以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態は一例であり、本発明は以下の実施の形態に限定されない。また、以下の実施の形態では、同一の部分については同一の符号を付して重複する説明を省略する場合がある。
(実施の形態1)
実施の形態1では、本発明の情報記録媒体の一例を説明する。実施の形態1の情報記録媒体15の一部断面図を図1に示す。情報記録媒体15は、レーザビーム11の照射によって情報の記録再生が可能な光学的情報記録媒体である。
情報記録媒体15では、基板14上に成膜された情報層16、および透明層13により構成されている。透明層13の材料は、光硬化性樹脂(特に紫外線硬化性樹脂)や遅効性樹脂等の樹脂、あるいは誘電体等からなり、使用するレーザビーム11に対して光吸収が小さいことが好ましく、短波長域において光学的に複屈折が小さいことが好ましい。また、透明層13は、透明な円盤状のポリカーボネートまたはアモルファスポリオレフィンまたはPMMA等の樹脂またはガラスを用いてもよい。この場合、透明層13は、光硬化性樹脂(特に紫外線硬化性樹脂)や遅効性樹脂等の樹脂によって第1誘電体層102に貼り合わせることが可能である。
レーザビーム11の波長λは、レーザビーム11を集光した際のスポット径が波長λによって決まってしまう(波長λが短いほど、より小さなスポット径に集光可能)ため、高密度記録の場合、特に450nm以下であることが好ましく、また、350nm未満では透明層13等による光吸収が大きくなってしまうため、350nm〜450nmの範囲内であることがより好ましい。
基板14は、透明で円盤状の基板である。基板14は、例えば、ポリカーボネートやアモルファスポリオレフィンやPMMA等の樹脂、またはガラスを用いることができる。
基板14の情報層16側の表面には、必要に応じてレーザビームを導くための案内溝が形成されていてもよい。基板14の情報層16側と反対側の表面は、平滑であることが好ましい。基板14の材料としては、転写性・量産性に優れ、低コストであることから、ポリカーボネートが特に有用である。なお、基板14の厚さは、十分な強度があり、かつ情報記録媒体15の厚さが1.2mm程度となるよう、0.5mm〜1.2mmの範囲内であることが好ましい。なお、透明層13の厚さが0.6mm程度(NA=0.6で良好な記録再生が可能)の場合、5.5mm〜6.5mmの範囲内であることが好ましい。また、透明層13の厚さが0.1mm程度(NA=0.85で良好な記録再生が可能)の場合、1.05mm〜1.15mmの範囲内であることが好ましい。
以下、情報層16の構成について詳細に説明する。
情報層16は、レーザビーム11の入射側から順に配置された第1誘電体層102、第1界面層103、記録層104、第2界面層105、第2誘電体層106、および反射層108を備える。
第1誘電体層102は、誘電体からなる。この第1誘電体層102は、記録層104の酸化、腐食、変形等を防止する働きと、光学距離を調整して記録層104の光吸収効率を高める働き、および記録前後の反射光量の変化を大きくして信号強度を大きくする働きとを有する。第1誘電体層102には、例えばTiO2、ZrO2、HfO2、ZnO、Nb2O5、Ta2O5、SiO2、SnO2、Al2O3、Bi2O3、Cr2O3、Ga2O3などの酸化物を用いることができる。また、C−N、Ti−N、Zr−N、Nb−N、Ta−N、Si−N、Ge−N、Cr−N、Al−N、Ge−Si−N、Ge−Cr−Nなどの窒化物を用いることもできる。また、ZnSなどの硫化物やSiCなどの炭化物、LaF3などの弗化物、およびCを用いることもできる。また、上記材料の混合物を用いることもできる。例えば、ZnSとSiO2との混合物であるZnS−SiO2は、第1誘電体層102の材料として特に優れている。ZnS−SiO2は、非晶質材料で、屈折率が高く、成膜速度が速く、機械特性および耐湿性が良好である。
第1誘電体層102の膜厚は、マトリクス法に基づく計算により、記録層104の結晶相である場合とそれが非晶質相である場合の反射光量の変化が大きくなる条件を満足するように厳密に決定することができる。
第1界面層103は、繰り返し記録によって第1誘電体層102と記録層104との間で生じる物質移動を防止する働きがある。第1界面層103は、光の吸収が少なく記録の際に溶けない高融点な材料で、かつ、記録層104との密着性が良い材料であることが好ましい。記録の際に溶けない高融点な材料であることは、高パワーのレーザビーム11を照射した際に、溶けて記録層104に混入しないために必要な特性である。第1界面層103の材料が混入すると、記録層104の組成が変わり、書き換え性能が著しく低下する。また、記録層104と密着性が良い材料であることは、信頼性確保に必要な特性である。
第1界面層103には、第1誘電体層102と同様の系の材料を用いることができる。その中でも、特にCrとOを含む材料を用いると、記録層104の結晶化をより促進するため好ましい。その中でも、CrとOがCr2O3を形成した酸化物を含むことが好ましい。Cr2O3は記録層104との密着性が良い材料である。
また、第1界面層103には、特にGaとOを含む材料を用いることもできる。その中でも、GaとOがGa2O3を形成した酸化物を含むことが好ましい。Ga2O3は記録層104との密着性が良い材料である。
また、第1界面層103には、CrとO、またはGaとOの他に、M1(但し、M1はZr、Hfの少なくともいずれか一つの元素)をさらに含んでもよい。ZrO2およびHfO2は、透明で融点が約2700〜2800℃と高く、かつ酸化物の中では熱伝導率が低い材料で、繰り返し書き換え性能が良い。この2種類の酸化物を混合することによって、記録層104と部分的に接して形成しても、繰り返し書き換え性能に優れ、信頼性の高い情報記録媒体15が実現できる。
記録層104との密着性を確保するため、Cr2O3−M1O2中またはGa2O3−M1O2中のCr2O3またはGa2O2の含有量は10mol%以上あることが好ましい。さらに、Cr2O3−M1O2中のCr2O3の含有量は第1界面層103での光吸収を小さく保つため70mol%以下であることが好ましい(Cr2O3が多くなると光吸収が増加する傾向にある)。
第1界面層103には、Cr、M1、O、またはGa、M1、Oの他にさらにSiを含む材料を用いても良い。SiO2を含ませることにより、透明性が高くなり、記録性能に優れた第1情報層16を実現できる。SiO2−Cr2O3−M1O2中またはSiO2−Ga2O3−M1O2中のSiO2の含有量は5mol%以上あることが好ましく、記録層104との密着性を確保するため50mol%以下であることが好ましい。より好ましくは、10mol%以上40mol%以下であることが好ましい。
第1界面層103の膜厚は、第1界面層103での光吸収によって情報層16の記録前後の反射光量の変化が小さくならないよう、0.5nm〜15nmの範囲内であることが望ましく、1nm〜7nmの範囲内にあることがより好ましい。
第2界面層105は、第1界面層103と同様に、繰り返し記録によって第2誘電体層106と記録層104との間で生じる物質移動を防止する働きがある。第2界面層105には、第1誘電体層102と同様の系の材料を用いることができる。その中でも、特にGaとOを含む材料を用いることが好ましい。その中でも、GaとOがGa2O3を形成した酸化物を含むことが好ましい。また、第2界面層105には、特にCrとOを含む材料を用いることもできる。その中でも、CrとOがCr2O3を形成した酸化物を含むことが好ましい。また、CrとO、またはGaとOの他に、M1をさらに含んでもよいし、Cr、M1、O、またはGa、M1、Oの他にさらにSiを含む材料を用いても良い。第2界面層105は第1界面層103より密着性が悪い傾向にあるため、Cr2O3−M1O2中、Ga2O3−M1O2中、SiO2−Cr2O3−M1O2中またはSiO2−Ga2O3−M1O2中のCr2O3またはGa2O3の含有量は第1界面層103のそれより多い20mol%以上であることが好ましい。
第2界面層105の膜厚は、第1界面層103と同様に、0.5nm〜15nmの範囲内であることが望ましく、1nm〜7nmの範囲内にあることがより好ましい。
第2誘電体層106には、第1誘電体層102と同様の系の材料を用いることができる。その中でも、特にC、Si、SnおよびOを含む材料を用いることが好ましい。その中でも、SnとOがSnO2を形成し、SiとCがSiCを形成した化合物を含むことが好ましい。SnO2とSiCの混合物であるSnO2−SiCは、熱伝導率が低くかつSを含まない材料であるため、第2誘電体層106として優れた材料であり、もちろん第1誘電体層102としても使用可能である。なお、第2誘電体層106の組成を、組成式CdSieSnfO100-d-e-f(原子%)と表した場合、d、eおよびfはそれぞれ、0<d<25、0<e<25、15<f<40の範囲にあることが好ましく、1<d<12、1<e<12、26<f<33の範囲にあることがより好ましい。また、第2誘電体層106の組成を、組成式(SnO2)100-x(SiC)x(mol%)と表した場合、xは0<x≦50の範囲にあることが好ましく、5≦x≦30の範囲にあることがより好ましい。なお、第2誘電体層106は、さらにTi、Zr、Hf、Y、Zn、Nb、Ta、Al、Bi、Cr、Ga、GeおよびLaから選ばれる少なくとも一つの元素を含んでもよく、その場合、TiO2、ZrO2、HfO2、ZnO、Nb2O5、Ta2O5、SiO2、Al2O3、Bi2O3、Cr2O3、Ga2O3、Si−N、Ge−N、Cr−NおよびLaF3といった化合物を形成した状態で含まれることが好ましい。
第2誘電体層106の膜厚は、2nm〜75nmの範囲内であることが好ましく、2nm〜40nmの範囲内であることがより好ましい。第2誘電体層106の膜厚をこの範囲内で選ぶことによって、記録層104で発生した熱を効果的に反射層108側に拡散させることができる。
記録層104の材料は、レーザビーム11の照射によって結晶相と非晶質相との間で相変化を起こす材料からなる。記録層104は、例えばGe、Te、M2(但し、M2はSb、Biの少なくともいずれか一つの元素)を含む可逆的な相変化を起こす材料で形成できる。具体的には、記録層104は、GeaM2bTe3+aで表される材料で形成でき、非晶質相が安定で低い転送レートでの記録保存性が良好で、融点の上昇と結晶化速度の低下が少なく高い転送レートでの書き換え保存性が良好となるよう0<a≦60の関係を満たすことが望ましく、4≦a≦40の関係を満たすことがより好ましい。また、非晶質相が安定で、結晶化速度の低下が少ない1.5≦b≦7の関係を満たすことが好ましく、2≦b≦4の関係を満たすことがより好ましい。
また、記録層104は、組成式(Ge−M3)aM2bTe3+a(但し、M3はSnおよびPbから選ばれる少なくとも一つの元素)で表される可逆的な相変化を起こす材料で形成しても良い。この材料を用いた場合、Geを置換した元素M3が結晶化能を向上させるため、記録層104の膜厚が薄い場合でも十分な消去率が得られる。元素M3としては、毒性がない点でSnがより好ましい。この材料を用いる場合も、0<a≦60(より好ましくは4≦a≦40)、かつ1.5≦b≦7(より好ましくは2≦b≦4)であることが好ましい。
また、記録層104では、例えばSbとM4(但し、M4はV、Mn、Ga、Ge、Se、Ag、In、Sn、Te、Pb、Bi、Tb、DyおよびAuから選ばれる少なくとも一つの元素)を含む可逆的な相変化を起こす材料で形成することもできる。具体的には、記録層104は、SbzM4100-z(原子%)で表される材料で形成できる。zが、50≦z≦95を満たす場合には、記録層104が結晶相の場合と非晶質相の場合との間の情報記録媒体15の反射率差を大きくでき、良好な記録再生特性が得られる。その中でも、75≦z≦95の場合には、結晶化速度が特に速く、高い転送レートにおいて良好な書き換え性能が得られる。また、50≦z≦75の場合には、非晶質相が特に安定で、低い転送レートにおいて良好な記録性能が得られる。
記録層104の膜厚は、情報層16の記録感度を高くするため、6nm〜15nmの範囲内であることが好ましい。この範囲内においても、記録層104が厚い場合には熱の面内方向への拡散による隣接領域への熱的影響が大きくなる。また、記録層104が薄い場合には情報層16の反射率が小さくなる。したがって、記録層104の膜厚は、8nm〜13nmの範囲内であることがより好ましい。
また、記録層104には、不可逆な相変化を起こすTe−Pd−Oと表される材料で形成することもできる。この場合、記録層104の膜厚は10nm〜40nmの範囲内であることが好ましい。
反射層108は、記録層104に吸収される光量を増大させるという光学的な機能を有する。また、反射層108は、記録層104で生じた熱を速やかに拡散させ、記録層104を非晶質化しやすくするという熱的な機能も有する。さらに、反射層108は、使用する環境から多層膜を保護するという機能も有する。
反射層108の材料には、例えばAg、Au、CuおよびAlといった熱伝導率が高い単体金属を用いることができる。また、Al−Cr、Al−Ti、Al−Ni、Al−Cu、Au−Pd、Au−Cr、Ag−Pd、Ag−Pd−Cu、Ag−Pd−Ti、Ag−Ru−Au、Ag−Cu−Ni、Ag−Zn−Al、Ag−Nd−Au、Ag−Nd−Cu、Ag−BiまたはCu−Siといった合金を用いることもできる。特にAg合金は熱伝導率が大きいため、反射層108の材料として好ましい。反射層108の膜厚は、熱拡散機能が十分となる30nm以上であることが好ましい。この範囲内においても、反射層108が200nmより厚い場合には、その熱拡散機能が大きくなりすぎて情報層16の記録感度が低下する。したがって、反射層108の膜厚は30nm〜200nmの範囲内であることがより好ましい。
反射層108と第2誘電体層106の間に、界面層107を配置してもよい。この場合、界面層107には、反射層108について説明した材料より熱伝導率の低い材料を用いることができる。反射層108にAg合金を用いた場合、界面層107に例えばAl、またはAl合金を用いることができる。また、界面層107には、Cr、Ni、Si、Cなどの元素や、TiO2、ZrO2、HfO2、ZnO、Nb2O5、Ta2O5、SiO2、SnO2、Al2O3、Bi2O3、Cr2O3、Ga2O3などの酸化物を用いることができる。また、C−N、Ti−N、Zr−N、Nb−N、Ta−N、Si−N、Ge−N、Cr−N、Al−N、Ge−Si−N、Ge−Cr−Nなどの窒化物を用いることもできる。また、ZnSなどの硫化物やSiCなどの炭化物、LaF3などの弗化物、およびCを用いることもできる。また、上記材料の混合物を用いることもできる。また、膜厚は3nm〜100nm(より好ましくは10nm〜50nm)の範囲内であることが好ましい。
情報層16において、記録層104が結晶相である場合の反射率Rc(%)、および記録層104が非晶質相である場合の反射率Ra(%)は、Ra<Rcを満たすことが好ましい。このことにより、情報が記録されていない初期の状態で反射率が高く、安定に記録再生動作を行うことができる。また、反射率差(Rc−Ra)を大きくして良好な記録再生特性が得られるように、Rc、Raは、0.2≦Ra≦10かつ12≦Rc≦40を満たすことが好ましく、0.2≦Ra≦5かつ12≦Rc≦30を満たすことがより好ましい。
情報記録媒体15は、以下に説明する方法によって製造できる。
まず、基板14(厚さが例えば1.1mm)上に情報層16を積層する。情報層は、単層膜、または多層膜からなり、それらの各層は、成膜装置内で材料となるスパッタリングターゲットを順次スパッタリングすることによって形成できる。
具体的には、まず、基板14上に反射層108を成膜する。反射層108は、反射層108を構成する金属または合金からなるスパッタリングターゲットを、Arガス雰囲気中、またはArガスと反応ガス(酸素ガスおよび窒素ガスから選ばれる少なくとも一つのガス)との混合ガス雰囲気中でスパッタリングすることによって形成できる。
続いて、反射層108上に、必要に応じて界面層107を成膜する。界面層107は、界面層107を構成する元素または化合物からなるスパッタリングターゲットを、Arガス雰囲気中、またはArガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中でスパッタリングすることによって形成できる。
続いて、反射層108、または界面層107上に、第2誘電体層106を成膜する。第2誘電体層106は、第2誘電体層106を構成する化合物からなるスパッタリングターゲット(例えば、SnO2−SiC)を、Arガス雰囲気中、またはArガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中でスパッタリングすることによって形成できる。また、第2誘電体層106は、第2誘電体層106を構成する金属からなるスパッタリングターゲットを、Arガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中で反応性スパッタリングすることによっても形成できる。なお、第2誘電体層106を成膜する際のスパッタリングターゲットは、組成式CgSihSniO1-g-h-i(原子%)と表される場合、g、hおよびiは、それぞれ0<g<30、0<h<30、15<i<40の範囲にあることが好ましく、1<g<17、1<h<17、26<i<33の範囲にあることがより好ましい。また、第2誘電体層106を成膜する際のスパッタリングターゲットが、組成式(SnO2)100-y(SiC)y(mol%)と表される場合、yは0<y≦55の範囲にあることが好ましく、5≦y≦35の範囲にあることがより好ましい。
続いて、反射層108、界面層107、または第2誘電体層106上に、必要に応じて第2界面層105を成膜する。第2界面層105は、第2誘電体層106と同様の方法で形成できる。
続いて、第2誘電体層106、または第2界面層105上に、記録層104を成膜する。記録層104は、その組成に応じて、Ge−Te−M2合金からなるスパッタリングターゲット、Ge−M3−Te−M2合金からなるスパッタリングターゲット、Sb−M4合金からなるスパッタリングターゲット、またはTe−Pd合金からなるスパッタリングターゲットを、一つの電源を用いてスパッタリングすることによって形成できる。
スパッタリングの雰囲気ガスには、Arガス、Krガス、Arガスと反応ガスとの混合ガス、またはKrガスと反応ガスとの混合ガスを用いることができる。また、記録層104は、Ge、Te、M2、M3、Sb、M4、またはPdの各々のスパッタリングターゲットを複数の電源を用いて同時にスパッタリングすることによって形成することもできる。また、記録層104は、Ge、Te、M2、M3、Sb、M4、またはPdのうちいずれかの元素を組み合わせた2元系スパッタリングターゲットや3元系スパッタリングターゲットなどを、複数の電源を用いて同時にスパッタリングすることによって形成することもできる。これらの場合でも、Arガス雰囲気中、Krガス雰囲気中、Arガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中、またはKrガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中でスパッタリングすることによって形成する。
続いて、記録層104上に、必要に応じて第1界面層103を成膜する。第1界面層103は、第2誘電体層106と同様の方法で形成できる。
続いて、記録層104、または第1界面層103上に、第1誘電体層102を成膜する。第1誘電体層102は、第2誘電体層106と同様の方法で形成できる。
最後に、第1誘電体層102上に透明層13を形成する。透明層13は、光硬化性樹脂(特に紫外線硬化性樹脂)または遅効性樹脂を第1誘電体層102上に塗布してスピンコートしたのち、樹脂を硬化させることによって形成できる。また、透明層13には、透明な円盤状のポリカーボネートまたはアモルファスポリオレフィンまたはPMMA等の樹脂またはガラスなどの基板を用いてもよい。この場合、透明層13は、光硬化性樹脂(特に紫外線硬化性樹脂)や遅効性樹脂等の樹脂を第1誘電体層102上に塗布して、基板を第1誘電体層102上に密着させてスピンコートしたのち、樹脂を硬化させることによって形成できる。また、基板に予め粘着性の樹脂を均一に塗布し、それを第1誘電体層102に密着させることもできる。
なお、第1誘電体層102を成膜したのち、または透明層13を形成したのち、必要に応じて、記録層104の全面を結晶化させる初期化工程を行ってもよい。記録層104の結晶化は、レーザビームを照射することによって行うことができる。
以上のようにして、情報記録媒体15を製造できる。なお、本実施の形態においては、各層の成膜方法としてスパッタリング法を用いたが、これに限定されず真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法、MBE法等を用いることも可能である。
(実施の形態2)
実施の形態2では、本発明の情報記録媒体の一例を説明する。実施の形態2の情報記録媒体22の一部断面図を図2に示す。情報記録媒体22は、片面からのレーザビーム11の照射によって情報の記録再生が可能な多層光学的情報記録媒体である。
情報記録媒体22では、基板14上に光学分離層20、19、17等を介して順次積層されたN組(NはN≧2を満たす自然数)の情報層21、18、第1情報層23、および透明層13により構成されている。ここで、レーザビーム11の入射側から数えて(N−1)組目までの第1情報層23、情報層18(以下、レーザビーム11の入射側から数えてN組目の情報層を「第N情報層」と記す。)は、光透過形の情報層である。基板14、および透明層13には、実施の形態1で説明したものと同様の材料を用いることができる。また、それらの形状および機能についても、実施の形態1で説明した形状および機能と同様である。
光学分離層20、19、17等は、光硬化性樹脂(特に紫外線硬化性樹脂)や遅効性樹脂等の樹脂、あるいは誘電体等からなり、使用するレーザビーム11に対して光吸収が小さいことが好ましく、短波長域において光学的に複屈折が小さいことが好ましい。
