JP4483586B2 - 硫化銅精鉱の溶錬方法 - Google Patents

硫化銅精鉱の溶錬方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4483586B2
JP4483586B2 JP2005002528A JP2005002528A JP4483586B2 JP 4483586 B2 JP4483586 B2 JP 4483586B2 JP 2005002528 A JP2005002528 A JP 2005002528A JP 2005002528 A JP2005002528 A JP 2005002528A JP 4483586 B2 JP4483586 B2 JP 4483586B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
slag
sio
cao
smelting
range
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2005002528A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2006188738A (ja
Inventor
史人 田中
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Materials Corp
Original Assignee
Mitsubishi Materials Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Materials Corp filed Critical Mitsubishi Materials Corp
Priority to JP2005002528A priority Critical patent/JP4483586B2/ja
Publication of JP2006188738A publication Critical patent/JP2006188738A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4483586B2 publication Critical patent/JP4483586B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Manufacture And Refinement Of Metals (AREA)

Description

本発明は、銅の乾式精錬法に関するものであり、特に、硫化銅精鉱から得られたマットを酸化溶錬して粗銅を得る溶錬方法に関する。
従来、銅の溶融製錬法は、まず、硫化銅精鉱を酸化溶解することにより、鉱石中のFeの一部を酸化させてスラグとして除去するとともに、S(硫黄)の一部をSOガスとして除去し、一方でCuをFeSとCuSの混合物であるマットとして濃縮するマット溶錬工程と、得られたマットをさらに酸化させて、Feをスラグとして除去し、Feをほとんど含まない白カワ(CuS)を得る白カワ製造工程と、白カワをさらに酸化して粗銅を得る造銅工程とで構成されている。
マット溶錬工程は一般的に自溶炉によって行なわれ、白カワ工程と造銅工程とは、通常、転炉で行なわれる。
転炉での酸化工程では、通常、溶剤として珪酸鉱を添加して鉄シリケートスラグを形成するようにされているが、マットをさらに酸化して白カワや粗銅とする際には、上記鉄シリケートスラグが酸化されてマグネタイトの固相が析出し、スラグの流動性が低下するという問題がある。そこで、工程をバッチ式とし、白カワとスラグの共存状態下で吹錬を一旦中断して炉を傾転させてスラグを排出し、白カワのみを転炉内に残した後、粗銅になるまで酸化を行なうようにしている。但し、このようなバッチ式の操業では、生産効率が低くなるとともに、操業が煩雑化するといった問題がある。
そこで、三菱連続製銅法やフラッシュコンバータ法では、転炉工程でカルシウムフェライト系スラグを形成させることで上記マグネタイトの析出を回避してスラグの流動性を確保し、銅品位65〜70質量%のマットから粗銅の連続製銅を可能としている。これらの方法では、スラグの流動性を確保できる操業条件を経験的に求め、その条件を維持するように操業を行なっている。
ところで、上記のカルシウムフェライト系スラグは銅分を含んでいるが、転炉工程で処理するマットの量やマット中の銅品位の変化により、スラグ中のCu濃度は変動し、また、酸化の過不足によってもスラグ中のCu濃度は変動してしまう。そして、Cu濃度の変動にともなってスラグの組成が変化すると、スラグの液相中にマグネタイト、CaFe、あるいはCaFeの固相が析出し、スラグの見掛け粘性の増大等に起因するトラブルが発生するといった問題があった。
