<第1の実施の形態の構成>
図4には、本発明の第1の実施の形態に係るウエビング巻取装置10の全体的な構成の概略が分解斜視図により示されている。この図に示されるように、ウエビング巻取装置10はフレーム12を備えている。
フレーム12は、例えば、略車両左右方向に沿って厚さ方向とされた板状の背板14を備えており、背板14がボルト等の締結手段により、例えば、センターピラーの下端部近傍にて車体に固定されることで、本ウエビング巻取装置10が車体に取り付けられる構造になっている。
略車両前後方向に沿った背板14の幅方向一端からは、脚板16が車幅方向(略車両左右方向)内方側へ向けて屈曲形成されている。また、背板14の幅方向他端からは、脚板18が脚板16と同方向に屈曲形成されている。
脚板16と脚板18との間には、スプール24が設けられている。スプール24は、脚板16と脚板18との対向方向に沿って軸方向の略円筒形状に形成されている。スプール24には挿通孔26が形成されている。
挿通孔26は、両端がスプール24の外周部にて開口しており、その開口形状はスプール24の軸方向に沿って長手のスリット状とされている。挿通孔26は、スプール24の軸心部分を貫通する貫通孔28を回避するように形成されており、挿通孔26の一方の開口端からは長尺帯状のウエビングベルト30の長手方向基端側が挿通される。
ウエビングベルト30の長手方向基端部には、幅方向に貫通した筒状部32が形成されており、挿通孔26を通過した筒状部32の内側には抜け止めシャフト34が配置されることでウエビングベルト30をその先端側へ引っ張った際にウエビングベルト30の基端側が挿通孔26から抜け出ることを防止している。
このように挿通孔26からの抜け止めがなされたウエビングベルト30は、スプール24が自らの軸周り方向一方の巻取方向に回転することでスプール24の外周部に基端側から層状に巻き取られて収納される。
一方、貫通孔28の内側には、スプール24の軸方向に沿って長手方向とされた棒状のトーションシャフト36が配置されている。トーションシャフト36は、脚板18側でスプール24の内側に軸周り方向の周り止めされた状態でスプール24に連結されている。さらに、トーションシャフト36の脚板18側の端部は、脚板18を貫通してフレーム12の外方へ突出している。
脚板18の外側にはスプリングカバー38が配置されている。スプリングカバー38は、脚板18側へ向けて開口した箱状で、ねじ等の締結手段やスプリングカバー38又は脚板18に形成された嵌合爪等の嵌合により、スプリングカバー38が脚板18に固定されている。
スプリングカバー38の内側には渦巻きばね40が収容されている。渦巻きばね40は、渦巻き方向内側端が渦巻き方向外側端に対して上記の巻取方向とは反対の引出方向に回転変位することで付勢力が漸次増加する構造のばねで、その渦巻き方向外側端は渦巻きばね40よりもスプリングカバー38の開口側に設けられたスプリングシート42に係止されている。
スプリングシート42はスプリングカバー38に固定されており、渦巻きばね40の渦巻き方向外側端は、スプリングシート42及びスプリングカバー38を介して脚板18(フレーム12)に連結されている。また、渦巻きばね40の渦巻き方向内側端の近傍にはアダプタ44が設けられている。
アダプタ44の外周一部には渦巻きばね40の渦巻き方向内側端が固定されている。さらに、アダプタ44の軸心部分にはスプリングシート42を貫通したトーションシャフト36の脚板18側の端部が嵌合固定されている。
一方、脚板16の外側にはプリテンショナ50が設けられている。プリテンショナ50はシリンダ52を備えている。
本実施の形態において、シリンダ52は、例えば、金属のパイプの軸方向中間部に設定された屈曲部54にて、内部の連通を維持したまま適宜に断面形状が変形するように塑性変形させつつ、適宜に屈曲させることで形成されている。屈曲部54よりも軸方向一方の側は装着部56とされている。装着部56の開口端にはガスジェネレータ58が装着されている。
ガスジェネレータ58は、図示しない加速度センサに電気的又は機械的に接続されており、車両が急減速状態になった場合の加速度(減速度)を加速度センサが検出した際にはガスジェネレータ58の内部に設けられたガス発生剤が着火される。これにより、ガス発生剤は極短時間で燃焼されて瞬間的にガスを発生させる。
屈曲部54の装着部56とは反対側はシリンダ本体60とされている。上記のように屈曲部54は塑性変形させられて屈曲されるものの内部の連通は確保されているため、装着部56に装着されたガスジェネレータ58にて発生したガスはシリンダ本体60の底部側に供給される。また、シリンダ本体60の内側にはピストン62が設けられている。
ピストン62は、外径寸法がシリンダ本体60の内径寸法に略等しい(厳密には僅かに小さい)円板状に形成されている。シリンダ本体60の底部側を向くピストン62の端面には、円柱状の保持部64がピストン62に対して同軸的且つ一体的に形成されている。保持部64は、外径寸法がピストン62よりも小径とされており、その外周部には封止部材66が嵌め込まれている。
封止部材66は、環状に形成されていると共に弾性を有しており、ピストン62をシリンダ本体60の内側に配置した状態で保持部64の外周部とシリンダ本体60の内周部の双方に弾性的に圧接し、保持部64とシリンダ本体60との間を封止している。このため、ガスがシリンダ本体60内に供給されてシリンダ本体60の内圧が上昇すると、ピストン62がシリンダ本体60の上端側へ向けて摺動する。
ピストン62の保持部64とは反対側(すなわち、シリンダ本体60の開口端側)にはスライド部材としてのラックバー68が形成されている。ラックバー68はシリンダ本体60の開口方向に沿って長手の角棒状とされており、その幅方向一端には複数のラック歯がラックバー68の長手方向に沿って一定間隔毎に形成されている。
また、シリンダ本体60の開口端近傍の脚板16側には、支持部材としてのギヤケース70が設けられており、シリンダ本体60を介してギヤケース70とは反対側にはカバープレート72が設けられている。
