JP4523899B2 - 伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度熱延鋼板 - Google Patents

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Description

本発明は、伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度熱延鋼板に関するものである。
自動車部品の内、特に足回り系と呼ばれるフレーム類やアーム類などには、高強度熱延鋼板が広く用いられている。これらの部品には、走行中の振動に対する耐久性の観点から高い疲労特性が要求される。こうした要求に対しては、幾つかの鋼板が提案されている。
例えば、(特許文献1)には、フェライト相とマルテンサイト相の複合組織鋼板中に微細なCuの析出または固溶体を分散させた鋼板(一般にDP鋼板と呼称される)が提案されている。
こうしたDP鋼板は、強度と延性のバランスや疲労特性には優れるものの、穴広げ試験で評価される伸びフランジ性には劣ることが知られている。その理由の一つは、DP鋼板は、軟質なフェライト相と硬質なマルテンサイト相の複合体であるため、穴広げ加工時に両相の境界部が変形に追随できず、破断の起点になり易いからであると考えられる。
これに対して伸びフランジ性にも疲労特性にも優れた熱延鋼板の提案がなされている。(特許文献2)がその一例で、鋼板の組織をベイナイト相主体とし、構成するその他の相との硬度差を小さくし、更に、粗大な炭化物の生成を回避することなどを要旨とする。
特開平11−199973号公報 特開2001−200331号公報
(特許文献2)に開示されている様な、鋼板組織をベイナイト相主体とし、粗大な炭化物の生成を抑制した熱延鋼板は、確かに優れた伸びフランジ性を示すものの、Cuを含有したDP鋼板に比べて、その疲労特性は必ずしも優れているとは言えない。また、粗大な炭化物を抑制しただけでは、厳しい穴広げ加工を行った場合に亀裂の発生を抑制できない。
本発明者らの研究によれば、これらの原因は、鋼板中の酸化物を主体とする介在物の存在にあることが分かった。
繰り返し変形を受けると鋼板の表層またはその近傍に存在する粗大なクラスター状介在物の周辺に内部欠陥が発生し、亀裂として伝播することによって疲労特性を劣化させると共に、やはり、粗大なクラスター状介在物は、穴広げ加工時の割れ発生の起点となり易いためである。したがって、鋼中の介在物をできる限り微細球状化することが望ましい。
一般に、鋼の脱酸はAlを用いて行われるが、Al脱酸により生成したアルミナ系介在物はクラスター化し易く、粗大な介在物として鋼中に残留する。これが、上記のように疲労特性と伸びフランジ性(穴広げ加工性)を低下させていると考えられるが、介在物微細球状化制御の視点にたって伸びフランジ性と疲労特性に優れる熱延鋼板を提案した例は見られない。
このような状況を鑑み、本発明者らは、(a)粗大化し易いアルミナ系介在物を生成させないために、殆どAl脱酸することなく、(b)介在物がクラスター化して粗大にならず、且つ、(c)割れ発生の起点になり難い球状介在物へと改質する脱酸方法、および、(d)疲労特性を劣化させない添加元素の解明を中心に鋭意研究を進め、更に、化学成分や製造方法にも検討を加えて本発明を完成させた。
その要旨は、以下の通りである。
(1)C:0.03〜0.10質量%、Si:0.05〜1.5質量%、Mn:1.0〜3.0質量%、P:0.05質量%以下、S:0.01質量%以下、N:0.0005〜0.01質量%、酸可溶Al:0.005質量%以下、Ti:0.005質量%以上、NdもしくはPrの1種または2種の合計:0.0002〜0.04質量%含有し、更に、下記式を満足し、
−0.05≦{Ti−(48/12)×C−(48/14)×N−(48/32)×S}≦0.2
残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼であり、その鋼中には、平均の介在物組成で、Nd酸化物もしくはPr酸化物の1種または2種の合計が3〜90質量%、Ti酸化物が10〜97質量%、Alが50質量%以下の範囲の介在物を含み、かつ、介在物の個数割合で、50%以上が少なくとも球状、紡錘状の介在物を含み、かつ、0.5μm以上10μm以下の介在物が1000個/cm 以上、100000個/cm 以下存在することを特徴とする伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度熱延鋼板。
