JP4403473B2 - 近赤外線吸収化合物および近赤外線吸収フィルター - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は光学フィルターに関するもので、特に可視光線領域の透過率が高く、近赤外線を効率良く遮断することができる近赤外線吸収フィルタ−に関するものである。また、前記近赤外線吸収フィルタ−を得るための新規な近赤外線吸収化合物に関するものである。本発明の近赤外線吸収化合物を用いた近赤外線吸収フィルターは、例えばビデオカメラなどの光学機器の受光素子や撮像素子の受光感度補正や色調補正等、またキャッシュカードやIDカード等の偽造防止など、近赤外線を遮断する機能が必要な用途に広く適用することができる。また、太陽光線に含まれる近赤外線吸収の調光材料や植物育成の制御などの農業用資材や保護メガネ等の視覚保護医療材料、更には感光材料にも利用することができる。
【0002】
【従来の技術】
従来から用いられてきた代表的な近赤外線吸収化合物および近赤外線吸収フィルタ−としては、下記のようなものが挙げられる。
【0003】
▲1▼燐酸系ガラスに、銅や鉄などの金属イオンを含有したフィルタ−(特開昭60−235740号公報、特開昭62−153144号公報など)。
【0004】
▲2▼基板上に屈折率の異なる層を積層し、透過光を干渉させることで特定の波長を透過させる干渉フィルタ−(特開昭55−21091号公報、特開昭59−184745号公報など)。
【0005】
▲3▼共重合体に銅イオンを含有するアクリル系樹脂フィルタ−(特開平6−324213号公報)。
【0006】
▲4▼近赤外線吸収色素を含有する近赤外線吸収材料としては、次のようなものが使われてきた。
(1)特開平8−120186号公報、 特開平9−279125号公報、特開平8−120186号公報に示されているようなフタロシアニン系、ナフタロシアニン系色素を用いたもの。
(2)特開昭60−43605号公報、特開昭61−115958号公報、特開昭61−291651号公報、特開昭62−132963号公報、特開平1−172458号公報、に示されているようなアントラキノン系色素を用いたもの。
(3)特開昭60−236131号公報、特開平4−174403号公報に示されているようなアミニウム塩系色素を用いたもの。
(4)特開昭57−21458号公報、 特開昭61−32003号公報、 特開昭62−187302号公報、特公昭61−32003号公報, 特開昭61−32003号公報に示されているようなジチオール金属錯体系色素を用いたもの。
(5)特開平5−178808号公報、特開平5−295967号公報、特開平9−310031号公報に示されているようなジインモニウム塩系色素を用いたもの。
【0007】
しかしながら、従来使用されてきた上記▲1▼から▲3▼記載の近赤外線吸収フィルターには、それぞれ以下に示すような問題点があった。
【0008】
前記▲1▼の方式の場合、近赤外領域に急峻な吸収が有り、赤外線遮断率は非常に良好であるが、可視領域の赤色の一部も大きく吸収してしまい、透過色は青色に見える。ディスプレー用途では色バランスを重視され、このような用途に使用するのは不適切である。また、ガラスであるために加工性にも問題がある。
【0009】
前記▲2▼の方式の場合、光学特性は自由に設計でき、ほぼ設計通りの品質を有するフィルターを製造することが可能であるが、その為には、屈折率差のある層の積層枚数を非常に多くする必要があり、製造コストが高くなるなどの欠点がある。また、大面積を必要とする場合、全面積にわたって高い精度の膜厚均一性が要求されるため、製造が困難である。
【0010】
前記▲3▼の方式の場合、前記▲1▼の方式の欠点であった加工性は改善される。しかし、前記▲1▼の方式と同様に、光学特性の設計の自由度が低い。また、可視領域の赤色部分にも吸収が有り、フィルターが青く見えてしまうという前記▲1▼の方式の問題点は変わらない。さらに、銅イオンの吸収が小さく、アクリル樹脂に含有できる銅イオン量も限られているため、アクリル樹脂を厚くしなければならないという問題点もある。
【0011】
前記▲4▼の方式の場合、加工性や生産性に優れ、また安価で製造することができ、さらに光学特性の設計の自由度も比較的大きい。しかしながら、従来使用されてきた前記▲4▼記載の赤外線吸収色素には、それぞれ以下に示すような問題点があった。
【0012】
