JP4677104B2 - 車両用表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、表示源に表示された重畳用画像をフロントガラス上に投影させ、このフロントガラスを透して視認される車両の前景と重畳用画像の虚像とを重畳視認させる車両用表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、運転者が運転に際して求める情報の増加や多角化に伴って、メータユニット内ではスペースの関係上表示しきれない情報を、フロントガラス上に虚像表示させ、それを透して視認される車両の前景と重畳視認させる、ヘッドアップディスプレイと呼ばれる投影型の補助表示ユニットが採用されている。
【0003】
このような投影型補助表示ユニットにおいては、表示源の表示像を投影するフロントガラスが非平面であり、しかも、フロントガラスの場所によって曲率や水平面(又は鉛直面)に対する傾斜角度が異なることからフロントガラス上の虚像表示が歪み、その視認性に悪影響を及ぼすことが、従来から問題視されている。
【0004】
そこで、特開平3−113413号公報や特開平4−283970号公報を始めとして、光学素子や表示制御によってフロントガラス上での虚像の歪みを矯正することが提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のこれらの提案では、運転者によってシートポジションや体格が異なってアイポイントから視認するフロントガラス上の位置が一定の箇所に定まらなかったり、車種によってフロントガラスの形状が異なったりして、フロントガラス上で視認される虚像の歪みの度合いや内容が状況により変化してしまうという事態が想定されていないため、歪みの矯正が固定画一的に行われており、したがって、上述したような事態にフレキシブルに対応することができない。
【0006】
本発明は前記事情に鑑みなされたもので、本発明の目的は、表示源に表示された重畳用画像を非平面状のフロントガラス上に投影させ、この被投影部材を透して視認される車両の前景と重畳用画像の虚像とを重畳視認させるに当たり、運転者によるシートポジションや体格の相違に起因して、アイポイントから視認するフロントガラス上の位置が一定の箇所に定まらなかったり、車種によるフロントガラスの形状の相違等に起因して、フロントガラス上での虚像の歪みの度合いや内容が変化してしまう場合であっても、これらの事態にフレキシブルに対応してフロントガラス上での虚像の歪みを好適に解消させることができる車両用表示装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため本発明の車両用表示装置は、表示デバイスと、該表示デバイスに表示させる画像の内容をコントロールするコントロールユニットとを備えている車両用表示装置において、前記コントロールユニットが、前記表示デバイスに表示された重畳用画像を車両のフロントガラス上に投影させて、車内のアイポイントから前記フロントガラスを透して視認される前記車両の前景と、前記フロントガラスに投影される前記重畳用画像の虚像とを重畳視認させるに当たり、前記フロントガラスの非平面性に起因して前記アイポイントから視認される前記重畳用画像の虚像に生じる歪みが相殺されるように前記表示デバイスに表示させる表示歪発生手段と、前記表示デバイスに表示させる前記重畳用画像の前記表示歪発生手段による歪み量を、前記重畳用画像の虚像における前記車両の上下及び左右の各方向について各々調整する歪みパターン調整手段とを備えており、前記表示歪発生手段が、デジタル信号を加工する変換ユニットと、前記フロントガラスの非平面性に応じかつ前記フロントガラスと前記アイポイントとの相対位置に応じた座標変換テーブルを予め格納している外付けROMとから成り、前記歪みパターン調整手段が、前記車両用表示装置に対し、前記フロントガラスの非平面性に応じかつ該フロントガラスと前記アイポイントとの相対位置に応じた前記座標変換テーブルを予め格納している前記外付けROMの交換により、前記重畳用画像の虚像に生じる歪みを相殺可能にしている、ことを特徴とする。
【0011】
本発明の車両用表示装置によれば、車内におけるアイポイントが運転者のシートポジションや体格の相違により変化したり、車種によってフロントガラスの非平面性の度合いや内容に相違がある等して、アイポイントから視認されるフロントガラス上の重畳用画像の虚像に発生するフロントガラスの非平面性に起因した歪みの度合いや内容が一定でなくても、表示デバイスに表示させる重畳用画像の表示歪発生手段による歪み量を、歪みパターン調整手段によって、重畳用画像の虚像における車両の上下及び左右の各方向について各々調整して、その歪みパターンを、フロントガラスの非平面性や、フロントガラスとアイポイントとの相対位置に応じた歪みパターンにすることで、アイポイントから視認されるフロントガラス上の重畳用画像の虚像に発生するフロントガラスの非平面性に起因した歪みの度合いや内容に応じたパターンで、表示デバイスに表示させる重畳用画像が表示歪発生手段により歪ませられることになる。
