JP4706487B2 - 内燃機関の燃料噴射制御装置 - Google Patents
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Description
また、ポートインジェクタと筒内インジェクタとを備えたデュアルインジェクタシステムが知られている(例えば、特許文献4参照。)。
運転状態に応じた前記吸気ポートの近傍における燃料付着率(以下、単に燃料付着率という。)を記憶する付着率記憶手段と、
前記ポートインジェクタ及び前記筒内インジェクタの噴射比率と目標空燃比とを含む入力パラメータを、前記付着率記憶手段に記憶された燃料付着率をパラメータとして有する動的挙動モデルに入力し、前記ポートインジェクタ及び前記筒内インジェクタそれぞれの燃料噴射量を算出する燃料噴射量算出手段と、
定常運転中において、前記噴射比率を変更する噴射率変更手段と、
前記噴射率変更手段により噴射比率が少なくとも1サイクル変更されることに起因して変化する排気中の空燃比(以下、排気空燃比という。)の変化前後の実値を検出する空燃比検出手段と、
前記空燃比検出手段により検出された実値と、モデル計算式から算出された排気空燃比のモデル計算値との関係を定めた関係式と、前記モデル計算値と燃料付着率との関係を定めた関係式とに基づいて、前記空燃比検出手段により検出された変化前後の実値から逆算して、前記動的挙動モデルのパラメータである燃料付着率を算出する付着率算出手段と、を備えたことを特徴とする。
前記空燃比検出手段は、前記所定サイクルにおいて変化する排気空燃比の実値を検出するものであり、
前記付着率算出手段により算出された燃料付着率を学習値として、前記付着率記憶手段に反映して燃料付着率を補正する付着率補正手段を備えることを特徴とする。
前記空燃比検出手段は、該後のサイクルにおいて変化する排気空燃比の実値を検出するものであり、
この検出された空燃比に基づいて、前記動的挙動モデルのパラメータである付着燃料の残留率を補正する残留率補正手段を更に備えたことを特徴とする。
前記吸気ポートの近傍における燃料付着を考慮した動的挙動モデルを用いて、前記ポートインジェクタからの燃料噴射量と、前記筒内インジェクタからの燃料噴射量とを算出する燃料噴射量算出手段と、
前記ポートインジェクタと前記筒内インジェクタの噴射率を変更可能な噴射率変更手段と、
前記噴射率変更手段により噴射率が少なくとも1サイクル変更されることに起因して変化する空燃比を検出する空燃比検出手段と、
前記空燃比検出手段により検出された変化後の空燃比に基づいて、前記動的挙動モデルのパラメータである噴射燃料の付着率を補正する付着率補正手段とを備えたことを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置において、
目標空燃比から目標燃料量を算出する目標燃料量算出手段と、
前記空燃比検出手段により検出された空燃比から実燃料量を算出する実燃料量算出手段と、
前記目標燃料量算出手段により算出された目標燃料量と前記実燃料量算出手段により算出された実燃料量との差分を積算する積算手段と、
前記積算手段により積算された差分に基づいて、前記動的挙動モデルのパラメータである燃料付着量を補正する付着量補正手段とを更に備えたことを特徴とする。
[システム構成の説明]
図1は、本発明の実施の形態1によるシステム構成を示す概略図である。図1に示すシステムは、内燃機関1を備えている。内燃機関1は複数の気筒を有しているが、図1にはそのうちの一気筒のみを示している。内燃機関1は、内部にピストン2を有するシリンダブロック4を備えている。シリンダブロック4には水温センサ6が設けられている。水温センサ6は、冷却水温Twを検出するように構成されている。
ピストン2は、クランク機構を介してクランク軸8に連結されている。クランク軸8の近傍には、クランク角センサ10が設けられている。クランク角センサ10は、クランク軸8の回転角度(クランク角CA)を検出するように構成されている。
ECU60は、クランク角CAに基づいて、機関回転数NEを算出する。また、ECU60は、スロットル開度TA等に基づいて、機関負荷KLを算出する。また、ECU60は、各センサの出力に基づいて、燃料噴射制御を行う。以下、燃料噴射制御について詳述する。
