JP4686871B2 - リチウム二次電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウムの吸蔵・脱離現象を利用したリチウム二次電池に関し、詳しくは、水溶液を電解液とする水系リチウム二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
リチウムの吸蔵・脱離現象を利用したリチウム二次電池は、高エネルギー密度であることから、携帯電話、パソコン等の小型化に伴い、通信機器、情報関連機器の分野で広く普及するに至っている。また、自動車の分野においても、資源問題、環境問題から電気自動車の開発が急がれており、この電気自動車用の電源としても、リチウム二次電池が検討されている。
【0003】
現在実用化されているリチウム二次電池は、一般に、正極活物質にリチウム遷移金属複合酸化物を用いた正極と、負極活物質に炭素材料等を用いた負極と、リチウム塩を有機溶媒に溶解した非水系電解液とから構成されており、4V級の高い電圧を有するものが主流をなしている。
【0004】
しかし、上述のリチウム二次電池は、電解液に引火点の低い非水系の有機溶媒を用いていることから、その有機溶媒の発火、燃焼が問題となる。また、例えば、過充電状態に至った場合や、高温環境下にさらされた場合には、電解液が分解して可燃性ガスが発生するおそれがあり、安全性を確保することを目的として、PTC素子、安全弁等のデバイスを装備するのが一般的である。しかし、可燃性の溶媒を使用することから、安全性を充分に確保するには相当の困難が付きまとう。特に、自動車等の動力用電源としての二次電池は、大型であって、使用する有機溶媒の量が多いことに加え、使用温度等、過酷な条件下での使用が予想されるため、より高い安全性が要求される。
【0005】
また、電池内にわずかでも水分が存在すると、水の電気分解反応によるガスの発生、水とリチウムとの反応によるリチウムの消費、電池構成材料の腐食等の種々の問題が生じる。このため、リチウム二次電池の製造においては、徹底したドライ環境が必要とされ、水分を完全に除去するための特殊な設備と多大な労力を要し、このことが、電池のコストを引き上げる一因となっている。
【0006】
一方、電解液に水溶液を用いた水系リチウム二次電池では、上記の問題は基本的に発生しない。また、一般に、水溶液は非水溶液に比べ導電性が良いため、電池の反応抵抗も減少し、電池の出力特性、レート特性は向上する。しかし、水系リチウム二次電池は、水の電気分解反応が起こらない電位範囲で充放電させることが必要であることから、非水系リチウム二次電池と比較して、大きな放電容量を確保することが難しいという欠点を抱える。
【0007】
このことから、水系リチウム二次電池では、水溶液中で安定なことに加え、水の電気分解により酸素や水素が発生しない電位範囲において、可逆的に大量のリチウムイオンの吸蔵・脱離が可能な、つまり、大きな容量を有する活物質を用いることが望まれている。
【0008】
従来から検討されている水系リチウム二次電池としては、例えば、特表平9−508490号公報に示すように、正極活物質としてLiMn2O4等を用い、負極活物質としてLiMn2O4、VO2等を用いた電池が、また、特開平12−77073号公報に示すように、正極活物質としてLiCoO2、Li(Ni,Co)O2、LiMn2O4等を用い、負極活物質としてLiV3O8等を用いた電池が存在する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者が活物質に着目して種々の試験を行ったところ、従来から検討されている正極活物質であるLiCoO2、Li(Ni,Co)O2、LiMn2O4等や負極活物質であるLiV3O8、VO2等は、水の電気分解反応が起こらない電位範囲において充分な容量を取り出すことが困難であり、また水溶液中での安定性にも問題があるため、それらを用いて実際に水系リチウム二次電池を構成した場合、そのリチウム二次電池の容量およびサイクル特性は実用的に満足できるものではないことが判った。
【0010】
本発明者は、水系リチウム二次電池についてのさらなる研究および幾多もの実験の結果、水系リチウム二次電池の電池電圧範囲内において大きな容量を有する正極活物質を見出すに至った。本発明は、その正極活物質を用いて水系リチウム二次電池を構成することにより、低コストで、安全性が高く、容量の大きいリチウム二次電池を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明のリチウム二次電池は、基本組成をLiFePO4とするオリビン構造リチウム鉄複合酸化物を正極活物質に含む正極と、リチウムバナジウム複合酸化物を含み、そのリチウム鉄複合酸化物より低いリチウム吸蔵・脱離電位をもつ物質を負極活物質とする負極と、リチウム塩を水に溶解した水系電解液と、を備えてなることを特徴とする。
