図1は、本発明の第1の実施の形態の発光装置10を示す図である。発光装置10は、複数の自己走査型発光素子(Self-Scanning Light Emitting Device;略称:SLED)アレイD1,D2,…,Dk−1,Dk(記号kは2以上の自然数)と、m(mは自然数)個の発光用IC(Integrated Circuit)15とを含んで構成される。図1では、理解を容易にするために、1個の発光用IC15を示している。以下、各SLEDアレイD1,D2,…,Dk−1,Dkを総称する場合、および不特定のSLEDアレイを示す場合、単に「SLEDアレイD」という場合がある。
各SLEDアレイDは、複数の発光スイッチ素子が半導体基板11上に直線状でかつ相互に間隔をあけて配列された不図示の複数のスイッチ素子アレイと、スイッチ素子アレイの幅方向に隣接し、このスイッチ素子アレイに沿って、複数のスイッチ素子に対向した状態で配列されるc(cは2以上の自然数)個の発光素子が半導体基板11上に直線状に配列された複数の、本実施の形態では2つの発光素子アレイ21と、各発光素子アレイ21に対して各発光素子を制御する発光制御信号、具体的には発光用の制御電圧または制御電流を入力するためのn(nは自然数)個の、本実施の形態では2個の電極パッド部12とを含む。本実施の形態において、複数のSLEDアレイDにおける発光素子は、a(aは自然数)個である。発光素子アレイ21における発光素子の配列方向は、スイッチ素子アレイにおけるスイッチ素子の配列方向と同一である。
発光用IC15は、b(bは自然数)個の出力端子部16を含む。発光用IC15の各出力端子部16と各SLEDアレイDの各電極パッド部12とは、個別に接続される。本実施の形態において、素子側接続部は、SLEDアレイDの電極パッド部12に相当する。駆動側接続部は、発光用IC15の出力端子部16に相当する。a個の発光素子を有する複数の発光素子アレイは、SLEDアレイDに相当する。駆動装置は、発光用IC15に相当する。
以下に、電子写真方式の画像形成装置における光プリンタヘッドに適用した発光装置10に備えられる発光用IC15の決定に関する発光装置の設計支援方法について説明する。本実施の形態では、発光素子の総数がそれぞれ異なる2つの記録紙サイズ、具体的にはA3サイズおよびA4サイズで用いられる発光用IC15およびその個数を決定する処理方法について説明する。
複数のSLEDアレイDを構成する1つのSLEDアレイDの発光素子の個数をc、第1の記録紙サイズであるA3サイズに対応する全てのSLEDアレイDにおける発光素子の総数をaとし、a個の各発光素子にそれぞれ接続されるn個の電極パッド部12と、A3サイズに対応するm個の発光用IC15にそれぞれ備えられるb個の出力端子部16とが個別に接続されるとき、c,n,a,b,mは、
a/c=(b×m)/n …(1)
前記の式(1)を満たし、かつ第2の記録紙サイズであるA4サイズに対応する全てのSLEDアレイDにおける発光素子の総数a1(a1はa1<aを満たす自然数)個の各発光素子にそれぞれ接続されるn個の電極パッド部12と、A4サイズに対応するm1(m1はm1<mを満たす自然数)個の発光用IC15にそれぞれ備えられるb個の出力端子部16とが個別に接続されるとき、a1,n,c,b,m1は、
a1/c=(b×m1)/n …(2)
前記の式(2)を満たすように、a,a1,c,nを既知数としたときのb,m,m1に基づいて発光用IC15を決定する。
以下に、A3サイズおよびA4サイズで用いられる発光用IC15およびその個数を決定する処理方法について、さらに具体的に説明する。図2は、発光装置10における発光用IC15の決定に関する手順を示すフローチャートである。本実施の形態では、1つのSLEDアレイDに128個の発光素子を備え、画像の解像度が600dpi(dots per
inch)の仕様によって発光装置10を構成する場合について説明する。
ステップS1では、複数のSLEDアレイDを構成する1つのSLEDアレイDの発光素子の個数cを決定する。本実施の形態では、1つのSLEDアレイDにおける発光素子の個数cを128個に決定する。ステップS2では、A3サイズに対応する全てのSLEDアレイDにおける発光素子の総数aを決定する。本実施の形態では、前記発光素子の総数aを7680個に決定する。ステップS3では、複数のSLEDアレイDを構成する1つのSLEDアレイDの電極パッド部12の個数nを決定する。本実施の形態では、前記電極パッド部12の個数nを2個に決定する。ステップS4では、A4サイズに対応する全てのSLEDアレイDにおける発光素子の総数a1を決定する。本実施の形態では、前記発光素子の総数a1を5120個に決定する。
ステップS5では、ステップS1〜S3において決定されたc,a,nを、前記の式(1)に示す第1の関係式に代入して、A3サイズに対応する発光用IC15の出力端子部16の総数xを算出する。式(1)に、c=128、a=7680およびn=2を代入すると、
7680/128=(b×m)/2
となり、
b×m=120 …(3)
が得られる。したがってA3サイズに対応する発光用IC15の出力端子部16の総数xは、式(3)の左辺の「b×m」に相当するので、前記出力端子部16の総数xは120個となる。
ステップS6では、ステップS1,S2,S4において決定されたc,a1,nを、前記の式(2)に示す第2の関係式に代入して、A4サイズに対応する発光用IC15の出力端子部16の総数x1を算出する。換言すると、a個の発光素子のうちのa1個の各発光素子にそれぞれ接続されるn個の電極パッド部12と、m個の発光用IC15のうちのm1個の発光用IC15にそれぞれ備えられるb個の出力端子部16とが個別に接続されるときの発光用IC15の出力端子部16の総数x1を算出する。式(3)に、c=128、a1=5120およびn=2を代入すると、
5120/128=(b×m1)/2
となり、
b×m1=80 …(4)
が得られる。したがってA4サイズに対応する発光用IC15の出力端子部16の総数x1は、式(4)の左辺の「b×m1」に相当するので、前記出力端子部16の総数x1は80個となる。
