JP4462557B2 - フォトマスク用合成シリカガラス基板の製造方法、その方法によるフォトマスク用合成シリカガラス基板 - Google Patents
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Description
この光源を使ったフォトリソグラフィは、レンズとウエハの間に液体を浸漬して適用するArF液浸技術(ArF−Wet)により、解像度が高くなる(試算では55nm)ことから、次世代のフォトリソグラフィの光源とされているF2エキシマレーザ(波長157nm)のノード幅65nmに代わる技術として、改良実用が間近となっている。
このArF−Wetでは、それを透過する光の偏光性の乱れを少なく抑える低複屈折という性質が、フォトマスクに要求される。
このような光学ガラスは、泡、粒、脈理等がなければ、波面のずれは、実用上の屈折率の許容変動(波長の1/4以下)とみなして不具合はないものの、ArF−Wetフォトリソグラフィの精密マスクに使われる場合、熱残留応力の結果として生じる複屈折が問題視され、波長の1/4以下の短光路差、SPECでは1nm/cm以下の検出が必要になる。
また、ブロック全体での温度分布が生じやすいことから、平均複屈折及び屈折率むら(屈折率均質度)を十分に小さくすることは困難であった。
本発明のフォトマスク用合成シリカガラス基板の製造方法は、直接溶融法により作製された、最大複屈折10〜15nm/cm、屈折率均質度10 -5 以下で、低圧水銀ランプ照射で蛍光を発しない合成シリカガラスブロックを、大気中において1100℃以上の温度に加熱してから、0.8〜1℃/minの降温速度で徐冷した後、該合成シリカガラスブロックをスライス加工してマスク素基板とし、該マスク素基板の単枚を1170℃以上の温度に加熱してから、0.01〜0.8℃/minの降温速度で徐冷するとともに、少なくとも該徐冷過程の後半または徐冷後において水素ガス雰囲気とすることを特徴とする。
上記のように、マスク素基板に加工してから、アニール処理による構造緩和を図り、さらに、より低温での水素処理により水素分子を拡散させることにより、アニール処理時間の短縮化、水素ドープの均一化等が図られ、耐光性に優れたフォトマスク用合成シリカガラス基板を効率的に得られる。
本発明において用いられる合成シリカガラスは、加工性及びフォトリソグラフィへの適用等の観点から、マスク素基板に加工される前のブロックの状態において、上記特性を備えているものであることが好ましい。
前記マスク素基板は、温度によって水素濃度が変動しやすいため、上記のようにして、水素濃度を均一に調整することができる。
上記のような状態で炉内に納置することにより、アニール処理中の一定温度保持及び冷却過程時のマスク素基板周辺の温度差を抑えることができ、炉内温度分布のマスク素基板への影響を小さくすることができ、また、自重変形を抑制することができる。
残留応力、強度等の観点から、マスク素基板の母材としては、上記範囲内のOH基濃度の合成シリカガラスのブロックが好適に用いられる。
ブロックの状態でのこのようなアニール処理により、マスク素基板への加工前に、予め、歪の除去がなされていることが好ましい。
このような特性を備えた本発明に係る製造方法により製造された合成シリカガラス基板は、耐光性に優れており、ArF−Wetフォトリソグラフィにも好適に用いることができる。
このような条件を具備したアニール炉を用いることにより、処理するマスク素基板の均熱化及び水素ドープの均一化が効率的に図られる。
また、上記製造方法により得られる本発明に係るフォトマスク用合成シリカガラス基板は、ArF−Wetフォトリソグラフィにも十分適用可能である。
さらに、上記製造方法は、既に実用、量産化されているフォトマスク用合成シリカガラスブロックを使うことができ、また、マスク素基板のアニール処理及び水素処理は、同一炉内で処理可能であるため、コスト面でも利点がある。
すなわち、本発明は、合成シリカガラスをブロックのままアニール処理するのではなく、マスク素基板に加工してから、アニール処理及び水素処理を施すことを特徴とするものである。
また、マスク素基板のアニール処理による構造緩和が図られた後、より低温での水素処理による水素分子拡散工程を経ることにより、アニール処理時間の短縮化、水素ドープの均一化等が図られ、耐光性に優れたフォトマスク用合成シリカガラス基板を、より効率的に得ることができる。
前記加熱温度は、1170℃以上であることが好ましく、その上限は1180℃である。
