JP4638072B2 - 水性塗料の塗装方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗装方法に関し、更に詳細には無機基材の表面に、耐候性、耐汚染性、耐熱水性、密着性に優れた塗膜を形成するための塗装方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
オルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物と、シリル基含有ビニル系樹脂を加水分解縮合反応させて得られる有機無機複合樹脂と硬化剤の混合物を結合剤とする塗膜は、耐候性、耐汚染性等に優れ、またオルガノポリシロキサン系無機樹脂を結合剤とする塗膜に比較しクラックが生じにくく、それ故、有機無機複合樹脂と硬化剤の混合物を結合剤とする塗料組成物が注目されるようになってきている。
【0003】
しかしながら、このような塗料組成物の多くは、有機溶剤を溶媒とする有機溶剤系塗料であり、大気汚染や省資源の観点からは好ましくない。そこで、有機無機複合樹脂と硬化剤の混合物を結合剤とする水系塗料も開発されてきているが、下塗り塗料として広く使われているアクリルエマルション、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂系のシーラー及び中塗り塗料として広く使われているアクリルエマルションとの密着性が充分でなく、長期の耐久性試験で密着性が悪いという問題を有する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来技術の課題を背景になされたもので、耐候性、耐汚染性、耐熱水性、密着性に優れた水系ポリシロキサン含有組成物を無機基材の表面に長期間密着させることを可能にする塗装方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、無機基材に(i)(A)下塗り塗料として水系シーラーを塗布しベースコートを形成した後、(B)中塗り塗料として、アルコキシシリル基を有するエチレン性不飽和単量体成分を0.1〜10モル%含有する加水分解性シリル基含有ビニル系エマルション樹脂を主成分とする組成物を塗布し、次いで(ii)前記(i)の塗膜層の上に(C)上塗り塗料として有機無機複合樹脂溶液に中和剤と水で強制分散させ、減圧下で脱溶剤して得た水分散液を含む水系ポリシロキサン含有組成物を塗布して乾燥硬化することを特徴とする水性塗料の塗装方法である。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、詳細に説明する。
【0007】
(i)(A)下塗り塗料:
本発明に使用される下塗り塗料(i)(A)は、無機基材、例えば無機窯業基材と(i)(B)中塗り塗料との長期間密着性を発現させる働きをなすものであり、アクリルスチレン系エマルション、水系エポキシ/ポリアミン系、ウレタンエマルション塗料などが挙げられる。
【0008】
(i)(B)中塗り塗料:
本発明に使用される中塗り塗料(i)(B)は、下塗り塗料(i)(A)と上塗り塗料(ii)(C)双方に対し長期間の密着性を発現させる働きをなすもので、加水分解性シリル基含有ビニル系エマルション樹脂を主成分とする組成物からなる。
【0009】
加水分解性シリル基含有ビニル系エマルション樹脂は、アルコキシシリル基を有するエチレン性不飽和単量体と、これと共重合可能なエチレン性不飽和単量体とを乳化重合して得られるものである。
【0010】
アルコキシシリル基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シランや、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、β−(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、β−(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシブチルフェニルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシブロピルジエチルメトキシシラン等が挙げられる。
【0011】
これらと共重合可能なエチレン性不飽和単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチルや、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸や、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸ハーフエステル、マレイン酸、マレイン酸ハーフエステル、フマル酸等のカルボキシル基含有単量体;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルや、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、多価アルコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル等の水酸基含有単量体;スチレンや、メチルスチレン、メトキシスチレン、クロルスチレン等のスチレン系単量体;その他、ビニルトルエン、N−メチロールアクリルアミド、酢酸ビニル、塩化ビニル、(メタ)アクリロニトリル等が代表的なものとして挙げられる。
【0012】
