JP4306085B2 - 燃料電池を備える車両およびその制御方法 - Google Patents

燃料電池を備える車両およびその制御方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4306085B2
JP4306085B2 JP2000110709A JP2000110709A JP4306085B2 JP 4306085 B2 JP4306085 B2 JP 4306085B2 JP 2000110709 A JP2000110709 A JP 2000110709A JP 2000110709 A JP2000110709 A JP 2000110709A JP 4306085 B2 JP4306085 B2 JP 4306085B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
power
fuel cell
battery
power source
motor
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2000110709A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2001224105A (ja
Inventor
淳 田端
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Motor Corp
Original Assignee
Toyota Motor Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyota Motor Corp filed Critical Toyota Motor Corp
Priority to JP2000110709A priority Critical patent/JP4306085B2/ja
Priority to EP00110847A priority patent/EP1055545B1/en
Priority to DE60007917T priority patent/DE60007917T2/de
Priority to US09/576,444 priority patent/US6672415B1/en
Publication of JP2001224105A publication Critical patent/JP2001224105A/ja
Priority to US10/686,861 priority patent/US7028795B2/en
Priority to US11/325,501 priority patent/US7273120B2/en
Application granted granted Critical
Publication of JP4306085B2 publication Critical patent/JP4306085B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/30Hydrogen technology
    • Y02E60/50Fuel cells
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02TCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES RELATED TO TRANSPORTATION
    • Y02T10/00Road transport of goods or passengers
    • Y02T10/60Other road transportation technologies with climate change mitigation effect
    • Y02T10/62Hybrid vehicles
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02TCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES RELATED TO TRANSPORTATION
    • Y02T90/00Enabling technologies or technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02T90/40Application of hydrogen technology to transportation, e.g. using fuel cells

