JP4498565B2 - 窓貼り用二軸配向ポリエステルフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車の窓、建築物の窓等のガラスに貼り合わせをして使用される窓貼り用二軸配向ポリエステルフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の窓や建築物の窓等に、プライバシーの保護、意匠性、日照調整、ガラス飛散防止等の目的で張り合わされるフィルムには、透明性、耐光性、耐水性、耐熱性、耐薬品性、機械的強度に優れているポリエステルフィルムが良く用いられる。
【0003】
我々は既に登録特許第2699397号において、3層以上の積層ポリエステルフィルムの内層に染料を含有させた複合フィルムを、遮光性を有する窓貼り用ポリエステルフィルムとして用いることを提案している。
【0004】
ところでこれらの遮光フィルムは、通常片面にハードコート加工が施され、反対面には糊剤が塗布され、この上に離型用フィルムが貼られる層構成であることが多い。この窓貼り用遮光フィルムを作成する際には、通常は溶剤系のハードコート加工、糊剤塗布加工を行う必要がある。このとき問題となるのは、フィルムの表面に、静電気がランダムな、あるいは規則性を有したパターンを呈して発生する場合であり、このフィルムにハードコート塗布加工や糊材塗布加工を行うと、フィルム表面上に発生した静電気のパターンと同じパターンのコートムラが発生する現象である。
【0005】
この問題に対して、フィルム表面上の静電気パターンを除去すべく、強力な除電器を用いて静電気パターンを除去する等の方策が取られて来たが、一度発生したパターンは除電器では有効に除去できず、コートムラの発生を避けることは難しい。
【0006】
一方、ハードコート加工した遮光フィルムにおいても、これを窓ガラスに貼り付けて使用していると、ハードコート面の帯電により、塵や埃あるいはたばこの煙等を引き寄せやすくなり、この結果フィルム表面が汚れやすくなる等の不具合が生じる原因となっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実状に鑑みなされたものであって、その解決課題は、優れた遮光性を有し、ハードコート材、糊材(粘着剤・接着剤)との塗布性、接着性に優れ、窓貼りフィルムに加工後も長期に渡り使用することのできるフィルムを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の積層構成を有するフィルムによれば、上記課題を高度に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は、中間層に染料を含有し、両最外層に帯電防止剤を含有する少なくとも3層の共押出積層ポリエステルフィルムの片面に塗布層を有するフィルムであり、当該フィルムが、水に溶解するか水分散可能なポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂の群から選ばれた化合物を含む塗布液をフィルムの片面に塗布した後に配向結晶化させたものであり、両表面の固有抵抗値が1.0×1013Ω以下であることを特徴とする窓貼り用二軸配向ポリエステルフィルム、および当該フィルムの塗布層上に、アクリル誘導体あるいはメタクリル酸誘導体を主成分としたハードコート層を設けたフィルムであり、ハードコート層表面の表面固有抵抗値が1.0×10 14 Ω以下であり、かつハードコート層を含めたフィルム全体のヘーズが5.0%以下あることを特徴とする窓貼り用二軸配向ポリエステルフィルムに存する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0011】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、少なくとも3層以上のポリエステル層が積層されたフィルムであることが必要で、さらに詳しくは、全ての層が押出口金から共に溶融押し出しされる、いわゆる共押出法により押し出されたフィルムである。また、フィルムは未延伸の状態や一軸延伸フィルムではなくて、縦方向および横方向の二軸方向に延伸して配向させ、その後に熱固定を施したフィルムであることが必要である。このような積層フィルムは、両面に共押出表層を有し、その間には共押出中間層を有するが、この共押出中間層自体が積層構造となっていてもよい。
【0012】