ここで、A3サイズに対応する1つの発光用IC15の出力端子部16の個数と、A4サイズに対応する1つの発光用IC15の出力端子部16の個数とを同数であるという条件、および前記1つの発光用IC15の出力端子部16の個数bは、式(3)および式(4)を同時に満たす正の整数であるという条件に基づいて、b,m,m1を決定する場合には、式(3)および式(4)の右辺の数値、すなわちA3サイズに対応する発光用IC15の出力端子部16の総数xと、A4サイズに対応する発光用IC15の出力端子部16の総数x1との最大公約数を算出すればよい。そこでステップS7では、xとx1との最大公約数を算出する。本実施の形態では、式(3)の右辺の数値「120」と式(4)の右辺の数値「80」との最大公約数として、「40」が算出される。
ステップS8では、xとx1との最大公約数である「40」と、第1および第2の関係式に相当する式(3)および式(4)とに基づいて、発光用IC15の出力端子部16の個数b、A3サイズに対応する発光用IC15の個数m、およびA4サイズに対応する発光用IC15の個数m1を決定する。発光用IC15の出力端子部16の個数bは、算出したxとx1との最大公約数「40」の約数である「1」、「2」、「4」、「5」、「8」、「10」、「20」、「40」のうちのいずれかであればよいが、A3サイズおよびA4サイズに対応する発光用IC15の個数を可能な限り最小にする場合には、前記出力端子部16の個数bを、ステップS7で算出されたxとx1との最大公約数に決定すればよい。たとえば、発光用IC15の出力端子部16の個数bを40個に決定した場合、A3サイズに対応する発光用IC15の個数mは、式(3)から3個に決定し、A4サイズに対応する発光用IC15の個数m1は、式(4)から2個に決定する。これによって、A3サイズおよびA4サイズに対応する発光用IC15の個数を最小にすることができる。
ステップS9では、ステップS8で決定される発光用IC15の出力端子部16の個数b、A3サイズに対応する発光用IC15の個数m、およびA4サイズに対応する発光用IC15の個数m1に基づいて、発光用IC15を決定する。発光用IC15が決定されると、発光装置10における発光用IC15の決定に関する手順が終了する。
前述のように本実施の形態によれば、A3サイズに対応する全てのSLEDアレイDにおける発光素子の総数a、A4サイズに対応する全てのSLEDアレイDにおける発光素子の総数a1、1つのSLEDアレイDの発光素子の個数cおよび電極パッド部12の個数nを既知数として、発光用IC15の出力端子部16の個数b、A3サイズに対応する発光用IC15の個数m、およびA4サイズに対応する発光用IC15の個数m1を決定する。したがって、a個の発光素子を有するSLEDアレイDの電極パッド部12と発光用IC15の出力端子部16とが個別に接続される場合、およびa1個の発光素子を有するSLEDアレイDの電極パッド部12と発光用IC15の出力端子部16とが個別に接続される場合のいずれの場合でも、出力端子部16が余らない発光用IC15、換言すると、出力端子部16の個数bが同数の発光用IC15を比較的容易に決定することができる。
これによって、前述のようにして決定した発光用IC15を、a個の発光素子を有するSLEDアレイDを駆動する場合およびa1個の発光素子を有するSLEDアレイDを駆動する場合のいずれの場合にも対応可能な発光用ICとして用いることができる。換言すると、前述のようにして決定した発光用IC15を、A3サイズおよびA4サイズのいずれのサイズにも対応可能な発光用ICとして用いることができる。
また余剰の出力端子部16が無い発光用IC15を備える発光装置10を駆動させた場合には、前記従来技術のように余剰の出力端子部16を有する発光装置を駆動させた場合のような出力待機時間が生じない。したがって本発明の発光装置10を、たとえばプリンタに適用した場合は、前記従来技術の発光装置をプリンタに適用した場合に比べて画像の印刷速度の向上を図ることができる。
またa個の発光素子を有するSLEDアレイDの電極パッド部12と発光用IC15の出力端子部16とが個別に接続される場合、およびa1個の発光素子を有するSLEDアレイDの電極パッド部12と発光用IC15の出力端子部16とが個別に接続される場合のそれぞれに応じて、個別の発光用IC15またはSLEDアレイDを設計して製造する必要がないので、製造工数を低減することができ、同数の出力端子部16を有する発光用IC15を備える発光装置10の生産性の向上を図ることができる。
また前述のように出力端子部16が余らない発光用IC15を比較的容易に決定することができ、その決定した発光用IC15を用いて発光装置10を構成することができるので、余剰の出力端子部を有する発光用ICによって構成される前記従来技術の発光装置に比べて、発光用IC15の実装面積を小さくすることができ、発光装置10の小型化を図ることができる。
また設計支援プログラムを用いて、汎用のコンピュータに、前記の発光用IC15の決定に関する発光装置10の設計支援方法を実行させることができる。汎用のコンピュータを用いて前記の発光装置10の設計支援方法を実行することによって、前述したように、a個の発光素子を有する発光素子アレイの素子側接続部と駆動装置の駆動側接続部とが個別に接続される場合、およびa1個の発光素子を有する発光素子アレイの素子側接続部と駆動装置の駆動側接続部とが個別に接続される場合のいずれの場合でも、駆動側接続部が余らない駆動装置、換言すると駆動側接続部の個数が同数の駆動装置を比較的容易に決定することができる。これによって、前述のようにして決定した駆動装置を、a個の発光素子を有する発光素子アレイを駆動する場合およびa1個の発光素子を有する発光素子アレイを駆動する場合のいずれの場合にも対応可能な駆動装置として用いることができる。
図3は、発光装置10の基本的構成を示す電気回路図である。以下の説明において、先行して説明している事項に対応する部分は同一の参照符を付し、重複する説明を省略する場合がある。発光装置10は、SLEDアレイDと、発光信号伝送路22と、接続手段24と、走査信号伝送路25と、スタート信号伝送路26と、駆動手段73とを含んで構成される。SLEDアレイDは、電極パッド部12と、発光素子アレイ21と、スイッチ素子アレイ23とを含む。
