JP4810820B2 - クロムレス被膜付き方向性電磁鋼板およびその製造方法 - Google Patents

クロムレス被膜付き方向性電磁鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、表面性状に優れかつ鋼板に付与する張力の高い、クロムを含まない被膜を有する方向性電磁鋼板およびその製造方法に関するものである。
一般に、方向性電磁鋼板においては、絶縁性、加工性および防錆性等を付与するために、その表面に被膜が施されている。かかる被膜は、最終仕上焼鈍時に形成されるフォルステライトを主体とする下地膜と、その上に被成されるリン酸塩系の上塗り被膜とからなるのが通例である。これらの被膜は、高温で形成され、しかも低い熱膨張率を持つことから、温度が室温まで低下した鋼板と被膜との間で熱膨張率に大きな差異が生じて、鋼板に張力を付与することになるため、鉄損の低減に有効である。従って、被膜には、できるだけ高い張力を鋼板に付与する機能が望まれている。
従来、上記の諸特性を満たすために、被膜について種々の提案がなされている。例えば、特許文献1にはリン酸マグネシウム、コロイド状シリカおよび無水クロム酸を主体とする被膜が、また特許文献2にはリン酸アルミニウム、コロイド状シリカおよび無水クロム酸を主体とする被膜が、それぞれ提案されている。
ところで、近年の環境保全への関心の高まりにより、クロムや鉛等の有害物質を含まない製品に対する要望が強まっており、方向性電磁鋼の分野においても、クロムを含まない被膜を形成させる方法の開発が望まれていた。しかし、クロムを用いないと、著しい耐吸湿性の劣化や張力低下によって鉄損改善効果が消失する等の、品質上の問題が発生するため、クロムを無添加とすることができなかった。ここに、被膜における耐吸湿性の劣化とは、被膜が大気中の水分を吸収し、この水分が部分的に液化して膜厚が薄くなったり被膜のない部分ができたりして、絶縁性や防錆性が劣化してしまうことである。
この問題を解決する方法として、コロイド状シリカ、リン酸アルミニウム、ホウ酸及び硫酸塩からなるコーティング液を塗布する方法が、特許文献3に記載されている。この方法により、従来のクロム含有被膜に近い張力効果による鉄損改善と耐吸湿性の改善とがもたらされた。
しかしながら、この方法による鉄損ならびに耐吸湿性の改善は、効果にばらつきがあり、場合によっては問題となるレベルまで鉄損や耐吸湿性が劣化することがあった。このような品質のばらつきは同一コイル内においても著しく、不均一部分は巻き直しラインを用いて除去しなければならないために、大きな歩留まりロスになる上、巻き直しラインの操業を圧迫して生産量を低下させる主因となっていた。
さらに、クロムを含まない被膜に関して、特許文献4にはクロム化合物の代りにホウ酸化合物を添加する方法が、特許文献5には酸化物コロイドを添加する方法が、特許文献6には金属有機酸塩を添加する方法が、それぞれ開示されているが、いずれの技術を用いても吸湿性並びに鉄損を改善する効果がコイル内で大きくばらつくために、完全な解決には至っていない。
特公昭56−52117号公報 特公昭53−28375号公報 特公昭57−9631号公報 特開2000−169973号公報 特開2000−169972号公報 特開2000−178760号公報
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、方向性電磁鋼板にクロムを含まない被膜を適用した場合にあっても、クロム含有被膜を形成した鋼板と同レベルの高い耐吸湿性と低い鉄損を実現するクロムレス被膜付き方向性電磁鋼板を、その製造方法に併せて提供することを目的とする。
