JP4341247B2 - エポキシ樹脂組成物用硬化促進剤、エポキシ樹脂組成物および半導体装置 - Google Patents
エポキシ樹脂組成物用硬化促進剤、エポキシ樹脂組成物および半導体装置 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エポキシ樹脂組成物用硬化促進剤、エポキシ樹脂組成物および半導体装置に関するものである。更に詳しくは、かかる硬化促進剤を含み、硬化性、保存性、流動性が良好で、電気・電子材料分野に好適に使用されるエポキシ樹脂組成物、および、耐半田クラック性、耐湿信頼性に優れた半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
IC、LSI等の半導体素子を封止して半導体装置を得る方法としては、エポキシ樹脂組成物のトランスファー成形が低コスト、大量生産に適しているという点で広く用いられている。また、エポキシ樹脂や、硬化剤であるフェノール樹脂の改良により、半導体装置の特性、信頼性の向上が図られている。
【0003】
しかしながら、昨今の電子機器の小型化、軽量化、高性能化の市場動向において、半導体の高集積化も年々進んでおり、また、半導体装置の表面実装化も促進されている。これに伴い、半導体素子の封止に用いられるエポキシ樹脂組成物への要求は、益々厳しいものとなってきている。このため、従来からのエポキシ樹脂組成物では、解決できない(対応できない)問題も生じている。
【0004】
近年、半導体素子の封止に用いられる材料には、生産効率の向上を目的とした速硬化性の向上と、物流・保管時の取扱い性の向上を目的とした保存性の向上が求められるようになってきている。
【0005】
電気・電子材料分野向けのエポキシ樹脂組成物には、硬化時における樹脂の硬化反応を促進する目的で、ホスフィン類、ホスホニウム塩類や、トリフェニルホスフィンとp−ベンゾキノンの付加反応物に代表されるホスホベタイン類などの、リン系硬化促進剤を添加するのが一般的である。
【0006】
ところで、前述のリン系硬化促進剤は、硬化促進効果を示す温度領域が比較的低温にまで及ぶ。このため、例えば硬化前のエポキシ樹脂組成物と他の成分とを混合する際にも、系内に発生する熱や外部から加えられる熱により、エポキシ樹脂組成物の硬化反応は一部進行する。また、混合終了後、このエポキシ樹脂組成物を常温で保管するにあたって、反応はさらに進行する。
【0007】
この部分的な硬化反応の進行は、エポキシ樹脂組成物が液体の場合には、粘度の上昇や流動性の低下をもたらし、また、エポキシ樹脂組成物が固体の場合には、粘性を発現させる。このような状態の変化は、エポキシ樹脂組成物内に厳密な意味で均一に生じるわけではないため、エポキシ樹脂組成物の各部分の硬化性には、ばらつきが生じる。
【0008】
これが原因となり、更に、高温で硬化反応を進行させ、エポキシ樹脂組成物を成形(その他賦形という概念も含んで、以下「成形」と記す)する際に、流動性低下による成形上の障害や、成形品の機械的、電気的あるいは化学的特性の低下をもたらす。
【0009】
したがって、このようにエポキシ樹脂組成物の保存性を低下させる原因となる硬化促進剤を用いる際には、諸成分混合時の厳密な品質管理、低温での保管や運搬、更に成形条件の厳密な管理が必須であり、取扱いが非常に煩雑である。
【0010】
また、前述のリン系硬化促進剤を用いたエポキシ樹脂組成物の硬化物により、半導体素子等を封止してなる半導体装置では、半導体装置の表面実装の採用により、耐半田クラック性、耐湿信頼性の低下という問題も生じている。これは、半導体装置は、半田浸漬あるいは半田リフロー工程で、急激に200℃以上の高温に曝されるため、エポキシ樹脂組成物の硬化物と半導体装置内部に存在する半導体素子やリードフレーム等の基材との界面の密着性が不十分であると、この界面で剥離が生じるためであり、この剥離が生じると、半導体装置にクラックを誘起するとともに、耐湿信頼性の低下も招く。また、エポキシ樹脂組成物中に揮発成分が存在すれば、それが爆発的に気化する際の応力により、半導体装置にクラックが発生しやすいのが、現状である。
【0011】
以上のような問題を解決すべく、一般的なリン系硬化促進剤とある種の無機化合物を併用することで、エポキシ樹脂組成物の特性を向上させる方法として、例えば、トリフェニルホスフィンとp−ベンゾキノンの付加反応物とホウ酸またはホウ酸エステルとを併用する方法や、テトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレートと金属錯体とを併用する方法が、試みられている(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)。しかしながら、これらは、昨今のますます厳しくなる要求レベルに対して、決して満足のいくものではない。
【0012】
【特許文献1】
特開平3−40459号公報(第2−4頁)
【特許文献2】
特開平10−265550号公報(第5頁)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、エポキシ樹脂組成物に有用な硬化促進剤、かかる硬化促進剤の製造方法、硬化性、保存性や流動性が良好なエポキシ樹脂組成物、および、耐半田クラック性や耐湿信頼性に優れる半導体装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(17)の本発明により達成される。
(1) エポキシ樹脂組成物に混合され、該エポキシ樹脂組成物の硬化反応を促進し得る硬化促進剤であって、
トリエチルボロン、トリイソブチルボロン、トリターシャリーブチルボロン、トリビニルボロン、トリフェニルボロン、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリイソプロピル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリフェニル、カテコールボラン、フェニルホウ酸、トリスアセチルアセトナートボロン、トリスベンゾイロキシボロン、トリスナフトイロキシボロン、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリターシャリーブチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリイソブトキシアルミニウム、トリフェノキシアルミニウム、ジフェノキシメチルアルミニウム、トリスアセチルアセトナートアルミニウム、エチルアルミニウムジクロライド、メチルアルミニウム−ビス(2,6−ジ−tブチル−4−メチルフェノキシド)、テトライソプロポキシチタン、テトラフェノキシチタン、ジイソプロポキシ・ビスアセチルアセトナトチタン、ビス(1,2ベンゼンジオキシ)チタン、ビス(2,2'ビフェニルジオキシ)チタン、ビス(2−オキシベンゾイロキシ)チタン、テトラターシャリーブトキシチタン、スカンジウムトリフラートから選ばれる、ホウ素、アルミニウム、チタン、スカンジウムのいずれかの元素を含むルイス酸と下記一般式(1)で表されるホスホベタイン化合物が化学結合してなる、エポキシ樹脂組成物用硬化促進剤。
【化11】
[式中、R1、R2およびR3は、それぞれ、置換もしくは無置換の1価の芳香族基、または、置換もしくは無置換の1価のアルキル基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。Arは、水酸基以外の置換基により置換もしくは無置換の2価の芳香族基を表す。]
(2) エポキシ樹脂組成物に混合され、該エポキシ樹脂組成物の硬化反応を促進し得る硬化促進剤であって、
トリエチルボロン、トリイソブチルボロン、トリターシャリーブチルボロン、トリビニルボロン、トリフェニルボロン、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリイソプロピル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリフェニル、カテコールボラン、フェニルホウ酸、トリスアセチルアセトナートボロン、トリスベンゾイロキシボロン、トリスナフトイロキシボロン、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリターシャリーブチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリイソブトキシアルミニウム、トリフェノキシアルミニウム、ジフェノキシメチルアルミニウム、トリスアセチルアセトナートアルミニウム、エチルアルミニウムジクロライド、メチルアルミニウム−ビス(2,6−ジ−tブチル−4−メチルフェノキシド)、テトライソプロポキシチタン、テトラフェノキシチタン、ジイソプロポキシ・ビスアセチルアセトナトチタン、ビス(1,2ベンゼンジオキシ)チタン、ビス(2,2'ビフェニルジオキシ)チタン、ビス(2−オキシベンゾイロキシ)チタン、テトラターシャリーブトキシチタン、スカンジウムトリフラートから選ばれる、ホウ素、アルミニウム、チタン、スカンジウムのいずれかの元素を含むルイス酸と下記一般式(2)で表されるホスホベタイン化合物が化学結合してなる、エポキシ樹脂組成物用硬化促進剤。
【化12】
