JP4266597B2 - 導電性パターン形成体の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリント基板等の各種高精細な電気回路といった用途に用いることが可能な導電性パターン形成体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、高精細な導電性パターン形成体、例えばプリント基板の製造に際しては、一般的には、基板表面に銅を全面にめっきして形成した銅張積層板に、ドライフィルム等のフォトレジストをラミネートした後、フォトマスク等を用いてパターン露光を行い、現像することにより形成される。
【0003】
しかしながら、このようなフォトリソグラフィー法を用いた方法では、基板上への金属のめっき、フォトレジスト層の形成、露光、現像等の種々の工程を経る必要があり、製造方法が煩雑であり、コスト面で問題が生じる場合があった。また、現像時に多量に生じる廃液は有害なものであり、環境に排出するためには処理を行う必要がある等の環境面での問題もあった。
【0004】
また、スクリーン印刷を用いる方法によりプリント基板を製造する方法もあるが、精度面での問題があり、高精細な導電性パターンの製造に適用することはできなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のことから、高精細なパターンを形成することが可能であり、かつ簡便な工程で形成が可能であり、さらに廃液処理といった問題のない導電性パターンの製造方法が望まれている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、パターン状に形成された光触媒含有層側遮光部、および基材を有する光触媒含有層側基板と、上記光触媒含有層中の光触媒の作用により特性が変化する特性変化層を有するパターン形成体用基板とを、上記光触媒含有層および上記特性変化層が200μm以下となるように間隙をおいて配置した後、上記光触媒含有層側基板側からエネルギーを照射することにより、上記特性変化層表面に特性の変化した特性変化パターンを形成する特性変化パターン形成工程と、上記特性変化パターンが形成されたパターン形成体用基板表面に、金属ペーストを塗布することにより、パターン状に金属ペーストを付着させる金属ペースト塗布工程と、上記特性変化パターンにパターン状に付着した金属ペーストを固化させて導電性パターンとする導電性パターン形成工程と、を有することを特徴とする導電性パターン形成体の製造方法を提供する。
【0007】
本発明によれば、光触媒含有層と特性変化層とを所定の間隙をおいて配置し、エネルギー照射することにより、特性変化層表面の特性がパターン状に変化した特性変化パターンを形成することが可能であり、この特性変化パターンの特性の差を利用して、容易にパターン状に金属ペーストを付着させることが可能となる。これにより、高精細な導電性パターン形成体とすることができるのである。
【0008】
本発明においては、上記導電性パターン形成工程後に、上記特性変化層が上記パターン形成体用基板表面に露出している部分である非画線部を除去する非画線部除去工程を有していてもよい。これにより、上記特性変化層が導電性の材料から形成されている場合に、上記特性変化層を除去し、絶縁性の基体を露出させることにより、導電性パターン形成体とすることが可能となるからである。
【0009】
本発明においては、上記非画線部除去工程が、アルカリ溶液により上記特性変化層を除去する工程であることが好ましい。これにより、容易に上記特性変化層を除去する工程を行うことが可能となるからである。
【0010】
本発明においては、上記光触媒含有層側基板が、基材と、上記基材上にパターン状に形成された光触媒含有層とからなることが好ましい。このように、光触媒含有層をパターン状に形成することにより、フォトマスクを用いることなく特性変化層上に特性の異なるパターンを形成することが可能となるからである。
【0011】
また、本発明においては、上記光触媒含有層側基板が、基材と、上記基材上に形成された光触媒含有層と、パターン状に形成された光触媒含有層側遮光部とからなり、上記特性パターン形成工程におけるエネルギーの照射が、光触媒含有層側基板から行なわれることが好ましい。
【0012】
このように光触媒含有層側基板に光触媒含有層側遮光部を有することにより、エネルギー照射に際してフォトマスク等を用いる必要がないことから、フォトマスクと位置合わせ等が不要となり、工程を簡略化することが可能となるからである。
【0013】
本発明においては、上記光触媒含有層側基板において、上記光触媒含有層側遮光部が上記基材上にパターン状に形成され、さらにその上に上記光触媒含有層が形成されているものであってもよく、また上記光触媒含有層側基板において、上記基材上に光触媒含有層が形成され、上記光触媒含有層上に上記光触媒含有層側遮光部がパターン状に形成されているものであってもよい。
【0014】
光触媒含有層側遮光部は、特性変化層と近い位置に配置されることが、得られる特性変化パターンの精度上好ましいものであるといえる。したがって、上述した位置に光触媒含有層側遮光部を配置することが好ましいのである。また、光触媒含有層上に光触媒含有層側遮光部を形成した場合は、上記特性変化パターン形成工程における光触媒含有層と特性変化層との配置に際してのスペーサとして用いることができるという利点を有するものである。
【0015】
また、本発明においては、上記光触媒含有層が、光触媒からなる層であることが好ましい。光触媒含有層が光触媒のみからなる層であれば、特性変化層の特性を変化させる効率を向上させることが可能であり、効率的にパターン形成体を製造することができるからである。
【0016】
本発明においては、上記光触媒含有層が、光触媒を真空製膜法により基材上に製膜してなる層であることが好ましい。このように真空製膜法により光触媒含有層を形成することにより、表面の凹凸が少なく均一な膜厚の均質な光触媒含有層とすることが可能であり、特性変化層表面への特性変化パターンの形成を均一にかつ高効率で行うことができるからである。
【0017】
一方、本発明においては、上記光触媒処含有層が、光触媒とバインダとを有する層であってもよい。このようにバインダを用いることにより、比較的容易に光触媒含有層を形成することが可能となり、結果的に低コストでパターン形成体の製造を行うことができるからである。
【0018】
本発明においては、上記光触媒が、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化タングステン(WO)、酸化ビスマス(Bi)、および酸化鉄(Fe)から選択される1種または2種以上の物質であることが好ましく、中でも上記光触媒が酸化チタン(TiO)であることが好ましい。これは、二酸化チタンのバンドギャップエネルギーが高いため光触媒として有効であり、かつ化学的にも安定で毒性もなく、入手も容易だからである。
【0019】
本発明においては、上記パターン形成体用基板が、基体と、上記基体上に形成された上記特性変化層とを有するものであってもよい。特性変化層の強度が弱く、また自己支持性を有さないような場合は、特性変化層が基体上に形成されていることが好ましいからである。
【0020】
本発明においては、上記特性変化層が、上記光触媒含有層中の光触媒の作用により、エネルギー照射された際に、液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する濡れ性変化層であることが好ましい。上記特性変化層が、濡れ性変化層であることにより、エネルギー照射された領域を親液性領域、エネルギー未照射の領域を撥液性領域とすることが可能となり、この濡れ性の差を利用して、親液性領域のみに上記金属ペーストを付着させることが可能となり、容易に導電性パターンを形成することが可能となるからである。
【0021】
本発明においては、上記濡れ性変化層上における40mN/mの液体との接触角が、エネルギーが照射されていない部分において50°以上であり、照射された部分において49°以下であることが好ましい。上記濡れ性変化層上におけるエネルギーが照射されていない部分である撥液性領域と、照射された部分である親液性領域との濡れ性が、上述したような範囲であることにより、撥液性領域には金属ペーストが付着せず、親液性領域のみに金属ペーストを付着させることが可能となり、高精細な導電性パターン形成体を製造することが可能となるからである。
【0022】
また、本発明においては、上記濡れ性変化層が、オルガノポリシロキサンを含有する層であることが好ましい。本発明において、濡れ性変化層に要求される特性としては、エネルギーが照射されていない場合は撥液性であり、エネルギーが照射された場合は対向する光触媒含有層中の光触媒の作用により親液性となるといった特性である。このような特性を濡れ性変化層に付与する材料として、オルガノポリシロキサンを用いることが好ましいからである。
【0023】
本発明においては、上記オルガノポリシロキサンが、フルオロアルキル基を含有するオルガノポリシロキサンであることが好ましい。このようにフルオロアルキル基を含有するものであれば、エネルギー照射部分と未照射部分との濡れ性の差を大きくすることが可能となるからである。
【0024】
本発明においては、上記オルガノポリシロキサンが、YSiX(4−n)(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)で示される珪素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。このようなオルガノポリシロキサンを用いることにより、上述したような濡れ性の変化に対する特性を発揮することができるからである。
【0025】
本発明においては、上記パターン形成体用基板が、自己支持性を有する濡れ性変化層からなるものであってもよい。濡れ性変化層が自己支持性を有するものであれば、基体等を用いる必要がなく、例えば市販の樹脂板を用いれば、安価にパターン形成体を製造することができるからである。
【0026】
本発明においては、上記特性変化層が、上記光触媒含有層中の光触媒の作用により、エネルギー照射された際に分解除去される分解除去層であることが好ましい。上記特性変化層が分解除去層であることにより、上記エネルギー照射により、表面に凹凸を形成することが可能となることから、例えば電界ジェット方式等により、上記金属ペーストを容易に付着させることが可能となるからである。
【0027】
本発明においては、上記分解除去層に対する金属ペーストの接触角と、上記分解除去層が分解除去されて露出する基体に対する金属ペーストの接触角とが異なるものであることが好ましい。これにより、上記エネルギー照射されて露出した基体を親液性領域、エネルギー未照射の分解除去層が残存する部分を撥液性領域とすることが可能となり、容易に上記金属ペーストを付着させることが可能となるからである。
【0028】
本発明においては、上記分解除去層が、自己組織化単分子膜、ラングミュアーブロジェット膜、もしくは交互吸着膜のいずれかであることが好ましい。上記分解除去層が、上記の膜であることにより、比較的高い強度を有する欠陥のない膜を容易に形成することが可能となるからである。
【0029】
本発明においては、上記分解除去層の40mN/mの液体との接触角が、エネルギーが照射されていない部分において50°以上であり、照射された部分において49°以下であることが好ましい。上記分解除去層上におけるエネルギーが照射されていない残存する分解除去層からなる部分である撥液性領域と、エネルギー照射されて基体が露出した部分である親液性領域との濡れ性が、上記範囲内であることにより、親液性領域には金属ペーストを付着させることが可能となり、また撥液性領域には金属ペーストが付着しないことから、高精細な導電性パターン形成体とすることが可能となるのである。
【0030】
本発明においては、上記特性変化層の表面に、エネルギーを照射する際に、上記光触媒含有層と、上記特性変化層表面との間隔を、0.2μm〜10μmの範囲内とすることが好ましい。上記エネルギーを照射する際に、上述した範囲内の間隔でエネルギーを照射することにより、特性変化層表面の特性をより効果的に変化させることが可能となるからである。
【0031】
本発明においては、上記エネルギー照射が、光触媒含有層を加熱しながらなされることが好ましい。光触媒を加熱することにより、光触媒の感度が向上し、特性変化層上の特性の変化を効率的に行うことが可能となるからである。
【0032】
本発明においては、上記特性変化層が、光触媒を含まない層であることが好ましい。本発明においては、このように特性変化層が、光触媒を含まない層であるので、特性変化層が経時で影響を受けるといった問題を回避することが可能となるからである。
【0033】
本発明においては、上記金属ペーストが、銅、アルミ、白金、パラジウム、およびニッケルからなる少なくとも一つ選択される金属のペーストであることが好ましい。上記金属は、導電性が良好であり、かつ耐腐食性があるからである。
【0034】
また本発明においては、上記金属ペーストの粘度が50cps以上であることが好ましい。これにより、導電性パターンの膜厚を高くすることが可能となり、様々な用途に用いることが可能な導電性パターン形成体とすることが可能となるからである。
【0035】
本発明においては、上記金属ペースト塗布工程における金属ペーストの塗布が、ノズル吐出法であってもよく、中でも製造効率やコストの面から上記ノズル吐出法が、電界ジェット法であることが好ましい。
【0036】
また、本発明においては、上記金属ペースト塗布工程における金属ペーストの塗布が、オフセット印刷法であってもよい。これにより、上記特性変化パターンの親液性領域および撥液性領域の濡れ性を利用して、容易に目的とするパターン状に金属ペーストの塗布を行うことが可能となるからである。