【0012】
すなわち、本発明のリチウム二次電池は、安価な鉄を主構成元素とし、かつ水の電気分解による酸素発生が生じない電位範囲において可逆的に大量のリチウムイオンの吸蔵・脱離が可能であるリチウム鉄複合酸化物を正極活物質に用いた二次電池である。
【0013】
後に詳しく説明するが、実施例のリチウム鉄複合酸化物を活物質とした電極を作製し、サイクリックボルタモグラムによる単極評価試験を行ったところ、得られた電流−電位曲線(CV曲線)から、本リチウム鉄複合酸化物は、酸化還元電位を1つしか持たないいわゆる2相共存型のリチウム吸蔵・脱離挙動を示すことがわかった。すなわち、充放電の際、リチウムの吸蔵・脱離に伴い格子定数等が連続に変化し電位が変化していくLiNiO2やLiCoO2とは異なり、本リチウム鉄複合酸化物は、充放電の際に略一定の電位を示す。そして、その充放電の電位は、水の電気分解による酸素発生が生じない電位範囲内である3.5V付近(vs.Li/Li+)であった。また、得られたCV曲線のピークの立ち上がりが急であり、分極が小さいことから、酸化還元反応における反応抵抗が小さいこともわかった。
【0014】
このことから、本リチウム鉄複合酸化物は、水の電気分解による酸素発生が生じない電位範囲において、可逆的に大量のリチウムイオンの吸蔵・脱離が可能であり、水系リチウム二次電池における正極活物質として好適であるといえる。
【0015】
したがって、本リチウム鉄複合酸化物を正極活物質として用いた水系リチウム二次電池である本発明のリチウム二次電池は、水系リチウム二次電池であることによる高安全性、低コストという利点を維持しつつ、大容量かつ出力特性に優れた二次電池となる。さらに、後の実験で明らかになったことであるが、本発明のリチウム二次電池は、充放電を繰り返しても容量の低下が小さく、サイクル特性、特に高温下でのサイクル特性が良好な二次電池となる。
【0016】
また、本発明のリチウム二次電池は、上記リチウム鉄複合酸化物より低いリチウム吸蔵・脱離電位をもつ物質であるリチウムバナジウム複合酸化物を負極活物質に含む。リチウムバナジウム複合酸化物は、リチウム鉄複合酸化物と組み合わせて、1V級の二次電池を構成することができる。なかでも、CuKα線によるX線回折パターンにおいて、2θ=13.9°±1°(θは回折角)に最も高い強度のピークを有し、そのピークの強度が他のいずれのピークの強度と比較しても5倍以上であるリチウムバナジウム複合酸化物を用いることが望ましい。
【0017】
負極活物質として好適な上記リチウムバナジウム複合酸化物は、現在のところ、X線回折パターンから認識できる殆どのピークの強度が小さいため、その結晶構造がいかなる空間群をもつものかは明らかにできていない。したがって、上記リチウムバナジウム複合酸化物は、上述したような特徴的なX線回折パターンを有するとしか定義できない。そのX線回折パターンの一例として、後に説明する実施例のリチウム二次電池に用いたリチウムバナジウム複合酸化物のCuKα線によるX線回折チャートを、図1に示す。
【0018】
図1に示すように、そのX線回折チャートでは、2θ=13.9°±1°(θは回折角)に最も高い強度のピークがあり、そのピークを除く他のピークの強度は、極めて低い。最も高い強度のピークの強度は、他のいずれのピークの強度の5倍した値以上の強度となっている。このX線回折チャートから、本リチウムバナジウム複合酸化物が、一方向に強く配向した空間群をもつ結晶構造を有していることが推認できる。
【0019】
本リチウムバナジウム複合酸化物が水系リチウム二次電池の負極活物質として良好な特性を示すことは、上述したような特殊な結晶構造を有することに起因するものであると推認できるが、その正確な理由は現在のところ明らかにはできていない。しかし、後の実施例の項で詳しく説明する実験によれば、水系リチウム二次電池の作動電池電圧範囲内において、確かに大きな容量が得られており、これは、本リチウムバナジウム複合酸化物ではその構成原子が一方向に配向するように配置されていることから、それに起因してリチウムの吸蔵・脱離が容易に行われるものと考えられる。
【0020】
また、充放電曲線も極めて平坦な曲線を示すことから、本リチウムバナジウム複合酸化物は、水系リチウム二次電池の作動電池電圧範囲内において、相転移しないもの、つまり、相転移を伴わない結晶構造を有するものと考えられる。このことによっても、本リチウムバナジウム複合酸化物は、作動電池電圧範囲内で大きな容量を得ることができ、好適な負極活物質となることが認識できる。また、充放電サイクル特性も良好であり、水系電解液に対しても安定しており、さらに繰り返される充放電によってもその結晶構造の崩壊がなく、大きな容量が維持できる負極活物質となる。
【0021】
