以下、本発明の好適な実施の形態について、添付の図面を参照しつつ、詳細に説明する。
<1. 実施の形態>
<1.1 構成の説明>
図1は、本発明の実施の形態における基板処理装置1の正面図である。図2は、基板処理装置1における投光部45の周辺部の拡大図である。なお、図1および図2において、図示および説明の都合上、Z軸方向が鉛直方向を表し、XY平面が水平面を表すものとして定義するが、それらは位置関係を把握するために便宜上定義するものであって、以下に説明する各方向を限定するものではない。以下の図についても同様である。
基板処理装置1は、液晶表示装置の画面パネルを製造するための角形ガラス基板を被処理基板90としており、基板90の表面に形成された電極層などを選択的にエッチングするプロセスにおいて、基板90の表面にレジスト液を塗布する塗布装置として構成されている。したがって、この実施の形態では、スリットノズル41は基板90に対してレジスト液を吐出するようになっている。なお、基板処理装置1は、液晶表示装置用のガラス基板だけでなく、一般に、フラットパネルディスプレイ用の種々の基板に処理液(薬液)を塗布する装置として変形利用することもできる。また、基板90の形状は角形のものに限られるものではない。
基板処理装置1は、被処理基板90を載置して保持するための保持台として機能するとともに、付属する各機構の基台としても機能するステージ3を備える。ステージ3は直方体形状の一体の石製であり、その上面(保持面30)および側面は平坦面に加工されている。
ステージ3の上面は水平面とされており、基板90の保持面30となっている。保持面30には多数の真空吸着口(図示せず)が分布して形成されている。基板処理装置1において基板90を処理する間、この真空吸着口が基板90を吸着することにより、ステージ3が基板90を所定の水平位置に保持する。
ステージ3の上方には、このステージ3の両側部分から略水平に掛け渡された架橋構造4が設けられている。架橋構造4は、カーボンファイバ樹脂を骨材とするノズル支持部40と、その両端を支持する昇降機構43,44と、移動機構5とから主に構成される。ノズル支持部40には、スリットノズル41が取り付けられている。
水平Y軸方向に伸びるスリットノズル41には、スリットノズル41へ薬液(レジスト液)を供給する配管やレジスト用ポンプを含む吐出機構(図示せず)が接続されている。スリットノズル41は、レジスト用ポンプによりレジスト液が送られ、基板90の表面を走査することにより、基板90の表面の所定の領域(以下、「塗布領域」と称する。)にレジスト液を吐出する。
基板処理装置1では、塗布処理において、塗布領域とスリットノズル41とが最も近接するので、最低限、塗布領域について物体の検出を行う必要がある。なお、本実施の形態において、スリットノズル41は(−X)方向に移動しつつ、レジスト液を吐出する。すなわち、基板処理装置1の塗布方向は、(−X)方向である。
昇降機構43,44はスリットノズル41の両側に分かれて、ノズル支持部40によりスリットノズル41と連結されている。昇降機構43,44はスリットノズル41を並進的に昇降させるとともに、スリットノズル41のYZ平面内での姿勢を調整するためにも用いられる。
架橋構造4の両端部には、ステージ3の両側の縁側に沿って別れて配置された移動機構5が固設される。移動機構5は、主に一対のACコアレスリニアモータ(以下、単に、「リニアモータ」と略する。)50と、一対のリニアエンコーダ51とから構成される。
リニアモータ50は、それぞれ固定子および移動子(図示せず)を備え、固定子と移動子との電磁的相互作用によって架橋構造4(スリットノズル41)をX軸方向に移動させるための駆動力を生成するモータである。また、リニアモータ50による移動量および移動方向は、制御部7からの制御信号により制御可能となっている。
リニアエンコーダ51は、それぞれスケール部および検出子(図示せず)を備え、スケール部と検出子との相対的な位置関係を検出して、制御部7に伝達する。各検出子は架橋構造4の両端部にそれぞれ固設され、スケール部はステージ3の両側にそれぞれ固設されている。これにより、リニアエンコーダ51は架橋構造4のX軸方向の位置検出を行う機能を有している。
架橋構造4の両側に固設された移動機構5には、さらに投光部45および受光部46が取り付けられている。このような構造により、移動機構5は、スリットノズル41、投光部45および受光部46を一体的にX軸方向に移動させる。したがって、投光部45と受光部46との相対的な位置関係はほぼ一定に保持され、かつ、スリットノズル41の塗布方向と、投光部45および受光部46の移動方向とは略平行(本実施の形態では略同一方向)となる。すなわち、移動機構5が、主に本発明における移動手段およびノズル移動手段に相当する。
図3は、投光部45が受光部46に向けてレーザ光Lを照射する様子を示す概念図である。図3に示すように、受光部46は投光部45と(+Y)方向に対向する位置に配置されている。また、図3に示す太線矢印は、レーザ光Lの光軸方向を示している。本実施の形態では、レーザ光Lの光軸方向は、ほぼ(+Y)方向となっている。
投光部45は、半導体レーザを備えており、これによってレーザ光Lを照射する。レーザ光Lは、光軸に略垂直な面における断面Sの形状が、X軸方向を長手方向とする矩形である。このような矩形のレーザ光は、スポット形状のレーザ光に比べて、光軸距離に対する光束密度の低下率が低く、受光部46における径の広がりが抑制される。したがって、矩形のレーザ光Lを用いることにより、基板処理装置1は、物体のY軸方向の位置の違いに起因する検出精度の低下をある程度抑制することができる。
なお、本実施の形態では、断面Sのサイズが、1.0(mm)×5.0(mm)となるように構成されているが、もちろんこのサイズに限られるものではない。なお、断面Sのサイズは、受光領域49(図4)のサイズよりも大きいことが好ましい。
受光部46は、複数のCCD素子を備えており、これらCCD素子が二次元的に配列した構造を形成している。各CCD素子は、それぞれの位置において、入射した光を受光し、受光した光の光量に応じた電気信号(出力信号)を制御部7に向けて出力する。
