JP4606674B2 - 射出圧縮成形品 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は大型の樹脂射出成形品に関する。更に詳しくは寸法安定性に優れると共に、衝撃強度にも優れた射出圧縮成形法により製造された大型の樹脂射出成形品、殊に強化フィラーで強化された該射出成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車の外装材料においてプラスチック化の動きが再び活発化している。外装材料としてはバックパネル、フェンダー、バンパー、ドアパネル、ピラー、サイドプロテクター、サイドモール、各種スポイラー、ボンネット、ルーフパネル、トランクリッドなどが挙げられる。中でも、バックパネル、フェンダー、ドアパネル、ボンネット、ルーフパネル、およびトランクリッドなど、未だプラスチック化が不十分な外板において活発であり、特にバックパネル、フェンダーおよびドアパネルなどのいわゆる垂直外板において盛んとなっている。プラスチック化のメリットとしては、軽量化が可能な点、デザインの自由度が高められる点、モジュールアッセンブリー化によるコストダウンが可能になる点、および軽い衝突においては全く変形・破損がない点などを挙げることができる。特に軽い衝突において変形がない点は、荒地などを走行するため比較的粗く扱われやすい四輪駆動の多目的車、見切りの悪い大型のミニバン、および道具としてより高い機能性が求められるスモールカーなどにおいて適した特性である。
【0003】
一方で外装材料は、鋼板などからなる金属製のフレームに取り付けられるため良好な寸法安定性が求められる。すなわち外装材料には、低い線膨張係数や低い吸水による寸法変化が求められる。フレームとの寸法変化の差が大きい場合には、外装材料のいびつな変形や外装材料と他の部分との干渉を生じるようになる。通常かかる変形や干渉を防止するため、外装材料のフレームへの取り付けは変形が目立たない配置で行われ、変形代としての隙間を設けて行われている。もちろん材料は比較的寸法変化の低いものが使用される。しかしながら寸法安定性は次の理由などにより更に低下させることが求められる場合がある。すなわち、近年四輪駆動の多目的車はクロスオーバー化しており、高級車の風格が求められている。よって隙間の減少が更に必要となる。またミニバンはより大型化して外装材料も大型化している。よって変形代としてこれ以上の隙間を設けることができない場合がある。
【0004】
自動車用の外装材料としては、既にGE社が製造しているNORYL GTX(商品名)シリーズ(ポリアミド樹脂と変性ポリフェニレンエーテル樹脂のポリマーアロイ)、トヨタ自動車社が主として開発してトヨタスーパーオレフィンポリマー(商品名)シリーズ(ポリプロピレン樹脂と、ポリオレフィン系エラストマーとのポリマーアロイ)、芳香族ポリエステル樹脂と芳香族ポリカーボネートとのポリマーアロイ、並びにポリアミド樹脂とABS樹脂とのポリマーアロイなどが広く知られるところである。これらの材料はいずれも自動車用の外装材料に求められる、耐薬品性、耐熱性、耐衝撃性、外観、および寸法安定性などをバランスよく満足するものである。またその多くはかかる特性を満足すべく、結晶性熱可塑性ポリマーと非晶性熱可塑性ポリマーとのポリマーアロイである。これらの材料を通常に射出成形して自動車用の外装材料、殊に自動車外板が製造されていた。
【0005】
これらの材料に対して更に低い寸法変化が求められた場合、寸法安定性の高い非晶性熱可塑性ポリマーの割合を増加させる方法が考えられる。またより好適には無機強化フィラーなどを配合また増量する方法が考えられる。しかしながらかかる前者の方法はポリアミド樹脂を組み合わせたポリマーアロイにおいて耐衝撃性の低下を招く。更により好適な後者の方法ではほとんどの樹脂材料において耐衝撃性の低下を招く。よってベースの耐衝撃性をより高めて各種の強化フィラーを配合するとの考え方もある。しかしながらかかる方法も相反する特性を組成のみによって達成する点において限界があり、十分に有効な方法とはいえなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、寸法安定性に優れると共に、衝撃強度にも優れた射出圧縮成形法により製造された大型の樹脂射出成形品を提供することにあり、更に詳しくは、結晶性熱可塑性ポリマーと非晶性熱可塑性ポリマーからなる樹脂組成物、殊に強化フィラーで強化された樹脂組成物において、組成によることなく大型の樹脂射出成形品における耐衝撃性を向上させる方法を提供する点にある。
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、驚くべきことに、強化フィラーで強化された結晶性熱可塑性ポリマーと非晶性熱可塑性ポリマーからなる樹脂組成物より形成された大型の射出圧縮成形品が、かかる樹脂組成物の通常の射出成形品と比較して耐衝撃性が大きく向上することを見出した。逆にいえば、大型の射出成形品においては材料が有する耐衝撃性が十分に発揮されていない場合があることを見出した。本発明はかかる知見に基づき更に鋭意検討を行い、完成に至ったものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、結晶性熱可塑性ポリマー(a1成分)5〜90重量部、および非晶性熱可塑性ポリマー(a2成分)10〜95重量部の合計100重量部からなる熱可塑性ポリマー成分(A成分)100重量部からなる樹脂組成物を射出圧縮成形して得られた、最大投影面積が1000cm2以上の射出圧縮成形品にかかるものである。
【0009】
本発明の好適な態様の1つは、上記樹脂組成物がa1成分とa2成分の合計100重量部当り、更に強化フィラー(B成分)0.5〜100重量部を含んでなる上記射出圧縮成形品にかかるものである。
【0010】
本発明の好適な態様の1つは、上記樹脂組成物がa1成分とa2成分の合計100重量部当り、ゴム質ポリマー(C成分)0.5〜50重量部を含んでなる上記射出圧縮成形品にかかるものである。
【0011】
本発明の好適な態様の1つは、上記a1成分がポリアミドおよび芳香族ポリエステルから選択される少なくとも1種の結晶性熱可塑性ポリマーである上記射出圧縮成形品にかかるものであり、また本発明の好適な態様の1つは、上記a2成分が芳香族ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリアリレート、およびスチレン系ポリマーから選択される少なくとも1種である上記射出圧縮成形品にかかるものである。
【0012】
本発明の好適な態様の1つは、上記B成分がタルク、およびワラストナイトから選択される少なくとも1種である上記射出圧縮成形品にかかるものである。
【0013】
更に本発明の好適な態様の1つは、上記射出圧縮成形品が、その成形品側面部分にゲートを有してなる上記射出圧縮成形品にかかるものであり、また本発明の好適な態様の1つは、上記射出圧縮成形が、少なくともその供給完了時において目的とする成形品容量よりも1.1倍以上大なる容量の金型キャビティ内に溶融した熱可塑性樹脂材料を充填するものである上記射出圧縮成形品にかかるものである。
【0014】
更に本発明の詳細について説明する。
【0015】
本発明における射出圧縮成形とは、少なくともその供給完了時において目的とする成形品容量よりも大なる容量の金型キャビティ内に溶融した熱可塑性樹脂を供給し、その供給完了後に金型キャビティ容量を目的とする成形品容量まで減少し、金型キャビティ内の成形品をその取り出しが可能な温度以下まで冷却後成形品を取り出す成形方法である。かかる技術内容をより明確にするため更に以下に説明する。
【0016】
上記の“その供給完了時”とは金型キャビティ(以下単に“キャビティ”と称することがある)内への樹脂の供給完了時をいう。更に樹脂の供給とは少なくとも外見的に樹脂の流れの伴うものをいう。すなわち、供給方法が射出成形であれば通常射出工程をいい、その供給完了時とは射出工程終了時をいう。一方保圧工程は外見的には樹脂の流れを伴わず(樹脂内部では樹脂の流れはわずかに生ずるが)、樹脂を圧縮する工程であることから本発明にいうキャビティ内への樹脂の供給には含まれない。また溶融樹脂の供給は射出成形方法、すなわちシリンダー中の樹脂をピストンを用いて排出する方法である。
【0017】
更に上記の“少なくとも”とは、樹脂の供給完了時にキャビティ容量が目的とする成形品容量よりも大きいことのみを要件とし、樹脂の供給開始時より大きいことは要件としないことを意味する。例えば、樹脂の供給と共にキャビティ容量を拡大させ、樹脂を過剰に充填した後、キャビティ容量を減少して樹脂を圧縮する方法であってもよい。ここで過剰の溶融樹脂は捨てキャビ(製品以外の樹脂流入のためのキャビティ)など別の空間に流入させることができる。また過剰の溶融樹脂は、シリンダー側に直接逆流させることができる。尚、目的とする成形品容量に対して予め大なる容量とした金型キャビティに対し、溶融樹脂を過剰に供給することも可能である。
【0018】
また上記“目的とする成形品容量よりも大なる容量の金型キャビティ”の意味するところは、キャビティ容量が変化しない通常の成形方法における容量を同一容量とする基準に基づく。すなわち通常の成形方法においても厳密には成形品容量はキャビティ容量よりもごくわずかに小さいことになるが、本発明においてこの程度の大小関係は問題にしない。本発明においてかかる“大なる容量”の程度としては目的とする成形品容量の1.1倍以上が好ましく、1.2倍以上がより好ましく、1.5倍以上が更に好ましい。一方かかる上限としては目的とする成形品容量の3倍以下が好ましく、2.5倍以下がより好ましく、2倍以下が更に好ましい。
【0019】
またキャビティの容量を拡大する方法としては(逆方向の動作になれば所定の容量まで減少する方法ともいえる)、(i)可動側金型の後退による方法、(ii)キャビティ内の可動コアプレートの後退による方法、および(iii)その他キャビティ内に備えられた可動部の後退による方法などを挙げることができる。特に上記(i)の方法(いわゆる型圧縮法)、および(ii)の方法(いわゆるコア圧縮法)が一般的である。尚、これらキャビティ容量を拡大させる可動部分は、該容量を所定容量まで減少させる場合に樹脂を圧縮するため、該可動部分を以下“圧縮部”、またキャビティ容量を所定の容量まで減少させる工程を“圧縮工程”と称する場合がある。
【0020】
上記“その供給完了後に金型キャビティ容量を目的とする成形品容量まで減少し”とは、▲1▼圧縮工程は溶融樹脂の供給完了後に完了すること、▲2▼圧縮工程の開始時期は供給完了前後のいずれでもよいこと、および▲3▼上述のとおりキャビティ内に供給する樹脂の量は成形品容量より過剰であってもよいことを意味する。殊に圧縮工程は、溶融樹脂の充填終了前に開始することが外観、耐衝撃性および寸法安定性に優れた成形品を得るために好ましい。尚、圧縮工程と溶融樹脂の充填工程が重なる時間をオーバーラップ時間という。
【0021】
上述のとおり、本発明の射出圧縮成形においてキャビティ内に供給する樹脂の量は成形品容量より過剰であってもよい。但しキャビティ内に供給する樹脂の量は成形品容量相当とすることが耐衝撃性および製造コストの点でより好ましい。溶融樹脂のシリンダへの逆流は耐衝撃性の点で不利となりやすく、捨てキャビは経済的効率に欠ける場合がある。
【0022】
また本発明の成形方法においては、成形品の外観を更に改良するため金型キャビティを母型とは独立して局所的に高温化することができる。かかる高温化の方法としては、加熱源による方法および断熱層を配したキャビティにより高温化する方法が挙げられ、いずれも適用可能であるが、より好ましくは加熱源による方法である。更に加熱源としては、電気ヒーター、赤外線ヒーター、高周波誘導加熱、熱媒体、超音波加熱、レーザー加熱等が挙げられ、これらのいずれか一つまたは二つ以上の組合せが選ばれる。金型キャビティを局所的に高温化することにより外観を改良する方法としては、例えば特公平5−19443号公報に加熱源により成形品表面に生ずるコールドマークを解消する方法が開示されている。
【0023】
