JP6447426B2 - 極厚鋼板及びその製造方法 - Google Patents

極厚鋼板及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6447426B2
JP6447426B2 JP2015174561A JP2015174561A JP6447426B2 JP 6447426 B2 JP6447426 B2 JP 6447426B2 JP 2015174561 A JP2015174561 A JP 2015174561A JP 2015174561 A JP2015174561 A JP 2015174561A JP 6447426 B2 JP6447426 B2 JP 6447426B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
less
heating
steel plate
content
thick steel
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2015174561A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2017048443A (ja
Inventor
彰彦 谷澤
彰彦 谷澤
敦士 田中
敦士 田中
孝平 古米
孝平 古米
亮 長尾
亮 長尾
隆一 近藤
隆一 近藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Priority to JP2015174561A priority Critical patent/JP6447426B2/ja
Publication of JP2017048443A publication Critical patent/JP2017048443A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6447426B2 publication Critical patent/JP6447426B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Continuous Casting (AREA)
  • Heat Treatment Of Steel (AREA)

Description

本発明は、石油精製プラン卜などの圧力容器、プロセス配管に代表される湿潤硫化水素環境で使用される極厚鋼板及びその製造方法、特に、優れた耐HIC(Hydrogen Induced Cracking、水素誘起割れ)性能が要求される部材に用いられる極厚鋼板及びその製造方法に関する。
世界的なエネルギ需要の高まりを背景に、原油採掘量も年々増加しており、従来のような高品質な原油が徐々に枯渇し、硫化水素濃度の高い低品位の原油の使用が必要に迫られている。このため、石油精製プラン卜に用いられる圧力容器やプロセス配管においても、水素誘起割れ(HIC:Hydrogen Induced Cracking)や硫化物応力腐食割れ(SSC:Sulfide Stress corrosion Cracking)の起こらない湿潤硫化水素環境に対する抵抗力、すなわち、耐サワー性能(耐HIC性能や耐SSC性能)を有する鋼板を適用することが多くなっている。HICについては、比較的低強度の鋼板でも起こることが知られており、特に問題となっている。
鋼板の耐HIC性能を確保するための検討は、主にラインパイプ分野において盛んに行われており、例えば、1)Mn、Pなどの連続鋳造スラブの中心偏析部に濃化する元素の低減や、鋳造条件の最適化による中心偏析部の軽減、2)S、Oの低減およびCaの最適量添加によるMnSの生成抑制およびCa添加により生じるCaクラスタの生成抑制、3)TMCPにおける加速冷却や熱処理プロセスにおける焼入れの適用によるミクロ組織の均一化により、フェライト生成に伴う中心偏析部へのCの分配の抑制、および、HIC伝播経路となる複合組織化の抑制、4)高強度材で生成するMA(Martensite−Austenite constituent、島状マルテンサイト)などの硬質第2相の生成抑制、再加熱による分解、などが行われている。
しかしながら、これらの知見は、いずれも、板厚が50mm未満のラインパイプ用鋼板や鋼管に関する知見である。したがって、板厚が50mm以上となる極厚板において、上述した手法を適用しても、必ずしも目標の性能が得られない。特に、板厚が大きくなるほど、ザクやポロシティなどと呼ばれる未圧着部が圧延後も残存し、HICの起点となるという問題がある。また、所望の強度を得るために多量の合金元素を添加する必要があるため、中心偏析部がさらに硬化してHICが発生しやすくなるという問題がある。
このような問題に対して、特許文献1では、造塊スラブを用いて分塊圧延から仕上げ圧延までの総圧下比を大きくとることと、鋼板に含まれる水素量を少なくすることを組み合わせて、耐HIC性能と内部品質を両立する極厚鋼板の製造方法が開示されている。特許文献2では、造塊法で鋳型下部から上部にかけて一方向凝固させ、Sなどの化学成分が所望の値となる部分のみを使用することにより耐HIC性能を確保する厚鋼板の製造方法が開示されている。特許文献3では、連続鋳造スラブから100mm以上の極厚鋼板を製造するに際し、連続鋳造スラブを高温で20〜40時間保持し、その後、強圧下鍛造を行うことにより中心偏析部の合金元素の拡散および粉砕を行い、さらに、再加熱し、熱間圧延を行うことで、優れた耐HIC性能と内部品質を両立する極厚鋼板の製造方法が開示されている。特許文献4〜7では、通常の熱間圧延に先立って、化学成分から求められる所定の加熱温度で所定時間以上保持した後、大圧下で熱間圧延を行うことにより、中心偏析部の合金元素の拡散を行い、さらに、再加熱し、最適なTMCP(Thermo Mechanical Control Process)条件を適用することで、優れた耐HIC性能と内部品質を両立する厚鋼板の製造方法が開示されている。特許文献8では、特許文献4〜7と同様の手法で中心偏析部を低減した後、焼ならしで鋼板の特性を調整することにより、優れた耐HIC性能と内部品質を両立する厚鋼板の製造方法が開示されている。
特開平4−329826号公報 特開昭62−176601号公報 特開2001−89812号公報 特開平2−173208号公報 特開平4−263017号公報 特開平5−125441号公報 特開平5−295435号公報 特開平4−143217号公報
