JP4884699B2 - 化合物半導体積層構造及びそれを用いた発光素子 - Google Patents

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Description

本発明は、III−V族化合物半導体結晶とリン化硼素結晶とのヘテロ接合構造を含む化合物半導体積層構造及びその積層構造を利用してなる発光素子に関するものである。
従来から、立方晶の閃亜鉛鉱結晶型III−V族化合物半導体層とリン化硼素(BP)とからなる異種(ヘテロ)接合構造は、化合物半導体素子を構成するのに広く利用されている。例えば、導電性のリン化ガリウム(GaP)単結晶を基板とし、その基板の表面にヘテロ接合させたマグネシウム(Mg)等の不純物を故意に添加したリン化硼素層からなるヘテロ接合体は、青色帯域半導体レーザを構成するに利用されている。
しかしながら、リン化ガリウムとリン化硼素とでは、同一の立方晶の閃亜鉛鉱結晶型ではあるが、格子定数は大きく異なる。BPの格子定数は4.5383Åであるのに対し、GaP及び砒化ガリウム(GaAs)の格子定数は各々、5.4495Å、5.6543Åと大きい。即ち、BPとGaPやGaAs等のIII−V族化合物半導体結晶とでは、格子のミスマッチ(mismatch)が大きい。このため、例えば、GaP結晶やGaAs結晶の表面上ではBP結晶にミスフィット(misfit)転位等が多く発生して、結晶欠陥の少ない良質のBP結晶を安定して得ることができない。
従って、従来技術では、III−V族化合物半導体層とBP結晶層との結晶性に優れたヘテロ接合を充分に安定して形成するに至らず、このような結晶欠陥密度の大きなヘテロ接合構造を含む積層構造を利用しても、性能の良い半導体素子は得られない。例えば、逆方向の耐電圧性に優れる化合物半導体発光素子を安定して得られない問題があった。
格子のミスマッチを解消する手段としては、組成勾配層を利用する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
この方法はGaAs基板上にGaAs結晶からGaAsP結晶まで組成変化させた組成勾配層を形成し、この組成勾配層表面にInGaAlPからなる下クラッド層、InGaPからなる活性層及びInGaAlPからなる上クラッド層を順次エピタキシャル成長させて、ダブルヘテロ接合構造の発光素子を得るものである。この方法によればGaAs基板とダブルヘテロ接合部との格子整合が達成されるので、発光効率が高く電気伝導率も高くすることができるとされている。
また、非晶質の低温バッファ層を利用する方法も提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。
この方法は例えばGaAs基板上に460℃以下の低温でBPからなる低温バッファ層を形成し、この低温バッファ層の表面にpn接合を含む発光構造を形成するものである。
この方法によれば低温バッファ層が非晶質となるため、結晶の格子ミスマッチが避けられるので発光効率の高い発光素子が得られるとされている。
特開平08−018101号公報 赤崎 勇等著「日本結晶成長学会誌」第23巻、第3号、p.44〜p.49,1996
本発明は、禁制帯幅の大きなBP結晶を発光素子の電流拡散層または窓層として利用することを前提に、GaPやGaAs等のIII−V族化合物半導体結晶層上にBP結晶層をヘテロ接合させて設けるに際し、両者間の格子ミスマッチを緩和して、結晶性に優れたBP結晶層を得ることを目的とする。
すなわち、III−V族化合物半導体結晶とBP結晶とのヘテロ接合界面の近傍領域に於ける結晶組織の構成を開示するものである
らに、III−V族化合物半導体結晶層とBP結晶層とのヘテロ接合を含む、電気的及び光学的特性に優れた化合物半導体素子を提供することを目的とする。
本発明III−V族化合物半導体積層構造は、GaAs結晶面と単量体のリン化硼素結晶面とからなるヘテロ接合を含む化合物半導体積層構造であって、前記ヘテロ接合はGaAs結晶面とリン化硼素結晶面との面数の比率が5対6である領域を含むことを特徴とするIII−V族化合物半導体積層構造とした。
