JP4733851B2 - アメーバ殺滅剤、アメーバの抑制方法及びレジオネラ属菌の除菌方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は冷凍装置や空調施設の循環冷却水や24時間風呂の循環温水などの、冷温水系あるいは蓄熱水系などにおけるアメーバを殺滅するアメーバ殺滅剤、それを用いたアメーバ抑制方法、さらに、これら水系中でアメーバと共存しているレジオネラ属菌の除菌方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
水系に生存するレジオネラ属菌はレジオネラ症の病原菌として知られているが、空調施設の循環冷却水などで繁殖し、空調機器を通して一時に大量の感染者を出すなどの問題が生じる可能性があり、その除菌のために様々な方法が提案されてきた。
【0003】
しかしながら、これらレジオネラ属菌に対して実験室での実験では充分な効果を有する薬剤であっても、実際の水系では必ずしも充分な効果が得られないことが多かった。
【0004】
実験室と実環境水系との薬効の違いについて詳細に検討したところ、実環境水系においては共存するアメーバの抑制、殺滅を行うことがレジオネラ属菌の除菌に欠かせないことが判ってきた。
【0005】
これまでレジオネラ属菌は実環境水中ではアメーバをはじめとする細菌捕食性原生動物に寄生し、増殖することが知られていたが、従来のレジオネラ属菌の除菌技術はこのレジオネラ属菌の増殖における生態学的特性に着目していない点が問題だったのである。
【0006】
すなわち、詳細な検討の結果、レジオネラ属菌は、それ自体単独では生存できない環境下においても、アメーバが共存している場合には、生存・増殖が可能であることが判った。
【0007】
ここで、レジオネラ属菌とアメーバが好適に生育している水系にレジオネラ属菌用の殺菌剤を添加した場合を考えると、その殺菌剤がアメーバの生育に影響を与えないものであれば、アメーバは普通に活動しているので、ある確率でレジオネラ属菌を捕食する。アメーバに捕食されたレジオネラ属菌は、アメーバの体内では水系内の殺菌剤の作用を受けることなく、また、アメーバに消化されることもなくその体内で大量に増殖し、やがて宿主であるアメーバを破裂させて水系に出てくる。水系に出たレジオネラ属菌は、殺菌剤に曝されることにより徐々に死滅して行くが、死ぬ前にアメーバに捕食されたレジオネラ属菌はアメーバの体内で再び増殖することになる。
【0008】
従って、このような水系で、レジオネラ属菌を効果的に除菌するためには、レジオネラ属菌の増殖の場であるアメーバ自体を抑制することが必要となるのである。このようなレジオネラ属菌の宿主となるアメーバとして、アカントアメーバ(Acanthamoeba)、ネグレリア(Naegleria)、ハルトマネラ(Hartmannella)、バンネラ(Vannella)等が挙げられる。
【0009】
さらに、最近、アメーバはレジオネラ属菌の宿主となるのみならず、それ自体が経鼻的に脳に侵入し致死性の高い髄膜脳炎を引き起こしたり、あるいは主としてコンタクトレンズ使用者の角膜炎の原因になるなど、病原性を有することが知られるようになってきた。ここで、髄膜脳炎を引き起こすアメーバとしてアカントアメーバ、ネグレリア、バラムチア(Balamuthia)が、角膜炎を引き起こすアメーバとしてアカントアメーバがそれぞれ知られている。
【0010】
このようにさまざまな問題を引き起こす可能性のあるアメーバは、河川、湖沼、池などに、あるいはビルなどの空調設備の循環冷却水系、循環式浴槽等の人工環境水中に生息している。
【0011】
これらアメーバの抑制や殺滅に有効な方法、あるいはアメーバとレジオネラ属菌とが共存しているときの有効なレジオネラ属菌の除菌方法を、本発明者等は特願平10−167593号などで提案を行ってきた。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、最近の詳細な検討の結果、これら技術ではアメーバの抑制が不充分であることが判った。
すなわち、アメーバは環境が変化して通常の栄養体での生存に不適となった場合には、嚢子(シスト)となり、再度、栄養体での生存に適した環境に戻ったときに栄養体となる。しかしながら、従来技術ではこの嚢子状態のアメーバには充分な効果が得られないことが判った。
【0013】