光学分離層20、19、17等は、情報記録媒体22の第1情報層23、情報層18、21等のそれぞれのフォーカス位置を区別するために設ける層である。光学分離層20、19、17等の厚さは、対物レンズの開口数NAとレーザビーム11の波長λによって決定される焦点深度ΔZ以上であることが必要である。焦光点の強度の基準を無収差の場合の80%を仮定した場合、ΔZはΔZ=λ/{2(NA)2}で近似できる。λ=405nm、NA=0.85のとき、ΔZ=0.280μmとなり、±0.3μm以内は焦点深度内となる。そのため、この場合には、光学分離層20、19、17等の厚さは0.6μm以上であることが必要である。第1情報層23、情報層18、21等との間の距離は、対物レンズを用いてレーザビーム11を集光可能な範囲となるようにすることが望ましい。したがって、光学分離層20、19、17等の厚さの合計は、対物レンズが許容できる公差内(例えば50μm以下)にすることが好ましい。
光学分離層20、19、17等において、レーザビーム11の入射側の表面には、必要に応じてレーザビームを導くための案内溝が形成されていてもよい。
この場合、片側からのレーザビーム11の照射のみにより、第K情報層(Kは1<K≦Nの自然数)を第1〜第(K−1)情報層を透過したレーザビーム11によって記録再生することが可能である。
なお、第1情報層から第N情報層のいずれかを、再生専用タイプの情報層(ROM(Read Only Memory))、あるいは1回のみ書き込み可能な追記型の情報層(WO(Write Once))としてもよい。
以下、第1情報層23の構成について詳細に説明する。
第1情報層23は、レーザビーム11の入射側から順に配置された第3誘電体層202、第3界面層203、第1記録層204、第4界面層205、第1反射層208、および透過率調整層209を備える。
第3誘電体層202には、実施の形態1の第1誘電体層102と同様の材料を用いることができる。また、それらの機能についても、実施の形態1の第1誘電体層102と同様である。
第3誘電体層202の膜厚は、マトリクス法に基づく計算により、第1記録層204の結晶相である場合とそれが非晶質相である場合の反射光量の変化が大きく、かつ第1記録層204での光吸収が大きく、かつ第1情報層23の透過率が大きくなる条件を満足するように厳密に決定することができる。
第3界面層203には、実施の形態1の第1界面層103と同様の材料を用いることができる。また、それらの機能および形状についても、実施の形態1の第1界面層103と同様である。
第4界面層205は、光学距離を調整して第1記録層204の光吸収効率を高める働き、および記録前後の反射光量の変化を大きくして信号強度を大きくする働きを有する。第4界面層205には、実施の形態1の第2界面層105と同様の系の材料を用いることができる。また、第4界面層205の膜厚は、0.5nm〜75nmの範囲内であることが好ましく、1nm〜40nmの範囲内であることがより好ましい。第4界面層205の膜厚をこの範囲内で選ぶことによって、第1記録層204で発生した熱を効果的に第1反射層208側に拡散させることができる。
なお、第4界面層205と第1反射層208の間に、第4誘電体層206を配置してもよい。第4誘電体層206には、実施の形態1の第2誘電体層106と同様の系の材料を用いることができる。
第1記録層204の材料は、レーザビーム11の照射によって結晶相と非晶質相との間で相変化を起こす材料からなる。第1記録層204は、例えばGe、Te、M2を含む可逆的な相変化を起こす材料で形成できる。具体的には、第1記録層104は、GeaM2bTe3+aで表される材料で形成でき、非晶質相が安定で低い転送レートでの記録保存性が良好で、融点の上昇と結晶化速度の低下が少なく高い転送レートでの書き換え保存性が良好となるよう0<a≦60の関係を満たすことが望ましく、4≦a≦40の関係を満たすことがより好ましい。また、非晶質相が安定で、結晶化速度の低下が少ない1.5≦b≦7の関係を満たすことが好ましく、2≦b≦4の関係を満たすことがより好ましい。
また、第1記録層204は、組成式(Ge−M3)aM2bTe3+aで表される可逆的な相変化を起こす材料で形成しても良い。この材料を用いた場合、Geを置換した元素M3が結晶化能を向上させるため、第1記録層204の膜厚が薄い場合でも十分な消去率が得られる。元素M3としては、毒性がない点でSnがより好ましい。この材料を用いる場合も、0<a≦60(より好ましくは4≦a≦40)、かつ1.5≦b≦7(より好ましくは2≦b≦4)であることが好ましい。
第1情報層23は、レーザビーム11の入射側から第1情報層23より遠い側にある情報層に記録再生の際に必要なレーザ光量を到達させるため、第1情報層23の透過率を高くする必要がある。このため、第1記録層204の膜厚は、9nm以下であることが好ましく、2nm〜8nmの範囲内であることがより好ましい。
また、第1記録層204には、不可逆な相変化を起こすTe−Pd−Oと表される材料で形成することもできる。この場合、第1記録層204の膜厚は5nm〜30nmの範囲内であることが好ましい。
第1反射層208は、第1記録層204に吸収される光量を増大させるという光学的な機能を有する。また、第1反射層208は、第1記録層204で生じた熱を速やかに拡散させ、第1記録層204を非晶質化しやすくするという熱的な機能も有する。さらに、第1反射層208は、使用する環境から多層膜を保護するという機能も有する。
第1反射層208の材料には、実施の形態1の反射層108と同様の材料を用いることができる。また、それらの機能についても、実施の形態1の反射層108と同様である。特にAg合金は熱伝導率が大きいため、第1反射層208の材料として好ましい。第1反射層208の膜厚は、第1情報層23の透過率をできるだけ高くするため、3nm〜15nmの範囲内であることが好ましく、8nm〜12nmの範囲内であることがより好ましい。第1反射層208の膜厚がこの範囲内にあることにより、その熱拡散機能が十分で、かつ第1情報層23の反射率が確保でき、さらに第1情報層23の透過率も十分となる。
透過率調整層209は誘電体からなり、第1情報層23の透過率を調整する機能を有する。この透過率調整層209によって、第1記録層204が結晶相である場合の第1情報層23の透過率Tc(%)と、第1記録層204が非晶質相である場合の第1情報層23の透過率Ta(%)とを共に高くすることができる。具体的には、透過率調整層209を備える第1情報層23では、透過率調整層209が無い場合に比べて、2%〜10%程度透過率が上昇する。また、透過率調整層209は、第1記録層204で発生した熱を効果的に拡散させる効果も有する。
透過率調整層209の屈折率nおよび消衰係数kは、第1情報層23の透過率TcおよびTaを高める作用をより大きくするため、2.0≦nかつk≦0.1を満たすことが好ましく、2.4≦n≦3.0かつk≦0.05を満たすことがより好ましい。
透過率調整層209の膜厚lは、(1/32)λ/n≦l≦(3/16)λ/n又は(17/32)λ/n≦l≦(11/16)λ/nの範囲内であることが好ましく、(1/16)λ/n≦l≦(5/32)λ/n又は(9/16)λ/n≦l≦(21/32)λ/nの範囲内であることがより好ましい。なお、上記の範囲は、レーザビーム11の波長λと透過率調整層209の屈折率nとを、例えば350nm≦λ≦450nm、2.0≦n≦3.0に選ぶことによって、3nm≦l≦40nm又は60nm≦l≦130nmの範囲内であることが好ましく、7nm≦l≦30nm又は65nm≦l≦120nmの範囲内であることがより好ましいことになる。lをこの範囲内で選ぶことによって、第1情報層23の透過率TcおよびTaを共に高くすることができる。
透過率調整層209には、例えばTiO2、ZrO2、HfO2、ZnO、Nb2O5、Ta2O5、SiO2、Al2O3、Bi2O3、Cr2O3、Ga2O3、Sr−Oなどの酸化物を用いることができる。また、Ti−N、Zr−N、Nb−N、Ta−N、Si−N、Ge−N、Cr−N、Al−N、Ge−Si−N、Ge−Cr−Nなどの窒化物を用いることもできる。また、ZnSなどの硫化物を用いることもできる。また、上記材料の混合物を用いることもできる。これらの中でも、特にTiO2、およびTiO2を含む材料を用いることが好ましい。これらの材料は屈折率が大きく(n=2.6〜2.8)、消衰係数も小さい(k=0.0〜0.05)ため、第1情報層23の透過率を高める作用が大きくなる。
第1情報層23の透過率TcおよびTaは、記録再生の際に必要なレーザ光量を、レーザビーム11の入射側から第1情報層23より遠い側にある情報層に到達させるため、40<Tcかつ40<Taを満たすことが好ましく、46<Tcかつ46<Taを満たすことがより好ましい。
第1情報層23の透過率TcおよびTaは、−5≦(Tc−Ta)≦5を満たすことが好ましく、−3≦(Tc−Ta)≦3を満たすことがより好ましい。Tc、Taがこの条件を満たすことにより、レーザビーム11の入射側から第1情報層23より遠い側にある情報層の記録再生の際、第1情報層23の第1記録層204の状態による透過率の変化の影響が小さく、良好な記録再生特性が得られる。
第1情報層23において、第1記録層204が結晶相である場合の反射率Rc1(%)、および第1記録層204が非晶質相である場合の反射率Ra1(%)は、Ra1<Rc1を満たすことが好ましい。このことにより、情報が記録されていない初期の状態で反射率が高く、安定に記録再生動作を行うことができる。また、反射率差(Rc1−Ra1)を大きくして良好な記録再生特性が得られるように、Rc1、Ra1は、0.1≦Ra1≦5かつ4≦Rc1≦15を満たすことが好ましく、0.1≦Ra1≦3かつ4≦Rc1≦10を満たすことがより好ましい。
情報記録媒体22は、以下に説明する方法によって製造できる。
まず、基板14(厚さが例えば1.1mm)上に(N−1)層の情報層を、光学分離層を介して順次積層する。情報層は、単層膜、または多層膜からなり、それらの各層は、成膜装置内で材料となるスパッタリングターゲットを順次スパッタリングすることによって形成できる。また、光学分離層は、光硬化性樹脂(特に紫外線硬化性樹脂)または遅効性樹脂を情報層上に塗布して、その後基板14を回転させて樹脂を均一に延ばし(スピンコート)、樹脂を硬化させることによって形成できる。なお、光学分離層がレーザビーム11の案内溝を備える場合には、溝が形成された基板(型)を硬化前の樹脂に密着させたのち、基板14とかぶせた型を回転させてスピンコートし、樹脂を硬化させた後、基板(型)をはがすことによって案内溝を形成できる。
このようにして、基板14上に(N−1)層の情報層を、光学分離層を介して積層したのち、光学分離層17を形成したものを用意する。
続いて、光学分離層17上に第1情報層23を形成する。具体的には、まず(N−1)層の情報層を、光学分離層を介して積層したのち、光学分離層17を形成した基板14を成膜装置内に配置し、光学分離層17上に透過率調整層209を成膜する。透過率調整層209は、実施の形態1の第2誘電体層106と同様の方法で形成できる。
続いて、透過率調整層209上に、第1反射層108を成膜する。第1反射層108は、実施の形態1の反射層108と同様の方法で形成できる。
続いて、第1反射層208上に、必要に応じて第4誘電体層206を成膜する。第4誘電体層206は、実施の形態1の第2誘電体層106と同様の方法で形成できる。
続いて、第1反射層208または第4誘電体層206上に、第4界面層205を成膜する。第4界面層205は、実施の形態1の第2誘電体層106と同様の方法で形成できる。
続いて、第4界面層205上に、第1記録層204を成膜する。第1記録層204は、その組成に応じたスパッタリングターゲットを用いて、実施の形態1の記録層104と同様の方法で形成できる。
続いて、第1記録層204上に、第3界面層203を成膜する。第3界面層203は、実施の形態1の第2誘電体層106と同様の方法で形成できる。
続いて、第3界面層203上に、第3誘電体層202を成膜する。第3誘電体層202は、実施の形態1の第2誘電体層106と同様の方法で形成できる。
最後に、第3誘電体層202上に透明層13を形成する。透明層13は、実施の形態1で説明した方法で形成できる。
なお、第3誘電体層202を成膜したのち、または透明層13を形成したのち、必要に応じて、第1記録層204の全面を結晶化させる初期化工程を行ってもよい。第1記録層204の結晶化は、レーザビームを照射することによって行うことができる。
以上のようにして、情報記録媒体22を製造できる。なお、本実施の形態においては、各層の成膜方法としてスパッタリング法を用いたが、これに限定されず真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法、MBE法等を用いることも可能である。
(実施の形態3)
実施の形態3では、実施の形態2における本発明の多層光学的情報記録媒体において、N=2、すなわち2組の情報層によって構成された情報記録媒体の一例を説明する。実施の形態3の情報記録媒体24の一部断面図を図3に示す。情報記録媒体24は、片面からのレーザビーム11の照射によって情報の記録再生が可能な2層光学的情報記録媒体である。
情報記録媒体24は、基板14上に順次積層した、第2情報層25、光学分離層17、第1情報層23、および透明層13により構成されている。基板14、光学分離層17、第1情報層23、および透明層13には、実施の形態1および2で説明したものと同様の材料を用いることができる。また、それらの形状および機能についても、実施の形態1および2で説明した形状および機能と同様である。
以下、第2情報層25の構成について詳細に説明する。
第2情報層25は、レーザビーム11の入射側から順に配置された第1誘電体層302、第1界面層303、第2記録層304、第2界面層305、第2誘電体層306、および第2反射層308を備える。第2情報層25は、透明層13、第1情報層23、および光学分離層17を透過したレーザビーム11によって記録再生が行われる。
第1誘電体層302には、実施の形態1の第1誘電体層102と同様の材料を用いることができる。また、それらの機能についても、実施の形態1の第1誘電体層102と同様である。
第1誘電体層302の膜厚は、マトリクス法に基づく計算により、第2記録層304の結晶相である場合とそれが非晶質相である場合の反射光量の変化が大きくなる条件を満足するように厳密に決定することができる。
第1界面層303には、実施の形態1の第1界面層103と同様の材料を用いることができる。また、それらの機能および形状についても、実施の形態1の第1界面層103と同様である。
第2界面層305には、実施の形態1の第2界面層105と同様の材料を用いることができる。また、それらの機能および形状についても、実施の形態1の第2界面層105と同様である。
第2誘電体層306には、実施の形態1の第2誘電体層106と同様の材料を用いることができる。また、それらの機能および形状についても、実施の形態1の第2誘電体層106と同様である。
第2記録層304には、実施の形態1の記録層104と同様の材料で形成することができる。第2記録層304の膜厚は、その材料が可逆的な相変化を起こす材料(例えば、GeaM2bTe3+a)の場合、第2情報層25の記録感度を高くするため、6nm〜15nmの範囲内であることが好ましい。この範囲内においても、第2記録層304が厚い場合には熱の面内方向への拡散による隣接領域への熱的影響が大きくなる。また、第2記録層304が薄い場合には第2情報層25の反射率が小さくなる。したがって、第2記録層304の膜厚は、8nm〜13nmの範囲内であることがより好ましい。また、第2記録層304に、不可逆な相変化を起こす材料(例えば、Te−Pd−O)を用いる場合は、実施の形態1と同様、第2記録層304の膜厚は10nm〜40nmの範囲内であることが好ましい。
第2反射層308には、実施の形態1の反射層108と同様の材料を用いることができる。また、それらの機能および形状についても、実施の形態1の反射層108と同様である。
第2反射層308と第2誘電体層306の間に、界面層307を配置してもよい。界面層307には、実施の形態1の界面層107と同様の材料を用いることができる。また、それらの機能および形状についても、実施の形態1の界面層107と同様である。
情報記録媒体24は、以下に説明する方法によって製造できる。
まず、第2情報層25を形成する。具体的には、まず、基板14(厚さが例えば1.1mm)を用意し、成膜装置内に配置する。
続いて、基板14上に第2反射層308を成膜する。このとき、基板14にレーザビーム11を導くための案内溝が形成されている場合には、案内溝が形成された側に第2反射層308を成膜する。第2反射層308は、実施の形態1の反射層108と同様の方法で形成できる。
続いて、第2反射層308上に、必要に応じて界面層307を成膜する。界面層307は、実施の形態1の第2誘電体層106と同様の方法で形成できる。
続いて、第2反射層308または界面層307上に、第2誘電体層306を成膜する。第2誘電体層306は、実施の形態1の第2誘電体層106と同様の方法で形成できる。
続いて、第2反射層308、界面層307、または第2誘電体層306上に、必要に応じて第2界面層305を成膜する。第2界面層305は、実施の形態1の第2誘電体層106と同様の方法で形成できる。
続いて、第2誘電体層306、または第2界面層305上に、第2記録層304を成膜する。第2記録層304は、その組成に応じたスパッタリングターゲットを用いて、実施の形態1の記録層104と同様の方法で形成できる。
続いて、第2記録層304上に、必要に応じて第1界面層303を成膜する。第1界面層303は、実施の形態1の第2誘電体層106と同様の方法で形成できる。
続いて、第2記録層304、または第1界面層303上に、第1誘電体層302を成膜する。第1誘電体層302は、実施の形態1の第2誘電体層106と同様の方法で形成できる。
このようにして、第2情報層25を形成する。
続いて、第2情報層25の第1誘電体層302上に光学分離層17を形成する。光学分離層17は、光硬化性樹脂(特に紫外線硬化性樹脂)または遅効性樹脂を第1誘電体層302上に塗布してスピンコートしたのち、樹脂を硬化させることによって形成できる。なお、光学分離層17がレーザビーム11の案内溝を備える場合には、溝が形成された基板(型)を硬化前の樹脂に密着させたのち、樹脂を硬化させ、その後、基板(型)をはがすことによって案内溝を形成できる。
なお、第1誘電体層302を成膜したのち、または光学分離層17を形成したのち、必要に応じて、第2記録層304の全面を結晶化させる初期化工程を行ってもよい。第2記録層304の結晶化は、レーザビームを照射することによって行うことができる。
続いて、光学分離層17上に第1情報層23を形成する。具体的には、まず、光学分離層17上に、透過率調整層209、第1反射層208、第4界面層205、第1記録層204、第3界面層203、および第3誘電体層202をこの順序で成膜する。このとき、必要に応じて第1反射層208と第4界面層205の間に第4誘電体層206を成膜してもよい。これらの各層は、実施の形態2で説明した方法で形成できる。
最後に、第3誘電体層202上に透明層13を形成する。透明層13は、実施の形態1で説明した方法で形成できる。
なお、第3誘電体層202を成膜したのち、または透明層13を形成したのち、必要に応じて、第1記録層204の全面を結晶化させる初期化工程を行ってもよい。第1記録層204の結晶化は、レーザビームを照射することによって行うことができる。
また、第3誘電体層202を成膜したのち、または透明層13を形成したのち、必要に応じて、第2記録層304、および第1記録層204の全面を結晶化させる初期化工程を行ってもよい。この場合、第1記録層204の結晶化を先に行うと、第2記録層304を結晶化するために必要なレーザパワーが大きくなる傾向にあるため、第2記録層304を先に結晶化させることが好ましい。
以上のようにして、情報記録媒体24を製造できる。なお、本実施の形態においては、各層の成膜方法としてスパッタリング法を用いたが、これに限定されず真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法、MBE法等を用いることも可能である。
(実施の形態4)
実施の形態4では、本発明の情報記録媒体の一例を説明する。実施の形態4の情報記録媒体29の一部断面図を図4に示す。情報記録媒体29は、実施の形態1の情報記録媒体15と同様、レーザビーム11の照射によって情報の記録再生が可能な光学的情報記録媒体である。
情報記録媒体29は、基板26上に積層した情報層16とダミー基板28が、接着層27を介して密着された構成である。
基板26、およびダミー基板28は、透明で円盤状の基板である。基板26、およびダミー基板28には、実施の形態1の基板14と同様に、例えば、ポリカーボネートやアモルファスポリオレフィンやPMMA等の樹脂、またはガラスを用いることができる。
基板26の第1誘電体層102側の表面には、必要に応じてレーザビームを導くための案内溝が形成されていてもよい。基板26の第1誘電体層102側と反対側の表面、およびダミー基板28の接着層27側と反対側の表面は、平滑であることが好ましい。基板26およびダミー基板28の材料としては、転写性・量産性に優れ、低コストであることから、ポリカーボネートが特に有用である。なお、基板26、およびダミー基板28の厚さは、十分な強度があり、かつ情報記録媒体29の厚さが1.2mm程度となるよう、0.3mm〜0.9mmの範囲内であることが好ましい。
接着層27は、光硬化性樹脂(特に紫外線硬化性樹脂)や遅効性樹脂等の樹脂からなり、使用するレーザビーム11に対して光吸収が小さいことが好ましく、短波長域において光学的に複屈折が小さいことが好ましい。なお、接着層27の厚さは、光学分離層19、17等と同様の理由により、0.6μm〜50μmの範囲内にあることが好ましい。
その他、実施の形態1と同一の符号を付した部分については、その説明を省略する。
情報記録媒体29は、以下に説明する方法によって製造できる。
まず、基板26(厚さが例えば0.6mm)上に、情報層16を形成する。このとき、基板26にレーザビーム11を導くための案内溝が形成されている場合には、案内溝が形成された側に情報層16を形成する。具体的には、基板26を成膜装置内に配置し、第1誘電体層102、第1界面層103、記録層104、第2界面層105、第2誘電体層106、反射層108を順次積層する。なお、必要に応じて第2誘電体層106と反射層108の間に界面層107を成膜してもよい。各層の成膜方法は、実施の形態1と同様である。