ポリエステルフィルが単層構成である場合には、添加した染料がフィルム表面に湧き出す現象(ブリードアウト)、およびそれが昇華する現象が発生しやすく、これによってフィルム製膜機の汚染されるため、生産自体ができない場合が多く、仮に作成できたとしても、その表層にはブリードアウトによるフィルム内部からの湧出物が存在して、それによって後加工に悪影響を及ぼすことが多いため、好ましくない。
【0013】
本発明のポリエステルフィルムは、積層された各層に用いるポリエステルが、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものである。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN)等が例示される。これらの中でもPETは物性とコストのバランスが良好であり、最も良く用いられるポリエステルである。
【0014】
本発明で用いるポリエステルは、合計で10モル%以内、好ましくは5モル%以内であれば第三成分を含有した共重合体であってもよい。共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、P−オキシ安息香酸など)の一種または二種以上が揚げられれ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上が挙げられる。
【0015】
本発明の窓貼り用二軸配向ポリエステルフィルムは、その積層構造の共押出中間層の少なくとも1層が染料を含有する必要があり、当該染料は、可視光領域(380〜780nm)に吸収を持つことが好ましい。このような染料を含有させることによって、フィルム全体の可視光線透過率を3〜70%、さらには5〜50%の範囲とすることが好ましい。
【0016】
本発明で用いる染料は、ポリエステルに実質的に溶解することが好ましい。ここで言う実質的に溶解するとは、ポリエステルの溶融状態で混練りしたときに、凝集体などが残らずに均一に混ざることを意味し、これによって後述するように二軸配向後のフィルムヘーズが5.0%以下、好ましくは4.0%以下となることを指す。また、これらの染料は、ポリエステルの成型温度で分解が少ないものが好ましい。このような染料は化学構造的にはアントラキノン系、ペリノン系、ペリレン系、アゾメチン系、複素環系染料等が好ましく挙げられ、染色処方的には分散性染料、油溶性染料が好適である。また一般に顔料として分類されているものであっても、上記のように溶融ポリエステル中で溶解するものであれば、本発明では染料として用いることができる。この例としては、フタロシアニン系などの銅、コバルト、ニッケル、亜鉛、クロムなどの金属イオンとの錯塩染料などを挙げることができる。
【0017】
上記の染料は、たとえばグレー調やブラウン調に調色するために、適宜選択して数種混合して使用されるのが一般的であり、これら染料のポリエステル中の含有量は、通常0.01〜10.0重量%、好ましくは0.05〜5.0重量%の範囲から適宜選ぶことができる。
【0018】
本発明の窓貼り用二軸配向ポリエステルフィルムは、共押出中間層に前述した染料のほかに、公知の紫外線吸収剤あるいはラジカルトラップ剤等を共存させることができる。しかし、これらの添加剤を添加してもフィルムに濁りを生じることなく、前述した範囲内のフィルムヘーズであることが好ましい。
【0019】
本発明の窓貼り用二軸配向ポリエステルフィルムは、共押出で3層以上の層構成を有するが、その両最外層(共押出表層)には帯電防止剤が添加されていて、そのどちらの表面固有抵抗値も1.0×1013Ω以下であり、好ましくは1.0×1012Ω以下である。1.0×1013Ωを超える場合には、帯電防止効果が不足であり、フィルム表面に静電気パターンが発生することがあり、好ましくない。
【0020】
本発明で用いる帯電防止剤は、上記表面固有抵抗値を実現するために、アニオン系帯電防止剤が好ましく用いられる。また、前述した共押出中間層の染料の場合と同じく、ポリエステルに実質的に溶解することが、フィルム全体のヘーズを低く抑えるために好ましい。さらにこれらの帯電防止剤は、ポリエステルの成型温度で分解が少ないものが好ましい。
【0021】
