一般に、自動車等の車輌に於いては、アクティブサスペンション装置等により各車輪の接地荷重を制御することが可能であり、各車輪の接地荷重を制御することによっても車両の走行運動を制御可能である。また操舵制御手段及び制駆動力制御手段による車両の走行運動の制御効果は各車輪の接地荷重の影響を受ける。
しかるに上記公開公報に記載された走行制御装置に於いては、複数の挙動制御手段は操舵制御手段及び制駆動力制御手段であり、配分制御手段は評価関数の演算によって車輌全体の目標挙動制御量を操舵制御手段及び制駆動力制御手段に配分するようになっており、複数の挙動制御手段として操舵制御手段及び制駆動力制御手段に加えてアクティブサスペンション装置の如く各車輪の接地荷重を制御可能な接地荷重制御手段が搭載された車両に於いて、車両の走行運動を最適に制御するために車輌全体の目標挙動制御量を操舵制御手段、制駆動力制御手段、接地荷重制御手段に如何に配分すべきかについては検討がなされておらず、従って操舵制御手段、制駆動力制御手段、接地荷重制御手段が搭載された車両に上記公開公報に記載された走行制御装置を適用することができない。
また操舵制御手段、制駆動力制御手段、接地荷重制御手段には車両の走行運動を制御する上でそれぞれに特徴があり、車両の走行状況によっては車輌全体の目標挙動制御量を操舵制御手段、制駆動力制御手段、接地荷重制御手段の全てに配分するのではなく、車両の走行状況及び各制御手段の特徴に着目して特定の制御手段を優先して制御することが好ましい。
また操舵制御手段、制駆動力制御手段、接地荷重制御手段の全てについての評価関数を演算することにより、車輌全体の目標挙動制御量を常に全ての制御手段に配分しようとすると、演算パラメータが多いことに起因して演算負荷が常時大きくなることが避けられず、また上記特許文献1に記載された走行制御装置の場合の如く制御手段が二種類である場合に比して各制御手段の制御量は少なくなるが、全ての制御手段を作動させることに起因して消費エネルギが大きくなるという問題がある。
本発明は、評価関数の演算によって車輌全体の目標挙動制御量を操舵制御手段及び制駆動力制御手段に配分するよう構成された従来の車両の走行制御装置に於ける上述の如き問題に鑑みてなされたものであり、本発明の主要な課題は、複数の走行運動制御手段として操舵制御手段、制駆動力制御手段、接地荷重制御手段を備えた車両に於いて、車両の走行状況を判定し、車両の走行状況及び各制御手段の特徴に応じて操舵制御手段、制駆動力制御手段、接地荷重制御手段に対する車輌全体の目標挙動制御量の配分態様を変更することにより、演算負荷や消費エネルギの増大を抑制しつつ各制御手段の制御量を最適化し、車両の走行運動を最適に制御することである。
〔課題を解決するための手段及び発明の効果〕
上述の主要な課題は、本発明によれば、請求項1の構成、即ち互いに異なる作用により互いに協調して車両の走行運動を制御する複数の走行運動制御手段と、車両を安定的に走行させるための車両の目標走行運動状態量を演算する手段と、車両の走行運動状態量を前記目標走行運動状態量にするための車両全体の目標走行運動制御量を演算する手段と、前記車両全体の目標走行運動制御量に基づいて前記複数の走行運動制御手段の各々について目標制御量を演算し、前記複数の走行運動制御手段をそれぞれ対応する前記目標制御量に基づいて制御する制御手段とを有する車両の走行制御装置に於いて、前記複数の走行運動制御手段は各車輪の接地荷重を制御する接地荷重制御手段と、運転者による操舵操作とは無関係に車輪を操舵可能な操舵制御手段と、運転者による制駆動操作とは無関係に各車輪の制駆動力を個別に制御可能な制駆動力制御手段とを含み、前記制御手段は車両の走行状態が緊急の走行運動制御を必要とする走行状態であるか否かを判定し、車両の走行状態が緊急の走行運動制御を必要とする走行状態であるときには、前記複数の走行運動制御手段について予め設定された評価関数を演算することによって前記車両全体の目標走行運動制御量を前記複数の走行運動制御手段に配分することにより前記複数の走行運動制御手段の目標制御量を演算し、車両の走行状態が緊急の走行運動制御を必要とする走行状態ではないときには、車両の走行状態に基づいて前記複数の走行運動制御手段のうちの特定の走行運動制御手段の目標制御量を演算し、前記特定の走行運動制御手段の目標制御量に基づいて前記特定の走行運動制御手段の制御による車両の物理量の変化量を演算し、前記車両全体の目標走行運動制御量及び前記車両の物理量の変化量に基づいて他の走行運動制御手段の目標制御量を演算することを特徴とする車両の走行制御装置によって達成される。
上記請求項1の構成によれば、車両の走行状態が緊急の走行運動制御を必要とする走行状態であるときには、複数の走行運動制御手段について予め設定された評価関数を演算することによって車両全体の目標走行運動制御量を複数の走行運動制御手段に配分することにより複数の走行運動制御手段の目標制御量が演算されるので、操舵制御手段、制駆動力制御手段、接地荷重制御手段の全てを使用して緊急の走行運動制御を行い、これにより車両の走行状態を確実に且つ効果的に安定化させることができる。
また車両の走行状態が緊急の走行運動制御を必要とする走行状態ではないときには、車両の走行状態に基づいて複数の走行運動制御手段のうちの特定の走行運動制御手段の目標制御量が演算され、特定の走行運動制御手段の目標制御量に基づいて特定の走行運動制御手段の制御による車両の物理量の変化量が演算され、車両全体の目標走行運動制御量及び車両の物理量の変化量に基づいて他の走行運動制御手段の目標制御量が演算されるので、特定の走行運動制御手段を優先させて車両の走行状態を安定化させる制御を行うと共に、特定の走行運動制御手段の制御による車両の物理量の変化量及び車両全体の目標走行運動制御量に基づいて他の走行運動制御手段を補助的に制御することができ、これにより車両全体の目標走行運動制御量を同時に複数の走行運動制御手段の全てに配分する場合に比して容易に且つ確実に各走行運動制御手段を制御することができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1の構成に於いて、前記制御手段は車両の走行状態が緊急の走行運動制御を必要とする走行状態又は車輌の挙動悪化の虞れがある走行状態であるか否かを判定し、車両の走行状態が緊急の走行運動制御を必要とする走行状態であるときには、前記複数の走行運動制御手段について予め設定された第一の評価関数を演算することによって前記車両全体の目標走行運動制御量を前記複数の走行運動制御手段に配分することにより前記複数の走行運動制御手段の目標制御量を演算し、車両の走行状態が緊急の走行運動制御を必要とする走行状態ではないが車輌の挙動悪化の虞れがある走行状態であるときには、車両の走行状態に基づいて前記複数の走行運動制御手段のうちの特定の走行運動制御手段の目標制御量を演算し、前記特定の走行運動制御手段の目標制御量に基づいて前記特定の走行運動制御手段の制御による車両の物理量の変化量を演算し、前記車両全体の目標走行運動制御量及び前記車両の物理量の変化量に基づいて他の走行運動制御手段について予め設定された第二の評価関数を演算することにより前記他の走行運動制御手段の目標制御量を演算し、車両の走行状態が緊急の走行運動制御を必要とせず車輌の挙動悪化の虞れもない走行状態であるときには、車両の走行状態に基づいて前記特定の走行運動制御手段の目標制御量を演算し、前記特定の走行運動制御手段の目標制御量に基づいて前記特定の走行運動制御手段の制御による車両の物理量の変化量を演算し、前記車両全体の目標走行運動制御量及び前記車両の物理量の変化量に基づいて他の一つの走行運動制御手段の目標制御量を演算し、前記車両全体の目標走行運動制御量を低減補正し、低減補正された車両全体の目標走行運動制御量に基づいて残りの走行運動制御手段の目標制御量を演算するよう構成される(請求項2の構成)。
上記請求項2の構成によれば、車両の走行状態が緊急の走行運動制御を必要とする走行状態であるときには、複数の走行運動制御手段について予め設定された第一の評価関数を演算することによって車両全体の目標走行運動制御量を複数の走行運動制御手段に配分することにより複数の走行運動制御手段の目標制御量が演算されるので、車両全体の目標走行運動制御量を複数の走行運動制御手段の全てに配分し、全ての制御手段を使用して緊急の走行運動制御を行い、これにより車両の走行状態を確実に且つ効果的に安定化させることができる。
また車両の走行状態が緊急の走行運動制御を必要とする走行状態ではないが車輌の挙動悪化の虞れがある走行状態であるときには、車両の走行状態に基づいて複数の走行運動制御手段のうちの特定の走行運動制御手段の目標制御量が演算され、特定の走行運動制御手段の目標制御量に基づいて特定の走行運動制御手段の制御による車両の物理量の変化量が演算され、車両全体の目標走行運動制御量及び車両の物理量の変化量に基づいて他の走行運動制御手段について予め設定された第二の評価関数を演算することにより他の走行運動制御手段の目標制御量が演算されるので、特定の走行運動制御手段を優先させて車両の走行状態を安定化させる制御を行うと共に、特定の走行運動制御手段の制御による車両の物理量の変化量及び車両全体の目標走行運動制御量に基づいて他の走行運動制御手段を補助的に制御することができ、これにより複数の走行運動制御手段の全てについて予め設定された評価関数を演算する場合に比して容易に且つ確実に各走行運動制御手段を制御することができる。
また車両の走行状態が緊急の走行運動制御を必要とせず車輌の挙動悪化の虞れもない走行状態であるときには、車両の走行状態に基づいて特定の走行運動制御手段の目標制御量が演算され、特定の走行運動制御手段の目標制御量に基づいて特定の走行運動制御手段の制御による車両の物理量の変化量が演算され、車両全体の目標走行運動制御量及び車両の物理量の変化量に基づいて他の一つの走行運動制御手段の目標制御量が演算され、車両全体の目標走行運動制御量が低減補正され、低減補正された車両全体の目標走行運動制御量に基づいて残りの走行運動制御手段の目標制御量が演算されるので、複数の走行運動制御手段の全てについて予め設定された評価関数を演算することなく、各走行運動制御手段の制御の優先順位を明確にして車両の走行運動を制御することができ、従って複数の走行運動制御手段の全てについて予め設定された評価関数を演算することにより車両全体の目標走行運動制御量を同時に複数の走行運動制御手段の全てに配分する場合や、複数の評価関数を演算することにより車両全体の目標走行運動制御量を各走行運動制御手段に配分する場合に比して、容易に且つ確実に各走行運動制御手段を制御することができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1又は2の構成に於いて、前記制御手段は車両の走行状態が緊急の走行運動制御を必要とする走行状態であるときには、前記接地荷重制御手段、前記操舵制御手段、前記制駆動力制御手段について予め設定された評価関数を演算することによって前記車両全体の目標走行運動制御量を前記接地荷重制御手段、前記操舵制御手段、前記制駆動力制御手段に配分することにより前記接地荷重制御手段の目標制御量としての各車輪の目標接地荷重、前記操舵制御手段の目標制御量としての各車輪の目標スリップ角、前記制駆動力制御手段の目標制御量としての各車輪の目標スリップ率を演算するよう構成される(請求項3の構成)。
上記請求項3の構成によれば、車両の走行状態が緊急の走行運動制御を必要とする走行状態であるときには、接地荷重制御手段、操舵制御手段、制駆動力制御手段について予め設定された評価関数を演算することによって車両全体の目標走行運動制御量を接地荷重制御手段、操舵制御手段、制駆動力制御手段に配分することにより接地荷重制御手段の目標制御量としての各車輪の目標接地荷重、操舵制御手段の目標制御量としての各車輪の目標スリップ角、制駆動力制御手段の目標制御量としての各車輪の目標スリップ率が演算されるので、車両全体の目標走行運動制御量を接地荷重制御手段、操舵制御手段、制駆動力制御手段の全てに最適に配分して各車輪の目標接地荷重、各車輪の目標スリップ角、各車輪の目標スリップ率を演算し、接地荷重制御手段、操舵制御手段、制駆動力制御手段の全てを有効に使用して緊急の走行運動制御を確実に且つ効果的に行うことができる。
