JP4717597B2 - 熱収縮性積層フィルム、並びに該フィルムを用いた成形品、熱収縮性ラベル及び容器 - Google Patents

熱収縮性積層フィルム、並びに該フィルムを用いた成形品、熱収縮性ラベル及び容器 Download PDF

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Description

本発明は、熱収縮性積層フィルム、及び該フィルムを用いた成形品、容器に関し、より詳しくは、収縮仕上がり性、フィルムの腰、及び再生添加時の透明性が良好であり、フィルムの自然収縮、層間剥離及び収縮応力が抑制された、収縮包装、収縮結束包装や
収縮ラベル等の用途に適した熱収縮性積層フィルム、及び該フィルムを用いた成形品、
容器に関する。
現在、ジュース等の清涼飲料水は、瓶又はペットボトルといった容器に充填された状態で販売されている。その際、他商品との差別化や商品の視認性向上のために、容器の外側に印刷が施された熱収縮性ラベルが装着されている。また、近年、益々需要が増大しつつあり、比較的短時間かつ低温において高度な収縮仕上がり外観が得られること、及び自然収縮(常温よりやや高い温度、例えば夏場においてフィルムが本来の使用前に少し収縮してしまうこと)の小さな熱収縮性ラベルが要求されている。現在、この熱収縮性ラベルの素材としては、ポリスチレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン等が一般的に使用されている。
上記素材のうち、ポリ塩化ビニル系熱収縮性フィルムは、耐熱性に劣り、使用後の焼却時に塩化水素等の有害ガスを発生するという問題がある。これに対し、スチレン−ブタジエン共重合体を主たる材料とするポリスチレン系熱収縮性フィルムが提案され使用されているが、このポリスチレン系熱収縮性フィルムは、ポリ塩化ビニル系熱収縮性フィルムと比べて、収縮仕上がり性は良好である反面、自然収縮が大きく、フィルムの腰(常温での剛性)が低いため、ラベル装着工程においてラベルの腰折れによる装着不良を起こす等の問題があった。
一方、ポリエステル系熱収縮性フィルムは、自然収縮が小さく、フィルムの腰も高く良好であるが、ポリ塩化ビニル系熱収縮フィルムと比較すると収縮仕上がり性が悪い(ラベルを容器に装着する際、加熱収縮により収縮斑やしわが発生しやすい)という問題があった。また、近年ペットボトルの薄肉化が進められるなか、ポリエステル系熱収縮性フィルムは加熱収縮時の応力が高いため、例えばPETボトルに内容物を入れた状態で被覆させるとボトルが変形し、また温飲料を収納したホット飲料PETボトルはキャップ開栓時にフィルムの収縮応力により内容物が吹き出してしまうなどの諸問題があった。
前記問題を解決すべく、所定量のテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸を共重合させた変性ポリブチレンテレフタレート樹脂と、変性ポリエステル樹脂とを所定の比率で混合した樹脂を用いることにより、収縮仕上がり性を改善する方法が提案されている(特許文献1)。さらに、多価アルコール成分のうち、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ブタンジオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールを変性させた共重合ポリエステル樹脂を用いることにより、収縮仕上がり性を改善する方法も提案されている(特許文献2)。しかしながら、これらの熱収縮性フィルムの収縮仕上がり性はスチレン系熱収縮フィルムには未だ及んでおらず、収縮応力の十分な低減がなされていない。
また、上記問題を解決すべきその他の手段として、ポリスチレン系樹脂からなる中間層の両側に、ジオール成分として1,4−シクロヘキサンジメタノールを含有するポリエステル系樹脂からなる表裏層が積層されてなるベースフィルムを備えたシュリンクラベルが報告されている(特許文献3参照)。このシュリンクフィルムは、収縮仕上がり性の良好なポリスチレン系樹脂を積層しているため、ポリエステル系樹脂のみからなる前記フィルムと比較して収縮仕上がり性は良好である。しかしながら、ポリスチレン系樹脂とポリエステル系樹脂の層間密着が不十分であり、二次加工の際、印刷時に層間剥離が生じやすいという問題があった。
これに対して、上記層間接着を改良した技術として、内層にビニル芳香族炭化水素と共役ジエン誘導体とのブロック共重合体、両外層に共重合ポリエステル系、接着層にエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体などを用いたフィルムが報告されている(特許文献4参照)。しかし、このフィルムは、内層のビニル芳香族炭化水素と共役ジエン誘導体と接着層のエチレン−酢酸ビニル共重合体との相溶性が劣るため、フィルムの耳などのトリミングロス等から発生するリサイクル樹脂を添加(以下、「再生添加」と称する)した際に、フィルム全体の透明性が低下しやすいといった問題があった。
特開2003−12833号公報 特開2002−212405号公報 特開2002−351332号公報 特公平5−33896号公報
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、収縮仕上がり性、フィルムの腰、及び再生添加時の透明性が良好であり、フィルムの自然収縮率、層間剥離、及び収縮応力が抑制された、収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に適した熱収縮性積層フィルムを提供することにある。
本発明のもう一つの目的は、収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に適した前記フィルムを用いた成形品及び容器を提供することにある。
本発明者は、フィルムを形成する表面層、接着層、中間層の各組成、層構成、及び成形加工条件を鋭意検討した結果、上記従来技術の課題を解決し得るフィルムを得ることに成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の目的は、以下の熱収縮性積層フィルムにより達成される。
(1) 表面層(S層)、中間層(M層)及び接着層(AD層)を有する積層フィルムであって、各層が下記成分を主成分とする樹脂組成物からなるとともに、フィルムの主収縮方向と直交する方向のJIS K7127に準拠して測定される引張弾性率が1200MPa以上であり、かつ90℃シリコンオイルに10秒間浸漬したときのフィルム主収縮方向の最大収縮応力が5MPa以上8MPa以下あることを特徴とする熱収縮性積層フィルム。
表面層(S層):多価カルボン酸残基及び多価アルコール残基を含有する芳香族ポリエステル系樹脂組成物
中間層(M層)::スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体からなるスチレン系樹脂組成物
接着層(AD層):スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体又はその水素添加誘導体を含み、該重合体又は水素添加誘導体の全体に対するスチレン系炭化水素の含有率が5質量%以上40質量%以下である樹脂組成物
(2) 表面層(S層)、中間層(M層)及び接着層(AD層)を有し、各層が下記成分を主成分とする樹脂組成物で構成されるとともに、60℃以上120℃以下で少なくとも一軸方向に2倍以上7倍以下延伸されてなる積層フィルムであって、該フィルムの主収縮方向と直交する方向のJIS K7127に準拠して測定される引張弾性率が1200MPa以上であり、かつ90℃シリコンオイルに10秒間浸漬したときのフィルム主収縮方向の最大収縮応力が5MPa以上8MPa以下あることを特徴とする熱収縮性積層フィルム。
表面層(S層):多価カルボン酸残基及び多価アルコール残基を含有する芳香族ポリエステル系樹脂組成物
中間層(M層):スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素とのブロック共重合体からなるスチレン系樹脂組成物
接着層(AD層):スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体又はその水素添加誘導体からなり、該共重合体又は水素添加誘導体中のスチレン系炭化水素の含有率が5質量%以上40質量%以下である樹脂組成物
(3)前記中間層(M層)が該中間層(M層)を構成する樹脂100質量部に対し、前記表面層(S層)を構成する樹脂1質量部以上100質量部以下を含む上記(1)又は(2)に記載の熱収縮性積層フィルム。
(4) 前記中間層(M層)が該中間層(M層)を構成する樹脂100質量部に対し、前記接着層(AD層)を構成する樹脂1質量部以上30質量部以下を含む上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
(5) 前記表面層(S層)を構成する芳香族ポリエステル系樹脂組成物が、芳香族ジカルボン酸残基とジオール残基とからなり、全ジオール残基中に15モル%以上50モル%以下の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を含有する非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂を主成分とする樹脂組成物である上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
) 前記接着層(AD層)を構成する共重合体又はその水素添加誘導体のガラス転移点が20℃以下である上記(1)乃至()のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
) 前記表面層(S層)のフィルム全体の厚みに対する厚み比が10%以上70%以下である上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
) JIS K7105に準拠して測定されるヘーズ値が10%以下である上記(1)乃至()のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
) 70℃温水に10秒間浸漬したときの主収縮方向の熱収縮率が10%以上40%以下であり、かつ80℃温水に10秒間浸漬したときの主収縮方向の熱収縮率が30%以上70%以下である上記(1)乃至)のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