図4は、複数のCCD素子によって形成される受光可能領域48および受光領域49を示す図である。
受光可能領域48は、受光部46が備える全てのCCD素子によって形成される領域である。すなわち、受光部46は、受光可能領域48に入射する光をCCD素子群によって受光できる。受光可能領域48のZ軸方向の幅は、レーザ光Lの断面SのZ軸方向の幅に比べて十分な広さを有している。
受光領域49は、オペレータからの入力に従って制御部7により、受光可能領域48内の任意の位置に設定される領域である。なお、本実施の形態において、受光領域49は、X軸方向の幅がZ軸方向の幅よりも広い矩形の領域として設定される。
受光領域49に配置されているCCD素子は、受光したレーザ光の光量(受光量)を制御部7に出力する。以下、時刻tにおいて、受光領域49に配置されているCCD素子から出力される受光量の合算値を、「受光量EV(t)」と称する。
従来の受光部は、受光可能領域48に相当する領域に入射したレーザ光をレンズ等で集光して、集光した光の光量をフォトダイオード等で検出していた。このような構成では、当該領域に入射した光の全体光量は検出できるが、当該領域内の各位置における光量を個別に検出することは不可能である。したがって、受光可能領域48内に受光領域49を設定することは不可能である。
しかし、本実施の形態における基板処理装置1では、受光部46がCCD素子群で構成されているため、制御部7が各CCD素子ごとに出力信号を識別することができる。したがって、制御部7は受光可能領域48内に受光領域49を設定することが可能となる。
また、従来の受光部を構成するフォトダイオード等は受光した光量に応じた出力信号を連続的に出力するが、CCD素子は所定の周期(以下、「周期T」と称する)ごとに受光量EV(nT)を出力する(nは0以上の整数)。本実施の形態では、周期Tは16.7(ms)とするがもちろんこれに限られるものではなく、周期Tは制御部7の演算速度、スリットノズル41の走査速度、あるいは検出しようとする干渉物の大きさ等に応じて設定される。
また、本実施の形態では、受光可能領域48のサイズは、Z軸方向が3.2(mm)、X軸方向が3.5(mm)である。また、受光領域49のサイズは、Z軸方向が1.0(mm)、X軸方向が3.5(mm)である。ただし、このサイズに限られるものではない。
図5は、投光部45、受光部46および遮蔽板47の配置関係と、動作確認領域E0、遮蔽領域E1および検査領域E2とを示す平面図である。図6は、ステージ3に保持された基板90および遮蔽板47の配置関係と、動作確認領域E0、遮蔽領域E1および検査領域E2とを示す側面図である。
遮蔽板47は、レーザ光Lをほぼ完全に遮断する板状の部材であって、ステージ3の保持面30に取り付けられている。遮蔽板47は、スリットノズル41と干渉しないように、Y軸方向に充分に外れた位置に配置されている。
なお、遮蔽板47は、基板90の(+X)方向端部の位置(基板90のサイズや保持位置等に応じて変化する)に応じて、X軸方向の端部位置が調整可能とされている。すなわち、図5に示すように、遮蔽板47の(−X)側の端部と、基板90の(+X)側の端部とは、そのX軸方向の位置がほぼ同じになるように調整されている。
後述する検査領域E2は基板90の上方の領域であるから、このような調整により、検査領域E2と遮蔽領域E1とは、境界において互いに隣接する領域となる。
受光部46が移動機構5によってX軸方向に移動することにより、受光領域49は、動作確認領域E0、遮蔽領域E1および検査領域E2を順次移動する。言い換えれば、受光領域49は、動作確認領域E0、遮蔽領域E1および検査領域E2のいずれかを通過したレーザ光Lを受光する。
動作確認領域E0とは、物体の検出を開始する前に、受光領域49が配置される領域である。詳細は後述するが、本実施の形態では、動作確認領域E0に向けてレーザ光Lを照射することにより、投光部45によるレーザ光Lの照射が開始される。
動作確認領域E0は、図5および図6に示すように、遮蔽板47より(+X)方向にずれた位置にあるため、動作確認領域E0に向けて照射されたレーザ光Lは遮蔽板47によって遮蔽されることはない。したがって、動作確認領域E0に向けて照射されたレーザ光Lは、受光部46の受光領域49に入射する。
遮蔽領域E1とは、受光領域49に入射するレーザ光Lが遮蔽板47によって遮蔽される領域である。言い換えれば、投光部45によって遮蔽領域E1に向けて照射されるレーザ光Lは、遮蔽板47によって遮蔽される。
本実施の形態では、図6に示すように、遮蔽板47のX軸方向およびZ軸方向のサイズは、受光領域49のX軸方向およびZ軸方向のサイズよりも大きくなるように設計されている。したがって、遮蔽領域E1において、レーザ光Lは受光部46によって受光されることはない。
検査領域E2とは、基板90の表面を含む領域である。本来、検出すべき物体は、正常な状態の基板90の表面よりも(+Z)方向の領域に存在する。しかし、本実施の形態では、基板90の表面よりも(−Z)方向に存在する領域も検査領域E2に含むように受光領域49が設定される。
このように設定する主な理由は、オペレータの作業負担を軽減するためである。すなわち、受光領域49が基板90の表面に沿うように厳密に設定しようとすると、受光領域49の設定を高精度に行わなければならず、オペレータの負担が増大するからである。また、厚みの異なる基板90を処理しようとする度に、オペレータは受光領域49を再設定しなければならず、オペレータの負担が増大するからである。
基板処理装置1では、移動機構5によってスリットノズル41がさまざまな位置に移動するが、昇降機構43,44がスリットノズル41を十分な高さ位置に維持して移動する場合や、スリットノズル41が基板90と対向しない位置を移動する場合には、スリットノズル41が物体と接触する危険性はほとんどない。
したがって、本実施の形態における基板処理装置1は、検査領域E2(あるいはその近傍)に存在する処理不良の原因となりうる物体(以下、「検出体」と称する)を検出すれば充分である。なお、検出体としては、パーティクルのような異物以外に、基板90自体も含まれる。