駆動手段73は、第1走査信号伝送路25a、第2走査信号伝送路25bおよび第3走査信号伝送路25cと、発光信号伝送路22と、スタート信号伝送路26とに接続される。第1〜第3走査信号伝送路25a〜25c、発光信号伝送路22およびスタート信号伝送路26は、配線によって実現される。
駆動手段73は、第1走査信号伝送路25aに第1走査信号φ1を与え、第2走査信号伝送路25bに第2走査信号φ2を与え、第3走査信号伝送路25cに第3走査信号φ3を与える。また駆動手段73は、スタート信号伝送路26にスタート信号φSを与え、発光信号伝送路22に発光信号φEを与える。駆動手段73は、発光用IC15、第1〜第3走査信号伝送路25a〜25cに第1〜第3走査信号φ1〜φ3をそれぞれ与える走査用ICおよびスタート信号伝送路26にスタート信号φSを与える走査スタート用ICによって実現される。発光用IC15の出力端子部16は、SLEDアレイDの電極パッド部12と接続され、電極パッド部12は抵抗素子Rφを介して発光信号伝送路22に接続される。
以下、不特定の走査信号伝送路を示す場合、「走査信号伝送路25」のように、参照符号において添え字「a」、「b」および「c」を省略する場合がある。また不特定の走査信号を示す場合、「走査信号φ」のように、参照符号において添え字「1」、「2」および「3」を省略する場合がある。
発光装置10において、駆動手段73に含まれる発光用IC15は、前述の発光装置の設計支援方法によって決定される発光用ICであって、a個の発光素子を有するSLEDアレイDの電極パッド部12と発光用ICの出力端子部16とが個別に接続される場合、およびa1個の発光素子を有するSLEDアレイDの電極パッド部12と発光用ICの出力端子部16とが個別に接続される場合のいずれの場合でも、出力端子部16が余らない、換言すると出力端子部16の個数が同数の発光用ICである。
さらに述べると、前記発光用IC15は、a個の発光素子を有するSLEDアレイDを駆動する場合およびa1個の発光素子を有するSLEDアレイDを駆動する場合のいずれの場合にも対応可能な発光用IC、換言するとA3サイズおよびA4サイズのいずれのサイズにも対応可能な発光用ICである。発光装置10は、前述のような発光用IC15によってSLEDアレイDを駆動するように構成される。
駆動手段73は、外部から基準となるクロックパルス信号が入力され、このクロックパルス信号に基づいて、第1〜第3走査信号φ1〜φ3とスタート信号φSとを同期して出力し、走査信号伝送路25およびスタート信号伝送路26にそれぞれ与える。前記クロックパルス信号は、後述する画像形成装置87の制御手段96から与えられる。クロックパルス信号のクロック周期は、後述する画像形成装置87の制御手段96における制御周期よりも長く選ばれる。また駆動手段73に含まれる発光用IC15は、クロックパルス信号とともに外部から与えられる画像情報に基づいて、複数の、本実施の形態ではb個の出力端子部16からそれぞれ発光信号φEを出力し、その出力した発光信号φEを、各電極パッド部12を介して発光信号伝送路22に与える。
第1〜第3走査信号伝送路25a〜25cには、複数の発光スイッチ素子が直線状に配列されたスイッチ素子アレイ23におけるスイッチ素子T1,T2,…,Tj−1,Tj(記号jは、2以上の自然数)と直列に接続される抵抗素子Rφがそれぞれ接続され、駆動手段73は、抵抗素子Rφを介して第1〜第3走査信号伝送路25a〜25cに接続される。以下、各スイッチ素子T1,T2,…,Tj−1,Tjを総称する場合、および不特定のスイッチ素子を示す場合、単に「スイッチ素子T」という場合がある。抵抗素子Rφは、駆動手段73から走査信号伝送路25に過電流が流れてしまうことを防止するとともに、各スイッチ素子Tに印加される電圧を分圧する分圧抵抗としての機能を有する。
スイッチ素子Tは、たとえばP型半導体層とN型半導体層とが交互に積層されて構成されるPNPN構造を有する発光サイリスタによって実現される。スイッチ素子Tは、逆阻止3端子サイリスタと同様な負性抵抗特性を有する。スイッチ素子Tは、受光によって走査信号伝送路25を介して与えられる走査信号φの電圧よりもしきい電圧が低下し、かつ前記走査信号φが与えられたとき、または走査信号φの電流よりもしきい電流が低下し、かつ前記走査信号φが与えられたとき、予め定める部位であるゲートにトリガ信号を発生して発光する。走査信号φの電圧とは、走査信号φが与えられることによって、スイッチ素子Tのアノードおよびカソード間に印加される電圧であり、走査信号φの電流とは、走査信号φが与えられることによってスイッチ素子Tに与えられる電流である。
また発光信号伝送路22には、複数の発光素子が直線状に配列された発光素子アレイ21における発光素子L1,L2,…,Li−1,Li(記号iは、2以上の正の整数)と直列に接続される抵抗素子Rφがそれぞれ接続され、駆動手段73は、抵抗素子Rφを介して発光信号伝送路22に接続される。以下、各発光素子L1,L2,…,Li−1,Liを総称する場合、および不特定の発光素子を示す場合、単に「発光素子L」という場合がある。発光素子Lは、露光用の発光素子である。発光素子Lは、600nm以上800nm未満の波長の光を発光可能に形成される。抵抗素子Rφは、駆動手段73から発光信号伝送路22に過電流が流れてしまうことを防止するとともに、各発光素子Lに印加される電圧を分圧する分圧抵抗としての機能を有する。
発光素子Lは、たとえばP型半導体層とN型半導体層とが交互に積層されて構成されるPNPN構造を有する発光サイリスタによって実現される。発光素子Lは、逆阻止3端子サイリスタと同様な負性抵抗特性を有する。発光素子Lは、予め定める部位であるゲートに、トリガ信号を与えることによって発光信号φEの電圧よりもしきい電圧が低下し、かつ前記発光信号φEが与えられたとき、または発光信号φEの電流よりもしきい電流が低下し、かつ前記発光信号φEが与えられたとき発光する。発光信号φEの電圧とは、発光信号φEが与えられることによって、発光素子Lのアノードおよびカソード間に印加される電圧であり、発光信号φEの電流とは、発光信号φEが与えられることによって発光素子Lに与えられる電流である。スイッチ素子Tと発光素子Lとの数は等しく、すなわち前記記号jと記号iとは等しい数に選ばれる。
