しかしながら、丸め方向両端部同士を溶接すると、その分工程数が多くなる。このため、円筒部材の製造コストが高くなる。また、完成した円筒部材に溶接跡が残ってしまう。このため、見栄えが悪くなる。また、溶接の場合、溶接部分の一部が剥離することも考えられるため、溶接部分全域に亘って均等な接合力を確保しにくい。言い換えると、溶接部分の接合力にばらつきが生じやすい。
この点に鑑み、特許文献3には、三つの分割型と芯金とにより、予備丸め品から円筒部材を作製する方法が紹介されている。同文献記載の作製方法によると、予備丸め品の丸め方向両端部同士を突き合わせる際、充分な突き合わせ荷重を確保することができる。このため、溶接工程なしに、丸め方向両端部同士を接合することができる。
ところが、同文献記載の作製方法の場合、上記三つの分割型と芯金という特殊な成形型が必要となる。このため、設備コスト、延いては円筒部材の製造コストが高くなる。並びに、同文献記載の作製方法は、汎用性に欠ける。
本発明の筒部材成形方法および筒部材成形型および筒部材は、上記課題に鑑みて完成されたものである。したがって、本発明は、筒部材の製造コストが低く、汎用性に富んだ筒部材成形方法を提供することを目的とする。また、本発明は、汎用性に富んだ筒部材成形型を提供することを目的とする。また、本発明は、寸法精度が高く、見栄えが良く、周方向両端面同士の接合力にばらつきが生じにくい筒部材を提供することを目的とする。
(1)上記課題を解決するため、本発明の筒部材成形方法は、板材から筒部材を作製する筒部材成形方法であって、前記板材に曲げ加工を施すことにより、内径側端面を先端に持つ内径側端部と、該内径側端面よりも外径側に配置された外径側端面を先端に持つ外径側端部と、を備え、該内径側端部と該外径側端部との間に、該内径側端面と該外径側端面とを略同径上に配置しようとすると発現する干渉代を確保した略筒状のワークを作製するワーク作製工程と、該内径側端部および該外径側端部のうち少なくとも一方を、該干渉代を消費するように変形させることにより、該内径側端部と該外径側端部とを摺接させて、該内径側端面と該外径側端面とを突き合わせ、該干渉代の消費に基づき、周方向に作用するスプリングバック力を利用して、該内径側端面と該外径側端面とを接合し、筒状の前記筒部材を作製する両端面接合工程と、を有することを特徴とする。
ここで、「板材」とは、平板は勿論、ある程度曲げ加工が施された変形板をも含む。また、「筒部材」とは、筒軸方向全長に亘って同径のものの他、筒軸方向に径差を有するもの(例えばテーパ状のもの)も含む。
本発明の筒部材成形方法は、ワーク作製工程と両端面接合工程とを有する。ワーク作製工程においては、略筒状のワークを作製する。ワークの周方向一端には内径側端部が形成される。一方、ワークの周方向他端には外径側端部が形成される。内径側端部の先端に配置された内径側端面と、外径側端部の先端に配置された外径側端面とは、互いに径方向にずれて配置される。なお、径方向とは、ワークあるいは筒部材が円形以外の形状の場合は、筒軸に対して垂直方向をいう。内径側端部と外径側端部との間には、干渉代が確保されている。干渉代は、内径側端面と外径側端面とを略同径上に配置しようとする際、発現する。ここで、ワークの内径側端部と外径側端部との間に隙間が形成されていても、両端部のうち少なくとも一方を径方向に変形させることにより、両端部を接触させることが可能であれば、干渉代は発現する。
ここで、接触とは、例えば、内径側端部の外周面、内径側端面、当該外周面と内径側端面との境界のうちいずれか一つと、外径側端部の内周面、外径側端面、当該内周面と外径側端面との境界のうちいずれか一つと、が接触する場合をいう。
両端面接合工程においては、ワークから、目的物である筒部材を作製する。具体的には、互いに径方向にずれて配置されている内径側端面と外径側端面とを、突き合わせる。前述したように、内径側端部と外径側端部との間には、干渉代が確保されている。したがって、本工程においては、干渉代の分だけ、内径側端面および外径側端面のうち少なくとも一方を、目的物である筒部材の形状に則して、径方向および周方向に、押し込むことになる。この押し込み動作により、内径側端面と外径側端面とが、周方向に突き合わされる。内径側端面と外径側端面との間には、干渉代を消費した分だけ、端面同士を近づける方向に、スプリングバック力が発生する。このスプリングバック力により、端面同士の接合を確保する。
本発明の筒部材成形方法によると、必ずしも、特殊な成形型を用いる必要がない(勿論、本発明の筒部材成形方法を実現するのに好適な成形型を用いてもよい。この点については後述する。)。このため、従来から筒部材の作製に用いられてきた種々の成形機(例えば、汎用プレス成形機の順送り型、単発型など)を、そのまま(あるいは成形機に適宜アドオンして)用いることができる。したがって、本発明の筒部材成形方法は、汎用性に富んでいる。並びに、従来の成形機を利用することができる分、筒部材の製造コストが低くなる。
また、本発明の筒部材成形方法によると、両端面接合工程後において、改めて両端面を溶接する溶接工程を設定する必要がない。この点においても、筒部材の製造コストを低くすることができる。また、溶接工程不要な分だけ、工程数を少なくすることができる。
好ましくは、前記両端面接合工程において、前記内径側端部の外周面と前記外径側端部の内周面とが摺接しない方がよい。こうすると、内径側端面と外径側端面との突き合わせが容易になる。
好ましくは、前記板材のビッカース硬さは、Hv100以上である方がよい。Hv100以上としたのは、Hv100未満の場合、内径側端面と外径側端面とを接合するのに充分なスプリングバック力が得られにくいからである。好ましくは、前記板材のビッカース硬さは、Hv500以下である方がよい。Hv500以下としたのは、Hv500を超える場合、曲げ加工の際の加工性が極端に悪くなるからである。さらに、好ましくは、前記板材のビッカース硬さは、Hv300以下である方がよい。Hv300以下としたのは、Hv300を超える場合、曲げ加工の際の加工性が悪くなるからである。
好ましくは、前記板材はばね材である方がよい。ばね材としては、みがき特殊鋼板(S60C、SK5)、ステンレス鋼板(SUS300系、600系)などが挙げられる。ばね材に本発明の筒部材成形方法を用いると、比較的加工が困難なばね材から、寸法精度の高い筒状ばねを作製することができる。
より好ましくは、前記ばね材は、高硬度ばね材である方がよい。高硬度ばね材としては、耐熱合金鋼板(マルエージング、インコネルなど)などが挙げられる。高硬度ばね材に本発明の筒部材成形方法を用いると、とりわけ曲げ加工が困難な高硬度ばね材から、寸法精度の高い筒状ばねを作製することができる。
(2)好ましくは、前記板材は、一端部と、該一端部に対向する他端部と、を持ち、前記ワーク作製工程は、該板材の該一端部を除く部位に丸曲げ加工を施すことにより、該一端部から前記外径側端部を形成し、該他端部から前記内径側端部を形成する一端部未処理工程である構成とする方がよい。
つまり、本構成は、一端部を残して板材に丸曲げ加工を施すことにより、他端部に対して、一端部を、相対的に外径側に配置するものである。本構成によると、ワーク作製の際、一端部を変形させる必要がない。このため、比較的簡単に、外径側端部と内径側端部とを形成することができる。また、丸曲げ加工の際、一端部と他端部とが干渉しにくい。
(3)好ましくは、上記(2)の構成において、前記外径側端部の周方向長さLと肉厚tとの比L/tは、7以上に設定されている構成とする方がよい。L/tを7以上としたのは、7未満の場合、内径側端面と外径側端面とを突き合わせる際のスプリングバック力が小さくなるからである。
また、前記外径側端部の周方向長さLと肉厚tとの比L/tは、13以下に設定されている構成とする方がよい。L/tを13以下としたのは、13を超える場合、一端部と他端部との径方向の位置ずれが大きくなり、両端面接合工程において、外径側端面と内径側端面との突き合わせが困難になるからである。