しかしながら、特許文献1及び2で開示されている方法は、いずれも造塊スラブを用いており、生産性が著しく悪い。一方、特許文献3で開示されている方法は、連続鋳造スラブを長時間加熱保持後、強圧下で鍛造するため、中心偏析度、内部品質とも良好で優れた耐HIC性能を確保できる。しかしながら、特許文献3に開示の方法では、加熱保持の時聞が長すぎるため、生産性が悪い。また、特許文献4〜8で開示されている方法は、連続鋳造スラブを用いて極厚鋼板を製造する場合、十分な内部品質が確保できず、内部品質異常およびザクやポロシティを起点としたHICの発生を抑制できないことがある。なお、本明細書において、十分な内部品質を確保する、とは、鋼材の表面近傍のみならず、鋼材の厚さ方向の中央部近傍まで、ザクやポロシティのような空洞や欠陥を実質的に無害のレベルにまで低減させることを意味する。
上述したように、従来の技術では、生産性の低下、内部品質の劣化およびそれに起因した耐HIC性能の劣化が起こらない、耐HIC性能に優れた極厚鋼板を製造することは困難である。そこで、本発明は、板厚が50mm以上であっても優れた内部品質および耐HIC性能を有する極厚鋼板及びその極厚鋼板を高い生産性で製造可能な製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するために、スラブ内部品質に影響を及ぼす鍛造条件と、中心偏析部硬さや介在物の状態に影響を及ぼす化学成分(成分組成)、鍛造条件および圧延条件について、鋭意検討し、以下の知見を得た。
まず、連続鋳造スラブの内部品質に影響を及ぼす鍛造条件について検討した結果、1パスあたりの圧下率を5%以上、全圧下率Rを10%以上確保することで、ザクやポロシティが圧着された、内部品質に優れた圧延素材を得ることができ、その結果、熱間圧延後に優れた耐HIC性が得られることがわかった。
次に、中心偏析部でHICの起点となるMnS系およびNbCN系介在物の低減について検討を行った。中心偏析部のMnSおよびNbCNは、いずれも鋳造の最終凝固部に濃化した元素が晶出したものであり、通常のバルク部の成分と溶解度積から理論的に求められる介在物の溶解温度まで加熱、保持しても、介在物は固溶しない。一方で、中心偏析部の合金元素の濃化を考慮することで、介在物の固溶温度をより正確に求めることができることがわかった。上記の考え方に基づき、SMNS(後述の式(3))およびSNBCN(後述の式(4))を考案した。これらがともに0以上になったときに中心偏析部のMnSおよびNbCNの大半を固溶でき、これらがHICの起点になることを抑える。なお、NbCNについては、鋼中にTiが添加されている場合に、TiNと複合し、固溶しにくくなる。しかしながら、SNBCNを0以上にすることで、NbCNのクラスタ径を小さくでき、後述する中心偏析部硬さを一定以下に抑えることにより優れた耐HIC性能を確保することができる。
また、Al−Ca系酸化物のクラスタに起因したHICの発生を抑制するための介在物組成について検討した。その結果、Al−Ca系酸化物のAl:CaO組成比を1:1付近に制御することで介在物を低融点化させることができ、溶鋼中でのCa−Al系介在物の凝集を抑制し、クラスタ化を抑制できることがわかった。
次に、中心偏析部に濃化した元素の鍛造加熱および圧延加熱時の拡散挙動について調査を行った。その結果、Mn、Pについては、鍛造加熱で通常行われる1200℃以上の加熱において、保持時間を長くするほど中心偏析部での濃化を軽減できることがわかった。また、Cは非常に容易に拡散する元素であるため、鍛造後の空冷時にミクロ組織が2相組織化し、鍛造で拡散したCが再び中心偏析部に濃化することがわかった。さらに、Cは圧延加熱で通常行われる1200℃以下の加熱においても容易に拡散し、圧延加熱時の温度、保持時間および鍛造圧下率が大きくなるほど、中心偏析部での濃化を低減できることがわかった。一方で、Cu、Ni、Cr、Mo、Vなどの元素はこれらの加熱によってほとんど拡散しないこともわかった。以上の結果をもとに、中心偏析部硬さの指標として、PCCTを提案するに到った。PCCTは、中心偏析部硬さに及ぼす合金元素、鍛造条件、圧延加熱条件の影響を定量化した指標である(後述の式(2))。焼ならしで製造した場合、この値を0.95以下にすることで、中心偏析部の硬さを下げることができ、大きさが200μm未満の微細な介在物およびその集積帯がある場合においても、NACE TM0284−A溶液のHIC試験で優れた性能を得ることができることがわかった。PCCTを用いることで従来に比べてより合理的なスラブ成分設計および鋼板製造条件の選択ができるようになる。
本発明は上記知見に基づき完成されたものであり、具体的には以下の通りである。
[1]質量%で、C:0.030〜0.200%、Si:0.50%以下、Mn:0.60〜1.60%、P:0.020%以下、S:0.0015%以下、Al:0.060%以下、Ca:0.0010〜0.0040%、N:0.0050%以下、O:0.0030%以下を含有し、さらに、Cu:0.50%以下、Ni:1.00%以下、Cr:0.50%以下、Mo:0.50%以下、Nb:0.050%以下、V:0.100%以下、Ti:0.020%以下、B:0.0030%以下の1種もしくは2種以上を含有し、式(1)で示されるPcmが0.280以下を満たし、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成と、フェライト、パーライトおよびベイナイトの面積率が合計で95%以上であり、中心偏析部のビッカース硬さが300以下であり、中心偏析部に存在する空隙、MnS系介在物、Nb及び/又はTiからなる介在物、Al及び/又はCaからなる介在物クラスタの長径が200μm未満であり、Al及びCaを含む酸化物におけるAl/CaOがモル比で0.7〜1.3の酸化物の個数割合が30%以上であるミクロ組織と、を有し、板厚が50mm以上であることを特徴とする耐HIC性能に優れた極厚鋼板。
Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B (1)
式(1)における元素記号は各元素の含有量(質量%)を意味し、含まないものは0とする。
[2]溶製された溶鋼を連続鋳造して得られた[1]に記載の成分組成からなる連続鋳造スラブを、1000〜1350℃の加熱温度T(℃)、300min以上の加熱保持時間t(min)で再加熱し、1パスあたりの圧下率が5%以上、全圧下率Rが10%以上、式(2)で示されるPCCTが0.95以下、式(3)で示されるSMNSが0以上および式(4)で示されるSNBCNが0以上となる条件で熱間鍛造を行った後に空冷し、その後、880〜1300℃の加熱温度T、10min以上の加熱保持時間tで再加熱を行い、熱間圧延を行った後、空冷し、さらに、880℃以上1100℃以下の温度に再加熱した後、空冷することを特徴とする板厚50mm以上の耐HIC性能に優れた極厚鋼板の製造方法。
