JP4826707B2 - プロピレンの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明はエチレンとメタノール及び/又はジメチルエーテルからプロピレンを製造する方法に関するものである。
パラフィン類、オレフィン類及び芳香族炭化水素類の製造方法としては、石油のクラッキングによる方法の他、天然ガスを改質し得られる水素/CO混合ガスより得られるメタノール、ジメチルエーテルを原料とする方法についても新しいエネルギー源を使った製造方法として各種検討がなされてきている。特に後者の方法は前者の方法で得られるものに比べて硫黄化合物を実質的に含まないため環境に優しい石化原料として注目されうる。
このようなメタノール、ジメチルエーテルを原料としてパラフィン類、オレフィン類及び芳香族炭化水素類の製造する方法については、ガソリンを主成分として得るものはMTGプロセス、低級オレフィン類を主成分として得る方法をMTOプロセス、低級オレフィンの中でも特にプロピレンを主成分として得るものをMTPプロセスと一般に主生成物の種類に応じて称されている。
しかしながら、メタノールからプロピレンを得る場合には(例えば、特許文献1〜3参照)、理論上、メタノール3分子からプロピレン1分子が生成することとなるため、原料メタノールのモル量を基準とした収率は最大で33%にしかならない上、副生物として生成する水の重量も大きく、釜効率等の点から工業的製造方法として好ましいものとは言えない。
一方、MTPプロセスの中の1態様として、エチレンとメタノールからプロピレンを得る方法も知られているが(非特許文献1参照)、この方法でも原料メタノールを基準としたプロピレンの収率として40%を超えることはなく、未だ不十分であった。
特開昭59−222429号公報 特開平4−217928号公報 米国特許公開2003−139635号明細書 Applied Catalysis A:General 218(2001).241−250
以上のように、従来の技術では、原料メタノールのモル数を基準としたプロピレンの収率が低く、工業的製造方法としては不十分なものであった。
本発明は、エチレンとメタノール及び/又はジメチルエーテルとから、従来の方法よりも高収率でプロピレンを得る方法を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の範囲の反応条件でエチレンとメタノール及び/又はジメチルエーテルとを反応させるとプロピレンを高収率で得られることを見出して本発明を完成させた。すなわち、本発明の要旨は、エチレンとメタノール及び/又はジメチルエーテルとを固体酸触媒の存在下接触させてプロピレンを製造する方法において、反応系に供給するエチレンの量を、反応系に供給するメタノールのモル数と、ジメチルエーテルのモル数の2倍との合計に対して、モル比で1以上20以下の範囲で調整し、反応系に供給するエチレンの量に対して反応系から排出される反応混合物中のエチレンの量を減少させ、かつ、反応系に供給するメタノールのモル数及びジメチルエーテルのモル数の2倍の合計に対して40モル%以上の収率でプロピレンを得ることを特徴とするプロピレンの製造方法に存する。
本発明の第2の要旨は反応系に供給するエチレンの量に対して反応系から排出される反応混合物中のエチレンの量を減少させ、かつ、反応系に供給するメタノールのモル数及びジメチルエーテルのモル数の2倍の合計に対してプロピレンの収率が40モル%以上となるように、反応圧力を0.1kPa以上2MPa未満の範囲で調整し、かつ、反応系に供給するエチレンの量を、反応系に供給するメタノールのモル数とジメチルエーテルのモル数の2倍との合計に対して、モル比で1以上20以下の範囲で調整することを特徴とするプロピレンの製造方法に存する。
本発明によれば、エチレンとメタノール及び/又はジメチルエーテルとを原料として、従来の方法よりも高収率でプロピレンを製造することができる。
以下に、本発明を実施するための代表的な態様を具体的に説明するが、これに限定されるものではない。
(1)反応基質
本発明の製造方法は、気相反応の形態をとるため、本発明の原料は、エチレンとメタノール及び/又はジメチルエーテルとを含む混合ガスからなる。
該混合ガスは、気体状態のエチレンとメタノール及び/又はジメチルエーテルとの他に、ヘリウム、アルゴン、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、水、パラフィン類、メタン等の炭化水素類、芳香族化合物類、及び、それらの混合物といったような反応に不活性な気体を任意に、例えば、混合ガス中の濃度として1モル%〜99モル%の量を存在させることができるが、このうちでも少なくとも水(すなわち、水蒸気)が共存しているのが好ましい。
また、該混合ガスは反応の時点で混合されていれば反応装置内への導入形態としては特に限定されず、エチレンとメタノール及び/又はジメチルエーテル、さらには、必要に応じて、その他の不活性気体をそれぞれ反応装置内に供給しても良いし、予めこれらの混合ガスとした上で、反応装置内に供給しても良い。
(1)−a エチレン
ここで用いるエチレンとしては、特に限定されるものではなく、例えば、石油供給原料から接触分解法又は蒸気分解法等により製造されるもの、石炭のガス化により得られる水素/CO混合ガスを原料としてFT(フィシャートロプシュ)反応を行うことにより得られるもの、エタンの脱水素法又は酸化脱水素法により得られるもの、プロピレンのメタセシス反応及びホモロゲーション反応法により得られるもの、メタノール及び/又はジメチルエーテル等のオキシジェネート原料から固体酸触媒との接触反応によって得られるもの、対応するアルコール(エタノール)の脱水反応によって得られるもの等の公知の各種方法により得られるものを任意に用いることができ、このとき各製造方法に起因するエチレン以外の化合物が任意に混合した状態のものをそのまま用いても良いし、精製したエチレンを用いてもよい。
このうち好ましくは石油供給原料から接触分解法又は蒸気分解法等により製造されるエチレンを原料として用いるものが好ましく、より好ましくは、脱硫処理により硫黄含有量を低下させたエタン、プロパン、ブタン・ブチレン混合物、ナフサ、ライトNGL、ヘビーNGL、灯軽油等のようなC2以上であり沸点300℃までの炭化水素類を原料にして 、分解炉の出口温度が760〜900℃となるような条件で接触分解又は蒸気分解することにより得られるエチレンが挙げられる。
エチレンとして、ナフサの熱分解によるオレフィン類製造設備で得られたエチレンを用いると、該オレフィン類製造設備においてエチレンとプロピレンとの収率バランスを変え得てプロピレン/エチレン比を大幅に上げることができるため、好ましい。
また、メタノール及び/又はジメチルエーテルからの低級オレフィン類製造設備で得られたエチレンを用いると、該低級オレフィン類製造設備においてエチレンとプロピレンとの収率バランスを変え得てプロピレン/エチレン比を大幅に上げることができるため、好ましい。
さらには、エタンのスチームクラッキングによるエチレン製造設備で得られたエチレンを用いると、主に天然ガスから分離されるエタンを原料としてプロピレンを製造できるため好ましい。
なお、エチレン、プロピレン等のオレフィン類の製造方法として慣用されている、ナフサの熱分解による方法において得られるオレフィン類は、平均的に、エチレン約28重量%、プロピレン約17重量%、ブテン/ブタジエン約11重量%の割合となっており、エチレンとプロピレンの需要に応じて両者の収率バランスを変えるには限界がある。これに対して各種の熱分解方法等が検討されているものの、いずれも収率バランスを大幅に変えることは困難である。前述の特許文献3,4に記載の、メタノール及び/又はジメチルエーテルからエチレン、プロピレン、ブテン等の低級オレフィン類を製造する方法においては、例えば特許文献3において、エチレン約10重量%に対して、プロピレン約50重量%、及びブテン約20重量%の性能が示されており、低級オレフィン類を選択的に製造する方法として注目されているものの、やはり収率バランスを大幅に変えるのは困難である。エタンのスチームクラッキングによるエチレン製造設備によりエチレンを製造する方法においても、原料組成により得られるエチレン含有生成物の組成が異なるものの、主としてエチレンが得られるものであり、プロピレンを得るのは困難である。
本発明は、これらの状況に対してエチレンからプロピレンを効率的に製造するための有用な方法である。すなわち、本発明のプロピレンの製造方法は、上記のようなオレフィン類製造設備におけるエチレンとプロピレンとの収率バランスを変え得ることを可能とする重要な技術である。以下に、(i)、(ii)および(iii)のオレフィン類製造設備について説明する。
(i)ナフサの熱分解によるオレフィン類製造設備
本発明におけるナフサの熱分解によるオレフィン類製造設備として、スチームクラッキング法についてその概略フローを説明する。スチームクラッキング法は、エチレン、プロピレン等のオレフィン類の製造設備として慣用され、その代表的な管式加熱炉プロセスである。
その一つの方法としてのフロントエンド脱メタンプロセスにおいては、ナフサをスチームと共に加熱分解炉に導入し、760〜900℃程度の温度で加熱分解して得られた炭化水素類を急冷した後、精留塔に導き、塔底部よりタール、塔側部よりガスオイル、塔頂部より炭化水素類を得る。塔頂留分としての炭化水素類は、急冷して主としてC5以下の炭
化水素類と、スチームに由来する水及び主としてC6以上の炭化水素類の混合物とに分離