図7は、基板90を検出しなければならない場合を例示する図である。図7に示すように、ステージ3と基板90との間に異物NGが存在すると、基板90が盛り上がり、塗布処理中に移動するスリットノズル41と基板90とが干渉する。このような場合には、基板処理装置1は基板90であっても、検出体として検出する必要がある。
なお、図7に示すように、投光部45(受光部46)は、スリットノズル41に対して、塗布方向(スリットノズル41がレジスト液を吐出させつつ移動する方向)の前方位置に配置されており、スリットノズル41の塗布方向の移動に伴って、同じ方向に移動しつつ検出体の検出を行う。
また、投光部45とスリットノズル41とのX軸方向の相対距離Pは、移動機構5によってスリットノズル41が移動する速度と、制御部7の演算速度とに応じて設定される。すなわち、受光部46からの出力信号に応じて制御部7が移動機構5を制御した場合に、検出体とスリットノズル41との接触を充分に回避できる距離として相対距離Pが設定される。
図1に戻って、表示部6は、タッチパネル式の液晶パネルディスプレイであって、制御部7の制御により、各種データを画面に表示するとともに、基板処理装置1に対するオペレータの指示を受け付ける機能をも有する。特に、本実施の形態における表示部6は、受光部46からの出力信号に基づいて、CCD素子群の受光状況を表示する。
なお、詳細は図示しないが、基板処理装置1は、オペレータの指示を受け付けるための操作部(キーボードやマウス等)を別途備えている。
制御部7は、主にCPUと記憶装置とから構成されており、プログラムに従って各種データを処理する。制御部7は、図示しないケーブルにより基板処理装置1の各機構と接続されており、リニアエンコーダ51および受光部46などからの入力に応じて、ステージ3、昇降機構43,44、移動機構5および表示部6などの各構成を制御する。
また、制御部7は、所定の時間間隔Δtごとに、演算値CV(t)を求める。具体的には、時刻tにおける受光量EV(t)と、Δt時間前の受光量EV(t−Δt)とに基づいて、CV(t)=EV(t−Δt)−EV(t)により演算値CV(t)を求める。ただし、EV(t−Δt)−EV(t)≦0のときは、CV(t)=0とする。
これにより、時間Δtの間に受光量EV(t)が減少した場合に演算値CV(t)はその減少量に応じた正の値となり、時間Δtの間に受光量EV(t)が減少しなかった場合に演算値CV(t)は「0」となる。すなわち、演算値CV(t)は時間Δtの間の受光量EV(t)の減少状態を示す値であり、時間Δt間隔で演算される。
このように、時間Δt間隔で演算される演算値CV(t)を用いて検出処理をする利点は、ノイズの影響を抑制することにある。一般的にノイズは一瞬の間だけ生じるものであるため、演算値CV(t)を演算する瞬間にノイズが発生していなければ、それ以外の瞬間においてノイズが発生したとしても、演算値CV(t)がノイズの影響を受けることはないからである。
一方、検出すべき検出体はX軸方向に必ず幅があるため、受光領域49がこれを通過する間(以下、「通過時間ΔPT」と称する)、レーザ光Lは検出体によって遮蔽される。したがって、検出体によって受光量EV(t)が減少する場合は、ノイズによって受光量EV(t)が減少する場合と異なり、通過時間ΔPTの間、受光量EV(t)が減少したままの状態となる。
すなわち、ΔPT>Δtとなるように時間Δtを予め設定しておけば、演算値CV(t)は受光量EV(t)が減少している間に演算される。したがって、制御部7は検出体による受光量EV(t)の減少状態を見落とすことなく検出できる。
なお、通過時間ΔPTの値は、検出しようとする最小の検出体のX軸方向のサイズと、受光領域49のX軸方向のサイズと、移動機構5による移動速度とに応じて求めることができる。移動速度は塗布処理における様々な条件によって決定されるので、ここでは所定値とみなせる。本実施の形態における基板処理装置1では、受光領域49のX軸方向のサイズが比較的大きくなるように、矩形レーザを用いる。これにより、スポットレーザを用いる場合に比べて通過時間ΔPTが長くなる。
通過時間ΔPTが長くなれば、基板処理装置1は、時間Δtを比較的大きな値とすることができる。時間Δtは、演算値CV(t)を演算しなければならない間隔を示す値であるから、この値が大きい方が演算頻度が下がり、演算のための処理時間を充分に確保できるので、演算時間超過による見落とし率が低下する。
また、時間Δtの値が大きいほど、ノイズ発生時刻と、演算値CV(t)を演算する時刻とが一致する確率が低下するので、演算値CV(t)に対するノイズの影響も低下する。
すなわち、基板処理装置1は、断面Sの形状が矩形のレーザ光Lを採用することにより、スポットレーザを用いる場合に比べて、検出精度が向上する。
制御部7は、演算値CV(t)を演算する度に、演算値CV(t)と閾値(後述する閾値b)とを比較して、受光量EV(t)が閾値b以上減少したことを検出する。基板処理装置1では、投光部45から離れた位置の検出体を検出するために、検出感度を上げた(閾値bの値を低下させた)としても、演算値CV(t)におけるノイズの影響が抑制されているため、ノイズによる誤検出を抑制できる。
ここで、受光量EV(t)が閾値b以上減少したか否かによって、検出体の有無を判定することももちろん可能である。
しかし、この場合、演算値CV(t)を演算したときに、たまたまノイズも発生していれば誤検出となる可能性がある。
また、この場合、検出可能な検出体のサイズを小さくしようとすると、時間Δtの値を小さな値に設定しなければならず、検出精度が低下する問題がある。その理由を以下に説明する。
通過時間ΔPTは、厳密には、受光量EV(t)が減少中の時間ΔDTと、受光量EV(t)が減少したまま一定の状態である時間ΔCTと、受光量EV(t)が上昇中の時間ΔITとの合計である。
ここで、時間ΔDTおよび時間ΔITは、互いにほぼ等しく、主に検出体のX軸方向のサイズと移動機構5による移動速度とに応じて決まる値である。また、時間ΔCTは、主に受光領域49のX軸方向のサイズと移動機構5による移動速度とに応じて決まる値である。
移動機構5による移動速度は先述のように所定値と見なせるので、受光量EV(t)が減少中である時間ΔDT、および受光量EV(t)が上昇中である時間ΔITは、小さな検出体ほど小さな値となる。