[式中、Ar1、Ar2およびAr3は、それぞれ、置換もしくは無置換の1価の芳香族基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。Ar4は、水酸基以外の置換基により置換もしくは無置換の2価の芳香族基を表す。]
(3) エポキシ樹脂組成物に混合され、該エポキシ樹脂組成物の硬化反応を促進し得る硬化促進剤であって、
トリエチルボロン、トリイソブチルボロン、トリターシャリーブチルボロン、トリビニルボロン、トリフェニルボロン、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリイソプロピル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリフェニル、カテコールボラン、フェニルホウ酸、トリスアセチルアセトナートボロン、トリスベンゾイロキシボロン、トリスナフトイロキシボロン、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリターシャリーブチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリイソブトキシアルミニウム、トリフェノキシアルミニウム、ジフェノキシメチルアルミニウム、トリスアセチルアセトナートアルミニウム、エチルアルミニウムジクロライド、メチルアルミニウム−ビス(2,6−ジ−tブチル−4−メチルフェノキシド)、テトライソプロポキシチタン、テトラフェノキシチタン、ジイソプロポキシ・ビスアセチルアセトナトチタン、ビス(1,2ベンゼンジオキシ)チタン、ビス(2,2'ビフェニルジオキシ)チタン、ビス(2−オキシベンゾイロキシ)チタン、テトラターシャリーブトキシチタン、スカンジウムトリフラートから選ばれる、ホウ素、アルミニウム、チタン、スカンジウムのいずれかの元素を含むルイス酸と下記一般式(3)で表されるホスホベタイン化合物が化学結合してなる、エポキシ樹脂組成物用硬化促進剤。
【化13】
[式中、R4、R5およびR6は、それぞれ、水素原子、メチル基、メトキシ基および水酸基から選択される1種を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。]
(4) 1分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物と、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物と、上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物用硬化促進剤とを含むことを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
(5) 1分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物と、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物と、トリエチルボロン、トリイソブチルボロン、トリターシャリーブチルボロン、トリビニルボロン、トリフェニルボロン、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリイソプロピル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリフェニル、カテコールボラン、フェニルホウ酸、トリスアセチルアセトナートボロン、トリスベンゾイロキシボロン、トリスナフトイロキシボロン、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリターシャリーブチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリイソブトキシアルミニウム、トリフェノキシアルミニウム、ジフェノキシメチルアルミニウム、トリスアセチルアセトナートアルミニウム、エチルアルミニウムジクロライド、メチルアルミニウム−ビス(2,6−ジ−tブチル−4−メチルフェノキシド)、テトライソプロポキシチタン、テトラフェノキシチタン、ジイソプロポキシ・ビスアセチルアセトナトチタン、ビス(1,2ベンゼンジオキシ)チタン、ビス(2,2'ビフェニルジオキシ)チタン、ビス(2−オキシベンゾイロキシ)チタン、テトラターシャリーブトキシチタン、スカンジウムトリフラートから選ばれる、ホウ素、アルミニウム、チタン、スカンジウムのいずれかの元素を含むルイス酸、および前記一般式(1)ないし(3)で表される化合物から選ばれるホスホベタイン化合物を含有することを特徴とする、エポキシ樹脂組成物。
(6) 前記1分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物は、下記一般式(4)で表されるエポキシ樹脂および下記一般式(5)で表されるエポキシ樹脂の少なくとも一方を主成分とする上記(4)または(5)に記載のエポキシ樹脂組成物。
【化14】
[式中、R7、R8、R9およびR10は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜6の鎖状もしくは環状アルキル基、フェニル基およびハロゲン原子から選択される1種を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【化15】
[式中、R11〜R18は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基およびハロゲン原子から選択される1種を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。ただし、aは、1以上の整数である。]
(7) 前記aは、1〜10である上記(6)に記載のエポキシ樹脂組成。
(8) 前記1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物は、下記一般式(6)で表されるフェノール樹脂および下記一般式(7)で表されるフェノール樹脂の少なくとも一方を主成分とする上記(4)ないし(7)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【化16】
[式中、R19〜R22は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基およびハロゲン原子から選択される1種を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。ただし、bは、1以上の整数である。]
【化17】
[式中、R23〜R30は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基およびハロゲン原子から選択される1種を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。ただし、cは、1以上の整数である。]
(9) 前記bは、1〜10である上記(8)に記載のエポキシ樹脂組成物。
(10) 前記cは、1〜10である上記(8)または(9)に記載のエポキシ樹脂組成物。
(11) 前記硬化促進剤、あるいは前記ルイス酸およびホスホベタイン化合物の含有量は、0.01〜10重量%である上記(4)ないし(10)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
(12) 無機充填材を含む上記(4)ないし(11)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
(13) 前記無機充填材は、溶融シリカである上記(12)に記載のエポキシ樹脂組成物。
(14) 前記無機充填材は、粒状をなしている上記(12)または(13)に記載のエポキシ樹脂組成物。
(15) 前記無機充填材の平均粒径は、1〜100μmである上記(14)に記載のエポキシ樹脂組成物。
(16) 前記無機充填材の含有量は、前記1分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物と、前記1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物との合計量100重量部あたり、200〜2400重量部である上記(12)ないし(15)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
(17) 上記(12)ないし(16)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物により半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明者は、前述したような問題点を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、次のような▲1▼〜▲4▼の事項を見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、▲1▼:特定の金属を有する有機化合物のルイス酸と特定構造のホスホベタイン化合物が化学結合してなる化合物が、エポキシ樹脂組成物の硬化反応を促進する硬化促進剤として極めて有用であることを見出した。