【0037】
また、本発明は、触媒の作用により濡れ性が変化する濡れ性変化層と、上記濡れ性変化層上にパターン状に金属ペーストを固化させることにより形成された金属組成物とを有することを特徴とする導電性パターン形成体を提供する。
【0038】
本発明によれば、上記濡れ性変化層を有することにより、親液性領域のみに、容易にパターン状に金属ペーストを付着させることが可能となることから、製造効率がよく高精細な導電性パターン形成体とすることが可能となるのである。
【0039】
本発明においては、上記濡れ性変化層が、基体上に形成されていてもよい。上記濡れ性変化層の強度が弱く、また自己支持性を有さないような場合は、特性変化層が基体上に形成されていることが好ましいからである。
【0040】
本発明においては、上記濡れ性変化層上における40mN/mの液体との接触角が、エネルギーが照射されていない部分において50°以上であり、照射された部分において49°以下であることが好ましい。これにより、エネルギー照射された部分を親液性領域、エネルギー照射されていない部分を撥液性領域とすることが可能となることから、容易に導電性パターン形成体を製造することが可能となり、製造効率やコストの面からも好ましいからである。
【0041】
また、本発明は、基体と、上記基体上に光触媒の作用により分解除去される分解除去層と、上記分解除去層が分解除去されて露出した基体上にパターン状に金属ペーストを固化させることにより形成された金属組成物とを有することを特徴とする導電性パターン形成体を提供する。
【0042】
本発明によれば、上記分解除去層を有することにより、基体上に凹凸を有するパターンを形成することが可能であり、この凹凸を利用して容易に導電性パターンを形成することができる。また上記分解除去層が絶縁性である場合には、優れた導電性パターン形成体とすることが可能となるのである。
【0043】
本発明においては、上記分解除去層に対する液体の接触角と、上記分解除去層が分解されて露出する基体に対する液体の接触角とが異なるものであることが好ましい。これにより、表面の凹凸だけではなく、例えばエネルギー照射されて露出した基体を親液性領域、エネルギー未照射の分解除去層が残存する部分を撥液性領域とすることが可能となり、容易に導電性パターンを形成することが可能となるからである。
【0044】
また、本発明においては、上記分解除去層が、自己組織化単分子膜、ラングミュアーブロジェット膜、もしくは交互吸着膜のいずれかであることが好ましい。上記分解除去層が、上記の膜であることにより、比較的強度が高く欠陥のない膜を容易に形成することが可能となるからである。
【0045】
本発明においては、上記分解除去層40mN/mの液体との接触角が、エネルギーが照射されていない部分において50°以上であり、照射された部分において49°以下であることが好ましい。これにより、容易に導電性パターン形成体を製造することが可能となり、製造効率やコストの面からも好ましいからである。
【0046】
また、本発明は、基体と、上記基体上にパターン状に形成された、光触媒の作用により濡れ性が変化する濡れ性変化層と、上記濡れ性変化層上に金属ペーストを固化させることにより形成された金属組成物とを有することを特徴とする導電性パターン形成体とを提供する。上記基体上に上記濡れ性変化層を有することにより、容易に導電性パターン形成体を製造することが可能であり、また基体が絶縁性である場合に、優れた導電性パターン形成体とすることが可能となるからである。
【0047】
【発明の実施の形態】
本発明は、導電性パターン形成体の製造方法および導電性パターン形成体に関するものである。以下、それぞれについて詳しく説明する。
【0048】
A.導電性パターン形成体の製造方法
まず、本発明の導電性パターン形成体の製造方法について説明する。
【0049】
本発明の導電性パターン形成体の製造方法は、
光触媒を含有する光触媒含有層および基材を有する光触媒含有層側基板と、上記光触媒含有層中の光触媒の作用により特性が変化する特性変化層を有するパターン形成体用基板とを、上記光触媒含有層および上記特性変化層が200μm以下となるように間隙をおいて配置した後、所定の方向からエネルギーを照射することにより、上記特性変化層表面に特性の変化した特性変化パターンを形成する特性変化パターン形成工程と、
上記特性変化パターンが形成されたパターン形成体用基板表面に、金属ペーストを塗布することにより、パターン状に金属ペーストを付着させる金属ペースト塗布工程と、
上記特性変化パターンにパターン状に付着した金属ペーストを固化させて導電性パターンとする導電性パターン形成工程と
を有することを特徴とするものである。
【0050】
本発明の導電性パターン形成体の製造方法においては、光触媒含有層および特性変化層を所定の位置に配置した後、所定の方向からエネルギー照射することにより、光触媒含有層中の光触媒の作用により、エネルギー照射された部分の特性が変化した特性変化パターンが形成される。このパターン形成に際してエネルギー照射後の現像・洗浄等の後処理が不要となるので、従来より少ない工程で、かつ安価に特性の異なるパターンを形成することができる。そして、この特性変化層上の特性変化パターンに対して、金属ペーストを塗布することによりパターン状に金属ペーストを付着させることができ、これを固化させることにより容易に導電性パターンを形成することができる。
【0051】
さらに、本発明においては、特性変化層上の特性を光触媒含有層中の光触媒の作用により変化させた後、光触媒含有層側基板を取り外してパターン形成体側基板を導電性パターン形成体としたものであるので、得られる導電性パターン形成体には必ずしも光触媒が含有されている必要がない。したがって、得られる導電性パターン形成体が光触媒の作用により経時的に影響を受けるといった不具合を防止することができる。
【0052】
このような、本発明の導電性パターン形成体の製造方法について、図面を用いて具体的に説明する。図1は、本発明の導電性パターン形成体の製造方法の一例を示すものである。
【0053】
この例においては、まず、基材1上に光触媒含有層2が形成されてなる光触媒含有層側基板3と、基体4上に特性変化層5が形成されてなるパターン形成体用基板6とを調製する(図1(a))。
【0054】
次に、図1(b)に示すように、上記光触媒含有層側基板3とパターン形成体用基板6とを、それぞれの光触媒含有層2および特性変化層5を対向させて所定の位置に配置した後、必要とされるパターンのフォトマスク7を用い、これを介して紫外光8を光触媒含有層側基板3側から照射する。これにより、図1(c)に示すように、特性変化層5表面に特性変化領域9および特性未変化領域10とからなる特性変化パターンが形成される(特性変化パターン形成工程)。
【0055】
ここで、上記紫外線の照射は、上記例ではフォトマスク7を介したものであるが、後述するように光触媒含有層がパターン状に形成されたものや、光触媒含有層側基板内に遮光部(光触媒含有層側遮光部)が形成されたものを用いてもよく、この場合は、フォトマスク7等を用いることなく、全面にエネルギー照射することになる。
【0056】
そして、上記パターン形成体用基板6上から光触媒含有層側基板を外す工程が行われ(図1(d))、表面に特性変化領域9と特性未変化領域10とが形成されたパターン形成体用基板6を得ることができる。
【0057】
そして、上記パターン形成体用基板6上に金属ペーストを塗布することにより、特性変化領域上にのみ金属ペーストを付着させ(金属ペースト塗布工程)、その後、これを硬化させることにより、導電性パターン11が特性変化層5上に形成された導電性パターン形成体12を得ることができる。
【0058】
このような本発明の導電性パターン形成体の製造方法について、各工程毎に詳細に説明する。
【0059】
(1)特性変化パターン形成工程
まず、本発明の特性変化パターン形成工程について説明する。本発明の特性変化パターン形成工程は、光触媒を含有する光触媒含有層および基材を有する光触媒含有層側基板と、上記光触媒含有層中の光触媒の作用により特性が変化する特性変化層を有するパターン形成体用基板とを、上記光触媒含有層および上記特性変化層が200μm以下となるように間隙をおいて配置した後、所定の方向からエネルギーを照射することにより、上記特性変化層表面に特性の変化した特性変化パターンを形成する工程である。以下、この工程についてそれぞれ説明する。
【0060】
(光触媒含有層側基板)
本発明における光触媒含有層側基板は、少なくとも光触媒含有層と基材とを有するものであり、通常は基材上に所定の方法で形成された薄膜状の光触媒含有層が形成されてなるものである。また、この光触媒含有層側基板には、パターン状に形成された光触媒含有層側遮光部やプライマー層が形成されたものも用いることができる。以下、この光触媒含有層側基板の各構成について説明する。
【0061】
a.光触媒含有層
本発明に用いられる光触媒含有層は、光触媒含有層中の光触媒が、特性変化層の特性を変化させるような構成であれば、特に限定されるものではなく、光触媒とバインダとから構成されているものであってもよいし、光触媒単体で製膜されたものであってもよい。また、その表面の特性は、特に親液性であっても撥液性であってもよい。
【0062】
本発明において用いられる光触媒含有層は、例えば上記図1(a)等に示すように、基材1上に全面に形成されたものであってもよいが、例えば図2に示すように、基材1上に光触媒含有層2がパターン状に形成されたものであってもよい。
【0063】
このように光触媒含有層をパターン状に形成することにより、後述する特性変化パターン形成工程において説明するように、光触媒含有層を特性変化層にエネルギーを照射する際に、フォトマスク等を用いるパターン照射をする必要がなく、全面に照射することにより、特性変化層上に特性変化領域と特性未変化領域とからなる特性変化パターンを形成することができる。
【0064】
この光触媒処理層のパターニング方法は、特に限定されるものではないが、例えばフォトリソグラフィー法等により行うことが可能である。
【0065】
また、光触媒含有層と特性変化層とを例えば密着させてエネルギー照射を行う場合には、実際に光触媒含有層の形成された部分のみの特性が変化するものであるので、エネルギーの照射方向は上記光触媒含有層と特性変化層とが対向する部分にエネルギーが照射されるものであれば、いかなる方向から照射されてもよく、さらには、照射されるエネルギーも特に平行光等の平行なものに限定されないという利点を有するものとなる。
【0066】
このような光触媒含有層における、後述するような二酸化チタンに代表される光触媒の作用機構は、必ずしも明確なものではないが、光の照射によって生成したキャリアが、近傍の化合物との直接反応、あるいは、酸素、水の存在下で生じた活性酸素種によって、有機物の化学構造に変化を及ぼすものと考えられている。本発明においては、このキャリアが光触媒含有層上で特性変化層中の化合物に作用を及ぼすものであると思われる。
【0067】
本発明で使用する光触媒としては、光半導体として知られる例えば二酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化タングステン(WO)、酸化ビスマス(Bi)、および酸化鉄(Fe)を挙げることができ、これらから選択して1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0068】
本発明においては、特に二酸化チタンが、バンドギャップエネルギーが高く、化学的に安定で毒性もなく、入手も容易であることから好適に使用される。二酸化チタンには、アナターゼ型とルチル型があり本発明ではいずれも使用することができるが、アナターゼ型の二酸化チタンが好ましい。アナターゼ型二酸化チタンは励起波長が380nm以下にある。
【0069】
このようなアナターゼ型二酸化チタンとしては、例えば、塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(石原産業(株)製STS−02(平均粒径7nm)、石原産業(株)製ST−K01)、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(日産化学(株)製TA−15(平均粒径12nm))等を挙げることができる。
【0070】
光触媒の粒径は小さいほど光触媒反応が効果的に起こるので好ましく、平均粒径が50nm以下が好ましく、20nm以下の光触媒を使用するのが特に好ましい。
【0071】
本発明における光触媒含有層は、上述したように光触媒単独で形成されたものであってもよく、またバインダと混合して形成されたものであってもよい。光触媒のみからなる光触媒含有層の場合は、特性変化層上の特性の変化に対する効率が向上し、処理時間の短縮化等のコスト面で有利である。一方、光触媒とバインダとからなる光触媒含有層の場合は、光触媒含有層の形成が容易であるという利点を有する。
【0072】
光触媒のみからなる光触媒含有層の他の形成方法としては、例えば、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法等の真空製膜法を用いる方法を挙げることができる。真空製膜法により光触媒含有層を形成することにより、均一な膜でかつ光触媒のみを含有する光触媒含有層とすることが可能であり、これにより特性変化層上の特性を均一に変化させることが可能であり、かつ光触媒のみからなることから、バインダを用いる場合と比較して効率的に特性変化層上の特性を変化させることが可能となる。
【0073】