前記(1)記載の赤外線吸収色素を使用した場合、可視領域の吸収が大きく、着色したものしか得られない。また、近赤外域の吸収巾が小さく近赤外線の遮断が不十分である。
【0013】
前記(2)記載の赤外線吸収色素を使用した場合、前記(1)記載の赤外線吸収色素を使用した場合と同様、可視領域の吸収が大きく、着色したものになってしまう。
【0014】
前記(3)記載の赤外線吸収色素を使用した場合、近赤外線領域の吸収巾は大きいものの、可視領域に大きな吸収があるため、着色が問題になる。
【0015】
前記(4)記載の赤外線吸収色素を使用した場合、可視領域の吸収は他の色素に比べて小さいものの、近赤外線領域の吸収巾が小さく、近赤外線の遮断が不十分である。
【0016】
前記(5)記載の赤外線吸収色素を使用した場合、可視領域の吸収は比較的小さいため着色の問題が小さく、近赤外線領域の吸収巾も広いといった利点がある。しかしながら、赤外線リモコンの波長域となる800nmから900nmの吸収が不十分であるという問題点がある。
【0017】
近年、薄型大画面ディスプレイとしてプラズマディスプレイが注目されているが、プラズマディスプレイから不要な近赤外線が放出され、これが近赤外線リモコンを使う電子機器等の誤動作を起こす問題がある。従って、近赤外線を吸収する材料をプラズマディスプレイの前面に設置することが必要とされる。しかし、従来使用されてきた材料では、上記のような理由で、満足なものが提供されていないのが実状である。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような状況に鑑みなされたものであって、その目的は、波長800nmから1300nmにおける近赤外線領域において大きくて巾の広い吸収を有し、かつ可視領域の光透過性が高く、さらに可視領域に特定波長の大きな吸収を有しない、近赤外線吸収化合物を提供することにある。さらに、前記特性を有する近赤外線吸収化合物を用い、加工性および生産性に優れた近赤外線吸収フィルターを提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記のような状況に鑑みなされたものであって、前記課題を解決することができた近赤外線吸収化合物および近赤外線吸収フィルターとは、以下の通りである。
【0020】
本発明の第1の発明は、分子構造が下記一般式(1)で示される近赤外線吸収化合物である。
【化2】
ここで、Rは全て同一であってフッ素、n−ブチル基、もしくはn−ブトキシ基のいずれかであり、X−は中性化のためのカウンターイオンである。
【0021】
第2の発明は、第1の発明に記載の近赤外線吸収化合物を高分子樹脂に分散させた樹脂組成物であって、前記樹脂組成物を基材上に積層することを特徴とする近赤外線吸収フィルターである。
第3の発明は、第2の発明に記載の基材が可視光線領域において実質的に吸収を有しないことを特徴とする近赤外線吸収フィルターである。
【0022】
第4の発明は、前記基材が透明なポリエステルフィルムであることを特徴とする第3の発明に記載の近赤外線吸収フィルターである。
第5の発明は、プラズマディスプレイの前面に設置することを特徴とする第2〜4の発明に記載の近赤外線吸収フィルターである。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0024】
本発明において、前記の一般式(1)で示される近赤外線吸収化合物は、文献に記載の方法(Shigeru Sasaki and Masahiko Iyoda, Chemistry Letters ,1995年)にしたがって、例えば下記構造式(2)で示される化合物を合成し、この化合物を酸化することにより得ることができる。酸化は、AgClO4、AgSbF6、AgBF4、AgNO3のような酸化剤により、容易に行うことができる。
【0025】
【化3】
ここで、Rはフッ素、n−ブチル基、もしくはn−ブトキシ基のいずれかである。
【0026】
前記の一般式(1)で示される本発明の近赤外線吸収化合物は、近赤外線領域に大きな吸収を持ち、且つ吸収巾が大きい。また、可視領域の透過率が高く、光学用途として適している。また、置換基Rにより、吸収波長域の微調整、高分子樹脂への溶解性の制御を行うことができる。
【0027】
本発明の近赤外線吸収化合物において、前記の一般式(1)の置換基Rはすべてが同一である。また、置換基Rは窒素原子の4位に置換することが好ましい。前記置換基Rとしては、アルキル基、アルコキシ基、フッ素が挙げられる。X − は中性化のためにカウンターイオンを示す。
