以下、本発明の実施形態を図面により説明する。なお、以下の実施形態は有機ELデバイスの製造装置への適用を例とするものであるが、本発明はこれに限るものではない。
図1は本発明によるインクジェット塗布装置の第1の実施形態を示す斜視図であって、Aはこの実施形態での塗布材料の塗布を行なう塗布機構部、1は架台、2はフレーム、2aはフレーム2の横梁、2bはフレーム2の右脚部、2cはフレーム2の左脚部、3はZ軸ステージ、4はZ軸駆動モータ、5はインクジェットヘッド、6はヘッドブラケット、7はヘッド駆動基板、8は塗布基板、9はX軸ステージ、10はX軸駆動モータ、11はY軸ステージ、12はY軸駆動モータ、13はθ方向回転ユニット、14は吸着テーブル、15はクリーニング装置、16は塗布材料ボトル、17はボトルホルダ、18は洗浄液ボトル、19はモニタ、20はPC(パーソナル・コンピュータ)である。
同図において、この第1の実施形態は、塗布機構部AにPC20及びモニタ19を備え、さらに、図3に示す検査機構部を備えたものである。
塗布機構部Aでは、架台1上に門型のフレーム2が、X軸方向に平行となるように、固定して取り付けられている。このフレーム2の横梁2aの前面中心部には、Z軸ステージ3が、その面が架台1の上面と直角になるように、固定して取り付けられている。このZ軸ステージ3にヘッドブラケット6とZ軸駆動モータ4とが設けられ、このZ軸駆動モータ4によってヘッドブラケット6がZ軸方向(上下方向)に移動可能となっている。また、このヘッドブラケット6には、インクジェットヘッド5が着脱可能に取り付けられている。
また、フレーム2の手前側から見て右側の脚部、即ち、右脚部2bには、Z軸方向に移動可能にボトルホルダ17が取り付けられており、このボトルホルダ17に塗布材料ボトル16が搭載されている。また、塗布材料ボトル16の近傍には、インクジェットヘッド5内の塗布材料の流路を洗浄するための洗浄用溶剤が仕込まれている洗浄液ボトル18が設けられている。なお、これら塗布材料ボトル16や洗浄液ボトル18からは、図示しない供給手段により、インクジェットヘッド5への塗布材料の供給やクリーニング装置15への洗浄液の供給が可能である。また、これら塗布材料ボトル16や洗浄液ボトル18を適宜取り替え可能となっている。さらに、フレーム2の左脚部2cには、ヘッド駆動基板7が取り付けられている。
また、架台1の上面には、フレーム2の右脚部2b,左脚部2cとの間まで延長してY軸ステージ11が取り付けられており、このY軸ステージ11にY軸駆動モータ12と、Y軸ステージ11に対してY軸方向に移動可能に、X軸ステージ9とが設けられている。また、このX軸ステージ9には、X軸駆動モータ10と、X軸ステージ9に対してX軸方向に移動可能に、θ方向回転ユニット13が設けられている。このθ方向回転ユニット13は、また、図示しない駆動モータの駆動により、θ方向に回転する。θ方向回転ユニット13の上面には、吸着テーブル14が、その上面を架台1の上面と平行になるようにして、固定されている。従って、この吸着テーブル14は、Y軸駆動モータ9,X軸駆動モータ12の駆動により、Y軸,X軸方向に移動し、また、θ方向回転ユニット13の駆動モータの駆動により、θ方向に回転する。
吸着テーブル14の上面はインクジェットヘッド5によって塗布材料が塗布される塗布基板8の載置面をなしており、この載置面に図示しない真空発生装置と連通する微細な吸引穴が複数設けられている。吸着テーブル14上に載置された塗布基板8は、この真空発生装置の負圧供給手段から吸引穴に供給される負圧により、吸着テーブル14上に吸着保持される。このように吸着ステージ14上に吸着保持された塗布基板8の表面とインクジェットヘッド5の底面とは、互いに平行に対向する。また、この吸着テーブル14の前側(図面上、手前側)端面には、インクジェットヘッド5の目詰り防止並びに目詰り要因排除を目的としたクリーニング装置15が取り付けられている。
なお、Z軸駆動モータ4の駆動によるインクジェットヘッド5の降下ストロークは、少なくともインクジェットヘッド5がクリーニング装置15の位置よりもさらに降下するように設定されている。
この第1の実施形態では、以上の構成の塗布機構部Aに加え、PC20とモニタ19とが設けられている。PC20では、インクジェットヘッド5の液滴吐出制御やインクジェット塗布装置全体に対する構成機器の駆動制御,状態監視などが行なわれる。
図2は図1におけるインクジェットヘッド5の底面(吐出面)の一具体例を概略的に示す平面図であって、5aは塗布材料吐出面、21はオリフィスプレート、22は塗布材料吐出口、23は吐出口ライン、24は基準面である。
同図において、インクジェットヘッド5内に複数の塗布材料収納室(図示せず)が設けられ、夫々が塗布材料吐出室22を有している。インクジェットヘッド5の塗布材料吐出面5aにオリフィスプレート21が貼り付けられており、このオリフィスプレート21の幅方向(図面上縦方向:図1でのY軸方向となる)中心を通る直線状の吐出口ライン23に沿って塗布材料収納室の塗布材料吐出口22が配列されている。かかるインクジェットヘッド5を備えた図1に示す塗布機構部Aでは、この吐出口ライン23、従って、塗布材料吐出口22の配列方向がX軸方向と平行となるように調整される。
各塗布材料収納室には、圧電素子などで構成される吐出機構部(図示せず)が設けられており、この吐出機構部に電圧を印加して動作させることにより、塗布材料収納室内の塗布材料が塗布材料吐出口22から微細な液滴として吐出される。なお、吐出機構部としては、圧電素子方式に限らず、空圧を加える機構などでもよい。
この第1の実施形態では、かかる塗布機構部Aに加え、インクジェットヘッド5の塗布材料吐出口22を検査するためのインクジェットヘッド検査機構部を備えており、インクジェットヘッド5が塗布機構部Aで使用されるに際し、その塗布材料吐出口22が夫々インクジェットヘッド検査機構部で検査される。以下では、このインクジェットヘッド検査機構部が塗布機構部と別体のものとして、このインクジェットヘッド検査機構部について説明する。
