JP4337188B2 - ハイブリッド式移動体およびその制御方法 - Google Patents

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  • Electric Propulsion And Braking For Vehicles (AREA)
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池と熱機関とをエネルギ出力源として備えるハイブリッドシステムおよびその制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、エンジンと電動機とを搭載したハイブリッド車両が提案されている。ハイブリッド車両の一形態として、電動機とエンジンの双方の動力を駆動軸に出力可能なパラレルハイブリッド車両と呼ばれる構成がある。パラレルハイブリッド車両は、機械的動力および電力の双方を含めた意味でのエネルギ出力源として、エンジンおよびバッテリの2種類を備えている。即ち、パラレルハイブリッド車両は、エンジンから動力を出力して走行する他、バッテリから供給される電力で電動機をして走行することもできる。このように2種類のエネルギ出力源を適宜使い分けることによって、エンジンを効率の良い領域で運転させることができる。また、電動機による回生制動を行うことにより、車両の運動エネルギを電力としてバッテリに回収することができる。これらの作用に基づき、パラレルハイブリッド車両は、燃費および環境性に優れるという特性を有する。
【0003】
ハイブリッド車両には、他の形態として、シリーズハイブリッド車両と呼ばれる構成がある。シリーズハイブリッド車両は、駆動軸に結合された電動機から出力される動力で走行する。エンジンは駆動軸と切り離されて設けられており、発電機を駆動して電力を発生させる。駆動軸に結合された電動機は、こうして発電された電力、およびバッテリから供給される電力の少なくとも一方により駆動される。シリーズハイブリッド車両も、2種類のエネルギ出力源を有するとともに、両者を適宜使い分けることができ、燃費および環境性に優れる特性を有する。
【0004】
こうしたパラレルハイブリッド車両の中には、エネルギ出力源の一つとして、燃料電池を搭載した車両も提案されている(例えば、特開平3−148330記載の車両)。燃料電池とは、燃料として最終的に供給される水素の酸化により発電を行う装置をいう。燃料電池から排出されるのは、水蒸気であり、有害な成分が含まれないため環境性に非常に優れるという利点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、燃料電池は、昨今開発が行われている装置である。従って、燃料電池と熱機関という2種類のエネルギ出力源の有する特性の長所どうしを最適に組みあわせる点でまだ不十分であった。特に、燃料電池は電気的エネルギを出力する点で二次電池と共通するものの、二次電池と異なり不可逆的なエネルギ出力源である特徴がある。二次電池はハイブリッド車両の走行中においても充電によりエネルギ状態を回復することができるのに対し、燃料電池は燃料を外部から補給しないことには、発電能力を回復することができない。また、燃料電池は応答性が低いという特性も有している。
【0006】
従来、提案されていた燃料電池を備えるハイブリッド車両では、かかる特徴を踏まえて燃料電池および熱機関をエネルギ出力源として、どのように活用すべきかという点について十分検討されてはいなかった。特に、通常の走行時と異なる特定の条件下での運転時における、エネルギ出力源の使い分けについてはほとんど検討されていなかった。また、高効率かつ環境性に優れた電源としての燃料電池の特性を活用してハイブリッド車両の利便性を向上する観点からの検討もなされていなかった。これらの課題は、ハイブリッド車両のみならず燃料電池を含む種々のハイブリッドシステムにおいて共通の課題であった。本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、燃料電池を搭載したハイブリッドシステムにおいて、燃料電池をエネルギ出力源として有効活用し、燃費、環境性、利便性を向上したハイブリッドシステムを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
上述の課題を解決するために、本発明は次の構成を採った。
本発明のハイブリッドシステムは、
少なくとも燃料電池と熱機関とを含むエネルギ出力源と、該エネルギ出力源のエネルギを利用可能な形態で外部に出力するエネルギ伝達手段とを備えるハイブリッドシステムであって、
出力すべき総エネルギを設定する要求エネルギ設定手段と、
前記燃料電池を優先的に使用して前記総エネルギを出力する態様で、前記燃料電池、熱機関および前記エネルギ伝達手段の各目標運転状態を設定する目標運転状態設定手段と、
前記システムの作動状態に関する所定の条件が満たされているか否かを判定する判定手段と、
該所定の条件が満たされている場合には、前記燃料電池、熱機関およびエネルギ伝達手段の少なくとも一つの目標運転状態を前記所定の条件に応じて予め設定された状態に変更する状態変更手段と、
前記エネルギ出力源および前記エネルギ伝達手段のそれぞれを設定された目標運転状態に制御する運転制御手段とを備えることを要旨とする。
【0008】
本発明のハイブリッドシステムは、エネルギ出力源として燃料電池と熱機関とを備える。エネルギ出力源とは、機械的エネルギおよび電気的エネルギなど種々の形態でエネルギを出力する源を意味する。燃料電池は電気的エネルギを出力するエネルギ出力源に相当する。熱機関は機械的エネルギを出力するエネルギ出力源に相当する。また、エネルギ伝達手段は、エネルギ出力源から出力されるエネルギおよび外部に出力するエネルギの種類に応じたものを備える。電気的エネルギを伝達および出力するための手段としては導電線およびコンセントなどが相当する。機械的エネルギを伝達および出力するための手段としてはギヤ等の伝達機構および駆動軸などが相当する。また、エネルギ伝達手段には、エネルギ出力源から出力されるエネルギの形態を変更する装置も含まれる。即ち、機械的エネルギを出力すべき場合には、エネルギ出力源から出力された電気的エネルギを機械的エネルギに変換する電動機が含まれる。また、電気的エネルギを出力すべき場合には、エネルギ出力源から出力された機械的エネルギを用いて発電する発電機が含まれる。
【0009】
上記ハイブリッドシステムは、通常の作動時は燃料電池を優先して運転する。優先とは、要求された総エネルギを出力するために使用するエネルギ出力源に選択の余地がある場合に、燃料電池を優先して使用する意味である。例えば、燃料電池と熱機関のいずれかによりエネルギを出力すれば足りる場合には燃料電池を使用することになる。この場合、熱機関は、燃料電池では十分なエネルギを出力できない場合などに使用されることになる。また、優先には、複数のエネルギ出力源のうち燃料電池から出力されるエネルギの割合を最も高くする態様も含まれる。燃料電池は、高効率で発電を行うことができ、また、有害な排出物を伴わないことから、環境性にも優れるエネルギ出力源である。本発明のハイブリッドシステムは、燃料電池を優先的に使用することにより、作動時の効率および環境性を向上することができる。なお、ここで、作動とは、必ずしもハイブリッドシステムが走行、飛行など移動等している場合のみならず、停止している場合であっても利用可能な何らかのエネルギをハイブリッドシステムから出力している状態をいう。
【0010】
本発明のハイブリッドシステムは、上述の通り、基本的には燃料電池を優先的に使用するが、所定の条件が満たされている場合には、状態変更手段がエネルギ出力源およびエネルギ伝達手段という各要素の運転状態を変更する。変更後の運転状態は「所定の条件」に応じて、種々設定される。所定の条件とは、システムの作動状態に関するものを意味しており、例えば、特定の運転モードが選択されている場合や、システムの構成要素が特定の運転状態にある場合などが含まれる。基本的には燃料電池を優先して使用することで効率および環境性に優れた作動を実現することができるが、多岐に亘る作動状態の一部では、エネルギ出力源のかかる使い分けが適さない場合もある。例えば、効率および環境性を犠牲にしつつも燃料電池の運転を控える必要が生じる場合もある。また、燃料電池の使用による運転効率の向上効果が十分に現れない場合もある。本発明のハイブリッドシステムによれば、所定の条件下では、各要素の運転状態を変更することにより、それぞれ適した作動を実現することができる。
【0011】
ここで、本発明における上記制御の意義について説明する。既に説明した通り、燃料電池は不可逆的な特性を有するエネルギ出力源である。バッテリ等の二次電池は、ハイブリッドシステムの走行中でも充電を行えばエネルギ状態の回復を図ることができる。これに対し、燃料電池用の燃料(以下、FC燃料と呼ぶ)は一旦消費すると、外部から補給しない限りエネルギ状態を回復することができない。燃料電池のかかる特性を考慮すると、必ずしも燃料電池を優先的に使用することによりハイブリッドシステムの効率および環境性を向上できるという保証はなかった。FC燃料を早期に消費してしまえば、その後は熱機関など比較的低効率のエネルギ出力源を使用せざるを得なくなり、平均した運転効率の低下を招く可能性もあったからである。
【0012】
本願の発明者は、燃料電池と熱機関を含むエネルギ出力源を搭載したハイブリッドシステムが採る種々の作動状態およびその頻度を検討した。エネルギ出力源の使い分けについては、「燃料電池を優先して使用する態様」、「燃料電池の使用をできるだけ控え、FC燃料の消費を抑制する態様」、「燃料電池と熱機関を均等に使用する態様」など種々の態様が考えられる中、上記検討結果に基づき、燃料電池を優先して使用する態様が運転効率および環境性の向上に寄与し得るとの結論に達し、本発明を完成するに至った。また、特定の条件下では、各要素をそれに応じた運転状態に変更することにより、さらに適切な作動を実現するとの結論に達した。本願は、このように燃料電池の特性およびハイブリッドシステムに搭載した場合の使用頻度などを考慮して適切な運転を実現した点に意義がある。
【0013】
なお、ハイブリッドシステムにおいては、単位時間当たりのエネルギを考慮して運転の制御がなされることが多い。従って、本明細書において、エネルギという用語は、特に断らない限り、単位時間当たりのエネルギを意味するものとする。従って、本明細書では、エネルギは、原則として動力および電力と同義の用語である。
【0014】
本発明のハイブリッドシステムにおいて、「所定の条件」およびそれに応じた各要素の運転状態は、種々の態様があげられる。
第1の態様として、
運転者が運転モードを指定するために操作するスイッチを備えるハイブリッドシステムにおいては、
前記判定手段における所定の条件は、前記スイッチの操作状態であるものとすることができる。
こうすることにより、燃料電池、熱機関等の各要素の運転状態を運転者がスイッチ操作で任意に設定することができ、ハイブリッドシステムの利便性を向上することができる。
【0015】
このようにスイッチ操作で運転モードを指定可能なハイブリッドシステムにおいては、
前記エネルギは電気的エネルギであり、
前記所定の条件は、前記スイッチにより、電気的エネルギの外部への出力を許可する運転モードが指定されている条件であり、
前記状態変更手段における前記変更は、前記熱機関の運転の禁止であるものとすることができる。
【0016】
上記ハイブリッドシステムは、電気的エネルギを外部に出力することができる。熱機関の機械的エネルギを電気的エネルギに変換するための発電機、熱機関および燃料電池から出力された電気的エネルギを出力するためのコンセント等をエネルギ伝達手段として備えることになる。かかるコンセントを設けることにより、例えば目的地で種々の電気製品を利用することが可能となるなど、ハイブリッドシステムの利便性を向上することができる。
【0017】
本発明のハイブリッドシステムは、通常の運転モードでは、燃料電池を優先的に使用し、燃料電池の出力が要求出力に満たないなどの場合に熱機関を運転する。これに対し、上記構成において、コンセント等から電力の供給を許可する運転モードが指定されている場合には、熱機関の運転を禁止する。一般に目的地での電力の使用は、比較的重要性の低い要求である場合が多い。かかる場合に、熱機関の運転を許可したままにしておくと、電力の供給時に熱機関が始動され、ハイブリッドシステムの効率および環境性を損ねる。また、熱機関は作動音が大きいのが通常であるため、静粛性を損ねる場合もある。上記構成のハイブリッドシステムによれば、電気的エネルギを利用する運転モードにおいては、熱機関の運転を禁止することができるため、かかる弊害を回避することができる。
【0018】
このように熱機関の運転を停止する場合においては、
さらに、運転者が前記熱機関の始動を指示するために操作する始動スイッチを備え、
前記所定の条件は、前記運転モードが指定されている状態において、前記始動スイッチの操作により前記熱機関の始動が指示される条件であり、
前記状態変更手段における前記変更は、前記熱機関の始動であるものとすることも望ましい。
こうすれば、目的地において電力を供給する必要性が高い場合には、運転者の操作により熱機関を始動して電力を出力することができる。従って、ハイブリッドシステムの利便性を向上することができる。ここでは、燃料電池と熱機関の運転にのみ言及しているが、その他のエネルギ出力源を備えるものを排除する趣旨ではない。
【0019】
このようにスイッチ操作で運転モードを指定可能なハイブリッドシステムにおいては、別の態様として、
前記エネルギは機械的エネルギであり、
前記所定の条件は、前記スイッチにより、燃料電池および熱機関のいずれか一方を用いる運転モードが選択されている条件であり、
前記状態変更手段における前記変更は、該選択されたエネルギ出力源の運転実行、および他方のエネルギ出力源の運転禁止であるものとすることもできる。
【0020】
上記ハイブリッドシステムは、機械的エネルギを外部に出力することができる。燃料電池の電気的エネルギを機械的エネルギに変換するための電動機、熱機関および燃料電池から出力された機械的エネルギを出力する駆動軸などをエネルギ伝達手段として備えることになる。出力された動力を走行に使用するものとすれば、燃料電池および熱機関のいずれによっても走行可能となる。
【0021】
本発明のハイブリッドシステムは、通常の運転モードでは、燃料電池を優先的に使用し、燃料電池の出力が要求出力に満たないなどの場合に熱機関を運転する。これに対し、上記ハイブリッドシステムによれば、動力源を運転者が任意に選択することができる。第1の例として、目的地において燃料電池から出力される電力を利用したい場合には、熱機関を用いる運転モードを選択することにより、目的地に到着するまでのFC燃料の消費を抑制することができる。この結果、目的地で燃料電池をより有効に活用することができる。第2の例として、車両の応答性に対する要求に応じた使い分けをすることもできる。一般に燃料電池は出力の応答性が低い特性を有している。かかる場合に熱機関を用いる運転モードを選択すれば、高い応答性で車両を運転することができる。第3の例として、騒音の抑制に関する要求に応じた使い分けをすることもできる。一般に熱機関は作動音が大きいため、深夜の走行時など騒音を抑制する要求が高い場合には、燃料電池を用いる運転モードを選択することにより、静粛性を保った運転を実現することができる。このように動力源を運転者が任意に選択可能とすることにより、ハイブリッドシステムの利便性を向上することができる。
【0022】
熱機関の運転を停止する場合においては、
さらに、運転者が前記他方のエネルギ出力源の始動を指示するために操作する始動スイッチを備え、
前記所定の条件は、前記運転モードが指定されている状態において、前記始動スイッチの操作により前記他方のエネルギ出力源の始動が指示される条件であり、
前記状態変更手段における前記変更は、該他方のエネルギ出力源の始動であるものとすることが望ましい。
こうすれば、必要に応じて他方のエネルギ出力源を始動することができる。従って、動力を出力する必要性に応じてエネルギ出力源の運転を行うことができ、ハイブリッドシステムの利便性を向上することができる。ここでは、燃料電池と熱機関の運転にのみ言及しているが、その他のエネルギ出力源を備えるものを排除する趣旨ではない。
【0023】
また、類似の態様として、
前記エネルギは機械的エネルギであり、
前記所定の条件は、前記スイッチにより、燃料電池のみをエネルギ出力源とする運転モードが選択されている条件であり、
前記状態変更手段における前記変更は、前記燃料電池の運転実行、かつ前記熱機関の暖機禁止であるものとしてもよい。
【0024】
運転者がスイッチの操作によって動力源を選択することができる利点は、上述の態様と同様である。ここに示した類似の態様では、燃料電池のみをエネルギ出力源とする運転モードが選択されている場合には、熱機関の運転を禁止するのみならず、暖機、即ち運転準備をも禁止する点で相違する。こうすれば、熱機関の暖機をも禁止することにより、ハイブリッドシステムの燃費および環境性をより向上することができる。
【0025】
なお、熱機関の暖機を禁止するため、熱機関の動力が必要になった場合に若干応答が遅れるという不利益はあるものの、燃料電池のみをエネルギ出力源とする運転モードは運転者が自らの意思で選択するものであるため、かかる応答性の低下が生じても運転感覚に与える影響は小さい。運転感覚に大きな変動が生じないように各運転モードを設定するのが通常であるが、運転モードはその特性を理解した上で運転者の意思で選択するものであるという着眼から、運転感覚の変動という制限を考慮することなく、燃費および環境性を特に重視した運転モードを設けた点に、この態様の意義がある。
【0026】
もちろん、こうした制御は、燃料電池が運転可能な状態にあることが前提であり、燃料電池のみをエネルギ出力源とする運転モードが選択されている場合であっても、燃料電池が運転不可能な場合には、自動または手動で熱機関の運転を許可するものとしてもよい。