【0028】
アルキル基としては、n−ブチル基が挙げられる。
【0030】
またアルコキシ基としては、n−ブトキシが挙げられる。
【0031】
本発明の近赤外線吸収フィルターは、近赤外線吸収層を基材に積層させた構成からなる。近赤外線吸収層は、分子構造が前記の一般式(1)で示される近赤外線吸収化合物と高分子樹脂とを主な構成成分とし、高分子樹脂に近赤外線吸収化合物を分散させて使用される。本発明ではこのような構成とすることで、近赤外線吸収層の厚み及び前記の一般式(1)で示される近赤外線吸収化合物の含有量のコントロールが容易であり、そのため、近赤外領域の吸収の大きさや可視領域の透過率を制御することができ、光学特性の設計の自由度が大きくすることができる。
【0032】
また、近赤外線吸収層の基材への積層方法は得に限定されるわけではないが、基材上に高速でコーティングできるグラビアコート法、リバースコート法、キスロールコート法、ロールコート法で設けることができ、加工性、生産性という点も優れる。
本発明の近赤外線吸収層には、分子構造が前記の一般式(1)で示される近赤外線吸収化合物を少なくとも1種以上含有していることが必要である。吸収波長が異なる2種以上の近赤外線吸収化合物を併用する場合、これらの近赤外線吸収化合物が分子間で相互作用等をおこさなければ、混合した状態で近赤外線吸収層に含有させてもかまわない。分子間で相互作用等を起こす場合には、それぞれ単独で使用することが必要である。その場合、吸収波長が異なる近赤外線吸収化合物をそれぞれ単独で含有させた複数の近赤外線吸収層を基材に積層してもかまわない。この積層は基材の両面でも良いし、片面に複数層積層しても良い。
【0033】
本発明の近赤外線吸収フィルターの近赤外線吸収層には、分子間の相互作用等を示さなければ、前記の一般式(1)で示される化合物以外に、近赤外領域の吸収領域の巾を広げ、かつ吸収強度を高くすることを目的として、他の近赤外線吸化合物を含有させてもよい。
【0034】
他の近赤外線吸収化合物としては、フタロシアニン系化合物、ジチオ−ル金属錯体系化合物、ジインモニウム塩系化合物などが好適である。例えば、フタロシアニン系化合物としては、日本触媒社製Excolor IR-1、IR-2、IR-3、IR-4、TXEX-805K、TXEX-809K、TXEX-810K、TXEX-811K、TXEX-812Kなどが例示される。また、ジチオール金属錯体系化合物としては、三井化学社製SIR‐128、SIR‐130、SIR‐132、SIR‐159などが例示される。さらに、ジインモニウム塩系化合物としては、日本化薬社製 IRG-022、IRG-023などが挙げられる。
【0035】
上記の他の近赤外線吸収化合物は一例であり、特に限定されない。また、必要に応じて、さらに他の種類の色素を混合しても良い。
【0036】
前記の近赤外線吸収層の構成成分である高分子樹脂としては、前記の一般式(1)で示される本発明の近赤外線吸収化合物を均一に分散できるものであれば特に限定されないが、ポリエステル系、アクリル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリカ−ボネ−ト系樹脂が好適である。
【0037】
また、前記基材としては、透明性が高いことはもちろんのこと、コスト、取り扱いやすさという点で、プラスチックフィルムが好ましい。具体的には、ポリエステル系、アクリル系、セルロ−ス系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリカ−ボネ−ト、フェノ−ル系、ウレタン系樹脂から形成されたフィルムが挙げられるが、物理的特性、光学特性、耐薬品性、環境負荷などの観点から、ポリエステルフィルムが好ましい。ポリエステルフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート又はこれらの樹脂の構成成分を主成分とする共重合体から形成された二軸配向ポリエステルフィルムが好ましく、中でもポリエチレンテレフタレートから形成された二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。
【0038】
また、上記ポリエステル系樹脂には、各種の添加剤が含有されていても良い。添加剤として、例えば、帯電防止剤、UV吸収剤、安定剤等が挙げられる。また、基材ポリエステルフィルム中には、透明性の点から、易滑性付与を目的とした不活性粒子を実質上含有させないことが好ましい。
