JP4300757B2 - インクジェット記録用金属キレート色素及びこれを用いた水系インクジェット記録液並びにインクジェット記録方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録用水溶性色素及びこれを用いた水系インクジェット記録液並びにインクジェット記録方法に関するものである。詳しくは、特にインクジェット記録に適した水溶性アゾ金属キレート化合物からなる金属キレート色素、及びこれを用いた水系インクジェット記録液とこの水系インクジェット記録液を用いたインクジェット記録方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
直接染料や酸性染料等の水溶性染料を含む記録液の液滴を、微小な吐出オリフィスから飛翔させて記録を行う、いわゆるインクジェット記録方法が実用化されている。
【0003】
この記録液に関しては、電子写真用紙のPPC(プレイン ペーパー コピア)用紙、ファンホールド紙(コンピューター等の連続用紙)等の一般事務用に汎用される記録紙に対する定着が速く、しかも印字物の印字品位が良好であること、即ち印字に滲みがなく輪郭が明確であることが要求されると共に、記録液としての保存時の安定性にも優れていることが必要とされ、従って使用できる溶剤が著しく制限される。
【0004】
また、記録液用の染料に関しては、上記のような限られた溶剤に対して充分な溶解性を有すると共に、記録液として長期間保存した場合にも安定であり、また印字された画像の彩度及び濃度が高く、しかも耐水性、耐光性、耐室内変褪色性に優れていること等が要求されている。
【0005】
インクジェット記録方法によりフルカラー画像を形成するには、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の3原色、或いはこれにブラック(Bk)を加えた4色のインクを使用し、各々のインクの吐出量を制御し、被記録材上でこれらの色を混色させて画像を形成する。更に、フルカラー画像の形成に際しては、色の違いだけでなく、色の濃淡も表現する必要がある。濃淡部は、通常、色素濃度の異なる2種以上のインクを用いて形成される。
【0006】
しかし、従来のインクジェット用色素では、光照射による画像の褪色、即ち耐光性が乏しいことが問題となっており、とりわけ、色素濃度の低いインクを用いる淡色部の耐光性が低いことが問題とされている。
【0007】
特に、従来、記録液に使用されているマゼンタ色素においては、市販の染料である金属を含有しない直接染料(C.I.DR−227)や酸性染料(C.I.AR−249)が用いられてきたが(尚「C.I.」は「カラーインデックス」を示し、「AR」は「アシッドレッド」を示し、「DR」は「ダイレクトレッド」を示す。)、直接染料は、色調が不鮮明であり、逆に色調の鮮明な酸性染料は耐光性が劣る傾向にある。また、従来の含金属アゾ系の色素は耐光性は良好であるが、色調がくすみ、不鮮明であった。
【0008】
特開昭57−42775号公報には、4位にアゾ基のついた5−ヒドロキシピラゾールアゾ染料、又はその銅、ニッケル又はコバルトの錯塩染料を少なくとも1種使用することを特徴とするインクジェット印刷用水性インキが開示されている。特開平10−259331号公報には、ベンゼンアゾ化合物とニッケル、コバルト、クロム又は銅から選ばれる少なくとも1種の金属から形成される水溶性金属錯体を含有することを特徴とする水系インクジェット記録液が開示されている。また、特開平11−140367号公報には、多価金属イオンを配位する、4−ヒドロキシ−3−(2´−ピリジルアゾ)−1−(スルホ置換)ナフタレンのマゼンタ染料リガンドとインクベヒクルを含むインク組成物が開示されている。
【0009】
しかし、これらの色素は、インクジェット記録用色素に要求される色調の鮮明性、耐光性、耐室内変褪色性、溶解性、保存安定性等の特性において必ずしも十分満足し得るものではない。
【0010】
また、金属キレート化合物に用いられる金属のうち、銅はニッケル、コバルトなどに比べて安価であり、また安全性の点で好ましい。しかしながら、従来、金属として銅を用いたインクジェット用金属キレート色素はいずれも彩度の点で不十分であった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、インクジェット記録用として、普通紙に記録した場合にも印字品位が良好であると共に、記録画像の色調が鮮明で濃度が高く、耐光性に優れており、室内変褪色が少なく、また色素の溶解性あるいは長期間保存した場合の安定性が良好であるインクジェット記録用金属キレート色素、これを用いた水系インクジェット記録液及びインクジェット記録方法を提供することを目的とするものである。
【0012】
本発明はまた、金属元素として銅を用いた場合であっても、十分に彩度、印字濃度、耐光性、耐室内変褪色性、保存安定性等において優れた性能を有するインクジェット記録用金属キレート色素、これを用いた水系インクジェット記録液及びインクジェット記録方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明(請求項1)の水性インクジェット記録液は、水性媒体と、下記一般式(1)で表される、分子内に1個以上の親水性基を有するアゾ系化合物と、金属元素とから形成される水溶性アゾ金属キレート化合物であるインクジェット記録用金属キレート色素の1種又は2種以上とを含有することを特徴とする。
【0014】
本発明(請求項2)の水性インクジェット記録液は、水性媒体と、遊離酸の形が、下記一般式(1)で表される、分子内に1個以上の親水性基を有するアゾ系化合物と、金属元素とから形成される水溶性アゾ金属キレート化合物であるインクジェット記録用金属キレート色素の1種又は2種以上とを含有することを特徴とする。
【0015】
【化12】
((1)式中、X 1を含む複素環は下記一般式(7)で表される。
Ar1は下記一般式(4)〜(6)で表されるナフチル基を表す。)
【0016】