接続手段24は、各発光素子Lの前記予め定める部位であるゲートと、各発光素子Lに対応する各スイッチ素子Tの前記予め定める部位であるゲートとを、電気的に接続する。接続手段24は、具体的には発光素子L1のゲートと、スイッチ素子T1のゲートとを電気的に接続し、発光素子L2のゲートと、スイッチ素子T2のゲートとを電気的に接続し、発光素子Li−1のゲートと、スイッチ素子Tj−1のゲートとを電気的に接続し、発光素子Liのゲートと、スイッチ素子Tjのゲートとを電気的に個別に接続する。接続手段24は、金属材料および合金材料などの導電性を有する材料によって形成される導電路によって実現される。
図4は、駆動手段73が、スタート信号伝送路26に与えるスタート信号φS、第1走査信号伝送路25aに与える第1走査信号φ1、第2走査信号伝送路25bに与える第2走査信号φ2、第3走査信号伝送路25cに与える第3走査信号φ3および発光信号伝送路22に与える発光信号φEと、発光素子L1の発光強度と、走査スタート用発光スイッチ素子(以下、「走査スタート用スイッチ素子」という場合がある)T0およびスイッチ素子T1〜T4の発光強度とを示す波形図である。発光素子L1および走査スタート用スイッチ素子T0ならびにスイッチ素子T1〜T4の発光強度は、ハイ(略称:H)レベルのとき発光していることを表し、ロー(略称:L)レベルのとき発光していないことを表す。図4において、横軸は時間であって、基準時刻からの経過時間を表す。
またスタート信号φS、第1〜第3走査信号φ1〜φ3および発光信号φEについて、縦軸は、信号レベルを表す。信号レベルは、電圧または電流の大きさを表し、スタート信号φS、第1〜第3走査信号φ1〜φ3および発光信号φEがハイ(略称:H)レベルのとき、高電圧または高電流が信号伝送路に供給され、スタート信号φS、第1〜第3走査信号φ1〜φ3および発光信号φEがロー(略称:L)レベルのとき、低電圧または低電流が信号伝送路に供給される。スタート信号φS、第1〜第3走査信号φ1〜φ3および発光信号φEがLレベルのとき、信号伝送路に供給される電圧または電流は、各素子のしきい電圧またはしきい電流よりも小さい。電圧の場合では、ハイレベルは、たとえば3ボルト(V)以上10ボルト(V)未満である。電圧の場合では、ローレベルは、たとえば0(零)ボルト(V)である。
本実施の形態では、Hレベルのときのスタート信号φS、第1〜第3走査信号φ1〜φ3および発光信号φEの電圧をたとえば5ボルト(V)とし、Lレベルのスタート信号φS、第1〜第3走査信号φ1〜φ3および発光信号φEの電圧をたとえば0ボルト(V)とする。第1〜第3走査信号φ1〜φ3の波形は同一であり、それぞれ位相が異なる。
発光装置10では、発光させるべき発光素子Lのしきい電圧またはしきい電流を低下させるために、スイッチ素子Tの発光状態を、発光素子Lの配列方向に沿って転送する。
次に、駆動手段73の動作について説明する。まず時刻t0で、駆動手段73は、スタート信号φS、第1〜第3走査信号φ1〜φ3および発光信号φEをLレベルとする。スタート信号φSをLレベルにしておくことによって、走査スタート用スイッチ素子T0のしきい電圧またはしきい電流は、第3走査信号φ3のHレベルよりも小さくなる。駆動手段73は、発光信号φE、スタート信号φSおよび走査信号φについて、信号レベルをLレベルからHレベルにすると、次に信号レベルをHレベルからLレベルにするまで、信号レベルをHレベルとなるように維持する。また駆動手段73は、発光信号φE、スタート信号φSおよび走査信号φについて、信号レベルをHレベルからLレベルにすると、次に信号レベルをLレベルからHレベルにするまで、信号レベルをLレベルとなるように維持する。
時刻t1で、駆動手段73は、第3走査信号φ3のみをLレベルからHレベルに変化させる。時刻t1において、スタート信号φS、第1および第2走査信号φ1,φ2ならびに発光信号φEは、Lレベルである。これによって、走査スタート用スイッチ素子T0が、オン状態になり、すなわちターンオンになり、発光する。
走査スタート用スイッチ素子T0の光は、隣接するスイッチ素子アレイ23の配列方向の端部に配置されるスイッチ素子T1に最も強く入射する。スイッチ素子アレイ13におけるスイッチ素子T1以外の他のスイッチ素子Tでは、配列方向に走査スタート用スイッチ素子T0から離間した位置に配置されるスイッチ素子Tほど、走査スタート用スイッチ素子T0から照射される光の強度が小さくなる。スイッチ素子Tは、受光する光強度が大きくなるに従って、しきい電圧またはしきい電流の降下が大きくなるという特性を有する。
次に走査スタート用スイッチ素子T0からスイッチ素子T1への発光状態の転送について説明する。走査スタート用スイッチ素子T0が発光すると、この光をスイッチ素子T1が受光し、スイッチ素子T1のしきい電圧が低下する。
時刻t2において、スイッチ素子T1のしきい電圧はVTH(T1)となっている。第1走査信号伝送路25aには、スイッチ素子T1,T4,…,Tj−2が接続されているが、スイッチ素子T4,…,Tj−2は、走査スタート用スイッチ素子T0から充分に離れているので、走査スタート用スイッチ素子T0からの光を受光しても、その光は微弱であるので、しきい電圧はほとんど変化しない。
時刻t2において、駆動手段73は、第1走査信号φ1をLレベルからHレベルにする。時刻t2において、スタート信号φS、第2走査信号φ2、発光信号φEはLレベルであり、第3走査信号φ3は、Hレベルである。第1走査信号φ1のHレベルは、第1走査信号伝送路25aに接続されるスイッチ素子T1を除く他のスイッチ素子T4,…,Tj−2のしきい電圧またはしきい電流うちの最低値よりも、高い電圧または高い電流に選ばれる。
隣接するスイッチ素子Tからの光を受光することによって、しきい電圧またはしきい電流が低下したスイッチ素子Tが接続される走査信号伝送路25に、この走査信号伝送路25に接続される他のスイッチ素子Tのしきい電圧またはしきい電流の最低値よりも高い電圧または電流の走査信号φを与えると、走査信号φは抵抗素子Rφを介して、走査信号伝送路25に与えられ、スイッチ素子Tには、抵抗素子Rφによって分圧された電圧が与えられる。各スイッチ素子Tには、抵抗素子Rφによって分圧された電圧が徐々に印加されることとなり、同一の走査信号伝送路25に接続される複数のスイッチ素子Tのうち、隣接しているスイッチ素子Tからの光を受光したスイッチ素子Tに与えられる電圧または電流が、最も早くこのスイッチ素子Tのしきい電圧またはしきい電流よりも大きくなる。これによって、しきい電圧またはしきい電流が最も低いスイッチ素子Tのみが発光し、他のスイッチ素子Tは発光しない。
