JP4522566B2 - 透明導電膜のシート抵抗値の調整方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、透明導電膜を所定の濃度の有機溶剤の存在下に加熱処理を施すことにより、所定のシート抵抗値に調整する透明導電膜のシート抵抗値の調整方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
スズがドープされた酸化インジウム膜(ITO膜)、フッ素がドープされた酸化スズ膜(FTO膜)、アンチモンがドープされた酸化亜鉛膜やインジウムがドープされた酸化亜鉛膜等の透明導電膜は、その優れた透明性と導電性を利用して、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、面発熱体、タッチパネル電極、太陽電池等に広く使用されている。
【0003】
これら透明導電膜はこのように広い分野で使用されるものであるため、使用目的によって種々のシート抵抗値及び透明度を有するものが要求される。例えば、フラットパネルディスプレイ用の透明導電膜の場合では低抵抗かつ高透過率のものが、タッチパネル用の透明導電膜では、高抵抗、高透過率の膜がそれぞれ要求される。特に近年開発されて市場の伸びが期待されているペン入力タッチパネル用の透明導電膜は高い位置認識精度が要求されることから、シート抵抗値が200〜3000Ω/□といった高抵抗でかつ抵抗値の均一性に優れた膜であることが求められている。ここで、シート抵抗値は比抵抗/導電膜の膜厚で求められる値である。
【0004】
かかる透明導電膜の抵抗値の均一性を評価する方法として、リニアリティ試験がある。この方法は、透明導電膜の向かい合った2辺に銀ペースト等で低抵抗の電極を作製し、両電極間に1〜10Vの直流電流を印加する。このとき、両電極の間隔をD、印加電圧をVとし、透明導電膜の任意の点について、マイナスの電極からの距離をd、マイナスの電極とその点の電位差をvとすると、(d/D−v/V)×100をリニアリティ値(%)と定義される。
【0005】
また、リニアリティ値は位置と検出した電位差から計算した位置とのずれを定義する量であり、文字や図形を認識する目的で製作されるタッチパネルでは、通常、リニアリティ値が±2%以内の導電膜が要求されている。
【0006】
従来、所望の比抵抗値を有する導電膜を形成する方法としては、(A)酸処理する方法、(B)光照射する方法、(C)還元的雰囲気で処理する方法、(D)酸化的雰囲気で処理する方法、(E)導電膜の膜厚を変化させる方法、及び(F)ITO膜の成膜方法において、スズドープ量を変化させる方法等が知られている。
【0007】
(A)の酸処理する方法としては、例えば、特開昭47−84717号公報には、真空蒸着法により酸化インジウムの導電膜を得た後、該膜を酸処理することを特徴とする透明導電膜の製造法が記載されている。
【0008】
(B)の光照射する方法としては、例えば、特開昭61−261234号公報には、耐熱基板上に、インジウム化合物等を含有する有機溶媒液等を塗布、焼成することにより、酸化インジウム等を含有する被膜を形成せしめた後、空気を遮断して、30mW/cm2以上の強度の光を照射する透明導電膜付着基板の製造方法が記載されている。そしてこのように処理することによって、電気抵抗の低い透明導電性膜を形成するものである。また、特開昭63−314714号及び特開昭63−314715号公報には、基板上に導電膜を成膜後、該導電膜に紫外線、可視光線又は赤外線を照射して、導電膜の抵抗値を調整する方法が記載されている。
【0009】
(C)の還元的雰囲気下で導電膜を処理する方法は、主に導電膜の低抵抗化を目的とするものであり、例えば、特開昭60−243280号公報には、有機金属化合物と有機バインダーと溶媒とを含む透明電極形成液を、基板に塗布して焼成する透明電極形成方法であって、焼成の前半を酸素が豊富な雰囲気下で行い、後半を酸素の乏しい雰囲気下で行う透明電極形成方法が記載されている。また、特開昭61−261236号公報には、熱分解することにより酸化物系透明導電膜を形成する化合物溶液を基材に塗布し、200℃以下の温度で乾燥後、水素を2容量%以下含有する不活性ガス雰囲気中、500℃以下の温度で該化合物を焼成熱分解する透明導電膜の形成方法が記載されている。さらに、特開昭63−164117号公報には、有機インジウム化合物と有機錫化合物とを溶媒に溶解した塗布液を基板上に塗布し、上記有機化合物を熱分解した後、0.6体積%以上の水分を添加した雰囲気中で熱処理し、還元的雰囲気中で加熱し、還元する透明導電膜の形成方法が記載されている。