【0013】
さらに、外付けROM自身を交換することで、変換ユニットによって重畳用画像の画像信号の各画素毎のデータが割り付けられる歪み重畳用画像の画像信号中の画素が変更されて、変換ユニットによって生成される歪み重畳用画像の画像信号の内容が変更され、その結果、表示デバイスに表示させる重畳用画像の表示歪発生手段による歪みパターンが変更調整されることになり、かつ、外付けROMの交換を可能とする構成が、歪みパターン調整手段を構成することになる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による車両用表示装置の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0016】
図1は本発明の第1実施形態に係る車両用表示装置の原理的な概略構成を示す断面図であり、この第1実施形態の車両用表示装置は、車両のダッシュボード1の内部に収容された表示デバイス5と、この表示デバイス5に表示させる画像の内容をコントロールするコントロールユニット7とを有している。
【0017】
このうち、前記表示デバイス5は、自発光デバイス(例えば、FE〔フィールドエミッション〕ディスプレイ、蛍光表示管、EL〔エレクトロルミネッセンス〕ディスプレイ等)や、バックライト付きの液晶ディスプレイ等からなり、車両の上方に向けて配置された表示面5a上に、ナビゲーション装置の進行方向情報や走行速度といった、運転に必要な補助情報等の重畳用画像(図示せず)を反転させた重畳用反転画像を、重畳用画像の上側を車両の後方側、重畳用画像の下側を車両の前方側に配置して、発光表示させるように構成されている。
【0018】
そして、前記表示デバイス5に表示された重畳用反転画像の像光は、図2に拡大斜視図で示すように、ダッシュボード1の上面1aに形成された開口1bを通過してダッシュボード1の上方に配置された非平面状のフロントガラス3上に照射され、この照射により、フロントガラス3を透して視認される前景と、表示デバイス5に表示された重畳用反転画像の反転画像である重畳用画像の虚像Sとが、車両の運転者のアイポイントIから重畳視認される。
【0019】
また、前記コントロールユニット7は、図3に電気的な概略構成のブロック図で示すように、車両内の不図示の各種センサ類の検出状況等を基に不図示の計器情報生成ユニットにおいて生成された、走行速度やエンジン回転数、燃料の残量、ラジエータ水温といった、運転者に報知するべき計器情報の視認用画像の画像信号が入力される信号入力端子9と、この信号入力端子9に入力された画像信号から同期信号を分離抽出する同期信号分離回路10と、信号入力端子9に入力された画像信号の各画素値を、座標値の小さいものから順にA/D変換するA/D変換器11と、このA/D変換器11で各画素値がA/D変換されたデジタル画像信号を加工する高速デジタルデータ変換ユニット(以下、「変換ユニット」と略記する。)13とを有している。
【0020】
また、前記コントロールユニット7は、変換ユニット13によるデジタル画像信号の加工に必要な座標変換テーブルを格納した外付けROM15(座標変換テーブル保持手段に相当)と、この変換ユニット13により加工されたデジタル画像信号の各画素値を一時格納するビデオフレームメモリとしての外付けRAM17と、この外付けRAM17から変換ユニット13により読み出された加工後のデジタル画像信号の各画素値を、座標値の小さいものから順にD/A変換するD/A変換器19と、このD/A変換器19で各画素値がD/A変換された加工後のアナログ画像信号を、前記重畳用反転画像の画像信号として表示デバイス5に対し出力するための信号出力端子21とを有している。
【0021】
このうち、前記外付けROM15には、信号入力端子9に入力される視認用画像の画像信号の各画素の座標値を、信号出力端子21から出力される重畳用反転画像の画像信号中の対応する座標値と関連づけた、座標変換テーブルが格納されている。
【0022】
この外付けROM15に格納された座標変換テーブルは、基準となるアイポイントIの位置からその前方のフロントガラス3箇所を視認した際に、そのフロントガラス3箇所上に視認される前記重畳用画像の虚像が歪みのないものとして認識されるように、表示デバイス5に表示させる重畳用反転画像を、基準となるアイポイントIの位置とその前方のフロントガラス3箇所との相対位置関係や、基準となるアイポイントIの前方箇所におけるフロントガラス3の水平並びに鉛直方向に関する曲率、及び、フロントガラス3の水平面(又は鉛直面)に対する傾斜角度に応じた歪みパターンで、予め歪ませておくためのものである。
【0023】