また本発明によれば、上記請求項1乃至3の何れかの構成に於いて、前記特定の走行運動制御手段は前記接地荷重制御手段であるよう構成される(請求項4の構成)。
上記請求項4の構成によれば、特定の走行運動制御手段は接地荷重制御手段であるので、操舵制御手段及び制駆動力制御手段よりも接地荷重制御手段を優先させることができ、これにより操舵制御手段若しくは制駆動力制御手段が特定の走行運動制御手段とされる場合に比して操舵制御手段及び制駆動力制御手段の制御量を低減し、運転者による操舵操作とは無関係に車輪が操舵されたり、運転者による制駆動操作とは無関係に各車輪の制駆動力が制御されることによる違和感を抑制しつつ車両を安定的に走行させることができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項4の構成に於いて、前記制御手段は車両の走行状態が緊急の走行運動制御を必要としないが車輌の挙動悪化の虞れがある走行状態であるときには、車両の走行状態に基づいて前記接地荷重制御手段の目標制御量としての各車輪の目標接地荷重を演算し、前記目標接地荷重に基づいて前記接地荷重制御手段の制御による車両の物理量の変化量を演算し、前記車両全体の目標走行運動制御量及び前記車両の物理量の変化量に基づいて前記操舵制御手段及び前記制駆動力制御手段について予め設定された評価関数を演算することにより前記操舵制御手段の目標制御量としての各車輪の目標スリップ角及び前記制駆動力制御手段の目標制御量としての各車輪の目標スリップ率を演算するよう構成される(請求項5の構成)。
上記請求項5の構成によれば、車両の走行状態が緊急の走行運動制御を必要としないが車輌の挙動悪化の虞れがある走行状態であるときには、車両の走行状態に基づいて接地荷重制御手段の目標制御量としての各車輪の目標接地荷重が演算され、目標接地荷重に基づいて接地荷重制御手段の制御による車両の物理量の変化量が演算され、車両全体の目標走行運動制御量及び車両の物理量の変化量に基づいて操舵制御手段及び制駆動力制御手段について予め設定された評価関数を演算することにより操舵制御手段の目標制御量としての各車輪の目標スリップ角及び制駆動力制御手段の目標制御量としての各車輪の目標スリップ率が演算される。
従って操舵制御手段及び制駆動力制御手段よりも接地荷重制御手段を優先させることができると共に、車両全体の目標走行運動制御量及び接地荷重制御手段の制御による車両の物理量の変化量に基づいて操舵制御手段の目標制御量としての各車輪の目標スリップ角及び制駆動力制御手段の目標制御量としての各車輪の目標スリップ率を最適に演算し、運転者による操舵操作とは無関係に車輪が操舵されたり、運転者による制駆動操作とは無関係に各車輪の制駆動力が制御されることによる違和感を抑制しつつ車輌の挙動悪化の虞れを確実に且つ効果的に低減することができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項4又は5の構成に於いて、前記制御手段は車両の走行状態が緊急の走行運動制御を必要とせず車輌の挙動悪化の虞れもない走行状態であるときには、車両の走行状態に基づいて前記接地荷重制御手段の目標制御量としての各車輪の目標接地荷重を演算し、前記目標接地荷重に基づいて前記接地荷重制御手段の制御による車両の物理量の変化量を演算し、前記車両全体の目標走行運動制御量及び前記車両の物理量の変化量に基づいて前記操舵制御手段の目標制御量としての各車輪の目標スリップ角を演算し、前記車両全体の目標走行運動制御量を低減補正し、低減補正された車両全体の目標走行運動制御量に基づいて前記制駆動力制御手段の目標制御量としての各車輪の目標スリップ率を演算するよう構成される(請求項6の構成)。
上記請求項6の構成によれば、車両の走行状態が緊急の走行運動制御を必要とせず車輌の挙動悪化の虞れもない走行状態であるときには、車両の走行状態に基づいて接地荷重制御手段の目標制御量としての各車輪の目標接地荷重が演算され、目標接地荷重に基づいて接地荷重制御手段の制御による車両の物理量の変化量が演算され、車両全体の目標走行運動制御量及び車両の物理量の変化量に基づいて操舵制御手段の目標制御量としての各車輪の目標スリップ角が演算され、車両全体の目標走行運動制御量が低減補正され、低減補正された車両全体の目標走行運動制御量に基づいて制駆動力制御手段の目標制御量としての各車輪の目標スリップ率が演算される。
従って接地荷重制御手段の制御を最優先し、その次に操舵制御手段の制御を優先して車両の走行運動を制御することができるだけでなく、車両全体の目標走行運動制御量及び接地荷重制御手段の制御による車両の物理量の変化量に基づいて操舵制御手段の目標制御量としての各車輪の目標スリップ角を最適に演算し、また低減補正された車両全体の目標走行運動制御量に基づいて制駆動力制御手段の目標制御量としての各車輪の目標スリップ率を容易に演算することができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項6の構成に於いて、前記低減補正された車両全体の目標走行運動制御量に基づいて前記制駆動力制御手段について予め設定された評価関数を演算することにより前記制駆動力制御手段の目標制御量としての各車輪の目標スリップ率を演算するよう構成される(請求項7の構成)。
上記請求項7の構成によれば、低減補正された車両全体の目標走行運動制御量に基づいて制駆動力制御手段について予め設定された評価関数を演算することにより制駆動力制御手段の目標制御量としての各車輪の目標スリップ率が演算されるので、低減補正された車両全体の目標走行運動制御量に基づいて各車輪の目標スリップ率を容易に演算することができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項2乃至7の何れかの構成に於いて、前記車両の物理量の変化量は接地荷重の変化に伴う車輪タイヤの特性値の変化量であるよう構成される(請求項8の構成)。
上記請求項8の構成によれば、車両の物理量の変化量は接地荷重の変化に伴う車輪タイヤの特性値の変化量であるので、接地荷重の変化に伴う車輪タイヤの特性値の変化量を考慮して操舵制御手段の目標制御量としての各車輪の目標スリップ角や制駆動力制御手段の目標制御量としての各車輪の目標スリップ率を最適に演算することができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1乃至8の何れかの構成に於いて、前記制御手段は車両がスピン状態又はドリフトアウト状態にあるとき又は車両が障害物に衝突する虞れが高いときに、車両の走行状態が緊急の走行運動制御を必要とする走行状態であると判定するよう構成される(請求項9の構成)。
上記請求項9の構成によれば、車両がスピン状態又はドリフトアウト状態にあるとき又は車両が障害物に衝突する虞れが高いときに、車両の走行状態が緊急の走行運動制御を必要とする走行状態であると判定されるので、車両がスピン状態又はドリフトアウト状態にあるとき又は車両が障害物に衝突する虞れが高いときには、操舵制御手段、制駆動力制御手段、接地荷重制御手段の全てを使用して車両の走行運動制御を行い、これにより車両の走行状態を確実に且つ効果的に安定化させたり、車両が障害物に衝突する虞れを確実に且つ効果的に低減したりすることができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項2乃至9の何れかの構成に於いて、前記制御手段は車両がスピン状態又はドリフトアウト状態になる虞れがあるときに、車両の走行状態が車輌の挙動悪化の虞れがある走行状態であると判定するよう構成される(請求項10の構成)。
上記請求項10の構成によれば、車両がスピン状態又はドリフトアウト状態になる虞れがあるときに、車両の走行状態が車輌の挙動悪化の虞れがある走行状態であると判定されるので、車両がスピン状態又はドリフトアウト状態になる虞れがあるときには、特定の走行運動制御手段を優先させて車両の走行状態を安定化させる制御を行うと共に、特定の走行運動制御手段の制御による車両の物理量の変化量及び車両全体の目標走行運動制御量に基づいて他の走行運動制御手段を補助的に制御し、これにより複数の走行運動制御手段の全てについて予め設定された評価関数を演算する場合に比して容易に且つ確実に各走行運動制御手段を制御することができると共に、車両がスピン状態又はドリフトアウト状態になる虞れを確実に且つ効果的に低減することができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1乃至10の何れかの構成に於いて、前記操舵制御手段は前輪用操舵制御手段と後輪用操舵制御手段とよりなり、前記制御手段は車両の走行状態が後輪の横滑り状態にあるときには、前記評価関数に於ける後輪についての重みを0に設定するよう構成される(請求項11の構成)。
上記請求項11の構成によれば、車両の走行状態が後輪の横滑り状態にあるときには、評価関数に於ける後輪についての重みが0に設定されるので、各制御手段の後輪についての制御量を0にし、これにより後輪の横力が低下することに起因して後輪の横滑り状態が更に悪化することを確実に防止することができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1乃至11の何れかの構成に於いて、前記操舵制御手段は前輪用操舵制御手段と後輪用操舵制御手段とよりなり、前記制御手段は車両の走行状態が前輪の横滑り状態にあるときには、前記評価関数に於ける前輪についての重みを0に設定するよう構成される(請求項12の構成)。
上記請求項12の構成によれば、車両の走行状態が前輪の横滑り状態にあるときには、評価関数に於ける前輪についての重みが0に設定されるので、各制御手段の前輪についての制御量を0にし、これにより前輪の横力が低下することに起因して前輪の横滑り状態が更に悪化することを確実に防止することができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項5乃至12の何れかの構成に於いて、前記制御手段は運転者の運転操作量及び車両の走行状態に基づいて少なくとも車両の姿勢を目標姿勢にするために必要な各車輪の接地荷重として各車輪の目標接地荷重を演算するよう構成される(請求項13の構成)。
上記請求項13の構成によれば、運転者の運転操作量及び車両の走行状態に基づいて少なくとも車両の姿勢を目標姿勢にするために必要な各車輪の接地荷重として各車輪の目標接地荷重が演算されるので、車両の姿勢を運転者の運転操作量及び車両の走行状態に応じた目標姿勢に確実に制御することができる。
〔課題解決手段の好ましい態様〕