更に金型キャビティを局所的に高温化する際の温度としては、樹脂のガラス転移温度(Tg)以上になることが好ましく、より好ましくはTg+1〜Tg+10℃の範囲、更に好ましくはTg+1〜Tg+8℃の範囲である。かかる温度範囲に0.1秒以上あることが好ましく、0.5秒以上あることがより好ましい。
また上限としては10秒以下が好ましく、5秒以下が更に好ましい。
【0024】
結晶性熱可塑性ポリマーと非晶性熱可塑性ポリマーからなる樹脂組成物、殊に強化フィラーで強化した該樹脂組成物を、射出圧縮成形法により製造した大型の樹脂射出成形品が、通常の射出成形品と比較して良好な耐衝撃性を達成する原因は十分に解明されていないものの、以下のような要因を挙げることができる。第1に、大型の射出成形品においてはその熱負荷が極めて高くなることが要因として考えられる。強化フィラーで強化された結晶性熱可塑性ポリマーと非晶性熱可塑性ポリマーからなる樹脂組成物が良好な耐衝撃性を得るためには、制御されたモルフォロジーを形成する必要があり、またポリマー間に生ずる分解反応などを抑制する必要がある。高い熱負荷はこれらの必要な因子に対して不利に働いていると考えられる。第2に、不均一な内部応力が生じ難いことが要因として考えられる。不均一な内部応力は、成形品の破壊挙動において欠陥として作用し得る。大型の成形品になるほど成形品に生ずる歪は大きくなる。一方で射出圧縮成形においては成形品に生ずる歪は少ない(樹脂内部の圧力は均一でムラが少ない)。第3に、結晶性熱可塑性ポリマーの結晶化挙動が考えられる。結晶化は熱履歴、外力、および核剤などの種々の因子に影響を受ける。射出圧縮成形は通常の射出成形に比較して異なる熱履歴や外力を生ずる。射出圧縮成形では樹脂の冷却は遅延するとともに、内部の圧力は均一でムラが少ない。これらの因子によって結晶化挙動が異なる可能性がある。更に核剤効果を有する成分が含まれる場合、その挙動は極めて複雑なものとなり得る。
【0025】
次に本発明において使用する熱可塑性ポリマー成分(A成分)について説明する。尚、以下結晶性熱可塑性ポリマー(a1成分)と非晶性熱可塑性ポリマー(a2成分)とを合わせて熱可塑性ポリマー成分(A成分)と称する。
【0026】
本発明における結晶性熱可塑性ポリマー(a1成分)は、熱可塑性を有する結晶性ポリマーであれば特に制限されないが、その融点が180℃以上であるものが好ましく、200℃以上がより好ましい。かかる熱的性質を有することにより高い寸法安定性が達成できる。一方、成形加工性を考慮すると融点は300℃以下が好ましく、290℃以下が更に好ましい。尚、かかる融点は、JIS K7121に準拠し、DSC装置を用いて室温から20℃/minの昇温速度により昇温した時の融点ピークの値である。かかる結晶性熱可塑性ポリマーとしては、例えばポリアミド、芳香族ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリ−4−メチルペンテン−1、およびシンジオタクティックポリスチレンなどを挙げることができる。
【0027】
中でもa1成分としては、ポリアミドおよび芳香族ポリエステルから選択される少なくとも1種の結晶性熱可塑性ポリマーがより好ましく挙げられる。ポリアミドは良好な耐衝撃性を有し、また後述するポリフェニレンエーテルと良好なポリマーアロイを形成する。芳香族ポリエステルは寸法安定性に優れた結晶性ポリマーであり、また後述する芳香族ポリカーボネートと良好なポリマーアロイを形成する。特に好ましくは寸法安定性の点で芳香族ポリエステルが好ましい。
【0028】
a1成分のポリアミドについて説明する。かかるポリアミドとしては、たとえば(i)アミノ基とカルボン酸基との間に少なくとも2個の炭素原子を含むモノアミン−モノカルボン酸又はそのラクタムの重合によって、または(ii)2個のアミノ基間に少なくとも2個の炭素原子を含むジアミンとジカルボン酸との実質的に等モル割合での重合によって、または(iii)モノアミノカルボン酸またはそのラクタムを実質的に等モル割合のジアミン及びジカルボン酸とともに重合させることによって製造される。該ジカルボン酸はその官能性誘導体の形、たとえばエステルまたは酸塩化物であり得る。
【0029】
上記の“実質的に等モル”割合(のジアミン及びジカルボン酸)は、(i)厳密に等モルの割合および(ii)得られるポリアミドの粘度を安定化させるための慣用の技術において使用される等モルから幾分逸脱する割合の両者を含む意味で使用する。ポリアミドの製造に有用なモノアミノモノカルボン酸またはそのラクタムの例はアミノ基とカルボン酸基との間に2〜16個の炭素原子を含むかかる化合物であり、ラクタムの場合には該炭素原子は−CO−NH−基とともに環を形成している。アミノカルボン酸及びラクタムの特定の例としてはアミノカプロン酸、ブチロラクタム、ピバロラクタム、カプロラクタム、カプリルラクタム、エナントラクタム、ウンデカノラクタム、ドデカノラクタム、並びに3−および4−アミノ安息香酸を挙げることができる。
【0030】
ポリアミドの製造に使用するに好適なジアミンは直鎖および分岐鎖の、アルキル基、アリール基およびアルキル−アリール基を有するジアミンを含む。かかるジアミンの例は下記一般式(1)
2N(CH2nNH2 (1)
(式中、nは2〜16の整数である)によって表わされるものであり、たとえばトリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、m−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン等を含み、特にヘキサメチレンジアミンが好適である。
【0031】
ポリアミドにおけるジカルボン酸は芳香族ジカルボン酸、たとえばイソフタル酸およびテレフタル酸であり得る。好ましいジカルボン酸は下記一般式(2)
HOOC−Y−COOH (2)
(式中、Yは少なくとも2個の炭素原子を含む二価脂肪族基を表わす)で表わされるものであり、例えばセバシン酸、オクタデカン酸、スベリン酸、グルタル酸、ピメリン酸およびアジピン酸を含み、特にアジピン酸が好適である。
【0032】
本発明に有用なポリアミド(ナイロン)の典型的な例は、いわゆるポリアミド46、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド63、ポリアミド64、ポリアミド610およびポリアミド612を含み、並びにテレフタル酸および/またはイソフタル酸とトリメチルヘキサメチレンジアミンから得られるポリアミド、アジピン酸とm−キシリレンジアミンから得られるポリアミド、アジピン酸および/またはアゼライン酸と2,2−ビス−(p−アミノシクロヘキシル)プロパンから得られるポリアミド、テレフタル酸および/またはイソフタル酸および/またはアジピン酸とヘキサメチレンジアミンから得られるポリアミド、テレフタル酸および/またはイソフタル酸とヘキサメチレンジアミンおよび2−メチルペンタメチレンジアミンとから得られるポリアミド、およびテレフタル酸と4,4’−ジアミノ−ジシクロヘキシルメタンから得られるポリアミドを包含する。好ましいポリアミドはポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、およびポリアミド46であり、もっとも好ましくはポリアミド66である。
【0033】
a1成分の芳香族ポリエステルについて説明する。芳香族ポリエステルとはポリエステルを形成するジカルボン酸成分とジオール成分の内、ジカルボン酸成分100モル%の70モル%以上、好ましくは90モル%以上、最も好ましくは99モル%以上が芳香族ジカルボン酸であるポリエステルである。
【0034】
このジカルボン酸の例として、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2,5−ジクロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、4,4−スチルベンジカルボン酸、4,4−ビフェニルジカルボン酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ビス安息香酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4−ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−Naスルホイソフタル酸、エチレン−ビス−p−安息香酸等があげられる。これらのジカルボン酸は単独でまたは2種以上混合して使用することができる。
【0035】
本発明の芳香族ポリエステルには、上記の芳香族ジカルボン酸以外に、30モル%未満の脂肪族ジカルボン酸成分を共重合することができる。その具体例として、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等があげられる。
【0036】
本発明のジオール成分としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、トランス−またはシス−2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジオール、p−キシレンジオール、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2−ヒドロキシエチルエーテル)などを挙げることができる。これらは単独でも、2種以上を混合して使用することができる。尚、ジオール成分中の二価フェノールは30モル%以下であることが好ましい。
【0037】
上記芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸およびジオール成分のそれぞれの種類および組成割合は、本発明のより好ましい融点ピーク温度条件を満足すべく選択することが好ましい。
【0038】
具体的な芳香族ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリへキシレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレン−1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレートなどの他、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート共重合体、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体などのような共重合ポリエステルが挙げられる。
【0039】
また本発明に使用される芳香族ポリエステルの末端基構造は特に限定されるものではなく、末端基における水酸基とカルボキシル基の割合がほぼ同量の場合以外に、一方の割合が多い場合であってもよい。またかかる末端基に対して反応性を有する化合物を反応させる等により、それらの末端基が封止されているものであってもよい。
【0040】
本発明に使用される芳香族ポリエステルの製造方法については、常法に従い、チタン、ゲルマニウム、アンチモン等を含有する重縮合触媒の存在下に、加熱しながらジカルボン酸成分と前記ジオール成分とを重合させ、副生する水または低級アルコールを系外に排出することにより行われる。例えば、ゲルマニウム系重合触媒としては、ゲルマニウムの酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、アルコラート、フェノラート等が例示でき、更に具体的には、酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウム、テトラメトキシゲルマニウム等が例示できる。また本発明では、従来公知の重縮合の前段階であるエステル交換反応において使用される、マンガン、亜鉛、カルシウム、マグネシウム等の化合物を併せて使用でき、およびエステル交換反応終了後にリン酸または亜リン酸の化合物等により、かかる触媒を失活させて重縮合することも可能である。更に芳香族ポリエステルの製造方法は、バッチ式、連続重合式のいずれの方法をとることも可能である。
【0041】
更に上記芳香族ポリエステル中でも特に好適であるのは、ポリブチレンテレフタレートである。本発明のポリブチレンテレフタレートとは、テレフタル酸あるいはその誘導体と、1,4−ブタンジオールあるいはその誘導体とから重縮合反応により得られるポリマーであるが、上述のとおり他のジカルボン酸成分および他のアルキレングリコール成分を共重合したものを含む。