また、スルホン酸基又は硫酸エステル基と重合性の炭素−炭素不飽和二重結合を分子中に有する、いわゆる反応性乳化剤などのアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテルや、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、又は前述の骨格と重合性の炭素−炭素不飽和二重結合を分子中に有する反応性乳化剤などのノニオン性界面活性剤;4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の重合性光安定剤;(2−ヒドロキシ−4−((メタ)アクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン等の重合性紫外線吸収剤などもエチレン性不飽和単量体として使用可能である。
【0013】
加水分解性シリル基含有ビニル系エマルション樹脂は、アルコキシシリル基を有するエチレン性不飽和単量体成分を0.1〜10モル%含有することにより上記、下塗り塗料(A)と上塗り塗料(C)双方に対し長期間の密着性を発現させることができる。
【0014】
なお、アルコキシシリル基を有するエチレン性不飽和単量体成分が前記範囲より少な過ぎると、上塗り塗料との密着性が低下する傾向があり、逆に多過ぎると下塗り塗料との密着性が低下する傾向がある。
【0015】
加水分解性シリル基含有ビニル系エマルション樹脂を得るために使用する乳化剤としては、例えば、高級アルコールの硫酸エステル塩や、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、アルキルベンゼンスルホン塩、ポリオキシプロピレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテルサルフェート塩、ポリオキシプロピレンアルキルフェノールエーテルサルフェート塩等の陰イオン界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルフェノールエーテル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロックポリマー、ソルビタン誘導体等の非イオン界面活性剤;及びトリメチロールプロパンのアクリル酸エステル、アルケニルコハク酸モノアリルエステル塩等の、いわゆる反応性乳化剤等が挙げられる。
【0016】
重合開始剤としては、一般的に乳化重合に使用されているものが可能であるが、中でも水溶性のものが好適である。具体的には、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の過酸化物;2、2´−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩、4、4´−アゾビス−4−シアノバレリン酸、2、2´−アゾビス(2−メチルアミドオキシム)塩酸塩等のアゾ系化合物が挙げられる。また、L−アスコルビン酸、チオ硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウムなどの還元剤と硫酸第一鉄などを組合せたレドックス型も使用可能である。
【0017】
連鎖移動剤としては、n−ドデシルメルカプタンなどの長鎖のアルキルメルカプタン類や芳香族メルカプタン類、ハロゲン化炭化水素類等を挙げることができる。
【0018】
乳化安定剤としては、ポリビニルアルコールや、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン等を挙げることができる。
【0019】
また、乳化重合は、慣用の処方に準じて行うことができ、例えば単量体一括仕込み法や、単量体を連続的に滴下する単量体滴下法、単量体と水と乳化剤を予め混合乳化しておき、これを滴下するプレエマルション法、あるいは、これらを組合せる方法等により、通常50〜100℃で、2〜10時間反応させる方法が挙げられる。
【0020】
なお、得られた加水分解性シリル基含有ビニル系エマルション樹脂は、凍結−融解安定性や貯蔵安定性をよくするために、アンモニアや、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン等のアミン類でPH6〜9に調整したものが好ましい。
【0021】
本発明に使用される中塗り塗料は、加水分解性シリル基含有ビニル系エマルション樹脂をバインダーとして含有するものであるが、このバインダーを水に分散(エマルション化)した状態のものだけでもクリヤー塗料として使用可能であるが、塗料としての各種機能を付与させるためには、防カビ剤や、防腐剤、紫外線吸収剤、光安定剤、更に体質顔料や、着色顔料、防錆顔料を配合する場合は、分散剤や沈降防止剤、増粘剤等の各種添加剤を配合するのが望ましい。
【0022】
(ii)(C)上塗り塗料:
(C)成分の水系ポリシロキサン含有組成物は、分子中に加水分解性シリル基を有し、水に溶解もしくは安定に分散する水性樹脂を主成分とする。このような特性を有する樹脂であれば従来から塗料用として公知の各種オルガノポリシロキサン系無機樹脂や、ビニル系樹脂、あるいはこれらの反応物である有機無機複合樹脂や混合樹脂が、特に制限なく利用可能である。特に、本発明においては、以下説明する樹脂(a)、樹脂(b)が好適である。
【0023】
樹脂(a):
樹脂(a)は、(1)式(I) R4 nSi(OR5)4-n
(式中、R4は、炭素数1〜8の有機基であり、R5は、炭素数1〜5のアルキル基であり、nは、1又は2である。)
で示されるオルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物100質量部と、(2)(イ)分子中に重合性不飽和基及びケイ素原子に直結した加水分解性基を有する重合性不飽和モノマー1〜50質量%と、(ロ)上記(イ)成分以外の重合性不飽和モノマー99〜50質量%とからなるモノマー成分10〜2000質量部とを、Al、Ti又はZr系金属キレート化合物等の縮合反応促進剤の存在下にて、水中で乳化重合して得られた水性樹脂である。
【0024】
樹脂(a)の(1)成分について説明する。
【0025】
