面14における各ノズル13の形成部位よりも大きくなるように形成されている。そして、記録ヘッド移動機構12aの駆動によって、記録ヘッド12が、該記録ヘッド12の直下位置に配置された容積可変部56(第1キャップ部52)に向けて移動した場合には、容積可変部56の上端部56aが記録ヘッド12のノズル形成面14(すなわち、各ノズル13の形成部位よりも外側の面)に弾性的に当接するようになっている。すなわち、容積可変部56は、記録ヘッド12のノズル形成面14との間に密封空間を形成するようになっている。したがって、本実施形態では、記録ヘッド移動機構12aが、記録ヘッド12及びキャッピングシート16の少なくとも一方を、ノズル形成面14と対向面50aとが接離する方向に相対移動させる相対移動機構として機能するようになっている。
容積可変部56は、図5に示すように、その上端部56aが記録ヘッド12によって上方から下方に向けて変位させられた場合、容積可変部56が弾性変形することにより、その内部の容積が小さくなるようになっている。その一方、容積可変部56の内部容積が小さくなった状態から記録ヘッド12が上方に移動する際には、容積可変部56の弾性復帰力に基づいて、容積可変部56の上端部56aがノズル形成面14に当接した状態で上方に変位する。このように、容積可変部56の上端部56aが記録ヘッド12のノズル形成面14に追随して上方に変位することにより、容積可変部56の内部容積が大きくなるようになっている。
容積可変部56の外壁において、上記Y方向に沿う両側部のうち一方側(図4における左側)の側部には、一方側に向けて突出した係止片57が形成されると共に、他方側(図4における右側)の側部には、他方側に向けて突出した係止片57が形成されている。また、シート本体50の縁側凸部51においてX方向に沿う両側部(図4における左側部及び右側部)のうち、容積可変部56(第1キャップ部52)とY方向において対応する部位の上端部には、内側に向けて突出する係止部58がそれぞれ形成されている。
そして、容積可変部56の各係止片57は、容積可変部56の内部容積が小さい状態(図5に示す状態)から内部容積が徐々に大きくなった場合、該各係止片57が各別に対応する係止部58の下面側に当接するようになっている。その結果、容積可変部56の内部容積が大きくなることが規制される。
すなわち、容積可変部56の上端部56aが記録ヘッド12によって下方に変位させられた状態で、記録ヘッド12が上昇した場合、容積可変部56の上端部56aは、記録ヘッド12のノズル形成面14に追随して上方に向けて変位する。しかし、容積可変部56の上端部56aの高さ位置(記録ヘッド12の離間方向における位置)が予め定められた所定位置まで達した場合には、容積可変部56の各係止片57が各係止部58によって係止される結果、容積可変部56の上端部56aがさらに上方に変位することが規制される。
なお、本実施形態では、容積可変部56の各係止片57が各係止部58によって係止された場合には、容積可変部56の上端部56aが最上点位置に位置することになると共に、容積可変部56内の内部容積が最も大きくなるように構成されている。そして、この状態においても、容積可変部56の上端部56aが縁側凸部51の上端よりも低い位置に位置するように、容積可変部56における各係止片57及びシート本体50の縁側凸部51における各係止部58の相対的な位置関係が設定されている。
また、シート本体50において第1キャップ部52に対応する部位には、容積可変部56内の空間と、シート本体50の非対向面側(図4では下面側)の空間とを連通させるための連通孔としての排出用孔59が複数(第1キャップ部52毎に3つずつ)形成されている。これら各排出用孔59は、X方向とは略直交する方向(図4における左右方向であって、Y方向)に沿うと共に、各搬送ベルト23に図4における左右方向から挟まれるような位置、つまり各搬送ベルト23間となる位置にそれぞれ形成されている。
さらに、シート本体50の非対向面側には、各排出用孔59を各別に閉塞するための複数(第1キャップ部52毎に3つずつ)の常閉弁60が設けられている。これら各常閉弁60は、常には閉じ状態となっており、容積可変部56内とシート本体50の非対向面側の空間とを非連通状態にしている。一方、容積可変部56は、図5に示すように、その上端部56aが記録ヘッド12によって下方側へ変位させられた場合、その内部の容積が小さくなると共に、その内部の圧力が外部(容積可変部56外)の圧力よりも大きくなる。この場合、各常閉弁60は、図4にて矢印で示すように開弁動作し、図5に示すように、各排出用孔59がそれぞれ開放される。その結果、容積可変部56内とシート本体50の非対向面側の空間とが各排出用孔59を介して連通状態となる。
なお、このとき、第1キャップ部52内にインクが収容されていれば、各排出用孔59から第1キャップ部52外へインクが排出され、一方、第1キャップ部52内にインクが収容されていなければ、容積可変部56の内部容積が変化した分の空気が各排出用孔59から排出される。こうした排出用孔59を介したインク又は空気の排出により、容積可変部56の内部容積が可変した場合には、第1キャップ部52内からのインクの排出が可能であるとともに、記録ヘッド12のノズル13のメニスカスが圧力変化によって壊れることを抑制可能となる。そして、この場合において常閉弁60を閉弁方向へ付勢する付勢力は、ノズル13のメニスカスを壊してしまう圧力変化よりも小さい圧力変化で常閉弁60を開弁させる程度の付勢力に設定される。