したがって、例えば、信号入力端子9に入力される画像信号によって表される視認用画像を、縦横の直線を複数本ずつ交差させた格子とするならば、外付けROM15には、この格子をそのまま表示デバイス5に表示させた場合の、格子の四隅と各縦横直線の交差箇所とに各々対応する画素の座標値と、基準となるアイポイントIからその前方のフロントガラス3箇所上に視認される格子の画像が歪まないようにするために、フロントガラス3に投影されることで歪む方向とは逆の方向に歪ませた格子を表示デバイス5の表示部5aに表示させた場合の、格子の四隅と各縦横直線の交差箇所とに各々対応する画素の座標値とが、関連づけて保持されることになる。
【0024】
前記変換ユニット13は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit )によって構成された高速座標変換処理用のデジタルデータコントローラ(以下、[DDC」と略記する。)13aと、このDDC13aによる高速座標変換処理に際して必要なワークエリアを提供するRAM13bと、DDC13aに高速座標変換処理を行わせるために実行される処理プログラムが格納されるROM13cと、DDC13aに接続される前記同期信号分離回路10、A/D変換器11、外付けROM15、外付けRAM17、並びに、D/A変換器19に対するDDC13aのアクセスコントロールを行うCPU13dとを有している。
【0025】
そして、前記ROM13cに格納された処理プログラムに従いDDC13aが行う処理動作は、図4のフローチャートに示すように行われる。
【0026】
即ち、まず、同期信号分離回路10から入力される、信号入力端子9に入力された視認用画像の画像信号の同期信号をサンプリングクロックとして、外付けROM15に格納されている座標変換テーブル上の、視認用画像の画像信号中における各画素の座標値に関連づけられた重畳用反転画像の画像信号中の対応する座標値を、視認用画像の画像信号中の座標値の小さいものに関連づけられたものから順に1つ読み出す(ステップS1)。
【0027】
次に、外付けRAM17のうち、ステップS1で外付けROM15から読み出した重畳用反転画像の画像信号中の座標値のビデオフレーム箇所のデータを、その時点でA/D変換器11から取り込まれるデジタル画像信号の画素のデータに書き換え(ステップS3)、続いて、A/D変換器11から取り込まれるデジタル画像信号の1画面分の画素データについて、外付けRAM17のビデオフレームデータが書き換えられ終えたか否かを確認する(ステップS5)。
【0028】
外付けRAM17のビデオフレームデータがデジタル画像信号の1画面分全て書き換えられ終えていない場合は(ステップS5でN)、ステップS1にリターンし、1画面分全て書き換えられ終えた場合は(ステップS5でY)、外付けRAM17のビデオフレームに記憶されている画素のデータを、重畳用反転画像の画像信号における対応する座標値の小さいものから順に、1画面分全て読み出してD/A変換器19に出力した後(ステップS7)、ステップS1にリターンする。
【0029】
以上の説明からも明らかなように、第1実施形態では、図4のフローチャートによって変換ユニット13が行う一連の処理が、請求項中の歪み画像信号生成手段に対応する処理となっており、この変換ユニット13と外付けROM15とで、請求項中の表示歪発生手段が構成されている。
【0030】
次に、上述のように構成された第1実施形態の車両用表示装置の動作(作用)について説明する。
【0031】
第1実施形態の車両用表示装置では、計器情報の視認用画像が表示デバイス5に表示されると、その像光がダッシュボード1の上面1aに形成された開口1bを通過してダッシュボード1の上方に配置されたフロントガラス3上に照射され、この照射により、アイポイントIの前方のフロントガラス3箇所上において、重畳用画像の虚像が視認されることになる。
【0032】
ここで、フロントガラス3が水平並びに鉛直の両方向について各々曲率を有する非平面状に形成されていることから、フロントガラス3に照射された表示デバイス5からの重畳用画像の像光の反射角度は、フロントガラス3の場所によって微妙に異なり、その影響で、表示デバイス5からフロントガラス3を経てアイポイントIに至る重畳用画像の像光の光路長は、表示デバイス5の表示面5aにおける座標位置によって異なることになる。
【0033】
そのため、説明の簡略化のために、不図示の計器情報生成ユニットにおいて画像信号が生成された計器情報の視認用画像が、図5に示すような、縦横の直線からなる格子状の画像であったとすると、アイポイントIからその前方のフロントガラス3箇所を視認した際に、そのフロントガラス3箇所上に視認されると想定される、表示デバイス5に表示される重畳用反転画像の反転虚像は、フロントガラス3における反射によって、図6に示すように、右下方向に引っ張られたように歪むことになる。
【0034】
そこで、第1実施形態の車両用表示装置では、アイポイントIからその前方のフロントガラス3箇所を視認した際に、そのフロントガラス3箇所上に視認される重畳用反転画像の虚像が歪まないように、次のような動作を行うように構成している。