【化13】
((7)式中、R 1 は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアリールオキシ基、置換されていてもよいアシルオキシ基、置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、置換されていてもよいアリールオキシカルボニル基、カルボキシル基、置換されていてもよいカルバモイル基、水酸基、置換されていてもよいアシル基、シアノ基、置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいアシルアミノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、スルホ基、メルカプト基、置換されていてもよいアルキルチオ基、置換されていてもよいアルキルスルホキシ基、置換されていてもよいアルキルスルホニル基又はチオシアナト基であり、R 2 は水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいアリル基を表す。)
【0017】
【化14】
((4)〜(6)式中、Y1 はキレート化基を表し、Z1 は互いに異なっていても良い任意の置換基を表し、aは0〜6の整数を表す。)
【0019】
本発明のインクジェット記録方法は、このような本発明の水系インクジェット記録液を用いることを特徴とする。
【0020】
即ち、本発明者らは、上記特定のアゾ系化合物、或いは遊離酸の形が上記特定のアゾ系化合物であるものと、金属元素との水溶性アゾ金属キレート化合物よりなる水溶性色素であれば、前記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0021】
上記一般式(1)で表される特定のアゾ系化合物の金属キレート化合物がインクジェット記録用色素として印字濃度、耐光性、耐室内変褪色性、保存安定性等において総合的に優れたものとなる理由の詳細は明らかではないが、該アゾ系化合物の特定の骨格構造がジアゾ基に結合することによって、溶解性を低下させることなく、金属と安定なキレートを形成して、高彩度の色素となることによるものと推定される。
【0022】
しかも、本発明の金属キレート色素では、金属元素として安価かつ安全性の面で好適な銅を用いた場合にも、十分に彩度、印字濃度、耐光性、耐室内変褪色性、保存安定性等において優れた性能を備えており、極めて工業的価値が高い。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0024】
本発明のインクジェット記録用金属キレート色素は、前記一般式(1)で表される、分子内に1個以上の親水性基を有するアゾ系化合物、或いは、遊離酸の形が前記一般式(1)で表される、分子内に1個以上の親水性基を有するアゾ系化合物と、金属元素とから形成される水溶性のアゾ金属キレート化合物である。
【0025】
前記一般式(1)において、X1 は、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子よりなる群から選ばれる1種又は2種以上のヘテロ原子を合計で2個以上含み、少なくとも1つの5〜7員環の複素環を形成するのに必要な複数個の原子鎖を表す。X1 を含む複素環は、インクジェット記録用金属キレート色素として、より高彩度で総合的に優れた性能が得られる点で、好ましくはアゾ基の結合した炭素の両隣に窒素原子又は酸素原子のある複素環であり、従って、X1 の原子鎖において、アゾ基が結合した炭素に隣接する原子は窒素原子又は酸素原子であることが好ましい。X1 を含む複素環は、特にトリアゾール環、テトラゾール環、オキサジアゾール環又はチアジアゾール環等が好ましく、とりわけトリアゾール環であることが好ましい。
【0026】
X1 を含む複素環は、複素環上に1個以上の置換基を有していてもよく、複素環上の置換基がさらに縮合して縮合環を形成してもよい。その場合、複素環上の置換基は各々独立に、置換されていてもよいアルキル基(例えばメチル基、エチル基等の炭素数1以上、6以下のアルキル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、トリフルオロメチル基等)、置換されていてもよいアリール基(好ましくは炭素数6以上、10以下のアリール基、例えばフェニル基、ナフチル基等)、置換されていてもよいアラルキル基(好ましくは総炭素数7以上、10以下のアラルキル基、例えばベンジル基等)、置換されていてもよいアリル基(好ましくは炭素数3以上、9以下のアリル基、例えばビニル基、2−プロペニル基等)、置換されていてもよいアルコキシ基(好ましくは炭素数1以上、6以下のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基等)、置換されていてもよいアリールオキシ基(例えば、フェノキシ基等)、置換されていてもよいアシルオキシ基(好ましくはアセチルオキシ基等の炭素数2以上、7以下のアルカノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等)、置換されていてもよいアルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2以上、7以下のアルコキシカルボニル基、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)、置換されていてもよいアリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、置換されていてもよいカルバモイル基、置換されていてもよいアシル基(好ましくは炭素数2以上、10以下のアシル基、例えばアセチル基等)、カルボキシル基、水酸基、シアノ基、置換されていてもよいアミノ基(例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の炭素数1以上、8以下のアルキルアミノ基)、置換されていてもよいアシルアミノ基(例えばアセチルアミノ基等の炭素数2以上、7以下のアルカノイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等)、ニトロ基、ハロゲン原子(例えば塩素原子、臭素原子、フッ素原子等)、ホスホノ基、スルホ基、メルカプト基、置換されていてもよいアルキルチオ基(例えばメチルチオ基、エチルチオ基等の炭素数1以上、6以下のアルキルチオ基)、置換されていてもよいアルキルスルホキシ基(例えばメチルスルホキシ基、エチルスルホキシ基等の炭素数1以上、6以下のアルキルスルホキシ基等)、置換されていてもよいアルキルスルホニル基(例えばメチルスルホニル基、エチルスルホニル基等の炭素数1以上、6以下のアルキルスルホニル基等)、又はチオシアナト基から選ばれるものが好ましい。