本発明は、上記した従来の問題点を改善する、すなわち、嚢子状態のアメーバに対しても低濃度の添加でも短時間で効果があるアメーバ殺滅剤、及び、そのアメーバ殺滅剤を用いる水系中のアメーバの抑制方法、および、嚢子状態のアメーバと共存している場合であっても有効なレジオネラ属菌の除菌方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、レジオネラ属菌を含む細菌の殺菌剤あるいは殺藻剤として特開平6−321716号公報、特開平6−345790号公報、特開平7−80469号公報、特開平8−40811号公報、特開平10−273408号公報、或いは特開平11−71213号公報などで、或いは、鉄系金属の腐食防止剤として本発明者等によって特開2000−169979公報で、それぞれ提案されているホスホニウム化合物がアメーバ抑制に関し有効であり、さらに通常の薬品に対して強い耐性を示すアメーバの嚢子の殺滅にもアメーバ種を選ばずに有効であることを見出し、本発明に至った。
【0015】
本発明のアメーバ殺滅剤は上記課題を解決するため、請求項1に記載の通り、トリ−n−ブチル−n−ヘキサデシル−ホスホニウム塩、トリ−n−ブチル−n−ドデシル−ホスホニウム塩より選択された少なくとも1種のホスホニウム化合物を有効成分として含有するアメーバ殺滅剤であり、栄養体のアメーバのみならずアメーバの嚢子に対しても有効なものである。
【0016】
本発明の水系中のアメーバの抑制方法は、請求項2に記載の通り、アメーバが生存している水系に対して、トリ−n−ブチル−n−ヘキサデシル−ホスホニウム塩、トリ−n−ブチル−n−ドデシル−ホスホニウム塩より選択された少なくとも1種のホスホニウム化合物を添加する水系中のアメーバの抑制方法である。
【0017】
さらに、本発明のアメーバと共存している水系中のレジオネラ属菌の除菌方法は請求項3に記載の通り、アメーバとレジオネラ属菌が共存している水系に対して、トリ−n−ブチル−n−ヘキサデシル−ホスホニウム塩、トリ−n−ブチル−n−ドデシル−ホスホニウム塩より選択された少なくとも1種のホスホニウム化合物を該水系中のアメーバ数が100mL当たり10個未満となる濃度になるように添加することによりレジオネラ属菌を除菌する構成を有し、少ない添加量で、水系中から効果的にレジオネラ属菌を除去することができ、その水系の生態系への影響を最小限に抑制することができ、また、薬剤の使用量を最適化することができるので、ランニングコスト、あるいは、廃水処理の点で有利である。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明のアメーバ殺滅剤において、ホスホニウム化合物は一般式(I)で示される化合物であり、用いるホスホニウム化合物が、トリ−n−ブチル−n−ヘキサデシル−ホスホニウム塩、トリ−n−ブチル−n−ドデシル−ホスホニウム塩より選択された少なくとも1種の化合物であると、入手しやすい上、水系への添加量が少量でも添加開始後速やかに高い効果(アメーバ殺滅効果、あるいは、レジオネラ属菌の除菌効果)を得ることができ、なかでもトリ−n−ブチル−n−ヘキサデシル−ホスホニウム塩であると特に効果が高い。このようなホスホニウム化合物の塩としてはフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、過塩素酸イオン等の無機酸陰イオン、ギ酸イオン、酢酸イオン、蓚酸イオン、安息香酸イオン、フタル酸イオン、メチルもしくはジメチルリン酸エステルイオン、エチルもしくはジエチルリン酸エステルイオン、ブチルもしくはジブチルリン酸エステルイオン、イソプロピルもしくはジイソプロピルリン酸エステルイオン、2−エチルヘキシルもしくはジ(2−エチルヘキシル)リン酸エステルイオン、メタンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン等の有機物陰イオンとからなる塩を挙げることができる。等とからなる塩を挙げることができる。
【0019】
【化1】
[(R)3R’P+]nXn- ……(I)
(但し、式中Rは炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を、R’は炭素数12〜18のアルキル基または炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基をそれぞれ示す。Xn-は無機酸陰イオンまたは有機酸陰イオンを、nは1または2または3をそれぞれ示す。なお、上記式(I)中の3つのRは必ずしも同じものである必要はない)
【0020】