【0035】
まず、不図示の計器情報生成ユニットにおいて生成された計器情報の視認用画像の画像信号が信号入力端子9に入力されると、その視認用画像の画像信号の各画素値が、座標値の小さいものから順にA/D変換器11によってA/D変換され、このA/D変換された画像信号の各画素のデジタル値が、座標値の小さいものから順に変換ユニット13に入力される。
【0036】
これと並行して、視認用画像の画像信号が信号入力端子9に入力されると、同期信号分離回路10においてその画像信号から同期信号が分離抽出されて、この同期信号が信号入力端子9を経て変換ユニット13にクロック信号として入力される。
【0037】
すると、変換ユニット13では、クロック信号として入力された同期信号に合わせて、A/D変換器11から入力される視認用画像のデジタル画像信号の各デジタル画素値が、その座標値の小さいものから順に、外付けROM15に格納されている座標変換テーブルによって対応づけられた、表示デバイス5の表示部5a上の座標値箇所に相当する外付けRAM17のビデオフレーム箇所上に書き込まれる。
【0038】
そして、A/D変換器11から入力される視認用画像のデジタル画像信号の各デジタル画素値が、全座標分、即ち、視認用画像の1画面分全てについて、外付けRAM17のビデオフレームに書き込まれると、外付けRAM17からそのビデオフレームに書き込まれている1フレーム分全てのデジタル画素値が、ビデオフレーム上の座標値の小さいものから順に読み出されて、D/A変換器19によりD/A変換された後、重畳用反転画像のアナログ画像信号として信号出力端子21から表示デバイス5に出力される。
【0039】
すると、表示デバイス5の表示面5aには、図6に示す仮想上の重畳用画像の虚像を左右(水平)軸の周りに反転させ、かつ、フロントガラス3の水平及び垂直の各方向における曲率の影響による画像の倍率を考慮した、図7に示すような形状に歪んだ重畳用反転画像が表示される。
【0040】
そして、この重畳用反転画像の像光が、ダッシュボード1の上面1aに形成された開口1bを通過してダッシュボード1の上方に配置されたフロントガラス3上に照射されることで、図6に示す仮想上の重畳用反転画像の虚像のように歪まされると、表示デバイス5に表示されている段階から存在する歪みが、表示デバイス5からフロントガラス3に像光が到達するまでに新たに発生する歪みによって相殺され、その結果、アイポイントIからその前方のフロントガラス3箇所を視認した際に、そのフロントガラス3箇所で重畳用反転画像の像光が反射されてフロントガラス3上に視認される重畳用反転画像の虚像は、図5に示すような、歪みのない本来の縦横の直線からなる格子状の画像となる。
【0041】
したがって、第1実施形態の車両用表示装置では、アイポイントIからその前方のフロントガラス3箇所を視認した際に、そのフロントガラス3箇所上で反射されてこのフロントガラス3箇所上において視認される重畳用画像の虚像は、フロントガラス3が、その水平並びに鉛直方向に関する曲率や、フロントガラス3の水平面(又は鉛直面)に対する傾斜角度について、場所によって不均一性があるような非平面状のものであっても、図5に示す格子状の画像と同様に、水平及び鉛直のどちらの方向についても歪みのない画像として視認される。
【0042】
そのため、運転者によってシートポジションや体格が異なってアイポイントIから視認するフロントガラス3上の位置が一定の箇所に定まらなかったり、車種によってフロントガラス3の形状が異なったりして、フロントガラス3上で視認される重畳用画像の虚像の歪みの度合いや内容が状況により変化してしまう場合には、その変化の状況に応じて格納内容を異ならせたものに外付けROM15を交換すればよい。
【0043】
このように第1実施形態の車両用表示装置によれば、車両のダッシュボード1内の表示デバイス5の表示面5aに表示させた重畳用反転画像の像光をフロントガラス3に照射させ、この照射により、アイポイントIの前方のフロントガラス3箇所上において反射された重畳用反転画像の虚像、即ち、元の重畳用画像の虚像を、フロントガラス3を透して視認される前景と重畳視認させるに当たり、フロントガラス3で重畳用反転画像の像光が反射される際に発生する歪みが相殺されるように、表示デバイス5に表示させる重畳用反転画像を、格納内容の異なるものに交換可能な外付けROM15の格納内容にしたがって予め歪ませておくように構成した。
【0044】
このため、外付けROM15を格納内容の異なるものに交換することで、運転者によるシートポジションや体格の相違に起因して、アイポイントIから視認するフロントガラス3上の位置が一定の箇所に定まらなかったり、車種によるフロントガラス3の形状の相違等に起因して、フロントガラス3上での重畳用画像の虚像の歪みの度合いや内容が変化してしまう場合であっても、これらの事態にフレキシブルに対応してフロントガラス3上での重畳用画像の虚像の歪みを好適に解消させることができる。