【0010】
(D)の酸化的雰囲気で処理する方法としては、例えば、特開平46−86730号公報には、真空蒸着法によりガラス基板へ透明な導電膜を被覆する方法において、室温にてガラス基板に真空蒸着法により酸化インジウムに対し、重量で10〜40%の酸化第2スズを含む被膜を形成せしめ、次いで該基板を酸素雰囲気中で300〜600℃で加熱処理することにより酸化させる、透明導電性ガラスの形成方法が記載されている。
【0011】
また、特開平6−135742号公報及び特開平224374号公報には、スズのドープ量をインジウムに対して0.05〜2.0%又は10〜40%で成膜し、酸素雰囲気にて200℃以上に加熱処理するITO膜の成膜方法、及び該加熱処理後、さらに酸素雰囲気下で冷却するITO膜の成膜方法が記載されている。
【0012】
(E)の方法は、従来からもっとも普通に行われている方法である。シート抵抗値=比抵抗/膜厚であるから、シート抵抗値の低い導電膜を得るためには、一般的に厚い膜厚の導電膜を形成せればよく、逆にシート抵抗値の高い導電膜を得るには薄い膜厚の導電膜を形成しなければならないことになる。
【0013】
(F)のスズドープ量を変化させてITO膜の抵抗値をコントロールする方法としては、前記特開平6−135742号公報及び特開平224374号公報に記載された方法が知られている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
上記した方法のうち、(A)の方法は酸により導電膜表面がダメージを受けるおそれがあり、また、酸による洗浄後、精製水で洗浄し、乾燥する工程がさらに必要となり、処理操作が煩雑となる。(B)の方法は、オゾンの発生による酸化反応を引き起したり、光照射装置を別途必要とする。(C)の方法は、焼成・成膜時における酸素濃度を変化させたり、不活性ガス雰囲気下で焼成を行うものであるため、焼成・成膜を簡便に行うことが困難である。
【0015】
(D)の酸化的雰囲気で処理する方法は、導電膜を高抵抗化するには都合が良いが、低抵抗の導電膜を得たい場合には適さない。また、高抵抗の導電膜を得たい場合であっても、酸素濃度や焼成温度等の小さな変化により抵抗値が高くなり過ぎたりする場合があり、所望の抵抗値を有する導電膜を形成するのが難しい。
【0016】
(E)の導電膜の膜厚を変化させる方法によれば、抵抗値を下げたい場合には膜厚を厚くする必要があり、膜厚を厚くするのにも限界があり、均一かつ高い可視光線透過率を有する透明導電膜を形成するのが困難な場合がある。一方、抵抗値を上げたい場合、例えば、200〜3000Ω/□のシート抵抗値を有する導電膜を得たい場合には、膜厚を1nm〜30nm程度にする必要があるが、この場合には、膜厚が薄いため膜厚を均一にコントロールするのが困難である。
【0017】
また、(F)のスズドープ量を変化させるITO膜の成膜方法は、主に高抵抗のITO膜を成膜する方法であり、ITO膜の成膜に際し、酸素雰囲気下で200℃以上の温度での加熱処理と組み合わせて用いられるものである。
【0018】
このように、従来の透明導電膜の形成方法では、所望の抵抗値、特に100〜3000Ω/□といった比較的高抵抗で、かつ均一性に優れた透明導電膜を簡便に形成することが困難であった。
【0019】
本発明は、かかる実状に鑑みてなされたものであり、透明導電膜のシート抵抗値を、簡易かつ効率よく所望のシート抵抗値に調整する方法を提供することを課題とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決すべく、本発明者らは鋭意検討した結果、透明導電膜を所定の濃度の有機溶剤の存在下に加熱処理することにより、極めて簡便に透明導電膜を所望の抵抗値に調整できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0021】
すなわち、本発明は、スズがドープされた酸化インジウム膜(ITO膜)、フッ素がドープされた酸化スズ膜(FTO膜)、アンチモンがドープされた酸化亜鉛膜又はインジウムがドープされた酸化亜鉛膜のいずれかの透明導電膜のシート抵抗値の調整方法であって、膜厚が10〜25nmの透明導電膜を、所定の濃度の、熱分解により前記透明導電膜を還元する作用を有する有機溶剤の存在下に、300〜500℃に加熱処理することにより、前記透明導電膜のリニアリティ値を±2%以内としつつ、かつ、シート抵抗値を200〜3000Ω/□に調整する工程を有する透明導電膜のシート抵抗値の調整方法を提供する。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明は、スズがドープされた酸化インジウム膜(ITO膜)、フッ素がドープされた酸化スズ膜(FTO膜)、アンチモンがドープされた酸化亜鉛膜又はインジウムがドープされた酸化亜鉛膜のいずれかの透明導電膜のシート抵抗値の調整方法であって、膜厚が10〜25nmの透明導電膜を、所定の濃度の、熱分解により前記透明導電膜を還元する作用を有する有機溶剤の存在下に、300〜500℃に加熱処理することにより、前記透明導電膜のリニアリティ値を±2%以内としつつ、かつ、シート抵抗値を200〜3000Ω/□に調整する工程を有する透明導電膜のシート抵抗値の調整方法である。