これによって、時刻t2において、スイッチ素子T1がオン状態となり、すなわちターンオンとなり、発光する。スイッチ素子T1がオン状態となった後、時刻t3において、駆動手段73は、第3走査信号φ3をLレベルにする。これによって、走査スタート用スイッチ素子T0は、オフ状態、すなわちターンオフとなり、消灯する。
このようにして、走査スタート用スイッチ素子T0から、スイッチ素子T1へと発光状態が遷移する。また時刻t3において、駆動手段73は、スタート信号φSをLレベルからHレベルにし、以後、Hレベルを維持させることによって、時刻t3以降に、第3走査信号φ3をLレベルからHレベルにしても、走査スタート用スイッチ素子T0はオフ状態を維持する。
時刻t2と時刻t3との間の時間は、第1走査信号φ1がHレベルとなる時間の1/10程度に選ばれる。このように、隣接するスイッチ素子Tにおいて与えられる走査信号φがHレベルとなる時間が重なるように駆動手段73が走査信号φを与えることによって、隣接するスイッチ素子Tのしきい電圧またはしきい電流が確実に低下している間に、走査信号φをHレベルとすることができ、光走査を確実に行うことができる。
本実施の形態では、第1〜第3走査信号φ1〜φ3がHレベルとなる時間は、1μ秒
(μsecond)程度に選ばれる。したがって、時刻t2と時刻t3との間の時間は、0.1μ秒(μsecond)程度に選ばれる。
スイッチ素子T1は、受光によって時刻t2においてオン状態となると、ゲートにトリガ信号を発生し、Hレベルとされた走査信号φがLレベルになるまでは、オン状態を維持する。オン状態となると、スイッチ素子T1のゲートの電圧は、ほぼ0(零)ボルト(V)になる。ここで前記スイッチ素子T1のゲートの電圧とは、このゲートと接地される裏面電極との電位差である。スイッチ素子T1のゲートは、発光素子L1のゲートに接続されているので、スイッチ素子T1のゲートの電圧は、発光素子L1のゲートの電圧と等しくなる。このようにスイッチ素子T1は、発光素子L1のゲートと裏面電極とに印加される電圧を変化させることができる。
発光素子L1を発光させる場合、駆動手段73は、第3走査信号φ3をHレベルからLレベルにした時刻t3が経過した後、時刻t4において、電極パッド部12に与える発光信号φEをLレベルからHレベルにする。発光素子L1は、スイッチ素子T1がオン状態であるので、前述したように発光素子L1のゲートは、ほぼ0(零)ボルト(V)となる。このときスイッチ素子T2,…,Tjは、オフ状態であり、時刻t4における発光素子L1のしきい電圧をVTH(L1)とし、時刻t4における発光素子L2,…,Liのしきい電圧をそれぞれVTH(L2),…,VTH(Li)とすると、発光信号φEのハイレベルVHを、発光素子Lのしきい電圧よりも大きく、発光素子L2,…,Liのしきい電圧のうち、最低値のものよりも小さな値に選ぶことによって、発光素子L1のみを選択的にオン状態として、発光させることができる。
時刻t5において、駆動手段73が発光信号φEをLレベルにすると、発光素子L1は、オフ状態となり、消灯する。後述する感光体ドラム90への露光量は、発光素子Lの発光強度は一定として、発光素子Lの発光する時間によって調整される。すなわち、発光信号φEがHレベルとなる時刻t4から時刻t5までの間の時間を決定することによって、露光量が決定される。発光素子Lの発光強度によって露光量を変更する場合、発光素子L1に与える電圧または電流を細かく制御する必要があるので困難であるが、発光時間によって露光量を変更することによって、発光信号φEがHレベルとなる時間を調整するだけでよいので、露光量の制御がしやすく、また定電圧または定電流が発光素子Lに与えられるので、発光素子L1を安定して発光させることができる。発光素子Lが発光する時間、換言すれば発光信号φEがHレベルとなる時間は、走査信号φがHレベルとなる時間の80%以下に選ばれる。
時刻t5が経過した後、駆動手段73は、時刻t6において第2走査信号φ2をHレベルにすると、スイッチ素子T2が発光し、時刻t6が経過した後、時刻t7において、第1走査信号φ1をLレベルにすると、スイッチ素子T1が消灯する。これによって、スイッチ素子T1からスイッチ素子T2へと発光状態が遷移する。
以後、駆動手段73が、各走査信号伝送路25a〜25cに第1〜第3走査信号φ1〜φ3を繰り返して与えることによって、スイッチ素子T3,T4,…,Tjにおいても、オン状態が発光素子Lの配列方向に沿って順次転送される。スイッチ素子Tが発光しているとき、発光信号伝送路22の発光信号φEをLレベルからHレベルにすることによって、この発光しているスイッチ素子Tに対応する、換言すると発光しているスイッチ素子Tに接続されている発光素子Lのみを選択的に発光させることができる。
発光しているスイッチ素子Tの配列方向の両側に位置するスイッチ素子Tは、いずれも励起状態となってしまうが、第1〜第3走査信号伝送路25a〜25cによって、前述したように第1〜第3走査信号φ1〜φ3を伝送させて、各スイッチ素子Tに第1〜第3走査信号φ1〜φ3を与えることによって、配列方向の一方から他方へと、スイッチ素子Tの発光状態の転送を行うことができ、換言すれば光走査することができる。
発光装置10は、前述の発光装置の設計支援方法によって決定される発光用ICであって、a個の発光素子を有するSLEDアレイDを駆動する場合およびa1個の発光素子を有するSLEDアレイDを駆動する場合のいずれの場合でも、出力端子部16が余らない、換言すると出力端子部16の個数が同数の発光用ICを備えて構成される。
したがって、a個の発光素子を有するSLEDアレイDの電極パッド部12と発光用ICの出力端子部16とが個別に接続される場合、およびa1個の発光素子を有するSLEDアレイDの電極パッド部12と発光用ICの出力端子部16とが個別に接続される場合のそれぞれに応じて、個別の発光用ICまたはSLEDアレイDを設計して製造する必要がないので、個別の発光用ICまたはSLEDアレイDを設計して製造する場合に比べて、製造工数を低減することができる。これによって、同数の出力端子部16を備える発光用IC15を含む発光装置10の生産性の向上を図ることができる。