【0045】
尚、上述した第1実施形態の車両用表示装置では、図5に示すような縦横の直線からなる格子状の画像が、図7に示すように歪ませた画像となって、表示デバイス5に表示されることから、格子を構成する縦横の線が、表示デバイス5上では傾斜して表示されることになるが、歪ませた画像を歪ませていないときと同じ解像度で表示デバイス5に表示させるためには、最大45゜傾斜した場合のその方向において隣り合う画素のピッチを、縦横方向に隣接する画素のピッチと同じにする必要がある。
【0046】
言い換えると、縦横の隣接する画素のピッチを1とすると、45゜傾斜した方向において隣り合う画素のピッチは21/2 であるから、表示デバイス5の画素数を歪ませていない画像を表示させていたときの21/2 倍にしないと、歪ませた画像を歪ませていないときと同じ分解能で表示デバイス5に表示させることができず、例えば、斜線が階段状の縦横の線となって表示されてしまう可能性がある。
【0047】
このような場合を想定して表示デバイス5を高解像度のものとすると、視認用画像の画像信号の画素数よりも表示デバイス5の画素数が多くなり、当然、表示デバイス5に表示させる重畳用反転画像の画像信号の画素数も、表示デバイス5の画素数と同じだけに増えることになるが、そうすると、第1実施形態の車両用表示装置のように、外付けROM15に格納された座標変換テーブルを用いて、信号入力端子9に入力される視認用画像の各画素のデータを、信号出力端子21から出力される重畳用反転画像の各画素のデータとして対応づけすると、重畳用反転画像の画像信号中にデータの存在しない画素が発生することになる。
【0048】
すると、必然的に、視認用画像の画像信号中に対応する画素が存在しない、重畳用反転画像の各画素について、データの補間を行う必要が生じる。
【0049】
そこで、そのような状況に対応し得るようにした本発明の第2実施形態に係る車両用表示装置について、図8及び図9を参照して説明する。
【0050】
図8は本発明の第2実施形態に係る車両用表示装置の電気的な概略構成のブロック図であり、この第2実施形態の車両用表示装置は、コントロールユニット7Aの交換可能な外付けROM15A(座標変換テーブル保持手段に相当)の格納内容と、変換ユニット13AのROM13Acに格納された処理プログラムの内容とが、第1実施形態の車両用表示装置における外付けROM15や変換ユニット13とは異なっている。
【0051】
また、第2実施形態の車両用表示装置は、コントロールユニット7Aの外付けRAM17Aに、変換ユニット13により加工される前のデジタル画像信号の各画素値が一時格納される点において、第1実施形態の車両用表示装置におけるコントロールユニット7とは構成が異なっている。
【0052】
そして、第2実施形態に係る車両用表示装置の外付けROM15Aには、信号出力端子21から出力される重畳用反転画像の各画素のうち、信号入力端子9に入力される視認用画像の画像信号中に対応する画素があるものについて、その視認用画像の画素の座標値と重畳用反転画像の対応する画素の座標値とが関連づけて保持されている。
【0053】
そして、前記ROM13Acに格納された処理プログラムに従いDDC13Aaが行う処理動作は、図9のフローチャートに示すように行われる。
【0054】
即ち、まず、外付けRAM17Aの各ビデオフレーム箇所のデータを、A/D変換器11から取り込まれるデジタル画像信号の同じ座標値の画素のデータに書き換えさせ(ステップSA1)、次に、A/D変換器11から取り込まれるデジタル画像信号の1画面分の画素データについて、外付けRAM17Aのビデオフレームデータが書き換えられ終えたか否かを確認する(ステップSA3)。
【0055】
外付けRAM17のビデオフレームデータがデジタル画像信号の1画面分全て書き換えられ終えていない場合は(ステップSA3でN)、ステップSA1にリターンし、1画面分全て書き換えられ終えた場合は(ステップSA3でY)、外付けROM15Aに格納されている座標変換テーブル上の、重畳用反転画像の画像信号における座標値に対応する視認用画像の画像信号における座標値を、重畳用反転画像の画像信号における座標値の小さいものから順に検索して、視認用画像の画像信号における対応する座標値が座標変換テーブル上に存在しない画素を抽出する(ステップSA5)。
【0056】
そして、ステップSA5で抽出した、視認用画像の画像信号における対応する座標値が外付けROM15Aの座標変換テーブル上に存在しない、重畳用反転画像の画像信号における座標に隣接する周辺の座標値に対応する、外付けROM15Aの座標変換テーブルの視認用画像の画像信号における対応する座標値を、存在する分全て割り出し(ステップSA7)、次に、割り出した視認用画像の画像信号における対応する各座標値の画素のデータを、外付けRAM17Aの対応する各ビデオフレーム箇所から読み出して(ステップSA9)、それら画素のデータの平均を算出する(ステップSA11)。