発明者らは、前掲の特許文献3に記載された、クロムを含まない被膜において、耐吸湿性および鉄損の改善効果がばらつくのは、何らかの外乱要因があって所望の特性が達成できないものと考え、この原因を究明するために膨大な実験を実施した。その結果、最終仕上焼鈍後に被成されるセラミック質の下地膜におけるセラミック粒子の径(以下、セラミック粒子径とする)に応じて、ばらつきが生じることを見出した。以下に、この知見を得るに至った実験について述べる。
C:0.045mass%、Si:3.25mass%、Mn:0.07mass%およびSe:0.02mass%を含み、残部が鉄および不可避的不純物の成分組成になるスラブを、1380℃で30分間加熱後熱間圧延にて2.2mm厚とし、次いで950℃で1分間の熱延板焼鈍を施してから、1000℃で1分間の中間焼鈍を挟む冷間圧延にて0.23mmの最終板厚に仕上げたのち、850℃で2分間の脱炭焼鈍を施した。その後、鋼板表面に酸化マグネシウム100質量部、酸化チタン2質量部および硫酸ストロンチウム1質量部よりなる焼鈍分離剤を鋼板表面に両面で12g/m2塗布し、乾燥後に最終仕上焼鈍を施した。最終仕上焼鈍は、830℃で50時間の二次再結晶焼鈍に引続き、乾H2中で最高到達温度を1220℃とするとともに、1150℃以上での滞留時間を1時間から50時間までの範囲で種々に変更した。その後、未反応の焼鈍分離剤を除去した。
かくして得られた鋼板を、300mm×100mmのサイズにせん断し、SST(Single Sheet Tester)試験機で磁気測定を行った。同時に、鋼板の一部を採取して走査型電子顕微鏡(SEM)にて鋼板表面を観察し、最終仕上焼鈍中に形成されたフォルステライト質下地膜のセラミック粒子径を測定した。測定は、5000倍のSEM像を用いて、この中の粒子数をカウントし、観察面積からカウント数を割り算して平方根をとることにより求めた。
その後、リン酸酸洗を行った後にコーティング処理液として前掲の特許文献3に記載された、リン酸アルミニウム50質量部、コロイド状シリカ40質量部、ホウ酸5質量部および硫酸マンガン10質量部の配合割合になるコーティング剤を鋼板両面に乾燥重量で10g/m2塗布したのち、乾N2雰囲気にて800℃で2分間の焼付けを行った。なお、比較として、リン酸アルミニウム50質量部、コロイド状シリカ40質量部および無水クロム酸10質量部からなるコーティング液を用いて、同様に塗布そして焼付けを行った。
かくして得られた鋼板に対して、再びSST試験機にて磁気測定を行った。また、Pの溶出試験も行った。すなわち、P溶出試験は、50mm×50mmの試験片3枚を100℃の蒸留水中で5分間浸漬して煮沸することによって被膜表面からPを溶出させ、そのPを定量分析した。このPの溶出量は、被膜の水分による溶解のしやすさを判別する目安になり、耐吸湿性を評価できる。さらに、被膜の耐食性について、50mm×100mmの試験片を温度50℃および湿度50%の雰囲気に50時間暴露した後、鋼板に発生した錆を面積率として評価した。
以上の測定並びに評価結果について、錆発生率、磁気特性およびP溶出量とセラミック粒子径との関係で整理して、図1、図2および図3にそれぞれ示す。
まず、図1に示すように、クロム含有コーティングを用いると全体的に錆発生率は低く、錆発生率のセラミック粒子径Dの依存性も低い。ただし、セラミック粒子径Dが0.30μmを下回ったり1.5μmを上回ったりすると、錆発生率が若干劣化する傾向がある。
これに対してクロムを含まないコーティングでは、多くの領域で錆発生率が高くなるが、セラミック粒子径Dが0.25μm〜0.85μmの範囲では良好な耐食性を示し、クロム含有被膜に遜色ない性能が得られている。
これは、鉄損およびP溶出量についても同様であり、図2および3に示すとおり、クロムを含有しない被膜であっても下地のセラミック粒子径Dが0.25μm〜0.85μmの範囲内にあれば、クロムを含有する被膜の場合と同等の優れた鉄損および耐久性の改善効果が認められた。