【0017】
▲2▼:かかるルイス酸と特定構造のホスホベタイン化合物が化学結合してなる化合物をエポキシ樹脂組成物に硬化促進剤として混合することにより、エポキシ樹脂組成物が、硬化性、保存性および流動性にたいへん優れたものとなることを見出した。
【0018】
▲3▼:また、ルイス酸とホスホベタイン化合物を、エポキシ樹脂組成物に併用して混合することにより、エポキシ樹脂組成物が、硬化性、保存性および流動性に優れたものとなることを見出した。
【0019】
▲4▼:▲2▼、▲3▼のエポキシ樹脂組成物の硬化物により半導体素子を封止してなる半導体装置が、高温に曝された場合であっても、クラックや剥離等の欠陥が発生し難いことを見出した。
【0020】
以下、本発明の硬化促進剤、硬化促進剤の製造方法、エポキシ樹脂組成物および半導体装置の好適実施形態について説明する。
【0022】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、1分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物(A)と、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物(B)と、特定の金属を有する有機化合物のルイス酸(C)と特定構造のホスホベタイン化合物(D)が化学結合した硬化促進剤(E)と、無機充填材(F)とを含むもの、あるいは、前記成分(E)に代えて、前記成分(C)および前記成分(D)を混合してなるものである。かかるエポキシ樹脂組成物は、硬化性、保存性および流動性に優れたものである。
【0023】
以下、各成分について、順次説明する。
[化合物(A)]
1分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物(A)は、1分子内にエポキシ基を2個以上有するものであれば、何ら制限はない。
【0024】
この化合物(A)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノール型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂など、フェノール類やフェノール樹脂、ナフトール類などの水酸基にエピクロロヒドリンを反応させて製造するエポキシ樹脂、エポキシ化合物、または、その他、脂環式エポキシ樹脂のように、オレフィンを過酸を用いて酸化させエポキシ化したエポキシ樹脂や、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
これらの中でも、1分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物(A)は、特に、前記一般式(4)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂および前記一般式(5)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂のいずれか一方または双方を主成分とするものを用いるのが好ましい。これにより、エポキシ樹脂組成物の成形時(例えば半導体装置の製造時等)の流動性が向上するとともに、得られた半導体装置の耐半田クラック性がより向上する。
【0026】
ここで、「耐半田クラック性の向上」とは、得られた半導体装置が、例えば、半田浸漬や半田リフロー工程等において、高温に曝された場合であっても、クラックや剥離等の欠陥の発生が生じ難くなることを言う。
【0027】
ここで、前記一般式(4)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂における置換基R7〜R10は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜6の鎖状もしくは環状アルキル基、フェニル基およびハロゲン原子から選択される1種を表し、これらは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0028】
これらの置換基R7〜R10の具体例としては、それぞれ、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、塩素原子、臭素原子等が挙げられるが、これらの中でも、特に、メチル基であるのが好ましい。これにより、エポキシ樹脂組成物の溶融粘度が低下し、例えば、半導体装置の製造時等に、その取扱いが容易となる。また、その硬化物は、吸水性が低減するので、得られた半導体装置は、その内部の部材の経時劣化(例えば断線の発生等)が好適に防止され、その耐湿信頼性が、より向上する。
【0029】
また、前記一般式(5)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂における置換基R11〜R18は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基およびハロゲン原子から選択される1種を表し、これらは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0030】
これらの置換基R11〜R18の具体例としては、それぞれ、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、塩素原子、臭素原子等が挙げられるが、これらの中でも、特に、水素原子またはメチル基であるのが好ましい。これにより、エポキシ樹脂組成物の溶融粘度が低下し、例えば半導体装置の製造時等に、その取り扱いが容易となるとともに、半導体装置の耐湿信頼性がより向上する。
【0031】
また、前記一般式(5)中におけるaは、エポキシ樹脂単位の平均の繰り返し数を表している。すなわち、aは、1以上の整数であれば、特に限定されず、1〜10程度であるのが好ましく、1〜5程度であるのが、より好ましい。aを前記範囲とすることにより、エポキシ樹脂組成物の流動性がより向上する。
【0032】
[化合物(B)]
1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物(B)は、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するものであれば何ら制限はなく、前記化合物(A)の硬化剤として作用(機能)するものである。
【0033】
この化合物(B)としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノール樹脂、トリスフェノール樹脂、キシリレン変性ノボラック樹脂、テルペン変性ノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
これらの中でも、化合物(B)は、特に、前記一般式(6)で表されるフェノールアラルキル樹脂および前記一般式(7)で表されるビフェニルアラルキル樹脂のいずれか一方または双方を主成分とするものを用いるのが好ましい。これにより、エポキシ樹脂組成物の成形時(例えば、半導体装置の製造時等)の流動性が向上するとともに、得られた半導体装置の耐半田クラック性や耐湿信頼性が、より向上する。
【0035】
これらの置換基R19〜R22およびR23〜R30の具体例としては、それぞれ、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、塩素原子、臭素原子等が挙げられるが、これらの中でも、特に、水素原子またはメチル基であるのが好ましい。かかるフェノール樹脂は、それ自体の溶融粘度が低いため、エポキシ樹脂組成物中に含有しても、エポキシ樹脂組成物の溶融粘度を低く保持することができ、その結果、例えば半導体装置の製造時等に、その取扱いが容易となる。また、エポキシ樹脂組成物の硬化物(得られる半導体装置)の吸水性(吸湿性)が低減して、耐湿信頼性が、より向上するとともに、耐半田クラック性も、より向上する。
【0036】
また、前記一般式(6)中におけるb、および、前記一般式(7)中におけるcは、それぞれ、フェノール樹脂単位の平均の繰り返し数を表している。すなわち、bおよびcは、それぞれ、1以上の整数であれば、特に限定されず、1〜10程度であるのが好ましく、1〜5程度であるのがより好ましい。bおよびcを、それぞれ、前記範囲とすることにより、エポキシ樹脂組成物の流動性の低下が好適に防止または抑制される。
【0037】
[化合物(C)]
化合物(C)は、ルイス酸である。
共立出版発刊の化学大辞典によれば、ルイス酸とは電子対受容体である。本発明におけるルイス酸は、ホウ素、アルミニウム、チタン、スカンジウムのいずれかの元素を含む有機化合物であり、樹脂組成物の各特性のバランスにおいて優れる。
【0038】
これら元素を含む化合物は、その元素に、水素、水酸基、置換もしくは無置換アルキル基、置換もしくは無置換アリール基、置換もしくは無置換アルケニル基、置換もしくは無置換アルキニル基、置換もしくは無置換アラルキル基、置換もしくは無置換アルコキシ基、置換もしくは無置換アリーロキシ基、置換もしくは無置換アシル基、置換もしくは無置換アシロキシ基、置換もしくは無置換アセチルアセトナート基、エステル基、カルボキシル基、またはハロゲンが結合しているものがよく用いられる。また、置換もしくは無置換アミノ基、アゾ基やピリジン環やキノリン環を含有する基など、窒素原子含有の基が金属元素に結合、配位しているものでもよい。