前記保持時間が、2時間未満であると、マスク素基板の全ての部分が定常温度に達しなくなる。一方、7時間を超えると、生産性が悪くなる。
前記降温速度が0.01℃/min未満であると、生産性が悪くなる。一方、0.8℃/minを超えると、マスク素基板の内部と表面での温度差が大きくなって永久歪が残り、複屈折の原因となる。
前記降温速度は、好ましくは、0.1〜0.4℃/minとする。
合成シリカガラスの歪点である800℃までは、前記降温速度で徐冷することが好ましく、その後は自然炉冷でもよい。
アニール処理の昇温過程から、水素ガス雰囲気としてもよいが、前記マスク素基板の水素雰囲気中での処理は、1100℃以上の高温時では扱い難く、また、副反応が懸念されるため、徐冷の過程以降で行うことが好ましい。例えば、900℃付近、より好ましくは、800℃付近まで徐冷が進行したところで、雰囲気を水素に置換することが好ましい。
また、アニールおよび水素雰囲気中での処理は、それぞれ別々に行ってもよく、一旦冷却した後、400℃以上800℃以下の温度まで再加熱して、水素雰囲気中での処理を行ってもよい。
前記水素処理における水素ガス雰囲気は、10〜15L/min、1気圧であることが好ましい。
ブロックよりも薄いマスク素基板は、温度により水素濃度が変動しやすいため、上記のようにすることにより、水素濃度を均一に調整することができる。
このため、マスク素基板のフォトリソグラフィ適用時における赤色発光を防止するために、上記のような水素処理を施す。
前記合成シリカガラスのブロックは、複屈折が10nm/cm未満であれば問題はない。一方、15nm/cmを超えると、加工時の欠けやクラックの原因となる。
また、合成シリカガラスのブロックの屈折率均質度が10-5を超えると、マスクに加工してフォトリソグラフィに適用するときの転写像に歪みを生じる原因となる。
前記OH基濃度が600ppm未満であると、残留応力が除去でき難くなる。一方、1000ppmを超えると、三員環強度が低下する。
また、この合成シリカガラスのブロックの形状は、フォトマスク用に角出し成型又は角状に溶融成型されていることが好ましい。
なお、前記合成シリカガラスのブロックは、高温成形後の急激な冷却に伴う一時歪を防止するため、600℃程度の温度に保持された炉内に一時的に入れ、炉内がブロックで満杯になってから、上記アニール処理を施すことが好ましい。
前記加熱温度は、1170℃以上であることがより好ましく、その上限は1200℃である。
前記保持時間は、短すぎると、ブロックの置いた場所によっては徐冷点に達せず、角出し歪が除去できなくなる場合がある。一方、保持時間が長すぎると、部分的に軟化・変形を生じる原因となる。
前記降温速度が0.8℃/min未満であると、冷却に時間を要し、生産性が悪くなる。一方、前記降温速度が1℃/minを超えると、ブロック内部と表面で温度差が大きくなり、一時歪、永久歪とも大きくなる。
上記降温速度での徐冷は、合成シリカガラスの歪点である800℃まで行い、その後は自然炉冷でもよい。
また、精密さの向上ため、アニール処理前に、面取り加工、研磨加工、エッチング処理等を施しておくことが好ましい。
具体的には、容器としてマスク素基板の大きさより十分に大きなアルミナ−シリカ製等のセッターを用い、その中に、天然石英粉を10mm程度の厚さに敷き詰めて、マスク基板の単枚を載せ、さらに、その周面及び上面を同様の厚さの天然石英粉で囲み、かつ、同様の容器で蓋をすることが好ましい。
このようにすることにより、アニール処理中の一定温度保持及び冷却過程時のマスク素基板周辺の温度差を抑えることができ、炉内温度分布のマスク素基板への影響が小さくなり、マスク素基板内の温度むらを±1.5℃以内に収めることができる。
前記マスク素基板の単枚の温度むらが±1.5℃から外れると、これに対応した粘度分布に起因して複屈折が発生する。
前記温度むらは、±1.0℃以内であることがより好ましい。
前記トレーは、高粘性であり、高純度であることから、シリコン製であることがより好ましく、また、この場合のトレーは、弾性変形を考慮して、厚さ0.5mm以上、より好ましくは、2mm以上とする。
上記のようなシリコントレーを用いれば、載置するマスク素基板の均熱性を保持しつつ、徐冷速度をより大きくすることも可能となり、フォトマスク用合成シリカガラス基板の製造時間の短縮化にも寄与し得る。