また、光触媒のみからなる光触媒含有層の形成方法としては、例えば光触媒が二酸化チタンの場合は、基材上に無定形チタニアを形成し、次いで焼成により結晶性チタニアに相変化させる方法等が挙げられる。ここで用いられる無定形チタニアとしては、例えば四塩化チタン、硫酸チタン等のチタンの無機塩の加水分解、脱水縮合、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラメトキシチタン等の有機チタン化合物を酸存在下において加水分解、脱水縮合によって得ることができる。次いで、400℃〜500℃における焼成によってアナターゼ型チタニアに変性し、600℃〜700℃の焼成によってルチル型チタニアに変性することができる。
【0074】
また、バインダを用いる場合は、バインダの主骨格が上記の光触媒の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものが好ましく、例えば後述する特性変化層の中の濡れ性変化層の説明の欄で詳しく説明するオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。
【0075】
このようにオルガノポリシロキサンをバインダとして用いた場合は、上記光触媒含有層は、光触媒とバインダであるオルガノポリシロキサンとを必要に応じて他の添加剤とともに溶剤中に分散して塗布液を調製し、この塗布液を基材上に塗布することにより形成することができる。使用する溶剤としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系の有機溶剤が好ましい。塗布はスピンコート、スプレーコート、ディッブコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法により行うことができる。バインダとして紫外線硬化型の成分を含有している場合、紫外線を照射して硬化処理を行うことにより光触媒含有層を形成することかできる。
【0076】
また、バインダとして無定形シリカ前駆体を用いることができる。この無定形シリカ前駆体は、一般式SiXで表され、Xはハロゲン、メトキシ基、エトキシ基、またはアセチル基等であるケイ素化合物、それらの加水分解物であるシラノール、または平均分子量3000以下のポリシロキサンが好ましい。
【0077】
具体的には、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラメトキシシラン等が挙げられる。また、この場合には、無定形シリカの前駆体と光触媒の粒子とを非水性溶媒中に均一に分散させ、基材上に空気中の水分により加水分解させてシラノールを形成させた後、常温で脱水縮重合することにより光触媒含有層を形成できる。シラノールの脱水縮重合を100℃以上で行えば、シラノールの重合度が増し、膜表面の強度を向上できる。また、これらの結着剤は、単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0078】
バインダを用いた場合の光触媒含有層中の光触媒の含有量は、5〜60重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲で設定することができる。また、光触媒含有層の厚みは、0.05〜10μmの範囲内が好ましい。
【0079】
また、光触媒含有層には上記の光触媒、バインダの他に、界面活性剤を含有させることができる。具体的には、日光ケミカルズ(株)製NIKKOL BL、BC、BO、BBの各シリーズ等の炭化水素系、デュポン社製ZONYL FSN、FSO、旭硝子(株)製サーフロンS−141、145、大日本インキ化学工業(株)製メガファックF−141、144、ネオス(株)製フタージェントF−200、F251、ダイキン工業(株)製ユニダインDS−401、402、スリーエム(株)製フロラードFC−170、176等のフッ素系あるいはシリコーン系の非イオン界面活性剤を挙げることができ、また、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を用いることもできる。
【0080】
さらに、光触媒含有層には上記の界面活性剤の他にも、ポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ジアリルフタレート、エチレンプロピレンジエンモノマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリベンズイミダゾール、ポリアクリルニトリル、エピクロルヒドリン、ポリサルファイド、ポリイソプレン等のオリゴマー、ポリマー等を含有させることができる。
【0081】
b.基材
本発明においては、図1に示すように、光触媒含有層側基板3は、少なくとも基材1とこの基材1上に形成された光触媒含有層2とを有するものである。
【0082】
この際、用いられる基材を構成する材料は、後述する特性変化パターン形成工程におけるエネルギーの照射方向や、得られる導電性パターン形成体が透明性を必要とするか等により適宜選択される。
【0083】
すなわち、例えば導電性パターン形成体が紙基材フェノール樹脂積層板といった不透明なものを基体として用いる場合においては、エネルギー照射方向は必然的に光触媒含有層側基板側からとなり、図1(b)に示すように、フォトマスク7を光触媒含有層側基板3側に配置して、エネルギー照射をする必要がある。また、後述するように光触媒含有層側基板に光触媒含有層側遮光部を予め所定のパターンで形成しておき、この光触媒含有層側遮光部を用いて特性変化パターンを形成する場合においても、光触媒含有層側基板側からエネルギーを照射する必要がある。このような場合、基材は透明性を有するものであることが必要となる。
【0084】
一方、導電性パターン形成体の基体が例えば透明樹脂フィルムである場合等であれば、パターン形成体用基板側にフォトマスクを配置してエネルギーを照射することも可能である。また、後述するようにこのパターン形成体用基板内にパターン形成体側遮光部を形成する場合は、パターン形成体用基板側からエネルギーを照射する必要がある。このような場合においては、基材の透明性は特に必要とされない。
【0085】
また本発明に用いられる基材は、可撓性を有するもの、例えば樹脂製フィルム等であってもよいし、可撓性を有さないもの、例えばガラス基板等であってもよい。これは、後述する特性変化パターン形成工程におけるエネルギー照射方法により適宜選択されるものである。
【0086】
このように、本発明における光触媒含有層側基板に用いられる基材は特にその材料を限定されるものではないが、本発明においては、この光触媒含有層側基板は、繰り返し用いられるものであることから、所定の強度を有し、かつその表面が光触媒含有層との密着性が良好である材料が好適に用いられる。
【0087】
具体的には、ガラス、セラミック、金属、プラスチック等を挙げることができる。
【0088】
なお、基材表面と光触媒含有層との密着性を向上させるために、基材上にアンカー層を形成するようにしてもよい。このようなアンカー層としては、例えば、シラン系、チタン系のカップリング剤等を挙げることができる。
【0089】
c.光触媒含有層側遮光部
本発明に用いられる光触媒含有層側基板には、パターン状に形成された光触媒含有層側遮光部が形成されたものを用いても良い。このように光触媒含有層側遮光部を有する光触媒含有層側基板を用いることにより、エネルギー照射に際して、フォトマスクを用いたり、レーザ光による描画照射を行う必要がない。したがって、光触媒含有層側基板とフォトマスクとの位置合わせが不要であることから、簡便な工程とすることが可能であり、また描画照射に必要な高価な装置も不必要であることから、コスト的に有利となるという利点を有する。
【0090】
このような光触媒含有層側遮光部を有する光触媒含有層側基板は、光触媒含有層側遮光部の形成位置により、下記の二つの実施態様とすることができる。
【0091】
一つが、例えば図3に示すように、基材1上に光触媒含有層側遮光部13を形成し、この光触媒含有層側遮光部13上に光触媒含有層2を形成して、光触媒含有層側基板3とする実施態様である。もう一つは、例えば図4に示すように、基材1上に光触媒含有層2を形成し、その上に光触媒含有層側遮光部13を形成して光触媒含有層側基板3とする実施態様である。
【0092】
いずれの実施態様においても、フォトマスクを用いる場合と比較すると、光触媒含有層側遮光部が、上記光触媒含有層と特性変化層との配置部分の近傍に配置されることになるので、基材内等におけるエネルギーの散乱の影響を少なくすることができることから、エネルギーのパターン照射を極めて正確に行うことが可能となる。
【0093】
さらに、上記光触媒含有層上に光触媒含有層側遮光部を形成する実施態様においては、光触媒含有層と特性変化層とを所定の位置に配置する際に、この光触媒含有層側遮光部の膜厚をこの間隙の幅と一致させておくことにより、上記光触媒含有層側遮光部を上記間隙を一定のものとするためのスペーサとしても用いることができるという利点を有する。
【0094】
すなわち、所定の間隙をおいて上記光触媒含有層と特性変化層とを対向させた状態で配置する際に、上記光触媒含有層側遮光部と特性変化層とを密着させた状態で配置することにより、上記所定の間隙を正確とすることが可能となり、そしてこの状態で光触媒含有層側基板からエネルギーを照射することにより、特性変化層上に特性変化パターンを精度良く形成することが可能となるのである。
【0095】
このよう光触媒含有層側遮光部の形成方法は、特に限定されるものではなく、光触媒含有層側遮光部の形成面の特性や、必要とするエネルギーに対する遮蔽性等に応じて適宜選択されて用いられる。
【0096】
例えば、スパッタリング法、真空蒸着法等により厚み1000〜2000Å程度のクロム等の金属薄膜を形成し、この薄膜をパターニングすることにより形成されてもよい。このパターニングの方法としては、スパッタ等の通常のパターニング方法を用いることができる。
【0097】
また、樹脂バインダ中にカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた層をパターン状に形成する方法であってもよい。用いられる樹脂バインダとしては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ゼラチン、カゼイン、セルロース等の樹脂を1種または2種以上混合したものや、感光性樹脂、さらにはO/Wエマルジョン型の樹脂組成物、例えば、反応性シリコーンをエマルジョン化したもの等を用いることができる。このような樹脂製遮光部の厚みとしては、0.5〜10μmの範囲内で設定することができる。このよう樹脂製遮光部のパターニングの方法は、フォトリソ法、印刷法等一般的に用いられている方法を用いることができる。
【0098】
なお、上記説明においては、光触媒含有層側遮光部の形成位置として、基材と光触媒含有層との間、および光触媒含有層表面の二つの場合について説明したが、その他、基材の光触媒含有層が形成されていない側の表面に光触媒含有層側遮光部を形成する態様も採ることが可能である。この態様においては、例えばフォトマスクをこの表面に着脱可能な程度に密着させる場合等が考えられ、特性変化パターンを小ロットで変更するような場合に好適に用いることができる。
【0099】
d.プライマー層
次に、本発明の光触媒含有層側基板に用いられるプライマー層について説明する。本発明において、上述したように基材上に光触媒含有層側遮光部をパターン状に形成して、その上に光触媒含有層を形成して光触媒含有層側基板とする場合においては、上記光触媒含有層側遮光部と光触媒含有層との間にプライマー層を形成してもよい。
【0100】
このプライマー層の作用・機能は必ずしも明確なものではないが、光触媒含有層側遮光部と光触媒含有層との間にプライマー層を形成することにより、プライマー層は光触媒の作用による特性変化層の特性変化を阻害する要因となる光触媒含有層側遮光部および光触媒含有層側遮光部間に存在する開口部からの不純物、特に、光触媒含有層側遮光部をパターニングする際に生じる残渣や、金属、金属イオン等の不純物の拡散を防止する機能を示すものと考えられる。したがって、プライマー層を形成することにより、高感度で特性変化の処理が進行し、その結果、高解像度のパターンを得ることが可能となるのである。
【0101】
なお、本発明においてプライマー層は、光触媒含有層側遮光部のみならず光触媒含有層側遮光部間に形成された開口部に存在する不純物が光触媒の作用に影響することを防止するものであるので、プライマー層は開口部を含めた光触媒含有層側遮光部全面にわたって形成されていることが好ましい。
【0102】
図5はこのようなプライマー層を形成した光触媒含有層側基板の一例を示すものである。光触媒含有層側基板3の光触媒含有層側遮光部13が形成された基材1の光触媒含有層側遮光部13が形成されている側の表面にプライマー層14が形成されており、このプライマー層14の表面に光触媒含有層2が形成されている。
【0103】
本発明におけるプライマー層は、光触媒含有層側基板の光触媒含有層側遮光部と光触媒含有層とが接触しないようにプライマー層が形成された構造であれば特に限定されるものではない。
【0104】
このプライマー層を構成する材料としては、特に限定されるものではないが、光触媒の作用により分解されにくい無機材料が好ましい。具体的には無定形シリカを挙げることができる。このような無定形シリカを用いる場合には、この無定形シリカの前駆体は、一般式SiXで示され、Xはハロゲン、メトキシ基、エトキシ基、またはアセチル基等であるケイ素化合物であり、それらの加水分解物であるシラノール、または平均分子量3000以下のポリシロキサンが好ましい。
【0105】
また、プライマー層の膜厚は、0.001μmから1μmの範囲内であることが好ましく、特に0.001μmから0.1μmの範囲内であることが好ましい。
【0106】
(パターン形成体用基板)