(2)C:0.03〜0.10質量%、Si:0.05〜1.5質量%、Mn:1.0〜3.0質量%、P:0.05質量%以下、S:0.01質量%以下、N:0.0005〜0.01質量%、酸可溶Al:0.005質量%以下、Ti:0.005質量%以上、NdもしくはPrの1種または2種の合計:0.0002〜0.04質量%、および、Nbを含有し、更に、下記式を満足し、
−0.05≦{Ti+(48/93)×Nb−(48/12)×C−(48/14)×N−(48/32)×S}≦0.2
残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼であり、その鋼中には、平均の介在物組成で、Nd酸化物もしくはPr酸化物の1種または2種の合計が3〜90質量%、Ti酸化物が10〜97質量%、Alが50質量%以下の範囲の介在物を含み、かつ、介在物の個数割合で、50%以上が少なくとも球状、紡錘状の介在物を含み、かつ、0.5μm以上10μm以下の介在物が1000個/cm 以上、100000個/cm 以下存在することを特徴とする伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度熱延鋼板。
)Cu:0.2〜2.0質量%、Ni:0.1〜1.0質量%を含有することを特徴とする前記(1)または(2)に記載の伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度熱延鋼板。
)鋼板中のベイニティック・フェライト相の面積率が80〜100%であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度熱延鋼板。
本発明の方法によれば、伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度熱延鋼板を得ることができる。
まず、本発明を完成するに至った実験について説明する。
本発明者らは、C:0.05質量%、Si:0.05質量%、Mn:1.5質量%、P:0.02質量%以下、S:0.001質量%を含有し残部がFeである溶鋼に対して様々な元素を用いて脱酸を行い、更に、TiやNbの添加を経て鋼塊を製造した。
得られた鋼塊を熱間圧延して4mmの熱延鋼板とした。これらの鋼板を、穴広げ試験および疲労試験に供すると共に、鋼板中の介在物粒径分布、形態および平均組成を調査した。
その結果、Alで殆ど脱酸することなく、少なくともNd、Prを添加して脱酸した鋼板が最も伸びフランジ性と疲労特性に優れること、その理由は、上記脱酸により生成した球状介在物が鋼板中に微細分散するため、繰り返し変形時や穴広げ加工時に介在物が割れ発生の起点や亀裂伝播の経路となり難いためであることを見いだした。
これを基に、熱延条件の検討を行って、本発明を完成させるに至った。
以下に、本発明の限定理由を述べる。まず、化学成分の限定理由について述べる。
Cは、鋼板の強度を確保するために必須の元素であり、高強度鋼板を得るためには、少なくとも0.03質量%が必要である。しかし、過剰に含まれると、後述するように、加工性の向上を目的としてTiやNbによる炭化物を生成させたり、冷却条件を駆使しても、伸びフランジ特性に好ましくないセメンタイト相の生成が避けられないので、0.10質量%以下とする。
Siは、伸びフランジ性を劣化させることなく強度を確保するのに有効な元素であり、少なくとも0.05質量%が必要であるが、過剰に含まれると、伸びフランジ性に好ましくないポリゴナル・フェライト相を生成しやすくなるので、その上限は1.5質量%とする。
Mnは、C、Siとともに鋼板の高強度化に有効な元素であり、1.0質量%以上は含有させる必要があるが、3.0質量%を超えて含有させると延性が劣化するため、上限を3.0質量%とする。
Pは、固溶強化元素として有効であるが、偏析による加工性の劣化が懸念されるので、0.05質量%以下にする必要がある。Pの下限値は0質量%を含む。
