JP4401893B2 - ポリイミド前駆体樹脂組成物 - Google Patents
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Description
以上述べたように、ポリイミドの優れた物理的特性をより広い用途で活かすためには、100℃前後の比較的低温での乾燥工程ではポリイミド化が実質的に進行せず、一方、それに引き続くそれほど高くない温度での加熱イミド化の工程で完全にイミド化するような材料の開発が望まれていた。
すなわち本発明は、以下のとおりのものである。
(1)a)ポリアミド酸と、b)次の一般式(I)で示されるジアザビシクロ誘導体を必須成分として含み、a)成分とb)成分の和100質量部を基準として、a)成分が70〜99.9質量部であり、b)成分が0.1〜30質量部であることを特徴とする低温硬化性ポリイミド樹脂組成物。
本発明による低温硬化性ポリイミド樹脂組成物は、電子回路基板や電子素子製造工程へ適用するために必要な成型工程での加熱条件ではイミド化が実質的に進行せず、一方で、その後に220℃以下の加熱処理を行うことでイミド化が可能なポリイミド樹脂組成物である。
本発明により、半導体製造工程のような電子素子製造工程の中でのポリアミド酸を用いる製造工程が容易になるのはもとより、電子回路基板へのポリアミド酸の応用用途が広がった。
本発明の低温硬化性ポリイミド樹脂組成物におけるa)成分であるポリアミド酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させることにより得られ、また、必要に応じて、ジカルボン酸無水物も加えて反応させても良い。
上記のテトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸、ベンゼンテトラカルボン酸、シクロブタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、オキシジフタル酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸などの二無水物が挙げられる。また、上記のジアミンとしては、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンなどが挙げられる。更に、ジカルボン酸無水物とテトラカルボン酸二無水物とジアミンは、それぞれ1種又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
これらのポリアミド酸は、前記のテトラカルボン酸二無水物成分とジアミン酸成分を反応させて得られるが、それら成分がブロックあるいは、ランダムに含有されていてもよい。
ポリアミド酸との相溶性や、有機溶媒との溶解性から、酸としては、ギ酸や酢酸、マレイン酸などといった脂肪族カルボン酸やコハク酸、安息香酸などの芳香族カルボン酸、また、フェノール、カテコールなどのフェノール類やp−トルエンスルホン酸などの芳香族スルホン酸などの有機酸残基が好ましい。
また、対応する酸は、ジアザビシクロ誘導体に対してそれぞれ1種又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
a)成分とb)成分の混合比率は、a)成分とb)成分の和100質量部を基準として、a)成分が70〜99.9質量部であり、b)成分が0.1〜30質量部であることが好ましく、さらに好ましくは、a)成分が80〜99.5質量部であり、b)成分が0.5〜20質量部である。220℃以下での硬化といった低温硬化性の観点から、b)成分は0.1質量部以上が好ましく、イミド化の硬化速度の制御の観点から30質量部以下が好ましい。
本発明のポリイミド樹脂よりなる構造体は、前記のポリイミド前駆体樹脂組成物を220℃以下の温度で加熱硬化して得たポリイミド樹脂を含む構造体である。加熱時の雰囲気は、不活性ガス中でも良いし、構造体の他の構成成分に酸化などの問題のない限り空気中でも良い。
尚、以下の実施例において、ポリアミド酸の特性やイミド化の程度の測定は、次のようにして行った。
(1)還元粘度
ポリマー濃度が0.5g/dlとなるようにN−メチル−2−ピロリドン溶液を調整した後、柴田科学株式会社製の粘度計番号1のウベローデ粘度管を使用し、温度30℃±1℃の恒温水槽中で測定した。
(2)イミド化率