図3はかかるインクジェットヘッド検査機構部の一具体例を示すものであって、同図(a)はその要部構成を示す斜視図、同図(b)は回路構成図であり、Bはインクジェットヘッド検査機構部(以下、単に検査機構部という)、25はY軸ステージ、26はY軸駆動モータ、27はX軸ステージ、28はX軸駆動モータ、29はθ方向回転ユニット、30はカメラ、31は光源、32はトレイ、33はクリーニング装置、34は光軸、35はZ軸ステージ、36はZ軸駆動モータ、37はインクジェットヘッド5が取り付けられるヘッドブラケット、38はヘッド駆動基板、39は光源制御装置、40は液滴である。なお、図1に対応する部分には同一符号を付けて重複する説明を省略する。
検査機構部の具体例は、基本的には、図1に示す塗布機構部Aと同様の構成をなすものである。
図3(a)において、図示しない架台に固定して取り付けられるY軸ステージ25上に、Y軸駆動モータ26によってY軸ステージ25に対しY軸方向に移動可能に、X軸ステージ27が搭載されており、このX軸ステージ27上に、X軸駆動モータ28によってX軸ステージ27に対しX軸方向に移動可能に、θ方向回転ユニット29が搭載されている。また、このθ方向回転ユニット29は、図示しない駆動モータにより、θ方向に回転する。検査機構部Bのかかる構成は、図1に示す塗布機構部の場合と同様である。
θ方向回転ユニット29上に、周辺に枠が設けられたトレイ32が固定して取り付けられている。そして、このトレイ32の対向する2つの辺のうちの一方の辺の端面にカメラ30が、他方の辺の端面に光源31が夫々互いに対向するようにして設けられており、カメラ30の光軸(撮像面に垂直で、かつこの撮像面に垂直な軸)と光源31の光軸とが一致して同じ光軸34となるように、これらカメラ30と光源31とが配置されている。また、トレイ32のさらに他の1つの辺の端面にインクジェットヘッド5のクリーニング装置33が設けられている。
また、図示しない上記の架台には、図1に示すフレーム2と同様の門型のフレームが設けられており、これに、図1に示す塗布機構部Aと同様、ヘッド駆動基板38(図3(b))とZ軸駆動モータ36を備えたZ軸ステージ35が設けられ、このZ軸ステージ35にZ軸方向に移動可能なヘッドブラケット37が取り付けられ、このヘッドブラケット37に検査しようとするインクジェットヘッド5が着脱可能に取り付けられる。
この具体例の検査機構部Bでは、さらに、PCとモニタとが用いられるものであるが、ここでは、これらを図1に示す塗布機構部Aに用いられるPC20,モニタ19で兼用するものとする。
検査機構部Bでインクジェットヘッド5の性能を検査する場合には、θ方向回転ユニット29を回転駆動してトレイ32を回転させることにより、カメラ30から光源31への光軸34がY軸方向に平行となるように、従って、かかる光軸34がインクジェットヘッド5での吐出口ライン23(図2)に垂直となるように、カメラ30と光源31との姿勢を調整する。そして、Y軸駆動モータ26とX軸駆動モータ28とを適宜駆動することにより、インクジェットヘッド5の吐出面(底面)5a(図2)から吐出される液滴の噴射経路がカメラ30と光源31との間になるように、トレイ32のX軸方向,Y軸方向の位置が調整される。
ここで、図4に示すように、カメラ30の視野30aの高さhは、図1に示す塗布機構部Aで塗布基板8に塗布材料を塗布するときのこの塗布基板8の塗布面からのインクジェットヘッド5の吐出面5a(図2)の高さ(後述のヘッド高さH1)よりも高いものとする。
インクジェットヘッド5を検査する場合には、図4に示すように、Z軸駆動モータ36を駆動することにより、インクジェットヘッド5の吐出面5a(図2)が視野30aのほぼ上辺側に位置するように、インクジェットヘッド5の高さを調整する。このように調整することにより、視野30aでのその下辺部より若干高い位置が塗布材料を塗布するときのインクジェットヘッド5の吐出面5aに対する塗布基板8の塗布面8aに相当する位置となる。
かかる調整が終了すると、インクジェットヘッド5の塗布材料吐出口22からその配列順に1つずつ塗布材料を吐出させ、これによって噴射される塗布材料の液滴を光源31で照明してカメラ30で撮像する。撮像された液滴の画像信号はPC20に送られて検査のための各種の画像処理がなされる。このようにして、塗布材料の液滴の大きさ,形状,位置などを観測することができる。このように噴射された液滴は、トレイ32で受け止められる。また、インクジェットヘッド5の塗布材料吐出口22の目詰り要因は、Y軸駆動モータ26とX軸駆動モータ28とを適宜駆動してインクジェットヘッド5をヘッドクリーニング装置33の所まで移動させることにより、取り除くことができる。
なお、インクジェットヘッド5の全ての塗布材料吐出口22から吐出される液滴がカメラ30の視野30aの横幅内に入りきれない場合には、塗布材料を吐出する塗布材料吐出口22が塗布材料吐出口22の列の一方から他方へと移るにつれて、X軸駆動モータ28の駆動により、トレイ32、従って、カメラ30と光源31を、カメラ30がいずれの塗布材料吐出口22からの液滴も撮像できるようにする。また、インクジェットヘッド5の全ての塗布材料吐出口22から吐出される液滴がカメラ30の視野内に入る場合には、光軸34が塗布材料吐出口22の列の中央部を横切るように、カメラ30と光源31との位置調整をすることにより、液滴の撮像期間中カメラ30と光源31との位置を固定して置くことができる。ここで、カメラ30,光源31とインクジェットヘッド5との位置関係を設定するにしても、また、上記のように、カメラ30で液滴を撮像するにしても、カメラ30,光源31の方を移動させたが、インクジェットヘッド5をX軸方向に移動可能とすることにより、インクジェットヘッド5の方を移動させるようにしてもよい。
次に、図3(b)により、インクジェットヘッド5からの塗布材料の吐出制御や光源31の発光制御について説明する。
インクジェットヘッド5から液滴40を吐出させるときには、その吐出命令がPC20から出力される。ヘッド駆動基板38は、この吐出命令を受信すると、インクジェットヘッド5の吐出面5aの塗布材料吐出口22(図2)毎の吐出命令に変換し、これら吐出命令を所定時間間隔で順にインクジェットヘッド5へ送出する。これにより、インクジェットヘッド5では、夫々の塗布材料収納室に順にかかる吐出命令が伝えられ、夫々の吐出機構が動作することにより、これら塗布材料収納室の塗布材料吐出口22からは、所定の時間間隔で吐出命令が供給される順に、液滴40が吐出される。