図2を参照して、本実施の形態1における燃料噴射制御について説明する。図2は、内燃機関1における燃料の挙動を模式的に示す図である。
図2において、符号「fip」は、ポートインジェクタ50から噴射された燃料量(以下「ポート噴射量fip」という。)を表している。ポートインジェクタ50から噴射された燃料は、その全てが燃焼室14内(以下「筒内」ともいう。)に吸入されるのではなく、一部の燃料は吸気ポート18の壁面や吸気バルブ20(以下「ポート壁面等」という。)に付着する。符号「fwp」は、ポート壁面等に付着して燃焼室14内に吸入されない燃料量(以下「付着量fwp」という。)を表している。このポート壁面等に付着した燃料はやがて気化し、燃焼室14内に吸入される。従って、吸気ポート18から燃焼室14内には、ポートインジェクタ50から噴射された燃料のうちポート壁面等に付着しなかった分と、ポート壁面等に付着した燃料が気化した分とが吸入される。
ここで、本発明者の知見によれば、内燃機関1の完全暖機後において、燃焼室14の壁面に付着する燃料量(以下「筒内付着量」という。)は、この筒内付着量を考慮して筒内噴射量fidを補正する必要がない程度の極微量であると考えられる。そこで、本実施の形態1においては、筒内インジェクタ52から噴射された燃料の全てが、燃料室14内で霧化した状態として存在するものと仮定する。
AFRc=Ga/fc・・・(1)
そこで、本実施の形態1のシステムでは、筒内残留ガスと吹き返しガスとの影響を考慮して、より厳密には、筒内に残留する燃料量と吸気ポート18に吹き返される燃料量とを考慮して、排気空燃比AFReが目標空燃比AFRとなるように、各インジェクタ50,52からの燃料噴射量fip,fidを算出することを原則としている。
詳細には、kサイクルの開始時に、(k-1)サイクルの排気行程で残留したGr(k-1)で表される量の残留ガスが筒内に存在すると共に、(k-1)サイクルの吸気行程若しくは排気行程で吹き返されたGb(k-1)で表される量の吹き返しガスが吸気ポート18内に存在している。更にKサイクルの吸気行程中に、Ga(k)で表される量の新規ガスと、Gb(k-1)で表される量の吹き返しガスとが筒内に吸入されたとすると、kサイクルの吸気行程終了時における筒内総ガス量はGa(k)+Gr(k-1)+Gb(k-1)で表される量となる。内燃機関1の排気行程では、筒内総ガス量Ga(k)+Gr(k-1)+Gb(k-1)の一部が排出ガス量として排出され、筒内総ガス量の他の一部Gb(k)が吸気ポート18に吹き返され、その残部が次サイクルの開始時に筒内に残留している筒内残留ガス量Gr(k)となる。したがって、kサイクルの排出ガス量Gex(k)は、次式(2)のように表すことができる。
Gex(k)=Ga(k)+Gb(k-1)+Gr(k-1)-Gb(k)-Gr(k)・・・(2)
詳細には、kサイクルの開始時における筒内残留燃料量がfr(k)であり、kサイクル終了時の筒内残留燃料量(つまり、次サイクルの筒内残留燃料量)がfr(k)であり、kサイクル終了時の吹き返し燃料量がfb(k)であり、kサイクル中における筒内燃料量がfc(k)であるとすれば、kサイクル中における排出燃料量fex(k)は、次式(3)のように表すことができる。
fex(k)=fc(k)+fb(k-1)+fr(k-1)-fb(k)-fr(k)・・・(3)
AFRe=Gex/fex・・・(4)
したがって、上記の式(2)乃至式(4)から、kサイクルにおける排気空燃比AFRe(k)を目標空燃比AFR(k)に一致させるための条件は、次式(5)で表すことができる。
AFR(k)=Gex(k)/fex(k)
={Ga(k)+Gb(k-1)+Gr(k-1)-Gb(k)-Gr(k)}/{fc(k)+fb(k-1)+fr(k-1)-fb(k)
-fr(k)}・・・(5)
fc(k)={Ga(k)+Gb(k-1)+Gr(k-1)-Gb(k)-Gr(k)}/AFR(k)-fb(k-1)-fr(k-1)+fb(k)
+fr(k)・・・(6)
換言すると、kサイクルにおける筒内燃料量fc(k)を上式(6)に従って算出すれば、kサイクルにおける排気空燃比AFRe(k)を目標空燃比AFR(k)に一致させることが可能となる。