本発明の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至13の何れかの構成に於いて、車輌全体の目標走行運動制御量を演算する手段は運転者の車輌運転操作量に基づく車輌の目標走行運動に対応する車輌の目標走行運動状態量と車輌の走行状態に基づく車輌の実際の走行運動状態量との偏差に基づいて車輌全体の目標走行運動制御量を演算するよう構成される(好ましい態様1)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様1の構成に於いて、車輌の目標走行運動状態量は車輌の目標前後加速度、目標横加速度、目標ヨーレートであり、車両全体の目標走行運動制御量は車輌の目標前後力、目標横力、目標ヨーモーメントであるよう構成される(好ましい態様2)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至13又は上記好ましい態様1又は2の何れかの構成に於いて、接地荷重制御手段は各車輪に対応して設けられ、減衰力を発生すると共に車輪の接地荷重を増減する電磁式のショックアブソーバであるよう構成される(好ましい態様3)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至13又は上記好ましい態様1乃至3の何れかの構成に於いて、操舵制御手段は運転者による操舵操作とは無関係に前輪を操舵可能な前輪用操舵制御手段と、運転者による操舵操作とは無関係に後輪を操舵可能な後輪用操舵制御手段とよりなるよう構成される(好ましい態様4)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至13又は上記好ましい態様1乃至3の何れかの構成に於いて、操舵制御手段は運転者による操舵操作とは無関係に前輪を操舵可能であるよう構成される(好ましい態様5)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至13又は上記好ましい態様1乃至3の何れかの構成に於いて、操舵制御手段は運転者による操舵操作とは無関係に後輪を操舵可能であるよう構成される(好ましい態様6)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項2乃至13又は上記好ましい態様1乃至6の何れかの構成に於いて、車両全体の目標走行運動制御量は車輌の目標前後力、目標横力、目標ヨーモーメントであり、制御手段は車両の走行状態が緊急の走行運動制御を必要とせず車輌の挙動悪化の虞れもない走行状態であるときには、低減補正された車両全体の目標走行運動制御量としての車輌の目標前後力に基づいて残りの走行運動制御手段の目標制御量を演算するよう構成される(好ましい態様7)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項3乃至13又は上記好ましい態様1乃至7の何れかの構成に於いて、制御手段は接地荷重制御手段、操舵制御手段、制駆動力制御手段について予め設定された評価関数を演算することによって各車輪の接地荷重の目標修正量、各車輪のスリップ角の目標修正量、各車輪のスリップ率の目標修正量を演算し、各車輪の接地荷重とその目標修正量との和として各車輪の目標接地荷重を演算し、各車輪のスリップ角とその目標修正量との和として各車輪の目標スリップ角を演算し、各車輪のスリップ率とその目標修正量との和として各車輪の目標スリップ率を演算するよう構成される(好ましい態8)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項4乃至13又は上記好ましい態様1乃至7の何れかの構成に於いて、制御手段は操舵制御手段及び制駆動力制御手段について予め設定された評価関数を演算することによって各車輪のスリップ角の目標修正量及び各車輪のスリップ率の目標修正量を演算し、各車輪のスリップ角とその目標修正量との和として各車輪の目標スリップ角を演算し、各車輪のスリップ率とその目標修正量との和として各車輪の目標スリップ率を演算するよう構成される(好ましい態様9)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項7乃至13又は上記好ましい態様1乃至7の何れかの構成に於いて、制御手段は制駆動力制御手段について予め設定された評価関数を演算することによって各車輪のスリップ率の目標修正量を演算し、各車輪のスリップ率とその目標修正量との和として各車輪の目標スリップ率を演算するよう構成される(好ましい態様10)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項8乃至13又は上記好ましい態様1乃至10の何れかの構成に於いて、車輪タイヤの特性値の変化量は等価コーナリングパワーの変化量であるよう構成される(好ましい態様11)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様8乃至11の何れかの構成に於いて、車両の目標前後力をFxtとし、目標横力をFytとし、目標ヨーモーメントをMztとし、各車輪のスリップ角をαiとし、スリップ率をκiとし、前後力をFxiとし、横力をFyiとし、ヨーモーメントをMziとし、Wx、Wy、Wmをそれぞれ車両の前後力、横力、ヨーモーメントについての重みとし、Wk及びWdkをそれぞれスリップ率κi及びその目標修正量δκtiについての重みとし、Waf及びWdafをそれぞれ前輪のスリップ角αf及びその目標修正量δαftについての重みとし、War及びWdarをそれぞれ後輪のスリップ角αr及びその目標修正量δαrtについての重みとし、Wfzf及びWdfzfをそれぞれ前輪のFzfl、Fzfr及びその目標修正量δFztfl、δFztfrについての重みとし、Wfzr及びWdfzrをそれぞれ後輪のFzrl、Fzrr及びその目標修正量δFztrl、δFztrrについての重みとし、Σを左右前輪及び左右後輪についての和として、制御手段は下記の式
L1=Wx(Fxt−ΣFxi)2
+Wy(Fyt−ΣFyi)2
+Wm(Mzt−ΣMzi)2
+Σ(Wkκi2)2+Σ(Wdkδκti2)
+Wafαf2+Wdafδαtf2
+Warαr2+Wdarδαtr2
+WfzfFzfl2+WdfzfδFztfl2
+WfzfFzfr2+WdfzfδFztfr2
+WfzrFzrl2+WdfzrδFztrl2
+WfzrFzrr2+WdfzrδFztrr2
の評価関数L1を演算することにより、前輪のスリップ角の目標修正量δαft、後輪のスリップ角の目標修正量δαrt、各車輪のスリップ率の目標修正量δκti、各車輪の接地荷重の目標修正量δFztiを演算するよう構成される(好ましい態様12)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様9乃至11の何れかの構成に於いて、制御手段は下記の式
L2=Wx(Fxt−ΣFxi)2
+Wy(Fyt−ΣFyi)2
+Wm(Mzt−ΣMzi)2
+Σ(Wkκi2)2+Σ(Wdkδκti2)
+Wafαf2+Wdafδαtf2
+Warαr2+Wdarδαtr2
の評価関数L2の演算を行うことにより、前輪のスリップ角の目標修正量δαft、後輪のスリップ角の目標修正量δαrt、各車輪のスリップ率の目標修正量δκtiを演算するよう構成される(好ましい態様13)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様10又は11の構成に於いて、制御手段は下記の式
L3=Wx(Fxt−ΣFxi)2
+Σ(Wkκi2)2+Σ(Wdkδκti2)
の評価関数L3の演算を行うことにより、各車輪のスリップ率の目標修正量δκtiを演算するよう構成される(好ましい態様14)。
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を幾つかの好ましい実施例について詳細に説明する。
[第一の実施例]
図1は本発明による車両の走行制御装置の第一の実施例の前輪用操舵制御装置、後輪用操舵制御装置、制動力制御装置を示す概略構成図、図2は第一の実施例の駆動力制御装置及び接地荷重制御装置を示す概略構成図である。
図1に於いて、走行制御装置10は車両12に搭載され、前輪用操舵制御装置14と、後輪用操舵制御装置16と、制動力制御装置18と、駆動力制御装置20と、接地荷重制御装置22とを有している。前輪用操舵制御装置14及び後輪用操舵制御装置16はそれぞれ運転者の操舵操作とは無関係に前輪及び後輪を操舵可能な操舵制御手段を構成しており、制動力制御装置18及び駆動力制御装置20は互いに共働して運転者の制駆動操作とは無関係に各車輪の制駆動力を個別に制御可能な制駆動力制御手段を構成している。
また図1に於いて、24FL及び24FRはそれぞれ車両12の操舵輪である左右の前輪を示し、24RL及び24RRはそれぞれ左右の後輪を示している。操舵輪である左右の前輪24FL及び24FRは運転者によるステアリングホイール26の操作に応答して駆動されるラック・アンド・ピニオン型のパワーステアリング装置28によりラックバー30及びタイロッド32L及び32Rを介して転舵される。
ステアリングホイール26はアッパステアリングシャフト34、転舵角可変装置36、ロアステアリングシャフト38、ユニバーサルジョイント40を介してパワーステアリング装置28のピニオンシャフト42に駆動接続されている。図示の第一の実施例に於いては、転舵角可変装置36はハウジング36Aの側にてアッパステアリングシャフト34の下端に連結され、回転子36Bの側にてロアステアリングシャフト38の上端に連結された補助転舵駆動用の電動機44を含んでいる。
かくして転舵角可変装置36はアッパステアリングシャフト34に対し相対的にロアステアリングシャフト38を回転駆動することにより、左右の前輪24FL及び24FRをステアリングホイール26に対し相対的に補助転舵駆動し運転者の操舵操作とは無関係に前輪を操舵可能な前輪用操舵制御装置14の主要な装置として機能し、後に詳細に説明する如く電子制御装置46により制御される。
他方、左右の後輪24RL及び24RRは、運転者による左右の前輪24FL及び24FRの操舵とは無関係に、後輪操舵装置48の油圧式又は電動式のパワーステアリング装置50によりタイロッド52L及び52Rを介して操舵される。後輪操舵装置48は後輪用操舵制御装置16の主要な装置として機能し、後に詳細に説明する如く電子制御装置46により制御される。
またパワーステアリング装置28は油圧式パワーステアリング装置及び電動式パワーステアリング装置の何れであってもよいが、転舵角可変装置36による前輪の補助転舵駆動により発生されステアリングホイール26に伝達される操舵反力トルクの変動を低減する補助操舵トルクが発生されるよう、例えば電動機と、電動機の回転トルクをラックバー30の往復動方向の力に変換するボールねじ式の如き変換機構とを有するラック同軸型の電動式パワーステアリング装置であることが好ましい。
各車輪の制動力は制動装置54の油圧回路56によりホイールシリンダ58FL、58FR、58RL、58RR内の圧力Pi(i=fl、fr、rl、rr)、即ち制動圧が制御されることによって制御されるようになっている。図1には示されていないが、油圧回路56はオイルリザーバ、オイルポンプ、種々の弁装置等を含み、各ホイールシリンダの制動圧は通常時には運転者によるブレーキペダル60の踏み込み操作に応じて駆動されるマスタシリンダ62により制御され、また必要に応じて電子制御装置46により個別に制御される。
かくして制動装置54は運転者の制動操作とは無関係に各車輪の制動力を個別に制御可能な制動力制御装置18の主要な装置として機能し、後に詳細に説明する如く電子制御装置46により制御される。
また図示の実施例に於いては、図2に示されている如く、例えばエンジン及びトランスミッションよりなる駆動装置64の駆動トルクはセンターディファレンシャル66により前輪プロペラシャフト68及び後輪プロペラシャフト70へ伝達される。前輪プロペラシャフト68へ伝達された駆動トルクは前輪ディファレンシャル72により左前輪車軸74L及び右前輪車軸74Rへ伝達され、これにより左右の前輪24FL及び24FRが回転駆動される。また後輪プロペラシャフト70へ伝達された駆動トルクは後輪ディファレンシャル76により左後輪車軸78L及び右後輪車軸78Rへ伝達され、これにより左右の後輪24RL及び24RRが回転駆動される。
