JP4881020B2 - 立体規則性ポリアクリロニトリル系樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents

立体規則性ポリアクリロニトリル系樹脂組成物およびその製造方法 Download PDF

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立体規則性ポリアクリロニトリル系樹脂と窒化ホウ素ナノチューブとを均一に分散させた立体規則性ポリアクリロニトリル系樹脂組成物、およびその製造方法に関する。
カーボンナノチューブは、従来にない機械的物性、電気的特性、熱的特性等を有するためナノテクノロジーの有力な素材として注目を浴び、広範な分野で応用の可能性が検討され、一部実用化が開始されている。
ポリマーコンポジットとしては、フィラーにカーボンナノチューブを用いてポリマーに添加することで、ポリマーの機械的物性、導電性、耐熱性等を改質する試みも行われている。ポリアクリロニトリルとカーボンナノチューブからなるポリマーコンポジットに関しては、例えばポリアクリロニトリルと単層カーボンナノチューブとの繊維組成物に関する報告例(非特許文献1)やポリアクリロニトリルと多層カーボンナノチューブとからなるフィルム等が報告されている。
一方、カーボンナノチューブと、構造的な類似性を有する窒化ホウ素ナノチューブも、従来にない特性を有する材料として注目を浴びている(非特許文献2参照)。窒素ホウ素ナノチューブは、カーボンナノチューブに匹敵する優れた機械的物性、熱伝導性を有するだけでなく、化学的に安定でカーボンナノチューブよりも優れた耐酸化性を有することが知られている。また、絶縁性であるため、絶縁放熱材料としても期待できる。さらには、カーボンナノチューブと異なり白色であることから着色を嫌う用途にも応用できる。
一方、アクリロニトリル重合体は、極性ニトリル基の存在により耐熱性、機械特性、親水性、化学的安定性に優れるため従来よりペレット、フィルム、繊維、造形製品、同時押出品、異形押出材、シートなど各種成形体として広く利用されている。特に繊維に成形した際のかさ高さや、風合い、保温性などに優れるうえに、共重合成分を導入すると鮮やかな色調に染色することができ、かつ染色耐候性にも優れるなどの物性を有することから、衣料用として広く用いられている。このようなアクリロニトリル重合体において、特に尿素−ANの包接化合物にγ線などの活性線を照射する方法や有機金属化合物を開始剤とするアニオン重合法により得られる立体規則性を有するPAN、いわゆる高立体規則性PANが知られている。この立体規則性(アイソタクチック・トリアッド:後述)が0.35を越えるPANは、水共存下での融点の向上が認められており、またその成形体は強度、弾性率が従来のPANに比して著しく向上し、かつ湿潤状態における耐熱性が改善されるという特徴を有している(特許文献1,2参照)。もしこのような立体規則性PANの熱特性、機械特性を更に向上することができれば、高品位成形体として高機能、高性能繊維や産業資材・宇宙工学分野等への用途展開も広がっていくものと期待される。
しかしながら、立体規則性ポリアクリロニトリル系樹脂に窒化ホウ素ナノチューブを添加して成形することにより機械的物性、寸法安定性の改善された成型体を得たとの報告はこれまで無い。
特開昭63−304029号公報 特開平7−109358号公報 Advanced Materials 2004, 16, 58-61 Advanced Engineering Materials 2002, 4, 109-114
本発明の目的は、立体規則性ポリアクリロニトリル樹脂単体に比較して、機械的物性、寸法安定性が向上した窒化ホウ素ナノチューブ立体規則性ポリアクリロニトリル樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、窒化ホウ素ナノチューブを立体規則性ポリアクリロニトリル系樹脂に添加することにより、機械的物性に優れ、寸法安定性に優れた樹脂組成物が得られることを見出し本発明に到達した。すなわち、本発明は、
