JP4319280B2 - リン酸カルシウムセメント粉体及びリン酸カルシウムセメント組成物 - Google Patents

リン酸カルシウムセメント粉体及びリン酸カルシウムセメント組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、医科用或いは歯科用のリン酸カルシウムセメント粉体及びリン酸カルシウムセメント組成物に関する。特に、尿素を含有するセメント粉体及び尿素を含む混練液を含有するセメント組成物に関する。本発明のセメント粉体及びセメント組成物は、優れた強度と生体活性とを併せ有する人工骨、人工関節及び人工歯根等を形成するための生体用セメントとして用いることができる。
【0002】
【従来の技術】
生体に用いられる医療用セメントとしては、現在までに各種の組成のものが数多く提案されている。特に、リン酸カルシウム系の生体用セメントでは、このセメントが硬化とともに生体活性な水酸アパタイトに転化するため、生体親和性に優れた硬化体を得ることができる。
【0003】
このリン酸カルシウム系の生体用セメントとしては、リン酸四カルシウムを用いたものが多く、米国特許明細書第4612053号等には、リン酸四カルシウムとリン酸水素カルシウムとを主成分とするセメントが開示されている。また、このようなリン酸カルシウムセメントの硬化特性は混練時の液量に大きく左右され、混練液が少ないほど硬化時間が短くなり、且つ強度の大きい硬化体が得られることが知られている(1990, Orthopaedic Ceramic Implant Vol. 10 p43-47)。
【0004】
しかし、混練時の液量が少ないと混練体の粘度が高くなって操作性が低下し、また、骨欠損部等へ充填した場合に、クラック或いは空隙を生じ、硬化体の強度の低下を招く結果となる。そのため、実用的には、十分な操作性を有する混練体を得るための最小限の混練液が必要となる。一方、工業用セメントの分野においては、操作性の低下を抑えつつ混練液を少なくするための添加剤として減水剤、AE減水剤などを用いることが知られている。しかし、これらは生体内における安全性については考慮されておらず、生体用セメントにおいて使用することは好ましくない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題点を解決するものであり、リン酸カルシウムセメント粉体に対する混練液の量比、或いはリン酸カルシウムセメント組成物における混練液の量比が低くても、混練時の粘度の上昇が抑えられ、操作性に優れた混練体を得ることができるリン酸カルシウムセメント粉体及びリン酸カルシウムセメント組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、硬化時間が短く、且つ強度の大きい硬化体が得られるセメント粉体及びセメント組成物を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
第1発明のリン酸カルシウムセメント粉体は、リン酸カルシウム粉末と尿素とを含有し、上記リン酸カルシウムセメント粉末を100重量部とした場合に、上記尿素が0.1〜10重量部であることを特徴とする。また、第発明のリン酸カルシウムセメント組成物は、リン酸カルシウム粉末を含む粉体と、尿素を含む混練液とを含有し、上記混練液を100重量部とした場合に、上記尿素が0.1〜20重量部であることを特徴とする。
【0007】
第1及び第発明において、上記「尿素」は、医薬品の添加剤として使用されているものであり、生体に対する安全性、無毒性が既に保証されている。
【0008】
第1発明において、上記「リン酸カルシウムセメント粉末」を100重量部とした場合に、尿素の含有量は、「0.1〜10重量部」とする。また、第発明において、上記「混練液」を100重量部とした場合に、尿素の含有量は、「0.1〜20重量部」とする。尿素の含有量が、それぞれ下限未満の場合は、混練液として一般に用いられている水の量比を、尿素を含まない場合に比べて低くすると、十分に操作性に優れる混練体を得ることができず、成形型に充填した混練体に空隙を生ずることがある。一方、尿素の含有量が、それぞれ上限を越える場合は、混練体の硬化時間を十分に短くすることができず、硬化体の強度も向上しないため好ましくない。
【0009】