【0039】
ホウ素を含むルイス酸化合物の具体例としては、トリエチルボロン、トリイソブチルボロン、トリターシャリーブチルボロン、トリビニルボロン、トリフェニルボロン、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリイソプロピル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリフェニル、カテコールボラン、フェニルホウ酸、トリスアセチルアセトナートボロン、トリスベンゾイロキシボロン、トリスナフトイロキシボロンが挙げられる。
【0040】
アルミニウムを含むルイス酸化合物の具体例としては、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリターシャリーブチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリイソブトキシアルミニウム、トリフェノキシアルミニウム、ジフェノキシメチルアルミニウム、トリスアセチルアセトナートアルミニウム、エチルアルミニウムジクロライド、メチルアルミニウム−ビス(2,6−ジ−tブチル−4−メチルフェノキシド)があげられる。
【0041】
チタンを含むルイス酸化合物の具体例としては、テトライソプロポキシチタン、テトラフェノキシチタン、ジイソプロポキシ・ビスアセチルアセトナトチタン、カテコール2分子がチタンに結合したビス(1,2ベンゼンジオキシ)チタン、2,2'−ビフェノール2分子がチタンに結合したビス(2,2'ビフェニルジオキシ)チタン、サリチル酸2分子がチタンに結合したビス(2−オキシベンゾイロキシ)チタン、テトラターシャリーブトキシチタンがあげられる。
【0042】
スカンジウムを含むルイス酸化合物の具体例としては、スカンジウムトリフラートが挙げられ、水分に対して安定なルイス酸であり、好ましい。
【0043】
[ホスホベタイン化合物(D)]
ホスホベタイン化合物(D)は、前記一般式(1)で表されるものであり、前記一般式(2)で表されるものであるのが好ましく、前記一般式(3)で表されるものであるのが、より好ましい。
【0044】
ここで、前記一般式(1)において、リン原子に結合する置換基R1、R2、およびR3は、それぞれ、置換もしくは無置換の1価の芳香族基、または、置換もしくは無置換の1価のアルキル基を表し、これらは、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0045】
これらの置換基R1〜R3の具体例としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−オクチル基、シクロヘキシル基等が挙げられるが、これらの中でも、前記一般式(2)において、Ar1、Ar2およびAr3で表されるように、ナフチル基、p−ターシャリーブチルフェニル基、2,6−ジメトキシフェニル基等の置換もしくは無置換の1価の芳香族基であるのが好ましく、特に、前記一般式(3)で表されるように、フェニル基、メチルフェニル基の各種異性体、メトキシフェニル基の各種異性体、ヒドロキシフェニル基の各種異性体等であるのが、より好ましい。
【0046】
また、前記一般式(1)のArおよび前記一般式(2)のAr4は、水酸基以外の置換基により置換もしくは無置換の2価の芳香族基を表す。
【0047】
これらの置換基ArおよびAr4の具体例としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、または、これらに、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜12のアルキル基やアルコキシ基等の水酸基以外の置換基により、置換された芳香族基が挙げられる。
【0048】
総じて、前記一般式(1)において、置換基R1、R2、R3およびArの組み合わせとしては、置換基R1、R2、およびR3が、それぞれフェニル基であり、Arがフェニレン基であるものが好適である。このものは、熱安定性、硬化促進能に、特に優れ、製造コストが安価である。
【0049】
ホスホベタイン化合物(D)の合成方法については、特に限定はない。例として、第三ホスフィンと芳香族ジアゾニウム塩とを接触させることにより、第三ホスフィンと芳香族ジアゾニウム塩が有するジアゾニウム基とを置換する工程により、ホスホニウム塩を得たのち、それを中和によって、脱プロトンすることで合成することができる。
【0050】
[硬化促進剤(E)]
硬化促進剤(E)は、エポキシ樹脂組成物の硬化反応を促進しえる作用(機能)を有する。硬化促進剤(E)は、前記ルイス酸(C)が、前記ホスホベタイン化合物(D)のオキシアニオンが有する不対電子対を受容し、両者が化学結合することでなり、化合物(C)と化合物(D)の組み合わせに、特に限定はない。
【0051】
本発明における硬化促進剤(E)は、前記ホスホベタイン化合物(D)を適当な溶媒に溶解させ、そこに、予め、適当な溶媒に溶解させておいたルイス酸(C)を滴下することで得られる。溶媒の種類、濃度は適宜、調整可能である。反応系は水分を除去し、窒素置換して行うのが望ましいが、ホスホベタインならびにルイス酸の安定性によっては、必要でない。反応温度はリフラックス温度まで上昇させたほうが、反応促進という意味では好ましいが、ルイス酸の安定性によっては、室温以下で、十分な時間をかけて反応を進行させることが好ましい。生成物は、選択した溶媒によっては、沈殿として得られるが、溶媒の減圧除去、再沈、再結晶等、有機合成で、一般的に用いられる方法で回収可能である。
【0052】
硬化促進剤(E)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、0.01〜10重量%程度であるのが好ましく、0.1〜5重量%程度であるのが、より好ましい。これにより、エポキシ樹脂組成物の硬化性、保存性、流動性、他特性がバランスよく発揮される。
【0053】
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、ルイス酸(C)と一般式(1)ないし一般式(3)で表される化合物から選ばれるホスホベタイン化合物(D)を、併用してエポキシ樹脂に混合することでも、硬化促進剤(E)に近いレベルの特性を得ることができる。併用する際は、前記化合物(C)1モルに対し、前記化合物(D)が0.1〜10モル程度であると、エポキシ樹脂組成物の各種特性のバランスがよい。含有量(配合量)としては、両者合計で0.01〜10重量%程度であるのが好ましく、0.1〜5重量%程度であるのが、より好ましい。
【0054】
また、1分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物(A)と、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物(B)との配合比率も、特に限定されないが、前記化合物(A)のエポキシ基1モルに対し、前記化合物(B)のフェノール性水酸基が0.5〜2モル程度となるように用いるのが好ましく、0.7〜1.5モル程度となるように用いるのが、より好ましい。これにより、エポキシ樹脂組成物の諸特性のバランスを好適なものに維持しつつ、諸特性が、より向上する。
【0055】
本発明の硬化促進剤(E)は、成形時の温度域より低温では、ルイス酸とホスホベタイン化合物のアニオンの化学結合が安定しており、硬化反応は促進されない。成形温度付近では、この化学結合が不安定化し開裂するため、硬化促進剤として活性化する。よって、本発明の樹脂組成物は硬化性と保存性に優れる。
【0056】
硬化促進剤(E)に代えて、ルイス酸(C)と一般式(1)ないし一般式(3)で表される化合物から選ばれるホスホベタイン化合物(D)を併用した場合は、エポキシ樹脂組成物を作製する際に与えられる熱や混練といったエネルギーにより、両者の間に化学結合形成に近い、化学的相互作用が生じると考えられる。その相互作用は、上記同様、低温では安定しており、硬化反応は促進されず、成形温度付近で不安定化し、硬化促進剤として活性化すると考えられる。
【0057】
[無機充填材(F)]
無機充填材(F)は、得られる半導体装置の補強を目的として、エポキシ樹脂組成物中に配合(混合)されるものであり、その種類については、特に制限はなく、一般に封止材料に用いられているものを使用することができる。
【0058】
この無機充填材(F)の具体例としては、例えば、溶融破砕シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、2次凝集シリカ、アルミナ、チタンホワイト、水酸化アルミニウム、タルク、クレー、ガラス繊維等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、無機充填材(F)としては、特に、溶融シリカであるのが好ましい。溶融シリカは、本発明の硬化促進剤との反応性に乏しいので、エポキシ樹脂組成物中に多量に配合(混合)した場合でも、エポキシ樹脂組成物の硬化反応が阻害されるのを防止することができる。また、無機充填材(F)として溶融シリカを用いることにより、得られる半導体装置の耐半田クラック性向上をはじめとする補強効果が向上する。