【0027】
特に、X1 を含む複素環は下記一般式(7)〜(11)で表されるものが好ましい。
【0028】
【化15】
((7)式中、R1 は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアリールオキシ基、置換されていてもよいアシルオキシ基、置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、置換されていてもよいアリールオキシカルボニル基、カルボキシル基、置換されていてもよいカルバモイル基、水酸基、置換されていてもよいアシル基、シアノ基、置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいアシルアミノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、スルホ基、メルカプト基、置換されていてもよいアルキルチオ基、置換されていてもよいアルキルスルホキシ基、置換されていてもよいアルキルスルホニル基又はチオシアナト基よりなる群であり、R2は水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいアリル基を表す。R1とR2はトリアゾール環とともに縮合環を形成していても良い。)
【0029】
【化16】
((8)式中、R3 は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、置換されていてもよいアリールオキシカルボニル基、カルボキシル基、置換されていてもよいカルバモイル基、水酸基、シアノ基、又はスルホ基を表す。)
【0030】
【化17】
((9)式中、R4は水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアリールオキシ基、置換されていてもよいアシルオキシ基、置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、置換されていてもよいアリールオキシカルボニル基、カルボキシル基、水酸基、置換されていてもよいアシル基、シアノ基、置換されていてもよいアシルアミノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、スルホ基、置換されていてもよいアルキルチオ基、又は置換されていてもよいアリールチオ基を表す。)
【0031】
【化18】
((10)式中、R5は水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアリールオキシ基、置換されていてもよいアシルオキシ基、置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、置換されていてもよいアリールオキシカルボニル基、カルボキシル基、水酸基、置換されていてもよいアシル基、シアノ基、置換されていてもよいアシルアミノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、スルホ基、置換されていてもよいアルキルチオ基、又は置換されていてもよいアリールチオ基を表す。)
【0032】
【化19】
((11)式中、R6は水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアリールオキシ基、置換されていてもよいアシルオキシ基、置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、置換されていてもよいアリールオキシカルボニル基、カルボキシル基、水酸基、置換されていてもよいアシル基、シアノ基、置換されていてもよいアシルアミノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、スルホ基、置換されていてもよいアルキルチオ基、又は置換されていてもよいアリールチオ基を表す。)
【0033】
上記一般式(7)〜(11)中のR1〜R6が置換基を有する場合、該置換基としては、通常、炭素数10以下、中でも炭素数6以下、特に炭素数1以上、5以下程度のアルキル基あるいはアルコキシ基や、カルボキシル基、シアノ基等が挙げられる。これらの中でも、アルキル基、カルボキシル基、シアノ基が好ましく、中でもカルボキシル基及びシアノ基がインクジェット記録用金属キレート色素としてより高彩度のものが得られやすい点で好ましい。
【0034】
前記一般式(7)〜(11)で表される複素環のうち、より高彩度の金属キレート色素を得ることができる点で一般式(7)で表されるトリアゾール環が好ましい。
【0035】
また、前記一般式(1)におけるAr1 は、下記一般式(4)〜(6)で表されるナフチル基である。
【0036】
【化20】
【0037】