Sは、MnSなどの介在物を形成して伸びフランジ性を劣化させる他、Cを炭化物とする目的で含有させるTiと結合してその歩留まりを低下させるなどの有害な作用をする。したがって、できるだけ抑制すべきであるが、0.01質量%以下であれば許容される。Sの下限値は0質量%を含む。
Nは、Cを炭化物とする目的で含有させるTiと結合してその歩留まりを低下させる。よって、できるだけ抑制すべきであるが0.01質量%以下であれば許容される。一方、0.0005質量%未満とするにはコストがかかるので、0.0005質量%を下限とする。
酸可溶Alは、その酸化物がクラスター化して粗大になり易いため、極力抑制することが望ましい。しかしながら、予備的な脱酸材として0.005質量%までは用いることが許容される。これは、酸可溶Al濃度が0.005質量%超になると、介在物中のAl含有率が50質量%を超え介在物のクラスター化が起こるためである。
クラスター化防止の観点から、酸可溶Al濃度は低い方が良く、下限値は0質量%を含む。また、酸可溶Al濃度とは、酸に溶解したAl量を測定したもので、溶存Alは酸に溶解し、Alは酸に溶解しないことを利用した分析方法である。
Tiは(本発明ではAlで殆ど脱酸しないため)、脱酸材として0.005質量%以上必要である。Ti濃度が0.005質量%未満では、介在物中のTi酸化物含有率が10質量%未満となり、疲労特性や伸びフランジ性に良い介在物組成、形態および粒径に制御できないためである。
また、TiやNbは、C、SおよびNを析出物として固定することによって、鋼板の加工性を向上させる働きをする。一方、TiやNbが必要以上に添加された場合には、それらは、フリーのTiやフリーのNbとして鋼中に存在し、再結晶温度を上昇させ、熱間加工組織が存在し易くなり延性を損ねる。
そして、その最適なTiやNbの添加量の範囲は、各元素の化学当量を用いて記述される以下の中辺を指標として用いると、適切に表すことができる。
ここで、以下の中辺は、C、NやSと結合して炭化物、窒化物、硫化物となっていない、フリーのTi量とNb量の合計を意味しており、ここでは、その合計を、相当Ti量(Nbは上記のTiと同様の性質を有するため、Nb量はTi量に換算している。)で表している。
すなわち、この中辺の値が−0.05未満では、延性、伸びフランジ性が劣り、また、0.2を超えると、延性が劣化する。以上の理由から、
−0.05≦{Ti+(48/93)×Nb−(48/12)×C−(48/14)×N−(48/32)×S}≦0.2
の関係を満たすように限定する。
尚、Nbを添加しない場合は、Nb量を0とおいた以下の関係を満たすように限定する。
−0.05≦{Ti−(48/12)×C−(48/14)×N−(48/32)×S}≦0.2
Nd、Prは、Ti脱酸により生成したクラスター状のTi酸化物(例えば、Ti,Ti)を改質し、微細球状で疲労特性や穴広げ性に良好なNd酸化物(例えば、Nd、NdO)−Pr酸化物(例えば、Pr、PrO)−Ti酸化物系介在物、Nd酸化物−Ti酸化物系介在物、あるいは、Pr酸化物−Ti酸化物系介在物にする効果を有している(上記介在物の中にはAl予備脱酸や耐火物溶損の影響によりAlを一部含有する場合もある。)。
このような介在物改質効果を得るためには、NdもしくはPrの1種または2種の合計濃度を、0.0002質量%以上0.04質量%以下にする必要がある。NdもしくはPrの1種または2種の合計濃度が0.0002質量%未満では、Ti酸化物を改質できず、0.04質量%超ではTi酸化物が還元され、殆ど、Nd酸化物やPr酸化物になり、制御したい複合介在物となり難い。
また、選択元素として、Cu、Niが挙げられる。
Cuは、固溶強化元素または析出強化元素として鋼板の高強度化に利用できるため、上記の元素に加えて、更に添加することで疲労強度を一層向上させることができるため、好ましい。
しかし、0.2質量%以上を添加しないと、その効果は少なく、コスト上昇を招くのみであるので、添加する場合には、0.2質量%を下限値とすることが好ましい。一方、2.0質量%を超えて含有させると、熱延後の鋼板表面性状を悪化させるので、2.0質量%を上限とすることが好ましい。
Niは、上記Cuによる熱延表面性状悪化を緩和する効果があり、Cuの半分程度を目安に添加することが望ましい。したがって、その下限値は0.1質量%である。一方、1.0質量%を超えて添加しても、その効果は飽和し、コストの上昇につながるので、1.0質量%を上限とすることが好ましい。