【0059】
また、無機充填材(F)の形状としては、例えば、粒状、塊状、鱗片状等のいかなるものであってもよいが、粒状(特に、球状)であるのが好ましい。
この場合、無機充填材(F)の平均粒径は、1〜100μm程度であるのが好ましく、5〜35μm程度であるのがより好ましい。また、この場合、粒度分布は、広いものであるのが好ましい。これにより、無機充填材(F)の充填量(使用量)を多くすることができ、得られる半導体装置の耐半田クラック性向上をはじめとする補強効果が、より向上する。
【0060】
この無機充填材(F)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、前記化合物(A)と前記化合物(B)との合計量100重量部あたり、200〜2400重量部程度であるのが好ましく、400〜1400重量部程度であるのが、より好ましい。無機充填材(F)の含有量が、前記下限値未満の場合、無機充填材(F)による補強効果が充分に発現しないおそれがあり、一方、無機充填材(F)の含有量が前記上限値を超えた場合、エポキシ樹脂組成物の流動性が低下し、エポキシ樹脂組成物の成形時、例えば、半導体装置の製造時等において、充填不良等が生じるおそれがある。
【0061】
なお、無機充填材(F)の含有量(配合量)が、前記化合物(A)と前記化合物(B)との合計量100重量部あたり、400〜1400重量部であれば、エポキシ樹脂組成物の硬化物の吸湿率が低くなり、半田クラックの発生を防止することができる。また、かかるエポキシ樹脂組成物は、加熱溶融時の流動性も良好であるため、半導体装置内部の金線変形を引き起こすことが好適に防止される。
また、無機充填材(F)の含有量(配合量)は、前記化合物(A)、前記化合物(B)や無機充填材(F)自体の比重を、それぞれ考慮し、重量部を体積%に換算して取り扱うようにしてもよい。
【0062】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物中には、前記成分(A)〜成分(F)の他に、必要に応じて、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のカップリング剤、カーボンブラック等の着色剤、臭素化エポキシ樹脂、酸化アンチモン、リン化合物等の難燃剤、シリコーンオイル、シリコーンゴム等の低応力成分、天然ワックス、合成ワックス、高級脂肪酸またはその金属塩類、パラフィン等の離型剤、酸化防止剤等の各種添加剤を配合(混合)するようにしてもよい。
【0063】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物の特性を損なわない範囲で、例えば、トリフェニルホスフィン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−7−ウンデセン、2−メチルイミダゾール等の他の公知の触媒を配合(混合)するようにしても、何ら問題はない。
【0064】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、前記成分(A)、成分(B)および成分(E)、あるいは成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(D)と、成分(F)、必要に応じて、その他の添加剤等を、ミキサーを用いて、常温混合し、熱ロール、加熱ニーダー等を用いて、加熱混練し、冷却、粉砕することにより得られる。
【0065】
得られたエポキシ樹脂組成物を、モールド樹脂として用いて、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の成形方法で硬化成形することにより、半導体素子等の電子部品を封止する。これにより、本発明の半導体装置が得られる。
【0066】
本発明の半導体装置の形態としては、特に限定されないが、例えば、SIP(Single Inline Package)、HSIP(SIP with Heatsink)、ZIP(Zig-zag Inline Package)、DIP(Dual Inline Package)、SDIP(Shrink Dual Inline Package)、SOP(Small Outline Package)、SSOP(Shrink Small Outline Package)、TSOP(Thin Small Outline Package)、SOJ(Small Outline J-leaded Package)、QFP(Quad Flat Package)、QFP(FP)(QFP Fine Pitch)、TQFP(Thin Quad Flat Package)、QFJ(PLCC)(Quad Flat J-leaded Package)、BGA(Ball Grid Array)等が挙げられる。
【0067】
このようにして得られた本発明の半導体装置は、耐半田クラック性および耐湿信頼性に優れる。その第一の理由は、特定構造のホスホベタイン化合物(D)が熱に対して非常に安定なことである。第二の理由は、ルイス酸(C)が、エポキシ樹脂組成物(硬化物)中において、樹脂骨格が有する豊富な酸素原子と強い相互作用を有し、熱や水に対し安定なことである。
【0068】
なお、本実施形態では、エポキシ樹脂組成物について代表して説明したが、本発明の硬化促進剤は、ホスフィンまたはホスホニウム塩を硬化促進剤として好適に使用し得る熱硬化性樹脂組成物に対して使用可能である。かかる熱硬化性樹脂組成物としては、例えば、エポキシ化合物、マレイミド化合物、シアネート化合物、イソシアネート化合物、アクリレート化合物、または、アルケニルおよびアルキニル化合物等を含む樹脂組成物が挙げられる。
【0069】
また、本発明の硬化促進剤は、熱硬化性樹脂組成物の他、例えば反応硬化性樹脂組成物、光硬化性樹脂組成物、嫌気硬化性樹脂組成物等の各種硬化性樹脂組成物に対しても使用可能である。
【0070】
また、本実施形態では、本発明のエポキシ樹脂組成物を、半導体装置の封止材料として用いる場合について説明したが、本発明のエポキシ樹脂組成物の用途としては、これに限定されるものではない。また、エポキシ樹脂組成物の用途等に応じて、本発明のエポキシ樹脂組成物では、無機充填材の混合(配合)を省略することもできる。
【0071】
以上、本発明の硬化促進剤、硬化促進剤の製造方法、エポキシ樹脂組成物および半導体装置の好適実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0072】
【実施例】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
【0073】
[硬化促進剤の合成]
硬化促進剤として使用する化合物E1〜E6を、それぞれ、以下のようにして合成した。なお、ホスホベタイン化合物D1〜D6は、ホスフィン類と芳香族ジアゾニウム塩を反応させホスホニウム塩化合物を得たのち、それを中和する工程によって得た。
【0074】
(合成例1)
化学式(8)で表されるホスホベタイン化合物D1を10.00g、乾燥窒素置換したガラス反応容器中に脱水アセトンとともに仕込み、そこへルイス酸であるホウ酸トリフェニル8.18gの脱水アセトン溶液を室温で滴下する。その後加熱し、リフラックス温度で3時間撹拌した後、冷却し、減圧してアセトンを除去したところ、粉末の析出を得た。1H−NMR、マススペクトル、元素分析で分析したところ、化学式(9)で表される目的とする化合物の析出を得た。これを化合物E1とする。
【0075】
【化18】
【0076】
【化19】
【0077】
(合成例2)
化学式(10)で表されるホスホベタイン化合物D2を10.00gと、ホウ酸トリフェニル8.18gを用い、合成例1と同様の操作を行い、化学式(11)で表される目的とする化合物E2を得た。
【0078】
【化20】
【0079】
【化21】
【0080】
(合成例3)
化学式(12)で表されるホスホベタイン化合物D3を10.00gと、トリフェニルボロン5.90gを用い、合成例1と同様の操作を行い、化学式(13)で表される目的とする化合物E3を得た。
【0081】
【化22】
【0082】
【化23】
【0083】
(合成例4)
化学式(14)で表されるホスホベタイン化合物D4を10.00gと、メチルアルミニウム−ビス(2,6−ジ−tブチル−4−メチルフェノキシド)11.96gを用い、合成例1と同様の操作を行い、化学式(15)で表される目的とする化合物E4を得た。
【0084】
【化24】
【0085】
【化25】
【0086】
(合成例5)
化学式(16)で表されるホスホベタイン化合物D5を10.00gと、スカンジウムトリフラート11.41gを用い、合成例1と同様の操作を行い、化学式(17)で表される目的とする化合物E5を得た。
【0087】
【化26】
【0088】
【化27】
【0089】
(合成例6)
化学式(18)で表されるホスホベタイン化合物D6を10.00gとビス(1,2ベンゼンジオキシチタン)8.98gを用い、合成例1と同様の操作を行い、化学式(19)で表される目的とする化合物E6を得た。
【0090】
【化28】
【0091】
【化29】
【0092】