以上の実験結果から、クロムを含有しない被膜を形成した場合、その下地膜のセラミック粒子径がクロムレス被膜の吸湿性や磁気特性および耐食性に及ぼす影響について、本発明者らは以下のとおり推察した。
まず、一般的にフォルステライト下地膜のセラミック粒子径が大きすぎると、地鉄との熱膨張率差に起因する応力が不均一な分布を持つようになり、部分的に下地膜が剥離する。このような状態で上塗りコーティングを施しても、下地膜の部分剥離により張力効果が弱くなったり雰囲気に対する保護性が低下して、吸湿性、耐食性および張力による鉄損改善効果がそれぞれ低下するものと考えられる。
逆に、セラミック粒子径が小さ過ぎる場合には、上記のような不均一な応力発生が解消されるものの、上塗りコーティング液によりセラミック粒子がエッチングされて一部が溶解するために、下地膜が部分的に薄くなる結果、やはり吸湿性、耐食性および張力効果が劣化してしまう。
以上のことから、優れた被膜特性を得るためには、下地膜におけるセラミック粒子径を適性化することが肝要である。
ここで、クロムを含有する被膜と含有しない被膜とを比較すると、クロムを含有する被膜はクロムがフリーのPをトラップするとともに、上塗りコーティングのSi,OおよびPの結合中に入り込むことにより、被膜を強固にして吸湿性および耐食性の改善や張力による鉄損の改善をもたらすのに対し、クロムを含有しない被膜を用いた場合は、被膜強化効果がクロム入り被膜よりも小さいため、下地膜における僅かな不均一でも耐食性等を損ねることになる。従って、クロムを含有しない被膜の場合は、その下地膜のセラミック粒子径をより微細にする必要がある。
また、従来用いられているクロムを含有するコーティング液を塗布すると、クロムは腐食性の強い元素でもあるため、下地膜に対するエッチング効果は、クロムを含有しないコーティング液よりも強い。従って、クロム含有コーティングを塗布した場合では、フォルステライト粒径が小さ過ぎると、よりエッチング効果が強くなりすぎて被膜の溶解が進行してしまうので、セラミック粒子径を大きくする必要があるが、クロムを含有しない場合は、上述の点から、むしろ、セラミック粒子径は小さい方が良いのである。。
以上の点から、クロムを含有する被膜とクロムを含有しない被膜とでは、その下地膜における最適なセラミック粒子径が異なり、クロムを含有しない被膜の方がより低粒子径側に最適値をもつことになる。
従来、クロムを含有しない被膜では、コイル内での品質のばらつきが大きくなるという問題があったが、上記した知見により、この品質がばらつく原因とその対策が、ここに明らかになった。すなわち、コイル内で品質が不均一になるのは、箱焼鈍中のコイル内部で温度履歴が相違することに起因する。コイル内巻き部では一般に外巻き部よりも昇温速度が低下して熱負荷がかからなくなり、その結果下地膜の粒径がコイル内巻き部よりも外巻き部で粗大になって、図1ないし3に示した適正範囲を外れてしまうのである。このように下地膜の粒径に差異が生じて適正範囲を外れてしまったため、粒径依存性の強いクロムレス被膜では品質にばらつきが生じるものと考えられる。従って、これを防ぐには、内巻きおよび外巻きでの温度履歴差をできるだけ解消するような温度設定パタンを組めばよいことがわかる。
本発明は、以上の知見に基いてなされたものであり、その要旨構成は、次のとおりである。