本発明のもう一つの目的は、以下の成形品、熱収縮性ラベル、及び容器により達成される。
10) 上記(1)乃至)のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルムを基材として用いた成形品。
11) 上記(1)乃至)のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルムを基材として用いた熱収縮性ラベル。
12) 上記(10)に記載の成形品又は上記(11)に記載の熱収縮性ラベルを装着した容器。
本発明によれば、収縮仕上がり性、フィルムの腰の強さ、及び再生添加時の透明性が良好であり、かつフィルムの自然収縮、層間剥離、及び収縮応力が抑制された、収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に適した熱収縮性積層フィルムを提供することができる。
さらに、本発明によれば、フィルムの腰の強さがあり、収縮仕上がり性と再生添加時の透明性に優れ、かつフィルムの自然収縮、層間剥離及び収縮応力が抑制された、収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に適した成形品、熱収縮性ラベルを提供することができる。さらに、本発明によれば、装着物の形状にかかわらず所望の位置に密着固定させることができ、皺、アバタの発生、収縮不十分等の異常がなく、透明で綺麗な外観を呈した前記成形品又は熱収縮性ラベルを装着した容器を提供できる。
以下、発明の熱収縮性積層フィルム、成形品、熱収縮性ラベル及び容器を詳細に説明する。
なお、本明細書において「主成分とする」とは、各層を構成する樹脂の作用・効果を妨げない範囲で他の成分を含むことを許容する趣旨である。この用語は、具体的な含有率を制限するものではないが、各層の構成成分全体の50質量%以上、好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上を占める成分である。また、「主収縮方向」とは、フィルムの縦方向(長手方向)とフィルムの横方向(幅方向)のうち熱収縮率の大きい方向を意味し、例えば、ボトルに装着する場合にはその外周方向に相当する方向を意味し、「直交方向」とは主収縮方向と直交する方向を意味する。
[熱収縮性積層フィルム]
本発明の熱収縮性積層フィルム(以下「本発明のフィルム」ともいう)は、ポリエステル系樹脂組成物を主成分とする表面層(S層)と、スチレン系樹脂からなる中間層(M層)と、表面層(S層)及び中間層(M層)の層間接着性を向上させるための接着層(AD層)とを有する。
本発明のフィルムは、フィルム主収縮方向と直交する方向のJIS K7127に準拠して測定される引張弾性率が1200MPa以上、好ましくは1300MPa以上、さらに好ましくは1400MPa以上であることが重要である。引張弾性率の上限は特に制限はないが、通常使用される熱収縮性フィルムにおける2500MPa乃至3000MPa程度であることが好ましい。フィルムの主収縮方向と直交する方向の引張弾性率が1200MPa以上であれば、フィルム全体としての腰(常温での剛性)が高く、特にフィルムの厚みを薄くした場合においてもペットボトルなどの容器に製袋したフィルムをラベリングマシン等で被せる際に、斜めに被さり、あるいはフィルムの腰折れなどで歩留まりが低下しやすいなどの問題点の発生を抑えることができる。上記引張弾性率は、JIS K71127に準拠して、23℃の条件下で測定することができる。
本発明のフィルムは、90℃シリコンオイルに10秒間浸漬したときのフィルム主収縮方向の最大収縮応力が5MPa以上であり、上限が8MPa以下、好ましくは7.5MPa以下、さらに好ましくは7MPa以下であることが重要である。最大収縮応力が5MPa以上であれば、例えばラベルを加熱収縮してボトル装着させた場合に、ラベルとボトルが完全に密着し、良好な仕上がり外観が得られるほか、いわゆる「ともまわり(ラベルとボトルがずれる現象であり、例えば本来角ボトルパネル面に位置するはずのラベル印刷図柄がボトルエッジにくるなど、視認性が悪くなるため好ましくない現象である。)」の発生を抑えることができる。また近年、フィルムの薄肉化が進み、多様な形状を有するペットボトルでは内容物を充填した際、内圧によりボトルに膨らみが生じ、外観が悪くなる場合がある。このような現象に対しても最大収縮応力が5MPa以上であれば、フィルムの応力をもってボトルの膨らみを十分に補正する効果があるため好ましい。一方、最大収縮応力が8MPa以下であれば、蒸気シュリンカーでのラベル装着時、シュリンカー内の温度斑に対して、フィルムの収縮挙動の異なる部位が発生し難く、斑、皺、アバタなどが発生し難いため収縮仕上がり性は良好である。また、ホット飲料PETボトル用の収縮ラベルとして使用した場合の内容物の飛び出しを抑えることができるため好ましい。
本発明のフィルムにおいて、上記引張弾性率及びフィルム主収縮方向の最大収縮応力は、表面層(S層)のポリエステル系樹脂組成物の組成、表面層(S層)の全フィルムに対する厚み比、延伸時の延伸温度及び延伸倍率を適宜調整することにより上記範囲に調整することができる。この点については後述する。
次に、本発明のフィルムを形成する各層について詳細に説明する。
<表面層(S層)>
本発明のフィルムの表面層(S層)は、多価カルボン酸残基及び多価アルコール残基を含有する少なくとも1種の熱可塑性ポリエステル樹脂を主成分とするポリエステル系樹脂組成物で構成されている。
表面層(S層)で用いられる多価カルボン酸残基としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2,5−ジクロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、4,4−スチルベンジカルボン酸、4,4−ビフェニルジカルボン酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ビス安息香酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4−ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−Naスルホイソフタル酸、エチレン−ビス−p−安息香酸等から誘導される芳香族ジカルボン酸残基や、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等から誘導される脂肪族ジカルボン酸残基が挙げられる。これらの多価カルボン酸残基は、1種の残基を単独で、又は2種以上の残基で構成されていてもよい。
また、表面層(S層)で用いられる多価アルコール残基としては、例えば、ジエチレングリコール、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、トランス−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジオール、p−キシレンジオール、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2−ヒドロキシエチルエーテル)から誘導される残基などが挙げられる。これらの多価アルコール残基は、1種の残基を単独で、又は2種以上の残基で構成されていてもよい。
熱可塑性ポリエステル樹脂が2種以上の残基で構成される場合、最も多く含まれている残基を主残基、すなわち質量(モル%)が最多のものを第1残基とし、該第1残基よりも少量のものを第2残基以下の成分(すなわち、第2残基、第3残基・・・)として以下に説明する。
本発明において、好ましい多価アルコール残基の混合物としては、例えば、第1残基としてエチレングリコール、第2残基として1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、及び1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる群から選ばれる少なくとも一種、好ましくは1,4−シクロヘキサンジメタノールを用いたものが挙げられる。
また、好ましい多価カルボン酸残基の混合物としては、例えば、第1残基としてテレフタル酸、第2残基としてイソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸及びアジピン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種、好ましくはイソフタル酸から誘導される残基からなる混合物を挙げられる。
前記第2残基以下の多価カルボン酸残基及び多価アルコール残基の総量の含有率は、多価カルボン酸残基の総量(100モル%)と多価アルコール残基の総量(100モル%)との合計(200モル%)に対して、10モル%以上、好ましくは15モル%以上であり、かつ50モル%以下、好ましくは45モル%以下であることが望ましい。前記2残基以下の残基の含有率が10モル%以上であれば、得られるポリエステルの結晶化度を低く調整できる。一方、前記2残基以下の成分の含有率が50モル%以下であれば、第1残基の長所を活かすことができる。
例えば、多価カルボン酸残基がテレフタル酸残基であり、多価アルコール残基の第1残基がエチレングリコール残基、第2残基が1,4−シクロヘキサンジメタノール残基である場合、第2残基である1,4−シクロヘキサンジメタノール残基の含有率は、ジカルボン酸成分であるテレフタル酸の総量(100モル%)と、エチレングリコール及び1,4−シクロヘキサンジメタノールの総量(100モル%)の合計(200モル%)に対し、10モル%以上、好ましくは15モル%以上であり、かつ50モル%以下、好ましくは45モル%以下、さらに好ましくは40モル%以下の範囲であることが望ましい。この範囲でジオール残基として、エチレングリコール残基と1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を用いることにより、得られるポリエステルの結晶化度を低く調整でき、かつ耐破断性を向上できる。