一方、演算値CV(t)は、時間Δtの間の受光量EV(t)の減少量であるから、おおむね時間ΔDTの間以外は「0」となる。すなわち、受光領域49のX軸方向のサイズを大きくすることによって時間ΔCTを長くしたとしても、この間、受光量EV(t)は変化しないので、演算値CV(t)は「0」である。したがって、少なくとも時間ΔDTの間に、演算値CV(t)を演算しなければ、受光量EV(t)の減少状態を見落とすこととなる。
つまり、時間Δtについては、ΔPT>ΔDT>Δtの関係であることが好ましく、小さな検出体は時間ΔDTは短いので、小さな検出体を検出しようとすれば時間Δtの値も小さな値であることが要求される。言い換えれば、検出精度を向上させるために小さな検出体を検出しようとすると、演算値CV(t)を演算する間隔である時間Δtを短く設定する必要があり、これによって逆に演算値CV(t)に関してノイズの影響が増大するのである。
そこで、基板処理装置1の制御部7は、時間Δtの値を比較的小さな値に設定し、時間Δtの間に受光量EV(t)が閾値b以上に減少したことを、ノイズによる場合も含めて検出する。その代わりに、当該減少状態の継続状況に基づいて、受光量EV(t)の減少状態がノイズによって生じたのか、検出体によって生じたのかを判定して、検出体を検出する。
本実施の形態における制御部7は、演算値CV(t)が閾値b以上であることを検出しすると、そのときの受光量EV(t)を記憶装置に記憶する。そして、その時刻tから時間ΔTだけ経過したときの受光量EV(t+ΔT)が、記憶しておいた受光量EV(t)以下である場合に、受光量EV(t)の減少状態が継続していると判定し、検出体を検出したと判定する。
先述のように、時間Δtの値を比較的小さな値に設定すれば、ノイズにより、時間Δtの間に受光量EV(t)が閾値b以上に減少する状態が頻発するが、これを検出体と誤認することを防止することができる。したがって、基板処理装置1は、時間Δtを比較的小さい値に設定することによって、比較的小さい検出体を検出できるようにした場合であっても、誤検出を増加させることがない。以下、説明の都合上、このようにして検出体を検出する処理を「第1検出処理」と称する。
なお、受光量EV(t)の減少状態の継続状況は、時間ΔCTが経過する前(受光量EV(t)が上昇し始める前)に確認することが好ましいので、時間ΔTの値は、ΔCT>ΔTを満たす値として設定するのが好ましい。また、時間ΔTは、演算間隔であるから、比較的大きな値に設定することが好ましい。
本実施の形態における基板処理装置1は、断面Sの形状が矩形のレーザ光Lを用いているので、時間ΔCTがスポットレーザに比べて長い。したがって、時間ΔTの値として比較的大きな値を設定できるため、検出精度が向上する。
また、受光量EV(t)の減少状態の継続状況は、演算値CV(t)が閾値b以上となってから時間ΔTの間に出力される受光量EV(t)を積分した値と、所定の閾値とを比較することによって判定してもよい。あるいは、受光量が減少する前の受光量EV(t−Δt)と、受光量EV(t+ΔT)とを比較してもよい。あるいは、演算値CV(t)が閾値b以上となったときの受光量EV(t)と受光量EV(t+ΔT)とを直接比較するのではなく、演算値CV(t)が閾値b以上となったときの受光量EV(t)の値に応じて設定される閾値と比較してもよい。
このように、制御部7は、本発明における第1検出手段に相当する機能を有している。なお、演算値CV(t)の値は、受光量EV(t)が一定、あるいは上昇する間は「0」である。すなわち、受光量EV(t)が変化するする場合には、受光量EV(t)が増加する場合も考えられるが、この場合も演算値CV(t)は「0」である。したがって、制御部7が演算値CV(t)を監視したとしても、これによって受光量EV(t)の値が上昇する場合を検出することはできない。しかし、受光量EV(t)によって検出体の検出を行う手法においては、検出体が存在すればレーザ光Lは当該検出体によって遮蔽され、受光量EV(t)は減少すると考えられるため、逆に受光量EV(t)が上昇する状態を検出する必要はない。
制御部7は、受光量EV(t)を所定の閾値(後述する閾値c)と比較することにより、受光量EV(t)が閾値cよりも小さい場合にも、検出体を検出したと判定する。以下、説明の都合上、このようにして検出体を検出する処理を「第2検出処理」と称する。
すなわち、制御部7は、本発明における第2検出手段に相当する機能を有している。
ここで、本実施の形態における基板処理装置1では、閾値cの値を比較的小さい値として設定する。これにより受光量EV(t)が大きく減少しない限り、受光量EV(t)は閾値cよりも小さくなることはないので、通常のノイズ程度では、閾値cによって、誤検出が発生することはない。
制御部7が第1検出処理によって検出体を検出する場合、見落としを防止するためには、前述のように、ΔDT>Δtであることが必要である。しかし、検出体のX軸方向のサイズが、検出可能サイズより小さい場合、実際の時間ΔDTは予測よりも小さくなり、予め設定されている時間Δtに対して、ΔDT<Δtとなることもある。この場合、例え、検出体のZ軸方向のサイズが大きくても見落とす可能性があり、スリットノズル41と検出体との干渉を回避する上で問題となりうる。
そこで、制御部7は、第1検出処理と第2検出処理とを並行して実行することにより、第1検出処理によって検出体を検出することができなかった場合であっても、受光領域49が充分に遮蔽され、受光量EV(t)がノイズによって減少する場合に比べて小さくなった場合には、検出体を検出したと判定する。
これにより、X軸方向のサイズは小さいが、Z軸方向のサイズが大きい物体を、見落とすことなく、検出することができる。したがって、検出精度が向上する。
制御部7は、検出体を検出した場合には、受光部46の受光状態および警告メッセージ等を表示部6に表示するとともに、移動機構5を制御することによって、スリットノズル41と干渉物(検出体)との接触を回避する、あるいは塗布処理が不良処理となることを防止する。
以上が本実施の形態における基板処理装置1の構成および機能の説明である。
<1.2 調整作業>