する。水及び主としてC6以上の炭化水素類の混合物は、水とC6以上の炭化水素類の混合物とに分離される。なお、ここで分離された水は、スチーム発生槽を経て、加熱分解炉に導入するスチームとして再利用され、分離された水は不揮発性の炭化水素を含有するので、該不揮発性炭化水素を除去するために水の一部は廃棄され、廃棄された分の新たな水が供給される。
前述の塔頂留分を急冷して得られた主としてC5以下の炭化水素類は、圧縮機で圧縮し
、次いで、アルカリ洗浄部で硫黄化合物を除去し、乾燥部を経た後の分解生成物を、脱メタン塔に導き、塔頂留分としてのメタン、水素を回収する。それと共に、塔底留分を脱エタン塔に導き、塔頂留分としてのエタン/エチレン混合物中のアセチレンを水添反応器で
エタン/エチレンとなしてエチレン精留塔に送ると共に、塔底留分を脱プロパン塔に導く。塔頂留分としてのプロパン/プロピレン混合物中のメチルアセチレン、プロパジエンを水添反応器でプロパン/プロピレンとなしてプロピレン精留塔に送ると共に、塔底留分を脱ブタン塔に導く。エチレン精留塔では、塔側部より製品エチレンを回収すると共に、塔底留分としてのエタンを分解炉にリサイクルし、又、プロピレン精留塔では、塔側部より製品プロピレンを回収すると共に、塔底留分としてのプロパンを分解炉にリサイクルする。これにより、99.95%程度の高純度のエチレン、99.0%程度の高純度のプロピレン等を分離回収する。
また、別法としてのフロントエンド脱プロパンプロセスにおいては、前述の如くして前記乾燥部を経た後の分解生成物を、脱プロパン塔に導き、塔頂留分としてのエタン/エチレン、プロパン/プロピレン混合物中のアセチレン、及びメチルアセチレン、プロパジエンを水添反応器でエタン/エチレン、及びプロパン/プロピレンとなして脱メタン塔に導くと共に、塔底留分を脱ブタン塔に導く。脱メタン塔では、塔頂留分としてのメタン、水素を回収すると共に、塔底留分を脱エタン塔に導き、脱エタン塔の塔頂留分としてのエタン/エチレンをエチレン精留塔に送ると共に、塔底留分をプロピレン精留塔に導く。エチレン精留塔では、塔側部より製品エチレンを回収すると共に、塔底留分としてのエタンを分解炉にリサイクルし、また、プロピレン精留塔では、塔側部より製品プロピレンを回収すると共に、塔底留分としてのプロパンを分解炉にリサイクルする。
また、前記フロントエンド脱プロパンプロセスの他のバリエーションとして、脱プロパン塔の塔頂留分を脱メタン塔ではなく脱エタン塔に導く方法もある。脱プロパン塔の塔頂留分中にはアセチレン、及びメチルアセチレンが含まれるが、メチルアセチレンが多く含まれる場合には、前記と同様に水添反応器を経た後、脱エタン塔に導いてもよい。また、メチルアセチレン含有量が少ない場合には、水添反応器を経ずに脱エタン塔に導いた後に脱エタン塔の塔頂留分であるメタン、水素、及びエタン/エチレン混合物中のアセチレンを水添反応器に通してエタン/エチレンとなしてもよい。脱エタン塔の塔頂留分は必要に応じて設置される水添反応器に続いて水素分離器を通した後に脱メタン塔に送ると共に、塔底留分をプロピレン精留塔に送る。脱メタン塔では塔頂留分であるメタンを回収すると共に、塔底留分としてのエタン/エチレンをエチレン精留塔に導く。プロピレン精留塔では、塔側部より製品プロピレンを回収すると共に、塔底留分としてのプロパンを分解炉にリサイクルする。エチレン精留塔では、塔側部より製品エチレンを回収すると共に、塔底留分としてのエタンを分解炉にリサイクルする。
また、更に別法として、前述の如くして前記乾燥部を経た後の分解生成物を、脱エタン塔に導くフロントエンド脱エタンプロセスもある。
ナフサの熱分解による前記オレフィン類製造設備で得られたエチレンと、メタノール又は/及びジメチルエーテルを含むガスとを反応させてプロピレンを製造すると共に、副生した水をナフサ熱分解におけるスチーム発生源として用いることが好ましい。これにより、ナフサの熱分解によりオレフィン類を製造する際に、ナフサの熱分解におけるスチームコストを低減することができる。
前述した通り、ナフサ熱分解プロセスにおける加熱分解炉は、ナフサの希釈ガスとして水を用いるが、再利用する際に回収した水の一部を廃棄する必要があり、また、加熱分解炉の運転条件によっては水が不足することもあるのに対して、エチレンとメタノール又は/及びジメチルエーテルとからプロピレンを製造する際にメタノール及び/又はジメチルエーテル1モル当たり1モルの水が副生するので、その副生した水により、スチーム発生源で不足する分の水を補うことができる。
また、例えば、プロピレンを製造する際に副生した水の一部を、そのプロピレンを製造する反応におけるエチレンとメタノール又は/及びジメチルエーテルを含むガスの希釈剤
として利用し、残りの水をナフサ熱分解におけるスチーム発生装置に供給する等の利用方法を採ってもよく、又、ナフサの熱分解で用いたスチームを回収した水の一部を、エチレンとメタノール又は/及びジメチルエーテルとの反応におけるエチレンとメタノール又は/及びジメチルエーテルを含むガスの希釈剤として利用してもよい。
なお、ここで、ナフサの熱分解によるオレフィン類製造設備で得られたエチレンとは、前記フロントエンド脱メタンプロセス、フロントエンド脱プロパンプロセス、及びフロントエンド脱エタンプロセス等におけるエチレン精留塔を経て得られたエチレンのみならず、前記フロントエンド脱メタンプロセスにおける脱エタン塔の塔頂留分としてのエタン/エチレン混合物中のアセチレンを水添反応器でエタン/エチレンとなした後のエタン/エチレン混合物、前記フロントエンド脱プロパンプロセスにおける脱エタン塔の塔頂留分としてのエタン/エチレン混合物、前記フロントエンド脱プロパンプロセスの他のバリエーションにおける、脱エタン塔の塔頂留分としてのメタン、水素、及びエタン/エチレン混合物中のアセチレンを必要に応じて水添反応器でエタン/エチレンとなした後のエチレンを含む混合物、及び、前記フロントエンド脱エタンプロセスにおける脱エタン塔の塔頂留分としてのメタン、水素、及びエタン/エチレン混合物中に混在するアセチレンを水添反応器でエタン/エチレンとなした後の、エチレンを含む混合物等も含めて言うこととする。なお、前記フロントエンド脱プロパンプロセスの他のバリエーション、及び前記フロントエンド脱エタンプロセスにおけるエチレンを含む混合物は、必要に応じてこれら混合物に含まれる水素及び/又はエタンの少なくとも一部を分離したものであってもよい。
これらの中でも、ナフサの熱分解による前記オレフィン類製造設備における前記脱エタン塔の塔頂留分より得られるエタン/エチレン混合ガスを用いるのが好ましい。これにより、メタノール又は/及びジメチルエーテルと反応させる原料エチレンとして、エチレン精留塔の塔側部より回収される製品エチレンを用いる場合に比して、エチレン精留塔における負荷を削減することができる。それと共に、エタン/エチレン混合ガスに10〜20%程度含有されるエタンが、メタノール又は/及びジメチルエーテルと反応させるにおけるキャリアとして作用するので、キャリア物質を外部から供給することが不要となり、エチレンとメタノール又は/及びジメチルエーテルとの反応を極めて効率的に実施することができる。
なお、ここで、脱エタン塔の塔頂留分より得られるエタン/エチレン混合ガスとは、前記フロントエンド脱メタンプロセスにおいては、塔頂留分としてのエタン/エチレン混合物中のアセチレンを水添反応器でエタン/エチレンとなした後のものを、また、前記フロントエンド脱プロパンプロセスにおいては、塔頂留分としてのエタン/エチレンを、また、前記フロントエンド脱プロパンプロセスの他のバリエーションにおいては、塔頂留分としてのメタン、水素、及びエタン/エチレン混合物中のアセチレンを必要に応じて水添反応器でエタン/エチレンとなした後のものを、前記フロントエンド脱エタンプロセスにおいては、塔頂留分としてのメタン、水素、及びエタン/エチレン混合物中に混在するアセチレンを水添反応器でエタン/エチレンとなした後のものを、それぞれ言うこととする。
更には、前記フロントエンド脱プロパンプロセスの他のバリエーション、及び前記フロントエンド脱エタンプロセスにおけるエチレンを含む混合物は、必要に応じて混合物に含まれる水素又は/及びメタンの少なくとも一部を分離してもよい。例えば、水素分離した後、メタンの少なくとも一部を分離するためには、これらのプロセスにおける脱メタン塔の塔側部から抜き出す方法が挙げられる。このとき、少なくとも一部のメタンを分離するに当たって一部のメタンを残すことにより、前述の通りエチレン精留塔における負荷を削減することができるだけでなく、脱メタン塔における負荷も削減することができる。それと共に、エタン/エチレン混合ガスに含まれるエタンのみならずメタンも又、メタノール又は/及びジメチルエーテルと反応させるにおけるキャリアとして作用するので、エチレ
ンとメタノール又は/及びジメチルエーテルとの反応を効率的に実施する一助となる。
(ii)メタノール及び/又はジメチルエーテルからの低級オレフィン類の製造方法
メタノール又は/及びジメチルエーテルからの低級オレフィン類の製造方法は、前記特許文献1〜4等により従来公知の方法であって、例えば、メタノール又は/及びジメチルエーテルを、必要に応じて水の共存下で、固体酸触媒等の存在下に温度200〜600℃、圧力10〜600kPaで反応させ、エチレン、プロピレン、ブチレン等の低級オレフィン類を製造するものである。
ここで、メタノール及び/又はジメチルエーテルと水との比は1:0〜2とするのが好ましく、触媒としての固体酸触媒は、珪素含有化合物が好ましく、珪素含有化合物としては、二酸化珪素等であってもよいが、結晶性アルミノシリケート類、メタロシリケート類、又は結晶性燐酸アルミニウム類がより好ましく、ゼオライト類が特に好ましい。又、温度としては、300〜600℃とするのが好ましく、圧力としては、20kPa〜1MPaとするのが好ましい。
