JP4341254B2 - エポキシ樹脂組成物用硬化促進剤、エポキシ樹脂組成物および半導体装置 - Google Patents
エポキシ樹脂組成物用硬化促進剤、エポキシ樹脂組成物および半導体装置 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エポキシ樹脂組成物用硬化促進剤、エポキシ樹脂組成物および半導体装置に関するものである。更に詳しくは、かかる硬化促進剤を含み、硬化性、保存性、流動性が良好で、電気・電子材料分野に好適に使用されるエポキシ樹脂組成物、および、耐半田クラック性、耐湿信頼性に優れた半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
IC、LSI等の半導体素子を封止して半導体装置を得る方法としては、エポキシ樹脂組成物のトランスファー成形が低コスト、大量生産に適しているという点で広く用いられている。また、エポキシ樹脂や、硬化剤であるフェノール樹脂の改良により、半導体装置の特性、信頼性の向上が図られている。
【0003】
しかしながら、昨今の電子機器の小型化、軽量化、高性能化の市場動向において、半導体の高集積化も年々進んでおり、また、半導体装置の表面実装化も促進されている。これに伴い、半導体素子の封止に用いられるエポキシ樹脂組成物への要求は、益々厳しいものとなってきている。このため、従来からのエポキシ樹脂組成物では、解決できない(対応できない)問題も生じている。
【0004】
近年、半導体素子の封止に用いられる材料には、生産効率の向上を目的とした速硬化性の向上と、物流・保管時の取扱い性の向上を目的とした保存性の向上が求められるようになってきている。
【0005】
電気・電子材料分野向けのエポキシ樹脂組成物には、硬化時における樹脂の硬化反応を促進する目的で、第三ホスフィン類や第三ホスフィンとキノン類の付加反応物等が硬化促進剤として添加される(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
しかし、上記の硬化促進剤は、比較的低温領域から硬化促進効果を示すため、例えば硬化前のエポキシ樹脂組成物と他の成分とを混合する際にも、系内に発生する熱や外部から加えられる熱により、エポキシ樹脂組成物の硬化反応は一部進行する。また、混合終了後、このエポキシ樹脂組成物を常温で保管するにあたって、反応はさらに進行する。
【0007】
この部分的な硬化反応の進行は、エポキシ樹脂組成物が液体の場合には、粘度の上昇や流動性の低下をもたらし、また、エポキシ樹脂組成物が固体の場合には、粘性を発現させる。このような状態の変化は、エポキシ樹脂組成物内に厳密な意味で均一に生じるわけではない。このため、エポキシ樹脂組成物の各部分の硬化性には、ばらつきが生じる。
【0008】
これが原因となり、更に、高温で硬化反応を進行させ、エポキシ樹脂組成物を成形(その他賦形という概念も含んで、以下「成形」と記す)する際に、流動性低下による成形上の障害や、成形品の機械的、電気的あるいは化学的特性の低下をもたらす。
【0009】
したがって、このようにエポキシ樹脂組成物の保存性を低下させる原因となる硬化促進剤を用いる際には、諸成分混合時の厳密な品質管理、低温での保管や運搬、更に成形条件の厳密な管理が必須であり、取扱いが非常に煩雑である。
【0010】
この問題を解決すべく、低温での粘度、流動性の経時変化を抑え、賦形、成形時の加熱によってのみ、硬化反応を起こすような、いわゆる潜伏性硬化促進剤の研究が盛んになされている。その手段として、硬化促進剤の活性点をイオン対により保護することで、潜伏性を発現する研究がなされており、種々の有機酸とホスホニウムイオンとの塩構造を有する潜伏性硬化促進剤が提示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0011】
しかし、このホスホニウム塩を硬化促進剤として用いた系では、半導体装置の表面実装の採用により、次のような理由から耐半田クラック性、耐湿信頼性の低下という問題が生じる恐れがある。すなわち、これらホスホニウム塩を用いた材料系では、半導体装置における樹脂組成物の硬化物と半導体素子やリードフレーム等の基材との界面の密着性が十分でなく、半田浸漬あるいは半田リフロー工程で、急激に200℃以上の高温に曝された場合に、基材との界面で剥離が生じ易い。この界面の剥離は、半導体装置にクラックを誘起するとともに、耐湿信頼性の低下も招き易い。
【0012】
一方、種々のホスホニウムベタインの塩構造を有する潜伏性硬化促進剤も提示されている(例えば、特許文献3参照。)。しかし、このホスホニウムベタインの塩を硬化促進剤として用いた系では、近年の低分子エポキシ樹脂やフェノールアラルキル樹脂のような硬化剤を用いる半導体封止材料では、保存安定性が不十分であるという問題が生じている。
【0013】
【特許文献1】
特開平10−25335号公報(第2項)
【特許文献2】
特開2001−98053号公報(第3頁〜4頁)
【特許文献3】
米国特許第4171420号公報(第2頁〜3頁)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、エポキシ樹脂組成物に有用な硬化促進剤、保存性および硬化性、流動性が良好なエポキシ樹脂組成物、および、耐半田クラック性や耐湿信頼性に優れる半導体装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(7)の本発明により達成される。
【0017】
(1) エポキシ樹脂組成物に混合され、該エポキシ樹脂組成物の硬化反応を促進し得る硬化促進剤であって、
下記一般式(2)で表されることを特徴とするエポキシ樹脂組成物用硬化促進剤。
【化8】
[式中、R8、R9およびR10は、それぞれ、水素原子、メチル基、メトキシ基および水酸基から選択される1種を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。R11、R12、R13およびR14は、それぞれ、水素原子または炭素原子数1〜4で構成される炭化水素基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。]
【0018】
(2) 1分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物と、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物と、上記(1)に記載のエポキシ樹脂組成物用硬化促進剤とを含むことを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【0019】