図3は、各インジェクタ50,52からの燃料噴射量fip,fidと筒内燃料量fcとの関係を表す燃料挙動モデルを説明するための図である。本実施の形態1のシステムは、この燃料挙動モデルを前提として、筒内燃料量fcに対応する各燃料噴射量fip,fidを算出する。
fwp(k+1)=Pp(k)×fwp(k)+Rp(k)×fip(k)・・・(7)
また、kサイクルにおいて吸気ポート18から燃焼室14内に流入するポートインジェクタ50からの燃料の量fcp(k)は、次式(8)のように表すことができる。
fcp(k)=(1-Rp(k))×fip(k)+(1-Pp(k))×fwp(k)・・・(8)
fcd(k)=fid(k)・・・(9)
fc(k)=fcp(k)+fcd(k)
=(1-Rp(k))×fip(k)+(1-Pp(k))×fwp(k)+fid(k)・・・(10)
fip(k)×(1-γ(k))=fid(k)×γ(k)・・・(11)
fip(k)=γ(k)/{(1-γ(k))+(1-Rp(k))×γ(k)}
×[{Ga(k)+Gb(k-1)+Gr(k-1)-Gb(k)-Gr(k)}/AFR(k)-(1-Pp(k))×fwp(k)
-fb(k-1)-fr(k-1)+fb(k)+fr(k)]・・・(12)
fid(k)=(1-γ(k))/{(1-γ(k))+(1-Rp(k))×γ(k)}
×[{Ga(k)+Gb(k-1)+Gr(k-1)-Gb(k)-Gr(k)}/AFR(k)-(1-Pp(k))×fwp(k)
-fb(k-1)-fr(k-1)+fb(k)+fr(k)]・・・(13)
kサイクルにおいて、ポートインジェクタ50からの燃料噴射量fipのうち、ポート壁面等に付着する燃料の量は「Rp×fip」であり、燃焼室14内に吸入される燃料量は(1-Rp)×fipである。さらに、上述した吹き返し燃料量fb及び筒内残留燃料量frを考慮すると、kサイクルにおいて燃焼室14から排出される燃料量fex(k)は、次式(14)のように表すことができる。
fex(k)=(1-Rp(k))×fip(k)+fid(k)+fb(k-1)+fr(k-1)-fb(k)-fr(k)・・・(14)
また、kサイクルにおいて、燃焼室14から排出される空気量Gex(k)は、上式(2)で表される。ここで、上式(2)におけるGb(k-1),Gb(k),Gr(k-1),Gr(k)は、上述したように、内燃機関1の運転状態との関係で定められたマップを参照することで、車両上で推定することができる。また、吸入空気量Gaは、エアフロメータ34により検出することができるため、Gex(k)を求めることができる。また、内燃機関1は定常運転中であるので、排出空気量は変化していないと仮定し、Gex(k)=Gexとすることができる。よって、モデル計算されたkサイクルにおける排気空燃比AFRe(k)は、次式(15)で表される。
AFRe(k)=Gex(k)/fex(k)
=Gex/{(1-Rp(k))×fip(k)+fid(k)+fb(k-1)+fr(k-1)-fb(k)
-fr(k)}・・・(15)
時刻t1において排気バルブ42が開弁されると、モデル計算による排気空燃比AFRe(k)が変化する。その後、時刻t1から所定時間が経過した時刻t2から、空燃比センサ48の出力AFRsが上昇し始める。その後、時刻t2から所定時間が経過した時刻t3において、空燃比センサ48により検出された排気空燃比AFRsが、モデル計算による排気空燃比AFRe(k)の63%の値に達する。この時刻t1から時刻t2までの時間が無駄時間τであり、時刻t2から時刻t3までの時間が応答遅れTである。図5に示す例では、応答遅れTは、空燃比センサ48の63%応答の時定数である。無駄時間τは、内燃機関1の運転状態や緒元(排気バルブ42から空燃比センサ48までの長さ)に対して相関を有している。また、応答遅れTは、内燃機関1の運転状態に対して相関を有している。具体的には、応答遅れTは、空気量の影響を受け、軽負荷ほど大きく、高負荷ほど小さい傾向を有する。このため、それらと内燃機関1の運転状態との関係を事前に把握してマップを作成しておくことで、無駄時間τ及び応答遅れTを車両上で推定することができる。
T×{d(AFRs)/dt}+AFRs=AFRe・・・(16)
ECU60で計算可能にするため、上式(16)を離散化すると、次式(17)が得られる。