したがって、上記リチウムバナジウム複合酸化物を負極活物質として用いた本発明のリチウム二次電池は、大容量かつサイクル特性の良好なリチウム二次電池となる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明のリチウム二次電池の実施形態を、それぞれの構成要素ごとに説明する。
【0023】
〈正極活物質〉
本発明のリチウム二次電池の正極活物質には、基本組成をLiFePO4とするオリビン構造リチウム鉄複合酸化物が含まれる。ここで、「基本組成を〜とする」とは、リチウム鉄複合酸化物の代表的な組成という意味であり、上記組成式で表される組成のものだけでなく、例えば、結晶構造におけるFeのサイトの一部をCo、Ni、Mn、Mg等の他の1種または2種以上の元素で一部置換したもの等の組成をも含む。また、必ずしも化学量論組成のものに限定されるわけではなく、例えば、製造上不可避的に生じるリチウムや鉄の陽イオン原子が欠損した、あるいは酸素原子が欠損した非化学量論組成のもの等をも含む。
【0024】
また、本リチウム鉄複合酸化物は、その結晶構造が斜方晶系のオリビン構造となるものであり、その空間群はPmnbで表される。つまり、オリビン構造とは酸素の六方最密充填を基本とし、その四面体サイトにリンが、八面体サイトにリチウムと鉄がともに位置する構造である。
【0025】
本リチウム鉄複合酸化物は、その粒子の粒子径を特に制限するものではないが、リチウムイオンの吸蔵・脱離の反応をよりスムーズに行わせ、実用的な充放電密度で充放電した場合に充分な活物質放電容量を得るという観点から、その粒子の平均粒径は1μm以下とすることが望ましい。特に、電極の作製が容易であり、かつ、レート特性が良好であるという点を考慮すると、平均粒径を0.2μm以上0.8μm以下とすることが望ましい。
【0026】
なお、リチウム鉄複合酸化物は、略単独に存在する粒子から形成されるものである。したがって、平均粒径は、この略単独に存在する粒子の粒径の平均値であり、それぞれの粒径は、例えば、リチウム鉄複合酸化物の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を利用して測定することができる。すなわち、リチウム鉄複合酸化物のSEM写真を撮影し、その写真におけるリチウム鉄複合酸化物粒子の最長径と最短径を測定し、それら2つの値の平均値をその1つの粒子の粒径として採用することができる。
【0027】
本リチウム鉄複合酸化物は、その製造方法を特に限定するものではない。例えば、原料を混合して混合物を得る原料混合工程と、該混合物を所定の温度で焼成する焼成工程とからなる方法により製造することができる。以下、各工程を説明する。
【0028】
(1)原料混合工程
本リチウム鉄複合酸化物の製造方法における原料混合工程は、リチウム化合物と、鉄化合物と、リン含有アンモニウム塩とを混合して混合物を得る工程である。
【0029】
リチウム源となるリチウム化合物としては、Li2CO3、LiOH、LiOH・H2O、LiNO3等を用いることができる。特に、反応性が高いという理由からLiOH・H2Oを用いることが望ましい。
【0030】
鉄源となる鉄化合物としては、鉄の価数が2価である化合物として、FeC2O4・2H2O、FeCl2等を用いることができる。特に、焼成時に発生するガスの腐食性が低いという理由からFeC2O4・2H2Oを用いることが望ましい。
【0031】
リン源となるリン含有アンモニウム塩としては、NH4H2PO4、(NH4)2HPO4、P2O5等を用いることができる。特に、反応性が高いという理由から(NH4)2HPO4を用いることが望ましい。
【0032】
上記の原料は、いずれも粉末状のものを用いればよく、それらの混合は、通常の粉体の混合に用いられている方法で行えばよい。具体的には、例えば、ボールミル、ミキサー、乳鉢等を用いて混合すればよい。なお、それぞれの原料の混合割合は、製造しようとするリチウム鉄複合酸化物の組成に応じた割合とすればよい。
【0033】
また、平均粒径が1μm以下となるリチウム鉄複合酸化物を得るためには、上記原料の平均粒径を制御することが望ましく、特に、各原料とも平均粒径が1μm以下のものを用いることが望ましい。
【0034】
(2)焼成工程
焼成工程は、原料混合工程で得られた混合物を600℃以上700℃以下の温度で焼成する工程である。焼成は、鉄が3価に酸化されるのを防ぐため、不活性雰囲気下、または還元雰囲気下、具体的には、例えば、アルゴン気流中あるいは窒素気流中等にて行えばよい。
【0035】
焼成温度は、600℃以上700℃以下とする。焼成温度が600℃未満であると、反応が充分に進行せず、目的とする斜方晶のもの以外の副相が生成し、リチウム鉄複合酸化物の結晶性が悪くなるからである。反対に、700℃を超えると、リチウム鉄複合酸化物の粒子が成長し、充分な特性が得られなくなるからである。また、組成の均一性を考慮した場合には、350℃程度で所定時間仮焼した後で、上記温度範囲で焼成を行ってもよい。なお、焼成時間は焼成が完了するのに充分な時間であればよく、通常、8時間程度行えばよい。