さらに前記の例において、多価カルボン酸残基が第1残基としてテレフタル酸残基、第2残基としてイソフタル酸残基からなる場合、多価カルボン酸残基のイソフタル酸残基と多価アルコール残基の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基との含有率は、テレフタル酸残基及びイソフタル酸残基の総量(100モル%)と、エチレングリコール残基及び1,4−シクロヘキサンジメタノール残基の総量(100モル%)との合計(200モル%)に対し、10%以上、好ましくは15モル%以上、さらに好ましくは25モル%以上であり、かつ40モル%以下、好ましくは38%モル以下、さらに好ましくは35モル%以下の範囲であることが望ましい。
上記多価カルボン酸残基と多価アルコール残基とにより構成される熱可塑性ポリエステル樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンイソフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート−イソフタレート共重合樹脂、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分を全多価アルコール残基中に含有する非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。中でも、多価カルボン酸成分がテレフタル酸であり、多価アルコール成分がエチレングリコール及び1,4−シクロヘキサンジメタノールである非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂を好適に用いることができる。
ここで、前記非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂に含まれる1,4−シクロヘキサンジメタノール残基の含有率は、好ましくは全ジオール残基中に15モル%以上、好ましくは20モル%以上であり、かつ上限が50モル%以下、好ましくは40モル%以下である。1,4−シクロヘキサンジメタノール残基の含有率が15モル%以上であれば、結晶化による印刷適性の低下や経時的な脆化を抑えることができ、また50モル%以下であれば、押出溶融時に適度な粘度を維持できると共に、良好な製膜性を得ることができる。なお、1,4−シクロヘキサンジメタノールには、シス型とトランス型の2種類の異性体が存在するが、いずれであってもよい。
表面層(S層)で用いられるポリエステル系樹脂組成物の重量(質量)平均分子量は、30,000以上、好ましくは35,000以上、さらに好ましくは40,000以上であり、上限は80,000以下、好ましくは75,000以下、さらに好ましくは70,000である。重量(質量)平均分子量が30,000以上であれば、適度な樹脂凝集力が得られ、フィルムの強伸度が不足したり、脆化したりすることを抑えることができる。一方、重量(質量)平均分子量が80,000以下であれば、溶融粘度を下げることがで
き、製造、生産性向上の観点からは好ましい。
表面層(S層)で用いられるポリエステル系樹脂の極限粘度(IV)は、0.5dl/g以上、好ましくは0.6dl/g以上、さらに好ましくは0.7dl/g以上であり、上限が1.5dl/g以下、好ましくは1.2dl/g以下、さらに好ましくは1.0dl/g以下である。極限粘度(IV)が0.5dl/g以上であれば、フィルム強度特性の低下を抑えることができる。一方、極限粘度(IV)が1.5dl/g以下であれば、延伸張力の増大に伴う破断等を防止できる。
上記ポリエステル系樹脂の市販品としては、例えば、「PETG copolyester6763」(イーストマンケミカル社製)、「SKYGREEN PETG」(SKケミカル社製)などが挙げられる。
また、本発明のフィルムの表面層(S層)には、ポリブチレンテレテレフタレートやポリエーテルを共重合したポリブチレンテレフタレート等に代表される結晶性ポリエステル系樹脂を混合することも有用である。先に述べたように熱収縮性フィルムを使用する場合は、通常、印刷及び溶剤を用いた製袋工程が伴うため、印刷適性及び溶剤シール性を向上させるために構成材料自体の結晶性を下げることが必要となる。しかし、構成材料の樹脂を完全な非晶性としてしまうと、熱収縮性フィルムとして要求される特性を十分満足させることが困難となる。したがって、用途によってはフィルムの表面層(S層)に適度な結晶性を付与させることが好ましい場合もある。
また、非晶性ポリエステル系樹脂のみからなる熱収縮性フィルムは、その粘弾性特性に応じて急激な収縮カーブの立ち上がりと、非常に高い収縮応力を有している。一方、結晶性ポリエステル系樹脂を混合し、適度な結晶性を付与すると、高温時における熱収縮率が低減し、その結果、熱収縮カーブ曲線が緩やかになるため、フィルムの収縮仕上がり性の向上を期待できる。
さらに、結晶性ポリエステル系樹脂を混合して結晶性を付与することにより、延伸後のフィルムの厚み精度を向上させることができる。すなわち、延伸加工の初期段階において、加熱されるフィルムを部分的に見た場合、不均一な温度分布を示すことがある。この場合、高温部分から延伸が開始される。使用する樹脂が非晶性ポリエステル系樹脂の場合、延伸されて薄くなった部分がより延伸され、フィルム全体が不均一な延伸となる。しかし、結晶性ポリエステル系樹脂を混合して結晶性を付与した場合、初期に延伸された部分は薄くなるとともに、配向結晶化により延伸応力が大きくなるため、非延伸部分が延伸され易くなる。その結果、フィルム全体を均一に延伸させることができ、厚み精度を向上させることができる。
上記結晶性ポリエステル系樹脂を表面層(S層)に混合する場合、表面層(S層)を構成する熱可塑性ポリエステル系樹脂100質量部に対して1質量部以上、好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上であり、かつ30質量部以下、好ましくは25質量部以下、さらに好ましくは20質量部含有させることができる。特に結晶性ポリエステル系樹脂の含有量が1質量部以上であれば、フィルムに適度な結晶性を付与でき、本発明で規定する収縮応力の下限5MPa以上に調整しやすく、さらにフィルムの収縮が緩やかになるため、良好な収縮仕上がり性が期待できる。また結晶性ポリエステル系樹脂の含有率が30質量部以下であれば、本発明で規定する収縮応力の上限8MPa以下に調整しやすく、収縮特性を維持でき、さらに印刷適性と溶剤シール性を阻害することなく、熱収縮フィルムとして好適に使用できる。
また、表面層(S層)で用いられるポリエステル系樹脂は、上記ポリエステル系樹脂の他に、ハードセグメントとして高融点・高結晶性の芳香族ポリエステル、ソフトセグメントとして非晶性ポリエステルや非晶性ポリエーテルなどで構成されている熱可塑性ポリエステル系エラストマ−も適宜含有させてもよい。また、これらは単独、又は2種以上を上記ポリエステル系樹脂に含有させてもよい。
<中間層(M層)>
本発明では、フィルムの中間層(M層)を形成する樹脂としてスチレン系樹脂組成物を用いる。この中でも特に、スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素とのブロック共重合が好適に用いられる。スチレン系炭化水素としては、例えば、ポリスチレン、ポリ(p−、m−又はo−メチルスチレン)、ポリ(2,4−、2,5−、3,4−又は3,5−ジメチルスチレン)、ポリ(p−t−ブチルスチレン)等のポリアルキルスチレン;ポリ(o−、m−又はp−クロロスチレン)、ポリ(o−、m−又はp−ブロモスチレン)、ポリ(o−、m−又はp−フルオロスチレン)、ポリ(o−メチル−p−フルオロスチレン)等のポリハロゲン化スチレン;ポリ(o−、m−又はp−クロロメチルスチレン)等のポリハロゲン化置換アルキルスチレン;ポリ(p−、m−又はo−メトキシスチレン)、ポリ(o−、m−又はp−エトキシスチレン)等のポリアルコキシスチレン;ポリ(o−、m−、又はp−カルボキシメチルスチレン)等のポリカルボキシアルキルスチレン;ポリ(p−ビニルベンジルプロピルエーテル)等のポリアルキルエーテルスチレン;ポリ(p−トリメチルシリルスチレン)等のポリアルキルシリルスチレン;さらにはポリビニルベンジルジメトキシホスファイド等が挙げられる。該スチレン系炭化水素ブロックは、これらの単独重合体、共重合体及び/又はスチレン系炭化水素以外の共重合可能なモノマーをブロック内に含んでいてもよい。
共役ジエン系炭化水素の例としては、ブタジエン、イソプレン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。共役ジエン系炭化水素ブロックは、これらの単独重合体、共重合体及び/又は共役ジエン系炭化水素以外の共重合可能なモノマーをブロック内に含んでいてもよい。
中間層(M層)で好ましく使用されるスチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合の一つは、スチレン系炭化水素がスチレンであり、共役ジエン系炭化水素がブタジエンである、スチレン−ブタジエン共重合体(SBS)である。SBSのスチレン含有率は60質量%以上、好ましくは65質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。またスチレン含有率の上限は95質量%、好ましくは90質量%、さらに好ましくは85質量%である。スチレンの含有率が60質量%以上であれば、耐衝撃性の効果が発揮でき、また上限を95質量%とすることにより、室温前後の温度でのフィルムの弾性率が保持され、良好な腰の強さが得られる。スチレン系樹脂としてスチレン−ブタジエン系共重合体を用いる場合の重合形態は特に限定されず、ブロック共重合体、ランダム共重合体及びグラフト共重合体のいずれの態様であってもよいが、ピュア構造、ランダム構造、及びテーパー構造を含むブロック共重合体が好ましい。
本発明で好ましく使用されるスチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体の他の例としては、スチレン−イソプレン−ブタジエンブロック共重合体(SIBS)が挙げられる。SIBSにおいて、スチレン/イソプレン/ブタジエンの質量%比は、(60〜90)/(5〜40)/(5〜30)であることが好ましく、(60〜85)/(10〜30)/(5〜25)であることがより好ましく、(60〜80)/(10〜25)/(5〜20)であることがさらに好ましい。また、SIBSのMFRの測定値(測定条件:温度200℃、荷重49N)は、2g/10分以上、好ましくは3g/10分以上であり、かつ15g/10分以下、好ましくは10g/10分以下、さらに好ましく8g/10分以下であることが望ましい。ブタジエン含有量が多くイソプレン含有量が少ないと、押出機内部等で加熱されたブタジエンが架橋反応を起こして、ゲル状物が増す場合がある。一方、ブタジエン含有量が少なくイソプレン含有量が多いと、原料単価が上昇し、製造コストが嵩む場合がある。