AFRs(k+1)=(1-Δt/T)×AFRs(k)+(Δt/T)×AFRe(k)・・・(17)
ここで、kサイクルにおいて空燃比センサ48により検出される排気空燃比AFRs(k)は、次式(18)のように変形できる。次式(18)において、「AFRsτ(t)」は演算時刻tにおいて空燃比センサ48により検出された排気空燃比AFRsをτだけずらしたものを表し、「AFRs(t+τ)」は空燃比センサ48により検出された排気空燃比AFRsを時間(t+τ)だけずらしたものを表している。
AFRs(k)=AFRsτ(t)=AFRs(t+τ)・・・(18)
上式(15)と上式(18)を上式(17)に当てはめると、次式(19)が得られる。
AFRs(t+τ)=(1-Δt/T)×AFRs(k-1)+(Δt/T)×[Gex/{(1-Rp(k))×fip(k)+fid(k)
+fb(k-1)+fr(k-1)-fb(k)-fr(k)}]・・・(19)
Rp(k)=1-(1/fip(k))×[1/{AFRs(t+τ)-(1-Δt/T)×AFRs(k-1)}×{Gex×(Δt/T)}
-fid(k)+fb(k-1)+fr(k-1)-fb(k)-fr(k)]・・・(20)
ここで、(k-1)サイクルとkサイクルとでは、2つのインジェクタ50,52の噴射率が異なるだけであるため、kサイクルにおけるポート噴射量fip(k)及び筒内噴射量fid(k)は、(k-1)サイクルの値を用いることができる。また、無駄時間τ及び応答遅れTは、内燃機関1の運転状態との関係で定められたマップを参照して推定することができる。また、Gexのうち、Ga(k)は、エアフロメータ34により検出することができ、吹き返しガス量Gb(k-1),Gb(k)及び筒内残留ガス量Gr(k-1),Gr(k)は、内燃機関1の運転状態との関係で定められたマップを参照して推定することができる。また、吹き返し燃料量fb(k-1),fb(k)及び筒内残留燃料量fr(k-1),fr(k)も、内燃機関1の運転状態との関係で定められたマップを参照して推定することができる。また、排気空燃比AFRs(t+τ),AFRs(k-1)は、空燃比センサ48により検出することができる。
それらが推定及び検出されれば、上式(20)にしたがって演算周期Δtで計算することにより、kサイクルのポート付着率Rp(k)を算出することができる。また、内燃機関1は定常運転中であるため、運転条件は大きく変化しない。よって、上式(20)により求められたkサイクルのポート付着率Rp(k)は一定、つまり、Rp=Rp(k)=Rp(k-1)とすることができる。
その後の(k+2)サイクル及び(k+3)サイクルにおいて、ポート壁面等から蒸発して燃焼室14内に吸入される燃料量が次第に減少する。その結果、図4(C)に示すように、排気空燃比AFRsは次第にストイキに近づき、(k+4)サイクルにおいて目標空燃比AFRに収束する。
図4に示す例のように、kサイクルでポート噴射を行った場合、その後の(k+1)サイクル以降においてポート残留率Ppが求められる。
(k+1)サイクルにおいて、燃焼室14から排出される燃料量fex(k+1)は、次式(21)のように表すことができる。
fex(k+1)=Rp×fip(k)×(1-Pp)+fid(k+1)+fb(k)+fr(k)-fb(k+1)-fr(k+1)・・(21)
また、内燃機関1は定常運転中であるので、(k+1)サイクルにおいて燃焼室14から排出される空気量Gex(k+1)は、kサイクルの空気量Gex(k)と同じである。すなわち、Gex(k+1)=Gex(k)=Gexとすることができる。よって、モデル計算による(k+1)サイクルにおける排気空燃比AFRe(k+1)は、次式(22)で表される。
AFRe(k+1)=Gex(k+1)/fex(k+1)
=Gex/{Rp×fip(k)×(1-Pp)+fid(k+1)+fb(k)+fr(k)-fb(k+1)
-fr(k+1)}・・・(22)
Pp(k+1)=1-{1/(Rp×fip(k))}×[[1/{AFRs(t+τ)-(1-Δt/T)×AFRs(k)}]
×(Gex×Δt/T)-fid(k+1)+fb(k)+fr(k)-fb(k+1)-fr(k+1)]・・・(23)
