JP4816643B2 - 車両用ステアリングシステム - Google Patents

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Description

本発明は、車両に配備されるステアリングシステムに関し、詳しくは、ステアリング操作部材の操作量に対する転舵装置の転舵量の比を変更可能な機能を有するステアリングシステムに関する。
今日では、車両が備えるステアリングシステムとして、下記特許文献に記載されているような、いわゆるVGRS(Variable Gear Ratio Steering)機能を有する装置、すなわち、ステアリングホイール等のステアリング操作部材(以下、単に「操作部材」と略す場合がある)の操作量に対する転舵装置の転舵量の比が変更可能な可変伝達装置を備えるステアリングシステムが検討されている。特許文献1に記載されたシステムは、可変伝達装置のハウジングがステアリングシャフトの回転に伴って回転するような構造のものであり、駆動源へのケーブルの処理に工夫を凝らす必要があった。そこで、特許文献2,3に記載されたシステムは、ハウジングを転舵装置に固定して回転させない構造とすることで、給電ケーブルの処理に特別な配慮をする必要がなく、単純な構造のシステムを実現している。
特開平10−287250号公報 特開2003−406349号公報 特開2005−162124号公報
(A)発明の概要
上記特許文献に記載されているようなVGRS機能を有する可変伝達装置は、一般に、差動機構と駆動源とを有しており、その駆動源等が失陥した場合に、操作部材の操作が転舵装置に伝達されない状態となり得ることを考慮して、駆動源によって駆動される差動機構の一要素の動作をロック機構によって禁止することで、伝達比が固定的な値とされた状態で操作部材の操作が転舵装置に伝達されるような構造とされている。ところが、特許文献2,3に記載のシステムでは、異物の噛み込み等によって差動機構が備える要素同士が固着したような場合にロック機構を作動させると、いわゆるデッドロックを起こし、操舵が難しくなるという問題を抱えている。この問題は、可変伝達装置を有するシステム、詳しくは、ハウジングが車体に対して固定的された可変伝達装置を有するシステムが抱える1つの問題であるが、このような装置を有するシステムは、そのような問題への対処を始めとして、実用性を向上させる余地が十分に残されたものとなっている。本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、実用性の高いステアリングシステムを提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明の車両用ステアリングシステムは、ハウジングが車体に対して固定的に設けられる可変伝達装置を有するステアリングシステムであって、その可変伝達装置が、ステアリング操作部材と連結された第1要素と転舵装置に連結された第2要素との相対動作量をそれらに係合する第3要素の駆動量に応じて変更可能とされるとともに、その第3要素の動作を禁止可能な第3要素動作禁止装置を備え、さらに、その第3要素動作禁止装置による第3要素の動作の禁止を無効化する第3要素動作禁止無効化装置を備えることを特徴とする。
本発明の車両用ステアリングシステムによれば、例えば、差動機構が固着したような場合であっても、第3要素動作禁止無効化装置によって第3要素の動作の禁止を無効化することで、第3要素の動作を許容することが可能となるため、運転者による適切なステアリング操作が可能となる。
(B)請求可能発明の態様
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から何某かの構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。なお、(1)項は、請求可能発明である車両用ステアリングシステムの前提となる態様を示した項であり、その項に、他の項のうちから適当に選択された1以上の項に記載された技術的特徴を付加したものが請求可能発明となり得る。
ちなみに、以下の各項と請求項との関係を示せば、(1)項を引用する(41)項が請求項1に相当し、請求項1に(42)項の技術的特徴を付加したものが請求項2に、請求項2に(5)項の技術的特徴を付加したものが請求項3に、請求項3に(6)項の技術的特徴を付加したものが請求項4に、請求項2ないし請求項4のいずれかに(7)項,(9)項,(10)項,(11)項および(12)項の技術的特徴を付加したものが請求項5に、請求項5に(13)項の技術的特徴を付加したものが請求項6に、請求項1に(43)項の技術的特徴を付加したものが請求項7に、請求項7に(20)項の技術的特徴を付加したものが請求項8に、請求項7または請求項8に(23)項の技術的特徴を付加したものが請求項9に、請求項7ないし請求項9のいずれかに(24)項の技術的特徴を付加したものが請求項10に、請求項10に(25)項の技術的特徴を付加したものが請求項11に、請求項10または請求項11に(26)項の技術的特徴を付加したものが請求項12に、請求項10ないし請求項12のいずれかに(27)項の技術的特徴を付加したものが請求項13に、請求項10ないし請求項13のいずれかに(31)項および(32)項の技術的特徴を付加したものが請求項14に、請求項1ないし請求項14のいずれかに(2)項の技術的特徴を付加したものが請求項15に、それぞれ相当する。
(1)運転者によって操作されるステアリング操作部材と、
車体に対して固定的に設けられたハウジングと、(a)前記ステアリング操作部材と連結されて自身の動作量がそのステアリング操作部材の操作量に応じた動作量となるように前記ハウジングに動作可能に設けられた第1要素と、(b)前記第1要素と相対動作可能に前記ハウジングに設けられた第2要素と、(c)前記第1要素および前記第2要素と係合する第3要素とを含んで構成される差動機構と、前記ハウジングに固定的に設けられて前記第3要素を駆動する駆動源とを有し、前記第1要素と第2要素との相対動作量を前記第3要素の駆動量に応じて変更可能とされた可変動作伝達装置と、
前記第2要素と連結され、その第2要素の動作量に応じた転舵量となる車輪の転舵を実現する転舵装置とを備えた車両用ステアリングシステムであって、
前記可変動作伝達装置が、前記第3要素の動作を禁止可能な第3要素動作禁止装置を有する車両用ステアリングシステム。
本項に記載の態様は、先に説明したように、種々の請求可能発明に共通の構成要素を列挙した態様であり、本項は、請求可能発明の前提項としての意義を有する。本項の態様のステアリングシステムは、平たく言えば、車体に対して固定的に設けられたいわゆるVGRSアクチュエータを有するステアリングシステムであって、そのVGRSアクチュエータが、先に述べたロック機構を備えたステアリングシステムである。
本項における「転舵装置」は、その構成が特に限定されるものではなく、例えば、車輪を繋ぐ転舵ロッドと、その転舵ロッドを軸線方向に移動させる機構とを含むような構成のもの等、既に公知の種々の構成のものを採用することが可能である。そのような転舵ロッドを移動させる機構としては、例えば、ラックピニオン機構,ボールねじ機構等を採用することが可能である。
本項に記載の「可変動作伝達装置」は、第1要素と第2要素との相対動作量、つまり、伝達比が車両の走行速度等の何らかのパラメータに依拠して変更可能とされた、いわゆるVGRSアクチュエータである。可変動作伝達装置を構成する「ハウジング」は、車体に対して固定的に設けられるものであればよく、どこに固定されるかは特に限定されない。例えば、車体の一部に固定されるもの、当該システムが上記の転舵ロッドを軸線方向に移動させる構造の転舵装置を備える場合においてその転舵装置のハウジングに固定されるもの、あるいは、当該システムがシャフトとそれを回転可能に保持するチューブとを含んで構成されるステアリングコラムを備える場合においてそのステアリングコラムに固定されるもの等を採用することが可能である。その可変動作伝達装置を構成する「差動機構」は、その構成が特に限定されるものではなく、例えば、第1要素,第2要素が相対回転するものとされ、第3要素がそれらと係合して回転動作する機構とすることが可能である。具体的には、傘状歯車が噛合してなる機構,プラネタリギヤ機構,ハーモニックギヤ機構(2リングギヤ型であってもよく,カップ型であってもよい),サイクロイド減速機構といった種々のものを採用することが可能である。また、「駆動源」は、ハウジングに固定的に設けられるものであればよく、例えば、ステータがハウジングに固定されているような電動モータを採用することが可能である。
上記可変動作伝達装置は、第3要素の動作を禁止可能な「第3要素動作禁止装置」(例えば、ロック機構)を備えるものとされている。本項の態様において、第3要素動作禁止装置は、例えば、駆動源自体に失陥のある場合,駆動源に加わる負荷が過負荷となって保護回路が作動するような場合等、可変動作伝達装置の失陥時に、第3要素の動作を禁止するように構成することができる。第3要素の概して自由な動作が許容される失陥である場合には、操作部材の操作が転舵装置に伝達されない状態となる。このような失陥の場合に、第3要素動作禁止装置によって第3要素の動作を禁止すれば、ある一定の伝達比での、つまり、第1要素と第2要素とが所定の相対動作量となるような状態での、第3要素を介した第1要素から第2要素への動作伝達が可能となり、そのことによって、操作部材の操作を転舵装置に伝達することが可能となる。つまり、本項に記載の態様は、何らかの原因で第3要素の概して自由な動作が許容されるシステムにおいて、効果的な態様なのである。なお、第3要素動作禁止装置は、その具体的な構造が特に限定されるものではなく、その装置には、実質的に第3要素の動作を制限できる種々の構造を採用することが可能である。
また、例えば、第3要素に駆動力を与えても第3要素を駆動できないような失陥が発生する場合もある。具体的には、例えば、第1要素若しくは第2要素と、第3要素との間での異物の噛み込みを原因とする場合、差動機構が、固着や略固着に近い状態、言い換えれば、第1要素と第2要素とがあたかも固定されたようになってそれらが相対動作できない状態(以下、「相対動作不能状態」という場合がある)に陥っている。このような場合において、第1要素および第2要素と係合する第3要素の動作を禁止すると、いわゆるデッドロックを起こしてしまい、操舵が難しくなる。ちなみに、ハウジングが車体に固定されていない可変動作伝達装置では、差動機構がデッドロックを起こしても、操作部材による車輪の転舵は可能であり、このデッドロックは、ハウジングが車体に対して固定されている可変動作伝達装置を備えたステアリングシステムにおいて、特に、問題となる。
後に示すいくつかの項の態様は、その相対動作不能状態に対処することを1つの目的として、第3要素動作禁止装置による第3要素の動作の禁止を無効化するような構成となっている。その構成は、特に限定されるものではないが、例えば、(A)第3要素動作禁止装置によって第3要素の動作が禁止された状態のままで第3要素の動作を許容するような構成、(B)第3要素動作禁止装置を制御することで、第3動作禁止装置による第3要素の動作の禁止が行われないようにする若しくは禁止を解除する構成等、種々の構成とすることが可能である。このような構成とすることで、上記の相対動作不能状態に陥った場合であっても、第3要素の動作を許容することで、第1要素と第2要素との相対動作がなされない状態のままでの第1要素から第2要素への動作伝達が可能となる。言い換えれば、第1要素から第2要素へ、常時、略動作比1:1で動作が伝達される状態、つまり、伝達比1:1の状態での、操作部材による車輪の転舵が可能となる。
(2)前記第1要素および前記第2要素が、それぞれ、互いに歯数の異なるサーキュラスプラインを含んで構成されて回転動作するものとされ、前記第3要素が、それらサーキュラスプラインの両者に噛合するフレクスプラインとそのフレクスプラインが外嵌されたウェーブジェネレータを含んで構成され、かつ、前記駆動源がそのウェーブジェネレータを回転させるモータとされたことで、前記可変動作伝達装置が、ハーモニックギヤ機構を含んで構成された(1)項に記載の車両用ステアリングシステム。
本項に記載の態様は、可変動作伝達装置の差動機構を、ハーモニックギヤ機構(ハーモニックドライブ機構(登録商標),ストレイン・ウェーブ・ギヤリング機構と呼ばれることもある。)に限定した態様であり、詳しく言えば、2つのリングギヤを有するハーモニックギヤ機構に限定した態様である。このハーモニックギヤ機構は、大きな減速比が得られる変速機構であることから、本項に記載の態様によれば、駆動源の小型化等により、コンパクトなステアリングシステムが実現する。
(3)前記第3要素動作禁止装置が、前記第3要素に設けられた被係止部と、前記ハウジングに設けられてその被係止部を係止可能な係止部とを有し、その係止部によって前記被係止部が係止された係止状態において前記第3要素の動作を禁止する構造とされた(1)項または(2)項に記載の車両用ステアリングシステム。
本項の態様は、第3要素動作禁止装置の構造に限定を加えた態様である。本項における第3要素動作禁止装置は、上記係止部と被係止部との相互作用によって第3要素の動作を禁止させる構造を有するものとされており、いわゆるストッパ機構を含んで構成されるものとなっている。
(4)前記可変動作伝達装置が、前記第3要素動作禁止装置によって前記第3要素の動作が禁止された状態においてその第3要素に設定された大きさを超える動作力が作用した場合に、その第3要素の動作を許容する第3要素動作許容機構を有する(1)項ないし(3)項のいずれかに記載の車両用ステアリングシステム。
前述の相対動作不能状態、つまり、第1要素と第2要素と相対動作できない状態において、第3要素の動作が禁止されれば、第1要素あるいは第2要素から第3要素を動作させようとする力として、大きな力が第3要素に作用する場合がある。つまり、本項にいう「第3要素の動作が禁止された状態においてその第3要素に設定された大きさを超える動作力が作用する場合」とは、例えば、相対動作不能状態に陥っている際に生じ得る1つの現象が現れた場合である。このことから、本項に記載の態様は、相対動作不能状態に対処するための一態様であるといえる。また、本項の態様は、第3要素動作禁止装置が第3要素の動作を禁止するように作動した状態のままで、第3要素の動作を許容する態様であり、本項の態様によれば、相対動作不能状態に陥った場合であっても、第3要素の動作を許容することで、第1要素と第2要素とが相対動作しない状態での動作伝達が可能となる。その結果、運転者による適切なステアリング操作が可能となる。
本項にいう「動作力」は、第3要素を動作させる力を意味し、例えば、操作部材に加えられた操作力に依拠して第1要素を介して第3要素に作用する力や、転舵装置からの逆入力に依拠して第2要素を介して第3要素に作用する力等が該当する。本項における「第3要素動作許容機構」は、例えば、(A)第3要素の動作を禁止するために第3要素動作禁止装置が発生させている力が上記動作力に負けることで、第3要素の動作を許容するような機構であってもよく、また、(B)電磁式クラッチ等の装置を主体として構成され、その装置が制御されることにより第3要素の動作を許容するような機構であってもよい。なお、第3要素動作許容機構を、制御によって作動させられる機構とすれば、制御装置,駆動回路等が必要となる。したがって、簡便な可変動作伝達装置の実現という観点からすれば、第3要素動作許容機構は、動作力の作用によって第3要素の動作を許容する構造のものの方が望ましい。