なお、本実施形態の記録ヘッド12は、上述したように、記録ヘッド移動機構12aの駆動に基づき、上下方向だけではなく、上記Y方向にも移動可能とされている。そして、記録ヘッド12のノズル形成面14に容積可変部56の上端部56aが当接して内部容積を縮小した状態で、記録ヘッド12を反Y方向(図5における左方向)に移動させた場合に、図6に示すように容積可変部56の上端部56aの一部がノズル形成面14から外れるようになっている。そして、このように容積可変部56の上端部56aの一部がノズル形成面14から外れることで、容積可変部56内は、該容積可変部56の上端部56a側を介して外部(容積可変部56外)と連通するようになっている。すなわち、記録ヘッド12のノズル形成面14と第1キャップ部52の容積可変部56とが当接することにより該容積可変部56内に密封空間が形成された状態で、記録ヘッド移動機構12aの駆動によって記録ヘッド12が反Y方向に移動することにより、容積可変部56内の密封状態が解消されるようになっている。したがって、本実施形態では、記録ヘッド移動機構12aが、密封状態解消機構としても機能するようになっている。
次に、上記プリンタ10の電気的構成について図7に基づき以下説明する。
図7に示すように、プリンタ10は、制御手段としての制御部70を備えている。そして、この制御部70は、入力側インターフェース(図示略)と、出力側インターフェース(図示略)と、CPU71、ROM72、RAM73及びタイマ74などを備えたデジタルコンピュータと、各装置を駆動させるための駆動回路(図示略)とを主体として構成されている。
入力側インターフェースには、紙端検出センサ34及び印字開始検出センサ29が電気的に接続されている。また、出力側インターフェースには、記録ヘッド移動機構12a、ピックアップローラ32、分離ローラ対33、紙ゲートローラ対35、駆動ローラ24、排紙ローラ対37、シート給送ローラ43、シートゲートローラ対45、シート搬送ローラ対48、シート排送ローラ対49及びセレクタ36がそれぞれ電気的に接続されている。そして、制御部70は、各種センサ34,29からの検出信号などに基づいて各機構(駆動ローラ24等)を各別に制御するようになっている。
また、デジタルコンピュータにおいて、ROM72には、各機構(駆動ローラ24等)を制御するための制御プログラムなどが記憶されている。RAM73には、プリンタ10の駆動中に適宜書き換えられる各種の情報(各種センサ34,29からの入力信号の大きさなど)が記憶されるようになっている。また、タイマ74は、時間(経過時間など)の計測を行うようになっている。
以上説明したプリンタ10では、セレクタ36の切り替えによって、印刷時には給紙トレイ21から排紙トレイ22までが第1ガイド板31及びメイン搬送路28を介して接続されてなる用紙搬送路が形成される。また、キャッピングシート16の搬送時には、シートトレイ41の一端側から他端側までが第2ガイド板42とメイン搬送路28と第3ガイド板46とを介して接続されてなるシート搬送路が形成される。
したがって、セレクタ36が図1において実線で示す水平状態(閉状態)であるときには、給紙トレイ21から取り出された用紙Pが第1ガイド板31を介してメイン搬送路28へ搬送される。このとき、各搬送ベルト23は帯電されているため、用紙Pは各搬送ベルト23上に吸着保持される。そして、用紙Pが記録ヘッド12のノズル形成面14と対向する位置まで搬送された時点で印刷(インクの吐出)が実行される。印刷を終えた用紙Pは、そのままメイン搬送路28上を搬送され、セレクタ36を介して排紙トレイ22に排出されるようになっている。
一方、シートトレイ41から取り出されたキャッピングシート16は第2ガイド板42を介してメイン搬送路28へ搬送される。このとき、上記と同様に、各搬送ベルト23は帯電されているため、キャッピングシート16は各搬送ベルト23上に吸着保持される。そして、図1において破線で示すように、キャッピングシート16が記録ヘッド12のノズル形成面14と対向する対向位置まで搬送された時点でメンテナンス動作が実行される。具体的には、キャッピングシート16の第1キャップ部52が記録ヘッド12の直下位置に配置された場合には、記録ヘッド12のクリーニングが実行される。また、キャッピングシート16の第2キャップ部53が記録ヘッド12の直下位置に配置された場合には、記録ヘッド12のノズル形成面14のキャッピングが実行される。
また、再び、印刷が開始された際であって、セレクタ36が図1において破線で示す傾斜状態(開状態)であるときには、キャッピングシート16は、メイン搬送路28上を搬送され、セレクタ36を介して第3ガイド板46に搬送される。そして、シート搬送ローラ対48及びシート排送ローラ対49を介して、再び、シートトレイ41に回収されるようになっている。
