JP4556551B2 - 高密度織物および製造方法 - Google Patents
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Description
本発明の高密度織物では、タテ糸および/またはヨコ糸にポリトリメチレンテレフタレートからなる単繊維繊度が0.01〜0.5dtexのマルチフィラメントを使用することが必要である。その理由は、従来のポリエチレンテレフタレートからなるマルチフィラメントで構成された高密度織物の硬さと、極細繊維にした際の発色性の不十分さを改善するためであり、単繊維繊度が0.01dtex未満であると単繊維1本1本の精度が低下するため毛羽発生等の品質問題を起こしやすく、一方、単繊維繊度が0.5dtexを超えると目的とするソフト感が得られない。より好ましい単繊維繊度は、0.05〜0.2dtexである。
次に、本発明では、本発明の目的とする防風性に優れた高密度織物を得るために、高密度織物を構成するタテ糸とヨコ糸の総カバー率が1700以上3500以下で、かつ高密度織物の通気度が1.0cc/cm2・s未満であることが必要である。
タテ糸のカバー率=タテ糸密度(本/インチ)×(タテ糸繊度(dtex))1/2
ヨコ糸のカバー率=ヨコ糸密度(本/インチ)×(ヨコ糸繊度(dtex))1/2
また、通気度は、本発明の目的とする防風性および撥水性の性能を表す計測値であり、本発明の高密度織物の通気度は1.0cc/cm2・s未満であり、さらに好ましくは0.8cc/cm2・s未満である。かかる通気度は、高密度織物を衣料として使用したときの機能性を発揮するために必要である。この通気度は、織物を作成する際に通常「カレンダー」加工と呼ばれる高温高圧プレスを掛けると比較的容易に小さくできるものであるが、本発明では得られる高密度織物の風合いがペーパーライクになるため採用は好ましくなく、採用するにしても軽条件での処理に留めることが望ましい。また、前記カレンダー加工の他に、ポリウレタン系の樹脂を織物表面に薄く皮膜コーティングさせる方法も通気度を小さくする手段として採用することが出来る。
共重合可能な化合物としては、酸成分として、例えば、イソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、ダイマ酸およびセバシン酸などのジカルボン酸類が挙げられ、一方、グリコール成分として、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールなどを挙げることができるが、これらに限られるものではない。
また、本発明において使用される海島型複合繊維の海成分/島成分の複合比率は、複合形態の安定性、製糸性および生産性の点から、好ましくは10/90〜50/50とするものである。海成分の複合比率が10%未満の場合は、複合異常が発生し分割性不良を生じたり、複合形態が正常であっても海成分の溶解不良による分割性不良を生じ、十分なソフト感を得ることができないことがある。逆に、海成分の複合比率が50%を超えると、生産性が低下するために好ましくない。海島型複合繊維の海成分/島成分のより好ましい複合比率は、15/85〜40/60である。
A.極限粘度[η]
オルソクロロフェノール10mlに対し試料0.10gを溶解し、温度25℃においてオストワルド粘度計を用いて測定した。
B.通気度
JIS L1096(A法)に準じて測定した。
C.平均異形度
繊維断面の切片を作成して写真で観察し、断面形状の最大内接円の直径nと断面の最 大巾mを測定し次式で個々の単繊維の異形度を算出して平均異形度を求めた。
異形度=m/n×100(%)
(実施例1)
ジメチルテレフタル酸19.4kg、1,3−プロパンジオール15.2kgにテトラブチルチタネートを触媒として用い、140℃〜230℃の温度でメタノールを留出しつつエステル交換反応を行った後、さらに、250℃の一定温度の条件下で3.5時間重合を行い、極限粘度[η]が0.96のポリトリメチレンテレフタレートを得た。上記の製法で得られたポリトリメチレンテレフタレートを島成分に用い、海成分として光学純度98.0%のポリ−L−乳酸を用い、海/島=20/80の複合比率にて、島成分数8本、ホール数36の海島型複合用口金を用いて複合紡糸機にて紡糸温度250℃で、引き取り速度1500m/分で巻き取り未延伸糸を得た。続いて、該未延伸糸を、通常のホットロール−ホットロール系延伸機を用いて延伸温度を80℃とし、熱セット温度120℃で延伸糸の伸度が35%となるように延伸倍率を合わせて延伸を行い、66dtex−36フィラメントの延伸糸を得た。得られた延伸糸の強度は3.7cN/dtexであり、沸騰水収縮率は10.0%であった。得られた延伸糸をタテ糸およびヨコ糸に用い、タテ糸密度145(本/inch)、ヨコ糸密度95(本/inch)の平織物を製織し、次いで水酸化ナトリウム30(g/l)濃度の80℃温水中で60分間処理して、海成分のポリ乳酸を溶出し、極細繊維(マルチフィラメント)からなる織物を得た。この段階で、得られた織物のサンプルをカットし走査型電子顕微鏡(SEM)で織物断面を観察し、完全に海成分が溶出していることを確認した。引き続き、150℃の温度でプレセット後、液流染色機を使用してDianix Navy Blue BE−SFを2%owf濃度で用い、120℃の温度で染色/還元洗浄し、140℃の温度で仕上げセットした。得られた織物は、タテ糸密度170(本/インチ)、ヨコ糸密度108(本/インチ)の高密度織物で、通気度は0.5cc/cm2・sと防風性が高く、かつソフトな手触りと優れた発色性を有するものであった。このときのタテ糸のカバー率は1235であり、ヨコ糸のカバー率は785であり、総カバー率は2020であった。