【0027】
「所定の条件」およびそれに応じた各要素の運転状態に関する第2の態様として、
前記燃料電池の発電能力を検出する検出手段を備えるハイブリッドシステムにおいては、
前記所定の条件は、該発電能力が所定値以下に低下する条件であり、
前記状態変更手段における前記変更は、前記燃料電池の出力の抑制であるものとすることができる。
【0028】
この場合において、発電能力は種々のパラメータにより検出することができ、例えば、前記検出手段は、前記燃料電池用の残燃料量に基づいて前記発電能力を検出する手段であるものとしてもよいし、
前記検出手段は、前記燃料電池の温度に基づいて前記発電能力を検出する手段であるものとしてもよい。
【0029】
FC燃料の残量に応じて発電能力を検出する場合、発電能力の低下は、FC燃料の残量の低下を意味する。上記構成のハイブリッドシステムでは、このようにFC燃料の残量が低下した場合には、燃料電池の出力を抑制することにより、FC燃料の過度の消費を抑制することができる。既に説明した通り、燃料電池は不可逆的なエネルギ出力源であるから、FC燃料を消費した後は、燃料電池を使用することができなくなる。これに対し、上記構成のハイブリッドシステムでは、FC燃料の消費を抑制することができ、長期間に亘って燃料電池を使用可能な状態に維持することができるため、燃料電池をより有効性が高い作動時に活用することができる。
【0030】
燃料電池の温度に応じて発電能力を検出する場合、発電能力の低下は、燃料電池が異常に高温になった場合や、いわゆる暖機前の状態で発電を行える温度に十分達していない場合などが対応する。かかる場合に燃料電池に高い出力を要求すれば、燃料電池の寿命を著しく縮める等の弊害を生じる可能性がある。上記構成によれば、燃料電池の出力を抑制することにより、かかる弊害を回避することができる。
【0031】
発電能力に応じて燃料電池の出力を抑制するハイブリッドシステムでは、
前記状態変更手段における前記変更は、前記熱機関の出力の増大であるものとしてもよい。
こうすれば、燃料電池の出力低下による影響を抑制し、要求された総エネルギを出力することが可能となる。
【0032】
また、
前記エネルギは回転軸の回転エネルギであり、
前記エネルギ伝達手段は、前記エネルギ出力源から出力された回転エネルギを2以上の変速比で変速して出力可能な変速手段である場合には、
前記状態変更手段における前記変更は、前記変速手段の変速比の増大であるものとすることもできる。
回転エネルギの場合、出力の低下に伴うトルク低下の影響が比較的大きい。上記構成によれば、変速比を大きくすることにより、出力トルクの低下を抑制することができる。
【0033】
「所定の条件」およびそれに応じた各要素の運転状態に関する第3の態様として、
前記熱機関の温度を検出する温度検出手段を備えるハイブリッドシステムにおいては、
前記所定の条件は、検出された熱機関の温度が所定値以下である条件であり、
前記状態変更手段における前記変更は、前記熱機関の暖機運転実行であるものとすることができる。
【0034】
一般に熱機関の運転効率および排気浄化性を向上するためには、運転時に十分暖機をしておくことが望ましい。本発明のハイブリッドシステムは、燃料電池をエネルギ出力源として作動している場合には、熱機関の温度が低下する可能性がある。上記ハイブリッドシステムによれば、熱機関の温度が低くなった場合には、その暖機を行うことができる。従って、出力が要求される際の熱機関の運転効率および排気浄化性を向上することができる。なお、上記構成において、さらに条件を追加し、熱機関からの出力が要求される可能性が高いと判断される場合に暖機を行うものとしてもよい。こうすれば、暖機に要する燃料を抑制することができ、さらに運転効率を向上することができる。
【0035】
「所定の条件」およびそれに応じた各要素の運転状態に関する第4の態様として、
前記熱機関の温度を検出する温度検出手段と、
前記燃料電池で発生した熱エネルギの少なくとも一部を前記熱機関に搬送する熱搬送手段とを備えるハイブリッドシステムにおいては、
前記所定の条件は、検出された熱機関の温度が所定値以下である条件であり、
前記状態変更手段における前記変更は、前記燃料電池の出力の増大であるものとすることもできる。
熱搬送手段は種々の構成を適用することができ、例えば燃料電池と熱機関の冷却機構を両者共通の機構として構成することにより熱搬送手段として活用することができる。
【0036】
かかる構成のハイブリッドシステムにおいても熱機関の暖機を行うことができる。但し、上記構成のハイブリッドシステムでは、燃料電池から発生した熱を利用して熱機関の暖機を行う点で相違する。熱機関を別途暖機運転する必要がないため、燃料消費を抑制することができる。なお、上記構成においても熱機関からの出力が要求される可能性が高いと判断される場合に暖機を行うものとすれば、さらに運転効率を向上することができる。
【0037】
また、本発明は、少なくとも燃料電池と熱機関とを含むエネルギ出力源と、該エネルギ出力源のエネルギを利用可能な形態で外部に出力するエネルギ伝達手段とを備えるハイブリッドシステムであって、
前記エネルギ出力源のいずれを使用するかを該ハイブリッドシステムの運転者の操作により選択するためのエネルギ出力源選択スイッチと、
該エネルギ出力源選択スイッチにより選択状態に応じて、前記燃料電池、熱機関およびエネルギ伝達手段の各目標運転状態を設定する目標運転状態設定手段と、
前記エネルギ出力源および前記エネルギ伝達手段のそれぞれを設定された目標運転状態に制御する運転制御手段とを備えるハイブリッドシステムとして構成することもできる。
かかつ場合において、
前記目標運転状態設定手段は、前記エネルギ出力源選択スイッチにより、前記燃料電池のみがエネルギ出力源として選択されている場合には、前記熱機関の運転を禁止するのみならず、暖機をも禁止する状態に目標運転状態を設定する手段であるものとしてもよい。
【0038】
こうすれば、エネルギ出力源選択スイッチを操作することによって、運転者が自由にエネルギ出力源を使い分けることができる。一例として、燃料電池、熱機関を備える場合のエネルギ出力源の選択態様としては、燃料電池のみを使用する場合、熱機関のみを使用する場合、双方を使用する場合の3つが考えられる。上記ハイブリッドシステムによれば、これらの態様の中から運転者の意志に沿った態様を選択することができ、エネルギ出力源を意志に応じて使い分けることができるためハイブリッドシステムの利便性を向上することができる。更に、燃料電池のみが選択されている場合に熱機関の暖機をも禁止する制御を併せて行うものとすれば、既に説明した通り、ハイブリッドシステムの燃費および環境性を共に向上することができる。
【0039】
以上で説明した種々のハイブリッドシステムは、必ずしも燃料電池と熱機関のみを備える場合に限定されるものではない。
さらに、可逆的なエネルギ出力手段である蓄電手段を備えることもでき、
この場合において、
前記目標運転状態設定手段は、前記蓄電手段に入出力される電気的エネルギを考慮して前記目標運転状態を設定する手段であるものとすることができる。
【0040】
蓄電手段は、ハイブリッドシステムの作動中において充電によりエネルギ状態を回復することができる可逆的なエネルギ出力源である。蓄電手段としては、いわゆる二次電池やキャパシタなどが挙げられる。上記ハイブリッドシステムは、電気的エネルギを出力するエネルギ出力源として、高効率であるが不可逆的な特性を有する燃料電池と、可逆的である蓄電手段とを備える。このように特性の異なるエネルギ出力源を併用することにより、それぞれの特性を活用し、ハイブリッドシステムの効率、環境性、利便性を向上することができる。なお、上記ハイブリッドシステムにおいては、蓄電手段を燃料電池よりも優先的に使用するものとしてもよいし、燃料電池を蓄電手段よりも優先的に使用するものとしてもよい。いずれを優先して使用するかは、それぞれの出力定格や蓄電手段が蓄えておくことができる電力量に応じて設定可能である。
【0041】
本発明は、プラント、産業機械など種々のシステムに適用することができる。また、地上に固定されたシステムのみならず移動体に適用することもできる。移動体には、車両、船舶、航空機、飛行船その他の飛翔体など動力を利用して移動する種々の移動体が含まれる。必ずしも人や物を輸送するものに限られない。また、乗員が搭乗するものにも限らない。
【0042】
本発明は、
少なくとも燃料電池と熱機関とを含むエネルギ出力源と、該エネルギ出力源のエネルギを利用可能な形態で外部に出力するエネルギ伝達手段とを備えるハイブリッドシステムであって、
前記燃料電池および熱機関の双方がエネルギを出力可能な状態にある場合は、燃料電池を優先的に使用してエネルギを出力するよう、該燃料電池および熱機関の運転を制御する制御手段を備えるハイブリッドシステムとして構成することもできる。
【0043】
かかるハイブリッドシステムによれば、燃料電池を優先的に使用するため、先に説明したハイブリッドシステムと同様、システム運転時の効率および環境性を大きく向上することができる。なお、かかるハイブリッドシステムにおいても、上記ハイブリッドシステムで説明した種々の付加的要素を考慮することができることはいうまでもない。
【0044】
本発明をハイブリッド式移動体として構成する場合、例えば、以下の構成を採ることができる。即ち、
少なくとも燃料電池と熱機関とを含むエネルギ出力源と、該エネルギ出力源のエネルギを利用可能な形態で外部に出力するエネルギ伝達手段とを備えるハイブリッド式移動体であって、
前記燃料電池および熱機関のうち少なくとも一方の劣化を検出する劣化検出手段と、
前記燃料電池および熱機関の一方に劣化が検出された場合には、該劣化に伴うエネルギ出力への影響を補償する方向に、少なくとも他方の出力を制御する劣化時制御手段とを備えるハイブリッド式移動体とすることもできる。
【0045】
また、少なくとも燃料電池と熱機関とを含む動力出力源と、該動力出力源から出力された動力を変速機を介して駆動軸に伝達する伝達機構とを備えるハイブリッド式移動体であって、
前記燃料電池の劣化を検出する劣化検出手段と、
前記燃料電池の劣化が検出された場合には、該劣化に伴うエネルギ出力への影響を補償する方向に、前記変速機を制御する変速機制御手段とを備えるハイブリッド式移動体とすることもできる。
【0046】
前者のハイブリッド式移動体によれば、燃料電池または熱機関の劣化が生じている場合には、劣化が生じていない側の出力を制御して、その影響を抑制することができる。ここで劣化とは故障、燃料の不足、経時変化などにより、本来の出力が得られなくなる状態をいう。また、上記構成においては、燃料電池と熱機関の双方の劣化を検出するものとしてもよいし、いずれか一方のみを検出するものとしてもよい。後者のハイブリッド式移動体によれば、燃料電池の劣化が生じている場合には、変速機を制御することにより、劣化の影響を抑制することができる。なお、これらのハイブリッド式移動体において、先にハイブリッドシステムで説明した種々の付加的要素を併せて適用することができることはいうまでもない。
【0047】
本発明は、以下に示すハイブリッドシステムの制御方法として構成することもできる。
即ち、本発明の制御方法は、
少なくとも燃料電池と熱機関とを含むエネルギ出力源と、該エネルギ出力源のエネルギを利用可能な状態で外部に出力するエネルギ伝達手段とを備えるハイブリッドシステムの運転を制御する制御方法であって、
(a) 出力すべき総エネルギを設定する工程と、
(b) 前記燃料電池を優先的に使用して前記総エネルギを出力する態様で、前記燃料電池、熱機関および前記エネルギ伝達手段の各目標運転状態を設定する工程と、
(c) 前記システムの作動状態に関する所定の条件が満たされているか否かを判定する工程と、
(d) 該所定の条件が満たされている場合には、前記燃料電池、熱機関およびエネルギ伝達手段の少なくとも一つの目標運転状態を前記所定の条件に応じて予め設定された状態に変更する工程と、
(e) 前記エネルギ出力源および前記エネルギ伝達手段を制御して、前記設定された総エネルギを出力する工程とを備える制御方法である。
【0048】
かかる制御方法によれば、先にハイブリッドシステムで説明したのと同様の作用により、燃料電池および熱機関という2種類のエネルギ出力源を、種々の作動状態において有効に活用することができる。この結果、ハイブリッドシステムの運転効率、環境性、利便性を向上することができる。なお、制御方法の発明においても、先にハイブリッドシステムの発明で説明した種々の付加的要素を考慮することができることはいうまでもない。
【0049】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、ハイブリッド車両に適用した場合の実施例に基づいて、以下の順序で説明する。
A.装置の構成:
B.一般的動作:
C.EV走行制御処理:
D.外部電源稼働制御処理:
E.第1の変形例:
F.第2の変形例:
G.第3の変形例:
H.第2実施例:
I.第2実施例における変形例:
J.第3実施例:
K.4輪駆動への適用:
【0050】
A.装置の構成:
図1は実施例としてのハイブリッド車両の概略構成図である。本実施例のハイブリッド車両の動力源は、エンジン10とモータ20である。図示する通り、本実施例のハイブリッド車両の動力系統は、上流側からエンジン10、入力クラッチ18、モータ20、トルクコンバータ30、および変速機100を直列に結合した構成を有している。即ち、エンジン10のクランクシャフト12は、入力クラッチ18を介してモータ20に結合されている。入力クラッチ18をオン・オフすることにより、エンジン10からの動力の伝達を断続することができる。モータ20の回転軸13は、また、トルクコンバータ30にも結合されている。トルクコンバータの出力軸14は変速機100に結合されている。変速機100の出力軸15はディファレンシャルギヤ16を介して車軸17に結合されている。以下、それぞれの構成要素について順に説明する。
【0051】
エンジン10は通常のガソリンエンジンである。但し、エンジン10は、ガソリンと空気の混合気をシリンダに吸い込むための吸気バルブ、および燃焼後の排気をシリンダから排出するための排気バルブの開閉タイミングを、ピストンの上下運動に対して相対的に調整可能な機構を有している(以下、この機構をVVT機構と呼ぶ)。VVT機構の構成については、周知であるため、ここでは詳細な説明を省略する。エンジン10は、ピストンの上下運動に対して各バルブが遅れて閉じるように開閉タイミングを調整することにより、いわゆるポンピングロスを低減することができる。この結果、エンジン10をモータリングする際にモータ20から出力すべきトルクを低減させることもできる。ガソリンを燃焼して動力を出力する際には、VVT機構は、エンジン10の回転数に応じて最も燃焼効率の良いタイミングで各バルブが開閉するように制御される。
【0052】
モータ20は、三相の同期モータであり、外周面に複数個の永久磁石を有するロータ22と、回転磁界を形成するための三相コイルが巻回されたステータ24とを備える。モータ20はロータ22に備えられた永久磁石による磁界とステータ24の三相コイルによって形成される磁界との相互作用により回転駆動する。また、ロータ22が外力によって回転させられる場合には、これらの磁界の相互作用により三相コイルの両端に起電力を生じさせる。なお、モータ20には、ロータ22とステータ24との間の磁束密度が円周方向に正弦分布する正弦波着磁モータを適用することも可能であるが、本実施例では、比較的大きなトルクを出力可能な非正弦波着磁モータを適用した。
【0053】
モータ20の電源としては、バッテリ50と燃料電池システム60とが備えられている。但し、主電源は燃料電池システム60である。バッテリ50は燃料電池システム60が故障した場合や十分な電力を出力することができない過渡的な運転状態にある場合などに、これを補完するようモータ20に電力を供給する電源として使用される。バッテリ50の電力は、主としてハイブリッド車両の制御を行う制御ユニット70や、照明装置などの電力機器に主として供給される。
【0054】
モータ20と各電源との間には、接続状態を切り替えるための切替スイッチ84が設けられている。切替スイッチ84は、バッテリ50,燃料電池システム60,モータ20の3者間の接続状態を任意に切り替えることができる。ステータ24は切替スイッチ84および駆動回路51を介してバッテリ50に電気的に接続される。また、切替スイッチ84および駆動回路52を介して燃料電池システム60に接続される。駆動回路51,52は、それぞれトランジスタインバータで構成されており、モータ20の三相それぞれに対して、ソース側とシンク側の2つを一組としてトランジスタが複数備えられている。これらの駆動回路51,52は、制御ユニット70と電気的に接続されている。制御ユニット70が駆動回路51,52の各トランジスタのオン・オフの時間をPWM制御するとバッテリ50および燃料電池システム60を電源とする擬似三相交流がステータ24の三相コイルに流れ、回転磁界が形成される。モータ20は、かかる回転磁界の作用によって、先に説明した通り電動機または発電機として機能する。
【0055】
図2は燃料電池システムの概略構成を示す説明図である。燃料電池システム60は、メタノールを貯蔵するメタノールタンク61、水を貯蔵する水タンク62、燃焼ガスを発生するバーナ63、空気の圧縮を行なう圧縮機64、バーナ63と圧縮機64とを併設した蒸発器65、改質反応により燃料ガスを生成する改質器66、燃料ガス中の一酸化炭素(CO)濃度を低減するCO低減部67、電気化学反応により起電力を得る燃料電池60Aを主な構成要素とする。これらの各部の動作は、制御ユニット70により制御される。
【0056】
