JP4451514B2 - 血液凝固第vii因子改変体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本願発明は、酵素活性を増強させた血液凝固第VII因子(以下、FVIIと称することがある)及び/または活性化血液凝固第VII因子(以下、FVIIaと称することがある)の改変体に関するものである。詳細には、本願発明は、FVIIに特有なアミノ酸配列を、置換・欠損することにより、活性が増強されたFVII/FVIIa改変体、当該改変体を有効成分として含有する医薬品組成物、及び当該医薬品組成物からなる血友病インヒビター患者の治療に有効な薬剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術および解決すべき課題】
FVIIはビタミンK依存性の血液凝固因子であり、外因系血液凝固の開始因子であることは広く知られている。他のビタミンK依存性凝固因子と同様にN末端から35残基までのアミノ酸配列に10個のγカルボキシグルタミン酸(以下、Glaと称することがある)からなるGla領域を有している(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.83,p.2412−2416,1986)。FVIIは、in vitroにおいて、活性化血液凝固第X因子(以下、FXaと称することがある)、活性化血液凝固第IX因子(以下、FIXaと称することがある)またはトロンビン(以下、FIIaと称することがある)によって、152Arg−153Ileが加水分解され、一個のS−S結合で架橋されたH鎖とL鎖から構成される活性型FVIIすなわちFVIIaに変換されることは知られている(J.Biol.Chem.,vol.251,p.4797−4802,1976)。
【0003】
FVIIa自体の酵素活性は極めて弱く、補酵素である組織因子(TF)と結合すると劇的に上昇する(Komiyama et al., Biochemistry, 29(40), pp.9418-25(1990))。FVIIaとTFの1次構造、その複合体の結晶構造、さらに両分子間の結合部位もアミノ酸残基レベルで判明しているが、その触媒活性増幅機構の詳細(TF結合に伴う立体構造変化)は依然として不明である(Banner et al., , et al., Nature 380(6569): pp.41-6(1996))。
【0004】
血友病A及び血友病B患者に対する補充療法として、血液凝固第VIII因子(以下、FVIIIと称することがある)及び血液凝固第IX因子(以下、FIXと称することがある)製剤の投与が行なわれている。しかし、当該治療法に伴いFVIII及びFIXに対する中和抗体(インヒビターと呼ばれることもある)の出現が問題視されている。
【0005】
このようなインヒビターを生じた血友病患者の対処療法として、(1)FVIII因子の過剰投与、(2)ブタFVIII因子の投与、(3)FII、FVII、FIX及びFXからなる複合体製剤の投与、(4)FVIIa製剤の投与などがある。しかしながらこれらの方法は、それぞれ (1)については、より高力価なインヒビターの誘導による症状悪化、(2)については、抗原性によるショック、(3)については、血栓・DICの誘発、(4)については、治療効果が不十分であることや大量・頻回投与によりコストが高いなどの問題を抱えている。これらの中で、効果と危険性のバランスを考慮した場合、最も効率的なものは(4)のFVIIa製剤の投与である。しかしながら、FVIIa製剤はその活性の弱さのため、止血効果を発揮するには、前述したように大量投与と頻回投与を必要とし、治療コストを大きく高めている。また、その治療効果も血友病患者に対して行われている従来の補充療法に比べれば充分とはいえない。
【0006】
この問題を解決するための手段として、酵素活性を上昇させたFVIIの改変体を作製することが挙げられるが、これは一般的に困難であることが知られている(タンパク質の構造入門、勝部幸輝ら監修、教育社発行、1992年)。特に、血液凝固因子について、以下の理由により改変による活性増強は困難と考えられている。
【0007】
血友病は血液凝固因子の異常であるが、量的欠損に伴う活性低下と質的異常による活性低下の2つに分類される。このうち質的異常の多くは(ポイント)ミューテーションであることが知られており、FIXの異常である血友病Bの患者の解析が行われた結果、FIXの構造全域にわたって分子異常が存在することが明らかとなり、中にはたった1個のアミノ酸が置換されただけで、活性が1%以下になる例が多数ある。従って、血液凝固因子についてむやみに改変を行っても、活性低下を招くのは明らかである。
【0008】