【0023】
(透明導電膜)
本発明の対象とする透明導電膜としては、例えば、スズがドープされた酸化インジウム膜(ITO膜)、フッ素がドープされた酸化スズ膜(FTO膜)、アンチモンがドープされた酸化亜鉛膜、インジウムがドープされた酸化亜鉛膜及びアルミニウムがドープされた酸化亜鉛膜等を挙げることができる。これらの中でも、前記透明導電膜はITO膜であるのが特に好ましい。
【0024】
これら透明導電膜の膜厚は、用途によって異なるが、一般的にはシート抵抗値が30Ω/□以下の透明導電膜の場合には、80nm以上であり、シート抵抗値が60〜200Ω/□程度の透明導電膜の場合には、30nm前後であり、シート抵抗値が200〜3000Ω/□程度の透明導電膜の場合には、通常10〜25nm程度である。
【0025】
透明導電膜を成膜する方法としては、基板上に透明導電膜を成膜する方法であれば特に制限はないが、例えば、スパッター法、電子ビーム法、イオンプレーテイング法又は化学的気相成長法(CVD法)等が挙げられる。
【0026】
スパッター法によれば、金属(インジウム、亜鉛等)及びドープされる金属(スズ、フッ素、フッ素化合物、アルミニウム)の混合物及び酸素ガス、或いは金属酸化物(酸化インジウム、酸化亜鉛)を焼結させたもの等をターゲットとして用いることにより透明導電膜を成膜することができる。また、電子ビーム法やイオンプレーテイング法によれば、金属(インジウム、亜鉛等)及びドープされる金属(スズ、フッ素、フッ素化合物、アルミニウム)の混合物及び酸素ガス、或いは金属酸化物(酸化インジウム、酸化亜鉛)を焼結させたもの等を蒸発物質として用いることにより、前記透明導電膜を成膜することができる。
【0027】
ITO膜を成膜する場合には、インジウム化合物及びスズ化合物を成膜原料として用いることができる。インジウム化合物としては、熱分解して酸化インジウムになるものが好ましい。かかるインジウム化合物として、例えば、インジウムトリスアセチルアセトナート(In(CH3COCHCOCH3)3)、インジウムトリスベンゾイルメタネート(In(C6H5COCHCOC6H5)3)、三塩化インジウム(InCl3)、硝酸インジウム(In(NO3)3)、インジウムトリイソプロポキシド(In(OPri)3)等を例示することができる。これらのうち、特にインジウムトリスアセチルアセトナートを好ましく使用することができる。
【0028】
また、スズ化合物としては、熱分解して酸化第2スズになるものを好ましく用いることができる。かかるスズ化合物として、例えば、塩化第2スズ、ジメチルスズジクロライド、ジブチルスズジクロライド、テトラブチルスズ、スタニアスオクトエート(Sn(OCOC7H15)2)、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズズアセテート、ジブチルスズビスアセチルアセトナート等を挙げることができる。
【0029】
なお、前記インジウム化合物及びスズ化合物に加えて、第3成分として、Mg、Ca、Sr、Ba等の周期律表第2族元素、Sc、Y等の第3族元素、La、Ce、Nd、Sm、Gd等のランタノイド、Ti、Zr、Hf等の第4族元素、V、Nb、Ta等の第5族元素、Cr、Mo、W等の第6族元素、Mn等の第7族元素、Co等の第9族元素、Ni、Pd、Pt等の第10族元素、Cu、Ag等の第11族元素、Zn、Cd等の第12族元素、B、Al、Ga等の第13族元素、Si、Ge、Pb等の第14族元素、P、As、Sb等の第15族元素、Se、Te等の第16族元素等の単体若しくはこれらの化合物を添加してITO膜を形成することも好ましい。
【0030】
これらの元素の添加割合は、インジウムに対して、0.05〜20原子%程度が好ましく、添加元素によって添加割合は異なり、目的とする抵抗値にあった元素及び添加量を適宜選定することができる。
【0031】
前記ITO膜は、基板上に超音波霧化による常圧CVD法(パイロゾル法)により形成するのが特に好ましい。実際にパイロゾル法によりITO膜を成膜する場合には、上に列記したインジウム化合物及びスズ化合物のそれぞれ一種以上を、所定の割合で混合し、適当な有機溶媒に溶解させたものを成膜材料として用いる。