そこで、特許文献1及び特許文献2では、酸化溶錬温度におけるCaO−FeO−CuO(但し、1≦x≦1.5)の3元状態図を作成し、酸化溶錬温度におけるカルシウムフェライト系スラグの組成を、この3元状態図より得られる液相線で囲まれた均一溶融範囲となるように、さらに、カルシウムフェライト系スラグの組成が、式%CaO=−0.23×(%CuO)+23±1.5になるように、銅マットに添加する溶剤の量、または酸化溶錬における酸素分圧を制御して酸化溶錬を行なう方法が提案されている。
上記の酸化溶錬方法においては、CaO−FeO−CuO(但し、1≦x≦1.5)の3元状態図より得られた均一溶融範囲内になるように操業条件が制御されているので、スラグ中に固相が析出せず、固相析出に伴うトラブルを回避することができるとともに、スラグの見掛け粘性の増加を防止することができる。これにより、連続精錬を安定して行なうことができるものである。
特開2003−213347号公報 特開2003−213348号公報
ところで、この発明では、CaO、FeO、CuOの3つの物質について3元状態図を作成して検討されたものであり、SiOについては、その濃度が一定であるとの仮定の上で、スラグの状態を判断し、溶剤の量、または酸化溶錬における酸素分圧を制御する方法を示したものである。しかしながら、実際の操業においては、SiOはスラグ中に存在し、SiO濃度は、スラグの状態に大きな影響を与える因子である。
カルシウムフェライト系スラグ中のSiOの濃度が上昇した場合には、以下のような問題が生じることが経験的に知られている。
(1)スラグの液相中にマグネタイトの固相が析出し易くなり、このマグネタイトが炉体の壁面に付着することにより、炉の有効容積が減少する。
(2)スラグの液相中にCaSiOの固相が析出し易くなり、スラグに泡立ち(フォーミング)が発生し、操業を継続できなくなる。
(3)スラグの液相中にCaFeの固相が析出し易くなり、溶剤であるCaO源(CaCO等)が溶解せず、転炉から排出され、無駄となる。
(4)スラグの見掛け粘性が増大し、転炉の排出口からのスラグの流出が妨げられる。スラグの見掛け粘性を低下させるために、通常の条件よりも高温で操業する必要が生じ、そのエネルギーコストが増大するとともに、炉体を構成する耐火物の損耗が促進される。
これらのトラブルが発生した場合には、その原因が判明するまで操業を中断する必要が生じるので、生産効率が大幅に低下してしまう。
そこで、従来は、SiOの濃度を低く、例えば、0.4mass%以下にするように管理しながら操業を行なっているが、SiOを多く含有する原料が溶錬炉の中に混入して突発的にSiO濃度上昇によるトラブルが発生し、操業を中止するといった問題があった。
また、従来は、SiOの濃度を低く管理しているので、SiOを多く含有する原料を溶錬処理できないため、原料の選択範囲が狭くなり、原料コストが増加するといった問題があった。
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、スラグ中のSiO濃度が上昇した場合においても、スラグ中の固体析出による見掛け粘性の増大や、フォーミングなどのトラブルがなく、安定した連続精錬が可能な硫化銅精鉱の溶錬方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明は、硫化銅精鉱を、SiO 系フラックスを用いて溶錬して得られる銅マットに対し、CaOを含む溶剤を用いた酸化溶錬を行なうことにより、カルシウムフェライト系スラグを生じさせるとともに粗銅を得る硫化銅精鉱の溶錬方法であって、前記酸化溶錬を行なう炉内温度(酸化溶錬温度)をTとして、前記カルシウムフェライト系スラグ中にSiOが含有され、その質量パーセント濃度を[%SiO]とし、前記カルシウムフェライト系スラグ中の全Feの質量パーセント濃度を[%Fe]とし、前記カルシウムフェライト系スラグ中のCaOの質量パーセント濃度を[%CaO]とし、前記カルシウムフェライト系スラグ中に含有されるCuOの質量パーセント濃度を[%CuO]とした場合に、前記酸化溶錬温度Tが、1213℃≦T≦1439℃の範囲内で、かつ、前記[%CuO]が、10%≦[%CuO]≦16%の範囲内で、かつ、前記[%SiO]が、[%SiO]≦7%の範囲内である場合において、前記[%Fe]と前記[%CaO]との比[%Fe]/[%CaO]が、(6.8×10−4×[%SiO]−9.9×10−3)×T−[%SiO]+14.4≦[%Fe]/[%CaO]≦2.4−0.15×[%SiO]の範囲内となるように、前記溶剤の添加量を調整して操業を行なうことにより、前記[%SiO ]が増加した場合でも操業を安定して行なうことを特徴とする。