次に、本実施形態の制御部70が実行する制御処理ルーチンのうち、メンテナンス実行処理ルーチンについて図8〜図10に基づくフローチャートに基づき以下説明する。なお、このメンテナンス実行処理ルーチンは、所定周期(例えば、7日)毎に実行される処理ルーチンであって、いわゆるタイマクリーニングを実行させるための処理ルーチンである。
さて、メンテナンス実行処理ルーチンにおいて、制御部70は、外部から印刷命令が入力されたか否かを判定する(ステップS10)。この判定結果が肯定判定である場合、制御部70は、用紙Pに対して印刷を実行するためにメンテナンス実行処理ルーチンを終了する。一方、ステップS10の判定結果が否定判定である場合、制御部70は、セレクタ36を開状態(図1にて破線で示す状態)にし(ステップS11)、駆動ローラ24、シート給送ローラ43及びシートゲートローラ対45を回転させる(ステップS12)。
続いて、制御部70は、キャッピングシート16の第1キャップ部52(容積可変部56)が記録ヘッド12の直下位置に配置されたか否かを判定する(ステップS13)。具体的には、制御部70は、駆動ローラ24、シート給送ローラ43及びシートゲートローラ対45の回転に基づき、シートトレイ41から搬送されたキャッピングシート16が印字開始検出センサ29によって検知されてからの経過時間をタイマ74から読み出し、該読み出した経過時間(以下、「第1経過時間」という。)が予め定めた第1所定時間以上になったか否かを判定する。この第1所定時間は、印字開始検出センサ29からの信号に基づきキャッピングシート16の通過が検知されてから第1キャップ部52が記録ヘッド12の直下位置まで移動するのにかかる時間であって、予め実験やシミュレーションなどによって設定される。なお、印字開始検出センサ29の検知時点からの経過時間による制御ではなく、印字開始検出センサ29の検知時点からのローラ(例えば駆動ローラ24)の回転数が予め定めた回転数になったか否かを判定することにより制御してもよい。
そして、ステップS13の判定結果が否定判定(第1経過時間<第1所定時間)である場合、制御部70は、第1キャップ部52がまだ記録ヘッド12の直下位置まで移動してきていないものと判断し、ステップS13の判定結果が肯定判定になるまで該ステップS13の判定処理を繰り返し実行する。一方、ステップS13の判定結果が肯定判定(第1経過時間≧第1所定時間)である場合、制御部70は、第1キャップ部52が記録ヘッド12の直下位置まで移動したものと判断し、駆動ローラ24、シート給送ローラ43及びシートゲートローラ対45の回転を停止させる(ステップS14)。
続いて、制御部70は、記録ヘッド12のクリーニング処理(図9にて詳述する。)を実行する(ステップS15)。そして、クリーニング処理を終了させた後、制御部70は、記録ヘッド12のノズル形成面14のキャッピング処理(図10にて詳述する。)を実行し(ステップS16)、その後、メンテナンス実行処理ルーチンを終了する。
なお、本実施形態においては、プリンタ10による用紙Pに対する印刷が終了した後、記録ヘッド12のノズル形成面14のキャッピングが行われる。すなわち、制御部70は、用紙Pに対する印刷が終了した場合、上記のステップS11〜S14と同一処理を実行し、その後、図10にて詳述するキャッピング処理(ステップS16と同一処理)を実行する。
次に、上述したステップS15のクリーニング処理(クリーニング処理ルーチン)について、図9に基づき以下説明する。
さて、クリーニング処理ルーチンにおいて、制御部70は、記録ヘッド移動機構12aを駆動させることにより、記録ヘッド12を下降させる(ステップS20)。すなわち、制御部70は、容積可変部56の上端部56aを記録ヘッド12によって下方に変位させる。続いて、記録ヘッド12のノズル形成面14が最下点位置(図5に示す位置)に到達した場合、制御部70は、記録ヘッド移動機構12aの駆動を反転させることにより、記録ヘッド12を上昇させる(ステップS21)。
そして、記録ヘッド12のノズル形成面14が容積可変部56の上端部56aとの当接状態を維持したままでの最上点位置(各係止片57が各係止部58に係止する位置)に到達した場合、制御部70は、記録ヘッド移動機構12aの駆動を反転させる。そして、この時点から記録ヘッド移動機構12aの反転駆動させることにより、記録ヘッド12を再び下降させる(ステップS22)。続いて、記録ヘッド12のノズル形成面14を容積可変部56の上端部56aとの当接状態を維持したままでの最下点位置まで移動させた後、制御部70は、記録ヘッド移動機構12aの駆動により、記録ヘッド12を上記反Y方向に移動させる(ステップS23)。
そして、記録ヘッド12が図6に示す位置まで上記反Y方向に移動した後、制御部70は、記録ヘッド移動機構12aの駆動により、記録ヘッド12を再び上昇させる(ステップS24)。なお、このとき、記録ヘッド12は容積可変部56内の密封状態が解消された状態で上昇し、その上昇に追随して容積可変部56の上端部56aもノズル形成面14に当接したままで上昇する。そして、その上昇途中において、容積可変部56の上端部56aは各係止片57がシート本体50側の各係止部58に係止することにより、それ以上の上昇が規制される。一方、記録ヘッド12は、容積可変部56の上端部56aからノズル形成面14が離間した状態での最上点位置(図4に示す位置)まで上昇する。
