JP4280491B2 - ポリエステル樹脂水性分散体およびその製造方法 - Google Patents

ポリエステル樹脂水性分散体およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、貯蔵安定性に優れ、各種基材に塗布され密着性、耐熱水性、耐溶剤性に優れる樹脂被膜を形成することができるポリエステル樹脂水性分散体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル樹脂は、被膜形成用樹脂として、被膜の加工性、有機溶剤に対する耐性(耐溶剤性)、耐候性、各種基材への密着性等に優れることから、塗料、インキ、接着剤、コーティング剤等の分野におけるバインダー成分として大量に使用されている。
特に近年、環境保護、省資源、消防法等による危険物規制、職場環境改善の立場から有機溶剤の使用が制限される傾向にあり、上記の用途に使用できるポリエステル樹脂系バインダーとして、ポリエステル樹脂を水性媒体に微分散させたポリエステル樹脂水分散体の開発が盛んに行われている。
【0003】
例えば、特許文献1〜3には、酸価が小さく、高分子量のポリエステル樹脂を水性媒体中に分散させたポリエステル樹脂水分散体が提案され、かかる水分散体を用いると加工性、耐水性、耐溶剤性等の性能に優れた被膜を形成できることが記載されている。しかしながら、これらの文献に記載されたポリエステル樹脂水分散体はいずれも、ポリエステル樹脂の末端カルボキシル基を塩基性化合物で中和することにより水性媒体中に分散させた、いわゆる自己乳化型のポリエステル樹脂水分散体であるため、ポリエステル樹脂を水性媒体中へ安定に分散させるためには、8mgKOH/g以上の酸価に対応するカルボキシル基を有している必要があり、結果的にポリエステル樹脂の分子量が制限されていた。
【0004】
また、特許文献4、5には、ポリエステル樹脂を塩基性化合物と非イオン界面活性剤を用いて水性分散体を製造する方法が提案されている。しかしながら、これらの文献に記載されたポリエステル樹脂水分散体は、いずれもポリエステル樹脂に対する界面活性剤の含有量が多く、このようなポリエステル樹脂水分散体を使用して樹脂被膜を形成した場合には、樹脂被膜中に大量の界面活性剤が残存することになり、樹脂被膜の耐水性が悪くなるという問題があった。
また、特許文献5は実質的にW/O型のエマルジョンであり、被コーティング材(基材)の種類によっては、ポリエステル樹脂水分散体の含有する有機溶剤によってダメージを受けるという問題を生じていた。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−296100号公報
【特許文献2】
特開2000−26709号公報
【特許文献3】
特開2000−313793号公報
【特許文献4】
特公昭51−24375号公報
【特許文献5】
特公昭53−14101号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況下、本発明の課題は、貯蔵安定性に優れ、基材への密着性、耐水性、耐溶剤性に優れる樹脂被膜を形成できる低酸価のポリエステル樹脂を用いたポリエステル樹脂水性分散体およびその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究した結果、転相乳化の際の温度を制御することにより、界面活性剤の含有量が少なくても、低酸価のポリエステル樹脂を水性媒体中に安定に分散でき、このようにして得られた水性分散体から形成される樹脂被膜が良好な被膜性能を有することを見出し、本発明を完成するに到った。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、
第一に、酸価が8mgKOH/g未満であるポリエステル樹脂(A)と塩基性化合物(B)と界面活性剤または保護コロイド作用を有する化合物(C)とを含有し、かつ(A)と(C)との質量比が(C)/(A)=0.1/100〜20/100であることを特徴とするポリエステル樹脂水性分散体である。
第二に、ポリエステル樹脂(A)の有機溶剤溶液を塩基性化合物(B)と界面活性剤または保護コロイド作用を有する化合物(C)とともに水に分散させて、転相乳化により水性分散体を製造する方法であって、転相乳化を40℃以下で行うことを特徴とするポリエステル樹脂水性分散体の製造方法である。
第三に、転相乳化後に有機溶剤を除去することを特徴とするポリエステル樹脂水性分散体の製造方法である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリエステル樹脂水性分散体(以下、水性分散体とする)は、(A)酸価が8mgKOH/g未満であるポリエステル樹脂および、(B)塩基性化合物および、(C)界面活性剤または保護コロイド作用を有する化合物が水性媒体に分散されてなる水性分散体であり、(A)と(C)との質量比が(C)/(A)=0.1/100〜20/100であることを特徴とするポリエステル樹脂水性分散体である。
水性媒体とは、水を主成分とする媒体であり、好ましくは50質量%以上の水を含む。
【0010】
まず、(A)のポリエステル樹脂について説明する。
本発明において、ポリエステル樹脂の酸価は8mgKOH/g未満であり、2〜6mgKOH/gとすることがより好ましく、2〜5mgKOH/gがさらに好ましい。酸価が8mgKOH/g未満であるポリエステルは、比較的高分子量であるので、被膜とした場合の密着性や耐水性が向上する。また、酸価が2mgKOH/g未満であると、水性化が困難になる傾向があり、また、できたとしても体積平均粒経が大きくなり、貯蔵安定性が悪くなるので好ましくない。
【0011】
また、ポリエステル樹脂の数平均分子量は4,000以上とすることが好ましく、8,000以上であることがより好ましく、12,000以上であることがさらに好ましく、15,000以上であることが最も好ましい。数平均分子量が4,000未満では、樹脂被膜の加工性が不足する傾向にある。
また、ポリエステル樹脂には樹脂被膜の耐水性を損なわない範囲で水酸基が含まれていてもよく、30mgKOH/g以下であることが好ましく、20mgKOH/g以下であることがより好ましい。
【0012】
なお、ポリエステル樹脂の分子量分布の分散度は、特に限定されないが、8以下が好ましく、5以下がより好ましい。ここで、分子量分布の分散度とは、重量平均分子量を数平均分子量で除した値のことである。
【0013】
また、ポリエステル樹脂のガラス転移温度(以下、Tgとする)も、特に限定されないが、−50〜120℃が好ましく、0〜80℃がさらに好ましい。
【0014】
ポリエステル樹脂を構成する酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、アイコサン二酸、水添ダイマー酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、ダイマー酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸の脂環族ジカルボン等を例示できる。これらは無水物であってもよい。