図5は、発光装置10を有する画像形成装置87の基本的構成を示す側面図である。画像形成装置87は、電子写真方式の画像形成装置である。本実施の形態では、発光装置10を、後述する画像形成装置87を構成する感光体ドラム90を露光する露光装置として用いている。発光装置10は、駆動手段73が設けられる回路基板に実装される。
画像形成装置87は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のカラー画像を形成するタンデム方式を採用した装置である。画像形成装置87は、大略的に、4つの発光装置10Y,10M,10C,10K、集光手段であるレンズアレイ88Y,88M,88C,88K、前記発光装置10および駆動手段73が実装された回路基板およびレンズアレイ88を保持する第1ホルダ89Y,89M,89C,89K、4つの感光体ドラム90Y,90M,90C,90K、4つの現像剤供給手段91Y,91M,91C,91K、転写手段である転写ベルト92、4つのクリーナ93Y,93M,93C,93K、4つの帯電器94Y,94M,94C,94K、定着手段95および制御手段96を含んで構成される。以下、4つの発光装置10Y,10M,10C,10Kを総称する場合、および不特定の発光装置を示す場合、単に「発光装置10」という場合がある。
各発光装置10Y,10M,10C,10Kは、駆動手段73によって各色のカラー画像情報に基づいて駆動される。各発光装置10Y,10M,10C,10Kの配列方向の長さ寸法は、たとえば200mm以上400mm未満に選ばれる。
各発光装置10の発光素子Lからの光は、レンズアレイ88を介して各感光体ドラム90Y,90M,90C,90Kに集光して照射される。レンズアレイ88は、たとえば発光素子Lの光軸上にそれぞれ配置される複数のレンズを含み、これらのレンズを一体的に形成して構成される。発光装置10が実装される回路基板およびレンズアレイ88は、第1ホルダ89によって保持される。第1ホルダ89によって、発光素子Lの光照射方向と、レンズアレイ88のレンズの光軸方向とがほぼ一致するようにして位置合わせされる。
各感光体ドラム90Y,90M,90C,90Kは、たとえば円筒状の基体表面に感光体層を被着して成り、その外周面には各発光装置10Y,10M,10C,10Kからの光を受けて静電潜像が形成される静電潜像形成位置が設定される。各感光体ドラム90Y,90M,90C,90Kの周辺部には、各静電潜像形成位置を基準として回転方向下流側に向かって順番に、露光された感光体ドラム90Y,90M,90C,90Kに現像剤を供給する現像剤供給手段91Y,91M,91C,91K、転写ベルト92、クリーナ93Y,93M,93C,93K、および帯電器94Y,94M,94C,94Kがそれぞれ配置される。感光体ドラム90に現像剤によって形成された画像を記録シートに転写する転写ベルト92は、4つの感光体ドラム90Y,90M,90C,90Kに対して共通に設けられる。
前記感光体ドラム90Y,90M,90C,90Kは、第2ホルダによって保持され、この第2ホルダと第1ホルダ89とは、相対的に固定される。各感光体ドラム90Y,90M,90C,90Kの回転軸方向と、各発光装置10の前記発光素子Lの配列方向とがほぼ一致するようにして位置合わせされる。
転写ベルト92によって、記録シートを搬送し、現像剤によって画像が形成された記録シートは、定着手段95に搬送される。定着手段95は、記録シートに転写された現像剤を定着させる。感光体ドラム90Y,90M,90C,90Kは、回転駆動手段によって回転される。
制御手段96は、前述した駆動手段73にクロック信号および画像情報を与えるとともに、感光体ドラム90Y,90M,90C,90Kを回転駆動する回転駆動手段、現像剤供給手段91Y,91M,91C,91K、転写手段92、帯電手段94Y,94M,94C,94Kおよび定着手段95の各部を制御する。
前述のように本実施の形態によれば、画像情報に基づいて前記発光装置を駆動手段によって駆動して、発光装置からの光を集光手段によって、帯電した感光体ドラムに集光することによって、感光体ドラムは露光され、その表面に静電潜像が形成される。静電潜像が形成された感光体ドラムに、現像剤供給手段によって現像剤を供給すると、感光体ドラムに現像剤が付着して画像が形成される。転写手段によって、感光体ドラムに現像剤によって形成された画像を記録シートに転写して、定着手段によって記録シートに転写された現像剤を定着させることによって、記録シートに画像が形成される。前記発光装置によって、感光体ドラムを精度よく露光することができるので、優れた画像品質の記録画像を得ることができる。発光サイリスタによるスイッチ素子Tおよび発光素子Lを集積化した発光装置10を露光装置として用いているので、このような露光装置を安価に製造することができ、これによって画像形成装置87の製造コストを低減することができる。
また前述の発光装置の設計支援方法によって決定される発光用IC15であって、a個の発光素子を有するSLEDアレイDの電極パッド部12と発光用ICの出力端子部16とが個別に接続される場合、およびa1個の発光素子を有するSLEDアレイDの電極パッド部12と発光用ICの出力端子部16とが個別に接続される場合のいずれの場合でも、出力端子部16の個数が同数の発光用IC15を備えることによって生産性が向上された発光装置10を、画像形成装置87に用いることによって、画像形成装置87の生産性を向上することができる。
図6は、本発明の第2の実施の形態の発光装置210の基本的構成を示す電気回路図である。発光装置210は、図3に示される第1の実施の形態の発光装置10と類似しており、スイッチ素子アレイの構成と、走査信号伝送路25の数とが異なるのみであるので、発光装置10と対応する部分には同一の参照符を付し、重複を避けるため、共通する箇所の説明は省略する。発光装置210は、SLEDアレイDと、発光信号伝送路22と、接続手段24と、走査信号伝送路25と、スタート信号伝送路26と、第1走査信号伝送路25aに第1走査信号φ1を与え、第2走査信号伝送路25bに第2走査信号φ2を与える駆動手段73とを含んで構成される。SLEDアレイDは、電極パッド部12と、発光素子アレイ21と、スイッチ素子アレイ213とを含む。