また上記スチレン系樹脂は単独で用いてもよいし、スチレン含有率の異なる2種以上のスチレン系樹脂を混合して用いてもよい。さらに、上記スチレン系樹脂は、スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体と、前記共重合体とスチレン系炭化水素又は共役ジエン系炭化水素と共重合可能なモノマーとの共重合体、又はスチレン系炭化水素の単独重合体との混合物であってもよい。
例えば、前記スチレン系樹脂がSBSとSIBSの混合物である場合、SBS/SIBSの質量%比は、(90〜10)/(10〜90)程度であることが好ましく、(80〜20)/(20〜80)程度であることがより好ましく、(70〜30)/(30〜70)程度であることがさらに好ましい。
スチレン系炭化水素と脂肪族不飽和カルボン酸エステルとの共重合体を用いる場合、脂肪族不飽和カルボン酸エステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2 −エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートを用いて共重合させることができる。好ましくは、スチレンとブチル(メタ)アクリレートとの共重合体であり、さらに好ましくは、スチレンが70質量%以上90質量%以下の範囲であり、Tg(損失弾性率E’’のピーク温度)が50℃以上90℃以下、メルトフローレート(MFR)測定値(測定条件:温度200℃、荷重49N)が2g/10分以上15g/10分以下のものが用いられる。なお、上記(メタ)アクリレートとは、アクリレート及び/又はメタクリレートを示す。
上記スチレン系樹脂組成物の分子量は、質量(重量)平均分子量(Mw)が100,000以上、好ましくは150,000以上であり、上限が500,000以下、好ましくは400,000以下、さらに好ましくは300,000以下である。スチレン系樹脂組成物の質量(重量)平均分子量が100,000以上であれば、フィルムの劣化が生じるような欠点もなく好ましい。さらに、ポリスチレン系樹脂の質量(重量)平均分子量が500,000以下であれば、流動特性を調整する必要なく、押出性が低下するなどの欠点もないため好ましい。
上記スチレン系樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)測定値(測定条件:温度200℃、荷重49N)は、2g/10分以上、好ましくは3g/10分以上であり、上限が15g/10分以下、好ましくは10g/10分以下、さらに好ましくは8g/10分以下である。MFRが2g/10分以上であれば、押出成型時の流動粘度が適当であり、生産性に優れる。また、MFRが15g/10分以下であれば、適度な樹脂の凝集力がられるため、フィルムの機械的強度が良好であり、実用上好ましい。
中間層(M層)に含まれるスチレン系樹脂組成物の0℃における貯蔵弾性率(E’)は1.00×109Pa以上であることが好ましく、1.50×109Pa以上であることがさらに好ましい。この0℃における貯蔵弾性率(E’)は、フィルムの剛性、つまりフィルムの腰の強さを表す。1.00×109Pa以上の貯蔵弾性率(E’)を有することにより、積層フィルムを形成した際に、積層フィルムに腰強さ(常温での剛性)を与えることができる。特に積層フィルムの厚みを薄くした場合において、ペットボトルなどの容器に製袋したフィルムをラベリングマシン等で被せる際に、斜めに被ってしまう現象や、フィルムの腰折れなどで歩留まりが低下する現象を防ぐことができるため好ましい。この貯蔵弾性率(E’)は、上述のスチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素ブロック共重合体の単体、2種以上の該共重合体の混合物、又は透明性を損なわない範囲でその他の樹脂と混合することにより得られる。
中間層(M層)に含まれるスチレン系樹脂組成物が、スチレン含有率が異なるスチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素とのブロック共重合体の混合物又は他の樹脂との混合物である場合には、耐破断性を担わせる樹脂と剛性を担わせる樹脂とを適宜選択すると、良好な結果を得ることができる。すなわち、耐破断性の高いスチレン系炭化水素−共役ジエン系炭化水素ブロック共重合体と、剛性の高い該共重合体とを組み合わせることにより、あるいは耐破断性の高いスチレン系炭化水素−共役ジエン系炭化水素ブロック共重合体と、剛性の高い他の種類の樹脂とを混合することにより、それらのスチレン系炭化水素−共役ジエン系炭化水素の合計組成、あるいはそれらと他の種類の樹脂との混合物が、所望の0℃における貯蔵弾性率(E’)を満たすように調整できる。
耐破断性を付与可能なスチレン系炭化水素−共役ジエン系炭化水素ブロック共重合体として好ましいものは、ピュアブロックSBS及びランダムブロックSBSである。中でも、0℃における貯蔵弾性率(E’)が1.00×108Pa以上1.00×109Pa以下であり、さらに損失弾性率(E’’)のピーク温度の少なくとも一つは−20℃以下にある粘弾性特性を有するものが好ましい。0℃における貯蔵弾性率が1.0×108Pa以上であれば、剛性を担う樹脂のブレンド量を増やすことにより腰の強さを付与することができる。一方、損失弾性率(E’’)のピーク温度において、低温側の温度は主に耐破断性を示す。該特性は延伸条件によって変化するものの、延伸前の状態で損失弾性率(E’’)のピーク温度が−20℃以下に存在しない場合、十分なフィルム破断性を積層フィルムに付与することが困難となる場合がある。
剛性を付与可能な樹脂としては、0℃での貯蔵弾性率(E’)が2.00×109Pa以上のスチレン系炭化水素を含む共重合体、例えばブロック構造を制御したスチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素とのブロック共重合体、ポリスチレン、スチレン系炭化水素と脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体を例示できる。
ブロック構造を制御したスチレン系炭化水素−共役ジエン系炭化水素ブロック共重合体としては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体の特性として0℃での貯蔵弾性率(E’)が2.00×109Pa以上であるSBSが挙げられる。これを満たすSBSのスチレン−ブタジエンの組成比は、スチレン/ブタジエン=(95〜80)/(5〜20)程度で調整されることが好ましい。
上記粘弾性特性満たすことが可能となる重合方法例を以下に示す。通常にスチレン又はブタジエンの一部を仕込んで重合を完結させた後、スチレンモノマーとブタジエンモノマーの混合物を仕込んで重合反応を続行させる。これにより、重合活性の高いブタジエンの方から優先的に重合し、最後にスチレンの単独モノマーからなるブロックが生じる。例えば、先ずスチレンを単独重合させ、重合完結後、スチレンモノマーとブタジエンモノマーの混合物を仕込んで重合を続行させると、スチレンブロックとブタジエンブロックとの中間にスチレン・ブタジエンモノマー比が次第に変化するスチレン・ブタジエン共重合体部位をもつスチレン−ブタジエンブロック共重合体が得られる。このような部位を持たせることにより、上記粘弾性特性を持つポリマーを得ることができる。この場合には、前述したようなブタジエンブロックとスチレンブロックに起因する2つのピークが明確には確認できず、見かけ上一つのピークのみが存在するように見える。つまり、ピュアブロックやブタジエンブロックが明確に存在するランダムブロックのSBSのようなブロック構造では、ブタジエンブロックに起因するTgが0℃以下に主に存在してしまうため、0℃での貯蔵弾性率(E’)が所定の値以上にすることが難しくなってしまう。また、分子量も関してはMFR測定値(測定条件:温度200℃、荷重49N)が2g/10分以上15g/10分以下で調整される。この剛性を付与するスチレン−ブタジエンブロック共重合体の混合量は、その熱収縮性積層フィルムの特性に応じて適宜調整され、中間層(M層)を構成する樹脂総量の20質量%以上、好ましくは40質量%以上であり、かつ80質量%以下、好ましくは70質量%以下の範囲で調整されることが望ましい。樹脂総量の80質量%以下であれば、フィルムの剛性は大幅に向上でき、かつ耐破断性を低下させることを抑えることができる。一方、樹脂総量の20質量%以上であれば、フィルムに十分な剛性を付与できる。
上記スチレン系樹脂組成物の含有率は、中間層(M層)を形成する樹脂総量の50質量%以上であり、65質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。但し、汎用ポリスチレン(GPPS)を含有する場合、GPPSのTg(損失弾性率E’’のピーク温度)が100℃程度と非常に高いため、混合するGPPSの含有率は、中間層(M層)を構成する樹脂総量の40質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下とすることが望ましい。
中間層(M層)に含まれるスチレン系樹脂は、上述のとおり中間層(M層)を形成する樹脂総量の50質量%以上含まれれば、その他の樹脂を混合することもできる。そのような樹脂を例示すれば、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられ、中でもポリエステル系樹脂を用いることが好ましい。
また中間層(M層)を構成するスチレン系樹脂組成物は、無延伸フィルムを形成した場合にフィルム主収縮方向と直交する方向の引張弾性率1000MPa以上、好ましくは1100MPa以上、さらに好ましくは1200MPa以上を与える者を用いることが望ましい。引張弾性率1000MPa以上を与えるスチレン系樹脂組成物であれば、得られる積層フィルム全体としての腰が高く、特に積層フィルムの厚みを薄くしていった場合にも、ペットボトルなどの容器に製袋したフィルムをラベリングマシン等で被せる際に、斜めに被り、あるいはフィルムの腰折れなどで歩留まりが低下しやすいなどの問題点の発生を抑えることができる。
なお、上記「無延伸フィルム」とは、スチレン系樹脂組成物を原料として成形されたフィルムであって、フィルム形成時に延伸しないで得られたフィルムをいう。