Landscapes

  • Electric Propulsion And Braking For Vehicles (AREA)
  • Control Of Vehicle Engines Or Engines For Specific Uses (AREA)
  • Control Of Transmission Device (AREA)
  • Fuel Cell (AREA)
  • Hybrid Electric Vehicles (AREA)
  • Control Of Driving Devices And Active Controlling Of Vehicle (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、発電手段を備える車両に関し、その一態様として燃料電池を備える車両およびその制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、エンジンと電動機とを動力源とするハイブリッド車両が提案されている。ハイブリッド車両の一形態として、電動機とエンジンの双方の動力を駆動軸に出力可能なパラレルハイブリッド車両と呼ばれる構成がある。パラレルハイブリッド車両は、電動機を適宜動力源として用いることにより、エンジンを効率の良い領域で運転させることができる。また、電動機による回生制動を行うことにより、車両の運動エネルギを電力として回収することができる。これらの作用に基づき、ハイブリッド車両は、燃費および環境性に優れるという特性を有する。
【0003】
こうしたパラレルハイブリッド車両の中には、電動機の電源として燃料電池を搭載した車両も提案されている(例えば、特開平3−148330記載の車両)。燃料電池とは、燃料として最終的に供給される水素の酸化により発電を行う装置をいう。燃料電池から排出されるのは、水蒸気であり、有害な成分が含まれないため環境性に非常に優れるという利点がある。
【0004】
但し、燃料電池は、昨今開発が行われている装置である。従って、燃料電池の出力特性と従来の熱機関の有する特性の長所どうしを最適に組みあわせる点でまだ不十分であった。燃料電池を搭載したハイブリッド車両の提案は、かかる状況を踏まえてなされたものであり、広く普及しているエンジンの特性と、燃料電池の特性との活用を図ったものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、燃料電池を搭載した従来のハイブリッド車両では、燃料電池が限定的に用いられているに過ぎず、燃料電池の特性が十分に活かされていなかった。また、燃費に優れるというハイブリッド車両としての特性も十分に活かされていなかった。一般に燃料電池で発電を行う際には、十分に暖機する必要があり、その意味で発電要求に対する応答性が低い特性があるが、かかる特性を補償して要求電力を出力する方法についても十分な検討がなされていなかった。
【0006】
エンジンは、出力トルクに脈動その他の変動を生じるのが通常である。駆動軸にトルクを出力する機関として、エンジンの他に電動機を備える車両では、電動機のトルクを制御することにより、エンジンから駆動軸に出力されるトルク変動を抑制することができる。トルク変動を抑制する制御において、燃料電池を電動機の電源としてどのように活用すべきかという点についても十分に検討されていなかった。
【0007】
エンジンからのトルクが要求トルクよりも大きいときは、電動機を回生運転し、負荷を与えることにより、要求トルクを実現できる。エンジンからのトルクが要求トルクに満たない場合には、電動機を力行運転することにより、要求トルクを実現できる。このように、トルク変動の抑制には、電動機との間で電力の抽出および供給の双方を伴うのが通常である。従来は、二次電池を用いてかかる制御がなされていたが、燃料電池は発電のみを行う発電手段の一種であるため、二次電池を置換することはできない。
【0008】
二次電池を用いてトルク変動を抑制する場合、電動機との間での電力の抽出および供給の収支がとれず、二次電池の電力を過度に消費することが多いという課題が指摘されていた。電動機から回生する電力を二次電池に充電する際に生じる充電効率、二次電池に蓄えられた電力を放電する際に生じる放電効率に起因して、トルク変動を抑制するための機械的動力と二次電池の電力との変換に損失が生じるためである。ここで生じる損失を他の電源で補償する提案がなされており、燃料電池をかかる補償用の電源として利用することは可能である。例えば、制振のために電動機を力行する際に、二次電池の放電は、先に回生で得られた電力までに留め、不足分の電力を燃料電池から供給する態様が挙げられる。しかしながら、二次電池から供給される電力は、充電時の損失および放電時の損失の双方の影響を受けた低効率の電力である。かかる電力を主として使用することは、制振時のエネルギ効率の低下を招く。このような利用は、発電効率に優れる燃料電池の利点を十分に活用したものとは言えない。同様の課題は、トルク変動を抑制するための電源として、二次電池と何らかの発電手段を備える車両において共通の課題であった。
【0009】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、燃料電池を搭載したハイブリッド車両において、燃料電池の有する特性およびハイブリッド車両の有する特性をさらに有効活用する技術を提供することを目的とする。また、熱機関から出力されるトルク変動を電動機のトルクにより効率的に抑制する技術を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
上述の課題を解決するために、本発明は次の構成を採った。
本発明のハイブリッド車両は、
電動機と熱機関とを動力源として備えるハイブリッド車両であって、
前記電動機の電源として燃料電池と、二次電池とを備えるとともに、両者から電動機に供給される電力をそれぞれ調整可能な調整手段を備え、
車両の運転状態に応じて、前記電源および動力源の作動を制御する制御手段を備えることを要旨とする。
【0011】
かかるハイブリッド車両によれば、電源として燃料電池と二次電池とを備える。既に説明した通り、燃料電池は環境性に優れた高効率のエネルギ源であるという特性を有している。その一方で、燃料電池は、燃料の酸化反応によって発電するため、燃料を消費した後は十分な発電を行うことができない短所がある。また、反応が進み、発電が開始されるまでに時間遅れが生じるという短所もある。これに対し、二次電池は、電力を消費した後でも、充電によって電力状態を回復することができる可逆的なエネルギ源であり、速やかに電力を供給することができるという特性を有している。
【0012】
上記ハイブリッド車両は、このように特性の異なる2種類の電源を搭載し、制御手段によって両者を適宜使い分けることによって、それぞれの電源の特性を活かした運転を実現することができる。燃料電池のみを電源として搭載したハイブリッド車両では、燃料電池用の燃料を消費した後は電動機を動力源として使用することができないという制約が生じる。これに対し、本発明のハイブリッド車両では、2種類の電源を搭載し、両者を使い分けることによって、電源に起因する制約を抑えて柔軟に電動機を駆動することが可能となる。従って、上記ハイブリッド車両によれば、電動機と熱機関という2種類の動力源の特性をそれぞれ活かした運転を実現することができる。さらに、二次電池を搭載しているため、回生制動により車両の運動エネルギを電力として回収することも可能である。これらの作用により、本発明のハイブリッド車両は、燃料電池としての特性、およびハイブリッド車両としての特性を活かし、燃費および環境性に優れた運転を実現することができる。なお、熱機関とは、内燃機関および外燃機関など熱を利用して動力を出力する種々の機関を含む。本明細書にいう動力とは、ハイブリッド車両の走行に直接利用される動力に限らないことはいうまでもない。例えば、発電のみに利用する態様で熱機関から動力を出力する場合も含まれる。
【0013】
本発明のハイブリッド車両において、前記電源および動力源の使い分けについては、車両の運転状態に応じて以下に示す種々の設定が可能である。
例えば、本発明のハイブリッド車両において、
前記二次電池の残容量を検出する残容量検出手段を備え、
前記制御手段は、前記運転状態が前記電動機を動力源とするよう予め設定された状態にある場合において、前記残容量が予め設定された所定値以上の場合には前記燃料電池の残燃料量に関わらず前記二次電池を電源として使用することにより前記二次電池を優先的に使用して該電動機を駆動する手段であるものとすることができる。
【0014】
かかるハイブリッド車両によれば、二次電池の残容量が所定値以上の高い状態にある場合には、二次電池を電源として電動機を駆動する。先に説明した通り、二次電池は充電することにより残容量を回復することができる。また、回生制動によって車両の運動エネルギを回収するためには、二次電池の満充電に対して余裕のある充電状態までに留めることが好ましい。残容量が十分残っている場合に、二次電池を積極的に利用することにより、二次電池についての上述の特性を活用することができる。
【0015】
上記ハイブリッド車両において、二次電池の残容量が所定値よりも小さい場合には、熱機関を動力源として使用するものとしてもよいが、
かかる場合には、さらに、前記残容量が前記所定値よりも小さい場合には、前記燃料電池を電源として前記電動機を駆動する手段であるものとすることも好ましい。
【0016】
このように制御することにより、二次電池の残容量が低い場合でも、電動機を駆動することができる。その分、電動機を広い範囲で活用することができる。電動機は熱機関よりも環境性に優れる動力源である。また、燃料電池も環境性に優れる電源である。従って、上記ハイブリッド車両のように、二次電池の残容量が比較的少ない場合に燃料電池を活用すれば、燃料電池用の燃料の消費を抑えつつ、環境性に優れた運転を実現することができる。これらの制御は、電源について二次電池を燃料電池よりも優先的に使用する制御とほぼ同義である。
【0017】
以上で説明した電源の使い分けの基準となる所定値は、燃料電池の発電能力、燃料電池用の燃料の搭載量、二次電池の充電容量などに基づいて、車両を円滑かつ効率よく運転可能な範囲で適宜設定することができる。
例えば、所定値については、次の設定を行うものとしてもよい。
即ち、前記制御手段が、さらに、前記燃料電池を電源とする場合において、該燃料電池から前記電動機の駆動に必要な電力の十分な供給が行われるまでの過渡期では、不足分の電力を前記二次電池からの電力で補償する手段である場合には、
前記所定値は、前記補償を実現可能な電力に基づいて設定された残容量であるものとすることができる。
【0018】
燃料電池は、発電を開始してから、実際に所望の電力が得られるまでに時間遅れが生じるのが通常である。上述の制御によれば、燃料電池から所望の電力が得られるまでの過渡期においては、二次電池により電力の不足を補償することができる。上述の所定値の設定によれば、かかる補償を実現可能な電力量を二次電池に残した状態で燃料電池への電源の切り替えが行われる。従って、上記電力の補償を確実に行うことができ、電力の極端な変動を伴うことなく、円滑に電源を切り替えることができる。
【0019】
本発明のハイブリッド車両において、動力源の使い分けも種々の設定が可能である。例えば、
高トルクを要求する状態として予め設定された条件を具備するか否かを判定する高トルク判定手段を備え、
前記制御手段は、高トルクを要求する状態に該当すると判定された場合に、前記熱機関と前記電動機の双方を動力源として駆動する手段であるものとすることができる。
こうすれば、双方の動力源を併用して、非常に高いトルクを出力することができる。
【0020】
ここで、高トルクを要求する状態に対応した条件も種々の設定が可能である。
例えば、
車両がアクセル開度を検出するアクセル開度検出手段を備える場合には、
前記条件は、アクセル開度の変化率が予め設定された所定値以上となる条件であるものとすることができる。
急加速を行うために、運転者がアクセルを急激に踏み込むことにより、高トルクが要求されたものと判定されることになる。
【0021】
また、別の条件として、
要求トルクを入力する要求トルク入力手段を備え、
前記条件は、要求トルクが予め設定された所定値以上となる条件であるものとすることもできる。
【0022】
要求トルクは直接入力するものとしてもよいし、例えば、アクセル開度と車速とに基づいて設定するものとしてもよい。かかる条件では、例えば、登坂路などでアクセルの踏み込み量の絶対値が大きくなることにより、高トルクが要求されたものと判定されることになる。
【0023】
さらに、別の条件として、
高トルクを要求する運転モードを、該車両の運転者が選択するためのスイッチを備え、
前記高トルク判定手段は、該スイッチの操作状態に基づいて前記判定を行う手段であるものとすることができる。
こうすれば、運転者の操作に応じて高トルクを出力することが可能となり、ハイブリッド車両の利便性が向上する。
【0024】
スイッチとしては、上記運転モードの選択に固有のスイッチとすることもできるし、その他の機能を兼用するスイッチとすることもできる。例えば、熱機関および電動機からの動力を、自動変速機を介して出力するよう構成されている場合を考える。自動変速機は車速等に応じて所定のマップに従ってギヤ比を変更する。かかる構成の車両においては、自動変速機の変速モードを変更するスイッチを上述の運転モードを選択するためのスイッチとして兼用することができる。例えば、車速に対し、通常よりもギヤ比の大きい変速段を使用する変速モードが設定されている場合には、スイッチの操作によって該モードが選択された場合に、高トルクが要求されているものと判定することができる。また、自動変速を解除し、手動での変速モードが選択された場合に、高トルクが要求されているものと判定することもできる。
【0025】
高トルクが要求された場合において電動機を駆動するための電源の使い分けについても種々の設定が可能であるが、
前記二次電池の残容量を検出する残容量検出手段を備え、
前記制御手段は、前記残容量が予め設定された所定値以上の場合に、前記二次電池を電源として該電動機を駆動する手段であるものとすることが望ましい。
また、かかる場合においては、さらに、前記残容量が前記所定値よりも小さい場合には、前記燃料電池を電源として前記電動機を駆動する手段であるものとすることが望ましい。
【0026】
即ち、二次電池を燃料電池よりも優先して使用することが望ましい。こうすることにより、先に説明した通り、燃料電池と二次電池のそれぞれの特性を活かした電源の使い分けが可能となる。なお、上記所定値についても、先に説明したのと同様、二次電池の容量などに応じて適切な値を設定することができる。
【0027】
本発明のハイブリッド車両においては、
前記燃料電池および二次電池とを電源として駆動する第2の電動機と、
前記燃料電池および二次電池から該第2の電動機に供給される電力をそれぞれ調整可能な調整手段と、
前記熱機関および前記第2の電動機に結合された補機とを備え、
前記制御手段は、さらに、前記熱機関の運転が停止している場合に、前記第2の電動機を駆動する手段であるものとすることもできる。
【0028】
ここで、補機とは、エアコン、パワーステアリングなど、走行のための動力の出力に直接関与はしないが、車両の運転中に駆動する必要がある種々の機器をいう。補機は、走行に用いられる動力源の種類に関わらず駆動する必要があるのが通常である。上記ハイブリッド車両によれば、補機を駆動可能な動力源として、熱機関の他、第2の電動機を搭載する。従って、熱機関が停止している場合でも、第2の電動機により補機を駆動することができ、ハイブリッド車両を円滑に運転することができる。
【0029】
補機を駆動するために第2の電動機に供給する電源の使い分けも種々の設定が可能であるが、
前記二次電池の残容量を検出する残容量検出手段を備え、
前記制御手段は、前記残容量が予め設定された所定値以上の場合に、前記二次電池を電源として前記第2の電動機を駆動する手段とすることが望ましい。
また、かかる場合には、さらに、前記残容量が前記所定値よりも小さい場合には、前記燃料電池を電源として前記第2の電動機を駆動する手段とすることが望ましい。
【0030】
即ち、二次電池を燃料電池よりも優先して使用することが望ましい。こうすることにより、先に説明した通り、燃料電池と二次電池のそれぞれの特性を活かした電源の使い分けが可能となる。なお、上記所定値についても、先に説明したのと同様、二次電池の容量などに応じて適切な値を設定することができる。
【0031】
本発明のハイブリッド車両においては、電動機と熱機関の動力を共通の駆動軸に出力するものとして構成することもできるし、それぞれ異なる駆動軸に結合して構成することもできる。電動機と熱機関とを異なる駆動軸に結合すれば、いわゆる四輪駆動車両を構成することができる。なお、かかる場合において、熱機関を結合した駆動軸にさらに電動機を結合しても構わないことはいうまでもない。
【0032】
四輪駆動可能な構成において、電動機を駆動するための電源の使い分けも種々の設定が可能であるが、
前記二次電池の残容量を検出する残容量検出手段を備え、
前記制御手段は、前記残容量が予め設定された所定値以上の場合に、前記二次電池を電源として前記電動機を駆動する手段であるものとすることが望ましい。また、かかる場合においては、さらに、前記残容量が前記所定値よりも小さい場合には、前記燃料電池を電源として前記電動機を駆動する手段であるものとすることが望ましい。
【0033】
即ち、二次電池を燃料電池よりも優先して使用することが望ましい。こうすることにより、先に説明した通り、燃料電池と二次電池のそれぞれの特性を活かした電源の使い分けが可能となる。なお、上記所定値についても、先に説明したのと同様、二次電池の容量などに応じて適切な値を設定することができる。
【0034】
以上で説明した種々の制御により、燃料電池と二次電池との適切な使い分けを行うことができる。例えば、燃料電池は、二次電池の残容量が比較的低い場合に運転される。ここで、燃料電池は、運転を開始してから、所望の電力が出力されるまでに時間遅れが生じるのが通常である。従って、本発明のハイブリッド車両においては、かかる時間遅れを補償可能な手段を備えておくことが望ましい。
【0035】
かかる補償手段としては、先に説明したように、燃料電池から十分な電力が出力されていない間は、二次電池によって電力の不足を補うものとすることも可能である。
また、前記燃料電池から前記電動機への電力の供給が要求されていない場合においても、該燃料電池を作動させ、予め設定された所定の電力を出力させる制御を行う手段とすることも可能である。
【0036】
もっともかかる制御を実行した場合には、燃料電池用の燃料の浪費につながる可能性がある。そこで、上記ハイブリッド車両においては、
前記動力源が出力すべき動力を増大すべき可能性が低い状態として予め設定された所定の条件を具備するか否かを判断する動力予測判断手段を備え、
前記制御手段は、前記所定の条件を具備すると判定された場合には、前記所定の電力を抑制する制御を行う手段であるものとすることが望ましい。
【0037】
燃料電池での時間遅れが影響を与えるのは、燃料電池からの電力で電動機を駆動する必要が生じる場合である。ハイブリッド車両が停車している場合や制動している場合など、動力を出力して駆動している状態に該当しない走行状態にある場合には、電動機を速やかに駆動する必要が生じる可能性は比較的低い。即ち、燃料電池への発電要求が生じる可能性は比較的低い。上記ハイブリッド車両によれば、燃料電池への発電要求が生じる可能性が低いと判断される場合には、燃料電池から出力される電力を抑制する。従って、燃料電池用の燃料が浪費されるのを抑制することができる。電力の抑制の一態様として、燃料電池の運転を完全に停止するものとしても構わない。
【0038】
発電要求が生じる可能性が低いと判断される条件は、種々の設定が可能である。
例えば、
前記動力源の動力を車両の運転状態に応じて変速して駆動軸に出力する変速機と、
該変速機の作動状態を操作する操作手段とを備える場合には、
前記所定の条件は、該操作手段により前記変速機の作動状態が非駆動状態に設定されている条件であるものとすることができる。
非駆動状態とは、動力の伝達を行わないニュートラル状態にある場合や、停車時に使用される状態にある場合が該当する。
【0039】
また、別の条件として、
前記車両が制動中であるか否かを判定する制動判定手段を備え、
前記所定の条件は、前記車両の制動が行われている条件であるものとすることもできる。
制動の判定は、車速の変化率に基づいて行うものとしてもよいし、ブレーキペダルの踏み込みの有無、アクセルが全閉状態にあるか否かなどの操作状況に応じて判断するものとしてもよい。
【0040】
さらに、別の条件として、
該車両が走行する経路が渋滞しているか否かに関する情報を取得する情報取得手段を備え、
前記所定の条件は、前記経路が渋滞している条件であるものとしてもよい。
その他、種々の条件を設定することができる。
【0041】
本発明は、以上で説明した通り、燃料電池および二次電池という2種類の電源と、電動機および熱機関という2種類の動力源とを適切に使い分けるハイブリッド車両として構成することが望ましいが、必ずしもかかる構成にのみ限定されるものではない。つまり、燃料電池のみを電源としつつ、動力源を適切に制御するハイブリッド車両として構成することも可能である。
即ち、電動機と熱機関とを駆動軸に動力を出力するための動力源として備えるハイブリッド車両であって、
少なくとも前記熱機関から出力される動力を前記駆動軸に伝達する際の変速比を変更可能な変速機と、
前記電動機に電力を供給する燃料電池とを備え、
車両の運転状態に応じて、前記燃料電池、動力源、および変速機の作動を制御する制御手段を備えるハイブリッド車両とすることもできる。
【0042】
かかるハイブリッド車両は、電源は1種類であるが、2種類の動力源を備える。しかも、動力源から出力される動力を伝達する際の変速比を変速可能な変速機を備える。かかる構成において、変速機を制御しつつ、電動機と熱機関とを使い分けることにより、両者の特性を活かした制御を実現することができる。ここで適用される制御は、2種類の電源を備えるハイブリッド車両において説明した種々の制御のうち、動力源の使い分けや燃料電池の運転状態の制御に関与する内容を適用可能であるが、特に、次の態様からなる制御を適用することが望ましい。
【0043】
第1の制御態様として、
高トルクを要求する状態として予め設定された条件を具備するか否かを判定する高トルク判定手段を備え、
前記制御手段は、高トルクを要求する状態に該当すると判定された場合に、前記熱機関と前記電動機の双方を動力源として駆動する手段であるものとすることができる。
【0044】
第2の制御態様として、
高トルクを要求する運転モードを、該車両の運転者が選択するためのスイッチを備える場合には、
前記制御手段は、該スイッチが所定の操作状態にある場合に、前記熱機関と前記電動機の双方を動力源として駆動する手段であるものとすることができる。
【0045】
第3の制御態様として、
前記制御手段は、前記燃料電池から前記電動機への電力の供給が要求されていない場合においても、該燃料電池を作動させ、予め設定された所定の電力を出力させる制御を行う手段であるものとすることができる。
【0046】
第3の制御態様においては、
前記動力源が出力すべき動力を増大すべき可能性が低い状態として予め設定された所定の条件を具備するか否かを判断する動力予測判断手段を備え、
前記制御手段は、前記所定の条件を具備すると判定された場合には、前記所定の電力を抑制する制御を行う手段であるものとすることが望ましい。
【0047】
この場合において、所定の条件は種々の設定が可能であり、
前記変速機の作動状態を操作する操作手段とを備える場合には、
前記所定の条件は、該操作手段により前記変速機の作動状態が非駆動状態に設定されている条件であるものとすることができる。
【0048】
また、
前記車両が制動中であるか否かを判定する制動判定手段を備え、
前記所定の条件は、前記車両の制動が行われている条件であるものとすることもできる。
【0049】
さらに、
該車両が走行する経路が渋滞しているか否かに関する情報を取得する情報取得手段を備え、
前記所定の条件は、前記経路が渋滞している条件であるものとすることもできる。
【0050】
以上で説明した種々の態様の制御を適用すれば、2種類の電源を備えるハイブリッド車両について説明したのと同様、動力源の適切な使い分け、燃料電池の運転状態の適切な制御をすることができる。
【0051】
本発明を、燃料電池および二次電池という2種類の電源と、電動機および熱機関という2種類の動力源とを備えるハイブリッド車両として構成する場合には、以下に示す通り、電力を発生するための動力源として熱機関を活用する態様も採ることができる。
即ち、前記電動機の電源として、さらに前記熱機関から出力される動力を電力に変換する発電機を備え、
前記制御手段は、
該ハイブリッド車両の運転状態が、前記燃料電池の発電を開始すべき状態にあるか否かを判定する運転状態判定手段と、
該燃料電池を使用すべき状態にあると判定された場合において、該燃料電池が発電可能になるまでの期間に、燃料電池を除く電源により該燃料電池からの電力を補償して、要求された電力を出力する電力補償手段とを備え、
該電力補償手段は、
前記燃料電池が発電可能になるまでの期間に補償すべき電力量を推定する電力量推定手段と、
前記二次電池の残容量を検出する残容量検出手段と、
前記推定された電力量が前記二次電池から出力可能か否かを該残容量に基づいて判定する二次電池電力量判定手段と、
前記推定された電力量を前記二次電池から出力不能と判断された場合には、前記熱機関を運転して前記発電機による発電を行う熱機関制御手段とを備えるハイブリッド車両とすることができる。
【0052】
先に説明した通り、燃料電池は、発電要求が出されてから実際に十分な電力を供給可能になるまでの応答遅れが生じることがあるが、上記構成によれば、二次電池と熱機関に結合された発電機とを使い分けて要求電力を安定して出力することができる。この場合において、二次電池の電力を発電機よりも優先的に使用する、即ち、二次電池の電力が不足する場合にのみ熱機関を運転するように制御することにより、上記ハイブリッド車両は、燃費および環境性を向上することができる。
【0053】
このように熱機関の動力を電力の発電に利用するハイブリッド車両においては、その動力をさらに走行にも利用可能な態様を採ることもできるが、前記熱機関は、前記発電機を駆動する動力のみを出力する態様を採ることが望ましい。かかる態様では、熱機関は、燃料電池が発電可能な状態になるまでの補助的な動力源として位置づけられるため、非常に小型の機関で足りる。従って、動力系統全体の小型化を図ることができるとともに、燃費および環境性を向上することもできる。
【0054】
燃料電池による発電の遅れを、常に二次電池および発電機で補償する制御を行うものとしてもよいが、
前記燃料電池の温度状態を検出する温度状態検出手段と、
該燃料電池の温度が所定以下の冷間時であると判断される場合に、前記電力補償手段を有効に機能せしめる冷間時制御手段とを備えるものとしてもよい。燃料電池の応答遅れは冷間時に特に顕著であるから、かかる遅れによる影響を回避することができる。この場合、燃料電池が冷間時でなければ応答遅れを十分に補償できる電力が二次電池に残されている状態で、燃料電池の発電要求を出す制御を併せて実行することが望ましい。こうすれば、通常は二次電池で応答遅れを補償し、冷間時は二次電池と発電機とを利用して応答遅れを補償することが可能となる。仮に、冷間時まで含めて二次電池で補償可能な状態で燃料電池の発電要求を出す制御を行うものとすれば、発電要求を出す判断基準となる二次電池の残容量が非常に高くなり二次電池の有効活用が図れないが、燃料電池の運転開始までに特に時間を要する冷間時には発電機も使用するものとすれば、判断基準となる残容量を低減させることができるため、二次電池をより有効に活用することができる。
【0055】
燃料電池の応答遅れを熱機関の動力で発電して補償する場合、熱機関は、前記二次電池で不足する電力量を少なくとも補償可能な範囲で運転すれば足りるが、更に運転効率を優先して設定された運転状態で該熱機関を運転する制御を行うことが、燃費および環境性の向上という観点から好ましい。このように運転効率を優先して運転状態を設定すれば、二次電池で不足する電力量を補償する範囲を超える動力が出力される場合もある。かかる場合には、余剰の電力を二次電池に充電すればよい。また、二次電池への充電を併せて行った結果、二次電池の残容量が燃料電池の応答遅れを補償可能な程度に増加した場合には、その時点で熱機関の運転を停止する制御を併せて行うことも好適である。
【0056】
本発明は、次の構成を採ることも可能である。
駆動軸に動力を出力する動力源としての熱機関と、該熱機関から駆動軸に出力されるトルクの変動を相殺可能な部位にトルクを付与する電動機とを備える車両であって、
前記電動機と電力をやりとりする電力系統として、電力を充電する蓄電手段と、発電手段とを備え、
前記熱機関のトルク変動を相殺するトルクを前記電動機の目標トルクとして設定する目標トルク設定手段と、
該目標トルクの符号に応じて前記蓄電手段と発電手段とを使い分けて、該電動機を前記目標トルクで運転する制御手段とを備える車両としての構成である。
【0057】
かかる車両によれば、以下に示す作用に基づき、トルク変動を抑制する制御を行う際のエネルギ効率を向上することができる。熱機関から出力されるトルクの変動は、電動機のトルクを制御することにより抑制することができる。要求トルクよりも実際に熱機関から出力されている実トルクが大きい場合には、電動機で負のトルクを与えることによりトルク変動を相殺することができる。要求トルクよりも実トルクが小さい場合には、電動機で正のトルクを与えることによりトルク変動を相殺することができる。この制御において、上記構成の車両では、電動機の目標トルクの正負に応じて電源系統の使い分けを行う。目標トルクが負の場合には、電動機で回生された電力を蓄電手段に蓄え、目標トルクが正の場合には、発電手段から電力を供給して電動機を力行する。目標トルクが正の場合には、蓄電手段から電動機への電力の供給は行わない。電動機の力行時には、発電手段から電力を供給するため、この期間のエネルギ効率を向上することができる。例えば蓄電手段から電力を供給するものとすれば、その電力は、主として熱機関が過去に出力した余剰の動力に基づくものであり、その動力に対して蓄電手段への充電時に生じる損失および放電時に生じる損失の双方が含まれている。これに対し、発電手段から電力を供給する場合には、蓄電手段への充放電を経ないため、電力を高い効率で供給することができるのである。
【0058】
本発明の有効性は、蓄電手段の充放電特性にも影響を受ける。蓄電手段の充放電効率は、やりとりされる電力、蓄電状態に応じて非線形な特性を示す場合がある。また、二次電池のように化学変化により電力を充放電する蓄電手段においては、充放電の周期によって効率が影響を受ける場合もある。熱機関のトルク変動は、比較的高い周期で生じるため、蓄電手段の電力で、トルク変動を相殺しようとすれば、効率が特に低い状態での放電が頻繁に行われる可能性がある。本発明は、高効率の発電手段を用いてトルク変動を相殺することにより、放電効率が低い状態で蓄電手段が放電を行うことを回避することができる。この結果、蓄電手段の電力は、放電効率が高い運転状態で利用することが可能となり、トルク変動を抑制する制御時のみならず、車両の運転効率全体を向上することができる。
【0059】
蓄電手段には、一例として二次電池やキャパシタを用いることができる。発電手段には、一例として、燃料電池や発電機を用いることができる。燃料電池は運転効率の面で有用である。発電機は、熱機関により駆動する態様で適用することができる。この場合、発電機が熱機関に与える負荷は電動機に必要とされる電力に関わらず一定となるよう制御されることが望ましい。
【0060】
トルク変動を抑制する車両の構成としては、上述の通り、トルク変動を相殺する電動機の目標トルクの正負に応じて蓄電手段と発電手段とを切り替えて使う構成の他、
前記駆動軸にトルクを付加する第1および第2の電動機と、
前記駆動軸に出力すべきトルクを保持する条件、前記トルク変動を相殺する条件、前記第1の電動機のトルクが0以下となる条件、前記第2の電動機のトルクが0以上となる条件を満足する範囲で、前記第1および第2の電動機の目標トルクをそれぞれ設定する目標トルク設定手段と、
第1の電動機と前記蓄電手段との間でやりとりされる電力、第2の電動機と前記発電手段との間でやりとりされる電力を制御して、それぞれの電動機を前記目標トルクで運転する制御手段とを備える構成を採ることもできる。
つまり、トルク変動を相殺するために付加されるべきトルクの値に応じて、電源のみならず電動機をも使い分ける構成に相当する。かかる構成によっても、電源を使い分ける構成と同様、高い効率でトルク変動の抑制を行うことができる。
【0061】
トルク変動を抑制する本発明の車両においては、
前記蓄電手段の蓄電状態を検出する蓄電状態検出手段を備え、
前記制御手段は、さらに前記蓄電手段の蓄電状態に応じて前記蓄電手段と発電手段とを使い分けて前記電動機の運転を行う手段とすることが望ましい。
一例として、該蓄電手段の蓄電量が所定以下の蓄電状態にある場合にのみ、前記符号に応じた使い分けを伴う制御を実行する態様を採ることができる。
こうすることにより、蓄電手段の過充電を回避することができる。
【0062】
本発明は、以下に示すハイブリッド車両の制御方法として構成することもできる。
即ち、本発明の制御方法は、
動力源として、燃料電池と二次電池とを電源とする電動機と、熱機関とを備えるハイブリッド車両の運転を制御する制御方法であって、
(a) 前記二次電池の残容量を検出する工程と、
(b) 前記車両の運転状態が前記電動機を動力源とするよう予め設定された所定の状態にあるか否かを判定する工程と、
(c) 前記所定の状態にあると判定された場合において、前記残容量が予め設定された所定値以上の場合に、前記二次電池を電源として該電動機を駆動する工程とを備える制御方法である。
【0063】
かかる制御方法においては、さらに、
(d) 前記所定の状態にあると判定された場合において、前記残容量が前記所定値よりも小さい場合には、前記燃料電池を電源として前記電動機を駆動する工程を備えるものとしてもよい。
【0064】
また、本発明は、燃料電池、二次電池、発電機を備えた熱機関を電源として備えるハイブリッド車両において、各電源の運転を制御する制御方法であって、
(A) 該ハイブリッド車両の運転状態が、前記燃料電池の発電を開始すべき状態にあるか否かを判定する工程と、
(B) 該燃料電池を使用すべき状態にあると判定された場合において、該燃料電池が発電可能になるまでの期間に、燃料電池を除く電源により該燃料電池からの電力を補償して、要求された電力を出力する工程とを備え、
前記工程(B)は、
(B1) 前記燃料電池が発電可能になるまでの期間に補償すべき電力量を推定する工程と、
(B2) 前記二次電池の残容量を検出する工程と、
(B3) 前記推定された電力量が前記二次電池から出力可能か否かを該残容量に基づいて判定する工程と、
(B4) 前記推定された電力量を前記二次電池から出力不能と判断された場合には、前記熱機関を運転して前記発電機による発電を行う工程とを備える制御方法として構成することもできる。
【0065】
また、駆動軸に動力を出力する動力源としての熱機関と、該熱機関から駆動軸に出力されるトルクの変動を相殺可能な部位にトルクを付与する電動機とを備える車両の運転を制御する制御方法であって、
前記熱機関のトルク変動を検出する工程と、
該トルク変動を相殺するトルクを前記電動機の目標トルクとして設定する工程と、
該電動機を前記目標トルクで運転する際に、前記電動機と電力をやりとりする電力系統として備えられた蓄電手段と、発電手段とを、該目標トルクの符号に応じて使い分ける工程とを備える制御方法として構成してもよい。
【0066】
これらの制御方法によれば、先にハイブリッド車両または車両について説明したのと同様の作用により、燃料電池の特性およびハイブリッド車両としての特性の双方を十分に活用して、ハイブリッド車両を運転することが可能となる。また、熱機関のトルク変動を効率的に抑制することが可能となる。なお、制御方法として構成する場合においても、先にハイブリッド車両等で説明した種々の付加的要素を含めることができることは言うまでもない。
【0067】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.第1実施例:
A1.装置の構成:
A2.一般的動作:
A3.EV走行制御処理:
A4.補機駆動制御処理:
A5.パワーアシスト制御処理:
A6.停車・減速制御処理:
A7.第1変形例:
A8.第2変形例:
B.第2実施例:
C.第3実施例:
C1.装置の構成:
C2.EV走行制御処理ルーチン:
C3.燃料電池起動処理ルーチン:
D.その他の変形例:
E.第4実施例:
E1.制振制御処理ルーチン:
E2.第1変形例:
【0068】
A.第1実施例:
A1.装置の構成:
図1は実施例としてのハイブリッド車両の概略構成図である。本実施例のハイブリッド車両の動力源は、エンジン10とモータ20である。図示する通り、本実施例のハイブリッド車両の動力系統は、上流側からエンジン10、入力クラッチ18、モータ20、トルクコンバータ30、および変速機100を直列に結合した構成を有している。即ち、エンジン10のクランクシャフト12は、入力クラッチ18を介してモータ20に結合されている。入力クラッチ18をオン・オフすることにより、エンジン10からの動力の伝達を断続することができる。モータ20の回転軸13は、また、トルクコンバータ30にも結合されている。トルクコンバータの出力軸14は変速機100に結合されている。変速機100の出力軸15はディファレンシャルギヤ16を介して車軸17に結合されている。以下、それぞれの構成要素について順に説明する。
【0069】
エンジン10は通常のガソリンエンジンである。但し、エンジン10は、ガソリンと空気の混合気をシリンダに吸い込むための吸気バルブ、および燃焼後の排気をシリンダから排出するための排気バルブの開閉タイミングを、ピストンの上下運動に対して相対的に調整可能な機構を有している(以下、この機構をVVT機構と呼ぶ)。VVT機構の構成については、周知であるため、ここでは詳細な説明を省略する。エンジン10は、ピストンの上下運動に対して各バルブが遅れて閉じるように開閉タイミングを調整することにより、いわゆるポンピングロスを低減することができる。この結果、エンジン10をモータリングする際にモータ20から出力すべきトルクを低減させることもできる。ガソリンを燃焼して動力を出力する際には、VVT機構は、エンジン10の回転数に応じて最も燃焼効率の良いタイミングで各バルブが開閉するように制御される。
【0070】
モータ20は、三相の同期モータであり、外周面に複数個の永久磁石を有するロータ22と、回転磁界を形成するための三相コイルが巻回されたステータ24とを備える。モータ20はロータ22に備えられた永久磁石による磁界とステータ24の三相コイルによって形成される磁界との相互作用により回転駆動する。また、ロータ22が外力によって回転させられる場合には、これらの磁界の相互作用により三相コイルの両端に起電力を生じさせる。なお、モータ20には、ロータ22とステータ24との間の磁束密度が円周方向に正弦分布する正弦波着磁モータを適用することも可能であるが、本実施例では、比較的大きなトルクを出力可能な非正弦波着磁モータを適用した。
【0071】
モータ20の電源としては、バッテリ50と燃料電池システム60とが備えられている。モータ20と各電源との間には、電源の使い分けをするための切替スイッチ84が設けられている。ここでは模式的にモータ20をバッテリ50および燃料電池システム60に選択的に接続可能なスイッチ84を示したが、切替スイッチ84はモータ20をバッテリ50および燃料電池60の双方に接続可能な構成のスイッチを用いることが望ましい。
【0072】
ステータ24は切替スイッチ84および駆動回路51を介してバッテリ50に電気的に接続される。また、切替スイッチ84および駆動回路52を介して燃料電池システム60に接続される。駆動回路51,52は、それぞれトランジスタインバータで構成されており、モータ20の三相それぞれに対して、ソース側とシンク側の2つを一組としてトランジスタが複数備えられている。これらの駆動回路51,52は、制御ユニット70と電気的に接続されている。制御ユニット70が駆動回路51,52の各トランジスタのオン・オフの時間をPWM制御するとバッテリ50および燃料電池システム60を電源とする擬似三相交流がステータ24の三相コイルに流れ、回転磁界が形成される。モータ20は、かかる回転磁界の作用によって、先に説明した通り電動機または発電機として機能する。
【0073】
図2は燃料電池システムの概略構成を示す説明図である。燃料電池システム60は、メタノールを貯蔵するメタノールタンク61、水を貯蔵する水タンク62、燃焼ガスを発生するバーナ63、空気の圧縮を行なう圧縮機64、バーナ63と圧縮機64とを併設した蒸発器65、改質反応により燃料ガスを生成する改質器66、燃料ガス中の一酸化炭素(CO)濃度を低減するCO低減部67、電気化学反応により起電力を得る燃料電池60Aを主な構成要素とする。これらの各部の動作は、制御ユニット70により制御される。
【0074】
燃料電池60Aは、固体高分子電解質型の燃料電池であり、電解質膜、カソード、アノード、およびセパレータとから構成されるセルを複数積層して構成されている。電解質膜は、例えばフッ素系樹脂などの固体高分子材料で形成されたプロトン伝導性のイオン交換膜である。カソードおよびアノードは、共に炭素繊維を織成したカーボンクロスにより形成されている。セパレータは、カーボンを圧縮してガス不透過とした緻密質カーボンなどガス不透過の導電性部材により形成されている。カソードおよびアノードとの間に燃料ガスおよび酸化ガスの流路を形成する。
【0075】
