JP4544677B2 - スクータ型自動二輪車 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、低床式フロアを有するスクータ型自動二輪車に関する。
【0002】
【従来の技術】
スクータ型自動二輪車は、一般にユニットスイング式内燃機関が採用され、変速機を一体に有した内燃機関ユニットが、基端を車体にリンクを介して支持され、上下に揺動自在の後端に後輪が軸支され、この後端と車体との間にクッションが介装されている。
【0003】
またスクータ型自動二輪車で、内燃機関とは別体の伝動ケースを後端に軸支された後輪とともに揺動自在に支持した例(特公平1−39397号公報)がある。
同公報に記載されたスクータ型自動二輪車は、内燃機関のクランク軸より後方の出力軸を中心に揺動自在に伝動ケースが枢支され、左右のフロア部の間にまで内燃機関が延設されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前者のユニットスイング式内燃機関を搭載した自動二輪車では、クッション下の重量が大きいため高速走行性に限界があった。
また車体に対して内燃機関ユニット全体が揺動するので、内燃機関ユニットの周囲の空間を干渉しないように大きく確保しなければならず効率的な部品配置が難しい。
【0005】
後者の公報記載の例では、後輪を支持する伝動ケースがクランク軸より後方の出力軸を中心に揺動するので、ホイールベースが大きい。
また内燃機関が左右のフロア部の間にまで延設されており、フロアスペースを広く確保することができないとともに、左右フロア部間に補機類を配置するような空間を得にくい。
【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みなされたもので、その目的とする処は、内燃機関とは別体の後輪支持部材を揺動自在として高速走行性を向上し、部品配置を効率良く行えるとともにフロアスペースを広く確保できるスクータ型自動二輪車を供する点にある。
【0007】
【課題を解決するための手段及び作用効果】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、低床式フロアを有するスクータ型自動二輪車において、内燃機関を前記フロアの後方でシート下方に配置し、前記内燃機関とは独立して揺動する支持部材を介して後輪を支持し、前記内燃機関は車幅方向に2気筒を並列に並べて車体フレームに固定され、前記内燃機関のシリンダを前傾させ、その前方に補機類又は物品の配設空間を設け、シリンダヘッドの前方に補機類又は物品を配置し、前記車体フレームは、ヘッドパイプから左右一対のメインフレームが下方へ屈曲して後方に延び、前記ヘッドパイプから左右一対のダウンフレームが下方へ屈曲して前記メインフレームの下方を後方に延びたのち上方に屈曲した屈曲部の上端が前記メインフレームに連結して構成され、前記メインフレームと前記ダウンフレームをフロアトンネルカバーが上方から覆い、前記フロアトンネルカバー内に補機類を配置し、前記シリンダヘッドから延出する吸気通路を前後方向に配設し、前記クランク軸を前記ダウンフレームの屈曲部より後方に配置するスクータ型自動二輪車とした。
【0008】
内燃機関とは独立して揺動する支持部材を介して後輪を支持したので、揺動部分の重量が小さく、高速走行性を向上させることができるとともに、揺動部分が小さく周囲に空間を大きく確保する必要がなく効率的な部品配置ができる。
さらに内燃機関をフロアの後方に配置したので、フロアスペースを広く確保することができるとともに、フロア部に補機類等の配設空間を設けることができる。
シリンダを前傾することで、その上方のシートを低く設定してゆったりとしたライディングポジションを確保することができる。
内燃機関の前方に補機類又は物品の配設空間を設け、効率の良い部品配置を可能とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、低床式フロアを有するスクータ型自動二輪車において、内燃機関を前記フロアの後方でシート下方に配置し、前記内燃機関とは独立して揺動する支持部材を介して後輪を支持し、前記内燃機関は車幅方向に2気筒を並列に並べて車体フレームに固定され、前記内燃機関のシリンダを前傾させ、その前方に補機類又は物品の配設空間を設け、シリンダヘッドの前方に補機類又は物品を配置し、前記支持部材が、ベルト式自動変速機を有し、前記内燃機関のクランク軸と同軸に枢支されることを特徴とするスクータ型自動二輪車である。
【0010】
後輪を支持する支持部材が内燃機関のクランク軸と同軸に枢支されるので、ホイールベースを短縮することができると同時に、内燃機関の前方に適当な配設空間とフロアスペースを容易に確保することができる。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかの項記載のスクータ型自動二輪車において、運転者用シートの後方に添乗者用シートを一段高く設け、同添乗者用シートの下方にヘルメット収納ボックスを配置し、同ヘルメット収納ボックスの下面に沿わせてエアクリーナを配置したことを特徴とする。