燃料電池60Aは、固体高分子電解質型の燃料電池であり、電解質膜、カソード、アノード、およびセパレータとから構成されるセルを複数積層して構成されている。電解質膜は、例えばフッ素系樹脂などの固体高分子材料で形成されたプロトン伝導性のイオン交換膜である。カソードおよびアノードは、共に炭素繊維を織成したカーボンクロスにより形成されている。セパレータは、カーボンを圧縮してガス不透過とした緻密質カーボンなどガス不透過の導電性部材により形成されている。カソードおよびアノードとの間に燃料ガスおよび酸化ガスの流路を形成する。
【0057】
燃料電池システム60の各構成要素は次の通り接続されている。メタノールタンク61は配管で蒸発器65に接続されている。配管の途中に設けられたポンプP2は、流量を調整しつつ、原燃料であるメタノールを蒸発器65に供給する。水タンク62も同様に配管で蒸発器65に接続されている。配管の途中に設けられたポンプP3は、流量を調整しつつ、水を蒸発器65に供給する。メタノールの配管と、水の配管とは、それぞれポンプP2,P3の下流側で一つの配管に合流し、蒸発器65に接続される。
【0058】
蒸発器65は、供給されたメタノールと水とを気化させる。蒸発器65には、バーナ63と圧縮機64とが併設されている。蒸発器65は、バーナ63から供給される燃焼ガスによってメタノールと水とを沸騰、気化させる。バーナ63の燃料は、メタノールである。メタノールタンク61は、蒸発器65に加えてバーナ63にも配管で接続されている。メタノールは、この配管の途中に設けられたポンプP1により、バーナ63に供給される。バーナ63には、また、燃料電池60Aでの電気化学反応で消費されずに残った燃料排ガスも供給される。バーナ63は、メタノールと燃料排ガスのうち、後者を主として燃焼させる。バーナ63の燃焼温度はセンサT1の出力に基づいて制御されており、約800℃から1000℃に保たれる。バーナ63の燃焼ガスは、蒸発器65に移送される際にタービンを回転させ、圧縮機64を駆動する。圧縮機64は、燃料電池システム60の外部から空気を取り込んでこれを圧縮し、この圧縮空気を燃料電池60Aの陽極側に供給する。
【0059】
蒸発器65と改質器66とは配管で接続されている。蒸発器65で得られた原燃料ガス、即ちメタノールと水蒸気の混合ガスは、改質器66に搬送される。改質器66は、供給されたメタノールと水とからなる原燃料ガスを改質して水素リッチな燃料ガスを生成する。なお、蒸発器65から改質器66への搬送配管の途中には、温度センサT2が設けられており、この温度が通常約250℃の所定値になるようにバーナ63に供給するメタノール量が制御される。なお、改質器66における改質反応では酸素が関与する。この改質反応に必要な酸素を供給するために、改質器66には外部から空気を供給するためのブロワ68が併設されている。
【0060】
改質器66とCO低減部67とは配管で接続されている。改質器66で得られた水素リッチな燃料ガスは、CO低減部67に供給される。改質器66での反応課程において、通常は燃料ガスに一酸化炭素(CO)が一定量含まれる。CO低減部67は、この燃料ガス中の一酸化炭素濃度を低減させる。固体高分子型の燃料電池では、燃料ガス中に含まれる一酸化炭素が、アノードにおける反応を阻害して燃料電池の性能を低下させてしまうからである。CO低減部67は、燃料ガス中の一酸化炭素を二酸化炭素へと酸化することにより、一酸化炭素濃度を低減させる。
【0061】
CO低減部67と燃料電池60Aのアノードとは配管で接続されている。一酸化炭素濃度が下げられた燃料ガスは、燃料電池60Aの陰極側における電池反応に供される。また、先に説明した通り、燃料電池60Aのカソード側には圧縮された空気を送り込むための配管が接続されている。この空気は、酸化ガスとして燃料電池60Aの陽極側における電池反応に供される。
【0062】
以上の構成を有する燃料電池システム60は、メタノールと水を用いた化学反応によって電力を供給することができる。本実施例では、メタノールタンク61,水タンク62内のメタノールおよび水の残量に応じて、燃料電池の運転状態を制御する。かかる制御を実現するため、それぞれのタンクには、容量センサ61a、62aが設けられている。なお、本実施例では、メタノールおよび水を用いる燃料電池システム60を搭載しているが、燃料電池システム60は、これに限定されるものではなく、種々の構成を適用することができる。
【0063】
燃料電池システム60には、冷却系統が備えられている。エンジン10にも冷却系統が備えられているが、図1では図示を省略した。燃料電池システム60の冷却系統は、エンジン10の冷却系統とは個別に備えられている。この冷却系統は、図示する通り、冷却水が通過する冷媒路94と、冷却水の放熱を行うためのラジエータ92と、冷却水を循環させるためのポンプ93とからなる。ポンプ93は、後述する補機駆動装置82で駆動される。
【0064】
なお、以下の説明では燃料電池システム60をまとめて燃料電池60と称するものとする。また、燃料電池での発電に使用されるメタノールおよび水を総称してFC燃料と呼ぶものとする。両者の容量は常に同一とは限らない。以下の説明においてFC燃料量というときは、燃料電池での発電に制約を与える側の容量を意味するものとする。つまり、メタノールおよび水のうち、発電を継続した場合に先に不足する側の容量を意味するものとする。
【0065】
本実施例のハイブリッド車両は、外部に電力を供給するためのコンセント91を備えており、燃料電池60およびバッテリ50は、このコンセント91の電源としても活用される。コンセント91と燃料電池60およびバッテリ50とは、切替スイッチ90を介して接続されており、切替スイッチ90の切り替えによって電源を燃料電池60とバッテリ50との間で切り替えることができる。切替スイッチ90は制御ユニット70からの制御信号によって切り替えられる。コンセント91は、後述する補機駆動用モータ80とも電気的に接続されている。従って、補機駆動用モータ80を発電機として駆動すれば、その電力をコンセント91から出力することも可能である。
【0066】
トルクコンバータ30は、流体を利用した周知の動力伝達機構である。トルクコンバータ30の入力軸、即ちモータ20の出力軸13と、トルクコンバータ30の出力軸14とは機械的に結合されてはおらず、互いに滑りをもった状態で回転可能である。両者の末端には、それぞれ複数のブレードを有するタービンが備えられており、モータ20の出力軸13のタービンとトルクコンバータ30の出力軸14のタービンとが互いに対向する状態でトルクコンバータ内部に組み付けられている。トルクコンバータ30は密閉構造をなしており、中にはトランスミッション・オイルが封入されている。このオイルが前述のタービンにそれぞれ作用することで、一方の回転軸から他方の回転軸に動力を伝達することができる。しかも、両者はすべりをもった状態で回転可能であるから、一方の回転軸から入力された動力を、回転数およびトルクの異なる回転状態に変換して他方の回転軸に伝達することができる。トルクコンバータ30には、両回転軸の滑りが生じないよう、所定の条件下で両者を結合するロックアップクラッチも設けられている。ロックアップクラッチのオン・オフは制御ユニット70により制御される。
【0067】
変速機100は、内部に複数のギヤ、クラッチ、ワンウェイクラッチ、ブレーキ等を備え、変速比を切り替えることによってトルクコンバータ30の出力軸14のトルクおよび回転数を変換して出力軸15に伝達可能な機構である。図3は変速機100の内部構造を示す説明図である。本実施例の変速機100は、大きくは副変速部110(図中の破線より左側の部分)と主変速部120(図中の破線より右側の部分)とから構成されており、図示する構造により前進5段、後進1段の変速段を実現することができる。
【0068】
変速機100の構成について回転軸14側から順に説明する。図示する通り、回転軸14から入力された動力は、オーバードライブ部として構成された副変速部110によって所定の変速比で変速されて回転軸119に伝達される。副変速部110は、シングルピニオン型の第1のプラネタリギヤ112を中心に、クラッチC0と、ワンウェイクラッチF0と、ブレーキB0により構成される。第1のプラネタリギヤ112は、遊星歯車とも呼ばれるギヤであり、中心で回転するサンギヤ114、サンギヤの周りで自転しながら公転するプラネタリピニオンギヤ115、更にプラネタリピニオンギヤの外周で回転するリングギヤ118の3種類のギヤから構成されている。プラネタリピニオンギヤ115は、プラネタリキャリア116と呼ばれる回転部に軸支されている。
【0069】
一般にプラネタリギヤは、上述の3つのギヤのうち2つのギヤの回転状態が決定されると残余の一つのギヤの回転状態が決定される性質を有している。プラネタリギヤの各ギヤの回転状態は、機構学上周知の計算式(1)によって与えられる。
Ns=(1+ρ)/ρ×Nc−Nr/ρ;
Nc=ρ/(1+ρ)×Ns+Nr/(1+ρ);
Nr=(1+ρ)Nc−ρNs;
Ts=Tc×ρ/(1+ρ)=ρTr;
Tr=Tc/(1+ρ);
ρ=サンギヤの歯数/リングギヤの歯数 ・・・(1);
【0070】
ここで、
Nsはサンギヤの回転数;
Tsはサンギヤのトルク;
Ncはプラネタリキャリアの回転数;
Tcはプラネタリキャリアのトルク;
Nrはリングギヤの回転数;
Trはリングギヤのトルク;
である。
【0071】
副変速部110では、変速機100の入力軸に相当する回転軸14がプラネタリキャリア116に結合されている。またこのプラネタリキャリア116とサンギヤ114との間にワンウェイクラッチF0とクラッチC0とが並列に配置されている。ワンウェイクラッチF0はサンギヤ114がプラネタリキャリア116に対して相対的に正回転、即ち変速機への入力軸14と同方向に回転する場合に係合する方向に設けられている。サンギヤ114には、その回転を制止可能な多板ブレーキB0が設けられている。副変速部110の出力に相当するリングギヤ118は回転軸119に結合されている。回転軸119は、主変速部120の入力軸に相当する。
【0072】
かかる構成を有する副変速部110は、クラッチC0又はワンウェイクラッチF0が係合した状態ではプラネタリキャリア116とサンギヤ114とが一体的に回転する。先に示した式(1)に照らせば、サンギヤ114とプラネタリキャリア116の回転数が等しい場合には、リングギヤ118の回転数もこれらと等しくなるからである。このとき、回転軸119は入力軸14と同じ回転数となる。またブレーキB0を係合させてサンギヤ114の回転を止めた場合、先に示した式(1)においてサンギヤ114の回転数Nsに値0を代入すれば明らかな通り、リングギヤ118の回転数Nrはプラネタリキャリア116の回転数Ncよりも高くなる。即ち、回転軸14の回転は増速されて回転軸119に伝達される。このように副変速部110は、回転軸14から入力された動力を、そのままの状態で回転軸119に伝える役割と、増速して伝える役割とを選択的に果たすことができる。
【0073】
次に、主変速部120の構成を説明する。主変速部120は三組のプラネタリギヤ130,140,150を備えている。また、クラッチC1,C2、ワンウェイクラッチF1,F2およびブレーキB1〜B4を備えている。各プラネタリギヤは、副変速部110に備えられた第1のプラネタリギヤ112と同様、サンギヤ、プラネタリキャリアおよびプラネタリピニオンギヤ、並びにリングギヤから構成されている。三組のプラネタリギヤ130,140,150は次の通り結合されている。
【0074】
第2のプラネタリギヤ130のサンギヤ132と第3のプラネタリギヤ140のサンギヤ142とは互いに一体的に結合されており、これらはクラッチC2を介して入力軸119に結合可能となっている。これらのサンギヤ132,142が結合された回転軸には、その回転を制止するためのブレーキB1が設けられている。また、該回転軸が逆転する際に係合する方向にワンウェイクラッチF1が設けられている。さらにこのワンウェイクラッチF1の回転を制止するためのブレーキB2が設けられている。
【0075】
第2のプラネタリギヤ130のプラネタリキャリア134には、その回転を制止可能なブレーキB3が設けられている。第2のプラネタリギヤ130のリングギヤ136は、第3のプラネタリギヤ140のプラネタリキャリア144および第4のプラネタリギヤ150のプラネタリキャリア154と一体的に結合されている。更に、これら三者は変速機100の出力軸15に結合されている。
【0076】
第3のプラネタリギヤ140のリングギヤ146は、第4のプラネタリギヤ150のサンギヤ152に結合されるとともに、回転軸122に結合されている。回転軸122はクラッチC1を介して主変速部120の入力軸119に結合可能となっている。第4のプラネタリギヤ150のリングギヤ156には、その回転を制止するためのブレーキB4と、リングギヤ156が逆転する際に係合する方向にワンウェイクラッチF2とが設けられている。
【0077】
変速機100に設けられた上述のクラッチC0〜C2およびブレーキB0〜B4は、それぞれ油圧によって係合および解放する。図1中に示す通り、変速機100には電動式の油圧ポンプ102から、これらのクラッチおよびブレーキを作動させるための作動油が供給されている。詳細な図示は省略したが、変速機100には作動を可能とする油圧配管および油圧を制御するためのソレノイドバルブ等が設けられた油圧制御部104により、油圧を制御することができる。本実施例のハイブリッド車両では、制御ユニット70が油圧制御部104内のソレノイドバルブ等に制御信号を出力することによって、各クラッチおよびブレーキの作動を制御する。
【0078】
本実施例の変速機100は、クラッチC0〜C2およびブレーキB0〜B4の係合および解放の組み合わせによって、前進5段・後進1段の変速段を設定することができる。また、いわゆるパーキングおよびニュートラルの状態も実現することができる。図4は各クラッチ、ブレーキ、およびワンウェイクラッチの係合状態と変速段との関係を示す説明図である。この図において、○印はクラッチ等が係合した状態であることを意味し、◎は動力源ブレーキ時に係合することを意味し、△印は係合するものの動力伝達に閑係しないことを意味している。動力源ブレーキとは、エンジン10およびモータ20による制動をいう。なお、ワンウェイクラッチF0〜F2の係合状態は、制御ユニット70の制御信号に基づくものではなく、各ギヤの回転方向に基づくものである。
【0079】
図4に示す通り、パーキング(P)およびニュートラル(N)の場合には、クラッチC0およびワンウェイクラッチF0が係合する。クラッチC2およびクラッチC1の双方が解放状態であるから、主変速部120の入力軸119から下流には動力の伝達がなされない。
【0080】
第1速(1st)の場合には、クラッチC0,C1およびワンウェイクラッチF0,F2が係合する。また、エンジンブレーキをかける場合には、さらにブレーキB4が係合する。この状態では、変速機100の入力軸14は第4のプラネタリギヤ150のサンギヤ152に直結された状態に等しくなり、動力は第4のプラネタリギヤ150の変速比に応じた変速比で出力軸15に伝達される。リングギヤ156は、ワンウェイクラッチF2の作用により逆転しないように拘束され、事実上回転数は値0となる。
【0081】
第2速(2nd)の場合には、クラッチC1、ブレーキB3、ワンウェイクラッチF0が係合する。また、エンジンブレーキをかける場合には、さらにクラッチC0が係合する。この状態では、変速機100の入力軸14は第4のプラネタリギヤ150のサンギヤ152および第3のプラネタリギヤ140のリングギヤ146に直結された状態に等しい。一方、第2のプラネタリギヤ130のプラネタリキャリア134は固定された状態となる。第2のプラネタリギヤ130および第3のプラネタリギヤ140について見れば、両者のサンギヤ132、142の回転数は等しい。また、リングギヤ136とプラネタリキャリア144の回転数は等しい。これらの条件下で、先に説明した式(1)に照らせば、プラネタリギヤ130、140の回転状態は一義的に決定される。出力軸15の回転数Noutは第1速(1st)の回転数よりも高くなり、トルクToutは第1速(1st)のトルクよりも低くなる。
【0082】
第3速(3rd)の場合には、クラッチC0,C1、ブレーキB2、ワンウェイクラッチF0,F1が係合する。また、エンジンブレーキをかける場合には、さらにブレーキB1が係合する。この状態では、変速機100の入力軸14は第4のプラネタリギヤ150のサンギヤ152および第3のプラネタリギヤ140のリングギヤ146に直結された状態に等しい。一方、第2および第2のプラネタリギヤ130、140のサンギヤ132、142はブレーキB2およびワンウェイクラッチF1の作用により逆転が禁止された状態となり、事実上回転数は値0となる。かかる条件下で、第2速(2nd)の場合と同様、先に説明した式(1)に照らせば、プラネタリギヤ130、140の回転状態は一義的に決定され、出力軸15の回転数も一義的に決定される。出力軸15の回転数Noutは第2速(2nd)の回転数よりも高くなり、トルクToutは第2速(2nd)のトルクよりも低くなる。
【0083】
第4速(4th)の場合には、クラッチC0〜C2およびワンウェイクラッチF0が係合する。ブレーキB2も同時に係合するが、動力の伝達には無関係である。この状態では、クラッチC1,C2が同時に係合するため、入力軸14は第2のプラネタリギヤ130のサンギヤ132、第3のプラネタリギヤ140のサンギヤ142およびリングギヤ146、第4のプラネタリギヤ150のサンギヤ152に直結された状態となる。この結果、第3のプラネタリギヤ140は入力軸14と同じ回転数で一体的に回転する。従って、出力軸15も入力軸14と同じ回転数で一体的に回転する。従って第4速(4th)では、出力軸15は第3速(3rd)よりも高い回転数で回転する。出力軸15の回転数Noutは第3速(3rd)の回転数よりも高くなり、トルクToutは第3速(3rd)のトルクよりも低くなる。
【0084】