【0042】
ポリブチレンテレフタレートの末端基構造は上記と同様、特に限定されるものではないが、より好ましいのは末端カルボキシル基が末端水酸基に比較して少ないものである。
【0043】
また製造方法についても上記の各種方法を取り得るが好ましくは次のものである。製造方法としては、連続重合式のものがより好ましい。これはその品質安定性が高く、またコスト的にも有利なためである。更に重合触媒としては有機チタン化合物を用いることが好ましい。これはエステル交換反応などへの影響が少ない傾向にあるからである。
【0044】
かかる有機チタン化合物としては、好ましい具体例としてチタンテトラブトキシド、チタンイソプロポキシド、蓚酸チタン、酢酸チタン、安息香酸チタン、トリメリット酸チタン、テトラブチルチタネートと無水トリメリット酸との反応物などを挙げることができる。有機チタン化合物の使用量は、そのチタン原子がポリブチレンテレフタレートを構成する酸成分に対し、3〜12mg原子%となる割合が好ましい。
【0045】
本発明の芳香族ポリエステル樹脂の分子量については特に制限されないが、o−クロロフェノールを溶媒として35℃で測定した固有粘度が0.5〜1.5であるのが好ましく、特に好ましくは0.6〜1.2である。
【0046】
本発明における非晶性熱可塑性ポリマー(a2成分)は、熱可塑性を有する非晶性ポリマーであれば特に制限されないが、そのガラス転移温度が100℃以上であるものが好ましく、120℃以上がより好ましい。かかる熱的性質を有することにより高い寸法安定性が達成できる。一方、成形加工性を考慮するとガラス転移温度は250℃以下が好ましく、200℃以下が更に好ましい。尚、かかるガラス転移温度は、JIS K7121に準拠し、DSC装置を用いて室温から20℃/minの昇温速度により昇温して測定された値である。尚、上記ガラス転移温度はa2成分全体として把握される温度であり、例えばa2成分としてポリフェニレンエーテルおよびポリスチレンが含まれる場合は、かかるポリマーアロイにおけるガラス転移温度をいう。かかる非晶性熱可塑性ポリマーとしては、例えば芳香族ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリアリレート、スチレン系ポリマー、ポリエーテルスルホン、および環状ポリオレフィンなどを挙げることができる。
【0047】
中でもa2成分としては、芳香族ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリアリレート、およびスチレン系ポリマーから選択される少なくとも1種の非晶性熱可塑性ポリマーがより好ましく挙げられる。芳香族ポリカーボネートは良好な耐衝撃性を有する。ポリフェニレンエーテルはガラス転移温度が高く寸法安定性の点で有利である一方、ポリスチレンなどとの相溶性に優れ、広範な特性制御が可能である。ポリアリレートは耐衝撃性とガラス転移温度の特性において、芳香族ポリカーボネートとポリフェニレンエーテルとの中間的な性質を有している。スチレン系ポリマーは良好な成形加工性を有し、上記の非晶性ポリマーとの相溶性が良好である。特に好ましくは耐衝撃性の点で芳香族ポリカーボネートである。
【0048】
a2成分の芳香族ポリカーボネートについて説明する。本発明に用いられるa2成分の芳香族ポリカーボネートは、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものであり、反応の方法としては界面重縮合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。
【0049】
二価フェノールの代表的な例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびα,α'−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンなどを挙げることができる。特に、ビスフェノールAの単独重合体を挙げることができる。かかる芳香族ポリカーボネート樹脂は特に耐衝撃性が優れる点で好ましい。
【0050】
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、カーボネートエステルまたはハロホルメート等が使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。
【0051】
上記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重縮合法または溶融エステル交換法によって反応させて芳香族ポリカーボネートを製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールが酸化するのを防止するための酸化防止剤等を使用してもよい。また芳香族ポリカーボネートは三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネートであってもよい。三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンなどが使用できる。
【0052】
分岐ポリカーボネートを生ずる多官能性化合物を含む場合、かかる割合は、芳香族ポリカーボネート全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.5モル%、特に好ましくは0.01〜0.3モル%である。また特に溶融エステル交換法の場合、副反応として分岐構造が生ずる場合があるが、かかる分岐構造量についても、芳香族ポリカーボネート全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.5モル%、特に好ましくは0.01〜0.3モル%であるものが好ましい。尚、かかる割合については1H−NMR測定により算出することが可能である。
【0053】
更に芳香族または脂肪族の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネートであってもよい。脂肪族の二官能性カルボン酸としては、例えば炭素数8〜20、好ましくは10〜12の脂肪族の二官能性カルボン酸が挙げられる。かかる脂肪族の二官能性のカルボン酸は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。脂肪族の二官能性のカルボン酸は、α,ω−ジカルボン酸が好ましい。脂肪族の二官能性のカルボン酸としては例えば、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、イコサン二酸等の直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸が好ましく挙げられる。
【0054】
芳香族ポリカーボネートは、上述した各種二価フェノールの異なるポリカーボネート、分岐成分を含有するポリカーボネート、各種のポリエステルカーボネート、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体など各種の芳香族ポリカーボネートの2種以上を混合したものであってもよい。更に下記に示す製造法の異なるポリカーボネート、末端停止剤の異なるポリカーボネートなど各種についても2種以上を混合したものが使用できる。
【0055】
芳香族ポリカーボネートの重合反応において界面重縮合法による反応は、通常二価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤および有機溶媒の存在下に反応させる。酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。有機溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また、反応促進のために例えばトリエチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等の第三級アミン、第四級アンモニウム化合物、第四級ホスホニウム化合物等の触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜40℃、反応時間は10分〜5時間程度、反応中のpHは9以上に保つのが好ましい。
【0056】
また、かかる重合反応において、通常末端停止剤が使用される。かかる末端停止剤として単官能フェノール類を使用することができる。単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールおよびイソオクチルフェノールが挙げられる。また、末端停止剤は単独でまたは2種以上混合して使用してもよい。
【0057】
溶融エステル交換法による反応は、通常二価フェノールとカーボネートエステルとのエステル交換反応であり、不活性ガスの存在下に二価フェノールとカーボネートエステルとを加熱しながら混合して、生成するアルコールまたはフェノールを留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノールの沸点等により異なるが、通常120〜350℃の範囲である。反応後期には系を1.33×103〜13.3Pa程度に減圧して生成するアルコールまたはフェノールの留出を容易にさせる。反応時間は通常1〜4時間程度である。
【0058】
カーボネートエステルとしては、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基、アラルキル基あるいは炭素数1〜4のアルキル基などのエステルが挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
【0059】
また、重合速度を速めるために重合触媒を用いることができ、かかる重合触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、二価フェノールのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属化合物、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の含窒素塩基性化合物などの触媒を用いることができる。更にアルカリ(土類)金属のアルコキシド類、アルカリ(土類)金属の有機酸塩類、ホウ素化合物類、ゲルマニウム化合物類、アンチモン化合物類、チタン化合物類、ジルコニウム化合物類などの通常エステル化反応、エステル交換反応に使用される触媒を用いることができる。触媒は単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの重合触媒の使用量は、原料の二価フェノール1モルに対し、好ましくは1×10-8〜1×10-3当量、より好ましくは1×10-7〜5×10-4当量の範囲で選ばれる。
【0060】
溶融エステル交換法による反応ではフェノール性の末端基を減少するために、重縮反応の後期あるいは終了後に、例えば2−クロロフェニルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートおよび2−エトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート等の化合物を加えることができる。
【0061】
さらに溶融エステル交換法では触媒の活性を中和する失活剤を用いることが好ましい。かかる失活剤の量としては、残存する触媒1モルに対して0.5〜50モルの割合で用いるのが好ましい。また重合後のポリカーボネートに対し、0.01〜500ppmの割合、より好ましくは0.01〜300ppm、特に好ましくは0.01〜100ppmの割合で使用する。失活剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩などのホスホニウム塩、テトラエチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェートなどのアンモニウム塩なとが好ましく挙げられる。