尿素の含有量は、第発明では、特に0.5〜8重量部、更には1〜5重量部とすることが好ましい。また、第発明では、特に0.5〜10重量部、更には1〜5重量部とすることが好ましい。この範囲の尿素を含有するリン酸カルシウム粉末、或いは混練液であれば、混練時の操作性に優れ、混練体は短時間で硬化し、且つ強度の大きい硬化体を得ることができる。尚、混練液として多用される水としては、特に純水を用いることが好ましく、また、水には、この種の混練液に従来より添加されている有機酸等を配合することもできる。
【0010】
リン酸カルシウムセメント粉体は、第発明のように、上記「多糖類」を含むものとすることができる。また、第発明のように、この多糖類を混練液に添加することもできる。このように、尿素と多糖類とを併用すれば、より少量の混練液によって、適度な粘性を有する混練体を得ることができ、その形態付与性を容易に向上させることができる。また、硬化時間を短縮することもでき、且つ強度の大きい硬化体とすることができる。この多糖類としては、各種の単糖類がポリグリコシル化し、高分子化したものを用いることができる。多糖類としては、特に、第及び第発明のように、上記「デキストラン」及び/又は上記「デキストラン硫酸塩」が好ましい。このデキストラン硫酸塩としては、デキストラン硫酸ナトリウム及びデキストラン硫酸カリウム等が特に好ましく、これらは1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。また、デキストランとその硫酸塩とを併用することもできる。このデキストラン及びその硫酸塩は、尿素と同様に水に易溶性であるため、混練液の主成分である水に容易に溶解し、均質な混練体とすることができる。
【0011】
これら多糖類の含有量は、第発明においては、リン酸カルシウム粉末を100重量部とした場合に、デキストランでは1〜10重量部、特に2〜8重量部とすることが好ましく、デキストラン硫酸塩では5〜25重量部、特に10〜20重量部とすることが好ましい。また、第発明においては、混練液を100重量部とした場合に、デキストランでは5〜30重量部、特に10〜25重量部とすることが好ましく、デキストラン硫酸塩では30〜60重量部、特に35〜55重量部とすることが好ましい。多糖類の含有量がこれらの範囲を下回る場合には、混練体が粘性に乏しく、形態付与が困難であり、多糖類を含有することによる特有の作用、効果が十分に得られない。また、これらの範囲を超える場合は、混練体の粘度が高くなりすぎる傾向にあり、形態付与が容易ではない
【0012】
尚、第1発明においては、多糖類を含む混練液を使用することもできる。この多糖類を含む混練液と、第発明のように、尿素及び多糖類を含有するセメント粉体とを用いる場合は、混練体の粘度及び形態付与性等を勘案し、多糖類の合計量を適量に調整する必要がある。また、第発明においては、多糖類を含む粉体を使用することもできる。この多糖類を含む粉体と、第発明のように、尿素及び多糖類を含む混練液とを用いる場合も、混練体の粘度及び形態付与性等を勘案し、多糖類の合計量を適量に調整する必要がある。
【0013】
第1発明のセメント粉体及び第発明のセメント組成物において、上記「リン酸カルシウム粉末」としては、リン酸四カルシウム、リン酸水素カルシウム、水酸アパタイト、α−リン酸三カルシウム及びβ−リン酸三カルシウム等の粉末を使用することができる。これらの粉末は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、この粉末には、硫酸バリウム、次炭酸ビスマス等のX線造影剤を配合することができる。更に、硬化時間を短縮するためにフッ化物等を種結晶として添加することもできる。
【0014】
第1発明のセメント粉体及び第発明のセメント組成物において、上記「リン酸カルシウム粉末」としては、第及び第発明のように、「リン酸四カルシウム及びリン酸水素カルシウム」の粉末を主成分とするものが好適である。これら2種類の粉末の量比は特に限定されないが、モル比で8/2〜2/8、特に6/4〜4/6、さらには等量程度を使用することが好ましい。尚、この「主成分」とは、リン酸カルシウム粉末の全量を100重量部とした場合に、上記の2種類の粉末の合計量が60重量部以上、特に好ましくは80重量部以上であることを意味する。
【0015】