次に、鋼板中における介在物の存在条件について述べる。
伸びフランジ性と疲労特性に優れた鋼板を得るためは、鋼板中の介在物は、割れ発生の起点や割れ伝播の経路となり難いように、球状で微細に分散していることが重要である。 本発明の鋼板における介在物の平均組成、形態および粒径分布を調査した。
介在物の平均組成は、ランダムに選んだ複数個(例えば、20個程度)の介在物を組成分析し、平均濃度を算出することにより求めることができる。
その結果、介在物の平均組成で、Nd酸化物もしくはPr酸化物の1種または2種の合計が3〜90質量%以上、Ti酸化物が10〜97質量%、Alが50質量%以下の範囲となるように組成制御された鋼板では、伸びフランジ性と疲労特性が向上することが判明した。
平均組成で、Nd酸化物もしくはPr酸化物の1種または2種の合計が3質量%未満では、NdやPr添加による介在物改質効果が小さく、反対に、Nd酸化物もしくはPr酸化物の1種または2種の合計が90質量%超では、過改質となり、何れの場合も、介在物は微細球状化しないため、平均組成でNd酸化物もしくはPr酸化物の1種または2種の合計の下限値は3質量%、上限値は90質量%とした。
また、平均組成で、Ti酸化物が97質量%超では、Nd酸化物やPr酸化物による改質が不十分であり、反対に、Ti酸化物が10質量%未満でも、介在物の微細化球状化が困難となるため、平均組成でTi酸化物の上限値を97質量%、下限値を10質量%とした。
更に、介在物中にAlを含有しないことが微細球状化の点から好ましいが、Al予備脱酸や耐火物溶損の影響により、介在物中のAl含有率が高くなることがある。この場合、平均組成で介在物中には50質量%以下に限ってAlの混入が許容できる。
下限値は0質量%を含む。これは、介在物中のAl含有率が50質量%を超えると、NdやPrによる改質効果が損なわれ、介在物のクラスター化が進行してしまうためである。
なお、本発明において、上記組成の酸化物以外にスラグや耐火物などから混入する不可避的不純物酸化物は許容される。
介在物の形態は、ランダムに選んだ複数個の介在物を光学顕微鏡で観察することができる。例えば、ランダムに選んだ100個の介在物を光学顕微鏡の100倍と1000倍で観察し、球状、紡錘状、クラスター状とその他に分類し、球状と紡錘状の介在物の個数割合を求めることが推奨される。
なお、球状とは、介在物の長径と短径がほぼ等しく円形として観察されるもの、紡錘状とは、介在物の長径/短径が3以下で楕円形に観察されるもの、クラスター状とは、介在物粒子が2個以上密集したもの、その他としては、例えば、角張った単体状のものとして、それぞれ定義される。
その結果、球状と紡錘状の介在物の個数割合が50%以上の鋼板では、伸びフランジ性と疲労特性が向上することが判明した。球状と紡錘状の介在物の個数割合が50%未満では、クラスター状の介在物が相対的に増え、伸びフランジ性と疲労特性が低下するため、その下限値を50%とした。
介在物の粒径分布は、光学顕微鏡(例えば100倍と1000倍)で介在物を観察して、その粒径を測定することにより得ることができる。ここで粒径とは、円相当直径を意味している。
介在物の粒径については、伸びフランジ性に有害な10μmを超える大型介在物が減少すると、0.5μm以上10μm以下の微細な介在物個数が増加し、このサイズの介在物個数が伸びフランジ性と良く対応するため、0.5μm以上10μm以下に着目した。
その結果、0.5μm以上10μm以下の介在物が1000個/cm以上、100000個/cm以下存在する鋼板では、伸びフランジ性と疲労特性が向上することが判明した。
0.5μm以上10μm以下の介在物が1000個/cm未満では、10μmを超える伸びフランジ性に有害な大型介在物が鋼板中に観察され、割れ発生の起点となるため、その個数密度の下限値は1000個/cmとした。また、0.5μm以上10μm以下の介在物が100000個/cm超存在する場合には、介在物の個数が多過ぎて伸びフランジ性と疲労特性が低下するため、その上限値は100000個/cmとした。
最後に、鋼板の組織について説明する。
優れた伸びフランジ性を得るためにはベイニティック・フェライトを主相とする組織にすることが好ましい。