ここで、(k+1)サイクルと(k-1)サイクルとでは同じポート噴射量及び筒内噴射量であるため、(k+1)サイクルにおけるポート噴射量fip(k+1)及び筒内噴射量fid(k+1)は、(k-1)サイクルの値を用いることができる。また、無駄時間τ及び応答遅れTは、内燃機関1の運転状態との関係で定められたマップを参照して推定することができる。また、Gexは、上記ポート付着率Rpの算出時に求められた値を用いることができる。また、吹き返し燃料量fb(k),fb(k+1)及び筒内残留燃料量fr(k),fr(k+1)も、内燃機関1の運転状態との関係で定められたマップを参照して推定することができる。排気空燃比AFRs(t+τ),AFRs(k)は、空燃比センサ48により検出することができる。
それらが推定及び検出されれば、上式(23)にしたがって演算周期Δtで計算することにより、(k+1)サイクルのポート残留率(k+1)を算出することができる。
なお、ポート付着率Rpは、ポート噴射が行われるkサイクルにおいてのみ求められる。一方、ポート残留率Ppは、排気空燃比AFRsが定常に落ち着くまでの間、複数のサイクルで計算することができる。図4に示す例では、ポート残留率Ppを(k+3)サイクルまで算出することができる。このようにポート残留率Ppを複数サイクルで算出することで、ポート残留率Ppの学習補正の精度を向上させることができる。
本実施の形態1のシステムでは、ポート付着率Rp及びポート残留率Ppを学習補正するに当たり、図6に示すルーチンが実行される。図6は、本実施の形態1において、ECU60により実行されるポート付着率Rp及びポート残留率Ppの学習補正制御のフローチャートである。
上記ステップ100で定常運転中であると判別された場合には、筒内噴射率が100%であるか否か、すなわち、筒内噴射のみの状態であるか否かを判別する(ステップ102)。ステップ102で筒内噴射率が100%でないと判別された場合には、既にポート壁面等に燃料が付着しており、ポート付着率Rpを算出することができないと判断されるため、本ルーチンを一旦終了する。
上記ステップ114で排気空燃比AFRsが定常に落ち着いていないと判別された場合には、上式(24)にしたがって学習値であるポート残留率Ppを算出する(ステップ116)。
次に、図7及び図8を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。本実施の形態2のシステムは、図1に示すハードウェア構成を用いて、ECU60に、後述する図8に示すルーチンを実行させることにより実現することができる。
上記実施の形態1では、上式(7)にしたがって、ポート壁面等に付着する燃料量である付着量fwpが算出されている。例えば、(k+2)サイクルの付着量fwp(k+2)は、次式(24)にしたがって算出することができる。
fwp(k+2)=Pp×fwp(k+1)+Rp×fip(k+1)
=Pp×(1-Rp)×fip(k+1)+Rp×fip(k+1)・・・(24)
しかし、かかる場合に、上記ポート付着率Rp及びポート残留率Ppと同様に、経時変化や機差等により燃料挙動モデルのパラメータである付着量fwpが適正値からずれてしまう場合がある。かかる場合も、噴射量fip,fidを精度良く算出するため、付着量fwpの学習補正が必要である。そこで、本実施の形態2においては、付着量fwpの学習方法について説明する。
図7(A)及び(B)に示すように、kサイクルよりも前は、筒内噴射率が0%であり、ポート噴射率が100%である。すなわち、kサイクルよりも前は、ポート噴射のみが実行されるため、ポート壁面等には燃料が定常的に付着している状態である。また、図7(C)に示すように、kサイクルよりも前は、目標空燃比AFR及び排気空燃比AFRsはストイキ近傍の値である。
目標空燃比がAFRであり、燃焼室14からの排出ガス量がGexであるとすると、目標燃料量frefは、次式(25)のように表すことができる。
fref=Gex/AFR・・・(25)
排出ガス量Gexは、上記実施の形態1と同様の手法を用いて、上式(2)にしたがって算出することができる。また、目標空燃比AFRは、内燃機関1の運転状態に応じて設定される。
fs=Gex/AFRs・・・(26)
fwp=∫k|fref(k)-fs(k)|dk・・・(27)