【0014】
添乗者用シートを運転者用シートの後方に一段高く設けて、その下方にヘルメット収納ボックスを配置するとともに、その下面に沿ってエアクリーナを配置したので、大型のヘルメット収納ボックス及びエアクリーナをスペース効率良く配置することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下本発明に係る一実施の形態について図1ないし図4に基づき説明する。
本実施の形態に係るスクータ型自動二輪車1の全体側面図を図1に示し、部分的に省略した平面図を図2に示す。
【0016】
車体フレームは、ヘッドパイプ2の上部から左右一対のメインパイプ3,3が斜め下方に延出して前側傾斜部3a,3aをなし、その下端で後方へ屈曲して中央水平部3b,3bを形成し、若干斜め上方に屈曲して後側傾斜部3c,3cをなしたのち水平に屈曲して後側水平部3d,3dに至っている。
【0017】
またヘッドパイプ2の下部からは左右一対のダウンパイプ4,4が左右に広がって下方へ延出して前側鉛直部4a,4aをなし、下端で後方へ屈曲して中央水平部4b,4bを形成し、同中央水平部4b,4bは前記メインパイプ3,3の中央水平部3b,3bの下方に略平行に延び、その後端で上方へ屈曲して後側傾斜部4c,4cをなし、その上端はメインパイプ3,3の中央水平部3b,3bの後端にそれぞれ連結されている。
メインパイプ3とダウンパイプ4との間には連結パイプ5が3本程介装されている。
【0018】
ヘッドパイプ2は、ステアリングシャフト11を軸支して、ステアリングシャフト11から上方へハンドル12,12が左右に展開して形成され、ステアリングシャフト11から下方へはフロントフォーク13が延出して、その下端に前輪14が軸支されている。
【0019】
メインパイプ3の中央水平部3bと後側傾斜部3cに支持ブラケット3e,3fが突設され、ダウンパイプ4の中央水平部4bの後端に支持ブラケット4eが突設されるとともに、後側傾斜部4cの下部から後方へ長尺の支持ブラケット4fが突設されている。
【0020】
以上の左右それぞれ4つずつの支持ブラケット3e,3f,4e,4fに内燃機関20が懸架される。
内燃機関20は、4サイクル2気筒内燃機関であり、クランクケース21をダウンパイプ4の後側傾斜部4cより後方に位置させ、前傾したシリンダヘッド22が左右の後側傾斜部4c,4c間およびメインパイプ3の中央水平部3b,3b間に挿入された姿勢で所要箇所に突設されたマウントブラケット等が前記支持ブラケット3e,3f,4e,4fに支軸6,7,8,9を介して各々支持されることで内燃機関20は車体フレームに懸架される。
【0021】
この内燃機関20のクランクケース21にベルト式自動変速機30が前部を枢着されて後方へ延出している。
図2及び図3に示すようにクランクケース21内の左右水平方向に指向したクランク軸23の右端にはACジェネレータ27のアウタロータ27aが嵌着され、その側方をケースカバー24が覆っており、同ケースカバー24にACジェネレータ27のインナステータ27bが支持されている。
【0022】
このケースカバー24のクランク軸23と同軸の開口部にベアリング25を介して回転軸26が右方に突設されており、同突設部にベルト式自動変速機30の右側変速機ケース31の前端部31aが嵌着されている(図3参照)。
右側変速機ケース31は、前端部31aからクランクケース21の後面に沿って内側に回り込んだ連結部31bを介して後方にフォーク部31cを延出している。
【0023】
一方クランク軸23の左端は、クランクケース21を貫通して左方に突出しており、この突出部に遠心変速機構を備えたドライブプーリ33が設けられている。
クランクケース21のクランク軸23が貫通する外側面のクランク軸21の周囲に環状支持部材28が固着され、同環状支持部材28にベアリング29を介して左側変速機ケース32の前端部32aが揺動自在に支持されている。
【0024】
左側変速機ケース32は、前端部32aからクランクケース21の後面に沿って内側に回り込んだ連結部32bと後方へ延出したフォーク部32cとを有する。
クランクケース21の後面に沿って回り込んだ左右の連結部31b,32bどうしは当接して連結し左右の変速機ケース31,32は一体に合体され、クランク軸23を中心に左右フォーク部31c,32cが上下に揺動自在に支持される。
【0025】
左側変速機ケース32のフォーク部32cの後部はミッション室をなし、ドリブン軸34が回転自在に支持され、同ドリブン軸34に遠心クラッチ37を介してドリブンプーリ35が軸支されている。
このドリブンプーリ35と前記ドライブプーリ33との間にVベルト36が架渡されてベルト式の自動変速機構を構成している。
【0026】