本発明においてのイミド化率は、IR法で求めた。使用した測定器は、Thermo Nicolet Corporation製のCentaurusで、Ge結晶を使用したATR法で測定した。Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry,Vol.27,711−724(1989)に倣い、1500cm-1近傍のベンゼン環に基づくピークを基準とし、1380cm-1近傍のイミド環生成に基づくピークの吸光度との比からイミド化率を求める。それらのピーク前後でピークの谷と谷を結ぶように適宜ベースラインを引き、それぞれのピークからそのベースラインへ降ろした線とベースラインとの交点からピークまでの高さをそれぞれの吸光度と定義し、本発明の樹脂を窒素雰囲気で300℃60分間熱処理した際の樹脂の1380cm-1における吸光度をA1、1500cm-1の吸光度をA2とし、各条件における1380cm-1の吸光度をB1、1500cm-1の吸光度をB2とした場合、各条件におけるイミド化率Cは、300℃60分間処理時のそれを100として、以下の式で算出した。
イミド化率C=[(B1/B2)/(A1/A2)]×100(%)
イミド化が完結せずポリアミド酸が残存していると、その量に応じて該ポリマー層の吸水率は増加する。吸水率は、樹脂組成物を200℃、90分空気中にて熱処理し、縦5cm×横5cm×厚さ10μmとしたフィルムで測定した。このフィルムを105℃、60分間加熱乾燥した後、質量を測定し、その後100℃沸騰水中に1時間浸漬させた後、フィルム表面の水滴をふき取り質量を測定した。吸水率は、以下の計算式にて計算した。
吸水率(%)=〔(浸漬後の質量−浸漬前の質量)/浸漬前の質量〕×100
(4)樹脂流動性
樹脂組成物の流動性は、ポリエステルフィルム上に形成した樹脂組成物層を10cm角のシートに切断し、圧力2.9MPa、170℃で10分間プレスした後に、シート外に流れ出した樹脂の質量%で評価した。7.0質量%以上であるときに充分な樹脂流動性があると評価した。
ステンレススチール製の碇型撹拌器を取り付けた容量500mlのガラス製のセパラブル3つ口フラスコに、水分吸収用シリカゲル乾燥管を取り付けた。このフラスコにN−メチル−2−ピロリドン(脱水)(和光純薬工業株式会社製)(以下「NMP」と略す)347.9g、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(和歌山精化工業株式会社製)(以下「ODA」と略す)27.5gを室温にて加え、撹拌・溶解した後に、氷水にてフラスコを冷却した。フラスコ内の液体の温度が5℃になった際に、無水フタル酸(和光純薬工業株式会社製)(以下「PA」と略す)0.5gを加え5分間撹拌後に3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(ダイセル化学工業株式会社製)(以下「BTDA」と略す)43.7gをフラスコに除々に加え、氷水で冷却しながら8時間撹拌した。反応終了後のポリアミド酸樹脂の還元粘度は、1.27dl/gであった。上記で製造したポリアミド酸ワニス100g(固形分濃度17.2wt%)に対してジアザビシクロウンデセン・p−トルエンスルホン酸2.1g(商品名:SA506、サンアプロ株式会社製)を加え十分攪拌して樹脂組成物ワニスを得た。
このワニスを80℃に保温された平滑なプレートに保持されたポリエステルフィルム上に塗布して30分放置後、空気循環式の乾燥炉で100℃、30分乾燥してフィルムを得た。乾燥後の樹脂組成物層の厚さは40μmであった。このフィルムは、イミド化率が2%であり、流動性は8.5質量%であり、良好な流動性を示した。
このフィルムから、支持フィルムであるポリエステルフィルムを剥離して、空気循環式の乾燥炉で200℃90分の熱処理を実施した。イミド化率は100%であり、吸水率は0.8%であった。得られた結果を要約して表1に示す。
ステンレススチール製の碇型撹拌器を取り付けた容量300mlのガラス製のセパラブル3つ口フラスコに、水分吸収用シリカゲル乾燥管を取り付けた。このフラスコにNMP256.3g、ODA13.5gを室温にて加え、撹拌・溶解した後に、氷水にてフラスコを冷却した。フラスコ内の液体の温度が5℃になった際に、BTDA21.4gをフラスコに除々に加え、氷水で冷却しながら8時間撹拌した。反応終了後のポリアミド酸樹脂の還元粘度は、0.85dl/gであった。上記で製造したポリアミド酸ワニス100g(固形分濃度17.2wt%)に対してジアザビシクロウンデセン・p−トルエンスルホン酸2.1g(商品名:SA506、サンアプロ株式会社製)を加え十分攪拌して樹脂組成物ワニスを得た。このワニスを80℃に保温された平滑なプレートに保持されたポリエステルフィルム上に塗布して30分放置後、空気循環式の乾燥炉で100℃、30分乾燥して樹脂シートを得た。乾燥後の樹脂組成物層の厚さは40μmであった。このフィルムは、イミド化率は2%であり、流動性は8.5質量%であり、良好な流動性を示した。このフィルムから、支持フィルムを剥離して、空気循環式の乾燥炉で200℃、90分の熱処理を実施した。イミド化率は100%であ1、吸水率は0.6%であった。得られた結果を要約して表1に示す。
