JP4644803B2 - 熱遮蔽コーティング部材の製造方法及び熱遮蔽コーティング部材 - Google Patents
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そこで、熱遮蔽コーティングとボンドコート界面の接合強度を向上させることは信頼性・安全性確保の観点からも長寿命化の観点からもきわめて重要である。
これまで、これらの観点から、ボンドコート材料の化学組成の改善(非特許文献1)、ボンドコート表面のレーザ処理(非特許文献2)により、熱遮蔽コーティング/ボンドコート界面の強度向上を図ってきた。
例えば、特許文献1では、ガスタービン部品用の金属基材と、この金属基材上に遮熱コーティング層とを備え、この遮熱コーティング層をボンドコート及びトップコートで構成したガスタービン部材において、上記ボンドコートは、MCrAlY系の組成を有し且つ上記トップコートよりも小さい気孔率を有するガスタービン部材が開示されている。特許文献2では、合金基材上に、ボンドコートを被覆し、該ボンドコートをレーザー照射により、表面のみを溶融して、表面凹凸を維持したまま、表面上に酸化膜を形成し、前記ボンドコート上に、トップコートを被覆して熱遮蔽コーティング部材を作製する熱遮蔽コーティング部材作製方法が開示されている。
しかし、いずれの開示技術でも、燃焼温度の更なる高温化に対応しきれていないという問題がある。
具体的な、特徴を以下に挙げる。
1.本発明の熱遮蔽コーティング部材の製造方法は、合金基材上に、熱遮蔽コーティング層を備える熱遮蔽コーティング部材の製造方法において、前記熱遮蔽コーティング層は、少なくともボンド層とトップ層とからなり、前記ボンド層は、機械的負荷を施され、示差熱分析において950〜1100℃の範囲にピークが存在する粉末を溶射することで形成されることを特徴とする。
2.また、本発明の熱遮蔽コーティング部材の製造方法は、前記950〜1100℃の範囲に存在するピークは、前記機械的負荷により、結晶粒の成長、あるいは、アモルファス相の結晶化の反応をさせることにより形成されることを特徴とする。
3.また、本発明の熱遮蔽コーティング部材の製造方法は、さらに、前記粉末が、MCrAlX(但しMは、Fe、Ni、Coから選ばれるいずれか1種以上の金属、Xは、Y、Hf、Ta、Cs、Pt、Zr、LaおよびThから選ばれるいずれか1種以上の金属)合金であることを特徴とする。
4.また、本発明の熱遮蔽コーティング部材の製造方法は、さらに、前記トップ層は、イットリウム添加安定化ジルコニウムで形成されていることを特徴とする。
5.また、本発明の熱遮蔽コーティング部材の製造方法は、さらに、前記機械的負荷が、メカニカルグラインディングで施されたことを特徴とする。
6.また、本発明の熱遮蔽コーティング部材の製造方法は、さらに、前記熱遮蔽コーティング部材は、合金基材表面をブラスト処理した後、プラズマ溶射によりボンド層を形成することを特徴とする。
8.本発明の熱遮蔽コーティング部材は、さらに、請求項3ないし6のいずれかによって製造されたことが好ましい。
9.また、本発明の熱遮蔽コーティング用の粉末は、合金基材上に、熱遮蔽コーティング層を設けるために用いられる粉末であって、機械的負荷を施され、示差熱分析において950〜1100℃の範囲にピークが存在することを特徴とする。
合金基材としては、Ni基、Co基、Fe基の超合金、ステンレス鋼を用いる。いずれも、耐熱性の高い高温用合金である。特に、Ni基合金が耐酸化性、熱疲労に対する強度の観点から好ましい。Ni基超合金としては、インコネル、ハステロイ、ナイモニック等の合金が挙げられる。この合金基材上に熱遮蔽コーティング層を備える。この熱遮蔽コーティング層は、ボンド層とその上に外部環境に曝されるトップ層とを少なくとも有する。
ボンド層は、基材表面と接触し接合界面の強度を高めて熱遮蔽コーティング層自身の基材からの剥離・脱落を防止し、さらに、その上のトップ層との間を接合のための層であって、強固な酸化物を形成することができ、形成された後の酸化物は酸素又は酸素イオンを通過させないものが好ましい。例えば、MCrAlX合金(但しMは、Fe、Ni、Coから選ばれるいずれか1種以上の金属、Xは、Y、Hf、Ta、Cs、Pt、Zr、LaおよびThから選ばれるいずれか1種以上の金属)で示されるボンド層が、Ni基超合金等の耐熱合金表面に形成され、ボンド層上に熱遮へいコーティング(TBC)が形成されるのが一般的となっている。Mは、特に、Coが好ましい。酸素イオンの通過を抑える酸化物を形成することができる。Xは、特に、Yが好ましい。緻密な酸化物を形成する。CoNiCrAlYのAlを含む材料で被覆した場合、生成される薄い酸化膜はAl2O3である。