(1)鋼板の表面に、セラミック質の下地膜を介して、クロムを含まないリン酸塩系の張力付与被膜を有する方向性電磁鋼板であって、Si:2.0〜4.0mass%を含有する鋼スラブに熱間圧延を施し、1回又は中間焼鈍を挟む複数回の冷間圧延を施して最終板厚に仕上げ、その後一次再結晶焼鈍を施し、次いで鋼板表面にマグネシアを主成分とする焼鈍分離剤を塗布してから、コイル状にして箱焼鈍により最終仕上焼鈍を行ったのち、クロムを含まないリン酸塩系の張力付与被膜を形成する一連の工程において、前記最終仕上焼鈍時の鋼板温度を1150℃以上1250℃以下とするとともに、1150℃以上の温度域における滞留時間を3時間以上20時間以下、かつ1230℃以上での滞留時間を3時間以下として得られる、下地膜を構成するセラミック粒子の平均粒径がコイル全長にわたって0.25〜0.85μmであることを特徴とするクロムレス被膜付き方向性電磁鋼板。
(2)Si:2.0〜4.0mass%を含有する鋼スラブに熱間圧延を施し、1回又は中間焼鈍を挟む複数回の冷間圧延を施して最終板厚に仕上げ、その後一次再結晶焼鈍を施し、次いで鋼板表面にマグネシアを主成分とする焼鈍分離剤を塗布してから、コイル状にして箱焼鈍により最終仕上焼鈍を行ったのち、クロムを含まないリン酸塩系の張力付与被膜を形成する一連の工程によって、方向性電磁鋼板を製造するに当たり、最終仕上焼鈍時の鋼板温度を1150℃以上1250℃以下とするとともに、1150℃以上の温度域における滞留時間を3時間以上20時間以下、かつ1230℃以上での滞留時間を3時間以下としたことを特徴とするクロムレス被膜付き方向性電磁鋼板の製造方法。
本発明によれば、クロムを含まない被膜を適用した場合にあっても、磁気特性並びに被膜特性がともに優れた方向性電磁鋼板を安定して提供することができる。
次に、本発明の各構成要件を限定した理由について詳しく述べる。
まず、本発明が対象とする鋼板は、方向性電磁鋼用素材であれば、特に鋼種を問わない。この電磁鋼スラブを公知の方法で熱間圧延し、1回もしくは中間焼鈍を挟む複数回の冷間圧延により最終板厚に仕上げたのち、一次再結晶焼鈍を施し、焼鈍分離剤を塗布して最終仕上焼鈍を施す。このとき、最終仕上焼鈍後のセラミック質下地膜の粒径を0.25μm〜0.85μmの範囲内に制御することが肝要である。
この範囲に下地膜の粒径を制御するためには、まず成分としてSi:2.0〜4.0mass%を含有させる。すなわち、Si量が2.0mass%未満では鉄損が劣化し、一方4.0mass%を超えると圧延性が低下する。なお、残部は鉄および不可避的不純物の組成でよいが、必要に応じて、一次再結晶組織を改善して磁気特性を改善するためにCを0.02〜0.10mass%、インヒビターとしてAlNを用いる場合はAlを0.01〜0.03mass%及びNを0.006〜0.012mass%、インヒビターとしてMnSeまたはMnSを用いる場合はMnを0.04〜0.20mass%、SまたはSeを0.01〜0.03mass%、補助インヒビターとしてCu、Ni、Mo、Cr,Bi、SbおよびSnを単独もしくは複数で使用する場合はそれぞれ0.01〜0.2mass%、などを含有することができる。
かような成分組成になる鋼スラブを加熱後に熱間圧延を施し、1回又は中間焼鈍を挟む複数回の冷間圧延を施して最終板厚に仕上げ、次いで一次再結晶焼鈍を施す。その後、焼鈍分離剤を塗布した後最終仕上焼鈍を行う。最終仕上焼鈍は通常二次再結晶焼鈍とそれに引き続く純化焼鈍とからなり、焼鈍と同時に下地膜も形成されるが、上述のとおり焼鈍中の温度履歴差により下地膜中のセラミック粒子径は大きく異なるものとなる。
そこで、最終仕上焼鈍において、まず鋼板温度を1150℃以上1250℃以下とする。この温度が高すぎると下地膜のセラミック粒子径が大きくなりすぎ、低すぎるとセラミック粒子径が小さくなりすぎる。また、1150℃以上での滞留時間を3時間以上20時間以下、かつ1230℃以上での滞留時間を3時間以下に収める必要がある。これはコイル状にして箱焼鈍したときに不可避的に生じるコイル位置での温度履歴差に配慮したものである。すなわち、コイル内の熱伝導率や熱輻射条件に起因して、コイル内巻き部は外巻き部に比べて昇温速度が遅くなり、均熱時間が短くなる傾向にある。従って、単純に均熱温度および時間を特定するのみでは、必ずしもコイルの全長に亘って規定した条件を達成することができない。このような事情を踏まえて上記の通り滞留時間を限定したものであり、1150℃以上での滞留時間が3時間未満もしくは20時間を超えると、下地膜の粒径が微細もしくは粗大になりすぎる。さらに、1230℃以上での滞留時間が3時間を超えると、下地膜の粒径は粗大になりすぎる。