フォーク部32cの後部のミッション室内において、ドリブン軸34の右端の小径ギア38と中間軸39の大径ギア40とが噛合し、中間軸39の小径ギア41と車軸42の大径ギア43とが噛合して減速機構が構成されている。
車軸42は、左右のフォーク部31c,32c間に架設されており、フォーク部31c,32c間で後輪44が車軸42に支持されている。
【0027】
したがってベルト式変速機30を支持した左右変速機ケース31,32は、クランク軸23を中心にフォーク部31c,32cを後輪44とともに上下に揺動自在に枢支される。
そして左側変速機ケース32の後端とメインパイプ3の後端との間にリヤクッション45が介装されている。
【0028】
左右のシリンダヘッド22,22から上方へそれぞれ延出した吸気管51,51が後方へ湾曲しクランクケース21の上に左右に並んで配設された気化器52,52に接続され、気化器52,52はその後方に配設されたエアクリーナ53に連結されている。
エアクリナ53は左右メインパイプ3,3の後側傾斜部3c,3c間又は下に配置され、その上方にヘルメット収納ボックス54が後側水平部3d,3d間に架設支持されている。
【0029】
エアクリーナ53は、その上面がヘルメット収納ボックス54の前側下面に沿った湾曲した形状をして、両者が嵌め合わされ、大型で嵩張るヘルメット収納ボックス54及びエアクリーナ53がスペース効率良く配置されている。
【0030】
シリンダヘッド22,22から下方へそれぞれ延出した排気管55,55は、クランクケース21の下方に回り込んで後方へ延び、一本に結合されて車体の右側面に出て立ち上がり、後輪44の右側に支持されるマフラー56に連結されている。
なおクランクケース21の下端にはメインスタンド59が起伏自在に取り付けられている。
【0031】
シリンダヘッド22,22の前方には、上側のメンパイプ3,3の中央水平部3b,3b及びダウンパイプ4,4の中央水平部4b,4bの4本のパイプに囲まれて燃料タンク57が架設支持されている。
ダウンパイプ4,4の前側鉛直部4a,4a間にはラジエータ58が架設されている。
【0032】
ヘッドパイプ2の前方はフロントカバー61で覆われ、その左右下方両側をレッグシールド62が覆い、メインパイプ3,3の前側傾斜部3a,3aおよび中央水平部3b,3bをチャンネル状をしたフロアトンネルカバー63が上方から覆い、その左右下端縁から左右側方に水平に延出したフロアステップ64a,64aを有するフロアカバー64,64がダウンパイプ4,4の中央水平部4b,4bを外側から覆っている(図4参照)。
【0033】
フロアトンネルカバー63の後側上部は大きくU字状に開口して、同開口にシリンダヘッド22及び気化器52等を臨ませており、フロアトンネルカバー63の後端縁に連接したリヤカバー65がメインパイプ3,3の後側傾斜部3c,3c及び後側水平部3d,3dを側方から覆っている。
【0034】
そしてフロアトンネルカバー63の後側上部のU字状開口を運転者用シート66が前端を枢支されて開閉自在に覆い、リヤカバー63の上部開口を添乗者用シート67が後端を枢支されて開閉自在に覆う。
したがって運転者用シート66は、シリンダヘッド22及び気化器52等を上から覆い、添乗者用シート67は、ヘルメット収納ボックス54の開口を上から覆うことに
なる。
【0035】
車体フレームに懸架された内燃機関20はシリンダヘッド22を前傾させているので、その上方を覆う運転者用シート66は低く配置することができ、ゆったりとしたライディングポジションを確保することができる。
【0036】
また添乗者用シート67は、運転者用シート66の後方に一段高い位置に設けたので、その下方にヘルメット収納ボックス54を配置するとともに、その下面に沿ってエアクリーナ53を配置したので、大型のヘルメット収納ボックス54及びエアクリーナ53をスペース効率良く配置することができる。
【0037】
フロアステップ64a,64aの足載せフロア部64b,64bより後方に内燃機関20が位置するので、内燃機関20に邪魔されずにフロアスペースを広く確保することができる。
また内燃機関20の前方に大きな空間を確保でき、燃料タンク57等の大型の補機類を配置することができる。
【0038】
車体フレームに懸架された内燃機関20とは、別に独立してベルト式変速機30が後輪44を後端に軸支して揺動自在に支持されるので、内燃機関20を一体としない分、リヤクッション45が支持する揺動部分が大幅に軽量化され、スクータ型自動二輪車1としての高速走行性を向上させることができる。
因みに従来140km/h前後の最高速領域のものが、160km/h程度に最高速領域を高めることができる。
【0039】
後輪44を軸支する変速機ケース31,32がクランクケース21にクランク軸23と同軸に枢支されるので、ホイールベースを短縮することができる同時に、内燃機関20の前方に適当な配設空間とフロアスペースを容易に確保することができる。
【0040】