カバープレート72は、シリンダ本体60から突出したラックバー68をシリンダ本体60の脚板16とは反対側から被覆可能な箱形状に形成されており、少なくともシリンダ本体60の開口端から突出したラックバー68に対して干渉しない形状に形成されている。また、カバープレート72の外周部には複数の締結片74が形成されており、これらの締結片74がねじ76によって脚板16に締結固定されることで、カバープレート72がフレーム12に固定される構造になっている。
さらに、カバープレート72には、シリンダ本体60の開口端やその近傍部分が嵌め込まれる図示しない保持部が形成されており、これにより、カバープレート72がシリンダ本体60に連結される。カバープレート72とギヤケース70との間にはピニオン90が配置されている。
ピニオン90は、ラックバー68の先端側でラック歯に噛み合っていると共に、脚板16及びギヤケース70を貫通したトーションシャフト36の他端に回転自在に軸支されており、ラックバー68の上昇によりピニオン90が巻取方向に回転する構造になっている。
また、ピニオン90の脚板16側にはクラッチ92が設けられている。クラッチ92は、トーションシャフト36に回転自在に軸支されているため、トーションシャフト36が回転してもクラッチ92が回転することはない。しかしながら、クラッチ92はピニオン90に係合しており、ピニオン90が巻取方向に回転すると、この回転力によりクラッチ92の一部が変形してトーションシャフト36に連結させられる。
また、脚板16の側方にはロック機構120が設けられている。ロック機構120はセンサホルダ122を備えている。センサホルダ122は部分的に脚板16側へ向けて開口した凹形状に形成されており、脚板16側へ向けて開口した部分の内側には上記のカバープレート72の一部が位置している。
センサホルダ122は、外周部の所定部位から脚板16側へ向けて突出形成された円筒状の突起が、脚板16側に形成された孔部に嵌挿された状態で突起の内側に「ぎぼしピン」を圧入することでセンサホルダ122が脚板16に固定される。
センサホルダ122の脚板16とは反対側にはセンサカバー124が設けられている。センサカバー124には、外周部等に嵌合爪等が形成されており、センサホルダ122の所定部位に嵌合してセンサホルダ122に機械的に連結されている。センサカバー124には、図示しない筒状の軸受部が形成されており、センサホルダ122を貫通したトーションシャフト36の他端部を回転自在に軸支している。
センサホルダ122とセンサカバー124との間にはVギヤ126が設けられている。Vギヤ126はセンサカバー124側へ向けて開口した浅底の円筒形状(もしくは、盆状)に形成されており、その外周部には外周部にラチェット歯が形成されている。Vギヤ126にはトーションシャフト36が貫通しており、トーションシャフト36に対して同軸的且つ一体的に回転可能にトーションシャフト36に取り付けられている。
図4におけるVギヤ126とセンサカバー124との間の構成を示す図1に示されるように、Vギヤ126の内側には回転検出手段としての回転検出機構127が設けられている。回転検出機構127はギヤリング154を備えている。ギヤリング154はVギヤ126に対して同軸のリング状に形成されており、Vギヤ126に設けられた支持部にVギヤ126に対して同軸的に相対回転自在に軸支されている。
ギヤリング154の内周部には内歯のラチェット歯が形成されている。このギヤリング154の内歯のラチェット歯に対応してギヤリング154の内側にはWパウル134が設けられている。
Wパウル134は、トーションシャフト36の軸心に対して変位した位置でVギヤ126に形成されたピンに、トーションシャフト36と平行な軸周りに揺動可能に軸支されている。
Wパウル134は揺動することでギヤリング154の内周部に対して接離する構造で、ギヤリング154の内周部に接近移動することによりギヤリング154の内周部に形成されたラチェット歯に噛み合う。この噛合状態でVギヤ126が引出方向に回転しているのであれば、Vギヤ126の引出方向への回転力がWパウル134を介してギヤリング154に伝えられ、ギヤリング154を引出方向に回転させる。
また、Wパウル134にはウエートとしてWパウル134と共に回転検出手段を構成するWマス138が取り付けられている。さらに、Wパウル134にはリターンスプリング136の一端が係止されている。リターンスプリング136の他端はVギヤ126に係止されており、ギヤリング154との噛み合いを解除する方向(Wパウル134のギヤリング154の内周部との噛合部分がギヤリング154の内周部から離間する方向)にWパウル134が付勢されている。
一方、ギヤリング154には係合部材としてのフリクションスプリング155が設けられている。フリクションスプリング155は略リング状の本体156を備えている。本体156は内径寸法がギヤリング154の外径寸法と略同じか、極僅かに小さく形成されており、この本体156がギヤリング154の外周部に嵌め込まれている。
本体156はギヤリング154に対して同軸的に相対回転可能であるが、付勢力によりギヤリング154の外周部に圧接しており、ギヤリング154との一体的な回転を妨げるような外力がフリクションスプリング155に作用しない限りは、本体156(フリクションスプリング155)がギヤリング154と一体的に回転する。
一方、Vギヤ126のセンサカバー124側には、回転体としてのセンサギヤ128が設けられている。センサギヤ128の本体130には、トーションシャフト36が同軸的に貫通している。センサギヤ128の本体130はトーションシャフト36に回転自在に軸支されている。
センサギヤ128の一部にはリターンスプリング132の一端が係止されている。リターンスプリング132は引っ張りコイルスプリングとされており、その他端はセンサカバー124に係止され、センサギヤ128がトーションシャフト36周りに引出方向に回動した際には巻取方向にセンサギヤ128を付勢する。