センターディファレンシャル66は電子制御装置46によって制御されることにより、前輪プロペラシャフト68及び後輪プロペラシャフト70に対する駆動トルクの伝達比を制御可能である。また前輪ディファレンシャル72は電子制御装置46によって制御されることにより、左前輪車軸74L及び右前輪車軸74Rに対する駆動トルクの伝達比を制御可能であり、後輪ディファレンシャル76は電子制御装置46によって制御されることにより、左後輪車軸78L及び右後輪車軸78Rに対する駆動トルクの伝達比を制御可能である。
かくして駆動装置64、センターディファレンシャル66、前輪ディファレンシャル72、後輪ディファレンシャル76は運転者の駆動操作とは無関係に各車輪の駆動力を個別に制御可能な駆動制御装置20の主要な装置として機能し、後に詳細に説明する如く電子制御装置46により制御される。
また図2に示されている如く、左右の前輪24FL、24FR及び左右の後輪24RL、24RRのサスペンションにはそれぞれ電磁式のショックアブソーバ80FL、80FR、80RL、80RRが設けられている。ショックアブソーバ80FL〜80RRは例えば特開2005−96587号公開公報に記載されている如き公知の構造を有し、電子制御装置46によって制御されることにより、減衰力を発生すると共に、対応する車輪の接地荷重を増減する接地荷重制御装置22の主要な装置として機能する。
図3に示されている如く、電子制御装置46は転舵角可変装置36及びパワーステアリング装置50を制御する操舵制御用電子制御装置84と、パワーステアリング装置28を制御するアシストトルク制御用電子制御装置86と、制御装置54の油圧回路56を制御することにより各車輪の制動力を制御する制動力制御用電子制御装置88と、駆動装置64の駆動トルク及び各ディファレンシャル(DFT)66、72、76を制御する駆動力制御用電子制御装置90と、ショックアブソーバ80FL〜80RRを制御する接地荷重制御用電子制御装置92と、車両12が障害物に衝突する虞れがあるときには衝突防止制御を行う衝突防止制御用電子制御装置94と、これらの電子制御装置84〜94を統合的に制御する統合制御用電子制御装置96とを含んでいる。
上述の各電子制御装置84〜96はそれぞれCPUとROMとRAMと入出力ポート装置とを有し、これらが双方向性のコモンバスにより互いに接続されたマイクロコンピュータ及び駆動回路よりなっていてよい。また各電子制御装置84〜96は必要に応じてCAN98を経て相互に必要な情報を示す信号の授受を行う。
図示の実施例に於いては、図1及び図3に示されている如く、アッパステアリングシャフト34には該アッパステアリングシャフトの回転角度を操舵角θとして検出する操舵角センサ100が設けられており、転舵角可変装置36にはハウジング36A及び回転子36Bの相対回転角度をアッパステアリングシャフト34に対するロアステアリングシャフト38の相対回転角度θreとして検出する回転角度センサ102が設けられており、これらのセンサの出力はCAN98を経て操舵制御用電子制御装置84等へ供給される。
図1及び図2には示されていないが、車両12の前部には車両12の前方を撮影するCCDカメラ104と、探知波としてのミリ波を車両前方へ放射するミリ波レーダの如きレーダセンサ106とが設けられている。CCDカメラ104は車両12の前方の画像情報を示す信号をCAN98を経て衝突防止制御用電子制御装置94等へ出力し、レーダセンサ106は前方の車両や道路標識等の障害物を検出すると共に、その障害物と車両12との相対距離Lre及び相対速度Vreを検出し、それらの検出値を示す信号を衝突防止制御用電子制御装置94等へ出力するようになっている(例えば特開2005−31967号公報を参照)。
衝突防止制御用電子制御装置94はCCDカメラ104よりの情報に基づき車両の前方に障害物が存在すると判定される状況に於いて、相対距離Lreを相対速度Vreにて除算することにより衝突予測時間Ta(衝突までの余裕時間)を演算する。そして衝突防止制御用電子制御装置94は衝突予測時間Taが基準値Ta1(正の定数)以下であるときには、車両が障害物に衝突の虞れがあると判定すると共に、衝突を防止するための目標減速度Gxtcを演算し、これらを示す信号を統合制御用電子制御装置96等へ出力する。
また図3に示されている如く、車両の前後加速度Gxを検出する前後加速度センサ108、車両の横加速度Gyを検出する横加速度センサ110、車速Vを検出する車速センサ112、車両のヨーレートγを検出するヨーレートセンサ114、マスタシリンダ圧力Pmを検出する圧力センサ116、各車輪の制動圧Pi(i=fl、fr、rl、rr)を検出する圧力センサ118FL〜118RR、アクセルペダル120の踏み込み量としてのアクセル開度αを検出するアクセル開度センサ122、操舵トルクTsを検出するトルクセンサ124が接続されており、これらのセンサにより検出された値を示す信号も必要に応じてCAN98を経て統合制御用電子制御装置96等へ出力される。
尚操舵角センサ100、横加速度センサ110、ヨーレートセンサ114、トルクセンサ124はそれぞれ車両の左旋回時に生じる値を正として操舵角θ、横加速度Gy、ヨーレートγ、操舵トルクTsを検出し、回転角度センサ102は左旋回方向への左右前輪の相対転舵の場合を正として相対回転角度θreを検出する。
統合制御用電子制御装置96は、図4に示されたフローチャートに従って、車両の目標運動状態量として車両の目標ヨーレートγt、車両の目標横加速度Gyt、車両の目標前後加速度Gxtを演算し、車両の前後加速度Gxを目標前後加速度Gxtにするための車両の目標前後力Fxt、車両の横加速度Gyを目標横加速度Gytにするための車両の目標横力Fyt、車両のヨーレートγを目標ヨーレートγtにするための車両の目標ヨーモーメントMztを車両全体の目標走行運動制御量として演算する。
また統合制御用電子制御装置96は、車両の走行状態がスピン状態やドリフトアウト状態の如き不安定な状態であるか否かの判別を行い、車両の走行状態が不安定な状態ではないときには、衝突防止制御用電子制御装置94により車両が障害物に衝突の虞れがあると判定されているか否かの判別を行う。そして統合制御用電子制御装置96は、車両の走行状態が不安定な状態にあるか又は車両が障害物に衝突の虞れがあるときには、即ち車両の走行状態が緊急の走行運動制御を必要とする走行状態であるときには、緊急時の走行運動制御を行う。
緊急時の走行運動制御に於いては、統合制御用電子制御装置96は、図7に示されたフローチャートに従って、後に詳細に説明する如く、車両の目標前後力Fxt、目標横力Fyt、目標ヨーモーメントMzt及び各車輪のスリップ角αi、スリップ率κi、前後力Fxi、横力Fyi、ヨーモーメントMzi(i=fl、fr、rl、rr)を演算し、これらに基づき前輪用操舵制御装置14、後輪用操舵制御装置16、制動力制御装置18、駆動力制御装置20、接地荷重制御装置22について予め設定された下記の式1の第一の評価関数L1の演算を行うことにより、前輪のスリップ角の目標修正量δαft、後輪のスリップ角の目標修正量δαrt、各車輪のスリップ率の目標修正量δκti、各車輪の接地荷重の目標修正量δFzti(i=fl、fr、rl、rr)を演算する。
L1=Wx(Fxt−ΣFxi)2
+Wy(Fyt−ΣFyi)2
+Wm(Mzt−ΣMzi)2
+Σ(Wkκi2)2+Σ(Wdkδκti2)
+Wafαf2+Wdafδαtf2
+Warαr2+Wdarδαtr2
+WfzfFzfl2+WdfzfδFztfl2
+WfzfFzfr2+WdfzfδFztfr2
+WfzrFzrl2+WdfzrδFztrl2
+WfzrFzrr2+WdfzrδFztrr2 ……(1)
尚上記式1に於いて、Wx、Wy、Wmはそれぞれ車両の前後力、横力、ヨーモーメントについての重みであり、Wk及びWdkはそれぞれスリップ率κi及びその目標修正量δκtiについての重みであり、Waf及びWdafはそれぞれ前輪のスリップ角αf及びその目標修正量δαftについての重みであり、War及びWdarはそれぞれ後輪のスリップ角αr及びその目標修正量δαrtについての重みである。またWfzf及びWdfzfはそれぞれ前輪のFzfl、Fzfr及びその目標修正量δFztfl、δFztfrについての重みであり、Wfzr及びWdfzrはそれぞれ後輪のFzrl、Fzrr及びその目標修正量δFztrl、δFztrrについての重みであり、Σは左右前輪及び左右後輪についての和を意味する。
そして統合制御用電子制御装置96は左右前輪のスリップ角αfl及びαfrの平均値αfと前輪のスリップ角の目標修正量δαftとの和として前輪の目標スリップ角αftを演算し、左右後輪のスリップ角αrl及びαrrの平均値αrと後輪のスリップ角の目標修正量δαrtとの和として後輪の目標スリップ角αrtを演算し、スリップ率κiとスリップ率の目標修正量δκtiとの和として各車輪の目標スリップ率κtiを演算し、各車輪の接地荷重Fziと接地荷重の目標修正量δFztiとの和として各車輪の目標接地荷重Fzti(i=fl、fr、rl、rr)を演算する。
また統合制御用電子制御装置96は、車両の走行状態が緊急の走行運動制御を必要とする走行状態ではないときには、車両の走行状態がスピン状態やドリフトアウト状態の如き不安定な状態に悪化する虞れがあるか否かの判別、車両の挙動悪化の虞れがあるか否かの判別を行う。そして統合制御用電子制御装置96は、車両の挙動悪化の虞れがあるときには、準安定時の走行運動制御を行い、車両の挙動悪化の虞れがないときには、通常の走行運動制御を行う。
準安定時の走行運動制御に於いては、統合制御用電子制御装置96は、図6に示されたフローチャートに従って、車両の良好な乗り心地性を確保しつつ車体及び車輪の振動を減衰させると共に加減速や旋回等による車体の姿勢変化を抑制するための各車輪の目標接地荷重Fzti(i=fl、fr、rl、rr)を演算し、目標接地荷重Fztiに基づいて各車輪の等価コーナリングパワーCpi(i=fl、fr、rl、rr)を演算する。
そして統合制御用電子制御装置96は、各車輪のスリップ角αi(i=fl、fr、rl、rr)及びスリップ率κi(i=fl、fr、rl、rr)を演算し、各車輪のスリップ角αi、スリップ率κi、等価コーナリングパワーCpi等に基づき各車輪の前後力Fxi及び横力Fyi(i=fl、fr、rl、rr)及び車両のヨーモーメントMzi(i=fl、fr、rl、rr)を演算し、車両の目標前後力Fxt、目標横力Fyt、目標ヨーモーメントMzt及び各車輪の前後力Fxi、横力Fyi、ヨーモーメントMziに基づき、前輪用操舵制御装置14、後輪用操舵制御装置16、制動力制御装置18、駆動力制御装置20について予め設定された下記の式2の第二の評価関数L2の演算を行うことにより、前輪のスリップ角の目標修正量δαft、後輪のスリップ角の目標修正量δαrt、各車輪のスリップ率の目標修正量δκtiを演算する。
L2=Wx(Fxt−ΣFxi)2
+Wy(Fyt−ΣFyi)2
+Wm(Mzt−ΣMzi)2
+Σ(Wkκi2)2+Σ(Wdkδκti2)
+Wafαf2+Wdafδαtf2
+Warαr2+Wdarδαtr2 ……(2)
通常時の走行運動制御に於いては、統合制御用電子制御装置96は、図5に示されたフローチャートに従って、準安定時の走行運動制御の場合と同様の要領にて各車輪の目標接地荷重Fzti(i=fl、fr、rl、rr)を演算し、目標接地荷重Fztiに基づいて各車輪の等価コーナリングパワーCpi(i=fl、fr、rl、rr)を演算する。