(5)前記第3要素動作禁止装置が、前記第3要素に設けられた被係止部と、前記ハウジングに設けられてその被係止部を係止可能な係止部とを有し、その係止部によって前記被係止部が係止された係止状態において前記第3要素の動作を禁止する構造とされるとともに、
前記第3要素と前記被係止部とが摩擦係合させられるとともに、それら第3要素と被係止部との間に生じる摩擦力に打ち勝つ動作力が前記第3要素に作用した場合にその第3要素の動作を許容する構造によって、前記第3要素動作許容機構が構成された(4)項に記載の車両用ステアリングシステム。
本項に記載の態様は、第3要素動作禁止装置を、特定のストッパ機構を有するものに限定するとともに、第3要素動作許容機構を、上記動作力の作用によって第3要素の動作を許容する構造のものに限定した態様である。詳しく言えば、第3要素と被係止部との間に生じる摩擦力が所定の大きさに設定されており、その設定された摩擦力より大きな動作力が作用した場合に、被係止部が係止部によって係止された状態のままで、その係止された被係止部に対する第3要素の動作を許容する構造である。つまり、第3要素動作許容機構は、何らかの装置の制御を伴うような機構とされておらず、本項の態様では、上述したように、比較的簡便な構造の可変動作伝達装置が実現することになる。
(6)前記第3要素が、回転動作するものとされ、前記被係止部が、前記第3要素と相対回転動作可能とされた回転部材に設けられており、前記第3要素動作許容機構が、その回転部材と前記第3要素と間に介装されたトレランスリングを含んで構成された(5)項に記載の車両用ステアリングシステム。
本項に記載の態様は、第3要素動作許容機構の構造をさらに具体的に限定した態様である。本項の態様では、前述した可変動作伝達装置、つまり、ストッパ機構を有する第3要素動作禁止装置を備えた可変動作伝達装置に、単にトレランスリングを追加することによって、第3要素動作許容機構が構成されているため、本項の態様によれば、コンパクト、かつ、簡便な構造の可変動作伝達装置が実現する。
(7)当該車両用ステアリングシステムが、車輪の転舵のための転舵力を自身が発生させる助勢力によって助勢する助勢機構を備えた(1)項ないし(6)項のいずれかに記載の車両用ステアリングシステム。
(8)前記助勢機構が、前記転舵装置に設けられた(7)項に記載の車両用ステアリングシステム。
(9)当該車両用ステアリングシステムが、自身を制御するための制御装置を備え、その制御装置が、前記ステアリング操作部材の操舵力に基づいて、前記助勢機構による助勢力を制御する助勢制御を実行するものとされた(7)項または(8)項に記載の車両用ステアリングシステム。
上記3つの項に記載の態様は、車輪の転舵力を、操作部材に加えられる操作力に加えて他の駆動源の力によってアシストする機能を有するシステムに関する態様であり、いわゆるパワーステアリングシステムに関する態様である。なお、「制御装置」には、例えば、コンピュータを主体とし、必要に応じて駆動源等についての駆動回路等を含んで構成される電子制御ユニットを採用することが可能である。
(10)前記制御装置が、前記第3要素動作禁止装置によって前記第3要素の動作が禁止された状態において前記助勢機構による助勢力を増加させる助勢力増加制御を実行するものとされた(9)項に記載の車両用ステアリングシステム。
第3要素動作禁止装置によって第3要素の動作が禁止されている場合、可変動作伝達装置の伝達比は固定され、操作部材の操作は一定の伝達比で転舵装置に伝達される。そのため、操作部材の操作量が大きくせざるを得ない状況も発生し、そのような状況において、操作の負担が大きくなる可能性がある。本項の態様によれば、第3要素動作禁止装置によって第3要素の動作が禁止されている場合に、転舵力がより大きくアシストされるため、運転者の操舵操作に対する負担が軽減されることになる。
(11)前記可変動作伝達装置が、前記第3要素動作禁止装置によって前記第3要素の動作が禁止された状態においてその第3要素に設定された大きさを超える動作力が作用した場合に、その第3要素の動作を許容する第3要素動作許容機構を有し、
前記制御装置が、前記第1要素と前記第2要素とが相対動作し得ない相対動作不能状態において、前記助勢力増加制御を実行するものとされた(10)項に記載の車両用ステアリングシステム。
前述したように、相対動作不能状態で第3要素の動作が禁止されれば、可変動作伝達装置の差動機構は、いわゆるデッドロックを生じ、操舵操作が難しくなる。第3要素動作許容機構は、そのことに鑑みて設けられており、その機構によって、その第1要素と第2要素とが固定された状態での動作伝達が可能とされ、操作部材による車輪の転舵が可能とされる。しかし、第3要素動作許容機構は、設定された大きさを超える動作力が第3要素に作用した場合に機能することから、相対動作不能状態において、車輪を転舵させようとすれば、操作部材の操作力をある程度大きくせざるを得ない。このことは、運転者に、操舵操作に対する負担を強いることになる。本項の態様によれば、相対動作不能状態において第3要素動作許容機構を利用して車輪の転舵を行う場合に、転舵力が効果的にアシストされ、運転者の負担が効果的に軽減されることになる。
(12)当該車両用ステアリングシステムが、前記第1要素と前記第2要素との相対動作量を検出する相対動作量検出器を備え、
前記制御装置が、その相対動作量検出器によって検出された相対動作量に基づいて、前記助勢力増加制御を実行するものとされた(11)項に記載の車両用ステアリングシステム。
例えば、第1要素と第2要素との相対動作量が略0である場合、言い換えれば、第1要素の動作量と第2要素の動作量とが略等しい場合には、第1要素と第2要素とが実質的に相対動作し得ない場合であると考えることが可能である。本項の態様によれば、第1要素と第2要素との相対動作量を検出することで、相対動作不能状態を容易に検知することが可能である。そして、本項の態様によれば、その検知に基づいて、助勢機構による助勢力を増加させることが可能となる。上記相対動作量検出器によれば、確実に相対動作不能状態が検知でき、本項の態様によれば、より効果的な転舵力のアシストが可能となる。
なお、第1要素と第2要素との相対動作量は、先に述べたように、車両の走行速度のようなパラメータに依拠して変更するように制御可能とされている。そのため、そのような制御が行われている場合、ある時点においては、可変動作伝達装置の制御によって第1要素と第2要素との相対動作量が略0である状態が実現されることがある。しかし、相対状態不能状態では、上記パラメータの値の如何に拘わらず、第1要素と第2要素との相対動作量が略0となるため、そのことをもってして、相対不能状態であると認定することが可能である。具体的には、例えば、車両走行速度に応じて、可変動作伝達装置の伝達比が変更されるような制御である場合には、車両走行速度が変化していることを前提として、第1要素と第2要素との相対動作量が略0であるが維持されているときに、相対動作不能状態であると認定することが可能である。
本項における「相対動作量検出器」は、例えば、第1要素の動作量と第2要素の動作量とに基づいて相対動作量を検出するものを採用することが可能である。なお、それら第1要素の動作量および第2要素の動作量を、直接的に検出するように構成されてもよく、また、間接的に検出するように構成されてもよい。例えば、第1要素の動作量を、ステアリングホイールの回転角等の操作部材の操作量から検出するような構成とされてもよく、また、第2要素の動作量を、転舵ロッドの変位量等の転舵量から検出するような構成とされてもよいのである。
(13)前記第3要素動作禁止装置が、前記第3要素に設けられた被係止部と、前記ハウジングに設けられてその被係止部を係止可能な係止部とを有し、その係止部によって前記被係止部が係止された係止状態において前記第3要素の動作を禁止する構造とされるとともに、
前記第3要素と前記被係止部とが摩擦係合させられるとともに、それら第3要素と被係止部との間に生じる摩擦力に打ち勝つ動作力が前記第3要素に作用した場合にその第3要素の動作を許容する構造によって、前記第3要素動作許容機構が構成され、
前記助勢力増加制御が、前記摩擦力に応じて、前記助勢制御における助勢力を増加させる制御である(11)項または(12)項のいずれかに記載の車両用ステアリングシステム。
本項の態様は、第3要素動作許容機構に、前述の摩擦力の作用を利用した構造を有するものを採用した場合の態様である。本項に記載の第3要素動作許容機構を採用する場合、相対動作不能状態において車輪の転舵を可能とするには、上記摩擦力に相当する分、操作力を増大させなければならない。本項の態様は、そのことに考慮し、転舵力を助勢する力を、上記摩擦力に基づいて定めており、本項の態様によれば、適切な転舵力の助勢が可能となる。なお、本項の態様においては、助勢力は、摩擦力に相当する分だけ大きく、つまり、摩擦力を丁度打ち消す分だけ大きくされてもよく、また、その摩擦力の一部に相当する分だけ大きく、つまり、摩擦力の何パーセントかを打ち消す分だけ大きくされてもよい。
(14)前記制御装置が、前記可変動作伝達装置の前記駆動源の作動をも制御するものとされ、前記助勢力増加制御が実行される場合に、その駆動源が前記第3要素の動作に対して抵抗とならない状態を実現するものとされた(11)項ないし(13)項のいずれかに記載の車両用ステアリングシステム。
例えば、相対動作不能状態において前述の第3要素動作許容機構を利用して車輪の転舵を行う場合、第3要素に連結される駆動源も転舵に対する抵抗となり得る。具体的に言えば、駆動源が電動モータである場合、そのモータの通電端子の間が短絡させられた状態されれば、そのモータは、起電力に依拠する比較的大きな制動力を発生させる。それに対して、通電端子が相互にオープンな状態とされれば、起電力に依拠する制動力は発生させられず、そのモータは、殆ど、転舵に対する抵抗とはならないのである。本項の態様は、駆動源が転舵に対する抵抗とならないようにする態様であり、本項の態様によれば、可及的に、操舵操作の負担を軽減させることが可能となる。
(15)当該車両用ステアリングシステムが、
前記ステアリング操作部材の操作力に応じて弾性的に変形する変形部材と、その変形部材の変形量を検出するための変形量センサとを有して、その変形量センサによって検出された変形量に基づいて前記ステアリング操作部材の操作力を検出する操作力検出器を備え、
前記制御装置が、その操作力検出器によって検出された前記ステアリング操作部材の操作力に基づいて前記助勢制御を実行するものとされた(9)項ないし(14)項のいずれかに記載の車両用ステアリングシステム。
本項の態様によれば、操作部材の操作力が適切に検出できるため、効果的な転舵力のアシストが可能となる。本項の態様では、「変形部材」として、具体的には、トーションバーを採用することが可能であり、「変形量センサ」として、そのトーションバーの両端部の相対変位量(相対回転量)を検出する相対回転量センサを採用することが可能である。そして、変形量センサによって取得されたトーションバーの捻り量に基づいて、操作部材の操作力を検出するように構成することが可能である。
(16)前記操作力検出器が、前記可変動作伝達装置に設けられた(15)項に記載の車両用ステアリングシステム。
本項の態様のように、操作力検出器を、上記可変動作伝達装置に内蔵すれば、コンパクトなステアリングシステムを構築することができる
(17)前記変形部材が、一端部が前記ステアリング操作部材と連結されるとともに他端部が前記第1要素と連結され、前記変形量センサが、前記変形部材の一端部と他端部との相対変位量を検出するものである(15)項または(16)項に記載の車両用ステアリングシステム。
(18)前記変形部材が、一端部が前記転舵装置と連結されるとともに他端部が前記第2要素と連結され、前記変形量センサが、前記変形部材の一端部と他端部との相対変位量を検出するものである(15)項または(16)項に記載の車両用ステアリングシステム。
上記2つの態様は、操作力検出器を構成する変形部材の配設箇所に関する限定を加えた態様である。特に、後者の態様は、上記相対動作不能状態において第3要素動作許容機構を利用した転舵を行う場合に、効果的である。上述したように、第3要素動作許容機構は、第3要素に所定の動作力が作用した場合に機能するものであることから、変形部材が第2要素と転舵装置との間に配設されている場合には、その変形部材によっては、その所定の動作力に起因して必要となる操作力の増加分を、効果的に検出することができない。詳しく言えば、操舵の抵抗となる箇所の下流側では、操作力の増加分に応じた変形部材の変形量の増加は期待できないのである。したがって、上記2つの態様のうちの後者は、操作力の増加が操作力検出器によって適切に検出されなくても、助勢力増加制御によって、転舵力を適切にアシストさせることができるため、助勢力増加制御を実行するメリットが大きい。
それに対し、上記2つの態様のうちの前者は、上記相対動作不能状態において第3要素動作許容機構を利用した転舵を行う場合に、上述した操作力の増加分が操作力検出器によって検出可能であるため、助勢力増加制御による上記メリットは、何某かは得られるものの、後者程には充分に得られないことになる。しかし、そのことを積極的に捉えれば、前者の態様の場合、敢えて助勢力増加制御を実行せずしても、転舵力の比較的良好なアシストが行われることになるため、前者の態様は、助勢制御を簡便化するとうい観点において、有利な態様となる。
(19)当該車両用ステアリングシステムが、自身を制御するための制御装置を備え、その制御装置が、前記第3要素動作禁止装置の作動を制御して前記第3要素の動作を禁止する第3要素動作禁止制御を実行するものとされた(1)項ないし(18)項のいずれかに記載の車両用ステアリングシステム。
本項の態様のように、第3要素動作禁止装置を制御装置によって制御されるものとすれば、第3要素の動作の禁止を適切に行うことができ、また、後に説明するように、その禁止を解除することを、容易に行うことができる。
(20)前記制御装置が、前記可変動作伝達装置において前記駆動源が第3要素を駆動できない失陥が発生した場合に、前記第3要素動作禁止制御を実行するものとされた(19)項に記載の車両用ステアリングシステム。
本項にいう「駆動源が第3要素を駆動できない失陥」とは、例えば、駆動源自体に失陥のある場合,駆動源が電動のものであって電源からの電源線が断線した場合,駆動源に加わる負荷が過負荷となって保護回路が作動した場合等を、広く意味する。先に説明したように、第3要素の概して自由な動作が許容される失陥である場合には、操作部材の操作が転舵装置に伝達されない状態となるため、第3要素動作禁止装置によって第3要素の動作を禁止することで、所定の伝達比の下、車輪の転舵が可能となる。なお、上記失陥には、前述の相対動作不能状態、つまり、差動機構の固着等によって第1要素と第2要素とが相対動作し得ない状態も含まれる。
(21)前記制御装置が、前記第1要素と前記第2要素とが相対動作し得ない相対動作不能状態において、前記第3要素動作禁止装置の作動を制御して前記第3要素の動作が禁止されない状態を実現させる第3要素動作非禁止状態実現制御を実行するものとされた(19)項または(20)項に記載の車両用ステアリングシステム。