そして、例えば、前記条件下でメタノール又は/及びジメチルエーテルを反応させ、反応ガスを冷却し、部分凝縮して、分離器で三相に分離する。次いで、高級脂肪酸及び芳香族化合物からなる液相を取り出し、残りの水相と気相を洗浄塔で水にて洗浄し、その頂部よりC2〜C4のオレフィン類を含有するガス状混合物を取り出し、公知の方法で、C2
3及びC4に分離し、精製して製品エチレン、製品プロピレン、及び製品ブチレンを取り出す。一方、その底部より未反応メタノール、並びに、未反応及び中間生成物としてのジメチルエーテルを含有する水相を取り出し、同水相からメタノール及びジメチルエーテルを分離して反応器にリサイクルし、一方、水を除去する。
その際のC2〜C4のオレフィン類を含有するガス状混合物の分離・精製系としては、例えば、脱エチレン/エタン塔、脱メタノール塔、脱プロピレン/プロパン塔、脱ブチレン/ブタン塔の順に経由させて、脱エチレン/エタン塔の塔頂留分としてのエチレン/エタン混合物を、必要に応じて該混合物中のアセチレンを水添反応器でエチレン/エタンとする。その後に、脱メタノール塔を経由してエチレン精留塔に送ると共に、塔底留分を脱プロピレン/プロパン塔に導き、脱プロピレン/プロパン塔の塔頂留分としてのプロピレン/プロパン混合物を、必要に応じて該混合物中のメチルアセチレン、プロパジエンを水添反応器でプロピレン/プロパンとする。その後に、プロピレン精留塔に送ると共に、塔底留分を脱ブチレン/ブタン塔に導く。エチレン精留塔では、塔頂部より製品エチレンを回収すると共に、塔底からエタンを分離し、又、プロピレン精留塔では、塔頂部より製品プロピレンを回収すると共に、塔底からプロパンを分離する。
なお、ここで、メタノール又は/及びジメチルエーテルからの低級オレフィン類の前記製造設備で得られたエチレンとは、例えば、脱エチレン/エタン塔の塔頂留分としてのエチレン/エタン混合物を、必要に応じて該混合物中のアセチレンを水添反応器でエチレン/エタンとなした後に、脱メタノール塔を経由してエチレン精留塔に送り、その塔頂部より回収される製品エチレンのみならず、脱エチレン/エタン塔の塔頂留分としてのエチレン/エタン混合物、或いは、必要に応じて該混合物中のアセチレンを水添反応器でエチレン/エタンとなした後のエチレン/エタン混合物、等であってもよい。
(iii)エタンのスチームクラッキングによるエチレン製造設備
エタンのスチームクラッキングは、主にエタンを含むアルカン類の混合物を、例えば500〜900℃、常圧以上で脱水素する反応であり、主にアルケンおよび一部、ジエン、アルキンが得られる。得られた反応混合物の分離・精製系としては、例えば、まずフロントエンド形脱エタン塔でC3より重い留分を分離し、塔頂部からの炭化水素混合物を回収
した後、必要に応じて該混合物中のアセチレンを水添反応器で除去しエチレン/エタンとする。その後に、脱メタン塔を経由してエチレン精留塔に送り、その塔頂部よりエチレン
を回収する。ここで、エタンのスチームクラッキングによるエチレン製造設備で得られたエチレンとは、エチレン精留塔で回収される製品エチレンのみならず、脱メタン塔の塔頂留分としてのエチレン/エタン/メタン/水素混合物、あるいは、フロントエンド脱エタン塔の塔頂留分混合物を必要に応じて該混合物中のアセチレンを水添反応器でエチレン/エタンとなした後の混合物、等であってよい。
(1)−b メタノール及び/又はジメチルエーテル
原料であるメタノール及びジメチルエーテルの製造由来は特に限定されず、例えば、石炭及び天然ガス、並びに、製鉄業における副生物由来の水素/COの混合ガスの水素化反応により得られるもの、植物由来のアルコール類の改質反応によりえられるもの、発酵法により得られるもの、再循環プラスチックや都市廃棄物等の有機物質から得られるもの等が挙げられる。
これらの中でも、水素/COの混合ガスの水素化反応により上記メタノール及びジメチルエーテルを得る方法が好ましい。
(2)触媒
本発明で用いる触媒としては、ブレンステッド酸点を有する固体状のものであれば特に限定されず、例えば、カオリン等の粘土鉱物;粘土鉱物等の担体に硫酸、リン酸等の酸を含浸・担持させたもの;酸性型イオン交換樹脂;リン酸アルミニウム類;Al−MCM41などのメソポーラスシリカアルミナ;ゼオライト類;又は、ITQ−2などの層状ゼオライト等の固体酸触媒といった公知の触媒を任意に用いることができる。
固体酸触媒としては、表面積が大きいものが好ましく、また、酸点が多いものが好ましい。
好ましく用いられる固体酸触媒のBET比表面積は、通常100m2/g以上、好まし
くは200m2/g以上、より好ましくは300m2/gであって、通常1,000m2
g以下、好ましくは800m2/g以下、より好ましくは700m2/g以下である。又、細孔容積は、通常0.01cc/g以上、好ましくは0.05cc/g以上、より好ましくは0.1cc/g以上であって、通常0.8cc/g以下、好ましくは0.6cc/g以下、より好ましくは0.5cc/g以下である。
このような固体酸触媒の中でも、酸強度があまり高くないものが好ましい。例えば、メソポーラスシリカ、ゼオライト、および層状ゼオライトなどが挙げられる。
(i)ゼオライト
ゼオライト類の構造としては、例えば、International Zeolite Association(IZA
)が規定するコードで表すと、AEI、AET、AEL、AFI、AFO、AFS、AST、ATN、BEA、CAN、CHA、DDR、EMT、ERI、EUO、FAU、FER、LEV、LTL、MAZ、MEL、MFI、MOR、MTT、MTW、MWW、OFF、PAU、RHO、STT、TONなどが挙げらる。
これらの中でも、細孔径が3〜9オングストロームのミクロ細孔を有するものが好ましい。
ゼオライトの中でも、結晶性多孔質珪酸塩又は結晶性多孔質アルミノ燐酸塩が好ましく、珪素元素及びアルミニウム元素以外の周期表第1族〜第14族の金属元素で修飾された結晶性多孔質珪酸塩又は同じく修飾された結晶性多孔質アルミノ燐酸塩が更に好ましい。
(i)−a 結晶性多孔質珪酸塩
結晶性多孔質珪酸塩としては、珪素元素の一部がアルミニウム元素又は/及び燐元素、又は/及び硼素元素で置換された、例えば、結晶性多孔質の、珪酸塩、アルミノ珪酸塩、アルミノホスホ珪酸塩、ボロ珪酸塩、及びアルミノボロ珪酸塩等が挙げられ、また、珪素元素の一部が他の元素で置換されたメタロ珪酸塩等が挙げられる。これらの中で、珪酸塩、アルミノ珪酸塩、アルミノホスホ珪酸塩、及びアルミノボロ珪酸塩で置換された結晶性
アルミノ珪酸塩、後述する修飾させた結晶性多孔質珪酸塩が好ましい。又、アルミノ珪酸塩においては、SiO2 /Al23 のモル比が10より大きいものが好ましい。
これらの結晶性多孔質珪酸塩の構造としては、International Zeolite Association (IZA)が規定するゼオライト類のコードで表すと、例えば、AEI、AET、AEL、AFI、AFO、AFS、AST、ATN、BEA、CAN、CHA、DDR、EMT、ERI、EUO、FAU、FER、LEV、LTL、MAZ、MEL、MFI、MOR、MTT、MTW、MWW、OFF、PAU、RHO、STT、TON等が挙げられ、AFI、BEA、CAN、CHA、DDR、EMT、ERI、EUO、FAU、FER、LEV、LTL、MAZ、MEL、MFI、MOR、MTT、MTW、MWW、OFF、PAU、RHO、STT、TONが好ましい。具体的には、AFI構造を有するSSZ−24等、BEA構造を有するβ等、CAN構造を有するCancrinite等、CHA構造を有するChabazite、SSZ−13等、DDR構造を有するシグマ−1等、EMT構造を有するEMC−2等、ERI構造を有するエリオナイト等、EUO構造を有するEU−1等、FAU構造を有するUSY等、FER構造を有するフェリエライト、ZSM35等、LEV構造を有するLevyne等、LTL構造を有するL型ゼオライト等、MAZ構造を有するMazzite等、MFI構造を有するZSM5等、MEL構造を有するZSM11等、MOR構造を有するモルデナイト等、MTT構造を有するZSM23等、MTW構造を有するZSM12等、MWW構造を有するMCM22等、OFF構造を有するオフレタイト等、PAU構造を有するECR18等、RHO構造を有するRho等、STT構造を有するSSZ23等、TON構造を有するZSM22等が挙げられる。中でも好ましくは、AEI構造、BEA構造、CHA構造、MFI構造を有するものであり、特に好ましくはBEA構造およびMFI構造を有するものであり、具体的にはβおよびZSM5等が挙げられる。
これらは各種市販品の他、上記のIZA発行の“Verified Syntheses Of Zeolitic Materials” (2nd Revised Edition 2001 Elsevier)等に記載の公知の方法で合成したものを用いることができる。
また、前記結晶性多孔質珪酸塩の中でアルミニウム元素を含有する結晶性多孔質アルミノ珪酸塩においては、アルミニウム元素を含有する結晶性多孔質珪酸塩を構成するアルミニウム原子の一部をスチーミングや酸処理等により脱アルミニウムさせて高シリカアルミナ比にしたものも用いることができる。このうち、SiO2 /Al23のモル比が30以上のものが好ましく、より好ましくは50以上のものであり、更に好ましくは100以上のものであり、特に好ましくは200以上のものである。一方で、その上限としては、通常、SiO2 /Al23のモル比が1,000以下、より好ましくは750以下、特に好ましくは500以下である。なお、ZSM5等は上記の方法以外にも、合成時にAl量をコントロールすることで、含有Al量を調節する事ができる。