また、センサギヤ128の本体130にはVギヤ126側へ向けて長手の押圧部168が形成されている。この押圧部168のVギヤ126とは反対側の端部にはシャフト129が突出形成されており、連結部材としての連結爪140がトーションシャフト36の軸方向と平行(同方向)な軸周りに回動可能に押圧部168に軸支されている。
連結爪140は回動することで上記のVギヤ126の外周部に対して接離し、Vギヤ126の外周部に連結爪140が接近して係合した状態でVギヤ126が引出方向に回転しているのであれば、引出方向へのVギヤ126の回転が連結爪140を介してセンサギヤ128に伝わり、センサギヤ128がVギヤ126と共に引出方向に回転する。
また、フリクションスプリング155の本体156は、その周方向一部が途切れて完全なリング状には形成されておらず、周方向両端を備えている。この本体156の周方向端部からは略鉤状に屈曲した押圧部158が連続して形成されている。この押圧部158は連結爪140に対応して形成されており、押圧部158の先端は本体156に対してその半径方向外方側に位置している。
本体156がギヤリング154と共に回転した際の押圧部158の回転軌跡上には連結爪140の先端からVギヤ126とは反対側へ向けて突出形成された係合ピン141が位置しており、本体156の回転により押圧部158が係合ピン141に当接して押圧した際には、連結爪140がVギヤ126の外周部に対して接近するように回動する。
さらに、連結爪140の下方には、図4に示される加速度検出手段としての加速度センサ142が設けられている。加速度センサ142に対応してセンサホルダ122にはセンサカバー124側へ開口した箱状の収容部144が形成されており、加速度センサ142は少なくともその一部が収容部144に収容されている。
加速度センサ142は基台146を備えている。基台146は全体的に上下方向に厚さ方向の平板状に形成されている。基台146の上側の端面には上方へ向けて開口した湾曲面が形成されており、この湾曲面上に慣性体としての硬球148が配置されている。硬球148の上側にはセンサ爪150が設けられている。
センサ爪150は、基台146の外周一部から上方へ向けて立設された縦壁152の上端に回動可能に軸支されており、硬球148が基台146の湾曲面上を転動して昇ることでセンサ爪150が押し上げられる。センサ爪150は硬球148に押し上げられることで図1に示される連結爪140に当接して連結爪140を押し上げるように回動させる。
センサ爪150の係合により回動した連結爪140の回動方向側には、上記のVギヤ126が位置しており、これにより、連結爪140がVギヤ126に噛み合う。
一方、図4に示されるように、ロック機構120は、ロック部材としてのロックパウル160を備えている。ロックパウル160はシャフト162を備えている。シャフト162はスプール24の軸方向に対して平行な方向(同方向)に軸方向とされており、その一端は脚板18に形成された軸受孔(図示省略)に回動自在に軸支されている。
シャフト162の軸方向他端部はギヤケース70に形成された軸受孔164に回動自在に軸支されている。シャフト162の軸方向他端側にはパウル部166が形成されている。パウル部166はシャフト162の軸方向に沿って厚さ方向の板状部材で、その外周一部には外歯のラチェット歯が形成されている。
シャフト162の回動半径方向に沿ったパウル部166の側方にはロックベース170が設けられている。ロックベース170は嵌挿部171を備えている。嵌挿部171は円柱形状に形成されており、スプール24の貫通孔28の他端部にスプール24に対して同軸的に回転自在に嵌挿されている。
嵌挿部171ひいてはロックベース170には、トーションシャフト36が回り止めされた状態で同軸的に貫通しており、トーションシャフト36に対して同軸的且つ一体的に回転する。
嵌挿部171の脚板16側にはラチェット部172が一体形成されている。ラチェット部172は、嵌挿部171に対して同軸的に形成されており、その外周部にはラチェット歯が断続的に形成されている。
上記のロックパウル160は、シャフト162が巻取方向に回動することで、パウル部166のラチェット歯がラチェット部172のラチェット歯に噛み合う。このパウル部166とラチェット部172との噛合状態では、ラチェット部172、ひいてはロックベース170の引出方向への回転が規制される。
また、パウル部166には図1に示されるセンサギヤ128の押圧部168が対応しており、センサギヤ128の本体130が引出方向に回動すると、押圧部168がパウル部166を押圧し、ロックパウル160を巻取方向に回動させる構造になっている。
一方、図1に示されるように、センサギヤ128のVギヤ126とは反対側には、回転部材として規制手段を構成するカムプレート173が配置されている。カムプレート173は略円板状に形成されており、トーションシャフト36に回転自在に軸支されている。
また、カムプレート173の中心から半径方向外方に変位した位置には円孔174が形成されており、減速ギヤ176がスプール24と平行な軸周りに回転自在に軸支されている。減速ギヤ176はギヤ部178を備えている。ギヤ部178は外歯の平歯車で、カムプレート173のセンサギヤ128とは反対側に位置している。ギヤ部178に対応してトーションシャフト36の先端側にはギヤ180が設けられている。ギヤ180はギヤ部178よりも歯数が少なく、トーションシャフト36に対して同軸的且つ一体的に設けられてギヤ部178に噛み合っている。
また、減速ギヤ176はギヤ部182を備えている。ギヤ部182はギヤ部178に対して同軸的且つ一体的に形成されていると共に、ギヤ部178よりも歯数が十分に少ない。また、ギヤ部182はカムプレート173のセンサギヤ128側に位置している。
一方、図2に示されるように、カムプレート173のセンサギヤ128側の面にはスプール24に対して同軸的なリング状のリブ184が形成されている。リブ184の内周部にはギヤ部182よりも十分に歯数が多い内歯のギヤ186が形成されており、ギヤ部182が噛み合っている。