第5速(5th)の場合には、クラッチC1、C2、ブレーキB0が係合する。ブレーキB2も係合するが、動力の伝達には無関係である。この状態では、クラッチC0が解放されるため、副変速部110で回転数が増速される。つまり、変速機100の入力軸14の回転数は、増速されて主変速部120の入力軸119に伝達される。一方、クラッチC1,C2が同時に係合するため、第4速(4th)の場合と同様、入力軸119と出力軸15とは同じ回転数で回転する。先に説明した式(1)に照らせば、副変速部110の入力軸14と出力軸119の回転数、トルクの関係を求めることができ、出力軸15の回転数、トルクを求めることができる。出力軸15の回転数Noutは第4速(4th)の回転数よりも高くなり、トルクToutは第4速(4th)のトルクよりも低くなる。
【0085】
リバース(R)の場合には、クラッチC2、ブレーキB0、B4が係合する。このとき、入力軸14の回転数は副変速部110で増速された上で、第2のプラネタリギヤ130のサンギヤ132、第3のプラネタリギヤ140のサンギヤ142に直結された状態となる。既に説明した通り、リングギヤ136、プラネタリキャリア144、154の回転数は等しくなる。リングギヤ146とサンギヤ152の回転数も等しくなる。また、第4のプラネタリギヤ150のリングギヤ156の回転数はブレーキB4の作用により値0となる。これらの条件下で先に説明した式(1)に照らせば、プラネタリギヤ130、140、150の回転状態は一義的に決定される。このとき出力軸15は負の方向に回転し、後進が可能となる。
【0086】
以上で説明した通り、本実施例の変速機100は、前進5段、後進1段の変速を実現することができる。入力軸14から入力された動力は、回転数およびトルクの異なる動力として出力軸15から出力される。出力される動力は、第1速(1st)から第5速(5th)の順に回転数が上昇し、トルクが低減する。これは入力軸14に負のトルク、即ち制動力が付加されている場合も同様である。入力軸14にエンジン10およびモータ20により、一定の制動力が付加された場合、第1速(1st)から第5速(5th)の順に出力軸15に付加される制動力は低減する。なお、変速機100としては、本実施例で適用した構成の他、周知の種々の構成を適用可能である。変速段が前進5速よりも少ないものおよび多いもののいずれも適用可能である。
【0087】
変速機100の変速段は、制御ユニット70が車速等に応じて設定する。運転者は、車内に備えられたシフトレバーを手動で操作し、シフトポジションを選択することによって、使用される変速段の範囲を変更することが可能である。図5は本実施例のハイブリッド車両におけるシフトポジションの操作部160を示す説明図である。この操作部160は車内の運転席横のフロアに車両の前後方向に沿って備えられている。
【0088】
図示する通り、操作部としてシフトレバー162が備えられている。運転者はシフトレバー162を前後方向にスライドすることにより種々のシフトポジションを選択することができる。シフトポジションは、前方からパーキング(P)、リバース(R)、ニュートラル(N)、ドライブポジション(D)、4ポジション(4)、3ポジション(3)、2ポジション(2)およびローポジション(L)の順に配列されている。
【0089】
パーキング(P)、リバース(R)、ニュートラル(N)は、それぞれ図4で示した係合状態に対応する。ドライブポジション(D)は、図4に示した第1速(1st)から第5速(5th)までを使用して走行するモードの選択を意味する。以下、4ポジション(4)は第4速(4th)まで、3ポジション(3)は第3速(3rd)まで、2ポジション(2)は第2速(2nd)までおよびローポジション(L)は第1速(1st)のみを使用して走行するモードの選択を意味する。
【0090】
操作部160には、この他、車両の作動状態を運転者が指示するための種々のスイッチが設けられている。スポーツモードスイッチ163、動力源切替スイッチ164、およびマニュアル発電スイッチ165である。スポーツモードスイッチ163は、頻繁に加減速を行う場合などに運転者により操作される。通常、変速機100の変速段は車速とアクセル開度に応じて設定されたマップに従って切り替えられる。スポーツモードスイッチ163がオンになっている場合は、全体に低速段側の変速段が使用されるようにマップが変更される。
【0091】
動力源切替スイッチ164は、走行時における動力源の使い分けを指示するためのスイッチである。このスイッチは、図中の「AUTO」の表示が付されている部分を中心にシーソーのように前後方向に回動し、3態様の操作状態を採る。図中の「EG」の表示を付した部分を押して前方に倒した状態(以下、この状態に対応する運転モードをエンジンモードと呼ぶ)、図中の「FC」の表示を付した部分を押して後方に倒した状態(以下、この状態に対応する運転モードをFCモードと呼ぶ)、そして、中立状態(以下、この状態に対応する運転モードを自動モードと呼ぶ)の3態様である。それぞれの運転モードの意味については、後述する制御処理と併せて説明する。
【0092】
マニュアル発電スイッチ165は、コンセント91からの電力の取り出しを許可するスイッチである。マニュアル発電スイッチ165がオンになっている期間は、後述する制御処理により、ハイブリッド車両に電力を供給する能力が残されていれば、コンセント91にプラグを差し込むことにより、種々の電気機器を使用することができる状態になる。マニュアル発電スイッチ165がオフになっている場合は、車両に発電能力があるか否かに関わらずコンセント91を利用することはできない。
【0093】
なお、シフトポジションの選択を行うための操作部は、本実施例で示した構成(図5)以外にも種々の構成を適用することが可能である。また、スポーツモードスイッチ163に代えて、またはスポーツモードスイッチ163とともに運転者が変速段をマニュアルで切り替えられるモードを設けるものとしてもよい。変速段をマニュアルで切り替えるモードを設けた場合、シフトレバー162で変速段を切り替えるものとしてもよいし、これとは別の操作部を設けるものとしてもよい。後者としては、例えば、ステアリング部に変速段をアップ・ダウンするためのスイッチを設ける構成が挙げられる。
【0094】
本実施例のハイブリッド車両では、エンジン10などのエネルギ出力源から出力される動力は、補機の駆動にも用いられる。図1に示す通り、エンジン10には補機駆動装置82が結合されている。補機には、エアコンのコンプレッサやパワーステアリング用のポンプ、燃料電池60の冷却系統に含まれるポンプ93等が含まれる。ここでは、エンジン10などの動力を利用して駆動される補機類をまとめて補機駆動装置82として示した。補機駆動装置82は、具体的にはエンジン10のクランクシャフトに補機クラッチ19を介して設けられたプーリにベルトを介して結合されており、クランクシャフトの回転動力によって駆動される。
【0095】
補機駆動装置82には、また、補機駆動用モータ80も結合されている。補機駆動用モータ80は、切替スイッチ83を介して燃料電池60およびバッテリ50に接続されている。補機駆動用モータ80は、モータ20と同様の構成を有しており、エンジン10の動力によって運転され、発電を行うことができる。補機駆動用モータ80で発電された電力はバッテリ50に充電することができる。また、補機駆動用モータ80は、バッテリ50および燃料電池60から電力の供給を受けて力行することもできる。本実施例のハイブリッド車両は、後述する通り、所定の条件下では、エンジン10の運転が停止される。補機駆動用モータ80を力行すれば、エンジン10が停止している時でも補機駆動装置82を駆動することができる。もちろん、エンジン10が停止している場合に、入力クラッチ18をオンにして、モータ20の動力で補機駆動装置82を駆動するものとしてもよい。補機駆動用モータ80で補機を駆動する際には、負担を軽減するために、エンジン10と補機駆動装置82との間の補機クラッチ19を解放する。
【0096】
本実施例のハイブリッド車両は、主なエネルギ出力源としてエンジン10と燃料電池60とを備える。バッテリ50の電力は主として走行に使用されるものではないため、ここでは主なエネルギ出力源には含めない。燃料電池60からは電気的エネルギを出力することができ、また、モータ20を力行することにより駆動軸15に機械的エネルギを出力することもできる。エンジン10は駆動軸15に機械的エネルギを出力することができ、また、モータ20または補機駆動用モータ80を発電機として駆動することにより電気的エネルギを出力することもできる。本実施例では、後述する通り、これら2つの主なエネルギ出力源を使い分けて走行する。両者の使い分けは、FC燃料に応じて変動する。本実施例では、運転者が違和感なく運転できるよう、両者のいずれをエネルギ源として走行しているかを運転者に知らせるための表示部が設けられている。
【0097】
図6は本実施例におけるハイブリッド車両の計器板を示す説明図である。この計器板は、通常の車両と同様、運転者の正面に設置されている。計器板には、運転者から見て左側にガソリンの燃料計202、燃料電池用の燃料計203、速度計204が設けられており、右側にエンジン水温計208、エンジン回転計206が設けられている。エンジン回転計206の下方には、EVインジケータ223が設けられている。EVインジケータ223はモータ20の動力によって走行している場合に点灯する。速度計の下方には、外部電源インジケータ224が設けられている。外部電源インジケータ224はコンセント91から電力を取り出し得る場合に点灯する。エンジン燃料電池用の燃料計203は、図示する通り、メタノールの残量と、改質に用いられる水の残量とを左右の指針でそれぞれ示すように構成されている。中央部にはシフトポジションを表示するシフトポジションインジケータ220が設けられており、その左右に方向指示器インジケータ210L、210Rが設けられている。また、スポーツモードインジケータ222がシフトポジションインジケータ220の上方に設けられている。スポーツモードインジケータ222は、スポーツモードが選択されている場合に点灯する。
【0098】
本実施例のハイブリッド車両では、エンジン10、モータ20、トルクコンバータ30、変速機100、補機駆動用モータ80等の運転を制御ユニット70が制御している(図1参照)。制御ユニット70は、内部にCPU、RAM,ROM等を備えるワンチップ・マイクロコンピュータであり、ROMに記録されたプログラムに従い、CPUが後述する種々の制御処理を行う。制御ユニット70には、かかる制御を実現するために種々の入出力信号が接続されている。図7は制御ユニット70に対する入出力信号の結線を示す説明図である。図中の左側に制御ユニット70に入力される信号を示し、右側に制御ユニット70から出力される信号を示す。
【0099】
制御ユニット70に入力される信号は、種々のスイッチおよびセンサからの信号である。かかる信号には、例えば、ガソリン残量、FC燃料残量、燃料電池温度、エンジン10の回転数、エンジン10の水温、イグニッションスイッチ、バッテリ残容量SOC、バッテリ温度、車速、トルクコンバータ30の油温、シフトポジション、サイドブレーキのオン・オフ、フットブレーキの踏み込み量、エンジン10の排気を浄化する触媒の温度、アクセル開度、スポーツモードスイッチ163のオン・オフ、車両の加速度センサ、動力源切替スイッチ164の状態、マニュアル発電スイッチ165のオン・オフなどがある。制御ユニット70には、その他にも多くの信号が入力されているが、ここでは図示を省略した。
【0100】
制御ユニット70から出力される信号は、エンジン10,モータ20,トルクコバータ30,変速機100等を制御するための信号である。かかる信号には、例えば、エンジン10の点火時期を制御する点火信号、燃料噴射を制御する燃料噴射信号、補機駆動用モータ80の運転を制御する補機駆動用モータ制御信号、モータ20の運転を制御するモータ制御信号、変速機100の変速段を切り替える変速機制御信号、変速機100の油圧を制御するためのATソレノイド信号およびATライン圧コントロールソレノイド信号、エンジン10からモータ20側への動力の伝達をオン・オフする入力クラッチ18を制御する入力クラッチ18コントロールソレノイド、トルクコンバータ30のロックアップを行うためのATロックアップコントロールソレノイド、モータ20の電源の切替スイッチ84の制御信号、補機駆動用モータ80の電源の切替スイッチ83の制御信号、燃料電池システム60の制御信号などがある。制御ユニット70からは、その他にも多くの信号が出力されているが、ここでは図示を省略した。
【0101】
B.一般的動作:
次に、本実施例のハイブリッド車両の一般的動作について説明する。先に図1で説明した通り、本実施例のハイブリッド車両は動力源としてエンジン10とモータ20とを備える。制御ユニット70は、車両の走行状態、即ち車速およびトルクに応じて両者を使い分けて走行する。両者の使い分けは予めマップとして設定され、制御ユニット70内のROMに記憶されている。
【0102】
図8は車両の走行状態と動力源との関係を示す説明図である。図中の領域MGはモータ20を動力源として走行する領域である。領域MGの外側の領域は、エンジン10を動力源として走行する領域である。以下、前者をEV走行と呼び、後者をエンジン走行と呼ぶものとする。図1の構成によれば、エンジン10とモータ20の双方を動力源として走行することも可能ではあるが、本実施例では、かかる走行領域は設けていない。
【0103】
図示する通り、本実施例のハイブリッド車両は、まずEV走行で発進する。かかる領域では、入力クラッチ18をオフにして走行する。EV走行により発進した車両が図8のマップにおける領域MGと領域EGの境界近傍の走行状態に達した時点で、制御ユニット70は、入力クラッチ18をオンにするとともに、エンジン10を始動する。入力クラッチ18をオンにすると、エンジン10はモータ20により回転させられる。制御ユニット70は、エンジン10の回転数が所定値まで増加したタイミングで燃料を噴射し点火する。また、VVT機構を制御して、吸気バルブおよび排気バルブの開閉タイミングをエンジン10の運転に適したタイミングに変更する。
【0104】
こうしてエンジン10が始動して以後、領域EG内ではエンジン10のみを動力源として走行する。かかる領域での走行が開始されると、制御ユニット70は駆動回路51,52のトランジスタを全てシャットダウンする。この結果、モータ20は単に空回りした状態となる。
【0105】
制御ユニット70は、このように車両の走行状態に応じて動力源を切り替える制御を行うとともに、変速機100の変速段を切り替える処理も行う。変速段の切り替えは動力源の切り替えと同様、車両の走行状態に予め設定されたマップに基づいてなされる。マップは、シフトポジションによっても相違する。図8にはDポジション、4ポジション、3ポジションに相当するマップを示した。このマップに示す通り、制御ユニット70は、車速が増すにつれて変速比が小さくなるように変速段の切り替えを実行する。
【0106】
ドライブポジション(D)では、図8に示す通り、第5速(5th)までの変速段を用いて走行する。4ポジションでは、このマップにおいて、第4速(4th)までの変速段を用いて走行する。4ポジションでは、図8における5thの領域であっても第4速(4th)が使用される。同様に3ポジションの場合には、図8のマップにおいて、第3速(3rd)までの変速段を用いて走行する。
【0107】
2ポジション、Lポジションでは、マップを各シフトポジションに固有のものに変更して変速段の制御を行う。図9は2ポジションにおける変速段の切り替えの様子を示す説明図である。2ポジションでは、第1速および第2速の変速段が使用される。2ポジションのマップ(図9)において、第1速と第2速の切り替えを行う境界は、Dポジションのマップ(図8)と同じである。2ポジションでは、Dポジションに比較して領域MGの範囲が相違する。
【0108】
2ポジションでは、第3速が使用されないため、領域MGについて、Dポジションのマップ(図8)中の第3速を使用する領域(ハッチングを付した部分)を領域MGから除外する設定とすることも可能である。本実施例では、かかる領域よりも広い範囲で2ポジションにおける領域MGを設定した。図9中の破線は、Dポジションのマップとの対比のために示したものであり、Dポジションのマップ中の第2速と第3速との境界に対応する曲線である。このように領域MG中で第2速に対応する領域を広げることにより、2ポジションにおいても十分にモータ20を動力源として活用することができ、ハイブリッド車両の燃費を向上することができる。なお、第2速に対応する領域の設定に当たっては、モータ20の定格を考慮して、広げた領域(図9中のハッチングを付した領域)における走行感覚がDポジションにおける該当領域と大差ないよう設定することが望ましい。
【0109】
図10はLポジションにおける変速段の切り替えの様子を示す説明図である。Lポジションでは、第1速のみが使用される。2ポジションにおけるマップの設定で説明したのと同様の理由により、Lポジションでは、2ポジションに比較して領域MGの範囲が相違する。Lポジションにおける領域MGは、2ポジションのマップにおいて、領域MG中の第1速に対応する領域よりも広い範囲に設定されている。図11はRポジションにおける変速段の切り替えの様子を示す説明図である。Rポジションでは後進するため、領域MGの広さは前進方向のシフトポジションにおけるマップとは個別に設定した。
【0110】
変速段の切り替えはこのマップによる切り替えの他、運転者がアクセルペダルを急激に踏み込むことにより一段変速比が高い側に変速段を移す、いわゆるキックダウンと呼ばれる切り替えも行われる。また、スポーツモードが選択されている場合には、変速比の低い変速段を使用する領域をそれぞれ拡張して設定したマップに基づいて変速が行われる。これらの切り替え制御は、エンジンのみを動力源とし、自動変速装置を備えた周知の車両と同様である。なお、変速段と車両の走行状態との関係は、図8〜図11に示した他、変速機100の変速比に応じて種々の設定が可能である。
【0111】
