JP4915030B2 - 摺動性樹脂組成物及び樹脂成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は摺動性樹脂組成物及び樹脂成形品に係り、特に電子機器部品、自動車部品などの成形材料として好適な、摺動特性に優れ、かつ良好な外観を有する成形品を得ることができる芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物及び樹脂成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ポリカーボネート樹脂を含む樹脂組成物は、機械的特性、耐熱性、耐衝撃性に優れていることから、各種部品の成形材料として多方面で使用されている。特に、シリコーンオイル、ポリオレフィン樹脂、ポリオルガノシロキサン等の摺動性補助材を混合することによって摺動特性を高めた芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物は、更に広い分野で使用されている。しかしながら、従来の芳香族ポリカーボネート樹脂に摺動性補助材を配合した樹脂組成物では、摺動性補助材の少量添加では十分な摺動性が得られず、例えば部品同士の接触で発生する軋み音の防止に効果が無く、多量添加では成形時のフローマーク、シルバー、更には層状剥離現象等が起こるため、成形品の外観が悪いといった欠点があった。このため、従来、摺動性補助材を配合した摺動性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、成形品の表面外観を特に注目されない用途、例えばギアに代表されるような内部部品で主に使用されていた。
【0003】
しかしながら、近年のMDプレイヤー等の電子機器部品等の用途においては、摺動性等の技術的特性に加えて、更に成形品としての良好な外観が要求される。その他、携帯電話、ロボットペット等の玩具、スイッチやトリム等の自動車内装部品のように直接人目に触れる部品への適用においても高度な摺動性に加え、成形品の良外観性が望まれる。特に、携帯電話のように軽量化が要求される製品にあっては、薄肉成形品においての摺動性、良外観性が望まれる。
【0004】
このようなことから、優れた摺動性、自己潤滑性を有し、かつ、成形品表面外観も良好な芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物の開発が求められている。
【0005】
特開平10−306206号公報には、芳香族ポリカーボネート樹脂に芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物などの熱可塑性樹脂、強化充填材、摺動性付与材及びポリエステルエラストマーを配合することにより、成形品の表面外観と摺動性を改良した樹脂組成物が提案されているが、十分に満足し得る効果は得られていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、高度な機械的特性を有する芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物であって、摺動性が極めて良好でしかも表面外観にも優れる成形品を得ることができる摺動性樹脂組成物及び樹脂成形品を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の摺動性樹脂組成物は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂5〜90重量部と、(B)エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体100重量部に対して、酸変性低分子量α−オレフィン共重合体0.1〜20重量部を含有し、ゲル含有量69〜98重量%であるエチレン・プロピレン・非共役ジエン含有架橋ラテックス40〜80重量%(固形分として)の存在下、該エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体とグラフト重合可能な単量体成分60〜20重量%を乳化重合して得られるグラフト共重合体60〜10重量部と、(C)芳香族ビニル系単量体60〜76重量%とシアン化ビニル系単量体40〜24重量%からなる硬質共重合体50〜10重量部(ただし、(A)、(B)、及び(C)の合計で100重量部)を含み、発泡剤を含有しないことを特徴とする。
【0008】
本発明に従って、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂と(B)エチレン・プロピレン・非共役ジエングラフト共重合体と、更に(C)硬質共重合体を配合することにより、摺動性補助材を用いることなく優れた摺動性が得られ、高い強度及び剛性を有し、かつ良好な成形品外観を提供し得る摺動性樹脂組成物を得ることができる。
【0009】
即ち、前述の如く、従来の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物では、シリコーンオイル、ポリオレフィン樹脂、ポリオルガノシロキサン等の摺動性補助材を配合して摺動性の向上を図っているが、これらの摺動性補助材では少量の配合では十分な摺動性向上効果がなく、多量配合では成形不良により成形品の外観が劣るものとなるという問題があった。
【0010】