PCCT=CP+MnP/6+0.116Cu+0.113Ni+0.236Cr+0.390Mo+0.348V+2PP・・・(2)
SMNS=T+273−5560/(0.72−log[1.2Mn][S])・・・(3)
SNBCN=T+273−6770/(2.26−log[5Nb][C+12N/14])・・・(4)
ただし、CP、MnPおよびPPは、以下の式(2−1)〜(2−3)で計算される値である。また、上記式(2)〜(4)において、Cu、Ni、Cr、Mo、V、Mn、S、Nb、C、Nは、各元素の含有量(質量%)であり、含有しない場合は0とする。また、Taは熱間鍛造時の加熱温度である。
CP=C+(0.77−C)erf(795・R/400000000/(((0.000023exp(−17800/(T+273)))60t0.5))・・・(2−1)
MnP=Mn+1.702Mn・erf(795/4000000/(((0.00004exp(−31511/(T+273)))60t0.5))・・・(2−2)
PP=P+10.18P・erf(795/4000000/(((0.00087exp(−0.4406/(T+273)))60t0.5))・・・(2−3)
ただし、上記式(2−1)〜(2−3)において、C、Mn、Pは各元素の含有量(質量%)で含有しない場合は0とする。Taは熱間鍛造時の加熱温度(℃)、tは熱間鍛造時の加熱保持時間(min)、Rは熱間鍛造時の全圧下率(%)、Tは熱間圧延時の加熱温度(℃)、tは熱間圧延時の加熱保持時間(min)である。なお、erfは誤差関数である。
[3]880℃以上1100℃以下の温度に再加熱した後の空冷後に、480〜720℃の温度範囲に焼戻し熱処理を行うことを特徴とする[2]に記載の極厚鋼板の製造方法。
[4]前記溶鋼のInsol.Alを分析し、その分析結果をもとに、前記溶鋼中のAl/CaOがモル比で0.7〜1.3になるようにCaを添加することを特徴とする[2]又は[3]に記載の極厚鋼板の製造方法。
本発明により、内部品質およびHIC性能に優れた極厚鋼板を高い生産性で製造することが可能となり、産業上極めて有効である。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
本発明の極厚鋼板は、質量%で、C:0.030〜0.200%、Si:0.50%以下、Mn:0.60〜1.60%、P:0.020%以下、S:0.0015%以下、Al:0.060%以下、Ca:0.0010〜0.0040%、N:0.0050%以下、O:0.0030%以下を含有し、さらに、Cu:0.50%以下、Ni:1.00%以下、Cr:0.50%以下、Mo:0.50%以下、Nb:0.050%以下、V:0.100%以下、Ti:0.020%以下、B:0.0030%以下の1種もしくは2種以上を含有し、(1)式で示されるPcmが0.280以下を満たし、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する。下記の成分組成の説明において「%」は「質量%」を意味する。
C:0.030〜0.200%
Cは安価で高強度化に寄与する。一方で、Cは中心偏析度を悪化させる元素であり、耐HIC性能確保の観点からは、その含有量を低減した方がよい。しかしながら、C含有量が0.030%よりも低くなると、焼入れ性が低くなり過ぎて所望の強度が得られないため、下限を0.030%とする。また、C含有量が0.200%を超えると偏析度が悪くなり、耐HIC性能を確保できないため上限を0.200%とする。より好ましくは、0.030〜0.180%である。
Si:0.50%以下
Siは脱酸元素であり、不可避的にスラブに含まれる。また、Siは、中心偏析部の焼入れ性を高くするといった考慮をせずに高強度化することができる元素である。Si含有量が0.50%以下であれば、溶接性や溶接熱影響部靭性をあまり劣化させることがないので、上限を0.50%とする。より好ましくは0.40%以下である。
Mn:0.60〜1.60%
Mnは、焼入れ性を高くする元素である。しかしながら、Mnは、中心偏析部に濃化しやすく、耐HIC性能を劣化させる。Mn含有量が1.60%を超えると、化学成分や鍛造条件などの他の条件を調整してもHICの発生を十分に抑制できないため、上限を1.60%とする。また、Mn含有量が0.60%を下回ると極厚鋼板の強度を確保できないため、下限を0.60%とする。より好ましくは、0.80〜1.50%、さらに好ましくは0.90〜1.40%である。
P:0.020%以下
Pは、不可避的に含まれる元素であり、焼入れ性も高くする。しかしながら、Pは、中心偏析部に非常に濃化しやすく、耐HIC性能に対して極めて悪い影響を及ぼす。そのため、製鋼工程において脱P処理などを強化して、できるだけその含有量を低減した方が好ましいものの、P含有量を低減することには非常に多くのコストを要する。また、本発明では鍛造加熱時の中心偏析部でのPの濃化を緩和することができ、P含有量が0.020%以下であればその効果により耐HIC性能が確保できる。そこで、P含有量の上限を0.020%とする。より好ましくは、0.015%以下、さらに好ましくは、0.010%以下である。
S:0.0015%以下
Sは、不可避的に含まれる元素である。また、Sは、MnSを形成してHICの起点となるため、耐HIC性能に悪影響を及ぼす。したがって、S含有量は、できるだけ低減した方がよい。しかしながら、脱硫を強化することはコストの増大を招く。このため、Ca添加によるMnSの生成抑制効果が期待できる上限である0.0015%まではSの含有を許容する。より好ましくは0.0010%以下、さらに好ましくは、0.0008%以下である。
Al:0.060%以下
Alは脱酸元素であり、不可避的にスラブに含有している。Al含有量が0.060%を超えるとAlクラスタ起因のHICが発生するため、上限を0.060%とする。好ましくは、0.050%以下、より好ましくは0.040%以下である。
Ca:0.0010〜0.0040%
Caは、鋳造時にMnよりも先にSと結合しCaOSやCaSを生成することで、伸長したMnSの生成を抑制できる。その効果は、Ca含有量を0.0010%以上にしないと現れないため、Ca含有量の下限を0.0010%とする。また、Ca含有量が0.0040%を超えるとCaOやCaOSが過剰に生成し、クラスタを形成しHIC起点となり耐HIC性能が劣化する。そこで、Ca含有量の上限を0.0040%とする。
N:0.0050%以下
Nは鋼中に不可避的に含まれる元素であり、Tiと結合しTiNが生成される。Tiを添加した場合、N含有量が0.0050%を超えると晶出したTiNがHICの起点になる可能性がある。一方、Tiを添加しない場合は、固溶状態のNが多く、スラブの表面割れが発生する。このため、N含有量の上限を0.0050%とする。より好ましくは、0.0045%以下である。