次に、情報層16が積層された基板26およびダミー基板28(厚さが例えば0.6mm)を、接着層27を用いて貼り合わせる。具体的には、光硬化性樹脂(特に紫外線硬化性樹脂)や遅効性樹脂等の樹脂をダミー基板28上に塗布して、情報層16が積層された基板26をダミー基板28上に密着させてスピンコートしたのち、樹脂を硬化させるとよい。また、ダミー基板28上に予め粘着性の樹脂を均一に塗布し、それを情報層16が積層された基板26に密着させることもできる。
なお、基板26およびダミー基板28を密着させた後、必要に応じて、記録層104の全面を結晶化させる初期化工程を行ってもよい。記録層104の結晶化は、レーザビームを照射することによって行うことができる。
以上のようにして、情報記録媒体29を製造できる。なお、本実施の形態においては、各層の成膜方法としてスパッタリング法を用いたが、これに限定されず真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法、MBE法等を用いることも可能である。
(実施の形態5)
実施の形態5では、本発明の情報記録媒体の一例を説明する。実施の形態5の情報記録媒体31の一部断面図を図5に示す。情報記録媒体31は、実施の形態2の情報記録媒体22と同様、片面からのレーザビーム11の照射によって情報の記録再生が可能な多層光学的情報記録媒体である。
情報記録媒体31は、基板26上に光学分離層17、19等を介して順次積層したN組の第1情報層23、情報層18と、基板30上に積層した情報層21が、接着層27を介して密着された構成である。
基板30は透明で円盤状の基板である。基板30には、基板14と同様に、例えば、ポリカーボネートやアモルファスポリオレフィンやPMMA等の樹脂、またはガラスを用いることができる。
基板30の情報層21側の表面には、必要に応じてレーザビームを導くための案内溝が形成されていてもよい。基板30の情報層21側と反対側の表面は、平滑であることが好ましい。基板30の材料としては、転写性・量産性に優れ、低コストであることから、ポリカーボネートが特に有用である。なお、基板30の厚さは、十分な強度があり、かつ情報記録媒体31の厚さが1.2mm程度となるよう、0.3mm〜0.9mmの範囲内であることが好ましい。
その他、実施の形態2、および4と同一の符号を付した部分については、その説明を省略する。
情報記録媒体31は、以下に説明する方法によって製造できる。
まず、基板26(厚さが例えば0.6mm)上に、第1情報層23を形成する。このとき、基板26にレーザビーム11を導くための案内溝が形成されている場合には、案内溝が形成された側に第1情報層23を形成する。具体的には、基板26を成膜装置内に配置し、第3誘電体層202、第3界面層203、第1記録層204、第4界面層205、第1反射層208、透過率調整層209を順次積層する。なお、必要に応じて第4界面層205と第1反射層208の間に第4誘電体層206を成膜してもよい。各層の成膜方法は、実施の形態2と同様である。その後(N−2)層の情報層を、光学分離層を介して順次積層する。
また、基板30(厚さが例えば0.6mm)上に、情報層21を形成する。情報層は、単層膜、または多層膜からなり、それらの各層は、実施の形態2と同様、成膜装置内で材料となるスパッタリングターゲットを順次スパッタリングすることによって形成できる。
最後に、情報層が積層された基板26および基板30を、接着層27を用いて貼り合わせる。具体的には、光硬化性樹脂(特に紫外線硬化性樹脂)や遅効性樹脂等の樹脂を情報層21上に塗布して、第1情報層23を成膜した基板26を情報層21上に密着させてスピンコートしたのち、樹脂を硬化させるとよい。また、情報層21上に予め粘着性の樹脂を均一に塗布し、それを基板26に密着させることもできる。
なお、基板26および基板30を密着させた後、必要に応じて、第1記録層204の全面を結晶化させる初期化工程を行ってもよい。第1記録層204の結晶化は、レーザビームを照射することによって行うことができる。
以上のようにして、情報記録媒体31を製造できる。なお、本実施の形態においては、各層の成膜方法としてスパッタリング法を用いたが、これに限定されず真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法、MBE法等を用いることも可能である。
(実施の形態6)
実施の形態6では、実施の形態5における本発明の多層光学的情報記録媒体において、N=2、すなわち2組の情報層によって構成された情報記録媒体の一例を説明する。実施の形態6の情報記録媒体32の一部断面図を図6に示す。情報記録媒体32は、実施の形態3の情報記録媒体24と同様、片面からのレーザビーム11の照射によって情報の記録再生が可能な2層光学的情報記録媒体である。
情報記録媒体32は、基板26上に第1情報層23、基板30上に第2情報層25を積層し、接着層27を介して密着した構成である。
基板30の第2反射層308側の表面には、必要に応じてレーザビームを導くための案内溝が形成されていてもよい。基板30の第2反射層308側と反対側の表面は、平滑であることが好ましい。
その他、実施の形態3、実施の形態4、および実施の形態5と同一の符号を付した部分については、その説明を省略する。
情報記録媒体32は、以下に説明する方法によって製造できる。
まず、基板26(厚さが例えば0.6mm)上に、実施の形態5と同様の方法により第1情報層23を形成する。
なお、透過率調整層209を成膜したのち、必要に応じて、第1記録層204の全面を結晶化させる初期化工程を行ってもよい。第1記録層204の結晶化は、レーザビームを照射することによって行うことができる。
また、基板30(厚さが例えば0.6mm)上に、第2情報層25を形成する。このとき、基板30にレーザビーム11を導くための案内溝が形成されている場合には、案内溝が形成された側に第2情報層25を形成する。具体的には、基板30を成膜装置内に配置し、第2反射層308、第2誘電体層306、第2界面層305、第2記録層304、第1界面層303、第1誘電体層302を順次積層する。なお、必要に応じて第2反射層308と第2誘電体層306の間に界面層307を成膜してもよい。各層の成膜方法は、実施の形態3と同様である。
なお、第1誘電体層302を成膜したのち、必要に応じて、第2記録層304の全面を結晶化させる初期化工程を行ってもよい。第2記録層304の結晶化は、レーザビームを照射することによって行うことができる。
最後に、第1情報層23を積層した基板26と第2情報層25を積層した基板30を、接着層27を用いて貼り合わせる。具体的には、光硬化性樹脂(特に紫外線硬化性樹脂)や遅効性樹脂等の樹脂を第1情報層23または第2情報層25上に塗布して、基板26と基板30を密着させてスピンコートしたのち、樹脂を硬化させるとよい。また、第1情報層23または第2情報層25上に予め粘着性の樹脂を均一に塗布し、基板26と基板30を密着させることもできる。
その後、必要に応じて第2記録層304、および第1記録層204の全面を結晶化させる初期化工程を行ってもよい。この場合、実施の形態3と同様の理由により、第2記録層304を先に結晶化させることが好ましい。
以上のようにして、情報記録媒体32を製造できる。なお、本実施の形態においては、各層の成膜方法としてスパッタリング法を用いたが、これに限定されず真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法、MBE法等を用いることも可能である。
(実施の形態7)
実施の形態7では、実施の形態1、2、3、4、5、および6で説明した本発明の情報記録媒体の記録再生方法について説明する。
本発明の記録再生方法に用いられる記録再生装置38の一部の構成を図7に模式的に示す。図7を参照して、記録再生装置38は、情報記録媒体37を回転させるためのスピンドルモータ33と、半導体レーザ35、および半導体レーザ35から出射されるレーザビーム11を集光する対物レンズ34を備える光学ヘッド36を備える。情報記録媒体37は、実施の形態1、2、3、4、5、および6で説明した情報記録媒体であり、単数(例えば情報層16)、または複数の情報層(例えば第1情報層23、第2情報層25)を備える。対物レンズ34は、レーザビーム11を情報層上に集光する。
情報記録媒体への情報の記録、消去、および上書き記録は、レーザビーム11のパワーを、高パワーのピークパワー(Pp(mW))と低パワーのバイアスパワー(Pb(mW))とに変調させることによって行う。ピークパワーのレーザビーム11を照射することによって、記録層の局所的な一部分に非晶質相が形成され、その非晶質相が記録マークとなる。記録マーク間では、バイアスパワーのレーザビーム11が照射され、結晶相(消去部分)が形成される。なお、ピークパワーのレーザビーム11を照射する場合には、パルスの列で形成する、いわゆるマルチパルスとするのが一般的である。なお、マルチパルスはピークパワー、バイアスパワーのパワーレベルだけで変調されてもよいし、0mW〜ピークパワーの範囲のパワーレベルによって変調されてもよい。
また、ピークパワー、バイアスパワーのいずれのパワーレベルよりも低く、そのパワーレベルでのレーザビーム11の照射によって記録マークの光学的な状態が影響を受けず、かつ情報記録媒体から記録マーク再生のための十分な反射光量が得られるパワーを再生パワー(Pr(mW))とし、再生パワーのレーザビーム11を照射することによって得られる情報記録媒体からの信号を検出器で読みとることにより、情報信号の再生が行われる。
対物レンズ34の開口数NAは、レーザビームのスポット径を0.4μm〜0.7μmの範囲内に調整するため、0.5〜1.1の範囲内(より好ましくは、0.6〜0.9の範囲内)であることが好ましい。レーザビーム11の波長は、450nm以下(より好ましくは、350nm〜450nmの範囲内)であることが好ましい。情報を記録する際の情報記録媒体の線速度は、再生光による結晶化が起こりにくく、かつ十分な消去性能が得られる1m/秒〜20m/秒の範囲内(より好ましくは、2m/秒〜15m/秒の範囲内)であることが好ましい。
二つの情報層を備えた情報記録媒体24、および情報記録媒体32において、第1情報層23に対して記録を行う際には、レーザビーム11の焦点を第1記録層204に合わせ、透明層13を透過したレーザビーム11によって第1記録層204に情報を記録する。再生は、第1記録層204によって反射され、透明層13を透過してきたレーザビーム11を用いて行う。第2情報層25に対して記録を行う際には、レーザビーム11の焦点を第2記録層304に合わせ、透明層13、第1情報層23、および光学分離層17を透過したレーザビーム11によって情報を記録する。再生は、第2記録層304によって反射され、光学分離層17、第1情報層23、および透明層13を透過してきたレーザビーム11を用いて行う。
なお、基板14、光学分離層20、19、および17に、レーザビーム11を導くための案内溝が形成されている場合、情報は、レーザビーム11の入射側から近い方の溝面(グルーブ)に行われてもよいし、遠い方の溝面(ランド)に行われてもよい。また、グルーブとランドの両方に情報を記録してもよい。
記録性能は、レーザビーム11を0〜Pp(mW)の間でパワー変調し、(1−7)変調方式でマーク長0.149μm(2T)から0.596μm(8T)までのランダム信号を記録し、記録マークの前端間、および後端間のジッター(マーク位置の誤差)をタイムインターバルアナライザーで測定することによって評価した。なお、ジッター値が小さいほど記録性能がよい。なお、PpとPbは、前端間、および後端間のジッターの平均値(平均ジッター)が最小となるよう決定した。このときの最適Ppを記録感度とする。
また、信号強度は、レーザビーム11を0〜Pp(mW)の間でパワー変調し、マーク長0.149μm(2T)と0.671μm(9T)の信号を同じグルーブに連続10回交互記録し、最後に2T信号を上書きした場合の2T信号の周波数での信号振幅(carrier level)と雑音振幅(noise level)の比(CNR(Carrier to Noise Ratio))をスペクトラムアナライザーで測定することによって評価した。なお、CNRが大きいほど信号強度が強い。
さらに、繰り返し書き換え回数は、レーザビーム11を0〜Pp(mW)の間でパワー変調し、マーク長0.149μm(2T)から0.596μm(8T)までのランダム信号を同じグルーブに連続記録し、各記録書き換え回数における前端間、および後端間ジッターをタイムインターバルアナライザーで測定することによって評価した。1回目の前端間と後端間の平均ジッター値に対し3%増加する書き換え回数を上限値とした。なお、PpとPbは、平均ジッター値が最も小さくなるように決定した。
(実施の形態8)
実施の形態8では、本発明の情報記録媒体の一例を説明する。実施の形態8の電気的情報記録媒体44の一構成例と記録再生装置50を図8に示す。電気的情報記録媒体44は、電気的エネルギー(特に電流)の印加によって情報の記録再生が可能な情報記録媒体である。
基板39の材料としては、ポリカーボネート等の樹脂基板、ガラス基板、Al2O3等のセラミック基板、Si等の各種半導体基板、Cu等の各種金属基板を用いることができる。ここでは、基板としてSi基板を用いた場合について説明する。電気的情報記録媒体44は、基板39上に下部電極40、第1誘電体層401、第1記録層41、第2記録層42、第2誘電体層402、上部電極43を順に積層した構造である。下部電極40、および上部電極43は、第1記録層41、および第2記録層42に電流を印加するために形成する。なお、第1誘電体層401は第1記録層41に印加する電気エネルギー量を調整し、第2誘電体層402は第2記録層42に印加する電気エネルギー量を調整するために設置される。
第1誘電体層401および第2誘電体層402の材料は、実施の形態1の第2誘電体層106と同様の材料を用いることができる。
第1記録層41、および第2記録層42は、電流の印加により発生するジュール熱によって結晶相と非晶質相との間で可逆的な相変化を起こす材料であり、結晶相と非晶質相との間で抵抗率が変化する現象を情報の記録に利用する。第1記録層41の材料は実施の形態2の第1記録層204と同様の材料、第2記録層42の材料は実施の形態3の第2記録層304と同様の材料を用いることができる。
第1記録層41、および第2記録層42は、それぞれ実施の形態2の第1記録層204、および実施の形態3の第2記録層304と同様の方法で形成できる。
また、下部電極40、および上部電極43には、Al、Au、Ag、Cu、Pt等の単体金属材料、あるいはこれらのうちの1つまたは複数の元素を主成分とし、耐湿性の向上あるいは熱伝導率の調整等のために適宜1つまたは複数の他の元素を添加した合金材料を用いることができる。下部電極40、および上部電極43は、Arガス雰囲気中で材料となる金属母材または合金母材をスパッタリングすることによって形成できる。なお、各層の成膜方法としては、真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法、MBE法等を用いることも可能である。
図8のように、電気的情報記録媒体44に、印加部45を介して電気的情報記録再生装置50を電気的に接続する。この電気的情報記録再生装置50により、下部電極40と上部電極43の間には、第1記録層41、および第2記録層42に電流パルスを印加するためにパルス電源48がスイッチ47を介して接続される。また、第1記録層41、および第2記録層42の相変化による抵抗値の変化を検出するために、下部電極40と上部電極43の間にスイッチ49を介して抵抗測定器46が接続される。非晶質相(高抵抗状態)にある第1記録層41または第2記録層42を結晶相(低抵抗状態)に変化させるためには、スイッチ47を閉じて(スイッチ49は開く)電極間に電流パルスを印加し、電流パルスが印加される部分の温度が、材料の結晶化温度より高く、かつ融点より低い温度で、結晶化時間の間保持されるようにする。結晶相から再度非晶質相に戻す場合には、結晶化時よりも相対的に高い電流パルスをより短い時間で印加し、記録層を融点より高い温度にして溶融した後、急激に冷却する。なお、電気的情報記録再生装置50のパルス電源48は、図11の記録・消去パルス波形を出力できるような電源である。
ここで、第1記録層41が非晶質相の場合の抵抗値をra1、第1記録層41が結晶相の場合の抵抗値をrc1、第2記録層42が非晶質相の場合の抵抗値をra2、第2記録層42が結晶相の場合の抵抗値をrc2とする。ここで、rc1≦rc2<ra1<ra2もしくはrc1≦rc2<ra2<ra1もしくはrc2≦rc1<ra1<ra2もしくはrc2≦rc1<ra2<ra1であることによって、第1記録層41と第2記録層42の抵抗値の和を、ra1+ra2、ra1+ra2、ra2+rc1、およびrc1+rc2の4つの異なる値に設定できる。従って、電極間の抵抗値を抵抗測定器46で測定することにより、4つの異なる状態、すなわち2値の情報を一度に検出することができる。
この電気的情報記録媒体44をマトリクス的に多数配置することによって、図9に示すような大容量の電気的情報記録媒体51を構成することができる。各メモリセル54には、微小領域に電気的情報記録媒体44と同様の構成が形成されている。各々のメモリセル54への情報の記録再生は、ワード線52、およびビット線53をそれぞれ一つ指定することによって行う。
図10は電気的情報記録媒体51を用いた、情報記録システムの一構成例を示したものである。記憶装置56は、電気的情報記録媒体51と、アドレス指定回路55によって構成される。アドレス指定回路55により、電気的情報記録媒体51のワード線52、およびビット線53がそれぞれ指定され、各々のメモリセル54への情報の記録再生を行うことができる。また、記憶装置56を、少なくともパルス電源58と抵抗測定器59から構成される外部回路57に電気的に接続することにより、電気的情報記録媒体51への情報の記録再生を行うことができる。
(実施の形態9)
本発明の情報記録媒体においては、記録層と接して形成される材料層が、SnおよびGaから成る群GMより選ばれる少なくとも一つの元素と、Si、TaおよびTiから成る群GLより選ばれる少なくとも一つの元素と、酸素(O)と炭素(C)とを含んでいる。さらに前記材料層は、ZrまたはHfのうち少なくとも一つの元素を任意に含んでいてもよい。材料層をこのような材料で形成することにより、従来の情報記録媒体の誘電体層に使用していたZnS−20mol%SiO2と同等以上の成膜速度を実現できるとともに、材料層を構成する元素にSを含まないため、材料層を誘電体層に用いた場合に別途界面層を設ける必要がなく、かつ記録再生する波長の光に対してある程度の透明性を有する誘電体層を形成できる。さらに、このような材料層を誘電体層に用いれば、界面層を介さずに直接記録層の上下に誘電体層を設けても、十分な記録感度と書き換え性能を確保することができる。なお、本発明の情報記録媒体は、光を照射することによって、あるいは電気的エネルギーを印加することによって、情報を記録再生する媒体である。一般に、光の照射は、レーザ光を照射することにより実施され、電気的エネルギーの印加は記録層に電圧を印加することにより実施される。以下、本発明の情報記録媒体を構成する材料層の材料について、より具体的に説明する。
本発明の情報記録媒体において、前記材料層が、下記の組成式:
MHOILJCK(原子%)・・・(式1)
(式中、Mは前記群GMより選ばれる少なくとも一つの元素を示し、Lは前記群GLより選ばれる少なくとも一つの元素を示し、H、I、JおよびKは、10≦H≦40、35≦I≦70、0<J≦30、0<K≦30、H+I+J+K=100を満たす。)
で表される材料を含んでいてもよい。ここで、「原子%」とは、組成式(1)が、「M」原子、酸素原子、「L」原子、および炭素原子を合わせた数を基準(100%)として表された組成式であることを示している。以下の式においても「原子%」の表示は、同様の趣旨で使用している。また、(式1)は、材料層に含まれる、「M」原子、酸素原子、「L」原子、および炭素原子のみをカウントして表したものである。したがって、組成式(1)で示される材料を含む材料層に、これらの原子以外の成分を含むことがある。さらに、(式1)において、各原子がどのような化合物として存在しているかは問われない。このような組成式で材料を特定しているのは、薄膜に形成した層の組成を調べるに際し、化合物の組成を求めることは難しく、現実には、元素組成(即ち、各原子の割合)のみを求める場合が多いことによる。(式1)で表される材料において、元素Mの殆どは酸素原子とともに酸化物として存在し、元素Lの殆どは、炭素原子とともに炭化物として存在していると考えられる。ただ、これら元素Mと元素Lは各々、酸素原子または炭素原子とも結合した化合物になっていても有効である。
本発明の情報記録媒体が光情報記録媒体である場合、群GMより選ばれる元素と、群GLより選ばれる元素と、酸素(O)および炭素(C)とを含む材料層(以下、「酸化物−炭化物系材料層」と称する。)を用いて、記録層と隣接する2つの誘電体層のうち、いずれか一方もしくは両方の誘電体層を形成することが好ましい。例えば、相変化による記録媒体の場合、記録層を構成する主材料系の融点は500〜700℃くらいに対し、群GMを構成するSnおよびGaの酸化物はいずれも、融点が1000℃以上あり、熱安定性に優れる。熱的安定性に優れた材料を含む誘電体層は、この誘電体層を含む情報記録媒体に情報が繰り返し書き換えられる場合でも、劣化しにくく、耐久性に優れる。一方、群GLを構成するSi、TaおよびTiの炭化物は、耐湿性に優れ、酸化物に混合することにより、記録感度を大幅に向上する効果がある。また、上記酸化物および炭化物はいずれも、カルコゲナイド材料にて形成される記録層との密着性が良好である。したがって、この酸化物−炭化物系材料層を誘電体層として形成した情報記録媒体においては、
(1)Sを含まない誘電体層を、記録層に良好に密着させて形成できるので、界面層が不要である
(2)図5に示す従来の情報記録媒体と同程度またはそれ以上の繰り返し書き換えに対する耐久性、および耐湿性を情報記録媒体に付与できる
(3)複数の酸化物または炭化物とが混合されて構造が複雑となるため、誘電体層の熱伝導率が小さくなり、それにより記録層が急冷されやすくなり、記録感度が高くなる