本発明においてホスホニウム化合物の対象水系への添加量は、その水系の微生物による汚れ具合や薬品の添加方法、水系中の滞留時間等を加味して、添加する。すなわち、本発明で用いるホスホニウム化合物の効果は高いため、通常5〜100mg/Lの範囲で添加する。しかし、アメーバ数が特に少ないときには1mg/L以下の添加量でも充分な場合があり、また、極めて汚染された水系などで迅速に効果を得たい場合には1000mg/Lなどの比較的高濃度の添加をおこなっても良い。
【0021】
添加方法としては特に制限はないが、初回の添加以降、数日から一ヶ月おき位に間歇的に添加するか、あるいは水系中の薬剤の濃度を一定濃度以上に維持するように、例えば対象水系への補給水に対して連続的に添加することにより充分に高い効果を得ることができる。
【0022】
特に、レジオネラ属菌の除菌を目的とする場合には、水中のアメーバ数を100mL当たり10個未満にできる程度に添加すれば、速やかに効果が現れ、また、以降水中のアメーバ数を100mL当たり10個未満に維持するように管理すれば、その水系のレジオネラ属菌の菌数を充分に低いレベルに保つことができる。このように水中のアメーバ数を適正量に制御するように添加することで、過量の添加を防止することができ、ランニングコストの低減、水系の生態系の攪乱防止、排水処理への負担防止などの効果を得ることができる。
【0023】
本発明においてホスホニウム化合物の対象水系への添加に際しては、他の成分、例えばアクリル酸系重合体、マレイン酸系重合体、メタクリル酸系重合体、スルホン酸系重合体、リン酸系重合体、イタコン酸系重合体、イソブチレン系重合体、ホスホン酸、ホスフィン酸、あるいはこれらの水溶性塩などのスケール防止剤、例えば5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン等のイソチアゾロン系化合物、例えばグルタルアルデヒド、フタルアルデヒド等のアルデヒド類、例えば過酸化水素、ヒドラジン、塩素系殺菌剤(次亜塩素酸ナトリウム等)、臭素系殺菌剤及びヨウ素系殺菌剤、更にジチオール系化合物、メチレンビスチオシアネートなどのチオシアネート系化合物、ヨーネンポリマー、四級アンモニウム塩系化合物などのスライム防止剤、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン等のアミン系化合物、例えばニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸等のアミノカルボン酸系化合物、例えばグルコン酸、クエン酸、シュウ酸、ギ酸、酒石酸、フィチン酸、琥珀酸、乳酸等の有機カルボン酸など、各種の水処理剤を併用することができ、場合によってはホスホニウム化合物にこれらの水処理剤を予め配合した水処理剤として使用してもよい。
【0024】
さらに、対象水系が金属と接する場合には防食剤であるトリルトリアゾール、ベンゾトリアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、モリブデン酸及びその塩、亜鉛及びその塩、リン酸及びその塩、亜硝酸及びその塩、亜硫酸及びその塩などから選ばれる1種あるいはそれ以上の成分を添加しても良い。
【0025】
【実施例】
以下に本発明の実施例について説明する。
(大腸菌塗布寒天培地の調製)
細菌検査用寒天を濃度が1.5%(w/v) となるようにイオン交換水に溶かし、121℃、15分間の滅菌後、径90mmの滅菌シャーレに15〜20mL分注して寒天平板を作製した。次いで、別途に標準寒天平板培地で培養した大腸菌を適当な量採取し、滅菌イオン交換水に懸濁して濃厚な大腸菌懸濁液を作製し、これを60℃で1時間加熱処理した後、滅菌イオン交換水でODが0.5となるよう希釈した。そして、この液0.3mLを前記の寒天平板の全面に塗布して、大腸菌が寒天の表面に固定される程度に乾燥させ、大腸菌塗布寒天培地を調製した。
【0026】
<アカントアメーバ栄養体に対する効果確認:実施例1>
上記で作製した大腸菌塗布寒天培地を用いて2日間培養したアカントアメーバ96(Acanthamoeba 96)の栄養体を滅菌水道水に1mL当たり1.2×104個添加したものを試験水として用いた。
【0027】