上記帯電防止剤の具体例としては、アルキルスルホン酸金属塩、アルキルベンゼンスルホン酸金属塩、燐酸エステル金属塩、アルキル燐酸エステル金属塩、低分子量ポリスチレンスルホン酸金属塩、およびその変成体、スルフォニルイソフタル酸とエステル結合が可能なポリエステルあるいはオリゴマーの金属塩等の中から選択できる。またこれらのアニオン系帯電防止剤のほかに、ポリメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のアルキレングリコールポリマーで、分子量が100〜20000、好ましくは500〜10000である化合物を併用することが、表面固有抵抗値を下げる、あるいは帯電防止性能の湿度依存性を緩和できるなどの効果があり、好ましい。
【0022】
また、帯電防止剤の配合量も使用する化合物の分子量によって異なるが、共押出表層ポリエステルに対して通常0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5.0重量%の範囲から選択することができる。
【0023】
本発明における染料や帯電防止剤およびその他の添加剤をポリエステルに添加する方法は、フィルムを溶融成型する際に、これらの粉体やペーストあるいは液体などとして添加する方法でもよいが、装置の汚染の問題や銘柄切り替えのしやすさを考慮すると、あらかじめ染料等のマスターバッチを作成しておき、フィルムの溶融成型時にこれらのマスターバッチをクリアーレジンで希釈しながら添加することが好ましい。また、これらの溶融成型の際には、ポリエステルに分散良く混練りしながら行うために、特に二軸押出機を用いることが好ましい。
【0024】
本発明のポリエステルフィルムは、表層面の滑り性を確保するために、その両側の共押出表層面に微細な突起を形成させ得るに十分な粒子径と添加量の微粒子を含有させることができる。この目的で使用できる微粒子は、たとえば、平均粒径が0.02〜5.0μmの酸化ケイ素、炭酸カルシウム、カオリン、架橋有機高分子微粉体などの一種または二種以上を挙げることができ、添加量は通常0.001〜0.5重量%、好ましくは0.01〜0.1重量%から適宜選択することが、フィルムヘーズを上昇させないで、かつ必要最小限の滑り性を確保することができて好ましい。上記のような粒子を含有させることにより、フィルム表面の平均表面粗さRaを0.005〜0.050μmの範囲内にすることが好ましい。
【0025】
さらにこの共押出表層を構成するポリエステルには、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤等の公知の添加剤を公知の量だけ添加することも可能である。
【0026】
また、共押出表層と共押出中間層の積層厚み構成に関しては、フィルム全体の濁り(フィルムヘーズ)を抑えるために、微粒子の添加された共押出表層はできるだけ薄いことが好ましい。一方で、中間層に存在する染料や他の添加剤がブリードアウトするのを防止するためには、共押出表層はむしろ厚い方が好ましい。これらを勘案して、フィルム全体の厚みに関わらず、共押出表層厚みは通常片側1.0〜5.0μm、好ましくは1.5〜4.0μmの範囲が好適である。また、両表面層の厚みは同じであっても、異なっていてもよいが、異なる場合にも両者共に上記の好ましい厚み範囲内であることが好ましい。
【0027】
本発明の窓貼り用二軸配向ポリエステルフィルムは、上述したようにその両表層に帯電防止剤が添加されていて、中間層には染料が存在する、少なくとも3層からなる構造を有するが、このフィルム全体のヘーズは5.0%以下、さらには4.0%以下であることが好ましい。フィルムヘーズが5.0%を超える場合には、フィルムに濁りがあることが目立ち、窓ガラスに貼り付けた場合に透明性が損なわれる傾向がある。
【0028】
本発明の窓貼り用二軸配向ポリエステルフィルムには、例えば次に述べるハードコート層との接着性改善の下引き層などの目的のため、共押出で作成した表層面上にさらに塗布層を設けることができる。この塗布層は、二軸配向した後に熱固定を加えて結晶配向化が完了したフィルムに対して塗工した塗布層でもよいが、フィルムの製膜途中、特に縦延伸が終了した時点で、水を主とした溶媒で希釈した塗布剤を塗工した後、乾燥・横延伸・熱固定を行ってフィルムの配向結晶化と塗布層の付与を同時に行う、いわゆるインラインコートを用いる方法で塗工したものが好ましい。
【0029】
特に次に述べるハードコート層との易接着化のためには、ポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂などの有機高分子バインダーを水に溶かすかあるいは水に分散化したものを主剤にして、これに架橋剤等を加えた物が良く用いられる。ただしこの時、この塗布層表面の表面固有抵抗値は、前述した範囲、すなわち1.0×1013Ω以下、さらには1.0×1012Ω以下であることが好ましい。1.0×1013Ω以上である場合には、帯電防止効果が不足であり、フィルム表面に静電気パターンが発生することがあり、ハードコート層の塗工時にも静電気パターンのムラなどが発生の原因となることがある。また、この塗布層を設けられたフィルムのヘーズも、前述した5.0%以下であることが好ましい。
