JP4321974B2 - 高強度ねじ用鋼および高強度ねじ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、高強度ねじ用鋼および高強度ねじ、特に、下穴を開けた部材に雌ねじを成形しながら締結するタッピング性を兼備した太径(M8以上)で、強度800N/mm2以上の高強度ねじ用鋼、すなわち、ねじ転造後、浸炭焼入れ焼戻して、所定の表面硬さ、内部硬さおよび有効硬化深さにした高強度タッピングねじ用鋼およびこの鋼によって造られた高強度ねじに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
タッピンねじは、相手部材に下穴を閉けるだけで、雌ねじを成形しながら締結できるので、普通のボルト・ナットによる締結よりも、雌ねじの成形の点で大幅に作業を軽減できる利点がある。この性能からタッピンねじは、相手部材に雌ねじを成形する必要が有るため相手部材よりも十分に硬くなければならず、また、締結手段としての機械的性質も満足することが重要である。
【0003】
このことから従来、例えば、JISB1122の十字穴付きタッピンねじは、JISG3539の冷間圧造用炭素鋼線のSWRCH12A〜22A(アルミキルド鋼)またはSWRCH12K〜22K(キルド鋼)が用いられ、転造加工等によって、ねじ成形し、浸炭(浸炭窒化)焼入れ、焼戻しの調質処理によって製造されてきた。
【0004】
タッピンねじ用鋼の重要な要素の1つは、焼入れ後の靭性の確保で、この点から結晶粒の細かいアルミキルドタイプが利用されている。しかし、一方で靭性とは相反する傾向にある硬さや強さ等の特性も同時に満足しなければならない。そのため特開平9−67625号公報には、素材としてMnを高め、炭素含有量を低めた素材で浸炭焼入れ、焼戻しを行い、表面硬さHvで560〜600、内部硬さHvで320〜360のタッピンねじが開示されている。以下、このタッピンねじを従来技術1という。
【0005】
また、特開平10−196627には、低炭素高Mn鋼を用い、表面硬さHvで550以上、内部硬さHvで320〜400のねじが開示されている。以下、このタッピンねじを従来技術2という。
【0006】
しかし、より高強度な部材を締結するには、ボルトとしての所望の強度を有し且つタッピンねじとして相手部材に雌ねじを成形するために、更に高い表面硬さと内部の靭性とが要求されるが、このようなねじに関しては素材成分や製造方法が十分に確立されていないのが現状である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術1および2共に比較的細いサイズのねじ、例えば、M6未満を対象としており、これらの素材では、M8以上の太径のねじやボルトを製造しても浸炭後の表面硬さと内部硬さとのバランスや必要な強度を得るのは難しい。
【0008】
従って、この発明の目的は、太径サイズ(M8以上)のねじやボルトに対しても所望の強度(800N/mm2以上)を有し、且つ、タッピング性を兼備する高強度ねじ用鋼、すなわち、ねじ転造後、浸炭焼入れ焼戻して、所定の表面硬さ、内部硬さおよび有効硬化深さにした高強度タッピングねじ用鋼およびこの鋼によって造られた高強度ねじを提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、以下の知見を得た。
▲1▼Crを多量に添加すること。
▲2▼成分の含有割合を適正なDI値範囲に調整すること。
▲3▼表面硬さ、内部硬さ、有効硬化層深さを適正に制御すること。
▲4▼浸炭焼き入れ後の焼戻し温度を適正に制御すること。
によって太径のねじやボルトに対しても浸炭による硬さのバランスを制御でき、所望の強度が得られる。
【0010】
この発明は、このような知見に基づいてなされたもので、下記を特徴とするものである。
【0011】
請求項1記載の発明は、C:0.05〜0.20、Si:0.20以下(0は含まない)、Mn:0.5〜2.0、P:0.015以下、S:0.015以下、Al:0.02〜0.08、N:0.0060以下、Cr:0.80超〜2.0(以上、mass%)、残部:鉄および不可避的不純物からなることに特徴を有するものである。
【0012】