ある狭いスパン内での格子定数の小さなBP結晶面を1面多くすることにより、格子ミスマッチを大幅に緩和することができる。このような構造の化合物半導体積層体とすれば、GaAs結晶と単量体のリン化硼素結晶との格子ミスマッチが緩和されて、ミスフィット転位等が少なく結晶性に優れたBP結晶とすることができる。
本発明III−V族化合物半導体積層構造においては、前記ヘテロ接合をなすGaAs結晶面が、面指数(HKL)をミラー指数で表したときに{100}、{110}もしくは{111}で表される結晶面であるIII−V族化合物半導体積層構造を利用することができる。
また、前記ヘテロ接合をなすGaAs結晶面とBP結晶面のミラー指数が同一であることが好ましい。
閃亜鉛鉱結晶型のIII−V族化合物半導体結晶であるGaAs結晶は立方晶であるので、上記のどの面を利用しても効果的なヘテロ接合を形成することが可能である。また、同じ結晶面を接合させた方がミスフィット転位等が発生しにくいからである。
れらのIII−V族化合物半導体積層構造は、禁制帯幅が高くしかもミスフィット転位等が少ない結晶性に優れたBP結晶を有しているので、発光素子やレーザ素子の電流拡散層や窓層として極めて有用なものとなる。
本発明の発光素子は、上述した本発明のIII−V族化合物半導体積層構造を含む発光素子である。
III−V族化合物半導体積層構造のBP層は電流拡散層として含まれていても良いし、窓層として含まれていても良い。
本発明のBP層はミスフィット転位等が少なく結晶性に優れており、しかも禁制帯幅を発光層の禁制帯幅よりも大きくできるので、電気的及び光学的特性に優れた発光素子を得ることができる。
本発明のIII−V族化合物半導体積層構造に依れば、閃亜鉛鉱結晶型III−V族化合物半導体であるGaAsの5個の(HKL)結晶格子面に対し、6個のリン化硼素結晶格子面が配列しており、格子ミスマッチに因る結晶性の悪化が緩和されて良質なヘテロ接合を備えた積層構造を提供することができる。
本発明の積層構造をGaPやGaAs等のIII−V族化合物半導体に適用すれば、格子ミスマッチに因る結晶性の悪化が回避された良質なBP結晶とのヘテロ接合を提供できるので、このヘテロ接合を使用して化合物半導体発光素子を構成すれば、例えば逆方向の耐電圧性に優れ高発光効率を有する高性能の発光素子を提供できる
本発明で使用する閃亜鉛鉱結晶型III−V族化合物半導体は、周期律表IIIb族のアルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)と、周期律表Vb族のリン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)とが原子比1:1で結合したものであって、立方晶の閃亜鉛鉱結晶型を有する結晶である。実用上優れた半導体あって、純粋な結晶の他不純物元素をドープしたものが広く用いられている。組成は一般式で示せばAlαGaβIn1−α−β1−γ−δAsγSbδ(0≦α、β≦1、0≦α+β≦1、0≦γ、δ≦1、0≦γ+δ≦1、)で表されるものである。
本発明で好適に利用できるのは、構成元素数が少なくて形成が容易な、例えばリン化アルミニウム・インジウム混晶(組成式:AlαInδP)や砒化アルミニウム・ガリウム混晶(組成式:AlαGaβAs)である。また特に、混晶比を制御する必要のない2元III−V族化合物半導体のリン化ガリウム(GaP)や砒化ガリウム(GaAs)である。
一方、単量体のリン化硼素(BP)は、やはり周期律表IIIb族の硼素(B)と周期律表Vb族のリン(P)が結合した2元III−V族化合物半導体である。硼素(B)はB、B2、B6等の単位で他の元素と結合し、例えば、B6P等の多量体のリン化硼素を形成するが、これらのうち半導体として有用なのはB原子とP原子とが原子比1:1で結合した単量体のリン化硼素であって、組成式(BP)で表されるものである。