上記の硫化銅精鉱の溶錬方法においては、前記[%SiO]と、溶錬温度Tを考慮して、前記カルシウムフェライト系スラグの組成が、前記[%Fe]/[%CaO]が上記の式の範囲内となるように、CaO源(CaCO等)となる溶剤の添加量を調整して操業を行なうことにより、前記スラグの液相中にマグネタイトやCaSiO、CaFeの固相が析出することを防止でき、これらの固相析出によるトラブルを未然に防止でき、溶錬工程の操業を安定して行なうことができる。
さらに、前記[%SiO]が高い状態においても、操業を安定して行うことが可能であり、SiOの含有率が高い原料を使用することができる。
ここで、[%SiO]を[%SiO]≦7とした理由は、[%SiO]が10%近傍では、CaSiOの析出が特にし易く、[%SiO]が7%を超えた場合には、マグネタイトの析出がし易くなり、スラグの均一溶融範囲が非常に狭いので、実操業において、適用できる組成範囲内ではないからである。さらに、従来の操業においては、[%SiO]を0.5%以下の低レベルに制御して行なっており、7%を超える組成のスラグについては、突発的に発生することはないからである。
また、[%CuO]を10%≦[%CuO]≦16%に限定した理由は、[%CuO]が10%より低い場合には、溶錬炉中の酸素分圧が低く、硫黄分の酸化除去が不十分となり、溶錬炉から排出される粗銅中に硫黄分が残存してしまうためである。また、16%より高い場合には、粗銅として排出される銅量が減少し、スラグ中に銅が多く残存することになるので、銅の収率が落ち、さらにこのスラグを再度溶錬炉に戻して処理することから、エネルギー消費が増大してしまうためである。
また、前記酸化溶錬温度Tを、1213℃≦T≦1439℃に限定した理由は、Tが1213℃より低下した場合には、スラグの粘性が増大またはスラグが凝固してしまうために操業が困難となり、また、Tが1439℃を超えた場合には、溶錬炉の炉体を構成する耐火物の劣化が著しくなるので、メンテナンス等を頻繁に行なうといった問題が生じるためである。
ここで、前記酸化溶解温度Tを、1300℃以下にすることにより、溶錬炉の炉体を構成する耐火物として、廉価な一般的耐火材を適用することができるので、そのコストを低減することができるとともに、炉体の劣化がさらに抑えられるので、炉体のメンテナンス作業等に掛かる労力と時間とを大幅に低減することができる。
さらに、[%CuO]を12%≦[%CuO]≦14%にすることにより、Cuの収率をさらに高めることができるとともに、エネルギーコストを低減することができる。また、[%CuO]の成分範囲が狭くなっているので、上記式の精度が向上し、さらに安定した操業を行なうことができる。また、操業における変動を考慮すると、12%≦[%CuO]≦14%で制御することが好ましい。
ここで、スラグ中の[%CuO]を一定とした状態で、スラグ中のSiOが増加した場合には、酸素分圧が下がり還元雰囲気となるため、硫黄分の酸化除去が不十分となり、粗銅中に硫黄分が残存してしまうといった問題が発生する。そこで、スラグ中のSiOが増加した場合には、スラグ中の[%CuO]を高めに設定することにより、粗銅中への硫黄分の残存を防止することができるので、特に有効である。
なお、スラグ中の鉄分については、様々な酸化物、硫化物として混在しているが、主にFeO、Feで存在しており、スラグの状態についてはこれらの酸化物について分析できれば良い。しかし、これらの酸化物の状態を分離して分析することは非常に困難であるので、スラグ中の全Feとして、様々な形態で存在するFe量([%Fe])を指標として、スラグの組成制御をすることとしている。
以下、本発明の硫化銅精鉱の溶錬方法について図面を参照して説明する。図1は、本発明の溶錬方法に用いる製錬装置を示す。なお、本明細書において%表示はすべて質量%とする。
図1において、原料となる硫化銅精鉱とSiO系フラックス(溶剤)を、酸素富化空気とともにランス5を用いて溶錬炉1に吹き込む。ここで、硫化銅精鉱は、主成分がCu、Fe、Sからなり、銅の含有率が30%程度である。そして、溶錬炉1では酸化溶錬が行なわれ銅マットMとスラグSが生じるが、両者は樋7を経て分離炉2にて比重差により分離される。ここで、銅マットMは主にCuSとFeSからなり、スラグは主に2FeO・SiOからなる。そして、分離炉2ではスラグSが除去され、銅マットMが樋7´を経て製銅炉3に送られる。
製銅炉3での溶錬工程が本発明に係る部分である。つまり、銅マットMにCaO源(溶剤)を酸素富化空気とともにランス5´を用いて吹き込んで酸化溶錬を行い、カルシウムフェライト系スラグS´を生じさせるとともに粗銅Cを得る。得られた粗銅Cは約99%の銅を含み、後工程に送られる。また、カルシウムフェライト系スラグS´は銅を約15%程度含有しているので、水砕して溶錬炉1に戻され、銅分が回収される。このようにして、銅の連続精錬が行なわれている。