また、Alanine Scannningで得られた情報(Dickinson et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93(25), pp.14379-84(1996))によれば、FVIIの112個のAlanine置換体ついて、その中で酵素活性が上がったものは唯一1つであり、しかもその規則性は見いだされていない。
【0009】
その他の試みとして、Hopfnerらは、FIXを構成する一部のドメインの数アミノ酸残基から構成される構造単位を欠損・置換する方法を用い、合成基質活性を上昇させたFIXフラグメント改変体を作製した(EMBO J, 16(22), pp.6626-35(1997))。しかしながら、これはインタクトなFIXではなく、FIXの部分フラグメントを大腸菌で発現させたもので合成基質活性を見ているに過ぎないため、血液凝固活性を増強しうるどころか血液凝固活性すら有さないものである。さらに、これはFIXに関するものであり、構造も特異性も全く異なる別物質であるFVIIに対して何ら示唆するものではなく、FVIIの酵素活性を増強させた改変体についても、これまで何ら報告はない。
【0010】
このように、強い酵素活性を有する改変体の作製は、特に血液凝固因子においては困難と考えられていた。FIXにおいて、その部分フラグメントについて合成基質活性を上げる試みはなされたものの、インタクトな分子として高い酵素活性を有する血液凝固因子の改変体についてはこれまでも報告例はない。
【0011】
従って、本発明の解決すべき課題は、一般に血液凝固因子の改変は困難と考えられている状況において、血友病インヒビター患者の治療に有効な強い活性を有するFVII及び/またはFVIIaを作製・提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記のような状況において、本発明者らは、それ自身高い酵素活性を有するFVIIを作製すべく鋭意研究を重ね種々の検討を行った結果、本願発明を完成するに至った。本願発明は、FVIIと各種セリンプロテアーゼとアミノ酸配列構造を比較し、FVIIに特有のアミノ酸配列部位を明確にし、その特有な部位を、欠損・置換することにより、活性が増強されたFVII及び/またはFVIIa改変体を作製することに成功したものである。
【0013】
【発明の構成】
トリプシン族に類する一群のセリンプロテアーゼの基本構造は、約250残基からなり、アミノ酸配列上でおよそ、その前半と後半の2つのドメインに分けられる(図1)。各ドメイン内にはそれぞれ6本のβストランドがあり、プロテアーゼとして計12本のβストランドを有する構造で形成されている(図2)。これら12本のβストランドはいわばセリンプロテアーゼの骨格構造となっており、各ストランド間をつなぐループないし、ヘリックス領域が、その基質特異性やコファクターとの反応性などのプロテアーゼ活性を担っていると考えられている。セリンプロテアーゼの例としては、FII、FVII、FVIII、FIX、FX等の各種血液凝固因子、プラスミン等の血栓溶解酵素、またはトリプシン、キモトリプシン、エラスターゼなどの消化酵素がある。
そこで、FVIIをはじめとする各種セリンプロテアーゼのアミノ酸配列構造の比較を行い、FVIIに特徴的な領域を特定した(図3)。そして、これらの部位を改変のターゲットとし、他のセリンプロテアーゼの構造を参考に、FVIIのアミノ酸配列を欠損・置換することによって、高い酵素活性を有するFVII改変体を作製した。これらの改変体について詳細に説明する。
【0014】
(a)159Cys−164Cys結合が切断された改変体
(a−▲1▼)159Cysと164CysをCys以外のアミノ酸残基によって置換することにより、当該159Cys−164Cysが切断された改変体(VII−5)。
この改変体の具体例として、Cysをそれぞれアラニン(Ala)に置換したものを配列表配列番号3または4に記載した。ここで、置換に用いるCys以外のアミノ酸残基の一例として、Alaを選択したが、置換によって、Cys−Cys結合を切断すること以外に酵素活性を失活させるなどの大きな障害を与えない限り、任意のアミノ酸が選択可能である。
【0015】
(a−▲2▼)164CysをCys以外のアミノ酸残基によって置換し、かつ、299番目のヴァリン(299Val)をCysに置換することにより、159Cys−164Cysが切断され、かつ159Cysと299Cys間においてジスルフィド結合(159Cys−299Cys)が形成された改変体(VII−6)。
この改変体の具体例として、Cys以外のアミノ酸残基としてAlaを用いて置換したものを配列表配列番号5または6に記載した。ここで、置換に用いるCys以外のアミノ酸残基については上述の通り、置換によって159Cys−164Cys結合を切断すること以外に酵素活性を失活させるなどの大きな障害を与えない限り、Ala以外の他のアミノ酸が選択可能である。