【0032】
かかる有機溶媒としては、アセチルアセトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、メチルセルソルブ、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類等を挙げることができる。
【0033】
次いで、基板をパイロゾル成膜装置の成膜室内に設置し、空気中で、前記インジウム化合物及びスズ化合物が熱分解を起こして酸化インジウム及び酸化第2スズを形成し得る温度、例えば、300〜800℃程度に加熱する。さらに、前記インジウム化合物及びスズ化合物を含有する有機溶液を超音波により霧化させ、前記成膜室内に導入することにより、ITO膜を成膜することができる。
【0034】
(基板)
本発明に用いられる基板としては、後工程で用いる有機溶媒が熱分解を起こす温度で耐熱性を有するものであれば特に制限はないが、例えば、ガラス基板、セラミックス基板、金属基板等を挙げることができる。これらのうち、本発明ではガラス基板を用いるのが好ましい。ガラス基板としては、例えば、ケイ酸ガラス(石英ガラス)、ケイ酸アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、カリ石灰ガラス、鉛ガラス、バリウムガラス、ホウケイ酸ガラス等を挙げることができる。
【0035】
また、本発明においては、前記基板と前記透明導電膜の間に他の膜を介在させることもできる。かかる膜としては、例えば、酸化シリコン膜、有機ポリシラン化合物から形成されるポリシラン膜、MgF2膜、CaF2膜、SiO2とTiO2の複合酸化物膜等を挙げることができる。
【0036】
これらの膜は、例えば、基板としてソーダーガラスを用いる場合のNaイオンの拡散防止の為に形成される。また、透明導電膜と異なる屈折率、好ましくは低屈折率の下地膜を形成することによって、反射防止或いは透明性を向上させることもできる。これらの膜は、一般に知られている成膜方法、例えば、スパッター法、CVD法、スプレー法、ディップ法等により、膜厚が20〜200nm程度で形成することができる。
【0037】
透明導電膜を所定の濃度の有機溶剤の存在下に加熱処理を行う場合の加熱温度としては、用いる有機溶剤の種類等により異なるが、通常100〜800℃、好ましくは300〜500℃である。
【0038】
この工程に用いることができる有機溶媒としては、常温で蒸気圧を有し、適当な温度で熱分解する有機化合物であれば特に制限はない。かかる有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、アセチルアセトン等を挙げることができる。
【0039】
これらの有機溶媒の種類及び添加量は、前記透明導電膜のシート抵抗値の設定値に依存し、透明導電膜の種類、透明導電膜の膜厚、用いる有機溶媒の種類、加熱温度、加熱時間等により適宜定めることができる。例えば、他の条件を同一にして、より熱分解しやすい有機溶媒を多量に添加することにより、シート抵抗値をより低くすることができる。
【0040】
加熱処理は、導電膜を形成した基板を加熱処理室内に設置した後、所定濃度の有機溶媒を霧化させて加熱処理室内に導入しながら加熱することにより行われる。
【0041】
加熱温度は用いられる有機溶媒が透明導電膜中の酸化成分(酸素等)と反応し、自らが酸化されるのに必要な温度以上であれば十分であるが、通常100〜800℃、より好ましくは、300〜500℃の範囲の温度に設定する。還元性の有機溶媒を用いる場合、この加熱処理によって透明導電膜は還元され、そのシート抵抗値は小さくなる。
【0042】
以上のようにして、用いる有機溶媒の種類、添加量及び加熱温度を適宜選択・設定することにより、所望のシート抵抗値を有する透明導電膜とすることができる。
【0043】
従来は、透明導電膜のシート抵抗値を所定の値に調整すること、特に所定の値にシート抵抗値を所定の値に低下させることは困難であった。また、例え調整できたとしても特別な装置を必要としたり、煩雑な処理工程が必要であった。
【0044】
本発明によれば、光照射装置や酸洗浄装置、乾燥装置等の他の特別な装置を必要とせず、また、処理室内を真空系にしたり、不活性ガス雰囲気にする必要もなく、有機溶媒を系内に導入して加熱処理すればよく、簡便かつ効率よく、透明導電膜のシート抵抗値を所定の値に調整することができる。
【0045】