ここで、本実施の形態における[%CuO]は、粗銅の収率及び粗銅への硫黄分の混入防止の観点から、12%≦[%CuO]≦14%とする。
スラグS´の状態について、まず、SiOについては考慮せず、CaO−FeO−CuOの3元状態についてスラグS´の状態を検討する。図2にCaO−FeO−CuOの1250℃における3元状態図を示す。図2においてハッチングされた組成範囲が、1250℃におけるCaO−FeO−CuOの均一溶融範囲である。つまり、1250℃においてハッチングされた組成に制御することで、スラグS´を液相単体で存在させることができ、スラグS´の液相中に固相の析出が発生することを防止できる。
図3にCaO−FeO−CuOの均一溶融範囲を示す等温線を示す。図3において、閉曲線11に囲まれた範囲が温度1300℃における均一溶融範囲であり、閉曲線12に囲まれた範囲が温度1250℃における均一溶融範囲であり、閉曲線13に囲まれた範囲が温度1200℃における均一溶融範囲である。温度が低下するにつれて、均一溶融範囲が小さくなり、1200℃を下回ると、12%≦[%CuO]≦14%の領域では、スラグS´中に固相が析出することが確認できる。したがって、溶錬温度範囲としては少なくとも1200℃以上とすべきであることが示唆される。そこで、本実施の形態では、溶錬温度Tを1250℃とする。
ここで、温度1250℃におけるスラグS´の状態を図4に示す。図4において、グラフの横軸は[%CuO]の対数軸であり、縦軸は、[%CaO]である。凹曲線21よりも上の領域の組成になるとCaFeがスラグS´の液相中に析出する。また、凸曲線22よりも下の組成になるとマグネタイトがスラグS´の液相中に析出する。また、凹曲線21と凸曲線22と曲線23、24、25、26、27とで囲まれた範囲内が、スラグS´の均一溶融範囲を示している。ここで、曲線28aは[%Fe]/[%CaO]=2.2の際の状態を示し、曲線28bは[%Fe]/[%CaO]=2.45の際の状態を示し、曲線28cは[%Fe]/[%CaO]=2.7の際の状態を示しており、[%Fe]/[%CaO]が低くなるとCaFeが析出しやすくなり、[%Fe]/[%CaO]が高くなるとマグネタイトが析出しやすくなることが分かる。
次に、SiOの影響を確認するために、[CuO]が一定とした場合の、温度1250℃におけるCa0−FeO−SiOの3元状態図の一部を図5に示す。図5において、曲線31よりも外側(図5の台形の辺側)ではスラグS´中にCaSiOが析出し、曲線32の外側ではCaOが析出し、曲線33の外側ではマグネタイトが析出することが分かる。つまり、これらの曲線31、32、33に囲まれた部分(図5のハッチング部分)の組成範囲が、スラグS´の均一溶融範囲であることが示されている。スラグS´がこの組成範囲内になるように操業を行なうことができれば、スラグS´中の固相析出によるトラブルを未然に防ぐことができる。
図5において、曲線31は[%SiO]が8%近傍で内側に大きく張り出した形となっており、CaSiOが析出しやすい状態にあることが分かる。また、図5に表された組成範囲内では、曲線33は、[%SiO]が高くなるにしたがい内側に大きく張り出しており、[%SiO]が高くなると、マグネタイトが析出しやすい状態になることが分かる。したがって、本実施の形態においては、[%SiO]の範囲は7%以下としている。
図6に、操業の変動によってスラグS´温度が低下した場合のスラグS´液相中に固相としてマグネタイトが析出する組成範囲を示す。図6において、横軸が[%CuO]、縦軸が[%Fe]/[%CaO]である。
ここで、曲線41は[%SiO]=0%のときのマグネタイト初晶域の境界線を示す。つまり、曲線41よりも上の組成である([%Fe]/[%CaO]が高い)場合にはマグネタイトが析出し、曲線41よりも下の組成である([%Fe]/[%CaO]が低い)場合には、CaO等が析出する。
曲線42は[%SiO]=1%、曲線43は[%SiO]=2%、曲線44は[%SiO]=3%のときのマグネタイト初晶域の境界線を示す。図6から分かるように、[%SiO]が高くなるにしたがいマグネタイト初晶域の境界線が下側([%Fe]/[%CaO]が低い側)に略平行移動し、マグネタイトの析出がし易くなる。
また、図6において、横軸[%CuO]に対して、曲線41、42、43、44はほとんど変化していない、つまり、[%CuO]の影響を大きく受けないことが分かる。したがって、本実施の形態における12%≦[%CuO]≦14%の範囲内においては、[%CuO]の影響はほとんど無視でき、[%Fe]と[%CaO]と[%SiO]とを考慮することで、スラグS´の状態を示すことができることになる。