上記式(I)において、R4としての有機基としては、例えば、アルキル基や、シクロアルキル基、アリール基等が挙げられる。
【0026】
ここで、アルキル基としては、直鎖でも分岐したものでもよい。アルキル基としては、例えば、メチル基や、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基が挙げられる。好ましいアルキル基は、炭素数が、1〜4個のものである。
【0027】
シクロアルキル基としては、例えば、シクロヘキシル基や、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が好適に挙げられる。
【0028】
アリール基としては、例えば、フエニル基等が挙げられる。
【0029】
上記各官能基は、任意に置換基を有してもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、塩素原子や、臭素原子、フツ素原子等)や、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、脂環式基等が挙げられる。
【0030】
R5としてのアルキル基としては、直鎖でも分岐したものでもよい。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基や、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基等が挙げられ、好ましいアルキル基は、炭素数が、1〜2個のものである。
【0031】
式(I)で示されるオルガノシランの具体例としては、例えば、メチルトリメトキシシランや、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジメチルジプロポキシシランなどが挙げられるが、好ましくは、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシランである。
【0032】
(1)成分は、これらオルガノシランの1種単独、もしくは、2種以上混合したもの、あるいは、これらを加水分解縮合反応して得られた部分加水分解縮合物である。部分加水分解縮合物の分子量は、ポリスチレン換算重量平均分子量で、例えば、300〜5000、好ましくは、500〜3000が適当であり、このような分子量の縮合物を使用することにより、重合安定性、貯蔵安定性を悪化させることなく、密着性のよい塗膜が得られる。また、オルガノシランの部分加水分解縮合物は、ケイ素原子に結合した−OH基や−OR5基を、例えば、1個以上、好ましくは3〜30個有するものが適当である。
【0033】
このような縮合物の具体例としては、市販品として東レ・ダウコーニング社製のSH6018や、DC6−2230、SR2402、DC3037、DC3074;信越化学工業(株)製のKR−211や、KR−212、KR−213、KR−214、KR−215,KR−216、KR−218;東芝シリコーン(株)製のTSR−145や、TSR−160、TSR−165、YR−3187等が挙げられる。
【0034】
本発明において、(1)成分は、次式、
−OR5
(R5は、炭素数1〜5のアルキル基である。)
のケイ素原子に直結した加水分解性基が、全て加水分解し、−OHのみとなった部分加水分解縮合物を用いる方が、乳化重合の際、揮発性有機化合物となるアルコールの生成が少なく、安定に乳化重合を完結することができるので、特に好ましい。
【0035】
また、式(I)で示されるオルガノシランの部分加水分解縮合物と縮合反応していないオルガノシランとは、前者100質量部に対し後者1〜30質量部、好ましくは、1〜10質量部併用するのが、乳化重合時、(1)成分と後述する(2)成分とが効率よくグラフト化反応する傾向にあり、また、両者の割合によって、得られる塗膜の硬度の調整が可能となるので望ましい。
【0036】
次に、樹脂(a)の(2)成分について説明する。
【0037】
(2)成分は、(イ)成分と(ロ)成分とからなる重合性不飽和モノマー成分ある。
【0038】
(イ)成分は、乳化重合して、(ロ)成分とビニル系共重合体を形成するための重合性不飽和基と、式(I)で示されるオルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物と縮合反応し、該縮合物を前記ビニル系共重合体にグラフト化させるためのケイ素原子に直結した加水分解性基とを有する重合性不飽和モノマーである。このような重合性不飽和モノマーの具体例としては、例えば、ビニルトリメトキシシランや、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、β−(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、β−(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシブチルフェニルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジエチルメトキシシラン等を例示することができる。
【0039】