続いて、記録ヘッド12のノズル形成面14が最上点位置(図4に示す位置)に到達した場合、制御部70は、記録ヘッド移動機構12aの駆動により、ステップS23の処理にて記録ヘッド12を上記反Y方向に移動させた分だけ、該記録ヘッド12を上記Y方向(図5における右方向)に移動させる(ステップS25)。その後、制御部70は、クリーニング処理ルーチンを終了する。
次に、上述したステップS16のキャッピング処理(キャッピング処理ルーチン)について、図10に基づき以下説明する。
さて、キャッピング処理ルーチンにおいて、制御部70は、駆動ローラ24を回転させることにより、メイン搬送路28上にてキャッピングシート16を移動させる(ステップS30)。続いて、制御部70は、キャッピングシート16の第2キャップ部53が記録ヘッド12の直下位置に配置されたか否かを判定する(ステップS31)。具体的には、制御部70は、駆動ローラ24の回転に基づき、キャッピングシート16の移動が開始されてからの経過時間をタイマ74から読み出し、該読み出した経過時間(以下、「第2経過時間」という。)が予め定めた第2所定時間以上になったか否かを判定する。この第2所定時間は、記録ヘッド12の直下位置に第1キャップ部52が位置する状態から駆動ローラ24の回転によって記録ヘッド12の直下位置に第2キャップ部53が位置する状態になるまでにかかる時間であって、予め実験やシミュレーションなどによって設定される。
そして、ステップS31の判定結果が否定判定(第2経過時間<第2所定時間)である場合、制御部70は、記録ヘッド12の直下位置に第2キャップ部53がまだ配置されていないものと判断し、ステップS31の判定結果が肯定判定になるまで該ステップS31の判定結果を繰り返し実行する。一方、ステップS31の判定結果が肯定判定(第2経過時間≧第2所定時間)である場合、制御部70は、駆動ローラ24の回転を停止させる(ステップS32)。
続いて、制御部70は、記録ヘッド移動機構12aを駆動させることにより、記録ヘッド12を下降させる(ステップS33)。そして、制御部70は、記録ヘッド12のノズル形成面14が第2キャップ部53に当接して該第2キャップ部53内に密封空間が形成されるまで記録ヘッド12を下降させた後、記録ヘッド移動機構12aの駆動を停止させ、キャッピング処理ルーチンを終了する。
次に、本実施形態のプリンタ10の作用のうち、キャッピングシート16を用いてメンテナンス処理を実行する際の作用を中心に以下説明する。なお、説明の前提として、記録ヘッド12のクリーニングを実行した後に、記録ヘッド12のノズル形成面14を第1キャップ部52にてキャッピングするものとする。
さて、記録ヘッド12のクリーニングを実行する際には、まず始めに、セレクタ36を開状態(図1にて破線で示した状態)にすることにより、第2ガイド板42とメイン搬送路28と第3ガイド板46とからなるシート搬送路が形成される。そして次に、駆動ローラ24、シート給送ローラ43及びシートゲートローラ対45が駆動を開始する。すると、非対向位置であるシートトレイ41に積層状態で収容された各キャッピングシート16のうち最も下側のキャッピングシート16がシートトレイ41から取り出され、このキャッピングシート16は、第2ガイド板42を介してメイン搬送路28へ搬送される。
このとき、各搬送ベルト23は、それらの支持面が帯電ローラ38によって帯電した状態になるため、キャッピングシート16は各搬送ベルト23上に吸着保持される。そして、このキャッピングシート16の第1キャップ部52が記録ヘッド12の直下位置に配置されるまで、キャッピングシート16が各搬送ベルト23上(メイン搬送路28上)を上記X方向に向けて搬送されると、駆動ローラ24、シート給送ローラ43及びシートゲートローラ対45の駆動が停止する。
そして、記録ヘッド12のクリーニングが実行される。すなわち、記録ヘッド移動機構12aの駆動により、記録ヘッド12が下降する結果、該記録ヘッド12のノズル形成面14が容積可変部56の上端部56aに当接する。このとき、第1キャップ部52(容積可変部56)は、記録ヘッド12のノズル形成面14との間に密封空間を形成する。そして、記録ヘッド12がさらに下降すると、容積可変部56の上端部56aが下方に変位することにより、該容積可変部56の内部容積が減少するため、容積可変部56内の空間(上記密封空間)の圧力が外部(第1キャップ部52外)に比して高くなる。その結果、各常閉弁60が開弁動作することにより、容積可変部56内の空間と外部とが各排出用孔59を介して連通する。