図7に、[%CuO]=14%における[%SiO]=0%のときのスラグS´の均一溶融範囲を示す。図7において、横軸は[%Fe]/[%CaO]、縦軸は温度であり、ハッチングされた部分がスラグS´の均一溶融範囲を示す。曲線51aよりも左側([%Fe]/[%CaO]が低い側)では、CaOがスラグS´液相中に析出し、曲線52aよりも右側([%Fe]/[%CaO]が高い側)では、マグネタイトがスラグS´液相中に析出する。つまり、曲線51aと曲線52aに挟まれた範囲(図7のハッチング範囲)になるように、[%Fe]/[%CaO]と温度とを調整することによって、スラグS´中への固相の析出が防止できる。
同様に、図8に[%CuO]=14%における[%SiO]=1%のときのスラグS´の均一溶融範囲を、図9に[%CuO]=14%における[%SiO]=2%のときのスラグS´の均一溶融範囲を、図10に[%CuO]=14%における[%SiO]=3%のときのスラグS´の均一溶融範囲を示す。
図8においては曲線51bと曲線52bに挟まれた範囲(ハッチング範囲)がスラグS´の均一溶融範囲であり、図9においては曲線51cと曲線52cに挟まれた範囲(ハッチング範囲)がスラグS´の均一溶融範囲であり、図10においては曲線51dと曲線52dに挟まれた範囲(ハッチング範囲)がスラグS´の均一溶融範囲である。そして均一溶融範囲になるように、[%Fe]/[%CaO]と温度とを調整することによって、スラグS´中への固相の析出を防止できる。
図11から図14に、本発明の[%Fe]/[%CaO]の範囲を示す。ここで、図11は[%SiO]=0%、図12は[%SiO]=3%、図13は[%SiO]=5%、図14は[%SiO]=7%の場合である。
図7から図10において、曲線51a、51b、51c、51dは、[%SiO]によって変化していることがわかる。そこで曲線51a、51b、51c、51dを温度Tの関数として近似すると、(6.8×10−4×[%SiO]−9.9×10−3)×T−[%SiO]+14.4で表すことができる。図11から図14に示すように、この近似式によって得られた直線61a、61d,61e、61fよりも、[%Fe]/[%CaO]を大きくすることにより、スラグS´中にCaFe、CaSiOが析出することを防止することができる。
一方、図7から図10において、曲線52a、52b、52c、52dは、[%SiO]によって変化していることがわかる。しかしながら、マグネタイトについては、スラグS´中に析出して炉体等に付着した場合には、その後に炉内温度を上昇しても付着したマグネタイトを速やかに除去できないため、マグネタイトの発生は確実に防止する必要がある。そこで、炉内の温度変化によるマグネタイトの析出を防止する観点から、[%Fe]/[%CaO]の上限値については、温度Tを考慮せず、[%SiO]の関数としてのみ近似し、2.4−0.15×[%SiO]で表す。図11から図14に示すように、この近似式より得られた直線62a、62d,62e、62fよりも、[%Fe]/[%CaO]を小さくすることにより、スラグS´の液相中にマグネタイトが析出することを防止することができる。また、[%SiO]が一定の場合には、炉内の温度がある程度低下した場合でも、マグネタイトの析出を防止することができる。
したがって、図11から図14に示されるハッチング範囲になるように、[%Fe]/[%CaO]と温度とを調整することにより、スラグS´の液相中にマグネタイトやCaSiO、CaFeの固相が析出することを防止でき、これらの固相析出によるトラブルを未然に防止し、溶錬工程の操業を安定して行なうことができる。また、[%SiO]が高くなった場合でも操業が可能であり、SiOの含有率が高い原料を使用することができる。
上述のように、本発明によれば、[%SiO]が増加した場合でも、炉内温度の制御やCaO源(CaCO等)となる溶剤の添加量を調整することにより、スラグS´の液相中にマグネタイトやCaSiO、CaFeの固相が析出することを防止でき、これらの固相析出によるトラブルを未然に防止し、溶錬工程の操業を安定して行なうことができる。
また、突発的に[%SiO]が増加した場合でも、操業を中止することなく対応可能であり、操業停止や再開による労力や時間の無駄を省くことができ、その生産効率を大きく向上することができる。
また、酸化溶解温度Tを1250℃で行なっても、スラグS´の見掛け粘性の増加を防止できるので、溶錬炉の炉体を比較的廉価な一般的耐火材で構成でき、そのコストを低減することができるとともに、炉体の劣化が抑えられるので、炉体のメンテナンス作業等に掛かる労力と時間とを大幅に低減することができる。