[エポキシ樹脂組成物の調製および半導体装置の製造]
以下のようにして、前記化合物E1〜E6を含むエポキシ樹脂組成物を調製し、半導体装置を製造した。
【0093】
(実施例1)
まず、化合物(A)として下記式(20)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂、化合物(B)として下記式(21)で表されるフェノールアラルキル樹脂(ただし、繰り返し単位数:3は、平均値を示す。)、硬化促進剤(E)として化合物E1、無機充填材(F)として溶融球状シリカ(平均粒径15μm)、その他の添加剤としてカーボンブラック、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂およびカルナバワックスを、それぞれ用意した。
【0094】
【化30】
<式(20)の化合物の物性>
融点 :105℃
エポキシ当量 :193
150℃のICI溶融粘度:0.15poise
【0095】
【化31】
<式(21)の化合物の物性>
軟化点 :77℃
水酸基当量 :172
150℃のICI溶融粘度:3.6poise
【0096】
次に、ビフェニル型エポキシ樹脂:52重量部、フェノールアラルキル樹脂:48重量部、化合物E1:3.22重量部、溶融球状シリカ:730重量部、カーボンブラック:2重量部、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂:2重量部、カルナバワックス:2重量部を、まず、室温で混合し、次いで、熱ロールを用いて、95℃で8分間混練した後、冷却粉砕して、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得た。
【0097】
次に、このエポキシ樹脂組成物をモールド樹脂として用い、100ピンTQFPのパッケージ(半導体装置)を8個、および、16ピンDIPのパッケージ(半導体装置)を15個、それぞれ製造した。
【0098】
100ピンTQFPは、金型温度175℃、注入圧力7.4MPa、硬化時間2分でトランスファーモールド成形し、175℃、8時間で後硬化させることにより製造した。
【0099】
なお、この100ピンTQFPのパッケージサイズは、14×14mm、厚み1.4mm、シリコンチップ(半導体素子)サイズは、8.0×8.0mm、リードフレームは、42アロイ製とした。
【0100】
また、16ピンDIPは、金型温度175℃、注入圧力6.8MPa、硬化時間2分でトランスファーモールド成形し、175℃、8時間で後硬化させることにより製造した。
【0101】
なお、この16ピンDIPのパッケージサイズは、6.4×19.8mm、厚み3.5mm、シリコンチップ(半導体素子)サイズは、3.5×3.5mm、リードフレームは、42アロイ製とした。
【0102】
(実施例2)
まず、化合物(A)として下記式(22)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(ただし、繰り返し単位数:3は、平均値を示す。)、化合物(B)として下記式(23)で表されるビフェニルアラルキル型フェノール樹脂(ただし、繰り返し単位数:3は、平均値を示す。)、硬化促進剤(E)として化合物E1、無機充填材(F)として溶融球状シリカ(平均粒径15μm)、その他の添加剤としてカーボンブラック、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂およびカルナバワックスを、それぞれ用意した。
【0103】
【化32】
<式(22)の化合物の物性>
軟化点 :60℃
エポキシ当量 :272
150℃のICI溶融粘度:1.3poise
【0104】
【化33】
<式(23)の化合物の物性>
軟化点 :68℃
水酸基当量 :199
150℃のICI溶融粘度:0.9poise
【0105】
次に、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂:57重量部、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂:43重量部、化合物E1:3.22重量部、溶融球状シリカ:650重量部、カーボンブラック:2重量部、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂:2重量部、カルナバワックス:2重量部を、まず室温で混合し、次いで熱ロールを用いて105℃で8分間混練した後、冷却粉砕して、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得た。
【0106】
次に、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例1と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0107】
(実施例3)
化合物E1に代わり、化合物E2:3.22gを用いた以外は、前記実施例1と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例1と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0108】
(実施例4)
化合物E1に代わり、化合物E2:3.22gを用いた以外は、前記実施例2と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例2と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0109】
(実施例5)
化合物E1に代わり、化合物E3:3.26重量部を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例1と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0110】
(実施例6)
化合物E1に代わり、化合物E3:3.26重量部を用いた以外は、前記実施例2と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例2と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0111】
(実施例7)
化合物E1に代わり、化合物E4:4.41重量部を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例1と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0112】
(実施例8)
化合物E1に代わり、化合物E4:4.41重量部を用いた以外は、前記実施例2と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例2と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0113】
(実施例9)
化合物E1に代わり、化合物E5:4.62重量部を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例1と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0114】
(実施例10)
化合物E1に代わり、化合物E5:4.62重量部を用いた以外は、前記実施例2と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例2と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0115】
(実施例11)
化合物E1に代わり、化合物E6:2.79重量部を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例1と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0116】
(実施例12)
化合物E1に代わり、化合物E6:2.79重量部を用いた以外は、前記実施例2と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例2と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0117】
(実施例13)
化合物E1に代わり、ホウ酸トリフェニル:1.45重量部と化合物D1:1.77重量部を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例1と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0118】
(実施例14)
化合物E1に代わり、ホウ酸トリフェニル:1.45重量部と化合物D1:1.77重量部を用いた以外は、前記実施例2と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例2と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0119】
(比較例1)