そして統合制御用電子制御装置96は、操舵角θ及び車速Vに基づき車輌の目標スリップ角βt及び目標ヨーレートγtを演算し、目標スリップ角βt及び目標ヨーレートγtに基づき前輪の目標切れ角δft及び後輪の目標切れ角δrtを演算する。また統合制御用電子制御装置96は、前輪の目標切れ角δft及び後輪の目標切れ角δrtに基づき車両の横力Fy及びヨーモーメントMzをそれぞれ目標横力Fyt及び目標ヨーモーメントMztにするための前輪の目標スリップ角及び後輪の目標スリップ角と等価な値として前輪の目標スリップ角αft及び後輪の目標スリップ角αrtを演算する。更に統合制御用電子制御装置96は、各車輪のスリップ率κi(i=fl、fr、rl、rr)、前後力Fxi、車両の目標前後力Fxtに基づき、制動力制御装置18及び駆動力制御装置20について予め設定された下記の式3の第三の評価関数L3の演算を行うことにより、各車輪のスリップ率の目標修正量δκtiを演算し、スリップ率κiと目標修正量δκtiとの和として各車輪の目標スリップ率κtiを演算する。
L3=Wx(Fxt−ΣFxi)2
+Σ(Wkκi2)2+Σ(Wdkδκti2) ……(3)
統合制御用電子制御装置96は、前輪の目標スリップ角αft及び後輪の目標スリップ角αrt、各車輪の目標スリップ率κti、各車輪の目標接地荷重Fztiを演算すると、それらを示す信号をそれぞれ操舵制御用電子制御装置84、制動力制御用電子制御装置88及び駆動力制御用電子制御装置90、接地荷重制御用電子制御装置92へ出力する。
操舵制御用電子制御装置84は、前輪のスリップ角αf及び後輪のスリップ角αrがそれぞれ目標スリップ角αft及びαrtになるよう転舵角可変装置36及びパワーステアリング装置50を制御し、制動力制御用電子制御装置88及び駆動力制御用電子制御装置90は互いに共働して各車輪のスリップ率κiが目標スリップ率κtiになるよう制御装置54及び駆動装置64を制御し、接地荷重制御用電子制御装置92は各車輪の接地荷重Fziが目標接地荷重Fztiになるようショックアブソーバ80FL〜80RRを制御する。
尚アシストトルク制御用電子制御装置86は、運転者の操舵負担を軽減するよう当技術分野に於いて公知の要領にてパワーステアリング装置28を制御すると共に、転舵角可変装置36による前輪のスリップ角αfの制御に伴う操舵反力の変化を低減するようパワーステアリング装置28を制御する。
次に図4に示されたフローチャートを参照して第一の実施例に於いて統合制御用電子制御装置96により達成される車両の走行制御のメインルーチンについて説明する。尚図4に示されたフローチャートによる制御は図には示されていないイグニッションスイッチの閉成により開始され、所定の時間毎に繰返し実行される。
まずステップ410に於いては操舵角θを示す信号等の読み込みが行われ、ステップ420に於いては車速V等に基づき車両を安定的に走行させるための車両の目標運動状態量として車両の目標ヨーレートγt、車両の目標横加速度Gyt、車両の目標前後加速度Gxtが演算される。
例えば目標ヨーレートγtは操舵制御用電子制御装置84より入力されるステアリングギヤ比をNとし、車両のホイールベースをLとし、スタビリティファクタをKhとし、操舵−ヨーレート過渡伝達関数をH(s)として下記の式4に従って演算され、目標横加速度Gytはヨーレート−横加速度過渡伝達関数をG(s)として下記の式5により演算される。
γt=θ・V/{N・L(1+Kh・V2)}H(s) ……(4)
Gyt=γt・V・G(s) ……(5)
また目標前後加速度Gxtは制駆動力制御用電子制御装置86より入力されるエンジン回転数Ne、スロットル開度Ta、トランスミッションのシフトポジションPsに基づく駆動系のギヤ比Rd、マスタシリンダ圧力Pm、衝突防止のための目標減速度Gxtcに基づき、車両の目標前後加速度を演算するための関数F(Ne,Ta,Rd,Pm,Gxtc)により下記の式6に従って演算される。
Gxt=F(Ne,Ta,Rd,Pm,Gxtc) ……(6)
ステップ430に於いては車両の前後加速度Gxを目標前後加速度Gxtにするための車両の目標前後力Fxt、車両の横加速度Gyを目標横加速度Gytにするための車両の目標横力Fyt、車両のヨーレートγを目標ヨーレートγtにするための車両の目標ヨーモーメントMztが車両を安定的に走行させるための車両全体の目標走行運動制御量として演算される。
特に車両の目標前後力Fxt及び目標横力Fytは車両の質量をMvとしてそれぞれ下記の式7及び8に従って演算され、目標ヨーモーメントMztは車両のヨー慣性モーメントをIyとし、車両の目標ヨーレートγtの微分値をγtdとして下記の式9に従って演算される。
Fxt=Mv・Gxt ……(7)
Fyt=Mv・Gyt ……(8)
Mzt=Iy・γtd ……(9)
ステップ440に於いては例えば目標ヨーレートγtと車両の実際のヨーレートγとの偏差Δγが演算されると共に、ヨーレート偏差Δγの絶対値が挙動悪化判定の基準値γ1(正の定数)以上であるか否かの判別により車両の走行状態がスピン状態やドリフトアウト状態の如き不安定な状態であるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ700へ進み、否定判別が行われたときにはステップ450へ進む。
ステップ450に於いては衝突防止制御用電子制御装置94より入力される情報に基づき、車両の進行方向前方に障害物が存在し、衝突予測時間Taが衝突の虞れ判定の基準値Ta1以下であり衝突の虞れがあるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ700へ進み、否定判別が行われたときにはステップ460へ進む。
ステップ460に於いては例えばヨーレート偏差Δγの絶対値が挙動悪化の虞れ判定の基準値γ2(γ1よりも小さい正の定数)以上であるか否かの判別により車両の走行状態がスピン状態やドリフトアウト状態の如き不安定な状態に悪化する虞れがあるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ600へ進み、否定判別が行われたときにはステップ500へ進む。
ステップ500に於いては図5に示されたルーチンに従って後述の如く通常時の車両の走行制御が行われ、ステップ600に於いては図6に示されたルーチンに従って後述の如く準不安定時の車両の走行制御が行われ、ステップ700に於いては図7に示されたルーチンに従って後述の如く緊急時の車両の走行制御が行われる。
次に図5に示されたフローチャートを参照して第一の実施例に於ける通常時の車両の走行制御について説明する。
まずステップ510に於いては図8に示されたフローチャートに従って車両の良好な乗り心地性を確保しつつ車体及び車輪の振動を減衰させると共に加減速や旋回等による車体の姿勢変化を抑制するための各車輪の目標接地荷重Fzti(i=fl、fr、rl、rr)が演算され、ステップ520に於いては目標接地荷重Fztiを示す信号が接地荷重制御用電子制御装置92へ出力される。接地荷重制御用電子制御装置92は目標接地荷重Fztiを示す信号を受信すると、各車輪の接地荷重Fzi(i=fl、fr、rl、rr)がそれぞれ対応する目標接地荷重Fztiになるよう電磁式のショックアブソーバ80FL〜80RRを制御し、これにより各車輪の接地荷重Fziが制御される。
ステップ530に於いては目標接地荷重Fztiと各車輪の標準の接地荷重(例えば車両の停止時の値)Fz0i(i=fl、fr、rl、rr)との偏差として各車輪の接地荷重の偏差ΔFzi(i=fl、fr、rl、rr)が演算され、ステップ540に於いては接地荷重の偏差ΔFziに基づいて図には示されていないマップより各車輪の等価コーナリングパワーの変化量ΔCpi(i=fl、fr、rl、rr)が演算され、各車輪の等価コーナリングパワーの標準値Cp0i(正の定数)と変化量ΔCpiとの和として各車輪の等価コーナリングパワーCpi(i=fl、fr、rl、rr)が演算される。
ステップ550に於いては操舵角θ、車速V、各車輪の等価コーナリングパワーCpiに基づき、車両の横力Fy及びヨーモーメントMzをそれぞれ目標横力Fyt及び目標ヨーモーメントMztにするための前輪の目標スリップ角及び後輪の目標スリップ角と等価な値として前輪の目標スリップ角αft及び後輪の目標スリップ角αrtが演算される。
例えば操舵角θ及び車速Vに基づき車輌の目標スリップ角βt及び目標ヨーレートγtが演算され、車輌の重心と前輪車軸及び後輪車軸との間の車輌前後方向の距離をそれぞれLf及びLrとし、左右前輪の等価コーナリングパワーCpfl、Cpfrの平均値を前輪の等価コーナリングパワーCpfとし、左右後輪の等価コーナリングパワーCprl、Cprfrの平均値を後輪の等価コーナリングパワーCprとし、sをラプラス演算子として、目標スリップ角βt及び目標ヨーレートγtに基づき下記の式10に従って前輪の目標切れ角δft及び後輪の目標切れ角δrtが演算される。
そして前輪の目標切れ角δft及び後輪の目標切れ角δrtに基づきそれぞれ下記の式11及び12に従って前輪の目標スリップ角αft及び後輪の目標スリップ角αrtが演算される。
ステップ570に於いては当技術分野に於いて公知の要領にて車体のスリップ角βが推定され、前輪の目標スリップ角αft、後輪の目標スリップ角αrt、車体のスリップ角β等に基づきそれぞれ上記式11及び12に対応する下記の式13及び14に従って前輪の目標舵角δft及び後輪の目標舵角δrtが演算され、目標舵角δft及びδrtを示す信号が操舵制御用電子制御装置84へ出力される。尚目標舵角δft及びδrtは上記式10に従って演算された値であってもよい。
操舵制御用電子制御装置84は目標舵角δft及びδrtを示す信号を受信すると、目標舵角δft及びδrt、操舵角θ、目標ステアリングギヤ比Rgt等に基づき前輪の舵角制御量Δδf及び後輪の舵角制御量Δδrを演算し、舵角制御量Δδf及びΔδrに基づいて前輪用操舵制御装置14の転舵角可変装置36及び後輪用操舵制御装置16のパワーステアリング装置50を制御し、これにより左右前輪の舵角δf及び左右後輪の舵角δrがそれぞれ目標舵角δft及びδrtになるよう制御される。
ステップ575に於いては操舵制御用電子制御装置84より入力される情報に基づき各車輪のスリップ角αi(i=fl、fr、rl、rr)が演算され、各車輪の車輪速度Vwiに基づき各車輪のスリップ率κi(i=fl、fr、rl、rr)が演算される。また各車輪のスリップ角αi、スリップ率κi、等価コーナリングパワーCpi等に基づき例えば前述の特許文献1の式31〜40の如く当技術分野に於いて公知の要領にて各車輪の前後力Fxi及び横力Fyi(i=fl、fr、rl、rr)が演算され、前後力Fxi及び横力Fyiによる車両のヨーモーメントMzi(i=fl、fr、rl、rr)が演算される。
ステップ580に於いては各車輪のスリップ率κi、前後力Fxi、車両の目標前後力Fxtに基づき、制動力制御装置18及び駆動力制御装置20について予め設定された上記式3の評価関数L3の演算が行われることにより、各車輪のスリップ率の目標修正量δκti(i=fl、fr、rl、rr)が演算され、スリップ率κiと目標修正量δκtiとの和として各車輪の目標スリップ率κti(i=fl、fr、rl、rr)が演算される。
ステップ590に於いては各車輪の目標スリップ率κti、各車輪の車輪速度Vwi、車両の前後加速度Gxに基づき各車輪の目標制駆動力Fxti(i=fl、fr、rl、rr)が演算される。また車両の目標前後力Fxtが駆動力であるときには、各車輪の目標制動力Fbti(i=fl、fr、rl、rr)が0に設定されると共に、車両の目標前後力Fxtに基づき駆動装置64の目標出力Fdtが演算され、各車輪の目標制駆動力Fxtiに基づきセンターディファレンシャル66、前輪ディファレンシャル72、後輪ディファレンシャル76の目標制御量が演算される。
これに対し車両の目標前後力Fxtが制動力であるときには、駆動装置64の目標出力Fdt及びセンターディファレンシャル66等の目標制御量が0に設定されると共に、各車輪の目標制駆動力Fxtiに基づき各車輪の目標制動力Fbtiが演算される。そして目標出力Fdt及びセンターディファレンシャル66等の目標制御量を示す信号が駆動力制御用電子制御装置90へ出力され、各車輪の目標制動力Fbtiを示す信号が制動力制御用電子制御装置88へ出力される。