【0030】
本発明の窓貼り用二軸配向ポリエステルフィルムの片面には、好ましくは上記易接着塗布層の上に、アクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体を主成分とした熱硬化あるいはUV硬化性の公知のハードコート層を設けることができる。また、このハードコート層は、インラインコーティングではなく、配向結晶化が終了した二軸配向ポリエステルフィルムの帯電防止塗布層上に、後加工として、通常は有機溶剤を用いて塗布・乾燥して設けられる。この塗布は、リバースグラビアコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクタコーターなどの装置を用いて行うことができる。
【0031】
上記のようにハードコート層設けた場合、それ自身も含めたフィルム全体のヘーズが5.0%以下、さらには4.0%以下、特に3.0%以下となることが好ましい。このハードコート層はフィルムを窓ガラスに張り付けた時に、露出する面であることから、簡単に擦り傷が発生するのを防止のため、ハードコート層の表面硬度は鉛筆硬度でH以上であることが好ましい。
【0032】
また、塵や埃あるいはたばこの煙によるヤニの付着を減少させるために、ハードコート層表面の表面固有抵抗値が1.0×1014Ω以下、さらには1.0×1013Ω以下であることが好ましい。この表面固有抵抗値を達成するために、ハードコート層には別途帯電防止剤を添加する方法も可能であるが、これによってハードコート層自体に濁りが発生することが多く、これを防止するためにハードコート層には帯電防止剤を添加せずに、3層以上構成で共押出されたポリエステルフィルムの共押出表層に存在する帯帯電防止効果を利用する方法が好ましい。
【0033】
この目的においてはハードコート層は薄い方が有利であるが、鉛筆硬度でH以上の表面硬度を維持するためには厚い方が良好である。これらの相反する特徴を同時に満たすには、ハードコート層の厚み(乾燥厚み)を0.5〜3.0μmの範囲に設定することが好ましい。
【0034】
本発明のフィルムにおいて、ハードコート層の反対面にはフィルムを窓ガラス等に貼り合わせるために、公知の粘着材または公知の接着剤等が塗工される。この粘着剤あるは接着剤をフィルムの塗工する際にも、ハードコート層を塗工する時を同様に配向結晶化が終了した二軸配向ポリエステルフィルムに、後加工として通常は有機溶剤を用いて塗布・乾燥して設けられる。この場合にも本発明の二軸配向ポリエステルには、3層以上の構成で共押出されたポリエステルフィルムの共押出表層に存在する帯電防止効果により、静電気によるランダムなあるいは規則性を有するパターンの塗布ムラが発生することがない。
【0035】
また、粘着剤または接着剤には、公知の紫外線吸収剤を配合して併用したり、あるいは赤外線吸収剤を公知の配合量で添加できる。この粘着剤あるいは接着剤には、例えばシリコーン系塗膜による離型処理を施された公知のプラスチックフィルムを、いわゆるセパレーターフィルムとして張り合わせて用いることができる。
【0036】
次に本発明の積層ポリエステルフィルムの製造方法について具体的に説明するが、本発明のフィルムは以下の製造例に何ら限定されるものではない。
【0037】
まず、先に述べたポリエステル原料を使用し、複数台の押出機、複数層のマルチマニホールドダイまたはフィ−ドブロックを用い、それぞれのポリエステルを積層して口金から複数層の溶融シートを押出し、冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法および/または液体塗布密着法を採用することが好ましい。
【0038】
次いで、得られた未延伸フィルムは二軸方向に延伸して二軸配向させる。すなわち、前記の未延伸シートを縦方向にロール延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃であり、延伸倍率は、通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍である。次いで、横方向に延伸を行う。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜115℃であり、延伸倍率は、通常3.0〜7倍、好ましくは3.5〜6倍である。そして引き続き、170〜250℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸延伸フィルムを得る。