【0062】
芳香族ポリカーボネートの粘度平均分子量は特定されないが、粘度平均分子量が10,000未満であると強度などが低下し、50,000を超えると成形加工性が低下するようになるので、10,000〜50,000のものが好ましく、12,000〜30,000のものがより好ましく、更に好ましくは18,000〜28,000である。この場合粘度平均分子量が上記範囲外であるポリカーボネートとを混合することも当然に可能である。
【0063】
本発明でいう粘度平均分子量はまず次式にて算出される比粘度を20℃で塩化メチレン100mlに芳香族ポリカーボネート0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t−t0)/t0
[t0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度を次式にて挿入して粘度平均分子量Mを求める。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-40.83
c=0.7
【0064】
本発明における芳香族ポリカーボネートの態様として以下のものを挙げることができる。すなわち、粘度平均分子量70,000〜300,000の芳香族ポリカーボネート(PC▲1▼)、および粘度平均分子量10,000〜30,000の芳香族ポリカーボネート(PC▲2▼)からなり、その粘度平均分子量が16,000〜35,000である芳香族ポリカーボネート(以下、“高分子量成分含有芳香族ポリカーボネート”と称することがある)も使用できる。
【0065】
かかる高分子量成分含有芳香族ポリカーボネートは、PC▲1▼の存在によりポリマーのエントロピー弾性を大きくし射出圧縮成形時においてより有利となる。例えばコールドマークなどの外観不良はより低減でき、その分射出圧縮成形の条件幅を広げることが可能である。一方PC▲2▼成分の低い分子量成分は全体の溶融粘度を低下し、樹脂の緩和を促進して、より低歪の成形を可能とする。尚、同様の効果は分岐成分を含有する芳香族ポリカーボネートにおいても認められる。
【0066】
高分子量成分含有芳香族ポリカーボネートは上記PC▲1▼とPC▲2▼を種々の割合で混合し、所定の分子量範囲を満足するよう調整して得ることができる。好ましくは、高分子量成分含有芳香族ポリカーボネート100重量%中、PC▲1▼が2〜40重量%の場合であり、特に好ましくはPC▲1▼が5〜20重量%である。
【0067】
a2成分のポリフェニレンエーテルについて説明する。本発明に用いられるa2成分のポリフェニレンエーテルは、フェニレンエーテル構造を有する核置換フェノールの重合体または共重合体(以下単にPPE重合体と称する場合がある)である。
【0068】
フェニレンエーテル構造を有する核置換フェノールの重合体の代表例としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−n−ブチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−ヒドロキシエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル等が挙げられる。この中で、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルが特に好ましい。
【0069】
フェニレンエーテル構造を有する核置換フェノールの共重合体の代表例としては、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、2,6−ジメチルフェノールとo−クレゾールとの共重合体あるいは2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノール及びo−クレゾールとの共重合体等がある。
【0070】
上記のPPE重合体の製造方法は特に限定されるものではないが例えば米国特許4,788,277号明細書(特願昭62−77570号)に記載されている方法に従って、ジブチルアミンの存在下に、2,6−キシレノールを酸化カップリング重合して製造することができる。
【0071】
また、PPE重合体の分子量および分子量分布も種々のものが使用可能であるが、分子量としては、0.5g/dlクロロフォルム溶液、30℃における還元粘度が0.20〜0.70dl/gの範囲が好ましく、0.30〜0.55dl/gの範囲がより好ましい。
【0072】
また、本発明のPPE重合体には、本発明の主旨に反しない限り、従来PPE重合体中に存在させてもよいことが提案されている他の種々のフェニレンエーテルユニットを部分構造として含んでいても構わない。少量共存させることが提案されているものの例としては、特願昭63−12698号公報及び特開昭63−301222号公報に記載されている、2−(ジアルキルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテルユニットや、2−(N−アルキル−N−フェニルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテルユニット等が挙げられる。また、PPE重合体の主鎖中にジフェノキノン等が少量結合したものも含まれる。
【0073】
さらにPPE重合体には、下記のα,β−不飽和カルボン酸またはその無水物等のエチレン性不飽和化合物により変性されたPPE重合体も含むことができる。これらを用いて変性したPPE重合体を用いた場合には、ポリアミドやスチレン系ポリマーとの相溶性に優れ、良好な耐衝撃性を有する成形体を提供できる。α,β−不飽和カルボン酸またはその無水物の例として、特公昭49−2343号公報、特公平3−52486号公報等に記載される無水マレイン酸、フタル酸、無水イタコン酸、無水グルタコン酸、無水シトラコン酸、無水アコニット酸、無水ハイミツク酸、5−ノルボルネン−2−メチル−2−カルボン酸、あるいはマレイン酸、フマル酸等が挙げられ、これらに限定されるものではないが、無水マレイン酸が特に好ましい。
【0074】
無水マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸またはその無水物とPPE重合体との反応は、有機過酸化物の存在下、または非存在下で両者を混合しPPE重合体のガラス転移温度以上の温度まで加熱することによって製造できる。本発明の樹脂組成物を製造する際には、あらかじめ無水マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸またはその無水物を結合したPPE重合体を用いてもよい。また、樹脂組成物を製造する際に同時に、無水マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸またはその無水物を添加することによりPPE重合体と反応させる方法でもよい。
【0075】
a2成分のポリアリレートについて説明する。本発明に用いられるa2成分のポリアリレートは、芳香族ジカルボン酸またはその誘導体と二価フェノールまたはその誘導体とから得られるものである。ポリアリレートの調製に用いられる芳香族ジカルボン酸としては、二価フェノールと反応し満足な重合体を与えるものであればいかなるものでもよく、1種または2種以上を混合して用いられる。
【0076】
好ましい芳香族ジカルボン酸成分として、テレフタル酸、イソフタル酸が挙げられる。またこれらの混合物であってもよい。
【0077】
二価フェノール成分の具体例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、2,2’−ビス(4ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ハイドロキノンなどが挙げられる。これら二価フェノール成分はパラ置換体であるが、他の異性体を使用してもよく、さらに二価フェノール成分にエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコールなどを併用してもよい。
【0078】
上記の中でも好ましいポリアリレートとしては、芳香族ジカルボン酸成分がテレフタル酸およびイソフタル酸からなり、二価フェノール成分として2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)からなるものが挙げられる。テレフタル酸とイソフタル酸との割合は、テレフタル酸/イソフタル酸=9/1〜1/9(モル比)が好ましく、特に溶融加工性、性能バランスの点で7/3〜3/7が望ましい。
【0079】
他の代表的なポリアリレートとしては、芳香族ジカルボン酸成分がテレフタル酸からなり、二価フェノール成分がビスフェノールAおよびハイドロキノンからなるものが挙げられる。かかるビスフェノールAとハイドロキノンとの割合は、ビスフェノールA/ハイドロキノン=50/50〜70/30(モル比)が好ましく、55/45〜70/30がより好ましく、60/40〜70/30が更に好ましい。
【0080】
ポリアリレートの粘度平均分子量は約7,000〜100,000の範囲が物性および成形加工性の点から好ましい。またポリアリレートは界面重縮合法およびエステル交換反応法のいずれの重合方法により製造されたものも選択できる。
【0081】
a2成分のスチレン系ポリマーについて説明する。本発明に用いられるa2成分のスチレン系ポリマーは、スチレン系単量体と必要に応じてこれらと共重合可能な他のビニル単量体とを重合して得られるものである。
【0082】
スチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルキシレン、エチルスチレン、ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルナフタレン、メトキシスチレン、モノブロムスチレン、ジブロムスチレン、フルオロスチレン、トリブロムスチレンなどが挙げられ、特にスチレンが好ましい。これらは1種でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0083】
前記スチレン系単量体と共重合可能な他のビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のアリールエステル(ここで(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリル酸の表現は、アクリレートおよびメタクリレート、並びにアクリル酸およびメタクリル酸のいずれも含むことを示す)、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基含有メタクリル酸エステル、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、イタコン酸などのα,β−不飽和カルボン酸およびその無水物が挙げられる。
【0084】
かかるスチレン系ポリマーとしては、例えばポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体(ASコポリマー)、スチレン・メチルメタクリレート共重合体(MSコポリマー)、メチルメタクリレート・アクリロニトリル・スチレン共重合体(MASコポリマー)、スチレン・無水マレイン酸共重合体(SMAコポリマー)、またはこれらの混合物が挙げられる。尚かかるスチレン系ポリマーは、アニオンリビング重合、ラジカルリビング重合等の方法により得られる、分子量分布の狭い重合体および共重合体、ブロック共重合体、および立体規則性の高い重合体、共重合体を使用することも可能である。これらは1種でまたは2種以上を混合して使用することも可能である。これらの中でもポリスチレンおよびASコポリマーが好ましい。ポリスチレンは特にポリフェニレンエーテルとの相溶性に優れ、ASコポリマーは芳香族ポリカーボネートとの相溶性に優れる。
【0085】