【0015】
上記した多塩基酸成分の中でも、芳香族ジカルボン酸が好ましく、中でもテレフタル酸とイソフタル酸が好ましく、特にテレフタル酸が好ましい。ポリエステル樹脂の酸成分に占める芳香族ジカルボン酸の割合としては、50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましい。芳香族ジカルボン酸の割合を増すことにより、加水分解され難い芳香族エステル結合が増すため、水性分散体より形成される被膜(以下、樹脂被膜と記す)の硬度、耐熱水性、耐溶剤性が向上し、また、水性分散体の貯蔵安定性が向上する。
【0016】
また、3官能以上の酸、例えばトリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水べンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸等が含まれていてもよい。このとき、樹脂被膜の加工性を良好に保つ点において、ポリエステル樹脂の酸成分に占める3官能以上の酸の割合としては、5モル%以下の範囲にとどめることが好ましい。
【0017】
ポリエステル樹脂を構成する多価アルコール成分としては、炭素数2〜10の脂肪族グリコール、炭素数6〜12の脂環族グリコールもしくはエーテル結合含有グリコール等が好ましい。具体的には、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3‐プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等が挙げられる。
【0018】
また、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンのようなビスフェノール類のエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加体、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等も使用することができる。
【0019】
上記した多価アルコール成分の中でも、エチレングリコール又はネオペンチルグリコールが好ましく、ポリエステル樹脂の多価アルコール成分に占めるエチレングリコールとネオペンチルグリコールの合計の割合としては、50モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましく、70モル%以上が特に好ましい。エチレングリコール及びネオペンチルグリコールは工業的に多量に生産されているので安価であり、しかも樹脂被膜の諸性能にバランスがとれ、エチレングリコールは特に樹脂被膜の耐薬品性を向上させ、ネオペンチルグリコールは特に樹脂被膜の耐候性を向上させるという長所を有するので、ポリエステル樹脂の多価アルコール成分として好ましい。
【0020】
また、3官能以上の多価アルコール、例えばグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が含まれていてもよい。このとき、樹脂被膜の加工性を良好に保つ点において、ポリエステル樹脂のアルコール成分に占める3官能以上の多価アルコールの割合としては、5モル%以下の範囲にとどめることが好ましい。
【0021】
また、ポリエステル樹脂には、モノカルボン酸、モノアルコール、ヒドロキシカルボン酸が共重合されていてもよく、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、4−ヒドロキシフェニルステアリン酸、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノール、ε-カプロラクトン、乳酸、β-ヒドロキシ酪酸、p-ヒドロキシ安息香酸等を用いることができる。
【0022】
ポリエステル樹脂は上記の多塩基酸成分の1種類以上と多価アルコール成分の1種類以上とを公知の方法により重縮合させることにより製造することができ、例えば、全モノマー成分及び/又はその低重合体を不活性雰囲気下で180〜250℃、2.5〜10時間程度反応させてエステル化反応を行い、引き続いてエステル交換反応触媒の存在下、130Pa以下の減圧下に220〜280℃の温度で所望の分子量に達するまで重縮合反応を進めてポリエステル樹脂を得る方法等を挙げることができる。
【0023】
また、ポリエステル樹脂に所望の酸価や水酸基価を付与する場合には、上記の重縮合反応に引き続き、多塩基酸成分や多価アルコール成分をさらに添加し、不活性雰囲気下、解重合を行う方法等を挙げることができる。
【0024】
本発明の水性分散体におけるポリエステル樹脂の含有率は5〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましい。ポリエステル樹脂の含有率が50質量%を超えると水性分散体の粘度が非常に高くなり、実質的に樹脂被膜の成形が困難になってしまう場合があり、その含有率が5質量%未満では、実用的ではない。
【0025】
次に(B)の塩基性化合物について説明する。
本発明の水性分散体には、塩基性化合物が含まれていることが必要である。塩基性化合物によって、ポリエステル樹脂のカルボキシル基が中和されてカルボキシルアニオンが生成し、このアニオン間の電気反発力によって、ポリエステル樹脂微粒子は凝集せず安定に分散する。この電気反発力の作用がなければ、良好な水性分散体は得ることは難しいが、一方、ポリエステル樹脂の酸価が低いため、カルボキシルアニオンの作用だけでは十分に安定な水性分散体は得られず、後述する乳化剤や保護コロイド作用を有する化合物を併用する必要がある。
【0026】
塩基性化合物としては、樹脂被膜形成時に揮散しやすい点から、沸点が250℃以下、好ましくは160℃以下の有機アミン、あるいはアンモニアが好ましい。好ましく用いられる有機アミンの具体例としては、トリエチルアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等が挙げられ、中でも、アンモニア、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミンを使用することが好ましい。
【0027】
次に、(C)の界面活性剤または保護コロイド作用を有する化合物について説明する。
本発明の水性分散体を製造するためには、水及び上記のポリエステル樹脂、塩基性化合物に加えて界面活性剤または保護コロイド作用を有する化合物を併用することが必要である。前記したように、ポリエステル樹脂のカルボキシルアニオンの電気反発力のみでは不十分であった保存安定性を補うことができる。
【0028】