そして、記録ヘッド12のノズル形成面14が最下点位置まで移動すると、記録ヘッド12の下降が停止すると共に、容積可変部56内の空間の圧力上昇が停止する。そのため、各常閉弁60がそれぞれ閉弁動作し、容積可変部56内の空間と外部とが非連通状態になる。すなわち、容積可変部56内の圧力が、外部との圧力と略同一圧力となる。すると、今度は、記録ヘッド移動機構12aの駆動により、記録ヘッド12が上昇し始める。このとき、容積可変部56の上端部56aは、記録ヘッド12のノズル形成面14との当接状態を維持した状態で、容積可変部56の弾性復帰力に基づき、該ノズル形成面14に追随して上方に向けて変位する。
すなわち、容積可変部56とノズル形成面14によって形成された密封空間が維持された状態で、容積可変部56内の内部容積が徐々に増大する。そのため、この容積可変部56内の圧力が外部(第1キャップ部52外)の圧力よりも低くなり負圧状態となる結果、記録ヘッド12から各ノズル13を介してインクが吸引され、該吸引されたインクは、容積可変部56内に吐出される。そして、容積可変部56の上端部56aの高さ位置が上記所定位置まで到達した場合、すなわち容積可変部56の各係止片57が縁側凸部51の各係止部58に係止する高さ位置まで記録ヘッド12が上昇した場合、記録ヘッド移動機構12aが反転駆動され、記録ヘッド12が再び下降させられる。
そして、この記録ヘッド移動機構12aの反転駆動により、記録ヘッド12が該記録ヘッド12のノズル形成面14と容積可変部56の上端部56aとの当接状態を維持したまま再び下降すると、この記録ヘッド12のさらなる下降によって各常閉弁60が開弁動作し、容積可変部56内に貯留されたインクが各排出用孔59を介して排出される。そして、容積可変部56内に貯留されたインクは、対向位置に配置されたキャッピングシート16の下方に配置された回収部18内に回収される。
その後、記録ヘッド12が最下点位置まで移動した場合、記録ヘッド12の下降が停止すると共に、記録ヘッド12は、記録ヘッド移動機構12aの駆動により、反Y方向(対向面50aとノズル形成面14とが接離する方向と交差する方向)に移動する。すなわち、容積可変部56の上端部56aとノズル形成面14とを摺接させた状態で、記録ヘッド12が反Y方向に移動する結果、容積可変部56の上端側が開口することにより、容積可変部56内と外部とが連通状態になる。すなわち、容積可変部56内の密封状態が解消される。
そして、記録ヘッド12は、記録ヘッド移動機構12aの駆動により、図4に示す最上点位置まで上昇する。このとき、容積可変部56内は外部と連通状態にあるため、記録ヘッド12の上昇に起因して、容積可変部56内の圧力は低下することがない。そのため、容積可変部56内の圧力低下によって、記録ヘッド12に対して吸引作用が作用することがない。すなわち、記録ヘッド12からインクが不必要に吐出されることはない。その後、最上点位置まで移動した記録ヘッド12は、Y方向に移動し、元の所定位置に戻る。すなわち、記録ヘッド12のクリーニング処理が終了する。
そして次に、記録ヘッド12のクリーニングが終了すると、駆動ローラ24が回転することにより、キャッピングシート16がメイン搬送路28上を搬送される。そして、キャッピングシート16の第2キャップ部53が記録ヘッド12の直下位置に配置されると、駆動ローラ24の回転が停止され、記録ヘッド12のノズル形成面14のキャッピングが実行される。
すなわち、記録ヘッド移動機構12aの駆動により、記録ヘッド12が下降する結果、該記録ヘッド12のノズル形成面14が放置用凸部54の上端に当接する。このとき、第2キャップ部53は、記録ヘッド12のノズル形成面14との間に密封空間を形成して該ノズル形成面14をキャッピングする。
なお、本実施形態の第2キャップ部53には、常に開放された大気開放孔55が形成されている。そして、この大気開放孔55の開口寸法は、記録ヘッド12のノズル13からインクが蒸発しない程度に小さく、かつ、外気(第2キャップ部53外)の温度変化に起因した第2キャップ部53内の空間(上記密封空間)内の圧力変化を逃がす程度の大きさに設定されている。したがって、大気開放孔55が形成されていない場合とは異なり、第2キャップ部53内の空間の圧力変化によって、記録ヘッド12の各ノズル13内のメニスカスが破損してしまうことが抑制されるとともに、ノズル13内のインクが増粘することが抑制される。
そして、その後、印刷命令が制御部70に入力されると、記録ヘッド移動機構12aの駆動により、記録ヘッド12が上昇して第2キャップ部53内の密封状態が解消される。そして次に、駆動ローラ24、シート搬送ローラ対48及びシート排送ローラ対49の回転が開始される。すると、メイン搬送路28上のキャッピングシート16は、対向位置から上記X方向に搬送され、メイン搬送路28の他端側(図1における左端側)から第3ガイド板46に移送される。そして、第3ガイド板46上のキャッピングシート16は、シートトレイ41内において、該シートトレイ41内の積層状態にある各キャッピングシート16上に載置された状態で収容される。
その後、セレクタ36が閉状態(図1にて実線で示した状態)になり、給紙トレイ21から排紙トレイ22までが第1ガイド板31及びメイン搬送路28を介して接続されてなる用紙搬送路が形成される。そして、給紙トレイ21から用紙Pがメイン搬送路28における記録ヘッド12の直下位置に搬送されると、記録ヘッド12からインクが吐出されることにより、印刷が開始される。