【0036】
リチウム二次電池の正極活物質として用いる場合、リチウム鉄複合酸化物は、一般に粉末状のものを用いる。したがって、上記のように焼成によって得られたものは、粉砕を行って電池の製造に供してもよい。
【0037】
〈負極活物質〉
本発明のリチウム二次電池では、負極活物質は、上記リチウム鉄複合酸化物より低いリチウム吸蔵・脱離電位をもつ物質を用いる。例えば、リチウムバナジウム複合酸化物、リチウムマンガン複合酸化物等を用いることかできる。
なかでも、リチウムを吸蔵・脱離する電位が適当であり、水溶液中での安定性が良好であるという理由から、本発明では、リチウムバナジウム複合酸化物を用いる。リチウムバナジウム複合酸化物は、可逆的にリチウムイオンを吸蔵・脱離する電位が、2.6〜2.8V(vs.Li/Li+)であり、上記リチウム鉄複合酸化物と組み合わせて使用した場合に、1Vに近い電圧を確保することができる。特に、繰り返される充放電によっても、その結晶構造の崩壊がなく、大きな容量が維持できることから、CuKα線によるX線回折パターンにおいて、2θ=13.9°±1°(θは回折角)に最も高い強度のピークを有し、そのピークの強度が他のいずれのピークの強度と比較しても5倍以上であるリチウムバナジウム複合酸化物を用いることが望ましい。
【0038】
リチウムバナジウム複合酸化物は、その組成を特に限定するものではないが、組成式LixV3Oy(1.2<x<1.6;7.5≦y≦8.25)で表されるものであることが望ましい。この組成のものは、上記特定の結晶構造を容易に得ることができるというメリットを有する。
【0039】
組成範囲の意義を詳しく説明すれば、上記好適範囲のものに比べて、x≦1.2の場合は、結晶構造における一方向への配向性が低くなり、また、x≧1.6の場合は、不純物が生成して電池の容量低下をもたらす。
【0040】
yの値について言えば、上記好適範囲のものに比べて、y<7.5の場合は、結晶構造の欠陥に起因した容量低下が生じ易くなり、また、y>8.25の場合は、別の結晶構造の転移が生じる可能性が増大する。
【0041】
上記組成を有するリチウムバナジウム複合酸化物は、その製造方法を特に限定するものではない。例えば、リチウム源となるリチウム化合物とバナジウム源となるバナジウム化合物とを所定の割合で混合し、混合物を所定の雰囲気中で所定の温度にて焼成することにより製造することができる。
【0042】
原料となるリチウム化合物としては、Li2CO3、LiOH、LiNO3、Li2SO4等を用いることができる。バナジウム化合物としては、V2O5、NH4VO3等を用いることができる。なお、V2O5はより安価な原料となるという利点があることから、バナジウム化合物としてV2O5を選択することがより望ましい。
【0043】
この場合、上記リチウム化合物と上記バナジウム化合物との混合割合は、それぞれに含まれるリチウムおよびバナジウムが得ようとするリチウムバナジウム複合酸化物の組成比となるような割合とする。
【0044】
焼成における所定の雰囲気とは、僅かに酸化性の雰囲気を意味する。例えば、リチウム化合物としてLiNO3やLi2CO3を用いる場合は、焼成時においてそれ自体が酸化性のガスを発生させるため、アルゴンガスの気流中で行えばよい。このように、反応させるリチウム化合物およびバナジウム化合物によって、流す気体の種類および流量を調製して焼成することにより、上記所定の雰囲気を作り出すことができる。
【0045】
焼成温度は、バナジウム化合物としてV2O5を用いる場合、600〜750℃とするのが望ましい。この温度範囲においては、V2O5は溶解することで反応性が高まり、より均質なリチウムバナジウム複合酸化物が得られるため、本発明のリチウム二次電池の負極活物質として好適なリチウムバナジウム複合酸化物が焼成できる。なお、焼成における結晶粒の成長を抑制し、大きな容量を有するものが得られるという理由から、焼成温度は600〜680℃とすることがより望ましい。なお、上記焼成温度での保持時間は、3時間程度以上とすればよい。
【0046】
リチウム二次電池の負極活物質として用いる場合、リチウムバナジウム複合酸化物は、一般に粉末状のものを用いる。したがって、上記のように焼成によって得られたものは、粉砕を行って電池の製造に供してもよい。
【0047】
〈正極および負極〉
正極および負極は、ともに、粉末状のそれぞれの活物質に導電材および結着剤を混合し、正極および負極合材としたものを、それぞれ金属製の集電体表面に圧着して形成することができる。
【0048】