請求項2記載の発明は、更に、鋼成分として、Ni:3.5以下、Cu:1.0以下、Mo:0.30以下、B:0.0005〜0.0050からなる群から選択される少なくとも1種、および、Ti:0.005〜0.050、Nb:0.005〜0.050(以上、mass%)からなる群から選択される少なくとも1種の内の少なくとも一方を含有することに特徴を有するものである。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の鋼の、下記(1)式で表わされるDI値が17〜43mmの範囲であることに特徴を有するものである。
【0014】
DI=25.4×DIC(※1)×FSi(※2)×FMn(※3)×FCr(※4)
---(1)
但し、上記(1)式において、
※1:DIC=0.54×(C)、
※2:FSi=1.00+0.7×(Si)、
※3:FMn=3.3333×(Mn)+1.00(Mn≦1.20)、
FMn=5.10×(Mn)−1.12(Mn>1.20)、
※4:FCr=1.00+2.16×(Cr)
請求項4記載の発明は、下記(2)式で表されるDI値が17〜43mmの範囲であることに特徴を有するものである。
DI=25.4×DIC(※1)×FSi(※2)×FMn(※3)×FCr(※4)
×FMo(※5)×FCu(※6)×FNi(※7)×FB(※8)
---(2)
但し、上記(2)式において、
※1:DIC=0.54×(C)、
※2:FSi=1.00+0.7×(Si)、
※3:FMn=3.3333×(Mn)+1.00(Mn≦1.20)、
FMn=5.10×(Mn)−1.12(Mn>1.20)、
※4:FCr=1.00+2.16×(Cr)、
※5:FMo=1.00+3.00×(Mo)、
※6:FCu=1.00+0.365×(Cu)、
※7:FNi=1.00+0.363×(Ni)、
※8:FB=2(但し、Bを添加しない場合には、上記(2)式からFBを除外する。)
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の鋼からなり、浸炭処理後の表面硬さHv:550〜700、浸炭処理後の内部硬さHv:200〜320、有効硬化層深さ:0.05〜1.00mm、強度:800N/mm2以上であることに特徴を有するものである。
【0016】
請求項6記載の発明は、請求項2記載の鋼からなり、浸炭処理後の表面硬さHv:550〜700、浸炭処理後の内部硬さHv:200〜320、有効硬化層深さ:0.05〜1.00mm、強度:800N/mm2以上であることに特徴を有するものである。
【0017】
請求項7記載の発明は、請求項3記載の鋼からなり、浸炭処理後の表面硬さHv:550〜700、浸炭処理後の内部硬さHv:200〜320、有効硬化層深さ:0.05〜1.00mm、強度:800N/mm2以上であることに特徴を有するものである。
【0018】
請求項8記載の発明は、請求項4記載の鋼からなり、浸炭処理後の表面硬さHv:550〜700、浸炭処理後の内部硬さHv:200〜320、有効硬化層深さ:0.05〜1.00mm、強度:800N/mm2以上であることに特徴を有するものである。
【0019】
請求項9記載の発明は、請求項7記載のねじにおいて、浸炭処理後、200〜400℃の温度範囲内で焼戻しを行うことに特徴を有するものである。
【0020】
請求項10記載の発明は、請求項8記載のねじにおいて、浸炭処理後、200〜400℃の温度範囲内で焼戻しを行うことに特徴を有するものである。
【0021】
【発明の実施の形態】
次に、この発明における数値の限定理由について述べる。
【0022】
(1)C:0.05〜0.20mass%
Cは、鋼の強度を確保するのに重要な元素であるが、0.05mass%未満では所望の強度を得ることができず、浸炭硬化性も低下する。一方、0.20mass%を超えると、ねじ内部の硬度が高くなりすぎて、鋼の靭性が低下する。従って、C含有量は、0.05〜0.20mass%の範囲内に限定した。
【0023】
(2)Si:0.20mass%以下(0は含まない)
Siは、脱酸材として重要な作用をするので、製鋼段階においては必ず添加する。また、焼戻し軟化抵抗性および焼入性を向上させて強度を高くする元素である。しかし、含有量が増大すると、変形抵抗が増大すると共に、冷間鍛造性が低下する。従って、Si含有量の上限を0.20mass%とした。