次に、本発明に用いられるパターン形成体用基板について説明する。本発明のパターン形成体用基板は、上記光触媒含有層中の光触媒の作用により表面の特性が変化する特性変化層を少なくとも有するものであれば特に限定されるものではなく、特性変化層が自己支持性を有する場合は、特性変化層のみであってもよく、また上記特性変化層が自己支持性を有しない場合は、特性変化層を基体上に形成したものであってもよい。また、パターン形成体用基板中に遮光部等を有するものであってもよい。以下、このパターン形成体用基板の各構成について説明する。
【0107】
a.特性変化層
まず、本発明におけるパターン形成体用基板に用いられる特性変化層について説明する。本発明のパターン形成体用基板に用いられる特性変化層は、上述した光触媒含有層中の光触媒の作用により表面の特性が変化する特性変化層であれば、特に限定されるものではないが、本発明においては中でも特性変化層が光触媒の作用により濡れ性が変化して濡れ性によるパターンが形成される濡れ性変化層である場合、および特性変化層が光触媒の作用により分解除去され凹凸によるパターンが形成される分解除去層である場合の二つの場合が、特に得られる特性変化パターン等の関係からより本発明の有効性を引き出すものであるので好ましい。以下、これらの濡れ性変化層および分解除去層について説明する。
【0108】
(i)濡れ性変化層
本発明における濡れ性変化層は、上記光触媒の作用により表面の濡れ性が変化する層であれば特に限定されるものではないが、一般にはエネルギーの照射に伴う光触媒の作用により、その濡れ性変化層表面における液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する層であることが好ましい。
【0109】
このように、エネルギー照射により液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する濡れ性変化層とすることにより、上述したように、例えばフォトマスクを用いた場合や、光触媒含有層側遮光部を用いた場合、さらには光触媒含有層をパターン状に形成した場合等において、エネルギーの照射を行うことにより容易に濡れ性をパターン状に変化させ、液体との接触角の小さい親液性領域のパターンを形成することが可能となる。したがって、効率的に導電性パターン形成体が製造でき、コスト的に有利となるからである。
【0110】
ここで、親液性領域とは、液体との接触角が小さい領域であり、後述する金属ペーストに対する濡れ性の良好な領域をいうこととする。また、撥液性領域とは、液体との接触角が大きい領域であり、金属ペーストに対する濡れ性が悪い領域をいうこととする。
【0111】
上記濡れ性変化層は、エネルギー照射していない部分、すなわち撥液性領域においては、40mN/mの液体との接触角が、50°以上、中でも90°以上であることが好ましい。これは、エネルギー照射していない部分は、本発明においては撥液性が要求される部分であることから、液体との接触角が小さい場合は、撥液性が十分でなく、後述する金属ペースト塗布工程において例えば金属ペーストオフセット印刷法により全面に印刷した場合に、導電性パターンを形成しない領域にまで金属ペーストが残存する可能性が生じるため好ましくないからである。
【0112】
また、上記濡れ性変化層は、エネルギー照射された部分、すなわち親液性領域においては、40mN/mの液体との接触角が、49°以下、好ましくは10°以下であることが好ましい。エネルギー照射された部分、すなわち親液性領域における液体との接触角が高い場合は、後述する金属ペーストの塗布に際して、親液性領域においても金属ペーストをはじいてしまう可能性があり、親液性領域上に金属ペーストをパターニングすることが難しくなる可能性があるからである。
【0113】
なお、ここでいう液体との接触角は、種々の表面張力を有する液体との接触角を接触角測定器(協和界面科学(株)製CA−Z型)を用いて測定(マイクロシリンジから液滴を滴下して30秒後)し、その結果から、もしくはその結果をグラフにして得たものである。また、この測定に際して、種々の表面張力を有する液体としては、純正化学株式会社製のぬれ指数標準液を用いた。
【0114】
また、本発明において上述したような濡れ性変化層を用いた場合、この濡れ性変化層中にフッ素が含有され、さらにこの濡れ性変化層表面のフッ素含有量が、濡れ性変化層に対しエネルギーを照射した際に、上記光触媒の作用によりエネルギー照射前に比較して低下するように上記濡れ性変化層が形成されていてもよい。
【0115】
このような特徴を有する濡れ性変化層であれば、エネルギーをパターン照射することにより、容易にフッ素の含有量の少ない部分からなるパターンを形成することができる。ここで、フッ素は極めて低い表面エネルギーを有するものであり、このためフッ素を多く含有する物質の表面は、臨界表面張力がより小さくなる。したがって、フッ素の含有量の多い部分の表面の臨界表面張力に比較してフッ素の含有量の少ない部分の臨界表面張力は大きくなる。これはすなわち、フッ素含有量の少ない部分はフッ素含有量の多い部分に比較して親液性領域となっていることを意味する。よって、周囲の表面に比較してフッ素含有量の少ない部分からなるパターンを形成することは、撥液性域内に親液性領域のパターンを形成することとなる。
【0116】
したがって、このような濡れ性変化層を用いた場合は、エネルギーをパターン照射することにより、撥液性領域内に親液性領域のパターンを容易に形成することができるので、この親液性領域のみに金属ペーストを付着させ、導電性パターンを形成することが容易に可能となり、低コストで高精細な導電性パターンを形成することができる。
【0117】
上述したような、フッ素を含む濡れ性変化層中に含まれるフッ素の含有量としては、エネルギーが照射されて形成されたフッ素含有量が低い親液性領域におけるフッ素含有量が、エネルギー照射されていない部分のフッ素含有量を100とした場合に10以下、好ましくは5以下、特に好ましくは1以下であることが好ましい。
【0118】
このような範囲内とすることにより、エネルギー照射部分と未照射部分との濡れ性に大きな違いを生じさせることができる。したがって、このような濡れ性変化層に導電性パターンを形成することにより、フッ素含有量が低下した親液性領域のみに正確に導電性パターンを形成することが可能となり、精度良く導電性パターン形成体を得ることができるからである。なお、この低下率は重量を基準としたものである。
【0119】
このような濡れ性変化層中のフッ素含有量の測定は、一般的に行われている種々の方法を用いることが可能であり、例えばX線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy, ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)とも称される。)、蛍光X線分析法、質量分析法等の定量的に表面のフッ素の量を測定できる方法であれば特に限定されるものではない。
【0120】
このような濡れ性変化層に用いられる材料としては、上述した濡れ性変化層の特性、すなわちエネルギー照射により対向する光触媒含有層中の光触媒により濡れ性が変化する材料で、かつ光触媒の作用により劣化、分解しにくい主鎖を有するものであれば特に限定されるものではなく、具体的にはオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。本発明においては、中でも上記オルガノポリシロキサンが、フルオロアルキル基を含有するオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0121】
このようなオルガノポリシロキサンとしては、例えば、(1)ゾルゲル反応等によりクロロまたはアルコキシシラン等を加水分解、重縮合して大きな強度を発揮するオルガノポリシロキサン、(2)撥水牲や撥油性に優れた反応性シリコーンを架橋したオルガノポリシロキサン等のオルガノポリシロキサンを挙げることができる。
【0122】
上記の(1)の場合、一般式:
SiX(4−n)
(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基、アセチル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)
で示される珪素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。なお、ここでYで示される基の炭素数は1〜20の範囲内であることが好ましく、また、Xで示されるアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基であることが好ましい。
【0123】
また、特にフルオロアルキル基を含有するオルガノポリシロキサンが好ましく用いることができ、具体的には、下記のフルオロアルキルシランの1種または2種以上の加水分解縮合物、共加水分解縮合物が挙げられ、一般にフッ素系シランカップリング剤として知られたものを使用することができる。
【0124】
CF(CFCHCHSi(OCH
CF(CFCHCHSi(OCH
CF(CFCHCHSi(OCH
CF(CFCHCHSi(OCH
(CFCF(CFCHCHSi(OCH
(CFCF(CFCHCHSi(OCH
(CFCF(CFCHCHSi(OCH
CF(C)CSi(OCH
CF(CF(C)CSi(OCH
CF(CF(C)CSi(OCH
CF(CF(C)CSi(OCH
CF(CFCHCHSiCH(OCH
CF(CFCHCHSiCH(OCH
CF(CFCHCHSiCH(OCH
CF(CFCHCHSiCH(OCH
(CFCF(CFCHCHSiCH(OCH
(CFCF(CFCHCHSi CH(OCH
(CFCF(CFCHCHSi CH(OCH
CF(C)CSiCH(OCH
CF(CF(C)CSiCH(OCH
CF(CF(C)CSiCH(OCH
CF(CF(C)CSiCH(OCH
CF(CFCHCHSi(OCHCH
CF(CFCHCHSi(OCHCH
CF(CFCHCHSi(OCHCH
CF(CFCHCHSi(OCHCH;および
CF(CFSON(C)CCHSi(OCH
【0125】
上記のようなフルオロアルキル基を含有するポリシロキサンをバインダとして用いることにより、濡れ性変化層のエネルギー未照射部の撥液性が大きく向上し、金属ペーストを全面塗布した場合に、この金属ペーストの付着を妨げることが可能となり、エネルギー照射部である親液性領域のみに金属ペーストを付着させることが可能となる。
【0126】
また、上記の(2)の反応性シリコーンとしては、下記一般式で表される骨格をもつ化合物を挙げることができる。
【0127】
【化1】
Figure 0004266597
【0128】
ただし、nは2以上の整数であり、R,Rはそれぞれ炭素数1〜10の置換もしくは非置換のアルキル、アルケニル、アリールあるいはシアノアルキル基であり、モル比で全体の40%以下がビニル、フェニル、ハロゲン化フェニルである。また、R、Rがメチル基のものが表面エネルギーが最も小さくなるので好ましく、モル比でメチル基が60%以上であることが好ましい。また、鎖末端もしくは側鎖には、分子鎖中に少なくとも1個以上の水酸基等の反応性基を有する。
【0129】
また、上記のオルガノポリシロキサンとともに、ジメチルポリシロキサンのような架橋反応をしない安定なオルガノシリコーン化合物を混合してもよい。
【0130】
本発明においては、このようにオルガノポリシロキサン等の種々の材料を濡れ性変化層に用いることができるのであるが、上述したように、濡れ性変化層にフッ素を含有させることが、濡れ性のパターン形成に効果的である。したがって、光触媒の作用により劣化・分解しにくい材料にフッ素を含有させる、具体的にはオルガノポリシロキサン材料にフッ素を含有させて濡れ性変化層とすることが好ましいといえる。
【0131】
本発明における濡れ性変化層には、さらに界面活性剤を含有させることができる。具体的には、日光ケミカルズ(株)製NIKKOL BL、BC、BO、BBの各シリーズ等の炭化水素系、デュポン社製ZONYL FSN、FSO、旭硝子(株)製サーフロンS−141、145、大日本インキ化学工業(株)製メガファックF−141、144、ネオス(株)製フタージェントF−200、F251、ダイキン工業(株)製ユニダインDS−401、402、スリーエム(株)製フロラードFC−170、176等のフッ素系あるいはシリコーン系の非イオン界面活性剤を挙げることかでき、また、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を用いることもできる。
【0132】
また、濡れ性変化層には上記の界面活性剤の他にも、ポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ジアリルフタレート、エチレンプロピレンジエンモノマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリベンズイミダゾール、ポリアクリルニトリル、エピクロルヒドリン、ポリサルファイド、ポリイソプレン等のオリゴマー、ポリマー等を含有させることができる。
【0133】
このような濡れ性変化層は、上述した成分を必要に応じて他の添加剤とともに溶剤中に分散して塗布液を調製し、この塗布液を基体上に塗布することにより形成することができる。使用する溶剤としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系の有機溶剤が好ましい。塗布はスピンコート、スプレーコート、ディップコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法により行うことができる。また、紫外線硬化型の成分を含有している場合、紫外線を照射して硬化処理を行うことにより濡れ性変化層を形成することができる。
【0134】