基板処理装置1では、基板90に対してレジスト液を塗布する処理を行う前に、オペレータによって、投光部45および受光部46のZ軸方向の位置調整作業および受光領域49を設定する作業が行われる。
図8は、投光部45の位置調整を説明する図である。投光部45のZ軸方向の位置調整は、照射するレーザ光Lが基板90の表面に沿うように行われる。このとき、図8に示すように、レーザ光Lは基板90に一部が遮蔽されてもよい。したがって、投光部45のZ軸方向の位置調整は、レーザ光LのZ軸方向の幅とほぼ等しい誤差を許容するので、Z軸方向に関して、比較的曖昧に調整することができる。すなわち、投光部45の位置合わせにおいて、厳密な調整作業が不要となるので、オペレータの調整作業の負担が軽減される。
また、これは、基板90の厚みがレーザ光LのZ軸方向の幅とほぼ等しい範囲で変化しても、投光部45の位置を再調整することなく対応できることを意味する。すなわち、厚みの異なる基板90を処理する場合でも、その厚みの変化が所定の範囲内であれば再調整が不要であるため、オペレータの負担を軽減することができる。
投光部45の位置が決定されると、オペレータは受光部46の調整を行う。オペレータは、投光部45から照射されたレーザ光Lが、受光部46の受光可能領域48内に入射するように、受光部46をセットする。
具体的には、受光可能領域48に配置されているCCD素子からの出力信号を表示部6に表示し、オペレータはこの画面を見ながら、レーザ光Lが受光可能領域48内(中央部であることが好ましい)に入射するように受光部46のZ軸方向の位置を調整する。このとき受光部46は、レーザ光Lを受光可能領域48のどこかで受光すればよいので、受光部46のZ軸方向の位置調整は比較的曖昧でよい。このように、受光部46の位置調整作業においても、従来の装置に比べて作業の負担は軽減される。
投光部45および受光部46の位置が決定されると、オペレータは受光領域49の設定を行う。オペレータは、表示部6に表示されている受光可能領域48内の光量分布を見ながら受光領域49の位置を設定する。
このように、本実施の形態における基板処理装置1は、受光部46がCCD素子群で構成されているため、受光可能領域48内のそれぞれの位置における光量を容易に取得して、受光状況(受光可能領域48内の光量分布)を表示部6に表示することができる。したがって、オペレータは、受光可能領域48内のどの領域にレーザ光Lが入射しているか容易に判断でき、容易に受光領域49の位置を指定することができる。
言い換えれば、このような手法によって、受光可能領域48内に受光領域49を設定することにより、基板処理装置1では、受光部46のZ軸方向の位置を、比較的曖昧に調整することができるとも言える。なお、本実施の形態では、オペレータが受光領域49のZ軸方向の位置を指定することによって、制御部7が受光領域49の位置を設定する。
また、受光領域49を任意に設定できるので、レーザ光Lが光軸を中心に多少傾いていたり、レーザ光Lの一部が基板90によって遮蔽されていても、検出精度に対する影響を抑制することができる。したがって、前述のように、投光部45の位置調整を厳密に行う必要がなく、オペレータの負担を軽減できる。
<1.3 動作の説明>
次に、基板処理装置1の動作について説明する。なお、以下に示す各部の動作制御は特に断らない限り制御部7により行われる。
基板処理装置1では、オペレータまたは図示しない搬送機構により、所定の位置に基板90が搬送されることによって、レジスト液を基板90の塗布領域に塗布する処理が開始される。ここで、塗布領域とは、基板90の表面のうちでレジスト液を塗布しようとする領域であって、通常、基板90の全面積から、端縁に沿った所定幅の領域を除いた領域である。
なお、基板90が搬出入されるとき、スリットノズル41は搬送される基板90と干渉しないように、退避位置に待機している。これに伴って、投光部45および受光部46も退避位置に待機している。
また、処理を開始するための指示は、基板90の搬送が完了した時点で、オペレータが操作部を操作することにより入力されてもよい。
処理が開始されると、ステージ3が保持面30上の所定の位置に搬入された基板90を吸着して保持する。次に、移動機構5のリニアモータ50が投光部45および受光部46を処理開始位置に移動させる。なお、処理開始位置とは、投光部45と受光部46との対向線(レーザ光Lが照射された場合の光軸となる線)が基板90の上方を通過しない位置であって、本実施の形態では、受光部46の受光領域49が動作確認領域E0にのみ含まれる位置である。
先述のように、移動機構5は、スリットノズル41、投光部45および受光部46を相対位置を変えることなく、一体的にX軸方向に移動させる。したがって、移動機構5が、投光部45および受光部46を退避位置から処理開始位置まで移動させると、同時に架橋構造4もX軸方向に移動する。
しかし、このときのスリットノズル41は、昇降機構43,44によって十分な高度を保持しているので、例え、この間にスリットノズル41が基板90の上方を通過したとしても、スリットノズル41が検出体と接触することはない。
投光部45および受光部46が処理開始位置に移動すると、投光部45はレーザ光Lの照射を開始する。これ以降、照射を停止するまで、投光部45によるレーザ光Lの照射は継続される。
処理開始位置において照射されたレーザ光Lは、動作確認領域E0にのみ照射されるので、遮蔽板47に遮蔽されることなく受光領域49に入射する。さらに、このときのレーザ光Lは基板90によって遮蔽されることもないので、受光領域49に入射するレーザ光Lの光量(受光量EV(t))は、最大値となる。
制御部7は、このときの受光量EV(t)を、予め設定した閾値aと比較することにより、投光部45と受光部46とがいずれも正常に動作しているか否かを判定する。具体的には、受光量EV(t)が閾値a以上の場合には「正常」と判定し、受光量EV(t)が閾値aよりも小さい場合には「動作異常」と判定する。