【0039】
また、基材フィルムと近赤外線吸収層との密着性を良くするために、前記基材フィルムには近赤外線吸収層を積層する面に予め易接着層を積層しておくことが好ましい。なかでも、未延伸または一軸延伸後のポリエステルフィルムの少なくとも片面に易接着層を設け、その後少なくとも一軸方向に延伸・熱固定処理するインラインコート法により積層することが特に好ましい。インラインコート法により積層された易接着層に、適切な粒径の微粒子を含有させることにより滑り性をもたせておけば、良好なハンドリング性(滑り性、巻き取り性など)、耐スクラッチ性を付与することができる。このため、二軸配向ポリエステル中に微粒子を含有させる必要がなく、全光線透過率が89%以上の高透明なフィルムを得ることができる。
【0040】
前記易接着層の樹脂としては、共重合ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−マレイン酸グラフトポリエステル樹脂、アクリルグラフトポリエステル樹脂などが挙げられ、少なくとも1種以上を使用することが好ましい。なかでも、共重合ポリエステル系樹脂及びポリウレタン系樹脂からなる樹脂、スチレン−マレイン酸グラフトポリエステル樹脂が特に好ましい。
【0041】
本発明において、近赤外線吸収組成物をバインダ−樹脂に分散させた樹脂組成物を基材上に積層する方法は、共押出し法、コーティング法などが挙げられるが、特に限定されない。なかでも、コーティング法は、厚み均一性、コストの点で好ましい。コーティング法の場合、コ−ティング時のコ−ティング液に用いる溶剤は、本発明で用いる近赤外線吸収色素とバインダ−樹脂を均一に分散できるものであれば何でもよい。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸プロピル、メタノ−ル、エタノ−ル、イソプロピルアルコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、塩化メチレン、クロロホロム、N,N−ジメチルホルムアミド、水などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
【実施例】
次に、本発明の近赤外線吸収化合物および近赤外線吸収フィルターの製造方法について、基材としてポリエチレンテレフタレート(以下PETと略称する)を使用した例にして説明するが、当然これに限定されるものではない。実施例及び比較例中の「部」は、特に断らない限り、「重量部」のことである。また、本明細書に記載の分光特性は、自記分光光度計(日立U−3500型)を用いて測定したものであり、測定した波長は1500〜200nmの範囲である。
【0043】
実施例1
下記構造式(3)で示される化合物を文献の方法(Shigeru Sasaki and Masahiko Iyoda, Chemistry Letters,1995年)によって合成した。次に、下記構造式(3)で示される化合物1部をアセトン20部に溶かし、さらに該化合物に対し、2倍モル量のヘキサフルオロアンチモン酸銀を加えた。室温で2時間攪拌したのち、析出した銀をろ別し、ろ液をエーテルで薄めて析出した固体を集め、エーテルおよびヘキサンで洗浄し、下記構造式(4)で示される近赤外線吸収化合物0.5部を得た。この近赤外線吸収化合物を塩化メチレン溶液に溶解し、10mg/lの溶液を調整し、1cm長の石英セルに入れて分光光度計により透過率を測定した。表2に示されるように、下記構造式(4)で示される近赤外線吸収化合物は、可視領域の550nmの透過率が高く、800nmから900nmの近赤外線領域の吸収も大きかった。
【0044】
【化4】
ここで、n−Buはn−ブチル基の略である。
【0045】
【化5】
ここで、n−Buはn−ブチル基の略である。
【0046】
実施例2
また、上記近赤外線吸収化合物を分散する高分子樹脂を以下の要領で製造した。
温度計、撹拌機を備えたオ−トクレ−ブ中に、
テレフタル酸ジメチル 136重量部、
イソフタル酸ジメチル 58重量部
エチレングリコール 96重量部、
トリシクロデカンジメタノール 137重量部
三酸化アンチモン 0.09重量部
を仕込み170〜220℃で180分間加熱してエステル交換反応を行った。次いで、反応系の温度を245℃まで昇温し、系の圧力を1.33〜13.3hPaとして180分間反応を続けることにより、共重合ポリエステル樹脂(A1)を得た。共重合ポリエステル樹脂(A1)の固有粘度は0.40dl/g、ガラス転移温度は90℃であった。