(3) 前記1分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物は、下記一般式(3)で表されるエポキシ樹脂および下記一般式(4)で表されるエポキシ樹脂の少なくとも一方を主成分とする上記(2)に記載のエポキシ樹脂組成物。
【化9】
[式中、R15、R16、R17およびR18は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜6の鎖状もしくは環状アルキル基、フェニル基およびハロゲン原子から選択される1種を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。]
【化10】
[式中、R19〜R26は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基およびハロゲン原子から選択される1種を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。ただし、aは、1〜10の整数である。]
【0020】
(4) 前記1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物は、下記一般式(5)で表されるフェノール樹脂および下記一般式(6)で表されるフェノール樹脂の少なくとも一方を主成分とする上記(3)に記載のエポキシ樹脂組成物。
【化11】
[式中、R27〜R30は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基およびハロゲン原子から選択される1種を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。ただし、bは、1〜10の整数である。]
【化12】
[式中、R31〜R38は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基およびハロゲン原子から選択される1種を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。ただし、cは、1〜10の整数である。]
【0021】
(5) 無機充填材を含む上記(2)〜(4)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【0022】
(6) 前記無機充填材の含有量は、前記1分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物と、前記1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物との合計量100重量部あたり、200〜2400重量部である上記(5)に記載のエポキシ樹脂組成物。
【0023】
(7) 上記(6)に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物により電子部品を封止してなることを特徴とする半導体装置。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明者は、前述したような問題点を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、次のような▲1▼〜▲3▼の事項を見出し、本発明を完成するに至った。
【0025】
すなわち、▲1▼:特定構造のホスホニウムボレートが、エポキシ樹脂組成物の硬化反応を促進する硬化促進剤として極めて有用であることをした。
【0026】
▲2▼:かかるホスホニウムボレートをエポキシ樹脂組成物に硬化促進剤として混合することにより、エポキシ樹脂組成物が、硬化性、保存性および流動性に優れたものとなることを見出した。
【0027】
▲3▼:かかるエポキシ樹脂組成物の硬化物により半導体素子を封止してなる半導体装置が、高温に曝された場合であっても、クラックや剥離等の欠陥が発生し難いことを見出した。
【0028】
以下、本発明の硬化促進剤、エポキシ樹脂組成物および半導体装置の好適実施形態について説明する。
【0030】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、1分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物(A)と、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物(B)と、本発明の硬化促進剤であるホスホニウムボレート(C)と、無機充填材(D)とを含むものである。かかるエポキシ樹脂組成物は、硬化性、保存性および流動性に優れたものである。
【0031】
以下、各成分について、順次説明する。
[化合物(A)]
本発明に用いる1分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物(A)は、1分子内にエポキシ基を2個以上有するものであれば、何ら制限はない。
【0032】
この化合物(A)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノール型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂など、フェノール類やフェノール樹脂、ナフトール類などの水酸基にエピクロロヒドリンを反応させて製造するエポキシ樹脂、エポキシ化合物、または、その他、脂環式エポキシ樹脂のように、オレフィンを過酸を用いて酸化させエポキシ化したエポキシ樹脂や、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
これらの中でも、前記化合物(A)は、特に、前記一般式(4)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂および前記一般式(5)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂のいずれか一方または双方を主成分とするものを用いるのが好ましい。これにより、エポキシ樹脂組成物の成形時(例えば半導体装置の製造時等)の流動性が向上するとともに、得られた半導体装置の耐半田クラック性が、より向上する。
【0034】
ここで、「耐半田クラック性の向上」とは、得られた半導体装置が、例えば半田浸漬や半田リフロー工程等において、高温に曝された場合であっても、クラックや剥離等の欠陥の発生が生じ難くなることを言う。
【0035】
ここで、前記一般式(3)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂における置換基R15〜R18は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜6の鎖状もしくは環状アルキル基、フェニル基およびハロゲン原子から選択される1種を表し、これらは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0036】