この試験水10mLを組織培養用フラスコに入れ、表1に示す薬品(併記した略号で以下、記載する場合がある)を10mg/L、25mg/Lあるいは50mg/Lずつ添加した後28℃で静置した。薬品添加1時間後および3時間後に試験水の一部を採取し、必要に応じて段階希釈した後、その1mLを大腸菌塗布寒天培地に塗布し、28℃で7日間培養後、培地上に発生したプラーク数をカウントすることにより、生残アメーバ数を調べた。その結果を表2に示す。ここで、FADMA、GA及びCMIはいずれも水系の殺菌剤として一般に広く用いられているものである。また表中「<1」は検出下限(1個/mL)であることを示す(表2〜5で同様)。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
表2より本発明に係るアメーバ殺滅剤を用いる水系中のアメーバの抑制方法によれば、アカントアメーバ栄養体に対して、低濃度であっても迅速にその抑制が可能であることが判る。特にトリ−n−ブチル−n−ヘキサデシル−ホスホニウムクロライドは10mg/Lの低濃度の添加であっても非常に高い抑制効果を有していることが判る。
【0031】
<ネグレリア栄養体に対する効果確認:実施例2>
実施例1と同様に、ただし、アカントアメーバ96の栄養体を有する試験水の代わりに、冷却水系から分離、培養したネグレリアの栄養体を滅菌水道水に1mL当たり1.2×104個添加したものを試験水として用いた。
結果を表3に示す。
【0032】
【表3】
【0033】
本発明に係るアメーバ殺滅剤はアカントアメーバのみならず、ネグレリア栄養体に対しても高い効果を発揮し、特にトリ−n−ブチル−n−ヘキサデシル−ホスホニウムクロライドが10mg/Lの低濃度の添加であっても非常に高い抑制効果を有していることが判る。
【0034】
<アカントアメーバ嚢子に対する効果確認:実施例3>
実施例1と同様に、ただし、アカントアメーバ96の栄養体を有する試験水の代わりに、アカントアメーバ96の嚢子を滅菌水道水に1mL当たり1.1×104個添加したものを試験水として用い、薬品添加濃度を25mg/L、50mg/Lあるいは100mg/Lとして試験を行った。
結果を表4に示す。
【0035】
【表4】
【0036】
表4より本発明に係るアメーバ殺滅剤を用いる水系中のアメーバの抑制方法によれば、アカントアメーバに関してその栄養体に対してのみならず、嚢子に対しても低濃度であっても迅速にその抑制が可能であることが判る。特にトリ−n−ブチル−n−ヘキサデシル−ホスホニウムクロライドは25mg/Lの低濃度の添加であっても非常に高い抑制効果を有していることが判る。
【0037】
<ネグレリア栄養体に対する効果確認:実施例4>
実施例3と同様に、ただし、アカントアメーバ96の嚢子を有する試験水の代わりに、ネグレリアの嚢子を滅菌水道水に1mL当たり1.0×104個添加したものを試験水として用いた。
結果を表5に示す。
【0038】
【表5】
【0039】
表5より本発明に係るアメーバ殺滅剤を用いる水系中のアメーバの抑制方法によれば、ネグレリアに関してその栄養体に対してのみならず、嚢子に対しても低濃度であっても迅速にその抑制が可能であることが判る。特にトリ−n−ブチル−n−ヘキサデシル−ホスホニウムクロライドは25mg/Lの低濃度の添加であっても非常に高い抑制効果を有していることが判る。
【0040】
ここで、実施例1〜4の結果から3時間接触で99.99%のアメーバを殺滅するために必要な各薬品の濃度を表6にまとめた(表中、「50mg/L超」あるいは「100mg/L超」はそれぞれ50mg/Lあるいは100mg/Lの薬剤添加では効果がなく、さらに高濃度の添加が必要とされることを示す。)。
【0041】
【表6】
【0042】
一般的な殺菌・殺藻剤である脂肪酸ジメチルアミドはネグレリアの嚢子に対して有効ではなく、グルタルアルデヒドおよびCMIはネグレリアの栄養体以外には短時間(3時間以内)での充分な(99.99%以上の)殺滅効果を示さなかった。
【0043】
これに対して、本発明のアメーバ殺滅剤の有効成分であるホスホニウム化合物の添加により、アメーバの種類によらず安定した抑制効果か得られ、さらにアメーバの嚢子に対しても比較的低濃度で充分な効果が得られる。特にトリ−n−ブチル−n−ヘキサデシル−ホスホニウムクロライドを用いた場合、低濃度の添加で栄養体及び嚢子の両者に対して顕著な効果が得られる。
【0044】
<実際の水系での確認:実施例5>
アカントアメーバ、エキナアメーバ(Echinamoeba)、ハルトマネラ、ネグレリア、バンネラおよびフェキシリフェラ(Vexillifera)のアメーバと、レジオネラ属菌とが共存する、空調装置に組み込まれた循環冷却水系(冷凍能力:3冷凍トン、保有水量100L、1日に8時間運転)にトリ−n−ブチル−n−ヘキサデシル−ホスホニウムクロライドを、冷却水中の濃度が20mg/Lに維持されるように水系の補給水に対して注入し、30日間その濃度に保持した。