上記スチレン系樹脂組成物の市販品としては、例えば、「クリアレン」(電気化学工業社製)、「アサフレックス」(旭化成ケミカルズ社製)、「スタイロフレックス」(BASFジャパン社製)、「Kレジン」(シェブロンフィリップス化学社製)などが挙げられる。
<接着層(AD層)>
本発明での接着層(AD層)は、スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体又はその水素添加誘導体を含有する。ここで、スチレン系炭化水素としては、スチレンが好適に用いられ、α−メチルスチレン等のスチレン同族体なども用い得る。また、共役ジエン系炭化水素としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン等が挙げられ、これらは単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。さらに、接着層(AD層)には第3成分としてスチレン系炭化水素及び共役ジエン系炭化水素以外の成分を少量含んでいてもよい。また、共役ジエン系炭化水素部分のビニル結合を主とした二重結合を多く存在させた場合には、表面層(S層)のポリエステル系樹脂と馴染みを良好にし、層間接着強度を向上できるため好ましい。
スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体又はその水素添加誘導体を接着層(AD層)として用いる場合、スチレン系炭化水素の含有率は5質量%以上、好ましくは7質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、かつ40質量%以下、好ましくは37質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下であることが重要である。スチレン系炭化水素の含有率が5質量%以上であれば、フィルムを表面層(S層)及び/又は中間層(M層)へ再生添加した際(特に中間層(M層)に再生添加するのが好ましい)の相溶性が良好であり、透明性が維持されたフィルムが得られるため好ましい。一方、スチレン系炭化水素の含有率が40質量%以下であれば、接着層(AD層)は柔軟性に富み、例えばフィルム全体に応力又は衝撃が加わった際に、表面層(S層)と中間層(M層)との間に生じる応力への緩和作用が働くため、層間剥離を抑えることができる。
また、上記スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体又はその水素添加誘導体のガラス転移温度(Tg)は、20℃以下であることが好ましく、10℃以下であることがより好ましく、0℃以下であることがさらに好ましい。ここで、ガラス転移温度(Tg)が20℃以下であれば、該積層フィルムに力が加わった際、柔軟な接着層(AD層)が緩衝材としての役割を果たすため、層間剥離を抑えられ実用上好ましい。
なお、本発明において使用するガラス転移温度(Tg)は、次のようにして求めた値である。すなわち、粘弾性スペクトロメーターDVA−200(アイティ計測(株)製)を用い、振動周波数10Hz、ひずみ0.1%、昇温速度3℃/分で測定し、得られたデータから損失弾性率(E”)のピーク値を求め、その時の温度をガラス転移温度(Tg)とした。なお、損失弾性率(E”)のピークが複数存在した場合には、損失弾性率(E”)が最高値を示すピーク値の温度をガラス転移点(Tg)とする。
上記の共重合体の市販品としては、例えば、スチレン−ブタジエンブロック共重合体エラストマー(旭化成ケミカルズ(株)商品名「タフプレン」)、スチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加誘導体(旭化成ケミカルズ(株)商品名「タフテックH」、シェルジャパン(株)商品名「クレイトンG」)、スチレン−ブタジエンランダム共重合体の水素添加誘導体(JSR(株)商品名「ダイナロン」)、スチレン−イソプレンブロック共重合体の水素添加誘導体((株)クラレ商品名「セプトン」)、スチレン−ビニルイソプレンブロック共重合体エラストマー((株)クラレ商品名「ハイブラー」)等が挙げられる。
また、スチレン系炭化水素と共役ジエンの共重合体又はその水素添加誘導体は極性基を導入することで、ポリエステル系樹脂組成物からなる表面層(S層)との層間接着性を更に向上させることができる。導入する極性基としては、酸無水物基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、カルボン酸塩化物基、カルボン酸アミド基、カルボン酸塩基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、スルホン酸塩化物基、スルホン酸アミド基、スルホン酸塩基、エポキシ基、アミノ基、イミド基、オキサゾリン基、水酸基などが挙げられる。
上記の極性基を導入したビニル芳香族系化合物と共役ジエンの共重合体又はその水素添加誘導体としては、無水マレイン酸変性SEBS、無水マレイン酸変性SEPS、エポキシ変性SEBS、エポキシ変性SEPSなどが代表的に挙げられ、これらの共重合体は、各々単独に、又は2種以上を混合して使用することができる。
上記の共重合体の市販品としては、例えば、旭化成ケミカルズ(株)商品名「タフテックM」、ダイセル化学(株)商品名「エポフレンド」などが挙げられる。
本発明では、表面層(S層)、中間層(M層)、及び接着層(AD層)に、上述した成分のほか、本発明の効果を著しく阻害しない範囲内で、成形加工性、生産性及び熱収縮性フィルムの諸物性を改良・調整する目的で、フィルムの耳などのトリミングロス等から発生するリサイクル樹脂やシリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機粒子、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤などの添加剤を適宜添加することもできる。フィルムの耳などのトリミングロス等から発生するリサイクル樹脂は、表面層(S層)及び/又は中間層(M層)、好ましくは中間層(M層)に再生添加することが望ましい。
本発明のフィルムは、さらに耐熱性を付与するための層(以下「耐熱層」という。)を表面層(S層)上に形成することができる。耐熱層を構成する原料としては、例えば各種の界面活性剤が挙げられる。界面活性剤は、従来は帯電防止剤や静電気防止剤として用いること、及び所定の樹脂と共に混合してフィルム表面にコート層を形成することにより帯電防止又は静電気防止効果を付与し得ることについてはこれまで知られていた。しかし、界面活性剤が耐熱性を付与できることについてはまだ知られていない。本発明者は、界面活性剤につき鋭意検討した結果、界面活性剤(特にカチオン系界面活性剤又は両性界面活性剤)を表面層(S層)上に積層させることにより、フィルムの耐熱性が向上することを見出した。このような耐熱層を表面層(S層)上に形成することにより、例えば、加温販売用のPETボトルを加温器で加熱した際に、PETボトルのフィルムが加熱板に融着する事、並びにPETボトルのフィルム同士が融着するのを有効に防止できる。
上記界面活性剤は、特に限定されず、種々の界面活性剤を用いることができる。アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸アミン塩、アルキルホスフェート型、アルキルサルフェート型、アルキルアリルサルフェート型等の低分子系のもののほか、ポリアルキレンサルフェート及びその共重合体のような高分子系のものも例示できる。また、カチオン系界面活性剤としては、アルキルアミンサルフェート型、第四級アンモニウム塩型、第四級アンモニウム樹脂型、ピリジウム塩、モルホリン誘導体等を例示できる。また、非イオン系界面活性剤としては、ソルビタン型、エーテル型、アミン型、アミド型、エタノールアミド型、脂肪酸グリセリンエステル、アルキルポリエチレンイミン等を例示できる。また両性イオン系界面活性剤としては、アルキルベタイン型、アルキルイミダゾリン誘導体、N−アルキル、β−アラニン型等を例示できる。
上記耐熱層は、上記界面活性剤を溶媒に溶解させた状態の塗布液を塗布することにより形成できる。媒体としては、水や水と水溶性有機溶剤との混合溶剤を用いるのができる。前記水溶性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、tert−ブチルアルコール、1,2‐プロピレンアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル等のグリコール類又はその誘導体、アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン類、その他、水溶性エーテル類、水溶性エステル類等が好ましいものとして挙げられる。
表面層(S層)への塗布方法としては、例えば、スプレーコート法、エアーナイフコート法、リバーコート法、キスコート法、グラビヤコート法、リバースロールコート法、ダイコート法、マイヤーバー法、ロールブラッシュ法、バーコート法、リバースキスコート法、オフセットグラビアコート法、ドクターブレード法、カーテンコート法、ディッピング法等を単独又は組み合わせて適用することができる。塗布液の塗布量は、特に限定されることはないが、所望の耐熱効果を得るには例えば、固形分として0.0005g/m2以上0.5g/m2以下、好ましくは0.001g/m2以上0.1g/m2以下の範囲であることが好ましい。
<フィルムの層構成>
本発明の熱収縮性フィルムは、表面層(S層)と中間層(M層)間に接着層(AD層)を有する少なくとも3層構成のものであれば、特に限定されるものではない。ここで、表面層(S層)は、表面層と表面層以外に、すなわち、中間層に同様の層を有してもかまわない。
本発明において好適な積層構成は、表面層(S層)/接着層(AD層)/中間層(M層)/接着層(AD層)/表面層(S層)からなる5層構成であり、この層構成を採用することにより、本発明の目的である収縮仕上がり性、フィルムの腰、自然収縮、再生添加時の透明性が良好であり、かつフィルムの層間剥離、収縮応力が抑制された、収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に適した熱収縮性積層フィルムを生産性、経済性よく得ることができる。