また、[%CuO]を14%以下としているので、粗銅の収率を高めることができるとともに、スラグS´の再処理によるエネルギー消費を低減することができる。また、[%CuO]を12%以上としているので、SiOの増加による酸素分圧の低下にともなう粗銅中への硫黄分の残存を防止できる。
本発明の効果を確認するために、確認実験を行った結果を以下に示す。三菱連続製銅法における商業用の転炉において、カルシウムフェライト系スラグS´の目標管理温度を1250℃として操業を行いながら、30分間隔で消耗型熱電対によるスラグS´の温度測定、及び蛍光X線分析装置による[%CuO]、[%Fe]、[%CaO]、[%SiO]の測定を行なった。なお、ここで、蛍光X線分析装置の検量線については、以下の方法により作成した。
[%SiO]については、JIS M 8214「鉄鉱石−けい素定量方法」付属書1「二酸化けい素重量法」に記載の方法で標準試料となるスラグS´の[%SiO]を測定した。この測定値をもとに蛍光X線分析装置の[%SiO]の検量線を作成した。
[%CaO]については、JIS A 5011−3「コンクリート用スラグ骨材―第3部:銅スラグ骨材」付属書1「(規定)銅スラグ骨材の化学分析方法」の「11.ICP発光分析法」に記載された方法で標準試料となるスラグS´中の[%CaO]を測定した。この測定値をもとに蛍光X線分析装置の[%CaO]の検量線を作成した。
[%CuO]においては、スラグS´中の銅分は、主にCuO、金属Cu、CuSとして存在しており、これらの形態を分離し、[%CuO]を短時間で分析することは困難である。しかし、スラグS´中のCuSは極微量のため無視でき、スラグS´中の金属Cuについては、その存在比率は略一定であるため、スラグS´中の全Cuの質量パーセント[%Cu]を蛍光X線分析装置で測定すれば、[%CuO]が分かる。
そこで、上記の[%CaO]と同様の方法をCuに対して適用し、標準試料となるスラグS´中の[%Cu]を測定した。この測定値をもとに蛍光X線分析装置の[%Cu]の検量線を作成した。
[%Fe]については、JIS A 5011−3「コンクリート用スラグ骨材―第3部:銅スラグ骨材」付属書1「(規定)銅スラグ骨材の化学分析方法」の「11.ICP発光分析法」に記載された方法で試料の塩酸溶液を作成し、この溶液をJIS M8212「鉄鉱石―全鉄定量方法」付属書1「塩化すず(II)還元ニクロム酸カリウム滴定法」に記載の方法で標準試料となるスラグS´の[%Fe]を測定した。この測定値をもとに蛍光X線分析装置の[%Fe]の検量線を作成した。
なお、ここでのICP発光分光分析には、日本ジャーレルアッシュ株式会社製造のICAP−55型を用いて行なった。
ここで、原料の一部として、SiOを多く含む(SiO含有率5%)金銀滓を使用し、これにより[%SiO]を増加させた。ここで、CaO源である溶剤の添加量を調整することにより、[%Fe]/[%CaO]を上記式の範囲内になるように調整した。
この結果、[%SiO]が増加した場合でも、スラグS´の見掛け粘性増加や凝固などのトラブルは発生せず、スラグS´の流動性を確保することができた。また、炉のスラグ排出口や樋にスラグS´の固着、マグネタイトの堆積などは認められなかった。
したがって、本発明によれば、[%SiO]を増加させた場合でも、[%Fe]/[%CaO]を調整することにより、スラグS´の液相中にマグネタイトやCaSiO、CaFeの固相が析出することを防止でき、固相析出によるトラブルを防止でき、溶錬工程の操業を安定して行なうことができることが確認された。
本発明の溶錬方法に用いる連続製錬装置の説明図である。 1250℃におけるCaO−FeO−CuOの3元状態図である。 CaO−FeO−CuOの均一溶融範囲(液相線)を示す等温線図である。 温度1250℃におけるスラグの状態を示す説明図である。 1250℃におけるCa0−FeO−SiOの3元状態図である。 マグネタイトが析出する組成範囲を示す説明図である。 [%SiO]=0%の場合の、スラグの均一溶融範囲(液相線)を示す説明図である。 [%SiO]=1%の場合の、スラグの均一溶融範囲(液相線)を示す説明図である。 [%SiO]=2%の場合の、スラグの均一溶融範囲(液相線)を示す説明図である。 [%SiO]=3%の場合の、スラグの均一溶融範囲(液相線)を示す説明図である。 [%SiO]=0%の場合の、本発明の[%Fe]/[%CaO]の上限と下限とを示す説明図である。 [%SiO]=3%の場合の、本発明の[%Fe]/[%CaO]の上限と下限とを示す説明図である。 [%SiO]=5%の場合の、本発明の[%Fe]/[%CaO]の上限と下限とを示す説明図である。 [%SiO]=7%の場合の、本発明の[%Fe]/[%CaO]の上限と下限とを示す説明図である。