上記一般式(4)〜(6)中、Y1 はキレート化基、好ましくは水酸基、カルボキシル基、置換されていてもよいアミノ基(例えばアミノ基、メチルアミノ基、ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ基等)、スルホ基、カルバモイル基、置換されていてもよいアルコキシ基(好ましくは炭素数1以上、6以下のアルコキシ基、例えばメトキシ基、カルボニル基、2−ヒドロキシエトキシ基等)、置換されていてもよいアルキルチオ基(好ましくは炭素数1以上、6以下のアルキルチオ基、例えばメチルチオ基、2−ヒドロキシエチルチオ基等)、置換されていてもよいアルキルスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1以上、6以下のアルキルスルホニルアミノ基、例えばメチルスルホニルアミノ基等)、又は置換されていても良いアリールスルホニルアミノ基(例えばベンゼンスルホニルアミノ基等)である。より好ましくはY1 は水酸基である。
【0038】
上記一般式(4)〜(6)におけるZ1 は各々独立に、置換されていてもよいアルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基等の炭素数1以上、6以下のアルコキシ基等)、置換されていてもよいアリールオキシ基(例えばフェノキシ基等)、置換されていてもよいアシルオキシ基(例えばアセチルオキシ基等の炭素数2以上、7以下のアルカノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等)、置換されていてもよいアルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の炭素数2以上、7以下のアルコキシカルボニル基等)、置換されていてもよいアリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、カルボキシル基、置換されていてもよいカルバモイル基(例えばカルバモイル基等)、置換されていてもよいカルボキシアニリド基(例えば3−スルホカルボキシアニリド基等)、水酸基、置換されていてもよいアミノ基(例えばアミノ基、メチルアミノ基等の炭素数1以上、6以下のアルキルアミノ基等)、ウレイド基、置換されていてもよいアシルアミノ基(例えばアセチルアミノ基等の炭素数2以上、7以下のアルカノイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等)、置換されていてもよいアルキルスルホニルアミノ基(例えばメチルスルホニルアミノ基等の炭素数1以上、6以下のアルキルスルホニルアミノ基等)、置換されていてもよいアリールスルホニルアミノ基(例えばフェニルスルホニルアミノ基、4−メチルフェニルスルホニルアミノ基等)、ホスホノ基、スルホ基、及び置換されていてもよいスルファモイル基(例えばスルファモイル基、N,N-ビス(カルボキシメチル)スルファモイル基等)から選ばれる基であるのが好ましい。aは0〜6の整数を表す。
【0039】
Z1 は、好ましくはアゾ基に結合した炭素を1位とした場合に3位の炭素に結合していることが、より高彩度の金属キレート色素が得られやすい点で好ましい。またZ1は好ましくは、カルボキシル基、置換されていてもよいカルバモイル基、スルホ基又は置換されていてもよいスルファモイル基である。これらの中でもスルホ基又は置換されていてもよいスルファモイル基は、より高彩度の金属キレート色素が得られやすい点で更に好ましい。
【0040】
また、Ar1は、一般式(4)〜(6)で表されるナフチル基のうち、特に一般式(6)で表されるα−ナフチル基であることが、より高彩度の金属キレート色素が得られやすい点で好ましい。
【0041】
一般式(1)で表されるアゾ系化合物は、分子内に親水性基を少なくとも1個以上有する化合物である。かかる親水性基としては、例えばスルホ基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、ホスホノ基等が挙げられるが、これらの中でスルホ基又はカルボキシル基が好ましい。
【0042】
本発明において、一般式(1)で表されるアゾ系化合物とキレート化合物を形成する金属としては、例えば銀(I)、アルミニウム(III)、金(III)、セリウム(III、IV)、コバルト(II、III)、クロム(III)、銅(I、II)、ユウロピウム(III)、鉄(II、III)、ガリウム(III)、ゲルマニウム(IV) 、インジウム(III)、ランタン(III)、マンガン(II)、ニッケル(II)、パラジウム(II)、白金(II、IV)、ロジウム(II、III)、ルテニウム(II、III 、IV)、スカンジウム(III)、ケイ素(IV)、サマリウム(III)、チタン(IV)、ウラン(IV)、亜鉛(II)、ジルコニウム(IV)等が挙げられる。これらのうち、好ましくは、ニッケル(II)、コバルト(II、III)、銅(II)、鉄(II、III)、亜鉛(II)であり、価格、環境保護の面からは、銅(II)がより好ましい。
【0043】
キレート化合物の製造に用いる金属塩の陰イオンとしてはCl- 、Br- 、CH3 COO- 、SO4 2-等の一価又は二価の陰イオンが挙げられる。
【0044】
本発明の金属キレート色素は、一般式(1)で表されるアゾ系化合物の親水性基が前述のような酸基の場合、この酸基が遊離酸型のまま使用してもよいが、製造時、塩型で得られた場合はそのまま使用してもよいし、また、所望の塩型に変換して用いてもよい。また酸基の一部が塩型のものであってもよく、塩型の色素と遊離酸型の色素が混在していてもよい。このような塩型の例としてNa、Li、K等のアルカリ金属の塩、アルキル基もしくはヒドロキシアルキル基で置換されていてもよいアンモニウムの塩、又は有機アミンの塩が挙げられる。有機アミンの例として、低級アルキルアミン、ヒドロキシ置換低級アルキルアミン、カルボキシ置換低級アルキルアミン及び炭素数2以上、4以下のアルキレンイミン単位を2〜10個有するポリアミン等が挙げられる。これらの塩型の場合、その種類は1種類に限られず複数種混在していてもよい。
【0045】
また、本発明の金属キレート色素の構造において、その1分子中に酸基が複数個含まれる場合は、その複数の酸基は塩型でも酸型でも良く、互いに異なるものであってもよい。
【0046】