1.ポリアクリロニトリル成分中のアイソタクティックトライアド含量が全ポリアクリロニトリルの繰り返し単位中の35モル%以上である立体規則性ポリアクリロニトリル系樹脂100重量部と窒化ホウ素ナノチューブ(官能基化され可溶性にされたものを除く)0.01〜100重量部とからなる立体規則性ポリアクリロニトリル系樹脂組成物。
2.窒化ホウ素ナノチューブは、平均直径が0.4nm〜1μm、アスペクト比が5以上であることを特徴とする上記に記載の立体規則性ポリアクリロニトリル系樹脂組成物。
3.立体規則性ポリアクリロニトリル系樹脂が、ポリアクリロニトリル成分を50重量%以上有することを特徴とする上記に記載の立体規則性ポリアクリロニトリル系樹脂組成物。
4.窒化ホウ素ナノチューブが白色のものであることを特徴とする上記に記載の立体規則性ポリアクリロニトリル系樹脂組成物。
5.立体規則性ポリアクリロニトリル系樹脂を溶解する溶媒に窒化ホウ素ナノチューブを分散させた後、立体規則性ポリアクリロニトリル系樹脂を添加、溶解して立体規則性ポリアクリロニトリル系樹脂と窒化ホウ素ナノチューブよりなる混合溶液を調整し、溶媒を除去することを特徴とする上記に記載の樹脂組成物の製造方法。
により構成される。
本発明により立体規則性ポリアクリロニトリル系樹脂中に窒化ホウ素ナノチューブが均一に分散している樹脂組成物が得られ、従来のポリアクリロニトリル系樹脂に優れた熱伝導性、力学特性、寸法安定性を付与することが期待される。特に立体規則性ポリアクリロニトリルは高い結晶性より通常のポリアクリロニトリルより優れた物性を有する上、高い規則構造を介して窒化ホウ素ナノチューブと強く相互作用することが可能である。このため実際の製品において窒化ホウ素ナノチューブの強化効果も効率よく発現すると期待されことから、従来のポリアクリロニトリルの範囲を超える高性能を発現することも期待される。本発明の立体規則性ポリアクリロニトリル系樹脂組成物は、溶液紡糸、フィルム成形などの任意の成形方法により、所望の形状に成形でき、機械部品などの樹脂成形品、衣料・産業資材などの繊維、電気電子用途などの成形体として好適に使用することができる。
以下本発明を詳細に説明する。
(窒化ホウ素ナノチューブ)
本発明において、窒化ホウ素ナノチューブとは、窒化ホウ素からなるチューブ状材料であり、理想的な構造としては6角網目の面がチューブ軸に平行に管を形成し、一重管もしくは多重管になっているものである。窒化ホウ素ナノチューブの平均直径は、好ましくは0.4nm〜1μm、より好ましくは0.6〜500nm、さらにより好ましくは0.8〜200nmである。ここでいう平均直径とは、一重管の場合、その平均外径を、多重管の場合はその最外側の管の平均外径を意味する。平均長さは、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。アスペクト比は、好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上である。アスペクト比の上限は、平均長さが10μm以下であれば限定されるものではないが、上限は実質25000である。よって、窒化ホウ素ナノチューブは、平均直径が0.4nm〜1μm、アスペクト比が5以上であることが好ましい。
窒化ホウ素ナノチューブの平均直径およびアスペクト比は、電子顕微鏡による観察から求めることが出来る。例えばTEM(透過型電子顕微鏡)測定を行い、その画像から直接窒化ホウ素ナノチューブの直径および長手方向の長さを測定することが可能である。また組成物中の窒化ホウ素ナノチューブの形態は例えば繊維軸と平行に切断した繊維断面のTEM(透過型電子顕微鏡)測定により把握することが出来る。
窒化ホウ素ナノチューブは、アーク放電法、レーザー加熱法、化学的気相成長法を用いて合成できる。また、ホウ化ニッケルを触媒として使用し、ボラジンを原料として合成する方法も知られている。また、カーボンナノチューブを鋳型として利用して、酸化ホウ素と窒素を反応させて合成する方法もが提案されている。本発明に用いられる窒化ホウ素ナノチューブは、これらの方法により製造されるものに限定されない。窒化ホウ素ナノチューブは、強酸処理や化学修飾された窒化ホウ素ナノチューブも使用することができる。