なお、図8〜図11では、車両の走行状態に応じてEV走行とエンジン走行とを使い分ける場合のマップを示した。本実施例の制御ユニット70は、全ての領域をエンジン走行で行う場合のマップも備えている。かかるマップは、図8〜図11において、EV走行の領域(領域MG)を除いたものとなっている。EV走行には電力が必要である。制御ユニット70は、バッテリ50および燃料電池システム60から電力を確保できる場合には、EV走行とエンジン走行とを使い分けて運転を行う。十分な電力を確保できない場合には、エンジン走行で運転する。EV走行で発進を開始した場合でも、発進後に電力が十分確保できない状況に至った場合には、車両の走行状態が領域MG内にあってもエンジン走行に切り替えられる。かかる使い分けの制御については後述する。
【0112】
次に、本実施例のハイブリッド車両の制動について説明する。本実施例のハイブリッド車両は、ブレーキペダルを踏み込むことによって付加されるホイールブレーキと、エンジン10およびモータ20からの負荷トルクによる動力源ブレーキの2種類のブレーキによる制動が可能である。モータ20の負荷トルクによるブレーキとは、いわゆる回生制動であり、ハイブリッド車両の運動エネルギをモータ20で電力として回収する制動方法である。回収された電力はバッテリ50に充電される。動力源ブレーキによる制動は、アクセルペダルの踏み込みを緩めた場合に行われる。ブレーキペダルを踏み込めば、車両には動力源ブレーキとホイールブレーキの総和からなる制動力が付加される。
【0113】
本実施例のハイブリッド車両は、制御ユニット70が、エンジン10、モータ20等を制御することによって、上述した走行を可能としている。制御は、車両の種々の運転モードごとに用意された所定の制御処理を実行することにより、行われる。以下では、本実施例のハイブリッド車両について、代表的な運転モードに対し、それぞれ制御処理の内容を説明する。
【0114】
C.EV走行制御処理:
図12はEV走行制御処理ルーチンのフローチャートである。制御ユニット70内のCPUが所定の時間間隔で周期的に実行する処理である。車両の走行状態が図8〜図11に示したMG領域にある場合に実行される処理である。この処理が開始されると、CPUは車両の運転状態を入力する(ステップS10)。図7で示した種々のセンサからの入力がなされるが、特に、シフトポジション、車速、アクセル開度、ガソリン残量GSL、バッテリ残容量SOC、燃料電池用の残燃料量FCL、イグニッションスイッチの状態、動力源切替スイッチ164の状態などが以後の処理に関与する。
【0115】
次に、CPUは動力源切替スイッチ164の状態に基づいて、エンジンモードが指定されているか否かを判定する(ステップS20)。エンジンモードとは、エンジン10のみを動力源として走行する運転モードである。エンジンモードが指定されている場合には、車両の走行状態がMG領域にある場合でも、モータ20を動力源とするEV走行は行わない。ステップS20においてエンジンモードが指定されていると判断された場合、CPUはガソリン残量GSLが所定の値G1以上であるか否かを判定する(ステップS60)。残量が所定の値G1以上の場合には、エンジン10を運転してもよい状態にあると判定し、エンジン10を動力源とする走行を行う(ステップS65)。残量が所定の値G1に満たない場合には、エンジン10の運転を停止すべきと判定し、エンジン10の運転を停止する(ステップS70)。この際、エンジンモードではモータ20の運転も停止される(ステップS70)。
【0116】
所定の値G1は、上述の通り、エンジン10の運転を許可するか否かの判定基準となる値であり、0以上の任意の値に設定することができる。G1を値0に設定すれば、ガソリンを完全に消費するまでエンジンモードで走行することが可能となる。本実施例では、エンジンモードは運転者が任意に選択するモードである点を考慮し、G1の値を正の所定値とした。即ち、エンジンモードでは、実際にはエンジン10の運転を継続可能な状態でその運転が禁止されることになる。運転者は、例えば自動モードを選択することにより、モータ20とエンジン10とを使い分けた走行を継続することが可能となる。
【0117】
ステップS20においてエンジンモードが選択されていない場合、即ち自動モードまたはFCモードが選択されていると判断される場合には、CPUはそれぞれの運転モードに対応した状態で動力源の使い分けを実行する。CPUは燃料電池60が使用可能な状態にあるか否かを判定するため、FC燃料の残量FCLが所定の値F1以上であるか否かを判定する(ステップS30)。所定の値F1の設定については後述する。残量がF1以上である場合には、燃料電池60が使用可能であると判定し、モータ20を動力源とする走行を行う(ステップS35)。また、違和感のない運転を実現するため、EVインジケータ223を点灯する。モータ20を動力源とする旨を運転者ににこのとき、エンジン10は停止される。(ステップS35)。ここではエンジンの運転可否を特定するフラグをオフにする。実際には、別途用意されたエンジンの運転の制御処理で、その運転が停止される。
【0118】
モータ20を駆動するために、CPUは、電源の切替スイッチ84を制御して、燃料電池60とモータ20とを接続する。また、モータ20の運転の可否を示すフラグをオンにするとともに、モータ20の目標運転状態、即ち目標回転数と目標トルクとを特定する。本実施例では、モータ20の運転自体は、別途用意されたルーチンで実行するものとしているため、ここでは、該ルーチンに受け渡すデータの設定を行うのである。目標回転数は、ステップS10で入力された車速に変速機100の変速比およびディファレンシャルギヤの変速比などを乗じることで特定される。目標トルクは、車速とアクセル開度とに応じて予め設定されたマップによって特定される。これらの目標運転状態が、別途用意された制御処理に受け渡されることにより、モータ20は該目標運転状態で運転される。
【0119】
モータ20を駆動する制御処理について説明する。図13はモータ駆動制御ルーチンを示すフローチャートである。この処理が開始されると、CPUはモータ20の駆動を許可する運転フラグがオンになっているか否かを判定する(ステップS1)。運転フラグがオンでない場合には、モータ20を駆動すべきでないと判断して、何も処理を行うことなくモータ駆動制御ルーチンを終了する。
【0120】
モータ20の運転フラグがオンになっている場合には、次に、モータ20の目標運転状態、即ち目標回転数および目標トルクを入力する(ステップS2)。目標運転状態は、上述のEV走行制御処理などの運転制御処理でそれぞれ設定されている。こうして入力された目標運転状態に基づき、CPUはモータ20に印加すべき電圧Vd、Vqを設定する(ステップS3)。Vd,Vqとは、それぞれモータ20のd軸電圧、q軸電圧を意味する。本実施例では、同期モータの制御方法として周知の技術であるベクトル制御を適用する。ベクトル制御では、ロータの回転とともに回転するd軸およびq軸方向の電圧がモータ20の出力トルクを制御する本質的なパラメータとして扱われる。これらの電圧は、目標回転数および目標トルクに応じて予め設定され、テーブルとして記憶されている。CPUはステップS2で入力された目標運転状態に基づき、このテーブルを参照して、印加電圧Vd,Vqを設定するのである。
【0121】
こうしてd軸方向、q軸方向の電圧を設定すると、CPUはそれらの電圧をモータ20のU,V,W相の各コイルに印加すべき電圧に変換する(ステップS4)。かかる変換は、2相/3相変換と呼ばれる。d軸方向およびq軸方向の電圧値に、ロータの回転位置に応じた周知のマトリックスを乗じることで変換することができる。こうして設定された各相の電圧に基づき、CPUはトランジスタをPWM制御する(ステップS5)。即ち、各相に接続されたそれぞれのトランジスタのオン・オフの割合を電圧に応じて調整する制御を行う。以上の処理により、CPUはモータ20の運転を制御することができる。
【0122】
なお、燃料電池60は要求された電力が出力されるまでに通常、一定の遅れ時間を要する。本実施例では、かかる立ち上がり遅れによる影響を抑制するために、バッテリ50を補助的に使用する。即ち、要求された電力が十分出力されるまでの間、不足分の電力を補償するようにバッテリ50から電力を供給し、燃料電池60から所望の電力が出力されるようになった時点で完全に燃料電池60を電源とする。かかる制御は、モータ20をバッテリ50および燃料電池60の双方に接続された状態にし、各駆動回路51,52のスイッチングをそれぞれ制御して、各電源から供給される電圧を徐々に変更することにより実現可能である。もちろん、立ち上がり遅れが生じるか否かに関わらず、当初から燃料電池60のみを電源としても構わない。
【0123】
ステップS30において、FC燃料の残量FCLが所定の値F1よりも小さい場合には、燃料電池60を使用すべきでないと判断する。CPUは、次に動力源切替スイッチ164の状態に基づいてFCモードが設定されているか否かを判定する(ステップS40)。FCモードは、燃料電池60をエネルギ出力源として走行する運転モードである。自動モードは燃料電池60とエンジン10とを使い分けて走行する運転モードである。従って、FCモードが選択されていない場合においてFC燃料の残量が消費されている場合には、エンジン10を動力源として走行する(ステップS65)。エンジン10を動力源として走行する場合には、EVインジケータ223は消灯される。
【0124】
一方、FCモードが選択されている場合には、エンジン10の使用が原則として禁止される。CPUは次にイグニッションスイッチがオンになっているか否かを判定する(ステップS50)。イグニッションスイッチがオンになっていない場合には、原則通り、エンジン10の運転を禁止し、燃料電池60の運転も停止する(ステップS55)。ハイブリッド車両は、動力源を失い停車することになる。一方、イグニッションスイッチがオンになっている場合には、運転者からエンジン10の始動要求があったものと判断され、換言すれば、FCモードが解除されたものと判断され、エンジン10を動力源として走行する(ステップS65)。
【0125】
エンジン10を動力源として走行する場合には(ステップS65)、バッテリ50の残容量SOCを増加する処理を同時に行う。本実施例ではバッテリ50の残容量SOCが所定の下限値以上を維持するように制御されている。バッテリ50の残容量がこの下限値に満たない場合には、エンジン10の動力で補機駆動用モータ80を発電機として駆動することによる充電や、燃料電池60による充電を行う。ステップS65でエンジン10を動力源として走行する場合には、FC燃料が不足している可能性が高い。従って、電力の要求に即応できるようバッテリ50の下限値を増大するのである。
【0126】
ここで、バッテリ50の残容量SOCの設定について説明する。図14はバッテリ50の充電状態と回生電力の活用との関係を示す説明図である。ここでは、バッテリ50の充電状態をCASE1〜CASE3の3通りに変化させた場合の状態をそれぞれ示した。CASE1は比較的高い充電状態値SOC1にある場合に対応する。バッテリ50には、図中のハッチングで示す電力が維持される。かかる状態でハイブリッド車両を回生制動した場合を考える。回生制動によって得られる電力(以下、回生電力と呼ぶ)は制動前後の車速や車両の重量に応じて変動するが、ここでは平均的な回生電力を図示した。バッテリ50の下限値を高い値に設定したCASE1では、バッテリ50の充電限界内で回生電力を全て充電することができなくなる。従って、CASE1では回生電力の一部(図中の塗りつぶした部分)が廃棄される。この分、ハイブリッド車両は、車両の運動エネルギを活用できなくなるため、エネルギ効率が低下する。
【0127】
CASE2は中程度の充電状態SOC2にある場合に対応する。かかる状態では、回生電力を充電限界内でバッテリ50に充電することができる。CASE3は低い充電状態SOC3にある場合に対応する。かかる状態でも、回生電力を十分にバッテリ50に充電することができる。これらの設定であれば、ハイブリッド車両の運動エネルギを効率的に活用することが可能となる。このように回生電力を有効に活用する観点からは、バッテリ50の充電量は低い値に維持しておくことが望ましい。
【0128】
一方、バッテリ50の充電量は、要求される電力を十分出力することができる値以上に維持する必要がある。先に説明した通り、バッテリ50の電力は、燃料電池60の運転開始当初の立ち上がり遅れを補償するのに使用される。この場合は、比較的多くの電力を出力する必要がある。通常は、これらを考慮して、バッテリ50の充電状態の下限値を、図中のSOC3に相当する値に設定されている。上記ステップS65では、バッテリ50の残容量の下限値を、例えば図中のSOC2に相当する値など、回生電力を充電可能な範囲で増大する。
【0129】
次に、上述の処理で用いられたF1(ステップS30)の設定について説明する。所定の値F1は燃料電池60を電源として使用するか否かの基準となる値である。所定の値F1については、値0以上の範囲で任意に設定可能である。値0に設定すれば、燃料が残っている限り、燃料電池60を電源として使用することになる。EV走行のみを考慮すれば、値0として設定するのが運転効率および環境性の観点から好ましい。しかし、値0にした場合には、他の運転モードで燃料電池を使用する必要性が生じた場合に、EV走行で既に燃料が消費されており、燃料電池を使用し得ない可能性も生じる。
【0130】
本実施例では、他の運転モードを考慮して、正の所定値に設定した。即ち、EV走行制御処理では、燃料電池用の燃料を完全に消費することがないように設定した。本実施例のハイブリッド車両は、後述する通り、EV走行以外の運転モードにおいても、種々のモードで電源を必要とする。運転効率および環境性の観点から、EV走行よりも電源の必要性が高い運転モードも存在する。かかるモードで燃料電池を電源として確保しやすくするため、本実施例では、EV走行時には、燃料電池用の燃料の使用を抑制するものとした。換言すれば、所定の値F1以上の燃料が存在し、燃料に比較的余裕がある場合にのみ燃料電池を電源とすることにしているのである。なお、本実施例の処理では、FCモードが選択されている場合と、自動モードが選択されている場合とで所定の値F1は共通としている。F1の値は、運転モードに応じて変更することも可能である。
【0131】
以上で説明したEV走行制御処理によれば、MG領域において、通常は燃料電池60を優先的に使用して走行することができる。従って、効率および環境性に優れた運転を実現することができる。また、上記実施例では、動力源切替スイッチ164の操作により、走行中に使用する動力源を運転者が任意に指定することができる。従って、運転者の意図に応じた作動状態を実現することができ、ハイブリッド車両の利便性を向上することができる。
【0132】
動力源の選択により利便性が向上する場面の具体例を示す。第1の例として、目的地において燃料電池60を用いてコンセント91を利用したい場合には、エンジンモードを選択することにより、目的地に到着するまでのFC燃料の消費を抑制することができる。この結果、目的地で燃料電池60をより有効に活用することができる。第2の例として、車両の応答性に対する要求に応じた使い分けをすることもできる。一般に燃料電池60は出力の応答性が低い特性を有している。かかる場合にエンジンモードを選択すれば、高い応答性で車両を運転することができる。第3の例として、騒音の抑制に関する要求に応じた使い分けをすることもできる。一般にエンジン10は作動音が大きいため、深夜の走行時など騒音を抑制する要求が高い場合には、FCモードを選択することにより、静粛性を保った運転を実現することができる。このように動力源を運転者が任意に選択可能とすることにより、ハイブリッド車両の利便性を向上することができる。
【0133】
なお、上記制御処理では、FCモードが選択されている場合において、FC燃料が少なくなると、イグニッションスイッチが操作されるまでハイブリッド車両は停車する場合を例示した(図12のステップS55参照)。運転者が予期しないまま、FC燃料の消費により停車すれば、運転者が故障と誤判断するなど、ハイブリッド車両の利便性を損ねる可能性もある。かかる誤判断を回避するため、上記制御処理においては、所定値F1付近にまでFC燃料が低減した時点で、EVインジケータ223を点滅させるなどして、運転者に報知する処理を含めることも望ましい。
【0134】
D.外部電源稼働制御処理:
図15は外部電源稼働制御処理のフローチャートである。図1に示した通り、本実施例のハイブリッド車両は、電気機器を接続して利用するためのコンセント91を備えている。外部電源稼働制御処理は、コンセント91への電力の供給を制御する処理である。
【0135】
この処理が開始されると、CPUは各センサおよびスイッチからの信号を入力する(ステップS110)。図7で示した種々のセンサ等からの入力がなされるが、特に、マニュアル発電スイッチ165、シフトポジション、バッテリ残容量SOC、FC燃料の残量FCL、イグニッションスイッチのオン・オフが以後の処理に関与する。
【0136】
次に、CPUはマニュアル発電スイッチ165がオンになっているか否かを判定する(ステップSS110)。マニュアル発電スイッチ165がオフになっている場合には、コンセント91の使用が許可されない。従って、CPUは外部電源をオフにする処理、即ちコンセント91への電力の供給を禁止する処理を行い、外部電源インジケータ224を消灯する(ステップS140)。外部電源のオフは、切替スイッチ90を中立状態にすることで実現される。
【0137】
マニュアル発電スイッチ165がオンとなっている場合には、次にCPUはシフトポジションがPポジションであるか否かを判定する(ステップSS115)。この判定は、必ずしも必要となるものではないが、本実施例では、コンセント91の使用は停車中である可能性が高いという事情を考慮し、確認のためにかかる判定を行っている。Pポジションでない場合には、外部電源の使用は許可されない。従って、CPUは外部電源をオフにする処理を行い、外部電源インジケータ224を消灯する(ステップS140)。走行中にもコンセント91を使用する必要性が高い場合には、ステップS115の判断処理を省略するものとしてもよい。
