JP4378851B2 - キャリア同期方法及び回路、並びに信号処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、キャリア同期方法及び回路、並びに信号処理装置に関し、特にBS(放送衛星)を介して伝送された信号を受信する受信装置におけるキャリア同期方法及び回路、並びに信号処理装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年において、ビデオ信号及びオーディオ信号等を符号化し、通信衛星(CS:Communication Satelite)や放送衛星(BS:Broadcasting Satelite) 等を介して伝送し、受信側においてこれを復調するようにしたシステム、いわゆるディジタル放送システムが開発され普及しつつある。
【0003】
上記BSやCSのディジタル放送システムにおいては、変調方式として、BPSK(Binary Phase Shift Keying) 方式やQPSK(Quadrature Phase Shift Keying) 方式が用いられ、さらにBSディジタル放送では、QPSK変調方式よりも伝送効率の高いTC8PSK(Trellis-Coded 8 Phase Shift Keying) 方式等も用いられるようになっている。すなわち、例えばBS信号には、BPSK変調信号、QPSK変調信号、及びTC8PSK変調信号が時分割多重化されて混在している。
【0004】
ここで、BSディジタル放送において伝送するビットストリームとしては、CS、地上波、ケーブル等の他のメディアとの整合性を図る観点から、MPEG(Moving Picture Image Coding Experts Group) 2で規定された、いわゆるトランスポートストリーム(TS:Transport Stream)を基本としている。このTSは、1バイトの同期バイトを含んだ188バイトのパケットで構成されているが、CSディジタル多チャンネル放送、地上波ディジタル放送、ケーブルディジタル放送等では、これに誤り訂正用の16バイトのパリティを付加したリードソロモン符号(RS符号)が用いられていることから、BSディジタル放送でも、TSにRS符号化、具体的にはRS(204,188)符号化を行うようにしている。
【0005】
図9は、このような現在提案されているBSディジタル放送の送信装置の構成例を表している。188バイトのTSパケットには、RS(204,188)符号化により、16バイトのパリティが付加される。このパケットが48個集められて1フレームとされる。
【0006】
各フレームの48個のパケットの先頭の1バイトの同期バイトは、順次、連続して読み出され、フレーム同期およびTMCC発生回路201に入力される。フレーム同期およびTMCC発生回路201は、最初の2つのTSパケットの同期バイトをフレーム同期信号にすげ替える。また、フレーム同期およびTMCC発生回路201は、第3番目以降のTSパケットの同期バイトをTMCC(Transmission Multiplexing Configuration Control) 信号にすげ替える。このTMCC信号には、後述する主信号の変調方式や符号化率などの伝送制御情報が含まれる。これにより、1フレームを構成する48個のパケットのうちの最初の2つのパケットの2個の同期バイトが、フレーム同期信号にすげ替えられ、第3番目以降のパケットの同期バイトが、TMCC信号にすげ替えられることになる。フレーム同期およびTMCC発生回路201で発生されたフレーム同期信号とTMCC信号は、BPSKマッピング回路202に入力され、所定の信号点にマッピングされる。
1フレームのうちの最初の2個のTSパケットの主信号は、低階層用の画像信号LQとされ、この信号は、この2個のTSパケットの範囲内でインタリーブ回路203によりインタリーブされ、さらに、畳み込み符号化回路204に入力され、1/2の符号化率で畳み込み符号化される。そして畳み込み符号化された信号はパンクチャリング処理されて符号化率3/4とされてQPSKマッピング回路205に供給される。QPSKマッピング回路205において、QPSK方式で、所定の信号点にマッピングされる。
【0007】
一方、1フレームを構成する48個のパケットのうち、残りの46個のTSパケットの主信号は、高階層用の画像信号HQとされ、この信号は、インタリーブ回路206に入力され、インタリーブされた後、2/3トレリス符号化回路207において符号化され、さらに8PSKマッピング回路208において、信号点にマッピングされる。この2/3トレリス符号化回路207において、いわゆるプラグマティックトレリス符号化を行うようにすると、畳み込み符号化回路204と2/3トレリス符号化回路207は、共通の回路とすることができる。
【0008】
位相基準バースト発生回路209は、受信側での安定したキャリア再生を可能とするために、放送信号の予め定められた位置に挿入するBPSK変調信号を発生するものであり、具体的には、主信号の203シンボル毎に4シンボルの基準バーストを間欠的に多重するためのものである。
【0009】
多重化回路210は、BPSKマッピング回路202、QPSKマッピング回路205、8PSKマッピング回路208、及び位相基準バースト発生回路209からの出力を、フレーム単位で多重化し、出力する。従って、多重化回路210より出力される各フレームの信号は、最初に、BPSK変調されたフレーム同期信号とTMCC信号が配置され、その次に、QPSK変調された低階層用の主信号LQが配置され、最後に8PSK変調された高階層用の主信号HQが配置されたフォーマットとなる。また、主信号には所定周期で位相基準バースト発生回路209からの基準バーストが間欠的に多重される。
【0010】
図10は、BSの伝送信号中のキャリア同期用のBPSK変調信号の部分(図中の斜線部)の具体例を示すものであり、フレームの先頭から順に、32シンボルのBPSK変調されたフレーム同期信号、128シンボルのTMCC信号、32シンボルのBPSK変調されたフレーム同期信号が配置され、これらの192シンボルは全てBPSK変調信号である。これに続く主信号は、上述したように、BPSK変調信号、QPSK変調信号、TC8PSK変調信号のいずれかであるが、主信号の203シンボル毎に、位相基準バースト発生回路209からの4シンボルのBPSK変調信号が配置され、これらの主信号と位相基準信号とが207シンボル周期で繰り返される。なお、TMCC信号近傍部分の192シンボルは、前フレームの位相基準バースト信号部分の4シンボルから連続して配置されるから、これらの合計196シンボルがバースト状のBPSK信号部分として現れることになる。
【0011】
このようなBS信号を受信する受信側では、キャリアの同期を確立し、受信信号系列を監視することでBPSK変調されたフレーム同期信号を検出し、上述したTMCC信号の内容を解釈することにより、TMCC信号に続いて伝送されてくるペイロード情報を伝送する主信号部のシンボルの変調方式や符号化率等の伝送制御情報を知って、適切な復調、復号動作を行うようにしている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述したように、例えばBS信号には、BPSK変調信号、QPSK変調信号、及びTC8PSK変調信号が時分割多重化されて混在している。このようなBS信号を受信してディジタル信号を復号するためには、キャリア同期回路によるキャリア再生が必要であるが、各変調信号については、BPSK>QPSK>TC8PSKの変調波の順に安定したキャリア再生が行える。このため、キャリア同期をとる場合には、一般的に上記BPSK変調信号の部分が用いられるが、このBPSK変調信号の部分は連続しておらず、間欠的に、いわゆるバースト的に現れることになる。また、上記BS信号のBPSK変調信号の部分は、上記図10と共に説明したように、TMCC信号及びフレーム同期信号の近傍の196シンボルと、207シンボル周期で現れる4シンボルの位相基準バースト信号の部分とがあり、バースト長及びバースト周期が互いに異なっている。
【0013】
このようなバースト状に現れるキャリア信号のバースト長及びバースト周期が異なる場合には、キャリア再生用PLL又はコスタスループ等のループゲインが変化してキャリア同期が不安定になって同期捕捉に時間がかかってしまう問題があった。また、C/N(キャリア/ノイズ比)が低い場合や、受信機のフロントエンド部での雑音が多い場合等に、同期外れを起こしやすい問題があった。
【0014】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、バースト長及びバースト周期が互いに異なるようなキャリア信号に対して安定にかつ高速にキャリア同期が行えるようなキャリア同期方法及び回路、並びに信号処理装置を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上述のような課題を解決するために、本発明に係るキャリア同期方法及び回路は、キャリア同期のためのキャリア同期用信号部分を含み、該キャリア同期用信号部分の持続時間であるバースト長が互いに異なる第1、第2のバースト長を有する入力信号が供給され、上記入力信号の上記第1のバースト長のキャリア同期用信号部分と、上記入力信号の上記第2のバースト長のキャリア同期用信号部分とをそれぞれ選択して取り出し、取り出された第1、第2のキャリア同期用信号部分が入力されて、それぞれキャリア再生用の第1、第2のキャリア再生ループ系を構成し、上記第1、第2のキャリア再生ループ系の各ループゲインに対して、上記第1、第2のバースト長に応じてバースト長が長いほど小さい重みを付けることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明に係る信号処理装置は、情報信号が複数の変調方式のいずれかで変調されて送信された信号を受信し、得られた受信信号中の所定の変調方式の部分に対応する第1、第2のバースト長を有するキャリア同期信号部分に基づきキャリア信号を再生するキャリア同期手段と、上記キャリア同期手段からのキャリア信号に基づいて上記受信信号を復号処理して上記情報信号を得る復号手段とを有し、上記キャリア同期手段は、上記受信信号の上記第1のバースト長のキャリア同期用信号部分と、上記受信信号の上記第2のバースト長のキャリア同期用信号部分とをそれぞれ選択して取り出す選択手段と、上記選択手段で取り出された第1、第2のキャリア同期用信号部分が入力されて、それぞれキャリア再生用のループを構成する第1、第2のキャリア再生ループ系と、上記第1、第2のキャリア再生ループ系の各ループゲインに対して、上記第1、第2のバースト長に応じてバースト長が長いほど小さい重みを付ける重み付け手段とを有してなることを特徴とするものである。
【0017】
本発明によれば、互いに異なるバースト長の各バースト部分毎にキャリア再生ループを設け、それぞれのループゲインをバースト長に対応して、バースト長が長いほどループゲインを小さくするように、好ましくは各ループゲインに対してバースト長の逆数の比の重みを付けることにより、高速で安定したキャリア同期が行える。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るキャリア同期方法及び回路の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図1は本発明を適用したキャリア同期回路の構成例を示すブロック図である。
【0020】
この図1において、入力端子101には、上述したようなBSディジタル放送の受信信号(BS信号)が入力されるが、ここでは説明を簡略化するために、正弦波の複素信号、例えば実数部(リアルパート)が図2に示すような正弦波、虚数部(イマジナリパート)が図3に示すような余弦波の複素信号が入力されるものとする。また、このキャリア信号は、例えば図4の(A)の斜線部に示すようにバースト的に現れるものとする。
【0021】
すなわち、図4の(A)に示すキャリア信号は、先頭位置の22シンボルのバースト部分と、40シンボル周期で2シンボルのバースト部分とが合成されたものである。これは、上述したBS信号のTMCC信号及びフレーム同期信号の部分と、位相基準バースト部分とに対応するものであり、互いにバースト長が異なるようなバースト状キャリア信号の一例を示すものである。
【0022】
図1の入力端子101に入力された図4の(A)に示すようなバースト状キャリア信号の複素信号は、複素乗算器11を介して、振幅/位相分離回路12に送られ、振幅成分と位相成分とに分離される。振幅成分は端子104を介して終端(ターミネート)され、位相成分は、切換スイッチ21の被選択端子a及び切換スイッチ41の被選択端子aにそれぞれ送られる。切換スイッチ21の被選択端子bには、端子103からのゼロレベル信号“0”が入力されており、この切換スイッチ21は、入力端子102からの図4の(C)に示す信号により切換制御される。また、切換スイッチ41の被選択端子bには、端子108からのゼロレベル信号“0”が入力されており、この切換スイッチ41は、入力端子107からの図4の(D)に示す信号により切換制御される。すなわち、切換スイッチ21では、図4の(A)に示すようなバースト状キャリア信号の先頭位置の22シンボルのバースト部分を抜き出して次段の回路系に送っており、また、切換スイッチ41では、図4の(A)の信号中の40シンボル周期で2シンボルのバースト部分を抜き出して次段の回路系に送っている。
【0023】
切換スイッチ21からの信号は、増幅度(ゲイン)がωn 2の増幅器22及び増幅度が2dpωnの増幅器26にそれぞれ送られる。ここで、ωn は、2次のPLL(Phase Locked Loop) における自然角周波数を、dp は、2次のPLLにおけるダンピングファクタをそれぞれ表している。増幅器22からの信号は、加算器23に送られて、この加算器23からの出力を単位遅延素子24で遅延した信号と加算される。すなわち、加算器23と単位遅延素子24とで積分器を構成している。加算器23からの出力は、増幅器27を介して加算器25に送られる。ここで、増幅器27側の経路では位相が検出されるのに対して、増幅器22側の経路では、位相が積分されて周波数検出が行われる。この周波数検出部側の増幅器27は、上述した図4の各バースト状キャリア信号の互いに異なるバースト長の部分を切換スイッチ21,41でそれぞれ取り出すことによる各バースト長に応じたループゲイン調整用の増幅器である。加算器25には、増幅器27からの信号の他に、増幅器26からの信号、及び後述する加算器45からの信号が供給されている。
【0024】
次に、切換スイッチ41からの信号は、増幅度がωn 2の増幅器42及び増幅度が2dpωnの増幅器46にそれぞれ送られる。増幅器42からの信号は、加算器43に送られて、この加算器43からの出力を単位遅延素子44で遅延した信号と加算される。加算器43からの出力は加算器45に送られ、増幅器46からの出力と加算される。この加算器45からの出力は、加算器25に送られて、上記増幅器26からの出力及び増幅器27からの出力と加算される。
【0025】
加算器25からの出力は、いわゆるPLL誤差信号であり、加算器31を介してモジュロ部32に送られ、このモジュロ部32からの出力が単位遅延素子33で遅延されて加算器31に送られている。モジュロ部32は、入力uを2πで割った余り(剰余)である rem(u,2π)を出力する。すなわち、モジュロ部32は、入力位相を0〜2πの範囲の値に変換して出力している。モジュロ部32からの出力は、単位遅延素子34を介して、再び複素信号に変換するための変換部35に送られる。変換部35は、入力された信号のエクスポネンシャル(exponential) をとる、すなわち、入力位相xを単位円上の複素数 exp(jx)に変換するものである。変換部35からの複素信号は、複素共役(Conjugate) 部36に送られて位相が反転され、上記入力側の複素乗算器11に送られることによって、PLLのループが形成される。なお、加算器25からのPLL誤差信号は、端子106を介して取り出されるようになっている。
【0026】
ここで、上記切換スイッチ21,41で互いに異なるバースト長の部分がそれぞれ取り出されて各キャリア再生ループ系(図1の例では2次のPLLループ)に送られているが、本発明の実施の形態においては、これらのキャリア再生ループ系のループゲインに対してバースト長が長いほど小さい重みを付けるようにしている。具体的には、切換スイッチ21側のキャリア再生ループ系の上述した周波数検出部側に重み付け用の増幅器27を挿入接続して、この増幅器27のゲイン(利得)を1よりも小さくしている。これらの各キャリア再生ループ系のループゲインに対する重みは、各バースト長の比の逆数の比とすることが好ましく、この実施の形態では、図4の例における各バースト長の比22:2に応じて、増幅器27の利得(ゲイン)を1/11に設定している。すなわち、切換スイッチ21側の系と、切換スイッチ41側の系とについて、各バースト長の比22:2の逆数の比である1:11が各ループゲインの比となるように、増幅器27の利得を1/11に設定している。
【0027】
ところで、図5は、本発明の説明に共するための従来のキャリア同期回路の構成例を示しており、この図5の入力端子101にも、上述した図4の(A)に示すようなバースト状のキャリア信号が入力されるものとする。
【0028】
この図5の例においては、入力端子101から複素乗算器111を介し、振幅/位相分離回路112で分離された位相成分が切換スイッチ121の被選択端子aに送られている。この切換スイッチ121の切換制御端子109には、上述した図4の(A)に示すようなバースト状のキャリア信号の全てのバースト部分を選択するための、図4の(B)に示すような切換制御信号が供給されている。
【0029】
すなわち、図5において、振幅/位相分離回路112からの振幅成分は端子104を介して終端(ターミネート)され、位相成分は、切換スイッチ121の被選択端子aに送られる。切換スイッチ121の被選択端子bには、端子103からのゼロレベル信号“0”が入力されており、この切換スイッチ121は、入力端子109からの図4の(B)に示す信号により切換制御される。切換スイッチ121では、図4の(A)の信号中の最初の22シンボルのバースト部分、及び40シンボル周期で2シンボルのバースト部分の全てを抜き出して次段の回路系に送っている。
【0030】