【0039】
上記の延伸においては、1回の延伸操作で所定倍率まで延伸する方法の他、延伸を2段階以上に振り分けて所定の延伸倍率とする方法を用いることもできる。その場合にも、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。さらに、必要に応じて熱処理を行う前または後に再度縦および/または横方向に延伸してもよい。
【0040】
本発明においては、前述したようにフィルムの少なくとも片方の表面に、例えばハードコート層との易接着を目的とした塗布層を有することができ、特にインラインコーティングで易接着塗布層を付与する場合には、上記プロセスで縦延伸が終了したこの時点で、フィルムの表面には主として水を溶媒とする塗布液を塗布した後、テンター内で乾燥・予熱・横延伸を行い、さらに熱固定を行うことが好ましい。
【0041】
また、このときに用いる塗布方法は、リバースグラビアコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクタコーターなどの装置を用いた方法を採用することができる。
【0042】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例中「部」とあるのは「重量部」を示す。また、本発明で用いた測定法は次のとおりである。
(1)表面固有抵抗値
横河・ヒューレット・パッカード社の内側電極50mm径、外側電極70mm径の同心円電極である16008A(商品名)を23℃、50%RHの雰囲気下で試料に設置し、100Vの電圧を印加し、同社の高抵抗計である4329A(商品名)で試料の表面固有抵抗値を測定した。
(2)可視光線透過率
分光式測色計SE−2000(日本電色(株)製)を用いてD65光源で各波長の光線透過率を測定し、JIS−S3107に従って可視光線透過率を算出した。
(3)フィルムの濁度(フィルムヘーズ)
JIS−K7105に準じ、濁度計NDH300A(日本電色(株)製)を用いてフィルムの濁度(ヘーズ)を測定した。
(4)フィルムの表面粗さ(Ra)
中心線平均粗さRa(μm)を持って表面粗さとした。小坂研究所社(株)製表面粗さ測定機(SE−3F)を用いて次のように求めた。すなわち、フィルム断面曲線からその中心線の方向に基準長さL(2.5cm)の部分を切り取り、この切り取り部分の中心線をX軸、縦倍率の方向をY軸として粗さ曲線Y=f(X)で表したとき、次の式で与えられた値をμm単位で表す。中心線平均粗さは、試料フィルム表面から10本の断面曲線を求め、これらの断面曲線から求めた抜き取り部分の中心線粗さの平均値で表した。尚、触針の先端半径は2μm、荷重は30mgとし、カットオフ値は0.08mmとした。
【0043】
Ra=(1/L)∫L 0|f(X)|dX
(5)ハードコート層表面の鉛筆硬度
JIS−K5401に準じて、ハードコート層表面の鉛筆硬度で表示した。
(6)ハードコート層との接着強度
ハードコート層に1インチ幅で碁盤目が100個になるようにクロスカットを入れ、90度引き出し法でピールテストを行い(引張り速度:2インチ/分)、下記の基準で接着性を評価した。
【0044】
○:碁盤目の剥離数≦5個
△:5個<碁盤目の剥離数≦20個
×:20個<碁盤目の剥離数
(7)ハードコート面の汚れ易さ
ハードコート面をまず脱脂綿で水拭きした後、布製のメガネ用レンズクリーナーで水分を拭き取り除去し、さらに乾燥した布製レンズクリーナーに代えて、ほとんど力を加えずに一定の速さで10往復ハードコート表面をこすった。これをたばこの灰を細かく砕いたものに近づけた時に、ハードコートフィルムが灰を引き寄せる状況を次の基準で評価しランクを付けた。
【0045】
○:フィルムを灰に接触させても、引き寄せない。
【0046】
△:フィルムを灰に接触させると、少し引き寄せる。
【0047】
×:フィルムを灰に近づけただけで、多量に引き寄せる。
【0048】
以下の実施例および比較例で用いたポリエステル原料の製造方法は次のとおりである。
<ポリエステルA>