本発明中の金属キレート色素の具体例としては、例えば表1から表6に示すX1を含む複素環と表7,8に示すAr1との任意の組み合わせよりなるアゾ系化合物と、金属元素、例えば、酢酸ニッケル又は酢酸銅とのキレート色素が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】
【0051】
【表5】
【0052】
【表6】
【0053】
【表7】
【0054】
【表8】
【0055】
本発明に係るアゾ金属キレート化合物は、前記一般式(1)で表されるアゾ系化合物、或いは遊離酸の形が前記一般式(1)で表されるアゾ系化合物と、金属化合物とから製造することができる。
【0056】
前記一般式(1)で表されるアゾ系化合物は、公知の方法、例えばジアゾ化カップリング法に従って、下記一般式(式中、X1は一般式(1)におけると同義)で表される複素アミン化合物をジアゾ化し、H−Ar1(Arは一般式(1)におけると同義)とカップリングさせることにより製造することができる。
【0057】
【化21】
【0058】
得られたアゾ系化合物と金属化合物(例えばNiCl2・6H2O、CuCl2・2H2Oなど)とを反応させることにより、本発明に係る水溶性のアゾ金属キレート化合物を製造することができる。
【0059】
なお、本発明に係る水溶性アゾ金属キレート化合物において、金属元素に配位する配位子としての前記一般式(1)で表されるアゾ系化合物の数は、用いたアゾ系化合物と金属化合物によっても異なるが、通常金属元素1元素に対して1〜2個であり、その分子量は、インクジェット記録用途における溶解性、保存安定性を考慮した場合、金属元素を除いた分子量として2000以下であることが好ましく、特に500〜1500であることが好ましい。
【0060】
本発明の水系インクジェット記録液は、水性媒体と、本発明のインクジェット記録用金属キレート色素の1種又は2種以上とを含有するものである。
【0061】
本発明の水系インクジェット記録液中の上記金属キレート色素の含有量は、水系インクジェット記録液を濃色インクとして使用する場合は記録液の全量に対して水溶性アゾ金属キレート化合物の含有量として0.5〜10重量%、特に2〜5重量%程度が好ましく、淡色インクとして使用する場合は、記録液の全量に対して水溶性アゾ金属キレート化合物の含有量として0.1〜2重量%、特に0.1〜1.5重量%程度が好ましい。
【0062】
また、本発明の記録液に用いられる水性媒体としては、水及び水溶性有機溶剤の混合媒体が好ましく、水と混合する水溶性有機溶剤としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(重量平均分子量約190〜400)、グリセリン、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、チオジエタノール、ジメチルスルホキシド、エチレングリコールモノアリルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、2−ピロリドン、スルホラン、エチルアルコール、イソプロパノール等が挙げられる。このような水溶性有機溶剤は、通常記録液の全量に対して1〜45重量%の範囲で使用される。一方、水は記録液の全量に対して50〜95重量%の範囲で使用される。
【0063】
本発明の記録液には、本発明の金属キレート色素以外の色素、その他の添加剤を含有していても良い。
【0064】
また、本発明の記録液に、その全量に対して0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%程度の尿素、チオ尿素、ビウレット、セミカルバジドから選ばれる化合物を添加したり、0.001〜5重量%程度の界面活性剤を添加することによって、印字後の速乾性及び印字品位をより一層改良することができる。
【0065】
本発明の記録液のpH値は、通常4以上であり、好ましくは6以上、更に好ましくは6.5以上であり、7以上が最も好ましい。また、pH値の上限は通常11以下、好ましくは10以下、更に好ましくは9.5以下である。特に、アゾ系化合物の金属キレートが安定に形成されるためには、中性からわずかにアルカリ性であることが好ましい。
【0066】
記録液のpHがこの範囲を超えて低すぎる、即ち4未満の場合は、色素のアゾ金属キレート化合物の溶解安定性が低下し、色素が保存中に析出したり、金属キレートがはずれて変色を生じやすい。記録液のpHが11を超える場合は、記録液中でアルコール系有機溶剤と金属キレートとでアルコラートを生成し、インク性能の劣化を誘発する可能性がある。また、本発明の記録液は人体に触れる可能性が高いため、安全性の面からも高pHを避けて調製するのが望ましい。
【0067】
記録液のpHは、pH調整剤を用いて調整することができ、この場合、pH調整剤としては、調合される記録液に悪影響を及ぼすことなくpHを所定範囲に制御できるものであれば、任意の物質を使用することができる。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム等の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸リチウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム等のアルカリ金属無機酸塩;酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、シュウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、フタル酸水素カリウム、酒石酸水素カリウム等のアルカリ金属有機酸塩;アンモニア;メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、プロパノールアミン等のアミン類;4−モルホリンエタンスルホン酸、4−モルホリンプロパンスルホン酸等が好ましく用いられる。
【0068】