このように、基板処理装置1は、検査を開始する前に、いわば初期値(EV1)を確認する処理を実行することによって、投光部45および受光部46の動作状態を判定する。これにより投光部45からレーザ光Lが照射されていない場合(例えば半導体レーザが故障している場合)や、投光部45と受光部46との位置関係がずれてしまった場合、あるいは受光部46のCCD素子の故障等の異常状態を検出できる。したがって、基板処理装置1は、検査環境が異常な状態のままで検査が行われることを防止できるので、検出精度が向上する。
なお、閾値aは、例えば、受光領域49を設定した際に、受光部46から出力される受光量に基づいて設定し、記憶させておくことができる。
処理開始位置において、動作状態「正常」と判定すると、制御部7は、移動機構5を制御して、投光部45および受光部46の(−X)方向への移動を開始させる。これにより、受光領域49は、(−X)方向に連続的に移動する。なお、この移動を開始する時刻を以下、「時刻t0」と表す。
また、制御部7は、この移動の開始とともに、第1検出処理を開始する。すなわち、制御部7は、第1検出処理を時刻t0に開始する。ただし、実際の検査を開始する時刻(以下、「時刻ts」と表す)までは、例え、第1検出処理によって検出体を検出した場合であっても、後述するようにこれを検出体であるとはみなさない。なお、時刻tsは、時刻t0からの経過時間に基づいて決定される時刻であって、移動が開始された時点(時刻t0が決定された時点)で、必要な条件に応じて、予め正確に予定される時刻である。
図9は、受光領域49が動作確認領域E0に含まれる状態から検査領域E2に含まれる状態に移動するまでの受光量EV(t)の変化を例示する図である。ここに示す例では、受光量EV(t)の最大値を「EV1」、動作確認を終了する時刻を「te」とする。
時刻t0から時刻t1までの間、受光領域49は動作確認領域E0にのみ含まれている。この間、レーザ光Lは遮蔽されることなく受光部46に入射するので、受光量EV(t)は最大値「EV1」で一定である。
時刻t1から時刻t2までの間(時間ΔDTに相当する)、受光領域49は動作確認領域E0と遮蔽領域E1との両方に含まれる。この間、遮蔽される部分が徐々に増加するため、受光量EV(t)は徐々に低下する。
時刻t2から時刻t3までの間(時間ΔCTに相当する)、受光領域49は遮蔽領域E1にのみ含まれている。この間、レーザ光Lは受光領域49のすべての位置において遮蔽されるため、受光量EV(t)は最低値「0」で一定である。
また、基板処理装置1では、遮蔽板47の位置とサイズ、および移動機構5による移動速度に基づいて、時刻t2から時刻t3までの間に、時刻teおよび時刻tsが経過するように構成されている。言い換えるならば、受光領域49のすべてが遮蔽板47によって遮蔽された状態になってから動作確認処理を終了し、受光領域49が検査領域E2に含まれる状態になる前に、検査を開始するようにしている。遮蔽板47は受光領域49に比べて充分にX軸方向のサイズが大きいので、このような条件を満たす時刻teおよび時刻tsは容易に決定できる。
図9に戻って、時刻t3から時刻t4までの間(時間ΔITに相当する)、受光領域49は遮蔽領域E1と検査領域E2との両方に含まれる。この間、遮蔽される部分が徐々に減少するため、受光量EV(t)は徐々に上昇する。
時刻t4以降、受光領域49は検査領域E2にのみ含まれる。したがって、検出体の存在しない正常な状態であれば、受光量EV(t)は一定となる。ただし、検査領域E2では、受光領域49が基板90によって一部遮蔽されるため、受光量EV(t)は最大値「EV1」より低い値「EV2」となる。
図10は、図9に示す例における制御部7による演算値CV(t)の変化を例示する図である。先述のように、制御部7は、時刻t0に第1検出処理を開始するので、時刻t0(より詳しくは、時刻t0+Δt)以降、制御部7によって演算値CV(t)が演算される。
図9から明らかなように、受光領域49が、動作確認領域E0から遮蔽領域E1に移動する間(時刻t1から時刻t2の間)に、受光量EV(t)は減少する。したがって、この間、演算値CV(t)は正の値をとる。
遮蔽板47は充分なサイズを有している。したがって、投光部45、受光部46および制御部7による第1検出処理が正常に動作していれば、遮蔽板47は、時刻teまでに必ず検出される。
制御部7は、時刻tsまでは実際の検査を開始していないので、時刻te(時刻ts)までの間に、第1検出処理によって検出体を検出しても、これを検出体とはみなさない。すなわち、遮蔽板47によって塗布処理が停止したりすることはない。
一方、制御部7は、時刻teまでに第1検出処理によって検出体が検出されない場合は、存在しているはずの遮蔽板47を正常に検出できなかったと判定し、動作状態を「異常」と判定する。
このように、基板処理装置1は、検査を開始する前に、遮蔽板47による疑似検出処理を実行することによって、検査環境が異常な状態のままで検査が行われることを防止できるので、検出精度が向上する。
さらに、基板処理装置1では、検出体を検出したことを示す信号は、時刻te(所定の時間経過した後であって、受光領域49が検査領域E2に到達するよりも前)を経過した時点で強制的に停止させる。
これにより、遮蔽板47に対する検出信号と、検査が開始された後(時刻ts以後)の検出信号とを明確に区別することができるため、誤検出あるいは見落としを防止できる。なお、図9から明らかなように、時刻teから時刻tsの間、受光量EV(t)が減少することはないので、第1検出処理を継続していても検出体が検出されることはない。
ここで、受光領域49が遮蔽領域E1を通過するように構成することによる効果について説明する。
図11は、遮蔽板47が存在しない場合に、図9と同様に受光量EV(t)の変化を例示する図である。図12は、図11における演算値CV(t)の変化を例示する図である。
図11に示す例では、遮蔽領域E1に相当する領域が形成されることはないので、時刻t1から時刻t3の間において、レーザ光Lが遮蔽されることはない。したがって、この間、受光量EV(t)は最大値「EV1」である。
このような状態では、処理開始位置(時刻t0)における閾値aを用いた動作状態の確認処理(初期値確認処理)は可能であるものの、遮蔽板47を検出することによる動作状態の確認処理(疑似検出処理)は行うことができない。そのため、遮蔽板47に相当する構成がなく、遮蔽領域E1に相当する領域が形成されない場合には、検出体の検出精度は低下する。