本発明の樹脂組成物においては、ポリアクリロニトリル系樹脂100重量部に対して、窒化ホウ素ナノチューブが、0.01〜100重量部の範囲内で含有されるものである。本発明におけるポリアクリロニトリル系樹脂100重量部に対する上記窒化ホウ素ナノチューブの含有量の下限は、0.01重量部であるが、本発明においては特に、0.05重量部以上が好ましく、より好ましくは0.1重量部以上であることが好ましい。一方、ポリアクリロニトリル系樹脂100重量部に対する窒化ホウ素ナノチューブの含有量の上限は、上述したように100重量部以下であるが、本発明においては、80重量部以下であることが好ましく、50重量部以下であることがより好ましい。上記範囲内とすることにより、窒化ホウ素ナノチューブをポリアクリロニトリル系樹脂に均一に分散させることが可能となるからである。また、窒化ホウ素ナノチューブが過度に多い場合は、均一な樹脂組成物を得ることが困難となり好ましくない。本発明の樹脂組成物は、窒化ホウ素ナノチューブに由来する窒化ホウ素フレーク、触媒金属等を含む場合がある。
本発明で使用する立体規則性ポリアクリロニトリル系樹脂とは、ポリアクリロニトリル成分を50重量%以上有するポリマーであり、該ポリアクリロニトリル成分中のアイソタクティックトライアド含量が全ポリアクリロニトリルの繰り返し単位中の35モル%以上である立体規則性ポリアクリロニトリル系ポリマーを意味する。アイソタクティックトライアド含量は、ポリアクリロニトリル成分中の全ポリアクリロニトリルの繰り返し単位の35モル%以上であるが、40モル%以上であることが好ましく、50モル%以上であることがより好ましい。ここでアイソタクティックトライアドとは、付加重合系ポリマーにおいてポリマー中の連続した3個のモノマー単位を考えたときに、隣り合うモノマー単位がいずれも互いにメソ(mと略記する)配置の関係にあることを指す。即ちアイソタクティックトライアド含量とはmm連鎖の含量である。mm含量が35モル%未満の場合、やはりPANの立体構造に基づく機械特性、熱特性に十分な効果が発現しない。
ポリマーは、mm含量が35モル%以上の立体規則性を有するアイソタクティックリッチPANが50重量%以上(共)重合された1種類の重合体でもよく、該アイソタクティックリッチPANが50重量%以上(共)重合された2種類以上の重合体の混合物でもよく、あるいは該アイソタクティックリッチPANが50重量%以上(共)重合された重合体と該アイソタクティックリッチPANが50重量%未満しか(共)重合されていない重合体との混合物であってもよい。
本発明の立体規則性ポリアクリロニトリル系樹脂は、アクリロニトリル成分以外の共重合成分として、アクリル酸系化合物成分およびアクリル酸エステル系化合物成分を主たる共重合成分とするコポリマーであっても良い。この場合前記アクリロニトリル成分がコポリマーを基準として80重量%以上を占め、アクリル酸系化合物成分とアクリル酸エステル系化合物成分の重量%の総和が0%を越えて20%未満であることが好ましい。
ここで、「主たる」とは、上記3成分(アクリロニトリル成分、アクリル酸系化合物成分、およびアクリル酸エステル系化合物成分)の合計量が全共重合成分を基準として80重量%以上、好ましくは90重量%以上を占めることをいう。
本発明においては、好ましくは、50重量%未満で、他成分を共重合してもよく、この共重合成分としては、共重合可能な不飽和化合物であれば従来公知のものをいずれも用いてよいが、不飽和カルボン酸及び/または不飽和カルボン酸エステル、特にアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸及び/またはこれらのアルキルエステルを用いることが好ましい。
該アルキルエステルとしてはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ノルマルブチル、イソブチル、t−ブチル基、シクロヘキシルから選ばれる少なくとも1つの基など、炭素数1〜6のアルキル基を有するエステルを特に好ましく用いることができる。