該結晶性アルミノ珪酸塩類としては、BET比表面積が200m2/g〜700m2/g、細孔容積が0.1cc/g〜0.5cc/gのものが好ましい。
(i)−b 結晶性多孔質アルミノ燐酸塩
結晶性多孔質アルミノ燐酸塩としては、これを構成するアルミニウム元素及び燐元素の一部が珪素元素又は/及び硼素元素で置換された、例えば、結晶性多孔質の、アルミノ燐酸塩、シリコアルミノ燐酸塩、及びボロアルミノ燐酸塩等でもよく、また、さらにはその他の金属原子で置換されたもの、あるいは後述する修飾させた結晶性多孔質アルミノ燐酸塩であっても良い。
これらの結晶性多孔質アルミノ燐酸塩の構造としては、前記IZAが規定するゼオライト類のコードで表すと、例えば、AEI、AEL、AFI、AFO、AST、CHA、ERI、FAU等が挙げられる。好ましくはCHAである。
上記結晶性多孔質アルミノ燐酸塩として好ましくは結晶性多孔質シリコアルミノリン酸塩である。具体的には、AEI構造を有するSAPO18等、AFI構造を有するSAPO5等、AFO構造を有するSAPO41等、AEL構造を有するSAPO11等、AST構造を有するSAPO16等、CHA型構造を有するSAPO34、SAPO44等、ERI構造を有するSAPO17等、FAU構造を有するSAPO37等が挙げられ、好ましくはCHA型構造を有するものであり、特に好ましくはSAPO34である。
これらは各種市販品の他、上記のIZA発行の“VerifiedSyntheses Of Zeolitic Materials” (2nd Revised Edition 2001 Elsevier)等に記載の公知の方法で合成したものを
用いることができる。
<修飾固体酸触媒>
本発明における固体酸触媒の中で、前記結晶性多孔質珪酸塩及び前記結晶性多孔質アルミノ燐酸塩は、珪素元素及びアルミニウム元素以外の周期表第1族〜第14族の金属元素で修飾されたものが好ましい。
本発明において、前記結晶性多孔質珪酸塩及び前記結晶性多孔質アルミノ燐酸塩の修飾に用いられる、珪素元素及びアルミニウム元素以外の周期表第1族〜第14族の金属元素としては、第1族〜第4族、及び第7族〜第13族の金属元素が好ましく、第1族〜第4族の金属元素の中でも第1族〜第3族の金属元素が好ましく、第1族及び第2族の金属元素がより好ましい。又、第7族〜第13族の金属元素の中でも第7族の金属元素が好ましい。
また、周期表第1族〜第14族の金属元素の中でも、第1族〜第2族においては周期表第3周期〜第5周期の金属元素が好ましく、第4周期〜第5周期の金属元素がより好ましく、第4周期の金属元素が特に好ましい。又、第3族〜第14族においては周期表第4周期〜第5周期の金属元素が好ましく、第4周期の金属元素がより好ましい。これらの好ましい金属元素の具体例としては、例えば、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、ランタノイド元素、Mn、及びNi等が挙げられる。これらの中で、結晶性多孔質珪酸塩を修飾する金属元素としては、第1族〜第4族の金属元素、具体的には、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、及びBaが好ましく、Na、K、Mg、Ca、Sr、及びBaがより好ましい。また、結晶性多孔質アルミノ燐酸塩を修飾する金属元素としては、第7族〜第13族の金属元素、具体的には、Mn、及びNiが好ましく、Mnがより好ましい。
なお、前記IZAが規定するコードで、前記BEA、ERI、FAU、MFI、MOR
、MWW、OFFで表される構造のゼオライトに対して、周期表第2族の金属元素で修飾されたものであるのが好ましい。
<修飾方法>
本発明において、前記結晶性多孔質珪酸塩又は前記結晶性多孔質アルミノ燐酸塩を周期表第1族〜第14族の前記金属元素で修飾する方法としては、(A)前記結晶性多孔質珪酸塩又は前記結晶性多孔質アルミノ燐酸塩を製造する工程で周期表第1族〜第14族の前記金属元素の化合物を存在させて結晶性多孔質珪酸塩又は結晶性多孔質アルミノ燐酸塩を製造する方法、(B)前記結晶性多孔質珪酸塩又は前記結晶性多孔質アルミノ燐酸塩を周期表第1族〜第14族の前記金属元素の化合物で処理する方法、及び(A)と(B)とを併用する方法、のいずれも用いることができる。
その際の修飾に用いられる周期表第1族〜第14族の前記金属元素の化合物としては、
周期表第1族〜第14族の前記金属の塩、酸化物、及び水酸化物等が用いられ、塩としては、硝酸塩、燐酸塩、塩化物等の無機塩、及び酢酸塩等のカルボン酸塩、炭酸塩等の有機
塩等が用いられる。
また、前記(A)の前記結晶性多孔質珪酸塩又は前記結晶性多孔質アルミノ燐酸塩を製造する工程で周期表第1族〜第14族の前記金属元素の化合物を存在させて結晶性多孔質珪 酸塩又は結晶性多孔質アルミノ燐酸塩を製造する方法としては、具体的には、例えば
、特開昭59−97523号公報、及び特開平3−101628号公報等に記載の方法に従い、結晶性多孔質珪酸塩又は結晶性多孔質アルミノ燐酸塩の製造原料中に周期表第1族〜第14族の金属元素の化合物を存在させて周期表第1族〜第14族の金属元素を結晶格子に導入することにより、それら金属元素で修飾された結晶性多孔質珪酸塩、所謂、メタロ珪酸塩、メタロアルミノ珪酸塩、メタロアルミノホスホ珪酸塩、メタロボロ珪酸塩、及びメタロアルミノボロ珪酸塩等の結晶性メタロ珪酸塩、又は結晶性多孔質アルミノ燐酸塩、所謂、メタロアルミノ燐酸塩、メタロシリコアルミノ燐酸塩、及びメタロボロアルミノ燐酸塩等の結晶性メタロアルミノ燐酸塩、を得ることができる。
また、前記(B)の前記結晶性多孔質珪酸塩又は前記結晶性多孔質アルミノ燐酸塩を周期表第1族〜第14族の前記金属元素の化合物で処理する方法としては、具体的には、例えば(B−1)、(B−2)、(B−3)の方法が使用される。
(B−1):前記結晶性多孔質珪酸塩又は前記結晶性多孔質アルミノ燐酸塩を、常法に従い周期表第1族〜第14族の前記金属元素の化合物含有溶液を用いてイオン交換して周期表第1族〜第14族の金属元素を結晶格子に導入することにより、それら金属元素で修飾された結晶性多孔質珪酸塩、所謂、前述のごとき結晶性メタロ珪酸塩、又は結晶性多孔質アルミノ燐酸塩、所謂、前述のごとき結晶性メタロアルミノ燐酸塩、を得ることができる。
(B−2):前記結晶性多孔質珪酸塩又は前記結晶性多孔質アルミノ燐酸塩を、常法に従い周期表第1族〜第14族の前記金属元素の化合物含有溶液に浸漬し、濾過、又は遠心分離等で分離する浸漬法、或いは、前記金属元素の化合物含有溶液に浸漬し、溶液を蒸発乾固する含浸法、等によって表面処理することにより、周期表第1族〜第14族の金属元素で修飾された結晶性多孔質珪酸塩又は結晶性多孔質アルミノ燐酸塩を得ることができる。
このときの前記金属元素の化合物含有溶液の溶媒は特に限定されないが、通常水又はアルコールが用いられ、水が好ましい。又、溶液の濃度は、通常0.01重量%以上、飽和濃度以下とする。浸漬法では、結晶性多孔質珪酸塩又は前記結晶性多孔質アルミノ燐酸塩の吸水量を考慮する必要があるが、高濃度の溶液を用いる方が効率よく金属元素を導入処理できるため好ましい。尚、修飾された結晶性多孔質珪酸塩又は結晶性多孔質アルミノ燐酸塩における周期表第1族〜第14族の金属元素の化合物の量は、珪酸塩、又はアルミノ燐酸塩に対する金属化合物の重量比で、通常0.001以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上であって、通常1000以下、好ましくは100以下、より好ましくは10以下となるように処理する。
(B−3):前記結晶性多孔質珪酸塩又は前記結晶性多孔質アルミノ燐酸塩を、常法に従い周期表第1族〜第14族の前記金属元素の化合物と物理的に混合することにより、周期表第1族〜第14族の金属元素で修飾された結晶性多孔質珪酸塩又は結晶性多孔質アルミノ燐酸塩を得ることができる。
この物理的混合においては、周期表第1族〜第14族の金属元素の化合物の混合条件下での安定性の面から、酸化物、炭酸塩が好ましい。又、前記結晶性多孔質珪酸塩又は前記結晶性多孔質アルミノ燐酸塩、及び周期表第1族〜第14族の金属元素の化合物は、粒径が通常0.01mm以上、5mm以下の粒子状であるが、混合処理が効率よく行えるためには金属元素の化合物の粒径は小さい方が好ましい。又、結晶性多孔質珪酸塩又は結晶性
多孔質アルミノ燐酸塩と周期表第1族〜第14族の金属元素の化合物との混合比は、結晶性多孔質珪酸塩又はアルミノ燐酸塩に対する金属元素の金属原子としての重量比で、通常0.001以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上であって、通常100以下、好ましくは10以下、より好ましくは5以下とする。又、その際の混合装置は特に限定されず、通常の攪拌装置を用いて行うことができるが、粉砕と混合を同時に行う装置を用いると効率よく行えるため好ましい。混合時間は、処理量により変動するが、通常1秒以上、好ましくは1分以上であって、通常10時間以下、好ましくは1時間以下、より好ましくは30分以下とする。
以上の修飾方法の中で、前記(A)の方法により得られるものは、触媒としての初期性能、具体的にはプロピレン選択性が高い固体酸触媒となる傾向があり、又、前記(B)の方法により得られるのは、選択性及び触媒寿命がいずれも高い固体酸触媒となる傾向がある。
(ii)層状ゼオライト
本発明における層状ゼオライトとは、例えば「ゼオライトの科学と工学」10頁(講談社、2000年)などに記載されている通り、層状前駆体の層を剥離した状態のゼオライトである。層状ゼオライトは、ゼオライトと同等の酸強度を有するアルミノシリケートであって、メソ孔を有するものである。短期周期性を有し、長期周期性を持たない構造規則性を有するものである。