本項の態様によれば、上記相対動作不能状態に陥った場合でも、第3要素動作禁止装置によっては第3要素の動作が禁止されない。そのため、第1要素と第2要素とが相対動作しない状態での動作伝達が可能とされ、操作部材の操作による車輪の転舵が確保される。つまり、本項の態様によれば、相対動作不能状態に陥った場合であっても、運転者による適切なステアリング操作が可能となる。なお、本項にいう「第3要素動作非禁止状態実現制御」は、後に説明するように、第3要素動作禁止装置によって第3要素の動作が禁止されている状態を解除するような制御であってもよく、また、第3要素の動作が禁止されることを、未然に防止するような制御であってもよい。後者の制御、つまり、第3要素動作禁止装置による第3要素の動作の禁止が実行されない制御である場合には、相対動作不能状態に起因する失陥が生じた際に、一時的にでもデッドロックを生じさせることがないため、運転者へのステアリング操作における操作違和感を低減させることが可能である。
(22)前記制御装置が、前記可変動作伝達装置の前記駆動源の作動をも制御するものとされ、前記第3要素動作非禁止状態実現制御を実行する場合において、前記駆動源が前記第3要素の動作に対して抵抗をとならない状態を実現するものとされた(21)項に記載の車両用ステアリングシステム。
先に説明したように、相対動作不能状態において前述の第3要素動作許容機構を利用して車輪の転舵を行う場合、第3要素に連結される駆動源も転舵に対する抵抗となり得る。本項に記載の態様は、そのことに考慮したものであり、本項の態様によれば、相対動作不能状態において、可及的に、操舵操作の負担を軽減させることが可能となる。本項に関する説明は、先の態様の説明と重複するため、ここでは省略する。
(23)当該車両用ステアリングシステムが、前記第1要素と前記第2要素との相対動作量を検出する相対動作量検出器を備え、
前記制御装置が、その相対動作量検出器によって検出された相対動作量に基づいて、前記第3要素動作非禁止状態実現制御を実行するものとされた(21)項または(22)項に記載の車両用ステアリングシステム。
本項の態様は、例えば、第1要素と第2要素との相対動作量に基づいて、上記相対動作不能状態を検知し、その検知結果に基づいて、第3要素動作非禁止状態実現制御を実行するような態様とすることができる。したがって、相対状態不能状態において、確実に、第3要素の動作が禁止されない状態を実現することが可能となる。なお、本項の説明は、先に掲げた相対動作量検出器に関する項の説明と重複するため、ここでは、省略する。
(24)前記制御装置が、前記第1要素と前記第2要素とが相対動作し得ない相対動作不能状態において、前記第3要素動作禁止装置によって第3要素の動作が禁止されている場合に、その第3要素動作禁止装置の作動を制御して前記第3要素の動作の禁止を解除する第3要素動作禁止解除制御を実行することで、前記第3要素動作非禁止状態実現制御を実行するものとされた(21)項ないし(23)項のいずれかに記載の車両用ステアリングシステム。
本項の態様は、簡単に言えば、例えば、第3要素動作禁止制御の実行中に、相対動作不能状態に依拠して、第3動作の禁止を解除する態様である。言い換えれば、可変動作伝達装置の失陥時において、第3要素の動作を禁止する状態と、第3要素の動作を許容する状態とを、選択的に実現可能な態様であり、例えば、失陥の内容に応じて、それら2つの状態を選択的に実現可能な態様とすることもできる。
(25)前記制御装置が、前記第3要素動作禁止装置によって第3要素の動作が禁止されている場合において前記第3要素に設定された大きさを超える動作力が作用したときに、前記第3要素動作禁止解除制御を実行するものとされた(24)項に記載の車両用ステアリングシステム。
本項に記載の態様は、第3要素動作禁止解除制御を実行する際の相対動作不能状態の認定に関する限定を加えた態様である。前述したように、相対動作不能状態に陥っている状態で、第3要素の動作が禁止されれば、差動機構にデッドロックが生じる。そして、その状態において、例えば操作部材を操作すれば、第3要素に設定された大きさを超える動作力が作用するという現象が発生し得る。本項の態様は、その現象が現れた場合に、制御装置によって、第3要素動作禁止装置による第3要素の動作の禁止を解除し、第3要素の動作を許容する態様である。本項の態様によれば、可変動作伝達装置が第3要素動作許容機構を有する前述の態様と同様に、第3要素に設定された大きさを超える動作力が作用した場合に、第3要素を動作させることができる。
(26)前記第3要素動作禁止装置が、前記第3要素に設けられた被係止部と、前記ハウジングに設けられてその被係止部を係止可能な係止部とを有し、その係止部によって前記被係止部が係止された係止状態において前記第3要素の動作を禁止する構造とされるとともに、前記可変動作伝達装置が、前記係止状態において前記係止部と前記被係止部との間に作用する作用力を検出する作用力検出器を有し、
前記制御装置が、その作用力検出器によって検出された作用力が設定された大きさを超える場合に、前記第3要素動作禁止解除制御を実行するものとされた(24)項または(25)項に記載の車両用ステアリングシステム。
本項に記載の態様は、第3要素動作禁止装置を特定のストッパ機構を有するものに限定するとともに、その機構が有する係止部と被係止部との間の作用力に基づいて、第3要素動作禁止解除制御を実行する態様である。差動機構にデッドロックが生じている場合に、例えば操作部材を操作すれば、ストッパ機構は比較的大きな作用力を受けることが予想される。本項の態様は、この作用力に基づき相対動作不能状態を検知し、その検知結果に基づいて、第3要素動作禁止解除制御を実行する態様である。
本項にいう「作用力」は、前述の動作力の一種と考えることができ、例えば、係止状態における係止部と被係止部との間の作用・反作用力等が該当する。したがって、本項の態様は、前述の態様、つまり、第3要素に設定された大きさを超える動作力が作用したときに第3要素動作禁止解除制御を実行する態様の一態様と考えることができる。なお、本項における「作用力検出器」は、その具体的な構造が特に限定されるものではなく、例えば、係止部と被係止部との間、あるいは、それらのいずれかに設けられて、それら係止部と被係止部との間に作用する作用力を検出する荷重センサのようなものであってもよい。具体的には、係止部,被係止部のいずれかに設けられてそのいずれかの歪み量を取得する歪みゲージを有して、その歪みゲージによって取得された歪み量に基づいて上記作用力を検出するように構成することが可能である。
(27)前記制御装置が、前記ステアリング操作部材の操作力が設定された大きさを超えた場合に、前記第3要素動作禁止解除制御を実行するものとされた(24)項ないし(26)項のいずれかに記載の車両用ステアリングシステム。
差動機構にデッドロックが生じている状態において操作部材を操作しようとすれば、操作部材に加えられる操作力は大きなものとなる可能性が高い。つまり、本項に記載の態様は、操作部材の操作力が設定された大きさを超える場合に、相対動作不能状態に陥ったとみなして第3要素の動作の禁止を解除し、第1要素から第2要素への動作の伝達を可能する態様である。なお、ステアリング操作部材は第1要素に連結されており、操作部材の操作力は、第1要素を介して第3要素に作用する動作力に関係するものとなる。したがって、操作部材の操作力は、前述の動作力の一種であると考えることができ、本項の態様は、前述の態様、つまり、第3要素に設定された大きさを超える動作力が作用したときに第3要素動作禁止解除制御を実行する態様の一態様と考えることができる。
(28)当該車両用ステアリングシステムが、
前記ステアリング操作部材の操作力に応じて弾性的に変形する変形部材と、その変形部材の変形量を検出するための変形量センサとを有して、その変形量センサによって検出された変形量に基づいて前記ステアリング操作部材の操作力を検出する操作力検出器を備え、
前記制御装置が、その操作力検出器によって検出された前記ステアリング操作部材の操作力に基づいて、前記第3要素動作禁止解除制御を実行するものとされた(27)項に記載の車両用ステアリングシステム。
(29)前記操作力検出器が、前記可変動作伝達装置に設けられた(28)項に記載の車両用ステアリングシステム。
(30)前記変形部材が、一端部が前記ステアリング操作部材と連結されるとともに他端部が前記第1要素と連結され、前記変形量センサが、前記変形部材の一端部と他端部との相対変位量を検出するものである(28)項または(29)項に記載の車両用ステアリングシステム。
上記3つの態様は、操作部材の操作力を検出するための操作力検出器に関する態様である。その操作力検出器は、助勢制御に関する態様において説明した操作力検出器と同様のものとすることができる。したがって、上記3つの態様に関する説明は、先の説明と重複するため、ここでは省略する。
(31)当該車両用ステアリングシステムが、前記第1要素と前記第2要素との相対動作量を検出する相対動作量検出器を備え、
前記制御装置が、その相対動作量検出器によって検出された相対動作量に基づいて、前記第3要素動作禁止解除制御を実行するものとされた(24)項ないし(30)頃のいずれかに記載の車両用ステアリングシステム。
本項に記載の態様は、第3動作禁止解除制御を実行する際に、前述の相対動作量検出器による検出結果を利用する態様である。相対動作量検出器に関する先の態様の説明と重複するため、本項の説明は省略する。
(32)前記第3要素動作禁止装置が、設定範囲内の前記第3要素の動作を許容しつつその設定範囲を超える前記第3要素の動作を禁止するものであり、
その制御装置が、前記設定範囲内の前記第3要素の動作が許容された状態において前記第1要素と前記第2要素とが相対動作し得ない場合に、前記第3要素動作禁止解除制御を実行するものとされた(31)項に記載の車両用ステアリングシステム。
本項に記載の態様は、第3要素動作禁止装置によって第3要素の動作が禁止されている場合において、上記相対動作量の検出を可能とするための態様である。本項の態様では、第3要素動作禁止装置は、第3要素の動作を完全に禁止するのではなく、ある範囲内の動作が許容される状態で第3要素の動作を禁止する構造とされている。なお、本項にいう「設定範囲内」は、例えば、ガタや遊びのような小さな範囲とすることが可能である。本項の態様によれば、第3要素動作禁止装置が機能している状態においても、上記相対動作量に基づいて相対動作不能状態であるか否かを判定することが可能である。
(33)前記第3要素動作禁止装置が、前記第3要素に設けられた被係止部と、前記ハウジングに設けられてその被係止部を係止する係止部とを有し、その係止部によって前記被係止部が係止された係止状態において前記第3要素の動作を禁止する構造とされるとともに、前記係止部と前記被係止部との間に遊間が設けられることによってその遊間に相当する分の前記第3要素の動作が前記設定範囲内の動作として許容される構造とされた(32)項に記載の車両用ステアリングシステム。
本項に記載の態様は、第3要素動作禁止装置を、特定のストッパ機構を有するものに限定するとともに、上述の設定範囲を、係止部と被係止部とを係合させた状態におけるガタや遊びに限定した態様である。本項の態様によれば、第3要素の比較的微小な動作から、第1要素と第2要素とが相対動作しているか否かを判定することが可能である。
(41)当該車両用ステアリングシステムが、さらに、前記第3要素動作禁止装置による前記第3要素の動作の禁止を無効化する第3要素動作禁止無効化装置を備えた(1)項ないし(3)項のいずれかに記載の車両用ステアリングシステム。
本項に記載の態様は、ここまでに掲げた態様のうちのいくつかを総括する態様である。本項にいう「第3要素動作禁止無効化装置」は、相対動作不能状態に対処する手段の総称と考えることもでき、本項の態様は、相対動作不能状態に対処を目的とする前述の各態様の上位概念的な態様と考えることができる。つまり、第3要素動作禁止無効化装置は、先に述べたように、第3要素の動作を許容する機構を主体として構成され、第3要素動作禁止装置によって動作が禁止されたままの状態において第3要素の動作を許容するものであってもよく、また、第3要素動作禁止装置による第3要素の動作の禁止が実現されないように、その第3要素動作禁止装置を制御するような構成とされてもよい。
(42)前記可変動作伝達装置が、前記第3要素動作禁止装置によって前記第3要素の動作が禁止された状態においてその第3要素に設定された大きさを超える動作力が作用した場合に、その第3要素の動作を許容する第3要素動作許容機構を有するものとされ、
その第3要素動作許容機構によって前記第3要素動作禁止無効化装置が構成された(41)項に記載の車両用ステアリングシステム。
本項に記載の態様は、前述の第3要素動作許容機構を有するものであるため、本態様によれば、その機構を有する態様に関して説明した効果と同様の効果が得られる。また、その態様に関連する各々の態様が有する技術的特徴を、本項の態様に対して採用することも可能である。
(43)当該車両用ステアリングシステムが、自身を制御するための制御装置を備え、その制御装置が、前記第3要素動作禁止装置の作動を制御して前記第3要素の動作を禁止する第3要素動作禁止制御を実行するものとされており、
前記制御装置が、前記第1要素と前記第2要素とが相対動作し得ない相対動作不能状態において、前記第3要素動作禁止装置の作動を制御して前記第3要素の動作が禁止されない状態を実現させる第3要素動作非禁止状態実現制御を実行するものとされたことによって、前記第3要素動作禁止無効化装置が構成された(41)項または(42)項に記載の車両用ステアリングシステム。
本項に記載の態様は、第3要素動作禁止装置の制御により、相対動作不能状態において、第3要素の動作が禁止されない状態を実現する態様であり、本態様によれば、第3要素動作非禁止状態実現制御に関して説明した先の各項における効果と同様の効果が得られる。また。その態様に関連する各々の態様が有する技術的特徴を、本項の態様に対して採用するとこも可能である。
図1は、第1実施例の車両用ステアリングシステムの全体構成を示す模式図である。
図2は、図1に示す可変動作伝達装置であるVGRSアクチュエータを示す断面図である。
図3は、図2のVGRSアクチュエータが備える可変動作伝達機構であるハーモニックギヤ機構を軸方向の視点において示した模式図である。
図4は、図2のVGRSアクチュエータが備える第3要素動作禁止装置であるロック機構を示す断面図(図2におけるA−A断面)である。
図5は、伝達比制御において、車両走行速度と可変動作伝達装置に設定されている伝達比との関係を示すグラフである。
図6は、転舵力を助勢する助勢制御において設定されている操作トルクと助勢力との関係を示すグラフである。
図7は、第1実施例の車両用ステアリングシステムにおいて実行される助勢制御プログラムのフローチャートである。
図8は、第1実施例の車両用ステアリングシステムにおいて実行されるアクチュエータ制御プログラムのフローチャートである。
図9は、第1実施例の車両用ステアリングシステムが備える制御装置の機能ブロック図である。
図10は、第2実施例の車両用ステアリングシステムが備える可変動作伝達装置であるVGRSアクチュエータを示す断面図である。
図11は、第2実施例の車両用ステアリングシステムにおいて実行される助勢力増加制御の概念を示すグラフである。
図12は、第2実施例の車両用ステアリングシステムにおいて実行されるアクチュエータ制御プログラムのフローチャートである。