(4)好ましくは、前記板材は、一端部と、該一端部に対向する他端部と、を持ち、前記ワーク作製工程は、該一端部と、該板材の該一端部を除く部位と、に互いに反対方向の丸曲げ加工を施すことにより、該一端部から前記外径側端部を形成し、該他端部から前記内径側端部を形成する一端部逆曲げ工程である構成とする方がよい。本構成によると、丸曲げ加工の際、一端部と他端部とが干渉しにくい。また、両端面接合工程において、外径側端面と内径側端面との突き合わせが容易になる。
また、好ましくは、前記板材は、一端部と、該一端部に対向する他端部と、を持ち、前記ワーク作製工程は、該他端部と、該板材の該他端部を除く部位と、に同方向、異曲率の丸曲げ加工を施すことにより、曲率の大きい該他端部から前記内径側端部を形成し、該他端部よりも曲率の小さい該一端部から前記外径側端部を形成する異曲率丸曲げ工程である構成とする方がよい。
本構成の場合、両端面接合工程において、曲率の大きい内径側端部を外径方向に変形させることにより、内径側端面と外径側端面とを突き合わせる。本構成によると、丸曲げ加工の際、一端部と他端部とが干渉しにくい。
(5)好ましくは、さらに、前記両端面接合工程の前に、前記内径側端部の先端の外周面、および前記外径側端部の先端の内周面のうち、少なくとも一方に、面取り部を配置する面取り工程を有する構成とする方がよい。
本構成によると、両端面接合工程において、外径側端面と内径側端面との突き合わせが容易になる。面取り工程は、両端面接合工程の直前に実施してもよい。また、ワーク作製工程の前に実施してもよい。あるいは、ワーク作製工程中に実施してもよい。
好ましくは、前記面取り部は、平面状とする方がよい。こうすると、面取り部を容易に形成することができる。また、好ましくは、前記面取り部は、曲面状とする方がよい。こうすると、面取り部が相手側の端部(外径側端部あるいは内径側端部)に摺接する際の接触面積を小さくすることができる。このため、摺接時の摩擦力が小さくなる。
(6)好ましくは、前記両端面接合工程は、前記内径側端部および前記外径側端部のうち少なくとも一方に、径方向から荷重を印加することにより、前記内径側端面と前記外径側端面との径方向位置関係を逆転する両端面逆転工程と、該荷重を除去することで発生する径方向に作用するスプリングバックを利用して、該両端面逆転工程後に該内径側端部と該外径側端部との間に確保された周方向に重複するオーバーラップ代を消費し、該内径側端面と該外径側端面とを突き合わせる両端面突き合わせ工程と、を有する構成とする方がよい。
本構成の両端面接合工程は、両端面逆転工程と両端面突き合わせ工程とを有している。両端面逆転工程においては、荷重を印加することにより、内径側端面と外径側端面との径方向の相対的な位置関係を入れ替える。具体的には、外径側端面を内径側端面の内径側に、言い換えると内径側端面を外径側端面の外径側に、相対移動させる。
両端面突き合わせ工程においては、両端面逆転工程の際に印加していた荷重を、除去する。荷重の除去により、荷重が印加されていた端部(内径側端部および外径側端部のうち少なくとも一方)は、スプリングバックにより、径方向(内径側端部の場合は内径方向、外径側端部の場合は外径方向)に弾性変形する。言い換えると、スプリングバックにより、内径側端面と外径側端面とは、互いに接近する。本工程では、このように、スプリングバックを利用して、内径側端面と外径側端面とを突き当てる。本構成によると、比較的簡単に内径側端面と外径側端面とを接合することができる。
(7)好ましくは、上記(6)の構成において、前記両端面逆転工程後において、前記外径側端部と前記内径側端部との間に、前記ワークの中心角1°以上、周方向に重複するオーバーラップ代が確保されている構成とする方がよい。オーバーラップ代を1°以上としたのは、1°未満の場合、両端面突き合わせ工程後において、所望のスプリングバック力を確保しにくいからである。
また、好ましくは、上記(6)の構成において、前記両端面逆転工程後において、前記外径側端部と前記内径側端部との間に、前記ワークの中心角4°以下、周方向に重複するオーバーラップ代が確保されている構成とする方がよい。オーバーラップ代を4°以下としたのは、4°を超える場合、両端面逆転工程において、内径側端面と外径側端面との径方向位置関係を逆転しにくいからである。
(8)また、上記課題を解決するため、本発明の筒部材成形型は、上記(6)の構成の前記両端面逆転工程に用いられ、内径側端面を先端に持つ内径側端部と、該内径側端面よりも外径側に配置された外径側端面を先端に持つ外径側端部と、を備え、該内径側端部と該外径側端部との間に、該内径側端面と該外径側端面とを略同径上に配置しようとすると発現する干渉代を確保した略筒状のワークから、筒状の筒部材を作製する筒部材成形型であって、型締めの際、前記外径側端面を、前記干渉代を消費して前記内径側端面のさらに内径側にまで押し込む外周面用凸部と、該外周面用凸部に並設され、型締めの際、該外径側端面と共に該内径側端面が内径側に押し込まれるのを抑制する外周面用凹部と、を持つ外周面成形型を備えることを特徴とする。
本発明の筒部材成形型は、外周面成形型を備えている。外周面成形型は、外周面用凸部と外周面用凹部とを備えている。外周面用凹部は、外周面用凸部に対して、ワーク外径側に凹んでいる。
型締めの際、外周面用凸部は、ワークの外径側端部を内径方向に押し込む。並びに、外周面用凹部は、外径側端部と共に内径側端部が押し込まれるのを抑制する。型開きを行うと、スプリングバックにより、外径側端部が外径方向に弾性変形する。そして、内径側端面と外径側端面とが突き当たる。
本発明の筒部材成形型によると、比較的簡単に、外径側端面と内径側端面との径方向の位置関係を入れ替えることができる。延いては、比較的簡単に、外径側端面と内径側端面とを突き当てることができる。また、本発明の筒部材成形型は、従来の成形機(例えば、汎用プレス成形機の順送り型、単発型など)にアドオンしやすい。すなわち、従来の成形機の外周面成形型を本発明の筒部材成形型に交換することにより、従来の成形機をそのまま使用することができる。このため、本発明の筒部材成形型は、汎用性に富んでいる。なお、前述したように、本発明の筒部材成形方法は、本発明の筒部材成形型以外の一般的な成形型を用いても、勿論、実施することができる。
(9)好ましくは、上記(8)の構成において、さらに、型締めの際、前記外周面用凸部により押し込まれた前記外径側端面が進入する内周面用凹部と、該内周面用凹部に並設され、型締めの際、該外径側端面と共に前記内径側端面が該内周面用凹部に押し込まれるのを前記外周面用凹部と協働して抑制する内周面用凸部と、を持つ内周面成形型を備える構成とする方がよい。
本構成の筒部材成形型は、外周面成形型と内周面成形型とを備えている。内周面成形型は、内周面用凹部と内周面用凸部とを備えている。内周面用凸部は、内周面用凹部に対して、ワーク外径側に突出している。
型締めの際、内周面用凹部には、外周面用凸部により押し込まれた外径側端面が逃げ込む。内周面用凸部は、外周面用凹部と協働して、外径側端面と共に内径側端面が内周面用凹部に逃げ込むのを抑制する。
本構成によると、より確実に、外径側端面と内径側端面との径方向の位置関係を入れ替えることができる。延いては、より確実に、外径側端面と内径側端面とを突き当てることができる。また、本構成は、従来の成形機(例えば、汎用プレス成形機の順送り型、単発型など)にアドオンしやすい。すなわち、従来の成形機の外周面成形型を本構成の外周面成形型に、従来の成形機の内周面成形型を本構成の内周面成形型に、それぞれ交換することにより、従来の成形機をそのまま使用することができる。このため、本構成は、汎用性に富んでいる。