これらの置換基R15〜R18の具体例としては、水素原子、フェニル基の他に、例えば、炭素数1〜6の鎖状もしくは環状アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子等が挙げられるが、これらの中でも、特に、メチル基であるのが好ましい。これにより、エポキシ樹脂組成物の溶融粘度が低下し、例えば、半導体装置の製造時等に、その取り扱いが容易となる。また、その硬化物は、吸水性が低減するので、得られた半導体装置は、その内部の部材の経時劣化(例えば断線の発生等)が好適に防止され、その耐湿信頼性が、より向上する。
【0037】
また、前記一般式(4)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂における置換基R19〜R26は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基およびハロゲン原子から選択される1種を表し、これらは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0038】
これらの置換基R19〜R26の具体例としては、それぞれ、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、塩素原子、臭素原子等が挙げられるが、これらの中でも、特に、水素原子またはメチル基であるのが好ましい。これにより、エポキシ樹脂組成物の溶融粘度が低下し、例えば半導体装置の製造時等に、その取り扱いが容易となるとともに、半導体装置の耐湿信頼性が、より向上する。
【0039】
また、前記一般式(4)におけるaは、エポキシ樹脂単位の平均の繰り返し数を表している。すなわち、aは1〜10の範囲が好ましく、1〜5程度であるのがより好ましい。aを前記範囲とすることにより、エポキシ樹脂組成物の流動性が、より向上する。
【0040】
[化合物(B)]
本発明に用いる1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物(B)は、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するものであり、前記化合物(A)の硬化剤として作用(機能)するものである。
【0041】
この化合物(B)としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノール樹脂、トリスフェノール樹脂、キシリレン変性ノボラック樹脂、テルペン変性ノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
これらの中でも、前記化合物(B)は、特に、前記一般式(5)で表されるフェノールアラルキル樹脂および前記一般式(6)で表されるビフェニルアラルキル樹脂のいずれか一方または双方を主成分とするものを用いるのが好ましい。これにより、エポキシ樹脂組成物の成形時(例えば半導体装置の製造時等)の流動性が向上するとともに、得られた半導体装置の耐半田クラック性や耐湿信頼性が、より向上する。
【0043】
ここで、前記一般式(5)で表されるフェノールアラルキル樹脂における置換基R27〜R30、および、前記一般式(6)で表されるビフェニルアラルキル樹脂における置換基R31〜R38は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基およびハロゲン原子から選択される1種を表し、これらは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0044】
これらの置換基R27〜R30およびR31〜R38の具体例としては、それぞれ、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、塩素原子、臭素原子等が挙げられるが、これらの中でも、特に、水素原子またはメチル基であるのが好ましい。かかるフェノール樹脂は、それ自体の溶融粘度が低いため、エポキシ樹脂組成物中に含有しても、エポキシ樹脂組成物の溶融粘度を低く保持することができ、その結果、例えば半導体装置の製造時等に、その取り扱いが容易となる。また、エポキシ樹脂組成物の硬化物(得られる半導体装置)の吸水性(吸湿性)が低減して耐湿信頼性がより向上するとともに、耐半田クラック性もより向上する。
【0045】
また、前記一般式(5)におけるb、および、前記一般式(6)におけるcは、それぞれ、フェノール樹脂単位の平均の繰り返し数を表している。すなわち、bおよびcは、それぞれ1〜10の範囲が好ましく、1〜5程度であるのがより好ましい。bおよびcを、それぞれ、前記範囲とすることにより、エポキシ樹脂組成物の流動性の低下が好適に防止または抑制される。
【0046】
[ホスホニウムボレート(C):本発明の硬化促進剤]
本発明に用いる硬化促進剤であるホスホニウムボレート(C)は、エポキシ樹脂組成物の硬化反応を促進し得る作用(機能)を有し、前記一般式(2)で表されるものである。
【0052】
前記一般式(2)におけるR 11 〜R 14 を有するフェニル基において、R 11 〜R 14 が水素原子または炭素原子数1〜4で構成される炭化水素基で置換された置換フェニル基の具体例としては、例えば、フェニル基、p−トリル基、p−フルオロフェニル基、p−(トリフルオロメチル)フェニル基、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基等が挙げられるが、これらの中でもフェニル基や、トリル基、p−エチルフェニル基およびp−ブチルフェニル基等の炭素数1〜4で構成される炭化水素基で置換された置換フェニル基であるのが熱安定性や保存安定性の面から、より好ましい。
【0054】
このようなホスホニウムボレート(C)、すなわち、本発明の硬化促進剤は、従来の硬化促進剤と比較し、硬化促進剤としての特性、特に硬化性、流動性、保存性が極めて優れるものである。
【0055】
本発明の硬化促進剤は、ホスホニウムカチオン部にプロトン供与性の水酸基を有するため、エポキシ樹脂のエポキシ基開環反応によるヒドロキシエーテル化反応がより促進され、ホスホニウムカチオン部にプロトン供与性水酸基を有さない従来のホスホニウムボレートと比較して高い硬化促進能を有し、優れた硬化性を付与する。
【0056】
また、硬化反応の開始種としてはたらくアニオンが極めて求核性の低いボレートアニオン構造であるため、低温域では容易に反応を促進しないため、流動性や保存安定性に優れた特性を同時に付与する。第三ホスフィンとp−ベンゾキノンとの付加物や通常のホスホニウムフェノキシド塩のように、ホスホニウムカチオンとフェノキシドアニオンの分子内塩または分子外塩では、フェノキシドアニオンのより高い求核性により、低温下における硬化促進反応が、より起きやすく、保存性は、より低いものとなる。