駆動力制御用電子制御装置90は目標出力Fdtに基づき駆動装置64の出力を制御すると共に、センターディファレンシャル66、前輪ディファレンシャル72、後輪ディファレンシャル76をそれぞれ対応する目標制御量に基づいて制御し、制動力制御用電子制御装置88は各車輪の制動力がそれぞれ対応する目標制動力Fbtiになるよう制動装置54を制御し、これにより各車輪の制駆動力Fxiが対応する目標制駆動力Fxtiになるよう制御される。
次に図6に示されたフローチャートを参照して第一の実施例に於ける準不安定時の車両の走行制御について説明する。
ステップ610乃至645はそれぞれ上述の通常時の車両の走行制御に於けるステップ510乃至540及びステップ575の場合と同様に実行され、ステップ670及び690はそれぞれ上述の通常時の車両の走行制御に於けるステップ570及び590の場合と同様に実行される。
ステップ650に於いては車両の目標前後力Fxt、目標横力Fyt、目標ヨーモーメントMzt及び各車輪の前後力Fxi、横力Fyi、ヨーモーメントMziに基づき、前輪用操舵制御装置14、後輪用操舵制御装置16、制動力制御装置18、駆動力制御装置20について予め設定された上記式2の評価関数L2の演算が行われることにより、前輪のスリップ角の目標修正量δαft、後輪のスリップ角の目標修正量δαrt、各車輪のスリップ率の目標修正量δκtiが演算される。
そして左右前輪のスリップ角αfl及びαfrの平均値を前輪のスリップ角αfとし、左右後輪のスリップ角αrl及びαrrの平均値を後輪のスリップ角αrとして、スリップ角の平均値αfと前輪のスリップ角の目標修正量δαftとの和として前輪の目標スリップ角αftが演算され、スリップ角の平均値αrと後輪のスリップ角の目標修正量δαrtとの和として後輪の目標スリップ角αrtが演算され、スリップ率κiとスリップ率の目標修正量δκtiとの和として各車輪の目標スリップ率κtiが演算される。
次に図7に示されたフローチャートを参照して第一の実施例に於ける緊急時の車両の走行制御について説明する。
まずステップ730に於いては1サイクル前の各車輪の目標接地荷重Fzti(i=fl、fr、rl、rr)と標準の接地荷重Fz0iとの偏差として各車輪の接地荷重の偏差ΔFziが演算され、ステップ740に於いては上述のステップ540及び640の場合と同様の要領にて各車輪の等価コーナリングパワーCpiが演算され、ステップ745に於いては上述のステップ575、645の場合と同様の要領にて各車輪のスリップ角αi、各車輪のスリップ率κi、各車輪の前後力Fxi及び横力Fyi、前後力Fxi及び横力Fyiによる車両のヨーモーメントMziが演算されると共に、当技術分野に於いて公知の要領にて各車輪の接地荷重Fzi(i=fl、fr、rl、rr)が演算される。
ステップ750に於いては図9に示されたフローチャートに従って車両の目標前後力Fxt、目標横力Fyt、目標ヨーモーメントMzt及び各車輪のスリップ角αi、スリップ率κi、前後力Fxi、横力Fyi、ヨーモーメントMziに基づき、前輪の目標スリップ角αft、後輪の目標スリップ角αrt、各車輪の目標スリップ率κti、各車輪の目標接地荷重Fztiが演算される。
ステップ750が完了すると、ステップ760、770、790がそれぞれ上述の通常時の車両の走行制御に於けるステップ520、570、590の場合と同様に順次実行され、これにより各車輪の接地荷重Fzi、前輪の舵角δf及び後輪の舵角δr、各車輪の制駆動力Fxiがそれぞれ対応する目標値になるよう制御される。
次に図8に示されたフローチャートを参照して上述のステップ510に於ける目標接地荷重Fztiの演算制御について説明する。
まずステップ511に於いては図11に示されている如く、各車輪について上下加速度Gzbiの積分により車輪位置に於ける車体12Bの上下速度Zbdiが演算され、上下速度Zbdiの積分により車輪位置に於ける車体12Bの上下変位量Zbiが演算される。また各車輪24について上下加速度Gzwiの積分により車輪24の上下速度Zwdiが演算され、上下速度Zwdiの積分により車輪24の上下変位量Zwiが演算される。そしてKbd、Kb、Kwd、Kwをそれぞれ上下速度Zbdi、上下変位量Zbi、上下速度Zwdi、上下変位量Zwiについてのフィードバックゲインとし、Tをトランスフォーマとして下記の式15に従って車両の良好な乗り心地性を確保しつつ車体及び車輪の振動を減衰させるための接地荷重のフィードバック目標制御量Fz1tiが演算される。尚図11に於いて、80はショックアブソーバを示し、81はサスペンションスプリングを示している。
Fz1ti=[Kbd Kwd Kb Kw][Zbdi Zwdi Zbi Zwi]T ……(15)
ステップ512に於いては操舵角θ、アクセル開度Ta、マスタシリンダ圧力Pmの如き運転者の運転操作量或いは車速Vの如き車両の状態量に基づき車両の目標モデルより当技術分野に於いて公知の要領にて車両のロール方向、ピッチ方向、上下方向の3方向の目標運動状態量、即ち車両の目標ロール量Rt、目標ピッチ量Pt、目標ヒーブ量Htが演算される。
ステップ513に於いては運転者の運転操作量若しくは車両の横加速度Gy、前後加速度Gx、各車輪位置に於ける上下変位量Zbi及び上下変位量Zwiの如き車両の状態量に基づき車両の実モデルより当技術分野に於いて公知の要領にて車両の3方向の推定運動状態量、即ち車両の推定ロール量Ra、推定ピッチ量Pa、推定ヒーブ量Haが演算される。
ステップ514に於いては各目標運動状態量と推定運動状態量の偏差として3方向の運動状態量の偏差、即ちロール量偏差ΔR、ピッチ量偏差ΔP、ヒーブ量偏差ΔHが演算され、ステップ515に於いてはロール量偏差ΔR、ピッチ量偏差ΔP、ヒーブ量偏差ΔHに基づいて車両の逆モデルより当技術分野に於いて公知の要領にて加減速や旋回等による車体の姿勢変化を抑制するための車両の3方向の目標制御量、即ち目標アンチロールモーメントMrt、目標アンチピッチモーメントMpt、目標アンチヒーブ力Fztが演算される。
ステップ516に於いては目標アンチロールモーメントMrt、目標アンチピッチモーメントMpt、目標アンチヒーブ力Fztに基づいて当技術分野に於いて公知の要領にて各車輪の接地荷重のフィードフォワード目標制御量Fz2tiが演算され、ステップ517に於いてはフィードバック目標制御量Fz1tiとフィードフォワード目標制御量Fz2tiとの和として各車輪の目標接地荷重Fztiが演算される。
次に図9に示されたフローチャートを参照して上述のステップ750に於ける目標接地荷重Fztiの演算制御について説明する。
まずステップ511に於いては例えば前述の特許文献1に記載された要領と同一の要領にて前輪用操舵制御装置14、後輪用操舵制御装置16、制動力制御装置18、駆動力制御装置20、接地荷重制御装置22の制御応答周波数が求められると共に、制御応答周波数の逆数に比例する値として上記式1の重みWx、Wy、Wm、Wk、Wdk、Waf、Wdaf、War、Wdar、Wfzf、Wfzr、Wdfzf、Wdfzrが演算される。
ステップ752に於いては上述のステップ450の場合と同様、車両がその進行方向前方の障害物に衝突する虞れがあると判定されているか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ757aへ進み、否定判別が行われたときにはステップ753へ進む。
ステップ753に於いては車両のヨーモーメントの制御が効果的に行われ車両の走行状態が効果的に安定化されるよう、重みWmが増大補正されると共に、重みWx、Wyが低減補正される。尚この場合車両の減速制御もある程度効果的に行われるよう、重みWxの低減量はWyの低減量よりも小さく設定される。
ステップ754に於いては後輪が横滑り状態にあるか否かの判別、即ち車両の走行状態がスピン状態であるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ755へ進み、否定判別が行われたときには、即ち車両の走行状態がドリフトアウト状態であり前輪が横滑り状態にあると判別されたときにはステップ756へ進む。
ステップ755に於いては上記式1に於ける後輪の舵角制御量演算の重みWar及びWdarがそれぞれ0に設定されると共に、後輪の接地荷重制御量演算の重みWfzr及びWdfzrがそれぞれ0に設定され、ステップ756に於いては上記式1に於ける前輪の舵角制御量演算の重みWaf及びWdafがそれぞれ0に設定されると共に、前輪の接地荷重制御量演算の重みWfzf及びWdfzfがそれぞれ0に設定される。
ステップ757aに於いては車両のヨーモーメントの制御車両の減速制御が効果的に行われ車両の衝突の虞れが効果的に低下されるよう、重みWxが増大補正されると共に、重みWy、Wmが低減補正される。尚この場合運転者の操舵操作による車両の衝突回避も効果的に行われるよう、重みWmの低減量はWyの低減量よりも小さく設定される。
ステップ757bに於いては運転者の操舵操作による車両の衝突回避が効果的に行われるよう、上記式4及び5に於ける操舵−ヨーレート過渡伝達関数H(s)及びヨーレート−横加速度過渡伝達関数G(s)が増大補正される。
ステップ757cに於いては運転者の操舵操作による車両の衝突回避が効果的に行われるよう、上記式1に於ける舵角制御量演算の重みWaf、Wdaf、War、Wdarが増大補正されると共に、他の重み、即ち接地荷重制御量演算の重みWfzf、Wdfzf、Wfzr、Wdfzrが低減補正される。
ステップ758に於いては車両の目標前後力Fxt、目標横力Fyt、目標ヨーモーメントMzt及び各車輪のスリップ角αi、スリップ率κi、前後力Fxi、横力Fyi、ヨーモーメントMziに基づき、前輪用操舵制御装置14、後輪用操舵制御装置16、制動力制御装置18、駆動力制御装置20、接地荷重制御装置22について予め設定された上記式1の評価関数L1の演算が行われることにより、前輪のスリップ角の目標修正量δαft、後輪のスリップ角の目標修正量δαrt、各車輪のスリップ率の目標修正量δκti、各車輪の接地荷重の目標修正量δFzti(i=fl、fr、rl、rr)が演算される。
ステップ759に於いては左右前輪のスリップ角αfl及びαfrの平均値αfと前輪のスリップ角の目標修正量δαftとの和として前輪の目標スリップ角αftが演算され、左右後輪のスリップ角αrl及びαrrの平均値αrと後輪のスリップ角の目標修正量δαrtとの和として後輪の目標スリップ角αrtが演算され、スリップ率κiとスリップ率の目標修正量δκtiとの和として各車輪の目標スリップ率κtiが演算され、各車輪の接地荷重Fziと接地荷重の目標修正量δFztiとの和として各車輪の目標接地荷重Fztiが演算される。
以上の説明より解る如く、ステップ420及び430に於いて運転者の運転操作量及び車両の状態量に応じて車両の走行状態を最適な走行状態にするための車両の目標前後力Fxt、目標横力Fyt、目標ヨーモーメントMztが演算され、ステップ440乃至700に於いて車両の前後力Fx、横力Fyt、ヨーモーメントMzがそれぞれ目標前後力Fxt、目標横力Fyt、目標ヨーモーメントMztになるよう、車両の走行状態に応じて電磁式のショックアブソーバ80FL〜80RR、前輪用操舵制御装置14の転舵角可変装置36及び後輪用操舵制御装置16のパワーステアリング装置50、駆動装置64、制動装置54等が適宜に制御される。
次に上述の如く構成された実施例1の作動を、(1)通常走行時、(2)準不安定時、(3)緊急時の各場合について説明する。
(1)車両の通常走行時
車両の走行状態が安定であり、車両が障害物に衝突する虞れもない通常走行時には、図4に示されたフローチャートのステップ440乃至460に於いて否定判別が行われ、図5に示されたフローチャートに従って車両の通常走行時の走行制御が行われる。