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等、すべての公知の界面活性剤が含まれる。界面活性剤の中では、顔料との混合安定性に優れることや泡が発生しにくいなどの理由から非イオン性界面活性剤を使用することが好ましく、そのHLB(Hydrophile Lipophile Balance)としては8〜20が好ましく、10〜18がより好ましく、11〜14.9がさらに好ましい。非イオン性界面活性剤としては、ノニルフェノール、オクチルフェノール等のアルキルフェノールのアルキレンオキシド付加物や高級アルコールのアルキレンオキシド付加物が挙げられ、このような非イオン性界面活性剤としてはAldrich社製のIgepalシリーズ、三洋化成株式会社製のナロアクティーN-100、ナロアクティーN-120、ナロアクティーN-140等、ナロアクティーシリーズ、サンノニックSS‐120、サンノニックSS‐90、サンノニックSS‐70等、サンノニックSSシリーズ、サンノニックFD‐140、サンノニックFD‐100、サンノニックFD‐80等、サンノニックFDシリーズ、セドランFF-220、セドランFF-210、セドランFF-200、セドランFF-180等、セドランFFシリーズ、セドランSNP‐112等、セドランSNPシリーズ、ニューポールPE‐64、ニューポールPE‐74、ニューポールPE75等、ニューポールPEシリーズ、サンモリン11が挙げられる。
【0029】
また、界面活性剤のかわりに、保護コロイド作用を有する化合物を用いてもよい。保護コロイド作用とは、水性媒体中の樹脂微粒子の表面に吸着し、いわゆる、「混合効果」、「浸透圧効果」、「容積制限効果」と呼ばれる安定化効果を示して樹脂微粒子間の吸着を防ぐ作用をいう。保護コロイド作用を有する化合物としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、変性デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、アクリル酸及び/またはメタクリル酸を一成分とするビニルモノマーの重合物、ポリイタコン酸、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン、膨潤性雲母等を例示することができる。
なお、界面活性剤または保護コロイド作用を有する化合物は、1種類でも、また2種以上を混合して使用してもよい。
本明細書においては、以降、「界面活性剤または保護コロイド作用を有する化合物」を単に「界面活性剤等」と略記する。
【0030】
本発明の水性分散体において、ポリエステル樹脂(A)と界面活性剤等(C)との関係は、その質量比(C)/(A)が0.1/100〜20/100の範囲である必要があり、好ましくは、0.5/100〜15/100の範囲、より好ましくは、1.0/100〜10/100の範囲である。
【0031】
(C)/(A)の値が20/100を超えると、後述する脱溶剤工程において、水性分散体の泡立ちが激しくなり製造に問題がでるばかりか、界面活性剤等が樹脂被膜中に多量に残留することになり樹脂被膜の耐水性が悪くなるので好ましくない。また、(C)/(A)の値が0.1/100未満であると、水性分散体の保存安定性が悪くなる傾向にある。
【0032】
次に、水性分散体の体積平均粒径について説明する。
本発明において、水性分散体の体積平均粒径は500nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることがさらに好ましく、150nm以下であることが特に好ましい。体積平均粒径が500nmを超えると、得られる水性分散体中のポリエステルが沈降しやすくなり、貯蔵安定性が損なわれる傾向にある。水性分散体の体積平均粒子径を500nm以下とするには、たとえば後述の製造方法をとればよい。
【0033】
次に、本発明の水性分散体を製造する方法について詳細に説明する。
本発明の水性分散体の製造は、実質的に、溶解工程、分散工程の2工程よりなり、さらに、必要に応じて、脱溶剤工程が付け加えられる。溶解工程は、ポリエステル樹脂を有機溶剤に溶解させる工程であり、分散工程は、有機溶剤に溶解したポリエステル樹脂溶液を塩基性化合物と界面活性剤等とともに水に分散させる工程である。脱溶剤工程は、得られた水性分散体から、ポリエステル樹脂の溶解工程で用いた有機溶剤の一部またはすべてを系外に除去する工程である。
【0034】
以下、各工程について説明する。
まず、溶解工程では、ポリエステル樹脂を有機溶剤に溶解させる。このとき、得られる溶液中のポリエステル樹脂の濃度を10〜70質量%の範囲とすることが好ましく、20〜60質量%の範囲がより好ましく、30〜50質量%の範囲が特に好ましい。溶液中のポリエステル樹脂の濃度が70質量%を越える場合には、次の分散工程において、水と混合した場合に粘度の上昇が大きくなり、このような状態から得られた水性分散体は体積平均粒径が大きくなる傾向にあり、保存安定性上好ましくない。また、ポリエステル樹脂の濃度が10質量%未満の場合には、次の分散工程により、さらにポリエステル樹脂の濃度が下がることや脱溶剤工程の際に多量の有機溶剤を除去することになり不経済である。ポリエステル樹脂を有機溶剤に溶解するための装置としては、液体を投入できる槽を備え、適度な攪拌ができるものであれば特に限定されない。また、ポリエステル樹脂が溶解しにくい場合には、加熱してもよい。
【0035】
有機溶剤は、公知のものを使用することができ、例えば、ケトン系有機溶剤、芳香族系炭化水素系有機溶剤、エーテル系有機溶剤、含ハロゲン系有機溶剤、アルコール系有機溶剤、エステル系有機溶剤、グリコール系有機溶剤等が挙げられる。ケトン系有機溶剤としては、メチルエチルケトン(2-ブタノン)(以後MEKと記す)、アセトン、ジエチルケトン(3−ペンタノン)、メチルプロピルケトン(2−ペンタノン)、メチルイソブチルケトン(4−メチル−2−ペンタノン)(以後MIBKと記す)、2−ヘキサノン、5−メチル−2−ヘキサノン、2−へプタノン、3−へプタノン、4−へプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどが例示できる。芳香族炭化水素系有機溶剤としては、トルエン、キシレン、ベンゼン等、エーテル系有機溶剤としては、ジオキサン、テトラヒドロフラン、含ハロゲン系有機溶剤としては、四塩化炭素、トリクロロメタン、ジククロロメタン等、アルコール系有機溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール等、エステル系有機溶剤としては、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル等、グリコール系有機溶剤としては、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等を例示することができる。また、さらには、3−メトキシ−3−メチルブタノール、3−メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチル等の有機溶剤が挙げられる。
【0036】