次に車体後部の構成を変えたスクータ型自動二輪車70の実施の形態を図5に示す。
なお前記実施の形態と同じ部材は同じ符号を用いる。
本スクータ型自動二輪車70は、リヤカバー71の後部にヘルメット収納ボックス72が形成されており、同ヘルメット収納ボックス72の後方に向いた開口を蓋部材73が開閉自在に閉じている。
【0041】
このヘルメット収納ボックス72と運転者用シート66との間に添乗者用シート74が開閉自在に設けられており、同添乗者用シート74の下方には燃料タンク75が配設されている。
燃料タンク75の前側下面に沿ってエアクリーナ53が配置される。
【0042】
添乗者用シート74は、運転者用シート66より一段高く配置されているので、その下方に燃料タンク75を配置するスペースを十分確保できるとともに、さらに燃料タンク75の後方にヘルメット収納ボックス72も備えることができる。
内燃機関20の前方のスペースが空くので、物品収納部または補機類等の配置に利用することができる。
【0043】
また別の実施の形態に係るスクータ型自動二輪車80について図6に図示し説明する。
本スクータ型自動二輪車80は、搭載される内燃機関81がクランクケースに一体に変速機82を備え、内燃機関81とは独立し変速機82とは別体のリヤフォーク83が後端に後輪84を軸支して揺動自在に支持された構成のものである。
【0044】
車体フレームは、ヘッドパイプ85の上部から延出する左右一対のメインパイプ86,86が前記メインパイプ2と概ね同じ形状をなし、前側傾斜部86a,中央水平部86b,後側傾斜部86c,後側水平部86dからなり、ヘッドパイプ85の下部から延出する左右一対のダウンパイプ87,87が前側傾斜部87a,中央水平部87b,後側傾斜部87cからなるが、前記ダウンパイプ4とは異なり、中央水平部87bが後方に長く延びて、その後端を斜め上方に屈曲した後側傾斜部87cがメインパイプ86の後側水平部86dに連結している。
【0045】
上下のメインパイプ86,ダウンパイプ87の中央水平部86b,87bの後半部に内燃機関81が搭載され、前半部には燃料タンク85が搭載されており、燃料タンク98の左右側方がフロア部99となっている。
したがって内燃機関81は,フロア部99より後方に位置する。
【0046】
内燃機関81の上方を運転者用シート88が開閉自在に覆っている。
運転者用シート88の後方に添乗者用シート89が一段高く配置され、その下方にヘルメット収納ボックス90が設けられ、ヘルメット収納ボックス90とシリンダの間にエアクリーナ91及び気化器92が配設されている。
【0047】
内燃機関81のクランクケースの後方に設けられた変速機82の変速機ケース後端にブラケット95が取り付けられ、同ブラケット95にリヤフォーク83の前端がピボット96により枢着され、上下に揺動するリヤフォーク83の後端に後輪84が軸支されている。
このリヤフォーク83の中央幾らか後ろ寄り箇所とメインパイプ86の後側水平部86dの前部との間にリヤクッション97が介装されている。
【0048】
内燃機関81とは独立して揺動するリヤフォーク83を介して後輪84を支持したので、揺動部分が大幅に軽量化され、高速走行性を向上させることができる。
また揺動部分が小さく周囲に空間を大きく確保する必要がないので、効率的な部品配置ができる。
さらに内燃機関81をフロア部99の後方に配置したので、フロアスペースを広く確保することができるとともに、フロア部99に燃料タンク98を設けることができる。
【0049】
次にさらにまた別の実施の形態に係るスクータ型自動二輪車100について図7ないし図13に基づき説明する。
本スクータ型自動二輪車100の車体フレームは、ヘッドパイプ101の上部から左右一対のメインパイプ102,102が後方へ斜め下向きに側面視で直線的に延出しており、ヘッドパイプ101の下部から後方へ略水平に延びた左右一対のサポートパイプ103,103がメインパイプ102,102に連結されてメインパイプ102,102の前部を支持している。
【0050】
そしてこのサポートパイプ103,103の中間部から左右一対のダウンパイプ104,104が左右に広がって下方へ急傾斜角度で延出して前側鉛直部104a,104aをなし、下端で後方へ屈曲して中央水平部104b,104bを形成し、その後端で上方へ屈曲して後側傾斜部104c,104cを形成している。
【0051】
この後側傾斜部104c,104cの下部に前記メインパイプ102,102の後端が連結されて側面視で概ね三角形状をなすメインパイプ102とダウンパイプ104の間には補強パイプ105が介装されている。
【0052】
メインパイプ102,102の中央より若干後寄り部分に前端を固着して水平に近い僅かに斜め上向きにシートレール106,106が後方へ車体後部まで延びており、同シートレール106,106の中央部に前記ダウンパイプ104,104の後側傾斜部104c,104cの上端が連結されてシートレール106,106を下から支持する構造となっている。