リン酸四カルシウム粉末の製法については特に限定されず、どのような方法によって製造した粉末も使用することができる。例えば、炭酸カルシウムとリン酸水素カルシウムとの等モル混合物を所定形状に成形した後、1450〜1550℃の温度範囲で焼成し、これを粉砕したものなどを使用することができる。また、リン酸水素カルシウム粉末としては、リン酸水素カルシウム二水和物或いは無水物として市販されているものをそのまま使用することができる。更に、この市販の二水和物を120℃程度の温度で加熱し、脱水したものを用いることもできるが、特に、これらに限定されるものではない。
【0016】
本発明のリン酸カルシウムセメント粉体は、尿素を含有し、また、本発明のリン酸カルシウムセメント組成物においては、その混練液は尿素を含む。これらのセメント粉体或いはセメント組成物を混練する際、尿素は、水とともに凝集したリン酸カルシウム粉末の粒子間に浸透し、粒子を分散させる作用を有する。このように粉末粒子がより容易に分散するため、混練液の量比を低くしても、混練体の粘度はそれほど高くはならず、混練時の操作性に優れる。また、混練液の量比を少し高くすることによって、混練体の粘度をより低くすることができ、骨欠損部或いは骨折部等への注射器による補填が容易となる。それによって患者への負担を軽減することができる。更に、炎症を起こすこともなく、良好な治癒が可能となる。
【0017】
更に、リン酸カルシウム粉末のみからなるセメントの場合、及び尿素を含まない混練液とした場合と同程度の粘度の混練体とするための混練液の量比を低くすることができる。そのため、より硬化時間を短くすることができ、且つ強度の大きい硬化体とすることができる。JIS T 6602に従って測定した硬化時間は10〜25分、特に10〜20分とすることができ、濡れ圧縮強度は500〜700kg/cm2、特に600〜700kg/cm2とすることができる。
【0018】
また、第及び第発明において、尿素に、適量のデキストラン及び/又はその硫酸塩等を併用したセメント粉体とすることによって、或いはデキストラン及び/又はその硫酸塩等を含む混練液を使用することによって、水に溶解した多糖類がリン酸カルシウム粉末の粒子間を接合する作用を有するため、混練体が適度な粘性を有するものとなる。それによって、より少ない混練液で十分に形態付与性に優れた混練体とすることができる。尚、本発明において、形態の付与とは、初期形状の付与及び補填後などにおける形状の修正、調整を併せ意味する。
【0019】
混練体の粘度は、リン酸カルシウム粉末と混練液との量比によって調整することもできるが、本発明では、尿素を使用しない場合と同程度の粘度の混練体を得るための混練液の量比を低くすることができる。この粉末と混練液との量比は、粉末100重量部に対して混練液を10〜25重量部程度とすることが好ましい。更に、この量比は、15〜25重量部、特に20重量部程度とすることがより好ましい。このように、本発明では、混練液の量比を低くすることができるが、混練液の量比が低すぎる場合は、混練体の粘度が高くなり、所定の形態を付与することが難しくなる。また、混練液の量比が高くなりすぎると、混練体の粘度が低くなって取り扱い易くはなるが、混練体が、体液との接触によって崩壊し易くなるため好ましくない。
【0020】
本発明のリン酸カルシウムセメント粉体或いはリン酸カルシウムセメント組成物を用いた混練体は、これのみを生体内に補填して人工骨、人工歯根等の用途に用いることができる。また、混練時に、骨形成因子、抗ガン剤及び抗生物質等を添加し、薬物徐放のための担体として利用することもできる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、実施例によって本発明を詳しく説明する。
以下の実験例において、リン酸カルシウム粉末としては、リン酸四カルシウム粉末と、リン酸水素カルシウム無水物の粉末との等モル量を混合したものを用いた。また、尿素としては和光純薬株式会社製のものを使用した。更に、多糖類としては、デキストラン40(平均分子量;40000、名糖産業株式会社製、以下、「DEX」という。)及びデキストラン硫酸ナトリウム イオウ5(平均分子量;2000、名糖産業株式会社製、以下、「DSS」という。)を用いた。
【0022】
(1)セメント粉体に含有される尿素量等の検討
実験例1(セメント粉体が尿素を含有しない例)
リン酸カルシウム粉末をセメント粉体とし、これに混練液として純水を配合し、混練して混練体を得た。純水と粉体との重量比(この混練液とセメント粉体との量比を、以下、「L/P」と表す。)は0.21とした。しかし、混練体の粘度が高く、これを成形型に充填し、硬化させて得られた硬化体には多数の空隙が認められた。尚、この実験例において混練液を減量し、L/Pを0.19とした場合は混練することができなかった。