これらの有機溶剤としては、上記したものを単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することができるが、本発明の水性分散体を得るためには、ポリエステル樹脂を10質量%以上溶解することができるように有機溶剤の選択を行うことが必要であり、20質量%以上溶解することができる有機溶剤がより好ましく、30質量%以上溶解することができる有機溶剤がよりさらに好ましくい。このような有機溶剤としては、アセトン、MEK、MIBK、ジオキサン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン単独や、アセトン/エチレングリコールモノブチルエーテル混合溶液、MEK/エチレングリコールモノブチルエーテル混合溶液、MIBK/エチレングリコールモノブチルエーテル混合溶液、ジオキサン/エチレングリコールモノブチルエーテル混合溶液、テトラヒドロフラン/エチレングリコールモノブチルエーテル混合溶液、シクロヘキサノン/エチレングリコールモノブチルエーテル混合溶液、アセトン/イソプロパノール混合溶液、MEK/イソプロパノール混合溶液、MIBK/イソプロパノール混合溶液、ジオキサン/イソプロパノール混合溶液、テトラヒドロフラン/イソプロパノール混合溶液、シクロヘキサノン/イソプロパノール混合溶液等が好適に使用できる。混合溶液を用いる場合には、任意の混合比の混合溶液を作成しておき、その混合溶液にポリエステル樹脂を溶解させるか、あるいは、よりポリエステルに対して溶解力がある有機溶剤で、ポリエステルをあらかじめ溶解しておき、後述する分散工程前に規定量の別の有機溶剤を加えてもよい。
【0037】
次に、分散工程について説明する。
分散工程では、溶解工程で得られたポリエステル樹脂溶液を、水、塩基性化合物および界面活性剤等と混合して転相乳化を行う。本発明においては、塩基性化合物と界面活性剤等を、ポリエステル樹脂を含有した溶液に加えておき、これに水を徐々に投入して分散を行うことが好ましく、このような方法を用いることで、得られる水性分散体の粒子径を500nm以下にすることができ、貯蔵安定性が良好になる。
【0038】
なお、本発明において「転相乳化」とは、ポリエステル樹脂の有機溶剤溶液に、この溶液に含まれる有機溶剤量を超える量の水を添加して、系を有機溶剤相から水相に変化させることを意味する。
【0039】
分散工程は、40℃以下で行うことが好ましく、30℃以下がより好ましく、20℃以下がさらに好ましく、15℃以下が特に好ましい。40℃以下で分散工程を行うことにより、界面活性剤等の含有量が少なくても、得られる水性分散体の粒子径を500nm以下にすることができ、貯蔵安定性が良好になる。
上記した分散工程の温度は、この工程を通じて40℃以下に保たれていることが好ましいが、攪拌による剪断熱などにより液温が上昇しやすいため、系の温度を維持しにくい場合がある。そのような場合においても、ポリエステル樹脂溶液に含まれる有機溶剤の0.8倍量の水を加え終えるまでは40℃以下に(40℃を超えないように)制御することが好ましく、より好ましくは、1倍量の水を加え終えるまで、さらに好ましくは、1.1倍量の水を加え終えるまで上記温度に制御することである。
【0040】
本発明の製造法における塩基性化合物の使用量は、ポリエステル樹脂(A)のカルボキシル基の総モル量に対する当量比で規定される。ポリエステル樹脂(A)の酸価をCmgKOH/gとし、使用する塩基性化合物(B)の、ポリエステル樹脂のカルボキシル基総モル量に対する当量比をDとした場合、下記式(1)の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは下記式(2)の範囲、さらに好ましくは下記式(3)の範囲である。
【0041】
−1.375×C+11.5≦D≦−5×C+50 (1)
−1.75×C+15≦D≦−4.25×C+42 (2)
−2×C+18≦D≦−3.5×C+34 (3)
【0042】
図1は、上記式(1)〜(3)で示される分散工程におけるポリエステル樹脂の酸価と、必要な塩基性化合物の、ポリエステル樹脂のカルボキシル基の総モル量に対する当量比の関係を図示したものである。図1から、低酸価のポリエステル樹脂を分散させる時の塩基性化合物は、ポリエステル樹脂のカルボキシル基がちょうど中和される量(1倍当量)よりも、はるかに多い量を必要とすることがわかる。特にポリエステル樹脂の酸価が2mgKOH/g程度に小さくなると、その傾向は顕著に大きくなる。逆に、酸価が8mgKOH/g程度となると、その傾向は小さくなり、ポリエステルのカルボキシル基が中和される当量の半分(0.5倍当量)以上、好ましくは、2倍当量以上の塩基性化合物量で分散が可能になる。
【0043】
Dが(−1.375×C+11.5)よりも小さいと、分散工程において、ポリエステルのカルボキシル基が中和されて生成したカルボキシルアニオン間の電気反発力の効果が不充分になり、ポリエステルが凝集し、析出する等の問題が生じる。また、ポリエステル水性分散体が生成したとしても粒子径が大きくなり、貯蔵安定性が悪くなり好ましくない。一方、Dが(−5×C+50)を超える場合には、得られる水性分散体に塩基性化合物が多量に残存することになり好ましくない。また、後述するような脱溶剤処理を行う場合には、ポリエステル樹脂が凝集して脱溶剤が困難になるので好ましくない。なお、分散工程後に、脱溶剤工程行なうと、水性分散体における最終的な塩基性化合物の含有率が1質量%未満となることもある。
【0044】
分散工程を行う装置としては、液体を投入できる槽を備え、適度な攪拌ができるものであれば特に限定されない。そのような装置としては、固/液撹拌装置や乳化機(例えばホモミキサー)として広く当業者に知られている装置があげられる。なお、ホモミキサーなど剪断の大きい乳化機を用いる際には、剪断熱により液温が上昇することがあるため、冷却しながら用いることが好ましい。分散工程は常圧、減圧、加圧下いずれの条件で行ってもよい。
【0045】
また、本発明の水性分散体における有機溶剤の含有率は、特に限定されないが、好ましくは30質量%以下であり、15質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましく、1質量%以下が特に好ましく、0.5質量%以下が最も好ましい。有機溶剤の含有率が30質量%を超えると、被コーティング材の種類によっては、水性分散体が含有する有機溶剤によって被コーティング材がダメージを受ける場合があり好ましくない。
【0046】
次いで、脱溶剤工程を設けてもよい。脱溶剤工程は、水性分散体に含まれる有機溶剤を蒸留し、その一部またはすべてを水性分散体から除去する工程である。この工程は、減圧下または常圧下で行うことができる。常圧下で脱溶剤すると凝集物が発生しやすい場合もあるが、そのようなときは、減圧下で行い、内温を70℃以下、好ましくは60℃以下、さらに好ましくは50℃以下となるように調節するとよい。脱溶剤工程を行う装置としては、液体を投入できる槽を備え、適度な攪拌ができるものであればよい。
【0047】