【0024】
(3)Mn:0.5〜2.0mass%
MnもSi同様、鋼の脱酸処理に必要な元素であるが、焼入れ性を高める元素でもある。従って、所望の強度を確保するために0.5mass%以上の添加を必要とするが、P、Sと同様に、Mnも鋼の結晶粒界に偏析して粒界脆化を助長するので、上限を2.0mass%とした。
【0025】
(4)P=0.015mass%以下
Pは、オーステナイト粒界に偏析して、粒界強度を弱める。また、フェライト内に固溶して鋼の変形能を低下させる。このようにPは、この発明において不純物元素であるので、その含有量を0.015mass%以下とした。
【0026】
(5)S:0.015mass%以下
Sは、MnSを形成して鋼の変形能を低下させ、MnSは、亀裂発生の起点となる。このようにSは、この発明において不純物元素であるので、その含有量を0.015mass%以下とした。
【0027】
(6)sol.Al:0.020〜0.080mass%
Alは、脱酸材として必要な元素であるばかりでなく、粒界に偏析するNをAlNとして固定して粒界強度を高める作用を有する。Alによるこのような効果を発揮させるためには、sol.Al(酸可溶Al)として0.020mass%以上の量が必要である。しかしながら、sol.Alが0.080mass%を超えると、鋳片の連続鋳造時にAl2O3の凝集体を形成してノズル詰まりの原因となり、鋳造作業を困難にする。従って、sol.Al含有量は、0.020〜0.080mass%の範囲内に限定した。
【0028】
(7)N:0.0060mass%以下
Nは、ねじ加工時に歪み時効硬化を起こして鋼の冷間鍛造性を低下させ、工具の寿命も低下させる。このように、Nは、この発明において不純物元素であるので、その含有量を0.0060mass%以下とした。
【0029】
(8)Ti:0.005〜0.050mass%
Tiは、結晶粒の微紬化効果を有する。しかしながら、0.005mass%未満ではその効果が小さく、また、NをTiNとして固定する効果も小さい。ところが、0.050mass%を超えで添加しても、これらの効果は飽和するのみならず、TiNが高すぎると、硬質のTiN、TiCが多数形成し、鍛造性が低下する他、合金コストもかかる。従って、Ti含有量は、0.005:〜0.050mass%の範囲内に限定した。
【0030】
(9)Cr:0.80超〜2.0mass%
Crは、焼入性を高め、強度を確保するのに有用な元素であり、M8以上の太いサイズのボルトの強度を確保するためには、0.80mass%を超えて添加する必要があることが、本発明等の研究により明らかとなった。しかし、焼戻し軟化抵抗性を高める元素でもあり、多量に添加し過ぎると硬くなりすぎて靭性に悪影響を与える。従って、上限を2.0mass%とした。
【0031】
(10)Mo:0.30mass%以下
Moは、Pの粒界への偏析を防止し、粒界強度を高め、焼入性を向上させる有用な元素である。しかし、多量に添加するとCr同様に冷間鍛造性を阻害し、また、Moは高価な元素なので上限を0.30mass%とした。
【0032】
(11)B:0.0005〜0.0050mass%
Bは、微量の添加で焼入れ性を向上させる作用を有する。また、BNを形成してNの粒界偏析を防止する。Bの添加によってMnやCr、Mo含有量を低減することができ、鋼の冷間鍛造性を更に向上させることができる。Bによるこのような効果を発揮させるためには、0.0005mass%以上添加する必要がある。しかしながら、0.0050mass%を超えて添加すると、ボロンセメンタイトを析出して粒界強度を弱める。従って、B含有量は、0.0005〜0.0050mass%の範囲内に限定した。
【0033】
(12)Nb:0.005〜0.050mass%
NbもTiと同様、結晶粒の微細化効果を有するが、0.005mass%未満ではその効果が小さいので下限を0.005mass%とした。しかし、Ti同様にNbは、C、Nとの親和力が強いので炭化物や窒化物を形成しやすく、多量に添加されると粒界析出し脆化を促進する他、合金コストもかかる。従って、上限を0.050mass%とした。