導電材は、電極の電気伝導性を確保するためのものであり、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、黒鉛等の炭素物質粉状体の1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。また、結着剤は、活物質粒子および導電材粒子を繋ぎ止める役割を果たすもので、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0049】
〈水系電解液〉
本発明のリチウム二次電池で使用する電解液は、電解質としてのリチウム塩を水に溶解した水系電解液である。リチウム塩は水に溶解することによって解離し、リチウムイオンとなって電解液中に存在する。一般に、酸化物系の活物質材料は、中性からアルカリ性の水溶液中でより安定に存在する。また、リチウムイオンの吸蔵・脱離反応をより活性化させることをも考慮する場合には、使用する電解液は中性からアルカリ性であることが望ましい。なお、ここで中性とは、pHの値でいえばpH=6〜8程度のことを意味する。
【0050】
例えば、pH=7の中性電解液を用いた場合、水の電気分解による水素発生電位は2.62V、酸素発生電位は3.85V(vs.Li/Li+)であり、pH=14のアルカリ性電解液を用いた場合は、水素発生電位は2.21V、酸素発生電位は3.44V(vs.Li/Li+)である。すなわち、中性の電解液を用いた場合には、水の電気分解による酸素発生電位が高いことから、その電位に至るまで、正極活物質がより多くのリチウムイオンを吸蔵・脱離可能となり、より大きな容量を取り出すことができる。したがって、より容量の大きな二次電池とする場合には、中性に近い電解液、具体的には、pH=6〜10である電解液を用いることが望ましい。
【0051】
また一般に、水溶液は、非水溶液と比べて導電性が良く、例えば中性の水溶液は非水溶液の10倍以上の導電性を有し、アルカリ性の水溶液は、非水溶液の100倍以上の導電性を有する。そのため、電解液に水溶液を用いた二次電池は、非水系の二次電池と比較して、内部抵抗、特に反応抵抗が小さいものとなり、アルカリ性の電解液を用いた場合には、内部抵抗はより小さいものとなる。したがって、より出力特性やレート特性の良好な二次電池とする場合には、強アルカリ性の電解液、具体的には、pH=10〜12である電解液を用いることが望ましい。
【0052】
電解質として使用できるリチウム塩は、水に溶解するものであれば特に限定されるものではないが、正極活物質である酸化物の安定性等を考慮すると、溶解後、電解液が中性からアルカリ性となるようなリチウム塩を用いることが望ましい。具体的には、例えば、硝酸リチウム、水酸化リチウム、ヨウ化リチウム等を用いることが望ましい。これらのリチウム塩は、それぞれ単独で用いてもよく、また、これらのもののうち2種以上のものを併用することもできる。特に、溶解度が高く、従って導電性も良いという理由から、中性の電解液とするためには硝酸リチウムを用いることが望ましく、また、強アルカリ性の電解液とするためには、硝酸リチウムと水酸化リチウムとを混合して用いることが望ましい。なお、電解液中のリチウム塩の濃度は、電解液の電気伝導度を高くして二次電池の内部抵抗を小さくできるという理由から、飽和濃度、あるいはそれに近い濃度とすることが望ましい。
【0053】
〈その他の構成要素等〉
本発明のリチウム二次電池では、上記正極と上記負極とを対向させることにより電極体を形成する。正極と負極との間にはセパレータを挟装することが望ましい。このセパレータは、正極と負極とを分離し電解液を保持するものであり、セルロース系等のものを用いることができる。
【0054】
本発明のリチウム二次電池は、その形状を特に限定するものではなく、円筒型、積層型、コイン型等、種々のものとすることができる。いずれの形状を採る場合であっても、電池形状に応じて形成した上記電極体を、所定の電池ケースに収納し、正極集電体および負極集電体から外部に通ずる正極端子および負極端子までの間を集電用リード等を用いて接続し、この電極体に上記電解液を含浸させ電池ケースに密閉し、リチウム二次電池を完成することができる。
【0055】
〈他の実施形態の許容〉
以上、本発明のリチウム二次電池の実施形態について説明したが、上述した実施形態は一実施形態にすぎず、本発明のリチウム二次電池は、上記実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の形態で実施することができる。
【0056】
【実施例】
本発明のリチウム二次電池において正極活物質として使用されるリチウム鉄複合酸化物を実際に合成し、正極活物質としての特性を調査した。また、負極活物質として使用されるリチウムバナジウム複合酸化物をも実際に合成し、負極活物質としての特性を調査した。次いで、これらのリチウム鉄複合酸化物、リチウムバナジウム複合酸化物をそれぞれ正極、負極活物質に用いた2016型のコイン形状をなす本発明のリチウム二次電池を作製し、電池性能を調査した。また、比較のため、従来から検討されていた種々の物質を正極活物質として用いたそれぞれの水系リチウム二次電池を作製し、本発明のリチウム二次電池の優秀性を確認した。