(ロ)成分は、(イ)成分とラジカル重合してビニル系共重合体を形成するものであり、従来からビニル系共重合体の製造に使用されている各種重合性不飽和モノマーが使用できる。具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸メチルや、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステルモノマー;(メタ)アクリル酸や、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸ハーフエステル、マレイン酸、マレイン酸ハーフエステル、無水マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基含有モノマーあるいはこれらの酸無水物;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルや、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、多価アルコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル等の水酸基含有モノマ−;グリシジル(メタ)アクリレートや、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマー;スチレンや、メチルスチレン、メトキシスチレン等のスチレン系モノマー;スルホン酸基又は硫酸エステル基と重合性の炭素−炭素不飽和二重結合を分子中に有する、いわゆる反応性乳化剤などのアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテルや、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、又は前述の骨格と重合性の炭素−炭素不飽和二重結合を分子中に有する反応性乳化剤などのノニオン性界面活性剤;4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の重合性光安定剤;(2−ヒドロキシ−4−((メタ)アクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン等の重合性紫外線吸収剤;その他、ビニルトルエン、N−メチロールアクリルアミド、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、(メタ)アクリロニトリル等を例示することができる。
【0040】
(イ)成分と(ロ)成分の配合質量割合は、(1〜50):(99〜50)、好ましくは(1.5〜30):(98.5〜70)であり、かつ(2)成分の配合量は、(1)成分100質量部に対し、10〜2000質量部、好ましくは、50〜1000質量部である。(イ)成分の配合割合が、前記範囲より多過ぎると、得られる塗膜の外観や耐クラック性等が低下する傾向にあり、逆に少な過ぎると、塗料の貯蔵安定性や、得られる塗膜の耐熱水性や耐アルカリ性等が低下する傾向にある。また、(2)成分の配合量が、前記範囲より多過ぎると、得られる塗膜の耐候性や、耐汚染性等が低下する傾向にあり、逆に少な過ぎると、得られる塗膜の耐クラック性や耐アルカリ性等が低下する傾向にある。
【0041】
縮合反応促進剤としては、公知の各種促進剤が利用可能であるが、特に、Al、Ti又はZr系金属キレート化合物は、(1)成分のオルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物と(イ)成分の重合性不飽和モノマー中の加水分解性基との縮合反応を促進させるとともに、(イ)成分と(ロ)成分とから形成されるビニル系共重合体に(1)成分をグラフト化させ、それにより得られる塗膜の耐熱水性や、耐アルカリ性等を向上させるため好ましい。
【0042】
Al、Ti又はZr系金属キレート化合物としては、従来からオルガノシランを縮合反応させるために使用されているものがそのまま使用可能であるが、具体的には、例えば、テトラアセチルアセテートジルコニウムや、テトラエチルアセトアセテートジルコニウム、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシジ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム等のジルコニウムキレート化合物;ジイソプロポキシビス(アセチルアセテート)チタンや、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン等のチタンキレート化合物;モノアセチルアセテートビス(エチルアセトアセテート)アルミニウムや、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、トリスアセチルアセテートアルミニウム等のアルミニウムキレート化合物などの有機金属化合物が挙げられる。
【0043】
Al、Ti又はZr系金属キレート化合物の配合量は、(1)成分100質量部に対し、例えば、0.3〜10質量部、好ましくは、0.5〜5質量部が適当である。
【0044】
樹脂(a)の製造方法は、例えば、(1)成分と(2)成分とを、均一溶液になるまで攪拌混合し、更にその中に、金属キレート化合物を混合し、溶液を調製する。次いで、該溶液を、水中にて乳化剤存在下で、攪拌し、プレエマルション化した後、もしくはプレエマルション化しないで、水中にて、乳化剤、重合開始剤、更に必要に応じて、連鎖移動剤や乳化安定剤等の存在下で、通常、60〜90℃の温度で、2〜10時間乳化重合反応させることにより樹脂(a)、すなわち、水性有機無機複合樹脂の水分散液を製造する。
【0045】
前記乳化剤としては、従来から公知のアニオン系や、カチオン系、ノニオン系の各種界面活性剤や、ラジカル重合可能な官能基を有する反応性乳化剤が適宜使用可能である。具体的には、例えば、高級アルコールの硫酸エステル塩や、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、アルキルベンゼンスルホン塩、ポリオキシプロピレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテルサルフェート塩、ポリオキシプロピレンアルキルフェノールエーテルサルフェート塩等のアニオン界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルアンモニウムクロライド等のカチオン界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルフェノールエーテル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロックポリマー、ソルタビン誘導体等のノニオン界面活性剤;及びトリメチロールプロパンのアクリル酸エステル、アルケニルコハク酸モノアリルエステル塩等の反応性乳化剤などが挙げられる。