以上の工程を規制することにより、最終仕上焼鈍後の下地膜の粒径を0.25〜0.85μmの範囲内とした後、未反応の焼鈍分離剤を除去し、リン酸などにより酸洗してから、クロムを含まないリン酸塩系コーティング液を塗布する。
コーティング液成分としては、従来公知のもの、例えば前掲の特許文献3に記載された、コロイド状シリカとリン酸アルミニウム、ホウ酸及び硫酸塩からなるコーティング液、或いは前掲の特許文献4に記載されたホウ酸化含物を添加したもの、特許文献5に記載された酸化物コロイドを添加したもの、特許文献6に記載された金属有機酸塩を添加したもの等々、いずれのコーティング液をも使用可能である。また、これらコーティング液に、さらにシリカやアルミナ等の無機鉱物粒子を添加して、耐スティッキング性を改善することも可能である。コーティング液の目付け量は鋼板両面で4〜15g/m2とする。すなわち、4g/m2より少ないと層間抵抗が低下し、15g/m2より多いと電磁鋼板の占積率が低下するために、この範囲内とする。
このコーティング液を塗布、そして乾燥した後、焼付けを兼ねて平坦化焼鈍を行う。なお、平坦化焼鈍の条件は、特に限定されるものではないが、焼鈍温度は700℃〜950℃の温度範囲で2〜120秒程度の均熱時間とするのが望ましい。焼鈍温度が700℃未満であったり均熱時間が2秒より短いと、平坦化が不十分になる結果、形状不良のために歩留まりが低下し、一方温度が950℃を超えたり均熱時間が120秒より長いと、平坦化焼鈍の効果が強すぎる結果、クリープ変形して磁気特性が劣化するため、上記の範囲とすることが好ましい。
C:0.06mass%、Si:3.3mass%、Mn:0.07mass%、Se:0.02mass%、Al:0.03mass%およびN:0.008mass%の成分になる鋼スラブを、熱間圧延し、次いで1050℃で1分間の中間焼鈍を挟む2回の最終冷延を行い、その後850℃で2分間の脱炭焼鈍を施して得た板厚0.23mmの脱炭焼鈍板に、焼鈍分離剤としてマグネシア100質量部および酸化チタン6質量部を添加した粉体を塗布して、各種の温度パターンで最終仕上焼鈍を行い、その後未反応の焼鈍分離剤を除去することにより、下地膜の粒径が0.10〜1.60μmの鋼板を準備した。なお、下地膜の粒径は、鋼板表面の5000倍のSEM像を用いて、この像中の粒子数をカウントし、観察面積からカウント数を割り算して平方根をとることにより求めた。この下地膜の粒径は、以下の実施例2および3においても同様に測定した。
この鋼板をリン酸酸洗処理した後に、成分組成が乾固固形分比率で、コロイド状シリカ:50mass%、リン酸マグネシウム:40 mass%、硫酸マンガン:9.5 mass%および微粉末シリカ粒子:0.5 mass%になるコーティング液を鋼板両面で10g/m2の塗布量にて施した。なお、最終仕上焼鈍後の鋼板の磁束密度は、いずれもB8で1.92(T)であった。その後、850℃で30秒、乾N2雰囲気の焼付け処理を施した。
かくして得られた電磁鋼板の諸特性を調査した結果を、表1に示す。同表に示すように、前掲の特許文献1の記載に従って、単純に無水クロム酸の代わりに硫酸Mnを用いたのみの条件でも、下地膜の粒子径が0.25μm〜0.85μmの範囲にあれば、良好な表面特性並びに鉄損が得られることがわかる。
Figure 0004810820