上式(27)により求められた付着量fwpをマップに反映させることで、付着量fwpの学習補正が行われる。
本実施の形態2のシステムでは、付着量fwpを学習補正するに当たり、図8に示すルーチンが実行される。図8は、本実施の形態2において、ECU60により実行される付着量fwpの学習補正制御のフローチャートである。
一方、上記ステップ120でポート噴射率が100%であると判別された場合には、上式(25)にしたがって目標燃料量frefを算出する(ステップ122)。
そして、空燃比センサ48の出力を読み込むことで、排気空燃比AFRsを検出する(ステップ126)。このステップ126では、上記ステップ124の噴射率変更に起因して燃料リッチ側にシフトした排気空燃比AFRsが検出される。その後、上記ステップ126で検出された排気空燃比AFRsを用いて、上式(26)にしたがって実燃料量fsを算出する(ステップ128)。
次に、図9及び図10を参照して、本発明の実施の形態3について説明する。本実施の形態3のシステムは、図1に示すハードウェア構成を用いて、ECU60に、後述する図10に示すルーチンを実行させることにより実現することができる。
上記実施の形態2では、図7に示すように、噴射率の変更に起因する排気空燃比AFRsのリッチ側へのシフト量が大きい。このため、燃料モデルのパラメータである付着量fwpの学習を容易に行うことができるが、エミッションやドライバビリティが悪化する可能性がある。
そこで、本実施の形態3では、排気空燃比AFRsのリッチ側へのシフト量を小さくすることで、エミッションやドライバビリティの悪化を低減する方法について説明する。
Kサイクルよりも前は、上記実施の形態2と同様に、筒内噴射率が0%でありポート噴射率が100%である。また、図9(C)に示すように、kサイクルよりも前は、目標空燃比AFR及び排気空燃比AFRsはストイキ近傍の値である。
本実施の形態3のシステムでは、付着量fwpを学習補正するに当たり、図10に示すルーチンが実行される。図10は、本実施の形態3おいて、ECU60により実行される付着量fwpの学習補正制御のフローチャートである。
続いて、噴射率を変更する(ステップ140)。このステップ140では、筒内噴射率がB%に変更されると共に、ポート噴射率が0%に変更される。図9に示す例では、kサイクルにおいて、このステップ140のように噴射率が変更されている。これにより、ポート噴射のみの状態から筒内噴射のみの状態に変更されると共に、トータルの燃料噴射量が減少せしめられる。
一方、上記ステップ134で排気空燃比AFRsが定常に落ち着いたと判別された場合には、上記ステップ130で積算された積算値を付着量fwpとしてマップに反映させる(ステップ138)。これにより、付着量fwpの学習補正が実行される。
次に、図11及び図12を参照して、本発明の実施の形態4について説明する。本実施の形態4のシステムは、図1に示すハードウェア構成を用いて、ECU60に、後述する図12に示すルーチンを実行させることにより実現することができる。
上記実施の形態2では、ポート噴射のみの状態から筒内噴射のみの状態に変更することで、排気空燃比AFRsをストイキよりもリッチ側にシフトさせている。
本実施の形態4では、筒内噴射のみの状態からポート噴射のみの状態に変更することで、排気空燃比AFRsをリーン側にシフトさせて、付着量fwpを学習補正する場合について説明する。
図11(A)及び(B)に示すように、kサイクルよりも前は、筒内噴射率が100%であり、ポート噴射率が0%である。すなわち、kサイクルよりも前は、筒内噴射のみが実行されるため、ポート壁面等には燃料が付着していない状態である。また、図11(C)に示すように、kサイクルよりも前は、目標空燃比AFR及び排気空燃比AFRsはストイキ近傍の値である。
本実施の形態4のシステムでは、付着量fwpを学習補正するに当たり、図12に示すルーチンが実行される。図12は、本実施の形態3おいて、ECU60により実行される付着量fwpの学習補正制御のフローチャートである。
次に、上記実施の形態2と同様にして、排気空燃比AFRsを検出し(ステップ126)、上式(27)にしたがって実燃料量fsを算出し(ステップ128)、上式(28)にしたがって目標燃料量frefと実燃料量fsの差(絶対値)を積算する(ステップ130)。