海成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸4.5モル%共重合した極限粘度[η]が0.56のポリエチレンテレフタレートを用い、島成分に第3成分を共重合していないポリエチレンテレフタレートを用い、実施例1と同様の口金と複合紡糸機を用いて紡糸温度280℃、引き取り速度1500m/分で巻き取り、得られた未延伸糸を実施例1と同様の方法で延伸し延伸糸を得た。得られた延伸糸は66dtex−36フィラメントで、強度は2.5cN/dtexであり、沸騰水収縮率は8.0%であった。得られた延伸糸をタテ糸およびヨコ糸に用い、タテ糸密度145(本/インチ)、ヨコ糸密度95(本/インチ)の平織物を製織し、水酸化ナトリウム30(g/l)濃度の80℃温水中で60分間処理して海成分の共重合ポリエステルの溶出を試み、アルカリ処理後の織物のサンプルをカットし走査型電子顕微鏡(SEM)で織物断面を観察したところ、海成分が完全には溶出せず、分割不良であることを確認した。このため、得られた生機をまず酢酸1(g/l)濃度の130℃熱水条件で30分間酸処理後、中和/水洗し、再度水酸化ナトリウム30(g/l)濃度の80℃温水中で60分間処理して海成分の共重合ポリエステルの溶出を試み、アルカリ処理後の織物のサンプルをカットし走査型電子顕微鏡(SEM)で織物断面を観察したところ、海成分が完全に溶出していることを確認した。引き続き150℃の温度でプレセット後、液流染色機を使用してDianix Navy Blue BE−SFを2%owf濃度で用い、130℃の温度で染色/還元洗浄し、140℃の温度で仕上げセットした。得られた織物はタテ糸密度が153(本/インチ)で、ヨコ糸密度が100(本/インチ)の織物で、通気度は6.7cc/cm2・sと防風性は高くなく、ソフトな手触りであるものの、発色が悪いものであった。このときのタテ糸のカバー率は1112であり、ヨコ糸のカバー率は727であり、総カバー率は1839であった。得られた織物の表面写真を図2に示す。
実施例1で用いたものと同じ海島型複合繊維をヨコ糸に用い、タテ糸に56dtex−144フィラメントのポリエチレンテレフタレートの仮撚加工糸を用い、タテ糸密度199(本/インチ)、ヨコ糸密度111(本/インチ)の平織物を製織し、次いで水酸化ナトリウム30(g/l)濃度の80℃温水中で60分間処理して ヨコ糸の海成分のポリ乳酸を溶出し極細繊維(マルチフィラメント)からなる織物を得た。引き続き150℃の温度でプレセット後、液流染色機を使用して130℃の温度で染色/還元洗浄し、160℃での温度仕上げセットした。得られた織物は、タテ糸密度が238(本/インチ)であり、ヨコ糸密度が129(本/インチ)の高密度織物で、その通気度は0.8cc/cm2・sと防風性の高いものであった。このときのタテ糸のカバー率は1781であり、ヨコ糸のカバー率は937であり、総カバー率は2718であった。
Claims (4)
- タテ糸および/またはヨコ糸にポリトリメチレンテレフタレートからなる単繊維繊度が0.01〜0.5dtexのマルチフィラメントを使用してなる織物であって、該ポリトリメチレンテレフタレートからなるマルチフィラメントの単繊維が、平均異形度1.05以上5.0以下、断面形状が扁平または三角であり、タテ糸とヨコ糸の総カバー率が1700以上3500以下で、かつ通気度が0.8cc/cm2・s未満であることを特徴とする高密度織物。
- ポリトリメチレンテレフタレートからなるマルチフィラメントが捲縮を有していることを特徴とする請求項1に記載の高密度織物。
- 海成分ポリマーがポリ乳酸で構成され、島成分ポリマーがポリトリメチレンテレフタレートで構成されている海島型複合繊維であって、海成分/島成分の複合比率が10/90〜50/50であり、溶解処理によって得られる島成分の単繊維繊度が0.01〜0.5dtexである海島型複合繊維を、タテ糸および/またはヨコ糸に使用して織物を製織後、溶解処理によりポリ乳酸を溶出させた後、島成分ポリマーであるポリトリメチレンテレフタレートからなる単繊維を3%以上収縮させることを特徴とする高密度織物の製造方法。
- 溶解処理に用いられる溶媒がアルカリであることを特徴とする請求項3記載の高密度織物の製造方法。
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