図11から明らかなように、時刻t3から時刻t4の間に、レーザ光Lが基板90によって遮蔽されるために、受光量EV(t)は「EV1」から「EV2」に減少する。そのため、図12に示すように、演算値CV(t)が正の値となり、閾値bを超える状態となる。このとき、基板90のX軸方向のサイズは充分に大きいので、受光量EV(t)の減少状態は、ノイズの場合と異なり、時間ΔTを超えて継続する。すなわち、基板90の端部をノイズのように時間経過観察によって見分けることはできない。
このような状態では、制御部7は、基板90の端部を検出体と誤認する。基板90の端部は必ず存在するので、基板90の端部を検出体であると判定してしまうと、塗布処理を開始することができない。したがって、受光量の減少を監視することによって検出体を検出する手法では、基板90の端部を誤認しないことが必須条件である。
これを回避するには、まず、閾値bを高く設定することが考えられる。しかし、基板90によるレーザ光Lの遮光量は、検出すべき検出体による遮光量に比べて充分に大きいので、基板90の端部を検出しないために閾値bを高く設定すると、検出体の見逃しが多発して、実用的でない。
また、基板90の端部が存在する位置(本実施の形態では、X軸方向の位置)を予測して、この位置から充分にセンサ(投光部45および受光部46)が移動した位置から検査を開始することも可能である。すなわち、時刻tsに相当する時刻を、時刻t4に対して充分に遅らせることによって、誤検出を防止することができる。
しかし、これは基板90の端部から、検査を開始する位置までの間を検出不能領域とすることを意味している。また、基板90の端部をセンサが通過する時刻を正確に検出できないので、検査開始時間を遅らせて、検出不能領域を比較的広く設定する必要があり、これによっても検出精度が低下する。
これに対して、本実施の形態における基板処理装置1は、遮蔽板47を設けることにより、検査領域E2に隣接するように遮蔽領域E1を形成する。すなわち、受光領域49が基板90の端部を走査するときに、受光量EV(t)が増加するように構成されているため、この間、演算値CV(t)は「0」となる。
このように、基板処理装置1は、遮蔽板47を備えているので、検出精度を低下させることなく、基板90の端部を誤検出することを防止できる。
時刻t0以降、投光部45(受光部46)と共に架橋構造4(スリットノズル41)も(−X)方向に移動する。しかし、この間、スリットノズル41は十分な高度(高さ位置)を保持して移動するため、干渉物と接触することはない。
投光部45(受光部46)と共に架橋構造4が(−X)方向に移動することにより、スリットノズル41が塗布開始位置まで移動すると、制御部7は、リニアモータ50を停止させて、架橋構造4を一旦停止させる。
なお、塗布開始位置とは、スリットノズル41が塗布領域の(+X)側の端部上方にほぼ沿う位置である。また、リニアモータ50が停止し、投光部45および受光部46がX軸方向に移動することなく停止している間、本実施の形態における検出処理も一旦停止する。
次に、制御部7は、スリットノズル41のYZ平面における姿勢が適正姿勢となるように、昇降機構43,44を制御して、ノズル支持部40の位置を調整する。なお、適正姿勢とは、スリットノズル41と塗布領域との間隔がレジストを塗布するために適切な間隔(本実施の形態においては50〜200μm)となる姿勢である。すなわち、これによって、スリットノズル41が下降し、スリットノズル41の下端が基板90に近接する。
基板処理装置1では、制御部7が検出体を検出したと判定した場合には、リニアモータ50を停止させることによりスリットノズル41の(−X)方向への移動動作を停止させるとともに、表示部6に警報を出力して待機状態となる。
したがって、時刻tsに検査が開始されてからスリットノズル41が塗布開始位置に移動するまでの間に検出体が検出されていなければ、基板90の(+X)側の端部から、投光部45(受光部46)の位置(塗布開始位置より(−X)方向に相対距離Pだけ進んだ位置)までの間において、検出体を発見することができなかったことを意味する。したがって、塗布開始位置において、スリットノズル41を適正姿勢とするために、スリットノズル41を下降させても、スリットノズル41が干渉物と接触する危険性はほとんどない。
スリットノズル41の姿勢調整が終了すると、レジスト用ポンプ(図示せず)によりスリットノズル41にレジスト液が送られ、スリットノズル41が塗布領域にレジスト液を吐出する。その吐出動作とともに、リニアモータ50がスリットノズル41を(−X)方向に移動させる。これにより、基板90の塗布領域がスリットノズル41によって走査され、レジスト液が塗布される。
なお、レジスト液の吐出は、姿勢調整が終了してからでなくてもよい。例えば、スリットノズル41から少量のレジスト液を吐出させることによってスリットノズル41の先端部に適切な液溜まりを生成してから、スリットノズル41を適正位置に降下させてもよい。
また、スリットノズル41による走査の開始とともに、検査(検出処理)が再開される。すなわち、これ以後は、スリットノズル41によってレジスト液が塗布される動作と並行して、検査が行われる。
このように基板処理装置1では、スリットノズル41の塗布中(走査中)に、検出処理が実行されることにより、検出体が検出された場合に、直ちにスリットノズル41の移動を停止させる。これによって基板処理装置1はスリットノズル41と干渉物との接触を未然に防止することができる。したがって、スリットノズル41や基板90などが接触により破損することを有効に防止することができる。
また、先述のように、警報を出力することにより、オペレータに異常を知らせることができることから、復旧作業等を効率的に行うことができる。なお、警報はオペレータに異常事態の発生を知得させることができるものであればどのような手法であってもよく、スピーカなどから警報音を出力するようにしてもよい。
また、検出体を検出した場合、制御部7は、レジスト用ポンプを停止してレジスト液の吐出を停止し、リニアモータ50および昇降機構43,44によりスリットノズル41を退避位置に退避させる。その後、基板90は基板処理装置1から搬出される。ただし、スリットノズル41が塗布開始位置に移動するまでの間に検出体が検出された場合には、レジスト液の吐出は未だ開始されていないため、レジスト液の吐出を停止させる処理は行われない。