【0046】
重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウムや、過硫酸カリウム、過酸化水素水、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の水溶性重合開始剤;アゾイソブチロニトリルや、ベンゾイルパーオキサイド、クミルパーオキシオクトエート等の油溶性重合性開始剤;ロンガリット、アスコルビン酸等の還元剤を併用したレドツクス系などが挙げられる。
【0047】
連鎖移動剤としては、例えば、n−ドデシルメルカプタンなどの長鎖のアルキルメルカプタン類や、芳香族メルカプタン類、ハロゲン化炭化水素類等を挙げることができる。
【0048】
また、乳化安定剤としては、ポリビニルアルコールや、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン等を挙げることができる。
【0049】
水性有機無機複合樹脂の水分散液を製造する乳化重合法として、一括仕込み法を例示したが、その他前述の溶液もしくは、そのプレエマルション化液を水中に連続的に滴下しながら乳化重合する滴下法;前述の溶液もしくは、そのプレエマルション化液の一部を、水中で乳化重合させた後、残部を滴下しながら乳化重合するシード重合法;更には、コアシェルの(2)成分である重合性不飽和モノマーの組成を変えたコア/シェル重合法等も適宜採用することも可能である。
【0050】
このようにして得られた水性有機無機複合樹脂の水分散液は、凍結−融解安定性や、貯蔵安定性を改善するために、アンモニアや、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン等のアミン類でpH6〜9に調整したものが好ましい。
【0051】
樹脂(b):
樹脂(b)は、(3)式(I)で示されるオルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物100質量部と、(4)加水分解性シリル基又は水酸基と結合したケイ素原子を有するシリル基を有し、かつ酸価が20〜150mgKOH/gのシリル基含有ビニル系樹脂5〜200質量部との加水分解縮合反応物を、中和剤で中和して得られた水性樹脂である。
【0052】
(3)成分は、前述の(1)成分と同様である。
【0053】
(4)成分は、ビニル系樹脂の末端あるいは側鎖に加水分解性シリル基又は水酸基と結合したケイ素原子を有するシリル基を樹脂1分子中に少なくとも1個、好ましくは、2個以上有し、かつ酸価が20〜150mgKOH/g、好ましくは、分子量が、例えば、約1000〜50000のビニル系樹脂である。
【0054】
前記シリル基は、式(II)、
−SiXP(R6)(3-P)
(式中、Xは、アルコキシ基や、アシロキシ基、ハロゲン基、ケトキシメート基、メルカプト基、アルケニルオキシ基、フェノキシ基等の加水分解性基又は水酸基;R6は、水素又は炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基等の1価の炭化水素基であり、Pは、1〜3の整数である。)で示されるものである。
【0055】
シリル基含有ビニル系樹脂は、例えば、式(III)、
(X)P(R6)(3-P)Si−H
(式中、X、R6及びpは、上記式(II)と同じ意味である。)
で示されるヒドロシラン化合物と、炭素−炭素二重結合を有するビニル系樹脂とを常法に従って、反応させることにより製造される。
【0056】
なお、前記ヒドロシラン化合物としては、例えば、メチルジクロロヒドロシランや、メチルジエトキシヒドロシラン、メチルジアセトキシヒドロシラン等が代表的なものとして挙げられる。ヒドロシラン化合物の使用量は、ビニル系樹脂中に含まれる炭素−炭素二重結合に対し、例えば、0.5〜2倍モル量が適当である。
【0057】
前記炭素−炭素二重結合を有するビニル系樹脂は、(メタ)アクリル酸や、イタコン酸、フマル酸等のカルボン酸又は無水マレイン酸等のカルボン酸無水物を必須ビニル系モノマーとして含有し、更に(メタ)アクリル酸メチルや、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、シクロヘキシル(メタ)アクリル酸等の(メタ)アクリル酸エステル;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシビニルエーテル等の水酸基含有ビニルモノマー;スルホン酸基又は硫酸エステル基と重合性の炭素−炭素不飽和二重結合を分子中に有する、いわゆる反応性乳化剤などのアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテルや、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、又は前述の骨格と重合性の炭素−炭素不飽和二重結合を分子中に有する反応性乳化剤などのノニオン性界面活性剤;4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の重合性光安定剤;(2−ヒドロキシ−4−((メタ)アクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン等の重合性紫外線吸収剤;アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等からなる群から選ばれるその他ビニル系モノマーとの共重合体が好適であり、共重合体製造時に、(メタ)アクリル酸アリルやジアリルフタレート等をラジカル共重合させることにより、ビニル系樹脂中にヒドロシリル化反応させるための炭素−炭素二重結合の導入が可能となる。