【0053】
ヘッドパイプ101は、ステアリングシャフト111を軸支して、その上方へハンドル112,112が左右に展開して形成され、下方へはフロントフォーク113が延出して、その下端に前輪114が軸支されている。
【0054】
ダウンパイプ104の後側傾斜部104cの上下に支持ブラケット104d,104eが後方へ向けて突設されており、左右にそれぞれ対をなす支持ブラケット104d,104eに内燃機関120が懸架される。
【0055】
内燃機関120は、4サイクル2気筒内燃機関であり、クランクケース121をダウンパイプ104の後側傾斜部104cより後方に位置させ、クランクケース121に順次重ねられて合体したシリンダブロック122,シリンダヘッド123,シリンダヘッドカバー124が、前方へ幾らか上向きに突出した前傾姿勢で後側傾斜部104cより前方に突設されている。
【0056】
シリンダブロック122,シリンダヘッド123,シリンダヘッドカバー124は側面視で左右のダウンパイプ104の後側傾斜部104cとメインパイプ102の後部とシートレール106の前部とにより構成される左右の三角形の間に位置し、クランクケース121の上部に突設されたマウントブラケット121aと前部に突設されたマウントブラケット121bが前記支持ブラケット104d,104eに支軸107,108を介して各々支持されることで内燃機関120は車体フレームに懸架される。
【0057】
この内燃機関120のクランクケース121にベルト式自動変速機150が前部を枢着されて後方へ延出して後部に後輪172を軸支している。
内燃機関120の前傾したシリンダヘッド123の各シリンダから上方へそれぞれ延出した吸気管131,131が後方へ湾曲しクランクケース121の上に左右に並んで配設された気化器132,132に接続され、気化器132,132はその後方に配設されたエアクリーナ133に連結されている。
エアクリナ133は左右シートレール106,106の間に配置され、その上方にヘルメット収納ボックス134がシートレール106,106に架設支持されている。
【0058】
内燃機関120及び気化器132の上方を運転者用シート135が開閉自在に覆い、ヘルメット収納ボックス134及びその後部の上方を添乗者用シート136が開閉自在に覆っている。
【0059】
シリンダヘッド123から下方へそれぞれ延出した排気管137,137は、クランクケース121の前方を右側に寄ってクランクケース121の右側面に沿って後方へ延び、一本に結合されて車体の右側面を斜め上方に立ち上がり、後輪172の右側に支持されるマフラー138に連結されている。
内燃機関120の前には、上側の左右2本のメンパイプ102,102と前側及び下側の左右2本のダウンパイプ104,104の4本のパイプに囲まれて燃料タンク139が架設支持されている。
【0060】
本スクータ型自動二輪車100は、概ね以上のような構成をしている。
以下内燃機関120及びクランクケース121に枢着されるベルト式自動変速機150の構造を図8ないし図13を参照して説明する。
【0061】
クランクケース121は左右割りのクランクケース121L,121Rを合体するもので、図9に示すように同クランクケース121内の左右水平方向に指向したクランク軸125の右端にはACジェネレータ127のアウタロータ127aが嵌着され、その側方をケースカバー126が右クランクケース121Rに固着されて覆っており、同ケースカバー126にACジェネレータ127のインナステータ127bが支持されている。
【0062】
シリンダヘッド123には動弁機構140が設けられており、左右水平方向に指向した上下2本のカムシャフト141,141の右端に嵌着されたカムチェーンスプロケット142,142とクランク軸125の右クランクケース121Rより突出した根元部分に嵌着されたドライブチェーンスプロケット143との間にタイミングチェーン144が架渡されて動力が伝達されるようになっている。
カムシャフト141,141は、それぞれ吸気バルブ145と排気バルブ146を所定タイミングで駆動する。
【0063】
斯かる内燃機関120のクランクケース121に枢着されるベルト式自動変速機150について以下説明する。
右クランクケース121Rの右開口を塞ぎACジェネレータ127を覆うケースカバー126には、クランク軸125と同軸の開口部を有し、同開口部にベアリング154を介して回転軸155が右方に突設されており、同突設部にベルト式自動変速機150の右側変速機ケース151の基端部151aが嵌着されている(図9参照)。
【0064】
右側変速機ケース151は、基端部151aから右クランクケース121R の後面に沿って内側に回り込んだ連結部151bを有している。
図9及び図10に示すように右側変速機ケース151は、基端部151aに回転軸155が嵌着される円孔151cが形成されており、連結部151bには矩形をした連結合わせ面の上下前後の4つの角部にそれぞれボルト穴151dが穿孔されている。