また、これら塗布材料吐出口22毎の吐出命令は、光源制御装置39にも送出される。光源制御装置39は、この吐出命令を受信する毎に、この吐出命令の受信タイミングから規定の遅延時間遅れて光源31を充分短い時間発光させる。これにより、塗布材料吐出口22のいずれかから吐出された1つの液滴40が照明され、これによって照明された瞬間のこの液滴40の状態がカメラ30で撮像される。かかる撮像が塗布材料吐出口22毎に順番に行なわれる。
なお、光源制御装置39で規定される上記の遅延時間は、塗布材料吐出口22から液滴40が吐出開始されてからこの液滴40がカメラ30の視野範囲を通過してしまうまでの時間長まで取り得る可変の時間であり、これにより、塗布材料吐出口22から液滴40が吐出開始される瞬間(遅延時間=0)から液滴40がカメラ30の視野範囲を通過してしまう直前の瞬間までの任意のタイミングで光源31を瞬間発光させることができ、液滴40がカメラ30の視野内を落下中であるときには、その任意の瞬間で光源31によって照明され、カメラ30で撮像することができる。
先述のようにカメラ30による撮像が行なわれることにより、液滴40を空中で静止しているような状態で撮像することが可能になり、さらに言えば、同じ塗布材料吐出口22から複数回の吐出を行ない、その吐出毎に上記の遅延時間を順次変化させて光源31の発光タイミングを順次異ならせることにより、吐出後の液滴40の順次のタイミングでの撮像画像を得ることができ、これにより、液滴40の状態や落下距離,飛翔角度などを観察することが可能となる。
図5(a),(b)は図1に示す第1の実施形態で用いられる塗布基板8の一具体例と塗布材料の塗布状態を示す図であって、41はバンク(くぼみ部)であり、前出図面に対応する部分には同一符号を付けている。
図5(a),(b)において、ELデバイスなどに用いられる塗布基板8には、例えば、規定の幅W,奥行L,深さH2(図6)の楕円状をなすバンク41が一定間隔で正方行列状に設けられている。なお、図5(a)に示す塗布基板8と図5(b)に示す塗布基板8とは、バンク41の向きが、例えば、90度異なるものであり、それ以外の点については同様である。ここでは、いずれの塗布基板8であってもよい。
通常、かかる塗布基板8には、形状の異なる複数のバンク41が形成されており、同形状のバンク41毎に集合体を形成しているが、ここでは、1つの集合体のみを示し、他の集合体については省略している。ここで、インクジェットヘッド5の吐出口ライン23(図2)はX軸方向のバンク41の配列に平行であって、この吐出口ライン23上の塗布材料吐出口22(図2)の1つ1つがX軸方向に配列されるバンク41の1つ1つに対向した状態で、インクジェットヘッド5のこれら塗布材料吐出口22から1つずつ規定の順序で液滴40が吐出され、対向するバンク41に着弾するようにコントロールされる。
X軸方向1列分のバンク41での塗布材料の塗布が終了すると、塗布基板8がY軸方向に、バンク41のY軸方向のピッチ分移動し、次のX軸方向1列分のバンク41での塗布材料の塗布が行なわれる。このようにして、順次X軸方向1列分ずつバンク41への塗布材料の塗布が行なわれることになる。また、Y軸方向に移動しながら、リニアスケールなどの距離検出手段を用いてピッチ分の位置をリアルタイムに検出し、塗布材料を塗布することで連続的に塗布するようにしてもよい。
図6はインクジェットヘッド5からの液滴40の飛翔角度と着弾位置のバラツキとの関係について示す図であって、Y軸方向に沿う断面を示すものであり、前出図面に対応する部分には同一符号を付けている。
同図において、1つのバンク41内に吐出される液滴40の量は予め決められており、これを理想液滴量とする。この理想液滴量の液滴40がバンク41内に着弾して均一に塗れ広がったときのこのバンク41内での塗布材料42の液面のバンク41底面からの高さをH3とする。また、インクジェットヘッド5から吐出される液滴40の理想的な軌跡を軌跡43と、実際の軌跡を軌跡44とすると、これら軌跡43,44とが一致せず、飛翔角度θYが生ずる。このときの塗布材料吐出口22と塗布基板8の表面との間の距離をヘッド高さH1とすると、理想的な軌跡43によるバンク41での液滴40の着弾点45から実際の軌跡44による着弾点46がずれることによる液滴40のY方向の着弾誤差ΔYが生じる。ここで、Y方向着弾誤差ΔYがY方向許容着弾誤差ΔYTよりも大きければ、このバンク41に液滴40が着弾しないばかりか、最悪の場合、隣接しているバンク41(図示せず)に着弾することになる。このような場合には、該当するインクジェットヘッド5の塗布材料吐出口22は使用しないか、もしくはヘッド高さH1を低くしてY方向着弾誤差ΔYを小さくする。
なお、ここでは、バンク41の幅W方向(Y方向)について述べたが、バンク41の奥行L方向(X方向)についても、同様である。
また、許容着弾誤差ΔYTはバンク41の形状(幅W)に影響されるが、さらに、液滴40の粘度や比重量、そして、バンク41の親水性をも加味して決定してもよい。
さらに、液滴40が着弾してバンク41内に塗れ広がる際、液滴40の落下速度が速すぎたり、後述するように液滴40が充分に安定していなかったりすると、着弾後の液滴40の挙動が安定しないばかりか、着弾時に四方に展開する慣性力で液滴40の全量の一部がバンク41を乗り越え、塗布基板8内の意図しない領域に付着してしまうことが分かっており、許容着弾誤差ΔYTに関してこれらも考慮することも好ましい。
図7はこの第1の実施形態でのサテライトの概要と上記のギャップ長H0についての説明図である。
同図において、インクジェットヘッド5の塗布材料吐出口22から吐出される塗布材料は、吐出直後(P1)からわずかな時間を経過して、その先端が球状となり(P2→P3)、やがて自重と粘性などによって液滴40として塗布材料吐出口22から完全に分離し(P4)、球状となり(P5)、次第にその内部応力が発散し安定化する(P6)。そのときのインクジェットヘッド5の塗布材料吐出口22から安定化したときの液滴40の中心までの距離を上記のギャップ長H0とする。このギャップ長H0の位置に達した液滴40は安定化しており、塗布基板8の塗布面からのヘッド高さH1(図6)をこのギャップ長H0以上に設定することにより、液滴40を安定した状態でバンク41に着弾させることができる。即ち、液滴40がこのように安定した状態でバンク41に着彈するように、上記のヘッド高さH1をギャップ長H0以上に設定することが好ましい。