(10)また、上記課題を解決するため、本発明の筒部材は、周方向一端部と、該周方向一端部に周方向に接合された周方向他端部と、を備えてなる円筒状の筒部材であって、前記周方向一端部の端面と前記周方向他端部の端面とは、周方向に作用するスプリングバック力を利用して接合されており、該周方向一端部の先端の外周面および該周方向他端部の先端の内周面のうち、少なくとも一方には、面取り部が形成されていることを特徴とする。
本発明の筒部材の周方向一端部の端面と周方向他端部の端面とは、スプリングバック力を利用して、接合されている。このため、周方向両端面(周方向一端部の端面と周方向他端部の端面)の境界に、溶接跡が発現しない。したがって、本発明の筒部材は、見栄えが良い。また、溶接跡が無い分、寸法精度が高い。
また、前述したように、両端面が溶接により接合されている場合、接合力にばらつきが生じやすい。この点、本発明の筒部材によると、スプリングバック力を利用して、周方向両端面が接合されている。このため、周方向両端面の接合力に、ばらつきが生じにくい。
好ましくは、筒部材は、軸方向に荷重が加わり、側周壁に複数の孔が配置された円筒ばねとする方がよい。円筒ばねは、例えば、予め孔が開設された板材に丸曲げ加工を施すことにより作製される。板材の裁断状況によっては、周方向一端部の端面あるいは周方向他端部の端面に、裁断により一部切除された孔が発現してしまう。当該孔は端面に開口するC字状を呈している。
ここで、両端面が溶接により接合されていると、孔のC字開口端と相手側の端面との溶接が剥離した場合、円筒ばねに加わる軸方向の荷重により、C字開口端は相手側の端面を引っ掻くように摺動する。このため、C字開口端付近に応力が集中しやすい。
この点、本発明の筒部材を、当該円筒ばねとして具現化すると、孔のC字開口端が端面に発現しても、スプリングバック力により、当該C字開口端は、相手側の端面に、常時圧接されている。このため、C字開口端付近に応力が集中しにくい。
本発明によると、筒部材の製造コストが低く、汎用性に富んだ筒部材成形方法を提供することができる。また、本発明によると、汎用性に富んだ筒部材成形型を提供することができる。また、本発明によると、寸法精度が高く、見栄えが良く、周方向両端面同士の接合力にばらつきが生じにくい筒部材を提供することができる。
以下、本発明の筒部材成形方法および筒部材成形型および筒部材の実施の形態について説明する。
<第一実施形態>
本実施形態は、本発明の筒部材成形方法を、ピエゾアクチュエータ用の円筒ばねの作製に用いたものである。まず、本実施形態の筒部材成形方法の構成について説明する。本実施形態の筒部材成形方法は、板材作製工程と、面押し工程と、一端部未処理工程と、両端面逆転工程と、両端面突き合わせ工程と、を有している。なお、面押し工程は、本発明の面取り工程に含まれる。以下、工程毎に詳しく説明する。
まず、板材作製工程について説明する。本工程においては、帯材から板材を作製する。まず、マルエージング鋼製の帯材に、所定のパターンで、多数の矩形孔を穿設する。次いで、帯材を、所定の寸法に剪断する。このようにして、板材を作成する。
次に、面押し工程について説明する。本工程においては、板材の対向する一対の端部に面取り部を形成する。図1に、本工程後の板材の斜視図を示す。図2に、図1の円Ia内の拡大図を示す。図3に、図1の円Ib内の拡大透過図を示す。
図1に示すように、板材2は、薄い矩形平板状を呈している。板材2には、多数の矩形孔20が規則的に配置されている。図2に示すように、板材2の一端部21の先端上面には、平面状の面取り部22(説明の便宜上ハッチングを施す)が形成されている。図3に示すように、板材2の他端部23(説明の便宜上透過して示す)の先端下面には、平面状の面取り部24(説明の便宜上ハッチングを施す)が形成されている。すなわち、面取り部22と面取り部24とは、板材2の長手方向断面において、対角上に配置されている。
図4に、面押し工程で一端部に面取り部を形成するために用いられる金型の断面図(型締め状態)を示す。図に示すように、金型25aは、鋼製のパンチ250aと鋼製のダイ251aとを備えている。パンチ250aの型面は、面取り部22と型対称の面形状を呈している。一端部21は、上下動するパンチ250aにより押圧される。この押圧により、一端部21の先端上面に、平面状の面取り部22が形成される。
図5に、面押し工程で他端部に面取り部を形成するために用いられる金型の断面図(型締め状態)を示す。図に示すように、金型25bは、鋼製のパンチ250bと鋼製のダイ251bとを備えている。ダイ251bの型面は、面取り部24と型対称の面形状を呈している。他端部23は、上下動するパンチ250bにより押圧される。この押圧により、他端部23の先端下面に、平面状の面取り部24が形成される。
次に、一端部未処理工程について説明する。本工程においては、板材2の一端部21以外の部位に、第一段階〜第五段階からなる合計五段階の丸曲げ加工を施し、略筒状のワークを作製する。
第一段階においては、他端部23だけに小さな曲率を付与する。図6に、本工程の第一段階で用いられる金型の断面図を示す。図に示すように、金型3aは、鋼製のパンチ30aと鋼製のダイ31aとを備えている。板材2は、パンチ30aとダイ31aとの間に介挿されている。パンチ30aがダイ31aに圧接することにより型締めが行われる。型締めにより、板材2の他端部23に、所望の曲率より大きな曲率で曲げ加工を施す。
第二段階においては、他端部23に第一段階よりも大きな曲率を付与する。並びに、一端部21の根本にも、第一段階と同じ曲率を付与する。図7に、本工程の第二段階で用いられる金型の断面図を示す。図に示すように、金型3bは、鋼製のパンチ30bと鋼製のダイ31bとを備えている。型締めにより、板材2の他端部23に、第一段階と比較して、大きな曲率の曲げ加工を施す。並びに、一端部21の根本にも曲げ加工を施す。ただし、一端部21自体は、平板状のままである。
第三段階においては、一端部21を除く他端部23以外の部位にも、第一段階と同じ曲率を付与する。図8に、本工程の第三段階で用いられる金型の断面図を示す。図に示すように、金型3cは、鋼製のパンチ30cと鋼製のダイ31cとを備えている。パンチ30cは、一端部21と他端部23との隙間から、板材2の内径側に対して、出し入れされる。第三段階においては、板材2の他端部23以外の部位にも、曲げ加工を施す。ただし、一端部21自体は、平板状のままである。
第四段階においては、主に、板材2の一端部21側に、さらに曲げ加工を施す。まず、本段階で用いられる成形機の構成について説明する。図9に、本工程の第四段階で用いられる成形機の上死点位置における断面図を示す。図に示すように、成形機4は、上型ホルダ40と下型ホルダ41とを備えている。上死点位置においては、上型ホルダ40と下型ホルダ41とは、所定間隔だけ離間して、上下方向に対向配置されている。上型ホルダ40は、上死点位置〜下死点位置間を、上下方向に移動可能である。
上型ホルダ40は、上型ベース400と一対のカムドライバ401a、401bとを備えている。カムドライバ401a、401bは、鋼製であって、板状を呈している。カムドライバ401a、401bは、水平方向に対向して配置されている。カムドライバ401aの下端部の内側には、平面取り状に駆動面402aが形成されている。また、カムドライバ401aの下端部には、下方に開口するU字溝403aが形成されている。同様に、カムドライバ401bの下端部の内側には、平面取り状に駆動面402bが形成されている。また、カムドライバ401bの下端部には、下方に開口するU字溝403bが形成されている。
上型ベース400は、鋼製であって、直方体状を呈している。上型ベース400は、一対のカムドライバ401a、401b間を架橋するように、配置されている。上型ベース400と一対のカムドライバ401a、401bとは、四つのボルト404により、固定されている。
下型ホルダ41は、下型ベース410と、支持台411と、一対のバックアッププレート412a、412bと、一対のカムスライド413a、413bと、一対のシャフト414a、414bと、一対のリターンばね415a、415bと、芯金416と、を備えている。