【0058】
なお、カルボン酸又はカルボン酸無水物は、共重合体の構成モノマー中に、得られるビニル系樹脂の酸価が、20〜150mgKOH/g、好ましくは50〜120mgKOH/gとなるように含有させるのが好ましい。酸価が、上記範囲より小さいと、得られる塗料の貯蔵安定性が低下する傾向にあり、逆に大きいと、得られる塗膜の耐水性、耐熱水性等が低下する傾向にある。
【0059】
また、(4)成分のシリル基含有ビニル系樹脂の、その他製造方法としては、前述のカルボン酸又はカルボン酸無水物を含むビニル系モノマー及び(イ)成分のシリル基含有ビニル化合物を必須モノマーとして含有し、更に必要に応じて前述のその他ビニル系モノマーの1種又は2種以上をラジカル重合させる方法もある。
【0060】
これらシリル基含有ビニル系樹脂の具体例としては、例えば、市販品として鐘淵化学工業(株)製のカネカゼムラツク等が挙げられる。
【0061】
中和剤は、従来から中和剤として公知の各種含窒素塩基性化合物が特に制限なく利用できる。具体的には、例えば、トリメチルアミンや、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のアルキルアミン類、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、エチルプロパノールアミン等のアルコールアミン類、モルホリン、アンモニア等の揮発性含窒素塩基性化合物が代表的なものとして挙げられる。また、γ−アミノプロピルトリメトキシシランや、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−シクロへキシルーγ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−シクロヘキシル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシランも中和剤の一部として併用可能である。
【0062】
樹脂(b)の製造方法は、例えば、上記の(3)成分と(4)成分との混合物を、水及び触媒の存在下で加水分解縮合反応させる。(3)成分と(4)成分との混合割合は、前者100質量部に対し、後者は5〜200質量部、好ましくは、10〜150質量部であることが適当である。なお、後者が上記範囲より少ないと、得られる塗膜の外観や耐クラツク性、耐凍害性、耐アルカリ性等が低下する傾向にあり、逆に多過ぎると、得られる塗膜の耐候性、耐汚染性等が低下する傾向にある。
【0063】
水の量は、(3)成分と(4)成分との混合物中に初期に存在していた加水分解性基の45〜100%、好ましくは、50〜90%が加水分解するのに充分な量であり、具体的には前記混合物中の加水分解性基総数の0.4〜1.0倍、好ましくは、0.5〜0.9倍のモル数となる量が適当である。
【0064】
触媒としては、硝酸や、塩酸等の無機酸や、酢酸、蟻酸、プロピオン酸等の有機酸を挙げることができる。触媒の添加量は、前記混合物のpHが3〜6になる量が適当である。加水分解縮合反応は、(3)成分と(4)成分との混合物を、水及び触媒の存在下で、40〜80℃、好ましくは、45〜65℃で、2〜10時間撹拌しながら反応させる方法が適当である。なお、水の量を(3)成分と(4)成分との混合物中に初期に存在していた加水分解性基の45%以上とするのは、樹脂(b)、即ち、有機無機複合樹脂の水分散液(エマルション)となった時、貯蔵安定性がよく、透明性の高い膜形成が可能であるためである。
【0065】
また、(3)成分と(4)成分との加水分解縮合反応を上記のように一段階で実施することが可能であるが、生成物の貯蔵安定性の観点から次のような二段階で反応させることが、更に好ましい。
【0066】
即ち、第一段階として、水及び酸触媒の存在下で、(3)成分と(4)成分との混合物中に初期に存在していた加水分解性基の40〜80%、好ましくは、45〜70%が加水分解縮合反応するように、40〜80℃、好ましくは、45〜65℃で、1〜8時間、撹拌しながら反応させる。
【0067】
第二段階として、第一段階に続いて、更に水及びトリメトキシボラン、トリエトキシボラン等のトリアルコキシボランあるいは、前述の金属キレート化合物を添加し、加水分解縮合反応させる。第二段階で添加する水の量は、(3)成分と(4)成分との混合物中に初期に存在していた加水分解性基の45〜100%、好ましくは、50〜90%が加水分解及び縮合反応するのに充分な量である。第二段階で用いるトリアルコキシボランや金属キレート化合物は、縮合反応を促進し、塗膜の外観や、耐候性、耐汚染性、耐熱水性等を向上させることができる。これら触媒量は、第一段階で得られた反応物と未反応で残っている上記(3)成分と(4)成分との合計量100質量部に対して、0.001〜5質量部、好ましくは、0.005〜2質量部が適当である。第二段階における加水分解縮合反応は、第一段階と同様に40〜80℃で2〜5時間反応させるのが適当である。
【0068】
なお、加水分解縮合反応物は、その反応で生成するアルコール分により、又はそのアルコール分と必要に応じて添加した後述する有機溶媒とにより溶液状態となっている。
【0069】
このようにして得られた有機無機複合樹脂の溶液に、中和剤を加え、均一に分散させ、中和した後、水を加えるか、もしくは中和剤と水とを同時に加え、攪拌することにより強制分散させ、樹脂(b)の水分散液(エマルション)を得る。
【0070】