更に他の共重合成分としてアクリロニトリル成分、アクリル酸系化合物、アクリル酸エステル系化合物、メタクリルニトリル、酢酸ビニル、アクリルアミド、無水マレイン酸、N−ビニルピロリドンのような極性ビニルモノマー、スチレン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾールのような芳香族ビニル化合物なども好ましく用いることができる。これらの共重合成分は単独あるいは併用してもよく、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、若しくはこれらのアルキルエステル、メタクリルニトリル、酢酸ビニル、アクリルアミド、無水マレイン酸、N−ビニルピロリドンのような極性ビニルモノマー、スチレン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾールのような芳香族ビニル化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を好ましく選ぶことが出来るが、特に前記したようにアクリロニトリル成分、アクリル酸系化合物、アクリル酸エステル系化合物を用いることが好ましい。
これらは共重合の結果、アクリロニトリルとランダムな配列となるランダムコポリマー、あるいはアクリロニトリル連鎖と他の共重合成分の連鎖がブロックを形成するブロックコポリマーが得られる。これらのポリマーの製造方法としては、アイソタクティックリッチPANを製造できる方法であれば特に限定されるものではないが、有効な方法としてたとえばD. M. WhiteらによりJ.Am.Chem.Soc., 1960, 82,5671に報告された尿素/モノマー包摂錯体を用いた低温(−78℃)での固相光重合法、有機マグネシウム等を開始剤に用いたアニオン重合法(Y. Nakanoら、Polym.Int.,1994,35(3).249-55)、または塩化マグネシウム等を分子鋳型兼担体に用いたラジカル重合法(H. Kuwaharaら、Polymer Preprints, 2002, 43(2), 978)などが挙げられる。得られたポリマーの組成、及びポリアクリロニトリル主鎖のタクティシティーは1H−NMR及び13C−NMRにより定量同定することができる。
(樹脂組成物の製造方法について)
本発明のポリアクリロニトリル系樹脂組成物の製造方法としては以下に示す方法で調整可能である。
樹脂組成物の製造方法として、一つにはアクリロニトリルその他の共重合モノマー成分をあらかじめ窒化ホウ素ナノチューブと混合した後にin situに重合することによる方法がある。この方法は大量の組成物を簡便に調整するに適している一方で、共重合モノマー安定性などの面から混合条件の制約を受けることもある。第二により一般的な方法としては樹脂をあらかじめ調整後に混合する方法がある。この方法は立体規則性ポリアクリロニトリル系樹脂、窒化ホウ素ナノチューブと立体規則性ポリアクリロニトリル系樹脂を溶解する溶媒からなる樹脂溶液を調整する工程と成形した後に該溶媒を除去する工程からなる。
ここで、窒化ホウ素ナノチューブ含有樹脂溶液の製造方法としては、A)立体規則性ポリアクリロニトリル系樹脂を溶解させることが可能な溶媒に窒化ホウ素ナノチューブを分散させた分散液を調整し、立体規則性ポリアクリロニトリル系樹脂を添加、溶解させて立体規則性ポリアクリロニトリル系樹脂と窒化ホウ素ナノチューブからなる混合溶液を調整する方法、B)立体規則性ポリアクリロニトリル系樹脂を溶解させることが可能な溶媒に立体規則性ポリアクリロニトリル系樹脂を溶解した樹脂溶液に窒化ホウ素ナノチューブを添加して分散させる方法、C)立体規則性ポリアクリロニトリル系樹脂を溶解させることができる溶媒に立体規則性ポリアクリロニトリル系樹脂と窒化ホウ素ナノチューブを添加して調整する方法等が利用できる。本発明では何れかの方法を単独で用いるか、あるいは何れかの方法を組み合わせても良い。中でも、A)の窒化ホウ素ナノチューブ分散液に立体規則性ポリアクリロニトリル系樹脂を添加、溶解させる方法が好ましい。
この際に例えば窒化ホウ素ナノチューブを溶媒中でビーズミル処理することや超音波処理を施す、強力なせん断処理を施すことにより窒化ホウ素ナノチューブの分散性を向上することができる。中でも、超音波処理を施す方法が好ましい。
本発明において、窒化ホウ素ナノチューブ分散液にポリアクリロニトリルを添加して、超音波処理等を施すことにより、窒化ホウ素ナノチューブの分散性が飛躍的に向上することを見出した。
上記本発明の立体規則性ポリアクリロニトリル系樹脂を溶解する溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン、ジメチルアセトアミドなどが挙げられるがこれらに限定されるものではなく、必要に応じて溶媒を選ぶことができる。