【0057】
ここで、ホスホニウムボレート(C)の合成方法、すなわち、前記一般式(2)で表される硬化促進剤の合成方法について説明する。
【0058】
本発明の硬化促進剤の合成は、第三ホスフィン(例えば、トリフェニルホスフィン、トリス(4−トリル)ホスフィン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)ホスフィン)とハロゲン化芳香族モノヒドロキシ化合物(例えば、2−ヨードフェノール、3−ヨードフェノール)を遷移金属触媒の存在下反応させることにより得られる、ホスホニウムハライド化合物を、第四ボレートのアルカリ金属塩(テトラフェニルボレートNa塩、テトラフェニルボレートNa塩、テトラキス(4−トリル)ボレートNa塩)を接触させる一般的な合成ルートによる方法で行うことができ、下記一般式(7)のように表される。かかる合成法により、容易かつ高収率で合成することが可能である。
【0059】
【化13】
[式中、R、R'は、それぞれ、置換もしくは無置換の芳香環または複素環を有する1価の有機基または1価の脂肪族基を表し、Arは置換もしくは無置換の2価の芳香族基を表す。Xは1価の陰イオンを表し、Mはアルカリ金属元素を表す。]
【0060】
第一段目の反応は、好ましくはニッケル、銅、コバルト、亜鉛、マンガン等の遷移金属ハロゲン塩を触媒として、高沸点のアルコール系溶媒中で、150〜180℃で加熱反応することによって行われる。これにより、置換反応を、より効率よく進行させることができる。用いる遷移金属触媒としては、例えば、塩化ニッケル、臭化ニッケル、塩化コバルト、臭化コバルト、塩化第二銅等が挙げられ、高沸点のアルコール系溶媒としては、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
第二段目の反応は、上記第一段目の反応で得られたホスホニウムハライドの溶液に、目的のボレート構造を有するボレートのアルカリ金属塩の溶液を室温下で滴下することにより容易に得ることができる。溶媒としてはメタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒が好ましく、収率を向上させる目的で、適宜、水等の再沈殿溶媒と混合させることもできる。
【0062】
なお、前記一般式(2)で表される硬化促進剤の合成方法は、上記の合成反応ルートが一般的であるが、これらに何ら限定されるものではない。
【0063】
[無機充填材(D)]
無機充填材(D)は、得られる半導体装置の補強を目的として、エポキシ樹脂組成物中に配合(混合)されるものであり、その種類については、特に制限はなく、一般に封止材料に用いられているものを使用することができる。
【0064】
この無機充填材(D)の具体例としては、例えば、溶融破砕シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、2次凝集シリカ、アルミナ、チタンホワイト、水酸化アルミニウム、タルク、クレー、ガラス繊維等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、無機充填材(D)としては、特に、溶融シリカであるのが好ましい。溶融シリカは、本発明の硬化促進剤との反応性に乏しいので、エポキシ樹脂組成物中に多量に配合(混合)した場合でも、エポキシ樹脂組成物の硬化反応が阻害されるのを防止することができる。また、無機充填材(D)として溶融シリカを用いることにより、得られる半導体装置の補強効果が向上する。
【0065】
また、無機充填材(D)の形状としては、例えば、粒状、塊状、鱗片状等のいかなるものであってもよいが、粒状(特に、球状)であるのが好ましい。
【0066】
この場合、無機充填材(D)の平均粒径は、1〜100μm程度であるのが好ましく、5〜35μm程度であるのがより好ましい。また、この場合、粒度分布は、広いものであるのが好ましい。これにより、無機充填材(D)の充填量(使用量)を多くすることができ、得られる半導体装置の補強効果が、より向上する。
【0067】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、ホスホニウムボレート(C)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、0.01〜10重量%程度であるのが好ましく、0.1〜1重量%程度であるのが、より好ましい。これにより、エポキシ樹脂組成物の硬化性、保存性、流動性、他特性がバランスよく発揮される。
【0068】
また、前記1分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物(A)と、前記1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物(B)との配合比率も、特に限定されないが、前記化合物(A)のエポキシ基1モルに対し、前記化合物(B)のフェノール性水酸基が0.5〜2モル程度となるように用いるのが好ましく、0.7〜1.5モル程度となるように用いるのが、より好ましい。これにより、エポキシ樹脂組成物の諸特性のバランスを好適なものに維持しつつ、諸特性が、より向上する。
【0069】
また、無機充填材(D)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、前記化合物(A)と前記化合物(B)との合計量100重量部あたり、200〜2400重量部程度であるのが好ましく、400〜1400重量部程度であるのが、より好ましい。無機充填材(D)の含有量が前記下限値未満の場合、無機充填材(D)による補強効果が充分に発現しないおそれがあり、一方、無機充填材(D)の含有量が前記上限値を超えた場合、エポキシ樹脂組成物の流動性が低下し、エポキシ樹脂組成物の成形時(例えば半導体装置の製造時等)に、充填不良等が生じるおそれがある。
【0070】
なお、無機充填材(D)の含有量(配合量)が、前記化合物(A)と前記化合物(B)との合計量100重量部あたり、400〜1400重量部であれば、エポキシ樹脂組成物の硬化物の吸湿率が低くなり、半田クラックの発生を防止することができる。かかるエポキシ樹脂組成物は、加熱溶融時の流動性も良好であるため、半導体装置内部の金線変形を引き起こすことが好適に防止される。
【0071】
また、無機充填材(D)の含有量(配合量)は、前記化合物(A)、前記化合物(B)や無機充填材(D)自体の比重を、それぞれ考慮し、重量部を体積%に換算して取り扱うようにしてもよい。