また、検出体が検出された場合に搬出される基板90は、他の基板90(正常に処理された基板90)と区別して、オペレータまたは搬送機構が再処理工程に搬送する。なお、図7に示すように、異物NGがステージ3に付着している場合も考えられるため、ステージ3のクリーニングを行うことが好ましい。
さらに、検出体が検出された場合、制御部7は検出の過程(CCD素子群の出力)を表示部6に表示させる。これにより、オペレータは後から検出体を画面で確認することができるため、適切な回復処理を行うことができる。
一方、検出処理において検出体が検出されない場合、制御部7はリニアエンコーダ51の出力に基づいてスリットノズル41の位置を確認しつつ、スリットノズル41が塗布終了位置に移動するまで塗布処理を継続する。塗布終了位置とは、スリットノズル41が塗布領域の(−X)側の端部上方に沿う位置である。
このように、検出体が存在しない場合には、スリットノズル41による走査が塗布領域全域に対して行われ、当該塗布領域の全域における基板90の表面上にレジスト液の層が形成される。
スリットノズル41が塗布終了位置に移動すると、制御部7がレジスト用ポンプを停止させてスリットノズル41からのレジスト液の吐出を停止させるとともに、リニアモータ50を停止させてスリットノズル41の(−X)方向への移動を停止する。
また、これと並行して投光部45がレーザ光Lの照射を停止し、検出処理が終了する。すなわち、第1検出処理および第2検出処理を終了する。
レジスト液の吐出が停止すると、制御部7は、リニアモータ50および昇降機構43,44を制御して、スリットノズル41を退避位置に退避させる。
スリットノズル41が退避位置に退避した後、ステージ3は基板90の吸着を停止し、オペレータまたは搬送機構が基板90を保持面30から取り上げ、基板90を次の処理工程に搬出する。これによって、基板90に対する塗布処理が終了する。
以上のように、基板処理装置1は、所定時間(Δt+ΔT)の間に受光部46から出力された受光量に基づいて、所定時間(Δt+ΔT)の間の受光量の減少状態を監視しつつ、検査領域E2内に存在する処理不良の原因となりうる物体を検出することにより、閾値bを比較的低く設定して検出感度を向上させてもノイズの影響を抑制できる。
また、受光領域49が遮蔽領域E1に含まれるように配置されている受光部46を、受光領域49が検査領域E2に含まれるように移動させる。これにより、ステージ3に保持された基板90の端部近傍において物体を検出するときに、受光部46から出力される受光量が上昇するので、正常な基板90を処理不良の原因となりうる物体として誤検出することを防止できる。
また、制御部7の検出結果に応じて、移動機構5を制御することにより、スリットノズルと物体との衝突を回避することができる。すなわち、事前に異常処理を防止することができる。
また、物体の検出を開始する前に、移動機構5は、受光領域49が遮蔽板47によって遮蔽されない位置(動作確認領域E0に含まれる位置)に配置されている受光部46を、受光領域49が遮蔽領域E1に含まれるように移動させるとともに、この間、制御部7が第1検出処理を行って、投光部45および受光部46の動作状態を判定することにより、検査精度を向上させることができる。
また、受光部46の受光領域49を構成するCCD素子により出力される受光量EV(t)と、閾値cとを比較することにより、検査領域E2内に存在する検出体を検出する第2検出処理を行うことにより、検出精度をさらに向上させることができる。
また、本実施の形態における昇降機構43,44は、スリットノズル41を、投光部45および受光部46と独立して、Z軸方向に移動させる。これにより基板処理装置1は、スリットノズル41を充分な高さ位置に退避させたままで検出処理のみを行うことが可能である。一般に、基板90の端部付近は、基板90の中央部に比べて、干渉物の見逃しが生じやすい。しかし、本実施の形態における基板処理装置1は、基板90の端部から塗布開始位置までの間において、スリットノズル41を、基板90に近接させることなく移動させることができる。したがって、スリットノズル41と干渉物との接触を抑制することができる。
なお、本実施の形態における基板処理装置1は、時刻t4より後の時刻を第2検出処理の開始時刻に設定し、第2検出処理によって検出体が検出された場合は、第1検出処理の結果にかかわらず、検出体を検出したと判定する。このように、第1検出処理と第2検出処理とが並行して実行される間は、第2検出処理によって、検出体の見落としを防止できるので、検出精度が向上する。
また、受光領域49のZ軸方向の幅は、走査方向に均一である方が好ましい。したがって、本実施の形態における受光領域49のように、その形状は矩形であることが好ましい。しかし、時間ΔCTを長くするという効果は、受光領域49の走査方向の幅が、スリットノズル41の走査速度に対して充分に広ければよいので、受光領域49の形状は矩形に限られるものではなく、例えば長軸を走査方向とする楕円等であってもよい。
<2. 変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。
例えば、上記実施の形態では、遮蔽板47がレーザ光Lを完全に遮蔽すると説明したが、スモーク部材のように一部レーザ光Lを透過する部材であってもよく、完全にレーザ光Lを遮蔽する部材に限られるものではない。基板処理装置1では、遮蔽領域E1から検査領域E2に移動する際に、受光量EV(t)が上昇するように構成されていればよいので、少なくとも基板90の端部によって遮蔽される光量よりも多くの光量を遮蔽すればよい。
また、スリットノズル41に投光部45および受光部46を取り付けてもよい。このように構成した場合、投光部45および受光部46も昇降機構43,44によってスリットノズル41とともに昇降する。
また、受光領域49を受光可能領域48に対して設定するためには、受光部46を構成する素子は、CCD素子でなくてもよい。例えば、C−MOS等の撮像素子であってもよい。