【0034】
(13)Ni:3.5mass%以下
Niは、鋼に焼入れ性を付与して静的強度を上昇させるのに有効な元素である。しかも、靭性を向上させる効果も有するので、焼入れ性と靭性を確保するためには有効な元素である。しかし、多量に添加してもその効果は飽和し、且つ、非常に高価な元素なので上限を3.5mass%とした。
【0035】
(14)Cu:1.0mass%以下
Cuも鋼に焼入れ性を付与して静的強度を上昇させるのに有効な元素である。適正量添加することは機械的性質向上には有効であるが、添加しすぎると熱間圧延時に表面疵が発生しやすくなり冷間鍛造不良が起きるので、上限を1.0mass%とした。
【0036】
(15)表面のビッカース硬さHv:550〜700
所望のボルト強度および相手部材に雌ネジを成形する上で、ビッカース硬さHvで550未満では、先端が欠けたり、折れたりして雌ネジ成形が不可能になる。一方、Hvで700を超えると、切欠き効果が高まり亀裂発生を促進させる。従って、ねじ表面の硬さHVは、550〜700の範囲内とした。
【0037】
(16)内部のビッカース硬さHv:200〜320
表面硬さ同様、所望のボルト強度を得るため必要とする。Hv200未満では、所望のボルト強度が得られない。一方、Hvで320を超えると、靭性が低下し亀裂が進展しやすくなる。従って、ねじ内部の硬さHVは、Hv200〜320とした。
【0038】
(17)焼戻し温度:200〜400℃
焼戻し温度は、ボルトとしての最終的な性能(表面・内部硬さ)と密接に関係しており、200℃未満では硬くなり過ぎ、一方、400℃を超えると所望の強度が得られないので、200〜400℃の範囲内とした。
【0039】
(18)有効硬化層深さ:0.05〜1.00mm
相手部材に雌ネジを成形する上で、表面に所望の硬さを必要するが、その有効硬化層深さが0.05mm未満では、雌ネジ成形性に劣り、一方、1.00mmを超えると、内部の靭性が低下して亀裂の進展が捉進されるために、有効硬化層深さは、0.05〜1.00mmの範囲内とした。
【0040】
(19)DI値(mm):17〜43
DI値(mm)は、鋼の焼入れ性を評価する指標で、下記(1)式または(2)式に従って計算されるが、所望の強度を確保するためにある値以上必要である。しかし、17mm未満では、所望の強度が得られず、一方、43mmを超えると、靭性を損ねる危険があるので、DI値は、17〜43の範囲内とした。
【0041】
DI=25.4×DIC(※1)×FSi(※2)×FMn(※3)×FCr(※4)
---(1)
但し、上記(1)式において、
※1:DIC=0.54×(C)、
※2:FSi=1.00+0.7×(Si)、
※3:FMn=3.3333×(Mn)+1.00(Mn≦1.20)、
FMn=5.10×(Mn)−1.12(Mn>1.20)、
※4:FCr=1.00+2.16×(Cr)
DI=25.4×DIC(※1)×FSi(※2)×FMn(※3)×FCr(※4)
×FMo(※5)×FCu(※6)×FNi(※7)×FB(※8)
---(2)
但し、上記(2)式において、
※1:DIC=0.54×(C)、
※2:FSi=1.00+0.7×(Si)、
※3:FMn=3.3333×(Mn)+1.00(Mn≦1.20)、
FMn=5.10×(Mn)−1.12(Mn>1.20)、
※4:FCr=1.00+2.16×(Cr)、
※5:FMo=1.00+3.00×(Mo)、
※6:FCu=1.00+0.365×(Cu)、
※7:FNi=1.00+0.363×(Ni)、
※8:FB=2(但し、Bを添加しない場合には、上記(2)式からFBを除外する。)
【0042】
【実施例】
次に、この発明を実施例により更に説明する。
【0043】
表1に示す化学成分を含有する鋼材を、150kg/ch、真空溶解炉にて溶製し、116角のビレットに鍛伸後、熱間圧延によりφ8mmの線材を調製し、冷間鍛造・ねじ転造後、浸炭焼入れ焼戻して、M8のタッピンボルトNo.1〜30を製造した。ボルトの形状は、ねじの呼び径:8mm、呼び長さ:30mmの十字穴付六角ツバ付きボルトである。
【0044】
【表1】
【0045】
このようにして製造した各タッピンボルトを、引張試験、頭部靭性試験に供すると共に、硬さ、有効硬化層深さおよびタッピング性について調べた。