【0047】
上記共重合ポリエステル樹脂(A1)の、NMR分析による共重合組成比は、酸成分として、テレフタル酸が71モル%、イソフタル酸が29モル%であり、アルコール成分として、エチレングリコールが28モル%、トリシクロデカンジメタノールが72モル%であった。
【0048】
次に、この共重合ポリエステル樹脂(A1)、実施例1に記載の構造式(4)で示される近赤外線吸収化合物、及び溶剤を、表1に示すような組成でフラスコにいれ、加熱しながら攪拌し、近赤外線吸収化合物及び共重合ポリエステル樹脂(A1)を溶解した。この溶解液を近赤外線吸収層用塗布液とした。
【0049】
【表1】
【0050】
次に、上記で調合した塗布液を、厚み100μmの高透明二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルム基材(東洋紡績(株)社製、コスモシャインA4100)に、グラビアロ−ルにより片面にコ−ティングし、150℃の熱風をフィルム表面に風速5m/sで送りながら1分間乾燥して近赤外線吸収フィルターを製造した。乾燥後のコ−ト層(近赤外線吸収層)の厚さは8.0μmであった。得られた近赤外線吸収フィルターの分光特性を表1に示す。表1に示されるように、得られた近赤外線吸収フィルターは可視領域の550nmの透過率が高く、800nmから900nmの近赤外線領域の吸収も大きかった。
【0051】
実施例3
下記構造式(5)で表わされる近赤外線吸収化合物を、実施例1に記載の合成方法と同様にして合成した。次に、この近赤外線吸収化合物を用いた以外は、実施例2と同様の方法で近赤外線吸収フィルターを製造し、分光特性を測定した。表1に示されるように、得られた近赤外線吸収フィルターは可視領域の550nmの透過率が高く、800nmから900nmの吸収も大きかった。
【0052】
【化6】
ここで、n−Buはn−ブチル基の略である。
【0053】
実施例4
下記構造式(6)で示される近赤外線吸収化合物を実施例1に記載の合成方法と同様にして合成した。次に、この近赤外線吸収化合物を用いた以外は、実施例2と同様の方法で近赤外線吸収フィルターを製造し、分光特性を測定した。表1に示されるように、得られた近赤外線吸収フィルターは可視領域の550nmの透過率が高く、800nmから900nmの吸収も大きかった。
【0054】
【化7】
【0055】
比較例1
近赤外線吸収化合物として、ジインモニウム塩系化合物(日本化薬社製、IRG−022)に変更する以外は、実施例1と同様の方法で分光特性を測定した。表1に示されるように、上記ジインモニウム塩系化合物は可視領域の550nmの透過率は高いものの、800nmから900nmの近赤外領域の吸収が不十分であった。
【0056】
比較例2
近赤外線吸収化合物として、ジインモニウム塩系化合物(日本化薬社製、IRG−022)に変更する以外は、実施例2と同様の方法で分光特性を測定した。表1に示されるように、得られた近赤外線吸収フィルターは可視領域の550nmの透過率は高いものの、800nmから900nmの近赤外領域の吸収が不十分であった。
【0057】
【表2】
【0058】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の近赤外線吸収化合物および近赤外線吸収フィルタ−は、近赤外線領域に大きくて、巾の広い吸収を有し、しかも可視領域の光線透過性が高く、さらに環境安定性及び耐久性にも優れているため、プラズマディスプレイ用の近赤外線吸収フィルタ−をはじめ、波長選択調光材料、視覚保護医療材料、その他光通信ならびに光検出に障害を防止する近赤外線カットフィルター、近赤外線感光材料、農業用波長選択近赤外線カットフィルターなどに好適である。
Claims (5)
- 請求項1記載の近赤外線吸収化合物を高分子樹脂に分散させた樹脂組成物であって、前記樹脂組成物を基材上に積層することを特徴とする近赤外線吸収フィルター。
- 請求項2記載の基材が可視光線領域において実質的に吸収を有しないことを特徴とする近赤外線吸収フィルター。
- 前記基材が透明なポリエステルフィルムであることを特徴とする請求項3記載の近赤外線吸収フィルター。
- プラズマディスプレイの前面に設置することを特徴とする請求項2〜4記載の近赤外線吸収フィルター。
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