【0057】
〈リチウム鉄複合酸化物の合成〉
リチウム源としてLiOH・H2Oを、鉄源としてFeC2O4・2H2Oを、リン源として(NH4)2HPO4をそれぞれ用いた。これらの原料をLi、Fe、Pがモル比で1:1:1となるように混合した。混合は、自動乳鉢にて30分間行った。この混合物を、アルゴン気流中で、350℃で5時間仮焼した後、自動乳鉢にて30分間混合した。その後さらに、アルゴン気流中で、650℃で6時間焼成した。そして、得られたリチウム鉄複合酸化物を正極活物質として用いるため、乳鉢にて粉砕して粉末状のものとした。なお、粉末を構成する粒子の平均粒径は約0.8μmであった。このリチウム鉄複合酸化物を、便宜的に実施例のリチウム鉄複合酸化物ということにする。
【0058】
〈正極活物質としての特性調査〉
実施例のリチウム鉄複合酸化物を活物質とした電極を作製し、サイクリックボルタモグラムによる単極評価試験を行うことにより正極活物質としての特性を調査した。まず、70重量部のリチウム鉄複合酸化物に、導電材としての25重量部のカーボンおよび結着剤としての5重量部のポリテトラフルオロエチレンを混合して電極合材を得た。次いで、この電極合材の10mgを、ステンレス製のメッシュ上に約0.6ton/cm2の圧力で圧着して電極とした。
【0059】
なお、サイクリックボルタモグラムは、電解液を変えて2種類行った。一つは、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを体積比3:7に混合した混合溶媒にLiPF6を1Mの濃度で溶解した非水系電解液を用いて行い、もう一つは、水系電解液として、リチウム塩であるLiNO3を水に溶解した飽和濃度のLiNO3水溶液を用いて行った。そして、非水系電解液の場合は、参照極、対極ともに金属Liとし、水系電解液の場合は、参照極を銀塩化銀電極、対極を白金ワイヤー(φ0.3mm×5mm;コイル状)として、それぞれ3極式のビーカーセルを用い、走査速度は2mV/sとした。この試験により、電流と電位との関係を示すCV曲線を得た。得られたCV曲線を図2に示す。図2中、実線は水系電解液を用いた結果を、破線は非水系電解液を用いた結果を示す。
【0060】
図2から、本リチウム鉄複合酸化物は、酸化還元電位を1つしか持たないいわゆる2相共存型のリチウム吸蔵・脱離挙動を示すことがわかる。すなわち、充放電の際、リチウムの吸蔵・脱離に伴い格子定数等が連続に変化し電位が変化していくLiNiO2やLiCoO2とは異なり、本リチウム鉄複合酸化物は、充放電の際には一定の電位を示す。そして、その充放電の電位は3.5V付近(vs.Li/Li+)であり、この電位は水の電気分解による酸素発生が生じない電位範囲内である。
【0061】
したがって、本リチウム鉄複合酸化物は、水の電気分解による酸素発生が生じない電位範囲において、可逆的に大量のリチウムイオンの吸蔵・脱離が可能であり、水系リチウム二次電池における正極活物質として好適であることが確認できた。
【0062】
また、図2に示すCV曲線において、電解液による差は、ピークの立ち上がり方に顕著に表れている。水系電解液を用いた場合は、非水系電解液を用いた場合と比較して、ピークの立ち上がりが急であり、分極が小さいことがわかる。すなわち、水系電解液を用いた方が、酸化還元反応における反応抵抗が小さいことを示している。
【0063】
反応抵抗が小さいということは、本リチウム鉄複合酸化物を正極活物質として用いて電池を構成した場合に、充放電の際の電池の内部抵抗が低減するため、電池の出力特性は向上することになる。したがって、本リチウム鉄複合酸化物は、より水系リチウム二次電池に好適であることが確認できた。
【0064】
〈リチウムバナジウム複合酸化物の合成〉
リチウム化合物であるLi2CO31.688gとバナジウム化合物であるV2O58.312gとを、自動乳鉢にて2時間かけて混合した。この混合物を、アルゴン気流中で、4.33℃/minの昇温速度で680℃の焼成温度まで加熱し、その温度で12時間保持し、その後4.33℃/minの降温速度で室温まで冷却してリチウムバナジウム複合酸化物を得た。得られたリチウムバナジウム複合酸化物は、組成分析の結果、その組成がLi1.5V3O7.8〜8となるものであった。また、このリチウムバナジウム複合酸化物は、負極活物質として用いるため、乳鉢にて粉砕して粉末状のものとした。以下、このリチウムバナジウム複合酸化物を、便宜的に実施例のリチウムバナジウム複合酸化物ということにする。
【0065】