図13は、第2実施例の車両用ステアリングシステムにおいて実行される助勢制御プログラムのフローチャートである。
図14は、第2実施例の車両用ステアリングシステムが備える制御装置の機能ブロック図である。
以下、請求可能発明のいくつかの実施例および変形例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更を施した種々の態様で実施することができる。
<第1実施例>
(A)ステアリングシステムの構成
図1に、本発明の第1実施例であるステアリングシステムの全体構成を模式的に示す。当該ステアリングシステムは、いわゆる電動パワーステアリングシステムであり、大きくは、操作装置10と、転舵装置12と、可変動作伝達装置としてのVGRSアクチュエータ14と、制御装置としての電子制御ユニット16(以下、「ECU16」略す場合がある)とに区分することができ、それらを構成要素として含んで構成されている。
操作装置10は、ステアリング操作部材としてのステアリングホイール20と、ステアリングコラム22(以下、単に「コラム」22と略する場合がある)とを含んで構成されている。コラム22は、一端部にステアリングホイール20が取り付けられたステアリングシャフト24と、ステアリングシャフト24を回転可能に保持するシャフトハウジングとしてのステアリングチューブ26(以下、単に「チューブ26」と略す場合がある)とを含んで構成されている。チューブ26がインストゥルメンツパネルのリインフォースメントに固定されることで、コラム22が車体に固定して設けられている。また、コラム22には、シャフト24のステアリングホイール20が取付けられた箇所に、ステアリングホイール20の操作角を操作部材の操作量として検出する操作角センサ28が設けられている。
転舵装置12は、車体(詳しくは、シャーシ)に固定されたハウジング30と、ハウジング30に軸方向(車両の左右方向)に移動可能に設けられた転舵ロッド32とを主体として構成されている。転舵装置12は、操作装置10からの操舵力が入力される入力軸としてのピニオン軸34を有している。転舵ロッド32には、ピニオン軸34に形成されたピニオン36と噛合するラック38が形成され、ピニオン軸34と転舵ロッド32とは、ラックアンドピニオン機構によって連結されている(図2参照)。そのような構造により、転舵装置12は、ピニオン軸34の回転によって転舵ロッド32が軸方向に移動するようにされている。また、転舵ロッド32の両端部の各々は、ボールジョイント40を介して左右のタイロッド42の各々の一端部に連結され、タイロッド42の各々の他端部は、ボールジョイント44を介して、左右の転舵車輪46の各々を保持するステアリングナックル48の各々が有するナックルアーム部50に連結されている。さらに、転舵装置12は、車輪46の転舵に要する転舵力を助勢する助勢機構52を備えており、転舵ロッド32の軸方向の移動が助勢される構造とされている。図示は省略するが、転舵ロッド32にはねじ溝(雄ねじ)が形成されており、また、転舵装置12には、ハウジング30内に、ベアリングボールを有して転舵ロッド32のねじ溝に螺合するナットと、そのナットを回転させる電動モータとが設けられている。つまり、助勢機構52は、それらねじ溝とナットとによって構成されるボールねじ機構を備え、電動モータの駆動力によって、転舵ロッド32の移動が助勢される構造とされているのである。なお、転舵装置12には、転舵ロッド32の移動量を検出する転舵量センサ54が設けられている。
VGRSアクチュエータ14は、ステアリングホイール20の回転に応じて回転するステアリングシャフト24の回転を、転舵装置12に伝達する機能を有する装置である。図1に示すように、VGRSアクチュエータ14は、自身のハウジング80が、転舵装置12のハウジング30に締結されることで、転舵装置12に固定して設けられる。VGRSアクチュエータ14は入力軸82を備えており、入力軸82のハウジング80から延び出す一端部が、ユニバーサルジョイント84を介してインタミディエイトシャフト86の一端部に連結される。インタミディエイトシャフト86の他端部は、ユニバーサルジョイント88を介して、ステアリングシャフト24のステアリングホイール20が取り付けられている端部とは反対側の端部に連結されている。
図2に、VGRSアクチュエータ14の断面図を示す。VGRSアクチュエータ14は、ハウジング80と、ハウジング80に対して回転可能に設けられた入力軸82と、ハウジング80に対して回転可能に設けられた出力軸90と、入力軸82の回転を出力軸90に伝達するとともに入力軸82の回転と出力軸90の回転との比である回転比を変更可能な可変伝達機構92とを含んで構成されている。ハウジング80は、3つのサブハウジング(上部ハウジング94,下部ハウジング96,ロック機構部ハウジング98)が組立てられて構成されている。下部ハウジング96にはフランジ部100が設けられ、フランジ部100には、一円周上の4等配の位置に締結穴102が穿設されている。フランジ部100は、そのフランジ面が転舵装置12のハウジング30に設けられた台座部104の台座面に接する状態で、台座部104に取付られている。台座部104には、締結穴102に相応する位置に4つの雌ねじ穴106が設けられており、締結穴102と雌ねじ穴106との位置を合わせた状態で、締結材としてのボルト108により、フランジ部100と台座部104とが締結されている。このようにしてVGRSアクチュエータ14のハウジング80が転舵装置12のハウジング30に固定されたことで、VGRSアクチュエータ14は、転舵装置12に固定され、ハウジング80は、車体に対して相対回転不能に設けられた状態とされているのである。
入力軸82は、上部軸110,下部軸112,トーションバー114の3つが一体化されたものとして構成されている。上部軸110は、ハウジング80の上部から延び出ており、その延出する部分の外周にはセレーションが形成されている。このセレーションが形成された部分において、ユニバーサルジョイント84が接続されており、操作装置10からの回転が上部軸110に入力される。上部軸110は、段付の中空とされており、大径部とされた下部に下部軸112を挿通させている。上部軸110の大径部の内周面と下部軸112の外周面との間には、軸受116が介在させられており、上部軸110と下部軸112とは相対回転可能とされている。下部軸112は、下部がフランジ部118とされ、また、上端部に開口して軸方向に延びる有底穴が形成されている。トーションバー114は、一端部において、下部軸112に設けられた有底穴の底部にセレーション嵌合され、また、他端部において、上部軸110の上端部にセレーション嵌合されている。このような構成により、入力軸82は、トーションバー114の捻りを許容し、その分だけ自身も捻られるものとされているのである。
出力軸90は、それの下部が軸部120とされ、それの上部に、軸部120と一体的に形成されて軸部120より大きな径を有する円環部122が設けられている。入力軸82を構成する下部軸112のフランジ部118は、出力軸90の円環部122と軸部120とを繋ぐ鍔部に沿って位置しており、そのフランジ部118が円環部122に内包される状態とされている。軸部120は、中空とされており、上部に、入力軸82を構成する下部軸112の下端部を嵌入させている。下部軸112の下端部の外周面と軸部120の中空穴の内周面との間には、ブシュ124が介在させられており、下部軸112と軸部120とが相対回転可能とされている。入力軸82を構成する上部軸110は、その外周において軸受126を介して上部ハウジング94に回転可能に保持され、また、出力軸90の軸部120が、その外周において軸受128を介して下部ハウジング96に回転可能に保持されている。上述のような構造とされていることで、入力軸82および出力軸90は、互いに同軸的に配置されるとともに相対回転可能とされ、両者がそれぞれ、ハウジング80に対して回転可能とされているのである。
転舵装置12の入力軸であるピニオン軸34は、ピニオン36より下の部分においてブシュ130を介してハウジング30に保持され、また、ピニオン36より上の部分において軸受132を介してハウジング30に保持されることで、ハウジング30に対して回転可能に設けられている。ピニオン軸34の上端部には、セレーション外歯134が形成され、一方、上記出力軸90の軸部120の下端部には、セレーション内歯136が形成されており、VGRSアクチュエータ14が転舵装置12に取付られた状態においては、出力軸90とピニオン軸34とはセレーション嵌合するようにされている。このような構造とされることで、出力軸90の回転がピニオン軸34に伝達されるのである。
先に説明したように、転舵ロッド32は、ハウジング30に軸方向に移動可能に保持され、転舵ロッド32に形成されたラック38が、ピニオン軸34のピニオン36と噛合するように配置されている。この転舵ロッド32のラック38が形成された部位の背中側の部分には、転舵ロッド32をバックアップするための機構が設けられている。詳しく言えば、ハウジング30に設けられた穴には、転舵ロッド32をそれの背後から支持する支持部材140が配設されており、その穴の端部にキャップ142が螺合されるとともに、支持部材140とキャップ142の間には圧縮コイルスプリング144が設けられている。このような機構によって、転舵ロッド32がバックアップされ、ラック38とピニオン36との適切な噛合が担保されている。
可変伝達機構92は、ハーモニックギヤ機構を採用する。このハーモニックギヤ機構の動力源として、VGRSアクチュエータ14には、モータ150(電動モータである)が設けられている。モータ150の出力軸であるモータ軸152は、中空とされており、入力軸82、詳しくは下部軸112を自身に挿通させた状態で配設されている。モータ軸152の内周面と下部軸112の外周面との間には、軸受154,156が介在させられており、モータ軸152は、下部軸112に相対回転可能に保持されることで、ハウジング80に対して回転可能とされている。モータ軸152の外周部には、周方向に複数の永久磁石158が固定的に配設されており、それらは、モータ150のロータを構成している。一方で、永久磁石158に対向するように、複数の極体160(コアにコイルが巻回されたもの)が、ハウジング80の内面に固定的に配設され、それらの極体160の各々がステータ極とされることで、それら複数の極体160は、ステータを構成している。このような構造とされることで、モータ150は、いわゆるブラシレスモータとされているのである。なお、モータ軸152の回転位置(回転角度,回転位相と呼ぶこともできる)、つまり、ロータの回転角度位置は、モータ軸152の上端部に付設された付設リング162とハウジング80の内面との間に設けられたレゾルバ164によって検出されるようになっており、モータ50は、図示を省略する駆動回路によって、ロータの回転角度位置に応じて極体160への通電を切替えるようにして制御駆動される。また、モータ150の回転速度、厳密に言えば、モータ軸152の回転速度の制御等も、このレゾルバ164の検出信号を利用して行われる。
可変伝達機構92は、第1サーキュラスプライン(第1リングギヤ)としてのステータギヤ180と、第2サーキュラスプライン(第2リングギヤ)としてのドリブンギヤ182と、それらに噛合するフレクスプラインとしてのフレキシブルギヤ184と、フレキシブルギヤ184を支持して波動を発生させるウェーブジェネレータとしての波動発生器186とを含んで構成されている。図3に、軸方向からみた可変伝達機構92の模式図を示し、この図をも参照しつつ、可変伝達機構92の構成および機能を説明すれば、以下のようである。
ステータギヤ180は、内歯が形成されたリングギヤであり、入力軸82に、詳しくは、下部軸112のフランジ部118の外周部に固定されて設けられ、入力軸82と相対回転不能とされている。ドリブンギヤ182は、内歯が形成されたリングギヤであり、出力軸90の円環部122の内周部の上方端部に固定されて設けられ、出力軸90と相対回転不能とされている。さらに言えば、ステータギヤ180とドリブンギヤ182とは、同軸的に設けられており、入力側のギヤであるステータギヤ180が、VGRSアクチュエータ14における出力側である下方に位置し、出力側のギヤであるドリブンギヤ182が、VGRSアクチュエータ14における入力側である上方に位置することで、それらは、あたかも互いの位置を入れ替えるようにして軸方向に並んで配置されている。ステータギヤ180の歯数とドリブンギヤ182の歯数とは、互いに異なり、ステータギヤ180が102歯とされているのに対し、ドリブンギヤ182が100歯とされている。フレキシブルギヤ184は、外歯が形成されたリングギヤであり、比較的薄いものとされることで、可撓性を有している。フレキシブルギヤ184の歯数は、ドリブンギヤと同じ100歯とされている。なお、ステータギヤ180を100歯とし、ドリブンギヤ182を102歯とするようにギヤの歯数を入れ換えてもよい。
波動発生器186は、概して楕円状のカムとして機能するものであり、概して楕円板状をなす支持板188と、支持板188の外周端に嵌められたベアリング190とを含んで構成されている。支持板188には、それの中心に軸穴が設けられており、その軸穴にモータ軸152を嵌入させた状態で、モータ軸152に相対回転不能に接続されている。ベアリング190は、自身のインナレース192に支持板188の外周を嵌入させた状態で、支持板188に装着されている。ベアリング190のアウタレース194も、比較的薄いものとされており、可撓性を有している。フレキシブルギヤ184は、ベアリング190の外周に、ベアリング190のアウタレース194と相対回転不能な状態で装着されている。フレキシブルギヤ184は、波動発生器186によって楕円状に変形させられており、楕円の長軸上およびその近傍に位置する2箇所の部分で、ステータギヤ180,ドリブンギヤ182と噛合し、楕円の短軸上およびその周辺に位置する部分においてはそれらと完全に離れた状態とされている。
モータ軸152の回転を禁止した状態で、ステータギヤ180を回転させた場合、フレキシブルギヤ184は、ベアリング190のアウタレース194と共に、弾性変形を伴って噛合位置を移動させつつ楕円に沿って周回する。それにより、フレキシブルギヤ184と噛合するドリブンギヤ182も、ステータギヤ180と同方向に回転する。詳しく言えば、この場合、ドリブンギヤ182は、ステータギヤ180に対して、それらのギヤ比に応じた回転比(102/100)で回転する(以下、この回転比を「基準回転比」という場合がある)。
ここでモータ軸152を回転させて波動発生器186を回転させる場合を考える。まず、説明を単純化するために、ステータギヤ180を固定させて考えれば、波動発生器186を回転させた場合、フレキシブルギヤ184は弾性変形し、噛合位置を移動させつつ回転する。ステータギヤ180とドリブンギヤ182との歯数が異なるため、ステータギヤ180とドリブンギヤ182との間には、その歯数の差分に応じた量の回転角度差(回転位相差)が生じることになる。具体的には、波動発生器186の1回転あたり2歯分の回転角度差が生じる。より詳しく言えば、図3において、波動発生器186を時計回りに1回転させれば、ドリブンギヤ182は、ステータギヤ180に対して、2歯分反時計回りに回転することになる。