これらの中でも緩衝作用を示す緩衝剤がより好ましい。緩衝剤としては、弱酸とその塩、あるいは弱塩基とその塩の組合せ(混合)が挙げられ、具体的には酢酸ナトリウム、酢酸リチウム、リン酸ナトリウム、リン酸リチウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩、4−モルホリンエタンスルホン酸、4−モルホリンプロパンスルホン酸等が挙げられ、好ましくは、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩、4−モルホリンエタンスルホン酸、4−モルホリンプロパンスルホン酸である。
【0069】
緩衝剤は、記録液の全重量に対し、通常0.01〜3重量%、好ましくは0.1〜1重量%、更に好ましくは0.1〜0.5重量%の濃度で使用される。
【0070】
また、緩衝液を用いて記録液のpH調整を行っても良く、この場合、緩衝液としては、一般には水素イオンの混入によるpHの低下を防止する目的で種々用いられているもの、例えば、以下のような組合せ等で各々を適当量混合した系が挙げられ、これらの中から適宜選択して使用することができる。
フタル酸水素カリウムと水酸化ナトリウムの組合せ、
リン酸二水素カリウムと水酸化ナトリウムの組合せ、
ホウ酸及び塩化カリウムと水酸化ナトリウムの組合せ、
グリシン及び塩化ナトリウムと塩酸の組合せ、
グリシン及び塩化ナトリウムと水酸化ナトリウムの組合せ、
クエン酸ナトリウムと塩酸の組合せ、
クエン酸ナトリウムと水酸化ナトリウムの組合せ、
四ホウ酸ナトリウム(ホウ砂)と塩酸の組合せ、
四ホウ酸ナトリウム(ホウ砂)と水酸化ナトリウムの組合せ、
リン酸二水素カリウムとリン酸水素二ナトリウムの組合せ、
クエン酸二水素カリウムと水酸化ナトリウムの組合せ、
コハク酸と四ホウ酸ナトリウムの組合せ、
クエン酸二水素カリウムと四ホウ酸ナトリウムの組合せ、
リン酸二水素カリウムと四ホウ酸ナトリウムの組合せ、
四ホウ酸ナトリウムと炭酸ナトリウムの組合せ、
塩酸と炭酸ナトリウムの組合せ、
酒石酸と酒石酸ナトリウムの組合せ、
乳酸と乳酸ナトリウムの組合せ、
酢酸と酢酸ナトリウムの組合せ、
塩化アンモニウムとアンモニアの組合せ、
ジエチルバルビツル酸ナトリウム及び酢酸ナトリウムと塩酸の組合せ、
ジエチルバルビツル酸ナトリウムと塩酸の組合せ、
N,N−ジエチルグリシンナトリウム塩と塩酸の組合せ、
リン酸水素二ナトリウムとクエン酸の組合せ、
クエン酸、リン酸二水素カリウム、ホウ酸及びジエチルバルビツル酸とリン酸三ナトリウムの組合せ、
ホウ酸及びクエン酸とリン酸三ナトリウムの組合せ、
2,4,6−トリメチルピリジンと塩酸の組合せ、
トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンと塩酸の組合せ、
2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールと塩酸の組合せ、
3−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]−1−プロパンスルホン酸、水酸化ナトリウム及び塩化ナトリウムの組合せ、
クエン酸、リン酸二水素カリウム、四ホウ酸ナトリウム、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン及び塩化カリウムと水酸化ナトリウムの組合せ。
【0071】
これらのうち、好ましいのは
リン酸二水素カリウムと水酸化ナトリウムの組合せ、
ホウ酸及び塩化カリウムと水酸化ナトリウムの組合せ、
四ホウ酸ナトリウム(ホウ砂)と塩酸の組合せ、
四ホウ酸ナトリウム(ホウ砂)と水酸化ナトリウムの組合せ、
リン酸二水素カリウムとリン酸水素二ナトリウムの組合せ、
リン酸二水素カリウムと四ホウ酸ナトリウムの組合せ、
塩化アンモニウムとアンモニアの組合せ、
トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンと塩酸の組合せ
であり、特に、四ホウ酸ナトリウム(ホウ砂)と水酸化ナトリウムの組合せ、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンと塩酸の組合せが好ましい。
【0072】
緩衝液は、記録液の全重量に対し、通常0.1〜40重量%、好ましくは0.5〜30重量%、更に好ましくは1〜25重量%の濃度で使用される。
【0073】
本発明のインクジェット記録方法は、このような本発明の水系インクジェット記録液を用いて、常法に従って、記録液の液滴を吐出させて印刷を行うものであり、高品位の印刷物を得ることができる。
【0074】
【実施例】
以下に、合成例及び実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、何ら以下の実施例に限定されるものではない。
【0075】
合成例1:ジアゾ化カップリング法によるアゾ系化合物の合成
40%硫酸82.7gに3−アミノ−1,2,4−トリアゾール10.0gを添加した溶液を冷却し、0〜5℃にて38%亜硝酸ナトリウム水溶液20.8gを加えジアゾ化した。
【0076】
次いで、スルファミン酸を添加して過剰の亜硝酸ナトリウムを分解しジアゾ液を得た。別に、2−ナフトール−3,6−ジスルホン酸二ナトリウム35.0gを水400mlに溶解させ、更にスルファミン酸2.3gを添加した。この溶液に0〜5℃にてNaOH水溶液でpHを8.0〜9.0に調整しながら先のジアゾ液を滴下した。生じたスラリーに塩化ナトリウム25gを添加し、生じた固形分を濾取し、塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。得られた固形分を水400mlに60℃で加熱溶解させた。室温まで冷却後、イソプロパノール400mlを加え、生じた固形分を濾過、洗浄、乾燥し、下記構造式(L1)に示すアゾ色素39.2gを得た。
【0077】
【化22】
【0078】
合成例2:ニッケルキレート色素の合成