単量体のリン化硼素(BP)は、立方晶の閃亜鉛鉱結晶型を有し、結晶の格子定数は4.538Åである(寺元 巌著、「半導体デバイス概論」、(株)培風館、1995年3月30日発行、初版、28頁参照)。また、間接遷移型であり、旧来から室温での禁制帯幅は2.0eVとされている(特開平2−275682号公報参照)。また、他のIII−V族化合物半導体であるGaPやGaAsと比較して共有結合性が高く、高い融点を有する半導体の一つとなっている。以下、この単量体のリン化硼素を単にリン化硼素(BP)と記載することがある。
リン化硼素半導体結晶は、ハロゲン(halogen)法、ハイドライド(hydride;水素化物)法やMOCVD(有機金属化学的気相堆積)法等の気相成長手段に依り形成することができる。また、分子線エピタキシャル法でも形成できる(J.Solid
State Chem.,133(1997)、269〜272頁参照)。例えば、トリエチル硼素((CB)とホスフィン(PH)を原料とする常圧(略大気圧)或いは減圧MOCVD法で形成する。
MOCVD法に依り、III−V族化合物半導体結晶上に、750℃以上で950℃以下の温度に於いて、V族原料ガスとIII族原料ガスとの混合比率を故意に大にして成長を開始すると、III−V族化合物半導体結晶との接合界面に、特有の結晶格子配列を有するBP結晶層を成長させることができる。形成時の原料ガス供給比率(V/III比率)、例えば、PH/(CBの濃度比率を、200以上とするのが適する。
n形BP結晶層を成長させる場合には、200以上のV/III比率で成長を継続する。
例えば、GaP層上に成長の初期段階からV/III比率を200と一定として、所望の層厚に到達する迄原料ガスを供給して成長を継続する。また、別の例では、ヘテロ接合界面の近傍領域をV/III比率を400として形成し、その後、V/III比率を600として、所望の層厚に到達する迄原料ガスを供給して成長を継続する。一般にV/III比率を高値に設定するほど、キャリア濃度の高いn形BP結晶層が得られる。
一方、p形のBP結晶層を得るには、成長初期に於いてのみ暫時V/III比率を200以上としてヘテロ接合界面の近傍の領域を形成した後、瞬時にV/III比率を低下させて成長させる。p形BP層を成長させる場合、上記の様な高いV/III比率で成長させるのは、BP層の層厚がヘテロ接合界面から10nm以上で30nm以下に達する迄とする。
V/III比率を高比率のままで成長を続行した場合、十分に低抵抗のp形BP層を安定して形成できないことがあるからである。GaP層或いはGaAs層にヘテロ接合する低抵抗のp形BP層のBPを安定して形成するには、気相成長後期のV/III比率を5以上で50以下とするのが適する。
また、GaPやGaAs等のIII−V族化合物半導体結晶とヘテロ接合させるリン化硼素(BP)結晶にあっては、その内部に双晶、特に、(111)双晶を含むリン化硼素結晶を用いると、GaP層或いはGaAs層とで良好なヘテロ接合を形成できる。双晶がGaP或いはGaAsとの格子のミスマッチを緩和するに寄与して、これらのIII−V族化合物半導体層とヘテロ接合を形成するのに好都合となるミスフィット転位が少なく、かつ結晶性に優れたリン化硼素結晶をもたらすのに有効に作用する。
III−V比率に加えて、GaP結晶或いはGaAs結晶上でのBP層の成長速度を精密に制御すれば、禁止帯幅の大きなn形またはp形のBP層を形成できる。例えば、MOCVD法に依りGaP層上にBP層を形成するに際し、成長速度を毎分2nm以上で30nm以下の範囲に設定すると、室温での禁止帯幅を2.8eV以上とするBP半導体層が得られる。GaPやGaAs結晶上に成長させたBP層の禁止帯幅は、吸収係数の光子エネルギー(=h・ν)依存性などから求められる。