実際は、ステータギヤ180は、入力軸82の回転に伴って回転するため、ステータギヤ180と波動発生器186との相対回転量により、ステータギヤ180に対するドリブンギヤ182の回転比、つまり、可変伝達機構92の伝達比が決まる。具体的に言えば、ステータギヤ180の回転方向と波動発生器186との回転方向が同じであれば、ドリブンギヤ182は、上記基準回転比に応じた回転速度以下に減速され、逆に、ステータギヤ180の回転方向と波動発生器186との回転方向が反対であれば、ドリブンギヤ182は、上記基準回転比に応じた回転速度以上の回転速度に増速される。この増速,減速の程度は、ステータギヤ180の回転速度と、波動発生器186の回転速度との両者に依存するため、ステータギヤ180の回転速度に関連してモータ150の回転速度を変更することによって、伝達比を任意に変更することが可能である。このようにして、可変伝達機構92は、入力軸82の回転を出力軸90に伝達するとともに、入力軸82の回転量に対する出力軸90の回転量の比、言い換えれば、入力軸82の回転速度に対する出力軸90の回転速度の比である伝達比を変更可能とされているのである。
以上のような構造から、可変伝達機構92において、ハウジング80に回転可能に設けられた入力軸82の下部軸112とその下部軸82に連結されたステータギヤ180とが第1要素として機能し、ハウジング80に回転可能に設けられた出力軸90とその出力軸90に連結されたドリブンギヤ182が第2要素として機能する。また、ステータギヤ180およびドリブンギヤ182と噛合するフレキシブルギヤ184,そのフレキシブルギヤ184が装着された波動発生器186,その波動発生器186が接続されたモータ軸152等が第3要素として機能するのであり、それら3つの要素を含んで差動機構が構成されているのである。なお、先に説明したように、モータ軸152の回転を禁止した状態でのステータギヤ180とドリブンギヤ182との回転比は、上記基準回転比となっており、その状態、つまり、第3要素の動作が禁止された状態における第1要素と第2要素との相対動作量は、第1要素の動作量に拘わらず、その回転比に対応するものとなる。
また、可変動作伝達装置としてのVGRSアクチュエータ14は、第3要素を構成するモータ軸152の回転を禁止可能な第3要素動作禁止装置としてのモータ軸回転ロック機構200(以下、単に「ロック機構200」と略す場合がある)を備えている。そのロック機構200について、それの断面図(図2におけるA−A断面)である図4(ハウジング98内部に収容されている構成要素のみを描いてある)をも参照しつつ、説明する。ロック機構200は、電磁式ソレノイド202を駆動源とするものであり、そのソレノイド202と、ロック機構部ハウジング98の内面に固定して設けられた固定ピン204の周りに回動可能なロックレバー206と、モータ軸152の外周にトレランスリング207を介して嵌められた回転部材としてのロックホルダ208とを含んで構成されている。そのトレランスリング207について詳しく説明すれば、トレランスリング207は、バネとして機能する波形形状をした部分を有する環状の部材を含んで構成されており、モータ軸152に嵌められている。そして、トレランスリング207は、その波形形状をした部分の弾性力によって、トレランスリング207の外周に嵌められた環状のロックホルダ208を支持している。また、トレランスリング207は、通常、その弾性力によって生じる摩擦力によって、モータ軸152に対するロックホルダ208の回転を禁止している。
ロックレバー206は、自身の一端部である先端部210がロックホルダ208に向かう向きに回動するように、固定ピン204を挿通させた状態で配設されたスプリング212によって付勢されており、また、ロックレバー206の他端部は、ソレノイド202に接続されている。ソレノイド202は、励磁されることによって、ロックレバー206を、それの先端部210がロックホルダ208から引き離される向きに回動させる構造とされている。ロックレバー206の先端部210は、係止部として機能し、ロックホルダ208の外周に形成された凹部214は、被係止部として機能し、先端部210は凹部214に係合可能とされている。
ソレノイド202が励磁された場合には、ロックレバー206がスプリング212の付勢力に抗して回動させられ、ロックレバー206の先端部210とロックホルダ208の凹部214との係合が解除されて、モータ軸152の回転は許容される(図4(a)参照)。また、ソレノイド202が消磁された場合には、ロックレバー206がスプリング212の付勢力によって、先端部210が凹部214と係合することで、モータ軸152の回転が禁止される(図4(b)参照)。モータ軸152の回転が禁止された場合には、先に説明した基準回転比に応じた回転伝達が行われる。
上記ロック機構200によってモータ軸152の回転が禁止された状態において、モータ軸152にそれを回転させようとする動作力が作用する場合を考える。そのモータ軸152を回転させようとする動作力が、先に述べたトレランスリング207とロックホルダ208との間に生じる摩擦力より大きい場合には、ロック機構200がモータ軸152の回転を禁止するように作動している状態であっても、モータ軸152の回転は許容されることになる。このような構造から、VGRSアクチュエータ14は、第3要素動作禁止装置によって第3要素の動作が禁止された状態において、第3要素に設定された大きさを超える動作力が作用した場合に、その動作力の作用によって第3要素の動作を許容する第3要素動作許容機構を有するものとされているのである。つまり、本VGRSアクチュエータ14では、トレランスリング207を含んで第3要素動作許容機構が構成されているのである。また、本ステアリングシステムは、VGRSアクチュエータ14がその第3要素動作許容機構を有することで、第3要素動作禁止装置による第3要素の動作の禁止を無効化する第3要素動作禁止無効化装置を含むものとされているのである。
ちなみに、ロックレバー206の先端部210には、歪みゲージ216が設けられており、その歪みゲージ216は、ロックレバー206とロックホルダ208との相互作用によって生じるロックレバー206の変形量を検出可能とされている。そして、本ステアリングシステムでは、そのロックレバー206の変形量に基づき、ロックレバー206とロックホルダ208とが係合状態にある場合におけるそれらの間に作用する作用力が推定されるのである。このように、VGRSアクチュエータ14は、上記モータ軸152を回転させようとする動作力に応じたロックレバー206とロックホルダ208との間に作用する作用力を検出する作用力検出器を有するものとされているのである。
さらに、VGRSアクチュエータ14は、先に説明したレゾルバ164とは別に、2つのレゾルバ220,222を備えている。レゾルバ220は、トーションバー114の上端部が嵌合する上部軸110と、ハウジング80の内面との間に設けられており、上部軸110の回転角度位置を検出する検出器として機能する。また、レゾルバ222は、トーションバー114の下端部が嵌合する下部軸112の外周部に固定して設けられた付設リング224と、ハウジング80の内面との間に設けられており、下部軸112の回転角度位置を検出するための検出器として機能する。2つのレゾルバ220,222の検出信号から、上部軸110と下部軸112との相対回転変位量を、上端部と下端部との相対変位量として検出することが可能であり、本ステアリングシステムでは、その相対回転変位量、つまり、トーションバー114の捻り変形量に基づいてステアリングホイール20の操作力(詳しくは操作トルク)が推定される。このように、本ステアリングシステムは、上記相対変位量を基準としたステアリングホイール20の操作力を検出する操作力検出器を備えるものとされ、その操作力検出器は、変形部材としてのトーションバー114と、一端部変位量センサ,他端部変位量センサとしてのレゾルバ220,222によって構成される相対変位量センサとを含んで構成されている。言い換えれば、ステアリングホイール20と第1要素を構成するステータギヤ180との間に配設された変形部材であるトーションバー114と、それの捻り変形量を検出する変形量センサとを含んで構成され、VGRSアクチュエータ14内に設けられている。なお、ステアリングホイール20の操作方向も、これらレゾルバ220,222の検出信号により推定することが可能である。
上記レゾルバ222は、検出した下部軸112の回転角度位置に基づいて、その下部軸112に連結されたステータギヤ180の回転角度を検出可能である。また、転舵装置12に設けられた転舵量センサ54は、検出された転舵ロッド32の移動量に基づいて、ピニオン軸34の回転角度、つまり、ドリブンギヤ182の回転角度を検出可能である。したがって、レゾルバ222と転舵量センサ54との検出信号から、ステータギヤ180とドリブンギヤ182との相対回転角度を、第1要素と第2要素との相対動作量として検出することが可能である。このように、本ステアリングシステムは、第1要素と第2要素との相対動作量を検出する相対動作量検出器を備えるものとされているのである。
(B)ステアリングシステムの制御
以上のような構造とされた本ステアリングシステムは、ECU16によって制御される。ECU16は、コンピュータを主体とするものであり、先に述べた操作角センサ28、転舵量センサ54、レゾルバ164,220,222、歪みゲージ216、および、各車輪に設けられた車輪速センサ230(図1では、一方の車輪46に対して設けられたもののみが示されている)等の各種センサが接続されている。また、ECU16は、転舵装置12の助勢機構52のモータ,VGRSアクチュエータ14のモータ150,ロック機構200のソレノイド202のぞれぞれに対する駆動回路(ドライバ)を有しており、ECU16は、コンピュータが、それらの駆動回路を介して、助勢機構52のモータ,モータ150,ソレノイド202の作動を制御するように構成されている。
i)基本となる制御
ECU16は、基本となる制御として、2つの制御を実行する。その1つの制御は、前述したVGRSアクチュエータ14が有する可変伝達機構92に関する制御(以下、「伝達比制御」という場合がある)である。先に述べたように、VGRSアクチュエータ14は、ステアリングシャフト24の回転に対する転舵装置12のピニオン軸34の回転量の比、つまり、伝達比γを変更する可変伝達機構92を有しており、その伝達比γの制御である伝達比制御を実行する。具体的に言えば、各車輪に設けられた車輪速センサ230によって検出された車輪速に基づいて車両の走行速度vを推定し、その推定された速度vに応じた伝達比γとなるように、可変伝達機構92(詳しくは、モータ150の回転方向および回転速度)を制御するのである。
より詳しく言えば、伝達比γは、図5に示すように、車両の走行速度vが制御最低速度vMINと制御最高速度vMAXとの間の範囲にある場合において、走行速度が高い程小さくなるように、言い換えれば、走行速度vが低い程大きくなるように設定されている。また、伝達比γに対応するモータ軸152の回転速度dφは、ステータギヤ180の回転速度に応じて定まるものであることから、本伝達比制御では、目標となるモータ軸152の回転速度dφは、操作角センサ28の検出値に基づいて推定されたステアリングホイール20の回転速度dδを利用して、その回転速度dδを基に、演算によって決定される。そして、決定された回転速度dφについての指令が駆動回路に発せられる。駆動回路は、レゾルバ164によって検出されたモータ軸152の回転角度位置を基に、モータ軸152が指令された回転速度dφで回転するように、モータ150を制御する。このような制御により、車両走行速度vに応じた伝達比γが実現されるのである。なお、本伝達比制御によれば、車両が速く走行している場合において、ステアリングホイール20の操作角(操作量)に対する転舵車輪46の転舵角(転舵量)が小さくされることで、車両の走行安定性が向上させられ、逆に、車両が遅く走行している場合において、テアリングホイール20の操作角に対する転舵車輪46の転舵角が大きくされることで、ステアリング操作の容易性が向上させられる。
ECU16が実行するもう1つの基本となる制御は、前述した転舵装置12の助勢機構52に関する制御(以下、「助勢制御」と言う場合がある)である。ECU16は、レゾルバ220,222によって検出されるトーションバー114の上端部と下端部との相対回転変位量Δτ(トーションバー114の捻り変形量)に基づいて、ステアリングホイール20に加えられた操作力としての操作トルクTを推定し、その推定した操作トルクTに応じた助勢力Fを発生させるように、助勢機構52を、詳しくは、それが有する電動モータに供給される電力Wを制御するのである。操作トルクT若しく相対回転量Δτに対する供給電力W若しくは助勢力Fは、図6に示すように設定されており、現時点での上記回転変位量Δτに応じた供給電力量Wが決定され、その供給電力量Wについての指令が、電動モータを駆動する駆動回路に発せられ、駆動回路は、電動モータに対してその供給電力量Wを供給するように作動する。このような制御によって、操作トルクTに応じた転舵の助勢が行われることになる。具体的に言えば、トーションバー114の捻れが大きくなって上記相対回転変位量Δτが大きくなる場合は、操作トルクTが大きいと推定され、電動モータに比較的大きな電力Wが供給されて、助勢機構52による助勢力Fが大きくされる。逆に、トーションバー114の捻れが小さく上記相対回転変位量Δτが小さい場合は、操作トルクTが小さいと推定され、電動モータに比較的小さな電力Wが供給されて、助勢機構52による助勢力Fが小さくされる。
ii)第1失陥時制御
モータ150が第3要素を構成するモータ軸152を回転させることができない失陥が生じた場合には、ECU16によって、上述の伝達比制御に代えて、第1失陥時制御が実行される。この第1失陥時制御は、前記第3要素動作禁止装置であるロック機構200を作動させ、詳しくは、ソレノイド202を消磁し、モータ軸152をロックすることで第3要素の回転を禁止する制御、つまり、第3要素動作禁止制御である。モータ150がモータ軸152を回転させることができない失陥が生じた場合とは、具体的には、例えば、断線等が原因でモータ軸152に駆動力を与えることができない場合や、モータ150が過負荷となり、保護回路が作動してモータ150が駆動力を発生し得ない状態とされた場合等である。それらの場合、モータ軸152の比較的自由な回転が許容されることになり、可変伝達機構92においては、波動発生器186の自由な回転が許容される。そのため、それらの場合には、ステータギヤ180とドリブンギヤ182との間の適切な回転伝達が行われなくなる。本ステアリングシステムでは、そのような事態に対処すべく、第1失陥時制御が実行される。
具体的に言えば、ECU16は、モータ150を駆動する駆動回路において、モータ150への電力供給状態をモニタしており、そのモニタ結果から、モータ150の断線,モータ150の過負荷を判断する。そして、断線若しくは過負荷と判断した場合に、ソレノイド202への電力供給を停止するのである。それにより、モータ軸152の回転が禁止されることになる。このような第1失陥時制御が実行されることで、先に述べたように、ドリブンギヤ182のステータギヤ180に対する回転比が上記基準回転比に固定され、その回転比に応じた固定的な伝達比γの下での車輪の転舵が実現される。
iii)第2失陥時制御