【0072】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物中には、前記(A)〜(D)の化合物(成分)の他に、必要に応じて、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のカップリング剤、カーボンブラック等の着色剤、臭素化エポキシ樹脂、酸化アンチモン、リン化合物等の難燃剤、シリコーンオイル、シリコーンゴム等の低応力成分、天然ワックス、合成ワックス、高級脂肪酸またはその金属塩類、パラフィン等の離型剤、酸化防止剤等の各種添加剤を配合(混合)するようにしてもよい。
【0073】
また、本発明において硬化促進剤として機能するホスホニウムボレート(C)の特性を損なわない範囲で、エポキシ樹脂組成物中には、例えば、トリフェニルホスフィン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−7−ウンデセン、2−メチルイミダゾール等の他の公知の触媒を配合(混合)するようにしても、何ら問題はない。
【0074】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、前記(A)〜(D)の化合物(成分)、および、必要に応じて、その他の添加剤等を、ミキサーを用いて常温混合し、熱ロール、加熱ニーダー等を用いて加熱混練し、冷却、粉砕することにより得られる。
【0075】
得られたエポキシ樹脂組成物をモールド樹脂として用いて、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の成形方法で硬化成形することにより、半導体素子等の電子部品を封止する。これにより、本発明の半導体装置が得られる。
【0076】
本発明の半導体装置の形態としては、特に限定されないが、例えば、SIP(Single Inline Package)、HSIP(SIP with Heatsink)、ZIP(Zig-zag Inline Package)、DIP(Dual Inline Package)、SDIP(Shrink Dual Inline Package)、SOP(Small Outline Package)、SSOP(Shrink Small Outline Package)、TSOP(Thin Small Outline Package)、SOJ(Small Outline J-leaded Package)、QFP(Quad Flat Package)、QFP(FP)(QFP Fine Pitch)、TQFP(Thin Quad Flat Package)、QFJ(PLCC)(Quad Flat J-leaded Package)、BGA(Ball Grid Array)等が挙げられる。
【0077】
このようにして得られた本発明の半導体装置は、耐半田クラック性および耐湿信頼性に優れる。その理由は、本発明の硬化促進剤であるホスホニウムボレート(C)の半田条件(例えば半田リフロー工程等)における安定性に関係すると考えられる。
【0078】
本発明の硬化促進剤であるホスホニウムボレート(C)は、熱的に安定であり、また、ホスホニウムカチオン部がエポキシ樹脂と反応性を有する水酸基をもち、ボレートアニオン部がかさ高いため、解離した硬化促進剤由来の遊離イオンのイオン移動度が低いため、耐半田クラック性および耐湿信頼性に優れたものとなる。
【0079】
なお、本実施形態では、本発明の硬化促進剤(前記一般式(1)〜一般式(2)で表されるホスホニウムボレート(C))を、エポキシ樹脂組成物に用いる場合を代表して説明したが、本発明の硬化促進剤は、ホスフィンまたはホスホニウム塩を硬化促進剤として好適に使用し得る熱硬化性樹脂組成物に対して使用可能である。かかる熱硬化性樹脂組成物としては、例えばエポキシ化合物、マレイミド化合物、シアネート化合物、イソシアネート化合物、アクリレート化合物、または、アルケニルおよびアルキニル化合物等を含む樹脂組成物が挙げられる。
【0080】
また、本発明の硬化促進剤は、熱硬化性樹脂組成物の他、例えば反応硬化性樹脂組成物、光硬化性樹脂組成物、嫌気硬化性樹脂組成物等の各種硬化性樹脂組成物に対しても使用可能である。
【0081】
また、本実施形態では、本発明のエポキシ樹脂組成物を、半導体装置の封止材料として用いる場合について説明したが、本発明のエポキシ樹脂組成物の用途としては、これに限定されるものではない。また、エポキシ樹脂組成物の用途等に応じて、本発明のエポキシ樹脂組成物では、無機充填材の混合(配合)を省略することもできる。
【0082】
以上、本発明の硬化促進剤、エポキシ樹脂組成物および半導体装置の好適実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0083】
【実施例】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
【0084】
まず、硬化促進剤として使用する化合物C1〜C7およびトリフェニルホスフィンを用意した。
【0085】
[硬化促進剤の合成]
各化合物C1〜C5は、それぞれ、以下のようにして合成した。
【0086】
(化合物C1の合成)
冷却管および撹拌装置付きのセパラブルフラスコ(容量:200mL)に、2−ヨードフェノール8.80g(0.040mol)、トリフェニルホスフィン11.50g(0.044mol)および塩化ニッケル0.39g(3mmol)、エチレングリコール25mL仕込み、攪拌下160℃で加熱反応した。反応液を冷却し、予めテトラフェニルボレートのナトリウム塩13.69g(0.040mol)を40mLのエタノールに溶解した溶液を徐々に滴下すると結晶が析出した。析出した結晶を濾過、水洗、真空乾燥し淡黄白色結晶21.03gを得た。
【0087】
この化合物をC1とした。化合物C1を、1H−NMR、マススペクトル、元素分析で分析した結果、下記式(8)で表される目的のホスホニウムボレートであることが確認された。得られた化合物C1の収率は、78%であった。
【0088】
【化14】
【0089】
(化合物C2の合成)
冷却管および撹拌装置付きのセパラブルフラスコ(容量:200mL)に、3−ヨードフェノール8.80g(0.040mol)、トリフェニルホスフィン11.50g(0.044mol)および塩化ニッケル0.39g(3mmol)、エチレングリコール25mL仕込み、攪拌下160℃で加熱反応した。反応液を冷却し、予めテトラフェニルボレートのナトリウム塩13.69g(0.040mol)を40mLのエタノールに溶解した溶液を徐々に滴下すると結晶が析出した。析出した結晶を濾過、水洗、真空乾燥し淡黄白色結晶19.10gを得た。
【0090】
この化合物をC2とした。化合物C2を、1H−NMR、マススペクトル、元素分析で分析した結果、下記式(9)で表される目的のホスホニウムボレートであることが確認された。得られた化合物C2の収率は、71%であった。
【0091】
【化15】
【0092】
(化合物C3の合成)