層状ゼオライトは、通常アルミノシリケートであり、Si/Alモル比は5以上、好ましくは7.5以上、より好ましくは10以上であって、10000以下、好ましくは5000以下、さらに好ましくは1000以下である。Alの一部、または全部を周期律表の2から14の原子に置換した物であっても良い。置換される原子としては、好ましくはB、Ti、V、Fe、Zn、Ga、Ge、Zr、Snなどがあげられる。
層状ゼオライトのBET比表面積は通常300m2/g以上、好ましくは400m2/g以上、より好ましくは500m2/g以上であって、通常2000m2/g以下、好ましくは1800m2/g以下、より好ましくは1500m2/g以下である。また、通常BET比表面積全体に占める1.7nm〜30nmの孔の比表面積の割合が通常0.4以上、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.6以上である。XRDにおいて、CuのKα線で測定した場合に面間隔d=17Å以上に最大ピークを有さなず、3〜4.5Åにピークを有する。
細孔容積は通常0.3cc/g以上、好ましくは0.5cc/g以上であって、通常3cc/g以下、好ましくは2cc/g以下である。
層状ゼオライトの具体例としては、ITQ−2、YNU−1、ITQ−6などが挙げられ、ITQ−2が好ましい。
<層状ゼオライトの製造方法>
層状ゼオライトの一般的合成法としては、例えばJournal of Catalysis186,57-63,(1999)やJ.Am.Chem.Soc.122,2804-2809,(2000)に記載の公知の方法で合成したものを用いることができる。
以下、具体的に説明するが、本発明の触媒として用いる層状ゼオライトの製造方法は限定されるものではない。
まず、シリカ源、アルミニウム源、水およびテンプレートならびに必要に応じて鉱化剤を混合し、該混合物を水熱合成する。
シリカ源としては、水ガラス、シリカゾル、微粉シリカ、ケイ酸エチルなどのケイ酸アルキルを使用する。
アルミニウム源としては、アルミニウムの硝酸塩、硫酸塩、および塩化物などの無機酸
塩、酢酸塩等の有機酸塩、水酸化物、酸化物、擬ベーマイト、アルコキシドならびにアルミン酸ソーダ等が用いられる。
テンプレートとしては、4級アルキルアンモニウム塩、アルキルアミン類、ジアミン類、アルコールアミン類、アルコール類、エーテル類、アミド類、アルキル尿素類、シアノアルカン類などが用いられ、4級アルキルアンモニウム塩とアミン類が好ましい。
鉱化剤としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物、炭酸水素塩、炭酸塩等が用いられる。
シリカ源とアルミニウム源との比率は、SiO2/Al23が通常1以上、好ましくは 5以上、より好ましくは10以上であって、通常1000以下、好ましくは500以下、より好ましくは300以下である。
シリカ源に対する水のモル比はH2O/SiO2が通常1以上、好ましくは2以上、より好ましくは3以上であって、通常200以下、好ましくは150以下より好ましくは120以下である。
シリカ源に対する鉱化剤の比率は、鉱化剤の金属原子のSiO2に対するモル比として 、通常0.0001以上、好ましくは0.001以上、より好ましく0.01以上であって、通常20以下、 好ましくは10以下、より好ましくは8以下である。
シリカ源に対するテンプレートの比率は、テンプレートのSiO2に対するモル比とし
て通常0.01以上、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.05以上であって、通常20以下、好ましくは10以下、より好ましくは6以下である。
こうして調整された水性混合物を通常80℃以上、好ましくは90℃以上であて、通常260℃以下、好ましくは220℃以下に過熱して、無攪拌または攪拌下に、圧力は自生圧、またはそれ以上の圧で水熱合成する。
水熱合成に要する時間は、通常1時間以上、好ましくは5時間以上であって、通常30日以下である。
こうして得られた層状前駆体は、水熱合成後濾過などにより分離することにより得られる。
高シリカゼオライトは通常テンプレートと呼ばれる有機物を水熱合成時に用い、まずテンプレート含有の状態(as−made)の前駆体を合成し、これを焼成する事により、層間で脱水縮合が起こり、ゼオライトが形成されるが、このようなゼオライトの中にあって、水熱合成により得られるものが層状前駆体であるものがある。層状前駆体であるかどうかの一つの指標としては、as−madeの状態と、焼成によるテンプレート除去後における構造が異なる事である。これはXRD分析などからわかる。
層状前駆体としては、例えば、焼成によりMCM22、SSZ25、ITQ1、ERB1、PSH3などになるMWW型ゼオライトの前駆体、焼成によりFERになるPREFERとよばれる前駆体、あるいはPLS−1、RUB−15、RUB−18などの層状シリケート類があげられる。
層状前駆体から層状ゼオライトを得る場合、通常は、これら層状前駆体の層間を界面活性剤などを用いて広げ、その後、有機物を除去する事により層を剥離させて層状ゼオライトとする。
層間を広げるために、層状前駆体を界面活性剤および4級アンモニウム塩の水溶液で処理する。界面活性剤は、通常水溶性の長鎖有機化合物を用い、具体的にはオクチルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウムおよびセチルトリメチルアンモニウムの、水酸化物およびハロゲン化物が用いられ、ハロゲン化物としては塩化物、臭化物が好ましい。
4級アンモニウム塩としては、炭素数8以下のアルキル基を有するアルキルアンモニウムであり、例えばテトラプロピルアンモニウムを用いることができる。
界面活性剤と4級アンモニウム塩との混合比は4級アンモニウム塩/界面活性剤として
、通常0.1以上、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上通常10以下、好ましくは5以下、より好ましくは3以下である。
水溶液の濃度は、界面活性剤および4級アンモニウム塩のモル数の和が通常0.1mol/l以上、好ましくは0.2mol/l以上、より好ましくは0.3mol/l以上であって、通常10mol/l以下、好ましくは5mol/l以下、より好ましくは3mol/l以下である。
水溶液の量は、水溶液に対する層状前駆体の重量割合で、通常2以上、好ましくは4以上、より好ましくは10以上であって、通常200以下、好ましくは100以下、より好ましくは50以下である。
処理温度は、通常20℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは80℃以上であって、通常120℃以下、好ましくは110℃以下、より好ましくは100℃以下である。
処理時間は、通常1時間以上、好ましくは7時間以上であって、通常40時間、好ましくは25時間である。
処理後、そのまま、あるいは一度濾過して水洗し、再度水でスラリー状とした後、層剥離を行う。層剥離は、通常強攪拌、超音波処理、スプレードライ等の公知の剥離方法を行う。強攪拌、超音波処理する場合の剥離時間は通常0.5時間以上、好ましくは1時間以上、通常100時間以下、好ましくは20時間以下である。
層剥離後、層状ゼオライトを分離する。分離は濾過でも遠心分離でもよいが、層状ゼオライトの大きさが小さい場合には、通常、回収効率を上げるために塩酸、硫酸などの酸を添加して凝集させてもよい。
こうしてテンプレートを含む層状ゼオライトが得られるが、テンプレートを除去するために、乾燥・焼成して層状ゼオライトとする。
乾燥温度は通常80℃以上150℃以下、通常10分以上、好ましくは30分以上、通常24時間以下、好ましくは12時間以下行う。焼成温度は通常300℃以上、好ましくは400℃以上であって、通常800℃以下、好ましくは600℃以下である通常10分以上、好ましくは30分以上、通常24時間以下、好ましくは12時間以下行う。
このようにして合成される層状ゼオライトとしては、例えば、MWW型ゼオライト前駆体からのITQ−2、YNU−1、PREFERからのITQ−6などがあげられる。
こうして製造された層状ゼオライトは、短周期での構造規則性を持つため通常のゼオライトと同様の酸点などの活性点を有し、しかも通常のゼオライトよりも、層状であるため外表面が大きい。これらの特徴から、本発明においては、拡散等において有利となり、選択性、耐久性に優れた触媒となる。
上記触媒は、そのまま反応に用いても良いし、反応に不活性な物質やバインダーを用いて、造粒・成形して反応に用いても良い。該反応に不活性な物質やバインダーとしては、アルミナ又はアルミナゾル、シリカ、シリカゲル、石英、及び、それらの混合物等が挙げられる。これらの物質との混合により触媒全体のコスト削減、触媒再生時の熱遮蔽補助用熱シンクとしての作用に有効であり、また、触媒の高密度化、触媒強度増加に効果的でもある。
(3) 反応条件
本発明の製造方法における反応様式としては、供給原料が反応域において気相であれば特に限定されず、流動床反応装置、移動床反応装置又は固定床反応装置を用いた公知の気相反応プロセスを適用することができる。また、バッチ式、半連続式又は連続式のいずれの形態でも行われ得るが、連続式で行うのが好ましく、その方法は、単一の反応器を用いた方法でも良いし、直列又は並列に配置された複数の反応器を用いた方法でもよい。
本発明においては、エチレンとメタノール及び/又はジメチルエーテルとを触媒の存在