次に、本発明の好適な実施形態のひとつである表面層(S層)と中間層(M層)、接着層(AD層)からなる(S層)/(AD層)/(M層)/(AD層)/(S層)の5層構成のフィルムについて説明する。
本発明においては、表面層(S層)のフィルム全体の厚みに対する厚み比は10%以上、好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上であり、上限は75%以下、好ましくは70%以下、さらに好ましくは65%以下である。表面層(S層)の厚み比が10%以上であれば、収縮応力を本発明で規定する下限5MPa以上に調整しやすく、また、フィルムの腰が高くなるため好ましい。一方、表面層(S層)の厚み比が75%以下であれば、収縮応力を本発明で規定する上限8MPa以下に調整しやすく、また収縮挙動が緩やかであり、収縮仕上がり性も良好となるため好ましい。次に、中間層(M層)のフィルム全体の厚みに対する厚み比は20%以上、好ましくは30%以上であり、上限が80%以下、好ましくは70%以下である。さらに接着層(AD層)はその機能から、0.5μm以上6μm以下、好ましくは1μm以上5μm以下であれば、フィルムの腰(常温での剛性)、収縮仕上がり性、再生添加時の透明性に優れ、かつフィルムの自然収縮、層間剥離が抑制された、収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に適した熱収縮性積層フィルムがバランス良く得ることができる。
表面層(S層)上に耐熱層を配設する場合、耐熱層は0.0006g/m2以上、好ましくは0.0015g/m2以上、さらに好ましくは0.0045g/m2以上となるように塗布する。所望の耐熱性が得られれば必要以上に塗布する必要はなく、コストと照らし合わせて塗布量と厚みの最大値を設定することができる。
フィルムの耐熱性評価は、例えば、得られた熱収縮フィルムの巻いて外面同士(帯電防止剤を塗布したフィルムの場合は塗布面同士)を重ね合わせ、テスター産業 ヒートシールテスター TP−701−Aを用いて、0.1MPaの加圧下で70℃から120℃までを1℃間隔で加熱し、それぞれ1分間保持した後、試料を所定の大きさに切り出し、フィルム端部から剥がして、フィルム表面の融着の有無を確認することにより評価することとができる。
<フィルムの物理的・機械的特性>
本発明のフィルムは、70℃温水に10秒間浸漬したときの主収縮方向の熱収縮率が10%以上%40%以下、好ましくは10%以上35%以下であり、かつ80℃温水に10秒間浸漬したときの主収縮方向の熱収縮率が30%以上70%以下、好ましくは35%以上65%以下である。
これは、ペットボトルの収縮ラベル用途等の比較的短時間(数秒〜十数秒程度)での収縮加工工程への適応性を判断する指標となる。例えばペットボトルの収縮ラベル用途に適用される熱収縮性フィルムに要求される必要収縮率はその形状によって様々であるが一般に2%乃至70%程度である。
また、現在ペットボトルのラベル装着用途に工業的に最も多く用いられている収縮加工機としては、収縮加工を行う加熱媒体として水蒸気を用いる蒸気シュリンカーと一般に呼ばれているものである。さらに熱収縮性フィルムは被覆対象物への熱の影響などの点からできるだけ低い温度で十分熱収縮することが必要である。しかしながら、温度依存性が高く、温度によって極端に収縮率が異なるフィルムの場合、蒸気シュリンカー内の温度斑に対して収縮挙動の異なる部位が発生し易いため、収縮斑、皺、アバタなどが発生し収縮仕上がり外観が悪くなる傾向にある。これら工業生産性も含めた観点から、熱収縮率が上記条件の範囲内にあるフィルムであれば、収縮加工時間内に十分に被覆対象物に密着でき、かつ斑、皺、アバタが発生せず良好な収縮仕上がり外観を得ることができるため好ましい。
また、本発明のフィルムが熱収縮性ラベルとして用いられる場合、フィルムの主収縮方向に直交する方向(縦方向)の収縮率は、80℃温水中で10秒間加熱したときは10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましく、また70℃温水中で10秒間加熱したときは、10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましい。ここで、主収縮方向と直交する方向の熱収縮率が10%以下のフィルムであれば、収縮後の主収縮方向と直交する方向の寸法自体が短くなったり、収縮後の印刷柄や文字の歪み等が生じやすかったり、角型ボトルの場合においては縦ひけ等のトラブルを抑えることができるため好ましい。
本発明のフィルムの自然収縮率はできるだけ小さいほうが望ましいが、一般的に熱収縮性フィルムの自然収縮率は、例えば、30℃で30日保存後の自然収縮率が3.0%以下、好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.5%以下であることが望ましい。上記条件下における自然収縮率が3.0%であれば作製したフィルムを長期保存する場合であっても容器等に安定して装着することができ、実用上問題を生じにくい。
本発明のフィルムの透明性は、JIS K7105に準拠して測定されたヘーズ値が10%以下であることが好ましく、7%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。ヘーズ値が10%以下であれば、フィルムの透明性が得られ、ディスプレー効果を奏することができる。
また、本発明のフィルムは、例えば、中間層(M層)にフィルム100質量部に対して50質量部以下、好ましくは45質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下のフィルム(フィルム作製時に発生するフィルムの耳などのトリミングロス品)を再生添加した場合においても、厚み50μmのフィルムをJIS K7105に準じて測定した場合におけるヘーズ値が10%以下、好ましくは7%以下、さらに好ましくは5%以下であることが好ましい。再生添加後のヘーズ値が10%以下であれば、再利用時においても良好な透明性を維持することができる。
本発明のフィルムの機械的強度は、JIS K7127に準拠して測定された引張破断伸度により評価され、−5℃環境下、試験速度200mm/分での引張試験において、特にラベル用途ではフィルムの引取り(流れ)方向(MD)で引張破断伸度が100%以上、好ましくは200%以上、さらに好ましくは300%以上ある。
本発明のフィルムのシール強度は、後述する実施例で記載された測定方法を用いて3N/15mm以上、好ましくは4N/15mm以上、より好ましくは5N/15mm以上であり、かつ15N/15mm幅以下、12N/15mm幅以下である。ここでのシール強度とは、後述するセンターシールによりフィルムを筒状に製袋した際の、シール部の剥離強度値を指す。注意すべき点は、表面層(S層)と接着層(AD層)又は接着層(AD層)と中間層(M層)の層間接着力が乏しい場合、シール強度測定の際、フィルム表面同士の剥離ではなく層間剥離が先行する可能性があり、十分なシール強度が確保できない。本発明のフィルムは、十分な層間接着力を有しており、シール強度が3N/15mm以上であるため、使用時にシール部分が剥がれてしまう等のトラブルが生じることもない。
<フィルムの製造方法>
本発明のフィルムは、公知の方法によって製造することができる。フィルムの形態としては平面状、チューブ状の何れであってもよいが、生産性(原反フィルムの幅方向に製品として数丁取りが可能)や内面に印刷が可能という点から平面状が好ましい。平面状のフィルムの製造方法としては、例えば、複数の押出機を用いて樹脂を溶融し、Tダイから共押出し、チルドロールで冷却固化し、縦方向にロール延伸をし、横方向にテンター延伸をし、アニールし、冷却し、(印刷が施される場合にはその面にコロナ放電処理をして、)巻取機にて巻き取ることによりフィルムを得る方法が例示できる。また、チューブラー法により製造したフィルムを切り開いて平面状とする方法も適用できる。
前記フィルムの諸特性のうち、収縮特性、収縮応力は延伸温度と延伸倍率に主に依存し、高倍率、低温延伸であるほど収縮特性、収縮応力ともに大きくなり、また延伸後の熱処理(アニーリング、特に弛緩熱処理)の影響も受ける。延伸温度は用いる樹脂組成物のTgや熱収縮性フィルムに要求される特性によって変える必要があるが、概ね60℃以上、好ましくは70℃以上、さらに好ましくは80℃以上であり、上限が120℃以下、好ましくは110℃以下、さらに好ましくは100℃以下の範囲で制御される。延伸温度が60℃以上であれば、延伸性が良好であるほか、本発明で規定する収縮応力の上限8MPa以下に調整しやすい。一方、延伸温度が120℃以下であれば、材料の弾性率が適度に保持されるため、厚み精度の良好なフィルムが得られやすいほか、本発明で規定する収縮応力の下限5MPa以上に調整しやすい。
また、フィルムの延伸倍率も用いる樹脂組成物のガラス転移温度や熱収縮性フィルムに要求される特性によって変える必要があるが、概ね主収縮方向に2倍以上7倍以下の範囲に調整することが重要であり、好ましくは3倍以上、より好ましくは4倍以上であり、かつ上限が7倍以下の範囲で1軸又は2軸方向に適宜調整される。延伸倍率が2倍以上であれば、収縮応力を本発明で規定する上限8MPa以下に調整しやすく、また厚み精度の良好なフィルムが得られやすい。一方、延伸倍率が7倍以下であれば、収縮応力を本発明で規定する上限8MPa以下に調整しやすい。また、横方向に1軸延伸の場合でもフィルムの機械物性改良等の目的で縦方向に1.05倍以上1.8倍以下程度の弱延伸を付与することも効果的である。次いで、延伸したフィルムは、必要に応じて、収縮応力、自然収縮率の低減や熱収縮特性の改良等を目的として、50℃以上100℃以下程度の温度で熱処理や弛緩処理を行った後、分子配向が緩和しない時間内に速やかに冷却され、熱収縮性フィルムとなる。
本発明のフィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、通常20μm以上、好ましくは30μm以上であり、上限は80μm以下、好ましくは70μm以下の厚さである。ここで、厚さが20μm以上であれば、フィルムのハンドリング性が良好であり、一方、80μm以下であれば透明性や収縮加工性に優れ、経済的にも好ましい。また、必要に応じて、コロナ処理、印刷、コーティング、蒸着等の表面処理や表面加工、さらには、各種溶剤やヒートシールによる製袋加工やミシン目加工などを施すことができる。