脱溶剤の際、発泡現象が発生する場合には、これを抑制する目的で消泡剤を加えてもよい。消泡剤は、シリコーン系、シリカ、シリコーンコンパウンド系、ポリアミド系などの公知の水性消泡剤が含まれる。消泡剤の量としては、脱溶剤する水性分散体の質量に対して1〜1000ppm、好ましくは、5〜100ppm加えればよい。このような消泡剤としては、サンノプコ株式会社製のSNデフォーマー381、SNデフォーマー470、SNデフォーマー777、SNデフォーマー5013、SNデフォーマーJK等があげられる。
【0048】
前記したような製法により、本発明のポリエステル樹脂水性分散体は、ポリエステル樹脂の体積平均粒子径が500nm以下に分散され、外観上、水性媒体中に沈殿、相分離あるいは皮張りといった、固形分濃度が局部的に他の部分と相違する部分が見いだされない均一な状態で得られる。
【0049】
また、水性分散体の製造にあたっては、異物等を除去する目的で、工程中に濾過工程を設けてもよい。このような場合には、例えば、300メッシュ程度のステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)を設置し、加圧濾過(空気圧0.2MPa)を行えばよい。
【0050】
次に、本発明の水性分散体の使用方法について説明する。
本発明の水性分散体は、被膜形成能に優れているので、公知の成膜方法、例えばディッピング法、はけ塗り法、スプレーコート法、カーテンフローコート法等により各種基材表面に均一にコーティングし、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥及び焼き付けのための加熱処理に供することにより、均一な樹脂被膜を各種基材表面に密着させて形成することができる。このときの加熱装置としては、通常の熱風循環型のオーブンや赤外線ヒーター等を使用すればよい。また、加熱温度や加熱時間としては、被コーティング物である基材の種類等により適宜選択されるものであるが、経済性を考慮した場合、加熱温度としては、60〜250℃が好ましく、70〜230℃がより好ましく、80〜200℃が特に好ましく、加熱時間としては、1秒〜30分間が好ましく、5秒〜20分がより好ましく、10秒〜10分が特に好ましい。
【0051】
また、本発明の水性分散体を用いて形成される樹脂被膜の厚さは、その目的や用途によって適宜選択されるものであるが、0.01〜40μmが好ましく、0.1〜30μmがより好ましく、0.5〜20μmが特に好ましい。
【0052】
また、本発明の水性分散体には、必要に応じて硬化剤、各種添加剤、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック等の顔料、染料、他の水性ポリエステル樹脂、水性ウレタン樹脂、水性オレフィン樹脂、水性アクリル樹脂等の水性樹脂等を配合することができる。
【0053】
硬化剤としては、ポリエステル樹脂が有する官能基、例えばカルボキシル基やその無水物および水酸基と反応性を有する硬化剤であれば特に限定されるものではなく、例えば尿素樹脂やメラミン樹脂やベンゾグアナミン樹脂等のアミノ樹脂、多官能エポキシ化合物、多官能イソシアネート化合物及びその各種ブロックイソシアネート化合物、多官能アジリジン化合物、カルボジイミド基含有化合物、オキサゾリン基含有重合体、フェノール樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種類を使用しても2種類以上を併用してもよい。
【0054】
また、添加剤としてはハジキ防止剤、レベリング剤、消泡剤、ワキ防止剤、レオロジーコントロール剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤、滑剤等が挙げられる。
なお、上記した硬化剤、各種添加剤、顔料、染料、水性樹脂等は、ポリエステル樹脂の溶解時や分散時にあらかじめ添加していてもよい。
【0055】
【実施例】
以下に実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0056】
(1)ポリエステル樹脂の構成
1H−NMR分析(バリアン社製,300MHz)より求めた。また、1H−NMRスペクトル上に帰属・定量可能なピークが認められない構成モノマーを含む樹脂については、封管中230℃で3時間メタノール分解を行った後に、ガスクロマトグラム分析に供し、定量分析を行った。
(2)ポリエステル樹脂の酸価
ポリエステル樹脂0.5gを50mlの水/ジオキサン=1/9(体積比)に溶解し、クレゾールレッドを指示薬としてKOHで滴定を行い、中和に消費されたKOHのmg数をポリエステル樹脂1gあたりに換算した値を酸価として求めた。
【0057】
(3)ポリエステル樹脂の水酸基価
ポリエステル樹脂3gを精秤し、無水酢酸0.6ml及びピリジン50mlとを加え、室温下で48時間攪拌して反応させ、続いて、蒸留水5mlを添加して、更に6時間、室温下で攪拌を継続することにより、上記反応に使われなかった分の無水酢酸も全て酢酸に変えた。この液にジオキサン50mlを加えて、クレゾールレッド・チモールブルーを指示薬としてKOHで滴定を行い、中和に消費されたKOHの量(W1)と、最初に仕込んだ量の無水酢酸がポリエステル樹脂と反応せずに全て酢酸になった場合に中和に必要とされるKOHの量(計算値:W0)とから、その差(W0-W1)をKOHのmg数で求め、これをポリエステル樹脂のg数で割った値を水酸基価とした。
(4)ポリエステル樹脂の数平均分子量
数平均分子量は、GPC分析(島津製作所製の送液ユニットLC−10ADvp型及び紫外−可視分光光度計SPD−6AV型を使用、検出波長:254nm、溶媒:テトラヒドロフラン、ポリスチレン換算)により求めた。
【0058】
(5)ポリエステル樹脂のガラス転移温度
ポリエステル樹脂10mgをサンプルとし、DSC(示差走査熱量測定)装置(パーキンエルマー社製 DSC7)を用いて昇温速度10℃/分の条件で測定を行い、得られた昇温曲線中のガラス転移に由来する2つの折曲点温度の中間値を求め、これをガラス転移温度(Tg)とした。
(6)水性分散体の固形分濃度
水性分散体を適量秤量し、これを105℃で残存物(固形分)の質量が恒量に達するまで加熱することにより、水性分散体の固形分濃度を求めた。なお、本固形分濃度は界面活性剤とポリエステル樹脂を合計した値である。
【0059】
(7)水性分散体中の有機溶剤の含有率
島津製作所社製、ガスクロマトグラフGC−8A[FID検出器使用、キャリアーガス:窒素、カラム充填物質(ジーエルサイエンス社製):PEG−HT(5%)−UNIPORT HP(60/80メッシュ)、カラムサイズ:直径3mm×3m、試料投入温度(インジェクション温度):150℃、カラム温度:60℃、内部標準物質:n-ブタノール]を用い、水性分散体を水で希釈したものを直接装置内に投入して、有機溶剤の含有率を求めた。検出限界は0.01質量%であった。
(8)水性分散体の貯蔵安定性
50mlのガラス製サンプル瓶に、水性分散体を30ml入れ、25℃で60日保存した後の外観変化を目視にて観察した。