鋼板中のベイニティック・フェライト相の面積率は、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更により好ましくは100%である。また、残部はベイナイト相またはポリゴナル・フェライト相を20%以下含有することができ、マルテンサイト相が含まれることは極力避けることが望ましい。こうした、鋼板組織制御に加えて介在物を微細球状化して分散させることにより、同時に優れた疲労特性も得られる。
本発明の鋼板の製造方法については、以下の通りである。
まず、溶鋼の溶製については、常法により転炉で吹錬した溶鋼、あるいは転炉で吹錬し、続いて真空脱ガス処理した溶鋼に、合金を添加して、本発明の成分範囲に調整することによって行うことができる。
なお、合金の添加順序は特に規定しないが、NdもしくはPrの1種または2種の添加は、Ti添加の後に実施することが好ましい。これは、Ti添加で一旦Ti酸化物を生成した後、NdやPrを添加してTi酸化物を改質する方が、改質制御性が良いためである。このようにして溶製した溶鋼を、常法により連続鋳造してスラブが得られる。
次に、高強度熱延鋼板を製造するための熱延条件について述べる。
熱延前のスラブの加熱温度は、鋼中のTiCやNbCなどを固溶させるため、1150℃以上とすることが好ましい。これらを固溶させておくことにより、圧延後の冷却過程で、ポリゴナル・フェライトの生成が抑制され、伸びフランジ性にとって好ましいベイニティック・フェライト相を主体とする組織が得られる。
一方、熱延前の加熱温度が1250℃を超えると、スラブ表面の酸化が著しくなり、特に、粒界が選択的に酸化されることに起因する楔状の表面欠陥がデスケーリング後に残り、それが圧延後の表面品位を損ねるので、上限を1250℃とすることが好ましい。
上記の温度範囲に加熱された後に、圧延を行うが、その工程の中で、仕上げ圧延完了温度は鋼板の組織制御上重要である。仕上げ圧延完了温度が、Ar点+50℃未満では、表層部の結晶粒径が粗大となって疲労特性上好ましくない。一方、Ar点+150℃超では、伸びフランジ性にとって好ましくないポリゴナル・フェライト相が生成し易くなるので、上限をAr点+150℃とすることが好ましい。
また、仕上げ圧延後の鋼板の平均の冷却速度を40℃/秒以上とし、300〜500℃の範囲まで冷却することが、ポリゴナル・フェライト相の生成を抑制し、ベイニティック・フェライト相を主体とする組織を得るために重要である。
上記の平均の冷却速度が40℃/秒未満では、ポリゴナル・フェライト相が生成しやすくなり好ましくない。一方、組織制御の上では、冷却速度に上限を設ける必要はないが、余りに速い冷却速度は鋼板の冷却を不均一にするおそれがあり、また、そうした冷却を可能にするような設備の製造には多額の費用が必要となり、そのことで、鋼板の価格上昇を招くと考えられる。このような観点から、冷却速度の上限は100℃/秒とするのが好ましい。
また、冷却停止温度が300℃より低くなると、伸びフランジ性に好ましくないマルテンサイト相が生成するので、下限を300℃とする。したがって、熱延コイルの巻き取り温度は、伸びフランジ性を極端に悪化させるマルテンサイト相の生成を抑制するため、300℃以上とすることが好ましい。
一方、冷却停止温度が500℃超では、ポリゴナル・フェライト相の生成を抑制できず、また、Cuを含有している鋼では、フェライト相中に、Cuが局在的に析出して疲労特性向上効果を低下させるおそれがあるので、500℃以下とすることが好ましい。したがって、500℃以下で熱延コイルを巻き取ることにより、その後の冷却過程でTiCやNbCが析出し、フェライト相中の固溶C量を大幅に減少させ、伸びフランジ性の向上をもたらす。
以下、本発明の実施例を比較例とともに説明する。
表1に化学成分を示す鋼のスラブを表2に示す条件にて熱間圧延し、厚さ3.2mmの熱延板を得た。このようにして得られた鋼板の強度、延性、伸びフランジ性、断面組織、疲労限度比、および介在物の粒径分布、形態、平均組成を調べた。
その結果を鋼と条件の組み合わせ毎に表3に示す。強度と延性は、圧延方向と平行に採取したJIS5号試験片の引張試験により求めた。
伸びフランジ性は、150mm×150mmの鋼板の中央に開けた直径10mmの打ち抜き穴を60°の円錐パンチで押し広げ、板厚貫通亀裂が生じた時点での穴径D(mm)を測定し、穴広げ値λ=(D−10)/10で求めたλで評価した。