この実施例のリチウムバナジウム複合酸化物に対して、CuKα線によるX線回折分析を行った。その結果得られたX線回折チャートを図1に示す。前述したように、図1に示すX線回折チャートでは、2θ≒13.9°(θは回折角)に最も高い強度のピークがあり、そのピークを除く他のピークの強度は極めて低いことが確認でき、さらに、最も高い強度のピークの強度は、他のいずれのピークの強度値を5倍した値よりも大きな値となっていることが確認できる。
【0066】
〈負極活物質としての特性調査〉
実施例のリチウムバナジウム複合酸化物を活物質とした電極を作製し、単極評価試験を行うことにより負極活物質としての特性を調査した。まず、70重量部のリチウムバナジウム複合酸化物に、導電材としての25重量部のカーボンおよび結着剤としての5重量部のポリテトラフルオロエチレンを混合して電極合材を得た。次いで、この電極合材の10mgを、ステンレス製のメッシュ上に約0.6ton/cm2の圧力で圧着して電極とした。
【0067】
次に、参照極を銀塩化銀電極とし対極を白金ワイヤー(φ0.3mm×5mm;コイル状)とする3極式のビーカーセルを用いて、上記電極の単極評価試験を行った。単極評価試験は、電位0.265V〜−0.75Vにおいて電流密度2mA/cm2の定電流で充放電を行うものとし、この試験により、その範囲での充放電曲線(容量と電位との関係を示す曲線)を得た。得られた充放電曲線を、図3に示す。
【0068】
図3から明らかなように、この充放電電位の範囲は水系リチウム二次電池の負極活物質として好適な電位範囲であり、その範囲で充放電曲線も平坦で、かつ、活物質単位重量あたりの容量も160mAh/gと大きい。したがって、本リチウムバナジウム複合酸化物は、水系リチウム二次電池の負極活物質として良好な特性を示す活物質材料であることが確認できた。
【0069】
〈リチウム二次電池の作製〉
i)正極の作製
上記リチウム鉄複合酸化物を正極活物質に用いた正極を作製した。70重量部のリチウムバナジウム複合酸化物に、導電材としての25重量部のカーボンおよび結着剤としての5重量部のポリテトラフルオロエチレンを混合して正極合材を得、この正極合材の10mgを、予めコインセルの内側に溶接したステンレス製のメッシュ上に約0.6ton/cm2の圧力で圧着して正極とした。
【0070】
ii)負極の作製
上記リチウムバナジウム複合酸化物を負極活物質に用いた負極を作製した。上記正極の場合と同様、70重量部のリチウムバナジウム複合酸化物に、導電材としての25重量部のカーボンおよび結着剤としての5重量部のポリテトラフルオロエチレンを混合して負極合材を得、この負極合材の10mgを、予めコインセルの内側に溶接したステンレス製のメッシュ上に約0.6ton/cm2の圧力で圧着して負極とした。
【0071】
iii)実施例のリチウム二次電池の作製
上記正極および負極を、その間にセルロース系のセパレータ挟んで対向させ、水系電解液を注入後、コインセルを密封して2016型リチウム二次電池を完成させた。なお、水系電解液は、リチウム塩であるLiNO3を水に溶解した飽和濃度のLiNO3水溶液であり、そのpH値は7程度である。このリチウム二次電池を、実施例のリチウム二次電池とした。
【0072】
iv)比較例のリチウム二次電池の作製
上記実施例のリチウム二次電池と正極活物質のみが異なり、他の構成要素を同じくするリチウム二次電池を2種類作製した。一つは組成式LiMnO2で表される層状岩塩構造のリチウムマンガン複合酸化物を、もう一つは組成式LiNi0.8Co0.15Al0.05O2で表される層状岩塩構造のリチウムニッケル複合酸化物を正極活物質として用いた。以下、各二次電池の作製について説明する。
【0073】
(a)比較例1のリチウム二次電池の作製
まず、組成式LiMnO2で表される層状岩塩構造のリチウムマンガン複合酸化物を合成した。6.29gのLiOH・H2Oを80mlの水に溶解して、LiOH水溶液を調製した。このLiOH水溶液に、MnO2を2.61g添加し(Li/Mnはモル比で5となる)、30分間超音波分散して分散水溶液を調製した。次いで、この分散水溶液をオートクレーブに入れ、200℃の温度で7日間反応させた。反応後、オートクレーブを冷却し、容器内の沈殿物を濾過、水洗、120℃で乾燥して、リチウムマンガン複合酸化物を得た。
【0074】
上記リチウムマンガン複合酸化物を正極活物質に用いて、上記実施例のリチウム二次電池と同様にリチウム二次電池を作製した。作製した二次電池を比較例1のリチウム二次電池とした。
【0075】
(b)比較例2のリチウム二次電池の作製
まず、組成式LiNi0.8Co0.15Al0.05O2で表される層状岩塩構造のリチウムニッケル複合酸化物を合成した。2Mの硝酸ニッケル、硝酸コバルト、硝酸アルミニウムの各水溶液を、Ni:Co:Alがモル比で8:1.5:0.5となるように混合し、500mLの水溶液とした。この水溶液を4Mの水酸化ナトリウム水溶液に滴下し、ニッケル、コバルト、アルミニウムを含む水酸化物粒子を析出合成した。そして、析出した水酸化物粒子を濾別、洗浄した後、水に投入して水酸化物スラリーを得た。水酸化物スラリー中のNi、Co、およびAlの総量(Ni+Co+Al)に対して、Liの原子比がLi/(Ni+Co+Al)=1となるように、3Mの水酸化リチウム水溶液を上記スラリーに添加して懸濁液を調製し、この懸濁液を窒素雰囲気下で噴霧乾燥した。乾燥後、得られた複合酸化物前駆体を、窒素雰囲気下、350℃で1時間予備焼成を行い、さらに、酸素雰囲気下、750℃で12時間焼成を行ってリチウムニッケル複合酸化物を得た。