【0046】
ボルトの引張試験は、JISB1051のくさび引張試験で行い、くさびの角度は10°で実施し、頭部靭性試験は、JISB1055に準じた。
【0047】
硬さは、表面硬さは表層下0.02mm位置、内部硬さはD/4位置を測定した。有効硬化層深さは、表層からHv550までの硬さの位置として評価した。なお、硬さは全てマイクロビッカース硬度計で行った。
【0048】
タッピング性の評価は、下穴を開けた部材に一定トルクでボルトを締める試験を行い、破断の有無、ねじ山の破損状況、ねじ谷部の亀裂有無の状況で評価した(n=10)。
【0049】
上記試験結果を表2に示す。なお、表2中、タッピング性の○は、破断や破損、亀裂が発生しなかったボルトの数が8個以上の場合、×は、これが7個以下の場合を示す。
【0050】
【表2】
【0051】
表2から明らかなように、No.1〜13は、この発明の条件を満足する鋼を用いて製造された本発明ボルトであり、何れも、冷間鍛造性に優れると共に所望の強度、靭性を確保できているタッピング性に優れたボルトであった。
【0052】
No.14は、C量およびDI値が本発明鋼に比べて高い鋼からなる比較用ボルトであり、表面硬さおよび内部硬さが高く、靭性不足により頭部靭性試験時に頭飛びが生じた。
【0053】
No.15は、C量およびDI値が本発明範囲を外れて低い鋼からなる比較用ボルトであり、頭部靭性試験は良好であったが、所望の強度および表面硬さ、内部硬さが得られていないので、雌ねじ成形ができず、タッピング性能不良であった。
【0054】
No.16は、SiおよびDI値が本発明範囲を外れて高い鋼からなる比較用ボルトであり、強度は高いが、フェライト地の硬さ上昇により変形抵抗が高くなり内部硬さが上昇して、靭性に乏しく、頭部靭性試験時に亀裂が生じた。
【0055】
No.17は、Mn量およびDI値が本発明範囲を外れて高い鋼からなる比較用ボルトであり、焼入れ性が高すぎて硬化層深さが増加し、この結果、表面・内部硬度が上昇して、靭性が不足し、頭部靭性試験時に頭飛びが生じた。
【0056】
No.18は、Mn量およびDI値が本発明範囲を外れて低い鋼からなる比較用ボルトであり、頭部靭性試験は良好であったが、所望の強度が得られず、No.15の比較用ボルトと同様にタッピング性能が不良であった。
【0057】
No.19は、P量が本発明範囲を外れて高い鋼からなる比較用ボルトであり、粒界強度の低下によって、頭部靭性試験時に亀裂が生じた。
【0058】
No.20は、S量が本発明範囲を外れて高く、DI値が本発明範囲を外れて低い鋼からなる比較用ボルトであり、MnSの生成による悪影響で頭部靭性試験時に亀裂が生じた。
【0059】
No.21は、Al量が本発明範囲を外れて低い鋼からなる比較用ボルトであり、結晶粒の粗大化により焼きが入りすぎて内部靭性が不足し、この結果、頭部靭性試験時に頭飛びが生じた。
【0060】
No.22は、N量が本発明範囲を外れて高い鋼からなる比較用ボルトであり、内部の靭性が不足して、頭部靭性試験時に亀裂が生じた。
【0061】
No.23は、B量が本発明範囲を外れて高い鋼からなる比較用ボルトであり、ボロンを含むセメンタイトが粒界に析出して粒界強度を弱めたために、頭部靭性試験時に亀裂が生じた。また、Ti量も本発明範囲を外れて高く、硬質なTiC、TiNが多数存在して、冷間鍛造性が悪く靭性も乏しかった。
【0062】
No.24は、Nb量およびDI値が本発明範囲を外れて高い鋼からなる比較用ボルトであり、NbC、Nb(CN)等の金属間化合物が多数存在するために粒界が弱くなって、頭部靭性試験時に亀裂の発生が生じた。
【0063】
No.25は、Cr量およびDI値が本発明範囲を外れて高い鋼からなる比較用ボルトであり、No.27は、Mo量が本発明範囲を外れて高い鋼からなる比較用ボルトであり、何れも、靭性不足により頭部靭性試験時に亀裂が生じて、頭飛びが発生した。
【0064】
No.26は、Cr量およびDI値が本発明範囲を外れて低い鋼からなる比較用ボルトであり、焼入れ性が低下して、所望の強度が得られず、頭部靭性試験時に亀裂が生じた。
【0065】
No.28は、焼戻し温度が本発明範囲を外れて低い比較用ボルトであり、靭性不足によって、頭部靭性試験時に頭飛びが生じた。