燃料電池システム60の各構成要素は次の通り接続されている。メタノールタンク61は配管で蒸発器65に接続されている。配管の途中に設けられたポンプP2は、流量を調整しつつ、原燃料であるメタノールを蒸発器65に供給する。水タンク62も同様に配管で蒸発器65に接続されている。配管の途中に設けられたポンプP3は、流量を調整しつつ、水を蒸発器65に供給する。メタノールの配管と、水の配管とは、それぞれポンプP2,P3の下流側で一つの配管に合流し、蒸発器65に接続される。
【0076】
蒸発器65は、供給されたメタノールと水とを気化させる。蒸発器65には、バーナ63と圧縮機64とが併設されている。蒸発器65は、バーナ63から供給される燃焼ガスによってメタノールと水とを沸騰、気化させる。バーナ63の燃料は、メタノールである。メタノールタンク61は、蒸発器65に加えてバーナ63にも配管で接続されている。メタノールは、この配管の途中に設けられたポンプP1により、バーナ63に供給される。バーナ63には、また、燃料電池60Aでの電気化学反応で消費されずに残った燃料排ガスも供給される。バーナ63は、メタノールと燃料排ガスのうち、後者を主として燃焼させる。バーナ63の燃焼温度はセンサT1の出力に基づいて制御されており、約800℃から1000℃に保たれる。バーナ63の燃焼ガスは、蒸発器65に移送される際にタービンを回転させ、圧縮機64を駆動する。圧縮機64は、燃料電池システム60の外部から空気を取り込んでこれを圧縮し、この圧縮空気を燃料電池60Aの陽極側に供給する。
【0077】
蒸発器65と改質器66とは配管で接続されている。蒸発器65で得られた原燃料ガス、即ちメタノールと水蒸気の混合ガスは、改質器66に搬送される。改質器66は、供給されたメタノールと水とからなる原燃料ガスを改質して水素リッチな燃料ガスを生成する。なお、蒸発器65から改質器66への搬送配管の途中には、温度センサT2が設けられており、この温度が通常約250℃の所定値になるようにバーナ63に供給するメタノール量が制御される。なお、改質器66における改質反応では酸素が関与する。この改質反応に必要な酸素を供給するために、改質器66には外部から空気を供給するためのブロワ68が併設されている。
【0078】
改質器66とCO低減部67とは配管で接続されている。改質器66で得られた水素リッチな燃料ガスは、CO低減部67に供給される。改質器66での反応課程において、通常は燃料ガスに一酸化炭素(CO)が一定量含まれる。CO低減部67は、この燃料ガス中の一酸化炭素濃度を低減させる。固体高分子型の燃料電池では、燃料ガス中に含まれる一酸化炭素が、アノードにおける反応を阻害して燃料電池の性能を低下させてしまうからである。CO低減部67は、燃料ガス中の一酸化炭素を二酸化炭素へと酸化することにより、一酸化炭素濃度を低減させる。
【0079】
CO低減部67と燃料電池60Aのアノードとは配管で接続されている。一酸化炭素濃度が下げられた燃料ガスは、燃料電池60Aの陰極側における電池反応に供される。また、先に説明した通り、燃料電池60Aのカソード側には圧縮された空気を送り込むための配管が接続されている。この空気は、酸化ガスとして燃料電池60Aの陽極側における電池反応に供される。
【0080】
以上の構成を有する燃料電池システム60は、メタノールと水を用いた化学反応によって電力を供給することができる。本実施例では、メタノールタンク61,水タンク62内のメタノールおよび水の残量に応じて、燃料電池の運転状態を制御する。かかる制御を実現するため、それぞれのタンクには、容量センサ61a、62aが設けられている。なお、本実施例では、メタノールおよび水を用いる燃料電池システム60を搭載しているが、燃料電池システム60は、これに限定されるものではなく、種々の構成を適用することができる。なお、以下の説明では燃料電池システム60をまとめて燃料電池60と称するものとする。
【0081】
トルクコンバータ30は、流体を利用した周知の動力伝達機構である。トルクコンバータ30の入力軸、即ちモータ20の出力軸13と、トルクコンバータ30の出力軸14とは機械的に結合されてはおらず、互いに滑りをもった状態で回転可能である。両者の末端には、それぞれ複数のブレードを有するタービンが備えられており、モータ20の出力軸13のタービンとトルクコンバータ30の出力軸14のタービンとが互いに対向する状態でトルクコンバータ内部に組み付けられている。トルクコンバータ30は密閉構造をなしており、中にはトランスミッション・オイルが封入されている。このオイルが前述のタービンにそれぞれ作用することで、一方の回転軸から他方の回転軸に動力を伝達することができる。しかも、両者はすべりをもった状態で回転可能であるから、一方の回転軸から入力された動力を、回転数およびトルクの異なる回転状態に変換して他方の回転軸に伝達することができる。トルクコンバータ30には、両回転軸の滑りが生じないよう、所定の条件下で両者を結合するロックアップクラッチも設けられている。ロックアップクラッチのオン・オフは制御ユニット70により制御される。
【0082】
変速機100は、内部に複数のギヤ、クラッチ、ワンウェイクラッチ、ブレーキ等を備え、変速比を切り替えることによってトルクコンバータ30の出力軸14のトルクおよび回転数を変換して出力軸15に伝達可能な機構である。図3は変速機100の内部構造を示す説明図である。本実施例の変速機100は、大きくは副変速部110(図中の破線より左側の部分)と主変速部120(図中の破線より右側の部分)とから構成されており、図示する構造により前進5段、後進1段の変速段を実現することができる。
【0083】
変速機100の構成について回転軸14側から順に説明する。図示する通り、回転軸14から入力された動力は、オーバードライブ部として構成された副変速部110によって所定の変速比で変速されて回転軸119に伝達される。副変速部110は、シングルピニオン型の第1のプラネタリギヤ112を中心に、クラッチC0と、ワンウェイクラッチF0と、ブレーキB0により構成される。第1のプラネタリギヤ112は、遊星歯車とも呼ばれるギヤであり、中心で回転するサンギヤ114、サンギヤの周りで自転しながら公転するプラネタリピニオンギヤ115、更にプラネタリピニオンギヤの外周で回転するリングギヤ118の3種類のギヤから構成されている。プラネタリピニオンギヤ115は、プラネタリキャリア116と呼ばれる回転部に軸支されている。
【0084】
一般にプラネタリギヤは、上述の3つのギヤのうち2つのギヤの回転状態が決定されると残余の一つのギヤの回転状態が決定される性質を有している。プラネタリギヤの各ギヤの回転状態は、機構学上周知の計算式(1)によって与えられる。
Ns=(1+ρ)/ρ×Nc−Nr/ρ;
Nc=ρ/(1+ρ)×Ns+Nr/(1+ρ);
Nr=(1+ρ)Nc−ρNs;
Ts=Tc×ρ/(1+ρ)=ρTr;
Tr=Tc/(1+ρ);
ρ=サンギヤの歯数/リングギヤの歯数 ・・・(1);
【0085】
ここで、
Nsはサンギヤの回転数;
Tsはサンギヤのトルク;
Ncはプラネタリキャリアの回転数;
Tcはプラネタリキャリアのトルク;
Nrはリングギヤの回転数;
Trはリングギヤのトルク;
である。
【0086】
副変速部110では、変速機100の入力軸に相当する回転軸14がプラネタリキャリア116に結合されている。またこのプラネタリキャリア116とサンギヤ114との間にワンウェイクラッチF0とクラッチC0とが並列に配置されている。ワンウェイクラッチF0はサンギヤ114がプラネタリキャリア116に対して相対的に正回転、即ち変速機への入力軸14と同方向に回転する場合に係合する方向に設けられている。サンギヤ114には、その回転を制止可能な多板ブレーキB0が設けられている。副変速部110の出力に相当するリングギヤ118は回転軸119に結合されている。回転軸119は、主変速部120の入力軸に相当する。
【0087】
かかる構成を有する副変速部110は、クラッチC0又はワンウェイクラッチF0が係合した状態ではプラネタリキャリア116とサンギヤ114とが一体的に回転する。先に示した式(1)に照らせば、サンギヤ114とプラネタリキャリア116の回転数が等しい場合には、リングギヤ118の回転数もこれらと等しくなるからである。このとき、回転軸119は入力軸14と同じ回転数となる。またブレーキB0を係合させてサンギヤ114の回転を止めた場合、先に示した式(1)においてサンギヤ114の回転数Nsに値0を代入すれば明らかな通り、リングギヤ118の回転数Nrはプラネタリキャリア116の回転数Ncよりも高くなる。即ち、回転軸14の回転は増速されて回転軸119に伝達される。このように副変速部110は、回転軸14から入力された動力を、そのままの状態で回転軸119に伝える役割と、増速して伝える役割とを選択的に果たすことができる。
【0088】
次に、主変速部120の構成を説明する。主変速部120は三組のプラネタリギヤ130,140,150を備えている。また、クラッチC1,C2、ワンウェイクラッチF1,F2およびブレーキB1〜B4を備えている。各プラネタリギヤは、副変速部110に備えられた第1のプラネタリギヤ112と同様、サンギヤ、プラネタリキャリアおよびプラネタリピニオンギヤ、並びにリングギヤから構成されている。三組のプラネタリギヤ130,140,150は次の通り結合されている。
【0089】
第2のプラネタリギヤ130のサンギヤ132と第3のプラネタリギヤ140のサンギヤ142とは互いに一体的に結合されており、これらはクラッチC2を介して入力軸119に結合可能となっている。これらのサンギヤ132,142が結合された回転軸には、その回転を制止するためのブレーキB1が設けられている。また、該回転軸が逆転する際に係合する方向にワンウェイクラッチF1が設けられている。さらにこのワンウェイクラッチF1の回転を制止するためのブレーキB2が設けられている。
【0090】
第2のプラネタリギヤ130のプラネタリキャリア134には、その回転を制止可能なブレーキB3が設けられている。第2のプラネタリギヤ130のリングギヤ136は、第3のプラネタリギヤ140のプラネタリキャリア144および第4のプラネタリギヤ150のプラネタリキャリア154と一体的に結合されている。更に、これら三者は変速機100の出力軸15に結合されている。
【0091】
第3のプラネタリギヤ140のリングギヤ146は、第4のプラネタリギヤ150のサンギヤ152に結合されるとともに、回転軸122に結合されている。回転軸122はクラッチC1を介して主変速部120の入力軸119に結合可能となっている。第4のプラネタリギヤ150のリングギヤ156には、その回転を制止するためのブレーキB4と、リングギヤ156が逆転する際に係合する方向にワンウェイクラッチF2とが設けられている。
【0092】
変速機100に設けられた上述のクラッチC0〜C2およびブレーキB0〜B4は、それぞれ油圧によって係合および解放する。図1中に示す通り、変速機100には電動式の油圧ポンプ102から、これらのクラッチおよびブレーキを作動させるための作動油が供給されている。詳細な図示は省略したが、変速機100には作動を可能とする油圧配管および油圧を制御するためのソレノイドバルブ等が設けられた油圧制御部104により、油圧を制御することができる。本実施例のハイブリッド車両では、制御ユニット70が油圧制御部104内のソレノイドバルブ等に制御信号を出力することによって、各クラッチおよびブレーキの作動を制御する。
【0093】
本実施例の変速機100は、クラッチC0〜C2およびブレーキB0〜B4の係合および解放の組み合わせによって、前進5段・後進1段の変速段を設定することができる。また、いわゆるパーキングおよびニュートラルの状態も実現することができる。図4は各クラッチ、ブレーキ、およびワンウェイクラッチの係合状態と変速段との関係を示す説明図である。この図において、○印はクラッチ等が係合した状態であることを意味し、◎は動力源ブレーキ時に係合することを意味し、△印は係合するものの動力伝達に閑係しないことを意味している。動力源ブレーキとは、エンジン10およびモータ20による制動をいう。なお、ワンウェイクラッチF0〜F2の係合状態は、制御ユニット70の制御信号に基づくものではなく、各ギヤの回転方向に基づくものである。
【0094】
図4に示す通り、パーキング(P)およびニュートラル(N)の場合には、クラッチC0およびワンウェイクラッチF0が係合する。クラッチC2およびクラッチC1の双方が解放状態であるから、主変速部120の入力軸119から下流には動力の伝達がなされない。
【0095】
第1速(1st)の場合には、クラッチC0,C1およびワンウェイクラッチF0,F2が係合する。また、エンジンブレーキをかける場合には、さらにブレーキB4が係合する。この状態では、変速機100の入力軸14は第4のプラネタリギヤ150のサンギヤ152に直結された状態に等しくなり、動力は第4のプラネタリギヤ150の変速比に応じた変速比で出力軸15に伝達される。リングギヤ156は、ワンウェイクラッチF2の作用により逆転しないように拘束され、事実上回転数は値0となる。
【0096】
第2速(2nd)の場合には、クラッチC1、ブレーキB3、ワンウェイクラッチF0が係合する。また、エンジンブレーキをかける場合には、さらにクラッチC0が係合する。この状態では、変速機100の入力軸14は第4のプラネタリギヤ150のサンギヤ152および第3のプラネタリギヤ140のリングギヤ146に直結された状態に等しい。一方、第2のプラネタリギヤ130のプラネタリキャリア134は固定された状態となる。第2のプラネタリギヤ130および第3のプラネタリギヤ140について見れば、両者のサンギヤ132、142の回転数は等しい。また、リングギヤ136とプラネタリキャリア144の回転数は等しい。これらの条件下で、先に説明した式(1)に照らせば、プラネタリギヤ130、140の回転状態は一義的に決定される。出力軸15の回転数Noutは第1速(1st)の回転数よりも高くなり、トルクToutは第1速(1st)のトルクよりも低くなる。
【0097】
第3速(3rd)の場合には、クラッチC0,C1、ブレーキB2、ワンウェイクラッチF0,F1が係合する。また、エンジンブレーキをかける場合には、さらにブレーキB1が係合する。この状態では、変速機100の入力軸14は第4のプラネタリギヤ150のサンギヤ152および第3のプラネタリギヤ140のリングギヤ146に直結された状態に等しい。一方、第2および第3のプラネタリギヤ130、140のサンギヤ132、142はブレーキB2およびワンウェイクラッチF1の作用により逆転が禁止された状態となり、事実上回転数は値0となる。かかる条件下で、第2速(2nd)の場合と同様、先に説明した式(1)に照らせば、プラネタリギヤ130、140の回転状態は一義的に決定され、出力軸15の回転数も一義的に決定される。出力軸15の回転数Noutは第2速(2nd)の回転数よりも高くなり、トルクToutは第2速(2nd)のトルクよりも低くなる。
【0098】
第4速(4th)の場合には、クラッチC0〜C2およびワンウェイクラッチF0が係合する。ブレーキB2も同時に係合するが、動力の伝達には無関係である。この状態では、クラッチC1,C2が同時に係合するため、入力軸14は第2のプラネタリギヤ130のサンギヤ132、第3のプラネタリギヤ140のサンギヤ142およびリングギヤ146、第4のプラネタリギヤ150のサンギヤ152に直結された状態となる。この結果、第3のプラネタリギヤ140は入力軸14と同じ回転数で一体的に回転する。従って、出力軸15も入力軸14と同じ回転数で一体的に回転する。従って第4速(4th)では、出力軸15は第3速(3rd)よりも高い回転数で回転する。出力軸15の回転数Noutは第3速(3rd)の回転数よりも高くなり、トルクToutは第3速(3rd)のトルクよりも低くなる。
【0099】
第5速(5th)の場合には、クラッチC1、C2、ブレーキB0が係合する。ブレーキB2も係合するが、動力の伝達には無関係である。この状態では、クラッチC0が解放されるため、副変速部110で回転数が増速される。つまり、変速機100の入力軸14の回転数は、増速されて主変速部120の入力軸119に伝達される。一方、クラッチC1,C2が同時に係合するため、第4速(4th)の場合と同様、入力軸119と出力軸15とは同じ回転数で回転する。先に説明した式(1)に照らせば、副変速部110の入力軸14と出力軸119の回転数、トルクの関係を求めることができ、出力軸15の回転数、トルクを求めることができる。出力軸15の回転数Noutは第4速(4th)の回転数よりも高くなり、トルクToutは第4速(4th)のトルクよりも低くなる。
【0100】
リバース(R)の場合には、クラッチC2、ブレーキB0、B4が係合する。このとき、入力軸14の回転数は副変速部110で増速された上で、第2のプラネタリギヤ130のサンギヤ132、第3のプラネタリギヤ140のサンギヤ142に直結された状態となる。既に説明した通り、リングギヤ136、プラネタリキャリア144、154の回転数は等しくなる。リングギヤ146とサンギヤ152の回転数も等しくなる。また、第4のプラネタリギヤ150のリングギヤ156の回転数はブレーキB4の作用により値0となる。これらの条件下で先に説明した式(1)に照らせば、プラネタリギヤ130、140、150の回転状態は一義的に決定される。このとき出力軸15は負の方向に回転し、後進が可能となる。
【0101】
以上で説明した通り、本実施例の変速機100は、前進5段、後進1段の変速を実現することができる。入力軸14から入力された動力は、回転数およびトルクの異なる動力として出力軸15から出力される。出力される動力は、第1速(1st)から第5速(5th)の順に回転数が上昇し、トルクが低減する。これは入力軸14に負のトルク、即ち制動力が付加されている場合も同様である。入力軸14にエンジン10およびモータ20により、一定の制動力が付加された場合、第1速(1st)から第5速(5th)の順に出力軸15に付加される制動力は低減する。なお、変速機100としては、本実施例で適用した構成の他、周知の種々の構成を適用可能である。変速段が前進5速よりも少ないものおよび多いもののいずれも適用可能である。
【0102】
変速機100の変速段は、制御ユニット70が車速等に応じて設定する。運転者は、車内に備えられたシフトレバーを手動で操作し、シフトポジションを選択することによって、使用される変速段の範囲を変更することが可能である。図5は本実施例のハイブリッド車両におけるシフトポジションの操作部160を示す説明図である。この操作部160は車内の運転席横のフロアに車両の前後方向に沿って備えられている。
【0103】
図示する通り、操作部としてシフトレバー162が備えられている。運転者はシフトレバー162を前後方向にスライドすることにより種々のシフトポジションを選択することができる。シフトポジションは、前方からパーキング(P)、リバース(R)、ニュートラル(N)、ドライブポジション(D)、4ポジション(4)、3ポジション(3)、2ポジション(2)およびローポジション(L)の順に配列されている。
【0104】
パーキング(P)、リバース(R)、ニュートラル(N)は、それぞれ図4で示した係合状態に対応する。ドライブポジション(D)は、図4に示した第1速(1st)から第5速(5th)までを使用して走行するモードの選択を意味する。以下、4ポジション(4)は第4速(4th)まで、3ポジション(3)は第3速(3rd)まで、2ポジション(2)は第2速(2nd)までおよびローポジション(L)は第1速(1st)のみを使用して走行するモードの選択を意味する。
【0105】
操作部160には、この他、スポーツモードスイッチ163が設けられている。スポーツモードスイッチ163は、頻繁に加減速を行う場合などに運転者により操作される。通常、変速機100の変速段は車速とアクセル開度に応じて設定されたマップに従って切り替えられる。スポーツモードスイッチ163がオンになっている場合は、全体に低速段側の変速段が使用されるようにマップが変更される。
【0106】
なお、シフトポジションの選択および目標減速度の設定を行うための操作部は、本実施例で示した構成(図5)以外にも種々の構成を適用することが可能である。また、スポーツモードスイッチ163に代えて、またはスポーツモードスイッチ163とともに運転者が変速段をマニュアルで切り替えられるモードを設けるものとしてもよい。変速段をマニュアルで切り替えるモードを設けた場合、シフトレバー162で変速段を切り替えるものとしてもよいし、これとは別の操作部を設けるものとしてもよい。後者としては、例えば、ステアリング部に変速段をアップ・ダウンするためのスイッチを設ける構成が挙げられる。
【0107】
スポーツモードが選択された場合には、車内の計器板に表示される。図6は本実施例におけるハイブリッド車両の計器板を示す説明図である。この計器板は、通常の車両と同様、運転者の正面に設置されている。計器板には、運転者から見て左側にガソリンの燃料計202、燃料電池用の燃料計203、速度計204が設けられており、右側にエンジン水温計208、エンジン回転計206が設けられている。燃料電池用の燃料計203は、図示する通り、メタノールの残量と、改質に用いられる水の残量とを左右の指針でそれぞれ示すように構成されている。中央部にはシフトポジションを表示するシフトポジションインジケータ220が設けられており、その左右に方向指示器インジケータ210L、210Rが設けられている。また、スポーツモードインジケータ222がシフトポジションインジケータ220の上方に設けられている。スポーツモードインジケータ222は、スポーツモードスイッチ163がオンになっている場合に点灯する。
【0108】
本実施例のハイブリッド車両では、エンジン10などの動力源から出力される動力は、補機の駆動にも用いられる。図1に示す通り、エンジン10には補機駆動装置82が結合されている。補機には、エアコンのコンプレッサやパワーステアリング用のポンプ等が含まれる。ここでは、エンジン10の動力を利用して駆動される補機類をまとめて補機駆動装置82として示した。補機駆動装置82は、具体的にはエンジン10のクランクシャフトにプーリやベルトを介して結合されており、クランクシャフトの回転動力によって駆動される。
【0109】
補機駆動装置82には、また、補機駆動用モータ80も結合されている。補機駆動用モータ80は、切替スイッチ83を介して燃料電池60およびバッテリ50に接続されている。補機駆動用モータ80は、モータ20と同様の構成を有しており、エンジン10の動力によって運転され、発電を行うことができる。補機駆動用モータ80で発電された電力はバッテリ50に充電することができる。また、補機駆動用モータ80は、バッテリ50および燃料電池60から電力の供給を受けて力行することもできる。本実施例のハイブリッド車両は、後述する通り、所定の条件下では、エンジン10の運転が停止される。補機駆動用モータ80を力行すれば、エンジン10が停止している時でも補機駆動装置82を駆動することができる。もちろん、エンジン10が停止している場合に、入力クラッチ18をオンにして、モータ20の動力で補機駆動装置82を駆動するものとしてもよい。
【0110】
本実施例のハイブリッド車両では、エンジン10、モータ20、トルクコンバータ30、変速機100、補機駆動用モータ80等の運転を制御ユニット70が制御している(図1参照)。制御ユニット70は、内部にCPU、RAM,ROM等を備えるワンチップ・マイクロコンピュータであり、ROMに記録されたプログラムに従い、CPUが後述する種々の制御処理を行う。制御ユニット70には、かかる制御を実現するために種々の入出力信号が接続されている。図7は制御ユニット70に対する入出力信号の結線を示す説明図である。図中の左側に制御ユニット70に入力される信号を示し、右側に制御ユニット70から出力される信号を示す。
【0111】
制御ユニット70に入力される信号は、種々のスイッチおよびセンサからの信号である。かかる信号には、例えば、燃料電池用の燃料残量、燃料電池温度、エンジン10の回転数、エンジン10の水温、イグニッションスイッチ、バッテリ残容量SOC、バッテリ温度、車速、トルクコンバータ30の油温、シフトポジション、サイドブレーキのオン・オフ、フットブレーキの踏み込み量、エンジン10の排気を浄化する触媒の温度、アクセル開度、スポーツモードスイッチ163のオン・オフ、車両の加速度センサなどがある。制御ユニット70には、その他にも多くの信号が入力されているが、ここでは図示を省略した。
【0112】
制御ユニット70から出力される信号は、エンジン10,モータ20,トルクコバータ30,変速機100等を制御するための信号である。かかる信号には、例えば、エンジン10の点火時期を制御する点火信号、燃料噴射を制御する燃料噴射信号、補機駆動用モータ80の運転を制御する補機駆動用モータ制御信号、モータ20の運転を制御するモータ制御信号、変速機100の変速段を切り替える変速機制御信号、変速機100の油圧を制御するためのATソレノイド信号およびATライン圧コントロールソレノイド信号、エンジン10からモータ20側への動力の伝達をオン・オフする入力クラッチを制御する入力クラッチコントロールソレノイド、トルクコンバータ30のロックアップを行うためのATロックアップコントロールソレノイド、モータ20の電源の切替スイッチ84の制御信号、補機駆動用モータ80の電源の切替スイッチ83の制御信号、燃料電池システム60の制御信号などがある。制御ユニット70からは、その他にも多くの信号が出力されているが、ここでは図示を省略した。
【0113】
A2.一般的動作:
次に、本実施例のハイブリッド車両の一般的動作について説明する。先に図1で説明した通り、本実施例のハイブリッド車両は動力源としてエンジン10とモータ20とを備える。制御ユニット70は、車両の走行状態、即ち車速およびトルクに応じて両者を使い分けて走行する。両者の使い分けは予めマップとして設定され、制御ユニット70内のROMに記憶されている。
【0114】
図8は車両の走行状態と動力源との関係を示す説明図である。図中の領域MGはモータ20を動力源として走行する領域である。領域MGの外側の領域は、エンジン10を動力源として走行する領域である。以下、前者をEV走行と呼び、後者をエンジン走行と呼ぶものとする。図1の構成によれば、エンジン10とモータ20の双方を動力源として走行することも可能ではあるが、本実施例では、かかる走行領域は設けていない。
【0115】
図示する通り、本実施例のハイブリッド車両は、まずEV走行で発進する。かかる領域では、入力クラッチ18をオフにして走行する。EV走行により発進した車両が図8のマップにおける領域MGと領域EGの境界近傍の走行状態に達した時点で、制御ユニット70は、入力クラッチ18をオンにするとともに、エンジン10を始動する。入力クラッチ18をオンにすると、エンジン10はモータ20により回転させられる。制御ユニット70は、エンジン10の回転数が所定値まで増加したタイミングで燃料を噴射し点火する。また、VVT機構を制御して、吸気バルブおよび排気バルブの開閉タイミングをエンジン10の運転に適したタイミングに変更する。
【0116】
こうしてエンジン10が始動して以後、領域EG内ではエンジン10のみを動力源として走行する。かかる領域での走行が開始されると、制御ユニット70は駆動回路51,52のトランジスタを全てシャットダウンする。この結果、モータ20は単に空回りした状態となる。
【0117】
制御ユニット70は、このように車両の走行状態に応じて動力源を切り替える制御を行うとともに、変速機100の変速段を切り替える処理も行う。変速段の切り替えは動力源の切り替えと同様、車両の走行状態に予め設定されたマップに基づいてなされる。マップは、シフトポジションによっても相違する。図8にはDポジション、4ポジション、3ポジションに相当するマップを示した。このマップに示す通り、制御ユニット70は、車速が増すにつれて変速比が小さくなるように変速段の切り替えを実行する。
【0118】
ドライブポジション(D)では、図8に示す通り、第5速(5th)までの変速段を用いて走行する。4ポジションでは、このマップにおいて、第4速(4th)までの変速段を用いて走行する。4ポジションでは、図8における5thの領域であっても第4速(4th)が使用される。同様に3ポジションの場合には、図8のマップにおいて、第3速(3rd)までの変速段を用いて走行する。
【0119】
2ポジション、Lポジションでは、マップを各シフトポジションに固有のものに変更して変速段の制御を行う。図9は2ポジションにおける変速段の切り替えの様子を示す説明図である。2ポジションでは、第1速および第2速の変速段が使用される。2ポジションのマップ(図9)において、第1速と第2速の切り替えを行う境界は、Dポジションのマップ(図8)と同じである。2ポジションでは、Dポジションに比較して領域MGの範囲が相違する。
【0120】
2ポジションでは、第3速が使用されないため、領域MGについて、Dポジションのマップ(図8)中の第3速を使用する領域(ハッチングを付した部分)を領域MGから除外する設定とすることも可能である。本実施例では、かかる領域よりも広い範囲で2ポジションにおける領域MGを設定した。図9中の破線は、Dポジションのマップとの対比のために示したものであり、Dポジションのマップ中の第2速と第3速との境界に対応する曲線である。このように領域MG中で第2速に対応する領域を広げることにより、2ポジションにおいても十分にモータ20を動力源として活用することができ、ハイブリッド車両の燃費を向上することができる。なお、第2速に対応する領域の設定に当たっては、モータ20の定格を考慮して、広げた領域(図9中のハッチングを付した領域)における走行感覚がDポジションにおける該当領域と大差ないよう設定することが望ましい。
【0121】
図10はLポジションにおける変速段の切り替えの様子を示す説明図である。Lポジションでは、第1速のみが使用される。2ポジションにおけるマップの設定で説明したのと同様の理由により、Lポジションでは、2ポジションに比較して領域MGの範囲が相違する。Lポジションにおける領域MGは、2ポジションのマップにおいて、領域MG中の第1速に対応する領域よりも広い範囲に設定されている。図11はRポジションにおける変速段の切り替えの様子を示す説明図である。Rポジションでは後進するため、領域MGの広さは前進方向のシフトポジションにおけるマップとは個別に設定した。
【0122】
変速段の切り替えはこのマップによる切り替えの他、運転者がアクセルペダルを急激に踏み込むことにより一段変速比が高い側に変速段を移す、いわゆるキックダウンと呼ばれる切り替えも行われる。また、スポーツモードが選択されている場合には、変速比の低い変速段を使用する領域をそれぞれ拡張して設定したマップに基づいて変速が行われる。これらの切り替え制御は、エンジンのみを動力源とし、自動変速装置を備えた周知の車両と同様である。なお、変速段と車両の走行状態との関係は、図8〜図11に示した他、変速機100の変速比に応じて種々の設定が可能である。
【0123】
なお、図8〜図11では、車両の走行状態に応じてEV走行とエンジン走行とを使い分ける場合のマップを示した。本実施例の制御ユニット70は、全ての領域をエンジン走行で行う場合のマップも備えている。かかるマップは、図8〜図11において、EV走行の領域(領域MG)を除いたものとなっている。EV走行には電力が必要である。制御ユニット70は、バッテリ50および燃料電池システム60から電力を確保できる場合には、EV走行とエンジン走行とを使い分けて運転を行う。十分な電力を確保できない場合には、エンジン走行で運転する。EV走行で発進を開始した場合でも、発進後に電力が十分確保できない状況に至った場合には、車両の走行状態が領域MG内にあってもエンジン走行に切り替えられる。かかる使い分けの制御については後述する。
【0124】
次に、本実施例のハイブリッド車両の制動について説明する。本実施例のハイブリッド車両は、ブレーキペダルを踏み込むことによって付加されるホイールブレーキと、エンジン10およびモータ20からの負荷トルクによる動力源ブレーキの2種類のブレーキによる制動が可能である。モータ20の負荷トルクによるブレーキとは、いわゆる回生制動であり、ハイブリッド車両の運動エネルギをモータ20で電力として回収する制動方法である。回収された電力はバッテリ50に充電される。動力源ブレーキによる制動は、アクセルペダルの踏み込みを緩めた場合に行われる。ブレーキペダルを踏み込めば、車両には動力源ブレーキとホイールブレーキの総和からなる制動力が付加される。
【0125】
本実施例のハイブリッド車両は、制御ユニット70が、エンジン10、モータ20等を制御することによって、上述した走行を可能としている。制御は、車両の種々の運転モードごとに用意された所定の制御処理を実行することにより、行われる。以下では、本実施例のハイブリッド車両について、代表的な運転モードに対し、それぞれ制御処理の内容を説明する。
【0126】
A3.EV走行制御処理:
図12はEV走行制御処理ルーチンのフローチャートである。制御ユニット70内のCPUが所定の時間間隔で周期的に実行する処理である。この処理が開始されると、CPUは車両の運転状態を入力する(ステップS10)。図7で示した種々のセンサからの入力がなされるが、特に、シフトポジション、車速、アクセル開度、バッテリ残容量SOC、燃料電池用の残燃料量FCLが以後の処理に関与する。
【0127】
次に、CPUは車両の運転状態がMG領域に該当するか否かを判定する(ステップS20)。MG領域は、図8〜図11に示した通り、シフトポジションに応じて車速およびアクセル開度との関係で特定されている。ステップS10で入力された諸量に基づいて、運転状態がMG領域に該当するか否かを判定するのである。運転状態がMG領域に該当しない場合には、EV走行は実行しない。従って、かかる場合には、CPUは以後の処理を行わずにEV走行制御処理ルーチンを終了する。
【0128】
ステップS20において、運転状態がMG領域に該当すると判断された場合には、CPUはバッテリ50と燃料電池60とを使い分けるための処理を行う。これら2つの電源の使い分けを行うために、CPUは、バッテリ50の残容量SOCが所定の値LO1以上であるか否かを判定する(ステップS30)。所定の値LO1の設定については後述する。
【0129】
残容量SOCが所定の値LO1以上である場合には、バッテリ50の充電状態が高いため、バッテリ50を電源として、モータ20を駆動するための処理を行う(ステップS50)。まず、電源の切替スイッチ84を制御して、バッテリ50とモータ20とを接続する。また、モータ20の運転の可否を示すフラグをオンにするとともに、モータ20の目標運転状態、即ち目標回転数と目標トルクとを特定する。本実施例では、モータ20の運転自体は、別途用意されたルーチンで実行するものとしているため、ここでは、該ルーチンに受け渡すデータの設定を行うのである。目標回転数は、ステップS10で入力された車速に変速機100の変速比およびディファレンシャルギヤの変速比などを乗じることで特定される。目標トルクは、車速とアクセル開度とに応じて予め設定されたマップによって特定される。これらの目標運転状態が、別途用意された制御処理に受け渡されることにより、モータ20は該目標運転状態で運転される。
【0130】
モータ20を駆動する制御処理について説明する。図13はモータ駆動制御ルーチンを示すフローチャートである。この処理が開始されると、CPUはモータ20の駆動を許可する運転フラグがオンになっているか否かを判定する(ステップS1)。運転フラグがオンでない場合には、モータ20を駆動すべきでないと判断して、何も処理を行うことなくモータ駆動制御ルーチンを終了する。
【0131】
モータ20の運転フラグがオンになっている場合には、次に、モータ20の目標運転状態、即ち目標回転数および目標トルクを入力する(ステップS2)。目標運転状態は、上述のEV走行制御処理などの運転制御処理でそれぞれ設定されている。こうして入力された目標運転状態に基づき、CPUはモータ20に印加すべき電圧Vd、Vqを設定する(ステップS3)。Vd,Vqとは、それぞれモータ20のd軸電圧、q軸電圧を意味する。本実施例では、同期モータの制御方法として周知の技術であるベクトル制御を適用する。ベクトル制御では、ロータの回転とともに回転するd軸およびq軸方向の電圧がモータ20の出力トルクを制御する本質的なパラメータとして扱われる。これらの電圧は、目標回転数および目標トルクに応じて予め設定され、テーブルとして記憶されている。CPUはステップS2で入力された目標運転状態に基づき、このテーブルを参照して、印加電圧Vd,Vqを設定するのである。
【0132】
こうしてd軸方向、q軸方向の電圧を設定すると、CPUはそれらの電圧をモタ20のU,V,W相の各コイルに印加すべき電圧に変換する(ステップS4)。かかる変換は、2相/3相変換と呼ばれる。d軸方向およびq軸方向の電圧値に、ロータの回転位置に応じた周知のマトリックスを乗じることで変換することができる。こうして設定された各相の電圧に基づき、CPUはトランジスタをPWM制御する(ステップS5)。即ち、各相に接続されたそれぞれのトランジスタのオン・オフの割合を電圧に応じて調整する制御を行う。以上の処理により、CPUはモータ20の運転を制御することができる。
【0133】
図12に戻り、EV走行制御処理について再び説明する。MG領域内では、モータ20のみを動力源として走行する。従って、上記処理によってモータ20が動力源として指定された場合は、エンジンの運転を停止する(ステップS70)。ここでは、エンジンの運転可否を特定するフラグをオフにする。実際には、別途用意されたエンジンの運転の制御処理で、その運転が停止される。
【0134】
ステップS30において、バッテリ50の残容量SOCが所定の値LO1よりも小さい場合には、充電状態が低いと判断し、バッテリ50の電力の使用を回避する。従って、CPUは燃料電池60が電源として使用可能であるか否かの判断を行う。この判断として、CPUは燃料電池用の残燃料量FCLが所定の値F1以上であるか否かを判断する(ステップS40)。所定の値F1の設定については後述する。残燃料量FCLが値F1以上である場合には、燃料電池60が電源として使用可能であると判断し、CPUは燃料電池60を電源として、モータ20を駆動するための処理を行う(ステップS60)。同時にモータ20の目標運転状態を設定する。モータ20の目標運転状態の設定方法は、ステップS50と同じである。また、モータ20のみを動力源として走行するため、エンジンの運転を停止する処理を行う(ステップS70)。
【0135】
ステップS60では、電源の切替スイッチ84を制御して燃料電池60とモータ20とを接続する。もちろん、切替スイッチ84は燃料電池60とバッテリ50とを完全に選択的に使用するように切り替えることも可能である。但し、本実施例では、燃料電池60の特性を考慮し、バッテリ50と燃料電池60とを徐々に切り替える制御を行っている。燃料電池60は化学反応を利用しているため、発電の指示を出してから実際に所望の電力が得られるまで時間遅れが存在するのが通常である。従って、ステップS60において電源を瞬時に燃料電池60に切り替えると、走行に必要な電力が十分に得られない可能性がある。本実施例では、かかる時間遅れを考慮して、燃料電池60の電力が不足する分を補償するようにバッテリ50を用い、燃料電池60から所望の電力が出力されるようになった時点で完全に燃料電池60を電源とするように切替スイッチ84を制御する。かかる制御は、切替スイッチ84がバッテリ50と燃料電池60にそれぞれ接続される時間を変更することで実現可能である。また、モータ20をバッテリ50および燃料電池60の双方と常に接続された状態にして、各駆動回路51,52のスイッチングをそれぞれ制御して、各電源から供給される電圧を徐々に変更するものとしてもよい。
【0136】
ステップS40において、燃料電池の残燃料量FCLが所定の値F1よりも低い場合には、燃料電池60を電源として使用することを回避する。かかる場合には、使用可能な電源が存在しないことになる。従って、CPUはMG領域内であるとはいえ、モータ20を動力源とするEV走行を断念し、エンジンを動力源として走行する処理を行う(ステップS80)。つまり、モータ20の運転可否を示すフラグをオフにするとともに、エンジンの運転可否を示すフラグをオンにする。エンジンの目標運転状態は、車速とアクセル開度によって設定される。CPUは、以上の処理を繰り返し実行することでMG領域における運転を制御する。
【0137】
図14はEV走行制御処理における各動力源および電源の出力の変化を示す説明図である。停車している状態からEV走行が開始された場合を例にとって、モータ出力、バッテリ出力、燃料電池出力およびエンジン出力の時間変化を示した。時刻a0において、EV走行が開始されるとする。また、この時点では、バッテリ50の残容量SOCがLO1以上残っているものとする。かかる状態では、バッテリ50を電源としてEV走行が開始されるから、時刻a0以降で、モータ出力およびバッテリ出力が所定の状態まで上昇する。燃料電池およびエンジンは使用されないため、出力は値0のままである。
【0138】
時刻a1において、モータ出力は要求値に達したものとする。この時点に達して以降もバッテリ50の残容量が十分に残っている場合を図中に実線で示した。モータ出力は要求値で一定となり、バッテリ出力も一定値となる。燃料電池およびエンジンは使用されないため、値0を維持する。
【0139】
一方、時刻a1に達した時点で、バッテリ50の残容量が所定の値LO1よりも低くなった場合を図中に一転鎖線で示した。この場合には、バッテリ50から燃料電池60に電源を切り替えてモータ20が駆動される。燃料電池60は時刻a1から運転が開始されるが、電力の立ち上がりは比較的遅く、十分な電力を出力するのは時刻a2に至ってからである。先に説明した通り、燃料電池が十分に電力を出力するようになるまでの遅れ時間Td1では、電力の不足を補償するようにバッテリ50の電力が使用される。従って、図示する通り、バッテリ50の電力は時刻a1において不連続的に値0に低減するのではなく、時刻a2までかけて徐々に低減する。時刻a2に至った後は、燃料電池のみを電源としてモータ20が駆動される。
【0140】