ジメチルテレフタレート100部、エチレングリコール60部および酢酸マグネシウム・4水塩0.09部を反応器にとり、加熱昇温するとともにメタノールを留去し、エステル交換反応を行い、反応開始から4時間を要して230℃に昇温し、実質的にエステル交換反応を終了した。次いで、エチルアシッドフォスフェート0.04部、三酸化アンチモン0.04部を添加した後、100分で温度を280℃、圧力を15mmHgとし、以後も徐々に圧力を減じ、最終的に0.3mmHgとした。4時間後系内を常圧に戻し、実質的に微粒子を含まないポリエステルAを得た。このポリエステルの固有粘度は0.70であった。
<ポリエステルB>
ジメチルテレフタレート100部、エチレングリコール60部および酢酸マグネシウム・4水塩0.09部を反応器にとり、加熱昇温するとともにメタノールを留去し、エステル交換反応を行い、反応開始から4時間を要して230℃に昇温し、実質的にエステル交換反応を終了した。次いで、平均粒径1.4μmのシリカ粒子を2.0部含有するエチレングリコールスラリーを反応系に添加し、さらにエチルアシッドフォスフェート0.04部、三酸化アンチモン0.04部を添加した後、100分で温度を280℃、圧力を15mmHgとし、以後も徐々に圧力を減じ、最終的に0.3mmHgとした。4時間後系内を常圧に戻しポリエステルBを得た。得られたポリエステルBのシリカ粒子含有量は1.0重量%であった。またこのポリエステルの固有粘度は0.70であった。
<ポリエステルC>
ジメチルテレフタレート100部、エチレングリコール60部および酢酸マグネシウム・4水塩0.09部を反応器にとり、加熱昇温するとともにメタノールを留去し、エステル交換反応を行い、反応開始から4時間を要して230℃に昇温し、実質的にエステル交換反応を終了した。次いで、分子量6000のポリエチレングリコール(酸化防止剤0.3%含有)をエチレングリコール溶液として添加し、さらにエチルアシッドフォスフェート0.04部、三酸化アンチモン0.04部を添加した後、100分で温度を280℃、圧力を15mmHgとし、以後も徐々に圧力を減じ、最終的に0.3mmHgとした。4時間後系内を常圧に戻しポリエステルBを得た。得られたポリエステルCのポリエチレングリコール含有率は10.0重量%であった。またこのポリエステルの固有粘度は0.70であった。
<ポリエステルD>
ポリエステルAをベント付き二軸押出機に供して、アルキルスルホン酸ナトリウム塩を10.0重量%の濃度となるように混合して添加し、溶融混練りを行ってチップ化を行い、帯電防止剤マスターバッチ ポリエステルDを作成した。
<ポリエステルE>
ポリエステルAをベント付き二軸押出機に供して、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩を10.0重量%の濃度となるように混合して添加し、溶融混練りを行ってチップ化を行い、帯電防止剤マスターバッチ ポリエステルEを作成した。
<ポリエステルF>
ポリエステルAをベント付き二軸押出機に供して、三菱化学(株)製ダイアレジンレッドHS 3.0重量%、同ブルーH3G 5.5重量%、および同イエローF 1.5重量%の各濃度となるように混合して添加し、溶融混練りを行ってチップ化を行い、染料マスターバッチ ポリエステルFを作成した。
【0049】
実施例1、2
ポリエステルA、Fの各チップを78.0:22.0の割合(実施例1)、95.5:4.5の割合(実施例2)で、それぞれ中間層用レジンとして中間層用押出機に投入した。これとは別にポリエステルA、B、C、Dの各チップを77.0:7.0:10.0:6.0の割合で表層用レジンとして表層用押出機に投入した(実施例1,2共通)。それぞれの押出機はいずれもベント付きの異方向二軸押出機であり、レジンは乾燥することなしに290℃の溶融温度で押出しを行い、その後溶融ポリマーをフィードブロック内で合流して積層した。その後静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して3層構成の積層未延伸シートを得た。得られたシートを83℃で3.6倍縦方向に延伸した。ここで一軸延伸フィルムの片面に、易接着塗布層を次に示す固形分重量割合の水分散性塗料で、フィルム製膜後の厚みで0.025μmとなるように均一に塗布した。
【0050】
易接着塗布層組成:
ポリウレタン系樹脂 65重量部
(イソシアネート成分としてイソホロンジイソシアネート、ポリオール成分としてテレフタル酸、イソフタル酸、エチレングリコール、ジエチレングリコールより構成されるポリエステルポリオール、鎖延長剤として2,2−ジメチロールプロピオン酸を主としてなるポリウレタン)