下型ベース410は、鋼製であって、板状を呈している。支持台411は、鋼製であって、直方体状を呈している。支持台411は、下型ベース410の上面中央に搭載されている。支持台411の上面中央には、支持リブ417が突設されている。
芯金416は、鋼製であって、円柱状を呈している。芯金416の外周面には、軸方向に延びる段差が形成されている。芯金416には、前記第三段階を経た板材2が環装されている。これら芯金416および板材2は、支持リブ417に搭載されている。
バックアッププレート412a、412bは、鋼製であって、板状を呈している。バックアッププレート412a、412bは、支持台411同様に、下側ベース410の上面に搭載されている。並びに、バックアッププレート412a、412bは、支持台411の水平方向両側に配置されている。バックアッププレート412a、412bと、支持台411とは、二つのボルト418により、固定されている。バックアッププレート412aには、水平方向に延びるシャフト挿入孔419aが穿設されている。同様に、バックアッププレート412bには、水平方向に延びるシャフト挿入孔419bが穿設されている。
シャフト414a、414bは、鋼製であって、長軸ボルト状を呈している。シャフト414aは、水平方向外側から内側に向かって、シャフト挿入孔419aに、挿入されている。シャフト414aの挿入方向端部は、シャフト挿入孔419aから突出している。同様に、シャフト414bは、水平方向外側から内側に向かって、シャフト挿入孔419bに、挿入されている。シャフト414bの挿入方向端部は、シャフト挿入孔419bから突出している。
カムスライド413aは、鋼製であって、直方体状を呈している。カムスライド413aは、シャフト414aの挿入方向端部に、螺着されている。カムスライド413aの水平方向外面の上端部には、平面取り状に従動面420aが形成されている。従動面420aは、駆動面402aと上下方向に対向している。一方、カムスライド413aの水平方向内面には、型面421aが形成されている。同様に、カムスライド413bは、鋼製であって、直方体状を呈している。カムスライド413bは、シャフト414bの挿入方向端部に、螺着されている。カムスライド413bの水平方向外面の上端部には、平面取り状に従動面420bが形成されている。従動面420bは、駆動面402bと上下方向に対向している。一方、カムスライド413bの水平方向内面には、型面421bが形成されている。型面421aと型面421bとは、板材2を挟んで、水平方向両側に対向配置されている。
リターンばね415aは、鋼製であって、コイル状を呈している。リターンばね415aは、シャフト414aに環装されている。リターンばね415aは、シャフト414aの頭部とバックアッププレート412aとの間に配置されている。リターンばね415aは、カムスライド413aを水平方向外側に付勢している。同様に、リターンばね415bは、鋼製であって、コイル状を呈している。リターンばね415bは、シャフト414bに環装されている。リターンばね415bは、シャフト414bの頭部とバックアッププレート412bとの間に配置されている。リターンばね415bは、カムスライド413bを水平方向外側に付勢している。
続いて、本段階で用いられる成形機の動きについて説明する。図10に、本工程の第四段階で用いられる成形機の上死点位置〜下死点位置移行中における断面図を示す。図に示すように、上型ホルダ40が降下すると、駆動面402aと従動面420aとが摺接する。並びに、駆動面402bと従動面420bとが摺接する。摺接により、上型ホルダ40に印加された荷重の向きが、下方向から水平方向内側に変換される。このため、カムスライド413aは、リターンばね415aの付勢力に抗して、水平方向内側に移動する。カムドライバ401aの降下に伴い、シャフト414aのカムスライド413a根本部分は、U字溝403a内に徐々に収容される。同様に、カムスライド413bは、リターンばね415bの付勢力に抗して、水平方向内側に移動する。カムドライバ401bの降下に伴い、シャフト414bのカムスライド413b根本部分は、U字溝403b内に徐々に収容される。
図11に、本工程の第四段階で用いられる成形機の下死点位置における断面図を示す。図に示すように、下死点位置においては、板材2は、水平方向左右両側から、型面421a、421bにより、押圧されている。このようにして、型締めが行われる。
図12に、図11の円XI内の拡大図を示す。図中、細線は、型締め前の板材2の形状を示す。図に示すように、板材2の一端部21側(左側)は、型面421aと芯金416との間に挟持される。並びに、板材2の他端部23側(右側)は、型面421bと芯金416との間に挟持される。ここで、芯金416の半径は、段差416aを境に、左側が小さく、右側が大きく、それぞれ設定されている。板材2の一端部21側には、第一段階と同じ曲率が付与される。このように、本段階においては、主に、板材2の一端部21側(ただし一端部21を除く)に、さらなる曲げ加工を施す。
図11に戻って、型締め後は、上型ホルダ40が上昇し、前出図10に示す移行状態を介して、前出図9に示す上死点位置に復帰する。この際、カムスライド413aは、リターンばね415aの付勢力により、水平方向外側に移動する。並びに、カムスライド413bは、リターンばね415bの付勢力により、水平方向外側に移動する。このようにして、型開きが行われる。
第五段階においては、主に、板材2の他端部23側に、さらに曲げ加工を施す。第五段階で用いられる成形機と第四段階で用いられる成形機との相違点は、芯金の形状およびカムスライドの形状のみである。したがって、ここでは、相違点についてのみ説明する。
図13に、本工程の第五段階で用いられる成形機の下死点位置における断面図を示す(上死点位置および上死点〜下死点移行中における状態については、前出図9、図10を参照)。なお、図11と対応する部位については、同じ符号で示す。
図に示すように、下死点位置においては、板材2は、水平方向左右両側から、カムスライド513aの型面521aと、カムスライド513bの型面521bと、により、押圧されている。このようにして、型締めが行われる。
図14に、図13の円XIII内の拡大図を示す。図中、細線は、型締め前の板材2の形状を示す。図に示すように、板材2の一端部21側(左側)は、型面521aと芯金516との間に挟持される。並びに、板材2の他端部23側(右側)は、型面521bと芯金516との間に挟持される。ここで、芯金516の半径は、段差516aを境に、左側が大きく、右側が小さく、それぞれ設定されている。板材2の他端部23側には、一端部21側と同じ曲率が付与される。このように、本段階においては、主に、板材2の他端部23側に、さらなる曲げ加工を施す。型締め後は、第四段階と同様の動きにより、型開きが行われる。こうして、上記第一段階〜第五段階からなる一端部未処理工程が終了し、ワークが完成する。
次に、両端面逆転工程について説明する。本工程においては、ワークの外径側端部の外径側端面と、内径側端部の内径側端面と、の径方向位置関係を逆転する。本工程で用いられる成形機と、一端部未処理工程の第四段階で用いられる成形機と、の相違点は、芯金の形状およびカムスライドの形状および上型ベースの形状のみである。したがって、ここでは、相違点についてのみ説明する。
図15に、本工程で用いられる成形機の上死点位置における断面図を示す。なお、図9と対応する部位については、同じ符号で示す。図に示すように、上型ベース600の下面中央からは、下方に向かって、パンチ600aが突設されている。パンチ600aは、本発明の外周面成形型に含まれる。
図16に、図15の円XVa内の拡大図を示す。図に示すように、パンチ600aの下面には、段差600dを境に、外周面用凸部600bと、外周面用凹部600c、とが形成されている。外周面用凸部600bは、外周面用凹部600cよりも、下方に突出している。