ここで、インクジェットヘッド5の塗布材料吐出口22毎に電圧を印加することにより、このインクジェットヘッド5内の塗布材料吐出口22(図3)毎の塗布材料収納室で圧縮素子などの吐出機構部が動作し、塗布材料吐出口22から塗布材料が吐出されて液滴40が生ずるのであるが、この印加電圧が規定電圧値以上にして液滴40の吐出を行なうと、液滴40の周辺に液滴40より速度の遅い複数の微小滴群(サテライト)47が発生する(図7のP5’→P6’)。かかるサテライト47の発生は有機ELデバイスなどの品質を著しく低下させる原因となるため、後述するように、かかるサテライト47を発生させる印加電圧もしくはそれ以上の印加電圧では、塗布材料吐出口22から塗布材料を吐出させないようにする。
図8はこの第1の実施形態におけるインクジェットヘッド5での液滴量Qと印加電圧Eとの関係について示す図である。なお、電圧印加時間は各塗布材料吐出口22で同一である。
図8(a)において、インクジェットヘッド5での印加電圧Eの可能な上限値,下限値は予め決まっている。この上限値と下限値との範囲内で、特に、液滴40を吐出可能な最小印加電圧をE1とし、そのときの液滴40の量(液滴量Q)をQ1とする。また、液滴40を吐出可能な最大印加電圧をE2とし、そのときの液滴量QをQ2とする。印加電圧E1−E2間では、印加電圧Eと吐出液滴量Qとは比例関係(なお、サテライトは液滴量Qに含まない)にあることが知られており、その比例関係を表わす直線を吐出特性直線48とする。インクジェットヘッド5に高い電圧Eを印加すると、吐出された液滴周辺にサテライト47(図7)が発生することは前述の通りであり、サテライト47が初めて発生する印加電圧Eを許容最大印加電圧ESとすると、電圧ES−E2間の電圧帯は使用しないようにする。最適印加電圧ETは、最適液滴量QT(図6で説明したバンク41に吐出される予め決められた理想液滴量に相当)の液滴40を吐出可能な印加電圧Eである。図1に示す塗布機構部Aで用いるインクジェットヘッド5では、その最適な印加電圧Eとしては、電圧E1−ES間から予め規定した最適液滴量QTを吐出可能な最適印加電圧ETを選択することになる。
一方、インクジェットヘッド5を使用し続けていると、次第に吐出特性直線48が降下して行き、図8(b)に示すように、吐出特性直線49となって最適液滴量QTの液滴40を吐出できなくなる。また、インクジェットヘッド5の固体差が原因となって、最初から吐出特性直性49となっている場合もある。このような場合には、同じバンク41に対して2回以上の塗布を行ない、そのバンク41で最適液滴量QTの液滴40を確保することができるようにする。
図8(b)において、例えば,最適液滴量QTの半分の液滴量Qを分割最適液滴量QThとすると、印加電圧Eと吐出される液滴量Qは比例関係にあるから、分割最適液滴量QThに対する印加電圧EThで同じバンク41に2回印加し、2回塗布するようにする。これにより、このバンク41で最適液滴量QT(=2×QTh)の液滴量Qでの塗布を確保することができる。
なお、印加電圧E1より小さい印加電圧Eでは、実際には、インクジェットヘッド5で塗布材料の吐出のための動作が行なわれているが、塗布材料を吐出させるための力が足りないために、塗布材料が外部へ吐出されない。しかし、このような印加電圧Eでも、最小印加電圧E1に比較的近い場合、インクジェットヘッド5の塗布材料収納室では、吐出機構部の動作により、塗布材料が撹拌されて揺動しており、このときの印加電圧Eを揺動電圧E0とする。インクジェットヘッド5は、塗布材料の吐出動作を行わない状態が長時間続くと、次第にその塗布材料吐出口22が乾燥していって目詰りが生ずる。これに対し、充分な吐出特性が発揮できないが、揺動印加電圧E0をインクジェットヘッド5に印加し続けて(揺動して)いれば、塗布材料がインクジェットヘッドの塗布材料吐出口22の付近の流路内で程良く攪拌され、塗布材料吐出口22の目詰りが生じないことが発明者らの実験でわかっている。また、この塗布材料の揺動時では、インクジェットヘッド5からは塗布材料が吐出されないため、事実上、吐出動作が行なわれない状態と言える。従って、インクジェットヘッド5で吐出動作を行なわせない場合には、常に印加電圧を揺動電圧E0にしておくようにする。さらに、その揺動電圧E0は、最小印加電圧E1に近いほうがより好ましい。
次に、図3(a),(b)に示した検査機構部Bを用いて実際にインクジェットヘッド5で最適液滴量QTの液滴40を吐出させるための各種パラメータの決定について説明する。
図9はこのための検査機構部Bの全体的な動作の一具体例を示すフローチャート、図10は図9におけるステップ103の一具体例を示すフローチャート、図11は図9におけるステップ109の一具体例を示すフローチャートである。以下、図3(a),(b)を参照して説明する。
図9において、まず、測定の準備のために、PC20に、図1に示す塗布機構部Aで用いる塗布基板8でのバンク41(図5)の諸元として、図5及び図6におけるバンク幅W,バンク奥行L,Y方向許容着弾誤差ΔYT、X方向許容着弾誤差ΔXT(図示せず)、要求液滴量、許容分割塗布回数を入力する。また、インクジェットヘッド5の諸元として、ギャップ長H0(図7)、ヘッド高さH1(図6)、許容不良吐出口数を入力する。なお、X方向許容着弾誤差ΔXTやY方向許容着弾誤差ΔYTは、PC20でバンク幅Wとヘッド高さH1などから独自の計算式を用いて決定してもよいし、予め計算してその結果の数値を入力するようにしてもよい(ステップ101)。