ポリエステル樹脂 20重量部
(ジカルボン酸成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、5ーナトリウムスルホイソフタル酸を含有し、ジオール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコールを含有する共重合ポリエステル)
メラミン系架橋剤 10重量部
(メトキシメチロールメラミン(メチロール化度:5〜6))
コロイダルシリカ 5重量部
次いで、フィルムをテンターに導き93℃でフィルムを乾燥・予熱した後、横方向に3.8倍延伸し、225℃にて熱固定を行った。さらに幅方向に185℃で5%弛緩処理を行って、冷却した後巻き取って二軸配向フィルムのロールを作成した。このフィルムの各層の厚みは2/21/2μmの構成で、総厚みは25μmであった。このフィルムの特性を下記表1に示す。
【0051】
このフィルムロールをスリッターに供し、硬質ゴム素材でダイヤクロスカット模様が表面に施されたロールをコンタクトロールとして用いて、クロス模様の静電気パターンが発生しやすい状態で、所定幅にスリットしてフィルムロールを作成した。
【0052】
上記のフィルムロールを、コーターにセットして、下記の組成のハードコート剤を#20バーで塗布し、90℃で1分間乾燥して除去した後、高圧水銀灯により、出力120w/cm、照射距離15cm、移動速度10m/分の条件下で乾燥して2μmのハードコート層を形成した。
【0053】
ハードコート組成:
アクリル樹脂(大日精化工業(株)社製「セイカビーム EXY−26(S))30重量部、
メチルエチルケトン 35重量部
トルエン 35重量部
形成したハードコート面を調べたところ、実施例1、2ともにスリッターで使用したクロスカットロールの押し跡パターンのコートムラの発生はなかった。
【0054】
次にこのハードコートフィルムを再度コーターにセットして、反ハードコート面側にポリアクリル酸ブチル40%の酢酸エチル溶液を#60のバーコーターを用いて塗布し、90℃で180秒間加熱して、約15μmの粘着剤層を設けた。この時にも静電気パターンが発生するなどして、コートムラが発生するようなことは見られなかった。
【0055】
比較例1
実施例1において、中間層用レジンは実施例1と全く同じ原料を用いて中間層用押出機に投入し、それとは別に表層ようレジンとしてポリエステルA、Bのチップを93.0:7.0の割合で表層用押出機に投入した。この後実施例1,2と全く同様に、3層の共押出・縦延伸・コーティング・乾燥・予熱・横延伸・熱固定・幅弛緩を行い、冷却した後巻き取って二軸配向フィルムのロールを作成した。このフィルムの各層の厚みは2/21/2μmの構成で、総厚みは25μmであった。このフィルムの特性を表1に示す。
【0056】
このフィルムロールを実施例1,2と同じスリッターに供し、クロス模様の静電気パターンが発生しやすい状態で、所定幅にスリットしてフィルムロールを作成した。
【0057】
上記のフィルムロールを、実施例1,2と全く同様にハードコート層を形成した。形成したハードコート面を調べたところ、スリッターで使用したクロスカットロールの押し跡パターン状にコートムラが発生していた。
【0058】
次にこのハードコートフィルムを実施例1,2と同様に再度コーターにセットして、反ハードコート面側に粘着剤層を設けた。この時にもスリッターで使用したクロスカットロールの押し跡の静電気パターンが発生するなどして、コートムラが発生した。
【0059】
比較例2
実施例1において、中間層用レジンは実施例1と全く同じ原料を用いて中間層用押出機に投入し、それとは別に表層用レジンとしてポリエステルA、B、C、Dの各チップを77.0:7.0:10.0:6.0の割合で表層用押出機に投入した。この後、実施例1,2と全く同様に、3層の共押出・縦延伸を実施した。その後、インラインコーティングは行わずに、予熱・横延伸・熱固定・幅弛緩を行い、冷却した後巻き取って二軸配向フィルムのロールを作成した。このフィルムの各層の厚みは2/21/2μmの構成で、総厚みは25μmであった。このフィルムの特性を表1に示す。
【0060】
このフィルムロールを実施例1,2と同じスリッターに供し、クロス模様の静電気パターンが発生しやすい状態で、所定幅にスリットしてフィルムロールを作成した。
【0061】