実施例2で製造したポリアミド酸ワニス100gに対して(固形分濃度17.2wt%)に対してジアザビシクロウンデセン・p−トルエンスルホン酸2.1g(商品名:SA506、サンアプロ株式会社製)を加え十分攪拌して樹脂組成物ワニスを得た。この樹脂組成物ワニスをSiウェハー上に乾燥後の膜厚が17μmとなるようにスピンコートし、100℃で20分乾燥した後、イミド化率4%のポリアミド酸膜を得た。その塗布膜を2.38wt%のTMAH水溶液を用いて、完全に溶解する時間を23℃で測定したところ、膜厚1μmあたり30秒だった。
実施例1で製造したポリアミド酸ワニス100g(固形分濃度17.2wt%)に対して、ジアザビシクロウンデセン・p−トルエンスルホン酸を加えない以外は同様にしてフィルムを得た。
100℃、30分乾燥後のフィルム中の樹脂組成物層の厚さは40μmであった。この樹脂組成物層の組成は、イミド化率が2%であり、流動性は8.2質量%であり、良好な流動性を示した。このフィルムから支持フィルムを剥離して、空気循環式の乾燥炉で200℃、90分の熱処理を実施した。イミド化率は92%であり、吸水率は2.2%であった。得られた結果を要約して表1に示す。
これを実施例1と比較すると、実施例1では100℃乾燥後のイミド化率は変わらず、さらに、200℃熱処理後において比較例1ではイミド化率が92%に留まるのに対して、実施例1では100%となっており、本発明の化学イミド化剤が望ましい潜在硬化性を有することが判る。
実施例1で製造したポリアミド酸ワニス100g(固形分濃度17.2wt%)に対してジアザビシクロウンデセン5g(サンアプロ株式会社製)を加え十分攪拌して樹脂組成物ワニスを得た。
このワニスを80℃に保温された平滑なプレートに保持されたポリエステルフィルム上に塗布して30分放置後、空気循環式の乾燥炉で100℃、30分乾燥してフィルムを得た。乾燥後の樹脂組成物層の厚さは40μmであった。このフィルムは、イミド化率は6%であり、流動性は6質量%であり、やや流動性が低下した。
このフィルムにおける支持フィルムを剥離して、空気循環式の乾燥炉で200℃、90分の熱処理を実施した。イミド化率は90%であり、吸水率は2.4%であった。得られた結果を要約して表1に示す。
実施例1で製造したポリアミド酸ワニス100g(固形分濃度17.2wt%)に対してジアザビシクロウンデセン・p−トルエンスルホン酸8gを加え十分攪拌して樹脂組成物ワニスを得た。
このワニスを80℃に保温された平滑なプレートに保持されたポリエステルフィルム上に塗布して30分放置後、空気循環式の乾燥炉で100℃、30分乾燥してフィルムを得た。乾燥後の樹脂組成物層の厚さは40μmであった。このフィルムは、イミド化率が13%であり、流動性は0質量%であり、良好な流動性が得られなかった。
このフィルムから、支持フィルムを剥離して、空気循環式の乾燥炉で200℃、90分の熱処理を実施した。イミド化率は100%であり、吸水率は0.8%であった。得られた結果を要約して表1に示す。
実施例1で製造したポリアミド酸ワニスに対して1.8gの2−エチル−4−メチルイミダゾールを加えて、十分攪拌して樹脂組成物ワニスを得た。
このワニスを80℃に保温された平滑なプレートに保持されたポリエステルフィルム上に塗布して30分放置後、空気循環式の乾燥炉で100℃、30分乾燥してフィルムを得た。乾燥後の樹脂組成物層の厚さは40μmであった。このフィルムは、イミド化率が14%であり、流動性は0.4質量%であり、良好な流動性が得られなかった。
このフィルムにおける支持フィルムを剥離して、空気循環式の乾燥炉で200℃、90分の熱処理を実施した。イミド化率は100%であり、吸水率は0.7%であった。得られた結果を要約して表1に示す。
実施例3で製造したポリアミド酸ワニス100gに対して(固形分濃度17.2wt%)1.8gの2−エチル−4−メチルイミダゾールを加え十分攪拌して樹脂組成物ワニスを得た。この樹脂組成物ワニスをSiウェハー上に乾燥後の膜厚が17μmとなるようにスピンコートし、100℃で20分乾燥した後、イミド化率14%のポリアミド酸膜を得た。その塗布膜を2.38wt%のTMAH水溶液を用いて、完全に溶解する時間を23℃で測定したところ、1μmあたり40秒であった。
Claims (2)
- 請求項1記載のポリイミド前駆体樹脂組成物をイミド閉環させてなるポリイミド樹脂を含む構造体。
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