JP4483586B2 - 硫化銅精鉱の溶錬方法 - Google Patents
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Description
マット溶錬工程は一般的に自溶炉によって行なわれ、白カワ工程と造銅工程とは、通常、転炉で行なわれる。
(1)スラグの液相中にマグネタイトの固相が析出し易くなり、このマグネタイトが炉体の壁面に付着することにより、炉の有効容積が減少する。
(2)スラグの液相中にCa2SiO4の固相が析出し易くなり、スラグに泡立ち(フォーミング)が発生し、操業を継続できなくなる。
(3)スラグの液相中にCa2Fe2O5の固相が析出し易くなり、溶剤であるCaO源(CaCO3等)が溶解せず、転炉から排出され、無駄となる。
(4)スラグの見掛け粘性が増大し、転炉の排出口からのスラグの流出が妨げられる。スラグの見掛け粘性を低下させるために、通常の条件よりも高温で操業する必要が生じ、そのエネルギーコストが増大するとともに、炉体を構成する耐火物の損耗が促進される。
そこで、従来は、SiO2の濃度を低く、例えば、0.4mass%以下にするように管理しながら操業を行なっているが、SiO2を多く含有する原料が溶錬炉の中に混入して突発的にSiO2濃度上昇によるトラブルが発生し、操業を中止するといった問題があった。
また、従来は、SiO2の濃度を低く管理しているので、SiO2を多く含有する原料を溶錬処理できないため、原料の選択範囲が狭くなり、原料コストが増加するといった問題があった。
さらに、前記[%SiO2]が高い状態においても、操業を安定して行うことが可能であり、SiO2の含有率が高い原料を使用することができる。
図1において、原料となる硫化銅精鉱とSiO2系フラックス(溶剤)を、酸素富化空気とともにランス5を用いて溶錬炉1に吹き込む。ここで、硫化銅精鉱は、主成分がCu、Fe、Sからなり、銅の含有率が30%程度である。そして、溶錬炉1では酸化溶錬が行なわれ銅マットMとスラグSが生じるが、両者は樋7を経て分離炉2にて比重差により分離される。ここで、銅マットMは主にCu2SとFeSからなり、スラグは主に2FeO・SiO2からなる。そして、分離炉2ではスラグSが除去され、銅マットMが樋7´を経て製銅炉3に送られる。
スラグS´の状態について、まず、SiO2については考慮せず、CaO−FeOX−Cu2Oの3元状態についてスラグS´の状態を検討する。図2にCaO−FeOX−Cu2Oの1250℃における3元状態図を示す。図2においてハッチングされた組成範囲が、1250℃におけるCaO−FeOX−Cu2Oの均一溶融範囲である。つまり、1250℃においてハッチングされた組成に制御することで、スラグS´を液相単体で存在させることができ、スラグS´の液相中に固相の析出が発生することを防止できる。
ここで、曲線41は[%SiO2]=0%のときのマグネタイト初晶域の境界線を示す。つまり、曲線41よりも上の組成である([%Fe]/[%CaO]が高い)場合にはマグネタイトが析出し、曲線41よりも下の組成である([%Fe]/[%CaO]が低い)場合には、CaO等が析出する。
曲線42は[%SiO2]=1%、曲線43は[%SiO2]=2%、曲線44は[%SiO2]=3%のときのマグネタイト初晶域の境界線を示す。図6から分かるように、[%SiO2]が高くなるにしたがいマグネタイト初晶域の境界線が下側([%Fe]/[%CaO]が低い側)に略平行移動し、マグネタイトの析出がし易くなる。
図8においては曲線51bと曲線52bに挟まれた範囲(ハッチング範囲)がスラグS´の均一溶融範囲であり、図9においては曲線51cと曲線52cに挟まれた範囲(ハッチング範囲)がスラグS´の均一溶融範囲であり、図10においては曲線51dと曲線52dに挟まれた範囲(ハッチング範囲)がスラグS´の均一溶融範囲である。そして均一溶融範囲になるように、[%Fe]/[%CaO]と温度とを調整することによって、スラグS´中への固相の析出を防止できる。