また、図3に示す検査機構部Bにおいて、図1に示す塗布機構部Aで使用するインクジェットヘッド5をヘッドブラケット37に取り付け、Z軸ステージ35を駆動して検査可能な所定の位置に位置設定する。そして、θ方向回転ユニット29を回転駆動して、カメラ30,光源31の光軸34が吐出口ライン23(図2)と直交するように、光軸34の向きの調整を行なった後、PC20からインクジェットヘッド5に検査準備用の印加電圧及び駆動信号を送信し、その塗布材料吐出口22(図2)から塗布材料を吐出させる。この吐出は塗布材料吐出口221つずつ順番に行なう。この塗布材料の吐出による液滴40をカメラ30で撮像し、これとともに、X軸駆動モータ28の駆動により、インクジェットヘッド5から吐出される液滴40がカメラ30の視野に収まるように、カメラ30のX軸方向の位置調整を行なう。インクジェットヘッド5の全ての塗布材料吐出口22からの液滴40がカメラ30の視野内に納まりきれない場合には、少なくとも最初に吐出される液滴40(例えば、最も左側の塗布材料吐出口22から吐出される液滴40)が視野内に入るように、カメラ30の位置調整を行なう。また、必要に応じて、Y軸駆動モータ26の駆動により、カメラ30のY軸方向の位置調整を行ない、カメラ30のフォーカス調整も行なうようにしてもよい(図9のステップ102)。
以上により、測定のための準備作業が終了する。なお、この第1の実施形態では、インクジェットヘッド5の全ての塗布材料吐出口22から吐出される液滴40を検査対象とし、最も左側の塗布材料吐出口22から順に最も右側の塗布材料吐出口22まで、吐出される液滴40の測定を行なうものとするが、検査の対象としたい吐出口数は任意に決めることができるし、測定の順番も任意に決めることができる。
図9において、以上の準備作業が終了すると、次に、インクジェットヘッド5の吐出特性を得るのに必要な、液滴40の挙動に関するデータの取得を行なう(ステップ103)。これを、図10により、説明する。
同図において、まず、インクジェットヘッド5に設けられた塗布材料吐出口22のうちの1つ(この場合、上記のように、最も左側の塗布材料吐出口22)を選択して検査対象吐出口22とし、これにインクジェットヘッド5の検査用の初期駆動電圧として小さい印加電圧(図8(a)に示す最小印加電圧E1よりも小さい電圧値の電圧)Eを設定し(ステップ201)、光源制御装置39(図3(b))で設定される吐出命令に対する光源31の発光タイミングの遅延時間TdをTd=0に設定する(ステップ202)。そして、この設定された印加電圧Eをインクジェットヘッド5の検査対象吐出口22に印加してカメラ30で撮像を行ない、液滴の吐出状態を監視するが(ステップ203)、液滴40がこの検査対象吐出口22から吐出される前に光源31が瞬間発光した場合には、あるいはこの印加電圧Eが上記の最低印加電圧E1(図8(a))未満である場合、カメラ30が液滴40を撮像できないので(ステップ204)、ステップ206,208と進み、光源制御装置39で現在設定されている遅延時間Td(このときには、Td=0)に所定時間ΔTdを追加し、ステップ211からステップ203に戻って新たな遅延時間Td+ΔTdで光源31を発光させてカメラ30で像を行なう。このようにして、カメラ30が光源31の照明によって液滴40を撮像するまで(ステップ204)、ステップ203,204,206,208,210,211の動作を繰り返し、この繰り返し毎に光源制御装置39で遅延時間Tdが所定時間ΔTdずつ増加していく。
しかし、光源制御装置39に設定されている遅延時間Tdが予め設定されている吐出待機時間(液滴40が検査対象吐出口22から吐出開始してからカメラ30の視野を通過するまでの時間)を越えても、この検査対象吐出口22から液滴40が吐出されないときには(ステップ211)、このときの印加電圧Eが最小印加電圧E1未満で液滴40が吐出されなかったことになり、この検査対象吐出口22に対する印加電圧Eを所定電圧ΔEだけ高める(ステップ212)。そして、ステップ213からステップ202に戻り、光源制御装置39での遅延時間Tdを0に戻して、印加電圧E+ΔEで上記の動作を繰り返す。
このようにして、カメラ30が光源31の照明によって液滴40を撮像できるまで(ステップ204)、上記の動作が繰り返され、その繰り返し毎に検査対象吐出口22の印加電圧Eが所定電圧ΔEずつ高められていき、また、そのとき設定されている印加電圧Eが検査対象吐出口22に印加されている期間、光源制御装置39で遅延時間Tdが所定時間ΔTdずつ増加していく。
かかる動作の繰り返しが行なわれて、その後、検査対象吐出口22からの液滴40の吐出が確認された場合には(ステップ204)、このときの印加電圧Eをこの検査対象吐出口22の最小印加電圧E1としてPC20に記録する(ステップ205)。
図7で説明したように、液滴40は、塗布材料吐出口22から吐出されてから時間が経過するとともに、安定していくが、PC20がカメラ30からの画像信号からカメラ30で撮像された液滴40が安定しているか否かの判定を行なっている(ステップ206)。
液滴40が安定していない場合には、ステップ203〜206,208,210,211の動作が繰り返され、その繰り返し毎に光源制御装置39で遅延時間Tdが所定時間ΔTdずつ増加される。なお、ステップ205では、既に最小印加電圧E1が記録されているので、もはや最小印加電圧E1の記録は行なわれず、そのまま通過するだけである。
このように、遅延時間Tdが順次所定時間ΔTdずつ増加するとともに、光源31の発光タイミングが遅れていき、吐出された液滴40が安定化したときに光源31がこの液滴40を照明し、これをカメラ30が撮像してPC20が液滴40が安定していると判定するようになる(ステップ206)。これにより、PC20は、そのときに光源制御装置39で設定されている遅延時間Tdと撮像された液滴40の輪郭とを基に液滴40のカメラ30の視野内での中心座標を算出し、また、液滴40の輪郭を基にこの液滴40(この場合には、安定しているから、球状をなしている)の体積、即ち、液滴量などを算出し、これら液滴40の中心座標と液滴量とを、このときの検査対象吐出口22への印加電圧Eや光源制御装置39での遅延時間Tdとともに、この検査対象吐出口22を特定する情報(番号など)に関連付けて記録する(ステップ207)。
その後、ステップ203〜208,210,211の動作が繰り返され、その繰り返し毎に光源制御装置39で遅延時間Tdが所定時間ΔTdずつ増加していく。この間、ステップ207では、上記のデータの記録が行なわれる。また、遅延時間Tdが上記の吐出待機時間を越えると(ステップ211)、検査対象吐出口22の印加電圧Eを所定電圧ΔEだけ高める。以上の動作が繰り返されるが、その間ステップ207で上記のデータの記録が行なわれる。