本発明に使用される上塗り塗料は、主剤成分となる(a)又は(b)成分の水分散液と、必要に応じて硬化剤、塗料の貯蔵安定性や塗装作業性を良くするための希釈水や、有機溶媒及び充填剤、染料、更には、増粘剤、顔料分散剤等の各種添加剤などを配合したものから構成される。
【0071】
有機溶媒としては、メタノールや、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のアルコールエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等の親水性有機溶媒や、それとトルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の疎水性の各種塗料用有機溶媒との混合有機溶媒が使用可能である。有機溶媒の配合量は、塗料組成物中、0〜20質量%、好ましくは0〜10質量%が適当である。
【0072】
充填材としては、タルクや、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、ベントナイト、酸化チタン、カーボンブラック、ベンガラ、リトポン等の各種塗料用体質顔料や着色顔料が使用可能である。充填材の配合量は、塗料組成物の固形分中、0〜70質量%、好ましくは0〜50質量%が適当である。
【0073】
<塗装方法>
本発明は、上記基材表面に、まず下塗り塗料(A)を塗装し、次いで中塗り塗料(B)を塗装し、更に上塗り塗料(C)を塗装する。この際、基材表面への下塗り塗料の塗装手段は、刷毛、スプレー、ロールコーター、フローコーターなどにより、1回塗りで乾燥膜厚5〜60ミクロン程度の塗膜を形成することができ、常温での乾燥あるいは30〜150℃程度の温度で1〜60分間加熱し、乾燥することにより塗膜を形成することが可能である。中塗り塗料の塗装手段は、刷毛、スプレー、ロールコーター、フローコーター、スクリーン印刷、グラビア印刷、ディッピングなどにより、1回塗りで乾燥膜厚5〜50ミクロン程度、2〜3回塗りで10〜300ミクロン程度の塗膜を形成することができ、常温での乾燥あるいは30〜150℃程度の温度で1〜60分間加熱し、乾燥することにより塗膜を形成することが可能である。更に、上塗り塗料の塗装手段は、刷毛、スプレー、ロールコーター、フローコーターなどにより、1回塗りで乾燥膜厚5〜100ミクロン程度、2〜3回塗りで10〜150ミクロン程度の塗膜を形成することができ、常温での乾燥あるいは30〜150℃程度の温度で1〜60分間加熱し、乾燥することにより塗膜を形成することが可能である。
【0074】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。なお、実施例中「部」、「%」は、特に断らない限り質量基準で示す。
【0075】
<中塗り塗料用エマルション調製>
攪拌機、温度計及び還流冷却器などを備えた反応槽に、脱イオン水29.18部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸アンモニウム(商品名ハイテノールN08、第一工業製薬(株)製)0.13部を仕込み、加熱攪拌して80℃まで昇温した後、過硫酸アンモニウム0.1部を加え、5分間攪拌した。次いで表1に示す単量体予備混合物を3時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃で2時間保持した後、40℃に冷却し、ジメチルエタノールアミンを加え、PH8.5に調整し、エマルション(参考例1〜4)を得た。
【0076】
【表1】
【0077】
<中塗り塗料1の調製>
イオン交換水5.5部、チタン白(商品名タイペークCR95、石原産業(株)製)20部、顔料分散剤(商品名BYK−190、ビックケミー社製)2.5部、消泡剤(商品名BYK−024、ビックケミー社製)0.8部を混合して、ガラスビーズ20部を加え、ペイントシェーカーで90分間分散した後、上記中塗り塗料用エマルション参考例1を71.2部加え、更に15分間分散し中塗り塗料1を得た。
【0078】
<中塗り塗料2の調製>
イオン交換水5.5部、チタン白(商品名タイペークCR95、石原産業(株)製)20部、顔料分散剤(商品名BYK−190、ビックケミー社製)2.5部、消泡剤(商品名BYK−024、ビックケミー社製)0.8部を混合して、ガラスビーズ20部を加え、ペイントシェーカーで90分間分散した後、上記中塗り塗料用エマルション参考例2を71.2部加え、更に15分間分散し中塗り塗料2を得た。
【0079】
<中塗り塗料3の調製>
イオン交換水5.5部、チタン白(商品名タイペークCR95、石原産業(株)製)20部、顔料分散剤(商品名BYK−190、ビックケミー社製)2.5部、消泡剤(商品名BYK−024、ビックケミー社製)0.8部を混合して、ガラスビーズ20部を加え、ペイントシェーカーで90分間分散した後、上記中塗り塗料用エマルション参考例3を71.2部加え、更に15分間分散し中塗り塗料3を得た。
【0080】
<中塗り塗料4の調製>
イオン交換水5.5部、チタン白(商品名タイペークCR95、石原産業(株)製)20部、顔料分散剤(商品名BYK−190、ビックケミー社製)2.5部、消泡剤(商品名BYK−024、ビックケミー社製)0.8部を混合して、ガラスビーズ20部を加え、ペイントシェーカーで90分間分散した後、上記中塗り塗料用エマルション参考例4を71.2部加え、更に15分間分散し中塗り塗料4を得た。
【0081】
<水性樹脂分散液aの調製>