図7から図10において、曲線51a、51b、51c、51dは、[%SiO2]によって変化していることがわかる。そこで曲線51a、51b、51c、51dを温度Tの関数として近似すると、(6.8×10−4×[%SiO2]−9.9×10−3)×T−[%SiO2]+14.4で表すことができる。図11から図14に示すように、この近似式によって得られた直線61a、61d,61e、61fよりも、[%Fe]/[%CaO]を大きくすることにより、スラグS´中にCa2Fe2O5、Ca2SiO4が析出することを防止することができる。
また、突発的に[%SiO2]が増加した場合でも、操業を中止することなく対応可能であり、操業停止や再開による労力や時間の無駄を省くことができ、その生産効率を大きく向上することができる。
また、[%Cu2O]を14%以下としているので、粗銅の収率を高めることができるとともに、スラグS´の再処理によるエネルギー消費を低減することができる。また、[%Cu2O]を12%以上としているので、SiO2の増加による酸素分圧の低下にともなう粗銅中への硫黄分の残存を防止できる。
[%CaO]については、JIS A 5011−3「コンクリート用スラグ骨材―第3部:銅スラグ骨材」付属書1「(規定)銅スラグ骨材の化学分析方法」の「11.ICP発光分析法」に記載された方法で標準試料となるスラグS´中の[%CaO]を測定した。この測定値をもとに蛍光X線分析装置の[%CaO]の検量線を作成した。
そこで、上記の[%CaO]と同様の方法をCuに対して適用し、標準試料となるスラグS´中の[%Cu]を測定した。この測定値をもとに蛍光X線分析装置の[%Cu]の検量線を作成した。
なお、ここでのICP発光分光分析には、日本ジャーレルアッシュ株式会社製造のICAP−55型を用いて行なった。
この結果、[%SiO2]が増加した場合でも、スラグS´の見掛け粘性増加や凝固などのトラブルは発生せず、スラグS´の流動性を確保することができた。また、炉のスラグ排出口や樋にスラグS´の固着、マグネタイトの堆積などは認められなかった。
したがって、本発明によれば、[%SiO2]を増加させた場合でも、[%Fe]/[%CaO]を調整することにより、スラグS´の液相中にマグネタイトやCa2SiO4、Ca2Fe2O5の固相が析出することを防止でき、固相析出によるトラブルを防止でき、溶錬工程の操業を安定して行なうことができることが確認された。
Claims (3)
- 硫化銅精鉱を、SiO 2 系フラックスを用いて溶錬して得られる銅マットに対し、CaOを含む溶剤を用いた酸化溶錬を行なうことにより、カルシウムフェライト系スラグを生じさせるとともに粗銅を得る硫化銅精鉱の溶錬方法であって、
前記酸化溶錬を行なう炉内温度(酸化溶錬温度)をTとして、
前記カルシウムフェライト系スラグ中にSiO2が含有され、その質量パーセント濃度を[%SiO2]とし、
前記カルシウムフェライト系スラグ中の全Feの質量パーセント濃度を[%Fe]とし、
前記カルシウムフェライト系スラグ中のCaOの質量パーセント濃度を[%CaO]とし、
前記カルシウムフェライト系スラグ中に含有されるCu2Oの質量パーセント濃度を[%Cu2O]とした場合に、
前記酸化溶錬温度Tが、1213℃≦T≦1439℃の範囲内で、かつ、
前記[%Cu2O]が、10%≦[%Cu2O]≦16%の範囲内で、かつ、
前記[%SiO2]が、[%SiO2]≦7%の範囲内である場合において、
前記[%Fe]と前記[%CaO]との比[%Fe]/[%CaO]が、
(6.8×10−4×[%SiO2]−9.9×10−3)×T−[%SiO2]+14.4≦[%Fe]/[%CaO]≦2.4−0.15×[%SiO2]の範囲内となるように、
前記溶剤の添加量を調整して操業を行なうことにより、前記[%SiO 2 ]が増加した場合でも操業を安定して行なうことを特徴とする硫化銅精鉱の溶錬方法。 - 請求項1記載の硫化銅精鉱の溶錬方法において、
前記酸化溶錬温度Tが、1213℃≦T≦1300℃の範囲内であることを特徴とする硫化銅精鉱の溶錬方法。 - 請求項1または請求項2に記載の硫化銅精鉱の溶錬方法において、
前記[%Cu2O]が、12%≦[%Cu2O]≦14%の範囲内であることを特徴とする硫化銅精鉱の溶錬方法。
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