本発明のフィルムは、被包装物によってフラット状から円筒状等に加工して包装に供される。ペットボトル等の円筒状の容器で印刷を要する物にとっては、まずロールに巻き取られた広幅のフラットフィルムの一面に必要な画像を印刷し、そしてこれを必要な幅にカットしつつ印刷面が内側になるように折り畳んでセンターシール(シール部の形状はいわゆる封筒貼り)して円筒状とすれば良い。センターシール方法としては、有機溶剤による接着方法、ヒートシールによる方法、接着剤による方法、インパルスシーラーによる方法が考えられる。この中でも、生産性、見栄えの観点から有機溶剤による接着方法が好適に使用される。
[成形品、熱収縮性ラベル及び容器]
本発明のフィルムは、フィルムの低温収縮性、収縮仕上がり性、透明性、自然収縮等に優れているため、その用途が特に制限されるものではないが、必要に応じて印刷層、蒸着層その他機能層を形成することにより、ボトル(ブローボトル)、トレー、弁当箱、総菜容器、乳製品容器等の様々な成形品として用いることができる。特に本発明のフィルムを食品容器(例えば清涼飲料水用又は食品用のPETボトル、ガラス瓶、好ましくはPETボトル)用熱収縮性ラベルとして用いる場合、複雑な形状(例えば、中心がくびれた円柱、角のある四角柱、五角柱、六角柱など)であっても該形状に密着可能であり、シワやアバタ等のない美麗なラベルが装着された容器が得られる。本発明の成形品及び容器は、通常の成形法を用いることにより作製することができる。
本発明のフィルムは、優れた低温収縮性、収縮仕上がり性を有するため、高温に加熱すると変形を生じるようなプラスチック成形品の熱収縮性ラベル素材のほか、熱膨張率や吸水性等が本発明の熱収縮性フィルムとは極めて異なる材質、例えば金属、磁器、ガラス、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリメタクリル酸エステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂から選ばれる少なくとも1種を構成素材として用いた包装体(容器)の熱収縮性ラベル素材として好適に利用できる。
本発明のフィルムが利用できるプラスチック包装体を構成する材質としては、上記の樹脂の他、ポリスチレン、ゴム変性耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、スチレン−ブチルアクリレート共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、メタクリル酸エステル−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等を挙げることができる。これらのプラスチック包装体は2種以上の樹脂類の混合物でも、積層体であってもよい。
以下に本発明について実施例を用いて説明する。なお、実施例に示す測定値及び評価は次のように行った。ここでは、積層フィルムの引取り(流れ)方向をMD(Machine Direction)、その直角方向をTD(Transverse Direction)と記載する。
(1)引張弾性率
JIS K7127に準じて、温度23℃の条件でフィルムの主収縮方向と直交する方向(MD)について測定した。また、下記の基準で評価した結果も併記した。
◎:引張弾性率が1400MPa以上
○:引張弾性率が1200MPa以上1400MPa未満
×:引張弾性率が1200MPa未満
(2)熱収縮率
フィルムをMD10mm、TD100mmの大きさに切り取り、70℃、80℃、及び90℃の温水バスに10秒間それぞれ浸漬し、収縮量を測定した。熱収縮率は、フィルムの主収縮方向(TD)について、収縮前の原寸に対する収縮量の比率を%値で表示した。
(2)収縮応力
フィルムをMD10mm、TD70mmの大きさに切り出し、50mmの間隔でチャックし、ロードセルにタルミがないように固定した。その後90±0.5℃のシリコンオイルバスに試料片を10秒浸積させ、その間のフィルム主収縮方向(TD)の最大収縮応力を測定した。収縮応力は下記の式に当てはめて計算した。
収縮応力(MPa)=ロードセルにかかる荷重(N)/試料片の断面積(mm2
(3)自然収縮率
フィルムからMD50mm、TD1000mmの大きさに切り取り、30℃の雰囲気の恒温槽に30日間放置し、フィルムの主収縮方向(TD)について、収縮前の原寸に対する収縮量を測定し、その比率を%値で表示した。
(4)ヘーズ値
JIS K7105に準拠してフィルム厚み50μmでフィルムのヘーズ値を測定した。
(5)再生添加時のヘーズ
得られた熱収縮フィルムを粉砕器にて粉砕して再生ペレット化した後、フィルム100質量部に対して50質量部に相当する量を中間層(M層)に再生添加して、各実施例と同様にして再生添加フィルムを得た。得られた再生添加フィルムを用いて、JIS K7105に準拠してヘーズ値を測定した。
◎:ヘーズ値が7%未満
○:ヘーズ値が7%以上10%未満
×:ヘーズ値が10%以上
(6)MD低温引張破断伸度
JIS K7127に準じて、温度−5℃、試験速度200mm/分の条件でフィルムの主収縮方向と直交する方向(MD)について測定した。この際、測定する試験片は20個とし、結果の平均値をMD低温引張破断伸度とした。
(7)シール強度
フィルムのTDの両端より10mmの位置で、テトロヒドロフラン(THF)溶剤を用いて接着し、筒状ラベルを製造した。シール部分を円周方向(TD)に15mm幅に切り取り、それを恒温槽付引張試験機((株)インテスコ製「201X」)にて、TDに試験速度200mm/分の条件でT型剥離強度試験を行い、下記の基準で評価した。
◎:シール強度が5N/15mm幅以上
○:シール強度が4N/15mm幅以上5N/15mm幅未満
×:シール強度が3N/15mm幅未満
(8)収縮仕上がり性
10mm間隔の格子目を印刷したフィルムをMD100mm×TD298mmの大きさに切り取り、TDの両端を10mm重ねてテトロヒドロフラン(THF)溶剤で接着し、円筒状フィルムを作製した。この円筒状フィルムを、容量1.5Lの円筒型ペットボトルに装着し、蒸気加熱方式の長さ3.2m(3ゾーン)の収縮トンネル中を回転させずに、約4秒間で通過させた。各ゾーンでのトンネル内雰囲気温度は、蒸気量を蒸気バルブで調整し、70〜85℃の範囲とした。フィルム被覆後は下記基準で評価した。
◎:収縮が十分でシワ、アバタ、格子目の歪みが全く生じない
○:収縮が十分でシワ、アバタ、格子目の歪みがごく僅かに生じる
×:収縮は十分だがシワ、アバタ、格子目の歪みが顕著に生じる
(11)内容物の飛び出し
500mLペットボトル(日本コカコーラ社製「まろ茶500mL」のボトルを使用)に水を口部から5mmの高さまで入れ、円筒状にしたフィルムをボトルの首部まで全面に被せ、蒸気加熱方式の長さ3.2m(3ゾーン)の収縮トンネル中を回転させずに、約4秒間で通過させて収縮させた時に内容物が口部から飛び出す否か、以下の基準で評価した。
○:ほとんど飛び出しのない
△:時々飛び出しが起こる
×:かなりの頻度で飛び出す
(実施例1)
表1に示すように、表面層(S層)のポリエステル系樹脂組成物としてPETG(イーストマンケミカル社製copolyester6763)(以下「PETG」と略称する。)100質量部と、平均粒径2.4μmの無定形シリカ(富士シリシア化学社製 サイリシア320)を0.05質量%含有するPBT(ポリプラスチックス社製 ジュラネックス2002、Tg=45℃、Tm=225℃)(以下「PBT1」と略称する。)10質量部との混合樹脂組成物を用いた。また、中間層(M層)のスチレン系樹脂組成物としてSBS(スチレン/ブタジエン=90/10、貯蔵弾性率E’=2.5×109Pa、損失弾性率E”ピーク温度=54℃、ビカット軟化点=76℃、以下「SBS1」と略称する。)45質量%とSBS(スチレン/ブタジエン=71/29、貯蔵弾性率E’=2.1×108Pa、損失弾性率E”ピーク温度=−46℃及び84℃、ビカット軟化点=69℃、以下「SBS2」と略称する。)55質量%との混合樹脂組成物100質量部と、酸化防止剤(住友化学社製、商品名:スミライザーGS)0.2質量部とを含有する樹脂組成物を用いた。また、接着層(AD層)のスチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体としてSIS(JSRクレイトンポリマー社製 クレイトンD1124、スチレン含有率30質量%、Tg=−56℃、以下「AD1」と略称する。)を用いた。各層を構成する原料をそれぞれ別個の三菱重工業株式会社製2軸押出機に投入し、設定温度240℃で溶融混合後、各層の厚みが表面層(S層)/接着層(AD層)/中間層(M層)/接着層(AD層)/表面層(S層)=55μm/7μm/151μm/7μm/55μmとなるよう3種5層ダイスより共押出し、60℃のキャストロールで引き取り、冷却固化させて幅300mm、厚さ275μmの未延伸積層シートを得た。次いで、京都機械株式会社製フィルムテンター設備にて、予熱温度100℃、延伸温度85℃で横一軸方向に5.5倍延伸し、次いで95℃で6秒間の熱処理を行い、厚さ50μmの熱収縮性積層フィルムを得た。
また、得られた熱収縮フィルムを粉砕器にて粉砕して再生ペレット化した後、フィルム100質量部に対して50質量部に相当する量を中間層(M層)に再生添加して、上記と同様にして再生添加後の熱収縮性積層フィルムを得た。
また、得られた熱収縮フィルムを粉砕器にて粉砕して再生ペレット化した後、フィルム100質量部に対して50質量部に相当する量を中間層(M層)に再生添加して、上記と同様にして再生添加後の熱収縮性積層フィルムを得た。再生添加後の中間層(M層)の樹脂組成は、中間層を構成するスチレン系樹脂組成物100質量部に対し、表裏層(S層)を構成する樹脂組成物が42質量部、接着層(AD層)を構成する樹脂組成物が4質量部であった。
評価項目の全てに対して問題がなかったフィルムを(○)、1つでも問題があったフィルムを(×)として総合評価した。評価した結果を表2に示す。
(実施例2)
表1に示すように、表面層(S層)に用いたPBTの含有量を15質量部に変更し、延伸温度を80℃に変更した以外は、実施例1と同様に熱収縮性積層フィルム及び再生添加後の熱収縮性積層フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。
(実施例3)