また、透明導電膜を高温で成膜し、シート抵抗値の調整を連続的に行う場合には、膜表面が十分に高温に保持されているので、新たに加熱処理を施すことなく、冷却工程時に所定量の有機溶媒を系内に添加するだけで、シート抵抗値を所定の値に調整することができる。
【0046】
本発明によれば、透明導電膜を形成する工程と、前記透明導電膜を所定の濃度の有機溶剤の存在下に加熱処理する工程とを組み合わせることにより、所定の抵抗値を有する透明導電膜を、効率良く、極めて簡便に、かつ、均一な膜質(即ち、リニアリティ値が±2%以内であるリニアリティに優れた)の所望のシート抵抗値を有する透明導電膜を形成することができる。
【0047】
特に本発明は、超音波霧化による常圧CVD法(パイロゾル法)によりITO膜等を形成するのに好ましく適用することができ、連続的に同一ライン上で加熱処理を行うことができるため、作業効率上も好ましいものとなっている。
【0048】
また、本発明の透明導電膜の形成方法によれば、高い可視光線透過率及びリニアリティに優れた導電膜を形成することができる。
【0049】
【実施例】
次に、実施例により、本発明を更に詳細に説明する。
(実施例1)
スパッタ法あるいは超音波霧化による常圧CVD法(パイロゾル法)により、下記第1表に示すような種々の膜厚(100〜300Å)及びシート抵抗値(200〜2000Ω/□)のITO膜をガラス基板上に成膜した。
【0050】
次いで、外気との循環を可能にした加熱処理室内にこのITO膜付ガラス基板を設置し、空気中で気化させたエタノールを、下記第1表に示すような濃度(600ppm,1200ppm,1800ppm)になるように添加して、400℃、10分間の加熱処理を施した。
【0051】
加熱処理後のITO膜のシート抵抗値の測定結果を第1表にまとめて示す。なお、シート抵抗値は、四探針法を用いて測定した。
【0052】
【表1】
【0053】
第1表から明らかなように、いずれのITO膜も加熱処理後においてはシート抵抗値が低くなっており、エタノールの添加濃度、加熱温度、加熱時間等を適宜変更・設定することによって、ITO膜のシート抵抗値を所望の値に調整することができることが分かった。また、加熱処理後のいずれのITO膜もリニアリティ値は±2%以内となっており、均一性にも優れたものであった。
【0054】
(実施例2)
スパッタ法あるいは超音波霧化による常圧CVD法(パイロゾル法)により、下記第2表に示すような種々の膜厚(100〜300Å)及びシート抵抗値(200〜2000Ω/□)のITO膜をガラス基板上に成膜した。
【0055】
次いで、外気との循環を可能にした加熱処理室内にこのITO膜付ガラス基板を設置し、空気中で気化させたアセチルアセトンを下記第2表に示すような濃度(28ppm,140ppm,280ppm)になるように添加して、400℃、10分間の加熱処理を施した。
【0056】
加熱処理後のITO膜のシート抵抗値の測定結果を第2表にまとめて示す。なお、シート抵抗値は実施例1と同様にして測定した。
【0057】
【表2】
【0058】
第2表から明らかなように、いずれのITO膜も加熱処理後においてはシート抵抗値が低くなっており、アセチルアセトンの添加濃度、加熱温度、加熱時間等を適宜変更・設定することによって、ITO膜のシート抵抗値を所望の値に調整することができることが分かった。また、加熱処理後のいずれのITO膜もリニアリティ値は±2%以内となっており、均一性にも優れたものであった。
【0059】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の透明導電膜のシート抵抗値の調整方法によれば、有機溶媒の存在下に、該有機溶媒の熱分解される温度で加熱処理するという簡便な操作により、該透明導電膜のシート抵抗値を所望の抵抗値に調整、設定することができる。また、本発明によれば、リニアリティ値が±2%以内の均一性に優れた透明導電膜とすることができる。
Claims (1)
- スズがドープされた酸化インジウム膜(ITO膜)、フッ素がドープされた酸化スズ膜(FTO膜)、アンチモンがドープされた酸化亜鉛膜又はインジウムがドープされた酸化亜鉛膜のいずれかの透明導電膜のシート抵抗値の調整方法であって、
膜厚が10〜25nmの透明導電膜を、所定の濃度の、熱分解により前記透明導電膜を還元する作用を有する有機溶剤の存在下に、300〜500℃に加熱処理することにより、前記透明導電膜のリニアリティ値を±2%以内としつつ、かつ、シート抵抗値を200〜3000Ω/□に調整する工程を有する透明導電膜のシート抵抗値の調整方法。
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