時刻a4において燃料電池用の残燃料量が所定の値F1よりも低くなったものとする。かかる状態では、モータ20の駆動を停止し、エンジン走行に切り替える。図示する通り、時刻a4からa5にかけてモータ20の出力が低下するとともに、エンジンの出力が増加する。なお、ここで示したのは、一例に過ぎず、モータ20を動力源とするEV走行中にモータ出力が変動する場合など、各出力は種々の態様で変化し得ることは言うまでもない。
【0141】
ここで、上述の処理で用いられたF1(ステップS40)の設定について説明する。所定の値F1はステップS40で説明した通り、燃料電池60を電源として使用するか否かの基準となる値である。所定の値F1については、値0以上の範囲で任意に設定可能である。値0に設定すれば、燃料が残っている限り、燃料電池60を電源として使用することになる。EV走行のみを考慮すれば、値0として設定するのが運転効率および環境性の観点から好ましい。しかし、値0にした場合には、他の運転モードで燃料電池を使用する必要性が生じた場合に、EV走行で既に燃料が消費されており、燃料電池を使用し得ない可能性も生じる。
【0142】
本実施例では、他の運転モードを考慮して、正の所定値に設定した。即ち、EV走行制御処理では、燃料電池用の燃料を完全に消費することがないように設定した。本実施例のハイブリッド車両は、後述する通り、EV走行以外の運転モードにおいても、種々のモードで電源を必要とする。運転効率および環境性の観点から、EV走行よりも電源の必要性が高い運転モードも存在する。かかるモードで燃料電池を電源として確保しやすくするため、本実施例では、EV走行時には、燃料電池用の燃料の使用を抑制するものとした。換言すれば、所定の値F1以上の燃料が存在し、燃料に比較的余裕がある場合にのみ燃料電池を電源とすることにしているのである。
【0143】
次に、上述の処理で用いられたLO1(ステップS30)の設定について説明する。所定の値LO1はステップS30で説明した通り、バッテリ50を電源として使用するか否かの基準となる値である。所定の値LO1については、値0以上の範囲で任意に設定可能である。値0に設定すれば、バッテリ50に電力が残っている限り、バッテリ50を電源として使用することになる。本実施例では、燃料電池60を電源として使用する場合の過渡的な状態を考慮して所定値LO1を設定した。先に説明した通り、燃料電池60への電源の切り替え時には、燃料電池60から十分な電力が出力されるまでの遅れを考慮して、バッテリ50を過渡的に使用するものとしている。従って、本実施例では、かかる遅れ時間において、燃料電池60の電力を補償し得る電力をバッテリ50から十分に出力できるように所定の値LO1を設定した。
【0144】
なお、バッテリ50の電力は一旦消費しても走行中に再び充電することが可能である。例えば、ハイブリッド車両の制動時にモータ20を回生運転することにより、運動エネルギを電力として回収し、バッテリ50の充電を行うことができる。これに対し、燃料電池60による電力は、一過性のものである。つまり、一旦燃料を消費すると、外部から燃料補給しない限り増加することはない。かかる観点から、燃料電池60よりもバッテリ50の電力を積極的に使用することが望ましい。本実施例では、バッテリ50の電力を積極的に使用するため、値LO1は上述の過渡的な使用を可能とする下限値に若干の余裕を見込んだ値に設定した。
【0145】
基準値LO1の設定について具体的に説明する。図15はバッテリ50を使用する判断基準値の設定方法について示す説明図である。ここでは、判断基準値をCASE1〜CASE3の3通りに変化させた場合の状態をそれぞれ示した。CASE1は上述の所定値LO1を比較的高い値SOC1に設定した場合に対応する。かかる場合には、SOC1に相当する残容量を残して燃料電池60の使用が開始されることになる。電源が燃料電池60に完全に移行した後は、バッテリ50には、図中のハッチングで示す容量が残っている。かかる状態でハイブリッド車両を回生制動した場合を考える。回生制動によって得られる電力(以下、回生電力と呼ぶ)は制動前後の車速や車両の重量に応じて変動するが、ここでは平均的な回生電力を図示した。基準値LO1を高い値に設定したCASE1では、バッテリSOCの残容量が比較的高い状態に保たれる結果、バッテリ50の充電限界内で回生電力を全て充電することができなくなる。従って、CASE1では回生電力の一部(図中の塗りつぶした部分)が廃棄される。この分、ハイブリッド車両は、車両の運動エネルギを活用できなくなるため、エネルギ効率が低下する。
【0146】
CASE2は基準値LO1を中程度の値SOC2に設定した場合に対応する。かかる設定にすれば、回生電力を充電限界内でバッテリ50に充電することができる。CASE3は基準値LO1を低い値SOC3に設定した場合に対応する。かかる設定でも、回生電力を十分にバッテリ50に充電することができる。これらの設定であれば、ハイブリッド車両の運動エネルギを効率的に活用することが可能となる。
【0147】
一方、CASE2とCASE3とを比較すれば、CASE2の方が電源が早く燃料電池60に切り替えられる。EV走行に要する総電力がCASE2とCASE3で同じであるとすれば、CASE2の方が燃料電池60を長時間使用することになり、燃料電池用の燃料を多大に消費することになる。既に説明した通り、燃料電池用の燃料は一旦消費すれば、外部からの供給を受けない限り回復し得ない。従って、燃料電池の燃料消費は抑制することが好ましい。
【0148】
また、所定値LO1を極端に低くすれば、燃料電池60に電源を切り替える過渡期においてバッテリ50で電力を補償することができなくなる。過渡期に必要となる電力は、要求される電力によっても変動するが、燃料電池60の特性に応じて概ね設定することができる。本実施例では、これらの観点から、図中のSOC3に示す通り、過渡期の出力に要するSOCに対して若干余裕を見込んだ上で、可能な限り低い値に基準値LO1を設定した。
【0149】
以上で説明したEV走行制御処理によれば、MG領域においてバッテリ50と燃料電池60とを使い分けてEV走行することができる。バッテリ50の充電量が高い場合には、燃料電池60の残燃料量FCLの値に関わらずバッテリ50を電源として使用することになる。換言すれば、バッテリ50を電源として優先的に使用することになる。また、双方の電源が共に使用すべきでない状態にある場合には、エンジンを動力源としてエンジン走行することができる。
【0150】
バッテリ50の電力は走行中に充電することで、消費前の状態に復元可能である。上記制御処理によれば、このように可逆的な電源を積極的に使用することにより、一過性の電源である燃料電池の使用を抑制することができる。換言すれば、燃料電池の使用が望まれる運転状態に備えて燃料を確保しておくことができる。従って、上記処理によれば、幅広い運転状態で、電源を適切に使用することができる。従って、運転効率および環境性に優れる動力源を十分に活用することが可能となる。
【0151】
また、上記制御処理によれば、バッテリ50の電力を積極的に使用することで、車両のエネルギ効率を向上することもできる。本実施例のハイブリッド車両は、モータ20を回生運転することにより、制動時に車両の運動エネルギを電力として回生することができる。ここで、例えば、バッテリ50が満充電に近い場合には、回生した電力を十分に蓄えることができないため、車両の運動エネルギを効率的に活用することができない。これに対し、上記制御を実行すれば、バッテリ50の電力を積極的に活用する結果、回生した電力をバッテリ50に蓄えることができ、その後の走行に活用することができる。従って、上記制御処理によれば、ハイブリッド車両のエネルギ効率を向上することができる。
【0152】
A4.補機駆動制御処理:
図16は補機駆動制御処理ルーチンのフローチャートである。図1に示した通り、本実施例のハイブリッド車両は、エンジン10および補機駆動用モータ80の動力で補機駆動装置を駆動することができる。補機駆動制御処理ルーチンとは、補機駆動装置を駆動する際の動力源および電源の使い分けを制御する処理である。この処理も、制御ユニット70内のCPUが所定の時間間隔で周期的に実行する処理である。この処理が開始されると、CPUは車両の運転状態を入力する(ステップS110)。図7で示した種々のセンサからの入力がなされるが、特に、シフトポジション、車速、アクセル開度、バッテリ残容量SOC、燃料電池用の残燃料量FCLが以後の処理に関与する。
【0153】
次に、CPUは車両の運転状態がMG領域に該当するか否かを判定する(ステップS120)。判定方法は、EV走行処理ルーチンのステップS20と同様である。運転状態がMG領域に該当しない場合には、エンジン10が運転中であることを意味する。かかる場合には、エンジン10の動力によって補機を駆動することが可能である。従って、CPUは以後の処理を行わずに補機駆動制御処理ルーチンを終了する。
【0154】
ステップS120において、運転状態がMG領域に該当すると判断された場合には、原則としてエンジン10の運転が停止される。エンジン10の運転が停止された場合でも、エアコンやパワーステアリング等の補機は駆動する必要がある。MG領域では、利用可能な電源があれば、補機駆動用モータ80によって補機駆動装置82を駆動する。従って、CPUは補機駆動用の電源として、バッテリ50と燃料電池60とを使い分けるための処理を行う。これら2つの電源の使い分けを行うために、CPUは、バッテリ50の残容量SOCが所定の値LO2以上であるか否かを判定する(ステップS130)。所定の値LO2の設定については後述する。
【0155】
残容量SOCが所定の値LO2以上である場合には、バッテリ50の充電状態が高いため、バッテリ50を電源として、補機駆動用モータ80を駆動するための処理を行う(ステップS150)。まず、電源の切替スイッチ83を制御して、バッテリ50と補機駆動用モータ80とを接続する。また、補機駆動用モータ80の運転の可否を示すフラグをオンにするとともに、補機駆動用モータ80の目標運転状態、即ち目標回転数と目標トルクとを予め設定された値に特定する。本実施例では、補機駆動用モータ80の運転自体は、別途用意されたルーチンで実行するものとしているため、ここでは、該ルーチンに受け渡すデータの設定を行う。目標回転数および目標トルクは、駆動すべき補機に応じて予め設定されている。これらの目標運転状態が、別途用意された制御処理に受け渡されることにより、補機駆動用モータ80は該目標運転状態で運転される。補機駆動用モータ80の制御処理は、モータ20について図13で示した処理と同じである。
【0156】
補機駆動用モータ80で補機駆動装置82を駆動する場合には、エンジンの運転を停止する(ステップS170)。ここでは、エンジンの運転可否を特定するフラグをオフにする。実際には、別途用意されたエンジンの運転の制御処理で、その運転が停止される。なお、エンジン10の運転を停止する際には、次にエンジン10から車軸に動力を出力する必要が生じた場合に備え、入力クラッチ18を結合する処理を行う。
【0157】
ステップS130において、バッテリ50の残容量SOCが所定の値LO2よりも小さい場合には、充電状態が低いと判断し、バッテリ50の電力の使用を回避する。従って、CPUは燃料電池60が電源として使用可能であるか否かの判断を行う。この判断として、CPUは燃料電池用の残燃料量FCLが所定の値F2以上であるか否かを判断する(ステップS140)。所定の値F2の設定については後述する。残燃料量FCLが値F2以上である場合には、燃料電池60が電源として使用可能であると判断し、CPUは燃料電池60を電源として、補機駆動用モータ80を駆動するための処理を行う(ステップS160)。補機駆動用モータ80の目標運転状態の設定方法は、ステップS150と同じである。また、エンジンの運転を停止する処理を行う(ステップS170)。
【0158】
ステップS160では、電源の切替スイッチ83を制御して燃料電池60と補機駆動用モータ80とを接続する。本実施例では、EV走行制御処理と同様、燃料電池60からの電力の立ち上がり遅れを考慮し、バッテリ50と燃料電池60とを徐々に切り替える。つまり、燃料電池60の電力が不足する分を補償するようにバッテリ50を用い、燃料電池60から所望の電力が出力されるようになった時点で完全に燃料電池60を電源とするように切替スイッチ83を制御する。かかる制御は、切替スイッチ83がバッテリ50と燃料電池60にそれぞれ接続される時間を変更することで実現可能である。また、補機駆動用モータ80をバッテリ50および燃料電池60の双方と常に接続された状態にして、各駆動回路51,52のスイッチングをそれぞれ制御して、各電源から供給される電圧を徐々に変更するものとしてもよい。
【0159】
ステップS140において、燃料電池の残燃料量FCLが所定の値F2よりも低い場合には、燃料電池60を電源として使用することを回避する。かかる場合には、使用可能な電源が存在しないことになる。従って、CPUはエンジンを動力源として補機駆動装置82を駆動する処理を行う(ステップS180)。つまり、補機駆動用モータ80の運転可否を示すフラグをオフにするとともに、エンジンの運転可否を示すフラグをオンにするのである。CPUは、以上の処理を繰り返し実行することで補機駆動装置82の駆動を制御する。
【0160】
なお、ステップS180の処理では、エンジン10を運転するとはいえ、必ずしもエンジン10の動力を車軸に出力する必要がある訳ではない。例えば、停車中においては、車軸に動力を出力する必要はないが、補機駆動装置82は停車中でも駆動する必要がある。本実施例では、補機駆動処理のステップS180において、エンジン10とモータ20との間に設けられた入力クラッチ18の制御をも実行する。即ち、エンジン10の動力を車軸に出力する必要があるか否かを判定し、出力する必要がある場合には入力クラッチ18を結合状態とする。出力する必要がない場合には、入力クラッチ18を解放状態とする。もちろん、かかる制御は、エンジン10による補機の駆動を効率的に行うためのものであり、車軸への動力の出力要求に関わらず、入力クラッチ18を結合状態に維持するものとしても構わない。
【0161】
ステップS180においてエンジン10を運転する場合、エンジンの目標運転状態としては、駆動すべき補機に応じた要求動力に加え、バッテリ50を充電するための動力が設定される。ステップS180においてエンジン10を駆動する必要が生じた場合には、バッテリ50の電力が値LO2よりも低くなっており、燃料電池60の残燃料量が値F2よりも少なくなっていることを意味する。つまり、バッテリ50と燃料電池60の双方の電源共に使用できない状態にあることを意味する。従って、エンジン10を運転しつつ電力を回復可能なバッテリ50を充電し、後の運転に利用可能な電源の確保を行う。エンジン10の動力は補機駆動装置82を介して補機駆動用モータ80に伝達される。従って、エンジン10の動力によって補機駆動用モータ80を運転し発電することにより、バッテリ50を充電することができる。この際、電源の切替スイッチ83は当然バッテリ50側に接続される。
【0162】
かかる処理の結果、一旦エンジン10により補機の駆動が開始された後でも、所定時間経過してバッテリ50の充電状態が回復すれば、再びバッテリ50を電源とする補機駆動用モータ80による駆動に切り替えられる。但し、エンジン10と補機駆動用モータ80との切り替えが頻繁に行われることを回避し、バッテリ50の充電状態が十分に回復してから補機駆動用モータ80への切り替えを行うため、ステップS130の処理が実行されると、ステップS130の判断基準となる値LO2は所定時間継続して補機駆動用モータ80を運転可能な程度に高い値に変更される。もちろん、ステップS130で一旦変更された値LO2は、再びバッテリ50を電源とする運転が再開された時点で、当初の値に戻される。
【0163】
図17は補機駆動制御処理における動力源の切り替えの様子を示す説明図である。ここでは、エンジン10を動力源として補機を駆動している状態から補機駆動用モータ80を動力源として補機を駆動する状態への切り替えを例にとって、エンジンクランクシャフトの回転数、トルクコンバータ30のロックアップクラッチ、入力クラッチ18および補機駆動用モータの動力の時間変化を示した。時刻b1において、補機駆動用の動力をエンジン10から補機駆動用モータ80に切り替えるべき判断がなされたものとする。上記フローチャートのステップS130の判断の結果、ステップS150の処理が実行される場合に相当する。
【0164】
エンジン10を動力源として補機を駆動している間は、先に説明した通り、入力クラッチ18は解放されている。一方、補機駆動用モータ80により補機を駆動する場合には、車軸への動力の出力に備え、入力クラッチを結合する。従って、図示するとおり、時刻b1以降で入力クラッチ油圧が上昇し、エンジン10はモータ20側に結合される。但し、この結合時にはエンジン10が回転中であるため、直接モータ20側に結合すれば、車軸に予期しないトルクが出力されるなどの可能性がある。従って、入力クラッチ18を結合すると同時にトルクコンバータ30のロックアップクラッチの油圧を低減し、クラッチを解放する。ロックアップクラッチを解放すれば、トルクコンバータ30の入出力軸間で滑りが生じるから、上述の弊害を回避することができる。こうして、時刻b2において入力クラッチ18の結合およびロックアップクラッチの解放が完了すると、エンジン10の運転を停止するとともに、補機駆動用モータ80の運転を開始する。以降、補機駆動用モータ80の動力によって補機を駆動する。
【0165】
ここで、上述の処理で用いられたF2(ステップS140)の設定について説明する。所定の値F2は燃料電池60を電源として使用するか否かの基準となる値であり、値0以上の範囲で任意に設定可能である。値0に設定すれば、燃料が残っている限り、燃料電池60を電源として使用することになる。EV走行制御処理における値F1と同様、本実施例では、他の運転モードを考慮して、正の所定値に設定した。即ち、補機駆動制御処理では、燃料電池用の燃料を完全に消費することがないように設定した。但し、補機駆動制御処理では燃費および環境性の観点から、EV走行に比較して燃料電池を用いる必要性が高いと考えられる。従って、本実施例では、補機駆動制御処理で用いる値F2は、EV走行制御処理における値F1よりも若干低い値に設定した。
【0166】
次に、上述の処理で用いられたLO2(ステップS130)の設定について説明する。所定の値LO2はステップS130で説明した通り、バッテリ50を電源として使用するか否かの基準となる値である。所定の値LO2については、値0以上の範囲で任意に設定可能である。値0に設定すれば、バッテリ50に電力が残っている限り、バッテリ50を電源として使用することになる。先に説明した通り、本実施例では、補機駆動に用いられる動力源に応じて判断基準となる値LO2を変更している。エンジン10が動力源として用いられる場合には、バッテリ50の充電を行うために、基準値LO2を高い値に設定する。バッテリ50を電源とする補機駆動用モータ80が動力源として用いられる場合には、基準値LO2を低い値に設定する。低い値は、燃料電池60を電源として使用する場合の過渡期における電力の補償が可能な範囲で設定した。高い値は、満充電に対し、回生制動で充電する程度の余裕を持った範囲で設定した。
【0167】
基準値LO2の設定について図13を用いて具体的に説明する。先にEV走行制御処理で説明したのと同様、回生制動時の充電余裕、燃料電池に電源を切り替える際の過渡期に必要な電力、および燃料電池用の燃料消費の抑制を考慮して、基準値LO2は図15中の低い値SOC3相当に設定した。補機駆動制御処理では、これに加えてエンジン10で補機を駆動する際には、バッテリ50への充電が行われるよう基準値LO2を変更している。この場合の基準値は図15中の高い値SOC1に設定した。
【0168】
補機駆動制御処理ルーチンは周期的に繰り返し実行される処理である。使用可能な電源がないと判断され、一旦エンジン10による補機の駆動が開始された後、再び補機駆動制御処理ルーチンが実行されれば、バッテリ50が使用できるか否かの判断(ステップS130)が実行される。この時、判断の基準値LO2が当初の設定、即ち図15中のSOC3のままの場合を考える。エンジン10の動力によってバッテリ50がわずかに充電されると、バッテリ50の残容量は、基準値SOC3を超える。この結果、ステップS130において、バッテリ50が電源として使用可能であると判断される。従って、エンジン10による補機の駆動およびバッテリ50の充電は終了され、バッテリ50を電源とする補機用モータ80により補機が駆動される。しかし、バッテリ50の残容量は基準値SOC3をわずかに超えた程度であるため、補機用モータ80を駆動して電力を消費すると、ごく短期間の間に残容量は再びSOC3以下に低減する。このように、基準値LO2を値SOC3で一定にしておくと、エンジン10の運転とバッテリ50を用いた補機用モータ80の運転とが頻繁に切り替えられる現象が生じる。
【0169】
これに対し、本実施例では、エンジン10によるバッテリ50の充電が開始された時点で基準値LO2を図15中の低い値SOC3から高い値SOC1に変更する。こうすることで、バッテリ50の残容量がSOC1を超えるまで充電が継続される。残容量がSOC1を超えると、ステップS130の判断の結果、再びバッテリ50を電源とする補機用モータ80の駆動が開始される。補機用モータ80の駆動が開始された時点で基準値LO2は、図15中の低い値SOC3に戻される。従って、バッテリ50の残容量がSOC3以下になるまで、補機用モータ80の駆動は継続される。このように基準値LO2の設定に一種のヒステリシスを持たせることによって、本実施例では、エンジン10の運転と補機用モータ80の駆動との切り替えを円滑に行っている。
【0170】
なお、充電時に用いられる高い値は充電限界を用いることも可能ではある。但し、充電時の基準値を高くすれば、エンジン10の運転時間が長くなるため、燃費および環境性の面で不利益が生じる。また、充電途中で補機駆動処理ルーチンが終了し、ハイブリッド車両が走行を開始する場合もある。充電時の基準値を高く設定した場合には、走行を開始した後、回生電力を充電する余裕が少なくなる可能性も生じる。本実施例では、これらの面を考慮し、充電時の基準値を充電限界よりも若干低い値に設定した。
【0171】
以上で説明した補機駆動制御処理によれば、MG領域においてバッテリ50と燃料電池60とを使い分けて補機を駆動することができる。バッテリ50の充電量が高い場合には、燃料電池60の残燃料量FCLの値に関わらずバッテリ50を電源として使用することになる。換言すれば、バッテリ50を電源として優先的に使用することになる。また、双方の電源が共に使用すべきでない状態にある場合には、エンジンを動力源として補機を駆動することができる。エンジンを動力源とする場合には、同時にバッテリ50の充電を行うこともできる。
【0172】
このようにバッテリ50を燃料電池60よりも優先して使用することにより、一過性の電源である燃料電池の使用を抑制することができる。換言すれば、燃料電池の使用が望まれる運転状態に備えて燃料を確保しておくことができる。従って、上記処理によれば、幅広い運転状態で、電源を適切に使用することができる。また、バッテリ50の電力を積極的に使用することで、回生制動時に充電するための余裕を確保しやすくなり、車両のエネルギ効率を向上することもできる。
【0173】
A5.パワーアシスト制御処理:
図18はパワーアシスト制御処理ルーチンのフローチャートである。図1に示した通り、本実施例のハイブリッド車両は、エンジン走行している際に、さらにモータ20を駆動することにより、エンジン10の出力を補助し、高トルクを出力して走行することができる。パワーアシスト制御処理ルーチンとは、このように高トルクが要求された場合に、エンジン10とモータ20の双方を動力源として走行する際の動力源および電源の使い分けを制御する処理である。この処理も、制御ユニット70内のCPUが所定の時間間隔で周期的に実行する処理である。この処理が開始されると、CPUは車両の運転状態を入力する(ステップS210)。図7で示した種々のセンサからの入力がなされるが、特に、シフトポジション、車速、アクセル開度、バッテリ残容量SOC、燃料電池用の残燃料量FCLが以後の処理に関与する。
【0174】
次に、CPUはアクセル開度の変化率Δθ、即ち単位時間当たりのアクセル開度の変化が所定の値Δθ1以上であるか否かを判定する(ステップS220)。一般に高トルクは車両を急加速する場合などに要求される。かかる場合には、アクセルが急激に踏み込まれるのが通常である。従って、本実施例では、アクセル開度の変化率に基づいて高トルクが要求されているか否かを判定している。アクセル開度率Δθが所定の値Δθ1よりも小さい場合には、高トルクが要求されていないことを意味する。かかる場合には、さらにモータ20を駆動するパワーアシストは要求されていないことになる。従って、CPUは以後の処理を行わずにパワーアシスト制御処理ルーチンを終了する。
【0175】
ステップS220において、アクセル開度Δθが所定の値Δθ1以上である場合には、高トルクが要求されていると判断し、原則としてモータ20によるパワーアシストを実行する。従って、CPUはモータ20を駆動するための電源として、バッテリ50と燃料電池60とを使い分けるための処理を行う。これら2つの電源の使い分けを行うために、CPUは、バッテリ50の残容量SOCが所定の値LO3以上であるか否かを判定する(ステップS230)。所定の値LO3の設定については後述する。
【0176】
残容量SOCが所定の値LO3以上である場合には、バッテリ50の充電状態が高いため、バッテリ50を電源として、モータ20を駆動するための処理を行う(ステップS260)。まず、電源の切替スイッチ83を制御して、バッテリ50とモータ20とを接続する。また、モータ20の運転の可否を示すフラグをオンにするとともに、モータ20の目標運転状態、即ち目標回転数と目標トルクとを予め設定された値に特定する。目標回転数は、ステップS210で入力された車速に変速機100の変速比およびディファレンシャルギヤの変速比などを乗じることで特定される。目標トルクは、車速とアクセル開度の変化率とに応じて予め設定されたマップによって特定される。これらの目標運転状態が、別途用意された制御処理に受け渡されることにより、モータ20は該目標運転状態で運転される。なお、この場合、エンジン10は従前の状態での運転を継続する。
【0177】
ステップS230において、バッテリ50の残容量SOCが所定の値LO3よりも小さい場合には、充電状態が低いと判断し、バッテリ50の電力の使用を回避する。従って、CPUは燃料電池60が電源として使用可能であるか否かの判断を行う。この判断として、CPUは燃料電池用の残燃料量FCLが所定の値F3以上であるか否かを判断する(ステップS240)。所定の値F3の設定については後述する。残燃料量FCLが値F3以上である場合には、燃料電池60が電源として使用可能であると判断し、CPUは燃料電池60を電源として、モータ20を駆動するための処理を行う。但し、本実施例では、燃料電池によりバッテリ50を充電し(ステップS250)、バッテリ50の電力を用いてモータ20を駆動するものとした(ステップS260)。
【0178】
燃料電池60によりバッテリ50を充電するものとしたのは、燃料電池60の特性を考慮したものである。既に説明した通り、燃料電池60は発電を開始してからの電力の立ち上がり遅れが生じる。パワーアシスト制御処理では、モータ20から出力すべき動力は頻繁に変動する可能性が高く、当然、電源から出力すべき電力も頻繁に変動する可能性が高い。電源は、かかる変動に十分追随して電力を出力する必要がある。燃料電池60のみを電源として使用した場合は、かかる変動に十分追随することができない。本実施例では、かかる観点から、応答性の高いバッテリ50を電源として使用するため、燃料電池60によりバッテリ50を充電するものとしたのである。もちろん、かかる処理に代えて、燃料電池60とバッテリ50の双方をモータ20の電源として接続し、駆動回路51,52のスイッチングを制御することにより、要求に応じた応答性で電力を出力するよう、双方の電源から出力される電力を制御するものとしてもよい。
【0179】
ステップS240において、燃料電池の残燃料量FCLが所定の値F3よりも低い場合には、燃料電池60を電源として使用することを回避する。かかる場合には、使用可能な電源が存在しないことになる。従って、CPUはパワーアシストされた状態に相当する範囲までエンジン10の出力を増大する(ステップS270)。電源が使用できない場合にはパワーアシストの中止、即ち高トルクの出力を中止することも可能ではある。しかし、高トルクの出力を中止した場合には電源の状態によってアクセル操作に対する車両の応答が相違することになる。かかる相違は、運転者に操作上の多大な違和感を与えるため、好ましくない。本実施例では、電源のいかんに関わらず、ほぼ一定の応答性が得られるよう、エンジン10の出力を増大するものとしているのである。CPUは、以上の処理を繰り返し実行することでパワーアシストを実行する。
【0180】
図19はパワーアシスト制御処理における電源の切り替えの様子を示す説明図である。パワーアシストが要求された場合を例にとって、モータ出力、バッテリ出力および燃料電池出力の時間変化を示した。時刻c0において、パワーアシストの要求がなされたものとする。上記フローチャートのステップS230において、アクセル開度の変化率Δθが所定値Δθ1以上であると判断された場合に相当する。
【0181】
パワーアシストが要求されると、時刻c0以降に図示する通り、モータ20の出力が増大する。実際には、アクセルの踏み込み状態に応じてモータ20の出力は変動するが、ここでは一定値まで出力が増大するものとして示した。時刻c0の時点では、バッテリ50の電力が十分であったものとする。この時点では、燃料電池出力値は0のままである。
【0182】
時刻c1において、バッテリ50の残容量が値LO3よりも低くなったものとする。この時点で、燃料電池60の運転が開始され、図中に一点鎖線で示すように燃料電池から電力が出力される。なお、ステップS250で説明した通り、本実施例では、燃料電池60の電力によりバッテリ50を充電した上で、バッテリ50の電力でモータ20を駆動するものとしている。従って、時刻c1以降で燃料電池60の出力が増大した後もバッテリ50の出力はモータ20の出力に応じた値を維持する。バッテリ50から出力される電力は実質的には燃料電池60から出力されていることになる。
【0183】
時刻c7においてパワーアシスト要求が終了したものとする。即ち、アクセル開度の変化率Δθが所定の値θ1よりも低くなったものとする。この結果、エンジン走行に移行するため、モータ20の出力は値0に低下する。これに伴い、バッテリ50の出力および燃料電池60の出力も低下する。なお、図中に実線で示した通り、バッテリ50の残容量SOCが十分高い場合には、燃料電池の出力は値0で維持される。
【0184】
ここで、上述の処理で用いられたF3(ステップS240)の設定について説明する。所定の値F3は燃料電池60を電源として使用するか否かの基準となる値であり、値0以上の範囲で任意に設定可能である。値0に設定すれば、燃料が残っている限り、燃料電池60を電源として使用することになる。EV走行制御処理における値F1と同様、本実施例では、他の運転モードを考慮して、正の所定値に設定した。パワーアシスト制御処理では燃料電池を用いる必要性が低いと考えられるため、本実施例では、パワーアシスト制御処理で用いる値F3は、EV走行制御処理における値F1よりも高い値に設定した。
【0185】
次に、上述の処理で用いられたLO3(ステップS230)の設定について説明する。所定の値LO3はステップS230で説明した通り、バッテリ50を電源として使用するか否かの基準となる値である。所定の値LO3については、値0以上の範囲で任意に設定可能である。値0に設定すれば、バッテリ50に電力が残っている限り、バッテリ50を電源として使用することになる。但し、基準値LO3を極端に低い値に設定すると、燃料電池60での発電に切り替えられた直後の車両の応答性が低下する可能性がある。モータ20でパワーアシストを行う際には、比較的高い電力が要求される。基準値LO3を極端に小さい値に設定した場合には、燃料電池60での電力の立ち上がり遅れを補償して十分な電力をモータ20に供給できなくなる可能性がある。本実施例では、かかる点を考慮して、基準値LO3をEV走行制御における基準値LO1よりも高い値に設定した。
【0186】
以上で説明したパワーアシスト制御処理によれば、エンジン走行領域においてバッテリ50と燃料電池60とを使い分けてモータ20を駆動し、パワーアシストを行うことができる。この際、バッテリ50を燃料電池60よりも電源として優先的に使用することにより、一過性の電源である燃料電池の使用を抑制することができる。従って、上記処理によれば、幅広い運転状態で、電源を適切に使用することができる。また、バッテリ50の電力を積極的に使用することで、回生制動時に充電するための余裕を確保しやすくなり、車両のエネルギ効率を向上することもできる。
【0187】
さらに、上述のパワーアシスト制御処理によれば、バッテリ50の充電量が低くなった場合、燃料電池60のみを電源とするのでなく、バッテリ50と燃料電池60とを併用する。両者を併用することにより、燃料電池60における低応答性をバッテリ50で補償することができ、運転者の要求に応じた高い応答性でモータ20の駆動を実現することができる。
【0188】
また、上述のパワーアシスト制御処理では、燃料電池用の残燃料量が所定値F3よりも低くなった場合には、エンジン10の出力を増加する。かかる処理を行うことにより、電源の有無による運転者への違和感を抑制することができる。また、電源が使用できない場合に、補機駆動用モータ80を用いた発電およびバッテリ50の充電は実行しない。こうすることにより、電源が使用できない場合でも、エンジン10から十分なトルクを出力することができる。また、エンジン10の動力を直接車軸に出力することにより、エンジン10から出力される動力を一旦電力に置換した上で、モータ20により再び動力に変換して出力する場合に比べて高効率での運転が可能となる。
【0189】
A6.停車・減速制御処理:
図20は停車・減速制御処理ルーチンのフローチャートである。停車・減速制御処理ルーチンとは、車両が停車または減速中において、燃料電池60を適切な運転状態に制御する処理である。この処理も、制御ユニット70内のCPUが所定の時間間隔で周期的に実行する処理である。この処理が開始されると、CPUは車両の運転状態を入力する(ステップS310)。図7で示した種々のセンサからの入力がなされるが、特に、シフトポジション、車速、アクセル開度、フットブレーキ、サイドブレーキ、燃料電池温度、エンジン温度が以後の処理に関与する。
【0190】
次に、CPUは停車・減速中であるか否かを判定する(ステップS320)。停車・減速中であるか否かは種々の条件によって判断される。本実施例では、以下の諸条件のうち少なくとも一つが満足されることにより、停車・減速中であるものと判断している。つまり、「シフトポジションがNまたはPポジションであること」、「フットブレーキまたはサイドブレーキがオンになっていること」、「アクセル開度が全閉状態であること」、「車速が低減していること」、「車速がほぼ値0とみなせる範囲であること」の諸条件である。
【0191】
これらの条件を全て満足していない場合には、車両は定常走行中または加速中であると判断される。従って、CPUは燃料電池60の運転状態を発電対応モードに設定し(ステップS370)、停車・減速制御処理ルーチンを終了する。発電対応モードとは、燃料電池60に発電要求があった場合に速やかに発電を開始できるよう、予め一定の電力を発電しておく運転モードをいう。発電対応モードで出力すべき電力は、燃料電池60に発電が要求された後、燃料電池の特性、実際に電力が出力されるまでの立ち上がり遅れとして許容される時間、燃料電池用の燃料量などに応じてそれぞれ適切な値を設定することができる。本実施例のハイブリッド車両では、既に説明した通り、それぞれの運転制御処理において、燃料電池60を必ずしも使用するとは限らないため、ステップS370を省略することもできる。
【0192】
ステップS320において、停車・減速中であると判定された場合、CPUは次に燃料電池の暖機が必要であるか否かを判定する(ステップS330)。燃料電池の温度が低い場合には、発電するまでに長時間を要する。かかる状態では、燃料電池60を走行中に十分活用することができない。従って、ステップS330において、燃料電池60の温度が所定以下であり、暖機が必要であると判定された場合には、燃料電池60の電力の立ち上がり遅れが所定の範囲に入るよう、燃料電池60の暖機処理を実行する(ステップS350)。具体的には燃料電池60を一旦フル発電モードに設定して運転を行う。なお、ここで出力される電力は、バッテリ50の充電や車両に搭載された種々の電力機器の稼働に使用することができる。
【0193】
ステップS330において燃料電池の暖機が必要ないと判断された場合、CPUは次にエンジン10の暖機が必要であるか否かを判定する(ステップS340)。暖機の必要性は、エンジン10の水温が所定の温度以上であるか否かによって判断される。エンジン10の暖機が必要であると判断された場合には、エンジン10の暖機を行う。通常の車両では、エンジン10を所定のアイドル回転数で運転することにより暖機を行う。一般にかかる暖機方法は、燃費を低下させるとともにエミッションを排出し環境面でも好ましくない。本実施例では、エンジン10をモータ20でモータリングさせ、エンジン10のシリンダで生じる摩擦およびポンピングによる発熱を利用してエンジン10の暖機を行う。このためには、モータ20を駆動する電力が必要である。従って、CPUはステップS340においてエンジン10の暖機が必要であると判断した場合には、電源確保のため、燃料電池をフル発電モードで駆動する(ステップS350)。
【0194】
一方、ステップS340においてエンジン10の暖機が必要でないと判断された場合は、しばらくの間は、電力が要求されないと判断される。従って、CPUは燃料電池60をスタンバイモードで運転する(ステップS360)。スタンバイモードとは、発電対応モード(ステップS370)と同様、所定の電力を出力するように燃料電池を運転するモードであるが、出力される電力を非常に小さい値に抑制したモードをいう。即ち、燃料電池用の燃料の消費を抑制しつつ、燃料電池60の温度が低下し再び暖機が必要となることを防止する程度の電力を出力するよう運転する。具体的な電力は、燃料電池60の特性を考慮して、設定することができる。
【0195】
なお、上記フローチャートでは、ステップS360において燃料電池60をスタンバイモードで運転するものとして例示した。これに対し、ステップS360において、バッテリ50の残容量に応じて、燃料電池60をスタンバイモードで運転する場合と運転を停止する場合とを使い分けるものとしてもよい。即ち、バッテリ50の残容量が所定値以上である場合には、燃料電池60の電力が早急に必要とされる可能性が低いため、ステップS360において燃料電池を停止することができる。バッテリ50の残容量が所定値よりも低い場合には、燃料電池60の電力が早急に必要とされる可能性があるため、ステップS360において燃料電池をスタンバイモードで運転する。かかる使い分けの様子を以下に具体的に示す。
【0196】
図21は停車・減速制御処理における電源の切り替えの様子を示す明図である。ここでは、バッテリ50の残容量に応じて燃料電池の運転状態を切り替える場合を例示した。所定のアクセル開度で走行中にアクセルが全閉になった場合を例にとって、燃料電池出力、バッテリ出力およびアクセル開度の時間変化を示した。図中の実線はバッテリ50の残容量が所定値以上である場合に対応し、一点鎖線はバッテリ50の残容量が所定値よりも低い場合に対応する。
【0197】
時刻d0において、アクセルが全閉になったものとする。これにより、ステップS320において停車・減速中であるとの判断条件が満足されたものとする。燃料電池60およびエンジン10の暖機は必要ない状態にあるものとすると、先に示した制御処理に従って、ステップS360の処理が実行される。
【0198】
まず、バッテリ50の残容量が高い場合、即ち図中の実線で示した状態について説明する。バッテリ50の残容量が高い場合、既に種々の運転モードで説明した通り、バッテリ50が燃料電池60よりも優先的に使用されるから、時刻d0以前はバッテリ50の出力のみが所定値となっている。燃料電池60の出力は値0のままである。時刻d0において停車・減速中であるとの判断条件が満足されると、電力が要求されなくなるから、バッテリ50の出力は値0に低減する。一方、燃料電池60も電力を要求される可能性が低いため、ステップS360の処理として運転が停止される。従って、燃料電池60の出力は値0を維持する。
【0199】
時刻d1に至り、再びアクセルが踏み込まれると、ステップS340の停車・減速中であるとの判断条件が満足されなくなる。従って、ハイブリッド車両は、モータ20から動力を出力して走行する。バッテリ50の残容量が高い場合には、モータ20はバッテリ50を電源として駆動される。従って、図示する通り、時刻d1以降では、バッテリ出力が所定の値まで上昇する。燃料電池60の電力は使用されないため、値0を維持する。
【0200】
次にバッテリ50の残容量が低い場合について説明する。図中の一点鎖線に該当する。残容量が低いため、バッテリ50の電力は使用されない。時刻d0以前では、燃料電池60から所定の電力が出力され、バッテリ50の出力は値0となる。
【0201】
時刻d1においてアクセルが全閉となり、停車・減速中であると判断されると、先に示したフローチャート(図20)のステップS360の処理が実行される。バッテリ50の残容量が低い場合には、燃料電池60から電力を速やかに出力する必要が生じる可能性があるため、燃料電池60はスタンバイモードで運転される。即ち、燃料電池60は微少な電力を出力し続ける。バッテリ50の出力は値0が維持される。
【0202】