【0060】
(9)水性分散体の体積平均粒経
水性分散体を0.1%に水で希釈したものを、日機装製、MICROTRACUPA(モデル9340-UPA)で体積平均粒径を測定した。
(10)樹脂被膜の厚さ
厚み計(ユニオンツール社製、MICROFINE Σ)を用いて、基材の厚みを予め測定しておき、水性分散体を用いて基材上に樹脂被膜を形成した後、この樹脂被膜を有する基材の厚みを同様の方法で測定し、その差を樹脂被膜の厚さとした。
【0061】
(11)樹脂被膜の密着性
卓上型コーティング装置(安田精機製、フィルムアプリケータNo.542−AB型、バーコータ装着)を用いて、基材上に水性水分散体をコーティングし、130℃に設定されたオーブン中で1分間加熱することにより、基材上に厚み約1μmの樹脂被膜を形成させ、次いで、この樹脂被膜上にJIS Z1522に規定された粘着テープ(幅18mm)の端部を残して貼りつけ、その上から消しゴムでこすって十分に接着させた後に、粘着テープの端部をフィルムに対して直角としてから瞬間的に引き剥がした。この引き剥がした粘着テープ面を表面赤外分光装置(パーキンエルマー社製SYSTEM2000、Ge60°50×20×2mmプリズムを使用)で分析することにより、粘着テープ面に樹脂被膜が付着しているか否かを調べ、下記の基準によって樹脂被膜の基材に対する密着性を評価した。尚、基材としては、二軸延伸PETフィルム(ユニチカ株式会社製、厚さ12μm)を使用した。
○:粘着テープ面に樹脂被膜に由来するピークが認められない。
×:粘着テープ面に樹脂被膜に由来するピークが認められる。
(12)樹脂被膜の耐水性
卓上型コーティング装置を用いて、上記の二軸延伸PETフィルム上に水性分散体をコーティングし、130℃に設定されたオーブン中で1分間加熱することにより、厚み約1μmの樹脂被膜を形成させた後、この樹脂被膜が形成されたPETフィルムを、25℃の水に部分的に浸漬させ、2時間後に静かに引き上げ、風乾させた後、樹脂被膜の外観を目視にて観察し、下記の基準により評価した。
○:外観変化が全く認められない。
×:部分的に白化や溶解が見られる。
【0062】
(13)樹脂被膜の耐溶剤性
卓上型コーティング装置を用いて、上記の二軸延伸PETフィルム上に水性分散体をコーティングし、130℃に設定されたオーブン中で1分間加熱することにより、厚み約1μmの樹脂被膜を形成させた後、この樹脂被膜が形成されたPETフィルムを、室温下でエタノールに部分的に浸漬させ、10分後に静かに引き上げ、風乾させた後、樹脂被膜の外観を目視にて観察し、下記の基準により評価した。
○:外観変化が全く認められない。
×:部分的に白化や溶解が見られる。
【0063】
また、実施例及び比較例で用いたポリエステル樹脂は、下記のようにして得られた。
[ポリエステル樹脂P−1]
テレフタル酸2492g、イソフタル酸415g、セバシン酸1516g、エチレングリコール1226g、ネオペンチルグリコール1458gからなる混合物をオートクレーブ中で、270℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。次いで、触媒として酢酸亜鉛3.3gを添加した後、系の温度を270℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに4時間重縮合反応を続けた後、系を窒素ガスで加圧状態にしておいてシート状に樹脂を払い出し、室温で放冷後、シート状のポリエステル樹脂P−1を得た。
【0064】
[ポリエステル樹脂P−2]
テレフタル酸2907g、イソフタル酸1246g、エチレングリコール1133g、ネオペンチルグリコール1614gからなる混合物をオートクレーブ中で、260℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。次いで、触媒として酢酸亜鉛3.3gを添加した後、系の温度を265℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに4時間重縮合反応を続けた後、系を窒素ガスで加圧状態にしておいてストランド状に樹脂を払い出し、水冷後、カッティングして、ペレット状(直径 約3mm、長さ 約3mm)のポリエステル樹脂P−2を得た。
【0065】
[ポリエステル樹脂P−3]
テレフタル酸4153g、エチレングリコール993g、ネオペンチルグリコール1849gからなる混合物をオートクレーブ中で、250℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。次いで、触媒として酢酸亜鉛3.3gを添加した後、系の温度を265℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに4時間重縮合反応を続けた後、系を窒素ガスで加圧状態にしておいてストランド状に樹脂を払い出し、水冷後、カッティングして、ペレット状(直径 約3mm、長さ 約3mm)のポリエステル樹脂P−3を得た。
【0066】
[ポリエステル樹脂P−4]
テレフタル酸4153g、エチレングリコール388g、1,2-プロパンジオール2565gからなる混合物をオートクレーブ中で、240℃で3時間加熱してエステル化反応を行った。次いで、触媒としてテトラ−n−ブチルチタネートを3.4g添加し、240℃を保ちながら、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに4時間重縮合反応を続けた後、系を窒素ガスで加圧状態にしておいてストランド状に樹脂を払い出し、水冷後、カッティングして、ペレット状(直径 約3mm、長さ 約3mm)のポリエステル樹脂P−4を得た。
【0067】
[ポリエステル樹脂P−5]
テレフタル酸2326g、イソフタル酸997g、エチレングリコール743g、ネオペンチルグリコール831g、2、2-ビス(4-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン1898gからなる混合物をオートクレーブ中で、250℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。次いで、触媒として酢酸亜鉛2.6gを添加した後、系の温度を265℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに4時間重縮合反応を続けた後、系を窒素ガスで加圧状態にしておいてストランド状に樹脂を払い出し、水冷後、カッティングして、ペレット状(直径 約3mm、長さ 約3mm)のポリエステル樹脂P−5を得た。
【0068】
[ポリエステル樹脂P−6]
テレフタル酸2284g、イソフタル酸1246g、アジピン酸548g、エチレングリコール1226g、ネオペンチルグリコール1458gからなる混合物をオートクレーブ中で、250℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。次いで、触媒として酢酸亜鉛3.3gを添加した後、系の温度を265℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに4時間重縮合反応を続けた後、系を窒素ガスで加圧状態にしておいてストランド状に樹脂を払い出し、水冷後、カッティングして、ペレット状(直径 約3mm、長さ 約3mm)のポリエステル樹脂P−6を得た。