ところで、図7,図8で説明したように、液滴吐出開始が確認された後、印加電圧Eがある電圧値を越えると、液滴40の周辺にサテライト47が発生する。そこで、上記の動作の繰り返しにより、発生したサテライト47が光源31によって照明され、これがカメラ30によって撮像されると、PC20は液滴40の周辺にサテライト47が発生したと判定し(ステップ208)、そのときの印加電圧Eよりも1つ前の印加電圧Eをこの検査対象吐出口22に対するサテライト47が発生しない最大の印加電圧、即ち、図8(a)に示す許容最大印加電圧ESとしてPC20に記録し(ステップ209)、図9のステップ104に進む。
少なくともサテライト47が観測される前に(ステップ208)、検査対象吐出口22の印加電圧Eが図8(a)に示す最大印加電圧E2を越えた場合も、図9のステップ104に進む。この場合には、この最大印加電圧E2がこの検査対象吐出口22の許容最大印加電圧ESとなる。
なお、ステップ204,206,208において、この第1の実施形態では、1回の撮像で得られた液滴40の画像情報から上記の各種パラメータを抽出し、順次PC20に記録するが、同じ遅延時間Tdで液滴40の撮像を2回以上行ない、夫々の撮像で得られた各種パラメータの平均をPC20に記録するようにしてもよい。
また、以上の図10で説明した動作では、インクジェットヘッド5の塗布材料吐出口22から順番に液滴40を吐出させ、カメラ30では、塗布材料吐出口22からの液滴40を1つずつ撮像するようにしたが、カメラ30の視野内での複数の塗布材料吐出口22が同時に液滴40を吐出され、これらを同時に撮像して夫々のデータを取得するようにしてもよい。
図9において、ステップ103で検査対象吐出口22に対して以上のパラメータが得られると、次に、θ方向回転ユニット29を90度回転させて、カメラ30,光源31の光軸34がインクジェットヘッド5の吐出口ライン23(図2)と平行となるように調整し(ステップ104)、同じこの検査対象吐出口22に対し、ステップ103と同様のパラメータ、即ち、液滴40の挙動に関するデータの測定を行なう(ステップ105)。
以上により、1つの塗布材料吐出口22に対し、Y軸方向からみた場合の液滴40の挙動に関するデータとX軸方向からみた場合の液滴40の挙動に関するデータとが得られる。
しかる後、必要に応じて、この検査対象吐出口22やその周縁部をクリーニング装置28で清掃する(ステップ107)。これにより、この検査対象吐出口22に対する作業が終了する。そして、検査対象となっていない他の塗布材料吐出口22のうちから1つを選んで次の検査対象吐出口22とし(ステップ107)、この検査対象吐出口22について、ステップ102からの上記の一連の動作を行ない、この検査対象吐出口2から吐出された液滴40のX軸,Y軸方向から見た挙動に関するデータを取得する。
このようにして、順次各塗布材料吐出口22から吐出された液滴40の挙動に関するデータを取得して、全ての塗布材料吐出口22に対する液滴の挙動に関するデータの取得が終了すると(ステップ106)、次に、得られた各塗布材料吐出口22のデータを評価し、このインクジェットへッド5を塗布機構部Aで使用する際に必要な各種パラメータを決定する(ステップ109)。これを図11により説明する。
同図において、まず、塗布機構部A(図1)で使用するときのインクジェットヘッド5の各塗布材料吐出口22から同じ量の液滴40を吐出するための印加電圧Eを決定するものであるが(ステップ301)、これは次のようにして行なわれる。なお、各塗布材料吐出口22では、同じ印加電圧Eに対して、吐出される液滴量にバラツキがあるが、このステップ301では、全ての塗布材料吐出口22での液滴量が等しくなるように、夫々の印加電圧Eを決定するものである。
即ち、PC20に記録された上記パラメータの中から、各塗布材料吐出口22毎に、図10のステップ207で求めた各印加電圧Eとそのときの液滴量(以下、実測液滴量という)との比例関係式を求め、これら比例関係式毎に、図9のステップ101で既にPC20に入力されている要求液滴量(図8(a)での最適液滴量QTに相当する)を代入して、この要求液滴量に対応する印加電圧Eを求め、これを図8(a)に示す最適印加電圧ET(n)(但し、nは塗布材料吐出口22の番号)としてPC20に順次記録する。以上により、図1に示す塗布機構部Aで使用するインクジェットヘッド5の各塗布材料吐出口22毎の最適印加電圧ET(n)が決定し、これをPC20に記録する。
なお、比例関係式を用いずに、液滴量許容誤差(例えば、±5%以内)を設け、各塗布材料吐出口22毎に、要求液滴量の液滴量許容誤差で決まる許容液滴量範囲(即ち、要求液滴量±5%以内)内に入る上記実測液滴量に対する印加電圧Eを最適印加電圧ET(n)としてPC20に順次記録してもよい。
要求液滴量に対応した実測液滴量が見出せない場合には、具体的には、液滴40の1回の吐出では、バンク41(図5)での液滴量が足りない場合、同じバンク41に2回に分けて液滴40を吐出するものとし、2つの実測液滴量の合算が要求液滴量となるように、夫々の印加電圧Eを選択し、夫々の印加電圧Eを最適印加電圧ETa(n),ETb(n)としてPC20に記録する。
また、このように同じバンク41に対して、液滴40の吐出を3回以上に分けてもよいが、この回数は図9のステップ101で入力した許容分割塗布回数を越えないようにする。同じバンク41に許容分割塗布回数だけ液滴40を吐出しても、液滴量が要求液滴量に満たない場合には、この塗布材料吐出口22は塗布機構部A(図1)で使用しないものとし、これを、不良吐出口として、PC20に記録するとともに、その個数を不良吐出口数としてカウントする。この不良吐出口数は、図9のステップ101で入力するときには、0となっている。