【0065】
また連結部151bの後面上下2ヶ所にそれぞれ取付けボス部151eが後方へ突出しており、各取付けボス部151eの右側合わせ面にはボルト穴151fが穿設されている。
斯かる右側変速機ケース151における取付けボス部151eの右側合わせ面に右フォーク部材153の前端の左側合わせ面を合わせ、上下2ヶ所をボルト156によりボルト穴151fに螺着して右側変速機ケース151に右フォーク部材153を一体に連結して後方へ延出する。
【0066】
一方クランク軸125の左端は、左クランクケース121Lを貫通して左方に突出しており、この突出部に遠心変速機構を備えたドライブプーリ160が設けられている。
左クランクケース121Lのクランク軸125が貫通する外側面のクランク軸125の周囲に環状支持部材157が固着され、同環状支持部材157にベアリング158を介して左側変速機ケース152の基端部152aが揺動自在に枢支されている。
【0067】
左側変速機ケース152は、基端部152aから左クランクケース121Lの後面に沿って内側に回り込んだ連結部152bとさらに後方へ延出した左フォーク部152cとを有する。
クランクケース121の後面に沿って右側から回り込んだ右側変速機ケース151の連結部151bと左側から回り込んだ左側変速機ケース152の連結部152bとが互いに連結合わせ面どうしを当接し4ヶ所のボルト穴151eに4本のボルト159を螺着して左右の変速機ケース151,152を連結し左フォーク部152cと右フォーク部材153が相対向して一体に結合する。
【0068】
結合された一方の右側変速機ケース151はクランク軸125を中心にベアリング154により揺動自在に軸支され、他方の左側変速機ケース152はクランク軸125を中心にベアリング158により揺動自在に軸支されているので、相対した左フォーク部152cと右フォーク部材153は一体にクランク軸125を中心に上下に揺動自在に支持されることになる。
【0069】
左側変速機ケース152の左フォーク部152cの後部はミッション室をなし、ドリブン軸164が回転自在に支持され、同ドリブン軸164に遠心クラッチ163を介してドリブンプーリ162が軸支されている。
このドリブンプーリ162と前記ドライブプーリ160との間にVベルト161が架渡されてベルト式の自動変速機構を構成している。
【0070】
左フォーク部152cの後部とギアカバー165とにより画成されるミッション室内において、ドリブン軸164の右端の小径ギア166と中間軸167の大径ギア168とが噛合し、中間軸167の小径ギア169と車軸170の大径ギア171とが噛合して減速機構が構成されている。
車軸170は、左フォーク部152cと右フォーク部材153の間に回転自在に架設されており、左フォーク部152cと右フォーク部材153の間で後輪172が車軸170に支持されている。
【0071】
したがってベルト式変速機150を支持した左右変速機ケース151,152は、クランク軸125を中心に左フォーク部152c,右フォーク部材153及び後輪172を上下に揺動自在として枢支される。
そして左側変速機ケース152の後端とシートレール106の後端との間にリヤクッション173が介装される。
【0072】
後輪172を軸支する左フォーク部152cと右フォーク部材153のうち右フォーク部材153は、ボルト156により右側変速機ケース151に固着されているので、ボルト156を外してこの右フォーク部材153を取り外せば容易に後輪172のタイヤ交換等を行うことができる。
【0073】
ベルト式変速機150を収納する左側変速機ケース152の左側開口をベルトカバー180が塞ぎベルト式変速機150を左側から覆う。
ベルトカバー180は、カバー外壁181とカバー内壁182とを空隙を存して重ねた2重壁構造をなし、左側変速機ケース132にボルト183により固着される。
【0074】
カバー外壁181とカバー内壁182の各側面図を図11及び図12に示す。
図9,図11及び図13を参照してカバー外壁181は、前側膨出部181aが左側に膨出してエアクリーナ室を構成する形状が形成され、同前側膨出部181aの後側に沿って仕切り壁181bによって外気導入路181cが形成され、外気導入路181cは上部に左側に開口した外気口181c’に連通している。
カバー外壁181の後側膨出部181dは、椀状をなす。
【0075】
他方カバー内壁182は、図9,図12及び図13を参照して前側にエアクリーナ室を構成する有底円筒部182aが左側に膨出しており、同有底円筒部182aは円筒部が多数切り欠かれて残りの支柱で底部を支えている形状をしており、切欠きによる開口が大きく多数形成されいる。
同有底円筒部182aの後方に仕切り壁182bにより外気導入路182cが形成されている。
カバー内壁182の後側膨出部182dは、椀状をなす。
【0076】