時刻d1において、再びアクセルが踏み込まれると、ハイブリッド車両はモータ20を駆動して走行する。モータ20は燃料電池60を電源として駆動される。従って、図示する通り、燃料電池60の出力は時刻d1以降で所定の値まで増加する。バッテリ50の電力は使用されないため、値0を維持する。燃料電池60は時刻d0〜d1の間でスタンバイモードで運転されているため、電力を比較的速やかに出力することができる。なお、ここでは、バッテリ50の電力を一切使用しない場合を例示した。これに対し、先に説明した種々の運転モードに準じて、燃料電池60から十分な電力が出力されるまでの過渡期において、残容量で許容される範囲でバッテリ50の電力を併用するものとしてもよい。
【0203】
以上で説明した停車・減速制御処理によれば、走行中など燃料電池60の電力が要求される可能性が高い場合には、発電対応モード(図20のステップS370)で運転することができる。この結果、燃料電池60の電力の立ち上がり遅れを短縮することができる。
【0204】
一方、上述の停車・減速制御処理では、燃料電池60の電力が要求される可能性が低い場合には、燃料電池60をスタンバイモードで運転する(図20のステップS360)。この結果、燃料電池用の燃料の浪費を回避できる。また、燃料電池60の運転状態をバッテリ50の残容量に応じて停止またはスタンバイモードで切り替えることもできる。こうすれば、さらに燃料電池用の燃料の浪費を回避することができる。
【0205】
図20のフローチャートでは、停車・減速中であると判断された場合に燃料電池60をスタンバイモードで運転する例を示した。上記制御処理は、燃料電池60の電力が要求され得る場合には速やかに対応可能な状態で燃料電池60を運転し、電力が要求される可能性が低い場合には燃料の消費を抑えた状態で燃料電池60を運転するものである。上述のフローチャートでは、電力が要求される可能性が低い場合の一例として停車・減速中を挙げたに過ぎない。かかる場合に限らず、出力する動力を増大する可能性が低いと予測される場合には同様の処理を適用することができる。
【0206】
例えば、ハイブリッド車両が走行する予定経路の交通情報を取得するシステムを搭載している場合には、かかる制御を停車・減速中に限らず走行中にまで実行することも可能である。近年では、人工衛星からの信号に基づき車両の位置を地図上で特定するとともに、外部から送信される交通情報に基づき走行する予定経路が渋滞しているか否かを検知することが可能なシステムが提案されている。走行する予定経路が渋滞していると判断される場合には、ハイブリッド車両の動力を急激に増大する要求が生じる可能性は低い。従って、図20の処理のステップS320において、「予定経路が渋滞していること」という判定条件を加えるものとしてもよい。こうすれば、渋滞している場合には、燃料電池60をスタンバイモードで運転することができ、燃料の消費を抑制することができる。その他、予定経路が降坂路である場合など種々の条件に応じて、燃料電池60をスタンバイモードとすることができる。
【0207】
以上で説明した本実施例のハイブリッド車両によれば、それぞれの制御処理で説明した通り、バッテリ50および燃料電池60という2種類の電源を運転状態に応じて適切に使い分けることができる。また、モータ20およびエンジン10という2種類の動力源を適切に使い分けることができる。この結果、燃費および環境性に優れた運転を実現することができる。
【0208】
A7.第1変形例:
上述の実施例では、エンジン10とモータ20とを動力源として選択的に使用する場合を例示した。両者を共に駆動するのは、アクセルが急激に踏み込まれた場合に実行するパワーアシスト制御処理(図18)のみであった。これに対し、予めアクセル開度が所定以上の場合にはエンジン10とモータ20とを共に駆動するよう制御することも可能である。かかる場合の制御処理を第1変形例として説明する。
【0209】
第1変形例では、動力源および変速段の関係につき、図8〜図11で示したマップと異なる設定のマップを使用する。図22は第1変形例について変速段の切り替えの様子を示す説明図である。シフトポジションが、Dポジション、4ポジション、3ポジションの場合に対応するマップである。モータ20を動力源として走行するEV領域の設定および変速機100の変速段の設定は、図8の場合と同じである。第1変形例のマップでは、アクセル開度が高い所定の範囲でMGアシスト領域が設定されている点で、実施例のマップと相違する。MGアシスト領域とは、エンジン10およびモータ20の双方を駆動して高トルクを出力する領域をいう。実施例におけるパワーアシストに相当する運転状態である。第1変形例では、マップに予め設定されているため、アクセルが急激に踏み込まれているか否かに関わらず、所定以上の開度で踏み込まれた場合にMGアシスト運転が実行される。
【0210】
MGアシスト領域は、それぞれのシフトポジションで設定されている。図23は第1変形例について2ポジションにおける変速段の切り替えの様子を示す説明図である。MG領域および変速段の設定は、実施例の場合(図9)と同じである。第1変形例のマップでは、2ポジションにおいても、アクセル開度が高い所定の範囲でMGアシスト領域が設定されている。MGアシスト領域の設定は、Dポジション等(図22)の場合と同じに設定した。もちろん、シフトポジションに応じて異なる範囲に設定することも可能である。
【0211】
図24は第1変形例についてLポジションにおける変速段の切り替えの様子を示す説明図である。MG領域および変速段の設定は、実施例の場合(図10)と同じである。LポジションにおけるMGアシスト領域も、Dポジション等(図22)の場合と同じに設定した。図25は第1変形例についてRポジションにおける変速段の切り替えの様子を示す説明図である。MG領域および変速段の設定は、実施例の場合(図9)と同じである。第1変形例のマップでは、Rポジションにおいても、アクセル開度が高い所定の範囲でMGアシスト領域が設定されている。Rポジションでは高トルクが要求される可能性は低いため、RポジションではMGアシスト領域を設けない設定とすることも可能である。
【0212】
図26は第1変形例におけるパワーアシスト制御処理ルーチンのフローチャートである。図22〜図25中のMGアシスト領域において電源の使い分けおよび動力源の制御を行う処理である。この処理も、実施例と同様、制御ユニット70内のCPUが所定の時間間隔で周期的に実行する処理である。この処理が開始されると、CPUは車両の運転状態を入力する(ステップS410)。図7で示した種々のセンサからの入力がなされるが、特に、シフトポジション、車速、アクセル開度、バッテリ残容量SOC、燃料電池用の残燃料量FCLが以後の処理に関与する。
【0213】
次に、CPUはアクセル開度θが所定の値θL以上であるか否かを判定する(ステップS420)。所定の値θLは、シフトポジションに応じて設定された図22〜図25のマップ中のMGアシスト領域における下限のアクセル開度で一般に高トルクは登坂路や高速走行時などに要求される。かかる場合には、アクセル開度が大きくなる。第1変形例における図22〜図25のマップでは、かかる場合に高トルクが出力されるようにMGアシスト領域が設定されている。アクセル開度θが所定の値θLよりも小さい場合には、高トルクが要求されていないことを意味する。かかる場合には、さらにモータ20を駆動するパワーアシストは要求されない。従って、CPUは以後の処理を行わずにパワーアシスト制御処理ルーチンを終了する。
【0214】
ステップS420において、アクセル開度θが所定の値θL以上である場合には、MGアシスト領域に該当し、高トルクが要求されていると判断する。CPUは原則としてモータ20によるパワーアシストを実行する。CPUはモータ20を駆動するための電源として、バッテリ50と燃料電池60とを使い分けるための処理を行う。これら2つの電源の使い分けを行うために、CPUは、バッテリ50の残容量SOCが所定の値LO4以上であるか否かを判定する(ステップS430)。所定の値LO4の設定については後述する。
【0215】
残容量SOCが所定の値LO4以上である場合には、バッテリ50の充電状態が高いため、バッテリ50を電源として、モータ20を駆動するための処理を行う(ステップS450、S470)。まず、電源の切替スイッチ83を制御して、バッテリ50とモータ20とを接続する。また、モータ20の運転の可否を示すフラグをオンにするとともに、モータ20の目標運転状態、即ち目標回転数と目標トルクとを予め設定された値に特定する。目標回転数は、ステップS410で入力された車速に変速機100の変速比およびディファレンシャルギヤの変速比などを乗じることで特定される。目標トルクは、車速とアクセル開度の変化率とに応じて予め設定されたマップによって特定される。これらの目標運転状態が、別途用意された制御処理に受け渡されることにより、モータ20は該目標運転状態で運転される。なお、この場合、エンジン10は従前の状態での運転を継続する。
【0216】
ステップS430において、バッテリ50の残容量SOCが所定の値LO4よりも小さい場合には、充電状態が低いと判断し、バッテリ50の電力の使用を回避する。従って、CPUは燃料電池60が電源として使用可能であるか否かの判断を行う。この判断として、CPUは燃料電池用の残燃料量FCLが所定の値F4以上であるか否かを判断する(ステップS440)。所定の値F4の設定については後述する。残燃料量FCLが値F4以上である場合には、燃料電池60が電源として使用可能であると判断し、CPUは燃料電池60を電源として、モータ20を駆動するための処理を行う(ステップS460,S470)。まず、電源の切替スイッチ83を制御して、燃料電池60とモータ20とを接続する。また、モータ20の運転の可否を示すフラグをオンにするとともに、モータ20の目標運転状態、即ち目標回転数と目標トルクとを予め設定された値に特定する。目標運転状態の設定についてはバッテリ50を電源とする場合と同じである。また、この場合も、エンジン10は従前の状態での運転を継続する。
【0217】
ここで、第1変形例では、燃料電池60を直接電源として使用するものとして説明した。先に実施例で説明したパワーアシスト制御処理(図18)と同様、燃料電池60でバッテリ50を充電するものとしてもよい。第1変形例において燃料電池60を直接電源として使用するものとしたのは、モータ20の動力の変動が比較的緩やかであるためである。つまり、第1変形例のパワーアシスト処理は、予め設定された所定以上の開度でアクセルが踏み込まれている場合に実行される処理である。これは、定常的に高トルクが要求されている場合に相当する。かかる場合には、モータ20から定常的なトルクを出力してエンジン10をアシストすればよい。従って、燃料電池60の応答性が低い点が車両の応答性に与える影響は比較的低い。一方、燃料電池60の電力は、一旦バッテリ50に蓄えてからモータ20の駆動に使用するよりも、直接モータ20の駆動に使用した方が効率がよい。第1変形例では、車両の応答性と運転効率の双方に鑑み、燃料電池60の電力を直接モータ20の駆動に使用するものとした。
【0218】
ステップS440において、燃料電池の残燃料量FCLが所定の値F4よりも低い場合には、燃料電池60を電源として使用することを回避する。かかる場合には、使用可能な電源が存在しないことになる。従って、CPUはエンジン10から出力されるトルクを増大するための処理を行う。第1変形例では変速段を低速側に変速するものとした(ステップS480)。可能であれば、エンジン10の出力を増大するものとしてもよい。但し、第1変形例のパワーアシスト制御は、既にエンジン10から高い動力が出力されている状態で実行されるため、エンジン10の出力には余裕がない可能性が高い。第1変形例では、かかる観点から変速段の切り替えによって高トルクを出力させるものとした。電源を使用できない場合にかかる制御を行うのは、電源のいかんに関わらず、ほぼ一定の応答性が得られるようにするためである。CPUは、以上の処理を繰り返し実行することでパワーアシストを実行する。
【0219】
図27はパワーアシスト制御処理における電源の切り替えの様子を示す説明図である。エンジン走行中にアクセルが所定以上の開度で踏み込まれた場合を例にとって、モータ出力、バッテリ出力および燃料電池出力の時間変化を示した。時刻e0において、パワーアシストの要求がなされたものとする。上記フローチャートのステップS430において、アクセル開度θが所定値θL以上であると判断された場合に相当する。
【0220】
パワーアシストが要求されると、時刻e0以降に図示する通り、モータ20の出力が増大する。実際には、アクセルの踏み込み状態に応じてモータ20の出力は変動するが、ここでは一定値まで出力が増大するものとして示した。時刻e0の時点では、バッテリ50の電力が十分であったものとする。この時点では、燃料電池出力は値0のままである。
【0221】
時刻e2において、バッテリ50の残容量が値LO4よりも低くなったものとする。この時点で、燃料電池60の運転が開始され、図中に一点鎖線で示すように燃料電池から電力が出力される。燃料電池60の出力が増大するにつれて、バッテリ50の出力は低下する。時刻e3では、電源は完全に燃料電池60に切り替わる。バッテリ50の残容量が高い場合の様子を実線で示した。バッテリ50の出力はモータ20の動力に応じた値で維持され、燃料電池60の出力は値0で維持される。
【0222】
ここで、上述の処理で用いられたF4(ステップS440)の設定について説明する。所定の値F4は燃料電池60を電源として使用するか否かの基準となる値であり、値0以上の範囲で任意に設定可能である。値0に設定すれば、燃料が残っている限り、燃料電池60を電源として使用することになる。EV走行制御処理における値F4と同様、ここでは他の運転モードを考慮して、正の所定値に設定した。パワーアシスト制御処理では燃料電池を用いる必要性が低いと考えられるため、パワーアシスト制御処理で用いる値F4は、EV走行制御処理における値F1よりも高い値に設定した。
【0223】
次に、上述の処理で用いられたLO4(ステップS430)の設定について説明する。所定の値LO4はステップS430で説明した通り、バッテリ50を電源として使用するか否かの基準となる値である。所定の値LO4については、値0以上の範囲で任意に設定可能である。値0に設定すれば、バッテリ50に電力が残っている限り、バッテリ50を電源として使用することになる。但し、基準値LO4を極端に低い値に設定すると、燃料電池60での発電に切り替えられた直後の車両の応答性が低下する可能性がある。モータ20でパワーアシストを行う際には、比較的高い電力が要求される。基準値LO4を極端に小さい値に設定した場合には、燃料電池60での電力の立ち上がり遅れを補償して十分な電力をモータ20に供給できなくなる可能性がある。変形例では、かかる点を考慮して、基準値LO4をEV走行制御における基準値LO1よりも高い値に設定した。
【0224】
以上で説明したパワーアシスト制御処理によれば、エンジン走行領域においてバッテリ50と燃料電池60とを使い分けてモータ20を駆動し、パワーアシストを行うことができる。この際、バッテリ50を燃料電池60よりも電源として優先的に使用することにより、一過性の電源である燃料電池の使用を抑制することができる。従って、上記処理によれば、幅広い運転状態で、電源を適切に使用することができる。また、バッテリ50の電力を積極的に使用することで、回生制動時に充電するための余裕を確保しやすくなり、車両のエネルギ効率を向上することもできる。
【0225】
また、上述のパワーアシスト制御処理では、燃料電池用の残燃料量が所定値F4よりも低くなった場合には、エンジン10の出力を増加する。かかる処理を行うことにより、電源の有無による運転者への違和感を一定の範囲で抑制することができる。電源が使用できない場合に、補機駆動用モータ80を用いた発電およびバッテリ50の充電は実行しない。こうすることにより、電源が使用できない場合でも、エンジン10から十分なトルクを出力することができる。また、エンジン10の動力を直接車軸に出力することにより、エンジン10から出力される動力を一旦電力に置換した上で、モータ20により再び動力に変換して出力する場合に比べて高効率での運転が可能となる。
【0226】
A8.第2変形例:
上述の実施例および第1変形例では、アクセル操作に基づいてパワーアシスト制御処理を実行する場合を例示した。これに対し、スイッチにより、パワーアシスト制御を実行するか否かを、運転者が任意に選択できるように制御することも可能である。かかる場合の制御処理を第2変形例として説明する。
【0227】
第2変形例では、動力源および変速段の関係につき、2種類のマップを使用する。一つは図8〜図11に示した通常のマップである。もう一つは、パワーモードに対応したマップである。パワーモードとは、各車速およびアクセル開度で通常よりも高いトルクを出力するように設定された運転モードをいう。図8〜図111の各マップにおいて、低速側の変速段を使用する範囲をそれぞれ広げて設定されたマップがパワーモードに対応する。パワーモードでの運転は、運転者がシフトレバー近傍のスポーツモードスイッチ161がオンになった場合に実行される。第2変形例では、パワーモードがオンになった場合には、エンジン10の動力をモータ20でアシストするものとした。かかる場合における電源および動力源の使い分けについて説明する。なお、ここでは変速機100がスポーツモードで変速される場合にパワーモード制御処理を実行するものとしているが、この他、変速機100を運転者がマニュアルで切り替え可能な運転モードが選択された場合にパワーモード制御処理を実行するものとしてもよい。
【0228】
図28はパワーモード制御処理ルーチンのフローチャートである。スポーツモードスイッチ161がオンになった場合に電源の使い分けおよび動力源の制御を行う処理である。この処理も、実施例と同様、制御ユニット70内のCPUが所定の時間間隔で周期的に実行する処理である。この処理が開始されると、CPUは車両の運転状態を入力する(ステップS510)。図7で示した種々のセンサからの入力がなされるが、特に、シフトポジション、車速、アクセル開度、バッテリ残容量SOC、燃料電池用の残燃料量FCLが以後の処理に関与する。
【0229】
次に、CPUはパワーモードが選択されているか否かを判定する(ステップS520)。この判定は、スポーツモードスイッチ161がオンになっているか否かに基づいて行われる。パワーモードが選択されていない場合には、モータ20を駆動するパワーアシストは実行されない。従って、CPUは以後の処理を行わずにパワーモード制御処理ルーチンを終了する。
【0230】
ステップS520において、パワーモードが選択されていると判断された場合には、CPUはモータ20によるパワーアシストを実行する。このための処理として、CPUはモータ20を駆動する電源として、バッテリ50と燃料電池60とを使い分けるための処理を行う。これら2つの電源の使い分けを行うために、CPUは、バッテリ50の残容量SOCが所定の値LO5以上であるか否かを判定する(ステップS530)。所定の値LO5の設定については後述する。
【0231】
残容量SOCが所定の値LO5以上である場合には、バッテリ50の充電状態が高いため、バッテリ50を電源として、モータ20を駆動するための処理を行う(ステップS550、S570)。まず、電源の切替スイッチ83を制御して、バッテリ50とモータ20とを接続する。また、モータ20の運転の可否を示すフラグをオンにするとともに、モータ20の目標運転状態、即ち目標回転数と目標トルクとを予め設定された値に特定する。目標回転数は、ステップS510で入力された車速に変速機100の変速比およびディファレンシャルギヤの変速比などを乗じることで特定される。目標トルクは、車速とアクセル開度の変化率とに応じて予め設定されたマップによって特定される。これらの目標運転状態が、別途用意された制御処理に受け渡されることにより、モータ20は該目標運転状態で運転される。なお、この場合、エンジン10は従前の状態での運転を継続する。
【0232】
ステップS530において、バッテリ50の残容量SOCが所定の値LO5よりも小さい場合には、充電状態が低いと判断し、バッテリ50の電力の使用を回避する。従って、CPUは燃料電池60が電源として使用可能であるか否かの判断を行う。この判断として、CPUは燃料電池用の残燃料量FCLが所定の値F5以上であるか否かを判断する(ステップS540)。所定の値F5の設定については後述する。残燃料量FCLが値F5以上である場合には、燃料電池60が電源として使用可能であると判断し、CPUは燃料電池60を電源として、モータ20を駆動するための処理を行う(ステップS560,S570)。まず、電源の切替スイッチ83を制御して、燃料電池60とモータ20とを接続する。また、モータ20の運転の可否を示すフラグをオンにするとともに、モータ20の目標運転状態、即ち目標回転数と目標トルクとを予め設定された値に特定する。目標運転状態の設定についてはバッテリ50を電源とする場合と同じである。また、この場合も、エンジン10は従前の状態での運転を継続する。
【0233】
ステップS540において、燃料電池の残燃料量FCLが所定の値F5よりも低い場合には、燃料電池60を電源として使用することを回避する。かかる場合には、使用可能な電源が存在しないことになる。従って、CPUはパワーモードを解除する(ステップS580)。実施例および第1変形例のパワーアシスト処理(図18,図26)と異なり、エンジン10の出力を増大する処理を行わないのは、パワーモードが運転者の意志によって選択されたモードであることを考慮したものである。パワーアシストモード(図18、図26)は、アクセル操作に応じて運転者の意図に関わらず実行される運転モードである。従って、電源の有無に関わらず、一定の応答性を実現する必要がある。これに対し、パワーモードは運転者が任意に選択するモードである。従って、電源が使用できない場合には、パワーモードの選択が許可されない旨を運転者に報知することにより、違和感のない運転を実現することができる。第2変形例では、ステップS580でパワーモードを解除すると同時に、運転席正面の計器板のスポーツモードインジケータ222を点滅させることで、該モードの解除を報知する。もちろん、ステップS580においてエンジン10から出力されるトルクを増大する処理を実行するものとしても構わない。
【0234】
図29はパワーモード制御処理における電源の切り替えの様子を示す説明図である。走行中にスポーツモードスイッチ161が操作された場合を例にとって、燃料電池出力、バッテリ出力およびアクセル開度の時間変化を示した。時刻f0において、スポーツモードスイッチがオンにされ、パワーモードが設定されたものとする。パワーモードが設定されると燃料電池60は電力が要求される可能性があるため、スタンバイモードとして、図中の時刻f0以降に示すように少量の電力を出力する状態で運転される。
【0235】
時刻f1以降でアクセルが踏み込まれると、これに伴い、モータ20の要求出力が増大する。この時点でバッテリ50の残容量が高い場合には、モータ20に電力を供給するため、バッテリ50の出力も増大する。バッテリ50が電源として使用されるため、燃料電池60はスタンバイモードでの運転を維持する。
【0236】
時刻f4以降でもバッテリ50の残容量が高い場合には、図中の実線で示すようにバッテリ50の出力はアクセル開度に応じた値を維持し、燃料電池60はスタンバイモードでの運転を維持する。一方、時刻f4以降でバッテリ50の残容量が低くなった場合を一点鎖線で示した。バッテリ50の残容量が低下すると、電源は燃料電池60に切り替えられる。図示する通り、時刻f4以降で燃料電池60の出力が増大する。これに伴いバッテリ50の出力は値0まで低下する。
【0237】
ここで、上述の処理で用いられたF5(ステップS540)の設定について説明する。所定の値F5は燃料電池60を電源として使用するか否かの基準となる値であり、値0以上の範囲で任意に設定可能である。値0に設定すれば、燃料が残っている限り、燃料電池60を電源として使用することになる。EV走行制御処理における値F5と同様、ここでは他の運転モードを考慮して、正の所定値に設定した。パワーモード制御処理では燃料電池を用いる必要性が低いと考えられるため、パワーモード制御処理で用いる値F5は、EV走行制御処理における値F1よりも高い値に設定した。
【0238】
次に、上述の処理で用いられたLO5(ステップS530)の設定について説明する。所定の値LO5はステップS530で説明した通り、バッテリ50を電源として使用するか否かの基準となる値である。所定の値LO5については、値0以上の範囲で任意に設定可能である。値0に設定すれば、バッテリ50に電力が残っている限り、バッテリ50を電源として使用することになる。但し、基準値LO5を極端に低い値に設定すると、燃料電池60での発電に切り替えられた直後の車両の応答性が低下する可能性がある。モータ20でパワーアシストを行う際には、比較的高い電力が要求される。基準値LO5を極端に小さい値に設定した場合には、燃料電池60での電力の立ち上がり遅れを補償して十分な電力をモータ20に供給できなくなる可能性がある。変形例では、かかる点を考慮して、基準値LO5をEV走行制御における基準値LO1よりも高い値に設定した。
【0239】
以上で説明したパワーモード制御処理によれば、エンジン走行領域において運転者の意志に応じて、バッテリ50と燃料電池60とを使い分けてモータ20を駆動し、パワーアシストを行うことができる。図30はパワーモードにおいて出力される動力の様子を示す説明図である。図示する通り、アクセル開度に応じてエンジン10からのトルクに上乗せして、モータ20のトルクが出力される。駆動軸には図中の実線で示したトルクが出力されることになる。実施例および第1変形例で示したパワーアシストに対し、全アクセル開度においてモータ20からのトルクが上乗せされる点が相違する。このようにモータ20からのトルクを付加することにより、運転者の意志に応じて加速性を向上することができ、ハイブリッド車両の操作性を高めることができる。
【0240】
また、パワーアシストをする際、バッテリ50を燃料電池60よりも電源として優先的に使用することにより、一過性の電源である燃料電池の使用を抑制することができる。従って、上記処理によれば、他の運転モードにおける燃料電池60の使用を確保することができ、幅広い運転状態で、電源を適切に使用することができる。また、バッテリ50の電力を積極的に使用することで、回生制動時に充電するための余裕を確保しやすくなり、車両のエネルギ効率を向上することもできる。
【0241】
また、上述のパワーモード制御処理では、燃料電池用の残燃料量が所定値F5よりも低くなった場合には、パワーモードを解除する(ステップS580)。また、これと同時にパワーモードの解除を運転者に報知する。かかる処理を行うことにより、動力の浪費を抑えて燃費を向上することができるとともに、運転者にとって違和感のない運転を実現することができる。電源が使用できない場合に、補機駆動用モータ80を用いた発電およびバッテリ50の充電は実行しない。こうすることにより、電源が使用できない場合でも、エンジン10から十分なトルクを出力することができる。また、エンジン10の動力を直接車軸に出力することにより、エンジン10から出力される動力を一旦電力に置換した上で、モータ20により再び動力に変換して出力する場合に比べて高効率での運転が可能となる。
【0242】
B.第2実施例:
次に、第2実施例としてのハイブリッド車両について説明する。第1実施例およびその変形例では、一の車軸にのみ動力を出力して走行するハイブリッド車両を例示した。本発明はかかる場合に限らず、二の車軸に動力を出力して走行するハイブリッド車両、いわゆる四輪駆動するハイブリッド車両に適用することもできる。四輪駆動するハイブリッド車両に適用した場合を第2実施例として以下に示す。
【0243】
図31は第2実施例のハイブリッド車両の概略構成を示す説明図である。第2実施例では2つの車軸17、17Aの双方に動力を出力可能な構成になっている点で第1実施例と相違する。第2実施例では、車軸17Aへの動力の出力を運転者が任意に操作することができるものとした。つまり、シフトレバー160近傍に図5で示したスポーツモードスイッチ163に代えて四輪駆動を指定するための4WDモードスイッチを設け、該スイッチがオンになった場合のみ車軸17,17Aの双方に動力が出力されるものとした。4WDモードスイッチがオフの場合には第1実施例の車両と同様、車軸17にのみ動力が出力される。もちろん、かかる構成は必須ではなく、車軸17、17Aの双方に常時動力が出力される構成とすることも可能である。
【0244】
車軸17に動力を出力するための構成は、第1実施例と同じである。即ち、エンジン10、モータ20、トルクコンバータ30および変速機100が直列に結合された構成となっている。モータ20への電力は第1実施例と同様、バッテリ50および燃料電池60のそれぞれから供給可能となっている。
【0245】
車軸17Aに動力を出力するための構成は次の通りである。車軸17Aにはディファレンシャルギヤ16Aを介してモータ20Aが結合されている。モータ20Aはモータ20と同様、三相同期モータである。モータ20Aにはバッテリ50、燃料電池60および補機駆動用モータ80の3種類から電力を供給することができる。バッテリ50および燃料電池60の電力は、それぞれ駆動回路51A,52Aを介してモータ20Aに供給される。駆動回路51A,52Aは駆動回路51,52と同様、トランジスタインバータで構成されている。補機駆動用モータ80はエンジン10の動力によって発電することができる。モータ20Aには補機駆動用モータ80で発電された電力を直接供給することが可能となっている。
【0246】
モータ20Aに電力を供給する電源は、切替スイッチ85,86の接続状態により切り替えることができる。図示する通り、切替スイッチ86を切り替えることにより、バッテリ50および燃料電池60側と補機駆動用モータ80側との間で電源を切り替えることができる。切替スイッチ85を切り替えることにより、バッテリ50と燃料電池60との間で電源を切り替えることができる。
【0247】
なお、車軸17、17Aはいずれを前車軸および後車軸としても構わない。エンジン10が車両の前方に搭載されている場合、車軸17側を後車軸として構成すれば、エンジン10からの機械的な動力を車体を縦断して後車軸に伝達するためのプロペラシャフトが必要となる。これに対し、車軸17A側を後車軸として構成すれば、プロペラシャフトが不要となる。従って、エンジン10と車軸17とを近接させる構成を採ることにより、動力系統の構成を比較的簡易なものにすることができる利点がある。
【0248】
第2実施例において、車軸17側の動力源および電源の使い分けに関しては、第1実施例で説明した種々の制御処理をそのまま適用することができる。ここでは、車軸17A側に動力を出力するモータ20Aの駆動に使用される電源の使い分けについて説明する。
【0249】
図32は四輪駆動制御処理ルーチンのフローチャートである。制御ユニット70内のCPUが所定の時間間隔で周期的に実行する処理である。この処理が開始されると、CPUは車両の運転状態を入力する(ステップS610)。図7で示した種々のセンサからの入力がなされるが、特に、4WDモードスイッチ、シフトポジション、車速、アクセル開度、バッテリ残容量SOC、燃料電池用の残燃料量FCLが以後の処理に関与する。
【0250】
次に、4WDモードが選択されているか否かを判定する(ステップS620)。この判定は、4WDモードスイッチのオン・オフに基づいてなされる。4WDモードが選択されていない場合には、モータ20Aは駆動しない。従って、かかる場合には、CPUは以後の処理を行わずに四輪駆動制御処理ルーチンを終了する。
【0251】
ステップS620において、4WDモードが選択されていると判断された場合には、CPUはモータ20Aの電源を使い分けるための処理を行う。先に説明した通り、モータ20Aには3種類の電源が存在する。これら3つの電源の使い分けを行うために、CPUは、バッテリ50の残容量SOCが所定の値LO6以上であるか否かを判定する(ステップS630)。所定の値LO6の設定については後述する。
【0252】
残容量SOCが所定の値LO6以上である場合には、バッテリ50の充電状態が高いため、バッテリ50を電源として、モータ20Aを駆動するための処理を行う(ステップS650)。まず、電源の切替スイッチ85,86を制御して、バッテリ50とモータ20Aとを接続する。また、モータ20Aの運転の可否を示すフラグをオンにするとともに、モータ20Aの目標運転状態、即ち目標回転数と目標トルクとを特定する。本実施例では、モータ20Aの運転自体は、別途用意されたルーチンで実行するものとしているため、ここでは、該ルーチンに受け渡すデータの設定を行うのである。目標回転数は、ステップS610で入力された車速に変速機100の変速比およびディファレンシャルギヤの変速比などを乗じることで特定される。目標トルクは、車速とアクセル開度とに応じて予め設定されたマップによって特定される。これらの目標運転状態が、別途用意された制御処理に受け渡されることにより、モータ20Aは該目標運転状態で運転される。
【0253】
ステップS630において、バッテリ50の残容量SOCが所定の値LO6よりも小さい場合には、充電状態が低いと判断し、バッテリ50の電力の使用を回避する。従って、CPUは燃料電池60が電源として使用可能であるか否かの判断を行う。この判断として、CPUは燃料電池用の残燃料量FCLが所定の値F6以上であるか否かを判断する(ステップS640)。所定の値F6の設定については後述する。残燃料量FCLが値F6以上である場合には、燃料電池60が電源として使用可能であると判断し、CPUは燃料電池60を電源として、モータ20Aを駆動するための処理を行う(ステップS660〜S680)。同時にモータ20Aの目標運転状態を設定する。モータ20Aの目標運転状態の設定方法は、ステップS650と同じである。
【0254】
燃料電池60を電源としてモータ20Aを駆動する場合には、燃料電池60の電力の立ち上がり遅れを考慮し、バッテリ50と燃料電池60とを徐々に切り替える制御を行っている。処理の内容自体は第1実施例とほぼ同等であるが、ここでは改めてフローチャートを示す。燃料電池60を電源とする場合、CPUは燃料電池60から十分な電力が出力されるまでの過渡期に該当するか否かを判定する(ステップS660)。この判定は、燃料電池60に対する電力の要求値と、実際に燃料電池60から出力される電力との偏差に基づいて行われる。この偏差が、所定の範囲よりも大きい場合には、過渡期と判断されるし、小さい場合には過渡期ではないと判断される。
【0255】
燃料電池60からの出力が過渡期に該当すると判断された場合には、CPUは燃料電池60およびバッテリ50の双方を電源としてモータ20Aを駆動する(ステップS670)。既に第1実施例でも説明した通り、要求電力と、実際に燃料電池60から出力される電力との偏差をバッテリ50からの電力で補償するのである。これに対し、燃料電池60の運転が過渡期でないと判断された場合には、燃料電池60から十分な電力が出力可能であるから、燃料電池60のみを電源としてモータ20Aを駆動する(ステップS680)。
【0256】
ステップS640において、燃料電池の残燃料量FCLが所定の値F6よりも低い場合には、燃料電池60を電源として使用することを回避する。かかる場合には、発電機、即ち補機駆動用モータ80を電源としてモータ20Aを駆動する(ステップS690)。このため、補機駆動用モータ80を回生すべき電力に応じた運転状態で運転する。負のトルクで運転が行われることになる。補機駆動用モータ80はエンジン10の動力で駆動されるから、同時にエンジン10の要求動力を増大する。CPUは、以上の処理を繰り返し実行することで4WDモードでの運転を制御する。
【0257】
図33は四輪駆動制御処理における各動力源および電源の出力の変化を示す説明図である。走行中に4WDモードが指定された場合を例にとって、モータ出力、バッテリ出力、燃料電池出力および発電機出力の時間変化を示した。時刻g0において、4WDモードが選択されたとする。また、この時点では、バッテリ50の残容量SOCがLO6以上残っているものとする。かかる状態では、バッテリ50を電源としてモータ20Aの駆動が行われるから、時刻g0以降で、モータ出力およびバッテリ出力が所定の状態まで上昇する。燃料電池60および発電機は使用されないため、出力は値0のままである。
【0258】
時刻g1に達した時点で、バッテリ50の残容量が所定の値LO6よりも低くなったとする。この場合には、バッテリ50から燃料電池60に電源を切り替えてモータ20Aが駆動される。燃料電池60は時刻g1から運転が開始されるが、電力の立ち上がりは比較的遅く、十分な電力を出力するのは時刻g2に至ってからである。時刻g1〜g2の区間が過渡期となる。過渡期では、燃料電池60の電力の不足を補償するようにバッテリ50の電力が使用される。従って、図示する通り、時刻g1〜g2の区間で燃料電池60の出力が徐々に増大するとともに、バッテリ50の電力は徐々に低減する。時刻g2に至った後は、燃料電池60のみを電源としてモータ20Aが駆動される。
【0259】
時刻g4において燃料電池用の残燃料量が所定の値F6よりも低くなったものとする。かかる状態では、電源を燃料電池60から発電機に切り替えてモータ20Aを駆動する。図示する通り、時刻g4からg5にかけて燃料電池60の電力が低下するとともに、発電機の出力が増加する。時刻g5以降では、発電機のみを電源としてモータ20Aが駆動される。なお、ここで示したのは、一例に過ぎず、モータ20Aを動力源とする四輪駆動中にモータ出力が変動する場合など、各出力は種々の態様で変化し得ることは言うまでもない。
【0260】
ここで、上述の処理で用いられたF6(ステップS640)の設定について説明する。所定の値F6はステップS640で説明した通り、燃料電池60を電源として使用するか否かの基準となる値である。所定の値F6については、値0以上の範囲で任意に設定可能である。値0に設定すれば、燃料が残っている限り、燃料電池60を電源として使用することになる。本実施例では、他の運転モードを考慮して、正の所定値に設定した。また、4WDモードは運転者が任意に選択するモードであることから、このモードで燃料電池60の電力によりモータ20Aを駆動する必要性は比較的低いと考え、基準値F6は他の制御処理における基準値よりも高い値に設定した。
【0261】
次に、上述の処理で用いられたLO6(ステップS630)の設定について説明する。所定の値LO6はステップS630で説明した通り、バッテリ50を電源として使用するか否かの基準となる値である。所定の値LO6については、値0以上の範囲で任意に設定可能である。値0に設定すれば、バッテリ50に電力が残っている限り、バッテリ50を電源として使用することになる。本実施例では、燃料電池60を電源として使用する場合の過渡的な状態を考慮して所定値LO6を設定した。つまり、燃料電池60から十分な電力が出力されるまでの過渡期において、燃料電池60の電力を補償し得る電力をバッテリ50から十分に出力できるように所定の値LO6を設定した。
【0262】
以上で説明した四輪駆動制御処理によれば、4WDモードが選択された場合においてバッテリ50、燃料電池60および発電機の3種類の電源を使い分けて四輪駆動することができる。バッテリ50、燃料電池60、発電機の優先順序で電源を使用する。
【0263】
バッテリ50の電力は走行中に充電することで、消費前の状態に復元可能である。上記制御処理によれば、このように可逆的な電源を積極的に使用することにより、一過性の電源である燃料電池の使用を抑制することができる。換言すれば、燃料電池の使用が望まれる運転状態に備えて燃料を確保しておくことができる。従って、上記処理によれば、幅広い運転状態で、電源を適切に使用することができる。従って、運転効率および環境性に優れる動力源を十分に活用することが可能となる。また、バッテリ50の電力を積極的に使用することにより、回生制動時に得られた電力をバッテリ50に充電しやすくなる。従って、ハイブリッド車両の運転効率を向上することができる。
【0264】
また、上述の制御によれば、燃料電池60を発電機よりも優先して使用する。発電機の電力を使用する際には、エンジン10の出力増大が必要であり、燃費および環境性の不利益を伴う。上記制御処理では、燃料電池60を優先的に使用することにより、かかる弊害を回避することができる。
【0265】
以上で説明した第2実施例のハイブリッド車両は、上述の制御および第1実施例で説明した種々の制御を実行することにより、複数の電源および動力源を適切に使い分けることができる。従って、燃費を抑制するとともに環境性に優れた運転を実現することができる。
【0266】
C.第3実施例:
C1:装置の構成:
第1実施例、第2実施例では、エンジンの動力を駆動軸に直接伝達可能な構成のハイブリッド車両を例示した。本発明は、エンジンの動力を発電のみに利用する態様で構成することも可能である。かかる場合のハイブリッド車両を第3実施例として以下に説明する。
【0267】
図34は第3実施例としてのハイブリッド車両の概略構成を示す説明図である。このハイブリッド車両では、機械的な動力を出力する動力源としてエンジン224、モータ226を備える。モータ226の電源として燃料電池260、バッテリ250を備え、これらはそれぞれ駆動回路252,251を介してモータ226に結合されている。これらの各要素の構成は、それぞれ第1実施例におけるエンジン10、モータ20、燃料電池60,バッテリ50、駆動回路52,51と同じである。但し、第3実施例では、後述する通り、エンジン224を補助的な動力源として活用するため、排気量50cc程度の比較的小型なエンジンを搭載した。
【0268】
エンジン224の出力軸は、発電機280に結合されており、その動力を直接車軸217に伝達することはできない。エンジン224から出力された動力は、発電機280で電力に変換され、バッテリ250の充電およびモータ226の駆動に使用される。この意味で、モータ226は、燃料電池260、バッテリ250に加えてエンジン224および発電機280のユニットを第3の電源として備えることになる。これらの電源の使い分けは切替スイッチ284、駆動回路252,251の作動によって制御される。
【0269】