【0057】
続いて、同期信号分離回路10から入力される、信号入力端子9に入力された視認用画像の画像信号の同期信号をサンプリングクロックとして、ステップSA5で抽出した以外の、視認用画像の画像信号における対応する座標値が外付けROM15Aの座標変換テーブル上に存在する、重畳用反転画像の画像信号における座標値に対応する画素のデータを、外付けRAM17Aの対応する各ビデオフレーム箇所から読み出すと共に(ステップSA13)、その合間に、視認用画像の画像信号における対応する座標値が外付けROM15Aの座標変換テーブル上に存在しない、重畳用反転画像の画像信号における座標値に対応する画素のデータを、ステップSA11において算出した画素のデータの平均によって補間する(ステップSA15)。
【0058】
そして、この補間後の重畳用反転画像の1画面分の画素のデータを、重畳用反転画像の画像信号における座標値の小さい順にD/A変換器19に出力した後(ステップSA17)、ステップSA1にリターンする。
【0059】
以上の説明からも明らかなように、第2実施形態では、図9のフローチャートによって変換ユニット13Aが行う一連の処理が、請求項中の歪み画像信号生成手段に対応する処理となっており、この変換ユニット13Aと外付けROM15Aとで、請求項中の表示歪発生手段が構成されている。
【0060】
上述のように構成された第2実施形態の車両用表示装置では、不図示の計器情報生成ユニットにおいて生成されて信号入力端子9に入力された計器情報の視認用画像の画像信号が、A/D変換器11によってA/D変換されて、A/D変換された画像信号の各画素のデジタル値が、座標値の小さいものから順に、対応する外付けRAM17のビデオフレーム箇所上に書き込まれる。
【0061】
そして、信号入力端子9に入力された視認用画像の画像信号から同期信号分離回路10において分離された同期信号をサンプリングクロックとして、変換ユニット13Aによって、外付けROM15Aに格納されている座標変換テーブル上の、視認用画像の画像信号における対応する座標値が存在する、重畳用反転画像の画像信号における座標値の画素のデータが、外付けRAM17Aの対応するビデオフレーム箇所から読み出される。
【0062】
これと共に、重畳用反転画像の画像信号における他の座標値の画素のデータが、周辺の座標値の画素のデータを平均することで割り出されて、外付けRAM17Aの対応するビデオフレーム箇所から読み出された画素のデータに補間され、この補間後の1画面分のデジタル画素値が、重畳用反転画像の画像信号における座標値の小さいものから順に読み出されて、D/A変換器19によりD/A変換された後、重畳用反転画像のアナログ画像信号として信号出力端子21から表示デバイス5に出力される。
【0063】
このように構成された第2実施形態の車両用表示装置によっても、第1実施形態の車両用表示装置と同様に、外付けROM15Aを格納内容の異なるものに交換することで、運転者によるシートポジションや体格の相違に起因して、アイポイントIから視認するフロントガラス3上の位置が一定の箇所に定まらなかったり、車種によるフロントガラス3の形状の相違等に起因して、フロントガラス3上での重畳用画像の虚像の歪みの度合いや内容が変化してしまう場合であっても、これらの事態にフレキシブルに対応してフロントガラス3上での重畳用画像の虚像の歪みを好適に解消させることができる。
【0064】
かつ、その上に、第2実施形態の車両用表示装置では、計器情報の視認用画像を意図的に歪ませて重畳用反転画像とすることに対応して、重畳用反転画像を視認用画像と同等の解像度で表示デバイス5に表示させるために、表示デバイス5の画素数を増やして、視認用画像の画像信号に対応する画素のない画素が重畳用反転画像の画像信号中に発生する場合であっても、その対応する画素が視認用画像の画像信号中にない重畳用反転画像の画像信号の画素のデータを補間して、表示デバイス5に重畳用反転画像を良好な状態で表示させることができる。
【0065】
以上に説明した第1及び第2の各実施形態では、外付けROM15,15Aを格納内容の異なるものに交換することで、運転者によるシートポジションや体格の相違に起因して、アイポイントIから視認するフロントガラス3上の位置が一定の箇所に定まらなかったり、車種によるフロントガラス3の形状の相違等に起因して、フロントガラス3上での重畳用画像の虚像の歪みの度合いや内容が変化してしまう場合に対応する構成とした。
【0066】
したがって、第1及び第2の各実施形態の車両用表示装置では、交換可能な外付けROM15,15Aが請求項中の歪みパターン調整手段を兼ねることになる。
【0067】