図15に戻って、カムスライド613aは、シャフト414aに螺着されている。カムスライド613aの水平方向内面には、型面621aが形成されている。同様に、カムスライド613bは、シャフト414bに螺着されている。カムスライド613bの水平方向内面には、型面621bが形成されている。
型面621aと型面621bとの間には、ワーク7および芯金616が介挿されている。芯金616は、鋼製であって、円柱状を呈している。芯金616は、本発明の内周面成形型に含まれる。ワーク7は、略円筒状を呈している。ワーク7は、芯金616に環装されている。ワーク7は、下方から支持リブ417に支持されている。
図17に、図15の円XVb内の拡大図を示す。図18に、図17の円XVII内の拡大図を示す。これらの図に示すように、芯金616の上面には、軸方向に延びる段差616dを境に、内周面用凸部616bと、内周面用凹部616c、とが形成されている。なお、段差616dは、筒軸Oから真上に延びる垂線よりも、右側に配置されている。内周面用凸部616bは、目的物である円筒ばねの内周面と略同径に設定されている。内周面用凸部616bは、外周面用凹部600cと上下方向に対向している。内周面用凹部616cは、内周面用凸部616bよりも、下方に没入している。内周面用凹部616cは、外周面用凸部600bと上下方向に対向している。
ワーク7は、外径側端部71と内径側端部73とを備えている。ワーク7の内径Rは、R=4.325mmに設定されている。前出図14に示すように、外径側端部71は、板材2の一端部21から形成される。並びに、内径側端部73は、板材2の他端部23から形成される。
外径側端部71は、平板状を呈している。外径側端部71の内周面には、面取り部72が配置されている。前出図2に示すように、面取り部72は、面取り部22から形成される。また、外径側端部71の先端には、面取り部72に屈曲して連なる外径側端面75が配置されている。また、外径側端部71の周方向長さL(=4.358mm)と肉厚t(=0.42mm)との比L/tは、L/t=約10.376に設定されている。
内径側端部73は、曲板状を呈している。内径側端部73の外周面には、面取り部74が配置されている。前出図3に示すように、面取り部74は、面取り部24から形成される。また、内径側端部73の先端には、面取り部74に屈曲して連なる内径側端面76が配置されている。内径側端面76は、筒軸Oから真上に延びる垂線に対して、略同位置に配置されている。つまり、内径側端面76は、段差616dから左側に突出している。
ところで、仮に、ワーク7の外径側端部71を、内径方向に変形させると、仮想形状7’(図中点線で示す)に示すように、面取り部72と面取り部74とが接触することになる。すなわち、外径側端部71と内径側端部73との間に、ワーク7の中心角(筒軸Oを中心とする周方向回転角)所定量だけ周方向に重なる干渉代IFが発現する。
図15に戻って、上死点から下死点に移行する際は、上型ホルダ40が下降する。また、駆動面402aと従動面420aとの摺接により、カムスライド613aが、水平方向内側に移動する。同様に、駆動面402bと従動面420bの摺接により、カムスライド613bが、水平方向内側に移動する。このため、ワーク7に対して、上方からパンチ600aが、左方からカムスライド613aが、右方からカムスライド613bが、それぞれ接近する。
図19に、本工程で用いられる成形機の下死点位置移行直前における部分拡大断面図を示す。なお、図19は、前出図18と対応している。図に示すように、ワーク7の外径側端部71は、パンチ600aの外周面用凸部600bにより下方に押圧される。このため、外径側端部71は、外周面用凸部600bの形状に沿いながら、内径方向に変形、移動する。
ここで、外径側端部71と内径側端部73との間には、前出図17、図18に示す干渉代IFが設定されている。このため、外径側端部71の面取り部72は、内径側端部73の面取り部74に、摺接する。面取り部72、74は、パンチ600aによる荷重の印加方向(図中白抜き矢印で示す)に対して、略45°になるように形成されている。このため、面取り部72と面取り部74との摺接を介して、内径側端部73には、右方向の分力が発生する。したがって、外径側端部71は、干渉代IFを消費しながら、かつ内径側端部73を右方向に押し出しながら、下方に移動する。
この際、面取り部72と面取り部74との間に作用する摩擦力により、外径側端部71と共に、内径側端部73も下方に移動しようとする。しかしながら、内径側端部73の上方には、外周面用凹部600cが確保されている。並びに、内径側端部73の下方には、内周面用凸部616bが確保されている。このため、内径側端部73は、外径側端部71と分離して、外周面用凹部600cと内周面用凸部616bとの間のスペースに待避する。
図20に、本工程で用いられる成形機の下死点位置における断面図を示す。図に示すように、下死点位置においては、ワーク7は、水平方向左右両側から型面621a、621bにより、上方からパンチ600aにより、それぞれ押圧されている。このようにして、型締めが行われる。
図21に、図20の円XX内の拡大図を示す。図に示すように、外径側端部71は、外周面用凸部600bと内周面用凹部616cとの間に挟持されている。一方内径側端部73は、外周面用凹部600cと内周面用凸部616bとの間のスペースに待避している。すなわち、外径側端面75が内径側端面76のさらに内径側にまで押し込まれている。また、外径側端部71と内径側端部73との間には、ワーク7の中心角約2°だけ周方向に重複するオーバーラップ代OLが確保されている。なお、オーバーラップ代OLの周方向長さは0.133mmである。
図22に、図20のワークおよび芯金の拡大図を示す。図に示すように、外径側端部71は、ワーク7の中心角θ=約57°に亘って配置されている。なお、この中心角θ(=約57°)は、中心角α(=55°)と、オーバーラップ代OL(=約2°)と、の和である。また、外径側端部71自体は、外径側端部71の弧中心O’を中心に、中心角α’=67.25°に亘って配置されている。また、外径側端部71自体の内径R’は、R’=3.5mmに設定されている。
このように、本工程では、本工程前において内径側端面76の外径側に配置されていた外径側端面75を、内径側端面76の内径側まで移動させる。すなわち、外径側端面75と内径側端面76との径方向位置関係を逆転する。
次に、両端面突き合わせ工程について説明する。本工程においては、外径側端面75と内径側端面76とを突き合わせる。本工程は、前工程と連続して行われる。前出図20において、上型ホルダ40を上昇させると(型開きを行うと)、パンチ600aも上昇する。このため、型締め時に外周面用凸部600bに押圧されていた外径側端部71が、解放される。したがって、外径側端部71は、弾性ひずみの分だけ、スプリングバックにより復動する。図23に、本工程で用いられる成形機の上死点位置における部分拡大断面図を示す。なお、図23は、前出図21と対応している。図に示すように、外径側端部71は、内径側端部73の高さまで、復動する。そして、外径側端面75と内径側端面76とが、突き合わされる。このようにして、ワーク7から、目的物である円筒ばね1が完成する。
ここで、前出図17、図18に示すように、仮想形状7’においては、外径側端面75と内径側端面76との間に、干渉代IFが発現する。これに対して、円筒ばね1においては、干渉代IFが消費され、外径側端面75と内径側端面76とが接合されている。外径側端面75と内径側端面76との接合部分には、干渉代IFの分だけ、周方向長さが短くなる方向に、スプリングバック力が作用している。このスプリングバック力により、外径側端面75と内径側端面76とは、互いに接近する方向に付勢されている。