前記カバー外壁181の内側に上記カバー内壁182が重ねられるが、カバー内壁182の有底円筒部182aの多数の切欠きによる開口を有する円筒部外周にクリーナエレメント185を巻装しておき、両者の後側膨出部181d,182d間には吸音材186を挟むようにする(図9参照)。
【0077】
ベルトカバー180の前側のドライブプーリ136を覆う部分には、冷却用エアクリーナ184が形成されることになる。
すなわちカバー外壁181の前側膨出部181a内を,円筒状のクリーナエレメント185により外周空間184aと内周空間184bとに仕切り、内周空間184bがベルト式変速機150の収納空間に連通している。
【0078】
そしてカバー外壁181の仕切り壁181bとカバー内壁182の仕切り壁182bにより外気導入路181cと外気導入路182cが一体に構成され(図13参照)、カバー外壁181に開口した外気口181c’が外気導入路181c,182cを介してクリーナエレメント185の外周空間184aと連通している。
こうして冷却用エアクリーナ184が構成されている。
【0079】
したがって冷却用エアクリーナ184は、カバー外壁181の中央上部に左側に向かって開口した外気口181c’から外気を導入し、導入された外気は外気導入路181c,182cを通って外周空間184aに至り、クリーナエレメント185により浄化されて内周空間184bに抜けてベルト式変速機150の収納空間に流入してベルト伝達機構を冷却することができる。
【0080】
またベルトカバー180の後側のドリブンプーリ162を覆う部分は、カバー外壁181とカバー内壁182の後側膨出部181d,182d間に吸音材186が挟み込まれ、防音カバー構造が形成されている。
【0081】
このようにベルトカバー180に冷却用エアクリーナ184と吸音材186が一体に設けられ、ベルト式変速機150の冷却効果と防音効果を果たすることができ、また予めカバー外壁181とカバー内壁182を組付けておけば組立工数も削減できる。
【0082】
以上のように本スクータ型自動二輪車100は、内燃機関120が車体フレームに懸架され、別に独立してベルト式変速機150がクランク軸125と同軸を枢軸として上下に揺動自在に支持されるので、リヤクッション173が支持する揺動部分の重量が内燃機関120を含まない分大幅に軽量化され、スクータ型自動二輪車としての高速走行性を向上させることができる。
【0083】
後輪172を軸支する変速機ケース151,152がクランクケース121にクランク軸125と同軸に枢支されるので、ホイールベースを短縮することができる同時に、内燃機関120の前方に燃料タンク139のような大型のものを配設することができる空間を有し、かつフロアスペースを容易に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係るスクータ型自動二輪車の全体側面図である。
【図2】同部分的に省略した平面図である。
【図3】同要部拡大平面図である。
【図4】図1においてIV−IV線に沿って切断したときの模式的に示した断面図である。
【図5】別の実施の形態に係るスクータ型自動二輪車の全体側面図である。
【図6】また別の実施の形態に係るスクータ型自動二輪車の全体側面図である。
【図7】さらに別の実施の形態に係るスクータ型自動二輪車の全体側面図である。
【図8】一部断面一部省略した内燃機関及びベルト式自動変速機の側面図である。
【図9】図9におけるIX−IX線に沿って切断した断面図である。
【図10】右側変速機ケースの左側面図である。
【図11】カバー外壁の側面図である。
【図12】カバー内壁の側面図である。
【図13】ベルトカバーの断面図(図11及び図12におけるXIII−XIII線で切断した断面図)である。
【符号の説明】
1…スクータ型自動二輪車、2…ヘッドパイプ、3…メインパイプ、4…ダウンパイプ、5…連結パイプ、6,7,8,9…支軸、
11…ステアリングシャフト、12…ハンドル、13…フロントフォーク、14…前輪、
20…内燃機関、21…クランクケース、22…シリンダヘッド、23…クランク軸、24…ケースカバー、25…ベアリング、26…回転軸、27…ACジェネレータ、28…環状支持部材、29…ベアリング、
30…ベルト式変速機、31…右側変速機ケース、32…左側変速機ケース、33…ドライブプーリ、34…ドリブン軸、35…ドリブンプーリ、36…Vベルト、37…遠心クラッチ、38…小径ギア、39…中間軸、40…大径ギア、41…小径ギア、42…車軸、43…大径ギア、44…後輪、45…リヤクッション、
51…吸気管、52…気化器、53…エアクリーナ、54…ヘルメット収納ボックス、55…排気管、56…マフラー、57…燃料タンク、58…ラジエータ、59…メインスタンド、
61…フロントカバー、62…レッグシールド、63…フロアトンネルカバー、64…フロアカバー、65…リヤカバー、66…運転者用シート、67…添乗者用シート、