【0138】
一方、Pポジションであると判断された場合には、コンセント91から電力を出力するための処理を行う。ハイブリッド車両はバッテリ50と燃料電池60という2種類の電源を備えている。さらに、エンジン10により補機駆動用モータ80を発電機として駆動することにより電源として使用することもできる。本実施例では、バッテリ50、燃料電池60、エンジン10の優先順位で電源を使用するものとした。
【0139】
上記使い分けを実現するために、CPUはまず、バッテリ50の残容量SOCが所定の値A%以上であるか否かを判定する(ステップS120)。A%以上のSOCの場合には、バッテリ50に余裕があるものと判断して、外部電源をオンにするとともに、外部電源インジケータ224を点灯する処理を行う(ステップS125)。この際、コンセント91に電力を供給する電源はバッテリ50であり、燃料電池60およびエンジン10はともに運転を停止している。
【0140】
所定の値A%は、バッテリ50の電力を使用するか否かの判断基準となる値であり、任意の値に設定可能である。本実施例では、既に説明した通り、燃料電池60の立ち上がり遅れをバッテリ50で補償するものとしている。このため、バッテリ50には、かかる補償を実現可能な電力を残しておくことが望ましい。本実施例では、かかる観点から、所定の値A%を図14におけるSOC3に若干余裕を見込んだ値に設定した。もちろん、これ以外の値に設定するものとしても構わない。
【0141】
ステップS120において、残容量SOCがA%に満たない場合、CPUはFC燃料の残容量FCLが所定の値F2以上であるか否かを判定する(ステップS130)。残容量FCLが値F2以上である場合には、燃料電池60の発電能力に余裕があるものと判断して、外部電源をオンにするとともに、外部電源インジケータ224を点灯する処理を行う(ステップS150)。この際、コンセント91に電力を供給する電源は燃料電池60であり、エンジン10はともに運転を停止している。
【0142】
所定の値F2は、燃料電池60を使用するか否かの判断基準となる値であり、任意の値に設定可能である。ここで、コンセント91は、ハイブリッド車両の利便性を向上するための装備であり、車両の本質的な機能に必須の装備ではない。かかる観点から、本実施例では、外部電源の使用は、燃料電池60の発電能力に十分な余裕がある場合に制限している。従って、所定の値F2は、正の所定値に設定した。また、先に説明したEV走行制御処理(図12)における必要性も考慮し、値F2はEV走行制御処理で用いられる所定の値F1よりも大きい値に設定した。もちろん、値F2はかかる設定に限定されるものではないことは言うまでもない。
【0143】
ステップS130において残容量FCLが所定の値F2に満たない場合は、原則として外部電源の使用が禁止される。つまり、エンジン10を動力源とするコンセント91への電力の供給は、運転者により別途指示された場合にのみ実行する。かかる判断を行うため、CPUはイグニッションスイッチがオンになっているか否かを判定する(ステップS135)。イグニッションスイッチがオンになっていない場合には、原則通り、外部電源の使用を禁止し、外部電源インジケータ224を消灯する(ステップS140)。一方、イグニッションスイッチがオンになっている場合には、運転者からエンジン10を動力源とする電源供給が指示されたものと判断され、外部電源をオンにするとともに、外部電源インジケータ224を点灯する処理を行う(ステップS145)。この際、コンセント91に電力の供給るエンジン10の動力で補機駆動用モータ80を発電機として駆動することにより行われる。燃料電池60は運転を停止する。
【0144】
以上で説明した外部電源稼働制御処理ルーチンによれば、コンセント91から電力を出力することができ、ハイブリッド車両の利便性を向上することができる。この際、可逆的な電源であるバッテリ50を優先的に使用することにより、車両の本質的機能である走行に影響を与えることなく電力を出力することができる。バッテリ50および燃料電池60を電源として使用し、原則としてエンジン10を動力源とする電力の供給を禁止することにより、燃費および環境性を損ねることなくコンセント91からの電力を活用することができる。また、エンジン10の運転を禁止することにより、コンセント91を使用する際の静粛性も確保することができる。
【0145】
上記制御処理では、イグニッションスイッチをオンにすることで、エンジン10を用いた電力の供給を行うことができる。従って、コンセント91を利用する必要性が高い場合には、運転者の意志により電力の供給を確保することができ、ハイブリッド車両の利便性を向上することができる。
【0146】
E.第1の変形例:
以上で説明した第1実施例のハイブリッド車両によれば、燃料電池60をエンジン10よりも優先的に使用することにより、車両の作動時の運転効率および環境性を向上することができる。また、運転者がマニュアルで運転モードを選択したり、コンセント91の作動状態を指定したりすることができるため、運転者の意図に応じた作動状態を実現することができ、ハイブリッド車両の利便性を向上することができる。さらに、エンジン10を使用するのが適さない運転モードにおいては、原則としてエンジン10の運転を禁止するため、エンジン10の運転に伴う燃費および環境性の低下を回避することができる。また、かかる場合においても、イグニッションスイッチの操作によってエンジン10の運転を許可することにより、運転者の意図に応じた作動状態を実現でき、ハイブリッド車両の利便性を向上することができる。
【0147】
上記実施例のハイブリッド車両および制御処理においては、種々の変形例を構成することができる。EV走行制御処理における変形例について第1の変形例として説明する。図16は第1の変形例におけるEV走行制御処理ルーチンのフローチャートである。ここでは、第1実施例と相違する部分のみを図示した。第1実施例では、FC燃料の残量FCLが所定の値F1以上であるか否かによって燃料電池60を使用するか否かを判定した(図12のステップS30)。この際、所定の値F1は一定値であるものとした。これに対し、第1の変形例では残容量FCLが所定の値FGSL以上であるか否かによって燃料電池60の使用の可否を変更する点で相違する。所定の値FGSLはガソリンの残量GSLに応じて変化する値である。
【0148】
図17はガソリンの残量GSLと所定の値FGSLとの関係を示す説明図である。図示する通り、ガソリンの残量GSLが多くなるにつれて所定の値FGSLが多くなる。これは、ガソリンの残量GSLが多い程、早期に燃料電池60の使用が抑制されることを意味する。ガソリンの残量GSLが多い場合には、ハイブリッド車両が走行する時間が長い可能性が高い。従って、燃料電池60を使用すべき機会も多くなる可能性が高い。図17に示した設定とすれば、ガソリンの残量GSLが多くなる程、FC燃料の使用が抑制されるから、燃料電池60の発電能力が長時間に亘って確保されるようになる。この結果、燃料電池60をより有効性の高い場面で活用することができる。なお、図17ではガソリンの残量GSLに応じて値FGSLを直線的に変化させた場合を例示した。値FGSLはかかる設定のみならず、曲線的に変化させるものとしてもよいし、段階的に変化させるものとしてもよい。
【0149】
F.第2の変形例:
第1実施例および第1の変形例では、FC燃料の残量に基づいて燃料電池60の発電能力を評価して、その使用を抑制する場合を例示した。燃料電池60の発電能力は、その他のパラメータで評価することも可能である。燃料電池60の発電能力を温度で評価した場合の制御処理を第2の変形例として説明する。
【0150】
図18は第2の変形例におけるEV走行制御処理ルーチンのフローチャートである。第1実施例等と同様、この処理が開始されると、CPUは車両の運転状態を入力する(ステップS210)。ここでは、燃料電池60の温度、車速、アクセル開度、シフトポジション、バッテリ残容量SOC、が以後の処理に関与する。
【0151】
CPUは次に燃料電池60の温度が所定の値TFC1以上であるか否かを判定する(S230)。燃料電池60の温度が非常に高い場合には、発電を継続すると過熱状態になり、燃料電池60の寿命を著しく縮める等の弊害を招く可能性がある。上記温度TFC1は、燃料電池60が過熱状態になる可能性を判断する基準となる値であり、燃料電池ごとに適切な温度を設定することができる。
【0152】
ステップS230において、燃料電池60の温度が所定の値TFC1に満たない場合には、燃料電池60の使用を継続することができると判断し、CPUは燃料電池60を電源としてモータ20を駆動する処理を実行する(ステップS240)。これに対し、燃料電池60の温度が所定の値TFC1以上である場合には、燃料電池60の使用を抑制すべきと判断し、他の動力源を使う処理に移行する。ここで、第1実施例および第1変形例では、EV走行時にはバッテリ50を使用しない場合を例示した。第2変形例では、バッテリ50を使用する場合を示す。
【0153】
バッテリ50の使用可能性を判断するため、CPUは残容量SOCが所定の値LO以上であるか否かを判定する(ステップS250)。値LOは任意の値に設定可能であるが、ここでは正の所定値に設定した。第2変形例の場合、温度で燃料電池60の発電能力を評価しているため、しばらく使用を抑制し、温度が低下すれば、再び燃料電池60を使用する可能性が生じる。かかる場合には、燃料電池60の立ち上がり遅れをバッテリ50の電力で補償する必要が生じる。所定の値LOは、かかる場合の電力を確保できる範囲で設定した。つまり、先に示した図14中の値SOC3以上の範囲で設定した。
【0154】
バッテリ50の残容量SOCが値LO以上である場合には、バッテリ50に余裕があるものと判断し、バッテリ50を電源としてモータ20を駆動する(ステップS260)。残容量SOCが値LOに満たない場合には、バッテリ50を使用すべきでないと判断し、エンジン10を動力源として使用する(ステップS270)。
【0155】
図19は第2の変形例における燃料電池の温度等の変化を示す説明図である。図18に示した制御処理が実行された場合について、燃料電池の温度(FC温度)、燃料電池の出力(FC出力)、エンジン10の出力、およびモータ20の出力の時間的変化を示した。当初、燃料電池60を電源とするEV走行がなされていたものとする。図示する通り、FC出力およびモータ20の出力は正の所定値を採り、エンジン10の出力は0となる。また、時間の経過とともにFC温度は上昇する。
【0156】
図示する通り、時刻a1においてFC温度が所定の値TFC1を超えたものとする。先に示した制御処理に基づき、燃料電池60の出力が抑制され、図示する通り、時刻a2で出力は0となる。ここではバッテリ50の残容量SOCが十分でなかったものとする。かかる場合には、燃料電池60の出力の低下とともにエンジン10を動力源とする走行が行われる。従って、図示する通り、時刻a1〜a2の区間において、モータ20の出力が低下するとともに、エンジン10の出力が増大する。こうして燃料電池60の温度が値TFC1よりも低くなるまでエンジン10を動力源とする走行が継続される。
【0157】
燃料電池60の使用が停止された結果、時刻a5において燃料電池60の温度が再びTFC1よりも低くなったものとする。この結果、燃料電池60の運転が再開され、その出力は時刻a5〜a6の区間に示す通り上昇する。また、これに伴い、エンジン10の出力が低下し、モータ20の出力が増大する。かかる制御処理により燃料電池60は、温度が値TFC1を大きく超えない範囲で運転される。なお、第2変形例において、燃料電池60の温度がTFC1近傍である場合に運転と停止が頻繁に切り替わることを回避するために、ステップS230においては適当なヒステリシスを設けておくことが望ましい。
【0158】
以上で説明した第2変形例の制御処理によれば、燃料電池60の温度に基づいて発電能力を評価し、過熱状態を招かない範囲で燃料電池60を使用することができる。従って、第2変形例の制御処理によれば、過熱状態に起因する燃料電池60の寿命低下を回避することができる。また、所定の温度TFC1以上になった時点で燃料電池60の使用が抑制されるため、燃料電池60の冷却系統は温度TFC1までの範囲で適切な冷却を行う構成とすれば済む。この結果、燃料電池60の全ての作動状態において適切な冷却を確保する必要がなくなり、冷却系統の小型化を図ることができる。
【0159】
なお、第2変形例では、バッテリ50を走行に使用する。第2変形例の場合、バッテリ50は、燃料電池60の温度が低下するまでの一時的な使用でよい。従って、補助的な使用を目的としたバッテリ50でもこの用途に活用することができる。このようにバッテリ50を用いることにより、エンジン10の運転を抑制することができ、ハイブリッド車両の運転効率、環境性の低下を回避することができる。もちろん、第2変形例の制御処理は一例に過ぎず、バッテリ50を用いない処理を行うものとしても構わない。この処理は、図18のステップS250の条件を必ず満たさないものと判断した場合の処理に相当する。
【0160】
第2変形例では、燃料電池60の温度が所定以上の場合には、完全にその使用を停止し、電源をバッテリ50に切り替える場合を例示した。これに対し、温度の上昇を抑制できる程度に燃料電池60の出力を低減しつつ、低減した分の電力をバッテリ50で補償するものとしてもよい。
【0161】
また、以上で説明した実施例および変形例において、エンジン10を動力源とする場合には、種々の態様でその運転を制御することができる。例えば、エンジン10のみを動力源とする通常の車両と同様、停車中もエンジン10をアイドル運転するものとしてもよい。また、別の態様として、停車中はエンジン10の運転を停止するものとしてもよい。但し、この場合、停車中でも空調装置やパワーステアリング、燃料電池60の冷却系統を駆動するポンプ93などの補機は駆動する必要がある。従って、停車中にはエンジン10の運転を停止しつつ、バッテリ50を電源として補機駆動用モータ80を駆動するものとしてもよい。かかる制御を行う場合には、さらに残容量SOCに応じて、バッテリ50による補機の駆動と、エンジン10による補機の駆動とを使い分けることもできる。
【0162】
G.第3の変形例:
以上で説明した実施例および変形例では、図8〜図11に示すマップに従って、所定の走行領域でのみモータ20を使用する場合を例示した。これに対し、全ての走行領域でエンジン10とモータ20とを使用することもできる。かかる場合の制御処理を第3の変形例として説明する。図20は第3の変形例における出力配分について示す説明図である。駆動軸15に出力されるトルクは変速機100の変速段によって変動するため、ここでは、変速機100の入力軸14のトルクとアクセル開度との関係を示した。図示する通り、第3変形例では、アクセル開度の全範囲においてモータ20とエンジン10とを動力源として使用する。アクセル開度に応じて設定された総出力をエンジン10とモータ20とで配分して出力するのである。
【0163】
ここで第3変形例では、燃料電池60の発電能力に応じてモータ20とエンジン10との出力の配分を変更する。通常は、図20に示す曲線C1で示す配分が適用される。曲線C1より下方の範囲がエンジン10の出力トルクに相当し、総出力(図中の実線)と曲線C1の間の範囲がモータ20の出力トルクに相当する。これに対し、燃料電池60の発電能力が低下した場合には、モータ20の出力トルクを低下させる。つまり、出力配分を図中の曲線C2に切り替える。図示する通り、通常時よりもモータ20の出力を低下し、その分をエンジン10の出力配分を増大することで補償する。かかる制御を実現する処理内容について以下に説明する。
【0164】
図21は第3の変形例における走行制御処理ルーチンのフローチャートである。この処理が開始されるとCPUは車両の運転状態を入力する(ステップS305)。ここでは、車速、アクセル開度、シフトポジション、FC燃料の残量、バッテリ50の残容量SOC、燃料電池60から出力されている電力などが関与する。
【0165】
次に、CPUは燃料電池60が劣化しているか否かを判定する(ステップS310)。この判定は、燃料電池60への要求電力と、現実に出力されている電力との偏差に基づいて行われる。現実に出力されている電力が要求電力に満たない方向に所定以上の偏差が現れている場合には、燃料電池60が劣化しているものと判断される。燃料電池60は既に説明した通り、立ち上がり遅れが生じることが知られているから、誤判断を回避するため、かかる判断は燃料電池60の温度が十分に上昇してから行われる。
【0166】
燃料電池60が劣化していないと判断された場合には、燃料電池60の電力でモータ20を駆動し、アクセル開度に応じたトルクを出力する(ステップS345)。フローチャートでは図示を省略したが、図20の曲線C1で設定された運転状態に相当し、ステップS345では、燃料電池60とともにエンジン10も図20の曲線C1で設定される所定のトルクを出力するように運転される。
【0167】
ステップS310において、燃料電池60が劣化していると判断された場合には、劣化に伴う出力低下を補償するための処理に移行する。CPUはまずバッテリ50の残容量SOCが所定の値LOS以上であるか否かを判定する(ステップS315)。残容量SOCがLOS以上である場合には、バッテリ50に余裕があると判断され、バッテリ50の電力を用いてモータ20を駆動する(ステップS320)。この場合は、図20に示した曲線C1の配分のままモータ20を駆動する。上述の値LOSは、モータ20からかかるトルクを出力可能な電力を確保可能な範囲で設定することができる。
【0168】
残容量SOCが所定の値LOSよりも低い場合には、次にFC燃料の残量FCLが所定の値F4以上であるか否かを判定する(ステップS325)。即ち、劣化しているものの燃料電池60の運転を継続することが可能であるか否かを判定するのである。所定の値F4はかかる判定の基準となる値であり、既に説明した実施例等と同様、他の運転モードも考慮して適切な値を設定することができる。