下に接触させてプロピレンを製造する方法において、反応系に供給するエチレンの量に対して反応系から排出される反応混合物中のエチレンの量を減少させ、かつ、反応系に供給するメタノールのモル数と、ジメチルエーテルのモル数の2倍との合計に対してプロピレンの収率が40モル%以上になるように反応条件を調整する。
このために調整する反応条件としては、圧力および原料組成、更に、反応を連続式で行う場合には原料供給速度が特に重要である。
反応圧力は通常2MPa未満の圧力で行う。反応圧力は好ましくは自圧を含めて1MPa以下であり、より好ましくは0.7MPa以下である。また、下限は特に制限されないが、通常、0.1kPa以上、好ましくは7kPa以上、より好ましくは50kPa以上である。
上記目的を達成するように、反応圧力を0.1kPa以上2MPa未満の範囲で調整するが、その際には、反応圧力を上げると、反応原料のエチレンや目的生成物であるプロピレンが反応系に存在するオレフィンと重合してプロピレンの収率が低下する傾向があり、反応圧力を下げると反応速度が遅くなる傾向があるため、この点に留意して調整する。
原料組成としては、反応系に供給するエチレンの量が、反応系に供給するメタノール及びジメチルエーテルに対して過剰量、すなわち、反応系に供給するエチレンの量は、メタノールのモル数と、ジメチルエーテルのモル数の2倍との合計に対し、モル比で通常1以上、好ましくは1.8以上、より好ましくは3以上である。一方で、エチレンがあまり過剰すぎると、コスト、副生物の生成量及び操作上の煩雑性等の点で問題を生じる可能性があるので、上限としては、反応系に供給するエチレンの量は、メタノールのモル数と、ジメチルエーテルのモル数の2倍との合計に対し、モル比で通常20以下、より好ましくは10以下、特に好ましくは6以下である。
上記目的を達成するように、反応系に供給するエチレンの量を、反応系に供給するメタノールのモル数と、ジメチルエーテルのモル数の2倍との合計に対して、モル比で1以上20以下の範囲で調整するが、その際には、エチレンの量を多くするとエチレン同士の反応が生じやすくなり副生物の生成量が多くなる傾向があり、エチレンの量を少なくするとメタノール及び/又はジメチルエーテル同士の反応が生じやすくなり、エチレン等が生成してしまう傾向があることに留意して調整する。
また、反応系に供給するエチレンの量を、反応系に供給するメタノールのモル数と、ジメチルエーテルのモル数の2倍との合計に対して、モル比で1以上20以下の範囲で調整するとは、エチレンの量のみを調整することを意味するものではない。エチレンの量とメタノール及び/又はジメチルエーテルの量との一方または両方を調整することにより、結果的に反応系に供給するエチレンの量がメタノールのモル数と、ジメチルエーテルのモル数の2倍との合計に対してモル比で1以上20以下の範囲で調整されればよい。
反応を連続式で行う場合の原料供給速度としては、反応系に供給するメタノールとメタノールに換算したジメチルエーテルとの合計の触媒活性成分重量当たりの重量空間速度(WHSV)として、通常、約70時間-1以下、好ましくは50時間-1以下、より好ましくは約30時間-1以下、更に好ましくは20時間-1以下である。ここで、WHSVが小さすぎると副生物の増加により目的物の収量が下がり分離が煩雑になる場合もあるので、通常、約0.01時間-1以上、好ましくは0.05時間-1以上、より好ましくは0.1時間-1以上、更に好ましくは0.5時間-1以上である。
上記目的を達成するように、反応系に供給するメタノール及びメタノールに換算したジメチルエーテルの触媒活性成分重量当たりの重量空間速度(WHSV)を0.01時間-1以上70時間-1以下の範囲で調整するが、WHSVが小さいと上記の通り逐次反応が起こりやすくなり副生物が増加し、生成したプロピレンが消費される傾向があることに留意して調整する。
反応をバッチ式または半連続式で行う場合には、目的とするプロピレン収率により、反応時間を適宜設定すればよい。
ここで、反応系からの流出成分に未反応メタノール及びジメチルエーテルが多量に存在すると、メタノール及びジメチルエーテルの利用率が下がり、コストメリットがなくなるばかりでなく、目的生成物であるプロピレンとの分離、プロピレン精製工程の負荷が大きくなり好ましくない。また、本反応は発熱反応であり、多量のメタノールが一度に反応すると、生成する反応熱により温度制御が困難になるがかりでなく、目的生成物の収量低下、或いは触媒寿命が短くなる等の影響を及ぼすため、メタノール及びジメチルエーテルは分割供給をする方が好ましい。
分割供給の方法としては、単一の反応器を用いるか、複数の反応器を直列に配置するか又は並列に配置するか等の反応系の設計に応じて異なる。例えば、1つの反応器に複数のメタノール及びジメチルエーテル導入口を設けて分割供給する方法や複数の反応器のそれぞれにメタノール及びジメチルエーテルの導入口を設けて分割供給する方法等が挙げられる。ここで分割供給する場合には、先に導入したメタノール及びジメチルエーテルが9割以上消失してから、追加のメタノール及びジメチルエーテルを供給する方が好ましい。
本発明の製造方法における反応温度等の反応条件としては、公知の方法に従い任意に設定可能である。反応系からの流出成分に未反応メタノール及びジメチルエーテルが多量に存在すると、メタノール及びジメチルエーテルの利用率が下がり、コストメリットがなくなるばかりでなく、目的生成物であるプロピレンとの分離、プロピレン精製工程の負荷が大きくなり好ましくない。従って、上記各種反応条件には原料メタノール及びジメチルエーテルが完全に転換する条件を採用するのが好ましい。
ここで、反応温度としては、使用する触媒の種類にもよるが、通常、約200℃以上、好ましくは約250℃以上、より好ましくは約300℃以上で行われ、上限としては、通常、約700℃以下、好ましくは約600℃以下、より好ましくは約500℃以下である。反応温度が低すぎると、反応速度が小さく、目的生成物の形成速度が著しく遅くなり未反応原料が多く残る傾向となり、一方で反応温度が高すぎると目的生成物の収量は低下する傾向となる。
また、反応を継続するに従って、触媒が反応器内でコーキングを起こし反応活性が低下することとなる。この場合には触媒を反応器から抜き出し、例えば酸素含有雰囲気中で蓄積したコークを酸化することにより、その全て又は一部を取り除き、触媒を再生する事ができる。このように再生された触媒は、再び反応器に再導入されるが、こういった触媒の抜き出し及び再導入という観点からは、固定床より移動床型反応器又は流動床型反応器を用いたプロセスの方が操作が簡便である。
本発明の製造方法においては、反応系内では反応の進行とともに水が副生するが、反応原料に水を添加する等の方法で反応系に水を供給し、反応初期から反応系内に水(すなわち水蒸気)を共存させておくのが好ましい。系中に水を存在させることにより、触媒の失活の原因となるコーク生成を抑制する働きがあり触媒寿命を延命する効果、パラフィン類の生成や生成オレフィン類のオリゴマー化を抑制し、目的とするプロピレン選択性を上げる効果等がある。反応系に供給する水の量としては、使用する固体酸触媒の種類やその他の反応条件にも依存するが、通常、反応系に供給するメタノールのモル数と、ジメチルエーテルのモル数の2倍との合計に対して、モル比で0.025以上、好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.5以上である。あまり水が多量過ぎると反応速度が低下し、目的生成物の収量が低下する場合や触媒自身が水と反応し変質する等の問題があるため、通常、15以下、好ましくは10以下、更に好ましくは5以下である。
上記反応により得られる反応混合物は、プロピレンを主成分として含むものであり、また、未反応原料のエチレンやC4以上のオレフィン類も含まれるものである。C4以上のパラフィン類、オレフィン類及び芳香族炭化水素類といった副生物の生成量としては、反応器出口炭化水素成分中の該モル濃度が30%以下、好ましくは15%以下である。また、反応系に供給したエチレンの量よりも少ない量のエチレンを含有し、且つ、少なくとも反応系に供給したメタノールのモル数及びジメチルエーテルの1/2のモル数の合計に対して40モル%以上、好ましくは50%以上の収率のプロピレンを含有するものである。
(4)生成物の分離方法
上記反応混合物から目的とするプロピレンを単離する場合には、例えば、エチレンクラッカープロセスにあるような、公知の分離・精製設備に導入され、それぞれの成分に応じ、回収、精製、リサイクル、排出の処理を受ければよい。
本発明において、前期エチレンとメタノール及び/又はジメチルエーテルとの反応による反応生成物には、生成されたプロピレン、未反応のエチレンやメタノール、ジメチルエーテルの他、副生されたC4以上のオレフィン類も含まれ、更に、エタンなどのキャリア
なども含まれる。従って、プロピレンの生成に当たっては、本来、プロピレン製造設備としての脱メタン塔、脱エタン塔、脱プロパン塔などを備えるものであるが、反応生成物を、前期ナフサの熱分解によるオレフィン類製造設備、メタノール及び/又はジメチルエーテルからの低級オレフィン製造設備、またはエタンのスチームクラッキングによるエチレン製造設備における分離・精製系にリサイクルすることにより、プロピレン製造設備に本来備えるべき機器の一部を省略し、設備を最小化することができる。
例えば、ナフサの熱分解によるオレフィン類製造設備で得られたエチレンと、メタノール及び/又はジメチルエーテルを含むガスとを反応させてプロピレンを製造する場合には、反応生成物を、オレフィン類製造設備における脱メタン塔又は/及び脱エタン塔又は/及び脱プロパン塔に導入することが好ましい。