モータ226は変速機構となるプラネタリギヤ230、無段変速機(以下、CVTと呼ぶ)180、ディファレンシャルギヤ216を介して車軸217に結合されている。プラネタリギヤ230との結合状態は次の通りである。モータ226のロータはプラネタリギヤ230のサンギヤ231に結合されている。また、クラッチ240を介してプラネタリキャリア232にも結合されている。プラネタリキャリア232は、CVT180の入力側のプーリ181a,181bに結合されており、プラネタリギヤ230の出力軸として機能する。リングギヤ233には、その回転を制止可能なブレーキ241が備えられている。クラッチ240を係合し、ブレーキ241を解放すると、モータ226のロータはCVT180に直結された状態となる。クラッチ240を解放し、ブレーキ241を係合すると、第1実施例で説明したプラネタリギヤ230の作用に基づき、モータ226の動力はプラネタリギヤ230のギヤ比に応じて回転数が減速されてCVT180に伝達される。
【0270】
CVT180は、入力側のプーリ181a,181bと出力側のプーリ182a,182bの間にベルト183を架けた構造をなしている。入力側のプーリ181a,181bおよび出力側のプーリ182a,182bはそれぞれ油圧により軸方向の間隔が可変に構成されている。プーリの間隔を変更すると、ベルト183がプーリに架かる部位の有効半径が変わるため、無段階に変速して動力を伝達することができる。第3実施例のハイブリッド車両は、このようにクラッチ240,241およびCVT180の動作を制御することで、幅広い範囲でモータ226の出力トルクを変速して車軸217に出力する。これらの動作は、第1実施例と同様、制御ユニット270により種々のマップに従って制御される。
【0271】
C2.EV走行制御処理ルーチン:
第3実施例では、モータ226の電源としてバッテリ250,燃料電池260、発電機280の3種類を備える。これらの使い分けは、以下に示すEV走行制御処理に従って制御される。図35は第3実施例におけるEV走行制御処理ルーチンのフローチャートである。制御ユニット270のCPUが繰り返し実行する処理である点は第1実施例、第2実施例と同様である。また、電源の使い分けに関する基本的な考え方も、第1実施例と同様である。バッテリ250、燃料電池260、発電機280の優先順位で電源を使用する。つまり、バッテリ250の残容量が不足した場合に、燃料電池260での発電を行い、更に燃料電池260が燃料不足などの理由により発電不能である場合に発電機280を使用するのである。この意味で、エンジン224および発電機280は補助的な電源といえる。
【0272】
かかる制御を実現するために、EV走行制御処理が開始されると、第1実施例における処理(図12参照)と同様、CPUは車両の運転状態を入力し(ステップS700)、バッテリ250の残容量SOCが所定の値LO1以上である場合には、バッテリ250を電源としてモータ226を駆動する(ステップS702,S706)。バッテリ250の残容量SOCがLO1に満たない場合において、FC燃料の残量が値F1以上である場合には、燃料電池を電源とする(ステップS704,S710)。FC燃料の残量が少なく、燃料電池を使用できない場合には、エンジン224を駆動して発電機280で発電し電源とする(ステップS708)。これらの処理における値LO1,F1などの設定方法は、第1実施例と同様である。
【0273】
C3.燃料電池起動処理ルーチン:
第3実施例では、EV走行制御処理ルーチンにおいて、燃料電池260が電源として選択された場合において、燃料電池260が暖機前である等の理由により十分な電力を供給できない状態にある場合には、燃料電池起動処理として、バッテリ250および発電機280の電力で不足分の電力を補償する処理を行う。
【0274】
図36は第3実施例における燃料電池起動処理ルーチンのフローチャートである。EV走行制御処理ルーチンのステップS710で燃料電池260の発電要求が出された場合に実行される。なお、ステップS710で発電要求が出された場合に必ず実行するものとしてもよいし、燃料電池260が暖機前の冷間時にのみ実行するものとしてもよい。
【0275】
燃料電池起動処理ルーチンでは、CPUはまず燃料電池260がスタンバイ状態にあるか否かを判定する(ステップS712)。ここでは、燃料電池260の温度が発電可能な程度に高いか否かで判断する。スタンバイ状態にある場合には、直ちに発電可能であるため、その他の処理を行うことなく、燃料電池260による電力の出力を開始する(ステップS750)。
【0276】
燃料電池260がスタンバイ状態にない場合には、発電可能に燃料電池260が暖機されるまで、以下に示す通り、バッテリ250および発電機280を用いて電力を補償する処理を実行する。まず、燃料電池260が発電を開始する状態に至るまでに必要な消費電力Estを予測する(ステップS714)。消費電力Estには、モータ226を駆動して車両を走行するために必要な電力の他、空調機器や照明機器などで消費される電力が含まれる。また、ヒータに通電して燃料電池260の暖機を行う場合には、その電力も含まれる。
【0277】
本実施例では、消費電力Estは燃料電池260の温度に基づくマップで求めるものとした。図37は消費電力Estを与えるマップを示す説明図である。上段には、燃料電池260の温度に基づいて運転開始までの所要時間を与えるマップを示した。図中に破線で示す通り、燃料電池260の温度がTfcである場合には、このマップを参照することにより、所要時間がtstと求められる。当然、燃料電池260の温度が高くなるほど所要時間は短くなる。なお、ここでは、温度と所要時間が直線的に変化する場合を例示したが、このマップは燃料電池260の構成に応じて実験、解析などによって設定可能であり、曲線的に設定されることもあり得る。
【0278】
図37の下段には、所要時間と消費電力量との関係を与えるマップを示した。本実施例では、空調機器(A/C)、照明機器(H/L)のオン・オフに応じて3通りのマップを使い分けるものとした。「CASE A」は空調機器、照明機器の双方がオンの場合である。「CASE B」は照明機器のみがオンの場合である。「CASE C」は空調機器のみがオンの場合である。図中に破線で示す通り、所要時間がtstの場合は、各ケースに対して消費電力量をEa,Eb,Ecとそれぞれ求めることができる。ここでは、3つのケースについてマップを用意しているが、空調機器、照明機器以外の電力機器のオン・オフに応じて更に多数のマップを用意するものとしてもよい。曲線的に設定されたマップを用いることも可能である。通常は、消費電力量は所要時間に比例するから、マップを用いるまでなく演算で求めるものとしてもよい。なお、消費電力量はモータ226が出力すべきトルクなど車両の走行状態に応じて変動するが、本実施例では、各ケースごとに想定される最大値を設定した。
【0279】
図36の制御処理について引き続き説明する。上述の処理によって消費電力量Estが設定されると、CPUは次にバッテリ250から出力可能な電力量Ebtを算出する(ステップS716)。出力可能な電力量Ebtは、バッテリ250の残容量から求めることができる。
【0280】
次に、CPUは消費電力量Estとバッテリ250が出力可能な電力量Ebtとを比較する(ステップS718)。消費電力量Estが電力量Ebtよりも大きい場合には、バッテリ250のみで電力を補償できないと判断してエンジン224を運転するとともに発電機280による発電を行い(ステップS722)、バッテリ250および発電機280の双方から要求電力を出力する(ステップS750)。消費電力量Estが電力量Ebt以下の場合にはバッテリ250で電力を補償可能と判断し、エンジン224の運転および発電機280による発電を停止して(ステップS720)、バッテリ250から要求電力を出力する(ステップS750)。
【0281】
第3実施例で示した燃料電池起動制御処理による利点を具体例で説明する。図38は燃料電池を起動する際のバッテリ250の残容量の推移を示す説明図である。燃料電池260の発電要求が出されてから、発電可能な状態になるまでの所要時間をtstとする。また、発電要求が出された時点でのバッテリ250の残容量をSoc1とする。
【0282】
燃料電池260の応答遅れをバッテリ250の電力のみによって補償する場合の残容量の変化を図中に実線で示した。ハイブリッド車両の走行状態、バッテリ250の残容量Soc1の値にも依るが、常にバッテリ250で補償するものとすれば、実線で示すように燃料電池260が運転を開始するまでにバッテリ250の電力を完全に消費してしまう可能性がある。かかる可能性を回避するためには、初期のバッテリ残容量Soc1を非常に高い値にしておく必要がある。これは、EV走行制御処理ルーチンのステップS702における値LO1を高くすることにつながる。この結果、バッテリ250の電力をわずかに消耗した時点で電源が燃料電池260に切り替えられるから、燃料電池260の過度の使用を招くことにもなる。
【0283】
本実施例での制御処理を行った場合の様子を図38中に破線で示した。バッテリ250の初期の残容量Soc1だけでは、燃料電池260の運転開始まで電力を補償することができないと判断された場合には、エンジン224および発電機280の運転が行われる。従って、バッテリ250の残容量の低減を抑制することができ、電力を完全に消費する前に燃料電池260の運転を開始することができる。燃料電池260の運転が開始されれば、バッテリ250を充電することが可能となるから、残容量は徐々に増加する。
【0284】
ここで、エンジン224および発電機280を用いて電力の補償を行う場合のエンジン224の運転ポイントの設定方法について説明する。エンジン224の運転ポイントは、燃料電池260が運転を開始する時間tstまでの間にバッテリ250の電力が完全に消費されることを回避可能な動力を出力できるように設定する必要がある。かかる動力を出力しさえすれば、エンジン224の運転ポイントは任意に設定可能であり、図38中に一点鎖線で示すようにバッテリ250の電力消費を更に抑制できるように高い動力を出力するものとしてもよい。このように高い動力を出力しておけば、ある時刻tcにおいてエンジン224の運転を中断し、その後はバッテリ250のみで電力を補償することも可能となる。かかる制御は、図36の燃料電池起動処理を燃料電池の運転が開始されるまで所定のタイミングで繰り返し実行することにより、容易に実現することができる。エンジン224を早期に停止することができれば、その分、燃費および環境性を向上することができる場合もある。この他、エンジン224の運転ポイントは、バッテリ250の電力を一切消費しない動力を出力してもよいし、バッテリ250を充電可能な動力を出力するものとしてもよい。
【0285】
運転ポイントは、このように最低限の動力を出力しさえすれば、任意に設定可能であり、予め定めた一定の運転ポイントを選択することもできるが、本実施例では、以下に示す考え方に基づいて、運転効率を優先してエンジン224の運転ポイントを設定するものとした。図39はエンジンの運転ポイント設定処理ルーチンのフローチャートである。燃料電池起動処理(図36)のステップS722においてエンジン224の運転が指示された時に実行されるルーチンである。
【0286】
このルーチンが開始されると、CPUは、まず消費電力量Estおよび燃料電池の運転開始までの所要時間tstを入力し(ステップS730)、これらの値に基づき「Preq=Est/tst」なる演算式に従って、要求動力Preqを算出する(ステップS732)。要求動力Preqは、消費電力量Estをtstの時間で平均的に出力すると考えた場合の動力に相当する。種々の損失や消費電力量の変動などを考慮して、若干の余裕を見込んだ設定してもよい。
【0287】
こうして設定された要求動力Preqに基づいて、次の考え方に従ってエンジン224の運転ポイントを設定する。図40はエンジンの運転ポイントと運転効率との関係を示す説明図である。図中の曲線Bはエンジン224が運転可能な回転数、トルクの限界を示している。曲線α1,α2・・・α6は等運転効率線であり、この順に運転効率が低下する。曲線C1,C2,C3は、出力される動力、即ちエンジン224の「回転数×トルク」が一定の曲線である。エンジン224の運転効率は、回転数、トルクに応じて変化し、出力すべき動力C1,C2,C3を設定すると、それに応じて最も効率のよい運転ポイントA1,A2,A3が定まる。このように各動力に対して運転効率が最も高い点の集合が曲線Aである。この曲線Aを動作曲線と呼ぶ。
【0288】
図41は動作曲線上でエンジンを運転した場合の動力と運転効率との関係を示す説明図である。図示する通り、運転効率は、所定の動力Pthを出力する運転ポイントDP1で最大となり、動力がPthから外れるにつれて運転効率が徐々に低下する。この意味でPthは最適動力と言える。実際には、いくつかの極値が現れる場合もあるが、運転効率が最大となる最適動力Pthが存在する点に変わりはない。
【0289】
本実施例では運転効率を優先するため、基本的には、最適動力Pthをエンジン224の運転ポイントに設定する。従って、バッテリ250の不足分を補償するために最低限必要な要求動力Preqが図41中のC2のように最適動力Pthよりも低い場合には、エンジン224からはPch分だけ余剰に動力が出力されることになるから、この分、バッテリ250を充電することができる。要求動力Preqが最適動力Pthよりも低い場合には、要求動力に見合った運転ポイントDP2で運転するよりも、余剰の動力を出力しつつ運転ポイントDP1で運転した方が効率が高くなる。
【0290】
一方、最低限必要な要求動力Preqが図41中のC4のように最適動力Pthよりも高い場合には、運転ポイントDP1で運転したのではエンジン224から出力される動力が不足する。従って、エンジン224は運転効率が若干低下するものの要求動力に見合った運転ポイントDP3で運転する必要が生じる。この場合、バッテリ250の充電を図るために、更に余剰の動力Pchを出力しようとすれば、エンジン224の運転ポイントは図41中の運転ポイントDP4に移行するため、運転効率は更に低下する。従って、要求動力Preqが最適動力Pthよりも高い場合には、エンジン224は余剰の動力を出力することなく、要求動力Preqに見合った運転ポイントで運転することが好ましい。
【0291】
本実施例では、上述の考え方に基づいてエンジン224の運転ポイントを設定する。従って、図39に示す通り、CPUはエンジン224の要求動力Preqが最適動力Pthよりも高い場合には、最適動力Pthに対応する運転ポイントDP1を選択し(ステップS734,S736)、その他の場合には、動作曲線A上で要求動力Preqに見合った運転ポイントを選択する(ステップS738)。こうして設定された運転ポイントでエンジン224を運転することにより、効率よく電力の補償を行うことができる。
【0292】
以上で説明した第3実施例のハイブリッド車両によれば、燃料電池260に発電要求が出された場合に、バッテリ250と発電機280とを使い分けて、燃料電池260の発電の遅れを補償し、要求電力を安定して出力することができる。バッテリ250の電力が不足する場合には、発電機280で補償することができるため、より安定して電力を供給することが可能となる。また、電力を補償する際、発電機280よりもバッテリ250を優先的に使用することにより、燃費および環境性を向上することができる。
【0293】
D.その他の変形例:
以上で説明した種々の実施例および変形例に含まれる処理は、その一部を他の運転制御処理に適用するものとしても構わない。例えば、第1実施例の補機駆動制御処理(図16)では、バッテリ50の残容量が低下した場合にエンジン10で充電を行う処理を示した。かかる処理を他の運転制御処理で適用するものとしてもよい。第3実施例で示した燃料電池起動制御処理(図36)は、第1実施例および第2実施例に適用することも可能である。逆に、第1実施例、第2実施例で示した種々の処理を第3実施例のようにエンジンの動力を直接車軸に出力できないタイプのハイブリッド車両に適宜適用することも可能である。
【0294】
以上の実施例では、燃料電池60およびバッテリ50の双方を電源として搭載するハイブリッド車両を例示した。本発明は、燃料電池60のみを電源として搭載するハイブリッド車両に適用することも可能である。かかる場合の制御処理としては、上述した実施例においてバッテリ50の残容量を0とみなしたのと等価な制御処理を適用することができる。かかる構成のハイブリッド車両およびその制御処理でも、動力源の適切な使い分け、燃料電池の運転状態の適切な制御を実現することができる。なお、かかる構成のハイブリッド車両では、燃料電池の電力の立ち上がり時間の遅れを考慮して、走行に多大な影響を与えないように各制御に使用されるパラメータを設定することが望ましい。
【0295】
また、燃料電池の立ち上がり時間の遅れを補償するための付加的な要素を備えることも望ましい。例えば、実施例におけるバッテリ50に変えてキャパシタを備えるものとしてもよい。キャパシタは燃料電池の電力を過渡的に補償する目的で使用する。つまり、燃料電池からの電力や回生電力によって予めキャパシタに電力を蓄えておき、燃料電池の立ち上がり遅れが生じるときには、キャパシタからの放電によって不足分の電力を補償するのである。このような構成を採れば、バッテリ50を構成から省略した場合でも電力の極端な変動を抑制することができる。
【0296】
E.第4実施例:
第4実施例として、エンジンから出力される動力のトルクの変動を抑制する構成について説明する。第4実施例における車両の構成は、第1実施例と同じである(図1参照)。最初に、エンジンから出力される動力のトルク変動を抑制する制御の考えかたについて説明し、その後、具体的な処理内容を説明する。
【0297】
図42はトルク変動を抑制する制御の原理を示す説明図である。エンジン10から出力されるトルクの変動を、クランクシャフト12に結合されたモータ20で相殺する様子を示した。図示する通り、エンジン10から出力されるトルクは、目標トルク近傍で脈動することが多い。ここでは、実際に出力されるトルクとエンジン10が出力すべき目標トルクとの差分をトルク変動として図示した。実際に出力されるトルクは、目標トルクよりも大きくなる期間もあれば、小さくなる期間もある。なお、図42では、周期的にトルク変動が生じる状態を図示したが、更に不規則なトルク変動が生じる場合もある。
【0298】
モータ20では、エンジン10のトルク変動を相殺するトルク(以下、制振トルクと呼ぶ)を出力する。制振トルクは、エンジン10から出力される実トルクを補償して目標トルクを出力するためのトルクに相当し、トルク変動の位相を逆転したトルク、エンジン10の目標トルクから実トルクを引いたトルクに相当する。モータ20がエンジン10に直接結合されている場合には、制振トルクがモータ20の要求トルクとなる。モータ20が変速機構を介してエンジン10に結合されている場合には、変速機構の変速比を制振トルクに反映した値がモータ20の要求トルクとなる。
【0299】
エンジン10の実トルクが目標トルクよりも大きくなる期間では、制振トルクは負の値となり、モータ0は回生運転される(図中のハッチングを付した領域)。エンジン10の実トルクが目標トルクに満たない期間では、制振トルクは正の値となり、モータ20は力行される。
【0300】
図42の下段には、制振時にモータ20との電力のやりとりをバッテリ50で行ったと仮定した場合の充放電量の推移を模式的に示した。制振トルクが負となる期間では、モータ20が回生運転されるため、バッテリ50が充電される。この際、エンジン10から出力された余剰の動力を100%の効率で電力として回生することはできない。従って、現実の充電量は図中にハッチングを付した領域Eaに相当する値となり、本来の充電量よりも低くなる。一方、制振トルクが正となる期間では、モータ20を力行運転するため、バッテリ50の電力が消費される。この際、バッテリ50の電力を100%の効率で力行トルクに変換することはできない。従って、バッテリ50の現実の消費電力は図中にハッチングを付した領域Ebに相当する値となり、本来の消費量よりも大きくなる。このようにバッテリ50の充放電時の効率が100%に満たないことに起因して、バッテリ50の充電量は、制振制御に伴って徐々に低下する。モータ20の力行時に使用される電力は、バッテリ50への充電効率と、バッテリ50からの放電効率に起因する損失の双方を含んでおり、非効率的でもある。
【0301】
本実施例の制振制御は、このようにバッテリ50の充電量の低下を回避するとともに、制振制御時の効率向上のため、モータ20を回生運転する期間と、力行運転する期間とで電源の切り替えを行う。回生運転する際には、モータ20をバッテリ50に接続し、バッテリ50への充電を行う。力行運転する際には、モータ20を燃料電池60と接続し、燃料電池60から出力される電力を利用する。両者の切り替えは切替スイッチ84の制御によって行われる。このように電源の使い分けを行った場合、制振制御中には、バッテリ50は充電のみが行われるため、制振制御が長期間に亘って実行されると、バッテリ50が過充電となる可能性がある。本実施例では、かかる状態を回避するため、制振制御中の電源の切り替えを行うか否かを、バッテリ50の充電状態に応じて使い分けている。これらの制御は、次に示すフローチャートに従って実現される。
【0302】
E1.制振制御処理ルーチン:
図43は制振制御処理ルーチンのフローチャートである。制御ユニット70内のCPUが他の制御処理とともに繰り返し実行する処理である。この処理が開始されるとCPUは、シフトポジションを検出し、ニュートラル(N)ポジションまたはパーキング(P)ポジションであるか否かを判定する(ステップS800)。これらのポジションにある場合には、CPUは制振制御を中止する(ステップS810)。パーキングポジションは、停車中に使われるポジションであり、エンジン10にトルク変動が生じたとしても、車両の乗り心地に影響を与えるものではないからである。ニュートラルポジションは原則として停車中に使われるポジションであることに加え、エンジン10のトルク変動が車軸に伝達されないため、トルク変動は車両の乗り心地に影響を与えないからである。
【0303】
シフトポジションが、ニュートラル(N)およびパーキング(P)以外にあるときは、車両が運転中であることを意味する。つまり、走行している状態および信号待ちなど一時的な停車状態にあることを意味する。かかる場合には、次のFC燃料の残量が所定値以上である条件(ステップS802)、およびエンジンが駆動中である条件(ステップS806)の双方を満足する場合に、エンジン10からのトルク変動の制振制御を実行する。
【0304】
FC燃料の残量を検出し、その残量が任意に設定された所定値以上残っている条件(ステップS802)は、制振制御中にモータ20を力行するための電源として、燃料電池60を利用することによるものである。FC燃料が所定値に満たない場合、即ち、FC燃料に十分な余裕がないと判断される場合には、CPUは、エンジン10のアイドル回転数を増大する処理を行うとともに(ステップS804)、制振制御を中止する(ステップS810)。エンジン10のアイドル回転数を増大するのは、エンジン10のアイドル回転中に生じるトルク変動に起因して車両が共振するのを回避するためである。かかる観点から、ステップS804では、アイドル回転数の目標値を、車両の共振帯域を回避できる程度に増大する。
【0305】
エンジン10が駆動中であるという条件(ステップS806)は、エンジン10が停止中であれば制振制御の必要性がないからである。エンジン10が駆動中でないと判断された場合には、CPUは制振制御を中止する(ステップS810)。なお、制振制御を実行するか否かの条件判断(ステップS800,S802,S806)は、図43に示した順序に限らず、種々の順序または並行して行うものとして構わない。
【0306】
以上の条件判断により、制振制御を実行すると判断された場合、CPUはバッテリ50の充電状態に応じて制振制御時の電源の使い分けを行う。このため、CPUはバッテリ50の残量SOCを検出し、SOCと所定の値Mi%との大小を比較する(ステップS808)。所定の値Mi%はバッテリ50の過充電を回避できる範囲で任意に設定可能である。
【0307】
残量SOCが所定値Mi%に満たない場合には、CPUはモータ20の回生時にバッテリ50に電力を充電し、モータ20の力行時に燃料電池60を電源として使用する態様でモータ20の駆動を制御する(ステップS812)。残量SOCが所定値Mi%以上である場合、CPUはモータ20の回生時にバッテリ50に電力を充電するが、過充電を回避するため、モータ20の力行時の電源としてバッテリ50を使用する態様でモータ20の駆動を制御する(ステップS814)。なお、電源の使い分け制御の頻繁な切り替えを回避するため、ステップS808の判断にはヒステリシスを設けることが好ましい。
【0308】
モータ20の制御は、次の処理によって行われる。図44は制振制御におけるモータ制御処理ルーチンのフローチャートである。CPUはまず、エンジン10から実際に出力されている実トルクからエンジン10の目標トルクを引いた、トルク偏差ΔTを検出する(ステップS830)。次に、このトルク偏差ΔTを相殺するように、モータ20の目標トルクTmtを設定する(ステップS832)。第4実施例では、モータ20がクランクシャフト12に直結されているため、目標トルクTmtは「−ΔT」と設定される。モータ20が変速機を介してクランクシャフト12に結合されている場合には、「−ΔT」に変速比を反映して、目標トルクTmtが設定される。
【0309】
次に、CPUは電源の切り替え制御を行う。制振制御処理(図43)において、回生時および力行時ともにバッテリ50を電源とする設定がなされている場合(図43のステップS814)には、電源の切り替えを実行する必要がないと判断し(ステップS834)、バッテリ50を電源として使用するように切替スイッチ84を制御する。制振制御処理において回生時と力行時で電源の使い分けを行う設定がなされている場合(図43のステップS812)には、モータ20の目標トルクTmtの符号に応じて電源を使い分ける。即ち、目標トルクTmtが0よりも大きい場合には、燃料電池60を電源とするよう切替スイッチ84を制御する(ステップS840)。目標トルクTmtが0以下の場合には、バッテリ50を電源とするよう切替スイッチ84を制御する(ステップS838)。
【0310】
こうして電源が設定されると、CPUは目標トルクTmtでモータ20を駆動する制御を行う(ステップS842)。この制御は、先に図13で説明した処理を適用できる。なお、燃料電池50を電源として使用する場合、CPUは併せて燃料電池60の運転状態も制御する。本実施例では、燃料電池60に要求される最大電力を十分に発電可能な燃料ガスを、実際の要求電力に関わらず供給するよう制御するものとした。燃料電池60への燃料ガスの供給遅れが生じると、要求された電力を速やかに出力することができない。エンジン10のトルク変動は比較的高い周波数で生じるから、適切な制振制御を実現するためには、トルク変動に相当する応答性で燃料電池60から電力を出力する必要が生じる。本実施例では、要求電力に対して十分な量の燃料ガスを常に燃料電池60に供給しつつ、駆動回路52のスイッチングによって、要求電力に見合った発電を行わせることにより、高い応答性での発電を実現している。燃料電池60の要求電力が低い場合、供給された水素はそのまま燃料電池60から排出されるが、排出された水素を燃料電池60内に循環する配管を設けることにより、燃料の浪費を回避することができる。
【0311】
以上で説明した第4実施例の車両によれば、エンジン10のトルク変動を抑制することができ、乗り心地を向上することができる。モータ20の回生時と力行時とで電源を使い分けることにより、制振制御中の効率を向上することができる。図42の下段に示した通り、バッテリ50の電力を利用してモータ20の力行を行うものとすれば、力行時に低効率のエネルギを利用することになるが、本実施例では、エネルギ源である燃料電池60を電源として力行することにより、力行時におけるモータ20の運転効率を向上することができ、制振制御におけるエネルギ効率を向上することができる。
【0312】
第4実施例では、バッテリ50の残量SCOに応じて、力行時の電源を切り替える。従って、高効率での制振制御を実行しつつ、バッテリ50の過充電を回避することもできる。
【0313】
E2.第1変形例:
第4実施例では、モータ20のみを用いて制振制御を行う場合を例示した。本実施例の車両は、エンジン10にトルクを付加できる電動機を2つ備えている。モータ20と補機駆動用モータ80である。制振制御は、これらの2つの電動機を力行時と回生時とで使い分ける態様で行ってもよい。このような使い分けを第4実施例の第1変形例として以下に説明する。
【0314】
図45は第1変形例における制振制御の原理を示す説明図である。上段に示すようにエンジン10からのトルクに変動が生じていたものとする。エンジン10の実際の目標値は、図中に破線で示す値であるが、第1変形例では、エンジン10から出力されるトルクの最低値を仮の目標トルクとして設定する。この結果、図示する通り、エンジン10のトルク変動は正の値、即ち、仮の目標トルクよりも大きい側で生じる。
【0315】
第1変形例では、このトルク変動を補機駆動用モータ80で相殺する。従って、補機駆動用モータ80の制振トルクは、図45の中段に示す通り、常に負の値となる。一方、このように制振トルクを付加すると、クランクシャフト12の出力トルクは仮の目標トルクに相当する値となり、本来の目標トルクに満たない。第1変形例では、モータ20を力行して、この不足分のトルクを出力する。モータ20のトルクは、図中の下段に示す通り、力行側の一定値となる。
【0316】
こうした原理による制振制御は、次の処理に従って実現される。図46は第4実施例の第1変形例における制振制御処理ルーチンのフローチャートである。制御ユニット70のCPUが繰り返し実行する処理である。この処理が開始されると、CPUはシフトポジション、FC燃料、エンジン駆動状態に基づき制振制御を行うか否かを判断する(ステップS820,S822,S826)。これらの判断内容および制振制御を行わないと判断された場合の処理(ステップS824,S832)は、第4実施例と同様である。
【0317】
第1変形例では、上記判定の結果、制振制御を行う場合の処理内容が第4実施例と相違する。まず、CPUは補機駆動用モータ80の目標トルクを全域で回生となるよう設定し、トルク変動を相殺する(ステップS828)。ここでは、図45に示した通り、エンジン10から出力されるトルクの最低値よりも低い範囲に仮目標トルクを設定し、エンジン10から出力される実トルクと仮目標トルクとの差分がトルク変動ΔTに相当するものとみなして、図44のステップS830,S832で説明したのと同様の方法によって補機駆動用モータ80の目標トルクを設定する。こうして設定された目標トルクは常に負の値となるため、通常通り補機駆動用モータ80を制御すれば、回生運転が行われる。
【0318】
図45で説明した通り、補機駆動用モータ80を回生運転し続けると、クランクシャフト12に出力されるトルクは本来の目標値に満たなくなる。CPUは、この不足分のトルクをモータ20で補償する制御を実行する。ここで、第1変形例では、バッテリ50の残量SOCに基づいてモータ20を力行するための電源を使い分ける。CPUはバッテリ50の残量SOCが検出し、所定の値Mi2%との大小を比較する(ステップS830)。所定の値Mi2%は、バッテリ50の過充電を回避できる範囲で任意に設定可能な値である。CPUは残量SOCが所定の値Mi2%に満たない場合、即ち、バッテリ50に過充電のおそれがないと判断される場合には、燃料電池60を電源としてモータ20を駆動する(ステップS836)。残量SOCが所定の値Mi2%以上である場合には、バッテリ50の過充電を回避するため、バッテリ50を電源としてモータ20を駆動する(ステップS834)。それぞれにおけるモータ20の制御方法は、ステップS828の制御時に設定された仮目標トルクとエンジン10から出力すべき目標トルクとの差分をモータ20の要求トルクに設定することにより行われる。
【0319】
以上で説明した第1変形例の制振制御によっても、第4実施例と同様、制振用のトルクが負になる場合と、正になる場合とで電源を使い分けることにより効率的に制振することができる。第1変形例では、電源と電動機とをセットにして使い分ける態様に相当する。つまり、補機駆動用モータ80はバッテリ50との組み合わせで負の制振トルクの付加に供される。モータ20は燃料電池60との組み合わせで正のトルクの付加に供される。いずれにしても、エンジン10から出力された動力が、本来の目標値よりも大きい場合に余剰の動力を電力として抽出する抽出先と、動力が不足する際にその不足分を補償する電力の供給源とが使い分けられている点では第4実施例と同様である。そして、かかる使い分けにより、正のトルクを付加する時の運転効率を向上することができ、制振制御中の運転効率を向上することができる。
【0320】
第1変形例では、補機駆動用モータ80でトルク変動を相殺し、モータ20で不足分のトルクを補償する態様を例示した。補機駆動用モータ80とモータ20の目標トルクは、前者が負のトルク、後者が正のトルクとなる範囲で、エンジン10のトルク変動を相殺するように任意に設定することができる。一例として、図45において仮目標トルクを、エンジン10から出力されるトルクの最大値相当に設定してもよい。この場合には、エンジン10のトルク変動は常に仮目標トルクよりも小さい範囲で生じるから、モータ20で不足分のトルクを出力することになる。この結果、クランクシャフト12からは本来の目標トルク以上のトルクが出力されるから、補機駆動用モータ80で負荷をかけて余剰のトルクを低減させる。補機駆動用モータ80の負荷トルクは一定値となる。かかる態様によっても、エンジン10の制振制御を実現することができる。
【0321】
もちろん、第4実施例と同様、エンジン10のトルク変動ΔTは、実トルクと本来の目標トルクとの差分で設定してもよい。この場合トルク変動ΔTが負の期間はモータ20でその変動を相殺し、トルク変動ΔTが正の期間は補機駆動用モータ80でその変動を相殺する。
【0322】
第4実施例および第1変形例では、バッテリ50と燃料電池60とを使い分けて制振制御を行う場合を例示した。バッテリ50は電力を充電可能な種々の蓄電手段に置換可能である。例えば、バッテリ50に代えて、キャパシタを適用するものとしてもよい。燃料電池60は、種々の発電手段に置換可能である。例えば、燃料電池60に代えて、発電機を使用するものとしてもよい。第4実施例のように補機駆動用モータ80を制振の制御に適用しない場合には、これを発電手段として用いることも可能である。この場合は、補機駆動用モータ80の発電量が、エンジン10のトルク変動の原因とならないよう、発電量を制御することが望ましい。一例として、制振制御に必要とされる電力に関わらず補機駆動用モータ80の発電量をほぼ一定に維持する制御が挙げられる。制振制御に供されなかった電力はバッテリ50に蓄電したり、その他の電力機器で消費すればよい。
【0323】
第4実施例および第1変形例では、図1に示したハードウェア構成の車輌を前提として説明した。ここで例示した制振制御は、かかる構成に限定されず、種々の車両に適用可能である。例えば、図1の構成からモータ20を削除した構成の車輌に適用してもよい。この場合は、モータ20に代えて補機駆動用モータ80を用いることにより、第4実施例で例示した制御を実現することができる。先に図34で示した構成の車輌に適用することも可能である。この場合には、図34中の発電機280を用いて制振制御することができる。制振制御に使用される電動機は、必ずしも車両の動力源である必要はない。エンジン10からの動力の伝達経路において、トルク変動を相殺できるトルクを付加可能な構成であれば、本発明の制振制御は、いかなる車両にも適用可能である。
【0324】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、更に種々なる形態で実施し得ることは勿論である。例えば、本実施例のハイブリッド車両では、エンジンとしてガソリンエンジン150を用いたが、ディーゼルエンジンその他の動力源となる装置を用いることができる。また、本実施例では、モータとして全て三相同期モータを適用したが、誘導モータその他の交流モータおよび直流モータを用いるものとしてもよい。また、本実施例では、種々の制御処理をCPUがソフトウェアを実行することにより実現しているが、かかる制御処理をハード的に実現することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例としてのハイブリッド車両の概略構成図である。
【図2】燃料電池システムの概略構成を示す説明図である。
【図3】変速機100の内部構造を示す説明図である。
【図4】各クラッチ、ブレーキ、およびワンウェイクラッチの係合状態と変速段との関係を示す説明図である。
【図5】本実施例のハイブリッド車両におけるシフトポジションの操作部160を示す説明図である。
【図6】本実施例におけるハイブリッド車両の計器板を示す説明図である。
【図7】制御ユニット70に対する入出力信号の結線を示す説明図である。
【図8】車両の走行状態と動力源との関係を示す説明図である。
【図9】2ポジションにおける変速段の切り替えの様子を示す説明図である。
【図10】Lポジションにおける変速段の切り替えの様子を示す説明図である。
【図11】Rポジションにおける変速段の切り替えの様子を示す説明図である。
【図12】EV走行制御処理ルーチンのフローチャートである。
【図13】モータ駆動制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図14】EV走行制御処理における各動力源および電源の出力の変化を示す説明図である。
【図15】バッテリ50を使用する判断基準値の設定方法について示す説明図である。
【図16】補機駆動制御処理ルーチンのフローチャートである。
【図17】補機駆動制御処理における動力源の切り替えの様子を示す説明図である。
【図18】パワーアシスト制御処理ルーチンのフローチャートである。
【図19】パワーアシスト制御処理における電源の切り替えの様子を示す説明図である。
【図20】停車・減速制御処理ルーチンのフローチャートである。
【図21】停車・減速制御処理における電源の切り替えの様子を示す明図である。
【図22】第1変形例について変速段の切り替えの様子を示す説明図である。
【図23】第1変形例について2ポジションにおける変速段の切り替えの様子を示す説明図である。
【図24】第1変形例についてLポジションにおける変速段の切り替えの様子を示す説明図である。
【図25】第1変形例についてRポジションにおける変速段の切り替えの様子を示す説明図である。
【図26】第1変形例におけるパワーアシスト制御処理ルーチンのフローチャートである。
【図27】パワーアシスト制御処理における電源の切り替えの様子を示す説明図である。
【図28】パワーモード制御処理ルーチンのフローチャートである。
【図29】パワーモード制御処理における電源の切り替えの様子を示す説明図である。
【図30】パワーモードにおいて出力される動力の様子を示す説明図である。
【図31】第2実施例のハイブリッド車両の概略構成を示す説明図である。
【図32】四輪駆動制御処理ルーチンのフローチャートである。
【図33】四輪駆動制御処理における各動力源および電源の出力の変化を示す説明図である。
【図34】第3実施例としてのハイブリッド車両の概略構成を示す説明図である。
【図35】第3実施例におけるEV走行制御処理ルーチンのフローチャートである。
【図36】第3実施例における燃料電池起動処理ルーチンのフローチャートである。
【図37】消費電力Estを与えるマップを示す説明図である。
【図38】燃料電池を起動する際のバッテリ250の残容量の推移を示す説明図である。
【図39】エンジンの運転ポイント設定処理ルーチンのフローチャートである。
【図40】エンジンの運転ポイントと運転効率との関係を示す説明図である。
【図41】動作曲線上でエンジンを運転した場合の動力と運転効率との関係を示す説明図である。
【図42】トルク変動を抑制する制御の原理を示す説明図である。
【図43】制振制御処理ルーチンのフローチャートである。
【図44】制振制御におけるモータ制御処理ルーチンのフローチャートである。
【図45】第1変形例における制振制御の原理を示す説明図である。
【図46】第4実施例の第1変形例における制振制御処理ルーチンのフローチャートである。
【符号の説明】
10…エンジン
12…クランクシャフト
13,14,15…出力軸
16,16A…ディファレンシャルギヤ
17,17A…車軸
18…入力クラッチ
20、20A…モータ
22…ロータ
24…ステータ
30…トルクコンバータ
50…バッテリ
51,51A,52,52A…駆動回路
60…燃料電池システム
60A…燃料電池
61…メタノールタンク
62…水タンク
61a,62a…容量センサ
63…バーナ
64…圧縮機
65…蒸発器
66…改質器
68…ブロワ
70…制御ユニット
80…補機駆動用モータ
82…補機駆動装置
83,84,85,86…切替スイッチ
100…変速機
102…電動オイルポンプ
104…油圧制御部
110…副変速部
112…第1のプラネタリギヤ
114…サンギヤ
115…プラネタリピニオンギヤ
116…プラネタリキャリア
118…リングギヤ
119…出力軸
120…主変速部
122…回転軸
130,140,150…プラネタリギヤ
132、142,152…サンギヤ
134、144,154…プラネタリキャリア
136、146,156…リングギヤ
160…操作部
161…スポーツモードスイッチ
162…シフトレバー
163…スポーツモードスイッチ
202…燃料計
203…燃料計
204…速度計
206…エンジン回転計
208…エンジン水温計
210…方向指示器インジケータ
220…シフトポジションインジケータ
222…スポーツモードインジケータ
224…エンジン
226…モータ
230…プラネタリギヤ
231…サンギヤ
232…プラネタリキャリア
233…リングギヤ
240…クラッチ
240,241…クラッチ
241…ブレーキ
250…バッテリ
250,燃料電池260…バッテリ
252,251…駆動回路
260…燃料電池
270…制御ユニット
280…発電機
284…切替スイッチ