図11のステップ301において、以上のようにして、液滴量のバラツキが補正されるように、各塗布材料吐出口22の最適印加電圧ET(n)が求まると、次に、インクジェットヘッド5の塗布材料吐出口22毎に、求めた最適印加電圧ET(n)を印加電圧Eとしてときの塗布基板8のバンク41での液滴40の着弾精度の判定を行なう(ステップ302)。この着弾精度は塗布材料吐出口22毎にバラツキがある。以下、これについて説明する。なお、ステップ301で不良吐出口と判定された塗布材料吐出口22については、その判定は省略してもよい。
各塗布材料吐出口22毎に、図11のステップ301で求めてPC20に記録されている最適印加電圧ET(n)での液滴40の遅延時間Td毎の中心座標のデータから、この中心座標の落下の軌跡を直線近似して求め(図6での実際の軌跡44に相当する)、液滴40が垂直に落下した場合の直線状の軌跡(図6での理想的な軌跡43に相当)とのなす図6に示すような飛翔角度θY(n)(但し、nは塗布材料吐出口22の番号)を求め、その飛翔角度θY(n)と、既に図9のステップ101でPC20に入力されている塗布基板8の表面からインクジェットヘッド5の吐出面5a(図2)までの高さ、即ち、ヘッド高さH1とから、三角関数により、図6に示すような塗布材料吐出口22固有のY方向着弾誤差ΔY(n)(但し、nは塗布材料吐出口22の番号)を求める。
このようにして求めたY方向着弾誤差ΔY(n)が図9のステップ101でPC20に入力されたY方向許容着弾誤差ΔYTを上回った場合には、上記のヘッド高さH1を低く設定し、再度Y方向着弾誤差ΔY(n)を計算する。そして、Y方向着弾誤差ΔY(n)がY方向許容着弾誤差ΔYTと等しいか下回わるまでこの処理を行ない、かかる状態になったときには、そのときのヘッド高さH1(n)(但し、nは塗布材料吐出口22の番号)とY方向着弾誤差ΔY(n)とをPC20に記録する。X方向着弾誤差ΔXについても同様であって、このヘッド高さH1(n)でのX方向着弾誤差ΔX(n)が求められてPC20に記録される。
この第1の実施形態において、ヘッド高さH1(n)はギャップ長H0(図7)を下回わらないようにする。そのため、Y方向着彈誤差ΔY(n)がY方向許容着弾誤差ΔYTに等しいか、下回わるためには、どうしてもヘッド高さH1(n)がギャップ長H0を下回わらなければならない塗布材料吐出口22は、塗布機構部A(図1)で使用しないものとし、その旨をPC20に記録するとともに、その個数を不良吐出口数としてカウントする。
このようにして、各塗布材料吐出口22について、Y方向着弾誤差ΔY(n)の評価や液滴40の着彈位置のバラツキを補正するヘッド高さH1(n)が決まると、図11において、次に、塗布機構部Aで塗布基板8への塗布材料の塗布動作を行なうときの上記の揺動電圧E0の決定を行なう(ステップ303)。これを次に説明する。
まず、図10のステップ205で測定した全ての塗布材料吐出口22での最小印加電圧E1を参照し、それらの中で最も低い最小印加電圧E1を選択する。そして、図10のステップ212で用いた印加電圧Eを増加させるための規定の所定電圧ΔEを減じた電圧を揺動電圧E0とし、これをPC20に記録する。
図11において、次に、かかる検査に用いたインクジェットヘッド5が塗布機構部Aで使用可能かどうかの判定を行なう(ステップ304)。これは、図11のステップ301,302でカウントされた不良吐出口数の合計が図9のステップ101で入力された許容不良吐出口数以上であるか否か判定され(ステップ305)、許容不良吐出口数未満であれば、そのまま使用可能として図9のステップ110に進むが、許容不良吐出口数以上であれば、このインクジェットヘッド5は塗布作業に使用できないものとして、作業者に警告を発し(ステップ306)、図9のステップ110に進む。
以上で、インクジェットヘッド5の検査は終了し、検査されたインクジェットヘッド5は検査機構部B(図3)のヘッドブラケット37から取り外される(ステップ110)。そして、使用可能なインクジェットヘッド5は塗布機構部A(図1)のヘッドブラケット6に取り付けられて、塗布基板8への塗布作業に用いられる。
塗布機構部Aで塗布作業に利用されるパラメータは、上記のようにPC20に記録されてパラメータのうち、塗布材料吐出口22毎の最適印加電圧ET(n)(塗布基板8の同じバンク41(図5)に複数回塗布を実施するように指定された塗布材料吐出口22については、夫々毎の最適印加電圧ETa(n),ETb(n),……)やヘッド高さH1(n)の集合のうち最も小さい値と、不良吐出口を示すデータである。PC20は、かかるパラメータでもって、インクジェットヘッド5での印加電圧などの制御を行なう。
なお、この第1の実施形態では、塗布機構部A(図1)と検査機構部B(図3)とで同じPC20を使用するものとしたが、別々のPCを用いるようにしてもよい。但し、この場合には、検査機構部BのPCで取得したパラメータなどのデータを塗布機構部Aへ転送できるように、これらPC間にLANやパラレル接続などのデータリンク機構を設けるか、また、夫々の機構部のPCに外部記録装置を搭載し、検査機構部BのPCに記録したデータをその外部記録装置で記録媒体に記録し、この記録媒体を塗布機構部Aでの外部記録装置に装着してそのデータを塗布機構部A側のPCで使用するようにする。
次に、図1に示す塗布機構部Aで塗布基板8に塗布材料を塗布する際、インクジェットヘッド5で最適な液滴を吐出させる場合の動作について説明する。
図12は図1に示す塗布機構Aの塗布動作の一具体例を示すフローチャートである。
同図において、まず、塗布のための準備として、使用するインクジェットヘッド5に取り付けられているヘッド保護装置(図示せず)を取り外し、図3に示す検査機構部Bに取り付ける。このヘッド保護装置は、インクジェットヘッド5の塗布材料吐出口22の乾燥による目詰りを防止するためのものである。そして、塗布機構部Aでは、PC20を起動し、適宜塗布材料ボトル16での塗布材料や洗浄液ボトル18での洗浄用溶剤の残量を確認し、各構成機器の自己診断などを実施する(ステップ401)。
一方、検査機構部Bでは、クリーニング装置133でインクジェットヘッド5の塗布材料吐出口22(図2)とその周縁部の清掃を実施し、目詰り要因を排除し(ステップ402)。しかる後、上記のように、このインクジェットヘッド5の検査を行なって塗布作業に必要なパラメータをPC20に取得する(ステップ403)。