70…スクータ型自動二輪車、71…リヤカバー、72…ヘルメット収納ボックス、73…蓋部材、74…添乗者用シート、75…燃料タンク、
80…スクータ型自動二輪車、81…内燃機関、82…変速機、83…リヤフォーク、84…後輪、85…ヘッドパイプ、86…メインパイプ、87…ダウンパイプ、88…運転者用シート、89…添乗者用シート、90…ヘルメット収納ボックス、91…エアクリーナ、92…気化器、95…ブラケット、96…ピボット、97…リヤクッション、98…燃料タンク、99…フロア部、
100…スクータ型自動二輪車、101…ヘッドパイプ、102…メインパイプ、103…サポートパイプ、104…ダウンパイプ、105…補強パイプ、106…シートレール、107,108…支軸、
111…ステアリングシャフト、112…ハンドル、113…フロントフォーク、114…前輪、
120…内燃機関、121…クランクケース、122…シリンダブロック、123…シリンダヘッド、124…シリンダヘッドカバー、125…クランク軸、126…ケースカバー、127…ACジェネレータ、
131…吸気管、132…気化器、133…エアクリーナ、134…ヘルメット収納ボックス、135…運転者用シート、136…添乗者用シート、137…排気管、138…マフラー、139…燃料タンク、
140…動弁機構、141…カムシャフト、142…カムチェーンスプロケット、143…ドライブチェーンスプロケット、144…タイミングチェーン、145…吸気バルブ、146…排気バルブ、
150…ベルト式自動変速機、151…右側変速機ケース、152…左側変速機ケース、153…右フォーク部材、154…ベアリング、155…回転軸、156…ボルト、157…環状支持部材、158…ベアリング、159…ボルト、160…ドライブプーリ、161…Vベルト、162…ドリブンプーリ、163…遠心クラッチ、164…ドリブン軸、165…ギアカバー、166…小径ギア、167…中間軸、168…大径ギア、169…小径ギア、170…車軸、171…大径ギア、172…後輪、173…リヤクッション、
180…ベルトカバー、181…カバー外壁、182…カバー内壁、183…ボルト、184…冷却用エアクリーナ、185…クリーナエレメント、186…吸音材。
Claims (5)
- 低床式フロアを有するスクータ型自動二輪車において、
内燃機関を前記フロアの後方でシート下方に配置し、
前記内燃機関とは独立して揺動する支持部材を介して後輪を支持し、
前記内燃機関は車幅方向に2気筒を並列に並べて車体フレームに固定され、
前記内燃機関のシリンダを前傾させ、その前方に補機類又は物品の配設空間を設け、
シリンダヘッドの前方に補機類又は物品を配置し、
前記車体フレームは、ヘッドパイプから左右一対のメインフレームが下方へ屈曲して後方に延び、前記ヘッドパイプから左右一対のダウンフレームが下方へ屈曲して前記メインフレームの下方を後方に延びたのち上方に屈曲した屈曲部の上端が前記メインフレームに連結して構成され、
前記メインフレームと前記ダウンフレームをフロアトンネルカバーが上方から覆い、
前記フロアトンネルカバー内に補機類を配置し、
前記シリンダヘッドから延出する吸気通路を前後方向に配設し、
前記クランク軸を前記ダウンフレームの屈曲部より後方に配置することを特徴とするスクータ型自動二輪車。 - 低床式フロアを有するスクータ型自動二輪車において、
内燃機関を前記フロアの後方でシート下方に配置し、
前記内燃機関とは独立して揺動する支持部材を介して後輪を支持し、
前記内燃機関は車幅方向に2気筒を並列に並べて車体フレームに固定され、
前記内燃機関のシリンダを前傾させ、その前方に補機類又は物品の配設空間を設け、
シリンダヘッドの前方に補機類又は物品を配置し、
前記支持部材は、ベルト式自動変速機を有し、前記内燃機関のクランク軸と同軸に枢支されることを特徴とするスクータ型自動二輪車。 - 前記支持部材は前記クランク軸の両端にそれぞれ枢支される左右フォーク部を備え、前記内燃機関のクランクケースの後面に沿って前記左右フォーク部を連結する連結部が形成されることを特徴とする請求項1または請求項2記載のスクータ型自動二輪車。
- 運転者用シートの後方に添乗者用シートを一段高く設け、
同添乗者用シートの下方にヘルメット収納ボックスを配置し、
同ヘルメット収納ボックスの下面に沿わせてエアクリーナを配置したことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかの項記載のスクータ型自動二輪車。 - 前記内燃機関は、前記ダウンフレームの屈曲部から後方に突設された支持ブラケットに支持され、前記シリンダヘッドが左右屈曲部間に挿入された姿勢で前記車体フレーム間に懸架されることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかの項記載のスクータ型自動二輪車。
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