トップ層は、直接高温環境下に曝されるので、高温でも変質せず、また、酸素又は酸素イオンを通過させないものが好ましい。アルカリ金属、希土類金属の酸化物が、酸素との結合力が大きく、緻密な酸化膜を形成するので好ましい。特に、ZrO2系の材料、特にY2O3で部分又は完全安定化したZrO2であるイットリウム添加安定化ジルコニウム(YSZ)が、セラミックス材料の中では比較的低い熱伝導率と比較的高い熱膨張率を有しているためによく用いられている。
図1は、MG処理の時間に対する示差熱分析(DSC)の結果を示すグラフである。
これは、高エネルギボールミルにより400rpmで465時間までMG処理を施したCoNiCrAlY合金粉末の熱力学的特性の変化を示差熱分析で評価できる。示差熱分析は、200〜1200℃の温度範囲で、Ar雰囲気中で昇温速度20℃/minで評価した。図1から明らかなように、MG処理で粉末の熱力学的特性が変化していることがわかる。100時間までのMG処理では、550℃付近にピークがあり、このピークがMG時間の増加に伴い大きくなっていることから、これは、MG処理による蓄積されたエネルギーの差の表れと考えられる。また、200時間以上のMG処理では、550℃付近のピークは小さくなり、950〜1100℃付近に新たなピークの存在が認められた。このピークは、結晶粒の成長、アモルファス相の結晶化の反応が考えられるが明らかではない。ただし、粉末が活性になっていることがわかる。
このときに、基材表面は、ブラスト処理して粗されている方が好ましい。表面を凸凹にして表面積を増加させておくほうが、溶射された粉末の密着性が向上する。ブラスト処理としては、サンドブラスト、ショットブラスト等が挙げられる。
また、図3は、熱遮蔽コーティング部材を切り出して4点曲げ試験を行った結果を示すグラフである。この結果から、MG処理の有無によって、未時効材で約4倍の界面強度の向上が見られる。
Claims (8)
- 合金基材上に、熱遮蔽コーティング層を備える熱遮蔽コーティング部材の製造方法において、
前記熱遮蔽コーティング層は、少なくともボンド層とトップ層とからなり、
前記ボンド層は、機械的負荷を施され、示差熱分析において950〜1100℃の範囲にピークが存在する粉末を溶射することで形成される、
ことを特徴とする熱遮蔽コーティング部材の製造方法。 - 請求項1に記載の熱遮蔽コーティング部材の製造方法において、
前記950〜1100℃の範囲に存在するピークは、前記機械的負荷により、結晶粒の成長、あるいは、アモルファス相の結晶化の反応をさせることにより形成される、
ことを特徴とする熱遮蔽コーティング部材の製造方法。 - 請求項1又は2に記載の熱遮蔽コーティング部材の製造方法において、
前記粉末が、MCrAlX(但しMは、Fe、Ni、Coから選ばれるいずれか1種以上の金属、Xは、Y、Hf、Ta、Cs、Pt、Zr、LaおよびThから選ばれるいずれか1種以上の金属)合金である
ことを特徴とする熱遮蔽コーティング部材の製造方法。 - 請求項1ないし3のいずれかに記載の熱遮蔽コーティング部材の製造方法において、
前記トップ層は、イットリウム添加安定化ジルコニウムで形成されている
ことを特徴とする熱遮蔽コーティング部材の製造方法。 - 請求項1ないし4のいずれかに記載の熱遮蔽コーティング部材の製造方法において、
前記機械的負荷が、メカニカルグラインディングで施された
ことを特徴とする熱遮蔽コーティング部材の製造方法。 - 請求項1ないし5のいずれかに記載の熱遮蔽コーティング部材の製造方法において、
前記熱遮蔽コーティング部材は、合金基材表面をブラスト処理した後、プラズマ溶射によりボンド層を形成する
ことを特徴とする熱遮蔽コーティング部材の製造方法。 - 合金基材上に、熱遮蔽コーティング層を備える熱遮蔽コーティング部材において、
前記熱遮蔽コーティング層は、少なくともボンド層とトップ層とからなり、
前記ボンド層は、機械的負荷が施され、示差熱分析において950〜1100℃の範囲にピークが存在する粉末の溶射で形成されている
ことを特徴とする熱遮蔽コーティング部材。 - 合金基材上に、熱遮蔽コーティング層を設けるために用いられる粉末であって、
機械的負荷を施され、示差熱分析において950〜1100℃の範囲にピークが存在する
ことを特徴とする熱遮蔽コーティング用の粉末。
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