図24に、円筒ばね1の斜視図を示す。図に示すように、円筒ばね1は、略真円筒状を呈している。円筒ばね1には、矩形孔10(板材2の矩形孔20に相当)が、規則的に配置されている。また、円筒ばね1の周方向一端部11(ワーク7の外径側端部71に相当)内周面には、面取り部12(ワーク7の面取り部72に相当)が形成されている。並びに、円筒ばね1の周方向他端部13(ワーク7の内径側端部73に相当)外周面には、面取り部14(ワーク7の面取り部74に相当)が形成されている。端面15(ワーク7の外径側端面75に相当)と端面16(ワーク7の内径側端面76に相当)とは、前記スプリングバック力により、周方向に接合されている。
なお、円筒ばね1は、以下のようにして、ピエゾ素子と組み付けられる。まず、円筒ばね1の内径側に、短軸円柱状のピエゾ素子(図略)を複数配置する。ピエゾ素子は、円筒ばね1の筒軸に沿って、直列に並べられる。ここで、円筒ばね1の軸方向長さは、直列配置されたピエゾ素子群の軸方向長さよりも、若干短く設定されている。この状態で、円筒ばね1の上下開口を、各々カップ部材(図略)により、封止する。ピエゾ素子群は、一対のカップ部材により(円筒ばね1の付勢力により)軸方向両側から圧縮された状態で、円筒ばね1内径側に収容されることになる。このようにして、ピエゾアクチュエータが完成する。
ピエゾアクチュエータは、以下のようにして用いられる。ピエゾ素子群に電圧を印加すると、円筒ばね1の付勢力に抗して、ピエゾ素子群の軸方向長さが伸張する。一方、電圧を除去すると、ピエゾ素子群の軸方向長さは復元する。この際、円筒ばね1の付勢力は、当該ピエゾ素子群の復元を援助する。このように、円筒ばね1は、ピエゾ素子群の伸縮変形を援助し、駆動指令に対する応答性を高めている。
次に、本実施形態の筒部材成形方法および筒部材成形型および筒部材の作用効果について説明する。本実施形態の筒部材成形方法によると、従来から用いられてきたカムスライド方式のプレス成形機をそのまま使用することができる。具体的には、例えばカムスライド413a、413b、513a、513b、613a、613bや、芯金416、516、616や、パンチ600aなどを、従来のカムスライド方式のプレス成形機に、適宜アドオンすることにより、本実施形態の筒部材成形方法を実施することができる。このため、汎用性に富んでいる。並びに、従来の成形機を利用することができる分、円筒ばね1の製造コストが低くなる。
また、本実施形態の筒部材成形方法によると、両端面突き合わせ工程後において、改めて端面15、16を溶接する溶接工程を設定する必要がない。この点においても、円筒ばね1の製造コストを低くすることができる。また、溶接工程不要な分だけ、工程数を少なくすることができる。
また、本実施形態の筒部材成形方法によると、前出図18に示すような、比較的小さい干渉代IFが設定されている。このため、前出図19に示すように、両端面逆転工程において、内径側端部73の面取り部74と、外径側端部71の面取り部72と、の摺接距離が短い。
また、本実施形態の筒部材成形方法によると、前出図21に示すように、ワーク7の中心角約2°だけ周方向に重複するオーバーラップ代OLが確保されている。このため、両端面突き合わせ工程において、内径側端面76と外径側端面75とを突き合わせる際、内径側端部73の内周面と外径側端部71の外周面とが、摺接しにくい。また、両端面突き合わせ工程後において、内径側端面76と外径側端面75とを、所望のスプリングバック力により接合することができる。
また、本実施形態の板材2のビッカース硬さは、Hv300〜350である。このため、内径側端面76と外径側端面75とを接合するのに充分なスプリングバック力を確保しやすい。
また、マルエージング鋼製の板材2は、曲げ加工が困難であるにもかかわらず、本実施形態の筒部材成形方法を用いると、寸法精度および真円度の高い円筒ばね1を作製することができる。
また、本実施形態の筒部材成形方法によると、ワーク作製工程として、一端部未処理工程を実施している。このため、板材2の一端部21に丸曲げ加工を施す必要がない。このため、比較的簡単に、ワーク7を作製することができる。
また、本実施形態の筒部材成形方法によると、外径側端部71の周方向長さLと肉厚tとの比L/tが、L/t=約10.376に設定されている。このため、外径側端部71と内径側端部73との間の径方向の位置ずれが、比較的大きい。したがって、一端部未処理工程の第四段階(前出図12参照)、第五段階(前出図14参照)において、一端部21と他端部23とが互いに干渉しにくい。
また、本実施形態の筒部材成形方法によると、板材作製工程と一端部未処理工程との間に、面押し工程が実施される。面押し工程により面取り部72、74を配置すると、前出図19に示すように、両端面逆転工程において、印加される荷重の方向を、上下方向から水平方向(ワーク7の円周方向)に、変換させやすい。このため、外径側端部71を内周面用凹部616cに没入させやすくなる。
また、本実施形態の筒部材成形方法によると、面取り部72、74が平面状を呈している。このため、面押し工程において、比較的簡単に、面取り部72、74を形成することができる。
また、本実施形態の筒部材成形方法は、両端面接合工程として、両端面逆転工程と両端面突き合わせ工程とを実施している。このため、前出図21、図23に示すように、荷重を印加、除去することにより、外径側端部71に上方向のスプリングバックを起こすことができる。そして、当該スプリングバックを利用することにより、比較的簡単に内径側端面76と外径側端面75とを接合することができる。
また、本実施形態の筒部材成形型のパンチ600aは、外周面用凸部600bと外周面用凹部600cとを備えている。並びに、芯金616は、内周面用凸部616bと内周面用凹部616cとを備えている。このため、比較的簡単に、外径側端面75と内径側端面76との径方向の位置関係を入れ替えることができる。延いては、比較的簡単に、外径側端面75と内径側端面76とを突き当てることができる。
また、本実施形態の筒部材成形型は、従来の成形機にアドオンしやすい。すなわち、従来の成形機のパンチを本実施形態のパンチ600aに、従来の成形機の芯金を本実施形態の芯金616に、それぞれ交換することにより、従来の成形機をそのまま使用することができる。このため、本実施形態の筒部材成形型は、汎用性に富んでいる。
また、前出図23、図24に示すように、本実施形態の円筒ばね1の周方向一端部11の端面15と周方向他端部13の端面16とは、スプリングバック力を利用して、接合されている。このため、端面15、16の境界に、溶接跡が発現しない。したがって、本実施形態の円筒ばね1は、見栄えが良い。また、溶接跡が無い分、寸法精度が高い。
また、端面15、16が溶接により接合されている場合、接合力にばらつきが生じやすい。この点、本実施形態の円筒ばね1によると、スプリングバック力を利用して、端面15、16が接合されている。このため、端面15、16の接合力に、ばらつきが生じにくい。
また、前出図24に示すように、円筒ばね1の端面15、16の境界には、矩形孔10が半分切除されてできたC字孔10a、10bが発現している。仮に、端面15、16が溶接により接合されていると、溶接が剥離した場合、円筒ばね1に加わる軸方向の荷重により、C字孔10aの開口端は端面16を、C字孔10bの開口端は端面15を、それぞれ引っ掻くように摺動する。このため、C字孔10a、10b付近に応力が集中しやすい。
この点、本実施形態の円筒ばね1によると、スプリングバック力により、C字孔10aの開口端は端面16に、C字孔10bの開口端は端面15に、それぞれ常時圧接されている。このため、C字孔10a、10b付近に応力が集中しにくい。
<第二実施形態>
本実施形態と第一実施形態との相違点は、一端部未処理工程のみである。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。本実施形態の一端部未処理工程においては、板材の一端部以外の部位に、第一段階、第二段階からなる曲げ加工を施し、略筒状のワークを作製する。