【0069】
[ポリエステル樹脂P−7]
テレフタル酸2907g、イソフタル酸1246g、エチレングリコール1133g、ネオペンチルグリコール1614gからなる混合物をオートクレーブ中で、260℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。次いで、触媒として三酸化アンチモン1.8gを添加した後、系の温度を280℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、4時間後に系を窒素ガスで常圧にし、系の温度を下げ、270℃になったところでトリメリット酸26gを添加し、250℃で2時間撹拌して、解重合反応を行った。その後、窒素ガスで加圧状態にしておいてシート状に樹脂を払い出した。そしてこれを室温まで十分に冷却した後、クラッシャーで粉砕し、篩を用いて目開き1〜6mmの分画を採取し、粒状のポリエステル樹脂P−7として得た。
【0070】
上記のようにして得られたポリエステル樹脂の特性を分析または評価した結果を表1に示す。
【0071】
【表1】
Figure 0004280491
【0072】
実施例1
3Lのポリエチレン製容器にポリエステル樹脂P−1を500gとMEKを500g投入し、約60℃の温水で容器を加熱しながら、攪拌機(東京理化株式会社製、MAZELA1000)を用いて攪拌することにより、完全にポリエステル樹脂をMEKに溶解させ、固形分濃度50質量%のポリエステル樹脂溶液を得た。
次いで、ジャケット付きガラス容器(内容量2L)に上記ポリエステル樹脂溶液400gを仕込み、ジャケットに冷水を通して系内温度を13℃に保ち、攪拌機(東京理化株式会社製、MAZELA1000)で攪拌した(回転速度 600rpm)。
その後、攪拌しながら、塩基性化合物としてトリエチルアミン13.5gとあらかじめ水に溶解しておいた界面活性剤(Aldrich社製、Igepal CO720、HLB=14.2)の10質量%水溶液を100g添加し、続いて100g/minの速度で13℃の蒸留水286.5gを添加した。蒸留水を全量添加する間、系内温度は常に15℃以下であった。蒸留水添加終了後、30分間攪拌して固形分濃度が26質量%の水性分散体を得た。
【0073】
実施例2
3Lのポリエチレン製容器にポリエステル樹脂P−1を400gとMEKを600g投入し、約60℃の温水で容器を加熱しながら、攪拌機(東京理化株式会社製、MAZELA1000)を用いて攪拌することにより、完全にポリエステル樹脂をMEKに溶解させ、固形分濃度40質量%のポリエステル樹脂溶液を得た。
次いで、ジャケット付きガラス容器(内容量2L)に上記ポリエステル樹脂溶液500gを仕込み、ジャケットに冷水を通して系内温度を13℃に保ち、攪拌機(東京理化株式会社製、MAZELA1000)で攪拌した(回転速度 600rpm)。
その後、攪拌しながら、塩基性化合物としてトリエチルアミン13.5gとあらかじめ水に溶解しておいた界面活性剤(Aldrich社製、Igepal CO720、HLB=14.2)の10質量%水溶液を100g添加し、続いて100g/minの速度で13℃の蒸留水386.5gを添加した。蒸留水を全量添加する間、系内温度は常に15℃以下であった。蒸留水添加終了後、30分間攪拌して固形分濃度が21質量%の水性分散体を得た。
さらに、この水性分散体800gと蒸留水52.3gを2Lフラスコ入れ、約120℃に加熱されたオイルバスで加熱し、常圧で脱溶剤を行った。脱溶剤は留去量が約360gになったところで終了し、室温まで冷却後、300メッシュのステンレス製フィルターで濾過した。次いで、この水性分散体の固形分濃度を測定した後、固形分濃度が30質量%になるように蒸留水を添加して、水性分散体を得た。
【0074】
実施例3
3Lのポリエチレン製容器にポリエステル樹脂P−1を500gとMEKを500g投入し、約60℃の温水で容器を加熱しながら、攪拌機(東京理化株式会社製、MAZELA1000)を用いて攪拌することにより、完全にポリエステル樹脂をMEKに溶解させ、固形分濃度50質量%のポリエステル樹脂溶液を得た。
次いで、ジャケット付きガラス容器(内容量2L)に上記ポリエステル樹脂溶液400gを仕込み、ジャケットに冷水を通して系内温度を13℃に保ち、攪拌機(東京理化株式会社製、MAZELA1000)で攪拌した(回転速度 600rpm)。
その後、攪拌しながら、塩基性化合物としてトリエチルアミン13.5gと界面活性剤(三洋化成株式会社製、セドランFF-180、HLB=11.7)を15g添加し、続いて100g/minの速度で13℃の蒸留水371.5gを添加した。蒸留水を全量添加する間、系内温度は常に15℃以下であった。蒸留水添加終了後、30分間攪拌して固形分濃度が27質量%の水性分散体を得た。
【0075】
実施例4
3Lのポリエチレン製容器にポリエステル樹脂P−1を400gとMEKを600g投入し、約60℃の温水で容器を加熱しながら、攪拌機(東京理化株式会社製、MAZELA1000)を用いて攪拌することにより、完全にポリエステル樹脂をMEKに溶解させ、固形分濃度40質量%のポリエステル樹脂溶液を得た。
次いで、ジャケット付きガラス容器(内容量2L)に上記ポリエステル樹脂溶液500gを仕込み、ジャケットに冷水を通して系内温度を13℃に保ち、攪拌機(東京理化株式会社製、MAZELA1000)で攪拌した(回転速度 600rpm)。
その後、攪拌しながら、塩基性化合物としてトリエチルアミン13.5gと界面活性剤(三洋化成株式会社製、セドランFF-180、HLB=11.7)を15g添加し、続いて100g/minの速度で13℃の蒸留水471.5gを添加した。蒸留水を全量添加する間、系内温度は常に15℃以下であった。蒸留水添加終了後、30分間攪拌して固形分濃度が22質量%の水性分散体を得た。
さらに、この水性分散体600gと蒸留水39.5gを1Lフラスコ入れ、約50℃に加熱されたオイルバスで加熱し、減圧で脱溶剤を行った。脱溶剤は(フラスコ+水性分散体)の質量が約270g減量したところで終了し、室温まで冷却後、300メッシュのステンレス製フィルターで濾過した。次いで、この水性分散体の固形分濃度を測定した後、固形分濃度が30質量%になるように蒸留水を添加して水性分散体を得た。
【0076】
実施例5
塩基性化合物としてジメチルアミノエタノールを使用し、その添加量を11.9gとし、100g/minの速度で13℃の蒸留水473.1gを添加すること以外は、実施例4と同様の方法で固形分濃度が30質量%の水性分散体を得た。
【0077】
実施例6
有機溶剤をMEKからMEK/イソプロパノール=9/1(質量比)に変更すること以外は、実施例4と同様の方法で固形分濃度が30質量%の水性分散体を得た。