化合物E1に代わり、オルトホウ酸:0.25g重量部と、トリフェニルホスフィンとp−ベンゾキノンの付加反応物:1.85重量部を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例1と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0120】
(比較例2)
化合物E1に代わり、オルトホウ酸:0.25g重量部と、トリフェニルホスフィンとp−ベンゾキノンの付加反応物:1.85重量部を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例2と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0121】
(比較例3)
化合物E1に代わり、ジルコニウムテトラキスアセエテート:0.29g重量部と、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート:3.29重量部を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例1と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0122】
(比較例4)
化合物E1に代わり、ジルコニウムテトラキスアセエテート:0.29g重量部と、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート:3.29重量部を用いた以外は、前記実施例2と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例2と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0123】
[特性評価]
各実施例および各比較例で得られたエポキシ樹脂組成物の特性評価▲1▼〜▲3▼、および、各実施例および各比較例で得られた半導体装置の特性評価▲4▼および▲5▼を、それぞれ、以下のようにして行った。
【0124】
▲1▼:スパイラルフロー
EMMI−I−66に準じたスパイラルフロー測定用の金型を用い、金型温度175℃、注入圧力6.8MPa、硬化時間2分で測定した。
このスパイラルフローは、流動性のパラメータであり、数値が大きい程、流動性が良好であることを示す。
【0125】
▲2▼:硬化トルク
キュラストメーター(オリエンテック(株)製、JSRキュラストメーターIV PS型)を用い、175℃、45秒後のトルクを測定した。
この硬化トルクは、数値が大きい程、硬化性が良好であることを示す。
【0126】
▲3▼:フロー残存率
得られたエポキシ樹脂組成物を、大気中30℃で30日間保存した後、前記▲1▼と同様にしてスパイラルフローを測定し、調製直後のスパイラルフローに対する百分率(%)を求めた。
このフロー残存率は、数値が大きい程、保存性が良好であることを示す。
【0127】
▲4▼:耐半田クラック性
100ピンTQFPを85℃、相対湿度85%の環境下で168時間放置し、その後、260℃の半田槽に10秒間浸漬した。
その後、顕微鏡下に、外部クラックの発生の有無を観察し、クラック発生率=(クラックが発生したパッケージ数)/(全パッケージ数)×100として、百分率(%)で表示した。
また、シリコンチップとエポキシ樹脂組成物の硬化物との剥離面積の割合を、超音波探傷装置を用いて測定し、剥離率=(剥離面積)/(シリコンチップの面積)×100として、8個のパッケージの平均値を求め、百分率(%)で表示した。
これらのクラック発生率および剥離率は、それぞれ、数値が小さい程、耐半田クラック性が良好であることを示す。
【0128】
▲5▼:耐湿信頼性
16ピンDIPに、125℃、相対湿度100%の水蒸気中で、20Vの電圧を印加し、断線不良を調べた。15個のパッケージのうち8個以上に不良が出るまでの時間を不良時間とした。
なお、測定時間は、最長で500時間とし、その時点で不良パッケージ数が8個未満であったものは、不良時間を500時間超(>500)と示す。
この不良時間は、数値が大きい程、耐湿信頼性に優れることを示す。
【0129】
各特性評価▲1▼〜▲5▼の結果を、表1に示す。
【表1】
【0130】
表1に示すように、各実施例で得られたエポキシ樹脂組成物(本発明のエポキシ樹脂組成物)は、いずれも、硬化性、保存性、流動性が極めて良好であり、さらに、この硬化物で封止された各実施例のパッケージ(本発明の半導体装置)は、いずれも、耐半田クラック性、耐湿信頼性が良好なものであった。
【0131】
これに対し、比較例1〜4で得られたエポキシ樹脂組成物は、いずれも、保存性に劣り、これらの比較例で得られたパッケージは、いずれも、耐半田クラック性に劣るとともに、耐湿信頼性が極めて低いものであった。また、比較例3および比較例4で得られたエポキシ樹脂組成物は、硬化性についても劣るものであった。
【0132】
(実施例15〜21、比較例5および6)
化合物(A)として、前記式(20)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂:26重量部、前記式(22)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂:28.5重量部、および、化合物(B)として、前記式(21)で表されるフェノールアラルキル樹脂:45.5重量部を配合した以外は、それぞれ、前記実施例1、3、5、7、9、11、13、比較例1、3と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、パッケージ(半導体装置)を製造した。
【0133】
各実施例15〜21、比較例5および6で得られたエポキシ樹脂組成物およびパッケージの特性評価を、前記と同様にして行ったところ、前記表1とほぼ同様の結果が得られた。
【0134】
(実施例22〜28、比較例7および8)
化合物(A)として、前記式(20)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂:54.5重量部、化合物(B)として、前記式(21)で表されるフェノールアラルキル樹脂:24重量部、および、前記式(23)で表されるビフェニルアラルキル型フェノール樹脂:21.5重量部を配合した以外は、それぞれ、前記実施例1、3、5、7、9、11、13、比較例1、3と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、パッケージ(半導体装置)を製造した。
【0135】
各実施例22〜28、比較例7および8で得られたエポキシ樹脂組成物およびパッケージの特性評価を、前記と同様にして行ったところ、前記表1とほぼ同様の結果が得られた。
【0136】
(実施例29〜35、比較例9)
ジアミノジフェニルメタンのビスマレイミド樹脂(ケイ・アイ化成製BMI−H)100重量部に、硬化促進剤として化合物E1〜E6、ホウ酸トリフェニルと化合物D1、トリフェニルホスフィンを、それぞれ、表2に示す配合比で配合し、これらを均一に混合した樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得た。
【0137】
実施例29〜35および比較例9で得られた樹脂組成物に対して、175℃におけるゲル化時間を測定した。
この結果を、各硬化促進剤の配合比と合わせて、表2に示す。
【0138】
【表2】
【0139】
表2に示すように、各実施例で得られた樹脂組成物は、いずれも、速やかに硬化に至るものであった。これに対し、比較例で得られた樹脂組成物は、硬化には至らず、ミクロゲル化した。
【0140】
【発明の効果】
本発明の硬化促進剤によれば、エポキシ樹脂組成物を速やかに硬化させることができ、エポキシ樹脂組成物の硬化物が、高温に曝された場合であっても、この硬化物に欠陥が生じるのを好適に防止することができる。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化性、保存性、流動性に優れる。
また、本発明の半導体装置は、高温に曝された場合であっても、クラックや剥離等の欠陥が生じ難く、また、吸湿に伴う経時劣化も発生し難い。
Claims (17)
- エポキシ樹脂組成物に混合され、該エポキシ樹脂組成物の硬化反応を促進し得る硬化促進剤であって、
トリエチルボロン、トリイソブチルボロン、トリターシャリーブチルボロン、トリビニルボロン、トリフェニルボロン、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリイソプロピル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリフェニル、カテコールボラン、フェニルホウ酸、トリスアセチルアセトナートボロン、トリスベンゾイロキシボロン、トリスナフトイロキシボロン、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリターシャリーブチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリイソブトキシアルミニウム、トリフェノキシアルミニウム、ジフェノキシメチルアルミニウム、トリスアセチルアセトナートアルミニウム、エチルアルミニウムジクロライド、メチルアルミニウム−ビス(2,6−ジ−tブチル−4−メチルフェノキシド)、テトライソプロポキシチタン、テトラフェノキシチタン、ジイソプロポキシ・ビスアセチルアセトナトチタン、ビス(1,2ベンゼンジオキシ)チタン、ビス(2,2'ビフェニルジオキシ)チタン、ビス(2−オキシベンゾイロキシ)チタン、テトラターシャリーブトキシチタン、スカンジウムトリフラートから選ばれる、ホウ素、アルミニウム、チタン、スカンジウムのいずれかの元素を含むルイス酸と下記一般式(1)で表されるホスホベタイン化合物が化学結合してなる、エポキシ樹脂組成物用硬化促進剤。