前述の第1の実施の形態では、発光装置10に備えられる発光用IC15の決定に関する発光装置の設計支援方法について説明したが、発光用IC15が発光装置210に備えられる場合でも、前述の発光装置の設計支援方法によって、出力端子部16が余らない発光用IC15を比較的容易に決定することができる。
発光装置210において、駆動手段73に含まれる発光用IC15は、前述の発光装置の設計支援方法によって決定される発光用ICであって、a個の発光素子を有するSLEDアレイDの電極パッド部12と発光用ICの出力端子部16とが個別に接続される場合、およびa1個の発光素子を有するSLEDアレイDの電極パッド部12と発光用ICの出力端子部16とが個別に接続される場合のいずれの場合でも、出力端子部16が余らない、換言すると出力端子部16の個数が同数の発光用ICである。
さらに述べると、前記発光用IC15は、a個の発光素子を有するSLEDアレイDを駆動する場合およびa1個の発光素子を有するSLEDアレイDを駆動する場合のいずれの場合にも対応可能な発光用IC、換言するとA3サイズおよびA4サイズのいずれのサイズにも対応可能な発光用ICである。
第1および第2走査信号伝送路25a,25bには、複数の発光スイッチ素子が直線状に配列されたスイッチ素子アレイ213におけるスイッチ素子T1,T2,…,Tj−1,Tj(記号jは、2以上の自然数)と直列に接続される抵抗素子Rφがそれぞれ接続され、駆動手段73は、抵抗素子Rφを介して第1および第2走査信号伝送路25a,25bに接続される。
各スイッチ素子Tは、発光部および受光部を含んで構成される。各スイッチ素子Tの発光部を個別に示す場合、スイッチ素子Tの参照符号に添え字「s」を付して記載し、各スイッチ素子Tの受光部を個別に示す場合、スイッチ素子Tの参照符号に添え字「r」を付す。たとえばスイッチ素子T1は、発光部Ts1および受光部Tr1を有する。以下、不特定の発光部を示す場合、単に「Ts」といい、不特定の受光部を示す場合、単に「Tr」という場合がある。
各スイッチ素子Tにおいて、発光部Tsと受光部Trとは隣接して設けられる。複数のスイッチ素子Tは、一方側に隣接するスイッチ素子Tの発光部Tsに受光部Trを臨ませ、他方側に隣接するスイッチ素子Tの受光部Trに発光部Tsを臨ませて配列される。具体的に述べると、スイッチ素子T1の発光部Ts1は、スイッチ素子T2の受光部Tr2に臨み、スイッチ素子T2の発光部Ts2は、スイッチ素子T3の受光部Tr3に臨む。
各スイッチ素子Tの発光部Tsおよび受光部Trは、たとえば前記発光サイリスタによって実現される。スイッチ素子Tの受光部Trは、受光によって予め定める部位である受光部Trのゲートにトリガ信号を発生する。受光部Trのゲートに生成されたトリガ信号は、発光部Tsのゲートに与えられる。発光部Tsのゲートにトリガ信号が与えられることによって、発光部Tsのしきい電圧またはしきい電流が低下する。
発光部Tsは、走査信号伝送路25に接続され、走査信号伝送路25を介して与えられる走査信号φの電圧よりもしきい電圧が低下し、かつ前記走査信号φが与えられたとき、または走査信号φの電流よりもしきい電流が低下し、かつ前記走査信号φが与えられたとき、トリガ信号を発生して発光する。走査信号φの電圧とは、走査信号φが与えられることによって、スイッチ素子Tの発光部Tsのアノードおよびカソード間に印加される電圧であり、走査信号φの電流とは、走査信号φが与えられることによってスイッチ素子Tの発光部Tsに与えられる電流である。
接続手段24は、各発光素子Lの前記予め定める部位であるゲートと、各発光素子Lに対応する各スイッチ素子Tの発光部Tsの前記予め定める部位であるゲートとを、電気的に接続する。
図7は、駆動手段73が、スタート信号伝送路26に与えるスタート信号φS、第1走査信号伝送路25aに与える第1走査信号φ1、第2走査信号伝送路25bに与える第2走査信号φ2および発光信号伝送路22に与える発光信号φEと、発光素子L1の発光強度と、走査スタート用スイッチ素子T0およびスイッチ素子T1〜T4の発光強度とを示す波形図である。発光素子L1および走査スタート用スイッチ素子T0ならびにスイッチ素子T1〜T4の発光強度は、ハイ(略称:H)レベルのとき発光していることを表し、ロー(略称:L)レベルのとき発光していないことを表す。図7において、横軸は時間であって、基準時刻からの経過時間を表す。またスタート信号φS、第1および第2走査信号φ1,φ2ならびに発光信号φEについて、縦軸は、信号レベルを表す。
次に、駆動手段73の動作について説明する。まず時刻t0で、駆動手段73は、スタート信号φS、第1および第2走査信号φ1,φ2ならびに発光信号φEをLレベルとする。スタート信号φSをLレベルにしておくことによって、走査スタート用スイッチ素子T0は発光しない。
時刻t1で、駆動手段73は、スタート信号φSのみをLレベルからHレベルに変化させる。時刻t1において、第1および第2走査信号φ1,φ2ならびに発光信号φEは、Lレベルである。これによって、走査スタート用スイッチ素子T0が、オン状態になり、すなわちターンオンになり、発光する。
走査スタート用スイッチ素子T0の光は、隣接するスイッチ素子アレイ213の配列方向の端部に配置されるスイッチ素子T1の受光部Tr1に最も強く入射する。スイッチ素子アレイ213におけるスイッチ素子T1以外の他のスイッチ素子Tでは、配列方向に走査スタート用スイッチ素子T0から離間した位置に配置されるスイッチ素子Tほど、走査スタート用スイッチ素子T0から照射される光の強度が小さくなる。スイッチ素子Tの受光部Trが光を受光することによって、受光部Trと接続される発光部Tsのしきい電圧またはしきい電流が低下し、また受光部Trによって受光する光強度が大きくなるに従って、発光部Tsのしきい電圧またはしきい電流の降下が大きくなるという特性を有する。
次に走査スタート用スイッチ素子T0からスイッチ素子T1への発光状態の転送について説明する。走査スタート用スイッチ素子T0が発光すると、この光をスイッチ素子T1の受光部Tr1が受光し、前述したようにスイッチ素子T1の発光部Ts1のしきい電圧が低下する。