上記のフィルムロールを、実施例1,2と全く同様にハードコート層を形成した。形成したハードコート面を調べたが、スリッターで使用したクロスカットロールの押し跡パターン状にコートムラの発生はなかったが、ハードコートがポリエステルフィルムから剥がれやすく、それ以上の加工は不可能であった。
【0062】
比較例3
実施例1、2において、中間層用レジンとしてポリエステルAを100%用いて、表層用レジンは実施例1と同様の物を用いて、後は実施例1と全く同様に、溶融押出(共押出)・縦延伸・インラインコーティング・乾燥・予熱・横延伸・熱固定・幅弛緩を行い、冷却した後、巻き取って二軸配向フィルムのロールを作成した。このフィルムの各層の厚みは2/21/2μmの構成で、総厚みは25μmであった。このフィルムの特性を表1に示す。
【0063】
このフィルムロールを実施例1,2と同じスリッターに供し、クロス模様の静電気パターンが発生しやすい状態で、所定幅にスリットしてフィルムロールを作成した。
【0064】
上記のフィルムロールを、実施例1,2と全く同様にハードコート層を形成した。形成したハードコート面を調べたが、スリッターで使用したクロスカットロールの押し跡パターン状にコートムラの発生はなかった。
【0065】
次にこのハードコートフィルムを実施例1,2と同様に再度コーターにセットして、反ハードコート面側に粘着剤層を設けた。この時にもスリッターで使用したクロスカットロールの押し跡パターン状のコートムラの発生はなかった。
しかしながらこのフィルムの中間層に染料が添加されていないため、遮光性がなく、本発明の範囲外である。
【0066】
実施例3,4
実施例1,2において、中間層用レジンは実施例1,2と全く同じ原料を用いて(それぞれ実施例3,4とする)中間層用押出機に投入し、それとは別に表層ようレジンとしてポリエステルA、B、C、Eのチップを77.0:7.0:10.0:6.0の割合で表層用押出機に投入した。この後実施例1,2と全く同様に、2種3層の共押出・縦延伸・コーティング・乾燥・予熱・横延伸・熱固定・幅弛緩を行い、冷却した後巻き取って二軸配向フィルムのロールを作成した。このフィルムの各層の厚みは2/21/2μmの構成で、総厚みは25μmであった。このフィルムの特性を表1に示す。
【0067】
このフィルムロールを実施例1,2と同じスリッターに供し、クロス模様の静電気パターンが発生しやすい状態で、所定幅にスリットしてフィルムロールを作成した。
【0068】
上記のフィルムロールを、実施例1,2と全く同様にハードコート層を形成した。形成したハードコート面を調べたが、スリッターで使用したクロスカットロールの押し跡パターン状にコートムラの発生はなかった。
【0069】
次にこのハードコートフィルムを実施例1,2と同様に再度コーターにセットして、反ハードコート面側に粘着剤層を設けた。この時にもスリッターで使用したクロスカットロールの押し跡パターン状のコートムラの発生はなかった。
【0070】
【表1】
【0071】
*1;塗布層を含めたフィルムヘーズ
*2;ハードコート層も含めたフィルム全体のフィルムヘーズ
*3:ハードコート層が剥がれやすく、評価ができなかった。
【0072】
【発明の効果】
本発明によれば、優れた遮光性を有し、ハードコート材、糊材(粘着剤・接着剤)との塗布性、接着性に優れ、窓貼りフィルムに加工後も長期に渡り使用することのできるフィルムを提供することができ、その工業的価値は高い。
Claims (2)
- 中間層に染料を含有し、両最外層に帯電防止剤を含有する少なくとも3層の共押出積層ポリエステルフィルムの片面に塗布層を有するフィルムであり、当該フィルムが、水に溶解するか水分散可能なポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂の群から選ばれた化合物を含む塗布液をフィルムの片面に塗布した後に配向結晶化させたものであり、両表面の固有抵抗値が1.0×1013Ω以下であることを特徴とする窓貼り用二軸配向ポリエステルフィルム。
- 請求項1記載のフィルムの塗布層上に、アクリル誘導体あるいはメタクリル酸誘導体を主成分としたハードコート層を設けたフィルムであり、ハードコート層表面の表面固有抵抗値が1.0×1014Ω以下であり、かつハードコート層を含めたフィルム全体のヘーズが5.0%以下あることを特徴とする窓貼り用二軸配向ポリエステルフィルム。
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