モータ150が過負荷となる一因として、可変伝達機構92の構成要素であるステータギヤ180,ドリブンギヤ182,それらと係合するフレキシブルギヤ184および波動発生器186があたかも互いに固着されたような状態、言い換えれば、ステータギヤ180とドリブンギヤ182とが相対回転できない相対回転不能状態(「相対動作不能状態」の一種である)が考えられる。例えば、可変伝達機構92への異物の噛み込み等により、相対回転不能状態を伴う失陥が発生し得る。この相対回転不能状態では、伝達比に応じた回転速度でモータ軸152を回転させようとしても、モータ軸152がその回転速度になり得ないことから、その状態が続けば、モータ150が過負荷となってしまうのである。
相対回転不能状態を伴う失陥が発生した場合において上記第1失陥時制御が実行され、モータ軸152の回転が禁止されれば、可変伝達機構92がいわゆるデッドロックを起こし、操舵に支障をきたすこととなる。それに対処するため、ECU16は、第2失陥時制御を実行する。この第2失陥時制御は、ロック機構200によるモータ軸152の回転の禁止を解除する制御、つまり、第3要素動作禁止解除制御が実行され、また、モータ150がモータ軸152の回転に対する抵抗とならないようにする制御が実行される。具体的に言えば、ソレノイド202に電力が供給されるとともに、駆動回路によって、モータ150がフリーな状態(以下、「モータフリー状態」という場合がある)、つまり、モータ150が有する各通電端子と電源との導通が遮断され、かつ、各通電端子がオープンな状態とされる。これによって、モータ150には電力が供給されず、また、モータ150は、起電力による力を発生し得ない状態とされる。
ECU16は、以下に示す3つの条件のいずれかを充足する場合に、第2失陥時制御を実行する。まず1つめの条件(以下、「第1条件」という場合がある)は、第3要素に設定された大きさを超える動作力が作用することである。具体的に言えば、ロックレバー206がロックホルダ208を係止する状態においてそれらの作用・反作用によってそれらの間に生じる力である作用力AFが、設定閾力AFより大きいことである。先に述べたように、本ステアリングシステムでは、VGRSアクチュエータ14が、作用力検出器としての歪みゲージ216を有するものとされているため、その歪みゲージ216の検出信号に基づいて作用力AFが検出される。その検出された作用力AFに基づいて、この第1条件を充足するか否かを判定し、充足した場合に、以後、第1失陥時制御に代えて、第2失陥時制御が実行される。
2つめの条件(以下、「第2条件」という場合がある)は、ステアリング操作部材の操作力が設定された大きさを超えることである。可変伝達機構92がデッドロックを起こしている場合、運転者がステアリングホイール20を回転させようとした場合には、ステアリングホイール20に加えられる操作力は、相当に大きくなる可能性が高い。本ステアリングシステムは、先に述べたように、ステアリングホイール20とステータギヤ180との間に、2つのレゾルバ220,222を含んで構成される前述の操作力検出器、つまり、トーションバー114の相対回転変位量Δτに基づく操作力検出器を備えており、その検出器の検出結果に基づいて、上記第2条件の充足が判定される。具体的言えば、検出された操作力である操作トルクTが設定された閾トルクTを超えた場合に、デッドロックを起こしている状態であると認定し、その認定に基づいて、この第2条件を充足しているか否が判定される。第2条件が充足されたと判断された場合に,第2失陥時制御が実行される。
3つめの条件(以下、「第3条件」という場合がある)は、第1要素と第2要素とが実質的に相対動作し得ないことである。具体的には、第1要素を構成するステータギヤ180の回転量Δθ(短い一定時間内における回転量であり、回転速度と考えることもできる)と、第2要素を構成するドリブンギヤ182の回転量Δθとが、殆ど一致しているという条件である。例えば、VGRSアクチュエータ14に、単にモータ150の断線等に起因する場合には、ステータギヤ180とドリブンギヤ182との回転比は、基準回転比に応じたものとなるが、相対回転不能状態である場合には、その回転比は、常時、略1/1となる。第3条件は、そのことを考慮した条件である。なお、本ステアリングシステムのロック機構200は、ロックレバー206とロックホルダ208との間、詳しくは、ロックレバー206の先端部210とロックホルダ208の凹部214との間に遊間240が設けられており、その遊間240に相当する設定範囲内の第3要素の回転を許容しつつ第3要素の回転を禁止するものとされている。このような構造から、本VGRSアクチュエータ14では、相対回転不能状態であっても、遊間240に相当する分の回転から、ステータギヤ180とドリブンギヤ182との回転比が検出可能となっている。
具体的は、まず、ステータギヤ180の回転角度を検出可能なレゾルバ222の検出値に基づいて、ステータギヤ180の回転量Δθが認定され、ドリブンギヤ182の回転角度を検出可能な転舵量センサ54の検出値に基づいて、ドリブンギヤ182の回転量Δθが認定される。そして、ステータギヤ180の回転量Δθが0でないことを前提として、ステータギヤ180の回転量Δθとドリブンギヤ182の回転量Δθとの差が、設定閾値Δθ(極めて0に近い値に設定されている)より小さいか否がが判断される。回転量の差が設定閾値Δθより小さい場合に、上記第3条件が充足したと判断されて、第2失陥時制御が実行される。
以上のように、ECU16は、第1失陥時制御が実行された場合に、(A)ロック機構の係止部と被係止部との間の作用力がに設定された大きさを超えたか、(B)ステアリング操作部材の操作力が設定された大きさを超えたか、(C)第1要素と第2要素とが実質的に相対動作し得ないかを判定することで、その失陥が相対回転不能状態に起因するものか否かを判定するものとされているのである。つまり、上述した3つの条件のうち少なくとも1つでも該当する場合には、相対回転不能状態に陥っていると判定し、ECU16は、第2失陥時制御を実行するのである。なお、上記第1条件,第2条件による判定は、いずれも、第3要素に作用する動作力が設定された大きさを超えたかについての判定とみなすことができる。
上述したような第2失陥時制御により、VGRSアクチュエータ14においては、入力軸82と出力軸90とがあたかも一体となった状態でのそれらの回転が許容され、適切な操舵が可能となる。また、その状態において、モータ150に過負荷が加わることをも回避可能である。また、第2失陥時制御では、第3要素動作禁止装置を制御することで、その装置による第3要素の動作の禁止が解除される。したがって、制御装置であるECU16が、この第2失陥時制御、詳しくは、第3要素動作禁止解除制御を実行するように構成とされていることによって、本ステアリングシステムは、第3要素動作禁止無効化装置を有するものとされているのである。なお、第2失陥時制御の開始の条件が、上述のように3つ存在することから、本ステアリングシステムは、3種の第3要素動作禁止無効化装置を備えていると考えることができる。また、第3要素動作禁止解除制御は、第3要素の動作が禁止されない状態を実現する制御であり、その意味において、第3要素動作非禁止状態実現制御の一種となっている。
iv)第2失陥時制御に関する変形例
なお、上述した第2失陥時制御は、一旦、第3要素動作禁止装置によって第3要素の動作が禁止された後にその禁止を解除することで、第3要素動作禁止装置による第3要素の動作を禁止しない状態とする制御である。そのような態様の制御に代えて、相対回転不能状態において、直接的に、第2失陥時制御が実行されるような態様の制御とすることも可能である。例えば、先に述べた第3条件に関する判定は、つまり、第1要素と第2要素とが実質的に相対動作し得るか否かの判定は、ロック機構200を作動させる前であっても行い得る。先に説明したように、相対回転不能状態である場合には、ステータギヤ180とドリブンギヤ182との回転比は、常時、略1/1となるからである。そこで、通常状態において、常に、上記第3条件に関する判定を行い、第3条件を充足した場合に、第2失陥時制御を実行するような制御態様を採用することも可能である。つまり、このような制御態様によっても、第3要素動作非禁止状態実現制御を実行することができるのである。
なお、通常状態からの第2失陥時制御の開始にあたっては、上述した伝達比制御の実行を禁止し、モータ150を前述のフリー状態として、第3要素のモータ軸152の駆動を禁止すればよい。しかし、モータ軸152の回転は禁止されていないため、ロック機構200の作動に関する制御を実行する必要はない。ちなみに、通常状態においては、伝達比制御が実行されており、ある車両走行速度vにおいて、その制御によってステータギヤ180とドリブンギヤ182との回転比が1/1とされる場合がある。そこで、相対回転不能状態の認定の確実化に鑑みれば、車両走行速度vが変化していることを前提として,上記第3条件に関する判定を行うことが望ましい。
v)第3要素動作許容機構と第2失陥時制御との関係
本ステアリングシステムは、VGRSアクチュエータ14が、先に説明した第3要素動作許容機構を有することで、第2欠陥時制御による第3要素動作禁止無効化装置とは別の第3要素動作禁止無効化装置を有するものとされている。その第3要素動作許容機構は、先に説明したように、モータ軸152に作用する動作力がトレランスリング207による摩擦力より大きい場合に、モータ軸152のロックホルダ208に対する回転を許容する機能を有している。その動作力は、ステアリングホイール20に加えられた操作力や、転舵装置12からの逆入力に起因し、ステータギヤ180,ドリブンギヤ182等を介してモータ軸152に作用する力である。第3要素動作許容機構は、ロック機構200によってモータ軸152の回転が禁止されている場合であっても、そのような動作力の作用によってモータ軸152の回転を許容するものとされているのである。
上述のことに鑑みれば、第3要素動作許容機構と、第2失陥時制御とは、モータ軸152の回転の許容という機能において共通しており、本ステアリングシステムでは、第3要素動作禁止無効化装置が、冗長的に設けられていることになる。ちなみに、トレランスリング207による摩擦力に打ち勝つ動作力は、先に述べた第1条件の判定における設定作用力,第2条件の判定における設定操作力に対応する動作力より大きくされており、概ね、第3要素動作許容機構によるモータ軸152の回転の許容に先立って、第2失陥時制御が開始されるようになっている。したがって、本ステアリングシステムにおいては、第3要素動作許容機構は、フェールセーフ等の観点に基づいて設けられたバックアップ的な第3要素動作禁止無効化装置とされているのである。なお、逆に、第3要素動作許容機構によるモータ軸152の回転の許容に先立って第2失陥時制御が実行されるようにしてもよく、それらが、略同時に行われるようにしてもよい。また、本ステアリングシステムは、第3要素動作許容機構を設けないように変更することもでき、第2失陥時制御が実行されないように変更することも可能である。
vi)制御のフロー
本ステアリングシステムにおいてECU16によって実行される助勢制御プログラムのフローチャートを、図7に、アクチェータ制御プログラムのフローチャートを、図8に、それぞれ示す。それらのプログラムは、極短い時間間隔(例えば、数m sec〜数十m sec)をおいて繰り返し実行される。以下、それらのフローチャートに沿って、先に説明した助勢制御のフローと、伝達比制御,第1失陥時制御,第2失陥時制御を含んだアクチュエータ制御のフローを説明する。
図7に示すように、転舵装置12の助勢機構52による助勢力を制御する助勢制御では、ステップ1(以下「S1」と略す場合がある。他のステップも同様である)において、レゾルバ220,222によって検出されるトーションバー114の上端部と下端部との相対回転変位量Δτが取得され、続くS2において、その相対回転変位量Δτに基づいて、助勢機構52が有する電動モータへの供給電力量Wが決定される。次いで、S3において、その供給電力量Wについての指令が駆動回路に発せられる。このような制御によって、本ステアリングシステムでは、常時、ステアリングホイール20に加えられた操作力に応じた車輪転舵についての助勢が行われる。
図8に示すように、アクチュエータの制御では、失陥フラグFが用いられる。失陥フラグFは、初期値が0に設定されており、モータ150が断線あるいは過負荷に陥った場合に、その値が1とされ、先に説明した相対回転不能状態となった場合に、その値が2とされるフラグである。
S13およびS14で、モータ150の断線,過負荷が判断され、断線,過負荷のいずれでもない場合は、S15〜S19の伝達比制御が実行される。つまり、車両走行速度vが推定され、その車両走行速度vを基に、図5に示すマップを参照して伝達比γが特定される。次いで、ステアリングホイールの回転速度dδが推定され、その回転速度dδと特定された伝達比γとに基づき、モータ軸152の回転させるべき速度Δφが決定され、その決定された回転速度Δφについての指令が、モータ150の駆動回路に発令される。
モータ150が断線、あるいは、過負荷に陥っている場合には、S20において、ロック機構200が作動させられて、モータ軸152がロックされる。つまり、第1失陥時制御の実行が開始され、モータ軸152の回転が禁止される。第1失陥時制御の開始に伴って、S21において、失陥時フラグが1とされる。
失陥時フラグが1とされた後、S22〜S25の判定が実行される。S22の判定は、先に説明した第1条件についての判定であり、ロックレバー206とロックホルダ208との間に生じる力である作用力AFが、設定閾力AFより大きいか否かが判断される。S23の判定は、第2条件についての判定であり、操作トルクTが設定された閾トルクTを超えているか否かが判断される。S24,S25は、第3条件についての判定であり、ステータギヤ180が回転していることを前提として、ステータギヤ180の回転量Δθとドリブンギヤ182の回転量Δθとの差が、設定閾値Δθより小さいか否がが判断される。それら第1条件ないし第3条件のいずれかが充足された場合に、S26において、ロック機構200が作動させられてモータ軸152のロックが解除されるとともに、駆動回路によって、先に説明したモータフリー状態が実現される。つまり、第2失陥時制御の実行が開始される。第2失陥時制御の開始にともなって、S27において、失陥時フラグが2とされる。
一旦、第1失陥時制御が開始された場合には、S12の判定によって、モータ軸152のロックが維持された状態において、上述の第1条件ないし第3条件の判定が繰り返され、また、一旦、第2失陥時制御が開始された場合には、S11の判定によって、モータ軸152のロックが解除された状態およびモータフリー状態が維持される。
vii)制御装置の機能構成
ECU16は、上記助勢制御プログラムおよびアクチュエータ制御プログラムに従う処理を実行することから、図9に示すような機能構成を有していると考えることができる。詳しく言えば、ECU16は、上記助勢制御プログラムに従う処理を実行する助勢制御部B1と、上記アクチュエータ制御プログラムに従う処理を実行する可変動作伝達装置制御部としてのアクチュエータ制御部B2とを有している。