スチレン系ポリマーの分子量は、GPC測定(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定)により算出された重量平均分子量(Mw)で表わして10,000〜500,000が好ましく、50,000〜250,000がより好ましく、70,000〜200,000が特に好ましい。なお、ここで示す重量平均分子量は、標準ポリスチレン樹脂による較正直線を使用したGPC測定によりポリスチレン換算の値として算出されたものである。
【0086】
また上記スチレン系ポリマーが共重合体である場合、スチレン系単量体の割合は、全単量体100モル%中、20モル%以上であることが好ましく、30モル%以上がより好ましく、40モル%以上が更に好ましい。また上限としては90モル%以下、好ましくは85モル%以下であるとコポリマーとしての利点が得られやすい。例えばASポリマーにおいては、スチレンとアクリロニトリルとのモル比(St/AN)は、St/AN=30/70〜85/15の範囲が好ましく、St/AN=45/55〜80/20の範囲がより好ましく、St/AN=50/50〜75/25の範囲が更に好ましい。
【0087】
上記の中でもa1成分とa2成分との好ましい組み合わせとしては次のものが挙げられる。第1にa1成分としてポリアミドおよびa2成分としてポリフェニレンエーテルの組み合わせが挙げられ、かかる組み合わせはa2成分として更にポリスチレンを含んでよい。第2にa1成分として芳香族ポリエステルおよびa2成分として芳香族ポリカーボネートの組み合わせが挙げられ、かかる組み合わせはa2成分として更にASコポリマーを含んでよい。殊に吸水による寸法変化が少ない点でa1成分として芳香族ポリエステルおよびa2成分として芳香族ポリカーボネートの組み合わせが好適である。
【0088】
次に本発明のB成分である強化フィラーについて説明する。本発明の強化フィラーとしては各種の無機充填材および耐熱有機充填材を使用することができる。強化フィラーとしては板状および/または繊維状の無機充填材がより好ましい。これはかかる強化フィラーは特に寸法変化の低減効果が高いためである。
【0089】
板状の無機充填材としては、具体的には、タルク、マイカ、ガラスフレーク、金属フレーク、グラファイトフレーク、スメクタイト、カオリンなどを挙げることができる。尚、例えばガラスバルーンなどの中空充填材は、樹脂と溶融混練することにより破砕して板状の無機充填材と同様に剛性向上の効果が得られる場合がある。本発明の板状充填材にはかかる効果を発現するものを含む。また繊維状の無機充填材としては、具体的には、ガラス繊維、炭素繊維、耐熱有機繊維、金属繊維、セラミック繊維、スラグ繊維、ロックウール、ワラストナイト、ゾノトライト、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、ボロンウイスカー、塩基性硫酸マグネシウムウイスカーなどを挙げることができる。これらの板状の無機充填材および繊維状の無機充填材は、異種材料を表面被覆したものが挙げられる。異種材料としては金属、合金、金属酸化物などが代表的である。金属や合金などの被覆は高い導電性を付与でき、また意匠性を向上させる場合もある。金属酸化物の被覆は光導電性などの機能が付与できる場合があり、また意匠性の向上も可能である。
【0090】
上記板状の無機充填材の平均粒子径は0.05〜50μmが好ましく、0.05〜10μmがより好ましく、0.05〜5μmが更に好ましく、0.05〜2μmが特に好ましい。尚、かかる平均粒子径は、液相沈降法の1つであるX線透過法で測定されたD50(粒子径分布のメジアン径)をいう。かかる測定を行う装置の具体例としてはマイクロメリティックス社製Sedigraph5100などを挙げることができる。
【0091】
上記の板状の無機充填材としてはタルクが好適である。更にかさ密度を0.5(g/cm3)以上としたタルクを原料として使用することが特に好適である。かさ密度が低い場合、溶融混練時に熱安定性が低下する等の問題が生ずる場合がある。タルクを造粒してかさ密度を高くする方法としては、バインダーを使用する方法と、実質的に使用しない方法がある。バインダーを使用する方法は、通常、バインダーとなる樹脂などが溶解または分散した液体とタルクをスーパーミキサーなどの混合機で均一に混合し、その後乾燥する。その他液体とタルクとの均一混合物を造粒機を通して造粒し、その後乾燥する。尚、いずれの場合も乾燥を省略する場合がある。バインダーを使用しない方法は、通常脱気圧縮の方法である。かかる方法は、脱気しながらブリケッティングマシーンなどでローラー圧縮する方法を代表例として挙げることができる。一方で特に水などの粉砕助剤を使用して粉砕されたタルクの場合には、転動造粒や凝集造粒の方法が好ましい。更にその後かかるタルクを乾燥処理をして十分に水などの成分をそこから取り除くことが好ましい。かかるタルクの好ましいものとしては、水と粉砕されたタルクの混合物からなるスラリーを、転動造粒などの方法で造粒し、その後乾燥した造粒品を挙げることができる。
【0092】
更に耐衝撃性の点からタルクの平均粒径として特に0.1〜1.5μmの範囲が好適である。これは結晶性ポリマーの結晶がより微結晶化するなどの要因が考えられる。かかるより好適なタルクの具体例としては、イタリア国IMI−FABI社で製造されているHiTalc HTP ultra10C、およびHiTalc HTP ultra5C、並びに日本タルク(株)製SG2000、およびSG1000などを挙げることができる。
【0093】
繊維状の無機充填材の繊維径は0.1〜10μmが好ましく、0.1〜5μmがより好ましく、0.1〜3μmが更に好ましい。またそのアスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)は3以上が好ましい。アスペクト比の上限としては30以下が挙げられる。すなわち繊維状の無機充填材の好ましい態様として繊維径0.1〜10μm、およびアスペクト比3〜30の繊維状の無機充填材が挙げられる。ここで繊維径は電子顕微鏡で無機充填材を観察し、個々の繊維径を求め、その測定値から数平均繊維径を算出する。電子顕微鏡を使用するのは、対象とするレベルの大きさを正確に測定することが光学顕微鏡では困難なためである。繊維径は、電子顕微鏡の観察で得られる画像に対して、繊維径を測定する対象のフィラーをランダムに抽出し、中央部の近いところで繊維径を測定し、得られた測定値より数平均繊維径を算出する。観察の倍率は約1000倍とし、測定本数は500本以上で行う。一方平均繊維長の測定は、フィラーを光学顕微鏡で観察し、個々の長さを求め、その測定値から数平均繊維長を算出する。光学顕微鏡の観察は、フィラー同士があまり重なり合わないように分散されたサンプルを準備することから始まる。観察は対物レンズ20倍の条件で行い、その観察像を画素数が約25万であるCCDカメラに画像データとして取り込む。得られた画像データを画像解析装置を使用して、画像データの2点間の最大距離を求めるプログラムを使用して、繊維長を算出する。かかる条件の下では1画素当りの大きさが1.25μmの長さに相当し、測定本数は500本以上で行う。
【0094】
上記の繊維状の無機充填材としては、ワラストナイト、各種ウイスカー、炭素繊維などが好適であり、特にワラストナイトが好適である。
【0095】
本発明の射出圧縮成形品を形成する樹脂組成物は、結晶性熱可塑性ポリマー(a1成分)5〜90重量部、および非晶性熱可塑性ポリマー(a2成分)10〜95重量部の合計100重量部からなる(熱可塑性ポリマー成分(A成分))。
【0096】
上記熱可塑性ポリマー成分(A成分)におけるa1成分の割合の下限としては、A成分100重量部当り10重量部以上が好ましく、15重量部以上がより好ましく、20重量部以上が更に好ましい。一方a1成分の割合の上限としては、A成分100重量部当り80重量部以下が好ましく、70重量部以下がより好ましい。a2成分の割合の下限としてはA成分100重量部当り20重量部以上が好ましく、30重量部以上がより好ましい。一方a2成分の割合の上限としては、A成分100重量部当り90重量部以下が好ましく、85重量部以下がより好ましく、80重量部以下が更に好ましい。
【0097】
B成分の割合の下限としては、A成分100重量部当り、1重量部以上が好ましく、5重量部以上がより好ましく、10重量部以上が更に好ましく、15重量部以上が特に好ましい。B成分の割合の上限としては、A成分100重量部当り、70重量部以下が好ましく、60重量部以下がより好ましく、50重量部以下が更に好ましい。
【0098】
尚、本発明の熱可塑性ポリマー成分には、結晶性熱可塑性ポリマーおよび非晶性熱可塑性ポリマーが結合してなる各種のブロックコポリマーやグラフトコポリマーを含むことができる。更に結晶性熱可塑性ポリマー、非晶性熱可塑性ポリマーおよびこれらの結合してなるポリマーのいずれかと、後述するゴム質ポリマーとが結合してなる各種のブロックポリマーなどを含むことができる。このような異種ポリマーが結合してなるポリマー成分は、相溶化剤として樹脂組成物を製造する際に原材料の一部として混合される場合の他、樹脂組成物を製造する際にポリマー間において生ずる化学反応により生成する場合もある。かかる異種ポリマーが結合したポリマー成分が存在する場合、本発明においては結晶性熱可塑性ポリマーの部分をa1成分として、非晶性熱可塑性ポリマーの部分をa2成分として、また後述するゴム質ポリマーの部分はC成分として組成割合に反映させる。これはかかる異種ポリマーが結合してなるポリマー成分における各ブロックは、少なからずそれぞれのポリマーの性質を有するためである。したがって、本発明のA成分は、かかる異種ポリマーが結合してなるポリマーからなる相溶化剤を含むものである。
【0099】
本発明の射出圧縮成形品を構成する樹脂組成物は、上記A成分およびB成分はに加えて、更にゴム質ポリマー(C成分)を含むことができる。かかるゴム質ポリマーの存在は耐衝撃性の向上に大きく寄与するため、ゴム質ポリマーを含むことがより好適である。
【0100】
かかるゴム質ポリマーとは、ガラス転移温度が10℃以下、好ましくは−10℃以下、より好ましくは−30℃以下であるゴム成分と、該ゴム成分と共重合可能な単量体成分とを共重合した重合体をいう。ゴム成分としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ジエン系共重合体(例えば、スチレン・ブタジエンのランダム共重合体およびブロック共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、並びにアクリル・ブタジエンゴム(アクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルおよびブタジエンの共重合体)など)、エチレンとα−オレフィンとの共重合体(例えば、エチレン・プロピレンランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレン・ブテンのランダム共重合体およびブロック共重合体など)、エチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体(例えばエチレン・メタクリレート共重合体、およびエチレン・ブチルアクリレート共重合体など)、エチレンと脂肪族ビニルとの共重合体(例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体など)、エチレンとプロピレンと非共役ジエンターポリマー(例えば、エチレン・プロピレン・ヘキサジエン共重合体など)、アクリルゴム(例えば、ポリブチルアクリレート、ポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)、およびブチルアクリレートと2−エチルヘキシルアクリレートとの共重合体など)、並びにシリコーン系ゴム(例えば、ポリオルガノシロキサンゴム、ポリオルガノシロキサンゴム成分とポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分とからなるIPN型ゴム;すなわち2つのゴム成分が分離できないように相互に絡み合った構造を有しているゴム、およびポリオルガノシロキサンゴム成分とポリイソブチレンゴム成分からなるIPN型ゴムなど)が挙げられる。
【0101】