という効果が得られる。
本発明の情報記録媒体が光情報記録媒体において、材料層が、下記の組成式:
MHAPOILJCK(原子%)・・・(式2)
(式中、Mは前記群GMより選ばれる少なくとも一つの元素を示し、AはZrおよびHfより選ばれる少なくとも一つの元素を示し、Lは前記群GLより選ばれる少なくとも一つの元素を示し、H、P、I、JおよびKは、10≦H≦40、0<P≦15、35≦I≦70、0<J≦30、0<K≦30、H+P+I+J+K=100を満たす。)
で表される材料を含んでいてもよい。(式2)で示される材料を含む材料層において、元素Aの殆どは、酸化物として存在していると考えられる。ただ、元素Aは、元素Mや元素Lと同様、酸素原子または炭素原子とも結合した化合物になっていても有効である。元素Aは、材料層の耐熱性を上げる効果があり、高速記録特性、高密度化を求める上で、材料層に耐熱性を付与したい場合、添加することが好ましい。(式2)で示される材料を含む材料層を、情報記録媒体の記録層に隣接する二つの誘電体層のうち何れか一方もしくは両方に適用することにより、より良好な記録感度と、優れた繰り返し書き換え性能を有し、生産性に優れた情報記録媒体を安価に製造できる。また、情報記録媒体のさらなる高密度化、高速記録化にも対応できる。
上記酸化物−炭化物系材料層において、(式1)および(式2)のMがSnであれば、さらに好ましく、SnとGaとを含む場合は、より望ましい。また、(式2)のAがZrであれば、材料層の耐熱性を上げ、記録感度も確保できるのでより好ましい。
上述のように、上記酸化物−炭化物系材料層において、SnおよびGaから成る群GMから選択される少なくとも一つの元素は、酸素と共に酸化物として存在し、Si、TaおよびTiから成る群GLから選択される少なくとも一つの元素は、炭素と共に炭化物として存在していると考えられ、これらを含む層として特定され得る。さらに、ZrまたはHfのうち少なくとも一つの元素は、酸素と共に酸化物として存在して任意に含んでもよい。このように特定される材料層において、群GMから選択される少なくとも一つの元素の酸化物群は、群GLから選択される少なくとも一つの元素の炭化物群と合わせた量を基準(100mol%)としたときに、50mol%以上含まれることが好ましく、50mol%〜95mol%含まれることがより好ましい。
ここで、「酸化物群」という用語は、群GMから選択される元素が2つであって、2種の酸化物が層に含まれている場合には、すべての酸化物を総称するために用いられる。あるいは、「酸化物群」という用語は、群GMから選択される元素が一つのみであって、1種の酸化物が層に含まれる場合には、その酸化物のみを指す。「炭化物群」という用語についても同様である。換言すれば、酸化物−炭化物系材料層は、上記に特定された以外の化合物(そのような化合物を「第三成分」とも呼ぶ。)を10mol%まで含んでよい。これは、第三成分の占める割合が10mol%を超えると、材料層の熱的安定性が低減し、記録感度や書き換え特性の悪化や、耐湿性の低下を招きやすくなり、上記所定の効果を得ることが難しくなることがあるからである。
なお、上記に特定された材料層にて形成された誘電体層に、数mol%以下の不純物や、近隣する層を構成する材料組成の元素が多少混じっていてもよい。
群GMから選択される元素の酸化物群の割合が50mol%未満になると、成膜速度が低下する傾向にある。群GLから選択される元素の炭化物群は、成膜速度は速くないのだが、酸化物と混合して用いる場合、成膜速度をさほど低下することなく、材料層を形成することができる。
また、本発明の情報記録媒体において、材料層は、群GMから選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物、好ましくは、SnO2およびGa2O3から選択される少なくとも一つの酸化物と、群GLから選ばれる少なくとも一つの元素の炭化物、好ましくは、SiC、TaCおよびTiCから選択される少なくとも一つの炭化物とを含み、具体的には、下記の組成式:
(D)X(B)100-X(mol%)・・・(式3)
(式中、DはSnO2およびGa2O3から選択される少なくとも一つの酸化物を示し、BはSiC、TaCおよびTiCから選択される少なくとも一つの炭化物を示し、Xは、50≦X≦95を満たす。)
で表される材料を含んでいてもよい。SnO2およびGa2O3は、融点がいずれも1000℃以上と高く、熱的に安定で、かつ成膜速度が高い。SiC、TaCおよびTiCは、耐湿性が良好で、上述の酸化物群と混合すると、特に熱伝導を小さくする効果が高く、結果として記録感度を向上させる作用に優れている。また価格も安いことから、最も実用に適している。各化合物の好ましい割合は、上記のようにxで規定される。このような酸化物−炭化物系材料層を記録層と接する誘電体層に適用することにより、誘電体層と記録層との間の界面層を無くすことが可能となる。したがって、このような材料層を誘電体層として含む情報記録媒体は、繰り返し記録性能、耐湿性、記録感度、記録および書き換え保存性が良好である。
また、本発明の情報記録媒体において、材料層は、下記の組成式:
(D)X(E)Y(B)100-(X+Y)(mol%)・・・(式4)
(式中、DはSnO2およびGa2O3から選択される少なくとも一つの酸化物を示し、EはZrO2またはHfO2のうち少なくとも一つの酸化物を示し、BはSiC、TaCおよびTiCから選択される少なくとも一つの炭化物を示し、X、Yは、50≦X≦95、0<Y≦40を満たす。)
で表される材料を含んでいてもよい。その好ましい割合は、上記のようにXおよびYで規定される。任意に添加するZrO2またはHfO2のうち少なくとも一つの酸化物の、より好ましい割合は40mol%以下であり、求める高速記録特性を発揮する上で、材料層により熱安定性を付与したい場合、生産に必要な成膜速度を確保できる範囲で、添加することが好ましい。
本発明の情報記録媒体において存在する、酸化物−炭化物系材料層の組成分析は、例えば、X線マイクロアナライザーを用いて実施することができる。そのとき組成は、各元素の原子濃度として得られる。
以上説明した酸化物−炭化物系材料層は、本発明の情報記録媒体において、記録層と接するように設けられることが好ましく、記録層の両方の面に接するように設けてよい。本発明の情報記録媒体における材料層は、記録層と誘電体層との間に位置する界面層として存在してもよい。
本発明の情報記録媒体は、その記録層において相変化が可逆的に生じるもの、即ち、書き換え型情報記録媒体として好ましく提供される。相変化が可逆的に生じる記録層は、具体的には、Ge−Sb−Te、Ge−Sn−Sb−Te、Ge−Bi−Te、Ge−Sn−Bi−Te、Ge−Sb−Bi−Te、Ge−Sn−Sb−Bi−Te、Ag−In−Sb−TeおよびSb−Teから選択される、いずれか一つの材料を含むことが好ましい。これらはいずれも高速結晶化材料である。したがって、これらの材料で記録層を形成すると、高密度かつ高転送速度で記録でき、信頼性(具体的には記録保存性または書き換え保存性)の点でも優れた情報記録媒体が得られる。
また、本発明の情報記録媒体において、記録層が、相変化を可逆的に生じるためには、記録層の膜厚は15nm以下であることが望ましい。15nmを超えると、記録層に加えられた熱が面内に拡散し、厚さ方向に拡散しにくくなり、情報の書き換えに支障をきたすことがあるからである。
本発明の情報記録媒体は、基板の一方の表面に、第1誘電体層、記録層、第2誘電体層、および反射層がこの順で形成された構成を有するものであってよい。この構成を有する情報記録媒体は、光の照射により記録される媒体である。照射される光は、第1誘電体層から記録層を経由して、第2誘電体層に到達する。この構成の情報記録媒体は、例えば、波長660nm付近のレーザ光で記録再生する場合に用いられる。本発明の情報記録媒体がこの構成を有する場合、第1誘電体層および第2誘電体層のうち少なくとも一つの誘電体層が、上述した酸化物−炭化物系材料層にて形成されることが好ましい。また、両方の誘電体層が、上述のいずれかの材料層にて形成されていてもよく、同一組成の材料層はもちろん、異なる組成の材料層で形成されていてもよい。
この構成を有する情報記録媒体の一形態として、基板の一方の表面に、第1誘電体層、界面層、記録層、第2誘電体層、光吸収補正層、および反射層がこの順に形成されており、第2誘電体層が前記酸化物−炭化物系材料層にて形成されて、記録層と接している情報記録媒体が挙げられる。
本発明の情報記録媒体は、基板の一方の表面に、反射層、第2誘電体層、記録層、および第1誘電体層がこの順に形成された構成を有するものであってもよい。この構成は、光が入射する基板の厚さを薄くする必要がある場合に特に採用される。例えば、波長405nm付近の短波長レーザ光で記録再生する場合、対物レンズの開口数NAを例えば0.85と大きくし焦点位置を浅くするときに、この構成の情報記録媒体が使用される。このような波長および開口数NAを使用するには、光が入射する基板の厚さを、たとえば60〜120um程度にする必要があり、そのような薄い基板表面に層を形成することが困難である。したがって、この構成の情報記録媒体は、光が入射されない基板を支持体として、その一方の表面に反射層等を順次形成することにより、構成されたものとして特定される。
本発明の情報記録媒体がこの構成を有する場合、第1誘電体層および第2誘電体層のうち少なくとも一つの誘電体層が、上述した酸化物−炭化物系材料層である。両方の誘電体層が上述の酸化物−炭化物系材料層である場合、両方の誘電体層は、同一組成の層であっても、あるいは異なる組成の層であってもよい。
この構成を有する情報記録媒体の一形態として、基板の一方の表面に、反射層、光吸収補正層、第2誘電体層、記録層、界面層、および第1誘電体層がこの順に形成されており、前記第2誘電体層が前記酸化物−炭化物系材料層である情報記録媒体が挙げられる。
本発明の情報記録媒体は、二つ以上の記録層を有するものであってもよい。そのような情報記録媒体は、例えば、基板の一方の表面の側に、2つの記録層が誘電体層および中間層等を介して積層された、片面2層構造を有するものである。あるいは、基板の両方の面に記録層が形成されたものであってもよい。これらの構造によれば、記録容量を大きくすることが可能となる。
また、本発明の情報記録媒体は、記録層自体が複数に積層された構造になっていてもよい。これは、高密度化や高速記録化を実現する上で、記録層自体を積層して特性を確保する必要がある場合に用いられるものであって、この積層記録層の少なくとも一方の界面を接して、前記酸化物−炭化物系材料層が形成されてよい。
次に、本発明の情報記録媒体の製造方法について説明する。
本発明の情報記録媒体の製造方法は、本発明の情報記録媒体に含まれる材料層を、スパッタリング法で形成する工程を含む。スパッタリング法によれば、スパッタリングターゲットの組成と略同じ組成を有する材料層を形成できる。したがって、この製造方法によれば、スパッタリングターゲットを適切に選択することによって所望の組成の酸化物−炭化物系材料層を容易に形成できる。具体的には、スパッタリングターゲットとして、下記の組成式:
MhOiLjCk(原子%)・・・(式5)
(式中、Mは前記群GMより選ばれる少なくとも一つの元素を示し、Lは前記群GLより選ばれる少なくとも一つの元素を示し、h、i、jおよびkは、10≦h≦40、35≦i≦70、0<j≦30、0<k≦30、h+i+j+k=100を満たす。)
で表される材料を含むものを使用できる。(式5)は、元素Mのほとんどが酸化物の形態で存在し、元素Lの殆どは、炭素原子とともに炭化物の形態で存在してもよい材料を元素組成で表した式に相当する。このスパッタリングターゲットによれば、(式1)で表される材料を含む誘電体層を形成できる。
別のスパッタリングターゲットとして、下記の組成式:
MhApOiLjCk(原子%)・・・(式6)
(式中、Mは前記群GMより選ばれる少なくとも一つの元素を示し、AはZrおよびHfより選ばれる少なくとも一つの元素を示し、Lは前記群GLより選ばれる少なくとも一つの元素を示し、h、p、i、jおよびkは、10≦h≦40、0<p≦15、35≦i≦70、0<j≦30、0<k≦30、h+p+i+j+k=100を満たす。)
で表される材料を含むものも使用できる。組成式(6)は、元素Aの殆どは、酸化物として存在していると考えられる。このスパッタリングターゲットによれば、(式2)で表される材料層を形成できる。
上記酸化物−炭化物系材料層において、(式5)および(式6)のMがSnであれば、さらに好ましく、SnとGaとを含む場合は、より望ましい。また、(式6)のAがZrであれば、材料層の耐熱性を上げる効果がより好ましい。
また、本願発明者らは、組成がそのように表示されたスパッタリングターゲットをX線マイクロアナライザーで分析して得た元素組成が、表示されている組成から算出される元素組成と略等しくなることを(即ち、組成表示(公称組成)が適正であること)を確認している。したがって、酸化物と炭化物との混合物として提供されるスパッタリングターゲットもまた、本発明の情報記録媒体の製造方法において好ましく用いられる。
酸化物と炭化物との混合物として提供されるスパッタリングターゲットは、群GMから選択される元素の酸化物群と群GLから選択される少なくとも一つの元素の炭化物群とを合わせた量を基準(100mol%)としたときに、群GMから選択される元素の酸化物群を50mol%以上含むものであれば、生産性も高く、より好ましく、50mol%〜95mol%含むことがさらに好ましい。この群GMから成る酸化物群の占める割合が50mol%未満であるスパッタリングターゲットを用いると、得られる酸化物−炭化物系材料層もまた群GMから成る酸化物群の割合が50mol%未満となり、上記所定の効果を与える情報記録媒体を得ることが困難となる場合がある。このことは、ZrまたはHfのうちの少なくとも一つの酸化物をさらに混合して提供されるスパッタリングターゲットについても同様である。
より具体的には、好ましく用いられるスパッタリングターゲットは、群GMより選ばれる元素の酸化物として、SnO2およびGa2O3から選択される少なくとも一つの酸化物を含み、群GLから選ばれる少なくとも一つの元素の炭化物としてSiCを含んで成る。そのようなスパッタリングターゲットは、下記の組成式:
(D)x(B)100-x(mol%)・・・(式7)
(式中、DはSnO2およびGa2O3から選択される少なくとも一つの酸化物を示し、BはSiC、TaCおよびTiCから選択される少なくとも一つの炭化物を示し、xは、50≦x≦95を満たす。)
で表される材料を含むものであることが好ましい。このスパッタリングターゲットを用いれば、(式3)で表される材料層を形成できる。
(式7)で表されるスパッタリングターゲットは、さらにZrO2またはHfO2のうち少なくとも一つの酸化物を含む下記組成式:
(D)x(E)y(B)100-(x+y)(mol%)・・・(式8)
(式中、DはSnO2およびGa2O3から選択される少なくとも一つの酸化物を示し、EはZrO2またはHfO2のうち少なくとも一つの酸化物を示し、BはSiC、TaCおよびTiCから選択される少なくとも一つの炭化物を示し、x、yは、50≦x≦95、0<y≦40を満たす。)
で表される材料を含むものであってもよい。このスパッタリングターゲットを用いれば、(式4)で表される材料層を形成できる。
(実施の形態10)
本発明の実施の形態10として、レーザ光を用いて情報の記録および再生を実施する、情報記録媒体の一例を説明する。図13に、その情報記録媒体の一部断面を示す。
図13に示すように、本実施の形態の情報記録媒体は、基板1の一方の表面に、第1誘電体層2、記録層4、第2誘電体層6、光吸収補正層7、および反射層8がこの順に積層され、さらに接着層9でダミー基板10が反射層8に接着された構成を有する。この構成の情報記録媒体は、波長660nm付近の赤色域のレーザビームで記録再生する、4.7GB/DVD−RAMとして使用できる。この構成の情報記録媒体には、基板1側からレーザ光が入射され、入射されたレーザ光により情報の記録および再生が実施される。本実施の形態の情報記録媒体は、記録層4と第1および第2誘電体層2、6との間にそれぞれ界面層を有していない点において、図17に示した従来の情報記録媒体と相違する。
基板1は、通常、透明な円盤状の板である。基板1において、第1誘電体層2および記録層4等を形成する側の表面には、図13に示すようにレーザ光を導くための案内溝が形成されていてもよい。案内溝を基板1に形成した場合、基板1の断面を見ると、グルーブ部とランド部とが形成される。グルーブ部は2つの隣接するランド部の間に位置するともいえる。従って、案内溝が形成された基板1の表面は、側壁でつながれた頂面と底面とを有することとなる。本明細書においては、レーザ光の方向において、レーザ光に近い側にある面を便宜的に「グルーブ面」と呼び、レーザ光から遠い側にある面を便宜的に「ランド面」と呼ぶ。図13においては、基板1の案内溝の底面120がグルーブ面に相当し、頂面121がランド面に相当する。なお、後述の実施の形態2で説明する図14に示す情報記録媒体おいても同様である。
基板1のグルーブ面120とランド面121の段差は、40nm〜60nmであることが好ましい。なお、後述する図14に示す情報記録媒体を構成する基板1においても、グルーブ面120とランド面121との段差はこの範囲であることが好ましい。また、基板1において、他の層を形成しない側の表面は、平滑であることが望ましい。基板1の材料として、例えば、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィンあるいはポリメチルメタクリレート(PMMA)等の樹脂、またはガラス等の光透過性を有する材質のものを挙げることができる。成形性、価格、および機械強度を考慮すると、ポリカーボネートが好ましく使用される。なお、本実施の形態の情報記録媒体において、基板1の厚さは、0.5〜0.7mm程度である。
記録層4は、光の照射または電気的エネルギーの印加によって、結晶相と非晶質相との間で相変化を起こし、記録マークが形成される層である。相変化が可逆的であれば、消去や書き換えを行うことができる。可逆的相変化材料としては、高速結晶化材料である、Ge−Sb−TeまたはGe−Sn−Sb−Teを用いることが好ましい。具体的には、Ge−Sb−Teの場合、GeTe−Sb2Te3擬二元系組成であることが好ましく、その場合、4Sb2Te3≦GeTe≦50Sb2Te3であることが好ましい。GeTe<4Sb2Te3の場合、記録前後の反射光量の変化が小さく、読み出し信号の品質が低下し、50Sb2Te3<GeTeの場合、結晶相と非晶質相間の体積変化が大きく、繰り返し書き換え性能が低下してしまうからである。Ge−Sn−Sb−Teは、Ge−Sb−Teよりも結晶化速度が速い。Ge−Sn−Sb−Teは、例えば、GeTe−Sb2Te3擬二元系組成のGeの一部をSnで置換したものである。記録層4において、Snの含有量は、20原子%以下であることが好ましい。Snの含有量が20原子%を越えると、結晶化速度が速すぎて、非晶質相の安定性が損なわれ、記録マークの信頼性が低下するからである。なお、Snの含有量は、記録条件に合わせて調整することが可能である。
また、記録層4は、Ge−Bi−Te、Ge−Sn−Bi−Te、Ge−Sb−Bi−Te、またはGe−Sn−Sb−Bi−Teのような、Biを含む材料で形成することもできる。BiはSbよりも結晶化しやすい。したがって、Ge−Sb−TeやGe−Sn−Sb−TeのSbの少なくとも一部をBiで置換することによっても、記録層の結晶化速度を向上させることができる。
Ge−Bi−Teは、GeTeとBi2Te3との混合物である。この混合物においては、8Bi2Te3≦GeTe≦25Bi2Te3であることが好ましい。GeTe<8Bi2Te3の場合、結晶化温度が低下し、記録保存性が劣化しやすくなり、25Bi2Te3<GeTeの場合、結晶相と非晶質相間の体積変化が大きく、繰り返し書き換え性能が低下するからである。
Ge−Sn−Bi−Teは、Ge−Bi−TeのGeの一部をSnで置換したものに相当する。Snの置換濃度を調整して、記録条件に合わせて結晶化速度を制御することが可能である。Sn置換は、Bi置換と比較して、記録層4の結晶化速度の微調整に、より適している。記録層4において、Snの含有量は10原子%以下であることが好ましい。10原子%を越えると、結晶化速度が速くなりすぎるために、非晶質相の安定性が損なわれ、記録マークの保存性が低下するからである。
Ge−Sn−Sb−Bi−Teは、Ge−Sb−TeのGeの一部をSnで置換し、さらにSbの一部をBiで置換したものに相当する。これは、GeTe、SnTe、Sb2Te3およびBi2Te3の混合物に相当する。この混合物においては、Sn置換濃度とBi置換濃度を調整して、記録条件に合わせて結晶化速度を制御することが可能である。Ge−Sn−Sb−Bi−Teにおいては、4(Sb−Bi)2Te3≦(Ge−Sn)Te≦25(Sb−Bi)2Te3であることが好ましい。(Ge−Sn)Te<4(Sb−Bi)2Te3の場合、記録前後の反射光量の変化が小さく、読み出し信号品質が低下する。25(Sb−Bi)2Te3<(Ge−Sn)Teの場合、結晶相と非晶質相間の体積変化が大きく、繰り返し書き換え性能が低下する。また、記録層4において、Biの含有量は10原子%以下であることが好ましく、Snの含有量は20原子%以下であることが好ましい。BiおよびSnの含有量がそれぞれこの範囲内にあれば、良好な記録マークの保存性が得られるからである。
その他の可逆的に相変化を起こす材料としては、例えば、Ag−In−Sb−Te、Ag−In−Sb−Te−Ge、およびSbを70原子%以上含むSb−Te等が挙げられる。
非可逆的相変化材料としては、例えば、TeOx+α(αはPd、Ge等である。)を用いることが好ましい。記録層4が非可逆的相変化材料である情報記録媒体は、記録が一度だけ可能である、いわゆるライトワンスタイプのものである。そのような情報記録媒体においても、記録時の熱により誘電体層中の原子が記録層中に拡散して、信号の品質を低下させるという問題がある。したがって、本発明は、書き換え可能な情報記録媒体だけでなく、ライトワンス型の情報記録媒体にも好ましく適用される。
記録層4が可逆的に相変化する材料から成る場合には、前述のように、記録層4の厚さは15nm以下であることが好ましく、12nm以下であることがより好ましい。