アクチュエータ制御部B2は、詳しく言えば、アクチュエータ制御プログラムのS15〜19に従う処理を実行する機能部として、伝達比制御部B21を、S13またはS14の判定に応じてS20に従う処理を実行する機能部として、第1失陥時制御部B22を、S22ないしS25いずれかの判定に応じてS26に従う処理を実行する機能部として、第2失陥時制御部B23を有している。第1失陥時制御部B22は、特定の状況下で、第3要素としてのモータ軸152の回転をロック機構200によって禁止させる機能部であり、第3要素動作禁止制御部と考えることができ、また、第2失陥時制御部B23は、モータ軸152の回転が禁止されている状態において、ロック機構200の作動を制御してその回転の禁止を解除させることにより、モータ軸152の回転を許容する制御を実行する機能部であり、第3要素動作禁止解除制御部と考えることができ、また、第3要素の動作が禁止されない状態を実現する機能部である第3要素動作非禁止状態実現制御部の一種と考えることができる。
さらに詳しく言えば、第2失陥時制御部B23は、3つの機能部を含んで構成されているといえる。その1つは、S22の判定に基づくモータ軸152の回転禁止の解除、つまり、ロック機構200における作用力が設定された大きさを超える場合にモータ軸152の回転禁止を解除する制御を実行する作用力依拠解除制御部B231であり、別の1つは、S23の判定に基づく解除、つまり、ステアリングホイール20に加わる操作力が設定された大きさを超えた場合にモータ軸152の回転禁止を解除する制御を実行する操作力依拠解除制御部B232である。そして、さらに別の1つは、S25の判定に基づく解除、つまり、第1要素であるステータギヤ180と第2要素であるドリブンギヤ182が実質的に相対動作不能となった場合にモータ軸152の回転禁止を解除する制御を実行する相対動作依拠解除制御部B233である。
<第2実施例>
(A)ステアリングシステムの構成
図10に第2実施例のステアリングシステムが備える可変動作伝達装置としてのVGRSアクチュエータの断面図を示す。そのVGRSアクチュエータ250は、第1実施例のシステムが備えるVGRSアクチュエータ14と同様、転舵装置12に固定されて設けられる。本ステアリングシステムの全体構成は、図1に示すものと同様であるため、それについての説明は省略する。また、VGRSアクチュエータ250は、先のVGRSアクチュエータ14と同様、あるいは類似の構成要素を含んで構成されているため、それらについては、同じ符号を用いるものとし、それらについての説明は、簡略に行う。
VGRSアクチュエータ250は、第1実施例におけるVGRSアクチュエータ14と同様に、ハウジング252と、入力軸254と、出力軸256と、可変伝達機構92とを含んで構成されている。ハウジング252は、3つのサブハウジング(上部ハウジング260,下部ハウジング262,ロック機構部ハウジング264)を含んで構成されている。上部ハウジング260と下部ハウジング262とは、締結材としてのボルト266によって締結されており、それらは容易に分離可能とされている。下部ハウジング262は、転舵装置12のハウジング30と、容易には分離できない程度に一体化されている。見方を変えれば、下部ハウジング262は、転舵装置12のハウジング30の一部と考えることもできる。つまり、VGRSアクチュエータ250は、ハウジング252が、転舵装置12のハウジング30と一体化された態様のものであるといえる。上記構造により、VGRSアクチュエータ250は転舵装置12に固定され、ハウジング252は、車体に対して相対回転不能に設けられた状態とされるのである。
入力軸254は、下端部から軸方向における上方に延びる有底穴270が形成された段付の軸部272と、軸部272と一体的に軸部272の下端部に形成されたフランジ部274とを有する形状とされている。入力軸254は、ハウジング252の上部から延出しており、その延出する部分の外周にはセレーションが形成されている。このセレーションが形成された部分において、ユニバーサルジョイント84が接続され、入力軸254には、操作装置10からの回転が入力される。
出力軸256は、上方に位置する主体的な軸としての主軸280と、下方に位置する転舵装置12の入力軸を兼ねるピニオン軸282と、主軸280とピニオン軸282とを繋ぐトーションバー284とが一体化されたものとして構成されている。主軸280は、中空とされており、軸方向の中間部には、軸直方向に拡がる鍔部286と、鍔部286の外周において軸方向に延びる円環部288とが、一体的に形成されている。ピニオン軸282は、その上部に、上端部から軸方向に延びる有底穴が形成され、軸方向における中間部に、ピニオン36が形成されたものとなっている。主軸280の下端部は、ピニオン軸282の有底穴にブシュ290を介して挿入されており、主軸280とピニオン軸282とは相対回転可能とされている。主軸280の内部に、トーションバー284が配置されている。トーションバー284は、その上端部が、主軸280の上端部にピン292によって固定されており、トーションバー284と主軸280とは相対回転不能とされている。また、トーションバー284は、ピニオン軸282の有底穴の底部にセレーション嵌合されており、トーションバー284とピニオン軸282とは相対回転不能とされている。このような構造により、出力軸256は、トーションバー284の捻りを許容し、その分自身も捻られるようにされているのである。
入力軸254の有底穴270には、出力軸256を構成する主軸280の上部が挿通させられ、有底穴270の内周面と主軸280の上部の外周面との間には軸受300が介在させられていることで、入力軸254と主軸280とは相対回転可能とされている。入力軸254は、上部ハウジング260の内面に、軸受302を介して回転可能に保持されている。また、出力軸256を構成するピニオン軸282は、中間部が下部ハウジング262と転舵装置のハウジング30との両者に軸受304を介して保持されるとともに、下端部がブシュ306を介してハウジング30に保持されることで、下部ハウジング262およびハウジング30に回転可能に保持されている。上述のような構造とされていることで、入力軸254と出力軸256は、同軸的に配置されるとともに互いに相対回転可能とされ、両者がそれぞれ、ハウジング252に対して回転可能とされているのである。ピニオン軸282を含む転舵装置12の構成については、第1実施例のものと同様であるため、説明を省略する。
可変伝達機構92は、第1実施例のものと同様にハーモニックギヤ機構を採用し、VGRSアクチュエータ250には、ハーモニックギヤ機構の動力源として、モータ150が設けられている。モータ150の出力軸であるモータ軸152は、中空とされており、入力軸254および出力軸256を自身に挿通させた状態で配設されている。詳しく言えば、モータ軸152は、軸受320およびブシュ322を介して、入力軸254に回転可能に保持されていることで、ハウジング252に対して回転可能とされている。第1実施例のものと同様に、モータ軸152の外周部にはロータを構成する永久磁石158が、ハウジング252の内面にはステータを構成する極体160が、それぞれ配設され、モータ150は、いわゆるブラシレスモータとされている。また、第1実施例のものと同様、モータ軸152の回転位置は、レゾルバ164によって検出され、極体160への通電の切替制御、モータ150の回転速度の制御等に利用される。
可変伝達機構92は、第1実施例のものと同様、ステータギヤ180と、ドリブンギヤ182と、フレキシブルギヤ184と、波動発生器186とを含んで構成されている。ちなみに、ステータギヤ180は、入力軸254のフランジ部274の外周部に固定され、ドリブンギヤ182は、出力軸256を構成する主軸280の円環部288に固定されている。このような構造から、本可変伝達機構92においては、ハウジング252に回転可能に設けられた入力軸254とその入力軸254に連結されたステータギヤ180とが第1要素として機能し、ハウジング252に回転可能に設けられた出力軸256の主軸280とその主軸280に連結されたドリブンギヤ182とが第2要素として機能する。可変伝達機構92の他の部分の構成,動作,機能等は、第1実施例のものと同様であるため、ここでの説明は省略する。また、VGRSアクチュエータ250も、第3要素動作禁止装置としてのモータ軸回転ロック機構200を備えるとともに、トレランスリング207を備えている。つまり、ロック機構200によってモータ軸152の回転が禁止されてる場合であってもその回転を許容する第3要素動作許容機構を備え、その第3動作許容機構を含んで構成される第3要素動作禁止無効化装置を備えるものとなっている。それらロック機構200およびトレランスリング207の構造も、第1実施例のものと同様であるため、説明を省略する。
VGRSアクチュエータ250は、先に説明したレゾルバ164とは別に、3つのレゾルバ330,332,334を備えている。レゾルバ330は、入力軸254とハウジング252の内面との間に設けられおり、入力軸254の回転角度位置を検出可能とされている。また、レゾルバ332は、出力軸256を構成する主軸280の下部とハウジング252の内面との間に、レゾルバ334は、出力軸256を構成するピニオン軸282とハウジング252の内面との間に設けられ、それぞれ、主軸280、ピニオン軸282の回転角度位置を検出可能とされている。レゾルバ332とレゾルバ334の検出信号から、主軸280とピニオン軸282との相対回転変位量を検出することが可能であり、その相対回転変位量に基づいてステアリングホイール20の操作力を検出する操作力検出器として機能するものとなっている。つまり、本VGRSアクチュエータ250では、自身の内部に操作力検出器を備え、その検出器は、転舵装置12と第2要素を構成するドリブンギヤ182との間に配設された変形部材であるトーションバー284と、それの捻り変形量を検出する変形量センサとを含んで構成されているのである。
また、レゾルバ330とレゾルバ332の検出信号、あるいは、レゾルバ330とレゾルバ334の検出信号から、入力軸254の回転角度とピニオン軸282の回転角度との差分,比を検出することができる。それらによる検出の結果は、第1実施例の場合と同様、助勢力,波動発生器186の回転方向の決定に利用されるとともに、入力軸254と出力軸256の回転比の制御に利用される。さらに、レゾルバ330の検出信号とレゾルバ332の検出信号とから、ステータギヤ180とドリブンギヤ182との相対回転角度を、第1要素と第2要素との相対動作量として検出することが可能であり、本ステアリングシステムは、第1要素と第2要素との相対動作量を検出する相対動作量検出器を備えるものとされているのである。
(B)ステアリングシステムの制御
本実施例のステアリングシステムの制御は、通常状態,失陥時のいずれの制御も、上記第1実施例のものと、概ね同様とされているため、異なる部分についてのみ説明する。
第1実施例におけるVGRSアクチュエータ14では、トーションバー114は、入力軸82に設けられている。それに対して、本実施例におけるVGRSアクチュエータ250では、トーションバー284は、出力軸256に設けられている。つまり、操作力検出器が、出力軸256に対応して設けられているのである。したがって、相対回転不能状態であって、かつ、ロック機構200によってモータ軸152の回転が禁止された状態、つまり、可変伝達機構92にデッドロックが生じている状態において、ステアリングホイール20に大きな操作力が加わったとしても、トーションバー114が捻られない。そのため、上述の操作力検出器では、その操作力を検出できない。このことに鑑み、本実施例のステアリングシステムの制御では、前述した第2条件についての判定(図8のフローチャートのS23)は行われず、また、その判定に基づく第2失陥時制御の実行は行われないようにされている。そのことから、先の実施例のシステムにおいてECU16が有していた機能部である操作力依拠解除制御部B232(図9参照)は、本実施例のステアリングシステムにおいては、存在していない。
また、本実施例のステアリングシステムの制御において前述の第3条件についての判定を行う際には、レゾルバ330の検出値に基づいてステータギヤ180の回転量Δθの認定が行われ、レゾルバ332の検出値に基づいて、ドリブンギヤ182の回転量Δθの認定が行われる。
<第3実施例>
第3実施例のステアリングシステムは、第2実施例のステアリングシステムと同じ構成のシステムとされている。それに対して、制御に関して言えば、VGRSアクチュエータ250に関する制御と、転舵装置12の助勢機構52に関する制御との両者において異なる。
VGRSアクチュエータ250に関する制御について言えば、前述した第1失陥時制御、つまり、モータ150の断線,過負荷に対処するための制御は、第2実施例,第1実施例の場合と同様に実行されるものの、第2失陥時制御、つまり、固着等によってステータギヤ180とドリブンギヤ182とが相対回転不能状態に陥った場合の制御が異なる。本実施例では、第1失陥時制御を経て、第2失陥時制御が実行されるだけでなく、相対回転不能状態であると認定された場合には、第1失陥時制御を経ずして、第2失陥時制御が実行されるようにもなっている。
第2失陥時制御の内容を詳しく説明すれば、第1失陥時制御が実行された後に第2失陥時制御が実行される場合には、第1失陥時制御において行われたモータ軸152のロックは解除されず、単に、モータ150が前述のモータフリー状態とされる。また、第1失陥時制御が実行されずに、第2失陥時制御が実行される場合には、モータフリー状態とするとともに、モータ150の過負荷を未然に防止する等の目的から、ロック機構200によって、モータ軸152がロックされる。
上述のような第2失陥時制御が実行されるため、その制御が実行される間は、ロック機構200によってモータ軸152の回転は禁止される。ところが、前述のトレランスリング207が設けられていることから、トレランスリング207の摩擦力を超える大きさの動作力がをモータ軸152に作用した場合には、モータ軸152の回転は許容されることになる。このトレランスリング207の機能、つまり、第3要素動作許容機構の機能により、相対回転不能状態であって、かつ、ロック機構200によってモータ軸152がロックされている場合であっても、可変動作伝達機構92がデッドロックを起こさず、ステータギヤ180とドリブンギヤ182とが一体的になった状態での車輪の転舵、つまり、伝達比が1:1となる状態での車輪の転舵が可能とされるのである。
しかし、相対回転不能状態における操舵操作は、トレランスリング207が発生させる摩擦力に打ち勝つ動作力がモータ軸152に作用することが前提であることから、その摩擦力に打ち勝つ分だけ大きな操作力を必要とする。したがって、運転者は、その分の負担を強いられることになる。本実施例では、そのことに鑑み、第2失陥時制御が実行されている場合には、助勢機構52による助勢力を増加させる制御である助勢力増加制御が実行される。