本発明では、摺動性補助材を用いることなく、(B)エチレン・プロピレン・非共役ジエングラフト共重合体を配合することにより芳香族ポリカーボネート樹脂の摺動性を改善するため、成形品の表面外観を高く維持した上で、著しく良好な摺動特性を得ることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の摺動性樹脂組成物の実施の形態を詳細に説明する。
【0012】
本発明で用いる(A)芳香族ポリカーボネート樹脂としては、例えばビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカンと、ホスゲン(ホスゲン法)又はジアリールカーボネート等の炭酸エステル(エステル交換法)とから得られるビス(ヒドロキシアリール)アルカン系ポリカーボネート樹脂等が挙げられ、これらは1種を単独で使用してもよく、また、2種以上を併用してもよい。
【0013】
用いる芳香族ポリカーボネート樹脂の物性等については特に制限はないが、粘度平均分子量(溶液粘度法)が18000〜26000であるものが好ましい。即ち、粘度平均分子量が18000未満であると流動性は良好であるが、耐薬品性が劣る傾向にあり、26000を超えると流動性(成形性)が悪化するようになる。
【0014】
本発明で用いる(B)エチレン・プロピレン・非共役ジエングラフト共重合体は、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体100重量部に対して、酸変性低分子量α−オレフィン共重合体0.1〜20重量部を含有するエチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体含有架橋ラテックス40〜80重量%(固形分として)に、該エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体とグラフト重合可能な単量体成分60〜20重量%を乳化グラフト重合して得られるものである。
【0015】
エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体(以下、「EPDM」と略称する)は、エチレン、プロピレン及び非共役ジエンのゴム状重合体であるが、EPDM中に含有されるエチレンの割合は、80〜90モル%であることが好ましい。即ち、この割合が80モル%未満であると、後述する酸変性低分子量α−オレフィン共重合体との相溶性が欠如し目的とする摺動性が得られず、90モル%を超えると、耐衝撃性の低下を招く場合がある。なお、非共役ジエン成分としては、1,4−ヘキサジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン等が好ましく、その含有割合は0.1〜2.0モル%であることが好ましい。
【0016】
酸変性低分子量α−オレフィン共重合体としては、α−オレフィン99.8〜80重量%及び不飽和カルボン酸系化合物0.2〜20重量%を含む酸変性ポリエチレン等が挙げられる。ここでα−オレフィンとしては、エチレン等が、不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、マレイン酸モノアミド等が挙げられる。
【0017】
EPDM含有架橋ラテックス中の酸変性低分子量α−オレフィン共重合体の割合がEPDM100重量部に対して0.1重量部未満であると、最終的に得られる樹脂組成物の摺動性向上の効果がなく、また、EPDM含有架橋ラテックスの安定性に欠け、20重量部を超えると衝撃強度の著しい低下を招く、このためEPDM含有架橋ラテックス中の酸変性低分子量α−オレフィン共重合体の含有割合は、EPDM100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは1〜15重量部とする。
【0018】
なお、このEPDM含有架橋ラテックスは、ゲル含有量が40〜95重量%であり、平均粒子径が0.2〜1μmであることが物性バランス上好適である。即ち、EPDM含有架橋ラテックスのゲル含有量が40重量%よりも少ないと、最終的に得られる樹脂組成物の耐衝撃性と表面外観が悪化し、ゲル含有量が95重量%よりも多いと、得られる樹脂組成物の耐衝撃性が著しく悪化する可能性がある。また、EPDM含有架橋ラテックスの平均粒子径が0.2μm未満であると、得られる樹脂組成物の耐衝撃性が著しく悪化し、1μmを超えると、光沢が低下し、成形品表面外観が悪化する場合がある。
【0019】
(B)グラフト共重合体のEPDM含有架橋ラテックスが40重量%未満で単量体成分が60重量%を超えると、最終的に得られる樹脂組成物の摺動性は改善できず、また、EPDM含有架橋ラテックスが80重量%を超え、単量体成分が20重量%未満である場合には、成形品の表面外観が悪化する。このため、本発明で用いる(B)グラフト共重合体のEPDM含有架橋ラテックスは40〜80重量%、単量体成分60〜20重量%とする。
【0020】
EPDMにグラフト重合可能な単量体成分としては、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル化合物単量体、マレイミド化合物単量体、グルタルイミド化合物単量体、不飽和カルボン酸化合物単量体などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0021】
芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ビニルトルエン、о−エチルスチレン、о,p−ジクロロスチレンなどが挙げられ、剛性、体衝撃性等の物性の面から、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
【0022】
また、シアン化ビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられ、(メタ)アクリル酸エステル化合物単量体としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、アミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレートなどのアクリル酸エステル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレートなどのメタクリル酸エステルなどが挙げられ、マレイミド化合物単量体としては、マレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−(p−メチルフェニル)マレイミドなどのα−又はβ−不飽和ジカルボン酸のイミド化合物などが挙げられ、グルタルイミド化合物単量体としては、グルタルイミド、N−フェニルグルタルイミドなどが挙げられ、不飽和カルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸フマル酸、アクリルアミド、メタクリルアミドなどの不飽和カルボン酸アミドなどが挙げられる。
【0023】
本発明において、EPDMとグラフト重合可能な単量体成分としては、特に芳香族ビニル系単量体60〜76重量%及びシアン化ビニル系単量体40〜24重量%を含有する単量体混合物が摺動性向上の面で好適である。
【0024】
本発明で用いる(C)硬質共重合体は、芳香族ビニル系単量体60〜76重量%とシアン化ビニル系単量体40〜24重量%からなるものである。芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体の好適な具体例としては、前述したものを用いることができる。
【0025】
本発明の摺動性樹脂組成物は、上述した(A)芳香族ポリカーボネート樹脂5〜90重量部と、(B)EPDMグラフト共重合体60〜10重量部と、(C)硬質共重合体50〜10重量部を(A)、(B)、及び(C)の合計で100重量部となるように含むものである。
【0026】
(B)EPDM系グラフト共重合体が10重量部未満で、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂、或いは(A)芳香族ポリカーボネート樹脂と(C)硬質共重合体との合計が90重量部を超える場合には、目的とする摺動性が得られない。(B)EPDMグラフト共重合体が60重量部を超え、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂、或いは(A)芳香族ポリカーボネート樹脂と(C)硬質共重合体との合計が40重量部未満の場合には、表面光沢、表面外観が悪化し、いずれの場合も好ましくない。本発明で特に好ましい配合は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂を10〜80重量部、(B)EPDMグラフト共重合体を40〜20重量部、(C)硬質共重合体を10〜50重量部である。
【0027】
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂、(B)EPDMグラフト共重合体、及び(C)硬質共重合体の混合は、バンバリーミキサー、ニーダー或いは一軸若しくは二軸押出機の溶融混練機により行うことができ、これにより、均一な組成物を得ることができる。
【0028】
なお、本発明の摺動性樹脂組成物は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂、(B)EPDMグラフト共重合体、及び(C)硬質共重合体以外に必要に応じて酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、滑剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、無機及び有機系着色剤等を含有していても良い。
【0029】
【実施例】
以下に製造例、実施例、参考例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下において、「部」は重量部を示す。
【0030】
[EPDM含有架橋ラテックスの製造]
製造例1 EPDM含有架橋ラテックス(a)の製造
三井化学社製EPDM(EPT3012P,エチレン含有量は82モル%で非共役ジエン成分として5−エチリデン−2−ノルボルネンを1モル%含む。)100部をn‐ヘキサン566部に溶解した後、三井化学社製酸変性ポリエチレン(ハイワックス2203A)10部を添加し、さらにオレイン酸4.5部を加え、完全に溶解した。別に水700部にKOH0.9部を溶解した水溶液に、エチレングリコール0.5部を加え60℃に保ち、これに先に調製した上記重合体溶液を徐々に加えて乳化した後、ホモミキサーで攪拌した。次いで、溶剤と水の一部を留去して粒径0.4〜0.6μmのラテックスを得た。このラテックスにゴム成分であるEPDM100部にジビニルベンゼン1.5部、ジ‐t‐ブチルパーオキシトリメチルシクロヘキサン1.0部を添加して、120℃で1時間反応させて、EPDM含有架橋ラテックス(a)を得た。