合成例1で合成した構造式(L1)のアゾ色素5.0gに水200mlを加え、NaOH水溶液でpH10.0に調整し溶解させた。ここへ酢酸ニッケル(II)4水和物1.3g/水26mlの溶液を15〜25℃で滴下した。反応中、pHを9.0〜10.0に調整した。得られた色素溶液を卓上電気透析装置マイクロアシライザーS3(旭化成社製)で脱塩し、更に水溶液を濃縮した。得られた色素水溶液にイソプロピルアルコールを加えて、析出物を濾取し、乾燥してニッケルキレート色素3.5gを得た。
【0079】
得られたニッケルキレート色素(D−1)は、最大吸収波長(水中)は522nmであった。
【0080】
合成例3:銅キレート色素の合成
合成例1で合成した、構造式(L1)のアゾ色素5.0gに水200mlを加え、NaOH水溶液でpH10.0に調整し、溶解させた。ここへ酢酸銅(II)1水和物2.1g/水42mlの溶液を15〜25℃で滴下した。反応中、NaOH水溶液でpHを9.0〜10.0に調整した。得られた色素溶液を卓上電気透析装置マイクロアシライザーS3(旭化成社製)で脱塩し、更に水溶液を濃縮した。得られた色素水溶液にイソプロピルアルコールを加えて、析出物を濾取し、乾燥して銅キレート色素3.5gを得た。
【0081】
得られた銅キレート色素(D−2)は、最大吸収波長(水中)は535nmであった。
【0082】
合成例4:ニッケルキレート色素の合成
合成例1と同様にして表1のNo.1−2と表7のNo.6−1との組み合わせからなる色素(L2)を合成し、このアゾ色素(L2)を用いて合成例2と同様にしてアゾ色素(L2)と酢酸ニッケルとのニッケルキレート色素を合成した。
【0083】
得られたニッケルキレート色素(D−3)は、最大吸収波長(水中)は533nmであった。
【0084】
合成例5:銅キレート色素の合成
合成例1と同様にして表1のNo.1−2と表7のNo.6−1との組み合わせからなる色素(L2)を合成し、このアゾ色素(L2)を用いて合成例3と同様にしてアゾ色素(L2)と酢酸銅との銅キレート色素を合成した。
【0085】
得られた銅キレート色素(D−4)は、最大吸収波長(水中)は540nmであった。
【0086】
合成例6:ニッケルキレート色素の合成
合成例1と同様にして表2のNo.1−18と表7のNo.6−1との組み合わせからなる色素(L3)を合成し、このアゾ色素(L3)を用いて合成例2と同様にしてアゾ色素(L3)と酢酸ニッケルとのニッケルキレート色素を合成した。
【0087】
得られたニッケルキレート色素(D−5)は、最大吸収波長(水中)は515nmであった。
【0088】
合成例7:銅キレート色素の合成
合成例1と同様にして表2のNo.1−18と表7のNo.6−1との組み合わせからなる色素(L3)を合成し、このアゾ色素(L3)を用いて合成例3と同様にしてアゾ色素(L3)と酢酸銅との銅キレート色素を合成した。
【0089】
得られた銅キレート色素(D−6)は、最大吸収波長(水中)は548nmであった。
【0090】
合成例8:ニッケルキレート色素の合成
合成例1と同様にして表2のNo.1−17と表7のNo.6−1との組み合わせからなる色素(L4)を合成し、このアゾ色素(L4)を用いて合成例2と同様にしてアゾ色素(L4)と酢酸ニッケルとのニッケルキレート色素を合成した。
【0091】
得られたニッケルキレート色素(D−7)は、最大吸収波長(水中)は516nmであった。
【0092】
合成例9:銅キレート色素の合成
合成例1と同様にして表2のNo.1−17と表7のNo.6−1との組み合わせからなる色素(L4)を合成し、このアゾ色素(L4)を用いて合成例3と同様にしてアゾ色素(L4)と酢酸銅との銅キレート色素を合成した。
【0093】
得られた銅キレート色素(D−8)は、最大吸収波長(水中)は554nmであった。
【0094】
合成例10:ニッケルキレート色素の合成
合成例1と同様にして表2のNo.1−19と表7のNo.6−1との組み合わせからなる色素(L5)を合成し、このアゾ色素(L5)を用いて合成例2と同様にしてアゾ色素(L5)と酢酸ニッケルとのニッケルキレート色素を合成した。
【0095】
得られたニッケルキレート色素(D−9)は、最大吸収波長(水中)は535nmであった。
【0096】
合成例11:銅キレート色素の合成
合成例1と同様にして表2のNo.1−19と表7のNo.6−1との組み合わせからなる色素(L5)を合成し、このアゾ色素(L5)を用いて合成例3と同様にしてアゾ色素(L5)と酢酸銅との銅キレート色素を合成した。
【0097】
得られた銅キレート色素(D−10)は、最大吸収波長(水中)は543nmであった。
【0098】
実施例1
ジエチレングリコール10重量部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル3重量部、合成例2で得たニッケルキレート色素(D−1)3.0重量部に水を加え、水酸化ナトリウム水溶液でpHを9に調整して全量を100重量部とした。この組成物を充分に混合して溶解し、孔径1μmのテフロン(登録商標)フィルターで加圧濾過した後、真空ポンプ及び超音波洗浄機で脱気処理して記録液を調製した。
【0099】
得られた記録液を使用し、インクジェットプリンター(商品名「PM−750C」セイコーエプソン社製)を用いて、電子写真用紙(商品名「4024紙」ゼロックス社製)、スーパーファイン専用紙(商品名「MJA4SP1」セイコーエプソン社製)、スーパーファイン専用光沢紙(商品名「MJA4SP3」セイコーエプソン社製)、専用フォトプリント紙(商品名「PMA4SP1」セイコーエプソン社製)に各々インクジェット記録を行い、鮮明な青みマゼンタ色印字物を得た。
【0100】
得られた印刷物及び記録液について、下記の試験を行い結果を表9に示した。
[耐光試験]
印字物にキセノンフェードメーター(アトラス社製)を用いて80時間光照射した後の変褪色を観察した。
[退室内変褪色試験]
遮光されたオゾン濃度3ppmの槽内に印字物を2時間放置した後の変褪色を観察した。
[印字品位試験]