【0023】
実験例2(セメント粉体が少量の尿素を含有する例)
リン酸カルシウム粉末と、0.05重量部の尿素とをボールミルによって混合して調製されたリン酸カルシウムセメント粉体を用いた他は実験例1と同様にして混練し、混練体を得た。しかし、尿素が少ないため、この混練体の粘度は十分に低くはならず、これを成形型に充填し、硬化させて得られた硬化体には空隙が認められた。また、L/Pを0.19とした場合は混練が容易ではなかった。
【0024】
実験例3(セメント粉体が適量の尿素を含有する例)
0.1重量部の尿素を含有するセメント粉体を便用し、L/Pを0.19とした他は実験例2と同様にして混練し、混練体を得た。この混練体は、実験例2に比べてL/Pが低いにもかかわらず、成形型に容易に充填することができ、操作性に優れ、得られた硬化体に空隙は認められなかった。
【0025】
実験例4〜5(セメント粉体が適量の尿素を含有する例)
2重量部(実験例4)及び5重量部(実験例5)の尿素をそれぞれ含有するセメント粉体を使用し、L/Pを0.17とした他は実験例2と同様にして混練し、混練体を得た。これらの混練体は、L/Pが実験例3よりもさらに低いにもかかわらず、いずれも成形型に容易に充填することができ、操作性に優れ、得られた硬化体に空隙は認められなかった。
【0026】
実施例6(セメント粉体が適量をやや超えた尿素を含有する例)
尿素の含有量を第2発明の上限を超えて12重量部とした他は実験例4と同様にして混練し、混練体を得た。この混練体は、L/Pが低いにもかかわらず、成形型に容易に充填することができ、操作性に慢れ、得られた硬化体に空隙は認められなかった。但し、硬化時間が長くなり、圧縮強度も低下する傾向にあった。
【0027】
実験例7(セメント粉体が尿素を含有せず、L/Pが高い例)
L/Pを0.29と高くした他は実験例1と同様にして混練し、混練体を得た。このようにL/Pを高くすれぱ、純水のみからなる混練液であっても、混練体を成形型に容易に充填することができ、操作性に優れ、得られた硬化体に空隙は認められなかった。また、この混練体は粘度が低く、18ゲージの注射器によって押し出すことができた。しかし、この実験例7では、硬化時間が長く、且つ得られる硬化体の圧縮強度も大きく低下した。また、L/Pを0.25とした場合は、18ゲージの注射器によって押し出すことはできなかった。
【0028】
実験例8(セメント粉体が適量の尿素を含有し、L/Pがやや高い例)
4重量部の尿素を含有するセメント粉体を使用し、L/Pを0.25とした他は実験例2と同様にして混練し、混練体を得た。この混練体は、成形型に容易に充填することができ、操作性に優れ、得られた硬化体に空隙は認められなかった。また、この混練体は粘度が低く、18ゲージの注射器から押し出すことができた。但し、L/Pが高いため、硬化時間がやや長くなり、圧縮強度も低下する傾向にあった。
【0029】
実験例9〜12(セメント粉体が適量の尿素を含有し、且つ純水にDEX又はDSSが添加された混練液を用いた例)
実験例5のセメント粉体と、DEXを純水に3重量部(実験例9)、25重量部(実験例10)及び35重量部(実験例11)それぞれ溶解させた混練液、並びにDSSを純水に50重量部溶解させた混練液と、を各々用い、L/Pを0.19とした他は実験例2と同様にして混練し、混練体を得た。これらの混練体は、適度な粘度を有し、形態付与が容易であった。また、成形型への充填も容易であって、得られた硬化体に空隙は認められなかった。
【0030】
実験例13(セメント粉体が適量の尿素とDSSとを含有する例)
10重量部の尿素、及び10重量部のDSSを含有するセメント粉体を使用した他は実験例2と同様にして混練し、混練体を得た。この混練体は、適度な粘度を有し、形態付与が容易であった。また、成形型への充填も容易であって、得られた硬化体に空隙は認められなかった。
【0031】
実験例14(操作性、充填性及び形態付与性の評価)
実験例1〜13において調製した混練体を、内径6mm、高さ5mmの成形型に充填して成形し、得られた成形体を型から取り出し、直ちに37℃の擬似体液に浸漬した。その結果、実験例3〜6及び8〜13では、成形体は崩壊することなく形状を維待したまま硬化することが確認された。一方、リン酸カルシウム粉末のみからなるセメントを使用した実験例1及び7では、成形体が崩壊し、形状が維持されなかった。また、尿素の含有量が第2発明の下限値末満である実験例2でも、成形体が崩壊する傾向にあった。