【0031】
製造例2 EPDM含有架橋ラテックス(b)の製造
製造例1において、ジ‐t‐ブチルパーオキシトリメチルシクロヘキサン1.0部を2.0部に変更したこと以外は、製造例1と同様な方法で製造し、EPDM含有架橋ラテックス(b)を得た。
【0032】
製造例3 EPDM含有架橋ラテックス(c)の製造
製造例1において、ジ‐t‐ブチルパーオキシトリメチルシクロヘキサン1.0部を3.0部に変更したこと以外は、製造例1と同様な方法で製造し、EPDM含有架橋ラテックス(c)を得た。
【0033】
製造例4 EPDM含有架橋ラテックス(d)の製造
製造例1において、酸変性ポリエチレン(ハイワックス2203A)を添加しないこと以外は、製造例1と同様な方法で製造し、EPDM含有架橋ラテックス(d)を得た。
【0034】
製造例5 EPDM含有架橋ラテックス(e)の製造
製造例1において、酸変性ポリエチレン(ハイワックス2203A)10部を25部に変更したこと以外は、製造例1と同様な方法で製造し、EPDM含有架橋ラテックス(e)を得た。
【0035】
上記得られたEPDM含有架橋ラテックス(a)〜(e)を各々希硫酸にて凝固させ、水洗乾燥した後、これを1g採取して200mlのトルエン中に40時間浸漬し、次いで200メッシュのステンレス金網にて濾過し、残渣を乾燥することにより、各々のゲル含量を求めた。
【0036】
また、ラテックスの平均粒子径を粒度分布測定装置(堀場社製:CAPA‐500)により求めた。
【0037】
EPDM含有架橋ラテックス(a)〜(e)の酸変性ポリエチレン含有量、ゲル含有量、粒子径はそれぞれ、下記表1の通りであった。
【0038】
【表1】
【0039】
[グラフト共重合体の製造]
製造例6 グラフト共重合体(B−1)の製造
攪拌機付きステンレス重合槽に、EPDM含有架橋ラテックス(a)70部、水170部、水酸化ナトリウム0.01部、ピロリン酸ナトリウム0.45部、硫酸第一鉄0.01部、デキストローズ0.57部を仕込み、重合温度を80℃で一定温度として、アクリロニトリル9部、スチレン21部、CHP(クメンヒドロパーオキシド)1.0部を150分間で、同時にピロリン酸ナトリウム0.45部、硫酸第一鉄0.01部、デキストローズ0.56部、オレイン酸ナトリウム1.0部、水30部を180分間で連続して添加しながら重合を行い、グラフト重合体ラテックスを得た。得られたラテックスの単量体転化率、凝固物析出量は、それぞれ93%、0.25%であった。その後、該ラテックスに酸化防止剤を添加し、硫酸にて凝固処理を行い、洗浄、脱水、乾燥の工程を経て、グラフト共重合体(B−1)の粉末を得た。
【0040】
製造例7 グラフト共重合体(B−2)の製造
製造例6において、EPDM含有架橋ラテックス(a)に変えてEPDM含有架橋ラテックス(b)を使用したこと以外は製造例6と同様にしてグラフト重合体ラテックスの製造を行い、グラフト共重合体(B−2)の粉末を得た。このグラフト重合体ラテックスの単量体転化率、凝固物析出量は、それぞれ90%、0.22%であった。
【0041】
製造例8 グラフト共重合体(B−3)の製造
製造例6において、EPDM含有架橋ラテックス(a)に変えてEPDM含有架橋ラテックス(c)を使用したこと以外は製造例6と同様にしてグラフト重合体ラテックスの製造を行い、グラフト共重合体(B−3)の粉末を得た。このグラフト重合体ラテックスの単量体転化率、凝固物析出量は、それぞれ92%、0.31%であった。
【0042】
製造例9 グラフト共重合体(B−4)の製造
製造例6において、EPDM含有架橋ラテックス(a)に変えてEPDM含有架橋ラテックス(d)を使用したこと以外は製造例6と同様にしてグラフト重合体ラテックスの製造を行い、グラフト共重合体(B−4)の粉末を得た。このグラフト重合体ラテックスの単量体転化率、凝固物析出量は、それぞれ92%、0.52%であった。
【0043】
製造例10 グラフト共重合体(B−5)の製造
製造例6において、EPDM含有架橋ラテックス(a)に変えてEPDM含有架橋ラテックス(e)を使用したこと以外は製造例6と同様にしてグラフト重合体ラテックスの製造を行い、グラフト共重合体(B−5)の粉末を得た。このグラフト重合体ラテックスの単量体転化率、凝固物析出量は、それぞれ93%、0.24%であった。
【0044】
[硬質共重合体の製造]
製造例11 硬質共重合体(C−1)の製造
攪拌機を備えたオートクレーブ内を十分に窒素置換した後、蒸留水120部、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.003部、アクリロニトリル30部、スチレン70部、ベンゾイルパーオキサイド0.7部、t‐ブチルパーオキシベンゾエート0.07部、リン酸カルシウム0.6部、t‐ドデシルメルカプタン0.18部を仕込み、350rpmの割合で攪拌しつつ内温を80℃まで昇温し、この温度で9時間重合させた。次いで、2.5時間を要して内温を120℃まで昇温し、この温度で2時間反応させた。得られたスラリーを洗浄し、乾燥して硬質共重合体(C−1)を得た。得られた硬質重合体の単量体転化率は98%であった。
【0045】
製造例12 硬質共重合体(C−2)の製造