溶解性を損なわない範囲で、メタノール、エタノール、ブタノール、トルエン、キシレン、オルトクロロフェノール、アセトン、酢酸エチル、エチレングリコール、クロロホルム、クロロベンゼン、水といった溶媒が含まれていても差し支えない。
本発明の立体規則性ポリアクリロニトリル系樹脂組成物とは、このような立体規則性ポリアクリロニトリル樹脂を重合、窒化ホウ素ナノチューブと複合した後、任意の成型を行う前の塊状やペレット状などのいわゆる成型前ポリマーを意味する。このような立体規則性ポリアクリロニトリル系樹脂組成物は、調整した後に更に湿式紡糸、乾-湿式紡糸、あるいは乾式紡糸のような紡糸工程を経て繊維状に成型したり、もしくはフィルム成形を経てフィルム状に成形することができる。例えば、前述の窒化ホウ素ナノチューブ含有樹脂溶液を成形したのち、溶媒を除去することからなる成形体の製造方法を包含する。例えばフィルムの場合、ガラス、金属といった基板上にキャストして成形したのち、乾式製膜あるいは湿式製膜、乾式製膜と湿式製膜の併用によりフィルムを作製することが可能である。また繊維の場合は、湿式、乾式、乾式湿式の併用いずれを用いても良い。紡糸工程において、流動配向、せん断配向、又は延伸配向させる事によりポリアクリロニトリル系樹脂および窒素ホウ素ナノチューブの配向を高め機械特性を向上させる事が出来る。
また本発明の立体規則性ポリアクリロニトリル系樹脂組成物は、その成形物、物性を損なわない範囲で各種充填剤の添加は可能であり、機械的強度、耐熱性、寸法安定性、電気的性質の性能に優れた成形品を得るためには配合することが好ましい。
尚、本発明の目的を逸脱しない範囲で、他の熱可塑性樹脂、例えばポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート系樹脂、天然ゴム、合成ゴム等の熱可塑性樹脂、或いは難燃剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、滑剤、離型剤、発泡剤、架橋剤、着色剤等の添加剤を加えても差し支えない。
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
(1)強伸度測定
強伸度は、50mm×10mmのサンプルを用い、引張り速度5mm/分で行いオリエンテックUCT−1Tによって測定した。
(2)熱膨張係数
熱膨張係数は、TAインストルメント製TA2940を用いて30〜80℃の範囲で測定し、セカンドスキャンの値を熱膨張係数とした。
[参考例1 窒化ホウ素ナノチューブの製造]
窒化ホウ素製のるつぼに、1:1のモル比でホウ素と酸化マグネシウムを入れ、るつぼを高周波誘導加熱炉で1300℃に加熱した。ホウ素と酸化マグネシウムは反応し、気体状の酸化ホウ素(B)とマグネシウムの蒸気が生成した。この生成物をアルゴンガスにより反応室へ移送し、温度を1100℃に維持してアンモニアガスを導入した。酸化ホウ素とアンモニアが反応し、窒化ホウ素が生成した。1.55gの混合物を十分に加熱し、副生成物を蒸発させると、反応室の壁から310mgの白色の固体が得られた。続いて得られた白色固体を濃塩酸で洗浄、イオン交換水で中性になるまで洗浄後、60℃で減圧乾燥を行い窒化ホウ素ナノチューブ(以下、BNNTと略すことがある)を得た。得られたBNNTは、平均直径が27.6nm、平均長さが2460nmのチューブ状であった。
[参考例2 立体規則性ポリアクリロニトリル系樹脂の製造]
乾燥窒素気流下、無水塩化マグネシウム22重量部を二口ナシ型フラスコにとった。これを10℃に保ち、アクリロニトリル12重量部を滴下、攪拌した。アクリロニトリルは速やかに塩化マグネシウムと反応して粉状の錯体を形成した。これに脱水n−ヘプタン35重量部を加え、25℃下にて十分に攪拌混合してスラリ化した。ついで開始剤であるアゾビスイソバレロニトリル(和光純薬)0.18重量部をスラリに添加し、72時間重合を行った。重合後、スラリをメタノールにあけ、生成した白色沈殿をロ別し、脱イオン水、アセトンの順に洗浄して一夜真空乾燥することで生成ポリマー5重量部を得た。生成ポリマー1重量部を重水素化ジメチルスルホキシド10重量部に加熱溶解し、50℃にて13C−NMR測定を行い、トライアドタクティシティーを定量したところ、mm/mr/rr=58/31/11であり、高いアイソタクティシティーを有することが確認された。