また、本発明に用いられる濡れ性変化層は、表面の濡れ性が光触媒の作用により変化し得る材料で形成されたものであれば、自己支持性を有する材料であってもよく、また自己支持性を有さない材料であってもよい。なお、本発明でいう自己支持性を有するとは、他の支持材無しで有形な状態で存在し得ることをいうこととする。
【0135】
濡れ性変化層が自己支持性を有する材料である場合には、例えば濡れ性変化層となり得る材料からなる市販の樹脂製フィルムを用いることが可能であり、コスト面で有利であるといえる。このような材料としては、上述した材料を製膜したものが自己支持性を有するのであれば、これを用いることも可能であるが、例えば、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリビニルフロライド、アセタール樹脂、ナイロン、ABS、PTFE、メタクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリ弗化ビニリデン、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、シリコーン等を挙げることができる。
【0136】
本発明においては、自己支持性のない濡れ性変化層であることが好ましい。上述した特性が大幅に変化する材料で形成される濡れ性変化層は、通常自己支持性のある材料が少なく、基体上に形成することにより、強度等が増し、様々なパターン形成体として使用することが可能となるからである。
【0137】
本発明において、この濡れ性変化層の厚みは、光触媒による濡れ性の変化速度等の関係より、0.001μmから1μmであることが好ましく、特に好ましくは0.01〜0.1μmの範囲内である。
【0138】
本発明において上述した成分の濡れ性変化層を用いることにより、光触媒含有層中の光触媒の作用により、上記成分の一部である有機基の酸化、分解等の作用を用いて、エネルギー照射部の濡れ性を変化させて親液性とし、エネルギー未照射部との濡れ性に大きな差を生じさせることができる。よって、後述する金属ペーストを全面塗布した場合においても、比較的容易にエネルギー照射部である親液性領域内のみに金属ペーストを付着させることが可能であり、高精細な導電性パターン形成体を低コストで製造することが可能となる。
【0139】
なお、本発明に用いられる濡れ性変化層は、上述したように光触媒の作用により濡れ性の変化する層であれば特に限定されるものではないが、特に、光触媒を含まない層であることが好ましい。このように濡れ性変化層内に光触媒が含まれなければ、その後導電性パターン形成体として用いた場合に、経時的に影響を受ける心配をする必要がなく、長期間に渡り問題なく使用することが可能だからである。
【0140】
(ii)分解除去層
次に分解除去層について説明する。本発明に用いられる分解除去層は、エネルギー照射された際に光触媒含有層中の光触媒の作用により、エネルギー照射された部分の分解除去層が分解除去される層であれば、特に限定されるものではない。
【0141】
このように分解除去層は、エネルギー照射した部分が光触媒の作用により分解除去されることから、現像工程や洗浄工程を行うことなく分解除去層のある部分と無い部分とからなるパターン、すなわち凹凸を有するパターンを形成することができる。
【0142】
なお、この分解除去層は、エネルギー照射による光触媒の作用により酸化分解され、気化等されることから、現像・洗浄工程等の特別な後処理なしに除去されるものであるが、分解除去層の材質によっては、洗浄工程等を行ってもよい。
【0143】
また、本発明に用いられる分解除去層は、凹凸を形成するのみならず、この分解除去層が、後述する基体と比較して、液体との接触角が高いことが好ましい。これにより、分解除去層が分解除去され、基体が露出した領域を親液性領域、上記分解除去層が残存する領域を撥液性領域とすることが可能となり、種々のパターンを形成することが可能となるからである。
【0144】
ここで、親液性領域とは、液体との接触角が小さい領域であり、後述する金属ペーストに対する濡れ性の良好な領域をいうこととする。また、撥液性領域とは、液体との接触角が大きい領域であり、金属ペーストに対する濡れ性が悪い領域をいうこととする。
【0145】
また、上記分解除去層は、40mN/mの液体との接触角が、50°以上、中でも90°以上であることが好ましい。これは、本発明は、残存する特性変化層が、撥液性が要求される部分であることから、液体との接触角が小さい場合は、撥液性が十分でなく、後述する金属ペースト塗布工程において、例えばオフセット印刷法により金属ペーストを全面に印刷した場合に、導電性パターンを形成しない撥液性領域にまで金属ペーストが残存する可能性が生じるため好ましくないからである。
【0146】
また、本発明において、後述する基体は、40mN/mの液体との接触角が、エネルギーが照射されていない部分において49°以下、中でも10°以下であることが好ましい。本発明においては基体が、親液性が要求される部分であることから、後述する金属ペーストの塗布に際して、親液性領域においても金属ペーストをはじいてしまう可能性があり、親液性領域上に金属ペーストをパターニングすることが難しくなる可能性があるからである。ここで、液体との接触角は、上述した方法により測定した値である。
【0147】
この場合、後述する基体は表面を親液性となるように、表面処理したものであってもよい。材料の表面を親液性となるように表面処理した例としては、アルゴンや水などを利用したプラズマ処理による親液性表面処理が挙げられ、基体上に形成する親液性の層としては、例えばテトラエトキシシランのゾルゲル法によるシリカ膜等を挙げることができる。
【0148】
上記のような分解除去層に用いることができる膜としては、具体的にはフッ素系や炭化水素系の撥液性を有する樹脂等による膜を挙げることができる。これらのフッ素系や炭化水素系の樹脂は、撥液性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、これらの樹脂を溶媒に溶解させ、例としてスピンコート法等の一般的な成膜方法により形成することが可能である。
【0149】
また、本発明においては、機能性薄膜、すなわち、自己組織化単分子膜、ラングミュア−ブロケット膜、および交互吸着膜等を用いることにより、欠陥のない膜を形成することが可能であることから、このような成膜方法を用いることがより好ましいといえる。
【0150】
ここで、本発明に用いられる自己組織化単分子膜、ラングミュア−ブロケット膜、および交互吸着膜について具体的に説明する。
【0151】
▲1▼自己組織化単分子膜
自己組織化単分子膜(Self-Assembled Monolayer)の公式な定義の存在を発明者らは知らないが、一般的に自己組織化膜として認識されているものの解説文としては、例えばAbraham Ulmanによる総説“Formation and Structure of Self-Assembled Monolayers”, Chemical Review, 96, 1533-1554 (1996)が優れている。本総説を参考にすれば、自己組織化単分子膜とは、適当な分子が適当な基板表面に吸着・結合(自己組織化)した結果生じた単分子層のことと言える。自己組織化膜形成能のある材料としては、例えば、脂肪酸などの界面活性剤分子、アルキルトリクロロシラン類やアルキルアルコキシド類などの有機ケイ素分子、アルカンチオール類などの有機イオウ分子、アルキルフォスフェート類などの有機リン酸分子などが挙げられる。分子構造の一般的な共通性は、比較的長いアルキル鎖を有し、片方の分子末端に基板表面と相互作用する官能基が存在することである。アルキル鎖の部分は分子同士が2次元的にパッキングする際の分子間力の源である。もっとも、ここに示した例は最も単純な構造であり、分子のもう一方の末端にアミノ基やカルボキシル基などの官能基を有するもの、アルキレン鎖の部分がオキシエチレン鎖のもの、フルオロカーボン鎖のもの、これらが複合したタイプの鎖のものなど様々な分子から成る自己組織化単分子膜が報告されている。また、複数の分子種から成る複合タイプの自己組織化単分子膜もある。また、最近では、デンドリマーに代表されるような粒子状で複数の官能基(官能基が一つの場合もある)を有する高分子や直鎖状(分岐構造のある場合もある)の高分子が一層基板表面に形成されたもの(後者はポリマーブラシと総称される)も自己組織化単分子膜と考えられる場合もあるようである。本発明は、これらも自己組織化単分子膜に含める。
【0152】
▲2▼ラングミュア−ブロジェット膜
本発明に用いられるラングミュア−ブロジェット膜(Langmuir-Blodgett Film)は、基板上に形成されてしまえば形態上は上述した自己組織化単分子膜との大きな相違はない。ラングミュア−ブロジェット膜の特徴はその形成方法とそれに起因する高度な2次元分子パッキング性(高配向性、高秩序性)にあると言える。すなわち、一般にラングミュア−ブロジェット膜形成分子は気液界面上に先ず展開され、その展開膜がトラフによって凝縮されて高度にパッキングした凝縮膜に変化する。実際は、これを適当な基板に移しとって用いる。ここに概略を示した手法により単分子膜から任意の分子層の多層膜まで形成することが可能である。また、低分子のみならず、高分子、コロイド粒子なども膜材料とすることができる。様々な材料を適用した最近の事例に関しては宮下徳治らの総説“ソフト系ナノデバイス創製のナノテクノロジーへの展望” 高分子 50巻 9月号 644-647
(2001)に詳しく述べられている。
【0153】
▲3▼交互吸着膜
交互吸着膜(Layer-by-Layer Self-Assembled Film)は、一般的には、最低2個の正または負の電荷を有する官能基を有する材料を逐次的に基板上に吸着・結合させて積層することにより形成される膜である。多数の官能基を有する材料の方が膜の強度や耐久性が増すなど利点が多いので、最近ではイオン性高分子(高分子電解質)を材料として用いることが多い。また、タンパク質や金属や酸化物などの表面電荷を有する粒子、いわゆる“コロイド粒子”も膜形成物質として多用される。さらに最近では、水素結合、配位結合、疎水性相互作用などのイオン結合よりも弱い相互作用を積極的に利用した膜も報告されている。比較的最近の交互吸着膜の事例については、静電的相互作用を駆動力にした材料系に少々偏っているがPaula T. Hammondによる総説“Recent Explorations in Electrostatic Multilayer Thin Film Assembly”Current Opinion in Colloid & Interface Science, 4, 430-442 (2000)に詳しい。交互吸着膜は、最も単純なプロセスを例として説明すれば、正(負)電荷を有する材料の吸着−洗浄−負(正)電荷を有する材料の吸着−洗浄のサイクルを所定の回数繰り返すことにより形成される膜である。ラングミュア−ブロジェット膜のように展開−凝縮−移し取りの操作は全く必要ない。また、これら製法の違いより明らかなように、交互吸着膜はラングミュア−ブロジェット膜のような2次元的な高配向性・高秩序性は一般に有さない。しかし、交互吸着膜及びその作製法は、欠陥のない緻密な膜を容易に形成できること、微細な凹凸面やチューブ内面や球面などにも均一に成膜できることなど、従来の成膜法にない利点を数多く有している。
【0154】
また、分解除去層の膜厚としては、後述する特性変化パターン形成工程において照射されるエネルギーにより分解除去される程度の膜厚であれば特に限定されるものではない。具体的な膜厚としては、照射されるエネルギーの種類や分解除去層の材料等により大きく異なるものではあるが、一般的には、0.001μm〜1μmの範囲内、特に0.01μm〜0.1μmの範囲内とすることが好ましい。
【0155】
(iii)基体
次に、基体について説明する。本発明においては、例えば上述した特性変化層が自己支持性のない場合や、分解除去層である場合等に基体が用いられ、例として図1(a)に示すように、基体4上に特性変化層5が設けられる。
【0156】
このような基体としては、最終的に得られる導電性パターン形成体の用途等に応じて適宜選択されるものであり、例えば通常のプリント配線板等の場合においては、一般的に用いられている材料、具体的には紙基材の樹脂積層板、ガラス布・ガラス不織布基材の樹脂積層板、セラミック、金属等を用いることができる。また、フレキシブル配線板においては、可撓性を有する樹脂製フィルムを基体として用いることも可能である。
【0157】
(iv)その他
本発明においては、パターン形成体用基板にパターン形成体用基板側遮光部をパターン状に形成したものを用いることが可能である。この場合は、後述する特性変化パターン形成工程におけるエネルギー照射を、パターン形成体用基板側から行う必要が生じることから、上述した特性変化層および基体が透明材料から形成されていることが好ましい。
【0158】
また、特性変化層が基体上に形成される場合には、基体表面にパターン形成体用基板側遮光部をパターン状に形成し、その上に特性変化層を形成することが好ましく、特性変化層が自己支持性を有し、基体上に形成されない場合には、特性変化層の特性変化パターンが形成されない側の表面にパターン形成体用基板側遮光部が形成されることが好ましい。
【0159】
このような遮光部の形成方法としては、上述した光触媒含有層側遮光部と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0160】
(特性変化パターンの形成)
次に、特性変化パターンの形成について説明する。本発明の特性変化パターン形成工程においては、上記光触媒含有層および上記特性変化層を所定の位置に配置した後、所定の方向からエネルギーを照射することにより、上記特性変化層表面にパターンを形成する工程が行われる。以下、この特性変化パターンの形成について説明する。
【0161】