【0016】
(b)FVII内の、233番目のスレオニン(233Thr)から240番目のアスパラギン(240Asn)のアミノ酸配列からなるループ構造(以下、99−loopと称することもある)を構成するアミノ酸配列またはその一部が、置換、追加または削除された改変体。
この領域は、図3に示すようにセリンプロテアーゼに共通に存在するβストランド5とβストランド6の間に介在するアミノ酸配列を含むものである。この領域を他のトリプシン族セリンプロテアーゼの構造上対応するアミノ酸配列で置換することが好ましい。トリプシン族セリンプロテアーゼの好適な一例として、ヒトトリプシンが挙げられる。さらに、具体的な例として、FVIIの99−loop内の235番目のバリン(235Val)から239番目のスレオニン(239Thr)までのアミノ酸配列が、トリプシンのループ構造内にあるAsp−Arg−Lys−Thr−Leuで置換された改変体(VII−30)が挙げられる。この改変体を配列表配列番号7または8に記載した。
【0017】
(c)FVII内の、304番目のアルギニン(304Arg)から329番目のシステイン(329Cys)の介在アミノ酸配列を構成するアミノ酸配列またはその一部が、置換、追加または削除された改変体。
特にこの領域は、図3に示すように、セリンプロテアーゼに共通に存在するβストランド8とβストランド9の間に介在するアミノ酸配列において、FVIIは他のセリンプロテアーゼと比較して数アミノ酸残基長いという特徴を有することから、FVII改変における好適なターゲットとなりうるものと推測される。
この領域を、他のトリプシン族セリンプロテアーゼの構造上対応するアミノ酸配列で置換することが好ましい。トリプシン族セリンプロテアーゼの好適な一例として、ヒトトリプシンが挙げられる。また、FVII内の置換、追加、削除しうる好ましい領域は、310番目のシステイン(310Cys)から329番目のシステイン(329Cys)のアミノ酸配列からなるループ構造(170−loopと称することもある)を構成するアミノ酸配列またはその一部である。さらに、具体的な例として、FVIIの170−loop内の311番目のロイシン(311Leu)から322番目のアスパラギン(322Asn)までのアミノ酸配列が、ヒトトリプシンのループ構造内にあるGlu−Ala−Ser−Tyr−Pro−Gly−Lysで置換された改変体(VII−31)が挙げられる。この改変体を配列表配列番号9または10に記載した。
【0018】
さらに、上記(a)から(c)の改変を適宜組み合わせることも可能である。その具体例として、例えば、(b)と(c)の組み合わせ、すなわち、FVIIの99−loop内の235番目のバリン(235Val)から239番目のスレオニン(239Thr)までのアミノ酸配列が、ヒトトリプシンのループ構造内にあるAsp−Arg−Lys−Thr−Leuで置換され、かつ、170−loop内の311番目のロイシン(311Leu)から322番目のアスパラギン(322Asn)までのアミノ酸配列が、トリプシンのループ構造内にあるGlu−Ala−Ser−Tyr−Pro−Gly−Lysで置換された改変体(VII−39)が挙げられる。この改変体を配列表配列番号11または12に記載した。
【0019】
上述した改変体は、遺伝子組換え法を用いて得ることができる。発現宿主としては、動物細胞等の真核細胞が好ましい。本発明の改変体は、上記各改変体のアミノ酸配列をコードするcDNAを適当な発現ベクターに組み込み、宿主細胞にトランスフェクトし、目的の遺伝子を発現している細胞をクローニングし、得られた安定発現株を培養後、精製することにより得られる。
【0020】
本願発明のFVII改変体は各種化学処理等を行い、活性化型FVII(FVIIa)改変体として使用することができる。
【0021】
本願発明のFVII/FVIIa改変体は、治療、診断または他の用途のために製薬学的調合剤に処方することができる。静脈内投与のための調合剤に対しては、組成物を、通常、生理学的に適合しうる物質、例えば塩化ナトリウム、グリシン等を含み、かつ生理学的条件に適合しうる緩衝されたpHを有する水溶液中に溶解する。また、長期安定性の確保の観点から、最終的剤型として凍結乾燥製剤の形態をとることも考慮されうる。なお、静脈内に投与される組成物のガイドラインは政府の規則、例えば「生物学的製剤基準」によって確立されている。
本願発明のFVII/FVIIa改変体からなる医薬品組成物の具体的な用途としては、FVIIIまたはFIXの補充療法により当該血液凝固因子に対してインヒビターを生じた血友病インヒビター患者の治療が挙げられる。