【0032】
実験例15(硬化体の結晶構成相の確認)
実験例3〜6及び8〜13において調製した混練体を、温度37℃、相対湿度100%の雰囲気において硬化させた。硬化の時間は混練開始から1時間とした。得られた硬化体を37℃の擬似体液に23時間浸潰した後、X線回析法によって硬化体の結晶構成相を確認した。その結果、いずれの実験例においても水酸アパタイトとリン酸四カルシウムの回析ピークが確認された。図1に、実験例5の混練体を硬化させて得られた硬化体のX線回析のチャートを示す。
【0033】
実験例16(硬化時間及び圧縮強度の評価)
実験例1〜13において調製した混練体の硬化時間及び濡れ圧縮強度をJIST 6602に従って測定した。
表1に結果を示す。尚、表1おいて「PW」は純水を意味する。また、表1には、実験例1〜13の操作性及び充填性、並びに実験例9〜13の形態付与性を併せて示す。
【0034】
【表1】
Figure 0004319280
【0035】
表1の結果によれぱ、第発明に対応する量の尿素を含有するセメント粉体を便用した実験例3〜5では、硬化時間は17分以下と短く、且つ圧縮強度は600kg/cm以上と大きい。一方、リン酸カルシウム粉末のみからなるセメント粉体を便用した実験例1及び7、及び尿素の含有量が第発明の下限値未満である実験例2では、硬化時間が長くなる傾向にあり、圧縮強度も低いことが分かる。特に、セメント粉体が尿素を含有せず、L/Pが高い実験例7では、より硬化時間が長く、圧縮強度も大きく低下している。また、尿素の含有量が第発明の上限値を超える実験例6でも、硬化時間が長くなり、圧縮強度も低下している。更に、混練液として純水にDEX又はDSSを添加したものを用いた実験例9〜12、及びリン酸カルシウム粉末に尿素及びDSSを添加した実験例13では、いずれも硬化時間が短く、得られる硬化体は十分な圧縮強度を有しており、形態付与性にも優れていることが分かる。
【0036】
(2)純水に含有される尿素量等の検討
実験例17(純水が少量の尿素を含有する例)
純水に0.05重量部の尿素を溶解させて調製した混練液を、セメント粉体に配合して混練し、混練体を得た。L/Pは0.21とした。この混練体は粘度が高く、操作性にやや劣り、これを成形型に充填し、硬化させて得られた硬化体には空隙が認められた。
【0037】
実験例18(純水が適量の尿素を含有する例)
0.1重量部の尿素を含む混練液を便用した他は実験例17と同様にしてセメント粉体を混練し、混練体を得た。この混練体は粘度が低く、操作性は良好であった。また、成形型に容易に充填することができ、得られた硬化体に空隙は認められなかった。
【0038】
実験例19〜20(純水が適量の尿素を含有する例)
それぞれ1重量部(実験例19)及び10重量部(実験例20)の尿素を含む混練液を使用し、L/Pを0.19とした他は実験例17と同様にしてセメント粉体を混練し、混練体を得た。この混練体は粘度が低く、操作性は度好であった。また、成形型に容易に充填することができ、得られた硬化体に空隙は認められなかった。
【0039】
実験例21(純水が適量をやや超えた尿素を含有する例)
25重量部の尿素を含む混練液を便用し、L/Pを0.17とした他は実験例17と同様にしてセメント粉体を混練し、混練体を得た。この混練体は、操作性が良好であり、成形型への充填も客易であった。恒し、硬化時間が長くなり、圧縮強度も低下する傾向にあった。
【0040】
実験例22(純水が通量の尿素を含有し、L/Pがやや高い例)
20重量部の尿素を含む混練液を使用し、L/Pを0.23とした他は実験例17と同様にしてセメント粉体を混練し、混練体を得た。この混練体は粘度が低く、18ゲージの注射器によって押し出すことができた。但し、硬化時間がやや長くなり、圧縮強度も低下する傾向にあった。
【0041】
実験例23〜26(純水が適量の尿素とDEX又はDSSとを含有する例)
15重量部の尿素、並びにそれぞれ2重量部(実験例23)、20重量部(実験例24)及び33重量部(実験例25)のDEX、又は40重量部のDSS(実験例26)を含む混練液を使用し、L/Pを0.19とした他は実験例17と同様にしてセメント粉体を混練し、混練体を得た。これらの混練体はパテ状であり、操作性は良好であって、形態付与性に優れていた。また、成形型への充填も容易であって、得られた硬化体に空隙は認められなかった。
【0042】
実験例27(操作性、充填性及び形態付与性の評価)