したがって、本実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
(1)対向位置に配置されたキャッピングシート16におけるシート本体50の対向面50aと記録ヘッド(液体噴射ヘッド)12のノズル形成面14とを相対的に接近させた場合、シート本体50に設けられた第1キャップ部(吸引機能付きのキャップ部)52は、ノズル形成面14に当接して該ノズル形成面14との間に密封空間を形成する。また、この状態を維持しつつ第1キャップ部52の容積可変部56の内部容積を減少させた場合、容積可変部56内の圧力が外部(第1キャップ部52外)に比して高くなる結果、各常閉弁60が開弁動作する。この際に、容積可変部56内に記録ヘッド12から吐出(噴射)されたインク(液体)が貯留されていた場合には、該インクが各排出用孔(各連通孔)59を介して容積可変部56外に排出される。また、第1キャップ部52とノズル形成面14との当接状態を維持した状態で、容積可変部56の内部容積を増大させた場合、容積可変部56内の圧力が外部に比して低くなり負圧状態となる結果、記録ヘッド12からインクが吸引される。すなわち、記録ヘッド12のクリーニングが実行される。したがって、本実施形態のキャッピングシート16は、記録ヘッド12のノズル形成面14をキャッピングする際に使用できると共に、記録ヘッド12のクリーニングにも使用することができる。
(2)ノズル形成面14に第1キャップ部(吸引機能付きのキャップ部)52の容積可変部56が当接された状態にある記録ヘッド(液体噴射ヘッド)12を上方に移動させる初期段階において、伸張方向へ弾性力を有する容積可変部56は、その上端部56aが記録ヘッド12のノズル形成面14に追随して上方に変位する。ところが、容積可変部56の上端部56aは、その高さ位置(上下方向における位置)が所定位置まで上昇した場合、容積可変部56の各係止片57が縁側凸部51の各係止部58に係止されることにより、ノズル形成面14に追随して変位することが規制される。その結果、容積可変部56は、クリーニング時にはノズル形成面14に確実に当接できる一方、非クリーニング時には、その上端部56aがシート本体50の縁側凸部51よりも上方へ大きく突出することがなくなり、シート本体50の搬送時に引っ掛かったり、シート本体50の収納時に嵩張ったりすることが抑制される。
(3)キャッピングシート16には、第2キャップ部(吸引機能無しの別キャップ部)53が第1キャップ部(吸引機能付きのキャップ部)52とは別に設けられている。そのため、記録ヘッド(液体噴射ヘッド)12のクリーニングを行う必要がなく、ノズル形成面14のキャッピングのみを実行したい場合には、第2キャップ部53をノズル形成面14に当接させることにより該ノズル形成面14をキャッピングすることができる。その一方、記録ヘッド12のクリーニングを行う場合には、第1キャップ部52が使用されることになる。すなわち、必要に応じて、第1キャップ部52と第2キャップ部53とを使い分けることができるため、キャッピングシート16(特に第1キャップ部52)の劣化を抑制できる。
(4)第2キャップ部(吸引機能無しの別キャップ部)53にて記録ヘッド(液体噴射ヘッド)12のノズル形成面14をキャッピングしている間に、例えばキャッピングシート16が設置された雰囲気の温度が変化した場合、第2キャップ部53の放置用凸部54内(密封空間内)の圧力は、雰囲気温度の変化に伴い変化するおそれがある。しかし、放置用凸部54内は、大気開放孔(連通部)55を介して外部(第2キャップ部53外)と連通しているため、その内部の圧力の変化が抑制される。したがって、大気開放孔55が形成されていない場合とは異なり、記録ヘッド12の各ノズル(液体噴射ノズル)13内のメニスカスが破損してしまうことを抑制できる。
(5)また、本実施形態では、第1キャップ部52の容積可変部56、及び第2キャップ部53の放置用凸部54は、それぞれの上下方向における高さがシート本体50の縁部に形成された縁側凸部51の上下方向における高さよりも低くなるようにそれぞれ形成されている。そのため、シートトレイ41にて複数のキャッピングシート16を積層状態で収容している際などに、キャッピングシート16に設けられた容積可変部56や放置用凸部54が他のキャッピングシート16などに不用意に接触してしまうことを抑制できる。すなわち、キャッピングシート16に設けられた容積可変部56や放置用凸部54が破損してしまうことを抑制できる。また、キャッピングシート16を搬送する際にシート本体50の対向面50a側に位置する各ローラ(シート搬送ローラ対48など)は、それらの周面がシート本体50における縁側凸部51にしか当接せず、各キャップ部52,53とは接触しないので、各ローラの周面がインクで汚染することを抑制できる。
(6)シート搬送機構17と記録ヘッド移動機構(相対移動機構)12aとを備えたプリンタ(液体噴射装置)10において吸引機能付きの第1キャップ部52を備えたキャッピングシート16を使用することにより、記録ヘッド(液体噴射ヘッド)12のクリーニングを容易に実行することができる。また、例えば吸引ポンプなどを有するクリーニング機構を設ける必要がないため、プリンタ10自体の大型化を抑制できる。