第一段階においては、複数の金型を順番に用いることにより、段階的に、平板状の板材を略W字状に成形する。図25に、本実施形態の一端部未処理工程の第一段階で用いられる金型の断面図を示す。なお、図に示すのは、第一段階で用いられる複数の金型のうち、最後に用いられる金型である。図に示すように、金型8aは、鋼製のパンチ80aと鋼製のダイ81aとを備えている。パンチ80aの型面およびダイ81aの型面は、共に略W字状を呈している。板材2は、パンチ80aとダイ81aとの間に介挿されている。パンチ80aがダイ81aに圧接することにより型締めが行われる。ところで、パンチ80aおよびダイ81aのW形状一端部には、平面区間Fが区画されている。当該平面区間Fには、板材2の一端部21が配置される。一方、板材2の他端部23には、所定の曲げ加工が施される。
第二段階においては、略W字状の板材2から略円筒状のワークを作製する。図26に、本実施形態の一端部未処理工程の第二段階で用いられる金型の断面図(型締め前状態)を示す。図に示すように、金型8bは、鋼製の芯金80bと鋼製のダイ81bとを備えている。芯金80bは、円柱状を呈している。ダイ81bの型面は、半円周面状を呈している。板材2は、芯金80bとダイ81bとの間に介挿されている。芯金80bにより、板材2のW字中央の山部を押圧すると、板材2は、一端部21と他端部23とが接近するように(ちょうど開口が閉じるように)変形する。
図27に、本実施形態の一端部未処理工程の第二段階で用いられる金型の断面図(型締め状態)を示す。なお、図17と対応する部位については、同じ符号で示す。図に示すように、芯金80bが所定位置まで下降すると、略円筒状のワーク7が完成する。一端部21から外径側端部71が形成される。並びに、他端部23から内径側端部73が形成される。
本実施形態の筒部材成形方法は、第一実施形態の筒部材成形方法と、同様の作用効果を有する。また、本実施形態の筒部材成形方法によると、従来の成形機の金型に、前出図25に示す平面区間Fを設けるだけで、一端部未処理工程を実施することができる。このため、本実施形態の筒部材成形方法は、汎用性に富んでいる。
<第三実施形態>
本実施形態と第一実施形態との相違点は、一端部未処理工程のみである。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。本実施形態の一端部未処理工程においては、板材の一端部以外の部位に、ロール曲げを施し、略筒状のワークを作製する。
図28に、本実施形態の一端部未処理工程で用いられるロール成形機の断面図を示す。ロール成形機8cは、共に回転可能な剛体ロール80cと弾性体ロール81cとを備えている。
剛体ロール80cは、鋼製であって円柱状を呈している。弾性体ロール81cは、鋼製のコア810と、ウレタンゴム製のロール本体811と、を備えている。コア810は、円柱状を呈している。ロール本体811は、コア810に環装されている。板材2は、これら剛体ロール80cと弾性体ロール81cとの間に、他端部23を先頭に挿入される。
図29に、本実施形態の一端部未処理工程で用いられるロール成形機の板材加工中における断面図を示す。図に示すように、板材2が剛体ロール80cに沿って湾曲することにより、板材2に丸曲げ加工が施される。板材2は、一端部21のみを残して、剛体ロール80cと弾性体ロール81cとの間に挿入される。
図30に、本実施形態の一端部未処理工程で用いられるロール成形機の板材加工後における断面図を示す。なお、図17と対応する部位については、同じ符号で示す。図に示すように、外径側端部71を除く全体(内径側端部73含む)に丸曲げ加工が施されている。このようにして、略円筒状のワーク7が完成する。
本実施形態の筒部材成形方法は、第一実施形態の筒部材成形方法と、同様の作用効果を有する。また、本実施形態の筒部材成形方法によると、比較的簡単にワーク7を作製することができる。また、本実施形態の筒部材成形方法によると、従来のロール成形機をそのまま用いて、一端部未処理工程を実施することができる。このため、本実施形態の筒部材成形方法は、汎用性に富んでいる。
<第四実施形態>
本実施形態と第一実施形態との相違点は、一端部未処理工程のみである。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。本実施形態の一端部未処理工程においては、板材の一端部以外の部位に、カール曲げを施し、略筒状のワークを作製する。
図31に、本実施形態の一端部未処理工程で用いられる金型の断面図(型締め前状態)を示す。金型8dは、鋼製のパンチ80dと鋼製のダイ81dとを備えている。パンチ80dの型面は、半円周面状を呈している。板材2は、パンチ80dとダイ81dとの間に介挿されている。他端部23は、パンチ80dに接近して配置されている。一方、一端部21は、パンチ80dから離間して配置されている。パンチ80dがダイ81dに挿入されると、パンチ80dの型面により、板材2が、他端部23を先頭に、徐々に丸められていく。パンチ80dが下死点に到達すると、板材2の一端部21を除く部位全体に、丸曲げ加工が施される。
図32に、本実施形態の一端部未処理工程で用いられる金型の断面図(型締め状態)を示す。なお、図17と対応する部位については、同じ符号で示す。図に示すように、外径側端部71を除く全体(内径側端部73含む)に丸曲げ加工が施されている。このようにして、略円筒状のワーク7が完成する。
本実施形態の筒部材成形方法は、第一実施形態の筒部材成形方法と、同様の作用効果を有する。また、本実施形態の筒部材成形方法によると、比較的簡単にワーク7を作製することができる。また、本実施形態の筒部材成形方法によると、従来のカール成形機をそのまま用いて、一端部未処理工程を実施することができる。このため、本実施形態の筒部材成形方法は、汎用性に富んでいる。
<第五実施形態>
本実施形態と第一実施形態との相違点は、面取り部の形状のみである。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。図33に、本実施形態の両端面逆転工程で用いられる成形機の上死点位置における部分拡大断面図を示す。なお、図18と対応する部位については同じ符号で示す。
図に示すように、外径側端部71の先端内周面には、面取り部72aが形成されている。面取り部72aは、曲面状を呈している。一方、内径側端部73の先端外周面には、面取り部74aが形成されている。面取り部74aは、曲面状を呈している。これら面取り部72a、74aは、面押し工程(前出図4、図5参照)により、形成される。
図34に、本実施形態の両端面逆転工程で用いられる成形機の下死点位置移行直前における部分拡大断面図を示す。なお、図19と対応する部位については同じ符号で示す。図に示すように、ワーク7の外径側端部71は、パンチ600aの外周面用凸部600bにより下方に押圧される。このため、外径側端部71の面取り部72aは、内径側端部73の面取り部74aに、摺接する。ここで、面取り部72a、74aは、共に曲面状を呈している。したがって、面取り部72a、74aは、互いに線接触する。また、面取り部72a、74aの線接触を介して、内径側端部73には、右方向の分力が発生する。したがって、外径側端部71は、干渉代を消費しながら、かつ内径側端部73を右方向に押し出しながら、下方に移動する。
本実施形態の筒部材成形方法は、第一実施形態の筒部材成形方法と、同様の作用効果を有する。また、本実施形態の筒部材成形方法によると、面取り部72a、74aが、共に曲面状を呈している。このため、両端面逆転工程において、面取り部72a、74a同士は線接触する。したがって、摺動時の摩擦力が小さくなる。このように、本実施形態の筒部材成形方法によると、外径側端面75と内径側端面76との径方向位置関係の逆転が容易になる。また、本実施形態の円筒ばねは、面取り部が目立ちにくい。このため、見栄えがよい。