実施例1と同一の方法で処理した、最終仕上焼鈍後の下地膜の粒径が0.40μm及び1.10μmで磁束密度がB8でいずれも1.92(T)の鋼板に、未反応の焼鈍分離剤を除去してから、リン酸酸洗処理を施した後に、成分組成が乾固固形分比率で、コロイド状シリカ:50 mass%、各種第1リン酸化合物:40 mass%、及び無機化合物:9.5 mass%、そして微粉末シリカ粒子:0.5 mass%からなるコーティング液を鋼板両面で10g/m2にて施し、次いで乾N2雰囲気の焼付け処理を850℃および30秒で施した。
かくして得られた鋼板の諸特性について調査した結果を、表2に示す。前掲の特許文献3ないし6に記載されたクロムを含まないいずれのコーティング液でも、下地膜の粒径を適正範囲に制御することにより、優れた磁気特性および被膜特性が得られている。
Figure 0004810820
実施例1と同様に脱炭焼鈍工程までを経た後、焼鈍分離剤を塗布したコイルを2分割し、2通りの温度設定パターンで箱焼鈍を行った。この際、熱電対を巻き込むことによりコイルの温度履歴を測定した。次いで、最終仕上焼鈍後にコイルをリン酸酸洗してから実施例1と同じコーティング液を塗布し、焼付けを兼ねて800℃で30秒のヒートフラットニング処理を施した。その後、コイルの内、中および外巻き部よりサンプルを採取し、磁気特性およびコーティング特性を評価した。この評価結果を、表3に示す。同表よりわかるように、温度パターンの設定方法を改善して、内巻き〜外巻きの全長で本発明範囲内の最終仕上焼鈍パターンを取ることにより、コイル全長で均一な磁気特性とコーティング特性が得られる。
Figure 0004810820
最終仕上焼鈍板の下地膜におけるセラミック粒子径と錆発生率との関係を示すグラフである。 最終仕上焼鈍板の下地膜におけるセラミック粒子径と鉄損の測定結果との関係を示すグラフである。 最終仕上焼鈍板の下地膜におけるセラミック粒子径と吸湿性との関係を示すグラフである。

Claims (2)

  1. 鋼板の表面に、セラミック質の下地膜を介して、クロムを含まないリン酸塩系の張力付与被膜を有する方向性電磁鋼板であって、Si:2.0〜4.0mass%を含有する鋼スラブに熱間圧延を施し、1回又は中間焼鈍を挟む複数回の冷間圧延を施して最終板厚に仕上げ、その後一次再結晶焼鈍を施し、次いで鋼板表面にマグネシアを主成分とする焼鈍分離剤を塗布してから、コイル状にして箱焼鈍により最終仕上焼鈍を行ったのち、クロムを含まないリン酸塩系の張力付与被膜を形成する一連の工程において、前記最終仕上焼鈍時の鋼板温度を1150℃以上1250℃以下とするとともに、1150℃以上の温度域における滞留時間を3時間以上20時間以下、かつ1230℃以上での滞留時間を3時間以下として得られる、下地膜を構成するセラミック粒子の平均粒子径がコイル全長にわたって0.25〜0.85μmであることを特徴とするクロムレス被膜付き方向性電磁鋼板。
  2. Si:2.0〜4.0mass%を含有する鋼スラブに熱間圧延を施し、1回又は中間焼鈍を挟む複数回の冷間圧延を施して最終板厚に仕上げ、その後一次再結晶焼鈍を施し、次いで鋼板表面にマグネシアを主成分とする焼鈍分離剤を塗布してから、コイル状にして箱焼鈍により最終仕上焼鈍を行ったのち、クロムを含まないリン酸塩系の張力付与被膜を形成する一連の工程によって、方向性電磁鋼板を製造するに当たり、最終仕上焼鈍時の鋼板温度を1150℃以上1250℃以下とするとともに、1150℃以上の温度域における滞留時間を3時間以上20時間以下、かつ1230℃以上での滞留時間を3時間以下としたことを特徴とするクロムレス被膜付き方向性電磁鋼板の製造方法。
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