(7)第1キャップ部(吸引機能付きのキャップ部)52の容積可変部56を記録ヘッド(液体噴射ヘッド)12のノズル形成面14に当接させた状態を維持しつつ記録ヘッド12を上下方向に移動させることにより、記録ヘッド12からのインクの吐出、及び第1キャップ部52から該第1キャップ部52外へのインクの排出が実行される。すなわち、記録ヘッド12のクリーニングが実行される。したがって、キャッピングシート16を使用して記録ヘッド12のクリーニングを容易に実行することができる。
(8)また、記録ヘッド12からの容積可変部56内へのインクの吐出に連続して該容積可変部56からのインクの排出が実行されるため、容積可変部56内にインクが貯留された状態でキャッピングシート16が対向位置からシートトレイ41に向けて移動することが回避される。そのため、容積可変部56内にインクが貯留された状態でキャッピングシート16が移動する場合とは異なり、移動中のキャッピングシート16の容積可変部56内のインクが該容積可変部56から溢出してプリンタ10内がインクで汚れてしまうことを抑制できる。
(9)第1キャップ部(吸引機能付きのキャップ部)52の容積可変部56と記録ヘッド(液体噴射ヘッド)12のノズル形成面14とが当接することにより容積可変部56内に密封空間が形成されている場合には、容積可変部56内の密封状態が記録ヘッド移動機構(密封状態解消機構)12aによって解消される。その後、記録ヘッド移動機構(相対移動機構)12aによってキャッピングシート16におけるシート本体50の対向面50aと記録ヘッド12のノズル形成面14とが離間した状態になる。そのため、キャッピングシート16から記録ヘッド12を離間させる際に、容積可変部56内の密封状態が既に解消されているため、第1キャップ部(吸引機能付きのキャップ部)52による吸引作用が不用意に記録ヘッド12に作用してしまうことを抑制できる。すなわち、記録ヘッド12のクリーニングが不用意に実行されることを抑制できる。
(10)記録ヘッド(液体噴射ヘッド)12を、第1キャップ部(吸引機能付きのキャップ部)52における容積可変部56の上端部56aとノズル形成面14とを摺接させた状態で、反Y方向(対向面50aとノズル形成面14とが接離する方向と交差する方向)に移動させることにより、第1キャップ部52の容積可変部56内の密封状態が解消される。すなわち、各常閉弁60を強制的に開弁動作させるための機構を別途設けた場合とは異なり、容易に容積可変部56内の密封状態を解消することができる。
(11)キャッピングシート16が対向位置に配置された場合、該キャッピングシート16において各排出用孔(連通孔)59が形成された部位は、各搬送ベルト23に当接していない。そのため、各常閉弁60が開弁動作したことに起因して、第1キャップ部(吸引機能付きのキャップ部)52の容積可変部56内から各排出用孔59を介してインク(液体)が第1キャップ部52外に排出された際に、該インクが各搬送ベルト23に付着してしまうことを抑制できる。
(12)所謂、フルラインタイプの記録ヘッド(液体噴射ヘッド)12は一般に大型であるため、かかる大型の記録ヘッド12を非印刷領域に配置されたキャップ装置のところまで移動させてメンテナンス動作(キャッピング動作及びクリーニング動作)を行うことが困難である。この点、本実施形態では、こうしたプリンタ(液体噴射装置)10において、シート搬送機構17によってキャッピングシート16を記録ヘッド12に対する対向位置まで搬送することで容易にメンテナンス動作を行うことができる。
なお、実施形態は以下のような別の実施形態(別例)に変更してもよい。
・上記実施形態において、シート搬送機構17は、2本以外の複数(例えば4本)の搬送ベルト23を備えた構成であってもよい。この場合においても、各搬送ベルト23は、対向位置に配置されたキャッピングシート16における各排出用孔59の非形成位置に当接するように配置されることが望ましい。
・上記実施形態において、密封状態解消機構は、記録ヘッド12及びキャッピングシート16を、対向面50aとノズル形成面14とが接離する方向と交差する方向に相対移動させることができるのであれば、対向位置に配置されたキャッピングシート16をX方向に沿って移動させることができるシート搬送機構17であってもよい。このように構成した場合においても、第1キャップ部52の容積可変部56と記録ヘッド12のノズル形成面14とを当接させることにより容積可変部56内に密封空間が形成された状態であっても、シート搬送機構17を駆動させることにより、容積可変部56内の密封状態を解消させることができる。
・また、密封状態解消機構は、シート搬送機構17全体をY方向及び反Y方向に移動させる駆動機構であってもよい。
・さらに、密封状態解消機構は、第1キャップ部52の容積可変部56と記録ヘッド12のノズル形成面14とが当接することにより容積可変部56内に密封空間が形成された状態で、各常閉弁60のうち少なくとも一つを強制的に開弁動作させるようなものであってもよい。