<第六実施形態>
本実施形態と第一実施形態との相違点は、一端部未処理工程の代わりに、一端部逆曲げ工程が実施されている点である。並びに、板材および円筒ばねに、面取り部が形成されていない点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
一端部逆曲げ工程においては、一端部未処理工程において平板状であった板材の一端部に、一端部以外の部位とは逆方向の、丸曲げ加工を施す。丸曲げ加工は、上記第一〜第五実施形態にて説明したプレス成形、ロール曲げ、カール曲げなどにより行う。
図35に、本実施形態の両端面逆転工程で用いられる成形機の上死点位置における部分拡大断面図を示す。なお、図17と対応する部位については同じ符号で示す。図に示すように、外径側端部71aには、ワーク7の外径側端部71a以外の部位とは逆方向の丸曲げ加工が施されている。
図36に、本実施形態の両端面逆転工程で用いられる成形機の下死点位置移行直前における部分拡大断面図を示す。なお、図19と対応する部位については同じ符号で示す。図に示すように、ワーク7の外径側端部71aは、パンチ600aの外周面用凸部600bにより下方に押圧される。この際、外径側端部71aは、徐々に内周面用凹部616cの形状に沿うように、変形する。このため、外径側端部71aの外径側端面75a付近が、徐々に反り上がってくる。言い換えると、外径側端面75aと内径側端面76aとの交角が、徐々に開いてくる。したがって、外径側端部71aの内周面の先端Aが、内径側端部73aの内径側端面76aに、線接触するようになる。先端Aは、内径側端面76aを下方に向かって摺動する。このように、外径側端部71aの内周面の先端Aが、内径側端部73aの内径側端面76aに、接触する場合も、本発明の「干渉代」が発現する。
本実施形態の筒部材成形方法は、第一実施形態の筒部材成形方法と、同様の作用効果を有する。また、本実施形態の筒部材成形方法によると、外径側端部71aの内周面の先端Aが、内径側端部73aの内径側端面76aに、線接触する。このため、摺動時の摩擦力が小さくなる。したがって、本実施形態の筒部材成形方法によると、外径側端面75aと内径側端面76aとの径方向位置関係の逆転が容易になる。また、本実施形態の円筒ばねは、面取り部が無い。このため、見栄えがよい。
<その他>
以上、本発明の筒部材成形方法および筒部材成形型および筒部材の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
例えば、上記実施形態においては、予め帯材から剪断された板材2を用いたが、図37に示すように、連結部90によりつながった複数の板材2を、成形機に通過させることにより、曲げ加工を施してもよい。そして、円筒ばね作製後に、連結部90を切除してもよい。また、図38に示すように、板材2の表面に凹凸91を付与してもよい。
また、上記実施形態においては、本発明の筒部材成形方法をピエゾアクチュエータ用の円筒ばね1に用いたが、圧電センサ用の円筒ばねや、金型プランジャ用の円筒ばねなどに用いてもよい。また、円筒ばねに限らず、ステアリングロック機構用のロックホルダ、各種パイプ、各種カラーなど、あらゆる筒部材に用いてもよい。
また、筒部材の形状は、真円形でも、楕円形でもよい。楕円形の場合、全周が曲面状でもよく、また、例えば陸上競技のトラックのように、一部平面が介在していてもよい。また、筒部材の形状は、円形に限らず、例えば長方形、五角形などの多角形でもよい。
また、ワーク作製工程後のワーク7の外径側端部71と内径側端部73とは、径方向に接触していてもよい。また、上記実施形態における成形機は、機械的に連動してなくてもいい。例えば、油圧シリンダ式であってもよい。また、上記実施形態における金型は、鋼製に限らず、例えばゴム製、セラミック製であってもよい。また、両端面突き合わせ工程における外径側端部71のスプリングバック量は、例えば、パンチ600aの荷重値の変更などにより、適宜調整することができる。また、干渉代IF(前出図17、図18参照)や、オーバーラップ代OL(前出図21、図22参照)は、板材2の硬度などにより、適宜変更することができる。
また、板材2が比較的スプリングバック量の小さい材料(例えば低硬度の材料)から形成されている場合や、パンチ600aの荷重値が大きく外径側端部71断面内の応力分布の不均質を是正できる場合は、両端面逆転工程は不要である。この場合は、両端面逆転工程が不要な分、工程数を減らすことができる。また、前出図21に示すパンチ600aの外周面用凸部600b、外周面用凹部600c、段差600dが不要になる。並びに、芯金616の内周面用凸部616b、内周面用凹部616c、段差616dが不要になる。つまり、従来の金型をそのまま使うことができる。
また、上記実施形態においては、中心角α(前出図22参照)を55°に設定したが、中心角αは特に限定しない。好ましくは、中心角αは、40°以上とする方がよい。中心角αを40°以上としたのは、40°未満の場合、両端面突き合わせ工程後において、所望のスプリングバック力を確保しにくいからである。
また、好ましくは、中心角αは、70°以下とする方がよい。中心角αを70°以下としたのは、70°を超える場合、両端面逆転工程において、内径側端面76と外径側端面75との径方向位置関係を逆転しにくいからである。
1:円筒ばね(筒部材)、10:矩形孔、10a:C字孔、10b:C字孔、11:周方向一端部、12:面取り部、13:周方向他端部、14:面取り部、15:端面、16:端面、2:板材、20:矩形孔、21:一端部、22:面取り部、23:他端部、24:面取り部、25a:金型、25b:金型、250a:パンチ、250b:パンチ、251a:ダイ、251b:ダイ、3a:金型、3b:金型、3c:金型、30a:パンチ、30b:パンチ、30c:パンチ、31a:ダイ、31b:ダイ、31c:ダイ、4:成形機、40:上型ホルダ、400:上型ベース、401a:カムドライバ、401b:カムドライバ、402a:駆動面、402b:駆動面、403a:U字溝、403b:U字溝、404:ボルト、41:下型ホルダ、410:下型ベース、411:支持台、412a:バックアッププレート、412b:バックアッププレート、413a:カムスライド、413b:カムスライド、414a:シャフト、414b:シャフト、415a:リターンばね、415b:リターンばね、416:芯金、416a:段差、417:支持リブ、418:ボルト、419a:シャフト挿入孔、419b:シャフト挿入孔、420a:従動面、420b:従動面、421a:型面、421b:型面、513a:カムスライド、513b:カムスライド、516:芯金、516a:段差、521a:型面、521b:型面、600:上型ベース、600a:パンチ(外周面成形型)、600b:外周面用凸部、600c:外周面用凹部、600d:段差、613a:カムスライド、613b:カムスライド、616:芯金(内周面成形型)、616b:内周面用凸部、616c:内周面用凹部、616d:段差、621a:型面、621b:型面、7:ワーク、7’:仮想形状、71:外径側端部、71a:外径側端部、72:面取り部、72a:面取り部、73:内径側端部、73a:内径側端部、74:面取り部、74a:面取り部、75:外径側端面、75a:外径側端面、76:内径側端面、76a:内径側端面、8a:金型、8b:金型、8c:ロール成形機、8d:金型、80a:パンチ、80b:芯金、80c:剛体ロール、80d:パンチ、81a:ダイ、81b:ダイ、81c:弾性体ロール、81d:ダイ、810:コア、811:ロール本体、90:連結部、91:凹凸91、A:先端、F:平面区間、IF:干渉代、L:外径側端部の周方向長さ、O:筒軸、O’:弧中心、OL:オーバーラップ代、R:内径、R’:内径、t:外径側端部の肉厚、α:中心角、α’:中心角、θ:中心角。