したがって、スプール24、ひいてはトーションシャフト36が自らの軸周りに回転すると、この回転力がギヤ180、ギヤ部178、ギヤ部182、及びギヤ186により減速されてカムプレート173に伝わり、これにより、カムプレート173がトーションシャフト36周りに回転する。
なお、以下、引出方向へのトーションシャフト36の回転に連動したカムプレート173の回転方向を「カム引出方向」と称し、巻取方向へのトーションシャフト36の回転に連動したカムプレート173の回転方向を「カム巻取方向」と称する。
また、図1に示されるように、センサギヤ128の本体130を介して概ね押圧部168とは反対側にはレバー収容部188が本体130に形成されている。レバー収容部188にはシャフト190がVギヤ126とは反対側へ向けてスプール24に対して平行に突出形成されている。
シャフト190には、ALR切替レバー192が回動可能に軸支されている。ALR切替レバー192の先端部には係止突起198が形成されている。係止突起198にはコイルスプリング200の一端が係止されている。コイルスプリング200の他端は本体130に形成されたスプリング保持部202の保持突起204に係止されている。
ALR切替レバー192は、例えば、シャフト190での軸支部分と保持突起204との間に係止突起198が位置した状態をALR切替レバー192の中立位置とされ、中立位置を境として、シャフト190周りにセンサギヤ128の回転軸心側への回動方向である係合方向や、この係合方向とは反対の離脱方向にALR切替レバー192が回動すると、コイルスプリング200の付勢力がその回動方向側へALR切替レバー192を付勢して更に回動させる。
また、図1に示されるように、ALR切替レバー192の先端からはVギヤ126側へ向けて連結爪206が形成されている。連結爪206はスプリング保持部202とレバー収容部188との間を通過してVギヤ126の外周部の側方に位置しており、ALR切替レバー192がシャフト190周りにセンサギヤ128の回転軸心側(すなわち、トーションシャフト36側)へ回動すると、Vギヤ126に連結爪206が噛み合う。
一方、ALR切替レバー192の先端からはカムプレート173の回転軸心側へ向けて当接部210が突出形成されている。当接部210に対応してカムプレート173のセンサギヤ128とは反対側の面にはカム突起212とカム壁214が形成されている。
カム突起212はカム巻取方向側で且つALR切替レバー192の先端側から当接部210に当接可能に形成されており、スプール24に巻き取られたウエビングベルト30が全量引き出される直前までスプール24、ひいてはトーションシャフト36が回転すると当接部210にカム突起212が当接する。
これに対して、カム壁214は、ALR切替レバー192が係合方向側へ回動した状態での当接部210に対してカム引出方向側から当接可能に形成されている。しかも、一定量のウエビングベルト30が残されてウエビングベルト30がスプール24に巻き取られた全格納の直前の状態までスプール24、ひいてはトーションシャフト36が回転すると当接部210にカム壁214が当接する。
一方、図4に示されるように、カムプレート173には規制部として規制手段を構成するストッパ220が設けられている。ストッパ220はカムプレート173のセンサギヤ128側の端面から突出形成された板状部で、図2に示されるように、スプール24にウエビングベルト30が全量巻き取られた全格納状態に対応したカムプレート173の回転位置では、上記の連結爪140の係合ピン141にストッパ220が対向するようにカムプレート173におけるストッパ220の形成位置が設定されている。
ストッパ220と係合ピン141との対向状態では、連結爪140がVギヤ126の外周部側へ回動しようとすると、係合ピン141にストッパ220が干渉して連結爪140の回動を規制する。
<第1の実施の形態の作用、効果>
次に、本ウエビング巻取装置10の作用並びに効果について説明する。
本ウエビング巻取装置10では、スプール24に巻き取られた状態のウエビングベルト30を渦巻きばね40の付勢力に抗して先端側へ引っ張ると、ウエビングベルト30が引き出されつつスプール24が引き出し方向に回転する。
このようにして引き出されたウエビングベルト30を乗員の身体に掛け回し、例えば、ウエビングベルト30の長手方向中間部に設けられたタングプレートを車両の座席の側方に設けられたバックル装置に保持させることで乗員の身体に対するウエビングベルト30の装着状態となり、乗員の身体がウエビングベルト30により拘束される。
このようなウエビングベルト30の装着状態で、車両が急減速状態になり、これによって硬球148が転動すると、硬球148によってセンサ爪150が押し上げられる。このようにして押し上げられたセンサ爪150は、センサギヤ128の連結爪140に係合して連結爪140を押し上げるように回動させる。これにより、連結爪140がVギヤ126に噛み合う。
一方、車両が減速した際の慣性で、乗員の身体が略車両前方側へ移動すると、乗員の身体によりウエビングベルト30が急激に引っ張られる。このように、ウエビングベルト30が急激に引っ張られることで、スプール24に引出方向への回転力が急激に付与される。
基本的には、スプール24が引出方向に回転することで、トーションシャフト36、ひいては、Vギヤ126が引出方向に回転すると、Wパウル134がVギヤ126と共に引出方向に回転する。しかしながら、Wパウル134にはWマス138が設けられているため、上記のようにスプール24が急激に引出方向に回転した場合には、慣性によって回転せずにその位置で留まろうとする。
これにより、Wパウル134はセンサスプリング136の付勢力に抗してWパウル134に対して相対的に回動する。このWパウル134の相対的な回動によりWパウル134がギヤリング154の内周部に接近し、ギヤリング154の内周部に形成されたラチェット歯にWパウル134が噛み合う。
Wパウル134がギヤリング154に噛み合うことで、トーションシャフト36、Vギヤ126、及びWパウル134を介して引出方向へのスプール24の回転力がギヤリング154に伝えられ、ギヤリング154がVギヤ126と共に引出方向に回転する。