- エポキシ樹脂組成物に混合され、該エポキシ樹脂組成物の硬化反応を促進し得る硬化促進剤であって、
トリエチルボロン、トリイソブチルボロン、トリターシャリーブチルボロン、トリビニルボロン、トリフェニルボロン、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリイソプロピル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリフェニル、カテコールボラン、フェニルホウ酸、トリスアセチルアセトナートボロン、トリスベンゾイロキシボロン、トリスナフトイロキシボロン、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリターシャリーブチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリイソブトキシアルミニウム、トリフェノキシアルミニウム、ジフェノキシメチルアルミニウム、トリスアセチルアセトナートアルミニウム、エチルアルミニウムジクロライド、メチルアルミニウム−ビス(2,6−ジ−tブチル−4−メチルフェノキシド)、テトライソプロポキシチタン、テトラフェノキシチタン、ジイソプロポキシ・ビスアセチルアセトナトチタン、ビス(1,2ベンゼンジオキシ)チタン、ビス(2,2'ビフェニルジオキシ)チタン、ビス(2−オキシベンゾイロキシ)チタン、テトラターシャリーブトキシチタン、スカンジウムトリフラートから選ばれる、ホウ素、アルミニウム、チタン、スカンジウムのいずれかの元素を含むルイス酸と下記一般式(2)で表されるホスホベタイン化合物が化学結合してなる、エポキシ樹脂組成物用硬化促進剤。
- エポキシ樹脂組成物に混合され、該エポキシ樹脂組成物の硬化反応を促進し得る硬化促進剤であって、
トリエチルボロン、トリイソブチルボロン、トリターシャリーブチルボロン、トリビニルボロン、トリフェニルボロン、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリイソプロピル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリフェニル、カテコールボラン、フェニルホウ酸、トリスアセチルアセトナートボロン、トリスベンゾイロキシボロン、トリスナフトイロキシボロン、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリターシャリーブチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリイソブトキシアルミニウム、トリフェノキシアルミニウム、ジフェノキシメチルアルミニウム、トリスアセチルアセトナートアルミニウム、エチルアルミニウムジクロライド、メチルアルミニウム−ビス(2,6−ジ−tブチル−4−メチルフェノキシド)、テトライソプロポキシチタン、テトラフェノキシチタン、ジイソプロポキシ・ビスアセチルアセトナトチタン、ビス(1,2ベンゼンジオキシ)チタン、ビス(2,2'ビフェニルジオキシ)チタン、ビス(2−オキシベンゾイロキシ)チタン、テトラターシャリーブトキシチタン、スカンジウムトリフラートから選ばれる、ホウ素、アルミニウム、チタン、スカンジウムのいずれかの元素を含むルイス酸と下記一般式(3)で表されるホスホベタイン化合物が化学結合してなる、エポキシ樹脂組成物用硬化促進剤。
- 1分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物と、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物と、請求項1ないし3のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物用硬化促進剤とを含むことを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
- 1分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物と、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物と、トリエチルボロン、トリイソブチルボロン、トリターシャリーブチルボロン、トリビニルボロン、トリフェニルボロン、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリイソプロピル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリフェニル、カテコールボラン、フェニルホウ酸、トリスアセチルアセトナートボロン、トリスベンゾイロキシボロン、トリスナフトイロキシボロン、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリターシャリーブチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリイソブトキシアルミニウム、トリフェノキシアルミニウム、ジフェノキシメチルアルミニウム、トリスアセチルアセトナートアルミニウム、エチルアルミニウムジクロライド、メチルアルミニウム−ビス(2,6−ジ−tブチル−4−メチルフェノキシド)、テトライソプロポキシチタン、テトラフェノキシチタン、ジイソプロポキシ・ビスアセチルアセトナトチタン、ビス(1,2ベンゼンジオキシ)チタン、ビス(2,2'ビフェニルジオキシ)チタン、ビス(2−オキシベンゾイロキシ)チタン、テトラターシャリーブトキシチタン、スカンジウムトリフラートから選ばれる、ホウ素、アルミニウム、チタン、スカンジウムのいずれかの元素を含むルイス酸、および一般式(1)ないし(3)で表される化合物から選ばれるホスホベタイン化合物を含有することを特徴とする、エポキシ樹脂組成物。
- 前記aは、1〜10である請求項6に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 前記1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物は、下記一般式(6)で表されるフェノール樹脂および下記一般式(7)で表されるフェノール樹脂の少なくとも一方を主成分とする請求項4ないし7のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
- 前記bは、1〜10である請求項8に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 前記cは、1〜10である請求項8または9に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 前記硬化促進剤、あるいは前記ルイス酸およびホスホベタイン化合物の含有量は、0.01〜10重量%である請求項4ないし10のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
- 無機充填材を含む請求項4ないし11のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
- 前記無機充填材は、溶融シリカである請求項12に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 前記無機充填材は、粒状をなしている請求項12または13に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 前記無機充填材の平均粒径は、1〜100μmである請求項14に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 前記無機充填材の含有量は、前記1分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物と、前記1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物との合計量100重量部あたり、200〜2400重量部である請求項12ないし15のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
- 請求項12ないし16のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物により半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置。
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