O:0.0030%以下
Oは鋼中に不可避的に含まれる元素であり、その大部分が酸化物として存在する。O含有量が0.0030%を超えると介在物量が多く、内部品質や耐HIC性能を確保できないため、その上限を0.0030%とする。
Pcm:0.280以下
Pcmは、鋼材の焼入れ性を定量化する指標である。この値が0.280%を超えると焼入れ性が高くなりすぎて、耐HIC性能が確保できないため、上限を0.280%とする。より好ましくはPcmが0.250以下である。なお、Pcmは下記式(1)で表される。
Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B・・・(1)
ただし、上記式(1)において、各元素記号は含有量(質量%)であり、含有しない場合は0とする。
本発明では、上記成分組成以外に、強度や靭性を得るために、Cu:0.50%以下、Ni:1.00%以下、Cr:0.50%以下、Mo:0.50%以下、Nb:0.050%以下、V:0.100%以下、Ti:0.020%以下、B:0.0030%以下の1種もしくは2種以上を含有する。
Cu:0.50%以下
Cuは、固溶強化により鋼板を高強度化する。一方で、Cuを過剰に添加すると溶接性、靭性が劣化し、コストの増大も招く。このため、Cuを含有する場合は含有量の上限を0.50%とする。なお、高強度化のためにはCu含有量は0.10%以上であることが好ましい。
Ni:1.00%以下
Niは、固溶強化により鋼板を高強度化し、さらにマトリックス組織を高靭性化する。一方で、Niを過剰に添加すると溶接性が劣化し、コストの増大も招く。このため、Niを含有する場合は含有量の上限を1.00%とする。なお、上記高強度化等のためにはNi含有量を0.10%以上にすることが好ましい。
Cr:0.50%以下
Crは、焼入れ性を高め鋼板を高強度化する。一方で、Crを過剰に添加すると溶接性、靭性が劣化し、コストの増大も招く。このため、Crを含有する場合は含有量の上限を0.50%とする。なお、高強度化のためにはCr含有量は0.10%以上であることが好ましい。
Mo:0.50%以下
Moは、焼入れ性を高め鋼板を高強度化する。一方で、Moを過剰に添加すると溶接性、靭性が劣化し、コストの増大も招く。このため、Moを含有する場合は、含有量の上限を0.50%とする。なお、高強度化のためにはMo含有量は0.05%以上であることが好ましい。
Nb:0.050%以下
Nbは、制御圧延時に未再結晶域温度を拡大し、圧延時の組織微細化に寄与する。一方で、Nb含有量が0.050%を超えると、析出脆化を引き起こす。さらに、中心偏析部に生成した粗大なNbCNの存在は耐HIC性能を劣化させる。このため、Nbを含有する場合は、その含有量の上限を0.050%とする。より好ましくは0.040%以下である。なお、組織微細化のためにはNb含有量は0.005%以上が好ましい。
V:0.100%以下
Vは、主に析出強化により鋼板を高強度化する。一方で、Vを過剰に添加すると靭性を著しく損なう。このため、Vを含有する場合は、その含有量の上限を0.100%とする。なお、高強度化のためにはV含有量は0.010%以上であることが好ましい。
Ti:0.020%以下
Tiは、TiNを形成することで組織を微細化する。特に、Tiは、溶接した際の粗粒域幅を低減し、溶接熱影響部靭性を著しく向上させる。一方で、Tiを過剰に添加すると凝固時に粗大なTiNが晶出して耐HIC性能が劣化する。このため、Tiを含有する場合は、その含有量の上限を0.020%とする。なお、組織微細化等のためにはTi含有量は0.005%以上が好ましい。
B:0.0030%以下
Bは、焼入性を増大させる元素であり、高強度化に非常に有効な元素である。一方で、B含有量が0.0030%を超えると焼入性が高くなりすぎて、鋼板表層や溶接熱影響部の硬さが上昇し、耐SSC性能が劣化する。このため、Bを含有する場合は含有量の上限を0.0030%とする。なお、高強度化等のためにはB含有量は0.0005%以上が好ましい。
上記成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。
続いて、本発明の極厚鋼板のミクロ組織について説明する。本発明のミクロ組織は、フェライト、パーライトおよびベイナイトの面積率が合計で95%以上であり、中心偏析部のビッカース硬さが300以下であり、中心偏析部に存在する空隙、MnS系介在物、Nb及び/又はTiからなる介在物、Al及び/又はCaからなる介在物クラスタの長径が200μm未満であり、Al及びCaを含む酸化物におけるAl/CaOがモル比で0.7〜1.3の酸化物の個数割合が30%以上である。以下、ミクロ組織について具体的に説明する。
フェライト、パーライトおよびベイナイトの合計:95%以上
本発明の極厚鋼板は、焼ならしで製造するため、ミクロ組織はフェライトを不可避的に含む。フェライトがミクロ組織における第1相であり、その含有量は面積率で60〜95%であることが好ましい。耐HIC性能確保の観点からは、硬質なミクロ組織であることは望ましくない。本発明では、フェライト以外の相として、パーライトのような軟質相やベイナイトのように比較的硬質ではあるが靭性のある相を含むことが必要である。パーライトの含有量は面積率で5〜40%好ましく、ベイナイトの含有量は面積率で40%以下が好ましい。そこで、本発明では、フェライト、パーライトおよびベイナイトの面積率を合計で95%以上とする。なお、本発明ではパーライト、ベイナイトの少なくとも一方を含めばよい。これら以外が面積率で5%を超えて含まれる場合、HICの発生、伝播源となり耐HIC性能が劣化する。フェライト、パーライトおよびベイナイト以外の相としては、マルテンサイトおよび粗大なセメンタイトのことを意味し、ベイナイト中に存在する微小なセメンタイトやMAはベイナイトの一部としてみなす。
中心偏析部のビッカース硬さ:300以下
中心偏析部は、MnSやNbCN、TiN、Al、CaOSなどのHICの起点となる介在物が生成する。本発明では、鍛造時の加熱によりMnSとNbCNについては固溶させることができる。しかし、TiN、Al、CaOSは、固溶しないため、これらがHICの発生起点となる。これらの起点が存在した場合においてもHICの発生、伝播を抑制するためには、中心偏析部のビッカース硬さを300以下にする必要がある。そこで、その上限を300とする。より好ましい中心偏析部のビッカース硬さは280以下である。なお、偏析硬さの測定方法としては、偏析部よりも圧痕が小さくなる荷重で5点以上測定したマイクロビッカース硬さの最大値を用いることが望ましい。
中心偏析部に存在する空隙等の長径:200μm未満