ギヤリング154が引出方向に回転することで、ギヤリング154の外周部に付勢力で圧接しているフリクションスプリング155がギヤリング154と共に引出方向に回転する。このように、フリクションスプリング155が引出方向へ所定角度回転すると、押圧部158が連結爪140の係合ピン141に当接して、係合ピン141を押圧する。
このように、連結爪140は係合ピン141が押圧部158により押圧されることで回動し、これによっても連結爪140がVギヤ126に噛み合う。
以上のように、連結爪140がVギヤ126に噛み合うと、トーションシャフト36、Vギヤ126、連結爪140を介してセンサギヤ128にスプール24の引出方向への回転力が伝えられ、これにより、センサギヤ128が引出方向に回転する。
センサギヤ128がリターンスプリング132の付勢力に抗して一定角度引出方向に回転すると、センサギヤ128に設けられた押圧部168がロックパウル160のパウル部166を押圧して、シャフト162周りにパウル部166を回動させる。
このようにシャフト162周りにパウル部166が回動すると、パウル部166がロックベース170のラチェット部172に噛み合い、ロックベース170、ひいてはスプール24の引出方向への回転を規制する。これにより、略車両前方側へ慣性移動しようとする乗員の身体をウエビングベルト30によって確実に拘束して保持できる。
一方、本ウエビング巻取装置10を搭載した車両の座席にウエビングベルト30によってチャイルドシートを固定する場合には、ウエビングベルト30が全て引き出される。
このようにウエビングベルト30を引き出してスプール24を引出方向に回転させると、トーションシャフト36が引出方向に回転し、これにより、ギヤ180が引出方向に回転する。ギヤ180の引出方向の回転はギヤ部178、182、及びギヤ186を介してカムプレート173に伝わり、カムプレート173がカム引出方向に回転する。
このようにカム引出方向にカムプレート173が回転すると、カム突起212がカム巻取方向側から離脱位置にあるALR切替レバー192の当接部210に接近する。次いで、スプール24に巻き取られているウエビングベルト30が全て引き出される直前の回転位置にスプール24、ひいてはトーションシャフト36が到達すると、カム突起212が当接部210に当接する。
この状態で更に引出方向にスプール24が回転すると、カム突起212が当接部210を押圧して、コイルスプリング200の付勢力に抗して中立位置よりも係合方向側へALR切替レバー192を回動させる。但し、この状態では、連結爪206がVギヤ126に噛み合う位置までALR切替レバー192が回動していない。
このように、ウエビングベルト30が全量引き出された状態で座席上に載置されたチャイルドシートの所定部位にウエビングベルト30が掛け回される。この状態でタングプレートをバックル装置に係合させてタングプレートを保持させ、更に、ウエビングベルト30の弛み分をスプール24に巻き取らせることでチャイルドシートがウエビングベルト30に保持されて座席上にチャイルドシートが固定される。
上記のように、ウエビングベルト30の弛み分をスプール24に巻き取らせることでスプール24が巻取方向に回転すると、コイルスプリング200の付勢力でALR切替レバー192が係合方向に更に回動する。これにより、連結爪206がVギヤ126に噛み合う。
したがって、この状態でスプール24が引出方向に回転すると、センサギヤ128がVギヤ126と共に引出方向に回動する。センサギヤ128が引出方向に回動すると、ロックパウル160のパウル部166が押圧部168によって押圧され、シャフト162周りにパウル部166が回動させられる。これにより、パウル部166がロックベース170のラチェット部172に噛み合い、ロックベース170、ひいてはスプール24の引出方向への回転が規制される。
このように、スプール24の引出方向への回転が規制されることでウエビングベルト30の引き出しが規制されるため、チャイルドシートを締め付けて固定しているウエビングベルト30が緩むことがなく確実に座席上にチャイルドシートを固定できる。
また、タングプレートをバックル装置から取り外してチャイルドシートからウエビングベルト30を外すと、渦巻きばね40の付勢力でスプール24が巻取方向に回転し、ウエビングベルト30がスプール24に巻き取られる。
このように巻取方向にスプール24、ひいてはトーションシャフト36が回転すると、カムプレート173がカム巻取方向に回転する。このようにカムプレート173がカム巻取方向に回転すると、係合位置にALR切替レバー192が位置している状態での当接部210に、カム壁214がカム引出方向側から接近する。
ウエビングベルト30が全格納される状態の直前の回転位置にスプール24が到達すると、カム壁214が当接部210に当接する。さらに、この状態でウエビングベルト30が全格納される状態の回転位置までスプール24が巻取方向に回転すると、カム壁214に当接部210が押圧される。
これにより、コイルスプリング200の付勢力に抗して中立位置よりも離脱方向側までALR切替レバー192が回動し、これにより、離脱位置までALR切替レバー192が回動する。このように離脱位置までALR切替レバー192が回動することで、連結爪206がVギヤ126から離間し、連結爪206とVギヤ126との噛み合いが解消される。
ところで、例えば、ウエビングベルト30を装着する前の乗員が、ウエビングベルト30を引き出すためにウエビングベルト30を引っ張ることでスプール24に急激な引出方向への回転力が付与されることもある。
このような場合にも、上述したように、ギヤリング154の内周部に形成されたラチェット歯にWパウル134が噛み合って引出方向へのスプール24の回転力がギヤリング154と共にフリクションスプリング155を引出方向に回転させようとする。したがって、このような場合にも連結爪140が押圧部158により押圧される。