Claims (3)

  1. 硫化銅精鉱を、SiO 系フラックスを用いて溶錬して得られる銅マットに対し、CaOを含む溶剤を用いた酸化溶錬を行なうことにより、カルシウムフェライト系スラグを生じさせるとともに粗銅を得る硫化銅精鉱の溶錬方法であって、
    前記酸化溶錬を行なう炉内温度(酸化溶錬温度)をTとして、
    前記カルシウムフェライト系スラグ中にSiOが含有され、その質量パーセント濃度を[%SiO]とし、
    前記カルシウムフェライト系スラグ中の全Feの質量パーセント濃度を[%Fe]とし、
    前記カルシウムフェライト系スラグ中のCaOの質量パーセント濃度を[%CaO]とし、
    前記カルシウムフェライト系スラグ中に含有されるCuOの質量パーセント濃度を[%CuO]とした場合に、
    前記酸化溶錬温度Tが、1213℃≦T≦1439℃の範囲内で、かつ、
    前記[%CuO]が、10%≦[%CuO]≦16%の範囲内で、かつ、
    前記[%SiO]が、[%SiO]≦7%の範囲内である場合において、
    前記[%Fe]と前記[%CaO]との比[%Fe]/[%CaO]が、
    (6.8×10−4×[%SiO]−9.9×10−3)×T−[%SiO]+14.4≦[%Fe]/[%CaO]≦2.4−0.15×[%SiO]の範囲内となるように、
    前記溶剤の添加量を調整して操業を行なうことにより、前記[%SiO ]が増加した場合でも操業を安定して行なうことを特徴とする硫化銅精鉱の溶錬方法。
  2. 請求項1記載の硫化銅精鉱の溶錬方法において、
    前記酸化溶錬温度Tが、1213℃≦T≦1300℃の範囲内であることを特徴とする硫化銅精鉱の溶錬方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載の硫化銅精鉱の溶錬方法において、
    前記[%CuO]が、12%≦[%CuO]≦14%の範囲内であることを特徴とする硫化銅精鉱の溶錬方法。
JP2005002528A 2005-01-07 2005-01-07 硫化銅精鉱の溶錬方法 Active JP4483586B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005002528A JP4483586B2 (ja) 2005-01-07 2005-01-07 硫化銅精鉱の溶錬方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005002528A JP4483586B2 (ja) 2005-01-07 2005-01-07 硫化銅精鉱の溶錬方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2006188738A JP2006188738A (ja) 2006-07-20
JP4483586B2 true JP4483586B2 (ja) 2010-06-16