特に、室温での禁止帯幅を2.8eV以上で5.0eV以下とするn形またはp形の低抵抗のBP半導体層は、例えば、化合物半導体発光素子を構成するための電流拡散層として有用である。また、この様な高い禁止帯幅のBP半導体層は、発光層から放射される紫外帯光や短波長可視光を外部へ透過するための窓(window)層として有効に利用できる。しかし、禁止帯幅が5.0eVを超えるBP半導体層では、GaP或いはGaAs結晶との禁止帯幅の差異が顕著に大となり、順方向電圧或いは閾値電圧の低い化合物半導体発光素子を得るに不利となる。
本発明のヘテロ接合を含むIII−V族化合物半導体積層構造は、立方晶のIII−V族化合物半導体結晶の表面をなす面指数を(HKL)とする結晶面に接合させて設けた、単量体のリン化硼素(BP)結晶面とから構成されるものである。面指数を(HKL)とする結晶面とは、結晶面をミラー(Miller)指数を用いて表した場合に、{100}、{110}、或いは{111}で表される結晶面である。立方晶の結晶であることから、これらはいずれも等価面である。H,K,及びLは通常、0(零)か正または負の整数である。BP結晶を接合させるIII−V族化合物半導体の表面は、上記の様な低次のミラー指数面の結晶面が好ましく、これらの面より特定の結晶方位に角度にして数度から十数度の範囲で僅かに傾斜した結晶面であっても構わない。
本発明に係わる特有の結晶格子の配列を有する結晶組織の構造を、図1に模式的に例示する。III−V族化合物半導体層4の内部の或る幅の区域Sにはn個の結晶格子面が存在している。ここでnは10以下の正の整数であり、通常は5または6である。図1ではn=5の場合を示しており、(1)〜(5)の5面のIII−V族化合物半導体結晶面が存在している。
一方、同じこの区域SのBP層5には1〜6の6個のリン化硼素結晶格子面が存在している。すなわち、(n+1)個のリン化硼素結晶格子面が存在している。この場合リン化硼素結晶格子面の数は、先のIII−V族化合物半導体結晶面の数5に対して1つ多い5+1=6となっている。従って区域S内のヘテロ接合面12の結晶格子面の数は、n対(n+1)の関係になっているのが特徴である。
本発明においてはヘテロ接合面のある狭いスパン内(結晶格子面で10面以内)で見ると、格子定数の小さなBP結晶面を1面多くすることにより、格子ミスマッチを大幅に緩和するようにしている。
本発明においては、このような構造のヘテロ接合が少なくとの1箇所含まれていればよい。本発明のヘテロ接合の形成方法によれば、通常はこのような構造が繰り返し連続して得られる場合が多い。
特に、BP結晶をヘテロ接合させるIII−V族化合物半導体結晶の(HKL)結晶面と、面指数を同じくするBP結晶格子面との数量的な比率として、n:n+1の関係が保たれている場合、双方の層間における格子ミスマッチは効果的に緩和される。
例えば、III−V族化合物半導体結晶がGaPである場合、GaPの(100)結晶格子面とBP層の(100)結晶格子面との数的比率が6:7(n=6、n+1=7)となっていれば、6個の結晶格子面の範囲の格子ミスマッチ度は、(4.5383×7−5.449×6)/5.4495×6=0.02840となり、2.84%である。通常の6個の6個の(100)−GaP結晶面と6個の(100)−BP結晶面との接合では、格子ミスマッチ度は(4.5383×6−5.4495×6)/5.4495×6=−0.1671となり、16.7%にも達する。従って本発明においては格子ミスマッチ度は大幅に縮小されることになる。
また、III−V族化合物半導体結晶がGaAsである場合、GaAsの(100)結晶格子面とBP層の(100)結晶格子面との数的比率が5:6(n=5、n+1=6)となっていれば、図1の領域Sの5個の結晶格子面の範囲の格子ミスマッチ度は、(4.5383×6−5.6543×5)/5.6543×5=0.03684となり、3.68%である。通常の5個のIII−V族化合物半導体結晶面と5個のBP結晶面との接合では、格子ミスマッチ度は(5.6543×5−4.5383×5)/5.6543×5=0.1973となり、19.73%にも達する。従って本発明においては格子ミスマッチ度は大幅に縮小されることになる。