しかし、例えば、図10に電気的な概略構成のブロック図で示す、第1実施形態の車両用表示装置に対応する構成を有する第1開示例に係る車両用表示装置のコントロールユニット7Bのように、交換可能な外付けROM15に代えて、交換不能な代わりに書き換え可能な不揮発性メモリ(以下、「NVM」と略記する。座標変換テーブル保持手段に相当)15Bを用いたり、図11に電気的な概略構成のブロック図で示す、第2実施形態の車両用表示装置に対応する構成を有する第2開示例に係る車両用表示装置のコントロールユニット7Cのように、交換可能な外付けROM15Aに代えて、交換不能な代わりに書き換え可能なNVM15C(座標変換テーブル保持手段に相当)を用いる構成としてもよい。
【0068】
その場合には、NVM15B,15Cに各々格納された座標変換テーブルを、これらに直接、又は、変換ユニット13,13Aを介して、コントロールユニット7,7Aの外部から接続した書換用端末23(歪みパターン調整手段に相当)により、内容の異なるものに書き換えることで、運転者によるシートポジションや体格の相違に起因して、アイポイントIから視認するフロントガラス3上の位置が一定の箇所に定まらなかったり、車種によるフロントガラス3の形状の相違等に起因して、フロントガラス3上での重畳用画像の虚像の歪みの度合いや内容が変化してしまう場合に対応することができる。
【0069】
そして、この場合には、書換用端末23をNVM15B,15Cに接続している間、表示デバイス5の表示面5aに図7の重畳用反転画像(調整用歪み格子画像に相当)を表示させて、フロントガラス3上に視認される重畳用反転画像の反転虚像が、図5に示すような縦横の直線からなる格子状の画像となるように、書換用端末23側のカーソル操作等により調整し、フロントガラス3上の重畳用反転画像の反転虚像が図5に示す縦横の直線からなる格子状の画像となった時点で、その時点で表示デバイス5の表示面5aに表示されている重畳用反転画像の画像信号が、不図示の計器情報生成ユニットにおいて生成された計器情報の視認用画像の画像信号から生成されるような、座標変換テーブルの内容を、変換ユニット13,13Aか書換用端末23かのどちらかで割り出し、この割り出した座標変換テーブルの内容に、NVM15B,15Cの格納内容を書き換えさせるように構成してもよい。
【0070】
尚、以上の説明からも明らかなように、第1及び第2開示例では、変換ユニット13とNVM15Bや、変換ユニット13AとNVM15Cで、請求項中の表示歪発生手段が構成されることになる。
【0071】
尚、上述した各実施形態及び各開示例の車両用表示装置では、表示デバイス5に表示させた画像の像光をフロントガラス3によって1回反射させてアイポイントIに導くようにしているので、表示デバイス5に反転画像を表示させるものとしており、このことは、3回以上の奇数回反射させて、表示デバイス5に表示させた画像の像光をアイポイントIに導く場合には、同様に適用されるが、仮に、表示デバイス5に表示させた画像の像光を2回以上の偶数回反射させてアイポイントIに導く場合には、表示デバイス5に正立画像を表示させることになる。
【0072】
また、上述した各実施形態及び各開示例の車両用表示装置では、表示デバイス5をダッシュボード1の内部に収容する場合を例に取って説明したが、本発明は、表示デバイス5からの像光をフロントガラス3に投影させてアイポイントIから視認させるものである限り、表示デバイスがダッシュボードの外に配置されているものについても適用可能である。
【0073】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の車両用表示装置によれば、表示デバイスと、該表示デバイスに表示させる画像の内容をコントロールするコントロールユニットとを備えている車両用表示装置において、前記コントロールユニットが、前記表示デバイスに表示された重畳用画像を車両のフロントガラス上に投影させて、車内のアイポイントから前記フロントガラスを透して視認される前記車両の前景と、前記フロントガラスに投影される前記重畳用画像の虚像とを重畳視認させるに当たり、前記フロントガラスの非平面性に起因して前記アイポイントから視認される前記重畳用画像の虚像に生じる歪みが相殺されるように前記表示デバイスに表示させる表示歪発生手段と、前記表示デバイスに表示させる前記重畳用画像の前記表示歪発生手段による歪み量を、前記重畳用画像の虚像における前記車両の上下及び左右の各方向について各々調整する歪みパターン調整手段とを備えており、前記表示歪発生手段が、デジタル信号を加工する変換ユニットと、前記フロントガラスの非平面性に応じかつ前記フロントガラスと前記アイポイントとの相対位置に応じた座標変換テーブルを予め格納している外付けROMとから成り、前記歪みパターン調整手段が、前記車両用表示装置に対し、前記フロントガラスの非平面性に応じかつ該フロントガラスと前記アイポイントとの相対位置に応じた前記座標変換テーブルを予め格納している前記外付けROMの交換により、前記重畳用画像の虚像に生じる歪みを相殺可能に構成した。
【0074】