【0078】
実施例7
界面活性剤を三洋化成株式会社製、サンノニックFD-80(HLB=11.7)に変更すること以外は、実施例4と同様の方法で固形分濃度が30質量%の水性分散体を得た。
【0079】
実施例8
ポリエステル樹脂をP−2に変更すること以外は、実施例4と同様の方法で固形分濃度が30質量%の水性分散体を得た。
【0080】
実施例9
ポリエステル樹脂をP−3に変更し、トリエチルアミンを11.9g添加し、100g/minの速度で13℃の蒸留水を473.1g添加する以外は、実施例4と同様の方法で固形分濃度が30質量%の水性分散体を得た。
【0081】
実施例10
ポリエステル樹脂をP−4に変更し、トリエチルアミンを19.5g添加し、100g/minの速度で13℃の蒸留水を465.5g添加すること以外は、実施例4と同様の方法で固形分濃度が30質量%の水性分散体を得た。
【0082】
実施例11
ポリエステル樹脂をP−5に変更すること以外は、実施例4と同様の方法で水性分散体を得た。
【0083】
実施例12
ポリエステル樹脂をP−6に変更すること以外は、実施例4と同様の方法で固形分濃度が30質量%の分散体を得た。
【0084】
実施例13
ポリエステル樹脂をP−7に変更し、トリエチルアミンを17.3g添加し、100g/minの速度で13℃の蒸留水を467.7g添加する以外は、実施例4と同様の方法で固形分濃度が30質量%の水性分散体を得た。
【0085】
比較例1
実施例3と同様の操作を、トリエチルアミンの添加量を6.3gに変更し(塩基性化合物の当量比7)、100g/minの速度で13℃の蒸留水を478.7g添加して行ったところ、蒸留水添加中にポリエステル樹脂が攪拌羽に絡まり、均一な水性分散体が得られなかった。
【0086】
比較例2
実施例3と同様の操作を、セドランFF-180を添加せずに行ったところ、攪拌を停止すると同時に、ポリエステル樹脂が沈澱し、均一な水性分散体が得られなかった。
【0087】
比較例3
実施例3と同様の操作を、トリエチルアミンを添加せず、セドランFF-180を45g添加し、次いで、13℃の蒸留水455g添加して行ったところ、蒸留水添加中にポリエステル樹脂が攪拌羽に絡まり、均一な水性分散体が得られなかった。
【0088】
比較例4
実施例4と同様の操作を、トリエチルアミンの添加量を36.1gに変更し(塩基性化合物の当量比40)、100g/minの速度で13℃の蒸留水を448.9g添加して行ったところ、脱溶剤工程中にポリエステル樹脂が沈澱し、均一な水性分散体が得られなかった。
【0089】
比較例5
実施例4において、ポリエステル樹脂溶液に蒸留水を添加する際に、系内温度を常に48〜50℃に保って行ったところ、脱溶剤工程中にポリエステル樹脂が沈澱し、均一な水性分散体が得られなかった。
【0090】
比較例6
セドランFF-180を45g使用し、100g/minの速度で13℃の蒸留水を455g添加すること以外は、実施例4と同様の方法で固形分濃度が30質量%の水性分散体を得た。
【0091】
表2には、実施例および比較例で用いた、界面活性剤のポリエステル樹脂に対する割合、塩基性化合物のポリエステルのカルボキシル基の総モル量に対する当量比、式(1)の左辺、右辺の値、ポリエステル樹脂の酸価、有機溶剤の含有率および得られた水性分散体の体積平均粒径、水性分散体の貯蔵安定性、樹脂被膜の密着性、耐水性、耐溶剤性について調べた結果を示した。また、有機溶剤の含有率は脱溶剤を行わなかったものについては、分散時の仕込み量から算出し、脱溶剤を行ったものについては、ガスクロマトグラフでの測定結果を含有率とした。
【0092】
【表2】
Figure 0004280491
【0093】
以上の実施例および比較例から、本発明のポリエステル樹脂水性分散体は、塩基性化合物と界面活性剤を共存させて、はじめて、貯蔵安定性に優れ、またこれより形成される樹脂被膜の基材への密着性、耐水性、耐溶剤性に優れることがわかる。界面活性剤の割合が多い場合には、樹脂被膜の密着性、耐水性、耐溶剤性が悪くなる。また、転相乳化の際の温度を制御することにより、界面活性剤の使用量が少なくても、貯蔵安定性が良好な水性分散体が得られることがわかる。
【0094】
【発明の効果】
本発明のポリエステル樹脂水性分散体は、基材への密着性、耐水性、耐溶剤性に優れる樹脂被膜を形成することができるので、塗料、コーティング剤、接着剤として単独であるいは他成分を混合してバインダー成分として好適に使用でき、PETフィルム、ポリオレフィンフィルム、蒸着フィルム等、各種フィルムのアンカーコート剤や接着性付与剤(易接着)、アルミ板、鋼板およびメッキ鋼板等、各種金属板のアンカーコート剤や接着性付与剤(易接着)、プレコートメタル塗料、紙塗工剤、繊維処理剤、紙、金属板、樹脂シート等の基材を貼り合わせるための接着剤、インキのバインダー等の用途に用いて、それらの性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】分散工程におけるポリエステル樹脂の酸価と、必要な塩基性化合物の、ポリエステル樹脂のカルボキシル基の総モル量に対する当量比の関係を示す図である。

Claims (5)

  1. 酸価が8mgKOH/g未満であるポリエステル樹脂(A)と塩基性化合物(B)とHLBが8〜20である非イオン性界面活性剤(C)とを含有し、(A)と(C)との質量比が(C)/(A)=0.1/100〜20/100であるポリエステル樹脂水性分散体であって、前記塩基性化合物(B)の使用量が下記式(1)を満たすことを特徴とするポリエステル樹脂水性分散体。
    −2×C+18≦D≦−3.5×C+34 (3)
    〔ただし、式(3)中、Cはポリエステル樹脂(A)の酸価(mgKOH/g)、Dは塩基性化合物(B)の、ポリエステル樹脂(A)のカルボキシル基の総モル量に対する当量比を示す。〕
  2. ポリエステル樹脂の体積平均粒径が500nm以下であることを特徴とする請求項1記載のポリエステル樹脂水性分散体。
  3. ポリエステル樹脂(A)の有機溶剤溶液を塩基性化合物(B)と界面活性剤または保護コロイド作用を有する化合物(C)とともに水に分散させて、転相乳化により水性分散体を製造する方法であって、転相乳化を40℃以下で行うことを特徴とする請求項1または2記載のポリエステル樹脂水性分散体の製造方法。
  4. 塩基性化合物の使用量を下記式(3)を満たす範囲とすることを特徴とする請求項3記載のポリエステル樹脂水性分散体の製造方法。
    −2×C+18≦D≦−3.5×C+34 (3)
    〔ただし、式(1)中、Cはポリエステル樹脂(A)の酸価(mgKOH/g)、Dは塩基性化合物(B)の、ポリエステル樹脂(A)のカルボキシル基の総モル量に対する当量比を示す。〕
  5. 転相乳化後に有機溶剤を除去する工程を含むことを特徴とする請求項3または4記載のポリエステル樹脂水性分散体の製造方法。
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