即ちステップ511に於いて車両の良好な乗り心地性を確保しつつ車体及び車輪の振動を減衰させるための接地荷重のフィードバック目標制御量Fz1tiが演算され、ステップ512乃至516に於いて加減速や旋回等による車体の姿勢変化を抑制するための接地荷重のフィードフォワード目標制御量Fz2tiが演算され、ステップ517に於いてフィードバック目標制御量Fz1tiとフィードフォワード目標制御量Fz2tiとの和として各車輪の目標接地荷重Fztiが演算され、ステップ520に於いて各車輪の接地荷重Fziがそれぞれ対応する目標接地荷重Fztiになるよう電磁式のショックアブソーバ80FL〜80RRが制御される。
またステップ530及び540に於いて各車輪の接地荷重に基づいて各車輪の等価コーナリングパワーCpiが演算され、ステップ550に於いて各車輪の等価コーナリングパワーCpi等に基づき前輪の目標スリップ角αft及び後輪の目標スリップ角αrtが演算され、ステップ570に於いて左右前輪の舵角δf及び左右後輪の舵角δrがそれぞれ目標スリップ角αft及びαrtを達成するための目標舵角δft及びδrtになるよう転舵角可変装置36及びパワーステアリング装置50が制御される。
またステップ575及び580に於いて各車輪のスリップ率κi、前後力Fxi、横力Fyi、ヨーモーメントMzi及び車両の目標前後力Fxtに基づき上記式3の評価関数L3の演算により各車輪の目標スリップ率κti(i=fl、fr、rl、rr)が演算され、ステップ590に於いて各車輪の目標制駆動力Fxtiが演算されると共に、目標制駆動力Fxtiに基づいて車両の前後力Fxを目標前後力Fxtにするための駆動装置64の目標出力Fdt、センターディファレンシャル66等の目標制御量、各車輪の目標制動力Fbtiが演算され、各車輪の制駆動力Fxiが目標制駆動力Fxtiになるよう制動装置54等が制御される。
(2)準不安定時
車両が障害物に衝突する虞れはないが、車両の走行状態が不安定になる虞れがある準不安定時には、図4に示されたフローチャートのステップ440及び450に於いて否定判別が行われるが、ステップ460に於いて肯定判別が行われ、これにより図6に示されたフローチャートに従って車両の準不安定時の走行制御が行われる。
即ちステップ610乃至645がそれぞれ上述の通常時の車両の走行制御に於けるステップ510乃至540及びステップ575の場合と同様に実行されることにより、ステップ650に於いて各車輪の接地荷重Fziがそれぞれ対応する目標接地荷重Fztiになるよう電磁式のショックアブソーバ80FL〜80RRが制御される。
またステップ650に於いて上記式2の評価関数L2の演算により前輪の目標スリップ角αft、後輪の目標スリップ角αrt、各車輪の目標スリップ率κtiが演算される。そしてステップ670及び690がそれぞれ上述の通常時の車両の走行制御に於けるステップ570及び590の場合と同様に実行され、これにより左右前輪の舵角δf及び左右後輪の舵角δrがそれぞれ目標スリップ角αft及びαrtを達成するための目標舵角δft及びδrtになるよう転舵角可変装置36及びパワーステアリング装置50が制御されると共に、各車輪の制駆動力Fxiが目標制駆動力Fxtiになるよう制動装置54等が制御される。
(3)緊急時
車両の走行状態が不安定であるか又は車両が障害物に衝突する虞れがある車両の緊急走行時には、図4に示されたフローチャートのステップ440又は450に於いて肯定判別が行われ、これにより図7に示されたフローチャートに従って車両の緊急時の走行制御が行われる。
即ちステップ730及び740に於いて各車輪の接地荷重Fziに基づき各車輪の等価コーナリングパワーCpiが演算され、ステップ745に於いて上述のステップ575、645の場合と同様の要領にて各車輪のスリップ角αi、各車輪のスリップ率κi、各車輪の前後力Fxi及び横力Fyi、前後力Fxi及び横力Fyiによる車両のヨーモーメントMziが演算される。
そしてステップ750に於いて上記式1の評価関数L1の演算により前輪の目標スリップ角αft、後輪の目標スリップ角αrt、各車輪の目標スリップ率κti、各車輪の目標接地荷重Fztiが演算され、ステップ760、770、790に於いてそれぞれ上述の通常時の車両の走行制御に於けるステップ520、570、590の場合と同様の制御が順次実行され、これにより各車輪の接地荷重Fzi、前輪の舵角δf及び後輪の舵角δr、各車輪の制駆動力Fxiがそれぞれ対応する目標値になるよう、電磁式のショックアブソーバ80FL〜80RR、転舵角可変装置36及びパワーステアリング装置50、制動装置54等が制御される。
かくして図示の第一の実施例によれば、車両の走行状態が緊急の走行運動制御を必要とする走行状態であるときには、操舵制御手段としての前輪用操舵制御装置14及び後輪用操舵制御装置16、制駆動力制御手段としての制動力制御装置18及び駆動力制御装置20、接地荷重制御手段としての接地荷重制御装置22について予め設定された第一の評価関数L1を演算することによって車両全体の目標走行運動制御量としての車両の目標前後力Fxt、目標横力Fyt、目標ヨーモーメントMztを複数の走行運動制御手段の全てに配分することにより全ての走行運動制御手段の目標制御量として前輪の目標スリップ角αft、後輪の目標スリップ角αrt、各車輪の目標スリップ率κti、各車輪の目標接地荷重Fztiが演算される。
従って車両の走行状態が不安定であるか又は車両が障害物に衝突する虞れがある車両の緊急走行時には、車両全体の目標走行運動制御量を複数の走行運動制御手段の全てに配分し、全ての制御手段を使用して緊急の走行運動制御を行い、これにより車両の走行状態を確実に且つ効果的に安定化させることができる。
また車両の走行状態が緊急の走行運動制御を必要とする走行状態ではないが車輌の挙動悪化の虞れがある走行状態であるときには、接地荷重制御装置22を複数の走行運動制御手段のうちの特定の走行運動制御手段として、車両の走行状態に基づいて接地荷重制御装置22の目標制御量である目標接地荷重Fztiが演算され、目標接地荷重Fztiに基づいて接地荷重制御装置22の制御による車両の物理量の変化量として各車輪の等価コーナリングパワーCpiの変化量が演算され、車両全体の目標走行運動制御量及び各車輪の等価コーナリングパワーCpiに基づいて他の走行運動制御手段である前輪用操舵制御装置14、後輪用操舵制御装置16、制動力制御装置18、駆動力制御装置20について予め設定された第二の評価関数L2を演算することによりこれらの走行運動制御手段の目標制御量である前輪の目標スリップ角αft、後輪の目標スリップ角αrt、各車輪の目標スリップ率κtiが演算される。
従って接地荷重制御装置22の制御を優先させて車両の走行状態を安定化させる制御を行うと共に、接地荷重制御装置22の制御による各車輪の等価コーナリングパワーCpiの変化量及び車両全体の目標走行運動制御量に基づいて他の走行運動制御手段としての前輪用操舵制御装置14、後輪用操舵制御装置16、制動力制御装置18、駆動力制御装置20を補助的に制御することができ、これにより複数の走行運動制御手段の全てについて予め設定された評価関数を演算する場合に比して容易に且つ確実に各走行運動制御手段を制御することができる。
また車両の走行状態が緊急の走行運動制御を必要とせず車輌の挙動悪化の虞れもない走行状態であるときには、車両の走行状態に基づいて接地荷重制御装置22の目標制御量である目標接地荷重Fztiが演算され、目標接地荷重Fztiに基づいて接地荷重制御装置22の制御による車両の物理量の変化量として各車輪の等価コーナリングパワーCpiの変化量が演算され、車両全体の目標走行運動制御量及び各車輪の等価コーナリングパワーCpiに基づいて他の一つの走行運動制御手段としての前輪用操舵制御装置14及び後輪用操舵制御装置16の目標制御量である前輪の目標スリップ角αft及び後輪の目標スリップ角αrtが演算され、低減補正された車両全体の目標走行運動制御量である車両の目標前後力Fxt及び各車輪のスリップ率κi、前後力Fxiに基づいて残りの走行運動制御手段としての制動力制御装置18及び駆動力制御装置20の目標制御量である各車輪の目標スリップ率κtiが演算される。
従って接地荷重制御装置22の制御を最優先し、その次に前輪用操舵制御装置14及び後輪用操舵制御装置16の制御を優先して車両の走行運動を制御することができるだけでなく、車両全体の目標走行運動制御量及び接地荷重の制御による各車輪の等価コーナリングパワーCpiの変化量に基づいて前輪用操舵制御装置14及び後輪用操舵制御装置16の目標制御量としての前輪の目標スリップ角αft及び後輪の目標スリップ角αrtを最適に演算し、また車両の目標前後力Fxt及び各車輪のスリップ率κi、前後力Fxiに基づいて制動力制御装置18及び駆動力制御装置20の目標制御量としての各車輪の目標スリップ率κtiを容易に演算することができる。
また図示の第一の実施例によれば、特定の走行運動制御手段は接地荷重制御装置22であるので、操舵制御手段としての前輪用操舵制御装置14及び後輪用操舵制御装置16や制駆動力制御手段としての制動力制御装置18及び駆動力制御装置20の制御よりも接地荷重制御装置22の制御を優先させることができ、これにより操舵制御手段若しくは制駆動力制御手段が特定の走行運動制御手段とされる場合に比して操舵制御量及び制駆動力制御量を低減し、運転者による操舵操作とは無関係に車輪が操舵されたり、運転者による制駆動操作とは無関係に各車輪の制駆動力が制御されることによる違和感を抑制しつつ車両を安定的に走行させることができる。
また図示の第一の実施例によれば、車両の走行状態が緊急の走行運動制御を必要とする走行状態ではないが車輌の挙動悪化の虞れがある走行状態であるときには、目標接地荷重Fztiに基づいて接地荷重制御装置22の制御による車両の物理量の変化量として各車輪の等価コーナリングパワーCpiの変化量が演算され、車両全体の目標走行運動制御量及び各車輪の等価コーナリングパワーCpiに基づいて第二の評価関数L2の演算により前輪用操舵制御装置14、後輪用操舵制御装置16、制動力制御装置18、駆動力制御装置20の目標制御量である前輪の目標スリップ角αft、後輪の目標スリップ角αrt、各車輪の目標スリップ率κtiが演算されるので、接地荷重制御装置22の制御による各車輪の等価コーナリングパワーCpiの変化が考慮されない場合に比して、各車輪の目標スリップ角及び目標スリップ率を正確に演算し、各車輪のスリップ角及びスリップ率を正確に制御することができる。
同様に、車両の走行状態が緊急の走行運動制御を必要とせず車輌の挙動悪化の虞れもない走行状態であるときには、目標接地荷重Fztiに基づいて接地荷重制御装置22の制御による車両の物理量の変化量として各車輪の等価コーナリングパワーCpiの変化量が演算され、車両全体の目標走行運動制御量及び各車輪の等価コーナリングパワーCpiに基づいて前輪の目標スリップ角αft及び後輪の目標スリップ角αrtが演算されるので、接地荷重制御装置22の制御による各車輪の等価コーナリングパワーCpiの変化が考慮されない場合に比して、各車輪の目標スリップ角を正確に演算し、各車輪のスリップ角を正確に制御することができる。
また図示の第一の実施例によれば、ステップ440に於いて肯定判別が行われた場合、即ち車両がスピン状態又はドリフトアウト状態にあるとき、又はステップ450に於いて肯定判別が行われた場合、即ち車両が障害物に衝突する虞れが高いときに、ステップ700に於いて緊急時の走行運動制御が行われるので、車両がスピン状態又はドリフトアウト状態にあるときにはスピン状態又はドリフトアウト状態を確実に且つ効果的に低減して車両の走行運動を確実に且つ効果的に安定化させることができ、車両が障害物に衝突する虞れが高いときには車両の走行運動を悪化させることなく車両を確実に且つ効果的に減速して車両が障害物に衝突する虞れを確実に且つ効果的に低下させることができる。