続いて、PC20は、かかるパラメータをこれからの塗布作業に反映させる。即ち、検査済みのインクジェットヘッド5を塗布機構部Aのヘッドブラケット6に取り付け、Z軸ステージ3を駆動し、インクジェットヘッド5の吐出口面5a(図2)と塗布基板8の塗布面との距離、即ち、ヘッド高さを上記の検査で得られた各塗布材料吐出口22(図2)のヘッド高さH1(n)の集合のうち最も小さい値に設定する。これにより、全ての塗布材料吐出口22で、X方向着弾誤差ΔX(n),Y方向着弾誤差ΔY(n)が夫々X方向許容着弾誤差ΔXT,Y方向許容着弾誤差ΔYTの範囲内に収まることになり、上記の検査で不良と判定されないいずれの塗布材料吐出口22も使用できることになる。
これとともに、成膜前処理工程などから搬送されてきた塗布基板8を吸着テーブル14の所定の位置に載置し、図示しない真空発生手段を駆動して塗布基板8を吸着固定する(ステップ404)。そして、インクジェットヘッド5の夫々の塗布材料吐出口22を塗布基板8でのバンク47(図5)に対向させ、インクジェットヘッド5の各塗布材料吐出口22毎にその最適印加電圧ET(n)を印加する。これにより、各塗布材料吐出口22から塗布材料の液滴40が吐出され、夫々のバンク47に塗布材料が塗布される。なお、使用するインクジェットヘッド5に不良吐出口があれば、この吐出口による塗布作業を行なわず、他の塗布材料吐出口22で代用するなど、運転方法を変更する(ステップ405)。このようにして、この塗布基板8での塗布が終了すると、図示しない真空発生手段を駆動させて塗布基板8を吸着テーブル14から解除し、次の塗布後処理工程へ搬送する(ステップ406)。
このようにして、1枚の塗布基板8での塗布作業が終了すると、次の塗布基板8について、ステップ404からの動作を繰り返して塗布作業を行なうようにして、塗布処理を必要とする規定枚数の塗布基板8に対する塗布作業が終了するまで(ステップ407)、かかる塗布作業(ステップ404〜ステップ408)が繰り返されるが、その途中で、インクジェットヘッド5のクリーニングを必要とする予め決められた決められた枚数の塗布基板8の塗布作業を終了すると(ステップ408)、このインクジェットヘッド5の塗布材料吐出口22とその周縁部をクリーニング装置15でクリーニングし(ステップ402)、ヘッドブラケット6から取り外して図3に示す検査機構部Bでのヘッドブラケット37に取り付け、このインクジェットヘッド5の各塗布材料吐出口22の再度の検査を行なう。この検査は、主として、これら塗布材料吐出口22が不良か否かを判定するためのものであって、その検査結果がPC20に取り込まれる(ステップ403)。ここで、不良と判定された塗布材料吐出口22が上記の許容不良吐出口数以上の場合には、このインクジェットヘッド5は、使用不能として、他のインクジェットヘッド5と交換され、ステップ401から上記の塗布動作が再開されることになる。
上記の検査の結果、これまで使用されたインクジェットヘッド5が使用可能である場合には、このインクジェットヘッド5が再度塗布機構部Aに取り付けられ、ステップ404から動作が再開される。
そして、塗布処理を必要とする規定枚数の塗布基板8の塗布作業が終了すると(ステップ407)、このインクジェットヘッド5をヘッドブラケット6から取り外して図3に示す検査機構部Bでのヘッドブラケット37に取り付け、クリーニング装置33で塗布材料吐出口22とその周縁部とをクリーニングし(ステップ409)、各塗布材料吐出口22の上記の検査を行なう(ステップ410)。この検査も、主として、塗布材料吐出口22の不良数を検出してこのインクジェットヘッド5が不良か否かを判定するためのものである。不良と判定されたインクジェットヘッド5はそのまま破棄されるが、使用可能なインクジェットヘッド5は、図示しない上記のヘッド保護装置が装着させ、これによって作業は終了する。
図13は本発明によるインクジェット塗布装置の第2の実施形態を示す概略図であって、図1及び図3に対応する部分には同位置符号を付けて重複する説明を省略する。
この第2の実施形態は、図1に示す塗布機構部Aと同様の塗布機構部を備えたものであるが、この塗布機構部の吸着テーブル14にトレイ33も搭載できるようにしたものである。
図13は吸着テーブル14上にトレイ33が搭載され、吸着固定された状態を示すものである。ここで、この第2の実施形態では、吸着テーブル14の1つの辺の端面にカメラ30が、これに対向する他の辺の端面に光源31が夫々、互いに対向するようにして、設けられている。これらカメラ30の光軸と光源31の光源とは、同一直線上にあまた、吸着テーブル14のさらに他の辺の端面には、クリーニング装置33が取り付けられている。従って、吸着テーブル14にトレイ33が搭載されると、図3(a)に示す検査機構部Bと同様の構成の検査機構部が形成されることになる。また、トレイ33を取り除くと、吸着テーブル14に塗布基板を搭載可能となり、図1に示す塗布機構部Aと同様の塗布機構部が形成されて塗布基板経の塗布動作が可能となる。
なお、このように、カメラ30と光源31とクリーニング装置33とを吸着テーブル14に設ける代わりに、トレイ33に設け、これらが設けられたトレイ33を吸着テーブル14に着脱可能としてもよい。
この第2の実施形態の検査機構部の検査動作も、図3に示す検査機構部の図9〜図11に示す動作と同様である。また、この第2の実施形態の塗布機構部の塗布動作も、図12に示す動作と同様である。但し、この図12に示す検査動作において、ステップ402,409のインクジェットヘッド5のクリーニングやステップ403,410のインクジェットヘッド5の検査では、このインクジェットヘッド5をヘッドブラケット6から取り外す必要はなく、ヘッドブラケット6に取り付けたまま塗布基板への塗布動作やかかるクリーニング,検査を行なうことができる。
なお、本発明のインクジェット塗布装置を用いて有機ELデバイスを作成し、これに最適電圧を印加したところ、不良画素及び色ムラのない高品質な特性を得ることが確認できた。
また、上記実施形態を有機ELデバイスの製造装置とする例を説明したが、本発明は、これのみに限られるものではなく、複数のノズルを備えた塗布ヘッドを用いて所定の領域内に所定量の塗布材料を塗布し、高品質の画素を得るための装置であれば、本発明を適用できることはいうまでもない。