ここで、ウエビングベルト30が全格納された状態では、図2に示されるように、連結爪140の係合ピン141に対してストッパ220が対向している。ストッパ220はカムプレート173に形成されているため、スプール24が引出方向に回転することでカムプレート173も回転する。
しかしながら、スプール24の回転は十分に減速されてカムプレート173に伝えられるため、ウエビングベルト30を引っ張った直後の状態であれば、スプール24の回転量も小さいため、カムプレート173の回転量も十分に小さい。
したがって、ウエビングベルト30を引き出すためにウエビングベルト30を引っ張った直後の状態では、カムプレート173が僅かに回転するものの、係合ピン141に対するストッパ220の対向状態が解消されない。
この状態で上記のように係合ピン141が押圧部158により押圧されることで連結爪140がVギヤ126に接近するように回動しようとしても、係合ピン141に対向するストッパ220が連結爪140の回動方向側で干渉する。これにより、連結爪140はVギヤ126に噛み合うことができない。
したがって、この状態ではセンサギヤ128が引出方向に回転することがなく、ひいては、ロックパウル160のパウル部166がロックベース170のラチェット部172に噛み合うことがない。
これにより、ウエビングベルト30の全格納状態及びウエビングベルト30の引出開始直後の状態においてスプール24の引出方向への回転が規制される所謂「エンドロック」の発生を極めて効果的に防止できる。
また、上記のように、ウエビングベルト30の全格納状態及びウエビングベルト30の引出開始直後の状態で、何らかの衝撃により硬球148が転動し、センサ爪150を介して硬球148が連結爪140を回動させようとしてもストッパ220により連結爪140の回動が規制される。
すなわち、本実施の形態では、ストッパ220の少なくとも一部が連結爪140に対向していれば、回転検出機構127及び加速度センサ142の何れが作動しても、エンドロックが生じることがない。
しかも、このような回転検出機構127が作動した場合のエンドロックの防止と、加速度センサ142が作動した場合のエンドロックの防止の何れも、ストッパ220が連結爪140の回動を規制することで行なわれる。このため、回転検出機構127が作動した場合のエンドロックの防止及び加速度センサ142が作動した場合のエンドロックの防止の双方が可能であるにも関わらず、エンドロックを防止するための機構を極めて効果的に簡素化できる。これにより、部品点数の増加に伴う重量の増加を極めて効果的に抑制でき、本ウエビング巻取装置10をコンパクトにできる。
また、このように、ストッパ220が連結爪140の回動を規制した状態では、連結爪140がVギヤ126に噛み合っていないため、センサギヤ334が引出方向へ回転することはなく、したがって、ロックパウル160を構成するパウル部166のラチェット歯がロックベース170のラチェット部172に噛み合うことはない。したがって、この状態では、引出方向へのスプール24の回転でロックベース170は引出方向へ回転する。
さらに、この状態で、Wパウル134がギヤリング154のラチェット歯に噛み合っているのであれば、引出方向へのスプール24の回転力でギヤリング154が引出方向に回転する。ここで、ギヤリング154が引出方向に回転すると、内周部がギヤリング154の外周部に摩擦係合しているフリクションスプリング155がギヤリング154と共に引出方向に回転して押圧部158が初期位置から連結爪140に接近するように回転し、これにより、押圧部158が連結爪140に係合して連結爪140を押し上げようとする。しかしながら、上記のように、ストッパ220が連結爪140に干渉した状態では押圧部158が連結爪140を押し上げることはできず、それ以上、押圧部158(フリクションスプリング155)が引出方向に回転することはできない。
このように、フリクションスプリング155の引出方向への回転が規制された状態でギヤリング154がなおも引出方向に回転すると、フリクションスプリング155がギヤリング154に対して滑る(すなわち、フリクションスプリング155とギヤリング154との間で同軸的な相対回転が生ずる)。
このため、フリクションスプリング155の引出方向への回転が規制された状態で引出方向へのスプール24の回転力がギヤリング154やフリクションスプリング155等の各部材に入力されても、これらの各種部材が回転力で損傷することがない。このため、これらの各種部材の機械的強度を特に高く設定しなくてもよく、各種部材の小型化、軽量化を図ることができ、ひいては、ウエビング巻取装置10全体の小型化、軽量化にも寄与する。
さらに、ウエビングベルト30が引き出されてスプール24が引出方向に回転すると、図3に示されるようにカムプレート173が回転する。このカムプレート173の回転によりストッパ220と係合ピン141との対向状態が解消される。
ここで、ウエビングベルト30の全格納状態からウエビングベルト30の全引出状態(スプール24からウエビングベルト30が全て引き出された状態)までのスプール24の回転によるカムプレート173の回転角度は360度未満である。したがって、スプール24の引出方向への回転によりストッパ220と連結爪140との対向状態が解消された後は、ウエビングベルト30の全引出状態になってもストッパ220が係合ピン141と対向することがない。
このため、ウエビングベルト30が引き出された後は、車両が急減速状態になったり、ウエビングベルト30が急激に引き出された場合に、ロックパウル160のパウル部166をロックベース170のラチェット部172に噛み合わせることができ、確実にスプール24の引出方向への回転を規制できる。
また、スプール24の回転に連動してストッパ220を回転させるための機構は、基本的にウエビングベルト30の全引出状態の後にALR切替レバー192を回動させるための機構である。このように、ALR切替レバー192を回動させるための機構を、ストッパ220を回転させるための機構として適用できることで、構成を極めて効果的に簡素化でき、この意味でも部品点数の増加に伴う重量の増加を極めて効果的に抑制でき、本ウエビング巻取装置10をコンパクトにできる。