かかるゴム成分に共重合される単量体成分としては、スチレン系単量体、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物などが好適に挙げられる。その他の単量体成分としては、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基含有メタクリル酸エステル、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、イタコン酸などのα,β−不飽和カルボン酸およびその無水物等を挙げることができる。
【0102】
より具体的には、SB(スチレン−ブタジエン)重合体、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)重合体、MBS(メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン)重合体、MABS(メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)重合体、MB(メチルメタクリレート−ブタジエン)重合体、ASA(アクリロニトリル−スチレン−アクリルゴム)重合体、AES(アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン)重合体、MA(メチルメタクリレート−アクリルゴム)重合体、MAS(メチルメタクリレート−アクリルゴム−スチレン)重合体、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴム共重合体、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴム−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−(アクリル・シリコーンIPNゴム)重合体などを挙げることができる。
【0103】
その他ゴム質ポリマーとしては、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなど各種の熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0104】
上記ゴム質ポリマー中、ゴム成分の割合は5〜95重量%が好ましく、より好ましくは10〜90重量%、更に好ましくは50〜85重量%である。同様に熱可塑性エラストマーの場合ソフトセグメントの割合は5〜95重量%が好ましく、より好ましくは10〜90重量%、更に好ましくは50〜85重量%である。ゴム質ポリマー(C成分)の割合は、A成分100重量部当り、0.5〜50重量部が好ましく、より好ましくは1〜30重量部、更に好ましくは2〜20重量部である。またゴム質ポリマー中に含まれるゴム成分の割合は、A成分100重量部当り、0.3〜40重量部が好ましく、0.5〜24重量部がより好ましく、1〜15重量部が更に好ましい。
【0105】
更に本発明の射出圧縮成形品を構成する樹脂組成物には、溶融弾性効果改質剤を含むことができる。かかる改質剤の効果は溶融弾性を向上し、射出圧縮成形時の外観改良を可能とする。その他ガスアシスト射出成形時の溶融弾性改良による偏肉の防止、およびバラス効果による射出成形時のジェッティング防止などが挙げられる。
【0106】
かかる溶融弾性の改質効果は、基本的に高分子量のポリマーにより得られ、エチレン不飽和化合物のポリマーまたはコポリマーの場合には、その重量平均分子量が100万〜2000万、より好ましくは200万〜1000万のものが好適である。エチレン不飽和化合物のポリマーまたはコポリマーとしては、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリ(アクリロニトリル−スチレン)コポリマー、およびポリテトラフルオロエチレンなどを代表的に挙げることができる。中でもポリテトラフルオロエチレンが好ましい。これは緩和時間が長いほど効果を得る上で有利であり、そのためには軟化温度や融点が本発明の熱可塑性樹脂組成物の成形加工温度よりも高いものがより好ましいためである。
【0107】
かかるポリテトラフルオロエチレン(以下単にPTFEと称することがある)は、通常フィブリル形成能を有するPTFEとして溶融滴下防止剤などに広く利用されている。かかるフィブリル形成能を有するPTFEの市販品としては例えば三井・デュポンフロロケミカル(株)のテフロン6J、ダイキン化学工業(株)のポリフロンMPA FA500、F−201Lなどを挙げることができる。PTFEの水性分散液の市販品としては、旭アイシーアイフロロポリマーズ(株)製のフルオンAD−1、AD−936、ダイキン工業(株)製のフルオンD−1、D−2、三井・デュポンフロロケミカル(株)製のテフロン30Jなどを代表として挙げることができる。
【0108】
更に、PTFEとしては樹脂との混合形態のものも使用可能である。混合形態のPTFEとしては、(1)PTFEの水性分散液と有機重合体の水性分散液または溶液とを混合し共沈殿を行い共凝集混合物を得る方法(特開昭60−258263号公報、特開昭63−154744号公報などに記載された方法)、(2)PTFEの水性分散液と乾燥した有機重合体粒子とを混合する方法(特開平4−272957号公報に記載された方法)、(3)PTFEの水性分散液と有機重合体粒子溶液を均一に混合し、かかる混合物からそれぞれの媒体を同時に除去する方法(特開平06−220210号公報、特開平08−188653号公報などに記載された方法)、(4)PTFEの水性分散液中で有機重合体を形成する単量体を重合する方法(特開平9−95583号公報に記載された方法)、および(5)PTFEの水性分散液と有機重合体分散液を均一に混合後、更に該混合分散液中でビニル系単量体を重合し、その後混合物を得る方法(特開平11−29679号などに記載された方法)により得られたものが使用できる。これらの混合形態のPTFEの市販品としては、三菱レイヨン(株)の「メタブレン A3000」(商品名)、およびGEスペシャリティーケミカルズ社製 「BLENDEX B449」(商品名)などを挙げることができる。
【0109】
かかる溶融弾性効果改質剤の組成割合は、樹脂組成物100重量%中0.01〜20重量%が好ましく、0.05〜10重量%がより好ましく、0.1〜5重量%が更に好ましい。
【0110】
更に本発明においては上記強化フィラー(B成分)の折れを抑制するための折れ抑制剤を含むことができる。かかる折れ抑制剤はとしては、(i)強化フィラーとの間に反応性を有する官能基を含む滑剤、および(ii)強化充填剤に予め表面被覆された滑剤から選択される成分が使用できる。中でも好適な折れ抑制剤としては、カルボキシル基および/またはカルボン酸無水物基を含有するオレフィンワックスが好ましく、α−オレフィンと無水マレイン酸との共重合体が更に好ましい。かかる折れ抑制剤は樹脂組成物100重量%中0.01〜5重量%が好ましく、0.05〜3重量%がより好ましく、0.05〜1重量%が更に好ましい。
【0111】
本発明の射出圧縮成形品を構成する樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、更に、難燃剤、難燃助剤(例えば、アンチモン酸ナトリウム、および三酸化アンチモン等)、チャー形成化合物(例えば、ノボラック型フェノール樹脂、ピッチ類とホルムアルデヒドとの縮合物など)、核剤(例えば、ステアリン酸ナトリウム、およびエチレン−アクリル酸ナトリウム等)、熱安定剤、酸化防止剤(例えば、ヒンダ−ドフェノ−ル系酸化防止剤、およびイオウ系酸化防止剤等)、紫外線吸収剤、光安定剤、離型剤、帯電防止剤、発泡剤、流動改質剤、抗菌剤、光触媒系防汚剤(微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛など)、滑剤、着色剤、蛍光増白剤、蓄光顔料、蛍光染料、赤外線吸収剤、フォトクロミック剤などを配合することができる。
【0112】
熱安定剤としては亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル等が挙げられ、具体的にはトリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、4,4’−ビフェニレンジホスホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。これらの熱安定剤は、単独でもしくは2種以上混合して用いてもよい。かかる熱安定剤の組成割合は樹脂組成物100重量%中、0.0001〜1重量%が好ましく、0.0005〜0.5重量%がより好ましく、0.001〜0.1重量%が更に好ましい。
【0113】
フェノール系酸化防止剤の具体例としては、例えばn−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)プロピオネート、2−tert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1,−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、およびテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどを好ましく挙げることができ、n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)プロピオネートをより好ましく挙げることができる。
【0114】
本発明のイオウ系酸化防止剤の具体例としては、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ラウリルステアリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ペンタエリスリトールテトラ(β−ラウリルチオプロピオネート)エステル、ビス[2−メチル−4−(3−ラウリルチオプロピオニルオキシ)−5−tert−ブチルフェニル]スルフィド、オクタデシルジスルフィド、メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプト−6−メチルベンズイミダゾール、1,1’−チオビス(2−ナフトール)などを挙げることができる。より好ましくは、ペンタエリスリトールテトラ(β−ラウリルチオプロピオネート)エステルを挙げることができる。
【0115】
紫外線吸収剤としては、例えば2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタンなどに代表されるベンゾフェノン系紫外線吸収剤を挙げることができる。
【0116】
また紫外線吸収剤としては例えば2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α’−ジメチルベンジル)フェニルベンゾトリアゾール、2,2’メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、メチル−3−[3−tert−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート−ポリエチレングリコールとの縮合物に代表されるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を挙げることができる。
【0117】
更に紫外線吸収剤としては例えば、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノール、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノールなどのヒドロキシフェニルトリアジン系化合物を挙げることができる。
【0118】
またビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ポリ{[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)イミノ]}、ポリメチルプロピル3−オキシ−[4−(2,2,6,6−テトラメチル)ピペリジニル]シロキサンなどに代表されるヒンダードアミン系の光安定剤も含むことができ、かかる光安定剤は上記紫外線吸収剤や各種酸化防止剤との併用において、耐候性などの点においてより良好な性能を発揮する。