これにより、ナフサの熱分解によるオレフィン類を製造する際に、エチレンとプロピレンの収率バランスを大幅に変え得てプロピレン/エチレン量比を上げることができ、かつナフサの熱分解によるオレフィン類製造設備運転上の効率性を向上させると共に、エチレンからプロピレンを製造する設備を最小化することができる。
反応生成物には、生成されたプロピレン、未反応のエチレンの外、副生されたC4以上のオレフィン類等も含まれ、更に、前記フロントエンド脱メタンプロセス及び前記フロントエンド脱プロパンプロセスにおける塔頂留分をエチレン原料として用いた場合にはエタンが、又、前記フロントエンド脱エタンプロセスにおける塔頂留分をエチレン原料として用いた場合にはエタン、メタン、及び水素等が、含まれることとなり、プロピレンの精製に当たっては、本発明の方法によるプロピレン製造設備として、脱メタン塔、脱エタン塔、脱プロパン塔等を備えるのが好ましいが、本発明においては、反応生成物の少なくとも一部を、オレフィン類製造設備における運転状況に応じて、該設備中の脱メタン塔又は/及び脱エタン塔又は/及び脱プロパン塔に導入し、ナフサ熱分解によるオレフィン類製造設備運転上の効率性を向上させると共に、プロピレン製造設備に備える機器の設置数、又は/及び設置機器の能力を最小化することができる。
プロピレン製造設備に脱メタン塔、又は/及び脱エタン塔、又は/及び脱プロパン塔を設置した場合には、オレフィン類製造設備とプロピレン製造設備の運転状態によって、オレフィン類製造設備の生成物をプロピレン製造設備の脱メタン塔、又は/及び脱エタン塔、又は/及び脱プロパン塔に導入することも可能となり、オレフィン類製造設備の許容範囲を広げることができ、オレフィン類製造設備とプロピレン製造設備を含むプロセス全体の効率を最大にするように運転条件を任意に変更することが可能となる。
また、例えばエチレンとして前期低級オレフィン類製造設備で得られたエチレンを用い
た場合、得られたプロピレン主体の反応生成物を、前記低級オレフィン類製造設備の分離・精製系にリサイクルするのが好ましい。
その際、反応生成物をリサイクルする前記低級オレフィン類製造設備の分離・精製系としては、例えば、前記製造設備における洗浄塔及びそれに到る配管、或いは、脱エチレン/エタン塔及びそれに到る配管、等が挙げられる。
ここで、エチレン含有留分は反応原料としてリサイクル使用するのが好ましい。
また、上記反応においては、副生物として水も生成する。従って、反応系内に生成した水の一部を原料に添加し、反応系内でリサイクル使用することが好ましい。
本発明の具体例を以下の実施例に示す。但し、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
実施例1
実施例1−1
反応には常圧固定床流通反応装置を用い、外径6mmのパイレックス(登録商標)製反
応管に触媒0.1g、希釈剤石英砂0.5gの混合物を充填した。触媒には米国特許4440871号明細書に従って合成したSAPO34を用い、以下の反応条件により反応を行った。 表−1に反応結果を示すが、生成物の分析にはガスクロマトグラフィーを用い
た。メタノール(MeOH)転化率、炭化水素組成及びプロピレン収率は、反応条件を設定した後70分後の値を示す。
<反応条件>
反応温度400℃
メタノール6.5モル%
エチレン/メタノール(モル比)=5
水/メタノール(モル比)=4
メタノール WHSV=0.5時間-1
実施例1−2
触媒として、石油学会誌、24,(5)、275−280(1981)に記載の方法に準じて合成したZSM5(SiO2/Al23=300)を用いた以外は実施例1と同様
に反応を行った。結果を表−1に記す。
比較例1
触媒にSAPO−34を用い、エチレン/メタノール(モル比)=0.5とした以外は実施例1と同様に反応を行った。結果を表−1に記す。
Figure 0004826707
実施例2〜14
<固体酸触媒の調製>
調製例1
石油学会誌,24,(5),275−280(1981)に記載の方法に準じて、MF
I構造の結晶性多孔質アルミノ珪酸塩H型ZSM5(SiO2/Al23=300)を得
た。この結晶性多孔質アルミノ珪酸塩の組成を蛍光X線により求めた結果を表−2に示す。
調製例2
調製例1で得られた結晶性多孔質アルミノ珪酸塩1gを、酢酸カルシウムを500℃で
10時間、引き続き550℃で6時間焼成して得た炭酸カルシウム0.36gと共に固体状態のまま乳鉢中で混合することにより、カルシウム混合結晶性多孔質アルミノ珪酸塩を得た。
調製例3
調製例1で得られた結晶性多孔質アルミノ珪酸塩1gを、酢酸ストロンチウムを500℃で18時間焼成して得た炭酸ストロンチウム0.36gと共に固体状態のまま乳鉢中で混合することにより、ストロンチウム混合結晶性多孔質アルミノ珪酸塩を得た。
調製例4
石油学会誌,24,(5),275−280(1981)に記載の方法に準じて、MF
I構造の結晶性多孔質アルミノ珪酸塩H型ZSM5(SiO2/Al23=50)を得た
。この結晶性多孔質アルミノ珪酸塩2gを、水20mlに酢酸カルシウム1水和物1.23gを溶解させた水溶液と混合し、約80℃で約20時間攪拌し、その後100〜120℃で蒸発乾固させ、次いで、空気中で200℃で2時間、引き続き、500℃で18時間焼成することにより、カルシウム担持結晶性多孔質アルミノ珪酸塩を得た。このアルミノ珪酸塩の組成を蛍光X線により求めた結果を表−2に示す。
調製例5
石油学会誌,24,(5),275−280(1981)に記載の方法に準じ原料にさ
らに硼酸を用いて、MFI構造のゼオライトである結晶性多孔質アルミノボロ珪酸塩を得
た。この結晶性多孔質アルミノボロ珪酸塩の組成を化学分析、及び蛍光X線により求め
た結果を表−1に示す。この結晶性多孔質アルミノボロ珪酸塩1gを、水10mlに酢酸カルシウム1水和物0.4gを溶解させた水溶液と混合し、約80℃で約20時間攪拌し、その後100〜120℃で蒸発乾固させ、次いで、空気中で200℃で2時間、引き続き、500℃で18時間焼成することにより、カルシウム担持結晶性多孔質アルミノボロ珪酸塩を得た。
調製例6
硝酸アルミニウム9水和物0.38gと酢酸カルシウム1水和物0.45gを水30g
に溶かした水溶液に、攪拌下でシリカ30重量%含有コロイダルシリカ(触媒化成(株)製)20gと水14gを加え、これに水酸化ナトリウム0.42gを水6.67gに溶かした水溶液を加え、さらに臭化テトラ−n−ブチルアンモニウム2.7gを水10gに溶かした水溶液を加え、2時間激しく攪拌した。この際の仕込みモル比はSiO2/Al23=200、CaO/SiO2=0.025であった。このゲル混合物を内容積100mlのオートクレーブに仕込み、自己圧力下180℃で48時間水熱処理し、生成物を濾過、水洗し、120℃で一晩乾燥させ、空気中で550℃で6時間焼成した。これの1gに対して0.8N−塩酸15mlの割合で混合し、室温で24時間攪拌処理し、これを充分水洗した後、120℃で一晩乾燥させ、空気中で550℃で6時間焼成することにより、H型カルシウム含有結晶性多孔質アルミノ珪酸塩を得た。このカルシウム含有結晶性多孔質アルミノ珪酸塩の組成を蛍光X線により求めた結果を表−2に示す。このカルシウム含有結晶性多孔質アルミノ珪酸塩を、酢酸カルシウムを500℃で10時間、引き続き550℃で6時間焼成して得た炭酸カルシウム0.36gと共に固体状態のまま乳鉢中で混合することにより、カルシウム混合・H型カルシウム含有結晶性多孔質アルミノ珪酸塩を得た。
調製例7
調製例6で得られたカルシウム含有結晶性多孔質アルミノ珪酸塩1gを、酢酸ストロン
チウムを500℃で18時間焼成して得た炭酸ストロンチウム0.36gと共に固体状態のまま乳鉢中で混合することにより、ストロンチウム混合・H型カルシウム含有結晶性多孔質アルミノ珪酸塩を得た。
調製例8
硝酸アルミニウム9水和物0.38gと酢酸マグネシウム4水和物0.45gを水30
gに溶かした水溶液に、攪拌下でシリカ30重量%含有コロイダルシリカ(触媒化成(株)製)20gと水14gを加え、これに水酸化ナトリウム0.42gを水6.67gに溶かした水溶液を加え、さらに臭化テトラ−n−ブチルアンモニウム2.7gを水10gに溶かした水溶液を加え、2時間激しく攪拌した。この際の仕込みモル比はSiO2/Al23=200、CaO/SiO2=0.025であった。このゲル混合物を内容積100mlのオートクレーブに仕込み、自己圧力下180℃で48時間水熱処理し、生成物を濾過、水洗し、120℃で一晩乾燥させ、空気中で550℃で6時間焼成した。これの1gに対して0.8N−塩酸15mlの割合で混合し、室温で24時間攪拌処理し、これを充分水洗した後、120℃で一晩乾燥させ、空気中で550℃で6時間焼成することにより、H型マグネシウム含有結晶性多孔質アルミノ珪酸塩を得た。このマグネシウム含有結晶性多孔質アルミノ珪酸塩の組成を蛍光X線により求めた結果を表−2に示す。
調製例9
調製例8で得られたマグネシウム含有結晶性多孔質アルミノ珪酸塩1gを、酢酸カルシウムを500℃で10時間、引き続き550℃で6時間焼成して得た炭酸カルシウム0.36gと共に固体状態のまま乳鉢中で混合することにより、カルシウム混合・H型マグネシウム含有結晶性多孔質アルミノ珪酸塩を得た。
調製例10
調製例8で得られたマグネシウム含有結晶性多孔質アルミノ珪酸塩1gを、酢酸マグネ
シウムを500℃で18時間焼成して得た酸化マグネシウム0.36gと共に固体状態のまま乳鉢中で混合することにより、マグネシウム混合・H型マグネシウム含有結晶性多孔質アルミノ珪酸塩を得た。
調製例11
調製例8で得られたマグネシウム含有結晶性多孔質アルミノ珪酸塩1gを、蓚酸マンガ