【0045】
このとき、水系中のレジオネラ属菌、アメーバ及び一般細菌についてその数の変化を調べた。結果を図1に示す。
【0046】
なお、レジオネラ属菌数及びアメーバ数の測定は、「新版レジオネラ症防止指針」(厚生省生活衛生局企画課監修、財団法人ビル管理教育センター発行、1999年)に記載の方法に準拠して行った。また、一般細菌数はJIS・K−0101の63.2に従って測定した。
【0047】
また、図1中、グラフ横軸において、添加開始日を「0」とし、添加開始の30日前を「−30」、添加開始の30日後を「30」とし、その他の日もこれらに準じて記載してある。グラフ縦軸最下部の値は本来「100」であるが、「100」以下の場合は測定下限以下であるため「不検出」としてある。
【0048】
図1により、本発明に係るアメーバ抑制剤であるトリ−n−ブチル−n−ヘキサデシル−ホスホニウムクロライドの添加によりアメーバ数が効果的に抑制されていることが判る。すなわち、トリ−n−ブチル−n−ヘキサデシル−ホスホニウムクロライドの注入開始後3日でアメーバ数が不検出(2個/100mL未満)となり、その4日後にレジオネラ属菌も不検出(10個/100mL未満)となった。薬剤の注入期間中はアメーバ数は2個/100mL以下に維持され、レジオネラ属菌は検出されなかった。
さらに薬剤の注入を中止しても、その後の4週間、アメーバは10個/100mL以下に抑制され、その間レジオネラ属菌は検出されていない。
【0049】
このように、トリ−n−ブチル−n−ヘキサデシル−ホスホニウムクロライドの添加により、当初この水系に生息していた多種類のアメーバを殺滅することができ、また、これらアメーバの数を10個/100mL未満にすることによりレジオネラ属菌を効果的に抑制することができることが確認された。
【0050】
さらに殺菌・殺藻剤として知られているトリ−n−ブチル−n−ヘキサデシル−ホスホニウムクロライドの添加にもかかわらず、その添加濃度がレジオネラ属菌が充分に除去される範囲に制御されているために、注入期間の前後を通じて一般細菌の数に大きな変化がなく、この添加濃度がアメーバ及びレジオネラ属菌以外の水系の環境に及ぼす影響が少ないことが理解できる。
【0051】
【発明の効果】
本発明のアメーバ殺滅剤は、トリ−n−ブチル−n−ヘキサデシル−ホスホニウム塩、トリ−n−ブチル−n−ドデシル−ホスホニウム塩より選択された少なくとも1種のホスホニウム化合物を有効成分として有しているため、一般に抑制が困難なアメーバの嚢子に対しても低濃度の添加で迅速に効果が得られる優れたアメーバ殺滅剤であり、このようなホスホニウム化合物を有効成分としてアメーバとレジオネラ属菌が共存している水系に対して、その水系中のアメーバ数が100mL当たり10個未満となる濃度になるように添加することによりレジオネラ属菌を極めて効果的に除菌することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】レジオネラ属菌、アメーバ及び一般細菌が共存する実際の水系に本発明のアメーバ殺滅剤の有効成分としてトリ−n−ブチル−n−ヘキサデシル−ホスホニウムクロライドを添加したときのこれらレジオネラ属菌、アメーバ及び一般細菌の生存数の変化を調べた結果を示す図である。
Claims (3)
- トリ−n−ブチル−n−ヘキサデシル−ホスホニウム塩、トリ−n−ブチル−n−ドデシル−ホスホニウム塩より選択された少なくとも1種のホスホニウム化合物を有効成分として含有することを特徴とするアメーバ殺滅剤。
- アメーバが生存している水系に対して、トリ−n−ブチル−n−ヘキサデシル−ホスホニウム塩、トリ−n−ブチル−n−ドデシル−ホスホニウム塩より選択された少なくとも1種のホスホニウム化合物を添加することを特徴とする水系中のアメーバの抑制方法。
- アメーバとレジオネラ属菌が共存している水系に対して、トリ−n−ブチル−n−ヘキサデシル−ホスホニウム塩、トリ−n−ブチル−n−ドデシル−ホスホニウム塩より選択された少なくとも1種のホスホニウム化合物を該水系中のアメーバ数が100mL当たり10個未満となる濃度になるように添加することによりレジオネラ属菌を除菌することを特徴とするアメーバと共存している水系中のレジオネラ属菌の除菌方法。
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