また、疲労特性を表す指標として用いた疲労限度比は、JIS Z 2275に準拠した方法で求めた2×10回時間強さ(σW)を、鋼板の強度(σB)で除した値(σW/σB)で評価した。
なお、試験片は同規格に規定の1号試験片であり、平行部が25mm、曲率半径Rが100mm、原板(熱延板)の両面を等しく研削した厚さ3.0mmのものを用いた。
更に、介在物については、光学顕微鏡による100倍と1000倍の観察を行い、ランダムに選んだ100個の介在物について粒径と形態を測定した。更に、走査型電子顕微鏡の定量分析機能を用いて、ランダムに選んだ20個の介在物について組成分析を実施した。
表3から明らかなように、本発明の鋼板では、鋼板中に球状および紡錘状介在物が微細分散し、その結果強度、延性、伸びフランジ性および疲労特性に優れた鋼板を得ることができる。しかし、比較例では、介在物組成が本発明に規定する組成ではないため、鋼板中の微細介在物が減少した量だけ粗大介在物が増加し、そのため強度、延性、伸びフランジ性および疲労特性が低下している。
Figure 0004523899
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Claims (4)

  1. C:0.03〜0.10質量%、Si:0.05〜1.5質量%、Mn:1.0〜3.0質量%、P:0.05質量%以下、S:0.01質量%以下、N:0.0005〜0.01質量%、酸可溶Al:0.005質量%以下、Ti:0.005質量%以上、NdもしくはPrの1種または2種の合計:0.0002〜0.04質量%含有し、更に、下記式を満足し、
    −0.05≦{Ti−(48/12)×C−(48/14)×N−(48/32)×S}≦0.2
    残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼であり、その鋼中には、平均の介在物組成で、Nd酸化物もしくはPr酸化物の1種または2種の合計が3〜90質量%、Ti酸化物が10〜97質量%、Alが50質量%以下の範囲の介在物を含み、かつ、介在物の個数割合で、50%以上が少なくとも球状、紡錘状の介在物を含み、かつ、0.5μm以上10μm以下の介在物が1000個/cm 以上、100000個/cm 以下存在することを特徴とする伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度熱延鋼板。
  2. C:0.03〜0.10質量%、Si:0.05〜1.5質量%、Mn:1.0〜3.0質量%、P:0.05質量%以下、S:0.01質量%以下、N:0.0005〜0.01質量%、酸可溶Al:0.005質量%以下、Ti:0.005質量%以上、NdもしくはPrの1種または2種の合計:0.0002〜0.04質量%、および、Nbを含有し、更に、下記式を満足し、
    −0.05≦{Ti+(48/93)×Nb−(48/12)×C−(48/14)×N−(48/32)×S}≦0.2
    残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼であり、その鋼中には、平均の介在物組成で、Nd酸化物もしくはPr酸化物の1種または2種の合計が3〜90質量%、Ti酸化物が10〜97質量%、Alが50質量%以下の範囲の介在物を含み、かつ、介在物の個数割合で、50%以上が少なくとも球状、紡錘状の介在物を含み、かつ、0.5μm以上10μm以下の介在物が1000個/cm 以上、100000個/cm 以下存在することを特徴とする伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度熱延鋼板。
  3. Cu:0.2〜2.0質量%、Ni:0.1〜1.0質量%を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度熱延鋼板。
  4. 鋼板中のベイニティック・フェライト相の面積率が80〜100%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度熱延鋼板。
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