ンを500℃で18時間焼成して得た酸化マンガン(Mn23)0.36gと共に固体状態のまま乳鉢中で混合することにより、マンガン混合・H型マグネシウム含有結晶性多孔質アルミノ珪酸塩を得た。
調製例12
硝酸アルミニウム9水和物0.38gと酢酸バリウム1水和物0.65gを水30gに
溶かした水溶液に、攪拌下でシリカ30重量%含有コロイダルシリカ(触媒化成(株)製)20gと水14gを加え、これに水酸化ナトリウム0.42gを水6.67gに溶かした水溶液を加え、さらに臭化テトラ−n−ブチルアンモニウム2.7gを水10gに溶かした水溶液を加え、2時間激しく攪拌した。この際の仕込みモル比はSiO2/Al23
=200、BaO/SiO2=0.025であった。このゲル混合物を内容積100ml
のオートクレーブに仕込み、自己圧力下180℃で48時間水熱処理し、生成物を濾過、水洗し、120℃で一晩乾燥させ、空気中で550℃で6時間焼成した。これの1gに対して0.8N−塩酸15mlの割合で混合し、室温で24時間攪拌処理し、これを充分水洗した後、120℃で一晩乾燥させ、空気中で550℃で6時間焼成することにより、H型バリウム含有結晶性多孔質アルミノ珪酸塩を得た。このバリウム含有結晶性多孔質
アルミノ珪酸塩の組成を蛍光X線により求めた結果を表−2に示す。このバリウム含有結晶性多孔質アルミノ珪酸塩1gを、酢酸カルシウムを500℃で10時間、引き続き550℃で6時間焼成して得た炭酸カルシウムム0.36gと共に固体状態のまま乳鉢中で混合することにより、カルシウム混合・H型バリウム含有結晶性多孔質アルミノ珪酸塩を得た。
調製例13
燐酸アルミニウム0.09gと酢酸カルシウム1水和物0.34gを水25gに溶かし
た水溶液に、攪拌下でシリカ30重量%含有コロイダルシリカ(触媒化成(株)製)15gを加え、これに水酸化ナトリウム0.4gを水7.5gに溶かした水溶液を加え、さらに臭化テトラ−n−ブチルアンモニウム1.96gを水10gに溶かした水溶液を加え、2時間激しく攪拌した。この際の仕込みモル比はSiO2/Al23=200、MgO/
SiO2=0.025、SiO2/P25=200であった。このゲル混合物を内容積100mlのオートクレーブに仕込み、自己圧力下180℃で48時間水熱処理し、生成物を濾過、水洗し、120℃で一晩乾燥させ、空気中で550℃で6時間焼成した。これの1gに対して0.8N−塩酸15mlの割合で混合し、室温で24時間攪拌処理し、これを充分水洗した後、120℃で一晩乾燥させ、空気中で550℃で6時間焼成することにより、H型カルシウム含有結晶性多孔質アルミノホスホ珪酸塩を得た。このカルシウム含有結晶性多孔質アルミノホスホ珪酸塩の組成を蛍光X線により求めた結果を表−2に示す。このカルシウム含有結晶性多孔質アルミノホスホ珪酸塩1gを、酢酸カルシウムを500℃で10時間、引き続き550℃で6時間焼成して得た炭酸カルシウム0.36gと共に固体状態のまま乳鉢中で混合することにより、カルシウム混合・H型カルシウム含有結晶性多孔質アルミノホスホ珪酸塩を得た。
Figure 0004826707
<反応>
反応には常圧固定床流通反応装置を用い、外径6mmのパイレックス(登録商標)製反応管に、固体酸触媒として、調製例1で得られた結晶性多孔質アルミノ珪酸塩0.1g(
実施例2)、及び調製例2〜13で得られた、金属元素で修飾された結晶性多孔質アルミノ珪酸塩又は結晶性多孔質アルミノボロ珪酸塩0.136g(実施例3〜14)、希釈剤としての石英砂0.5gの混合物を充填し、表−3に示す反応条件により反応を行った。反応結果はガスクロマトグラフィーを用いて分析しその結果を表−3に示した。
Figure 0004826707
表−3に示した結果から明らかなように、固体酸触媒として未修飾の結晶性多孔質珪酸塩を用いた実施例2の場合に比して、カルシウム又はストロンチウムで修飾された結晶性多孔質珪酸塩を用いた実施例3及び4の場合には、供給メタノールに対するプロピレン収率が、反応時間40分後に対して反応時間8時間後においても高収率を示していると共に両者間での差がそれぞれ−4.9%、+4.6%であるのに対し、比較例1では、低収率であると共に両者間で−24.4%低下している。即ち、本願発明の製造方法によれば、高収率を達成できると共に長時間での収率の低下を抑制できることが明らかである。又、実施例5〜12に示した通り、固体酸触媒として他の金属元素で修飾された結晶性多孔質珪酸塩を用いた場合も、高収率を達成できると共に長時間でのプロピレン収率の低下を抑制する効果を有することが明らかである。
実施例15
<触媒調製>
MCM22前駆体:70%NaAlO2 0.8g、NaOH 1.4gを162gの脱塩水に溶かし撹拌した。透明な水溶液になったところでヘキサメチレンイミン9.9g、シリカ(アエロジル200,日本アエロジル株式会社)12gを添加し2時間撹拌を続けた。得られたスラリーを2つの100mlのオートクレーブに分けて150℃で7日間タンブリングさせた。オートクレーブを冷やした後、内容物をろ過、水洗し、120℃で乾燥させ、MCM22前駆体を得た。
ITQ−2:MCM22前駆体4.5gを、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド5.1g、40%テトラプロピルアンモニウムハイドロオキシド5.5gを水12.4gに溶解させた水溶液中に加え、80℃で16時間還流した。得られたスラリーを超音波で1時間処理をした。次いで0.25Mの塩酸溶液を滴下しpHを2以下とし、濾別、水洗した後、乾燥させ、550℃で24時間焼成し、ITQ−2を得、これを触媒とした。
<反応>
触媒として上記方法で得られたITQ−2を0.1g用いた以外は、実施例2と同様に反応を行った。
生成物の分析にはガスクロマトグラフィーを用いた。反応開始40分後および8時間後の反応成績を表−4に示す。
Figure 0004826707
表−4の結果からわかるように、層状ゼオライトであるITQ−2を用いると、40分後から8時間後のプロピレン収率変化率が2.7であり、長時間の反応においても反応基
質のメタノールの転化率、プロピレンの収率共に高い値を維持できる。これに対して、ZSM−5を用いると、40分後には転化率、プロピレンの収率共に高い値を達成するものの、40分後から8時間後のプロピレン収率変化率が−3.3であり、プロピレン収率が時間の経過とともに低下している。
すなわち、実施例2の触媒では触媒活性の低下により長期間の使用はできなかったところ、実施例15の触媒(ITQ−2)を用いるとプロピレン収率が低下せず、安定にプロピレンを得られることがわかる。

Claims (8)

  1. エチレンとメタノール及び/又はジメチルエーテルとを固体酸触媒の存在下接触させてプロピレンを製造する方法において、反応系に供給するエチレンの量を、反応系に供給するメタノールのモル数と、ジメチルエーテルのモル数の2倍との合計に対して、モル比で1以上20以下の範囲で調整し、反応系に供給するエチレンの量に対して反応系から排出される反応混合物中のエチレンの量を減少させ、かつ、反応系に供給するメタノールのモル数とジメチルエーテルのモル数の2倍との合計に対して40モル%以上の収率でプロピレンを得ることを特徴とするプロピレンの製造方法。
  2. 反応系に供給するエチレンの量に対して反応系から排出される反応混合物中のエチレンの量を減少させ、かつ、反応系に供給するメタノールのモル数とジメチルエーテルのモル数の2倍との合計に対してプロピレンの収率が40モル%以上となるように、反応圧力を0.1kPa以上2MPa未満の範囲で調整し、かつ、反応系に供給するエチレンの量を、反応系に供給するメタノールのモル数とジメチルエーテルのモル数の2倍との合計に対して、モル比で1以上20以下の範囲で調整することを特徴とする請求項1に記載のプロピレンの製造方法。
  3. 反応系に供給するエチレンの量に対して反応系から排出される反応混合物中のエチレンの量を少なくし、かつ、反応系に供給するメタノールのモル数とジメチルエーテルのモル数の2倍との合計に対してプロピレンの収率が40モル%以上となるように、反応に供給するメタノールとメタノールに換算したジメチルエーテルとの合計の、触媒活性成分重量当たりの重量空間速度を0.01時間−1以上70時間−1以下の範囲で調整することを特徴とする請求項1または2に記載のプロピレンの製造方法。
  4. 反応系に供給するエチレンの量が、反応系に供給するメタノールのモル数と、ジメチルエーテルのモル数の2倍の合計に対して、モル比で1.8以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のプロピレンの製造方法。
  5. 固体酸触媒が、ゼオライトであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロピレンの製造方法。
  6. ゼオライトが、珪素元素及びアルミニウム元素以外の周期表第1族〜第14族の金属元素で修飾された結晶性多孔質珪酸塩又は同じく修飾された結晶性多孔質アルミノ燐酸塩で
    あることを特徴とする、請求項に記載のプロピレンの製造方法。
  7. 固体酸触媒が層状ゼオライトである請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロピレンの製造方法。
  8. 反応系に水を供給することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のプロピレンの製造方法。
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