中心偏析部のビッカース硬さを300以下に抑えた場合、HICの起点となるような空隙や介在物の長径を200μm未満にすればHICの発生、伝播を抑制できる。そのため長径の上限を200μmとする。ここで、HIC起点となる空隙等とは、空隙、MnS系介在物、Nb、Tiあるいはその両方からなる介在物およびAl、Caあるいはその両方からなる介在物クラスタである。これらが中心偏析部に存在する場合には、実施例の記載の方法で確認したときに、その全ての長径が200μm未満である必要がある。
Al/CaOがモル比で0.7〜1.3の酸化物の個数割合:30%以上
Al−Ca系酸化物は溶鋼中に生成し、溶鋼中に保持されることで凝集し、クラスタ化する。このAl−Ca系酸化物のクラスタはHICの起点となり耐HIC性能を劣化させる。Al−Ca系酸化物のクラスタの生成を抑制するためには、酸化物の低融点化が有効であり、AlとCaOがモル比(Al/CaO)で1.0のときに最もクラスタ化を抑制できる。AlとCaを含む酸化物のうち、Al/CaOのモル比が0.7〜1.3の酸化物の個数割合が30%を下回ると、AlあるいはCaOが過剰となり溶鋼中でクラスタを形成し、耐HIC性能を劣化させる。このため、Al及びCaを含む酸化物におけるAl/CaOがモル比で0.7〜1.3の酸化物の個数割合を30%以上とする。より好適には40%以上である。
続いて、本発明の極厚鋼板の製造方法について説明する。本発明の極厚鋼板は、上記成分組成からなる連続鋳造スラブを、1000〜1350℃の加熱温度T(℃)、300min以上の加熱保持時間t(min)で再加熱し、1パスあたりの圧下率が5%以上、全圧下率Rが10%以上でなおかつPCCTが0.95以下、SMNSが0以上およびSNBCNが0以上となる条件で熱間鍛造を行った後に空冷し、その後、880〜1300℃の加熱温度T、10min以上の加熱保持時間tで再加熱を行い、熱間圧延を行った後、空冷し、さらに、880℃以上1100℃以下の温度に再加熱した後、空冷する方法で製造できる。以下、製造条件について説明する。
熱間鍛造の際の加熱温度T:1000〜1350℃
鍛造は高温で行う方が、1パスあたりの圧下率を大きくしやすく、合金元素の拡散も促進できる。一方、加熱温度Tが1350℃を超えるとγ粒が粗大化し靭性の劣化を招く。そこで、上記加熱温度Tの上限を1350℃とする。また、加熱温度Tが1000℃を下回ると鍛造での圧下率を確保できず、長時間保持しても合金元素の拡散の効果が期待できない。そこで、加熱温度Tの下限を1000℃とする。
熱間鍛造の際の加熱保持時間t:300min以上
鍛造加熱の高温保持によって、中心偏析のMnSおよびNbCNを固溶させることで耐HIC性能が向上する。固溶する条件は、後述する式(3)、後述する式(4)で定義する。これらの式はいずれも加熱保持時間tが300min以上でないとMnSやNbCNの固溶状態を担保できないため、下限を300minとする。なお、加熱保持時間tは生産性の観点から1440min以下であることが好ましい。
熱間鍛造の際の1パスあたりの圧下率:5%以上
鍛造における圧下率の確保は、ザクなどの圧着のために必要である。スラブ厚中央に発生するザクを圧着するためには、スラブ厚中央を圧下する必要があり、1パスあたりの圧下率が大きいほど、スラブ厚中央に加わる圧下が大きくなる。ザクなどを十分に圧着するためには、1パスあたりの圧下率を5%以上にする必要があるため、下限を5%とする。
熱間鍛造の際の全圧下率R:10%以上
熱間鍛造における圧下率の確保は、ザクと呼ばれる未圧着部などの圧着のために必要である。スラブ厚中央に発生するザクを圧着するためには、スラブ厚中央を圧下する必要がある。全圧下率Rが大きいほど、ザクなどを圧着効果が大きく、十分にザクなどを圧着するためには、全圧下率Rを10%以上にする必要がある。このため、全圧下率Rの下限を10%とする。全圧下率Rの上限は特に限定されないが、全圧下率Rが大きくなりすぎると、その後の熱間圧延段階で、形状制御が困難となり歩留低下を招くため、40%以下が好ましい。
PCCT:0.95以下
本発明では、鍛造時の加熱および鍛造圧下により中心偏析に濃化した元素を拡散、粉砕して中心偏析硬さを低減し、耐HIC性能を確保する。所望の中心偏析硬さに抑えるためには、式(2)で示されるPCCTを0.95以下にする必要がある。
PCCT=CP+MnP/6+0.116Cu+0.113Ni+0.236Cr+0.390Mo+0.348V+2PP・・・(2)
ただし、CP、MnPおよびPPは、以下の式(2−1)〜(2−3)で計算される値である。また、上記式(2)において、Cu、Ni、Cr、Mo、Vは、各元素の含有量(質量%)であり、含有しない場合は0とする。
CP=C+(0.77−C)erf(795・R/400000000/(((0.000023exp(−17800/(T+273)))60t0.5))・・・(2−1)
MnP=Mn+1.702Mn・erf(795/4000000/(((0.00004exp(−31511/(T+273)))60t0.5))・・・(2−2)
PP=P+10.18P・erf(795/4000000/(((0.00087exp(−0.4406/(T+273)))60t0.5))・・・(2−3)
ただし、上記式(2−1)〜(2−3)において、C、Mn、Pは各元素の含有量(質量%)で含有しない場合は0とする。Tは熱間鍛造時の加熱温度(℃)、tは熱間鍛造時の加熱保持時間(min)、Rは熱間鍛造時の全圧下率(%)、Tは熱間圧延時の加熱温度(℃)、tは熱間圧延時の加熱保持時間(min)である。なお、erfは誤差関数である。
SMNS:0以上
耐HIC性能を確保するためには、中心偏析での伸長MnSの生成を抑制することが有効である。本発明では、鍛造時の加熱によって晶出したMnSを固溶させることにより耐HIC性能を確保する。式(3)で示されるSMNSが0以上のときに、スラブ中心偏析のMnSは固溶し耐HIC性能を劣化させなくなる。
SMNS=T+273−5560/(0.72−log[1.2Mn][S])・・・(3)
上記式(3)において、Mn、Sは、各元素の含有量(質量%)であり、含有しない場合は0とする。また、Tは熱間鍛造時の加熱温度である。なお、「log[1.2Mn][S]」はlog([1.2Mn]×[S])を意味する。
SNBCN:0以上
耐HIC性能を確保するためには、中心偏析部でのNbCNの生成を抑制することが有効である。本発明では、熱間鍛造時の加熱によって晶出したNbCNを固溶させることにより、耐HIC性能を確保する。SNBCNが0以上のときに、スラブ中心偏析部のNbCNは固溶し耐HIC性能を確保することができる。このため、SNBCNは0以上とする。なお、NbCNについては、鋼中にTiが添加されている場合に、TiNと複合し、固溶しにくくなる。しかしながら、SNBCNを0以上にすることで、NbCNのクラスタ径を小さくでき、さらに上述した中心偏析部硬さを一定以下に抑えることにより優れた耐HIC性能を確保することができる。