本実施の形態における第1誘電体層2および第2誘電体層6は、SnおよびGaから成る群GMより選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物と、Si、TaおよびTiから成る群GLより選ばれる少なくとも一つの元素の炭化物とを含む、酸化物−炭化物系材料層である。さらに、第1誘電体層2および第2誘電体層6は、上記酸化物−炭化物系材料にZrまたはHfのうち少なくとも一つの酸化物を含む、酸化物−炭化物系材料層であってもよい。
一般に、情報記録媒体を構成する誘電体層の材料には、(1)透明性があること、(2)誘電体層と記録層との間に界面層が設けられた構成と同等かそれ以上の記録感度が得られること、(3)融点が高く、記録の際に溶融しないこと、(4)成膜速度が大きいこと、および(5)カルコゲナイド材料にて形成される記録層4との密着性が良好であること、が要求される。透明性があることは、基板1側から入射されたレーザ光を通過させて記録層4に到達させるために必要な特性である。この特性は、特に入射側の第1誘電体層2に要求される。また、第1および第2誘電体層2、6の材料は、得られる情報記録媒体が、従来の、ZnS−20mol%SiO2から成る誘電体層と記録層との間に界面層が位置する情報記録媒体と同等かそれ以上の記録感度を有するように選択する必要がある。また、融点が高いことは、ピークパワーレベルのレーザ光を照射したときに、第1および第2誘電体層2、6の材料が記録層4に混入しないことを確保するために必要な特性であり、第1および第2誘電体層2、6の両方に求められる。第1および第2誘電体層2、6の材料が記録層4に混入すると、繰り返し書き換え性能が著しく低下する。カルコゲナイド材料である記録層4との密着性が良好であることは、情報記録媒体の信頼性を確保するために必要な特性であり、第1および第2誘電体層2、6の両方に求められる。良好な生産性を得るために、成膜速度が大きいことも要求される。
上記酸化物−炭化物系材料層に含まれる成分のうち、群GMを構成する元素の酸化物はいずれも、透明性があり、融点が高く、熱的安定性に優れ、記録層との密着性がよい。したがって、これらの化合物によれば、情報記録媒体の良好な繰り返し書き換え性能を確保することができる。また、群GLを構成する元素の炭化物は、記録層との密着性がよく耐湿性に優れ、群GMを構成する元素の酸化物に混合することにより、熱伝導を小さくして記録感度を向上させると共に、繰り返し書き換え記録による膜割れおよび膜破壊を抑制できる。したがって、群GLを構成する元素の炭化物を混合することにより、情報記録媒体の記録感度と信頼性を確保できる。群GMを構成する元素の酸化物には、例えば、SnO2およびGa2O3が含まれる。また、群GLを構成する元素の炭化物としては、例えばSiC、TaCおよびTiCが含まれる。
これらの酸化物と炭化物を混合して成る、Sを含まない材料を用いて、第1誘電体層2および第2誘電体層6を記録層4と接するように形成することによって、繰り返し書き換え性能に優れ、かつ記録層4と第1および第2誘電体層2、6との間の密着性が良好である情報記録媒体を実現できる。また、群GMを構成する元素の酸化物に、群GLを構成する元素の炭化物を混ぜて層の構造を複雑化することにより、第1および第2誘電体層2、6における熱伝導が抑制される。したがって、上記酸化物−炭化物系材料層を第1および第2誘電体層2、6に用いれば、記録層の急冷効果を高めることができるので、情報記録媒体の記録感度を高くし得る。
また、上記酸化物−炭化物系材料に、さらにZrまたはHfのうち少なくとも一つの酸化物、例えばZrO2、またはHfO2を添加してもよい。これらZrやHfの酸化物は、群GMから成る酸化物よりも、さらに融点が高く、耐熱性が高いので、群GMを構成する元素の酸化物に混合することにより、酸化物の構造を熱的安定化することができる。これら酸化物に群GLを構成する元素の炭化物を混合して構造を複雑化して熱伝導を低減し、記録感度を向上させ、記録再生特性のバランスを確保することもできる。
このような酸化物−炭化物系材料の具体例は、例えば、(式3):(D)X(B)100-X(mol%)で表される材料である。この式において、Dは、SnO2およびGa2O3から選択される少なくとも一つの酸化物であり、BはSiC、TaCおよびTiCから選択される少なくとも一つの炭化物である。各化合物の混合割合を示すXは、50≦X≦95を満たす。Dの混合割合が50mol%未満であれば、光吸収が大きくなり、記録層の熱が材料層や他の層に伝播し、記録感度が低下して記録パワーが不足し、良好な記録再生特性が得られない。また、成膜速度が遅くなり、生産性が上がりにくくなる。Dの混合割合が95mol%より大きいと、Bの混合効果が小さくなり、特に記録感度が不十分となる。
さらに、ZrまたはHfのうち少なくとも一つの酸化物を含む(式4):(D)X(E)Y(B)100-(X+Y)(mol%)で表される酸化物−炭化物系材料にて誘電体層を形成してもよい。ここで、EはZrO2またはHfO2のうち少なくとも一つの酸化物であり、X、Yは、50≦X≦95、0<Y≦40を満たす。
Xをこのような数値範囲とする理由は、(式3)と同様である。また、Yをこのような範囲とする理由は、Yが上限値の40を超えると、Bを10mol%混合しても記録感度の向上効果が上がらず、かつ成膜速度が低下するので生産性が上がらないからである。
上述のような酸化物−炭化物系材料層にて誘電体層を形成することにより、誘電体層を記録層に接して形成しても、記録感度が良好で、書き換え特性と信頼性を確保できる。
上記の酸化物−炭化物系材料層は、以上に示した化合物以外の第三成分を含んでいてもよく、特に数%以下の不純物があってもよい。また、近隣に形成される層の組成元素が多少混じっても、その熱安定性および耐湿性は変わらず、第1誘電体層2および第2誘電体層6として好ましく用いられる。第三成分は、酸化物−炭化物系材料層にて誘電体層を形成する際に不可避的に含まれるもの、または不可避的に形成されるものである。第三成分として、例えば、誘電体、金属、半金属、半導体および/または非金属等が挙げられる。
第三成分として含まれる誘電体は、例えば、Al2O3、Bi2O3、CeO2、CoO、Cr2O3、CuO、Cu2O、Er2O3、FeO、Fe2O3、Fe3O4、Ho2O3、In2O3、La2O3、MnO、MgSiO3、Nb2O5、Nd2O3、NiO、Sc2O3、SiO2、Sm2O3、SnO、Ta2O5、Tb4O7、TeO2、TiO2、VO、WO3、Y2O3、Yb2O3、ZnO、ZrSiO4、AlN、BN、CrB2、LaB6、ZrB2、CrN、Cr2N、HfN、NbN、Si3N4、TaN、TiN、VN、ZrN、B4C、Cr3C2、HfC、Mo2C、NbC、VC、W2C、WC、ZrC、CaF2、CeF3、MgF2およびLaF3等である。
第三成分として含まれる金属は、例えば、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、La、Ce、Nd、Sm、Gd、Tb、DyおよびYb等がある。
第三成分として含まれる半金属および半導体は、例えばC、Ge等であり、非金属では、例えばSb、Bi、TeおよびSe等が挙げられる。
第1誘電体層2および第2誘電体層6は、それぞれ互いに異なる組成の酸化物−炭化物系材料層で形成されていてもよい。第1誘電体層2は、より優れた耐湿性を有するように組成された材料で形成することが好ましく、例えば、(式3)および(式4)のDが、SnO2であることがより好ましく、さらにSnO2とGa2O3とであることが望ましい。さらに、(式4)にあるように、材料層の耐熱性を向上させる目的で、任意にZrO2を添加してもよい。また、(式3)および(式4)のBは、SiCであることがより望ましい。
上述のように酸化物−炭化物系材料層は、所望の機能に応じて、酸化物および炭化物の種類、および/またはそれらの混合割合を最適化して形成できる。
第1誘電体層2および第2誘電体層6は、各々の光路長(即ち、誘電体層の屈折率nと誘電体層の膜厚dとの積nd)を変えることにより、結晶相の記録層4の光吸収率Ac(%)と非晶質相の記録層4の光吸収率Aa(%)、記録層4が結晶相であるときの情報記録媒体の光反射率Rc(%)と記録層4が非晶質相であるときの情報記録媒体の光反射率Ra(%)、記録層4が結晶相である部分と非晶質相である部分の情報記録媒体の光の位相差Δφ、を調整することができる。記録マークの再生信号振幅を大きくして、信号品質を上げるためには、反射率差(|Rc−Ra|)または反射率比(Rc/Ra)が大きいことが望ましい。また、記録層4がレーザ光を吸収するように、AcおよびAaも大きいことが望ましい。これらの条件を同時に満足するように第1誘電体層2および第2誘電体層6の光路長を決定する。それらの条件を満足する光路長は、例えばマトリクス法に基づく計算によって正確に決定することができる。
以上において説明した、酸化物−炭化物系材料層は、その組成に応じて異なる屈折率を有する。誘電体層の屈折率をn、膜厚をd(nm)、レーザ光の波長をλ(nm)とした場合、光路長ndは、nd=aλで表される。ここで、aは正の数とする。情報記録媒体の記録マークの再生信号振幅を大きくして信号品質を向上させるには、例えば、15%≦RcかつRa≦2%であることが好ましい。また、書き換えによるマーク歪みを無くす、または小さくするには、1.1≦Ac/Aaであることが好ましい。これらの好ましい条件が同時に満たされるように第1誘電体層2および第2誘電体層6の光路長(aλ)を、マトリクス法に基づく計算により求めた。得られた光路長(aλ)、ならびにλおよびnから、誘電体層の厚さdを求めた。その結果、例えば、組成式(3)および(4)で表され、屈折率nが1.8〜2.4である材料で、第1誘電体層2を形成する場合、その厚さは、好ましくは110nm〜160nmであることが判った。また、この材料で第2誘電体層6を形成する場合、その厚さは、好ましくは、35〜60nmであることが判った。
光吸収補正層7は、前述のように、記録層4が結晶状態であるときの光吸収率Acと非晶質状態であるときの光吸収率Aaの比Ac/Aaを調整し、書き換え時にマーク形状が歪まないようにする働きがある。光吸収補正層7は、屈折率が高く、かつ適度に光を吸収する材料で形成されることが好ましい。例えば、屈折率nが3以上5以下、消衰係数kが1以上4以下である材料を用いて、光吸収補正層7を形成できる。具体的には、Ge−Cr、およびGe−Mo等の非晶質のGe合金、Si−Cr、Si−Mo、およびSi−W等の非晶質のSi合金、Te化物、ならびにTi、Zr、Nb、Ta、Cr、Mo、W、SnTe、およびPbTe等の結晶性の金属、半金属および半導体材料から選択される材料を使用することが好ましい。光吸収補正層7の膜厚は、20nm〜60nmであることが好ましい。
反射層8は、光学的には記録層4に吸収される光量を増大させ、熱的には記録層4で生じた熱を速やかに拡散させて記録層4を急冷し、非晶質化し易くする機能を有する。さらに、反射層8は、記録層4および誘電体層2、6を含む多層膜を使用環境から保護する機能も有する。反射層8の材料としては、例えば、Al、Au、Ag、およびCu等の熱伝導率の高い単体金属材料が挙げられる。反射層8は、その耐湿性を向上させる目的で、ならびに/あるいは熱伝導率または光学特性(例えば、光反射率、光吸収率または光透過率)を調整する目的で、上記の金属材料から選択される一つまたは複数の元素に、他の一つまたは複数の元素を添加した材料を使用して形成してよい。具体的には、Al−Cr、Al−Ti、Ag−Pd、Ag−Pd−Cu、Ag−Pd−Ti、またはAu−Cr等の合金材料を用いることができる。これらの材料は何れも耐食性に優れ、かつ急冷機能を有する優れた材料である。同様の目的は、反射層8を2以上の層で形成することによっても達成され得る。反射層8の厚さは50〜180nmであることが好ましく、60nm〜100nmであることがより好ましい。
接着層9は、耐熱性および接着性の高い材料、例えば、紫外線硬化性樹脂等を用いて形成してよい。具体的には、アクリレート樹脂やメタクリレート樹脂等を主成分とする光硬化材料や、エポキシ樹脂を主成分とする材料や、ホットメルト材料等が使用可能である。また、必要に応じて、接着層9を形成する前に、紫外線硬化性樹脂よりなる、厚さ2〜20μmの保護コート層を反射層8の表面に設けてもよい。接着層9の厚さは、好ましくは15〜40μmであり、より好ましくは20〜35μmである。
ダミー基板10は、情報記録媒体の機械的強度を高めるとともに、第1誘電体層2から反射層8までの積層体を保護する機能を有する。ダミー基板10の好ましい材料は、基板1の好ましい材料と同じである。
本実施の形態の情報記録媒体は、一つの記録層を有する片面構造ディスクであるが、これに限るものではなく、2つ以上の記録層を有してもよい。
続いて、本実施の形態の情報記録媒体を製造する方法を説明する。
本実施の形態の情報記録媒体は、案内溝(グルーブ面120とランド面121)が形成された基板1(例えば、厚さ0.6mm)を成膜装置に配置し、基板1の案内溝が形成された表面に第1誘電体層2を成膜する工程(工程a)、記録層4を成膜する工程(工程b)、第2誘電体層6を成膜する工程(工程c)、光吸収補正層7を成膜する工程(工程d)および反射層8を成膜する工程(工程e)を順次実施し、さらに、反射層8の表面に接着層9を形成する工程、およびダミー基板10を貼り合わせる工程を実施することにより、製造される。なお、本明細書において、各層に関して「表面」というときは、特に断りのない限り、各層が形成されたときに露出している表面(厚さ方向に垂直な表面)を指すものとする。
まず、基板1の案内溝が形成された面に、第1誘電体層2を成膜する工程aを実施する。工程aは、スパッタリング法により実施され、高周波電源を用いて、Arガス雰囲気で実施する。スパッタリングで導入するガスは、形成する材料層に応じて、Arガスの他に、酸素ガスや窒素ガス、CH4ガス等、混合したガス雰囲気中で実施してよい。
工程aで使用されるスパッタリングターゲットとしては、SnおよびGaから成る群GMより選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物と、Si、TaおよびTiから成る群GLより選ばれる少なくとも一つの元素の炭化物とを含むスパッタリングターゲットか、もしくは、これらにさらにZrまたはHfのうち少なくとも一つの酸化物を含むスパッタリングターゲットが用いられる。
前述の通り、群GMより選ばれる1または複数の元素と、群GLより選ばれる1または複数の元素と、酸素原子と炭素原子とを含むスパッタリングターゲットは、より具体的には、(式5):MHOILJCK(原子%)で表わされる材料である。この式において、Mは前記群GMより選ばれる少なくとも一つの元素を示し、Lは前記群GLより選ばれる少なくとも一つの元素を示し、H、I、JおよびKは、10≦H≦40、35≦I≦70、0<J≦30、0<K≦30、H+I+J+K=100を満たす材料を含むスパッタリングターゲットを使用できる。さらに任意にZrまたはHfのうち少なくとも一つを含むスパッタリングターゲットは、群GMの元素の酸化物と、群GLの元素の炭化物と、さらに任意にZrまたはHfの酸化物との混合物の形態で提供される。より具体的には、(式6):MHAPOILJCK(原子%)で表わされる材料である。この式において、Mは前記群GMより選ばれる少なくとも一つの元素を示し、AはZrおよびHfより選ばれる少なくとも一つの元素を示し、Lは前記群GLより選ばれる少なくとも一つの元素を示し、H、P、I、JおよびKは、10≦H≦40、0<P≦15、35≦I≦70、0<J≦30、0<K≦30、H+P+I+J+K=100を満たす材料を含むスパッタリングターゲットを使用できる。
本発明の製造方法で使用されるスパッタリングターゲットは、群GMから選択される元素の酸化物群が、混合物に対して、50mol%以上含むことが好ましく、50〜95mol%含むことがより好ましい。
上記特定の酸化物および炭化物を含むスパッタリングターゲットとして、SnO2およびGa2O3から選択される少なくとも一つの酸化物と、SiC、TaCおよびTiOから選択される少なくとも一つの炭化物を含む材料を使用できる。より具体的には、(式7):(D)x(B)100-x(mol%)で表される材料である。この式において、Dは、SnO2およびGa2O3から選択される少なくとも一つの酸化物を示し、BはSiC、TaCおよびTiCから選択される少なくとも一つの炭化物を示し、各化合物の混合割合を示すxは、50≦x≦95を満たす材料を含むターゲットを使用できる。このターゲットによれば、(式3)で表される材料を含む層が形成できる。
(式7)で表されるスパッタリングターゲットは、さらにZrO2またはHfO2のうち少なくとも一つの酸化物を含むものであってもよく、(式8):(D)x(E)y(B)100-(x+y)(mol%)で表されるスパッタリングターゲットで表される材料を含むものであることが好ましい。この式において、DはSnO2およびGa2O3から選択される少なくとも一つの酸化物を示し、EはZrO2またはHfO2のうち少なくとも一つの酸化物を示し、BはSiC、TaCおよびTiCから選択される少なくとも一つの炭化物を示し、x、yは、50≦x≦95、0<y≦40を満たす材料を含むターゲットを使用できる。このスパッタリングターゲットを用いれば、(式4)で表される材料を含む層を形成できる。
上記の材料を含む層には、これらの化合物以外の第三成分を含んでいてもよく、特に数%以下の不純物があってもよい。また、近隣に形成される層の組成元素が多少混じってもよい。第三成分として含まれ得る成分は先に例示したとおりである。
次に、工程bを実施して、第1誘電体層2の表面に、記録層4を成膜する。工程bもまた、スパッタリングにより実施される。スパッタリングは、直流電源を用いて、Arガス雰囲気中、またはArガスとN2ガスの混合ガス雰囲気中で実施する。工程aと同様に、目的に応じて他のガスを導入してもよい。スパッタリングターゲットは、Ge−Sb−Te、Ge−Sn−Sb−Te、Ge−Bi−Te、Ge−Sn−Bi−Te、Ge−Sb−Bi−Te、Ge−Sn−Sb−Bi−Te、Ag−In−Sb−TeおよびSb−Teのうち、いずれか一つの材料を含むものを使用する。成膜後の記録層4は非晶質状態である。
次に、工程cを実施して、記録層4の表面に、第2誘電体層6を成膜する。工程cは、工程aと同様に実施される。第2誘電体層6は、第1誘電体層2と同じ化合物の混合比率が異なるスパッタリングターゲット、または異なる酸化物および/または炭化物を含むスパッタリングターゲットを用いて形成してもよい。例えば、第1誘電体層2を、SnO2−ZrO2−SiCの混合系材料で形成し、第2誘電体層6を、SnO2−Ga2O3−TaCの混合系材料で形成してよい。このように、第1誘電体層2と第2誘電体層6は、所望の機能に応じて、含まれる酸化物および炭化物の種類、ならびに/またはそれらの混合割合を最適化して形成できる。
次に、工程dを実施して、第2誘電体層6の表面に、光吸収補正層7を成膜する。工程dにおいては、直流電源または高周波電源を用いて、スパッタリングを実施する。スパッタリングターゲットとして、Ge−Cr、およびGe−Mo等の非晶質Ge合金、Si−Cr、Si−MoおよびSi−W等の非晶質Si合金、Te化物、ならびにTi、Zr、Nb、Ta、Cr、Mo、W、SnTe、およびPbTe等の結晶性の金属、半金属、および半導体材料から選択される材料から成るものを用いる。スパッタリングは、一般には、Arガス雰囲気中で実施する。
次に、工程eを実施して、光吸収補正層7の表面に、反射層8を成膜する。工程eはスパッタリングにより実施される。スパッタリングは、直流電源または高周波電源を用いて、Arガス雰囲気中で実施する。スパッタリングターゲットとしては、Al−Cr、Al−Ti、Ag−Pd、Ag−Pd−Cu、Ag−Pd−Ti、またはAu−Cr等の合金材料より成るものを使用できる。
上記のように、工程a〜eは、いずれもスパッタリング工程である。したがって、工程a〜eは、一つのスパッタリング装置内において、ターゲットを順次変更して連続的に実施できる。また、工程a〜eは、それぞれ独立したスパッタリング装置を用いて実施することも可能である。
反射層8を成膜した後、第1誘電体層2から反射層8までが順次積層された基板1をスパッタリング装置から取り出す。それから、反射層8の表面に、紫外線硬化性樹脂を、例えばスピンコート法により塗布する。塗布した紫外線硬化性樹脂に、ダミー基板10を密着させて、紫外線をダミー基板10側から照射して樹脂を硬化させ、貼り合わせ工程を終了させる。
貼り合せ工程が終了した後は、必要に応じて初期化工程を実施する。初期化工程は、非晶質状態である記録層4を、例えば半導体レーザを照射して、結晶化温度以上に昇温して結晶化させる工程である。初期化工程は貼り合せ工程の前に実施してもよい。このように、工程a〜e、接着層の形成工程、およびダミー基板10の貼り合せ工程を順次実施することにより、実施の形態1の情報記録媒体を製造することができる。
(実施の形態11)
本発明の実施の形態11として、図14に、その情報記録媒体の一部断面を示す。
図14に示す本実施の形態の情報記録媒体は、基板1の一方の表面に、第1誘電体層102、第1の界面層103、記録層4、第2誘電体層6、光吸収補正層7、および反射層8がこの順に形成され、さらに接着層9で反射層8にダミー基板10が接着された構成を有する。本実施の形態の情報記録媒体は、記録層4と第2誘電体層6との間に界面層を有していない点において、図12に示した従来の情報記録媒体と相違する。また、基板1と記録層4との間に第1誘電体層102と第1の界面層103がこの順に積層されている点において、図13に示す情報記録媒体と相違する。本実施の形態おいて、第2誘電体層6は、実施の形態10の情報記録媒体における第1および第2誘電体層と同様の、酸化物−炭化物系材料層で形成されている。その他、図14において、図13で使用した符号と同じ符号は、同じ機能を有する構成要素を表し、図14を参照して説明した材料および方法にて形成されるものである。したがって、図14で既に説明した構成要素については、ここではその詳細な説明を省略する。
本実施の形態の情報記録媒体において、第1誘電体層102は、従来の情報記録媒体を構成していた誘電体層に使用されていた材料(ZnS−20mol%SiO2)で形成されている。したがって、界面層103は、繰り返しの記録により第1誘電体層102と記録層4との間で生じる物質移動を防止するために設けられている。界面層103の好ましい材料および厚さは、例えば、ZrO2−SiO2−Cr2O3やGe−Crなどの混合材料で、その厚さは、1〜10nmであることが好ましく、2〜7nmであればより好ましい。界面層が厚いと、基板1の表面に形成された第1誘電体層102から反射層8までの積層体の光学的反射率および吸収率が変化して、記録消去性能に影響が生じるからである。
続いて、本実施の形態の情報記録媒体の製造方法を説明する。本実施の形態において、基板1の案内溝が形成された面に第1誘電体層102を成膜する工程(工程h)、第1の界面層103を成膜する工程(工程i)、記録層4を成膜する工程(工程b)、第2誘電体層6を成膜する工程(工程c)、光吸収補正層7を成膜する工程(工程d)および反射層8を成膜する工程(工程e)を順次実施し、さらに反射層8の表面に接着層9を形成する工程、およびダミー基板10を貼り合わせる工程を実施することにより、製造される。工程b、c、d、およびeは、実施の形態10において説明したとおりであるから、ここではその詳細な説明を省略する。ダミー基板10を貼り合わせる工程が終了した後、実施の形態10に関連して説明したように、必要に応じて初期化工程を実施して、情報記録媒体を得る。
以上、実施の形態10および11にて、図13および図14を参照し、本発明の情報記録媒体の実施形態として、レーザ光で記録再生する情報記録媒体を説明したが、本発明の情報記録媒体はこれらの形態に限定されない。本発明の情報記録媒体は、記録層に接する誘電体層を、酸化物−炭化物系材料層を用いて形成する限りにおいて、任意の形態をとりうる。即ち、本発明は、基板上に層を形成する順序、記録層の数、記録条件、および記録容量等にかかわらず適用可能である。また、本発明の情報記録媒体は、種々の波長で記録するのに適している。したがって、本発明の情報記録媒体の構成および製造方法は、例えば、波長630〜680nmのレーザ光で記録再生するDVD−RAMやDVD−RW、または波長400〜450nmのレーザ光で記録再生する大容量光ディスク等に適用可能である。
(実施の形態12)
本発明の実施の形態12として、電気的エネルギーを印加して情報の記録および再生を実施する情報記録媒体の一例を示す。図15に、本実施の形態の情報記録媒体の斜視図を示す。
図15に示すように、本実施の形態の情報記録媒体217は、基板211の表面に、下部電極212、記録部213および上部電極214がこの順に形成されたメモリである。メモリの記録部213は、円柱状の記録層215および記録層215を取り囲む誘電体層216を含む構成を有する。実施の形態10および11において図13および図14を参照して説明した情報記録媒体とは異なり、この形態のメモリにおいては、記録層215および誘電体層216は同一面上に形成され、それらは積層された関係にない。しかし、記録層215および誘電体層216はともに、メモリにおいては、基板211、下部電極212および上部電極214を含む積層体の一部を構成しているので、それぞれ「層」と呼び得るものである。したがって、本発明の情報記録媒体には、記録層と誘電体層が同一面上にある形態のものも含まれる。
基板211として、具体的には、例えば、Si基板等の半導体基板、ポリカーボネート樹脂またはアクリル樹脂等から成る基板、SiO2基板およびAl2O3基板等の絶縁性基板、等を使用できる。下部電極212および上部電極214は、適当な導電材料で形成される。下部電極212および上部電極214は、例えば、Au、Ag、Pt、Al、Ti、W、Cr等の金属、またはこれらの混合物をスパッタリングすることにより形成される。
記録部213を構成する記録層215は、電気的エネルギーを印加することによって相変化する材料から成り、記録部213における相変化部と称することもできる。記録層215は、電気的エネルギーを印加することによって生じるジュール熱によって、結晶相と非晶質相との間で相変化する材料で形成される。記録層215の材料としては、例えば、Ge−Sb−Te、Ge−Sn−Sb−Te、Ge−Bi−Te、Ge−Sn−Bi−Te、Ge−Sb−Bi−TeおよびGe−Sn−Sb−Bi−Te系材料が使用され、より具体的には、例えばGeTe−Sb2Te3系材料またはGeTe−Bi2Te3系材料等が使用できる。
記録部213を構成する誘電体層216は、上部電極214および下部電極212との間に電圧を印加することによって、記録層215に流れた電流が周辺部に逃げることを防止し、記録層215を電気的および熱的に絶縁する機能を有する。したがって、誘電体層216は、断熱部と称することもできる。誘電体層216は、酸化物−炭化物系材料層で形成され、具体的には、(式1)〜(式4)で表される材料を含む層である。これらの材料は、高融点であること、加熱された場合でも材料層中の原子が拡散しにくいこと、ならびに熱伝導率が低いこと等から、誘電体層216に好ましく用いられる。
本発明の実施の形態について、実施例を用いてその作動方法とともにさらに詳細に説明する。
(実施例1−1)
実施例1−1では、図1の情報記録媒体15を作製し、第2誘電体層106の材料と、情報層16の記録感度、および繰り返し書き換え性能との関係を調べた。具体的には、第2誘電体層106の材料が異なる情報層16を含む情報記録媒体15のサンプルを作製し、情報層16の記録感度、および繰り返し書き換え性能を測定した。
サンプルは以下のようにして製造した。まず、基板14として、レーザビーム11を導くための案内溝(深さ20nm、トラックピッチ0.32μm)が形成されたポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ1.1mm)を用意した。そして、そのポリカーボネート基板上に、反射層108としてAg−Pd−Cu層(厚さ:80nm)、第2誘電体層106(厚さ:10〜20nm)、記録層104としてGe28Sn3Bi2Te34層(厚さ:10nm)、第1界面層103として(ZrO2)50(Cr2O3)50層(厚さ:5nm)、第1誘電体層102として(ZnS)80(SiO2)20層(厚さ:60nm)を順次スパッタリング法によって積層した。
最後に、紫外線硬化性樹脂を第1誘電体層102上に塗布し、ポリカーボネートシート(直径120mm、厚さ90μm)を第1誘電体層102に密着し回転させることによって均一な樹脂層を形成したのち、紫外線を照射して樹脂を硬化させることによって、厚さ100μmの透明層13を形成した。その後、記録層104をレーザビームで結晶化させる初期化工程を行った。以上のようにして、第2誘電体層106の材料が異なる複数のサンプルを製造した。
このようにして得られたサンプルについて、図7の記録再生装置38を用いて、情報記録媒体15の情報層16の記録感度、および繰り返し書き換え性能を測定した。このとき、レーザビーム11の波長は405nm、対物レンズ34の開口数NAは0.85、測定時のサンプルの線速度は4.9m/s、および9.8m/s、最短マーク長(2T)は0.149μmとした。また、情報はグルーブに記録した。
情報記録媒体15の情報層16の第2誘電体層106の材料と、情報層16の記録感度、および繰り返し書き換え性能の評価結果について、線速度が4.9m/sの場合(1X)の結果を表1に、線速度が9.8m/sの場合(2X)の結果を表2に示す。なお、1Xでの記録感度については、5.2mW未満を○、5.2mW以上6mW未満を△、6mW以上を×とした。また、2Xでの記録感度については、6mW未満を○、6mW以上7mW未満を△、7mW以上を×とした。さらに、繰り返し書き換え性能については、繰り返し書き換え回数が1000回以上を○、500回以上1000回未満を△、500回未満を×とした。
この結果、第2誘電体層106に(ZnS)80(SiO2)20を用いたサンプル1−1では、ZnSに含まれる硫黄が記録層に拡散してしまうため、1X、および2Xでの繰り返し書き換え性能が悪いことがわかった。また、第2誘電体層106に組成式(SnO2)1-x(SiC)x(mol%)で表される材料を用いた場合、x=0のサンプル1−2では、1X、および2Xでの記録感度、および1Xでの繰り返し書き換え性能が若干劣ることがわかった。また、x=70のサンプル1−8では、1X、および2Xでの記録感度、および2Xでの繰り返し書き換え性能が若干劣ることがわかった。また、x=100のサンプル1−9では、1X、および2Xでの記録感度が低いことがわかった。0<x≦50の範囲にある、サンプル1−3〜1−7では、1X、および2Xでの記録感度と繰り返し書き換え性能がともに良好であることがわかった。また、SnO2−SiCにさらに別の化合物を混合したサンプル1−10〜1−26においても、1X、および2Xでの記録感度と繰り返し書き換え性能がともに良好であることがわかった。
(実施例1−2)
実施例1−2では、図3の情報記録媒体24を作製し、第2誘電体層306の材料と、第2情報層25の記録感度、および繰り返し書き換え性能との関係を調べた。具体的には、第2誘電体層306の材料が異なる第2情報層25を含む情報記録媒体24のサンプルを作製し、第2情報層25の記録感度、および繰り返し書き換え性能を測定した。
サンプルは以下のようにして製造した。まず、基板14として、レーザビーム11を導くための案内溝(深さ20nm、トラックピッチ0.32μm)が形成されたポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ1.1mm)を用意した。そして、そのポリカーボネート基板上に、第2反射層208としてAg−Pd−Cu層(厚さ:80nm)、第2誘電体層306(厚さ:10〜20nm)、第2記録層304としてGe28Sn3Bi2Te34層(厚さ:10nm)、第1界面層303として(ZrO2)50(Cr2O3)50層(厚さ:5nm)、第1誘電体層302として(ZnS)80(SiO2)20層(厚さ:60nm)を順次スパッタリング法によって積層した。
次に、第1誘電体層302上に紫外線硬化性樹脂を塗布し、その上に案内溝(深さ20nm、トラックピッチ0.32μm)を形成した基板をかぶせて密着し回転させることによって均一な樹脂層を形成し、樹脂を硬化させた後に基板をはがした。この工程によって、レーザビーム11を導く案内溝が第1情報層23側に形成された厚さ25μmの光学分離層17を形成した。
その後、光学分離層17の上に、透過率調整層209としてTiO2層(厚さ:20nm)、第1反射層208としてAg−Pd−Cu層(厚さ:10nm)、第4界面層205として(ZrO2)25(SiO2)25(Ga2O3)50層(厚さ:10nm)、第1記録層204としてGe28Sn3Bi2Te34層(厚さ:6nm)、第3界面層203として(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50層(厚さ:5nm)、第3誘電体層202として(ZnS)80(SiO2)20層(厚さ:40nm)を順次スパッタリング法によって積層した。
最後に、紫外線硬化性樹脂を第3誘電体層202上に塗布し、ポリカーボネートシート(直径120mm、厚さ65μm)を第3誘電体層202に密着し回転させることによって均一な樹脂層を形成したのち、紫外線を照射して樹脂を硬化させることによって、厚さ75μmの透明層13を形成した。その後、第2記録層304、および第1記録層204をレーザビームで結晶化させる初期化工程を行った。以上のようにして、第2誘電体層306の材料が異なる複数のサンプルを製造した。
このようにして得られたサンプルについて、図7の記録再生装置38を用いて、情報記録媒体24の第2情報層25の記録感度、および繰り返し書き換え性能を測定した。このとき、レーザビーム11の波長は405nm、対物レンズ34の開口数NAは0.85、測定時のサンプルの線速度は4.9m/s、および9.8m/s、最短マーク長(2T)は0.149μmとした。また、情報はグルーブに記録した。
情報記録媒体24の第2情報層25の第2誘電体層306の材料と、第2情報層25の記録感度、および繰り返し書き換え性能の評価結果について、線速度が4.9m/sの場合(1X)の結果を表3に、線速度が9.8m/sの場合(2X)の結果を表4に示す。なお、1Xでの記録感度については、10.4mW未満を○、10.4mW以上12mW未満を△、12mW以上を×とした。また、2Xでの記録感度については、12mW未満を○、12mW以上14mW未満を△、14mW以上を×とした。さらに、繰り返し書き換え性能については、繰り返し書き換え回数が1000回以上を○、500回以上1000回未満を△、500回未満を×とした。
この結果、第2誘電体層306に(ZnS)80(SiO2)20を用いたサンプル2−1では、ZnSに含まれる硫黄が記録層に拡散してしまうため、1X、および2Xでの繰り返し書き換え性能が悪いことがわかった。また、第2誘電体層306に組成式(SnO2)1-x(SiC)x(mol%)で表される材料を用いた場合、x=0のサンプル2−2では、1X、および2Xでの記録感度、および1Xでの繰り返し書き換え性能が若干劣ることがわかった。また、x=70のサンプル2−8では、1X、および2Xでの記録感度、および2Xでの繰り返し書き換え性能が若干劣ることがわかった。また、x=100のサンプル2−9では、1X、および2Xでの記録感度が低いことがわかった。0<x≦50の範囲にある、サンプル2−3〜2−7では、1X、および2Xでの記録感度と繰り返し書き換え性能がともに良好であることがわかった。また、SnO2−SiCにさらに別の化合物を混合したサンプル2−10〜2−26においても、1X、および2Xでの記録感度と繰り返し書き換え性能がともに良好であることがわかった。
(実施例1−3)
実施例1−1において、第2界面層105を配置したところ、情報記録媒体15の情報層16の繰り返し書き換え回数が向上した。同様に、実施例1−2において、第2界面層305を配置したところ、情報記録媒体24の第2情報層25の繰り返し書き換え回数が向上した。なお、第2界面層105、および第2界面層305の材料は、Zr、Hf、YおよびSiから選ばれる少なくとも一つの元素と、GaおよびCrから選ばれる少なくとも一つの元素とOを含むことが好ましく、この場合、ZrO2、HfO2、Y2O3およびSiO2から選ばれる少なくとも一つの酸化物と、Ga2O3およびCr2O3から選ばれる少なくとも一つの酸化物を含むことが好ましいこともわかった。
(実施例1−4)
実施例1−4では、図3の情報記録媒体24を作製し、第4誘電体層206の材料と、第1情報層23の記録感度、および繰り返し書き換え性能との関係を調べた。具体的には、第4誘電体層206の材料が異なる第1情報層23を含む情報記録媒体24のサンプルを作製し、第1情報層23の記録感度、および繰り返し書き換え性能を測定した。
サンプルは以下のようにして製造した。まず、基板14として、レーザビーム11を導くための案内溝(深さ20nm、トラックピッチ0.32μm)が形成されたポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ1.1mm)を用意した。そして、そのポリカーボネート基板上に、第2反射層308としてAg−Pd−Cu層(厚さ:80nm)、第2誘電体層306として(SnO2)80(SiC)20層(厚さ:15nm)、第2界面層305として(ZrO2)25(SiO2)25(Ga2O3)50層(厚さ:5nm)、第2記録層304としてGe28Sn3Bi2Te34層(厚さ:10nm)、第1界面層303として(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50層(厚さ:5nm)、第1誘電体層302として(ZnS)80(SiO2)20層(厚さ:60nm)を順次スパッタリング法によって積層した。
次に、第1誘電体層302上に紫外線硬化性樹脂を塗布し、その上に案内溝(深さ20nm、トラックピッチ0.32μm)を形成した基板をかぶせて密着し回転させることによって均一な樹脂層を形成し、樹脂を硬化させた後に基板をはがした。この工程によって、レーザビーム11を導く案内溝が第1情報層23側に形成された厚さ25μmの光学分離層17を形成した。
その後、光学分離層17の上に、透過率調整層209としてTiO2層(厚さ:20nm)、第1反射層208としてAg−Pd−Cu層(厚さ:10nm)、第4誘電体層206(厚さ:5nm)第4界面層205として(ZrO2)25(SiO2)25(Ga2O3)50層(厚さ:5nm)、第1記録層204としてGe28Sn3Bi2Te34層(厚さ:6nm)、第3界面層203として(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50層(厚さ:5nm)、第3誘電体層202として(ZnS)80(SiO2)20層(厚さ:40nm)を順次スパッタリング法によって積層した。
最後に、紫外線硬化性樹脂を第3誘電体層202上に塗布し、ポリカーボネートシート(直径120mm、厚さ65μm)を第3誘電体層202に密着し回転させることによって均一な樹脂層を形成したのち、紫外線を照射して樹脂を硬化させることによって、厚さ75μmの透明層13を形成した。その後、第2記録層304、および第1記録層204をレーザビームで結晶化させる初期化工程を行った。以上のようにして、第4誘電体層206の材料が異なる複数のサンプルを製造した。
このようにして得られたサンプルについて、図7の記録再生装置38を用いて、情報記録媒体24の第1情報層23の記録感度、および繰り返し書き換え性能を測定した。このとき、レーザビーム11の波長は405nm、対物レンズ34の開口数NAは0.85、測定時のサンプルの線速度は4.9m/s、および9.8m/s、最短マーク長(2T)は0.149μmとした。また、情報はグルーブに記録した。
情報記録媒体24の第1情報層23の第4誘電体層206の材料と、第1情報層23の記録感度、および繰り返し書き換え性能の評価結果について、線速度が4.9m/sの場合(1X)の結果を表5に、線速度が9.8m/sの場合(2X)の結果を表6に示す。なお、1Xでの記録感度については、10.4mW未満を○、10.4mW以上12mW未満を△、12mW以上を×とした。また、2Xでの記録感度については、12mW未満を○、12mW以上14mW未満を△、14mW以上を×とした。さらに、繰り返し書き換え性能については、繰り返し書き換え回数が1000回以上を○、500回以上1000回未満を△、500回未満を×とした。
この結果、第4誘電体層206に(ZnS)80(SiO2)20を用いたサンプル3−1では、ZnSに含まれる硫黄が記録層に拡散してしまうため、1X、および2Xでの繰り返し書き換え性能が悪いことがわかった。また、第4誘電体層206に組成式(SnO2)1-x(SiC)x(mol%)で表される材料を用いた場合、x=0のサンプル3−2では、1X、および2Xでの記録感度、および1Xでの繰り返し書き換え性能が若干劣ることがわかった。また、x=70のサンプル3−8では、1X、および2Xでの記録感度、および2Xでの繰り返し書き換え性能が若干劣ることがわかった。また、x=100のサンプル3−9では、1X、および2Xでの記録感度が低いことがわかった。0<x≦50の範囲にある、サンプル3−3〜3−7では、1X、および2Xでの記録感度と繰り返し書き換え性能がともに良好であることがわかった。また、SnO2−SiCにさらに別の化合物を混合したサンプル3−10〜3−26においても、1X、および2Xでの記録感度と繰り返し書き換え性能がともに良好であることがわかった。
(実施例1−5)
実施例1−5では、図4の情報記録媒体29を作製し、実施例1−1と同様の実験を行った。
サンプルは以下のようにして製造した。まず、基板26として、レーザビーム11を導くための案内溝(深さ40nm、トラックピッチ0.344μm)が形成されたポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ0.6mm)を用意した。そして、そのポリカーボネート基板上に、第1誘電体層102として(ZnS)80(SiO2)20層(厚さ:60nm)、第1界面層103として(ZrO2)50(Cr2O3)50層(厚さ:5nm)、記録層104としてGe28Sn3Bi2Te34層(厚さ:10nm)、第2誘電体層106(厚さ:10〜20nm)、反射層108としてAg−Pd−Cu層(厚さ:80nm)を順次スパッタリング法によって積層した。
その後、紫外線硬化性樹脂をダミー基板28上に塗布し、基板26の反射層108をダミー基板28に密着し回転させることによって均一な樹脂層(厚さ20μm)を形成したのち、紫外線を照射して樹脂を硬化させることによって、接着層27を介して基板26とダミー基板28を接着させた。最後に、記録層104の全面をレーザビームで結晶化させる初期化工程を行った。
このようにして得られたサンプルについて、実施例1−1と同様の方法によって、情報記録媒体29の情報層16の記録感度、および繰り返し書き換え性能を測定した。このとき、レーザビーム11の波長は405nm、対物レンズ34の開口数NAは0.65、測定時のサンプルの線速度は8.6m/s、および17.2m/s、最短マーク長は0.294μmとした。また、情報はグルーブに記録した。
この結果、実施例1−1と同様に、第2誘電体層106に(ZnS)80(SiO2)20を用いた場合は、ZnSに含まれる硫黄が記録層に拡散してしまうため、1X、および2Xでの繰り返し書き換え性能が悪いことがわかった。また、第2誘電体層106に組成式(SnO2)1-x(SiC)x(mol%)で表される材料を用いた場合、0<x≦50の範囲にある材料を用いると、1X、および2Xでの記録感度と繰り返し書き換え性能がともに良好であることがわかった。また、SnO2−SiCにさらに別の化合物を混合した場合においても、1X、および2Xでの記録感度と繰り返し書き換え性能がともに良好であることがわかった。
(実施例1−6)
実施例1−6では、図6の情報記録媒体32を作製し、実施例1−2と同様の実験を行った。
サンプルは以下のようにして製造した。まず、基板26として、レーザビーム11を導くための案内溝(深さ40nm、トラックピッチ0.344μm)が形成されたポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ0.6mm)を用意した。そして、そのポリカーボネート基板上に、第3誘電体層202として(ZnS)80(SiO2)20層(厚さ:40nm)、第3界面層203として(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50層(厚さ:5nm)、第1記録層204としてGe28Sn3Bi2Te34層(厚さ:6nm)、第4界面層205として(ZrO2)25(SiO2)25(Ga2O3)50層(厚さ:10nm)、第1反射層208としてAg−Pd−Cu層(厚さ:10nm)、透過率調整層209としてTiO2層(厚さ:20nm)を順次スパッタリング法によって積層した。
また、基板30として、レーザビーム11を導くための案内溝(深さ40nm、トラックピッチ0.344μm)が形成されたポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ0.58mm)を用意した。そして、そのポリカーボネート基板上に、第2反射層208としてAg−Pd−Cu層(厚さ:80nm)、第2誘電体層306(厚さ:10〜20nm)、第2記録層304としてGe28Sn3Bi2Te34層(厚さ:10nm)、第1界面層303として(ZrO2)50(Cr2O3)50層(厚さ:5nm)、第1誘電体層302として(ZnS)80(SiO2)20層(厚さ:60nm)を順次スパッタリング法によって積層した。
その後、紫外線硬化性樹脂を基板30の第1誘電体層302上に塗布し、基板26の透過率調整層209を基板30に密着し回転させることによって均一な樹脂層(厚さ20μm)を形成したのち、紫外線を照射して樹脂を硬化させることによって、接着層27を介して基板26と基板30を接着させた。最後に、第2記録層304、および第1記録層204の全面をレーザビームで結晶化させる初期化工程を行った。
このようにして得られたサンプルについて、実施例1−2と同様の方法によって、情報記録媒体32の第2情報層25の記録感度、および繰り返し書き換え性能を測定した。このとき、レーザビーム11の波長は405nm、対物レンズ34の開口数NAは0.65、測定時のサンプルの線速度は8.6m/s、および17.2m/s、最短マーク長は0.294μmとした。また、情報はグルーブに記録した。
この結果、実施例1−2と同様に、第2誘電体層306に(ZnS)80(SiO2)20を用いた場合は、ZnSに含まれる硫黄が記録層に拡散してしまうため、1X、および2Xでの繰り返し書き換え性能が悪いことがわかった。また、第2誘電体層306に組成式(SnO2)1-x(SiC)x(mol%)で表される材料を用いた場合、0<x≦50の範囲にある材料を用いると、1X、および2Xでの記録感度と繰り返し書き換え性能がともに良好であることがわかった。また、SnO2−SiCにさらに別の化合物を混合した場合においても、1X、および2Xでの記録感度と繰り返し書き換え性能がともに良好であることがわかった。
(実施例1−7)
実施例1−5において、第2界面層105を配置したところ、情報記録媒体29の情報層16の繰り返し書き換え回数が向上した。同様に、実施例1−6において、第2界面層305を配置したところ、情報記録媒体32の第2情報層25の繰り返し書き換え回数が向上した。なお、第2界面層105、および第2界面層305の材料は、Zr、Hf、YおよびSiから選ばれる少なくとも一つの元素と、GaおよびCrから選ばれる少なくとも一つの元素とOを含むことが好ましく、この場合、ZrO2、HfO2、Y2O3およびSiO2から選ばれる少なくとも一つの酸化物と、Ga2O3およびCr2O3から選ばれる少なくとも一つの酸化物を含むことが好ましいこともわかった。
(実施例1−8)
実施例1−8では、図6の情報記録媒体32を作製し、実施例1−4と同様の実験を行った。
サンプルは以下のようにして製造した。まず、基板26として、レーザビーム11を導くための案内溝(深さ40nm、トラックピッチ0.344μm)が形成されたポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ0.6mm)を用意した。そして、そのポリカーボネート基板上に、第3誘電体層202として(ZnS)80(SiO2)20層(厚さ:40nm)、第3界面層203として(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50層(厚さ:5nm)、第1記録層204としてGe28Sn3Bi2Te34層(厚さ:6nm)、第4界面層205として(ZrO2)25(SiO2)25(Ga2O3)50層(厚さ:5nm)、第4誘電体層206(厚さ:5nm)、第1反射層208としてAg−Pd−Cu層(厚さ:10nm)、透過率調整層209としてTiO2層(厚さ:20nm)を順次スパッタリング法によって積層した。
また、基板30として、レーザビーム11を導くための案内溝(深さ40nm、トラックピッチ0.344μm)が形成されたポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ0.58mm)を用意した。そして、そのポリカーボネート基板上に、第2反射層308としてAg−Pd−Cu層(厚さ:80nm)、第2誘電体層306として(SnO2)80(SiC)20層(厚さ:15nm)、第2界面層305として(ZrO2)25(SiO2)25(Ga2O3)50層(厚さ:5nm)、第2記録層304としてGe28Sn3Bi2Te34層(厚さ:10nm)、第1界面層303として(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50層(厚さ:5nm)、第1誘電体層302として(ZnS)80(SiO2)20層(厚さ:60nm)を順次スパッタリング法によって積層した。
その後、紫外線硬化性樹脂を基板30の第1誘電体層302上に塗布し、基板26の透過率調整層209を基板30に密着し回転させることによって均一な樹脂層(厚さ20μm)を形成したのち、紫外線を照射して樹脂を硬化させることによって、接着層27を介して基板26と基板30を接着させた。最後に、第2記録層304、および第1記録層204の全面をレーザビームで結晶化させる初期化工程を行った。
このようにして得られたサンプルについて、実施例1−4と同様の方法によって、情報記録媒体32の第1情報層23の記録感度、および繰り返し書き換え性能を測定した。このとき、レーザビーム11の波長は405nm、対物レンズ34の開口数NAは0.65、測定時のサンプルの線速度は8.6m/s、および17.2m/s、最短マーク長は0.294μmとした。また、情報はグルーブに記録した。
この結果、実施例1−4と同様に、第4誘電体層206に(ZnS)80(SiO2)20を用いた場合は、ZnSに含まれる硫黄が記録層に拡散してしまうため、1X、および2Xでの繰り返し書き換え性能が悪いことがわかった。また、第4誘電体層206に組成式(SnO2)1-x(SiC)x(mol%)で表される材料を用いた場合、0<x≦50の範囲にある材料を用いると、1X、および2Xでの記録感度と繰り返し書き換え性能がともに良好であることがわかった。また、SnO2−SiCにさらに別の化合物を混合した場合においても、1X、および2Xでの記録感度と繰り返し書き換え性能がともに良好であることがわかった。
(実施例1−9)
実施例1−1から実施例1−8において、記録層104、または第2記録層304に(Ge−Sn)Te、GeTe−Sb2Te3、(Ge−Sn)Te−Sb2Te3、GeTe−Bi2Te3、(Ge−Sn)Te−Bi2Te3、GeTe−(Sb−Bi)2Te3および(Ge−Sn)Te−(Sb−Bi)2Te3のいずれかで表される材料を用いたところ、同様の結果が得られた。
(実施例1−10)
実施例1−10では、図8の電気的情報記録媒体44を製造し、その電流の印加による相変化を確認した。
基板39として、表面を窒化処理したSi基板を準備し、その上に下部電極40としてPtを面積6μm×6μmで厚さ0.1μm、第1誘電体層401として(SnO2)80(SiC)20を4.5μm×5μmで厚さ0.01μm、第1記録層41としてGe22Bi2Te25を面積5μm×5μmで厚さ0.1μm、第2記録層42としてSb70Te25Ge5を面積5μm×5μmで厚さ0.1μm、第2誘電体層402として(SnO2)80(SiC)20を4.5μm×5μmで厚さ0.01μm、上部電極43としてPtを面積5μm×5μmで厚さ0.1μmに順次スパッタリング法により積層した。第1誘電体層401、および第2誘電体層402は絶縁体である。従って、第1記録層41、および第2記録層42に電流を流すため、第1誘電体層401、および第2誘電体層402を第1記録層41、および第2記録層42より小さい面積で成膜し、下部電極40、第1記録層41、第2記録層42、および上部電極43が接する部分を設けている。
その後、下部電極40、および上部電極43にAuリード線をボンディングし、印加部45を介して電気的情報記録再生装置50を電気的情報記録媒体44に接続した。この電気的情報記録再生装置50により、下部電極40と上部電極43の間には、パルス電源48がスイッチ47を介して接続され、さらに、第1記録層41および第2記録層42の相変化による抵抗値の変化が、下部電極40と上部電極43の間にスイッチ49を介して接続された抵抗測定器46によって検出される。
ここで、第1記録層41の融点Tm1は630℃、結晶化温度Tx1は170℃、結晶化時間tx1は100nsである。また、第2記録層42の融点Tm2は550℃、結晶化温度Tx2は200℃、結晶化時間tx2は50nsである。さらに、第1記録層41が非晶質相での抵抗値ra1は500Ω、結晶相での抵抗値rc1は10Ωであり、第2記録層42が非晶質相での抵抗値ra2は800Ω、結晶相での抵抗値rc2は20Ωである。
第1記録層41および第2記録層42が共に非晶質相の状態1のとき、下部電極40と上部電極43の間に、図11の記録波形501においてIc1=5mA、tc1=150nsの電流パルスを印加したところ、第1記録層41のみが非晶質相から結晶相に転移した(以下、状態2とする)。また、状態1のとき、下部電極40と上部電極43の間に、図11の記録波形502においてIc2=10mA、tc2=100nsの電流パルスを印加したところ、第2記録層42のみが非晶質相から結晶相に転移した(以下、状態3とする)。また、状態1のとき、下部電極40と上部電極43の間に、図11の記録波形503においてIc2=10mA、tc1=150nsの電流パルスを印加したところ、第1記録層41および第2記録層42が共に非晶質相から結晶相に転移した(以下、状態4とする)。
次に、第1記録層41および第2記録層42が共に結晶相で低抵抗状態の状態4のとき、下部電極40と上部電極43の間に、図11の記録波形504においてIa1=20mA、Ic2=10mA、tc2=100nsの電流パルスを印加したところ、第1記録層41のみが結晶相から非晶質相に転移した(状態3)。また、状態4のとき、下部電極40と上部電極43の間に、図11の記録波形505においてIa2=15mA、ta2=50nsの電流パルスを印加したところ、第2記録層42のみが結晶相から非晶質相に転移した(状態2)。また、状態4のとき、下部電極40と上部電極43の間に、図11の消去波形506においてIa1=20mA、ta1=50nsの電流パルスを印加したところ、第1記録層41および第2記録層42が共に結晶相から非晶質相に転移した(状態1)。
さらに、状態2もしくは状態3のとき、図11の記録波形503においてIc2=10mA、tc1=150nsの電流パルスを印加したところ、第1記録層41および第2記録層42が共に非晶質相から結晶相に転移した(状態4)。また、状態2もしくは状態3のとき、図11の消去波形507においてIa1=20mA、Ic2=10mA、tc1=150ns、ta1=50nsの電流パルスを印加したところ、第1記録層41および第2記録層42が共に結晶相から非晶質相に転移した(状態1)。また、状態2のとき、図11の記録波形508においてIa1=20mA、Ic2=10mA、tc2=100ns、ta1=50ns電流パルスを印加したところ、第1記録層41が結晶相から非晶質相に転移し、第2記録層42が非晶質相から結晶相に転移した(状態3)。また、状態3のとき、図11の記録波形509においてIa2=15mA、Ic1=5mA、tc1=150ns、ta2=50nsの電流パルスを印加したところ、第1記録層41が非晶質相から結晶相に転移し、第2記録層42が結晶相から非晶質相に転移した(状態2)。
以上の結果から、図8の電気的相変化形情報記録媒体44では、第1記録層41および第2記録層42のそれぞれを結晶相と非晶質相との間で電気的に可逆変化させることができ、4つの状態(状態1:第1記録層41と第2記録層42が共に非晶質相、状態2:第1記録層41が結晶相で第2記録層42が非晶質相、状態3:第1記録層41が非晶質相で第2記録層42が結晶相、状態4:第1記録層41と第2記録層42が共に結晶相)を実現できることがわかった。
また、電気的相変化形情報記録媒体44の繰り返し書き換え回数を測定したところ、第1誘電体層401、および第2誘電体層402が無い場合に比べ10倍以上向上できることがわかった。これは、第1誘電体層401、および第2誘電体層402が、第1記録層41および第2記録層42への下部電極40および上部電極43からの物質移動を抑制しているためである。
次に、他の実施例を用いた説明を行う。
まず、本発明の情報記録媒体の誘電体層を形成する際に用いられる酸化物−炭化物系材料層からなるターゲットに対し、公称組成(換言すれば、供給に際してターゲットメーカーが公に表示している組成)と分析組成との関係を、予め試験により確認した。
本試験では、その一例として、組成式(11)に相当する(SnO2)40(Ga2O3)40(SiC)20(mol%)で公称組成が表示された、スパッタリングターゲットを用いた。このスパッタリングターゲットを粉末状にし、X線マイクロアナライザー法により組成分析を実施した。この結果、スパッタリングターゲットの分析組成が、各元素の割合(原子%)で示される組成式として得られた。分析結果を、表7に示す。さらに、表7には、公称組成から算出される元素組成である、換算組成も示す。
表7に示すように、分析組成は換算組成とほぼ等しかった。この結果から、(実施の形態9)に示した(式3)および(式4)により表記されるスパッタリングターゲットの実際の組成(即ち、分析組成)は、計算により求められる元素組成(即ち、換算組成)とほぼ一致し、したがって公称組成が適正であることが確認された。そこで、以下の実施例においては、スパッタリングターゲットの組成を公称組成(mol%)で表す。また、スパッタリングターゲットの公称組成と、このスパッタリングターゲットを用いてスパッタリング法により形成した酸化物−炭化物系材料層の組成(mol%)とは、同じものとみなして差し支えないと考えた。したがって、以下の実施例では、スパッタリングターゲットの組成の表示を以って、このスパッタリングターゲットを用いて形成された層の組成とした。
(実施例2−1)
実施例2−1では、実施の形態11で説明した図13に示す情報記録媒体において、第1誘電体層2および第2誘電体層6を、(SnO2)95(SiC)5(mol%)で公称組成が表示されたスパッタリングターゲットを用いて形成した。第1誘電体層2および第2誘電体層6は同じ材料で形成した。以下、本実施例の情報記録媒体の作製方法を説明する。以下の説明においては、図13に示した各構成要素と同じ参照番号を用いる。
まず、基板1として、深さ56nm、トラックピッチ(基板1の主面に平行な面内におけるグルーブ表面およびランド表面の中心間距離)0.615μmの案内溝が片側表面に予め設けられた、直径120mm、厚さ0.6mmの円形のポリカーボネート基板を準備した。
基板1上に、厚さ145nmの第1誘電体層2、厚さ8nmの記録層4、厚さ45nmの第2誘電体層6、厚さ40nmの光吸収補正層7、および厚さ80nmの反射層8を、この順に、スパッタリング法により以下に説明する方法で成膜した。
第1誘電体層2と第2誘電体層6を構成する材料として、(SnO2)95(SiC)5(mol%)を用いた。
第1誘電体層2および第2誘電体層6を形成する工程においては、上述の材料から成るスパッタリングターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を成膜装置に取り付けて、圧力0.13Paにて高周波スパッタリングを実施して成膜した。
記録層4を形成する工程は、GeTe−Sb2Te3擬二元系組成のGeの一部をSnで置換したGe−Sn−Sb−Te系材料から成るスパッタリングターゲット(直径100mm、厚み6mm)を成膜装置に取り付けて、0.13Paにて直流スパッタリングを実施した。記録層の組成は、Ge27Sn8Sb12Te53(原子%)であった。
光吸収補正層7を形成する工程は、組成がGe80Cr20(原子%)である材料から成るスパッタリングターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を成膜装置に取り付けて、約0.4Paにて直流スパッタリングを実施した。
反射層8を形成する工程は、Ag−Pd−Cu合金から成るスパッタリングターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を成膜装置に取り付けて、約0.4Paにて直流スパッタリングを実施した。
反射層8を形成した後、紫外線硬化性樹脂を反射層8上に塗布した。塗布した紫外線硬化性樹脂の上に、直径120mm、厚さ0.6mmのポリカーボネート製のダミー基板10を密着させた。次いで、ダミー基板10の側から紫外線を照射して樹脂を硬化させ貼り合わせた。
上記の貼り合わせた後、波長810nmの半導体レーザを使用して初期化工程を実施し、記録層4を結晶化させた。初期化工程の終了により、情報記録媒体の作製が完了した。
(実施例2−2)
実施例2−2の情報記録媒体は、第1誘電体層2および第2誘電体層6を、(SnO2)80(SiC)20(mol%)で公称組成が表示されたスパッタリングターゲットを用いて形成する以外は、実施例2−1の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(実施例2−3)
実施例2−3の情報記録媒体は、第1誘電体層2および第2誘電体層6を、(SnO2)60(SiC)40(mol%)で公称組成が表示されたスパッタリングターゲットを用いて形成する以外は、実施例2−1の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(実施例2−4)
実施例2−4の情報記録媒体は、第1誘電体層2および第2誘電体層6を、(SnO2)75(ZrO2)10(SiC)15(mol%)で公称組成が表示されたスパッタリングターゲットを用いて形成する以外は、実施例2−1の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(実施例2−5)
実施例2−5の情報記録媒体は、第1誘電体層2および第2誘電体層6を、(SnO2)60(HfO2)20(SiC)20(mol%)で公称組成が表示されたスパッタリングターゲットを用いて形成する以外は、実施例2−1の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(実施例2−6)
実施例2−6の情報記録媒体は、第1誘電体層2および第2誘電体層6を、(SnO2)50(ZrO2)40(SiC)10(mol%)で公称組成が表示されたスパッタリングターゲットを用いて形成する以外は、実施例2−1の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(実施例2−7)
実施例2−7の情報記録媒体は、第1誘電体層2および第2誘電体層6を、(Ga2O3)80(SiC)20(mol%)で公称組成が表示されたスパッタリングターゲットを用いて形成する以外は、実施例2−1の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(実施例2−8)
実施例2−8の情報記録媒体は、第1誘電体層2および第2誘電体層6を、(Ga2O3)70(ZrO2)15(TaC)15(mol%)で公称組成が表示されたスパッタリングターゲットを用いて形成する以外は、実施例2−1の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(実施例2−9)
実施例2−9の情報記録媒体は、第1誘電体層2および第2誘電体層6を、(SnO2)60(Ga2O3)20(SiC)20(mol%)で公称組成が表示されたスパッタリングターゲットを用いて形成する以外は、実施例2−1の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(実施例2−10)
実施例2−10の情報記録媒体は、第1誘電体層2および第2誘電体層6を、(SnO2)40(Ga2O3)40(SiC)20(mol%)で公称組成が表示されたスパッタリングターゲットを用いて形成する以外は、実施例2−1の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(実施例2−11)
実施例2−11の情報記録媒体は、第1誘電体層2および第2誘電体層6を、(SnO2)20(Ga2O3)60(SiC)20(mol%)で公称組成が表示されたスパッタリングターゲットを用いて形成する以外は、実施例2−1の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(実施例2−12)
実施例2−12の情報記録媒体は、第1誘電体層2および第2誘電体層6を、(SnO2)40(Ga2O3)40(ZrO2)10(TiC)10(mol%)で公称組成が表示されたスパッタリングターゲットを用いて形成する以外は、実施例2−1の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(実施例2−13)
実施例2−13の情報記録媒体は、第1誘電体層2および第2誘電体層6を、(SnO2)60(Ga2O3)20(ZrO2)5(SiC)15(mol%)で公称組成が表示されたスパッタリングターゲットを用いて形成する以外は、実施例2−1の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(比較例1)
比較例1の情報記録媒体として、図17に示す構成の情報記録媒体を作製した。ここで、第1誘電体層102および第2誘電体層106は、(ZnS)80(SiO2)20(mol%)のスパッタリングターゲットで形成した。また、第1の界面層103および第2の界面層105は、それぞれZrO2−SiO2−Cr2O3から成る、厚さ5nmの層とした。
第1誘電体層102および第2誘電体層106は、(ZnS)80(SiO2)20(mol%)から成るスパッタリングターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を使用して、圧力0.13Paにて高周波スパッタリングを実施して形成した。
第1の界面層103および第2の界面層105は、(ZrO2)25(SiO2)25(CrO2)50(mol%)の組成を有する材料から成るスパッタリングターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を成膜装置に取り付けて、高周波スパッタリングで形成した。それ以外の光吸収補正層7、反射層8およびダミー基板10との貼り合せは、実施例2−1の情報記録媒体の場合と同様である。
(比較例2)
比較例2の情報記録媒体は、第1誘電体層2および第2誘電体層6を、SnO2のみの公称組成が表示されたスパッタリングターゲットを用いて形成する以外は、実施例2−1の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(比較例3)
比較例3の情報記録媒体は、第1誘電体層2および第2誘電体層6を、Ga2O3のみの公称組成が表示されたスパッタリングターゲットを用いて形成する以外は、実施例2−1の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(比較例4)
比較例4の情報記録媒体は、第1誘電体層2および第2誘電体層6を、SiCのみの公称組成が表示されたスパッタリングターゲットを用いて形成する以外は、実施例2−1の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(比較例5)
比較例5の情報記録媒体は、第1誘電体層2および第2誘電体層6を、(SnO2)50(Ga2O3)50(mol%)の公称組成が表示されたスパッタリングターゲットを用いて形成する以外は、実施例2−1の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(比較例6)
比較例6の情報記録媒体は、第1誘電体層2および第2誘電体層6を、(SnO2)80(ZrO2)20(mol%)の公称組成が表示されたスパッタリングターゲットを用いて形成する以外は、実施例2−1の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
次に、以上の実施例2−1〜2−13および比較例1〜5の情報記録媒体に対して評価を行った。以下に評価方法について説明する。評価項目として(1)誘電体層と記録層との密着性、(2)記録感度、(3)書き換え性能の3つについて行った。
まず、(1)の密着性は、高温高湿条件下での剥離の有無に基づいて評価した。具体的には、初期化工程後の情報記録媒体を、温度90℃で相対湿度80%の高温高湿槽に100時間放置した後、記録層4とこれに接する誘電体層2、6との界面の少なくとも一方で剥離が発生していないかどうかを、光学顕微鏡で目視観察した。
(2)記録感度と(3)繰り返し書き換え性能は、記録再生評価装置を用い、最適パワーと、その記録パワーでの繰り返し回数を評価した。
情報記録媒体の信号評価は、情報記録媒体を回転させるスピンドルモータと、レーザ光を発する半導体レーザを備えた光学ヘッドと、レーザ光を情報記録媒体の記録層4上に集光させる対物レンズとを具備した一般的な構成の情報記録システムを用いた。具体的には、波長660nmの半導体レーザと開口数0.6の対物レンズを使用し、4.7GB容量相当の記録を行った。このとき、情報記録媒体を回転させる線速度は8.2m/秒とした。また、後述の平均ジッタ値を求める際のジッタ値の測定には、タイムインターバルアナライザーを用いた。
まず、繰り返し回数を決定する際の測定条件を決めるために、ピークパワー(Pp)およびバイアスパワー(Pb)を以下の手順で設定した。上記のシステムを用いて、レーザ光を、高パワーレベルのピークパワー(mW)と低パワーレベルのバイアスパワー(mW)との間でパワー変調しながら情報記録媒体に向けて照射して、マーク長0.42μm(3T)〜1.96μm(14T)のランダム信号を(グルーブ記録により)記録層4の同一のグルーブ表面に10回記録した。そして、前端間のジッタ値(記録マーク前端部におけるジッタ)および後端間のジッタ値(記録マーク後端部におけるジッタ)を測定し、これらの平均値として平均ジッタ値を求めた。バイアスパワーを一定の値に固定し、ピークパワーを種々変化させた各記録条件について平均ジッタ値を測定し、ピークパワーを徐々に増加させて、ランダム信号の平均ジッタ値が13%に達したとき、ピークパワーの1.3倍のパワーを仮にPp1と決めた。次に、ピークパワーをPp1に固定し、バイアスパワーを種々変化させた各記録条件について平均ジッタ値を測定し、ランダム信号の平均ジッタ値が13%以下となったときの、バイアスパワーの上限値および下限値の平均値をPbに設定した。このバイアスパワーをPbに固定し、ピークパワーを種々変化させた各記録条件について平均ジッタ値を測定し、ピークパワーを徐々に増加させて、ランダム信号の平均ジッタ値が13%に達したとき、ピークパワーの1.3倍のパワーをPpに設定した。このようにして設定したPpおよびPbの条件で記録した場合、例えば10回繰り返し記録において、8〜9%の平均ジッタ値が得られた。システムのレーザパワー上限値を考慮すれば、Pp≦14mW、Pb≦8mWを満足することが望ましい。
繰り返し回数は、本実施例では平均ジッタ値に基づいて決定した。上記のようにして設定されPpとPbとでレーザ光をパワー変調しながら情報記録媒体に向けて照射して、マーク長0.42μm(3T)〜1.96μm(14T)のランダム信号を(グルーブ記録により)同一のグルーブ表面に所定回数繰り返して連続記録した後、平均ジッタ値を測定した。平均ジッタ値は、繰り返し回数が1、2、3、5、10、100、200、500回で測定し、1000回以上は1000回毎に測定して10000回まで評価した。繰り返し書き換え性能は、平均ジッタ値が13%に達したときの繰り返し回数により評価した。繰り返し回数が大きいほど、繰り返し書き換え性能が高く、上記のような情報記録媒体を、例えば画像音声レコーダで用いる場合には、繰り返し回数は1万回以上あることが好ましく、1万回以上であればより望ましい。
表8に、実施例2−1〜2−13および比較例1〜6の情報記録媒体における(1)密着性、(2)記録感度、(3)書き換え性能の評価結果を示す。なお、実施例2−1〜2−13と比較例2〜6の情報記録媒体について、誘電体層に用いた材料の原子%も併記しておく。ここでは、密着性の評価結果として上記高温高湿試験後の剥離の有無を示した。記録感度は、設定されたピークパワーを示し、14mW以下であれば良好であると評価した。また、書き換え性能は、繰り返し回数が1000回未満を×、1000回以上1万回未満のものを△、1万回以上のものを○と評価した。
表8からも明らかなように、まず、誘電体層2、6の材料がSnO2、Ga2O3、SiCの場合は、記録層4と誘電体層2、6との密着性は良好だが、記録感度が不十分であった(比較例2〜4)。またSiCは、それ単独では熱伝導が大きいために、記録の熱が逃げてしまい、評価用光ピックの設定値以上のパワーが必要だったため、正確な記録パワーを評価することができなかったことから、書換え性能も評価できなかった。これに対し、実施例2−1〜2−13のように、SnO2およびGa2O3からなる酸化物群に、SiC、TaCおよびTiCから成る炭化物群や、任意にZrO2またはHfO2を本発明において規定した範囲内で混合することにより、良好な記録感度と書き換え性能が得られた。
また、記録感度と書き換え性能の均衡を考慮すると、SnO2およびGa2Oの酸化物群の割合は、50mol%以上であることが好ましく、SiC、TaCおよびTiCから成る炭化物群の割合は、記録感度を考慮すると少なくとも5mol%以上であることが好ましいことが確認された。
次に、実施の形態11で示す構成の情報記録媒体の実施例について以下に説明する。
(実施例2−14)
本実施例の情報記録媒体は、実施の形態11で説明した図14に示す情報記録媒体であり、第1誘電体層102は(ZnS)80(SiO2)20(mol%)を用いて形成し、第1の界面層103はZrO2−SiO2−Cr2O3を用いて2〜5nmの厚さで形成した。これ以外の構成については、実施例2−1の情報記録媒体の場合と同様に作製した。実施例2−14では、記録層4上に接して配置された第2誘電体層6を、実施例2−1で用いた材料のスパッタリングターゲットを用いて形成した。
(実施例2−15)
実施例2−15の情報記録媒体は、第2誘電体層6を、実施例2−2で用いた材料のスパッタリングターゲットを用いて形成した以外は、実施例2−2の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(実施例2−16)
実施例2−16の情報記録媒体は、第2誘電体層6を、実施例2−3で用いた材料のスパッタリングターゲットを用いて形成した以外は、実施例2−3の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(実施例2−17)
実施例2−17の情報記録媒体は、第2誘電体層6を、実施例2−4で用いた材料のスパッタリングターゲットを用いて形成した以外は、実施例2−14の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(実施例2−18)
実施例2−18の情報記録媒体は、第2誘電体層6を、実施例2−5で用いた材料のスパッタリングターゲットを用いて形成した以外は、実施例2−14の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(実施例2−19)
実施例2−19の情報記録媒体は、第2誘電体層6を、実施例2−7で用いた材料のスパッタリングターゲットを用いて形成した以外は、実施例2−14の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(実施例2−20)
実施例2−20の情報記録媒体は、第2誘電体層6を、実施例2−9で用いた材料のスパッタリングターゲットを用いて形成した以外は、実施例2−14の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(実施例2−21)
実施例2−21の情報記録媒体は、第2誘電体層6を、実施例2−10で用いた材料のスパッタリングターゲットを用いて形成した以外は、実施例2−14の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(実施例2−22)
実施例2−22の情報記録媒体は、第2誘電体層6を、(SnO2)40(Ga2O3)40(TaC)20(mol%)で公称組成が表示されたスパッタリングターゲットを用いて形成した以外は、実施例2−14の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(実施例2−23)
実施例2−23の情報記録媒体は、第2誘電体層6を、実施例2−12で用いた材料のスパッタリングターゲットを用いて形成した以外は、実施例2−14の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(実施例2−24)
実施例2−24の情報記録媒体は、第2誘電体層6を、実施例2−13で用いた材料のスパッタリングターゲットを用いて形成した以外は、実施例2−14の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(比較例7)
比較例7の情報記録媒体は、第2誘電体層6を、比較例2で用いた材料のスパッタリングターゲットを用いて形成した以外は、実施例2−14の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(比較例8)
比較例8の情報記録媒体は、第2誘電体層6を、比較例3で用いた材料のスパッタリングターゲットを用いて形成した以外は、実施例2−14の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(比較例9)
比較例9の情報記録媒体は、第2誘電体層6を、比較例4で用いた材料のスパッタリングターゲットを用いて形成した以外は、実施例2−14の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(比較例10)
比較例10の情報記録媒体は、第2誘電体層6を、比較例5で用いた材料のスパッタリングターゲットを用いて形成した以外は、実施例2−14の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(比較例11)
比較例11の情報記録媒体は、第2誘電体層6を、比較例6で用いた材料のスパッタリングターゲットを用いて形成した以外は、実施例2−14の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
表9に、実施例2−14〜2−24および比較例7〜11の情報記録媒体における(1)密着性、(2)記録感度、(3)書き換え性能を示す。ここでの表記の基準は、表8に示したものと同様である。
表9からも明らかなように、基板1と記録層4との間に第1誘電体層102と界面層103を設け、第2誘電体層6のみに本発明の材料を適用した場合も、表8とほぼ同様の傾向が認められた。すなわち、SnO2、Ga2O3およびその混合物や、SnO2とZrO2との混合物と、SiC単独の場合、記録層4と誘電体層102、6との密着性は良好だが、記録感度と書換え性能とを両立するには不十分であった(比較例7〜11)。これに対し、実施例2−14〜2−23のように、SnO2およびGa2O3から成る酸化物群に、SiC、TaCおよびTiCから成る炭化物群を混合し、さらに任意にZrO2またはHfO2のうち少なくとも一つの酸化物を、本発明で規定した範囲内で混合することにより、良好な記録感度が得られた。
また、密着性と記録感度との均衡を考慮すると、SnO2およびGa2O3からなる酸化物群の割合は、50mol%以上であることが好ましく、SiCの割合は、記録感度を考慮すると少なくとも5mol%以上であることが好ましいことが確認された。
実施例2−1〜2−23の情報記録媒体のように、記録層に接して形成される誘電体層として上述のような酸化物−炭化物系材料層を用いたとき、層数を減少させるという目的が達成されるとともに、良好な書き換え性能が得られる。なお、本発明はこれらの実施例に限定されない。本発明の情報記録媒体は、記録層に接して形成される層のうち、少なくとも一つが上述のような酸化物−炭化物系材料層で形成されていればよい。
(実施例2−25)
以上の実施例2−1〜2−24では、光学的手段によって情報を記録する情報記録媒体を作製した。実施例2−25では、図15に示すような、電気的手段によって情報を記録する情報記録媒体を作製した。これはいわゆるメモリである。
本実施例の情報記録媒体は、次のようにして作製した。まず、表面を窒化処理した、長さ5mm、幅5mmおよび厚さ1mmのSi基板211を準備した。この基板211の上に、Auの下部電極212を1.0mm×1.0mmの領域に厚さ0.1μmで形成した。下部電極212の上に、Ge38Sb10Te52(化合物としてはGe8Sb2Te11と表記される)の材料にて相変化部として機能する記録層215(以下、相変化部215と称する。)を直径0.2mmの円形領域に厚さ0.1μmとなるように形成し、(SnO)40(Ga2O3)40(SiC)20(mol%)の材料を用いて、断熱部として機能する誘電体層216(以下、断熱部216と称する。)を、0.6mm×0.6mmの領域(但し相変化部215を除く)に、相変化部215と同じ厚さとなるように形成した。さらに、Auの上部電極214を0.6mm×0.6mmの領域に厚さ0.1μmで形成した。下部電極212、相変化部215、断熱部216および上部電極214は、いずれも、スパッタリング法で形成した。
相変化部215を成膜する工程では、Ge−Sb−Te系材料から成るスパッタリングターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を成膜装置に取り付け、パワー100Wで、Arガスを導入して直流スパッタリングを行った。スパッタ時の圧力は約0.13Paとした。また、断熱部216を成膜する工程では、(SnO)40(Ga2O3)40(SiC)20(mol%)の組成を有する材料から成るスパッタリングターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を成膜装置に取り付けて、約0.13Paの圧力下で、高周波スパッタリングを行った。パワーは400Wとした。スパッタリング中、Arガスを導入した。これら工程でのスパッタリングは、相変化部215および断熱部216が互いに積層しないように、成膜すべき面以外の領域をマスク治具で覆って各々行った。なお、相変化部215および断熱部216の形成の順序は問わず、いずれを先に行ってもよい。また、相変化部215および断熱部216により記録部213を構成する。相変化部215は本発明に言うところの記録層に該当し、断熱部216は本発明に言うところの材料層に該当する。
なお、下部電極212および上部電極214は、電極形成技術の分野において一般的に採用されているスパッタリング方法によって成膜できるので、それらの成膜工程についての詳細な説明は省略する。
以上のようにして作製した情報記録媒体に電気的エネルギーを印加することによって相変化部215にて相変化が起こることを、図16に示すシステムにより確認した。図16に示す情報記録媒体の断面図は、図15に示す情報記録媒体をI−I線に沿って厚さ方向に切断した断面である。
より詳細には、図16に示すように、2つの印加部222を下部電極212および上部電極214にAuリード線でそれぞれボンディングすることによって、印加部222を介して、電気的情報記録再生装置224を情報記録媒体(メモリ)に接続した。この電気的情報記録再生装置224において、下部電極212と上部電極214に各々接続されている印加部222の間には、パルス発生部218がスイッチ220を介して接続され、また、抵抗測定器219がスイッチ221を介して接続されていた。抵抗測定器219は、抵抗測定器219によって測定される抵抗値の高低を判定する判定部223に接続されていた。パルス発生部218によって印加部222を介して上部電極214および下部電極212の間に電流パルスを流し、下部電極212と上部電極214との間の抵抗値を抵抗測定器219によって測定し、この抵抗値の高低を判定部223で判定した。一般に、相変化部215の相変化によって抵抗値が変化するため、この判定結果に基づいて、相変化部215の相の状態を知ることができる。
実施例2−25の場合、相変化部215の融点は630℃、結晶化温度は170℃、結晶化時間は130nsであった。下部電極212と上部電極214の間の抵抗値は、相変化部215が非晶質相状態では1000Ω、結晶相状態では20Ωであった。相変化部215が非晶質相状態(即ち高抵抗状態)のとき、下部電極212と上部電極214との間に、20mA、150nsの電流パルスを印加したところ、下部電極212と上部電極214の間の抵抗値が低下し、相変化部215が非晶質相状態から結晶相状態に転移した。次に、相変化部215が結晶相状態(即ち低抵抗状態)のとき、下部電極212と上部電極214の間に、200mA、100nsの電流パルスを印加したところ、下部電極212と上部電極214の間の抵抗値が上昇し、相変化部215が結晶相から非晶質相に転移した。
以上の結果から、相変化部215の周囲の断熱部216として、(SnO)40(Ga2O3)40(SiC)20(mol%)の組成を有する材料を含む層を形成した場合、電気的エネルギーを付与することによって、相変化部215に相変化を生起させることができ、情報を記録する機能を持たせることができることが確認できた。この現象は、実施例2−1〜2−24の記録感度を鑑みると、実施例2−1〜2−24で用いた酸化物系−炭化物材料層同様の効果が得られると考えられる。
実施例2−25のように、円柱状の相変化部215の周囲に、誘電体である(SnO)40(Ga2O3)40(SiC)20(mol%)の断熱部216を設けると、上部電極214および下部電極212との間に電圧を印加することによって相変化部215に流れた電流がその周辺部に逃げることを効果的に抑制し得る。その結果、電流により生じるジュール熱によって相変化部215の温度を効率的に上昇させることができる。特に、相変化部215を非晶質相状態に転移させる場合には、相変化部215のGe38Sb10Te52を一旦溶融させて急冷する過程が必要である。相変化部215のこの溶融は、相変化部215の周囲に断熱部216を設けることによって、より小さい電流で生起し得る。
断熱部216に用いた(SnO)40(Ga2O3)40(SiC)20(mol%)は、高融点であり、熱による原子拡散も生じにくいので、上述のような電気的メモリに適用することが可能である。また、相変化部215の周囲に断熱部216が存在すると、断熱部216が障壁となるので、相変化部215は記録部213の面内において電気的および熱的に実質的に隔離される。このことを利用して、情報記録媒体に、複数の相変化部215を断熱部216で互いに隔離された状態で設けて、情報記録媒体のメモリ容量を増やすこと、ならびにアクセス機能およびスイッチング機能を向上させることが可能となる。あるいは、情報記録媒体自体を複数個つなぐことも可能である。
以上、種々の実施例を通じて本発明の情報記録媒体について説明してきたように、光学的手段で記録する情報記録媒体および電気的手段で記録する情報記録媒体のいずれにも、記録層に接するように、本発明で規定した酸化物−炭化物系材料層を誘電体層に適用することにより、これまで実現されなかった構成を実現でき、従来の情報記録媒体よりも優れた性能が得られる。 上記の実施の形態は例示的なものであり、本発明はこれらの実施の形態に限定されない。