このため、表示歪発生手段による重畳用画像の歪みパターンを歪みパターン調整手段により、フロントガラスの非平面性や、フロントガラスとアイポイントとの相対位置に応じた歪みパターンに調整することで、運転者によるシートポジションや体格の相違に起因して、アイポイントから視認するフロントガラス上の位置が一定の箇所に定まらなかったり、車種によるフロントガラスの形状の相違等に起因して、フロントガラス上での重畳用画像の虚像の歪みの度合いや内容が変化してしまう場合であっても、これらの事態にフレキシブルに対応してフロントガラス上での重畳用画像の虚像の歪みを好適に解消させることができる。
【0078】
表示歪発生手段の外付けROMに保持されている座標変換テーブルの少なくとも内容を歪みパターン調整手段により調整することで、アイポイントから視認するフロントガラス上の位置が一定の箇所に定まらなかったり、車種によるフロントガラスの形状の相違等に起因して、フロントガラス上での重畳用画像の虚像の歪みの度合いや内容が変化してしまう事態にフレキシブルに対応した、フロントガラス上での重畳用画像の虚像の歪みの好適な解消を、容易に実現することができる。
【0080】
フロントガラス上での重畳用画像の虚像の歪みの好適な解消を、外付けROMの交換によって、簡易な構成により実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態に係る車両用表示装置の原理的な概略構成を示す断面図である。
【図2】 図1の表示デバイスからの像光が照射されるフロントガラスとその周辺部分を示す拡大説明図である。
【図3】 図1のコントロールユニットの電気的な概略構成を示すブロック図である。
【図4】 図3の高速デジタルデータ変換ユニットのデジタルデータコントローラがROMに格納された処理プログラムに従いCPUが行う処理動作を示すフローチャートである。
【図5】 図1のフロントガラス上に投影させるために画像信号が生成される計器情報の視認用画像を示す模式図である。
【図6】 図5の視認用画像を図1の表示デバイスに表示させた場合にフロントガラス上において視認されると想定される重畳用反転画像の虚像を示す模式図である。
【図7】 図5の視認用画像のような歪みのない画像を虚像としてフロントガラス上において視認させるために図1の表示デバイスに実際に表示させる重畳用反転画像を示す模式図である。
【図8】 本発明の第2実施形態に係る車両用表示装置におけるコントロールユニットの電気的な概略構成を示すブロック図である。
【図9】 図8の高速デジタルデータ変換ユニットのデジタルデータコントローラがROMに格納された処理プログラムに従いCPUが行う処理動作を示すフローチャートである。
【図10】 本発明の第1開示例に係る車両用表示装置におけるコントロールユニットの電気的な概略構成を示すブロック図である。
【図11】 本発明の第2開示例に係る車両用表示装置におけるコントロールユニットの電気的な概略構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
3 フロントガラス
5 表示デバイス
13,13A 変換ユニット(歪み画像信号生成手段、表示歪発生手段)
15,15A 外付けROM(座標変換テーブル保持手段、表示歪発生手段、歪みパターン調整手段)
15B,15C 不揮発性メモリ(座標変換テーブル保持手段、表示歪発生手段)
23 書換用端末(歪みパターン調整手段)
I アイポイント
S 虚像
Claims (1)
- 表示デバイスと、該表示デバイスに表示させる画像の内容をコントロールするコントロールユニットとを備えている車両用表示装置において、
前記コントロールユニットが、
前記表示デバイスに表示された重畳用画像を車両のフロントガラス上に投影させて、車内のアイポイントから前記フロントガラスを透して視認される前記車両の前景と、前記フロントガラスに投影される前記重畳用画像の虚像とを重畳視認させるに当たり、前記フロントガラスの非平面性に起因して前記アイポイントから視認される前記重畳用画像の虚像に生じる歪みが相殺されるように前記表示デバイスに表示させる表示歪発生手段と、
前記表示デバイスに表示させる前記重畳用画像の前記表示歪発生手段による歪み量を、前記重畳用画像の虚像における前記車両の上下及び左右の各方向について各々調整する歪みパターン調整手段とを備えており、
前記表示歪発生手段が、
デジタル信号を加工する変換ユニットと、
前記フロントガラスの非平面性に応じかつ前記フロントガラスと前記アイポイントとの相対位置に応じた座標変換テーブルを予め格納している外付けROMとから成り、
前記歪みパターン調整手段が、前記車両用表示装置に対し、前記フロントガラスの非平面性に応じかつ該フロントガラスと前記アイポイントとの相対位置に応じた前記座標変換テーブルを予め格納している前記外付けROMの交換により、前記重畳用画像の虚像に生じる歪みを相殺可能にしている、ことを特徴とする車両用表示装置。
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