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態を説明するにあたり、前記第1の実施の形態にて説明した部位と基本的に同一の部位に関しては同一の符号を付与してその詳細な説明を省略する。
図5には、本発明の第2の実施の形態に係るウエビング巻取装置300の要部の構成が前記第1の実施の形態に係るウエビング巻取装置300の要部を説明した図1に対応する分解斜視図により示されている。
この図に示されるように、本ウエビング巻取装置300は、前記第1の実施の形態におけるカムプレート173に代わり、回転部材として規制手段を構成するカムプレート302を備えている。カムプレート302は基本的にカムプレート173と同じ構成であるが、カムプレート173とは異なりストッパ220を備えておらず、代わりにカムプレート302はストッパ304を備えている。
ストッパ304はカムプレート302の外周一部からカムプレート302の半径方向外方へ延出された延出部306を備えている。この延出部306の外周部からはVギヤ126側へ向けて壁部308が形成されている。上記のように、カムプレート302はストッパ220を備えていないが、ストッパ304の壁部308がストッパ220と同じ機能を有しており、壁部308と係合ピン141との対向状態では、連結爪140がVギヤ126の外周部側へ回動しようとすると、係合ピン141に壁部308が干渉して連結爪140の回動を規制する。
また、本ウエビング巻取装置300は、前記第1の実施の形態におけるフリクションスプリング155を備えておらず、代わりにフリクションスプリング310を備えている。フリクションスプリング310は本体312を備えている。図5と図1とを比べてわかるように、本体312は前記第1の実施の形態におけるフリクションスプリング155の本体156よりも周方向両端部が離間した略C字形状とされている。この本体312の周方向一端からは本体312の半径方向外方へ向けて押圧部314が延出されている。
また、本体312は前記第1の実施の形態におけるフリクションスプリング155の本体156と同様に、ギヤリング154の外周部に嵌め込まれている。ここで、図1に示されるように、前記第1の実施の形態におけるギヤリング154は軸方向両側が同じように開口していたのに対し、図5に示されるように、本ウエビング巻取装置300では、ギヤリング154の軸方向一端には底壁316が設けられている。底壁316はギヤリング154よりも大径で且つギヤリング154に対して同軸に形成されている。さらに、底壁316はトーションシャフト36が貫通可能に形成されてギヤリング154の軸方向一端を閉止している。
また、ギヤリング154の外周部には略リング状のフリクションリング318が装着されている。フリクションリング318は内径寸法がギヤリング154の外径寸法よりも大きく形成されている。また、フリクションリング318には1つ又はその周方向に沿った所定間隔毎に複数(本実施の形態では3つ)の係合爪320が形成されている。この係合爪320に対応して上記の底壁316には環状の係合溝322が底壁316の外周部に沿って少なくとも所定範囲連続して形成されている。係合爪320は係合溝322に嵌合しており、底壁316の外周部に沿った係合溝322の形成範囲内で係合爪320、ひいては、フリクションリング318がギヤリング154に対して同軸的に相対回転可能とされている。
また、ギヤリング154の外周部にフリクションリング318を装着した状態では、ギヤリング154の外周部とフリクションリング318の内周部との間にフリクションスプリング310の太さ以上の間隔を有する空間が形成され、この空間内にフリクションスプリング310の本体312が収容されている。
また、フリクションリング318の外周一部からは、その半径方向外方へ向けて押圧部324が延出されている。押圧部324はその長手方向中間部でVギヤ126側へ屈曲されている。この押圧部324の長手方向中間部における屈曲部分よりも押圧部324の先端側は、ギヤリング154の回転周方向に沿って連結爪140と対向しており、引出方向にフリクションリング318が回転して押圧部324が連結爪140に係合すると、押圧部324が連結爪140を押し上げ、Vギヤ126に連結爪140を噛み合わせる。すなわち、前記第1の実施の形態においてフリクションスプリング155の押圧部158が連結爪140を押し上げるという機能を、本実施の形態ではフリクションリング318の押圧部324が担っている。
さらに、フリクションリング318の本体部分はその周方向一部で途切れており、この途切れた部分には収容部326が設けられている。収容部326はフリクションリング318の周方向に沿って互いに対向した一対の側壁328、330を備えており、これらの側壁328、330の間にはフリクションスプリング310の押圧部314が入り込んでいる。これらの側壁328、330は、その一部がフリクションリング318の本体部分よりもVギヤ126とは反対側へ延出されている。また、フリクションリング318の本体部分よりもVギヤ126とは反対側で、上記の側壁328、330の間には周壁332が設けられている。周壁332はフリクションリング318の半径方向内方側の両側壁328、330の端部を繋ぐように形成されており、このため、収容部326はフリクションリング318の半径方向外方へ向けて開口する凹形状に形成されている。
一方、本ウエビング巻取装置300は、前記第1の実施の形態におけるセンサギヤ128を備えておらず、代わりにセンサギヤ334を備えている。センサギヤ334は基本的に前記第1の実施の形態におけるセンサギヤ128と同じ構成であるが、その本体130に窓部336が形成されている点でセンサギヤ334はセンサギヤ128と構成が異なる。窓部336は本体130の一部でスプール24の軸方向及び半径方向に本体130を貫通している。