【0022】
【実施例】
本願発明を実施例により例示するが、これら実施例は本願発明を限定するものではない。本願発明について添付図面を参照して特定な実施例にて例示する。実施例は改変体を動物細胞(CHO-K1)の培養上清中に発現させたものである。以下特に断りが無い限り、遺伝子組換えに関わる試薬等は、宝酒造、東洋紡、パーキンエルマーアプライドNew England Biolabs 社の製品を用いた。
【0023】
《実施例1.FVIIcDNAのクローニング》
ヒト肝臓cDNAライブラリー(宝酒造)を購入し、文献等(Molecular Basis of Thrombosia and Hemostasis)で公知のcDNA配列(配列表配列番号1に記載)を基にSalIサイトを付加したFVII合成DNAセンスプライマー(VII-PWN;GGGGTCGACATGGTCTCCCAGGCCCTCAGGCTCCTCTGCCTTCTG)及び、BamHIサイトを付加したアンチセンスプライマー(VII-PWC;CCCGGATCCCTAGGGAAATGGGGCTCGCAGGAGGACTCCTGGGCG)を用いてPCRを行い、市販のクローニングベクターpCRII(Invitrogen社)にクローニングした。この際、常法によりDNAシークエンスを行い、文献等で公知の配列(Hagen FS et al , PNAS 1986; 83; 2412-6)を有することを確認した。
【0024】
《実施例2.FVII発現ベクターの調製》
発現ベクターpCAGn(特許第2824434号公報)をSalI、BamHIで消化し、そこにFVIIをコードした配列を含む上記実施例1で調製したDNAフラグメントをSalI、BamHIでカットしたものをライゲーションし、大腸菌JM105に形質転換し、アンピシリン含有のLB寒天培地上で培養し、形質転換大腸菌を選択した。出現したコロニーを市販の培地で一晩培養し、目的の発現プラスミドを抽出精製し「pVII-W」を調製した。この発現ベクターのDNAシークエンスを行い、目的の遺伝子配列を有することを確認した。
【0025】
《実施例3.改変体発現ベクターの調製》
図4に示すアミノ酸配列を有する各FVII改変体を、以下の方法で作成した。なお図4は、FVIIの153番目のイソロイシンよりC末側のアミノ酸配列のみ示したもので、152番目のアルギニンよりN末側のアミノ酸については、いずれも改変は行っておらず野生型と同じである。図5に示す合成DNAプライマーを用いてFVII遺伝子を鋳型としてPCRを行いそれぞれの増幅断片を得る。各増幅断片と、発現ベクターpCAGnをSalI及びBamHIでカットしたものをライゲーションし、大腸菌JM105に形質転換し、アンピシリン含有のLB寒天培地上で培養し、形質転換大腸菌を選択した。出現したコロニーを市販の培地で一晩培養し、目的の発現プラスミドを抽出精製し「pVII-5」、「pVII-30」、及び「pVII-31」を調製した(図6)。また、「pVII-6」については、図5に記載のプライマー▲5▼及び▲6▼を用いて得られた遺伝子を鋳型にし、さらにプライマー▲7▼及び▲8▼を用いてPCRを行うことにより得られた。また、「pVII-39」については、プライマー▲9▼及び(10)を用いて得られた遺伝子を鋳型にし、さらにプライマー(11)及び(12)を用いてPCRを行うことにより得られた。さらにDNAシークエンスを行い、これらのプラスミドが目的の配列を有することを確認した。
【0026】
《実施例4.各改変体の培養上清への発現及び精製》
上記発現ベクターを、市販のリポフェクチン試薬でCHO細胞に対して形質導入を行い、G418(1mg/ml)で選択し、目的の遺伝子を発現している細胞を限外希釈法によりクローニングした。FVII改変体の発現の確認は、市販のFVIIに対するELISAキット(アセラクロムFVII;Diagnostica Strago社)で行った。得られた安定発現株を無血清培地(ASF104、味の素、ペニシリン、ストレプトマイシン、20μg/mlビタミンK、1mM酪酸)で培養し、抗ヒトFVIIモノクローナル抗体カラムで精製した(特許第2824430号公報)。平衡化・洗浄及び溶出は、平衡化・洗浄バッファー(50mM Tris, pH 7.2, 0.1M NaCl, 50mM Benzamidine-HCl, 2mM Ca2+)、溶出バッファー(50mM Tris, pH 7.2, 0.1M NaCl, 50mM Benzamidine-HCl, 10mM EDTA)を用いて行った。純化された改変体をSDS−PAGE、または市販のFVIIに対する抗体を用いて、ウエスタンブロットを行い、FVII改変体であることを確認した。
【0027】
《実施例5.各改変体の凝固活性の測定》