SNBCN=T+273−6770/(2.26−log[5Nb][C+12N/14])・・・(4)
上記式(4)において、Nb、C、Nは、各元素の含有量(質量%)であり、含有しない場合は0とする。また、Tは熱間鍛造時の加熱温度である。なお、「log[5Nb][C+12N/14]」はlog([5Nb]×[C+12N/14])を意味する。
上記熱間鍛造を行った後、空冷する。空冷とは1℃/s以下の冷却速度で、200℃以下の温度域まで冷却することを意味する。
熱間圧延の際の加熱温度T:880〜1300℃
熱間圧延時の加熱温度Tは、焼ならし前の組織を制御するために条件である。加熱温度Tが880℃未満になると、加熱段階で凝固まま組織が未変態で残り粗大化することで焼ならし後の靭性が下がる。そこで、加熱温度Tの下限を880℃とする。一方で、加熱温度Tが1300℃を超えると焼ならし後のミクロ組織が粗大となり靭性を確保できない。そこで、加熱温度Tは1300℃以下とする。
熱間圧延の際の加熱保持時間t:10min以上
熱間圧延時の加熱保持時間tは、長いほど合金元素の拡散効果が大きくなるため、長い方が好ましい。一方で、加熱保持時間tが10minを下回るとスラブが均一に加熱されず強度、靭性のばらつきが大きくなり、かつ、合金元素の拡散による中心偏析の改善効果も得られない。そのため、下限を10minとする。なお、生産性の観点からは加熱保持時間tは、720min以下が好ましい。
上記熱間圧延の後、空冷する。「空冷」の意味は、上記熱間鍛造後の「空冷」と同様であるため説明を省略する。
焼ならし加熱温度:880℃以上1100℃以下
上記熱間圧延後の、880℃以上1100℃以下への再加熱は焼ならしのための加熱に相当する。焼ならし加熱温度は組織を制御する条件である。焼ならし加熱温度が880℃未満になると加熱段階で圧延まま組織が未変態で残り粗大化することで靭性が下がる。このため、焼ならし加熱温度の下限を880℃とする。一方で、焼ならし加熱温度が1100℃を超えるとミクロ組織が粗大となり靭性を確保できない。このため、焼ならし加熱温度の上限を1100℃とする。
上記焼ならしのための再加熱後、空冷する。「空冷」の意味は、上記熱間鍛造後の「空冷」と同様であるため説明を省略する。
本発明では、必要な強度、靭性を得るために、焼ならし後に焼戻しを行うことができる。以下にその規定理由を述べる。
焼戻し温度:480〜720℃
空冷後、焼戻し熱処理を行ってもよい。焼戻しは、強度調整や靭性の改善、さらにはSR(Stress Relief、歪取り)熱処理やPWHT(Post Welding Heat Treatment、溶接後熱処理)を行った際の強度、靭性変化を小さくするために実施する。480℃未満の温度では、焼戻しの効果が得られないため、下限を480℃とする。一方で、720℃を超える温度では、強度低下が大きく所望の強度を得られないため上限を720℃とする。
次に、鋼の溶製方法のうち、Caの添加方法について説明する。
本発明で規定されるAlとCaからなる酸化物の組成比を適正範囲に制御するためには、Caの添加量を厳密に制御することが好ましい。本発明においては、溶鋼のInsol.Alを分析し、その分析結果をもとに、溶鋼中のAl/CaOが、モル比で0.7〜1.3になるようにCa源を添加することが好ましい。なお、Insol.Alとは、insuluble Alのことで、鋼中の全Al量のうち、酸不溶性のAl量を指す。
従来のプロセスでは、一般に、溶鋼中のAl量が未知の状態でCa源を添加していた。その原因は、O量を分析するためには、燃焼分析を行う必要があり、Ca源の添加までにO量分析が間に合わなかったためである。本発明では、発光分光分析法によりInsol.Al量を分析して、溶鋼中のAl量を推定することが好ましい。Ca添加量の狙いは、Al:CaOを1:1に近づける点であり、それを満足するためには、溶鋼中のAl/CaOがモル比で0.7〜1.3になるように、Caを添加することが好ましい。
Ca添加前にInsol.Alを迅速分析し、Al/CaOを種々変化させた表1に示す溶鋼を、鋳造速度0.6mm/minで連続鋳造し(スラブ厚300mm)、表2に示す条件で熱間鍛造、空冷、空冷後加熱し熱間圧延、空冷、焼ならし、空冷、必要に応じてその後焼戻しを行った。Ca添加はCa−Siワイヤを用い、ワイヤ重量とCa含有率との関係より添加Ca量を管理して添加した。Ca歩留りは過去のデータをもとに0.3%として添加した。
Figure 0006447426
Figure 0006447426
得られた鋼板について、引張試験、HIC試験を行った。
引張試験は、C方向板厚方向1/4位置から直径12.7mmの丸棒引張試験片を採取し、引張強度を測定した。目標値は、ASTM−A516−65の下限値である450MPaとした。
HIC試験は、NACE TM0284−2003に従って行い、溶液は同規格で規定されているA液を用いた。なお、同規格では、板厚が30mmを超えると板厚方向に複数の試験片を採取するように求められているため、板厚方向の規定本数×3(例えば、板厚100mmでは5×3=15本)試験を実施し、その最大CLR(3断面の平均値)を求めた。目標値は、CLRで15%以下とした。
ミクロ組織は、鋼板L方向(圧延方向)断面を5%ナイタールでエッチングした後、光学顕微鏡でフェライト分率を求めた。また、電子顕微鏡でフェライト相以外の箇所の観察を行い、パーライト、ベイナイト、その他の組織(セメンタイト、MAなど)の3種類に分類し、パーライトとベイナイトの分率を求めた。観察位置は、HICとの相関を考慮して、中心偏析部で行った。
中心偏析硬さはミクロ組織観察に用いた試験片を用い、荷重50gのマイクロビッカース硬度試験で中心偏析部の20点のビッカース硬さを測定し、最高値を用いた。
中心偏析部での空隙、MnS系介在物、Nb、Tiあるいはその両方からなる介在物、Al、Caあるいはその両方からなる介在物クラスタの長径の測定は、鋼板L方向断面を5%ナイタールでエッチングし、光学顕微鏡で観察することで行った。中心偏析部でみられる最大長径のものを測定した。
酸化物中のAl/CaO比率は、鏡面研磨したサンプルを電子顕微鏡で観察し、球状介在物に対してEDX(エネルギー分散型X線分析法)で介在物組成分析を行うことにより求めた。介在物の組成比は、ばらつきを考慮して、1つの鋼板に対して100個以上測定し、その平均値を求めた。
試験結果を表3に示す。本発明例ではいずれの特性も満足しているのに対し、比較例は引張強度、HIC性能のいずれか劣化していることがわかる。
Figure 0006447426