a.光触媒含有層および特性変化層の配置
本発明の特性変化パターン形成工程においては、まずエネルギー照射時に光触媒含有層と特性変化層とを光触媒の作用が及ぶように所定の間隔をおいて配置する必要があり、本発明においては、上述した光触媒含有層および特性変化層を200μm以下の間隙をおいて配置した後、所定の方向からエネルギーを照射する。この際、光触媒含有層および特性変化層を密着させてもよい。
【0162】
本発明において上記間隙は、パターン精度が極めて良好であり、光触媒の感度も高く、したがって特性変化層の特性変化の効率が良好である点を考慮すると特に0.2μm〜10μmの範囲内、好ましくは1μm〜5μmの範囲内とすることが好ましい。このような間隙の範囲は、特に間隙を高い精度で制御することが可能である小面積の導電性パターン形成体に対して特に有効である。
【0163】
一方、例えば300mm×300mmといった大面積の導電性パターン形成体に対して処理を行う場合は、接触することなく、かつ上述したような微細な間隙を光触媒含有層側基板とパターン形成体用基板との間に形成することは極めて困難である。したがって、導電性パターン形成体が比較的大面積である場合は、上記間隙は、10〜100μmの範囲内、特に50〜75μmの範囲内とすることが好ましい。間隙をこのような範囲内とすることにより、パターンがぼやける等のパターン精度の低下の問題や、光触媒の感度が悪化して特性変化の効率が悪化する等の問題が生じることなく、さらに特性変化層上の特性変化にムラが発生しないといった効果を有するからである。
【0164】
このように比較的大面積の導電性パターン形成体をエネルギー照射する際には、エネルギー照射装置内の光触媒含有層側基板とパターン形成体用基板との位置決め装置における間隙の設定を、10μm〜200μmの範囲内、特に25μm〜75μmの範囲内に設定することが好ましい。設定値をこのような範囲内とすることにより、パターン精度の大幅な低下や光触媒の感度の大幅な悪化を招くことなく、かつ光触媒含有層側基板とパターン形成体用基板とが接触することなく配置することが可能となるからである。
【0165】
このように光触媒含有層と特性変化層表面とを所定の間隔で離して配置することにより、酸素と水および光触媒作用により生じた活性酸素種が脱着しやすくなる。すなわち、上記範囲より光触媒含有層と特性変化層との間隔を狭くした場合は、上記活性酸素種の脱着がしにくくなり、結果的に特性変化速度を遅くしてしまう可能性があることから好ましくない。また、上記範囲より間隔を離して配置した場合は、生じた活性酸素種が特性変化層に届き難くなり、この場合も特性変化の速度を遅くしてしまう可能性があることから好ましくない。
【0166】
本発明においては、このような配置状態は、少なくともエネルギー照射の間だけ維持されればよい。
【0167】
このような極めて狭い間隙を均一に形成して光触媒含有層と特性変化層とを配置する方法としては、例えばスペーサを用いる方法を挙げることができる。そして、このようにスペーサを用いることにより、均一な間隙を形成することができると共に、このスペーサが接触する部分は、光触媒の作用が特性変化層表面に及ばないことから、このスペーサを上述した特性変化パターンと同様のパターンを有するものとすることにより、特性変化層上に所定の特性変化パターンを形成することが可能となる。
【0168】
本発明においては、このようなスペーサを一つの部材として形成してもよいが、工程の簡略化等のため、上記光触媒含有層側基板の欄で説明したように、光触媒含有層側基板の光触媒含有層表面に形成することが好ましい。なお、上記光触媒含有層側基板における説明においては、光触媒含有層側遮光部として説明したが、本発明においては、このようなスペーサは特性変化層表面に光触媒の作用が及ばないように表面を保護する作用を有すればよいものであることから、特に照射されるエネルギーを遮蔽する機能を有さない材料で形成されたものであってもよい。
【0169】
b.エネルギー照射
次に、上述したような配置を維持した状態で、対向する部分へのエネルギー照射が行われる。なお、本発明でいうエネルギー照射(露光)とは、光触媒含有層による特性変化層表面の特性を変化させることが可能ないかなるエネルギー線の照射をも含む概念であり、可視光の照射に限定されるものではない。
【0170】
通常このようなエネルギー照射に用いる光の波長は、400nm以下の範囲、好ましくは380nm以下の範囲から設定される。これは、上述したように光触媒含有層に用いられる好ましい光触媒が二酸化チタンであり、この二酸化チタンにより光触媒作用を活性化させるエネルギーとして、上述した波長の光が好ましいからである。
【0171】
このようなエネルギー照射に用いることができる光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ、その他種々の光源を挙げることができる。
【0172】
上述したような光源を用い、フォトマスクを介したパターン照射により行う方法の他、エキシマ、YAG等のレーザを用いてパターン状に描画照射する方法を用いることも可能である。
【0173】
また、エネルギー照射に際してのエネルギーの照射量は、特性変化層表面が光触媒含有層中の光触媒の作用により特性変化層表面の特性の変化が行われるのに必要な照射量とする。
【0174】
この際、光触媒含有層を加熱しながらエネルギー照射することにより、感度を上昇させることが可能となり、効率的な特性の変化を行うことができる点で好ましい。具体的には30℃〜80℃の範囲内で加熱することが好ましい。
【0175】
本発明におけるエネルギー照射方向は、光触媒含有層側遮光部もしくはパターン形成体用基板側遮光部が形成されているか否か等の特性変化パターンの形成方法や、光触媒含有層側基板もしくはパターン形成体用基板が透明であるか否かにより決定される。
【0176】
すなわち、光触媒含有層側遮光部が形成されている場合は、光触媒含有層側基板側からエネルギー照射が行なわれる必要があり、かつこの場合は光触媒含有層側基板が照射されるエネルギーに対して透明である必要がある。なお、この場合、光触媒含有層上に光触媒含有層側遮光部が形成され、かつこの光触媒含有層側遮光部を上述したようなスペーサとしての機能を有するように用いた場合においては、エネルギー照射方向は光触媒含有層側基板側からでもパターン形成体用基板側からであってもよい。
【0177】
一方、パターン形成体用基板側遮光部が形成されている場合は、パターン形成体用基板側からエネルギー照射が行われる必要があり、かつこの場合は、パターン形成体用基板が照射されるエネルギーに対して透明である必要がある。なお、この場合も、特性変化層上にパターン形成体用基板側遮光部が形成され、このパターン形成体用基板側遮光部が上述したようなスペーサとしての機能を有するように用いられた場合、エネルギー照射方向は光触媒含有層側基板側からでもパターン形成体用基板側からであってもよい。
【0178】
また、光触媒含有層がパターン状に形成されている場合におけるエネルギー照射方向は、上述したように、光触媒含有層と特性変化層とが対向する部分にエネルギーが照射されるのであればいかなる方向から照射されてもよい。
【0179】
同様に、上述したスペーサを用いる場合も、対向する部分にエネルギーが照射されるのであればいかなる方向から照射されてもよい。
【0180】
フォトマスクを用いる場合は、フォトマスクが配置された側からエネルギーが照射される。この場合は、フォトマスクが配置された側の基板、すなわち光触媒含有層側基板もしくはパターン形成体用基板のいずれかが透明である必要がある。
【0181】
c.光触媒含有層側基板の取り外し
上述したようなエネルギー照射が終了すると、光触媒含有層側基板が特性変化層との配置位置から離され、これにより図1(d)に示すように特性変化領域9と特性未変化領域10とからなる特性変化パターンが特性変化層5上に形成される。
【0182】
(2)金属ペースト塗布工程
本発明においては、次に、上記特性変化パターンが形成されたパターン形成体用基板表面に、金属ペーストを塗布することにより、パターン状に金属ペーストを付着させる金属ペースト塗布工程が行われる。
【0183】
上記金属ペーストの塗布方法は、特性変化層表面に塗布することができる方法であれば特に限定されるものではなく、ノズル吐出法のように、目的とするパターン状に上記金属ペーストを塗布する方法であってもよく、オフセット印刷法やスクリーン印刷法等であってもよい。
【0184】
ここで、上記ノズル吐出法としては、電界ジェット法やディスペンサーを用いる方法を挙げることができ、中でも電界ジェット法であることが好ましい。
【0185】
ここで、本発明に用いられる電界ジェット法とは、例えば、吐出口近傍に電極を配置したノズル状あるいはスリット状の開口部を有する吐出ヘッドに、金属ペーストを供給し、続いて上記電極に交流または直流の電圧を印加することにより、上記金属ペーストを開口部から連続的または間欠的に吐出するパターン形成方法である。この電界ジェット法によれば、数万cpsの高粘度の液体が吐出可能である。また、電圧の効果により、形成されるパターンを開口部のサイズより小さくすることが可能であることから、開口部を比較的大きくすることが可能であり、粗大粒子を含む金属ペーストについても目詰まりすることなく、安定かつ高解像度でパターンを形成することが可能となる。
【0186】
また、上記特性変化パターンが、エネルギー照射領域とエネルギー未照射領域において、濡れ性の差がある場合には、オフセット印刷法やスクリーン印刷法を用いることが可能である。
【0187】
本発明の金属ペースト塗布工程が、オフセット印刷法により行われる場合には、被印刷体であるパターン形成体用基板上に、上記特性変化パターンとして親液性領域および撥液性領域が形成されていることから、例えばこのパターン形成体用基板に全面に金属ペーストを印刷した場合にも、親液性領域のみに金属ペーストが付着する。これにより、パターンを有する版を使用する必要がなく、低コストな導電性パターン形成体の製造方法とすることが可能となるのである。
【0188】
また、本発明の金属ペースト塗布工程が、スクリーン印刷法により行われる場合には、上記パターン形成体用基板上に、親液性領域および撥液性領域からなる特性変化パターンが形成されていることから、金属ペーストを印刷をした際、親液性領域のみにインクが付着し、通常のスクリーン印刷法より高精細に金属ペーストを塗布することが可能となるのである。
【0189】
本発明に用いられる金属ペーストの粘度は、50cps以上、中でも50〜1000000cpsの範囲内であることが好ましい。
【0190】
またその濃度は、20〜95wt%の範囲内であることが好ましい。上記範囲より粘度および濃度が低い場合は、用途にもよるものではあるが、得られる金属パターンの膜厚が薄すぎるため実用に供することが困難となる場合があることから好ましくない。一方、上記範囲より粘度および濃度が高い場合は、パターニングが困難となる可能性があることから好ましくない。
【0191】
また、本発明において用いられる金属ペーストは通常、金属、バインダ、各種添加剤等を有するものである。本発明の金属ペーストに用いられる金属の種類としては、特に限定されるものではないが、銅、アルミ、白金、パラジウム、またはニッケルであることが好ましい。上記金属は導電性が良好でありかつ耐腐食性を有するものだからである。
【0192】
また、本発明の金属ペーストを構成するバインダの有機成分としては、焼成によって揮発、分解して、焼成後の膜中に炭化物を残存させることのないものであり、以下のようなものから適宜選択することができる。すなわち、アルキッド樹脂、変性アルキッド樹脂、変性エポキシ樹脂、ウレタン化油、ウレタン樹脂、ロジン樹脂、ロジン化油、マレイン酸樹脂、無水マレイン酸樹脂、マレイン化油、ポリブテン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルオリゴマー、鉱物油、植物油、ウレタンオリゴマー、(メタ)アリルエーテルと無水マレイン酸との共重合体(この共重合体は他のモノマー(例えば、スチレン等)を共重合成分として加えてもよい)等を1種、あるいは、2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0193】
また、本発明の金属ペーストには、添加剤として、分散剤、湿潤剤、増粘剤、レベリング剤、地汚れ防止剤、ゲル化剤、シリコンオイル、シリコン樹脂、消泡剤、可塑剤等を適宜選択して添加してもよい。
【0194】
さらに、本発明の金属ペーストに必要に応じて用いるガラスフリットとしては、例えば、軟化温度が450〜600℃であり、熱膨張係数α300が70×10-7〜95×10-7/℃、ガラス転移温度が400〜500℃であるガラスフリットを使用することができ、PbO/SiO/B系ガラス、Bi23系ガラス、ZnO系ガラス、B23−アルカリ土類金属酸化物系ガラス等の酸化アルカリを含まないガラスフリットを使用することが好ましい。ガラスフリットの軟化温度が600℃を超えると焼成温度を高くする必要があり、例えば、電極パターン被形成体の耐熱性が低い場合には焼成段階で熱変形を生じることになり好ましくない。また、ガラスフリットの軟化温度が450℃未満では、焼成により有機成分が完全に分解、揮発して除去される前にガラスフリットが融着するため、空隙が生じやすくなり好ましくない。さらに、ガラスフリットの熱膨張係数α300が70×10−7/℃未満、あるいは、95×10−7/℃を超えると、パターン被形成体の熱膨張係数との差が大きくなりすぎる場合があり、歪み等を生じることになり好ましくない。このようなガラスフリットの平均粒径(D50)は0.1〜2μm、好ましくは0.5〜1.5μmの範囲である。
【0195】