[実施例1]
0.15重量部の窒化ホウ素ナノチューブを100重量部のジメチルホルムアミドに添加して、超音波バスにて4時間処理を行い、窒化ホウ素ナノチューブ分散液を調整した。上記窒化ホウ素ナノチューブ分散液に参考例2で合成した立体規則性ポリアクリロニトリル0.15重量部を添加して超音波バスにて30分処理を行ったところ、飛躍的に窒化ホウ素ナノチューブの分散性が向上した。続いて参考例2で合成した立体規則性ポリアクリロニトリル14.85重量部を添加して60℃でポリアクリロニトリルが溶解するまで攪拌した。得られた窒化ホウ素ナノチューブ含有ポリアクリロニトリル溶液をガラス基板上に200μmのドクターブレードを使用してキャストした後、80℃で1時間乾燥させた。続いて、乾燥したフィルムをイオン交換水中に投入しフィルムをガラス基板上より剥離し、1時間洗浄を行った。得られたフィルムを金枠に固定して80℃減圧乾燥を1時間実施した。フィルムの厚みは16μm、熱膨張係数は40.7ppm/℃、引張弾性率は3.9Gpa、引張り強度は75.6Mpaであった。
[実施例2]
0.75重量部の窒化ホウ素ナノチューブを100重量部のジメチルホルムアミドに添加して、超音波バスにて4時間処理を行い、窒化ホウ素ナノチューブ分散液を調整した。上記窒化ホウ素ナノチューブ分散液に参考例2で合成した立体規則性ポリアクリロニトリル0.75重量部を添加して超音波バスにて30分処理を行ったところ、飛躍的に窒化ホウ素ナノチューブの分散性が向上した。続いて参考例2で合成した立体規則性ポリアクリロニトリル14.25重量部を添加して60℃でポリアクリロニトリルが溶解するまで攪拌した。得られた窒化ホウ素ナノチューブ含有ポリアクリロニトリル溶液をガラス基板上に200μmのドクターブレードを使用してキャストした後、80℃で1時間乾燥させた。続いて、乾燥したフィルムをイオン交換水中に投入しフィルムをガラス基板上より剥離し、1時間洗浄を行った。得られたフィルムを金枠に固定して80℃減圧乾燥を1時間実施した。フィルムの厚みは18μm、熱膨張係数は22.5ppm/℃、引張弾性率は5.12Gpa、引張り強度は76.2Mpaであった。
[比較例1]
窒化ホウ素ナノチューブを含有しない以外は、実施例1と同様に参考例2で合成した立体規則性ポリアクリロニトリルのフィルムを作製した。フィルムの厚みは15μm、熱膨張係数は62.3ppm/℃、引張弾性率は3.4Gpa、引張り強度は71.7MPaであった。

Claims (5)

  1. ポリアクリロニトリル成分中のアイソタクティックトライアド含量が全ポリアクリロニトリルの繰り返し単位中の35モル%以上である立体規則性ポリアクリロニトリル系樹脂100重量部と窒化ホウ素ナノチューブ(官能基化され可溶性にされたものを除く)0.01〜100重量部とからなる立体規則性ポリアクリロニトリル系樹脂組成物。
  2. 窒化ホウ素ナノチューブは、平均直径が0.4nm〜1μm、アスペクト比が5以上であることを特徴とする請求項1に記載の立体規則性ポリアクリロニトリル系樹脂組成物。
  3. 立体規則性ポリアクリロニトリル系樹脂が、ポリアクリロニトリル成分を50重量%以上有することを特徴とする請求項1または2に記載の立体規則性ポリアクリロニトリル系樹脂組成物。
  4. 窒化ホウ素ナノチューブが白色のものであることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の立体規則性ポリアクリロニトリル系樹脂組成物。
  5. 立体規則性ポリアクリロニトリル系樹脂を溶解する溶媒に窒化ホウ素ナノチューブを分散させた後、立体規則性ポリアクリロニトリル系樹脂を添加、溶解して立体規則性ポリアクリロニトリル系樹脂と窒化ホウ素ナノチューブよりなる混合溶液を調整し、溶媒を除去することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
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