表1に示すように、表面層(S層)に用いたPETGとPBTからなる混合樹脂組成物の質量比をPETG単体に変更し、未延伸積層シートにおける各層の厚みを表面層(S層)/接着層(AD層)/中間層(M層)/接着層(AD層)/表面層(S層)=69μm/7μm/123μm/7μm/69μmに変更した以外は、実施例1と同様に熱収縮性積層フィルム及び再生添加後の熱収縮性積層フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。
(実施例4)
表1に示すように、横1軸方向への延伸倍率を6.0倍に変更した以外は、実施例1と同様に熱収縮性積層フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。
(比較例1)
表1に示すように、接着層(AD層)を有さず、中間層(M層)の組成をSBS1とSBS2の混合樹脂組成物からPETG単体に変更した以外は、実施例1と同様に熱収縮性積層フィルム及び再生添加後の熱収縮性積層フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。
(比較例2)
表1に示すように、横1軸方向への延伸倍率を7.5倍に変更した以外は、実施例1と同様に熱収縮性積層フィルム及び再生添加後の熱収縮性積層フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。
(比較例3)
表1に示すように、実施例1において、未延伸積層シートにおける各層の厚みを表面層(S層)/接着層(AD層)/中間層(M層)/接着層(AD層)/表面層(S層)=93μm/7μm/75μm/7μm/93μmに変更した以外は、実施例1と同様に熱収縮性積層フィルム及び再生添加後の熱収縮性積層フィルムを得た。なお、再生添加後の中間層(M層)の樹脂組成は、中間層を構成するスチレン系樹脂組成物100質量部に対し、表裏層(S層)を構成する樹脂組成物が196質量部、接着層(AD層)を構成する樹脂組成物が12質量部であった。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。
(比較例4)
表1に示すように、横1軸方向への延伸温度を55℃に変更した以外は、実施例1と同様に熱収縮性積層フィルムを作製しようとしたが、フィルム延伸途中で破断が生じ、所定倍率で延伸した熱収縮性積層フィルムを得ることができなかった。
(比較例5)
表1に示すように、横1軸方向への延伸温度を125℃に変更した以外は、実施例1と同様に熱収縮性積層フィルムを作製しようとしたが、延伸途中でフィルムが自重で垂れ下がり、破断してしまい、所望の熱収縮性積層フィルムが得られなかった。
(比較例6)
表1に示すように、接着層(AD層)に用いたAD1をSBS(スチレン含有率87質量%、Tg36℃)(以下「AD2」と略称する)に変更した以外は、実施例1と同様に熱収縮性積層フィルム及び再生添加後の熱収縮性積層フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。
(比較例7)
表1に示すように、実施例1において、中間層(M層)に用いたSBS1とSBS2からなる混合樹脂組成物の質量比をSBS1:20質量%とSBS2:80質量%に変更した以外は、実施例1と同様に熱収縮性積層フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。
(比較例8)
表1に示すように、実施例1において、接着層(AD層)に用いたAD1をEAA(日本ポリエチ社製ノバテックA500W、AA含有量20wt%)(以下「AD3」と略称する)に変更した以外は、実施例1と同様に熱収縮性積層フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。
Figure 0004717597
Figure 0004717597
表1より本発明で規定する範囲内の層により構成された実施例1、2、3及び4のフィルムは、収縮仕上がり性、剥離強度、再生添加時の透明性、内容物の飛び出し評価においていずれも比較例1乃至8のフィルムよりも優れていた。
これに対し、ポリエステル系樹脂組成物のみで構成された比較例1のフィルム、本発明で規定する範囲外で延伸を行った比較例2のフィルム、及び本発明で規定する範囲外の積層比で構成された比較例3のフィルムは、いずれも収縮応力が高く収縮仕上がり性に劣っていた。また、本発明で規定する範囲外の温度で延伸を行った比較例4及び5のフィルムでは所望の倍率での延伸が困難であった。さらに、接着層(AD層)に本発明で規定する樹脂組成物以外の樹脂を用いた比較例6及び8のフィルムは、十分なシール強度が得られず、再生添加後のフィルムの透明性が著しく悪化した。
これより、本発明のフィルムは、フィルムの腰、自然収縮、再生添加時の透明性が良好であり、かつフィルムの層間剥離、収縮応力が抑制された、収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に適した熱収縮性積層フィルムであることが分かる。
本発明のフィルムは、フィルムの腰、再生添加時の透明性が良好であり、かつフィルムの自然収縮、層間剥離、収縮応力が抑制された、収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に適した熱収縮性積層フィルムであるため、ボトル(ブローボトル)、トレー、弁当箱、総菜容器、乳製品容器等で用いられる成形品として利用できる。特に製造工程において中間層にリターン可能であるためコスト的にも非常に有利である。

Claims (12)

  1. 表面層(S層)、中間層(M層)及び接着層(AD層)を有する積層フィルムであって、各層が下記成分を主成分とする樹脂組成物からなるとともに、フィルム主収縮方向と直交する方向のJIS K7127に準拠して測定される引張弾性率が1200MPa以上であり、かつ90℃シリコンオイルに10秒間浸漬したときのフィルム主収縮方向の最大収縮応力が5MPa以上8MPa以下あることを特徴とするであることを特徴とする熱収縮性積層フィルム。
    表面層(S層):多価カルボン酸残基及び多価アルコール残基とを含有する芳香族ポリエステル系樹脂組成物
    中間層(M層):スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体からなるスチレン系樹脂組成物
    接着層(AD層):スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体又はその水素添加誘導体を含み、該共重合体又は水素添加誘導体中のスチレン系炭化水素の含有率が5質量%以上40質量%以下である樹脂組成物
  2. 表面層(S層)、中間層(M層)及び接着層(AD層)を有し、各層が下記成分を主成分とする樹脂組成物で構成されるとともに、60℃以上120℃以下で少なくとも一軸方向に2倍以上7倍以下延伸されてなる積層フィルムであって、該フィルムの主収縮方向と直交する方向のJIS K7127に準拠して測定される引張弾性率が1200MPa以上であり、かつ90℃シリコンオイルに10秒間浸漬したときのフィルム主収縮方向の最大収縮応力が5MPa以上8MPa以下あることを特徴とする熱収縮性積層フィルム。
    表面層(S層):多価カルボン酸残基及び多価アルコール残基を含有する芳香族ポリエステル系樹脂組成物
    中間層(M層):スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素とのブロック共重合体からなるスチレン系樹脂組成物
    接着層(AD層):スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体又はその水素添加誘導体からなり、該共重合体又は水素添加誘導体中のスチレン系炭化水素の含有率が5質量%以上40質量%以下である樹脂組成物
  3. 前記中間層(M層)が該中間層(M層)を構成する樹脂100質量部に対し、前記表面層(S層)を構成する樹脂1質量部以上100質量部以下を含む請求項1又は2に記載の熱収縮性積層フィルム。
  4. 前記中間層(M層)が該中間層(M層)を構成する樹脂100質量部に対し、前記接着層(AD層)を構成する樹脂1質量部以上30質量部以下を含む請求項1乃至3のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
  5. 前記表面層(S層)を構成する芳香族ポリエステル系樹脂組成物が、芳香族ジカルボン酸残基とジオール残基とからなり、全ジオール残基中に15モル%以上50モル%以下の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を含有する非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂を主成分とする樹脂組成物である請求項1乃至4のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
  6. 前記接着層(AD層)を構成する共重合体又はその水素添加誘導体のガラス転移点が20℃以下である請求項1乃至のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
  7. 前記表面層(S層)のフィルム全体の厚みに対する厚み比が10%以上70%以下である請求項1乃至のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
  8. JIS K7105に準拠して測定されるヘーズ値が10%以下である請求項1乃至のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
  9. 70℃温水に10秒間浸漬したときの主収縮方向の熱収縮率が10%以上40%以下であり、かつ80℃温水に10秒間浸漬したときの主収縮方向の熱収縮率が30%以上70%以下である請求項1乃至のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
  10. 請求項1乃至のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルムを基材として用いた成形品。
  11. 請求項1乃至のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルムを基材として用いた熱収縮性ラベル。
  12. 請求項10に記載の成形品又は請求項11に記載の熱収縮性ラベルを装着した容器。
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