一方、このステップ134で排気空燃比AFRsが定常に落ち着いたと判別された場合には、上記ステップ130で積算された目標燃料量frefと実燃料量fsとの差の積算値を付着量fwpとしてマップに反映させる(ステップ138)。これにより、付着量fwpの学習補正が実行される。
次に、図13及び図14を参照して、本発明の実施の形態5について説明する。本実施の形態5のシステムは、図1に示すハードウェア構成を用いて、ECU60に、後述する図14に示すルーチンを実行させることにより実現することができる。
上記実施の形態4では、図11に示すように、噴射率の変更に起因する排気空燃比AFRsのリーン側へのシフト量が大きい。このため、燃料モデルのパラメータである付着量fwpの学習を容易に行うことができるが、エミッションやドライバビリティが悪化する可能性がある。
そこで、本実施の形態5では、排気空燃比AFRsのリーン側へのシフト量を小さくすることで、エミッションやドライバビリティの悪化を低減する方法について説明する。
Kサイクルよりも前は、上記実施の形態4と同様に、筒内噴射率が100%でありポート噴射率が0%である。また、図13(C)に示すように、kサイクルよりも前は、目標空燃比AFR及び排気空燃比AFRsはストイキ近傍の値である。
本実施の形態5のシステムでは、付着量fwpを学習補正するに当たり、図14に示すルーチンが実行される。図14は、本実施の形態5おいて、ECU60により実行される付着量fwpの学習補正制御のフローチャートである。
図14に示すルーチンでは、先ず、上記実施の形態4と同様にして、ステップ100,102,122の処理を順次実行する。
6 水温センサ
10 クランク角センサ
14 燃焼室
16 点火プラグ
18 吸気ポート
20 吸気バルブ
22 吸気通路
26 スロットルバルブ
30 スロット開度センサ
32 アクセル開度センサ
34 エアフロメータ
40 排気ポート
42 排気バルブ
44 排気通路
46 触媒
48 空燃比センサ
50 ポートインジェクタ
52 筒内インジェクタ
60 ECU
Claims (2)
- 吸気ポートに燃料を噴射するポートインジェクタと、筒内に燃料を噴射する筒内インジェクタとを有する内燃機関の燃料噴射制御装置であって、
前記吸気ポートの近傍における燃料付着を考慮した動的挙動モデルを用いて、前記ポートインジェクタからの燃料噴射量と、前記筒内インジェクタからの燃料噴射量とを算出する燃料噴射量算出手段と、
前記ポートインジェクタと前記筒内インジェクタの噴射率を変更可能な噴射率変更手段と、
前記噴射率変更手段により噴射率が少なくとも1サイクル変更されることに起因して変化する空燃比を検出する空燃比検出手段と、
前記空燃比検出手段により検出された変化後の空燃比に基づいて、前記動的挙動モデルのパラメータである噴射燃料の付着率を補正する付着率補正手段とを備えたことを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置において、
目標空燃比から目標燃料量を算出する目標燃料量算出手段と、
前記空燃比検出手段により検出された空燃比から実燃料量を算出する実燃料量算出手段と、
前記目標燃料量算出手段により算出された目標燃料量と前記実燃料量算出手段により算出された実燃料量との差分を積算する積算手段と、
前記積算手段により積算された差分に基づいて、前記動的挙動モデルのパラメータである燃料付着量を補正する付着量補正手段とを更に備えたことを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
前記噴射率変更手段により前記筒内インジェクタの噴射率がゼロから所定値に変更される場合には、前記目標空燃比をストイキよりも燃料リーン側に変更し、前記噴射率変更手段により前記ポートインジェクタの噴射率がゼロから所定値に変更される場合には、前記目標空燃比をストイキよりも燃料リッチ側に変更する目標空燃比変更手段を更に備えたことを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。
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