この窓部336の内側にはばね座338が設けられている。ばね座338は本体130のカムプレート302側の端面よりもVギヤ126側に変位した状態でセンサギヤ334に一体的に設けられている。ばね座338からはカムプレート302側へ向けて円柱形状のボス342が突出形成されており、復帰手段としての捩じりコイルばね340のコイル部分がボス342に嵌め込まれている。捩じりコイルばね340の一端はばね座338に設けられた係止部344に係止されている。
これに対して、捩じりコイルばね340の他端はばね座338の側方へ延びている。捩じりコイルばね340の他端は、フリクションリング318の本体部分よりもカムプレート302側で側壁328と側壁330との間に位置している。
<第2の実施の形態の作用、効果>
次に、本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
本ウエビング巻取装置300では、前記第1の実施の形態におけるストッパ220に代わるストッパ304の壁部308が、連結爪140に対して連結爪140がVギヤ126に噛み合うための回動方向側で干渉すると、連結爪140がVギヤ126に噛み合うことができない。この状態では、連結爪140がVギヤ126に噛み合っていないため、センサギヤ334が引出方向へ回転することはなく、したがって、ロックパウル160を構成するパウル部166のラチェット歯がロックベース170のラチェット部172に噛み合うことはない。したがって、この状態では、引出方向へのスプール24の回転でロックベース170は引出方向へ回転する。
さらに、この状態で、Wパウル134がギヤリング154のラチェット歯に噛み合っているのであれば、引出方向へのスプール24の回転力でギヤリング154が引出方向に回転する。ここで、ギヤリング154が引出方向に回転すると、内周部がギヤリング154の外周部に摩擦係合しているフリクションスプリング310がギヤリング154と共に引出方向に回転して押圧部314が収容部326の側壁328を引出方向に押圧してフリクションリング318を押圧する。フリクションリング318は収容部326の側壁330に捩じりコイルばね340の他端が対向しているため、押圧部314からの押圧力でフリクションリング318が引出方向に回転しようとすると、側壁330に当接した捩じりコイルばね340が引出方向へのフリクションリング318の回転に抗するようにフリクションリング318を付勢する。
この捩じりコイルばね340の付勢力に抗してフリクションリング318が引出方向に回転することで、図6に示される初期状態の(すなわち、初期位置にある)押圧部324が、連結爪140に接近するように回転し、これにより、連結爪140に係合して連結爪140を押し上げようとする。しかしながら、上記のように、ストッパ304の壁部308が連結爪140に干渉した状態では押圧部324が連結爪140を押し上げることはできず、それ以上、押圧部324(フリクションリング318)が引出方向に回転することはできない。
このように、フリクションリング318の引出方向への回転が規制された状態でギヤリング154がなおも引出方向に回転すると、フリクションスプリング310がギヤリング154に対して滑る(すなわち、フリクションスプリング310とギヤリング154との間で同軸的な相対回転が生ずる)。
このため、フリクションリング318の引出方向への回転が規制された状態で引出方向へのスプール24の回転力がギヤリング154やフリクションスプリング310等の各部材に入力されても、これらの各種部材が回転力で損傷することがない。このため、これらの各種部材の機械的強度を特に高く設定しなくてもよく、各種部材の小型化、軽量化を図ることができ、ひいては、ウエビング巻取装置300全体の小型化、軽量化にも寄与する。
一方、上記のように押圧部324が連結爪140に干渉された後や、図7に示されるように、押圧部324が連結爪140を押し上げて連結爪140がVギヤ126に噛み合った後に、ウエビングベルト30に付与された引っ張り力が解消され、これにより、引出方向へのスプール24の回転が解消されると、ギヤリング154の引出方向への回転も解消され、ひいては、フリクションスプリング310の押圧部314がフリクションリング318の側壁328に付与する引出方向への押圧力も解消される。
上記のように、フリクションリング318には捩じりコイルばね340の付勢力で引出方向とは反対の巻取方向へ付勢されている。このため、この捩じりコイルばね340の付勢力に抗したフリクションリング318の側壁328に付与する引出方向への押圧力が解消されることで、フリクションリング318は捩じりコイルばね340の付勢力で巻取方向へ回転させられ、図6に示されるように、押圧部324が初期位置に戻る。
これにより、押圧部324が連結爪140に係合した状態が不要に維持されることはなく、上記のようにウエビングベルト30に付与された引っ張り力が解消されれば、押圧部324を連結爪140から離間させることができる。この状態で、加速度センサ142の硬球148がセンサ爪150を押し上げていなければ、連結爪140は自重でVギヤ126から離間するように回動でき、Vギヤ126の回転規制を解消できる。
また、本ウエビング巻取装置300では、上記のように、収容部326の側壁328と
側壁330との間にフリクションスプリング310の押圧部314と捩じりコイルばね340の他端部が位置する構成となっている。このように、フリクションリング318に引出方向への回転力を付与するフリクションスプリング310押圧部314と、フリクションリング318を巻取方向に付勢する捩じりコイルばね340の他端とを近接配置することで、フリクションリング318に引出方向及び巻取方向への回転力を付与する部分の配置スペースを小さくできる。
なお、本実施の形態では、復帰手段に捩じりコイルばね340を適用した構成であったが、復帰手段はセンサギヤ334に対してフリクションリング318を巻取方向に付勢する構成であればよく、復帰手段を構成する付勢手段の形状等に関して特に限定するものではない。したがって、例えば、上記の窓部336の内側に、一端から他端への向きが巻取方向に沿い、一端がセンサギヤ334に当接し、他端が壁部308に当接して、フリクションリング318を巻取方向に付勢する圧縮コイルばねを復帰手段としてもよい。