【0076】
上記リチウムニッケル複合酸化物を正極活物質に用いて、上記実施例のリチウム二次電池と同様にリチウム二次電池を作製した。作製した二次電池を比較例2のリチウム二次電池とした。
【0077】
〈充放電サイクル試験〉
上記実施例および比較例のそれぞれのリチウム二次電池に対して充放電サイクル試験を行った。充放電サイクル試験は、60℃の環境温度下、電流密度0.5mA/cm2の定電流で電池電圧1.2Vまで充電し、その後、電流密度0.5mA/cm2の定電流で電池電圧0.1Vまで放電する充放電をを1サイクルとし、このサイクルを35サイクル繰り返すものとした。なお、充放電サイクルにおける充電休止時間および放電休止時間はそれぞれ1分間とした。この充放電サイクル試験の結果として、測定したそれぞれのリチウム二次電池の正極活物質単位重量あたりの初回放電容量を下記表1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
上記表1から明らかなように、正極活物質としてLiMnO2を用いた比較例1のリチウム二次電池、およびLiNi0.8Co0.15Al0.05O2を用いた比較例2のリチウム二次電池に比較して、LiFePO4を用いた実施例のリチウム二次電池は、充放電の初期からその放電容量が大きいことが判る。これは、正極活物質であるリチウム鉄複合酸化物が、水の電気分解による酸素発生が生じない電位範囲において、リチウムイオンを大量に吸蔵・脱離できたためである。したがって、リチウム鉄複合酸化物を正極活物質に用いた本発明のリチウム二次電池は、大容量の水系リチウム二次電池であることが確認できた。
【0080】
また、上記充放電サイクル試験のもう一つの結果として、図4に、各二次電池の充放電サイクル試験における各サイクルの正極活物質単位重量あたりの放電容量を示す。図4から明らかなように、LiFePO4を正極活物質に用いた実施例のリチウム二次電池は、サイクルを繰り返した場合であっても大きな容量を維持していることが判る。これは、正極活物質であるリチウム鉄複合酸化物が、水溶液中で安定であり、リチウムイオンを可逆的に吸蔵・脱離できたためである。この結果から、リチウム鉄複合酸化物を正極活物質に用いた本発明のリチウム二次電池は、サイクル特性、特に、高温下でのサイクル特性が良好な二次電池であることも確認できた。
【0081】
【発明の効果】
本発明は、水系電解液を用いた水系リチウム二次電池を、その正極活物質に基本組成をLiFePO4とするオリビン構造リチウム鉄複合酸化物を用いて構成するものである。このような構成を有することで、本発明のリチウム二次電池は、水系リチウム二次電池であることによる高安全性、低コストという利点を維持しつつ、大容量かつ出力特性に優れたリチウム二次電池となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例のリチウム二次電池に用いたリチウムバナジウム複合酸化物のX線回折チャートを示す。
【図2】 サイクリックボルタモグラムによる単極評価試験で得られた実施例のリチウム鉄複合酸化物のCV曲線を示す。
【図3】 単極評価試験で得られた実施例のリチウムバナジウム複合酸化物の充放電曲線を示す。
【図4】 実施例および比較例のリチウム二次電池の60℃下での充放電サイクル試験における各サイクルの正極活物質単位重量あたりの放電容量を示す。
Claims (3)
- 基本組成をLiFePO4とするオリビン構造リチウム鉄複合酸化物を正極活物質に含む正極と、
リチウムバナジウム複合酸化物を含み、そのリチウム鉄複合酸化物より低いリチウム吸蔵・脱離電位をもつ物質を負極活物質とする負極と、
リチウム塩を水に溶解した水系電解液と、
を備えてなるリチウム二次電池。 - 前記リチウムバナジウム複合酸化物は、CuKα線によるX線回折パターンにおいて、2θ=13.9°±1°(θは回折角)に最も高い強度のピークを有し、そのピークの強度が他のいずれのピークの強度と比較しても5倍以上である請求項1に記載のリチウム二次電池。
- 前記リチウムバナジウム複合酸化物は、組成式Li x V 3 O y (1.2<x<1.6;7.5≦y≦8.25)で表されるリチウムバナジウム複合酸化物である請求項1または請求項2に記載のリチウム二次電池。
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