このような構成とすることにより、前記マスク素基板のアニール処理による自重変形を50μm以下に抑制することができ、また、縦型炉において、各ウエハ素基板間に、熱流動可能な空間を保って、複数枚を積層させて処理することが可能となる。
さらに、必要に応じて、フッ化水素酸(HF)等を用いてエッチング処理を施し、所定の製品検査(脈理、泡、表面欠陥、蛍光検査、分析、透過率分布、複屈折等)を経て、フォトマスク用合成シリカガラス基板(製品)とする。
同様に、屈折率均質度が、2×10-5を超えると、精密なArF−Wetフォトリソグラフィには不適である。フォトマスク用合成シリカガラス基板としての屈折率均質度は、10-7以下であることがより好ましい。
前記空炉内温度分布が、定常状態でアニール設定温度の±2.5℃から外れる場合、炉内の温度むらに伴うマスク素基板内温度のむらによってガラス粘性に分布が生じる。このため、歪点まで冷却する際、粘性流動が追従できた部分と追従できなかった部分との間で応力が生じ、この応力が室温まで持ち越されるおそれがある。
降温時に、マスク素基板の各部分が定常温度に達しない間に冷却すると、該マスク素基板内での温度むらが大きくなり、昇温の遅れた部位ではアニール温度に達せずに冷却されるため、熱残留応力を複雑化させるおそれがある。
[実施例1]
先ず、ヴェルヌーイ法によって製造した合成シリカガラス(東芝セラミックス(株)製T−4042)をフォトマスクの外形状に近似するように、角出し成型または角状に溶融成型して、ブロック形状(155mm×155mm×200mm)にした。
この合成シリカガラスのブロックを、高温成形後の冷却による欠け、クラックの発生を防止するため、600℃に保持された大気雰囲気の炉内に一時的に入れた。
前記合成シリカガラスのブロックは、OH基濃度800ppm、複屈折13nm/cm、屈折率均質度10-6で、低圧水銀ランプ照射で如何なる蛍光も発しなかった。
この合成シリカガラスのブロックをスライス加工して、153mm角、8.08mm厚のマスク素基板とした。
そして、蓋をしたセッターを、前記マスク素基板が配置される領域(炉中央部)における空炉内温度分布をアニール設定温度の±2.5℃以内とし、かつ、炉内雰囲気を水素ガス雰囲気としたアニール炉に納置した後、流量15L/minの水素ガスを流しながら、1170℃まで昇温速度1.7℃/minで昇温し、この温度で8時間保持した。
その後、800℃まで降温速度0.4℃/minで降温して徐冷し、800℃以下の温度では、炉ヒータを切って自然炉冷し、室温近くになってから水素ガスを止めた。
また、複屈折計(HIND社製EXICOR)にて、標準レーザ光としてHeNeレーザ(波長633nm)を使用して、フォトマスク用合成シリカガラス基板をフルフィールドスキャンした。面内の複屈折分布をグラフ表示した結果を図1に示す。
図1から分かるように、平均複屈折(Bf50)は、1.4nm/cmであり、また、1nm/cm以下の複屈折となる面積は、フルフィールド100に対して35%であった。
実施例1と同様にして、合成シリカガラスのブロックをスライス加工して、153mm角、7.08mm厚のマスク素基板を作製した。このマスク素基板に、実施例1と同様に、周面への透明研磨加工と、板厚が6.4mmになるまでの両面への透明研磨加工とを施し、かつ、フッ化水素酸で軽くエッチング処理を施して、フォトマスク用合成シリカガラス基板を得た。
また、複屈折計で、フォトマスク用合成シリカガラス基板をフルフィールドスキャンした。面内の複屈折分布をグラフ表示した結果を図2に示す。
図2から分かるように、平均複屈折は4.2nm/cmであり、また、1nm/cm以下の複屈折となる面積は、フルフィールド100に対して17%であった。
実施例1と同様にして、合成シリカガラスのブロックをスライス加工して、153mm角、7.08mm厚のマスク素基板を作製した。このマスク素基板を、実施例1と同様にして、水素ガス雰囲気としたアニール炉で加熱した後、800℃まで、降温速度0.15℃/minで降温して徐冷し、800℃以下の温度では、炉ヒータを切って自然炉冷した。
また、複屈折計で、フォトマスク用合成シリカガラス基板をフルフィールドスキャンした。面内の複屈折分布をグラフ表示した結果を図3に示す。
図3から分かるように、平均複屈折は0.46nm/cm、最大複屈折は1.0nm/cmであり、全面が1nm/cm以下の複屈折であった。