【0119】
フェノール系酸化防止剤、またはイオウ系酸化防止剤の組成割合は、樹脂組成物100重量%中、0.001〜2重量%が好ましく、0.005〜1重量%がより好ましく、0.01〜0.5重量%が更に好ましい。
【0120】
また紫外線吸収剤、光安定剤の組成割合は、それぞれ樹脂組成物100重量%中、0.001〜2重量%が好ましく、より好ましくは0.005〜1重量%、更に好ましくは0.01〜1重量%、特に好ましくは0.01〜0.5重量%である。
【0121】
また離型剤としては、例えば、飽和脂肪酸エステル、不飽和脂肪酸エステル、ポリオレフィン系ワックス(ポリエチレンワックス、1−アルケン重合体など。酸変性などの官能基含有化合物で変性されているものも使用できる)、フッ素化合物(ポリフルオロアルキルエーテルに代表されるフッ素オイルなど)、パラフィンワックス、蜜蝋などを挙げることができる。好ましい離型剤としては飽和脂肪酸エステル、ポリオレフィン系ワックスが挙げられ、例えばグリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレートなどグリセリン脂肪酸エステル類、デカグリセリンデカステアレートおよびデカグリセリンテトラステアレート等のポリグリセリン脂肪酸エステル類、ステアリルステアレートなどの低級脂肪酸エステル類、セバシン酸ベヘネートなどの高級脂肪酸エステル類、ペンタエリスリトールテトラステアレートなどのエリスリトールエステル類が使用される。離型剤は本発明の樹脂組成物100重量%中、0.001〜2重量%が好ましく、より好ましくは0.005〜1重量%、更に好ましくは0.01〜1重量%、特に好ましくは0.01〜0.5重量%である。
【0122】
また帯電防止剤としては、例えばポリエーテルエステルアミド、グリセリンモノステアレート、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩、アルキルスルホン酸ナトリウム塩、無水マレイン酸モノグリセライド、無水マレイン酸ジグリセライドなどが挙げられる。
【0123】
更に難燃剤としては、赤リンまたは赤リン表面を公知の熱硬化樹脂および/または無機材料を用いてマイクロカプセル化されている安定化赤リンに代表される赤リン系難燃剤;テトラブロムビスフェノールA、テトラブロムビスフェノールAのオリゴマー、ブロム化ビスフェノール系エポキシ樹脂、ブロム化ビスフェノール系フェノキシ樹脂、ブロム化ビスフェノール系ポリカーボネート、ブロム化ポリスチレン、ブロム化架橋ポリスチレン、ブロム化ポリフェニレンエーテル、ポリジブロムフェニレンエーテル、デカブロモジフェニルオキサイドビスフェノール縮合物および含ハロゲンリン酸エステルに代表されるハロゲン系難燃剤;モノホスフェート化合物としてトリフェニルホスフェート、縮合リン酸エステルとしてレゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート)およびビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、その他ペンタエリスリトールジフェニルジホスフェートなどに代表される有機リン酸エステル系難燃剤;ポリリン酸アンモニウム塩、リン酸アルミニウム、リン酸ジルコニウムなどの無機系リン酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの無機金属化合物の水和物、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、酸化マグネシウム、酸化モリブデン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化アンチモンなどに代表される無機系難燃剤;パーフルオロブタンスルホン酸カリウム、パーフルオロブタンスルホン酸カルシウム、パーフルオロブタンスルホン酸セシウム、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸カリウムに代表される有機アルカリ(土類)金属塩系難燃剤;フェニル基、ビニル基およびメチル基を含有する(ポリ)オルガノシロキサン化合物や(ポリ)オルガノシロキサンとポリカーボネート樹脂の共重合体に代表されるシリコーン系難燃剤;フェノキシホスファゼンオリゴマーや環状フェノキシホスファゼンオリゴマーに代表されるホスファゼン系難燃剤などを挙げることができる。
【0124】
本発明の射出圧縮成形品を構成する樹脂組成物を製造するには、任意の方法が採用される。例えばa1成分およびa2成分、並びに任意にB成分、C成分および他の添加剤を、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機などの予備混合手段を用いて充分に混合した後、必要に応じて押出造粒機やブリケッティングマシーンなどにより造粒を行い、その後ベント式二軸押出機に代表される溶融混練機で溶融混練、およびペレタイザー等の機器によりペレット化する方法が挙げられる。
【0125】
他に、各成分をそれぞれ独立にベント式二軸押出機に代表される溶融混練機に供給する方法や、各成分の一部を予備混合した後、残りの成分と独立に溶融混練機に供給する方法なども挙げられる。予備混合する方法としては例えば、A成分としてパウダーの形態を有するものを含む場合、かかるパウダーの一部と配合する添加剤とをブレンドして、パウダーで希釈した添加剤のマスターバッチとする方法が挙げられる。更に一成分を独立に溶融押出機の途中から供給する方法なども挙げられる。尚、配合する成分に液状のものがある場合には、溶融押出機への供給にいわゆる液注装置、または液添装置を使用することができる。
【0126】
かくして得られた樹脂組成物のペレットを射出圧縮成形することで、本発明の射出圧縮成形品を得ることができる。尚、かかるペレットは射出圧縮成形品を構成する全ての成分を含んだ単一のペレットであることが好ましいが、成分の異なるペレットを射出圧縮成形時に混合し、本発明の射出圧縮成形品を得ることも可能である。かかる射出成形においては、通常のコールドランナー方式の成形法だけでなく、ホットランナー方式の成形法も可能であり、該方法の適用が好ましい。本発明は大型の成形品であるため、コールドランナー部の重量が大きくなり経済的ではない。一方本発明の射出圧縮成形品はかかる熱負荷の高いホットランナーにおいても良好な耐衝撃性を有する成形品が得られる点に価値がある。更に本発明では、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体の注入によるものを含む)、インサート成形、インモールド成形、局所高温金型成形(断熱金型成形を含む)、二色成形、サンドイッチ成形、超高速射出成形などと併用して成形品を得ることができる。
【0127】
本発明の射出圧縮成形品は、その最大投影面積が1000cm2以上であり、より好ましくは2000cm2以上である。一方上限としては50,000cm2以下が適切であり、25,000cm2以下がより好ましい。また射出圧縮成形品の厚みとしては0.5〜10mmの範囲が好ましく、1〜8mmがより好ましく、1.5〜7mmが更に好ましく、特に2〜6mmが好ましい。また流動長は30cm以上が好ましく、35cm以上がより好ましい。上限としては150cm以下が適切であり、100cm以下がより好ましい。更に本発明は流動長が大きくなりやすい成形品側面部分にゲートを有する射出成形品において極めて好適な効果を有する。したがって本発明の射出成形品の好適な態様として、成形品側面部分にゲートを有する射出圧縮成形品が挙げられる。
【0128】
本発明は、寸法安定性に優れる一方で十分な耐衝撃性を有する大型の樹脂射出成形品の提供を可能とする。殊に耐衝撃性においてより具体的には次のような特性を有する大型の樹脂射出成形品を提供するものである。
【0129】
すなわち、射出圧縮成形を行うことなく射出成形して得られた大型射出成形品から、その流動端部を含むように長さ50mm×幅50mmの試験片を切り出し、かかる試験片における高速面衝撃試験の破壊エネルギー(J)を(E2)とする。一方、射出圧縮成形をして得られた同じ成形品から、上記と同じ箇所を試験片として切り出し、かかる試験片における高速面衝撃試験の破壊エネルギー(J)を(E1)とする。このときかかるE1はE2の少なくとも1.1倍以上であることを満足し、より好ましくは1.2倍以上であり、更に好ましくは1.3倍以上である。尚、上限は通常の射出成形では完全に充填された成形品が取れない場合(すなわち破壊エネルギー0)となる。
【0130】
かかる高速面衝撃試験は、上記試験片を直径25.4mmの円形の穴のあいた受け台に取り付け、直径が12.7mmである先端が半球状の撃芯を用いて打ち抜き速度5m/秒、測定温度23℃で行われる。
【0131】
本発明の射出圧縮成形品は、成形品にコーティング、塗装、メッキ、印刷、シール等の表面処理がされていてもよい。本発明の有効な用途である自動車外装材料、殊に自動車外板においては、通常樹脂成形品に対して塗装がなされる。塗装焼付け温度はしばしば120℃以上となるが、a1成分やa2成分の好ましい態様においては、本発明の射出圧縮成形品はかかる塗装に十分耐え得る。また、近年環境問題から、新規塗料(水性塗料、パウダー塗料等)も検討されているが、本発明の射出圧縮成形品には、これら新規塗料も好適に使用できる。更に塗装レスの目的でフィルムインサート成形が盛んに検討されているが、本発明の射出圧縮成形品は、通常の射出成形品と比較してもフィルムインサート成形の適性に優れ、特に深絞り形状のフィルムインサート成形に適するものである。
【0132】
かくして得られた本発明の射出圧縮成形品は、既に述べているとおり自動車の外装材料、殊に外板に好適である。特にフェンダーおよびドアパネルなどのいわゆる垂直外板に好適である。
【0133】
【実施例】
以下に実施例をあげて本発明を更に詳細に説明する。成形条件および主たる評価を下記に示す。
(1)射出圧縮成形条件
射出圧縮成形機は、型締め力12700kNの射出成形機((株)日本製鋼所製J1300E−C5)を型圧縮タイプの射出圧縮が可能となるよう油圧回路および制御システムを変更した仕様を用いた。射出圧縮成形品は、自動車のリアドアを約1/2スケールとした投影面積約2100cm2、および厚み3mmの成形品であった。該成形品は成形品側面部分にゲートを有するものであった。かかる成形品の形状を図1に示す。射出圧縮成形における圧縮のストロークは2mmとした。また予め最終型締め位置から2mm後退させたキャビティ内に溶融樹脂を充填した。したがって目的とする成形品容量に対して1.7倍の容量を有する金型キャビティ内に成形品容量分の樹脂を充填した。射出速度は20mm/secの単一速度で充填を行った。また圧縮工程は充填終了の0.5秒前から開始し(すなわちオーバーラップ時間0.5秒)、約2mm/secの速度で行った。また圧縮の圧力は最大で30MPaとした。成形はバルブゲート型の直径3mmφのホットランナーで行い、充填終了直後にバルブを閉め保圧を掛けない条件とした。冷却時間は60秒とした。金型の温度制御は水循環型の金型温調機を使用し直列回路として行った。成形サイクルはサンプルの取り出しの時間の関係上常に一定ではなかったが、約110秒で行った。また成形中ホッパードライヤー内の温度は100℃とした。成形は20ショットを連続して行い6〜15ショット目のサンプルから下記の高速面衝撃試験および線膨張係数の測定を行い、塗装のテストは16〜20ショット目のものを使用した。
【0134】
(2)射出圧縮成形品の評価
(i)高速面衝撃試験