本発明の金属ペーストに溶剤を使用する場合、沸点が390℃以下の溶剤を用いる。使用する溶剤は、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、ナフテン、アルキルベンゼン類の石油系溶剤、または、これらを組み合わせた混合溶剤が好ましい。
【0196】
(3)導電性パターン形成工程
本発明においては、最後に、上記パターン状に付着した金属ペーストを固化させて導電性パターンとする導電性パターン形成工程が行われ、最終的にパターン形成体用基板を導電性パターン形成体にする。
【0197】
ここで用いられる固化方法としては加熱が最も一般的であり、100℃〜700℃の範囲内、好ましくは250℃〜500℃の範囲内で加熱され、加熱時間としては、10分〜60分の範囲内、好ましくは20分〜40分の範囲内である。
【0198】
(4)非画線部除去工程
本発明の導電性パターン形成体の製造方法においては、上記工程の他に、上述した導電性パターン形成工程で形成された導電性パターン形成部以外の特性変化層を除去する非画線部除去工程を有していてもよい。上述した特性変化層が、導電性である場合には、パターン形成体上に導電性パターンを有していても、導電性パターン形成体とすることが困難であることから、上記導電性パターン以外の領域の特性変化層を除去することにより、基体を露出させ、導電性パターン形成体とするのである。この際、基体は上述した中でも絶縁性の材料であることが必要である。
【0199】
本発明の非画線部除去工程は、例えば、上記導電性パターン形成工程により形成されたパターン形成体用基板(図6(a))の導電性パターン11領域以外の表面に露出した特性変化層からなる非画線部7を除去する工程であり(図6(b))、非画線部7を除去することが可能であれば、その方法等は特に限定されるものではない。
【0200】
この非画線部を除去する具体的な方法としては、アルカリ溶液、またはフッ酸や濃硫酸等の強酸をスプレーにより塗布する方法や、浸漬する方法等が挙げられる。
【0201】
(5)その他
本発明においては、上記導電性パターン形成体上に、さらに電気めっきを施すことにより、導電性パターンの膜厚を厚くするようにしてもよい。このようにすることにより、導電性パターンの抵抗を下げることが可能となると同時に、導電性パターンの特性変化層への付着強度を向上させることができ、高品質、高精細な配線板とすることができるからである。
【0202】
さらに、本発明においては、上記導電性パターンが形成された後に、さらに絶縁性の保護層を形成するようにしてもよい。このようにすることにより、導電性パターンが剥がれる等の不具合を防止することができるからである。また、この絶縁性の保護層を特性変化層とした場合は、さらにその上に導電性パターンを形成することにより多層プリント配線板として用いることもできる。
【0203】
B.導電性パターン形成体
次に、本発明の導電性パターン形成体について説明する。本発明の導電性パターン形成体は、3つの実施態様がある。以下、それぞれの導電性パターン形成体について説明する。
【0204】
1.第一実施態様
まず、本発明の導電性パターン形成体の第一実施態様について説明する。本発明の導電性パターン形成体の第一実施態様は、光触媒の作用により濡れ性が変化する濡れ性変化層と、上記濡れ性変化層上にパターン状に金属ペーストを固化させることにより形成された金属組成物とを有することを特徴とするものである。本実施態様の導電性パターン形成体は、上記濡れ性変化層を有することにより、容易にエネルギー照射によりパターン状に親液性領域と撥液性領域とを形成することが可能であり、この親液性領域に金属ペーストを付着させることにより、容易に導電性パターン形成体を製造することが可能となるのである。
【0205】
また、本実施態様においては、上記濡れ性変化層上に導電性パターンが形成されることから、濡れ性変化層の電気抵抗は、1×10Ω・cm〜1×1018Ω・cm、中でも1×1012Ω・cm〜1×1018Ω・cmの範囲内であることが好ましい。これにより、優れた導電性パターン形成体とすることが可能となるのである。
【0206】
本実施態様の導電性パターン形成体は、上記濡れ性変化層と、その濡れ性変化層上にパターン状に形成された上記金属組成物とを有するものであれば、その構造等は特に限定されるものではなく、例えば図7(a)に示すように、基体4上に特性変化層である濡れ性変化層5が形成され、その濡れ性変化層5上に金属組成物11がパターン状に形成されているものでもよく、また例えば図7(b)に示すように、濡れ性変化層5が自己支持性を有する場合は、濡れ性変化層5上に金属組成物11がパターン状に形成されているものでもよい。
【0207】
本実施態様に用いられる、濡れ性変化層および基体は、上述した「A.パターン形成体の製造方法」における「パターン形成体用基板」で説明したものを用いることが可能であるので、ここでの説明は省略する。また、本実施態様に用いられる金属組成物は、金属ペーストをパターン状に固化させたものであり、上述した「A.パターン形成体の製造方法」における「金属ペースト塗布工程」および「導電性パターン形成工程」で説明した材料および製造方法と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0208】
2.第二実施態様
次に、本発明の導電性パターン形成体の第二実施態様について説明する。本発明の導電性パターン形成体の第二実施態様は、基体と、上記基体上に光触媒の作用により分解除去される分解除去層と、上記分解除去層が分解除去されて露出した基体上にパターン状に金属ペーストを固化させることにより形成された金属組成物とを有することを特徴とするものである。
【0209】
本実施態様の導電性パターンは、特に構造等は限定されるものではなく、例えば図8に示すように、基体4と、この基体4上に形成された特性変化層である分解除去層5と、この分解除去層5が分解除去されて露出した基体4上に形成された金属組成物11とを有するものとすることができる。
【0210】
本実施態様の導電性パターン形成体は、上記分解除去層を有することから、エネルギー照射を行うことにより、容易に表面にパターン状に凹凸を形成することが可能となり、この凹凸を利用して導電性パターン形成体を製造することが可能となるのである。また、本実施態様の分解除去層は、分解除去層に対する液体の接触角と、基体に対する液体の接触角とが、異なるものであることが好ましい。これにより、表面の凹凸だけでなく、濡れ性を利用して導電性パターン形成体を製造することが可能となるからである。
【0211】
またこの場合、導電性パターンは基体上に形成されることから、基体の電気抵抗が、1×10Ω・cm〜1×1018Ω・cm、中でも1×1012Ω・cm〜1×1018Ω・cmの範囲内であることが好ましい。
【0212】
さらに、導電性パターンの周囲に、分解除去層が存在することから、この分解除去層の電気抵抗が1×10Ω・cm〜1×1018Ω・cm、中でも1×1012Ω・cm〜1×1018Ω・cmの範囲内であることが好ましい。これにより、優れた導電性パターン形成体とすることが可能となるからである。
【0213】
本実施態様に用いられる、分解除去層および基体は、上述した「A.導電性パターン形成体の製造方法」における「パターン形成体用基板」で説明したものを用いることが可能であるので、ここでの説明は省略する。また、本実施態様に用いられる金属組成物は、金属ペーストをパターン状に固化させたものであり、上述した「A.パターン形成体の製造方法」における「金属ペースト塗布工程」および「導電性パターン形成工程」で説明した材料および製造方法と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0214】
3.第三実施態様
次に、本発明の導電性パターン形成体の第三実施態様について説明する。本発明の導電性パターン形成体の第三実施態様は、基体と、上記基体上にパターン状に形成された光触媒の作用により濡れ性が変化する濡れ性変化層と、上記濡れ性変化層上に金属ペーストを固化させることにより形成された金属組成物とを有することを特徴とするものである。
【0215】
本発明の導電性パターン形成体は、特に構造等は限定されるものではなく、例えば図9に説明するように、基体4と、基体4上にパターン状に特性変化層である濡れ性変化層5が形成されており、その濡れ性変化層5上に金属組成物11が形成されたものとすることができる。
【0216】
本実施態様の導電性パターン形成体は、濡れ性変化層を有することにより、その濡れ性を利用して、導電性パターン形成体を容易に製造することが可能となるのである。また、上記濡れ性変化層が基体上にパターン状に形成され、その濡れ性変化層上に導電性パターンが形成されていることから、導電性パターン以外の部分は、基体が表面に露出している。これにより、濡れ性変化層が導電性である場合にも、導電性パターン形成体とすることが可能となるのである。この場合、基体の電気抵抗が1×10Ω・cm〜1×1018Ω・cm、中でも1×1012Ω・cm〜1×1018Ω・cmの範囲内であることが好ましい。これにより、優れた導電性パターン形成体とすることが可能となるからである。
【0217】
本実施態様に用いられる、濡れ性変化層および基体は、上述した「A.パターン形成体の製造方法」における「パターン形成体用基板」の項で説明したものを用いることが可能であるので、ここでの説明は省略する。また、本実施態様に用いられる金属組成物は、金属ペーストをパターン状に固化させたものであり、上述した「A.パターン形成体の製造方法」における「金属ペースト塗布工程」および「導電性パターン形成工程」で説明した材料および製造方法と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0218】
なお、本実施態様は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本実施態様の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本実施態様の技術的範囲に包含される。
【0219】
【実施例】
以下、本実施態様について、実施例を通じてさらに詳述する。
【0220】
[実施例1]
1.光触媒含有層側基板の形成
50μmのラインアンドスペースで厚さ0.4μmのクロム製ブラックマトリックスが形成された石英ガラス基板上に、テイカ(株)製の光触媒用酸化チタンコーティング剤TKC301をコーティングし、350℃で3時間乾燥させ、光触媒含有層側基板を調製した。
【0221】
2.パターン形成体用基板の形成
次に、フルオロアルキルシランが主成分であるMF-160E(商品名、トーケムプロダクツ(株)製)0.4gに0.1N塩酸水3gを添加し、1時間室温にて攪拌した溶液をガラス基板上にコーティングした後、150℃で10分間乾燥させパターン形成体用基板を調製した。
【0222】
3.露光による特性変化パターンの形成
上記パターン形成体用基板に、光触媒含有層側基板を密着させ、光触媒含有層側基板から超高圧水銀ランプにて露光(365nm 1000mJ/cm)し、パターン形成体用基板表面に濡れ性変化パターンを形成した。この際、撥液性領域におけるぬれ標準試薬(40mN/m)に対する接触角は78°であり、親液性領域における接触角は9°であった。
【0223】
4.導電性パターンの形成
次にロールコートにより下記の組成の金属ペーストをパターン形成体用基板に塗布することにより親液性領域上にのみ金属ペーストをパターン状に付着させた。この金属ペーストのパターンを加熱(600℃で10分間維持)することにより基板上に銀がパターニングされた導電性パターン形成体を得た。
【0224】
(金属ペースト(粘度3000p))
・導電性粉体(77.5%):銀(タップ密度3.1g/cm、平均粒径0.28μm、不定形)
・樹脂(20%):日本油脂(株)製 マリアリムA4B−0851(アリルエーテルと無水マレイン酸、スチレンの共重合体)
・ガラスフリット(2.5%):Bi系ガラス(無アルカリ)
【0225】
5.非画線部除去工程
次に、上記導電性パターンが形成された基板をPH13の水酸化カリウムが主成分であるアルカリ水溶液に10分間浸漬し、その後、水によって5分間リンスし非画線部を除去した。
【0226】
[実施例2]
1.光触媒含有層側基板の形成
トリメトキシメチルシラン(GE東芝シリコーン(株)製、TSL8113)5gと0.5規定塩酸2.5gとを混合し、8時間攪拌した。これをイソプロピルアルコールにより10倍に希釈しプライマー層用組成物とした。上記プライマー層用組成物を、フォトマスク基板上にスピンコーターにより塗布し、150℃で10分間の乾燥処理を行うことにより、透明なプライマー層(厚み0.2μm)を形成した。
【0227】
次に、イソプロピルアルコール30gとトリメトキシメチルシラン(GE東芝シリコーン(株)製、TSL8113)3gと光触媒無機コーティング剤であるST−K03(石原産業(株)製)20gとを混合し、100℃で20分間撹拌した。これをイソプロピルアルコールにより3倍に希釈し光触媒含有層用組成物とした。上記光触媒含有層用組成物を、プライマー層が形成されたフォトマスク基板上にスピンコーターにより塗布し、150℃で10分間の乾燥処理を行うことにより、透明な光触媒含有層(厚み0.15μm)を形成した。
【0228】
2.パターン形成体用基板の形成
ポリカーボネートが主成分のユーピロンZ400(三菱ガス化学製)2gをジクロロメタン30gと1,1,2−トリクロロエタン70gとに溶解し分解層除去層用組成物とした。上記分解除去層用組成物を、ガラス基板上にスピンコーターにより塗布し、100℃で60分間の乾燥処理を行うことにより、透明な分解除去層(厚み0.01μm)を形成した。
【0229】
3.露光による特性変化パターンの形成