通常時には、助勢機構52が図11(a)に示すような助勢力Fを発生させるようにされているのに対し、助勢力増加制御では、図11(b)に示すような助勢力ΔFが追加される。つまり、上述したトレランスリング207が発生させる摩擦力を丁度打ち消す動作力がモータ軸152に作用するように、その摩擦力に応じた助勢力ΔFが追加されるのである。したがって、図11(c)に示すように、助勢機構52が発生させる助勢力Fは、通常時に比較して増加させられることになる。追加された助勢力ΔFは、出力軸256,ドリブンギヤ182を介して、モータ軸152に伝達され、その伝達された力は、トレランスリング207の摩擦力に対抗する力となる。その結果、理論上、通常状態におけいてステアリングホイール20に加える操作力と同じ大きさの操作力によって、車輪を転舵させることが可能となる。このように、本実施例では、助勢機構52による助勢力を増加させることで、相対動作不能状態に陥った場合における運転車の負担を軽減しているのである。ちなみに、先に説明したように、助勢力Fの制御は、助勢機構52の電動モータへ供給する供給電力量Wを制御することによって行われ、実際の制御においては、追加する助勢力ΔFに見合う分の電力量ΔWだけ、供給電力量Wが増加される。
本実施例のステアリングシステムでは、図12に示すアクチュエータ制御プログラムが実行される。このプログラムに従う処理では、先の実施例における制御と同様、S33およびS34で、モータの断線,過負荷が判断される。そして、いずれかの現象が生じた場合には、S44,S45において、第1失陥時制御が開始され、モータ軸152がロック機構200によってロックされ、失陥時フラグFが1とされる。モータの断線,過負荷のいずれの現象も発生していない場合には、S35〜S37の判定が行われる。この判定は、先の実施例における第3条件についての判定と同様であり、ステータギヤ180が回転しているときにおいて、ステータギヤ180の回転量Δθとドリブンギヤ182の回転量Δθとの差が、設定閾値Δθより小さいか否か、つまり、相対回転不能状態であるか否かが判断される。ただし、S35において、車両走行速度vが変化しているか否かが判断され、変化していることを前提条件として、S36,S37の相対回転不能状態についての判断がなされる。第1失陥時制御が実行されていない場合にはS39〜S43の伝達比制御が実行されているため、先に説明したように、相対回転不能状態の認定の確実化を帰すために、上記前提条件が設定されている。
相対回転不能状態となっている場合には、S46〜S48において、第2失陥時制御が開始され、モータ軸152がロック機構200によってロックされるとともに、モータ150が、前述のモータフリー状態とされ、失陥時フラグFが2とされる。相対回転不能状態となっていない場合には、S39〜S43の処理、つまり、伝達比制御に関する処理が実行される。それらの処理は、先の実施例の場合と同様の処理である。
一旦、第1失陥時制御が開始された場合には、S32の判定によって、S36,S37の判定処理、つまり、相対回転不能状態についての判定処理が実行される。この判定処理は、モータ軸152のロックが維持された状態において行われるため、先に説明したように、ロックレバー206の先端部210とロックホルダ208の凹部214との間の遊間240を利用して行われる。相対回転不能状態である場合には、S46以降の処理によって、第2失陥時制御が開始される。相対回転不能状態ではない場合には、第1失陥時制御の実行が継続される。また、一旦、第2失陥時制御が開始された場合には、S31の判定によって、その制御が継続される。
また、本実施例のステアリングシステムでは、図13に示す助勢制御プログラムが実行される。このプログラムでは、S53において、先に説明した失陥時フラグFを利用した判定、つまり、上述の相対回転不能状態であるか否かの判定が行われる。相対回転不能状態でない場合には、第1実施例,第2実施例の場合と同様に、転舵力のアシストが行われる。相対回転不能状態に陥っている場合には、S55において、操舵操作が行われているか否が判断され、操舵操作が行われている場合に限り、S56において、先に説明したように、助勢機構52の電動モータへの供給電力量Wが増加させられ、助勢力が増加させられることになる。なお、操舵操作が行われているかか否かの判断は、操作角センサ28によって検出されたステアリングホイール20の回転角度の微妙な変化に基づいて行われ、操舵操作が行われていると認定された場合には、その変化に基づいて、操舵操作の方向も特定される。
上記アクチュエータ制御プログラムおよび助勢制御プログラムに従う処理を実行するECU16は、図14に示すような機能構成を有していると考えることができる。詳しく言えば、ECU16は、上記助勢制御プログラムに従う処理を実行する助勢制御部C1を有している。そして、その助勢制御部C1は、S53の判定に基づきS55,S56の処理を実行する機能部、つまり、相対回転不能状態において助勢機構52による助勢力を増加させる助勢力増加部C11を有している。
また、ECU16は、上記アクチュエータ制御プログラムに従う処理を実行する可変動作伝達装置制御部として、アクチュエータ制御部C2を有しており、そのアクチュエータ制御部C2は、先の実施例のシステムと同様に、伝達比制御部C21,第3要素動作禁止制御部としての第1失陥時制御部C22とを有している。そしてアクチュエータ制御部C2は、さらに、相対回転不能状態の検知に基づいてS46〜S48の処理を実行する機能部として、第2失陥時制御部C23を有している。
本実施例のステアリングシステムは、上述した態様のシステムであるが、以下のように変形して実施することが可能である。例えば、上記態様のシステムは、第2実施例と同様のVGRSアクチュエータ250を採用するが、第1実施例と同様のVGRSアクチュエータ14を採用することも可能である。VGRSアクチュエータ14では、トーションバー114がステータギヤ180とステアリングホイール20との間に配設されている。普通に考えれば、第2失陥時制御が実行されている場合において、トレランスリング207の摩擦力によって操作力の大きくせざるを得ないと考えられるが、VGRSアクチュエータ14を採用する場合には、トーションバー114の配設箇所の関係で、操作力の増加に応じてトーションバー114の捻り変形量が多くなる。その結果として、VGRSアクチュエータ14を採用する場合には、助勢力増加制御に拠らずとも、ある程度の助勢力の増加が見込めることになるのである。したがって、助勢力増加制御を採用するメリットは、第2実施例と同様のVGRSアクチュエータ250を採用する場合に比較して小さいものとなる。
また、上記態様のシステムでは、助勢力増加制御において、トレランスリング207が発生させる摩擦力を丁度打ち消す動作力がモータ軸152に作用するように、助勢力ΔFが追加されている。このような大きさの助勢力ΔFを追加するのではなく、例えば、摩擦力に応じて、その摩擦力の何パーセントかが打ち消されるような動作力が作用するように、付勢力ΔFを追加してもよい。
上記態様のシステムにおいては、第1失陥時制御の実行中において第2失陥時制御の実行を開始するための判定として、先の実施例における第3条件についての判定と同様の判定のみを、つまり、ステータギヤ180の回転量Δθとドリブンギヤ182の回転量Δθとの差に基づく判定のみを行っている。その判定に加えあるいはその判定に代えて、先の実施例における第1条件のについての判定、つまり、ロック機構20に作用する作用力に基づく判定を行い、その判定の結果に従って第2失陥時制御が開始されるようにすることも可能である。

Claims (15)

  1. 運転者によって操作されるステアリング操作部材と、
    車体に対して固定的に設けられたハウジングと、(a)前記ステアリング操作部材と連結されて自身の動作量がそのステアリング操作部材の操作量に応じた動作量となるように前記ハウジングに動作可能に設けられた第1要素と、(b)前記第1要素と相対動作可能に前記ハウジングに設けられた第2要素と、(c)前記第1要素および前記第2要素と係合する第3要素とを含んで構成される差動機構と、前記ハウジングに固定的に設けられて前記第3要素を駆動する駆動源とを有し、前記第1要素と第2要素との相対動作量を前記第3要素の駆動量に応じて変更可能とされた可変動作伝達装置と、
    前記第2要素と連結され、その第2要素の動作量に応じた転舵量となる車輪の転舵を実現する転舵装置とを備えた車両用ステアリングシステムであって、
    前記可変動作伝達装置が、前記第3要素の動作を禁止可能な第3要素動作禁止装置を有するとともに、当該車両用ステアリングシステムが、その第3要素動作禁止装置による前記第3要素の動作の禁止を無効化する第3要素動作禁止無効化装置を備えた車両用ステアリングシステム。
  2. 前記可変動作伝達装置が、前記第3要素動作禁止装置によって前記第3要素の動作が禁止された状態においてその第3要素に設定された大きさを超える動作力が作用した場合に、その第3要素の動作を許容する第3要素動作許容機構を有するものとされ、
    その第3要素動作許容機構によって前記第3要素動作禁止無効化装置が構成された請求の範囲第1項に記載の車両用ステアリングシステム。
  3. 前記第3要素動作禁止装置が、前記第3要素に設けられた被係止部と、前記ハウジングに設けられてその被係止部を係止可能な係止部とを有し、その係止部によって前記被係止部が係止された係止状態において前記第3要素の動作を禁止する構造とされるとともに、
    前記第3要素と前記被係止部とが摩擦係合させられるとともに、それら第3要素と被係止部との間に生じる摩擦力に打ち勝つ動作力が前記第3要素に作用した場合にその第3要素の動作を許容する構造によって、前記第3要素動作許容機構が構成された請求の範囲第2項に記載の車両用ステアリングシステム。
  4. 前記第3要素が、回転動作するものとされ、前記被係止部が、前記第3要素と相対回転動作可能とされた回転部材に設けられており、前記第3要素動作許容機構が、その回転部材と前記第3要素と間に介装されたトレランスリングを含んで構成された請求の範囲第3項に記載の車両用ステアリングシステム。
  5. 当該車両用ステアリングシステムが、車輪の転舵のための転舵力を自身が発生させる助勢力によって助勢する助勢機構と、自身を制御するための制御装置と、前記第1要素と前記第2要素との相対動作量を検出する相対動作量検出器とを備え、
    その制御装置が、前記ステアリング操作部材の操舵力に基づいて、前記助勢機構による助勢力を制御する助勢制御を実行するとともに、前記第3要素動作禁止装置によって前記第3要素の動作が禁止された状態で、前記相対動作量検出器によって検出された相対動作量に基づいて前記第1要素と前記第2要素とが相対動作し得ない相対動作不能状態にあることが検出された場合において、前記助勢機構による助勢力を増加させる助勢力増加制御を実行するものとされた請求の範囲第2項ないし第4項のいずれかに記載の車両用ステアリングシステム。
  6. 前記第3要素動作禁止装置が、前記第3要素に設けられた被係止部と、前記ハウジングに設けられてその被係止部を係止可能な係止部とを有し、その係止部によって前記被係止部が係止された係止状態において前記第3要素の動作を禁止する構造とされるとともに、
    前記第3要素と前記被係止部とが摩擦係合させられるとともに、それら第3要素と被係止部との間に生じる摩擦力に打ち勝つ動作力が前記第3要素に作用した場合にその第3要素の動作を許容する構造によって、前記第3要素動作許容機構が構成され、
    前記助勢力増加制御が、前記摩擦力に応じて、前記助勢制御における助勢力を増加させる制御である請求の範囲第5項に記載の車両用ステアリングシステム。
  7. 当該車両用ステアリングシステムが、自身を制御するための制御装置を備え、その制御装置が、前記第3要素動作禁止装置の作動を制御して前記第3要素の動作を禁止する第3要素動作禁止制御を実行するものとされており、
    前記制御装置が、前記第1要素と前記第2要素とが相対動作し得ない相対動作不能状態において、前記第3要素動作禁止装置の作動を制御して前記第3要素の動作が禁止されない状態を実現させる第3要素動作非禁止状態実現制御を実行するものとされたことによって、前記第3要素動作禁止無効化装置が構成された請求の範囲第1項に記載の車両用ステアリングシステム。
  8. 前記制御装置が、前記可変動作伝達装置において前記駆動源が第3要素を駆動できない失陥が発生した場合に、前記第3要素動作禁止制御を実行するものとされた請求の範囲第7項に記載の車両用ステアリングシステム。
  9. 当該車両用ステアリングシステムが、前記第1要素と前記第2要素との相対動作量を検出する相対動作量検出器を備え、
    前記制御装置が、その相対動作量検出器によって検出された相対動作量に基づいて、前記第3要素動作非禁止状態実現制御を実行するものとされた請求の範囲第7項または第8項に記載の車両用ステアリングシステム。
  10. 前記制御装置が、前記第1要素と前記第2要素とが相対動作し得ない相対動作不能状態において、前記第3要素動作禁止装置によって第3要素の動作が禁止されている場合に、その第3要素動作禁止装置の作動を制御して前記第3要素の動作の禁止を解除する第3要素動作禁止解除制御を実行することで、前記第3要素動作非禁止状態実現制御を実行するものとされた請求の範囲第7項ないし第9項のいずれかに記載の車両用ステアリングシステム。
  11. 前記制御装置が、前記第3要素動作禁止装置によって第3要素の動作が禁止されている場合において前記第3要素に設定された大きさを超える動作力が作用したときに、前記第3要素動作禁止解除制御を実行するものとされた請求の範囲第10項に記載の車両用ステアリングシステム。
  12. 前記第3要素動作禁止装置が、前記第3要素に設けられた被係止部と、前記ハウジングに設けられてその被係止部を係止可能な係止部とを有し、その係止部によって前記被係止部が係止された係止状態において前記第3要素の動作を禁止する構造とされるとともに、前記可変動作伝達装置が、前記係止状態において前記係止部と前記被係止部との間に作用する作用力を検出する作用力検出器を有し、
    前記制御装置が、その作用力検出器によって検出された作用力が設定された大きさを超える場合に、前記第3要素動作禁止解除制御を実行するものとされた請求の範囲第10項または第11項に記載の車両用ステアリングシステム。
  13. 前記制御装置が、前記ステアリング操作部材の操作力が設定された大きさを超えた場合に、前記第3要素動作禁止解除制御を実行するものとされた請求の範囲第10項ないし第12項のいずれかに記載の車両用ステアリングシステム。
  14. 前記第3要素動作禁止装置が、設定範囲内の前記第3要素の動作を許容しつつその設定範囲を超える前記第3要素の動作を禁止するものであり、
    当該車両用ステアリングシステムが、前記第1要素と前記第2要素との相対動作量を検出する相対動作量検出器を備え、
    前記制御装置が、その相対動作量検出器によって検出された相対動作量に基づき、前記設定範囲内の前記第3要素の動作が許容された状態において前記第1要素と前記第2要素とが相対動作し得ない場合に、前記第3要素動作禁止解除制御を実行するものとされた請求の範囲第10項ないし第13項のいずれかに記載の車両用ステアリングシステム。
  15. 前記第1要素および前記第2要素が、それぞれ、互いに歯数の異なるサーキュラスプラインを含んで構成されて回転動作するものとされ、前記第3要素が、それらサーキュラスプラインの両者に噛合するフレクスプラインとそのフレクスプラインが外嵌されたウェーブジェネレータを含んで構成され、かつ、前記駆動源がそのウェーブジェネレータを回転させるモータとされたことで、前記可変動作伝達装置が、ハーモニックギヤ機構を含んで構成された請求の範囲第1項ないし第14項のいずれかに記載の車両用ステアリングシステム。
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