Family

ID=36796200

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2005002528A Active JP4483586B2 (ja) 2005-01-07 2005-01-07 硫化銅精鉱の溶錬方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4483586B2 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4949343B2 (ja) * 2008-09-04 2012-06-06 パンパシフィック・カッパー株式会社 銅の製錬方法
CN102605191B (zh) * 2012-04-16 2013-12-25 阳谷祥光铜业有限公司 一种铜精矿直接生产粗铜的方法
JP6665443B2 (ja) * 2015-08-18 2020-03-13 住友金属鉱山株式会社 自熔製錬炉の操業方法
CN106282601B (zh) * 2016-09-27 2018-05-11 绵阳铜鑫铜业有限公司 一种再生铜精炼中快速氧化、除杂的方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2006188738A (ja) 2006-07-20

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2001247922A (ja) 銅製錬炉の操業方法
JP4483586B2 (ja) 硫化銅精鉱の溶錬方法
CN106332549B (zh) 吹炼含铜材料的方法
US8500845B2 (en) Process for refining lead bullion
JP2017201048A (ja) 銅精錬スラグの処理方法
JP5322860B2 (ja) リサイクルスラグの生成方法及びリサイクルスラグ
AU751288B2 (en) Method for smelting copper sulfide concentrate
JP4426489B2 (ja) 銅転炉の操業方法
JP3838105B2 (ja) 硫化銅精鉱の溶錬方法
RU2755136C1 (ru) Способ непрерывной плавки кварцевой малосульфидной золотосодержащей руды в печи ванюкова
JP3750463B2 (ja) 製銅設備の操業方法
Chikashi Influence of slag composition on reduction control and operations of the slag-cleaning furnace at KCM, Zambia
JP7235238B2 (ja) フェロニッケルの脱硫方法
JP2002038223A (ja) 銅製錬炉の操業方法及びそれに用いる送風ランス
JPH05271818A (ja) 銅アノードにおけるPb量の調整方法
JP2024062452A (ja) 銅製錬転炉の操業方法
JP5689008B2 (ja) リサイクルスラグ及びリサイクルスラグの製造方法
JP6474811B2 (ja) 高硫黄固体の処理
JP2024062451A (ja) 銅製錬転炉の操業方法
RU2618030C1 (ru) Способ управления процессом жидкофазного восстановления Ромелт для переработки железосодержащих материалов высокой степени окисленности
US9745643B2 (en) Method for treating combustible material and installation
JP3838106B2 (ja) 硫化銅精鉱の溶錬方法
SU1721096A1 (ru) Способ рафинировани жидкой стали
JP5334442B2 (ja) プリメルト滓化促進剤の投入方法
SU1475931A1 (ru) Способ производства подшипниковой стали

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20070330

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20090616

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090623

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090813

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20100302

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20100315

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4483586

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130402

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130402

Year of fee payment: 3