印字物の彩度をグレタグマクベスSPM50(グレタグマクベス社製)で測定し、いずれも高彩度であることを確認した。
[記録液の保存安定性試験]
記録液をポリテトラフルオロエチレン製容器に密閉し、5℃及び60℃でそれぞれ1ヶ月保存した後の変化を調べた。
【0101】
実施例2〜6
実施例1において、色素として表9に示すキレート色素を用いたこと以外は同様にして記録液を調製し、同様に印字を行ったところ、いずれの場合も、鮮明な色調のマゼンダ色印字物を得た。
【0102】
得られた印字物及び記録液について、実施例1と同様にして各種の試験を行い、結果を表9に示した。
【0103】
比較例1
実施例1において、合成例2で得たニッケルキレート色素(D−1)を特願2000−390195の実施例1の色素に変更したこと以外は同様にして記録液を調製し、同様に印字を行ったところ、鮮明な色調のマゼンダ色印字物を得た。
【0104】
得られた印字物及び記録液について、実施例1と同様にして各種の試験を行い、結果を表9に示した。
【0105】
比較例2
実施例1において、合成例2で得たニッケルキレート色素(D−1)を特願2000−390195の実施例2の色素に変更したこと以外は同様にして記録液を調製し、同様に印字を行ったところ、鮮明な色調のマゼンダ色印字物を得た。
【0106】
得られた印字物及び記録液について、実施例1と同様にして各種の試験を行い、結果を表9に示した。
【0107】
【表9】
【0108】
【発明の効果】
本発明のインクジェット記録用金属キレート色素は水溶解性に優れ、この金属キレート色素を用いた本発明の記録液は、水系インクジェット記録用として、普通紙及び専用紙に記録した場合、鮮明な記録物を得ることができ、その印字濃度及び耐光性、耐室内変褪色性が優れている上に、記録液としての保存安定性も良好である。
【0109】
本発明のインクジェット記録方法によれば、このような記録液を用いて高品位の印刷物を得ることができる。
Claims (12)
- 水性媒体と、
下記一般式(1)で表される、分子内に1個以上の親水性基を有するアゾ系化合物と、金属元素とから形成される水溶性アゾ金属キレート化合物であるインクジェット記録用金属キレート色素の1種又は2種以上とを含有することを特徴とする水系インクジェット記録液。
Ar1は下記一般式(4)〜(6)で表されるナフチル基を表す。)
- 水性媒体と、
遊離酸の形が、下記一般式(1)で表される、分子内に1個以上の親水性基を有するアゾ系化合物と、金属元素とから形成される水溶性アゾ金属キレート化合物であるインクジェット記録用金属キレート色素の1種又は2種以上とを含有することを特徴とする水系インクジェット記録液。
Ar1は下記一般式(4)〜(6)で表されるナフチル基を表す。)
- 前記一般式(4)〜(6)において、Y1は、水酸基、カルボキシル基、置換されていてもよいアミノ基、スルホ基、カルバモイル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルキルチオ基、置換されていてもよいアルキルスルホニルアミノ基、又は置換されていても良いアリールスルホニルアミノ基であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水性インクジェット記録液。
- 前記一般式(4)〜(6)において、Y1は、水酸基、置換されていてもよいアルコキシ基、又は置換されていてもよいアミノ基であることを特徴とする請求項3に記載の水性インクジェット記録液。
- 前記一般式(4)〜(6)において、Z1は各々独立に、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアリールオキシ基、置換されていてもよいアシルオキシ基、置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、置換されていてもよいアリールオキシカルボニル基、カルボキシル基、置換されていてもよいカルバモイル基、置換されていてもよいカルボキシアニリド基、水酸基、置換されていてもよいアミノ基、ウレイド基、置換されていてもよいアシルアミノ基、置換されていてもよいアルキルスルホニルアミノ基、置換されていてもよいアリールスルホニルアミノ基、ホスホノ基、スルホ基、及び置換されていてもよいスルファモイル基よりなる群から選ばれる基であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の水性インクジェット記録液。
- 前記一般式(1)において、Ar1が前記一般式(6)で表されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の水性インクジェット記録液。
- 前記一般式(6)において、アゾ基と結合している炭素を1位とした場合に、3位の炭素にZ1が結合していることを特徴とする請求項6に記載の水性インクジェット記録液。
- 前記一般式(6)において、3位の炭素に結合しているZ1がスルホ基又は置換されていてもよいスルファモイル基であることを特徴とする請求項7に記載の水性インクジェット記録液。
- 水溶性アゾ金属キレート化合物は、前記アゾ系化合物とニッケル、銅及びコバルトよりなる群から選ばれる金属元素とから形成される水溶性アゾ金属キレート化合物であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の水性インクジェット記録液。
- 水溶性アゾ金属キレート化合物は、前記アゾ系化合物と銅元素とから形成される水溶性アゾ金属キレート化合物であることを特徴とする請求項9に記載の水性インクジェット記録液。
- 水溶性アゾ金属キレート化合物は、前記アゾ系化合物とニッケル元素とから形成される水溶性アゾ金属キレート化合物であることを特徴とする請求項9に記載の水性インクジェット記録液。
- 請求項11に記載の水系インクジェット記録液を用いたインクジェット記録方法。
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