比較例1と同様にして、合成シリカガラスのブロックをスライス加工して、153mm角、7.08mm厚のマスク素基板を作製した。このマスク素基板を、実施例1と同様にして、天然石英粉で覆ってセッターに収容し、蓋をしたセッターを大気雰囲気のアニール炉中央部(温度むらが±2.5℃以内である領域)に納置した後、実施例1と同様にして、昇降速度1.7℃/minで1700℃まで昇温し、この温度で8時間保持した。
その後に、800℃まで、降温速度0.4℃/minで降温して徐冷し、800℃以下の温度では、炉ヒータを切って自然炉冷した。
得られたフォトマスク用合成シリカガラス基板を低圧水銀ランプ照射で検査したところ、赤色の蛍光を発した。
比較例2のフォトマスク用合成シリカガラス基板に、実施例1と同様の水素ガス雰囲気下でのアニール処理及び水素炉を用いた水素ドープ処理(400℃×48hr)を施した後、低圧水銀ランプ照射で検査したところ、赤色の蛍光を発しなくなった。
四塩化ケイ素を酸水素火炎(酸素:水素=1:2)により加水分解して製造した合成シリカガラスのブロックをスライス加工して、152.4mm角、7.07mm厚のマスク素基板とした。
このマスク素基板を、大気雰囲気中1180℃で10時間保持し、その後、800℃まで降温速度0.15℃/minで降温して400℃まで徐冷した。そして、水素ガス雰囲気中、常圧で、400℃に保持し、水素処理を施して、マスク素基板の水素濃度を1.5×1018ppmとした。
このマスク素基板を12mm×75mm×6.35mmに研削加工し、さらに、鏡面研磨加工して、フォトマスク用合成シリカガラス基板とした。
前記評価は、OH基濃度が950ppmと1050ppmの2種類の基板について行った。前記基板に重水素ランプを照射した透過光をモノクロメータを用いて分光し、波長195nmにおける透過率を測定し、27mJ/(cm2・pulse)のArFエキシマレーザ(波長193nm)の5分間の照射前後での減少率を求めた。
この結果を表1に示す。
なお、波長195nmにおける透過率を測定したのは、エキシマレーザから漏れた波長193nmの光を測定しないようにするためである。
参考例1と同様にして作製した、表1の参考例2,3に示すOH基濃度のフォトマスク用合成シリカガラス基板について、ArFエキシマレーザ(波長193nm)を表1の参考例2,3に示すエネルギー及び照射時間として、参考例1と同様にして、耐光性評価を行った。
これらの結果を表1に示す。
マスク素基板にアニール処理及び水素処理を施さず、それ以外については、参考例1と同様にして、表1の比較例4〜6に示すOH基濃度のフォトマスク用合成シリカガラス基板を作製した。これらのマスク素基板の水素濃度は、1.2×1019ppmであった。
ArFエキシマレーザ(波長193nm)を表1の比較例4〜6に示すエネルギー及び照射時間として、参考例1と同様にして、耐光性評価を行った。
これらの結果を表1に示す。
一方、比較例4〜6のフォトマスク用合成シリカガラス基板は、参考例1〜3に比べて、水素濃度は高いものの、上記透過率の減少率は大きかった。
このことから、マスク素基板にアニール処理及び水素処理を施すことにより、構造緩和を図るとともに、水素濃度を1018〜1019ppmに均一にすることができ、これにより、耐光性を向上させることができると言える。
Claims (3)
- 直接溶融法により作製された、最大複屈折10〜15nm/cm、屈折率均質度10 -5 以下で、低圧水銀ランプ照射で蛍光を発しない合成シリカガラスブロックを、大気中において1100℃以上の温度に加熱してから、0.8〜1℃/minの降温速度で徐冷した後、該合成シリカガラスブロックをスライス加工してマスク素基板とし、該マスク素基板の単枚を1170℃以上の温度に加熱してから、0.01〜0.8℃/minの降温速度で徐冷するとともに、少なくとも該徐冷過程の後半または徐冷後において水素ガス雰囲気とすることを特徴とするフォトマスク用合成シリカガラス基板の製造方法。
- 前記マスク素基板の単枚を1170℃以上の温度に加熱して、水素濃度を一旦下げた後、徐冷過程の後半または徐冷後に水素ガス雰囲気で処理することにより、水素濃度を増加させる請求項1記載のフォトマスク用合成シリカガラス基板の製造方法。
- 請求項1または請求項2に記載の製造方法によって製造されたフォトマスク用合成シリカガラス基板であって、平均複屈折1.4nm/cm以下、屈折率均質度2×10-5以下、水素原子の平均含有量が1018〜1019ppmであるであることを特徴とするフォトマスク用合成シリカガラス基板。
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