【0066】
No.29は、焼戻し温度が本発明範囲を外れて高い比較用ボルトであり、強度不足によりタッピング性が不良であった。
【0067】
No.30は、有効硬化層深さが本発明範囲を外れて浅い比較用ボルトであり、強度不足によりタッピング性が不良であった。
【0068】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、タッピング性、即ち、雌ねじ成形性と内部靭性に優れ、且つ、所定のボルト強度を有する高強度ねじ用鋼および高強度ねじの提供が可能になった。
Claims (10)
- C:0.05〜0.20、
Si:0.20以下(0は含まない)、
Mn:0.5〜2.0、
P:0.015以下、
S:0.015以下、
Sol.Al:0.020〜0.080、
N:0.0060以下、
Cr:0.80超〜2.0(以上、mass%)、
残部:鉄および不可避的不純物
からなることを特徴とする高強度ねじ用鋼。 - 更に、鋼成分として、
Ni:3.5以下、
Cu:1.0以下、
Mo:0.30以下、
B:0.0005〜0.0050
からなる群から選択される少なくとも1種、および、
Ti:0.005〜0.050、
Nb:0.005〜0.050(以上、mass%)
からなる群から選択される少なくとも1種の内の少なくとも一方を含有することを特徴とする、請求項1記載の高強度ねじ用鋼。 - 下記(1)式で表わされるDI値が17〜43mmの範囲であることを特徴とする、請求項1記載の高強度ねじ用鋼。
DI=25.4×DIC(※1)×FSi(※2)×FMn(※3)×FCr(※4)
---(1)
但し、上記(1)式において、
※1:DIC=0.54×(C)、
※2:FSi=1.00+0.7×(Si)、
※3:FMn=3.3333×(Mn)+1.00(Mn≦1.20)、
FMn=5.10×(Mn)−1.12(Mn>1.20)、
※4:FCr=1.00+2.16×(Cr) - 下記(2)式で表わされるDI値が17〜43mmの範囲であることを特徴とする、請求項2記載の高強度ねじ用鋼。
DI=25.4×DIC(※1)×FSi(※2)×FMn(※3)×FCr(※4)
×FMo(※5)×FCu(※6)×FNi(※7)×FB(※8)
---(2)
但し、上記(2)式において、
※1:DIC=0.54×(C)、
※2:FSi=1.00+0.7×(Si)、
※3:FMn=3.3333×(Mn)+1.00(Mn≦1.20)、
FMn=5.10×(Mn)−1.12(Mn>1.20)、
※4:FCr=1.00+2.16×(Cr)、
※5:FMo=1.00+3.00×(Mo)、
※6:FCu=1.00+0.365×(Cu)、
※7:FNi=1.00+0.363×(Ni)、
※8:FB=2(但し、Bを添加しない場合には、上記(2)式からFBを除外する。) - 浸炭処理後の表面硬さHv:550〜700、浸炭処理後の内部硬さHv:200〜320、有効硬化層深さ:0.05〜1.00mm、強度:800N/mm2以上であることを特徴とする、請求項1記載の鋼からなる高強度ねじ。
- 浸炭処理後の表面硬さHv:550〜700、浸炭処理後の内部硬さHv:200〜320、有効硬化層深さ:0.05〜1.00mm、強度:800N/mm2以上であることを特徴とする、請求項2記載の鋼からなる高強度ねじ。
- 浸炭処理後の表面硬さHv:550〜700、浸炭処理後の内部硬さHv:200〜320、有効硬化層深さ:0.05〜1.00mm、強度:800N/mm2以上であることを特徴とする、請求項3記載の鋼からなる高強度ねじ。
- 浸炭処理後の表面硬さHv:550〜700、浸炭処理後の内部硬さHv:200〜320、有効硬化層深さ:0.05〜1.00mm、強度:800N/mm2以上であることを特徴とする、請求項4記載の鋼からなる高強度ねじ。
- 浸炭処理後、200〜400℃の温度範囲内で焼戻しを行うことを特徴とする、請求項7記載の高強度ねじ。
- 浸炭処理後、200〜400℃の温度範囲内で焼戻しを行うことを特徴とする、請求項8記載の高強度ねじ。
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