時刻t1が経過した後、時刻t2においてスイッチ素子T1の発光部Ts1のしきい電圧はVTH(T1)となっている。第1走査信号伝送路25aには、スイッチ素子T1,T3,…,Tj−1が接続されているが、スイッチ素子T3,…,Tj−1は、走査スタート用スイッチ素子T0から充分に離れているので、走査スタート用スイッチ素子T0からの光を受光しても、その光は微弱であるので、その発光部Tsのしきい電圧は、ほとんど変化しない。
時刻t2において、駆動手段73は、第1走査信号φ1をLレベルからHレベルにする。時刻t2において、スタート信号φSはHレベルであり、第2走査信号φ2および発光信号φEはLレベルである。第1走査信号φ1のHレベルは、第1走査信号伝送路25aに接続されるスイッチ素子T1の発光部Ts1を除く他のスイッチ素子T3,…,Tj−1の発光部Tsのしきい電圧またはしきい電流うちの最低値よりも、高い電圧または高い電流に選ばれる。
これによって、時刻t2において、スイッチ素子T1の発光部Ts1がオン状態となり、すなわちターンオンとなり、発光する。スイッチ素子T1の発光部Ts1がオン状態となった後、時刻t3において、駆動手段73は、スタート信号φSをLレベルにする。これによって、走査スタート用スイッチ素子T0は、オフ状態、すなわちターンオフとなり、消灯する。
このようにして、走査スタート用スイッチ素子T0から、スイッチ素子T1へと発光状態が遷移する。また時刻t3において、駆動手段73は、スタート信号φSをHレベルからLレベルにし、以後、スイッチ素子Tjの発光が終了するまでLレベルを維持する。スタート用スイッチ素子T0を発光させないときには、スタート信号φSをLレベルにしておくことができ、Lレベルの電圧を0(零)ボルト(V)としているので、非発光状態において電力を消費しない。スタート信号φSをHレベルとする時間は、第1および第2走査信号φ1,φ2をHレベルとする時間よりも短い時間とする。走査スタート用スイッチ素子T0は、スイッチ素子T1の発光部Ts1のしきい電圧またはしきい電流が低下させるためだけに用いられるので、スタート信号φSがHレベルとする時間を短くして、電力の消費を抑制することができる。
時刻t2と時刻t3との間の時間は、第1走査信号φ1がHレベルとなる時間の1/10程度に選ばれる。このように、隣接するスイッチ素子Tにおいて与えられる走査信号φがHレベルとなる時間が重なるように駆動手段73が走査信号φを与えることによって、隣接するスイッチ素子Tのしきい電圧またはしきい電流が確実に低下している間に、走査信号φをHレベルとすることができ、光走査を確実に行うことができる。
本実施の形態では、第1および第2走査信号φ1,φ2がHレベルとなる時間は、1μ秒(μsecond)程度に選ばれる。したがって、時刻t2と時刻t3との間の時間は、0.1μ秒(μsecond)程度に選ばれる。
スイッチ素子T1の受光部Tr1は、受光によって受光部Trのゲートにトリガ信号を発生し、時刻t2においてスイッチ素子T1の発光部Ts1がオン状態となると、Hレベルとされた第1走査信号φ1がLレベルになるまでは、オン状態を維持する。オン状態となると、スイッチ素子T1のゲートの電圧は、ほぼ0(零)ボルト(V)になる。ここで前記スイッチ素子T1のゲートの電圧とは、このゲートと接地される裏面電極との電位差である。スイッチ素子T1のゲートは、発光素子L1のゲートに接続されているので、スイッチ素子T1のゲートの電圧は、発光素子L1のゲートの電圧と等しくなる。このようにスイッチ素子T1は、発光素子L1のゲートと裏面電極とに印加される電圧を変化させることができる。
発光素子L1を発光させる場合、駆動手段73は、時刻t3が経過した後、時刻t4において、発光信号φEをLレベルからHレベルにする。時刻t5において、駆動手段73が発光信号φEをLレベルにすると、発光素子L1は、オフ状態となり、消灯する。時刻t5が経過した後、駆動手段73は、時刻t6において第2走査信号φ2をHレベルにすると、スイッチ素子T2の発光部Ts2が発光し、時刻t6が経過した後、時刻t7において、第1走査信号φ1をLレベルにすると、スイッチ素子T1の発光部Ts1が消灯する。これによって、スイッチ素子T1からスイッチ素子T2へと発光状態が遷移する。
以後、駆動手段73が、各走査信号伝送路25a,25bに第1および第2走査信号φ1,φ2を繰り返して与えることによって、スイッチ素子T3,…,Tjにおいても、オン状態が発光素子Lの配列方向に沿って順次転送される。スイッチ素子Tの発光部Tsが発光しているとき、発光信号伝送路22の発光信号φEをLレベルからHレベルにすることによって、この発光しているスイッチ素子Tに対応する、換言すると発光している発光部Tsを有するスイッチ素子Tに接続されている発光素子Lのみを選択的に発光させることができる。
発光装置210は、前述の発光装置の設計支援方法によって決定される発光用ICであって、a個の発光素子を有するSLEDアレイDを駆動する場合およびa1個の発光素子を有するSLEDアレイDを駆動する場合のいずれの場合でも、出力端子部16が余らない、換言すると出力端子部16の個数が同数の発光用ICを備えて構成される。
したがって、a個の発光素子を有するSLEDアレイDの電極パッド部12と発光用ICの出力端子部16とが個別に接続される場合、およびa1個の発光素子を有するSLEDアレイDの電極パッド部12と発光用ICの出力端子部16とが個別に接続される場合のそれぞれに応じて、個別の発光用ICまたはSLEDアレイDを設計して製造する必要がないので、個別の発光用ICまたはSLEDアレイDを設計して製造する場合に比べて、製造工数を低減することができる。これによって、同数の出力端子部16を備える発光用IC15を含む発光装置210の生産性の向上を図ることができる。
本発明は、前述の各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更および改良が可能である。たとえば前述の各実施の形態では、発光素子Lが発光サイリスタによって実現される場合の構成について説明したが、本発明の他の実施の形態では、発光素子Lが発光ダイオード(Light Emitting Diode;略称:LED)によって実現されてもよい。この場合、各LEDのアノードが発光信号伝送路22にそれぞれ接続され、各LEDのカソードが各スイッチ素子Tのゲートとそれぞれ接続される。