攪拌機を備えたオートクレーブ内を十分に窒素置換した後、蒸留水120部、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.003部、アクリロニトリル27部、スチレン23部、α‐メチルスチレン37部、N‐フェニルマレイミド13部、ベンゾイルパーオキサイド0.7部、t‐ブチルパーオキシベンゾエート0.07部、リン酸カルシウム0.6部、t‐ドデシルメルカプタン0.18部を仕込み、350rpmの割合で攪拌しつつ内温を80℃まで昇温し、この温度で9時間重合させた。次いで、2.5時間を要して内温を120℃まで昇温し、この温度で2時間反応させた。得られたスラリーを洗浄し、乾燥して硬質共重合体(C−2)を得た。得られた硬質重合体の単量体転化率は97%であった。
【0046】
実施例1〜5、参考例1〜5、比較例1〜10
表2,3に示すような割合の芳香族ポリカーボネート樹脂、上記製造例で得られたグラフト共重合体及び硬質共重合体と、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール0.3部、2‐(2‐ヒドロキシ 5‐t‐オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール0.5部を添加し、バンバリーミキサーにて均一に混練した後、ペレタイザーによりペレットを得た。得られたペレットを120℃で5時間熱風循環乾燥機により乾燥した後、射出成形機によりシリンダー温度280℃、金型温度80℃にて成形を行い、各試験の試験片を得た。
【0047】
なお、芳香族ポリカーボネート樹脂としては三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製のユーピロン S‐3000(粘度平均分子量:22000)とE‐2000(粘度平均分子量:30000)を使用した。表2,3にはS‐3000をPC−1、E‐2000をPC−2と示す。
【0048】
得られた成形品について以下の条件及び方法で諸特性を試験し、結果を表2,3に示した。
【0049】
[摺動性(動摩擦係数)] JIS−K7218 A法(リングオンリング方式)に準じて測定した。
試験機:オリエンテック(株)製 EFM‐iii EM型摩擦試験機
試験片:中空円筒試験片(内径20mm、外径25.6mm)
試験片を上下に取りつけ、各荷重をかけてすり合わせ、その動摩擦
係数を測定した。
負荷荷重:1.5kg、2.0kg、2.5kg、3.0kg、3.5kg、4.0kg、4.5kg
[光沢(%)] JIS Z 8741(入射角60°の反射率)に準じた。
表面外観:次の基準にて肉眼評価した。
○:フローマーク及び真珠様光沢感のむらが無い。
△:フローマーク及び真珠様光沢感のむらが僅かにあるが、使用できる
×:フローマーク及び真珠様光沢感のむらが認められる。
[流動性(g/10min)] ASTM D−1238に準じた。220℃、10kg
[アイゾット衝撃値(J/m)] ASTM D−256に準じた。1/4インチ厚、ノッチ付
[熱変形温度(℃)] ASTM D−648に準じた。1/4インチ厚
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
表2,3より、本発明の摺動性樹脂組成物は、摺動特性、表面光沢、表面外観、流動性及び耐衝撃性等のバランスが良好で極めて優れた特性を有することが明らかである。
【0053】
【発明の効果】
以上、詳述した通り、本発明の摺動性樹脂組成物は、衝撃強度などの力学特性、流動性などの成形加工性、成形品の表面外観において優れた特性を示す上に、摺動特性が著しく良好であり、電子機器部品や自動車部品などの成形材料として極めて好適である。
Claims (5)
- (A)芳香族ポリカーボネート樹脂5〜90重量部と、
(B)エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体100重量部に対して、酸変性低分子量α−オレフィン共重合体0.1〜20重量部を含有し、ゲル含有量69〜98重量%であるエチレン・プロピレン・非共役ジエン含有架橋ラテックス40〜80重量%(固形分として)の存在下、該エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体とグラフト重合可能な単量体成分60〜20重量%を乳化重合して得られるグラフト共重合体60〜10重量部と、
(C)芳香族ビニル系単量体60〜76重量%とシアン化ビニル系単量体40〜24重量%からなる硬質共重合体50〜10重量部(ただし、(A)、(B)、及び(C)の合計で100重量部)を含み、発泡剤を含有しないことを特徴とする摺動性樹脂組成物。 - 硬質共重合体(C)がスチレン60〜76重量%とアクリロニトリル40〜24重量%からなる硬質共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の摺動性樹脂組成物。
- 硬質共重合体(C)を10〜25重量部(ただし、(A)、(B)、及び(C)の合計で100重量部)含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の摺動性樹脂組成物。
- 請求項1ないし3のいずれか1項に記載の摺動性樹脂組成物を射出成形してなる樹脂成形品。
- 電子機器部品、又は自動車部品である請求項4に記載の樹脂成形品。
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