各改変体の凝固活性は常法に従い、FVII欠乏血漿を用いた凝固法で測定した。精製した各改変体を50〜5ng/mlになるようにTris-BSAで希釈し、FVII欠乏血症と等量混ぜ、37℃で3分加温後、再脂質化TF(トロンボプラスチン;Dade社)を等量添加し、凝固反応を開始させた。凝固時間を測定し、標準曲線と希釈率より凝固活性を求めた。凝固活性を蛋白濃度(Bradford法で測定)当たりに換算し比活性を求めた結果を表1に記す。その結果、本発明のFVII改変体は、血漿由来FVII及び野生型組換えFVIIと比較して、2〜6倍高い凝固活性を有することが明らかとなった。
【0028】
【表1】
【0029】
《実施例6.活性化された各改変体の調製》
精製した各改変体を、50mM Tris, pH 7.45, 0.1M NaClに透析し、FXaを1/100(モル比)加え、50mM Tris, pH 7.45, 0.1M NaCl, 0.1% PEG 8000, 100μg/mLリン脂質(Platerin(登録商標) Organotecnica社)、 10mM Ca2+、 37℃の条件下、1〜60分でインキュベーションし活性化した。活性化後、50mM Benzamidine-HClを加えて反応を停止し、抗ヒトFVIIモノクローナル抗体カラムで精製した(実施例4と同じ方法)。精製済みの各活性化改変体はTBS pH 8.0(0.1% PEG 8000含有)に透析し、-80℃に凍結保存した。活性化の程度は、SDS−PAGEで確認した。
【0030】
《実施例7.活性化された各改変体の合成基質に対する水解活性測定》
実施例6に従い活性化された改変体VIIa−31を0.1μMになるまで50mM Tris-HCl, 100mM NaCl,10mM Ca2+, 0.1% PEG 8000, pH 8.0で希釈し、そこに種々の合成基質を最終濃度1.0mMになるように加え、最終容量を200μlとし、30℃で反応させ、1分間当たりの基質の水解量を見た。温度制御が可能な microplate reader Spectra max plus (Molecular device社)でpNAの遊離を405nmによる発色度として測定した。この結果を表2に示す。本発明の改変体の一つであるVIIa−31は、何れの合成基質を対しても野生型(VIIa−W)より高い水解活性を示し、その範囲は2〜23倍であった。
【0031】
【表2】
【0032】
【発明の効果】
このように本願発明により得られたFVII及び/またはFVIIaの改変体は、野生型のFVIIに比べて明らかに高い酵素活性を有するものである。従って、本願発明の改変体は、血友病インヒビター患者への補充療法として極めて有効な薬剤となりうるものである。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】 FVIIの一次構造及び改変部位(星印)を示す図。
【図2】 FVIIのプロテアーゼドメインアミノ酸配列を基にしたセリンプロテアーゼの基本構造を示す図。
【図3】 X線立体構造既知の各種トリプシン族セリンプロテアーゼ間の3Dマルチアライメントを示す図。
【図4】 野生型FVII(FVII−Wild)及び各種FVII改変体のアミノ酸配列の一部を示す図。本図はFVIIの153番目のイソロイシンよりC末側のアミノ酸配列のみ示したもので、152番目のアルギニンよりN末側のアミノ酸配列についてはいずれも改変は行っておらず野生型と同じである。
【図5】 FVII改変体作製用プライマー配列を示す図。
【図6】 FVII改変体発現ベクターの構築方法を示す図。
Claims (6)
- 血液凝固第VII因子(以下、FVII)または活性化型血液凝固第VII因子(以下、FVIIa)の170−loop内の311番目のロイシン(311Leu)から322番目のアスパラギン(322Asn)までのアミノ酸配列が、Glu−Ala−Ser−Tyr−Pro−Gly−Lysで置換されることを特徴とするFVIIまたはFVIIaの改変体。
- 配列表配列番号9または10記載のアミノ酸配列からなる請求項1に記載の改変体。
- 付加的にFVIIの99−loop内の235番目のバリン(235Val)から239番目のスレオニン(239Thr)までのアミノ酸配列が、Asp−Arg−Lys−Thr−Leuで置換されることを特徴とする請求項1または2に記載の改変体。
- 配列表配列番号11または12記載のアミノ酸配列からなる請求項3に記載の改変体。
- 請求項1から4のいずれかに記載の改変体を有効成分として含有する医薬品組成物。
- 請求項5の医薬品組成物からなる血友病インヒビター患者の治療に有効な薬剤。
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