【0169】
残量FCLが所定の値F4に満たない場合には、燃料電池60の運転を継続することができないため、エンジン10を動力源とする運転に切り替え、燃料電池60の運転を停止する(ステップS350)。この場合は、アクセル開度に応じて出力の全てをエンジン10から出力する。但し、図20に示した総出力に相当するトルクを十分出力することはできないため、エンジン10が出力可能な範囲のトルクを出力する。
【0170】
一方、残量FCLがF4以上である場合には、燃料電池60の出力とエンジン10との出力配分を変更しつつ、両者の運転を継続する。つまり、CPUは燃料電池60を電源とするモータ20の運転を継続する(ステップS330)。この場合、モータ20の出力は、図20中の曲線C2で設定された範囲に抑制される。一方、モータ20の出力が抑制された分、エンジン10の出力を増大する(ステップS335)。図20中の曲線C2で設定されたトルクを出力する。なお、これと同時に変速機100の変速段を制御し、変速比を大きくする(ステップS340)。図20では説明の便宜上、モータ20とエンジン10の出力配分を曲線C2に変更することにより、通常と同じ総出力を維持できる状態を示した。実際には、通常時の出力はモータ20およびエンジン10のトルクを十分に活用できる範囲で設定されているため、燃料電池60の劣化が生じた場合には、出力配分を変更しても総出力を維持できない場合がある。かかる場合には、変速比を大きくすることにより駆動軸15に出力されるトルクを通常時と同等に維持することができる。ステップS340では、かかる目的で変速比を大きい側に切り替えるのである。
【0171】
以上で説明した第3の変形例における制御処理によれば、燃料電池60の発電能力が低下した場合でも、エンジン10とモータ20との出力配分を変更することにより、通常時と同等の出力を維持することができる。また、変速機100の変速段を制御することにより、駆動軸15の出力トルクを同等に維持することができる。この結果、上記制御処理によれば、燃料電池60の劣化が生じた場合でも違和感のない運転を実現することができる。
【0172】
なお、第3の変形例では、エンジン10とモータ20の出力配分の変更と変速段の制御とを併せて行う場合を例示した。両者の制御はいずれか一方のみを行うものとしても構わない。また、第3の変形例では、全走行領域でモータ20とエンジン10とを併用する場合を例示した。これに対し、アクセル開度が所定値以上になった場合にのみモータ20とエンジン10とを併用する場合に適用することもできる。
【0173】
H.第2実施例:
次に第2実施例について説明する。図22は第2実施例のハイブリッド車両の概略構成を示す説明図である。第2実施例では、冷却系統の構成が第1実施例と相違する。第1実施例では、燃料電池60の冷却系統とエンジン10の冷却系統とは個別に構成されていた。第2実施例では、両者は共通の冷却系統として構成されている。即ち、第2実施例では、冷却水を搬送する冷媒路94’は燃料電池60およびエンジン10の双方を通過するように構成されている。冷却水はポンプ93によって冷媒路94’を通過し、ラジエータ92で放熱することで燃料電池60およびエンジン10の冷却を行う。
【0174】
第2実施例のハイブリッド車両における走行の制御処理は、第1実施例と同様である。第2実施例では、冷却系統の構成の相違に起因して、エンジン10の暖機を行う処理に特徴がある。以下、この処理について説明する。
【0175】
図23は第2実施例におけるエンジン暖機処理ルーチンのフローチャートである。第1実施例と同様、制御ユニット70のCPUが繰り返し実行する処理である。この処理が開始されると、CPUは車両の運転状態を入力する(ステップS405)。車速、アクセル開度、シフトポジション、エンジン水温、FC燃料の残量などが以下の処理に関与する。
【0176】
次に、CPUはアクセル開度および車速に基づき、車両の走行状態が図8〜図11に示したMG領域に該当するか否かを判定する(ステップS410)。この領域に該当しない場合には、エンジン10の暖機が済んでいるか否かに関わらずエンジン10を動力源として走行する(ステップS440)。
【0177】
一方、MG領域に該当すると判断された場合には、次にエンジン10の暖機が必要であるか否かを判定する(ステップS415)。この判断は、エンジン水温が所定以上であるか否かに基づいて行われる。エンジン10の暖機が必要でない場合には、MG領域における通常の運転状態に従い、モータ20を燃料電池60で駆動して走行する(ステップS420)。
【0178】
エンジン10の暖機が必要であると判断された場合には、次にエンジン走行の可能性があるか否かを判定する(ステップS425)。この判定方法は、種々の態様が挙げられるため、後述する。エンジン走行の可能性がないと判定された場合には、無用なエンジン10の暖機を避け、MG領域における通常の運転状態、即ちモータ20を燃料電池60で駆動して走行する(ステップS420)。
【0179】
エンジン走行の可能性があると判定された場合には、MG領域における通常の運転状態としてモータ20を燃料電池60で駆動しつつ(ステップS430)、併せてエンジン10の暖機運転を行う(ステップS435)。エンジン10の暖機運転とは、エンジン10をいわゆるアイドル回転数で運転することをいう。第2実施例では、暖機運転を行う際には、エンジン10とモータ20との間に設けられた入力クラッチ18を解放する。こうすることにより、エンジン10の動力が駆動軸15の出力に影響を与えることを回避できる。また、暖機中は通常、エンジン10の運転効率および排気浄化性が非常に低い。入力クラッチ18を係合したままエンジン10を暖機運転すると、車両の走行状態によってはエンジン10の回転数がアイドル回転数よりも高くなる可能性がある。暖機中にエンジン10の回転数を増大させれば、ハイブリッド車両の運転効率等の低下を招く。入力クラッチ18を解放して暖機運転を行うことにより、かかる弊害を回避することができる。
【0180】
ここで、エンジン走行の可能性の判断方法について説明する。この判断は、種々の方法で行うことができる。例えば、MG領域内における車速の変化に基づいて、エンジン領域での走行が行われるか否かを判断するものとしてもよい。また、FC燃料の残量に基づいて判断することもできる。第2実施例のハイブリッド車両は、燃料電池60とエンジン10の冷却系統が共通の系統として構成されている。このことは燃料電池60で発生した熱が冷却水を媒介としてエンジン10に搬送されることを意味する。つまり、燃料電池60の運転時に発生する熱によってエンジン10の暖機運転を行うことができることを意味する。
【0181】
図24はエンジン温度と暖機までに要するFC燃料との関係を示す説明図である。図中の温度THはエンジン10の暖機が完了したと判断される温度である。エンジン温度が低い程、温度THに到達するまでに長時間を要する。燃料電池60の熱によって暖機を行う場合には、その間に消費するFC燃料が増大する。従って、エンジン温度が低くなる程、暖機に必要なFC燃料が増大する図24の関係が得られる。なお、ここでは両者の関係を直線で示したが、冷却系統、エンジン10の熱容量などに応じて両者の関係は変化する。
【0182】
FC燃料の残容量が、図24の関係に基づいて定まる所定量よりも多い場合には、燃料電池60の運転を継続することによりエンジン10の暖機を完了することができる。FC燃料の残容量が上記所定量よりも少ない場合には、燃料電池60の運転のみではエンジン10の暖機を完了することができない。第1実施例で示したEV走行制御処理(図12)によれば、エンジン10の暖機を完了する前にFC燃料の残量が低下し、モータ20からエンジン10への動力源の切り替えが行われることになる。かかる意味で、FC燃料の残容量が上記所定量よりも少ない場合には、MG領域での走行が継続される場合であっても、エンジン10の運転が開始される可能性があると判断される。
【0183】
また、別の態様として、予め走行経路が既知の場合には、該走行経路に基づいてエンジン10の運転の可能性を判断することもできる。近年では、いわゆるナビゲーションシステム、即ち予め設定された車両の走行経路を表示するシステムなどが提案されている。かかるシステムを搭載している車両の場合には、その入力から、制御ユニット70が将来の走行予定経路を知ることができ、高速道路など明らかにエンジン領域で走行する区間が存在するか否かを判断することができる。上記ステップS425では、かかる情報に基づいて、エンジン走行の可能性を判断することもできる。なお、エンジン走行の可能性判断においては、これら種々の態様のいずれかを適用するものとしてもよいし、複数を適用し、総合的に判断するものとしてもよい。
【0184】
以上で説明した第2実施例のハイブリッド車両によれば、駆動軸15から出力する動力とは独立にエンジン10を暖機運転することができる。従って、ハイブリッド車両の運転効率、環境性の極端な低下を招くことなくエンジン10の暖機を行うことができる。また、エンジン10の運転の可能性があると判断された場合に暖機を行うため、無用な暖機を回避することができ、運転効率の低下を回避することができる。さらに、燃料電池60で発生する熱を利用してエンジン10の暖機を行うことができるため、エネルギ効率を高めることができる。なお、上述の第2実施例では、燃料電池60とエンジン10の冷却系統を共通化した構成を例示したが、燃料電池60の熱を利用した暖機を考慮しない場合には、両者の冷却系統を個別に設けた構成(第1実施例の構成)に適用することも可能である。
【0185】
I.第2実施例における変形例:
第2実施例においても変形例を構成することができる。図25は第2実施例における変形例としてのエンジン暖機処理ルーチンのフローチャートである。ここでは第2実施例における処理(図23)と相違する部分のみを示した。
【0186】
第2実施例では、エンジン10の運転可能性があると判断された場合には(図23のステップS425)、エンジンの暖機を行うものとした。変形例では、エンジン10の運転の可能性を、図24に示したFC燃料に基づいて判断する。即ち、変形例では、図23のステップS425に代えて、FC燃料がエンジン10の暖機までに必要な量以上あるか否かを判定する(ステップS425’)。FC燃料が十分残っていないと判断された場合には、燃料電池60の運転だけではエンジン10の暖機を完了することができないことを意味するから、エンジン10の暖機処理を実行する(ステップS427)。
【0187】
これに対し、FC燃料が十分残っていると判断された場合には、燃料電池60の運転によるエンジン10の暖機を行う。この際、エンジン10の暖機を速やかに完了するため、CPUは燃料電池60の出力を増大する(ステップS430’)。燃料電池60の出力は、基本的にはモータ20の駆動に使用され、余剰の電力はバッテリ50に充電される。また、これと同時にエンジン10とモータ20との間に設けられた入力クラッチ18を係合する(ステップS432)。入力クラッチ18を係合することにより、モータ20の動力でエンジン10をモータリングすることができる。従って、エンジン10のピストンとシリンダ間で摩擦熱が生じ、またシリンダ内の空気の圧縮などに起因する熱が生じる。かかる発熱もエンジン10の暖機に寄与する。
【0188】
変形例のエンジン暖機処理によれば、FC燃料が十分残っている場合に燃料電池60の出力を増大することにより、エンジン10の暖機を速やかに行うことができる。従って、暖機による燃料消費を回避することができ、ハイブリッド車両の運転効率および環境性を向上することができる。燃料電池60から余剰に出力された電力は一旦バッテリ50に蓄えられ、必要に応じて使用されるため、運転効率の極端な低下を招くことはない。なお、変形例ではエンジン10の暖機処理を完了するまでに必要となる量だけFC燃料が残っているか否かの判断を行う場合を例示した(ステップS425’)。必ずしもかかる判断を行う必要はなく、FC燃料が残っている範囲で、燃料電池60によるエンジン10の暖機を行うものとしてもよい。即ち、ステップS425’の判断を省略し、常にステップS430’、S432の処理を実行するものとしてもよい。また、入力クラッチの係合を省略するものとしても構わない。
【0189】
J.第3実施例:
次に、第3実施例としてのハイブリッド車両について説明する。第3実施例のハイブリッド車両は、基本的なハードウェア構成は第1実施例と同じであるが(図1〜図7参照)、選択可能な運転モードの種類が第1実施例と相違する。第1実施例では、図5に示す通り、動力源切替スイッチ164により、エンジンモード、FCモード、自動モードの3種類の運転モードを選択可能であった。これに対し、第3実施例では、「エンジン単独モード」、「FC単独モード」、「併用モード」の3種類を選択可能である。これらの運転モードは、図5に示した動力源切替スイッチ164と同様のスイッチにより選択することができる。
【0190】
「エンジン単独モード」とは、エンジン10のみを動力源として走行する運転モード、「FC単独モード」は、燃料電池60によりモータ20を駆動して走行する運転モードを意味する。「併用モード」は車両の走行状態に応じてエンジン10とモータ20とを切り替えて使用する運転モードである。両者の切り替えは、第1実施例と同様、図8〜図11に例示したマップに従って行われる。
【0191】
第1実施例における「エンジンモード」「FCモード」は車両の走行状態が図8〜図11中のMG領域にある場合に、動力源の使い分けを行うための運転モードであった。これに対し、第3実施例の「エンジン単独モード」、「FC単独モード」はハイブリッド車両の運転領域全体を対象としている点で相違する。つまり、「エンジン単独モード」が選択されている場合には、MG領域内であってもモータ20は走行に使用されず、「FC単独モード」の場合には、MG領域外であってもエンジン10の運転に切り替わらない。従って、「FC単独モード」では、高速走行時に出力されるトルクが併用モードに比べて低くなる。本実施例では、このように運転モードによって運転感覚に相違があることを許容している。運転モードごとに運転感覚が変ることを認識した上で、運転者は運転モードを選択すると考えられ、ハイブリッド車両の運転に大きな支障はないと考えられるからである。かかる観点から、エンジン10は高速での走行状態を重視して排気量などが設定されており、「エンジン単独モード」が選択された場合、低速の領域では「FC単独モード」よりもトルクが小さくなる。このように設定することで、エンジン10の出力トルクを不必要に高くする必要がなく、エンジン10を小型化できる利点がある。
【0192】
第3実施例では、上述の3つの運転モードの使い分けにおいて、より燃費および環境性を重視した制御を行う点に特徴がある。FC単独モードが選択されている場合には、エンジン10を使用する可能性は非常に低いため、燃料電池60が使用可能な状態にある限り、エンジン10の暖機をも禁止するのである。こうすることによって、エンジン10の暖機に要する無駄な燃料消費を抑制することができ、燃費および環境性が向上するのである。かかる制御の内容について説明する。
【0193】
図26は第3実施例におけるEV走行制御処理ルーチンのフローチャートである。第1実施例と同様、制御ユニット70のCPUが実行する処理である。この処理が開始されると、CPUは車両の運転状態を入力する(ステップS410)。図7で示した種々のセンサからの入力がなされるが、特に、シフトポジション、車速、アクセル開度、ガソリン残量GSL、バッテリ残容量SOC、燃料電池用の残燃料量FCL、イグニッションスイッチの状態、動力源切替スイッチ164の状態などが以後の処理に関与する。
【0194】
次に、CPUはエンジン10のみを動力源とする条件が満たされているか否かを判定する(ステップS420)。この条件とは、燃料電池60が使用が禁止されるべき状態にあること、即ちFC燃料の残量FCLが所定の値F1に満たない状態にあること、またはエンジン単独モードが選択されていることである。これらの条件の少なくとも一方が満たされている場合には、エンジン10を動力源として走行することになる。所定の値F1は第1実施例と同様、正の一定値に設定されている。この場合、CPUはエンジン10を動力源として選択するとともに、必要に応じてエンジン10を暖機する制御を実行する(ステップS430)。
【0195】
ステップS430における処理内容には、種々の態様が考えられる。例えば、エンジン10の暖機が完了しているか否かに関わらず、エンジン10のみを使用して走行するものとしてもよい。かかる場合には、暖機処理は改めて実行する必要はない。これに対し、エンジン10の暖機を完了してから、動力源として使用するものとしてもよい。かかる場合は、暖機が完了していない間は、エンジン10をアイドル運転して暖機する一方、一時的に燃料電池60とモータ20を用いて走行することができる。さらに、エンジン単独モードが選択されている場合には前者の態様で運転を行い、その他のモードが選択されている場合には後者の態様で運転を行うものとしてもよい。ステップS430の処理は、これらの態様のいずれかを選択して設定しておくものとする。
【0196】
ステップS420における条件をいずれも満たさない場合には、燃料電池60をも用いて走行すべき運転状態にあるものと判断される。次に、CPUは運転モードがFC単独モードであるか否かを判定し(ステップS440)、その結果に応じて動力源を選択する。FC単独モードが選択されている場合には、燃料電池60を電源としてモータ20を駆動して走行する(ステップS450)。この運転モードが選択されている場合には、燃料電池60が使用可能な状態にある限り、エンジン10が動力源として使用されることはない。従って、CPUはエンジン10の運転のみならず、暖機をも禁止する(ステップS450)。エンジンの運転可否を特定するフラグをオフにすることで、別途用意されたエンジンの運転の制御処理で、その一切の運転が停止される。