切換スイッチ121からの信号は、増幅度(ゲイン)がωn 2の増幅器122及び増幅度が2dpωnの増幅器126にそれぞれ送られる。増幅器122からの信号は、加算器123に送られて、この加算器123からの出力を単位遅延素子124で遅延した信号と加算される。すなわち、加算器123と単位遅延素子124とで積分器を構成している。加算器123からの出力、及び増幅器126からの出力は加算器125に送られて加算される。この加算器125からの出力信号は、いわゆるPLL誤差信号として、加算器131を介してモジュロ部132に送られ、このモジュロ部132からの出力が単位遅延素子133で遅延されて加算器131に送られている。モジュロ部132では入力を0〜2πの範囲の値に変換して出力している。モジュロ部132からの出力は、単位遅延素子134を介して、変換部135に送られて再び複素信号に変換された後、複素共役(Conjugate) 部136に送られて位相が反転され、上記入力側の複素乗算器111に送られることによって、PLLのループが形成される。なお、加算器125からのPLL誤差信号は、端子106を介して取り出されるようになっている。
【0031】
この図5の構成においては、図4の(A)に示すようなバースト状キャリア信号の互いにバースト長が異なるバースト部分の全てに対して、1つのPLL回路系によるキャリア再生を行うようにしているため、キャリア同期に時間がかかってしまう問題がある。
【0032】
これに対して、本発明の実施の形態となる図1の構成によれば、互いに異なるバースト長の各バースト部分毎にキャリア再生ループを設け、それぞれのループゲインをバースト長に対応して、バースト長が長いほどループゲインを小さくするように、好ましくは各ループゲインに対してバースト長の逆数の比の重みを付けることにより、高速で安定したキャリア同期が行える。
【0033】
すなわち、図6は、本発明の実施の形態となる図1の構成を用いるときの端子106からのPLL誤差(PLLエラー)を示し、図7は、図5に示した従来のキャリア同期回路の構成例を用いるときの端子106からのPLL誤差を示している。
【0034】
これらの図6、図7を比較すれば、従来の図5の構成を用いたキャリア同期回路では、図7に示すようにキャリア同期に時間がかかっていたのに対して、本発明の実施の形態のキャリア同期回路では、図6に示すようにキャリア同期の時間が短縮され、高速でかつ安定なキャリア同期が行えることが明らかである。
【0035】
次に、図8は、上述したような本発明の実施の形態となるキャリア同期回路を用いて、BS信号を受信する受信装置を構成する場合のいわゆるフロントエンド部を概略的に示すブロック図である。
【0036】
この図8において、入力端子221を介して入力された受信信号は、分離部222に送られ、同相成分I信号と直交成分Q信号とに分離される。これは、複素入力信号を実部(リアルパート:I信号)と虚部(イマジナリパート:Q信号)とに分離することに相当する。これらのI信号及びQ信号は、それぞれナイキストフィルタ(Raised Cosine Filter)223及び224に送られた後、合成部225に送られて、再び複素信号に戻される。フィルタ223及び224は、ルートロールオフフィルタであり、入力されたI信号及びQ信号を帯域制限して出力する。合成部225からの出力信号は乗算部226に送られ、この乗算部226は供給された信号を2乗して出力する。乗算部226からの出力信号は、端子241を介してキャリア同期部240に送られる。また、乗算部226からの出力信号は、デマッピング部227に送られる。
【0037】
キャリア同期部240では、上記BS信号中のキャリア再生が行われ、再生されたキャリア信号が端子242を介してデマッピング部227に送られる。このキャリア同期部240は、具体的には上記図1と共に説明したような2つのキャリア再生ループ系を有する構成となっており、BS信号中のBPSK変調部分に相当する互いに異なる第1,第2のバースト長の部分をそれぞれ選択して取り出して第1,第2のキャリア再生ループ系に送り、これらのキャリア再生ループ系の各ループゲインの重みがそれぞれのバースト長の逆数の比となるようにゲイン調整を行っている。ここで、BS信号中のBPSK変調部分は、上記図10と共に説明したように、TMCC信号近傍の196シンボル長の第1の部分と、位相基準バーストの4シンボル長の第2の部分とがあることから、第1の部分が入力される第1のキャリア再生ループ系に、利得が4/196=1/49の増幅器を挿入接続すればよい。
【0038】
デマッピング部227では、上記送信側におけるBPSK、QPSK、TC8PSKの変調の際にマッピングされた信号点を検出するようなデマッピング処理を行い、その信号点に対応するメトリックを発生して、ビタビ復号部228に送る。ビタビ復号部228では、デマッピング部227からの信号を畳み込み復号処理し、デインターリーブ部229に送る。デインターリーブ部229は、上記送信側でのインターリーブに対応するデインターリーブ処理を行い、その出力をリードソロモン復号部230に送る。リードソロモン復号部230では、上述したRS(204,188)符号の復号処理を行う。このリードソロモン復号部230からの出力信号は、端子231を介して図示しないMPEG復号部に送られる。
【0039】
受信側では搬送波やクロックの同期を確立した後、受信信号系列を監視することでBPSK変調されたフレーム同期信号を検出し、フレーム同期を確立する。このフレーム同期信号の後には、BPSK変調されたTMCCが続いているので、フレーム同期が確立すれば、フレーム同期信号の次の信号をBPSK信号として受信、復調し、TMCC信号を得ることができる。このTMCC信号の内容を解釈することにより、TMCC信号の後に引き続き伝送されてくるペイロード情報を伝送する主信号部のシンボルの変調方式や符号化率等の伝送制御情報を知ることができるので、これに基づいて、主信号の受信および内符号の復号を行うことができる。
【0040】
その後、復調信号中のフレーム同期信号とTMCC信号は、元のように、TSの同期信号に置き換えられ、1バイトの同期信号と203バイトの主信号とからなるRS(204,188)符号化されたTSに戻され、さらにこのRS符号を復号することにより、送信されたTSを得ることができる。
【0041】
以上説明したような本発明の実施の形態によれば、キャリア同期用バースト信号部分のバースト長やバースト周期が異なるものにキャリア同期する場合、キャリア再生用PLL又はコスタスループ等のループゲインを、バースト長やバースト周期に対応したループゲインに調整することによって、高速でかつ安定なキャリア同期を実現できる。また、BSディジタル放送信号の変調信号のように、複数の変調方式(BPSK、QPSK、TC8PSK)が混在した信号において、低C/N(キャリア/ノイズ比)時の誤り率が良い変調信号、例えばBPSK変調信号を選んで、それをバースト信号とみなしてキャリア同期回路が構成できる。
【0042】
なお、本発明は上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、例えば上述した実施の形態ではPLLループを例示したが、この他コスタスループ等の種々のキャリア再生ループを使用できることは勿論である。
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、互いに異なる第1、第2のバースト長を有するキャリア同期用バースト信号を含む入力信号が供給され、入力信号の上記第1のバースト長のキャリア同期用信号部分と、上記入力信号の上記第2のバースト長のキャリア同期用信号部分とをそれぞれ選択して取り出し、取り出された第1、第2のキャリア同期用信号部分がそれぞれキャリア再生用の第1、第2のキャリア再生ループ系に送られて、これらの第1、第2のキャリア再生ループ系の各ループゲインに対して、バースト長が長いほど小さい重みを付けることにより、キャリア同期に要する時間が短縮され、高速で安定なキャリア同期回路を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態となるキャリア同期回路の構成を示すブロック図である。
【図2】入力複素信号の一例の実部となる正弦波を示す図である。
【図3】入力複素信号の一例の虚部となる余弦波を示す図である。
【図4】バースト状のキャリア信号及び切換制御信号の一例を示す図である。
【図5】従来のキャリア同期回路の一例を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施の形態におけるキャリア同期の際のPLL誤差信号を示す図である。
【図7】従来のキャリア同期回路におけるキャリア同期の際のPLL誤差信号を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態のキャリア同期回路を用いて構成される受信装置の一例を示すブロック図である。
【図9】BSディジタル放送の送信装置の一例を示す図である。
【図10】BSディジタル放送信号中のキャリア同期用のBPSK変調信号の部分の一例を示す図である。
【符号の説明】
11 複素乗算器、 12 振幅/位相分離回路、 21,41 切換スイッチ、 22,26,42,46 増幅器、 23,25,31,43,45 加算器、 24,33,34,44 単位遅延素子、 27 ループゲイン調整用の増幅器