冷却管および撹拌装置付きのセパラブルフラスコ(容量:200mL)に、2−ヨードフェノール8.80g(0.040mol)、トリフェニルホスフィン11.50g(0.044mol)および塩化ニッケル0.39g(3mmol)、エチレングリコール25mL仕込み、攪拌下160℃で加熱反応した。反応液を冷却し、予めテトラキス(4−トリル)ボレートのナトリウム塩15.93g(0.040mol)を40mLのエタノールに溶解した溶液を徐々に滴下すると結晶が析出した。析出した結晶を濾過、水洗、真空乾燥し淡黄白色結晶23.78gを得た。
【0093】
この化合物をC3とした。化合物C3を、1H−NMR、マススペクトル、元素分析で分析した結果、下記式(10)で表される目的のホスホニウムボレートであることが確認された。得られた化合物C1の収率は、81%であった。
【0094】
【化16】
【0095】
(化合物C4の合成)
冷却管および撹拌装置付きのセパラブルフラスコ(容量:200mL)に、2−ヨードフェノール8.80g(0.040mol)、トリス(4−トリル)ホスフィン13.39g(0.044mol)および塩化ニッケル0.39g(3mmol)、エチレングリコール25mL仕込み、攪拌下160℃で加熱反応した。反応液を冷却し、予めテトラフェニルボレートのナトリウム塩13.69g(0.040mol)を40mLのエタノールに溶解した溶液を徐々に滴下すると結晶が析出した。析出した結晶を濾過、水洗、真空乾燥し暗白色結晶21.86gを得た。
【0096】
この化合物をC4とした。化合物C4を、1H−NMR、マススペクトル、元素分析で分析した結果、下記式(11)で表される目的のホスホニウムボレートであることが確認された。得られた化合物C4の収率は、76%であった。
【0097】
【化17】
【0098】
(化合物C5の合成)
冷却管および撹拌装置付きのセパラブルフラスコ(容量:200mL)に、2−ヨードフェノール8.80g(0.040mol)、トリス(4−ヒドロキシフェニル)ホスフィン13.64g(0.044mol)および塩化ニッケル0.39g(3mmol)、エチレングリコール25mL仕込み、攪拌下160℃で加熱反応した。反応液を冷却し、予めテトラフェニルボレートのナトリウム塩13.69g(0.040mol)を40mLのエタノールに溶解した溶液を徐々に滴下すると結晶が析出した。析出した結晶を濾過、水洗、真空乾燥し淡褐色結晶16.24gを得た。
【0099】
この化合物をC5とした。化合物C5を、1H−NMR、マススペクトル、元素分析で分析した結果、下記式(12)で表される目的のホスホニウムボレートであることが確認された。得られた化合物C5の収率は、56%であった。
【0100】
【化18】
【0101】
[エポキシ樹脂組成物の調製および半導体装置の製造]
以下のようにして、前記化合物C1〜C7およびトリフェニルホスフィンを含むエポキシ樹脂組成物を調製し、半導体装置を製造した。
【0102】
(実施例1)
まず、化合物(A)として下記式(13)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製YX−4000HK)、化合物(B)として下記式(14)で表されるフェノールアラルキル樹脂(ただし、繰り返し単位数:3は、平均値を示す。三井化学(株)製XLC−LL)、硬化促進剤(ホスホニウム分子内塩(C))として化合物C1、無機充填材(D)として溶融球状シリカ(平均粒径15μm)、その他の添加剤としてカーボンブラック、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂およびカルナバワックスを、それぞれ用意した。
【0103】
【化19】
<式(13)の化合物の物性>
融点 :105℃
エポキシ当量 :193
150℃のICI溶融粘度:0.15poise
【0104】
【化20】
<式(14)の化合物の物性>
軟化点 :77℃
水酸基当量 :172
150℃のICI溶融粘度:3.6poise
【0105】
次に、前記ビフェニル型エポキシ樹脂:52重量部、前記フェノールアラルキル樹脂:48重量部、化合物C1:1.91重量部、溶融球状シリカ:730重量部、カーボンブラック:2重量部、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂:2重量部、カルナバワックス:2重量部を、まず室温で混合し、次いで熱ロールを用いて95℃で8分間混練した後、冷却粉砕して、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得た。
【0106】
次に、このエポキシ樹脂組成物をモールド樹脂として用い、100ピンTQFPのパッケージ(半導体装置)を8個、および、16ピンDIPのパッケージ(半導体装置)を15個、それぞれ製造した。
【0107】
100ピンTQFPは、金型温度175℃、注入圧力7.4MPa、硬化時間2分でトランスファーモールド成形し、175℃、8時間で後硬化させることにより製造した。
【0108】
なお、この100ピンTQFPのパッケージサイズは、14×14mm、厚み1.4mm、シリコンチップ(半導体素子)サイズは、8.0×8.0mm、リードフレームは、42アロイ製とした。
【0109】
また、16ピンDIPは、金型温度175℃、注入圧力6.8MPa、硬化時間2分でトランスファーモールド成形し、175℃、8時間で後硬化させることにより製造した。
【0110】
なお、この16ピンDIPのパッケージサイズは、6.4×19.8mm、厚み3.5mm、シリコンチップ(半導体素子)サイズは、3.5×3.5mm、リードフレームは、42アロイ製とした。
【0111】
(実施例2)
まず、化合物(A)として下記式(15)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(ただし、繰り返し単位数:3は、平均値を示す。日本化薬(株)製NC−3000P)、化合物(B)として下記式(16)で表されるビフェニルアラルキル型フェノール樹脂(ただし、繰り返し単位数:3は、平均値を示す。明和化成(株)製MEH−7851SS)、硬化促進剤(ホスホニウム分子内塩(C))として化合物C1、無機充填材(D)として溶融球状シリカ(平均粒径15μm)、その他の添加剤としてカーボンブラック、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂およびカルナバワックスを、それぞれ用意した。
【0112】
【化21】
<式(15)の化合物の物性>
軟化点 :60℃
エポキシ当量 :272
150℃のICI溶融粘度:1.3poise
【0113】
【化22】
<式(16)の化合物の物性>
軟化点 :68℃
水酸基当量 :199
150℃のICI溶融粘度:0.9poise
【0114】