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.030〜0.200%、Si:0.50%以下、Mn:0.60〜1.60%、P:0.020%以下、S:0.0015%以下、Al:0.060%以下、Ca:0.0010〜0.0040%、N:0.0050%以下、O:0.0030%以下を含有し、さらに、Cu:0.50%以下、Ni:1.00%以下、Cr:0.50%以下、Mo:0.50%以下、Nb:0.050%以下、V:0.100%以下、Ti:0.020%以下、B:0.0030%以下の1種もしくは2種以上を含有し、式(1)で示されるPcmが0.280以下を満たし、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成と、
    フェライト、パーライトおよびベイナイトの面積率が合計で95%以上であり、前記フェライトの面積率が60〜95%であり、中心偏析部のビッカース硬さが300以下であり、中心偏析部に存在する空隙、MnS系介在物、Nb及び/又はTiからなる介在物、Al及び/又はCaからなる介在物クラスタの長径が200μm未満であり、Al及びCaを含む酸化物におけるAl/CaOがモル比で0.7〜1.3の酸化物の個数割合が30%以上であるミクロ組織と、を有し、
    板厚が50mm以上であることを特徴とする耐HIC性能に優れた極厚鋼板。
    Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B (1)
    式(1)における元素記号は各元素の含有量(質量%)を意味し、含まないものは0とする。
  2. 請求項1に記載の極厚鋼板の製造方法であって、
    溶製された溶鋼を連続鋳造して得られた請求項1に記載の成分組成からなる連続鋳造スラブを、1000〜1350℃の加熱温度T(℃)、300min以上の加熱保持時間t(min)で再加熱し、1パスあたりの圧下率が5%以上、全圧下率Rが10%以上、式(2)で示されるPCCTが0.95以下、式(3)で示されるSMNSが0以上および式(4)で示されるSNBCNが0以上となる条件で熱間鍛造を行った後に空冷し、
    その後、880〜1300℃の加熱温度T、10min以上の加熱保持時間tで再加熱を行い、熱間圧延を行った後、空冷し、さらに、880℃以上1100℃以下の温度に再加熱した後、空冷することを特徴とする板厚50mm以上の耐HIC性能に優れた極厚鋼板の製造方法。
    PCCT=CP+MnP/6+0.116Cu+0.113Ni+0.236Cr+0.390Mo+0.348V+2PP・・・(2)
    SMNS=T+273−5560/(0.72−log[1.2Mn][S])・・・(3)
    SNBCN=T+273−6770/(2.26−log[5Nb][C+12N/14])・・・(4)
    ただし、CP、MnPおよびPPは、以下の式(2−1)〜(2−3)で計算される値である。また、上記式(2)〜(4)において、Cu、Ni、Cr、Mo、V、Mn、S、Nb、C、Nは、各元素の含有量(質量%)であり、含有しない場合は0とする。また、Taは熱間鍛造時の加熱温度である。
    CP=C+(0.77−C)erf(795・R/400000000/(((0.000023exp(−17800/(T+273)))60t0.5))・・・(2−1)
    MnP=Mn+1.702Mn・erf(795/4000000/(((0.00004exp(−31511/(T+273)))60t0.5))・・・(2−2)
    PP=P+10.18P・erf(795/4000000/(((0.00087exp(−0.4406/(T+273)))60t0.5))・・・(2−3)
    ただし、上記式(2−1)〜(2−3)において、C、Mn、Pは各元素の含有量(質量%)で含有しない場合は0とする。Taは熱間鍛造時の加熱温度(℃)、tは熱間鍛造時の加熱保持時間(min)、Rは熱間鍛造時の全圧下率(%)、Tは熱間圧延時の加熱温度(℃)、tは熱間圧延時の加熱保持時間(min)である。なお、erfは誤差関数である。
  3. 880℃以上1100℃以下の温度に再加熱した後の空冷後に、480〜720℃の温度範囲に焼戻し熱処理を行うことを特徴とする請求項2に記載の極厚鋼板の製造方法。
  4. 前記溶鋼のInsol.Alを分析し、その分析結果をもとに、前記溶鋼中のAl/CaOがモル比で0.7〜1.3になるようにCaを添加することを特徴とする請求項2又は3に記載の極厚鋼板の製造方法。
JP2015174561A 2015-09-04 2015-09-04 極厚鋼板及びその製造方法 Active JP6447426B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015174561A JP6447426B2 (ja) 2015-09-04 2015-09-04 極厚鋼板及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015174561A JP6447426B2 (ja) 2015-09-04 2015-09-04 極厚鋼板及びその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2017048443A JP2017048443A (ja) 2017-03-09
JP6447426B2 true JP6447426B2 (ja) 2019-01-09