上記射出圧縮成形品から図1に示すように流動端を含むほぼ中央部分から長さ50mm×幅50mmの試験片を4点切り出した。かかる部分はわずかに湾曲した板状体であった。該板状体を23℃×50%RHの環境下で1週間放置して試験片の状態調節を行った後、高速面衝撃試験を行った。試験機は高速面衝撃試験機 ハイドロショットHTM−1(島津製作所(株)製)を使用し、試験には撃芯の先端が半球状で直径12.7mmの撃芯および受台穴径25.4mmの受台を使用した。撃芯の衝突速度として5m/秒および15m/秒の2水準を取り、また測定温度は23℃および−30℃の2水準とした(尚、上記4点のサンプルはそれぞれの水準に対してランダムに抽出した)。それぞれの水準において10点の試験片を測定し、その平均値を求めた。また−30℃における測定は次のように行った。ステンレス容器を準備し、そこにポリエチレンビーズを充填した。更に試験片をかかるビーズ中に埋めた。これは熱伝導の偏りによる影響を低減するためである。このステンレス容器を−30℃の冷凍庫に保管し、試験片を−30℃とした。試験時には冷凍庫から試験片をすばやく取出し、衝撃試験機に装着し、試験を実施した。試験片の温度がほぼ−30℃の状態で試験されていることはサーモグラフィーにより確認した。
【0135】
(ii)線膨張係数の測定
上記射出圧縮成形品のうち6〜8ショット目の成形品から図1に示すような領域より線膨張係数測定用のサンプル(長さ4mm×幅4mm)をベルナスカッターを用いて切り出した。かかるサンプルを120℃で5時間アニール処理した後、JIS K7197に準拠した方法でTMA装置(熱機械分析装置:TA Instrumente社製TA2200)を用いて成形品の横方向(流れ方向と直角方向)の線膨張係数を求めた。測定は−40℃〜100℃まで行い、線膨張係数は−30℃〜90℃における傾きからその値を算出した。昇温速度は2℃/minとした。測定は合計で6点行いその平均値を算出した。
【0136】
(実施例1)
ポリアミド66樹脂(旭化成工業(株)製レオナ1200S)45重量部、ポリフェニレンエーテル樹脂(旭化成工業(株)製ザイロンX9102)55重量部の合計100重量部に対し、カーボンブラック(アセチレンブラック、電気化学工業(株)製デンカブラック)2重量部、および約30重量%のスチレン単位を含んでなる酸変性水添スチレン−ブタジエン−スチレントリブロックコポリマー(シェル社製KRATON FG1901X)22重量部をタンブラーで予備混合した後、同方向ベント付き2軸押出機((株)日本製鋼所製TEX−α、スクリュー径30mm)にてスクリュー回転数150rpm、シリンダ温度280℃、ベント吸引度3kPaで押出し、ペレットを得た。該ペレットを真空乾燥機にて100℃にて12時間乾燥し、図1に示す自動車リアドアパネルの1/2スケール成形品を成形した。成形条件はシリンダー温度280℃、金型温度80℃、およびホットランナー部の温度は300℃とした。得られた成形品の高速面衝撃試験破壊エネルギー(E1▲1▼)を表1に示す。また線膨張係数は8×10-5-1であった。
【0137】
(比較例1)
上記成形品を成形する際、射出圧縮成形を行わず最終型締めされたキャビティ内に樹脂を充填する通常の射出成形法により、実施例1とほぼ同様の条件で成形を行った。充填後もホットランナーバルブは開放とし、保圧を100MPaで12秒間かけた。得られた成形品の高速面衝撃試験破壊エネルギー(E2▲1▼)を表1に示す。また線膨張係数は10×10-5-1であった。
【0138】
(実施例2)
実施例1で得た大型射出圧縮成形品に、自動車外板用に米国で常用されているPPG塗料で粉体塗装した。塗料は樹脂に良好に付着した。また塗装外観も問題なく自動車用外板として十分使用できる水準にあった。
【0139】
(比較例2)
比較例1で得た大型射出圧縮成形品に、実施例2と同様にPPG塗料で粉体塗装した。成形品ゲート部付近に塗膜剥離が確認された。
【0140】
(実施例3)
芳香族ポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)製パンライトL−1250WP)30重量部、PBT樹脂(長春人造樹脂廠股ふん有限公司製1100211S)30重量部、相溶化剤((株)クラレ製TKS−7300)10重量部、タルク(IMI Fabi S.p.A製 Hitalc Ultra5c)25重量部、ゴム質重合体((株)クラレ製SEPTON2005)5重量部、およびホスフエート系熱安定剤(旭電化工業(株)製アデカスタブPEP−8)0.2重量部をタンブラーで均一に混合した後、ベント吸引度を30kPaにした以外は、実施例1とほぼ同様の方法および条件で押出を行いペレットを得た。
【0141】
尚、相溶化剤は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)成分70重量%および水添スチレン−(ブタジエン−イソプレン共重合体)−スチレントリブロックコポリマー(水添SBIS)成分30重量%からなるものであり、PBTブロックと水添SBISブロックが結合してなるブロックコポリマー成分35重量%、PBT55重量%、および水添SBIS(尚、末端に水酸基を有する)10重量%を含んでなるものである。したがって上記の組成は本発明にしたがって表記すると、a1成分(ポリブチレンテレフタレート)55重量部およびa2成分(芳香族ポリカーボネート)45重量部の合計100重量部に対し、B成分(タルク)37重量部、C成分(水添SBIS)12重量部、および安定剤からなる。
【0142】
得られたペレットは熱風乾燥機で120℃にて5時間乾燥し、図1に示す自動車リアドアパネルの1/2スケール成形品を成形した。成形条件はシリンダ温度270℃、金型温度120℃、およびホットランナ部の温度は290℃とした。得られた成形品の高速面衝撃試験破壊エネルギー(E1▲3▼)を表2に示す。また線膨張係数は4×10-5-1であった。
【0143】
(比較例3)
上記成形品を成形する際、射出圧縮成形を行わず最終型締めされたキャビティ内に樹脂を充填する通常の射出成形法により、実施例3とほぼ同様の条件で成形を行った。充填後もホットランナーバルブは開放とし、保圧を100MPaで12秒間かけた。得られた成形品の高速面衝撃試験破壊エネルギー(E2▲3▼)を表2に示す。また線膨張係数は5×10-5-1であった。
【0144】
(実施例4)
実施例3で得た大型射出圧縮成形品に、自動車外板用に欧州で常用されている水性塗料で塗装した。塗料は樹脂に良好に付着した。また塗装外観も問題なく自動車用外板として十分使用できる水準にあった。
【0145】
(比較例4)
比較例3で得た大型射出圧縮成形品に、自動車外板用に欧州で常用されている水性塗料で塗装した。成形品外観に塗装ムラが発生した。
【0146】
(実施例5)
上記実施例3において、タルクの割合を25重量部から20重量部に変更した以外は実施例3と同様にペレットを得た。かかる組成は本発明にしたがって表記すると、a1成分(ポリブチレンテレフタレート)55重量部およびa2成分(芳香族ポリカーボネート)45重量部の合計100重量部に対し、B成分(タルク)30重量部、C成分(水添SBIS)12重量部、および安定剤からなる。かかるペレットを実施例3と同じ条件で成形し大型射出圧縮成形品を得た。得られた成形品の高速面衝撃試験破壊エネルギー(E1▲5▼)を表3に示す。また線膨張係数は5×10-5-1であった。
【0147】
(比較例5)
上記成形品を成形する際、射出圧縮成形を行わず最終型締めされたキャビティ内に樹脂を充填する通常の射出成形法により、実施例5とほぼ同様の条件で成形を行った。充填後もホットランナーバルブは開放とし、保圧を100MPaで12秒間かけた。得られた成形品の高速面衝撃試験破壊エネルギー(E2▲5▼)を表3に示す。また線膨張係数は5×10-5-1であった。
【0148】
(実施例6)
上記実施例3において、強化フィラーをタルク25重量部からワラストナイト(ナイコミネラルズ社製NYGLOS4)15重量部に変更した以外は実施例3と同様にペレットを得た。かかる組成は本発明にしたがって表記すると、a1成分(ポリブチレンテレフタレート)55重量部およびa2成分(芳香族ポリカーボネート)45重量部の合計100重量部に対し、B成分(ワラストナイト)22重量部、C成分(水添SBIS)12重量部、および安定剤からなる。かかるペレットを実施例3と同じ条件で成形し大型射出圧縮成形品を得た。得られた成形品の高速面衝撃試験破壊エネルギー(E1▲6▼)を表4に示す。また線膨張係数は7×10-5-1であった。
【0149】
(比較例6)
上記成形品を成形する際、射出圧縮成形を行わず最終型締めされたキャビティ内に樹脂を充填する通常の射出成形法により、実施例5とほぼ同様の条件で成形を行った。充填後もホットランナーバルブは開放とし、保圧を100MPaで12秒間かけた。得られた成形品の高速面衝撃試験破壊エネルギー(E2▲6▼)を表4に示す。また線膨張係数は8×10-5-1であった。
【0150】
【表1】
Figure 0004606674
【0151】
【表2】
Figure 0004606674
【0152】
【表3】
Figure 0004606674
【0153】
【表4】
Figure 0004606674
【0154】
これらの実験から明らかなように、本発明で得られた大型の射出圧縮成形品は、線膨張係数を犠牲にすることなく衝撃強度が達成できることが分かる。逆にいえば更に従来と同等の衝撃強度を有しながら、より良好な線膨張係数を達成できる。またその他外観等の付加価値も容易に付随することができることが分かる。
【0155】
【発明の効果】
本発明の射出圧縮成形品は、衝撃強度に優れ、更に寸法安定性および外観を高いレベルで併せ持つものであり、建築物、建築資材、農業資材、海洋資材、車両、電気・電子機器、機械、その他の各種分野において幅広く有用であり、中でも自動車用をはじめとする車輌用の外装材料、殊に自動車外板に好適な成形品を提供するものであることから、その奏する工業的効果は極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例において成形した自動車リアドアパネルの1/2スケールの成形品を示す。[1−A]は正面図(成形時のプラテン面に投影した図。したがってかかる面積が最大投影面積となる。尚、ゲートは成形品の下側に位置する)を示し、[1−B]は底面図、[1−C]は側面図である。
【符号の説明】
1 射出圧縮成形品本体
2 成形品の稜線(鋭角ではないため明確ではない)
3 成形品のゲート(フィルムゲート)
4 ホットランナーノズル部(直径3mmφ)
5 成形品の稜線(鋭角である)
6 成形品の樹脂縦方向の大きさ(38cm)
7 成形品の樹脂横方向の大きさ(55cm)
8 線膨張係数測定用の試験片切り出し部分
9 高速面衝撃試験測定用の試験片切り出し部分(50mm×50mm片を4枚)
10 成形品の稜線(鋭角ではないため明確ではない)
11 成形品の高さ方向の大きさ(12cm)

Claims (6)

  1. ポリアミドおよび芳香族ポリエステルから選択される少なくとも1種の結晶性熱可塑性ポリマー(a1成分)5〜90重量部、並びに芳香族ポリカーボネート、およびポリフェニレンエーテルから選択される少なくとも1種の非晶性熱可塑性ポリマー(a2成分)10〜95重量部の合計100重量部からなる樹脂組成物から最大投影面積が1000cm以上の射出成形品を得るに当り、射出圧縮成形を採用して成形品の湾曲部における、撃芯の衝突速度が5m/秒である高速面衝撃試験により測定される23℃および−30℃における破壊エネルギーを1.2〜1.6倍に向上させることを特徴とする成形方法。
  2. 上記樹脂組成物は、a1成分とa2成分との合計100重量部当り、更に強化フィラー(B成分)0.5〜100重量部を含んでなる請求項1に記載の成形方法。
  3. 上記樹脂組成物は、更にA成分100重量部当りゴム質ポリマー(C成分)を0.5〜50重量部含んでなる請求項1または2のいずれか1項に記載の成形方法。
  4. 上記B成分はタルク、およびワラストナイトから選択される少なくとも1種である請求項2または3に記載の成形方法。
  5. 上記射出圧縮成形品は、その成形品側面部分にゲートを有してなる射出圧縮成形品である請求項1〜4のいずれか1項に記載の成形方法。
  6. 上記射出圧縮成形は、少なくともその供給完了時において目的とする成形品容量よりも1.1倍以上大なる容量の金型キャビティ内に溶融した熱可塑性樹脂材料を充填するものである請求項1〜5のいずれか1項に記載の成形方法。
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