次に、前記ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂:57重量部、前記ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂:43重量部、化合物C1:1.91重量部、溶融球状シリカ:650重量部、カーボンブラック:2重量部、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂:2重量部、カルナバワックス:2重量部を、まず室温で混合し、次いで熱ロールを用いて105℃で8分間混練した後、冷却粉砕して、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得た。
【0115】
次に、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例1と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0116】
(実施例3)
化合物C1に代わり、化合物C2:1.91重量部を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例1と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0117】
(実施例4)
化合物C1に代わり、化合物C2:1.91重量部を用いた以外は、前記実施例2と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例2と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0118】
(実施例5)
化合物C1に代わり、化合物C3:1.98重量部を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例1と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0119】
(実施例6)
化合物C1に代わり、化合物C3:1.98重量部を用いた以外は、前記実施例2と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例2と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0120】
(実施例7)
化合物C1に代わり、化合物C4:2.15重量部を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例1と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0121】
(実施例8)
化合物C1に代わり、化合物C4:2.15重量部を用いた以外は、前記実施例2と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例2と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0122】
(実施例9)
化合物C1に代わり、化合物C5:2.29重量部を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例1と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0123】
(実施例10)
化合物C1に代わり、化合物C5:2.29重量部を用いた以外は、前記実施例2と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例2と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0124】
(比較例1)
化合物C1に代わり、トリフェニルホスフィン−ベンゾキノン付加物:1.85重量部を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例1と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0125】
(比較例2)
化合物C1に代わり、トリフェニルホスフィン−ベンゾキノン付加物:1.85重量部を用いた以外は、前記実施例2と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例2と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0126】
(比較例3)
化合物C1に代わり、トリフェニルホスフィン:1.00重量部を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例1と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0127】
(比較例4)
化合物C1に代わり、トリフェニルホスフィン:1.00重量部を用いた以外は、前記実施例2と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例2と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0128】
[特性評価]
各実施例および各比較例で得られたエポキシ樹脂組成物の特性評価▲1▼〜▲3▼、および、各実施例および各比較例で得られた半導体装置の特性評価▲4▼および▲5▼を、それぞれ、以下のようにして行った。
【0129】
▲1▼:スパイラルフロー
EMMI−I−66に準じたスパイラルフロー測定用の金型を用い、金型温度175℃、注入圧力6.8MPa、硬化時間2分で測定した。
【0130】
このスパイラルフローは、流動性のパラメータであり、数値が大きい程、流動性が良好であることを示す。
【0131】
▲2▼:硬化トルク
キュラストメーター(オリエンテック(株)製、JSRキュラストメーターIV PS型)を用い、175℃、45秒後のトルクを測定した。
この硬化トルクは、数値が大きい程、硬化性が良好であることを示す。
【0132】
▲3▼:フロー残存率
得られたエポキシ樹脂組成物を、大気中30℃で1週間保存した後、前記▲1▼と同様にしてスパイラルフローを測定し、調製直後のスパイラルフローに対する百分率(%)を求めた。
このフロー残存率は、数値が大きい程、保存性が良好であることを示す。
【0133】
▲4▼:耐半田クラック性
100ピンTQFPを85℃、相対湿度85%の環境下で168時間放置し、その後、260℃の半田槽に10秒間浸漬した。
【0134】
その後、顕微鏡下に、外部クラックの発生の有無を観察し、クラック発生率=(クラックが発生したパッケージ数)/(全パッケージ数)×100として、百分率(%)で表示した。
【0135】
また、シリコンチップとエポキシ樹脂組成物の硬化物との剥離面積の割合を、超音波探傷装置を用いて測定し、剥離率=(剥離面積)/(シリコンチップの面積)×100として、8個のパッケージの平均値を求め、百分率(%)で表示した。