Claims (12)
- キャリア同期のためのキャリア同期用信号部分を含み、該キャリア同期用信号部分の持続時間であるバースト長が互いに異なる第1、第2のバースト長を有する入力信号が供給され、
上記入力信号の上記第1のバースト長のキャリア同期用信号部分と、上記入力信号の上記第2のバースト長のキャリア同期用信号部分とをそれぞれ選択して取り出し、
上記取り出された第1、第2のキャリア同期用信号部分が入力されて、それぞれキャリア再生用の第1、第2のキャリア再生ループ系を構成し、
上記第1、第2のキャリア再生ループ系の各ループゲインに対して、上記第1、第2のバースト長に応じてバースト長が長いほど小さい重みを付けること
を特徴とするキャリア同期方法。 - 上記第1、第2のキャリア再生ループ系の各ループゲインに対する上記重みは、上記第1、第2のバースト長の逆数の比とすることを特徴とする請求項1記載のキャリア同期方法。
- 上記第1、第2のキャリア再生ループ系は、それぞれ周波数検出部と位相検出部とを有し、上記重み付けは周波数検出部側で行うことを特徴とする請求項1記載のキャリア同期方法。
- キャリア同期のためのキャリア同期用信号部分を含み、該キャリア同期用信号部分の持続時間であるバースト長が互いに異なる第1、第2のバースト長を有する入力信号が供給され、
上記入力信号の上記第1のバースト長のキャリア同期用信号部分と、上記入力信号の上記第2のバースト長のキャリア同期用信号部分とをそれぞれ選択して取り出す選択手段と、
上記選択手段で取り出された第1、第2のキャリア同期用信号部分が入力されて、それぞれキャリア再生用のループを構成する第1、第2のキャリア再生ループ系と、
上記第1、第2のキャリア再生ループ系の各ループゲインに対して、上記第1、第2のバースト長に応じてバースト長が長いほど小さい重みを付ける重み付け手段と
を有することを特徴とするキャリア同期回路。 - 上記第1、第2のキャリア再生ループ系の各ループゲインに対する上記重みは、上記第1、第2のバースト長の逆数の比とすることを特徴とする請求項4記載のキャリア同期回路。
- 上記選択手段により選択された上記入力信号の上記第1のバースト長のキャリア同期用信号部分に対してキャリア信号を検出する第1のキャリア検出回路と、
上記選択手段により選択された上記入力信号の上記第2のバースト長のキャリア同期用信号部分に対してキャリア信号を検出する第2のキャリア検出回路とを有し、
上記第1、第2のキャリア検出回路の少なくとも一方に上記重み付けのための増幅器を設けること
を特徴とする請求項4記載のキャリア同期回路。 - 上記第1、第2のキャリア検出回路は、それぞれ周波数検出部と位相検出部とを有し、上記重み付けのための増幅器は周波数検出部側に設けることを特徴とする請求項6記載のキャリア同期回路。
- 上記第1、第2のキャリア検出信号に対する上記重みは、上記第1、第2のバースト長の逆数の比とすることを特徴とする請求項6記載のキャリア同期回路。
- 情報信号が複数の変調方式のいずれかで変調されて送信された信号を受信し、得られた受信信号中の所定の変調方式の部分に対応する第1、第2のバースト長を有するキャリア同期信号部分に基づきキャリア信号を再生するキャリア同期手段と、
上記キャリア同期手段からのキャリア信号に基づいて上記受信信号を復号処理して上記情報信号を得る復号手段とを有し、
上記キャリア同期手段は、
上記受信信号の上記第1のバースト長のキャリア同期用信号部分と、上記受信信号の上記第2のバースト長のキャリア同期用信号部分とをそれぞれ選択して取り出す選択手段と、
上記選択手段で取り出された第1、第2のキャリア同期用信号部分が入力されて、それぞれキャリア再生用のループを構成する第1、第2のキャリア再生ループ系と、
上記第1、第2のキャリア再生ループ系の各ループゲインに対して、上記第1、第2のバースト長に応じてバースト長が長いほど小さい重みを付ける重み付け手段とを有してなる
ことを特徴とする信号処理装置。 - 上記第1、第2のキャリア再生ループ系の各ループゲインに対する上記重みは、上記第1、第2のバースト長の逆数の比とすることを特徴とする請求項9記載の信号処理装置。
- 上記第1、第2のキャリア再生ループ系は、それぞれ周波数検出部と位相検出部とを有し、上記重み付けは周波数検出部側で行うことを特徴とする請求項9記載の信号処理装置。
- 上記情報信号はBSディジタル放送信号であり、上記所定の変調方式はBPSK変調方式であることを特徴とする請求項9記載の信号処理装置。
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