光触媒含有層側基板と分解除去層とをアライメントをとり、100μmのギャップを設けて対向させて、フォトマスク側から超高圧水銀灯(波長365nm)により40mW/cm2の照度で600秒間露光し、分解除去層を分解除去し露出したガラス基材からなる分解除去パターンをパターン状に形成した。
【0230】
このとき、未露光部及び分解除去パターンとぬれ標準試薬(40mN/m)との接触角を接触角測定器(協和界面科学(株)製CA−Z型)を用いて測定(マイクロシリンジから液滴を滴下して30秒後)した結果、それぞれ、67°と6°であった。
【0231】
4.導電性パターンの形成
次に、電界ジェット装置を用いて、以下の組成の金属ペーストを、上記分解除去パターンに付着させ、これに600℃10分保持の処理を行い硬化させた。
【0232】
(金属ペースト(粘度500p))
・導電性粉体(40%):銀(タップ密度3.1g/cm、平均粒径0.28μm、不定形)
・樹脂(10%):日本油脂(株)製マリアリムA4B−0851(アリルエーテルと無水マレイン酸、スチレンの共重合体)
・ガラスフリット(1%):Bi系ガラス(無アルカリ)
・溶剤(49%):ノルマルパラフィン
【0233】
5.非画線部除去工程
次に、上記導電性パターンが形成された基板をPH13の水酸化カリウムが主成分であるアルカリ水溶液に2分間浸漬し、その後、水によって5分間リンスし非画線部を除去した。
【0234】
[実施例3]
1.光触媒含有層側基板の形成
トリメトキシメチルシラン(GE東芝シリコーン(株)製、TSL8113)5gと0.5規定塩酸2.5gとを混合し、8時間攪拌した。これをイソプロピルアルコールにより10倍に希釈しプライマー層用組成物とした。
【0235】
上記プライマー層用組成物をフォトマスク基板上にスピンコーターにより塗布し、150℃で10分間の乾燥処理を行うことにより、透明なプライマー層(厚み0.2μm)を形成した。
【0236】
次に、イソプロピルアルコール30gとトリメトキシメチルシラン(GE東芝シリコーン(株)製、TSL8113)3gと光触媒無機コーティング剤であるST−K03(石原産業(株)製)20gとを混合し、100℃で20分間撹拌した。これをイソプロピルアルコールにより3倍に希釈し光触媒含有層用組成物とした。上記光触媒含有層用組成物を、プライマー層が形成されたフォトマスク基板上にスピンコーターにより塗布し、150℃で10分間の乾燥処理を行うことにより、透明な光触媒含有層(厚み0.15μm)を形成した。
【0237】
2.パターン形成体用基板の形成
カチオン性高分子であるポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(PDDA、平均分子量100,000-200,000、アルドリッチ)と、アニオン性高分子であるポリスチレンスルホン酸ナトリウム塩(PSS、平均分子量70,000、アルドリッチ)とをガラス基材上に交互吸着させ厚さを約2nmとした。
【0238】
3.露光による特性変化パターンの形成
光触媒含有層側基板と分解除去層とを、アライメントをとり50μmのギャップを設けて対向させて、フォトマスク側から超高圧水銀灯(波長365nm)により40mW/cm2の照度で120秒間露光し、分解除去層を分解除去して露出したガラス基材からなる分解除去パターンをパターン状に形成した。
【0239】
このとき、未露光部及び分解除去パターンとぬれ標準試薬(40mN/m)との接触角を接触角測定器(協和界面科学(株)製CA−Z型)を用いて測定(マイクロシリンジから液滴を滴下して30秒後)した結果、それぞれ、65°と5°であった。
【0240】
4.導電性パターンの形成
次に、電界ジェット装置を用いて、実施例2記載と同様の金属ペーストを、上記分解除去パターンに付着させ、これに600℃10分保持の処理を行い硬化させた。
【0241】
【発明の効果】
本発明によれば、光触媒含有層と特性変化層とを所定の間隙をおいて配置し、エネルギー照射することにより、特性変化層表面の特性がパターン状に変化した特性変化パターンを形成することが可能であり、この特性変化パターンの特性の差を利用して、容易にパターン状に金属ペーストを付着させることが可能となる。これにより、高精細な導電性パターン形成体とすることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の導電性パターン形成体の製造方法の一例を示す工程図である。
【図2】本発明に用いられる光触媒含有層側基板の一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明に用いられる光触媒含有層側基板の他の例を示す概略断面図である。
【図4】本実施態様に用いられる光触媒含有層側基板の他の例を示す概略断面図である。
【図5】本実施態様に用いられる光触媒含有層側基板の他の例を示す概略断面図である。
【図6】本発明の導電性パターン形成体の製造方法の非画線部除去工程の一例を示す工程図である。
【図7】本発明の導電性パターン形成体の一例を示す概略断面図である。
【図8】本発明の導電性パターン形成体の他の例を示す概略断面図である。
【図9】本発明の導電性パターン形成体の他の例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 … 基材
2 … 光触媒含有層
3 … 光触媒含有層側基板
4 … 基体
5 … 特性変化層
6 … パターン形成体用基板
7 … 非画線部
9 … 特性変化領域
10… 特性未変化領域
12… 導電性パターン形成体
13… 光触媒含有層側遮光部
14… プライマー層

Claims (31)

  1. 光触媒を含有する光触媒含有層、パターン状に形成された光触媒含有層側遮光部、および基材を有する光触媒含有層側基板と、前記光触媒含有層中の光触媒の作用により特性が変化する特性変化層を有するパターン形成体用基板とを、前記光触媒含有層および前記特性変化層が200μm以下となるように間隙をおいて配置した後、前記光触媒含有層側基板側からエネルギーを照射することにより、前記特性変化層表面に特性の変化した特性変化パターンを形成する特性変化パターン形成工程と、
    前記特性変化パターンが形成されたパターン形成体用基板表面に、金属ペーストを塗布することにより、パターン状に金属ペーストを付着させる金属ペースト塗布工程と、
    前記特性変化パターンにパターン状に付着した金属ペーストを固化させて導電性パターンとする導電性パターン形成工程と
    を有することを特徴とする導電性パターン形成体の製造方法。
  2. 前記導電性パターン形成工程後に、前記特性変化層が前記パターン形成体用基板表面に露出している部分である非画線部を除去する非画線部除去工程を有することを特徴とする請求項1に記載の導電性パターン形成体の製造方法。
  3. 前記非画線部除去工程が、アルカリ溶液により前記特性変化層を除去する工程であることを特徴とする請求項2に記載の導電性パターン形成体の製造方法。
  4. 前記光触媒含有層側基板が、基材と、前記基材上にパターン状に形成された光触媒含有層とからなることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の導電性パターン形成体の製造方法。
  5. 前記光触媒含有層側基板において、前記光触媒含有層側遮光部が前記基材上にパターン状に形成され、さらにその上に前記光触媒含有層が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の導電性パターン形成体の製造方法。
  6. 前記光触媒含有層側基板において、前記光触媒含有層と、前記光触媒含有層側遮光部との間にプライマー層が形成されていることを特徴とする、請求項5に記載の導電性パターン形成体の製造方法。
  7. 前記光触媒含有層側基板において、前記基材上に光触媒含有層が形成され、前記光触媒含有層上に前記光触媒含有層側遮光部がパターン状に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の導電性パターン形成体の製造方法。
  8. 前記光触媒含有層が、光触媒からなる層であることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれかの請求項に記載の導電性パターン形成体の製造方法。
  9. 前記光触媒含有層が、光触媒を真空製膜法により基材上に製膜してなる層であることを特徴とする請求項8に記載の導電性パターン形成体の製造方法。
  10. 前記光触媒含有層が、光触媒とバインダとを有する層であることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれかの請求項に記載の導電性パターン形成体の製造方法。
  11. 前記光触媒が、前記光触媒が、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化タングステン(WO)、酸化ビスマス(Bi)、および酸化鉄(Fe)から選択される1種または2種以上の物質であることを特徴とする請求項1から請求項10までのいずれかの請求項に記載の導電性パターン形成体の製造方法。
  12. 前記光触媒が酸化チタン(TiO)であることを特徴とする請求項11記載の導電性パターン形成体の製造方法。
  13. 前記パターン形成体用基板が、基体と、前記基体上に形成された前記特性変化層とを有することを特徴とする請求項1から請求項12までのいずれかの請求項に記載の導電性パターン形成体の製造方法。
  14. 前記特性変化層が、前記光触媒含有層中の光触媒の作用により、エネルギー照射された際に、液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する濡れ性変化層であることを特徴とする請求項1から請求項13までのいずれかの請求項に記載の導電性パターン形成体の製造方法。
  15. 前記濡れ性変化層上における40mN/mの液体との接触角が、エネルギーが照射されていない部分において50°以上であり、照射された部分において49°以下であることを特徴とする請求項14に記載の導電性パターン形成体の製造方法。
  16. 前記濡れ性変化層が、オルガノポリシロキサンを含有する層であることを特徴とする請求項14または請求項15に記載の導電性パターン形成体の製造方法。
  17. 前記オルガノポリシロキサンが、フルオロアルキル基を含有するポリシロキサンであることを特徴とする請求項16記載の導電性パターン形成体の製造方法。
  18. 前記オルガノポリシロキサンが、YSiX(4−n)(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)で示される珪素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであることを特徴とする請求項16または請求項17に記載の導電性パターン形成体の製造方法。
  19. 前記パターン形成体用基板が、自己支持性を有する濡れ性変化層からなることを特徴とする請求項14から請求項18までのいずれかの請求項に記載の導電性パターン形成体の製造方法。
  20. 前記特性変化層が、前記光触媒含有層中の光触媒の作用により、エネルギー照射された際に分解除去される分解除去層であることを特徴とする請求項1から請求項13までのいずれかの請求項に記載の導電性パターン形成体の製造方法。
  21. 前記分解除去層に対する金属ペーストの接触角と、前記分解除去層が分解除去されて露出する基体に対する金属ペーストの接触角とが異なるものであることを特徴とする請求項20に記載の導電性パターン形成体の製造方法。
  22. 前記分解除去層が、自己組織化単分子膜、ラングミュアーブロジェット膜、もしくは交互吸着膜のいずれかであることを特徴とする請求項20または請求項21に記載の導電性パターン形成体の製造方法。
  23. 前記分解除去層の40mN/mの液体との接触角が、エネルギーが照射されていない部分において50°以上であり、照射された部分において49°以下であることを特徴とする請求項20から請求項22までのいずれかの請求項に記載の導電性パターン形成体の製造方法。
  24. 前記特性変化層の表面に、エネルギーを照射する際に、前記光触媒含有層と、前記特性変化層表面との間隔を、0.2μm〜10μmの範囲内とすることを特徴とする請求項1から請求項23までのいずれかの請求項に記載の導電性パターン形成体の製造方法。
  25. 前記エネルギー照射が、光触媒含有層を加熱しながらなされることを特徴とする請求項1から請求項24までのいずれかの請求項に記載の導電性パターン形成体の製造方法。
  26. 前記特性変化層が、光触媒を含まない層であることを特徴とする請求項1から請求項25までのいずれかの請求項に記載の導電性パターン形成体の製造方法。
  27. 前記金属ペーストが、銅、アルミ、白金、パラジウム、およびニッケルから少なくとも一つ選択される金属のペーストであることを特徴とする請求項1から請求項26までのいずれかの請求項に記載の導電性パターン形成体の製造方法。
  28. 前記金属ペーストの粘度が50cps以上であることを特徴とする請求項1から請求項27までのいずれかの請求項に記載の導電性パターン形成体の製造方法。
  29. 前記金属ペースト塗布工程における金属ペーストの塗布が、ノズル吐出法であることを特徴とする請求項1から請求項28までのいずれかの請求項に記載の導電性パターン形成体の製造方法。
  30. 前記ノズル吐出法が、電界ジェット法であることを特徴とする請求項29に記載の導電性パターン形成体の製造方法。
  31. 前記金属ペースト塗布工程における金属ペーストの塗布が、オフセット印刷法であることを特徴とする請求項1から請求項28までのいずれかの請求項に記載の導電性パターン形成体の製造方法。
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