【0136】
これらのクラック発生率および剥離率は、それぞれ、数値が小さい程、耐半田クラック性が良好であることを示す。
【0137】
▲5▼:耐湿信頼性
16ピンDIPに、125℃、相対湿度100%の水蒸気中で、20Vの電圧を印加し、断線不良を調べた。15個のパッケージのうち8個以上に不良が出るまでの時間を不良時間とした。
【0138】
なお、測定時間は、最長で500時間とし、その時点で不良パッケージ数が8個未満であったものは、不良時間を500時間超(>500)と示す。
この不良時間は、数値が大きい程、耐湿信頼性に優れることを示す。
各特性評価▲1▼〜▲5▼の結果を、表1に示す。
【0139】
【表1】
【0140】
表1に示すように、実施例1〜10で得られたエポキシ樹脂組成物(本発明のエポキシ樹脂組成物)は、いずれも、硬化性、保存性、流動性が極めて良好であり、さらに、この硬化物で封止された各実施例のパッケージ(本発明の半導体装置)は、いずれも、耐半田クラック性、耐湿信頼性が良好なものであった。
【0141】
これに対し、比較例1および比較例2で得られたエポキシ樹脂組成物は、いずれも、保存性に劣り、これらの比較例で得られたパッケージは、いずれも、耐半田クラック性に劣るとともに、耐湿信頼性が極めて低いものであった。また、比較例3および比較例4で得られたエポキシ樹脂組成物は、いずれも、硬化性、保存性、流動性が極めて悪く、これらの比較例で得られたパッケージは、いずれも、耐半田クラック性に劣るものであった。
【0142】
(実施例11〜15、比較例5および6)
化合物(A)として、前記式(13)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂:26重量部、前記式(15)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂:28.5重量部、および、化合物(B)として、前記式(14)で表されるフェノールアラルキル樹脂:45.5重量部を配合した以外は、それぞれ、前記実施例1、3、5、7、9、比較例1、3と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、パッケージ(半導体装置)を製造した。
【0143】
各実施例11〜15、比較例5および6で得られたエポキシ樹脂組成物およびパッケージの特性評価を、前記と同様にして行ったところ、前記表1とほぼ同様の結果が得られた。
【0144】
(実施例16〜20、比較例7および8)
化合物(A)として、前記式(13)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂:54.5重量部、化合物(B)として、前記式(14)で表されるフェノールアラルキル樹脂:24重量部、および、前記式(16)で表されるビフェニルアラルキル型フェノール樹脂:21.5重量部を配合した以外は、それぞれ、前記実施例1、3、5、7、9、比較例1、3と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、パッケージ(半導体装置)を製造した。
【0145】
各実施例16〜20、比較例7および8で得られたエポキシ樹脂組成物およびパッケージの特性評価を、前記と同様にして行ったところ、前記表1とほぼ同様の結果が得られた。
【0146】
(実施例21〜25、比較例9)
ジアミノジフェニルメタンのビスマレイミド樹脂(ケイ・アイ化成製BMI−H)100重量部に、硬化促進剤として化合物C1〜C5およびトリフェニルホスフィンを、それぞれ、表2に示す配合比で配合し、これらを均一に混合した樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得た。
【0147】
実施例21〜25および比較例9で得られた樹脂組成物に対して、175℃におけるゲル化時間を測定した。
この結果を、各硬化促進剤の配合比と合わせて、表2に示す。
【0148】
【表2】
【0149】
表2に示すように、実施例21〜25で得られた樹脂組成物は、いずれも、速やかに硬化に至るものであった。これに対し、比較例9で得られた樹脂組成物は、硬化には至らず、ミクロゲル化した。
【0150】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の硬化促進剤によれば、エポキシ樹脂組成物を速やかに硬化させることができ、エポキシ樹脂組成物の硬化物が、高温に曝された場合であっても、この硬化物に欠陥が生じるのを好適に防止することができる。
【0151】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化性、保存性、流動性に優れる。
また、本発明の半導体装置は、高温に曝された場合であっても、クラックや剥離等の欠陥が生じ難く、また、吸湿に伴う経時劣化も発生し難い。
Claims (7)
- 1分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物と、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物と、請求項1記載のエポキシ樹脂組成物用硬化促進剤とを含むことを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
- 前記1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物は、下記一般式(5)で表されるフェノール樹脂および下記一般式(6)で表されるフェノール樹脂の少なくとも一方を主成分とする請求項2または3に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 無機充填材を含む請求項2〜4のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
- 前記無機充填材の含有量は、前記1分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物と、前記1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物との合計量100重量部あたり、200〜2400重量部である請求項5に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 請求項6に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物により電子部品を封止してなることを特徴とする半導体装置。
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