【0197】
なお、上記ステップS440とS450の間に、燃料電池60が故障などによって使用不能な状態になっていないかどうかを判断する処理を設け、燃料電池60が使用可能な場合にのみ上記ステップS450の処理を実行し、使用不能な場合には、エンジン10の暖機を許可するものとしてもよい。一例として、燃料電池60が使用不能と判断された場合には、エンジン10を動力源として走行するステップS430の処理を実行するものとしてもよい。
【0198】
一方、ステップS440において、併用モードが選択されている場合には、車両の走行状態に応じてエンジン10とモータ20とを使い分けて走行する(ステップS460)。図8〜図11に示したMG領域にある間はエンジン10は使用されないが、併用モードでは車両の運転状態によって動力源をエンジン10に速やかに切り替える必要があるため、MG領域にある間もエンジンの暖機処理を実行する(ステップS460)。
【0199】
以上で説明した第3実施例のハイブリッド車両によれば、原則的にエンジン10を使用しない「FC単独モード」を設け、この場合にエンジンの暖機をも禁止することにより、ハイブリッド車両の燃費および環境性を大きく向上することができる。かかる運転モードでは、FC燃料の消費などによって燃料電池60が使用できなくなった場合や運転者が他の運転モードを選択した場合に、動力源をエンジン10に切り替える際、暖機が必要となり応答性が低下するなどの不利益が生じる可能性があるが、運転者はかかる特徴を了解した上で運転モードの選択を行うと考えられるため、こうした不利益はハイブリッド車両を運転する上で支障にはならないと言える。なお、ここでは、車両の全走行領域を対象として、スイッチで動力源の使い分けを行う場合を例示したが、第1実施例のようにMG領域を対象として動力源を使い分ける場合についてもエンジン10の暖機を禁止して燃費および環境性を向上する制御を適用可能であることはいうまでもない。
【0200】
K.4輪駆動への適用:
以上で説明した実施例および変形例では、いわゆる2輪駆動するハイブリッド車両を例示した。本発明は、4輪駆動するハイブリッド車両に適用するものとしてもよい。図27は4輪駆動するハイブリッド車両の概略構成を示す説明図である。ここでは、2つの車軸17、17Aの双方に動力を出力可能な構成を示す。
【0201】
車軸17に動力を出力するための構成は、実施例と同じである。即ち、エンジン10、モータ20、トルクコンバータ30および変速機100が直列に結合された構成となっている。モータ20への電力は実施例と同様、バッテリ50および燃料電池60のそれぞれから供給可能となっている。
【0202】
車軸17Aに動力を出力するための構成は次の通りである。車軸17Aにはディファレンシャルギヤ16Aを介してモータ20Aが結合されている。モータ20Aはモータ20と同様、三相同期モータである。モータ20Aにはバッテリ50、燃料電池60および補機駆動用モータ80の3種類から電力を供給することができる。バッテリ50および燃料電池60の電力は、それぞれ駆動回路51A,52Aを介してモータ20Aに供給される。駆動回路51A,52Aは駆動回路51,52と同様、トランジスタインバータで構成されている。補機駆動用モータ80はエンジン10の動力によって発電することができる。モータ20Aには補機駆動用モータ80で発電された電力を直接供給することが可能となっている。
【0203】
モータ20Aに電力を供給する電源は、切替スイッチ85,86の接続状態により切り替えることができる。図示する通り、切替スイッチ86を切り替えることにより、バッテリ50および燃料電池60側と補機駆動用モータ80側との間で電源を切り替えることができる。切替スイッチ85を切り替えることにより、バッテリ50と燃料電池60との間で電源を切り替えることができる。
【0204】
なお、車軸17、17Aはいずれを前車軸および後車軸としても構わない。エンジン10が車両の前方に搭載されている場合、車軸17側を後車軸として構成すれば、エンジン10からの機械的な動力を車体を縦断して後車軸に伝達するためのプロペラシャフトが必要となる。これに対し、車軸17A側を後車軸として構成すれば、プロペラシャフトが不要となる。従って、エンジン10と車軸17とを近接させる構成を採ることにより、動力系統の構成を比較的簡易なものにすることができる利点がある。
【0205】
かかる構成のハイブリッド車両においても、上述した種々の制御処理を適用することができ、燃料電池60を優先的に使用することで、効率および環境性に優れた運転を実現することができる。また、特定の条件下では上述した種々の制御処理に従い、燃料電池60、エンジン10等の使い分けをすることができる。
【0206】
以上で説明した種々の実施例では、バッテリ50を備える場合を例示した。本発明の適用に際しては、必ずしもバッテリ50を搭載する必要はない。各実施例からバッテリ50を省略した構成を適用するものとしてもよい。また、バッテリ50に代えてキャパシタなど別の蓄電手段を用いることもできる。
【0207】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、更に種々なる形態で実施し得ることは勿論である。例えば、本実施例のハイブリッド車両ではガソリンエンジンを用いたが、ディーゼルエンジンその他の熱機関を用いることができる。本実施例では、モータとして全て三相同期モータを適用したが、誘導モータその他の交流モータおよび直流モータを用いるものとしてもよい。本実施例では、種々の制御処理をCPUがソフトウェアを実行することにより実現しているが、かかる制御処理をハード的に実現することもできる。本実施例では、車両に適用した場合を示したが、本発明は列車、船舶、航空機、飛行船その他の飛翔体など種々の移動体に適用することが可能である。また、必ずしも運転者が搭乗するものに限らず、遠隔操作するものであっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例としてのハイブリッド車両の概略構成図である。
【図2】燃料電池システムの概略構成を示す説明図である。
【図3】変速機100の内部構造を示す説明図である。
【図4】各クラッチ、ブレーキ、およびワンウェイクラッチの係合状態と変速段との関係を示す説明図である。
【図5】本実施例のハイブリッド車両におけるシフトポジションの操作部160を示す説明図である。
【図6】本実施例におけるハイブリッド車両の計器板を示す説明図である。
【図7】制御ユニット70に対する入出力信号の結線を示す説明図である。
【図8】車両の走行状態と動力源との関係を示す説明図である。
【図9】2ポジションにおける変速段の切り替えの様子を示す説明図である。
【図10】Lポジションにおける変速段の切り替えの様子を示す説明図である。
【図11】Rポジションにおける変速段の切り替えの様子を示す説明図である。
【図12】EV走行制御処理ルーチンのフローチャートである。
【図13】モータ駆動制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図14】バッテリ50の充電状態と回生電力の活用との関係を示す説明図である。
【図15】外部電源稼働制御処理のフローチャートである。
【図16】第1の変形例におけるEV走行制御処理ルーチンのフローチャートである。
【図17】ガソリンの残量GSLと所定の値FGSLとの関係を示す説明図である。
【図18】第2の変形例におけるEV走行制御処理ルーチンのフローチャートである。
【図19】第2の変形例における燃料電池の温度等の変化を示す説明図である。
【図20】第3の変形例における出力配分について示す説明図である。
【図21】第3の変形例における走行制御処理ルーチンのフローチャートである。
【図22】第2実施例のハイブリッド車両の概略構成を示す説明図である。
【図23】第2実施例におけるエンジン暖機処理ルーチンのフローチャートである。
【図24】エンジン温度と暖機までに要するFC燃料との関係を示す説明図である。
【図25】第2実施例における変形例としてのエンジン暖機処理ルーチンのフローチャートである。
【図26】第3実施例におけるEV走行制御処理ルーチンのフローチャートである。
【図27】4輪駆動するハイブリッド車両の概略構成を示す説明図である。
【符号の説明】
10…エンジン
12…クランクシャフト
13、14,15…回転軸
16…ディファレンシャルギヤ
16A…ディファレンシャルギヤ
17,17A…車軸
18…入力クラッチ
19…補機クラッチ
20,20A…モータ
22…ロータ
24…ステータ
30…トルクコンバータ
50…バッテリ
51,51A,52,52A…駆動回路
60…燃料電池
60A…燃料電池
61…メタノールタンク
61a…容量センサ
62…水タンク
63…バーナ
64…圧縮機
65…蒸発器
66…改質器
68…ブロワ
70…制御ユニット
80…補機駆動用モータ
82…補機駆動装置
83…切替スイッチ
84…切替スイッチ
85,86,90…切替スイッチ
91…コンセント
92…ラジエータ
93…ポンプ
94…冷媒路
100…変速機
102…油圧ポンプ
104…油圧制御部
110…副変速部
112…第1のプラネタリギヤ
114…サンギヤ
115…プラネタリピニオンギヤ
116…プラネタリキャリア
118…リングギヤ
119…出力軸
120…主変速部
122…回転軸
130,140,150…プラネタリギヤ
132,142,152…サンギヤ
134,144,154…プラネタリキャリア
136,146,156…リングギヤ
160…操作部
162…シフトレバー
163…スポーツモードスイッチ
164…動力源切替スイッチ
165…マニュアル発電スイッチ
202,203…燃料計
204…速度計
206…エンジン回転計
208…エンジン水温計
210R,210L…方向指示器インジケータ
220…シフトポジションインジケータ
222…スポーツモードインジケータ
223…EVインジケータ
224…外部電源インジケータ

Claims (15)

  1. 少なくとも併用可能な燃料電池と熱機関と充電可能な蓄電手段とを含むエネルギ出力源と、該エネルギ出力源のエネルギを駆動軸からの機械的なエネルギとして外部に出力するエネルギ伝達手段とを備えるハイブリッド式移動体であって、
    当該ハイブリッド移動体の前記駆動軸に結合され、前記蓄電手段からの電力によって駆動可能であり前記ハイブリッド移動体の制動エネルギの回収を行なう際には、前記蓄電手段を充電する電動機と、
    前記エネルギ出力源のうち、前記燃料電池および前記熱機関のいずれを使用するかを該ハイブリッド式移動体の運転者の操作により選択するためのスイッチであって、前記燃料電池および前記熱機関のいずれか一方を使用するモードまたは双方を併用する特定のモードを選択可能なエネルギ出力源選択スイッチと、
    該エネルギ出力源選択スイッチによる選択状態に応じて、前記燃料電池、熱機関およびエネルギ伝達手段の少なくとも一つの目標運転状態を、予め設定された状態に変更する状態変更手段と、
    前記エネルギ出力源および前記エネルギ伝達手段のそれぞれを設定された目標運転状態に制御する運転制御手段と、
    を備え、
    当該ハイブリッド式移動体が、前記電動機を動力源として走行すべき走行領域として予め定められた走行領域にあり、かつ前記エネルギ出力源選択スイッチにより、前記エネルギ出力源として、前記燃料電池および前記熱機関のいずれか一方を使用するモードが選択されたとき、該燃料電池および該熱機関のいずれか一方を運転すると共に、前記蓄電手段の電力を用いて前記電動機を駆動するEV走行を実施しないハイブリッド式移動体。
  2. 請求項1記載のハイブリッド式移動体であって、
    前記エネルギ出力源選択スイッチにより、前記エネルギ出力源として、前記燃料電池および前記熱機関の双方を使用する前記特定のモードが選択されたとき、前記蓄電手段の電力を用いて前記電動機を駆動するEV走行を実施しないハイブリッド式移動体。
  3. 請求項1記載のハイブリッド式移動体であって、
    前記エネルギ出力源選択スイッチは、前記エネルギ出力源として、前記燃料電池および前記熱機関のいずれか一方を使用するモードとして、燃料電池および熱機関のいずれか一方を用いる運転モードを選択可能であり、
    前記いずれか一方を用いる運転モードが選択されると、該選択されたエネルギ出力源の運転を実行すると共に、他方のエネルギ出力源の運転を禁止するハイブリッド式移動体。
  4. 請求項3記載のハイブリッド式移動体であって、
    さらに、運転者が前記他方のエネルギ出力源の始動を指示するために操作する始動スイッチを備え、
    前記いずれか一方を用いる運転モードが指定されている状態において、前記始動スイッチの操作により前記他方のエネルギ出力源の始動を指示されたとき、該他方のエネルギ出力源を始動するハイブリッド式移動体。
  5. 請求項1記載のハイブリッド式移動体であって、
    記エネルギ出力源選択スイッチにより、燃料電池のみをエネルギ出力源とする運転モードが選択されている場合には、前記燃料電池の運転を実行すると共に、前記熱機関の暖機を禁止するハイブリッド式移動体。
  6. 請求項1記載のハイブリッド式移動体であって、
    前記燃料電池の発電能力を検出する検出手段を備え、
    前記エネルギ出力源選択スイッチより、前記燃料電池を用いるモードが選択されており、前記検出した発電能力が所定値以下に低下している場合には、前記燃料電池の出力を抑制するハイブリッド式移動体。
  7. 請求項6記載のハイブリッド式移動体であって、
    前記検出手段は、前記燃料電池用の残燃料量に基づいて前記発電能力を検出する手段であるハイブリッド式移動体。
  8. 請求項6記載のハイブリッド式移動体であって、
    前記検出手段は、前記燃料電池の温度に基づいて前記発電能力を検出する手段であるハイブリッド式移動体。
  9. 請求項1記載のハイブリッド式移動体であって、
    前記燃料電池の発電能力を検出する検出手段を備え、
    前記エネルギ出力源選択スイッチより、前記燃料電池を用いるモードが選択されており、前記検出した発電能力が所定値以下に低下している場合には、前記熱機関の出力を増大するハイブリッド式移動体。
  10. 請求項9記載のハイブリッド式移動体であって、
    前記エネルギは前記駆動軸の回転エネルギであり、
    前記エネルギ伝達手段は、前記エネルギ出力源から出力された回転エネルギを2段階以上の変速比で変速して出力可能な変速手段であり、
    前記熱機関の出力の増大に合わせて、前記変速手段の変速比を増大するハイブリッド式移動体。
  11. 請求項1記載のハイブリッド式移動体であって、
    前記目標運転状態設定手段は、前記エネルギ出力源選択スイッチにより、前記燃料電池のみがエネルギ出力源として選択されている場合には、前記熱機関の運転を禁止するのみならず、暖機をも禁止する状態に目標運転状態を設定する手段であるハイブリッド式移動体。
  12. 請求項1記載のハイブリッド式移動体であって、
    前記目標運転状態設定手段は、前記蓄電手段に入出力される電気的エネルギを考慮して前記目標運転状態を設定する手段であるハイブリッド式移動体。
  13. 請求項1記載のハイブリッド式移動体であって、さらに、
    前記燃料電池の劣化を検出する劣化検出手段と、
    前記燃料電池および前記熱機関の双方を併用するときには、前記燃料電池から出力されるエネルギの割合を最も高くするとともに、前記燃料電池および熱機関の一方に劣化が検出された場合には、該劣化に伴うエネルギ出力への影響を補償する方向に、少なくとも他方の出力を制御する劣化時制御手段とを備えるハイブリッド式移動体。
  14. 請求項1記載のハイブリッド式移動体であって、さらに、
    前記燃料電池の劣化を検出する劣化検出手段と、
    前記燃料電池および前記熱機関の双方を併用するときには、前記燃料電池から出力されるエネルギの割合を最も高くするとともに、前記燃料電池の劣化が検出された場合には、該劣化に伴うエネルギ出力への影響を補償する方向に、前記変速機を制御する変速機制御手段とを備えるハイブリッド式移動体。
  15. 少なくとも併用可能な燃料電池と熱機関と充電可能な蓄電手段とを含むエネルギ出力源と、該エネルギ出力源のエネルギを駆動軸からの機械的なエネルギとして外部に出力するエネルギ伝達手段とを備えるハイブリッド式移動体の運転を制御する制御方法であって、
    前記蓄電手段からの電力によって当該ハイブリッド式移動体の前記駆動軸に結合された電動機を駆動するEV走行や、前記蓄電手段を充電するためにハイブリッド移動体のエネルギの回収を該電動機によって行なう回生モードを実施可能とし、
    前記エネルギ出力源のうち、前記燃料電池および前記熱機関のいずれを使用するかを前記ハイブリッド式移動体の利用者の操作により選択するためのエネルギ出力源選択スイッチの選択状態によって、前記燃料電池および前記熱機関のいずれか一方を使用するモードまたは双方を併用する特定のモードを選択し、
    該エネルギ出力源選択スイッチによる選択状態に応じて、前記燃料電池、熱機関およびエネルギ伝達手段の少なくとも一つの目標運転状態を、予め用意された状態の一つに設定し、
    前記エネルギ出力源および前記エネルギ伝達手段のそれぞれを、該設定された目標運転状態に制御し、
    当該ハイブリッド式移動体が、前記電動機を動力源として走行すべき走行領域として予め定められた走行領域にあり、かつ前記エネルギ出力源選択スイッチにより、前記エネルギ出力源として、前記燃料電池および前記熱機関のいずれか一方を使用するモードが選択されたときには、該燃料電池および該熱機関のいずれか一方を運転すると共に、前記蓄電手段の電力を用いて前記電動機を駆動するEV走行を実施しない
    ハイブリッド式移動体の制御方法。
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