高分解能の透過型電子顕微鏡(TEM)を使用して、III−V族化合物半導体層とBP層との接合界面近傍の領域に於ける格子像を観察すれば、上記の様な数量的な面の構成比率をもってなる結晶組織構成の存在の有無、及びその結晶組織を構成する結晶格子面の数量的比率を知ることができる。リン化硼素系半導体層の内部の双晶の存在の有無は、例えば、電子線回折(TED)像に、双晶に起因する特有の異常回折点が出現することから知れる(P.Hirsch他著、“ELECTRON MICROSCOPY OF THIN CRYSTAL” ,Krieger Pub.Com.(1977,U.S.A),141−148頁参照)。双晶の密度は、BP層の断面TEM像に撮像された双晶粒界を計数すれば求められる。
上述したように本発明においては、III−V族化合物半導体結晶と禁制帯幅の高いBP結晶とのヘテロ接合を形成する場合に格子ミスマッチの悪影響を緩和することができるので、結晶性に優れ低抵抗のBP結晶が得られる。この結晶性に優れ低抵抗のBP結晶は禁制帯幅も大きいので、電流拡散層や窓層として利用した発光素子やレーザ素子を構成すれば、発光効率の高い発光素子とすることができる。
(作用)
閃亜鉛鉱結晶型のIII−V族化合物半導体結晶面と、その表面に接合させて設けたBP半導体結晶面とからなるヘテロ接合に於いてIII−V族化合物半導体結晶のn個の(HKL)結晶格子面に対して、1面多い(n+1)個のBP結晶面を配列することにより、GaP結晶やGaAs結晶とBP結晶との格子ミスマッチを緩和して、結晶性に優れるBP層をもたらす作用を有する。このようにしてIII−V族化合物半導体結晶よりも格子定数の小さなBP結晶をヘテロ接合させても、格子ミスマッチの弊害を実質的に排除することを可能にした。
(実施例1)
リン化ガリウム(GaP)結晶層と、リン化硼素(BP)結晶層とのヘテロ接合構造を備えた化合物半導体積層構造体を使用して発光素子を構成する場合を例にして、本発明を具体的に説明する。
図2に、GaPとBPとのヘテロ接合を含む化合物半導体積層構造体を利用して構成した、pn接合型発光素子10の断面構造を模式的に示す。
化合物半導体積層構造体11は、亜鉛(Zn)をドーピングしたp形の砒化ガリウム(GaAs)単結晶を基板100として形成した。基板100の表面には、亜鉛(Zn)をドープしたp形のGaAsからなる緩衝層101、亜鉛(Zn)をドープしたリン化アルミニウム・ガリウム・インジウム((Al0.70Ga0.300.50In0.50P)混晶からなる下部クラッド層102、アンドープでn形の(Al0.14Ga0.860.50In0.50Pからなる発光層103、及びセレン(Se)をドープしたn形の(Al0.70Ga0.300.50In0.50Pからなる上部クラッド層104を順次堆積して形成した。
緩衝層101のキャリア濃度は1×1018cm−3、層厚は500nmとし、下部クラッド層102のキャリア濃度は1×1017cm−3、層厚は1000nmとし、発光層103のキャリア濃度は1×1016cm−3、層厚は500nmとし、上部クラッド層104のキャリア濃度は2×1018cm−3、層厚は5000nmとして形成した。
これらの101〜104の各層は一般的な減圧MOCVD法に依り気相成長させた。
上部クラッド層104上には、珪素(Si)をドーピングしたn形のリン化ガリウム(GaP)層105を堆積した。GaP層105は、トリメチルガリウム((CHGa)をガリウム源とし、ホスフィン(PH)をリン源とする減圧MOCVD法により形成した。GaP層105は730℃で形成した。GaP層105のキャリア濃度は1×1018cm−3とし、層厚は250nmとした。
GaP層105上には、アンドープでn形のリン化硼素(BP)層106を形成した。
BP層106は、トリエチル硼素((CB)を硼素(B)源とし、ホスフィン(PH)をリン源とする常圧(略大気圧)MOCVD法を利用して形成した。BP層106は、775℃で成長初期よりPH/(CB比率を450と一定にして形成した。BP層106の層厚は650nmとし、キャリア濃度は3×1019cm−3とした。
高分解能の透過型電子顕微鏡(HRTEM)を使用して、このGaP層105とBP層106とのヘテロ接合部に於ける結晶組織構造を観察した。断面TEM像から、GaPの(100)結晶格子面と、BPの(100)結晶格子面とは鉛直方向に平行に配列しているのが確認された。また、ヘテロ接合が形成されている界面に於いて、GaPの(100)結晶格子面が6面であるのに対し、同一の区域に7面のBPの(100)結晶格子面が配列してなる結晶組織の存在が確認された。
また、BP層106は、成長速度を毎分25nmとしてGaP層105に接合させて構成したため、室温での禁止帯幅は3.1eVとなった。従って、BP層106は、発光層103からの発光を外部へ透過するための窓層として利用するのに十分に広い禁止帯幅を有する低抵抗半導体層となった。
BP層106の表面の中央部には、金(Au)−ゲルマニウム(Ge)合金膜、ニッケル(Ni)膜、及び金(Au)膜を順次重層させた、結線用のパッド電極を兼ねるn形オーミック電極107を設けた。一方、p形GaAs単結晶からなる基板100の裏面の全面には、一般の真空蒸着法に依り、金(Au)−ベリリウム(Be)膜を被着させてp形オーミック電極108を形成した。その後、基板100を<110>結晶方位に平行に設けた線幅を50μmとする帯状の溝に沿って裁断して、一辺が350μmの正方形の発光素子10のチップに分割した。
n形及びp形オーミック電極107,108の間に、順方向に20mAの素子駆動電流を流通したところ、発光素子10からは中心の波長を610nmとする橙色を帯びた赤色光が放射された。また、広い禁止帯幅を有しながら低抵抗であるBP層106とGaP層105とのヘテロ接合体を設けたため、n形オーミック電極107の射影領域以外に在る発光層103の平面領域の略全面から発光が外部へもたらされるのが視認された。さらに、発光パターンの近視野像から、上記の射影領域以外の発光層103の領域からの発光の強度は略一定であり、また、一般的な積分球を利用して測定される樹脂でモールドする以前のチップ状態での輝度は40ミリカンデラ(mcd)に達した。
また、n形オーミック電極107を、結晶性に優れ低抵抗のBP層106上に設ける構成としたため、順方向電圧(Vf)は2.4Vと低値となった。一方、逆方向電流を10μAとした際の逆方向電圧は12Vを越える高値となった。
これはGaPとの格子のミスマッチを緩和するのに有効に作用するBP結晶を利用した結果であり、特にn形オーミック電極107を設ける半導体層を格子ミスフィットに起因する欠陥の少ないBP層106としたため、局所的な耐電圧不良(ローカルブレークダウン)の少ない発光素子をもたらすのに効果的となった。
(実施例2)
砒化ガリウム(GaAs)結晶層とリン化硼素(BP)層とのヘテロ接合を備えた化合物半導体積層構造体を使用してpn接合型ダブルヘテロ(DH)接合構造の発光素子を構成する場合を例にして本発明の内容を具体的に説明する。
上記の実施例1に記載のp形GaAsからなる基板100上に、実施例1に記載した手法に依り、(Al0.70Ga0.300.50In0.50Pからなる上部クラッド層104迄を順次堆積した。その後、上部クラッド層104上に、珪素(Si)をドーピングしたn形の砒化ガリウム(GaAs)層を堆積した。n形GaAs層は、(CHGaをガリウム源とし、アルシン(AsH )を砒素源とする減圧MOCVD法により形成した。n形GaAs層は700℃で形成した。n形GaAs層のキャリア濃度は1×1018cm−3とし、層厚は3nmとした。
n形GaAs層上には、アンドープでn形のリン化硼素(BP)層を形成した。n形BP層は、上記の実施例1に記載の場合と同じく、(CBを硼素源とし、PHをリン源とする常圧MOCVD法を利用して形成した。n形BP層は、750℃で成長させ、成長初期よりPH/(CB比率を600と一定として形成した。n形BP層の層厚は950nmとし、キャリア濃度は2×1019cm−3とした。また、BP層は成長速度を毎分30nmとして成長させた。一般的な分光エリプソメーターで計測した消衰係数から算出した吸収係数を利用して求めたBP層の室温禁止帯幅は3.0eVとなった。