Family

ID=58278927

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015174561A Active JP6447426B2 (ja) 2015-09-04 2015-09-04 極厚鋼板及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6447426B2 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR101999024B1 (ko) * 2017-12-26 2019-07-10 주식회사 포스코 수소유기균열 저항성이 우수한 강재 및 그 제조방법
KR101999027B1 (ko) * 2017-12-26 2019-07-10 주식회사 포스코 수소유기균열 저항성이 우수한 압력용기용 강재 및 그 제조방법
KR102164116B1 (ko) * 2018-11-29 2020-10-13 주식회사 포스코 수소유기균열 저항성이 우수한 강재 및 그 제조방법
KR102255828B1 (ko) * 2019-12-16 2021-05-25 주식회사 포스코 구조용 강재 및 그 제조방법

Family Cites Families (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4253953B2 (ja) * 1999-09-20 2009-04-15 Jfeスチール株式会社 耐hic特性に優れた連続鋳造製極厚鋼板の製造方法
JP4725437B2 (ja) * 2006-06-30 2011-07-13 住友金属工業株式会社 厚鋼板用連続鋳造鋳片及びその製造方法並びに厚鋼板
RU2481415C2 (ru) * 2007-11-07 2013-05-10 ДжФЕ СТИЛ КОРПОРЕЙШН Стальной лист и стальная труба для трубопроводов
EP2862954A4 (en) * 2012-06-18 2016-01-20 Jfe Steel Corp THICKNESS, HIGHLY RESISTANT, SAUERGASBESTÄNDIGES LINE TUBE AND METHOD FOR THE PRODUCTION THEREOF
JP5942916B2 (ja) * 2013-04-09 2016-06-29 Jfeスチール株式会社 Pwht後の板厚中心部の低温靭性に優れた厚肉厚鋼板およびその製造方法
JP6086086B2 (ja) * 2014-03-19 2017-03-01 Jfeスチール株式会社 耐hic性能に優れた極厚鋼板およびその製造方法
JP6222041B2 (ja) * 2014-10-30 2017-11-01 Jfeスチール株式会社 耐hic性能に優れた極厚鋼板およびその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2017048443A (ja) 2017-03-09

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6086086B2 (ja) 耐hic性能に優れた極厚鋼板およびその製造方法
JP5574059B2 (ja) 低温靭性に優れた高強度h形鋼及びその製造方法
JP5618036B1 (ja) 多層溶接継手ctod特性に優れた厚鋼板およびその製造方法
JP5733484B1 (ja) 多層溶接継手ctod特性に優れた厚鋼板およびその製造方法
JP6409598B2 (ja) 靭性に優れた高強度極厚h形鋼及びその製造方法
JP6222041B2 (ja) 耐hic性能に優れた極厚鋼板およびその製造方法
JP6447426B2 (ja) 極厚鋼板及びその製造方法
JP6065121B2 (ja) 高炭素熱延鋼板およびその製造方法
JP6065120B2 (ja) 高炭素熱延鋼板およびその製造方法
JP2020012168A (ja) 耐サワーラインパイプ用厚鋼板およびその製造方法
JPWO2018216665A1 (ja) 厚鋼板およびその製造方法
JP6288288B2 (ja) ラインパイプ用鋼板及びその製造方法とラインパイプ用鋼管
JP5870007B2 (ja) 鋼部材およびその製造方法
JP4507747B2 (ja) 耐歪時効特性に優れた低降伏比高強度高靱性鋼管及びその製造方法
JP2005256115A (ja) 伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度熱延鋼板
JP4507745B2 (ja) 耐歪時効特性に優れた低降伏比高強度高靱性鋼管およびその製造方法
JP7022822B2 (ja) 低温変形時効衝撃特性に優れた厚鋼板及びその製造方法
WO2016060141A1 (ja) 大入熱溶接用鋼材
JP4412098B2 (ja) 溶接熱影響部靭性に優れた低降伏比高強度鋼板及びその製造方法
WO2017077967A1 (ja) 鋼部材および鋼板ならびにこれらの製造方法
JP2017066516A (ja) フェライト−マルテンサイト2相ステンレス鋼およびその製造方法
JP6536459B2 (ja) 厚鋼板およびその製造方法
JP2015193917A (ja) 調質高張力厚鋼板及びその製造方法
JP6673320B2 (ja) 厚鋼板および厚鋼板の製造方法
JP2005048289A (ja) 低降伏比高強度高靱性鋼板及びその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20170424

RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20180502

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20180509

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20180515

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20180629

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20181106

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20181119

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6447426

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R3D04

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250