実験例17〜26において調製した混練体を、内径6mm、高さ5mmの成形型に充填して成形し、得られた成形体を型から取り出し、直ちに37℃の擬似体液に浸潰した。その結果、実験例18〜26では、成形体は崩壌することなく形状を維待したまま硬化することが確認された。一方、尿素の含有量が第発明の下限値末満である実験例17では、成形体が崩壊する傾向にあった。
【0043】
実験例28(硬化体の結晶構成相の確認)
実験例17〜26において調製した混練体を、温度37℃、相対湿度100%の雰囲気において硬化させた。硬化の時間は混練開始から1時間とした。得られた硬化体を37℃の擬似体液に23時間浸潰した後、X線回析法によって硬化体の結品構成相を確認した。その結果、実験例17〜26のいずれにおいても水酸アパタイトとリン酸四カルシウムの回析ピークが確認された。図2に、実験例20の混練体を硬化させて得られた硬化体のX線回析のチャートを示す。
【0044】
実験例29(硬化時間及び圧縮強度の評価)
実験例17〜26において調製した混練体の硬化時間及び濡れ圧縮強度をJIS T 6602に従って測定した。
表2に結果を示す。尚、表2には、実験例17〜26の操作性及び充填性、並びに実験例23〜26の形態付与性を併せて示す。
【0045】
【表2】
Figure 0004319280
【0046】
表2の結果によれぱ、第発明に対応する含有量の尿素を含む混練液を使用した実験例18〜20及び22では、硬化時間は23分以下と短く、且つ圧縮強度は530kg/cm以上と大きい。一方、尿素の含有量が第発明の下限値末満である実験例17では、硬化時間が長く、圧縮強度も低いことが分かる。また、尿素の含有量が第発明の上限値を越える実験例21では、硬化時間が長くなり、圧縮強度も低下している。更に、混練液として純水に尿素及びDEX又はDSSを添加したものを用いた実験例23〜26では、いずれも硬化時間が短く、得られる硬化体は十分な圧縮強度を有しており、形態付与性にも優れていることが分かる。
【0047】
【発明の効果】
第1発明のリン酸カルシウムセメント粉体、及び第発明のリン酸カルシウムセメント組成物では、粉体に対する混練液の配合量が少なくても、混練時の粘度が低く、混練が容易であり、比較的短時間のうちに硬化させることができ、且つ得られる硬化体の強度も大きい。また、混練後、直ちに擬似体液と接触させても崩壊することがなく、形状が維持される。更に、第及び第発明、並びに第及び第発明のように、デキストラン及びその硫酸塩等の多糖類を併用することにより、より形態付与性に優れた混練体とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実験例5の混練体を実験例14の条件によって硬化させて得られた硬化体のX線回折のチャートである。
【図2】実験例20の混練体を実験例27の条件によって硬化させて得られた硬化体のX線回折のチャートである。

Claims (8)

  1. リン酸カルシウム粉末と尿素とを含有するリン酸カルシウムセメント粉体であって、
    上記リン酸カルシウムセメント粉末を100重量部とした場合に、上記尿素が0.1〜10重量部であることを特徴とするリン酸カルシウムセメント粉体。
  2. 多糖類を含有する請求項1記載のリン酸カルシウムセメント粉体。
  3. 上記多糖類が、デキストラン及びデキストラン硫酸塩のうちの少なくとも一方である請求項記載のリン酸カルシウムセメント粉体。
  4. 上記リン酸カルシウム粉末の主成分が、リン酸四カルシウム及びリン酸水素カルシウムである請求項1乃至のうちのいずれか1項に記載のリン酸カルシウムセメント粉体。
  5. リン酸カルシウム粉末を含む粉体と、尿素を含む混練液とを含有するリン酸カルシウムセメント組成物であって、
    上記混練液を100重量部とした場合に、上記尿素が0.1〜20重量部であることを特徴とするリン酸カルシウムセメント組成物。
  6. 上記混練液が多糖類を含む請求項記載のリン酸カルシウムセメント組成物。
  7. 上記多糖類が、デキストラン及びデキストラン硫酸塩のうちの少なくとも一方である請求項記載のリン酸カルシウムセメント組成物。
  8. 上記リン酸カルシウム粉末の主成分が、リン酸四カルシウム及びリン酸水素カルシウムである請求項乃至のうちのいずれか1項に記載のリン酸カルシウムセメント組成物。
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