また図示の第一の実施例によれば、ステップ460に於いて肯定判別が行われた場合、即ち車両がスピン状態又はドリフトアウト状態になる虞れがあるときは、ステップ600に於いて準不安定時の走行運動制御が行われるので、車両がスピン状態又はドリフトアウト状態になる虞れを確実に且つ効果的に低減して車両の安定的な走行運動を継続させることができる。
特に図示の第一の実施例によれば、操舵制御手段としての前輪用操舵制御装置14及び後輪用操舵制御装置16が設けられ、前輪及び後輪のスリップ角が制御されるので、前輪又は後輪の一方のみのスリップ角しか制御されない場合に比して、車輪の舵角の制御による車両の走行運動の制御を確実に且つ効果的に行うことができる。
また図示の第一の実施例によれば、車両が障害物に衝突する虞れが高い場合に於いて、車両の走行状態が後輪の横滑り状態にあるときには、図9のステップ754に於いて肯定判別が行われ、ステップ755に於いて第三の評価関数L3に於ける後輪の舵角制御量演算の重みWar及びWdarがそれぞれ0に設定されると共に、後輪の接地荷重制御量演算の重みWfzr及びWdfzrがそれぞれ0に設定されるので、後輪についての舵角制御量及び接地荷重制御量を0にし、これにより後輪の横力が低下することに起因して後輪の横滑り状態が更に悪化することを確実に防止することができる。
また図示の第一の実施例によれば、車両が障害物に衝突する虞れが高い場合に於いて、車両の走行状態が前輪の横滑り状態にあるときには、図9のステップ754に於いて否定判別が行われ、ステップ756に於いて前輪の舵角制御量演算の重みWaf及びWdafがそれぞれ0に設定されると共に、前輪の接地荷重制御量演算の重みWfzf及びWdfzfがそれぞれ0に設定されるので、前輪についての舵角制御量及び接地荷重制御量を0にし、これにより前輪の横力が低下することに起因して前輪の横滑り状態が更に悪化することを確実に防止することができる。
また図示の第一の実施例によれば、車両が障害物に衝突する虞れが高い場合に於いて、車両の走行状態が後輪の横滑り状態にあり、後輪についての重みWar等が0に設定されるとき、及び車両が障害物に衝突する虞れが高い場合に於いて、車両の走行状態が前輪の横滑り状態にあり、前輪についての重みWaf等が0に設定されるときは、ステップ753に於いて重みWmが増大補正されると共に、重みWx、Wyが低減補正されるので、これらの重みの修正が行われない場合に比して、車両のヨーモーメントの制御を効果的に行うことができると共に車両の走行状態を効果的に安定化させることができる。
[第二の実施例]
図10は本発明による車輌の走行制御装置の第二の実施例に於ける車輌の走行制御のメインルーチンを示すフローチャートである。尚図10に於いて、図4に示されたステップと同一のステップには図4に於いて付されたステップ番号と同一のステップ番号が付されている。
この二の実施例に於いては、ステップ450に於いて否定判別が行われるとそのままステップ500へ進み、従って上述の第一の実施例に於けるステップ460の判別及びステップ600の制御は行われず、他のステップは上述の第一の実施例の場合と同様に実行される。
従って図示の二の実施例によれば、車両の走行状態が安定であり、車両が障害物に衝突する虞れもない通常走行時には、図10に示されたフローチャートのステップ440乃至460に於いて否定判別が行われ、これにより上述の実施例1に於ける「(1)車両の通常走行時」の場合と同様の要領にて車両の通常走行時の走行制御が行われる。
また車両の走行状態が不安定であるか又は車両が障害物に衝突する虞れがある車両の緊急走行時には、図10に示されたフローチャートのステップ440又は450に於いて肯定判別が行われ、これにより上述の実施例1に於ける「(3)緊急時」の場合と同様の要領にて車両の緊急時の走行制御が行われる。
従って図示の二の実施例によれば、上述の実施例1に於ける(1)車両の通常走行時の制御又は(3)緊急時の制御が行われ、(2)準不安定時の制御は行われない点を除き、上述の実施例1の場合と同様の作用効果を得ることができ、また上述の実施例1の場合に比して車両の走行制御を単純化することができる。
以上に於いては本発明を特定の実施例について詳細に説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施例が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
例えば上述の各実施例に於いては、操舵手段として前輪用操舵制御装置14及び後輪用操舵制御装置16が設けられているが、本発明の走行制御装置は前輪用操舵制御装置14又は後輪用操舵制御装置16の一方のみを有する車両に適用されてもよい。
特に本発明の走行制御装置が前輪用操舵制御装置14のみを有する車両に適用される場合には、ステップ550、650、750に於いて前輪の目標スリップ角αftのみが演算され、ステップ575、645、745に於いて左右前輪のスリップ角αfl、αfrのみが演算される。また第一の評価関数L1及び第二の評価関数L2はそれぞれ下記の式16及び17の通り修正される。
L1=Wx(Fxt−ΣFxi)2
+Wy(Fyt−ΣFyi)2
+Wm(Mzt−ΣMzi)2
+Σ(Wkκi2)2+Σ(Wdkδκti2)
+Wafαf2+Wdafδαtf2
+WfzfFzfl2+WdfzfδFztfl2
+WfzfFzfr2+WdfzfδFztfr2
+WfzrFzrl2+WdfzrδFztrl2
+WfzrFzrr2+WdfzrδFztrr2 ……(16)
L2=Wx(Fxt−ΣFxi)2
+Wy(Fyt−ΣFyi)2
+Wm(Mzt−ΣMzi)2
+Σ(Wkκi2)2+Σ(Wdkδκti2)
+Wafαf2+Wdafδαtf2 ……(17)
本発明の走行制御装置が後輪用操舵制御装置16のみを有する車両に適用される場合には、ステップ550、650、750に於いて後輪の目標スリップ角αrtのみが演算され、ステップ575、645、745に於いて左右後輪のスリップ角αrl、αrrのみが演算される。また第一の評価関数L1及び第二の評価関数L2はそれぞれ下記の式18及び19の通り修正される。
L1=Wx(Fxt−ΣFxi)2
+Wy(Fyt−ΣFyi)2
+Wm(Mzt−ΣMzi)2
+Σ(Wkκi2)2+Σ(Wdkδκti2)
+Warαr2+Wdarδαtr2
+WfzfFzfl2+WdfzfδFztfl2
+WfzfFzfr2+WdfzfδFztfr2
+WfzrFzrl2+WdfzrδFztrl2
+WfzrFzrr2+WdfzrδFztrr2 ……(18)
L2=Wx(Fxt−ΣFxi)2
+Wy(Fyt−ΣFyi)2
+Wm(Mzt−ΣMzi)2
+Σ(Wkκi2)2+Σ(Wdkδκti2)
+Warαr2+Wdarδαtr2 ……(19)
また上述の各実施例に於いては、車両は障害物に衝突する虞れがあるときには衝突防止制御を行うための衝突防止制御用電子制御装置94、CCDカメラ104、レーダセンサ106を備えているが、本発明の走行制御装置は衝突防止用の装置を備えていない車両に適用されてもよく、その場合にはステップ450の判別は省略される。
また上述の各実施例に於いては、ステップ540、640、740に於いて接地荷重の変化に伴う車輪タイヤの特性値の変化量として各車輪の等価コーナリングパワーの変化量ΔCpiが演算され、各車輪の等価コーナリングパワーの標準値Cp0iと変化量ΔCpiとの和として各車輪の等価コーナリングパワーCpiが演算されるようになっているが、各車輪の等価コーナリングパワーCpiに加えて、接地荷重の変化に伴う車輪タイヤの特性値の変化量として各車輪のドライビングスティフネスの変化量ΔKdi(i=fl、fr、rl、rr)が演算され、各車輪のドライビングスティフネスの標準値Kd0i(正の定数)と変化量ΔKdiとの和として各車輪のドライビングスティフネスKdi(i=fl、fr、rl、rr)が演算され、ステップ575、645、745に於いて等価コーナリングパワーCpi及びドライビングスティフネスKdiに基づいて各車輪の前後力Fxi、横力Fyi、ヨーモーメントMziが演算されるよう修正されてもよい。
また上述の各実施例に於いては、車両の通常走行時にはステップ580に於いて上記式3の第三の評価関数L3の演算が行われることにより、各車輪のスリップ率の目標修正量δκtiが演算され、スリップ率κiと目標修正量δκtiとの和として各車輪の目標スリップ率κtiが演算されるようになっているが、スリップ角αiに基づいて各車輪の舵角の制御による各車輪の横力Fyi及びヨーモーメントMziが演算され、それぞれ横力Fyiの和ΣFyi及びヨーモーメントMziの和ΣMziにて低減補正された車両の目標横力Fyt及び目標ヨーモーメントMztに基づいて下記の式20の第三の評価関数L3の演算が行われることにより、各車輪のスリップ率の目標修正量δκtiが演算されるよう修正されてもよい。
L3=Wx(Fxt−ΣFxi)2
+Wy(Fyt−ΣFyi)2
+Wm(Mzt−ΣMzi)2
+Σ(Wkκi2)2+Σ(Wdkδκti2) ……(20)
また上述の各実施例に於いては、ステップ755及び756に於いてそれぞれ後輪及び前輪の重みが0に低減されるようになっているが、それぞれ後輪の横滑り状態でない場合及び前輪の横滑り状態でない場合の値よりも小さい限り、これらの重みは0以外の正の値に低減されるよう修正されてもよい。
また上述の各実施例に於いては、車両の通常走行時にはステップ511乃至517に於いて特定の要領にて各車輪の目標接地荷重Fztiが演算されるようになっているが、車両の良好な乗り心地性を確保しつつ車体及び車輪の振動を減衰させると共に加減速や旋回等による車体の姿勢変化を抑制するための値である限り、各車輪の目標接地荷重Fztiは当技術分野に於いて公知の任意の要領にて演算されてよい。
また上述の各実施例に於いては、前輪用操舵制御装置14の主要な装置としての転舵角可変装置36はアッパステアリングシャフト34に対し相対的にロアステアリングシャフト38を回転させることにより運転者の操舵操作に依存せずに左右の前輪24FL及び24FRを自動的に操舵するようになっており、また後輪用操舵制御装置16の後輪操舵装置48はパワーステアリング装置50により左右のタイロッド52L及び52Rを駆動することにより左右の後輪24RL及び24RRを自動的に操舵するようになっているが、前輪用操舵制御装置14及び後輪用操舵制御装置16は運転者の操舵操作とは独立に車輪を操舵し得る限り、例えばタイロッドを伸縮させる型式の操舵装置の如く当技術分野に於いて公知の任意の構成のものであってよい。
また上述の各実施例に於いては、接地荷重制御装置22の主要な装置はショックアブソーバ80FL〜80RRであるが、車輪の接地荷重を制御し得る限り当技術分野に於いて公知の任意の構成のものであってよく、例えばアクティブスタビライザ装置であってもよい。
10…走行制御装置、14…前輪用操舵制御装置、16…後輪用操舵制御装置、18…制動力制御装置、20…駆動力制御装置、22…接地荷重制御装置、28…パワーステアリング装置、36…転舵角可変装置、46…電子制御装置、48…後輪操舵制御装置、50…パワーステアリング装置、54…制動装置、64…駆動装置、80FL〜80RR…ショックアブソーバ、84…操舵制御用電子制御装置、86…アシストトルク制御用電子制御装置、88…制動力制御用電子制御装置、90…駆動力制御用電子制御装置、92…接地荷重制御用電子制御装置、94…衝突防止制御用電子制御装置、96…統合制御用電子制御装置、100…操舵角センサ、102…回転角度センサ、104…CCDカメラ、106…レーダセンサ、108…前後加速度センサ、110…横加速度センサ、112…車速センサ、114…ヨーレートセンサ、116…圧力センサ、118FL〜118RR…圧力センサ、122…アクセル開度センサ、124…トルクセンサ