・上記実施形態において、相対移動機構は、対向位置に配置されたキャッピングシート16におけるシート本体50の対向面50aと記録ヘッド12のノズル形成面14とを相対的に接離する方向へ移動させることができるのであれば、シート搬送機構17を上下方向に移動させることができる装置であってもよい。また、相対移動機構は、シート搬送機構17を上下方向に移動させることができる装置と、記録ヘッド移動機構12aとから構成されたものであってもよい。
・上記実施形態において、記録ヘッド12のクリーニングを実行する場合には、記録ヘッド12の上下方向への移動(往復移動)を複数回(例えば3回など2回以上)繰り返すようにしてもよい。
・上記実施形態において、記録ヘッド12のクリーニングは、プリンタに設けられた図示しない操作ボタンが操作された際にも実行されるようにしてもよい。
・上記実施形態において、記録ヘッド12には、図11に示すように、該記録ヘッド12を保護するためにヘッドカバー80が取り付けられてもよい。このように構成すると、記録ヘッド12を反Y方向に移動させることにより、第1キャップ部52の容積可変部56と記録ヘッド12のノズル形成面14とが当接した際の容積可変部56内の密封状態を解消させる場合、ヘッドカバー80が第1キャップ部52の容積可変部56の上端部56aを撓ませることができ、その結果、ノズル形成面14と上端部56aとの間に隙間が形成される。そのため、該隙間から容積可変部56内に空気が流入することにより、容積可変部56内の密封状態を解消することができる。
・上記実施形態において、連通部は、図12に示すように、放置用凸部54の上端に形成された連通溝81であってもよい。
・上記実施形態において、大気開放孔55は、第2キャップ部53に複数(例えば3つなど2つ以上)形成されてもよい。
・上記実施形態において、キャッピングシート16は、第2キャップ部53を設けない構成であってもよい。この場合、記録ヘッド12のノズル形成面14をキャッピングするだけの場合においても、第1キャップ部52を使用することになる。
・実施形態において、キャッピングシート16は、2つ以外の複数(例えば4つ)の第1キャップ部52を備えた構成であってもよいし、2つ以外の複数(例えば4つ)の第2キャップ部53を備えた構成であってもよい。
・上記実施形態において、容積可変部56には、各係止片57を設けない構成であってもよい。この場合、縁側凸部51にも各係止片57に対応した各係止部58を設けなくてもよい。但し、この場合は、容積可変部56が伸張方向への弾性力により伸張した場合でも、その上端部56aはシート本体50の縁側凸部51よりも高さが低くなるように設定されるのが好ましい。
・上記実施形態において、容積可変部56は、弾性復帰力を有しない素材にて構成されてもよい。この場合、キャッピングシート16には、図13に示すように、容積可変部56の上端部56aを上方に向けて付勢する付勢手段としてのばね82を設けるのが好ましい。このように構成した場合、記録ヘッド12のノズル形成面14と第1キャップ部52の容積可変部56とが当接することにより容積可変部56内に密封空間が形成された状態で、ノズル形成面14と容積可変部56とを離間させる場合には、該容積可変部56の上端部56aがばね82によってノズル形成面14側(上方側)に付勢されるため、ノズル形成面14と容積可変部56との当接状態が良好に維持される。そのため、キャッピングシート16による記録ヘッド12のクリーニングを確実に実行できる。
・上記実施形態において、キャッピングシート16は、3つ以外の任意数(例えば2つ)の排出用孔59が形成された構成であってもよい。
・上記実施形態では、フルラインタイプの記録ヘッド12を有するインクジェット式プリンタ10として具体化したが、用紙Pの搬送方向と交差する方向に往復移動するキャリッジに記録ヘッド12が配置されるタイプのインクジェット式プリンタに具体化してもよい。
・上記実施形態では、液体噴射装置を用紙Pへの印刷に用いられるインクジェット式プリンタに具体化したが、この限りではなく、インク以外の他の液体を噴射する液体噴射装置に具体化してもよい。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとしての試料噴射装置であってもよい。
10…インクジェット式プリンタ(液体噴射装置)、12…記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、12a…記録ヘッド移動機構(相対移動機構、密封状態解消機構)、13…ノズル(液体噴射ノズル)、14…ノズル形成面、16…キャッピングシート、17…シート搬送機構(密封状態解消機構)、23…搬送ベルト、24…駆動ローラ(搬送ローラ)、25…従動ローラ(搬送ローラ)、50a…対向面、52…第1キャップ部(吸引機能付きのキャップ部)、53…第2キャップ部(吸引機能無しの別キャップ部)、55…大気開放孔(連通部)、56a…上端部(ノズル形成面側に開口する開口端部)、59…排出用孔(連通孔)、60…常閉弁、70…制御部(制御手段)、81…連通溝(連通部)、82…ばね(付勢手段)、P…用紙(ターゲット)。