ガラス製ビーカーに、フェニル及びアルキルアルコキシシランの部分加水分解縮合物(商品名「DC6−2230」、東レ・ダウコーニング(株)製;固形分100%)を15部と、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.5部、メチルメタクリレート15部、n−ブチルアクリレート9部、メタクリル酸0.5部とからなるモノマー混合物を仕込み、均一溶液となるまで撹拌した。均一混合後、トリアセチルアセテートアルミニウム0.1部とメチルトリメトキシシラン1.0部とジメチルジメトキシシラン1.0部を添加混合し、続いて、反応性アニオン系界面活性剤(商品名「アデカリアソープSE−1025N」、旭電化工業(株)製)0.75部とイオン交換水18部の混合液を加え、高速撹拌機で攪拌し、プレエマルション化し、エマルション溶液を製造した。
【0082】
還流冷却器、温度計及び攪拌機を備えた反応器に、脱イオン交換水を32部、炭酸水素ナトリウムを0.1部、「アデカリアソープSE−1025N」を0.65部仕込み、撹拌しながら78℃に昇温した。同温度を保持しながら、過硫酸カリウム0.15部を仕込み、投入5分後より上記エマルション溶液を3時間かけて均一滴下した。滴下終了30分後に過硫酸カリウム1%水溶液を1部添加し、更に同温度で2時間撹拌を続けた後、50℃に冷却し、ジメチルエタノールアミン0.15部を添加し、反応を完結した。
【0083】
得られた水性樹脂分散液aは、固形分濃度45%、PH7.5であった。
【0084】
<水性樹脂分散液bの調製>
還流冷却器及び攪拌機を備えた反応器に、エチレングリコールモノブチルエーテル100部を加え、撹拌しながら100℃に加温した。次に、イソブチルメタクリレート50部、2−エチルヘキシルメタクリレート31.5部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン10部、アクリル酸8.5部、及びt−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート2.5部の混合溶液を、100℃で3時間かけて滴下し、その後105℃に昇温し、2時間維持し、反応を終了させ、固形分50%、樹脂の酸価65mgKOH/g、数平均分子量10000のシリル基含有ビニル系樹脂溶液(ハ)を製造した。
【0085】
還流冷却器及び攪拌機を備えた反応器に、メチルトリメトキシシランの部分加水分解縮合物(商品名「SR2402」、東レ・ダウコーニング(株)製;固形分100%)を23部、メチルトリメトキシシランを8部、ジメチルジメトキシシランを1.7部と、上記シリル基含有ビニル系樹脂溶液(ハ)を25部、イソプロパノールを10部加え、混合した後、イオン交換水3.0部と0.1規定塩酸0.05部を加え、60℃で3時間反応させた。次いで、モノアセチルアセテートビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム0.3部とイオン交換水0.8部を加え、更に60℃で3時間反応させた。次いで、トリエチルアミン0.6部と水37部を加え、50℃で1時間撹拌したのち、減圧[1.3×104Pa(100トール)]下、脱溶剤を行った後、水で固形分濃度35%になるように希釈調整を行い、水性樹脂分散液bを調製した。
【0086】
(参考例1〜2、実施例1〜2及び比較例1〜2)
表2に示す塗装仕様で、下塗り塗料、中塗り塗料、上塗り塗料を塗装・乾燥して塗装品を作製し、各種物性を測定した。なお、素材として石膏スラグパーライト板(厚さ12mm)を用いた。
【0087】
<塗膜性能試験>
試験方法及び評価は、以下に基づいて行った。
・外観:塗板に形成された塗膜外観を目視判定した。
・硬度:JIS K 5400により鉛筆硬度を測定した。
・耐熱水性:塗板を80℃の水中に浸漬して塗膜外観を、浸漬中及び塗膜乾燥後において目視判定した。
【0088】
評価
◎…浸漬中及び塗膜乾燥後共に変化なし
○…浸漬中軽微な白化あるが、塗膜乾燥後では変化なし
△…浸漬中での白化ひどく、塗膜乾燥後では光沢低下、白化等の軽微な変化あり
×…浸漬中での白化ひどく、塗膜乾燥後では光沢低下、白化等の変化大
また、水中に浸漬後、取り出した塗板の塗膜にカッターナイフを用いて,2mm間隔で25個のゴバン目をつくり、セロファン粘着テープを貼り付け、引き剥がしを行い、塗膜剥離のない個数を測定した。
・耐汚染性:赤、黒マジックインキを塗布してから24時間後に、n−ブタノールでぬらした布でふきとり、除染性を目視判定した。
【0089】
評価
◎…完全除去
○…極く軽微な汚染
△…少し汚染
×…汚染著しい
・耐候性:サンシャインウェザー−オーメーター3000時間
評価
○…塗膜外観に変化はなく、光沢保持率95%以上
△…塗膜外観変化が軽微にあり、光沢保持率80〜94%
×…塗膜変化が著しい、光沢保持率80%未満
・耐アルカリ性:飽和消石灰アルカリ水溶液に各塗板を40℃で10日間浸漬後、塗膜表面を目視評価した。
【0090】
評価
○…変化なし
△…塗膜表面若干白化
×…塗膜表面白濁
【0091】
【表2】
【0092】
表2から明らかの通り、本発明の塗装方法により塗膜形成した実施例1〜2は、優れた塗膜性能を有していた。一方、比較例1、比較例2は、耐熱水性(及び密着性)、耐候性や耐アルカリ性等が劣っていた。
【0093】
【発明の効果】
本発明の塗装方法により塗膜形成することにより、耐熱水性、耐候性、耐汚染性、耐溶剤性や耐アルカリ性等に優れた塗膜を形成させることができる。
Claims (1)
- 無機基材に(i)(A)下塗り塗料として水系シーラーを塗布しベースコートを形成した後、(B)中塗り塗料として、アルコキシシリル基を有するエチレン性不飽和単量体成分を0.1〜10モル%含有する加水分解性シリル基含有ビニル系エマルション樹脂を主成分とする組成物を塗布し、次いで(ii)前記(i)の塗膜層の上に(C)上塗り塗料として有機無機複合樹脂溶液に中和剤と水で強制分散させ、減圧下で脱溶剤して得た水分散液を含む水系ポリシロキサン含有組成物を塗布して乾燥硬化することを特徴とする水性塗料の塗装方法。
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