高分解能TEM(HRTEM)を使用して撮像したGaAs層とBP層とのヘテロ接合界面近傍の領域の断面TEM像から、GaAsの(100)結晶格子面が5面配列している区域に、BPの(100)結晶格子面が6面配列している結晶組織の存在が確認された。また、制限視野電子線回折像に出現した双晶に因る異常回折スポットの位置から、GaAs層にヘテロ接合させたBP層の内部には(111)双晶が存在することが示された。
また、ヘテロ接合界面近傍の領域の断面TEM像から(111)双晶が存在する領域は、上記の同一領域に於いてn:n+1の数量比率でGaAsとBPとの結晶格子面が存在してなる結晶組織が存在するのとは異なる領域であった。断面TEM像内に認められる(111)双晶の粒界の面密度は約1×10cm−2であった。
上記の実施例1に記載したのと同様に、n形及びp形オーミック電極を形成した。その後双方のオーミック電極間に順方向に20mAの素子駆動電流を流通した。発光素子からは中心の波長を610nmとする橙色を帯びた赤色光が放射された。また、GaAs層と、広い禁止帯幅を有する低抵抗のBP層とからヘテロ接合を構成したため、BP層上のn形オーミック電極から平面的に広範に素子駆動電流を拡散でき、発光層の略全域から発光がもたらされることが視認された。さらに、発光パターンの近視野像から、n形オーミック電極の射影領域以外の領域から放射される発光の強度は略一定であるのが示された。一般的な積分球を利用して測定される樹脂でモールドする以前のチップ状態での輝度は36ミリカンデラ(mcd)であった。
また、n形オーミック電極を結晶性に優れた低抵抗のBP層上に設ける構成としたため、順方向電圧(Vf)は2.3Vと低値となった。一方、逆方向電流を10μAとした際の逆方向電圧は12Vを越える高値となった。
これはGaAsとの格子のミスマッチを緩和するに有効に作用するBP層を利用したためであり、特に、オーミック電極を格子ミスフィットに起因する欠陥の少ないBP層上に設けたため、局所的な耐電圧不良(local breakdown)の少ない発光素子をもたらすのに効果的となった。
結晶の配列面を示す図である。 発光素子の断面構造を示す図である。
符号の説明
4・・・・・III−V族半導体層、5・・・・・BP層、10・・・・・発光素子、11・・・・・化合物半導体積層体構造、12・・・・・ヘテロ接合面、100・・・・・基板、101・・・・・緩衝層、102・・・・・下クラッド層、103・・・・・発光層、104・・・・・上クラッド層、105・・・・・GaP層、106・・・・・BP層、107・・・・・n形オーミック電極、108・・・・・p形オーミック電極、

Claims (6)

  1. GaAs結晶面と単量体のリン化硼素結晶面とからなるヘテロ接合を含む化合物半導体積層構造であって、前記ヘテロ接合はGaAs結晶面とリン化硼素結晶面との面数の比率が5対6である領域を含むことを特徴とするIII−V族化合物半導体積層構造。
  2. 前記ヘテロ接合をなすGaAs結晶面が、面指数(HKL)をミラー指数で表したときに{100}、{110}もしくは{111}で表される結晶面であることを特徴とする請求項1に記載のIII−V族化合物半導体積層構造。
  3. 前記ヘテロ接合をなすGaAs結晶面とBP結晶面のミラー指数が同一であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のIII−V族化合物半導体積層構造。
  4. 前記請求項1から請求項3に記載のIII−V族化合物半導体積層構造を含む発光素子。
  5. 前記III−V族化合物半導体積層構造のBP層を電流拡散層として含むことを特徴とする請求項に記載の発光素子。
  6. 前記III−V族化合物半導体積層構造のBP層を窓層として含むことを特徴とする請求項に記載の発光素子。
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