Claims (20)

  1. 電動機と熱機関とを動力源として備えるハイブリッド車両であって、
    前記電動機の電源として燃料電池と、二次電池とを備えるとともに、両者から電動機に供給される電力をそれぞれ調整可能な調整手段を備え、
    車両の運転状態に応じて、前記電源および動力源の作動を制御する制御手段を備え
    前記二次電池の残容量を検出する残容量検出手段を備え、
    前記制御手段は、前記運転状態が前記電動機を動力源とするよう予め設定された状態にある場合において、前記残容量が予め設定された所定値以上の場合には前記燃料電池の残燃料量に関わらず前記二次電池を電源として使用することにより前記二次電池を優先的に使用して該電動機を駆動する手段である、ハイブリッド車両。
  2. 請求項記載のハイブリッド車両であって、
    前記制御手段は、さらに、前記残容量が前記所定値よりも小さい場合には、前記燃料電池を電源として前記電動機を駆動する手段であるハイブリッド車両。
  3. 請求項記載のハイブリッド車両であって、
    前記制御手段は、さらに、前記燃料電池を電源とする場合において、該燃料電池から前記電動機の駆動に必要な電力の十分な供給が行われるまでの過渡期では、不足分の電力を前記二次電池からの電力で補償する手段であり、
    前記所定値は、前記補償を実現可能な電力に基づいて設定された残容量であるハイブリッド車両。
  4. 請求項1記載のハイブリッド車両であって、
    高トルクを要求する状態として予め設定された条件を具備するか否かを判定する高トルク判定手段を備え、
    前記制御手段は、高トルクを要求する状態に該当すると判定された場合に、前記熱機関と前記電動機の双方を動力源として駆動する手段であるハイブリッド車両。
  5. 請求項記載のハイブリッド車両であって、
    アクセル開度を検出するアクセル開度検出手段を備え、
    前記条件は、アクセル開度の変化率が予め設定された所定値以上となる条件であるハイブリッド車両。
  6. 請求項記載のハイブリッド車両であって、
    要求トルクを入力する要求トルク入力手段を備え、
    前記条件は、要求トルクが予め設定された所定値以上となる条件であるハイブリッド車両。
  7. 請求項記載のハイブリッド車両であって、
    高トルクを要求する運転モードを、該車両の運転者が選択するためのスイッチを備え、
    前記高トルク判定手段は、該スイッチの操作状態に基づいて前記判定を行う手段であるハイブリッド車両。
  8. 請求項1記載のハイブリッド車両であって、
    前記燃料電池および二次電池とを電源として駆動する第2の電動機と、
    前記燃料電池および二次電池から該第2の電動機に供給される電力をそれぞれ調整可能な調整手段と、
    前記熱機関および前記第2の電動機に結合された補機とを備え、
    前記制御手段は、さらに、前記熱機関の運転が停止している場合に、前記第2の電動機を駆動する手段であるハイブリッド車両。
  9. 前記電動機と熱機関とは、それぞれ異なる駆動軸に結合された請求項1記載のハイブリッド車両。
  10. 請求項1記載のハイブリッド車両であって、
    前記制御手段は、前記燃料電池から前記電動機への電力の供給が要求されていない場合においても、該燃料電池を作動させ、予め設定された所定の電力を出力させる制御を行う手段であるハイブリッド車両。
  11. 請求項10記載のハイブリッド車両であって、
    前記動力源が出力すべき動力を増大すべき可能性が低い状態として予め設定された所定の条件を具備するか否かを判断する動力予測判断手段を備え、
    前記制御手段は、前記所定の条件を具備すると判定された場合には、前記所定の電力を抑制する制御を行う手段であるハイブリッド車両。
  12. 請求項11記載のハイブリッド車両であって、
    前記動力源の動力を車両の運転状態に応じて変速して駆動軸に出力する変速機と、
    該変速機の作動状態を操作する操作手段とを備え、
    前記所定の条件は、該操作手段により前記変速機の作動状態が非駆動状態に設定されている条件であるハイブリッド車両。
  13. 請求項11記載のハイブリッド車両であって、
    前記車両が制動中であるか否かを判定する制動判定手段を備え、
    前記所定の条件は、前記車両の制動が行われている条件であるハイブリッド車両。
  14. 請求項11記載のハイブリッド車両であって、
    該車両が走行する経路が渋滞しているか否かに関する情報を取得する情報取得手段を備え、
    前記所定の条件は、前記経路が渋滞している条件であるハイブリッド車両。
  15. 請求項1記載のハイブリッド車両であって、
    前記電動機の電源として、さらに前記熱機関から出力される動力を電力に変換する発電機を備え、
    前記制御手段は、
    該ハイブリッド車両の運転状態が、前記燃料電池の発電を開始すべき状態にあるか否かを判定する運転状態判定手段と、
    該燃料電池を使用すべき状態にあると判定された場合において、該燃料電池が発電可能になるまでの期間に、燃料電池を除く電源により該燃料電池からの電力を補償して、要求された電力を出力する電力補償手段とを備え、
    該電力補償手段は、
    前記燃料電池が発電可能になるまでの期間に補償すべき電力量を推定する電力量推定手段と、
    前記二次電池の残容量を検出する残容量検出手段と、
    前記推定された電力量が前記二次電池から出力可能か否かを該残容量に基づいて判定する二次電池電力量判定手段と、
    前記推定された電力量を前記二次電池から出力不能と判断された場合には、前記熱機関を運転して前記発電機による発電を行う熱機関制御手段とを備えるハイブリッド車両。
  16. 請求項15記載のハイブリッド車両であって、
    前記熱機関は、前記発電機を駆動する動力のみを出力する動力源であるハイブリッド車両。
  17. 請求項15記載のハイブリッド車両であって、
    前記燃料電池の温度状態を検出する温度状態検出手段と、
    該燃料電池の温度が所定以下の冷間時であると判断される場合に、前記電力補償手段を有効に機能せしめる冷間時制御手段とを備えるハイブリッド車両。
  18. 請求項15記載のハイブリッド車両であって、
    前記熱機関制御手段は、前記二次電池で不足する電力量を少なくとも補償可能な範囲で、運転効率を優先して設定された運転状態で該熱機関を運転する手段であるハイブリッド車両。
  19. 動力源として、燃料電池と二次電池とを電源とする電動機と、熱機関とを備えるハイブリッド車両の運転を制御する制御方法であって、
    (a) 前記二次電池の残容量を検出する工程と、
    (b) 前記車両の運転状態が前記電動機を動力源とするよう予め設定された所定の状態にあるか否かを判定する工程と、
    (c) 前記所定の状態にあると判定された場合において、前記残容量が予め設定された所定値以上の場合には前記燃料電池の残燃料量に関わらず前記二次電池を電源として使用することにより前記二次電池を優先的に使用して該電動機を駆動する工程とを備える制御方法。
  20. 請求項19記載の制御方法であって、さらに、
    (d) 前記所定の状態にあると判定された場合において、前記残容量が前記所定値よりも小さい場合には、前記燃料電池を電源として前記電動機を駆動する工程を備える制御方法。
JP2000110709A 1999-05-26 2000-04-12 燃料電池を備える車両およびその制御方法 Expired - Fee Related JP4306085B2 (ja)

Priority Applications (6)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000110709A JP4306085B2 (ja) 1999-05-26 2000-04-12 燃料電池を備える車両およびその制御方法
EP00110847A EP1055545B1 (en) 1999-05-26 2000-05-22 Hybrid vehicle with fuel cells incorporated therein and method of controlling the same
DE60007917T DE60007917T2 (de) 1999-05-26 2000-05-22 Hybrid Kraftfahrzeug mit eingebauten Brennstoffzellen und Steuerverfahren dafür
US09/576,444 US6672415B1 (en) 1999-05-26 2000-05-22 Moving object with fuel cells incorporated therein and method of controlling the same
US10/686,861 US7028795B2 (en) 1999-05-26 2003-10-17 Moving object with fuel cells incorporated therein and method of controlling the same
US11/325,501 US7273120B2 (en) 1999-05-26 2006-01-05 Moving object with fuel cells incorporated therein and method of controlling the same

Applications Claiming Priority (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP14591499 1999-05-26
JP11-145914 1999-12-02
JP11-343371 1999-12-02
JP34337199 1999-12-02
JP2000110709A JP4306085B2 (ja) 1999-05-26 2000-04-12 燃料電池を備える車両およびその制御方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2001224105A JP2001224105A (ja) 2001-08-17
JP4306085B2 true JP4306085B2 (ja) 2009-07-29

Family

ID=27319070

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000110709A Expired - Fee Related JP4306085B2 (ja) 1999-05-26 2000-04-12 燃料電池を備える車両およびその制御方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4306085B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20220314991A1 (en) * 2021-03-31 2022-10-06 Honda Motor Co., Ltd. Vehicle control system and vehicle control method

Families Citing this family (29)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4178830B2 (ja) 2002-05-08 2008-11-12 日産自動車株式会社 燃料改質システム
KR100461272B1 (ko) * 2002-07-23 2004-12-10 현대자동차주식회사 연료 전지 하이브리드 차량의 전원 단속장치
KR20040045743A (ko) * 2002-11-25 2004-06-02 현대자동차주식회사 연료 전지 하이브리드 전기 차량의 동력 분배 제어방법
KR20040045744A (ko) * 2002-11-25 2004-06-02 현대자동차주식회사 연료 전지 하이브리드 전기 차량의 동력 분배 제어방법
JP4461701B2 (ja) * 2003-04-22 2010-05-12 トヨタ自動車株式会社 燃料電池を搭載した移動体
JP4525008B2 (ja) 2003-07-02 2010-08-18 トヨタ自動車株式会社 エネルギ出力装置およびエネルギ出力装置の制御方法
JP4665381B2 (ja) * 2003-07-07 2011-04-06 ソニー株式会社 燃料電池システム及び電気機器
US8241097B2 (en) 2004-07-30 2012-08-14 Ford Global Technologies, Llc Environmental control system and method for a battery in a vehicle
CN100526106C (zh) * 2004-07-30 2009-08-12 福特环球技术公司 用于车内蓄电池的环境控制***和方法
US8206858B2 (en) 2005-01-24 2012-06-26 Yamaha Hatsudoki Kabushiki Kaisha Fuel cell system and starting method therefor
WO2006077971A1 (ja) 2005-01-24 2006-07-27 Yamaha Hatsudoki Kabushiki Kaisha 燃料電池システムおよびその起動方法
JP4947252B2 (ja) * 2005-04-07 2012-06-06 トヨタ自動車株式会社 移動体及び管理方法
WO2007102763A1 (en) * 2006-03-09 2007-09-13 Volvo Technology Corporation Hybrid powertrain
JP2008132876A (ja) * 2006-11-28 2008-06-12 Toyota Motor Corp 車両制御装置
JP2008162491A (ja) * 2006-12-28 2008-07-17 Toyota Motor Corp 車両およびその制御方法
JP4201044B2 (ja) 2007-01-09 2008-12-24 トヨタ自動車株式会社 車両およびその制御方法
JP4229185B2 (ja) 2007-01-12 2009-02-25 トヨタ自動車株式会社 ハイブリッド自動車およびその制御方法
JP2009126450A (ja) * 2007-11-27 2009-06-11 Toyota Motor Corp ハイブリッド車及びハイブリッド車の制御方法
JP2010063265A (ja) * 2008-09-03 2010-03-18 Toyota Industries Corp 燃料電池搭載車両
JP4525837B2 (ja) * 2009-08-31 2010-08-18 トヨタ自動車株式会社 エネルギ出力装置およびエネルギ出力装置の制御方法
DE102010010443A1 (de) * 2010-02-25 2011-08-25 Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft, 70435 Anzeigevorrichtung eines Kraftfahrzeugs
JP5538034B2 (ja) * 2010-03-31 2014-07-02 富士重工業株式会社 車両の駆動力制御装置
JP6096411B2 (ja) * 2011-12-20 2017-03-15 トヨタ自動車株式会社 ハイブリッド車両の発電制御装置
JP5994304B2 (ja) * 2012-03-14 2016-09-21 日産自動車株式会社 車両のアイドル制御装置
JP5724935B2 (ja) * 2012-04-19 2015-05-27 トヨタ自動車株式会社 エンジンシステム
JP6167585B2 (ja) * 2013-03-21 2017-07-26 アイシン精機株式会社 ハイブリッド車両用駆動装置
JP6225218B2 (ja) * 2016-05-23 2017-11-01 公益財団法人鉄道総合技術研究所 燃料電池鉄道車両の電力制御方法
JP7043908B2 (ja) * 2018-03-15 2022-03-30 トヨタ自動車株式会社 発電装置を備えた車両および車両搭載発電装置の発電制御方法
JP7481156B2 (ja) 2020-04-23 2024-05-10 株式会社Subaru 車両制御装置

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20220314991A1 (en) * 2021-03-31 2022-10-06 Honda Motor Co., Ltd. Vehicle control system and vehicle control method

Also Published As

Publication number Publication date
JP2001224105A (ja) 2001-08-17

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4306085B2 (ja) 燃料電池を備える車両およびその制御方法
JP5103992B2 (ja) ハイブリッド車両の制御装置及びハイブリッド車両の制御方法。
JP5899274B2 (ja) ハイブリッド車両及びその制御方法
JP5799127B2 (ja) ハイブリッド車両の制御装置
US7028795B2 (en) Moving object with fuel cells incorporated therein and method of controlling the same
JP5496454B2 (ja) ハイブリッド車両の制御装置
JP5581915B2 (ja) ハイブリッド車両の制御装置
JP4973119B2 (ja) 車両の制御装置
JP2008044599A (ja) ハイブリッド車両の制御装置
JP2010155590A (ja) ハイブリッド車両の発進制御装置。
JP2008105494A (ja) ハイブリッド車両の変速制御装置
JP4337188B2 (ja) ハイブリッド式移動体およびその制御方法
JP5501269B2 (ja) ハイブリッド車両の制御装置
JP4207346B2 (ja) 燃料電池を備える移動体およびその制御方法
JP4258513B2 (ja) 駆動装置の制御装置
JP2011213285A (ja) ハイブリッド車両制御装置
JP2012086717A (ja) ハイブリッド車両の制御装置
JP4200635B2 (ja) ハイブリッド車両およびその制御方法
JP5563892B2 (ja) 電動車両
JP5598256B2 (ja) ハイブリッド車両の制御装置
JP2001298806A (ja) 車両用制御装置、制御方法および車両
JP4000750B2 (ja) 動力出力装置およびその制御方法
JP5527159B2 (ja) ハイブリッド車両の制御装置
JP4135302B2 (ja) 燃料電池を搭載したハイブリッド車両
JP5793847B2 (ja) ハイブリッド車両の制御装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060525

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20080617

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20080729

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20090414

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20090427

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120515

Year of fee payment: 3

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees