JP4612994B2 - パターン形成体およびパターン形成体の製造方法並びにカラーフィルタ - Google Patents

パターン形成体およびパターン形成体の製造方法並びにカラーフィルタ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カラーフィルタやプリント基板等の、各種の用途に使用可能な、高精細なパターンを両面に有するパターン形成体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、基材上に図案、画像、文字、回路等の種々のパターンを形成するパターン形成体の製造方法としては、各種のものが製造されている。
【0003】
例えば、印刷を例に挙げて説明すると、印刷方法の一種である平版印刷に使用する平版印刷版は、インクを受容する親油性部位と、印刷インクを受容しない部位とからなるパターンを有する平版を製造し、この平版を用いて親油性部位に印刷すべきインクの画像を形成し、形成した画像を紙等に転写して印刷している。こうした印刷では、このように印刷版原版に、文字、図形等のパターンを形成してパターン形成体である印刷版を製造し、印刷機に装着して使用している。代表的な平版印刷版であるオフセット印刷用の印刷版原版には、数多くのものが提案されている。
【0004】
例えば、オフセット印刷用の印刷版は、印刷版原版にパターンを描いたマスクを介して露光して現像する方法、あるいは電子写真方式によって直接に露光して印刷版原版上に直接に製版する方法等によって作製することができる。電子写真式のオフセット印刷版原版は、導電性基材上に酸化亜鉛等の光導電性粒子および結着樹脂を主成分とした光導電層を設け、これを感光体として電子写真方式によって露光し、感光体表面に親油性の高い画像を形成させ、続いて不感脂化液で処理し非画像部分を親水化することによってオフセット原版、すなわちパターン形成体を得る方法によって作製されている。親水性部分は水等によって浸漬して疎油性とされ、親油性の画像部分に印刷インクが受容されて紙等に転写される。しかしながら、パターン形成に当たっては不感脂化液での処理等の種々の露光後の処理が必要となる。
【0005】
また、高精細なパターンを形成する方法として、基材上に塗布したフォトレジスト層にパターン露光を行い、露光後、フォトレジストを現像し、さらにエッチングを行ったり、フォトレジストに機能性を有する物質を用いて、フォトレジストの露光によって目的とするパターンを直接形成する等のフォトリソグラフィーによるパターン形成体の製造方法が知られている。
【0006】
フォトリソグラフィーによる高精細パターンの形成は、液晶表示装置等に用いられるカラーフィルタの着色パターンの形成、マイクロレンズの形成、精細な電気回路基板の製造、パターンの露光に使用するクロムマスクの製造等に用いられているが、これらの方法によっては、フォトレジストを用いると共に、露光後に液体現像液によって現像を行ったり、エッチングを行う必要があるので、廃液を処理する必要が生じる等の問題点があり、またフォトレジストとして機能性の物質を用いた場合には、現像の際に使用されるアルカリ液等によって劣化する等の問題点もあった。
【0007】
カラーフィルタ等の高精細なパターンを印刷等によって形成することも行われているが、印刷で形成されるパターンには、位置精度等の問題があり、高精度なパターンの形成は困難であった。
【0008】
ここで、高精細なパターンの形成を基材の両面に行う場合には、上記のいずれの方法においても、2回同様の工程を行うことが必要であることから、位置精度や、工程数が多大となる等の問題があった。また、上記フォトリソグラフィー法を透明な基材に用いる場合には、予めフォトレジストを両面に塗布した場合、露光により両面ともフォトレジスト層が感光してしまうことから、両面同時にフォトレジスト層を形成することができず、片面ずつフォトレジスト層を形成し、露光および現像を行う必要があった。
【0009】
一方、高精細なパターンを形成する方法として、光触媒の作用により濡れ性が変化する物質等をコーティング法により基材上に形成し、エネルギー照射を行うことによりパターンを形成するパターン形成体の製造方法等が本発明者等において検討されてきた(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0010】
しかしながら、この方法においては、片面のみにパターンを形成する方法であり、両面にパターンを形成するものではなかった。
【0011】
【特許文献1】
特開2001−272774号公報
【特許文献2】
特開2000−249821号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、簡易な方法で、高精細な表面の特性の異なるパターンを、両面に形成可能なパターン形成体の製造方法の提供が望まれている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、基材と、上記基材の両面に形成され、かつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層とを有し、両面に形成された2つの上記特性変化層は、それぞれ特性が変化した特性変化パターンを有することを特徴とするパターン形成体を提供する。
【0014】
本発明によれば、上記基材の両面に上記特性変化層が形成されていることから、エネルギー照射に伴う光触媒の作用によって、容易にパターン形成体の両面に、特性の変化した特性変化パターンを形成することができ、またこの特性変化パターンは両面で異なるものとすることができる。これにより、この特性が変化した特性変化パターンに沿って、容易に両面に様々な機能性部が形成可能なパターン形成体とすることができるのである。
【0015】
上記発明においては、上記特性変化層が、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する濡れ性変化層であってもよい。これにより、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、濡れ性が変化した親液性領域と、濡れ性の変化していない撥液性領域とを形成することができ、この濡れ性の差を利用して、例えばインクジェット法等により、容易に機能性部が形成可能なパターン形成体とすることができるからである。
【0016】
この場合、上記濡れ性変化層が、フルオロアルキルシランを含有する層であることが好ましい。これにより、上記濡れ性変化層を均一な単分子膜とすることができ、効率よく濡れ性変化層表面の濡れ性を変化させることができ、さらに上記濡れ性変化層の親液性領域と撥液性領域との濡れ性の差を大きなものとすることができるからである。
【0017】
また、本発明においては、上記特性変化層が、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、分解除去される分解除去層であってもよい。これにより、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、表面に凹凸を形成することができ、この凹凸を利用して容易に機能性部を形成可能なパターン形成体とすることができるからである。
【0018】
本発明においては、上記基材が透明であってもよい。本発明においては、上記光触媒の作用により、特性が変化する層を用いることにより、片面に光触媒を用いてエネルギー照射を行った場合であっても、反対側の特性変化層に影響を及ぼすことがなく、それぞれ異なるパターンを形成することができるからである。
【0019】
また、本発明は、基材の両面に、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層を形成する特性変化層形成工程と、
上記特性変化層の一面と、光触媒を含有する光触媒含有層および基体を有する光触媒含有層側基板とを、上記特性変化層および上記光触媒含有層が200μm以下となるように間隙をおいて配置した後、エネルギーを照射し、上記特性変化層の特性が変化した第1特性変化パターンを形成する第1特性変化パターン形成工程と、
上記第1特性変化パターンが形成された面と反対側の面の特性変化層と、光触媒を含有する光触媒含有層および基体を有する光触媒含有層側基板とを、上記特性変化層および上記光触媒含有層が200μm以下となるように間隙をおいて配置した後、エネルギーを照射し、上記特性変化層の特性が変化した第2特性変化パターンを形成する第2特性変化パターン形成工程と、
を有することを特徴とするパターン形成体の製造方法を提供する。
【0020】
本発明によれば、上記特性変化層形成工程により、基材の両面に特性変化層が形成されることから、上記第1特性変化パターン形成工程および上記第2特性変化パターン形成工程において、上記光触媒含有層中の光触媒含有層の作用により、パターン形成体の両面に、特性の変化した特性変化パターンを形成することができ、また、上記第1特性変化パターンと、第2特性変化パターンとのパターンを異なるものとすることができる。
【0021】
上記発明においては、上記特性変化層形成工程が、乾式法により行なわれることが好ましい。これにより、特性変化層を両面に、効率よく短時間で形成することができ、均一かつ膜厚の薄い層とすることができるからである。
【0022】
この場合、上記乾式法が、CVD法であることが好ましい。これにより、例えば自己組織化単分子膜等、緻密で均一な層を形成することができるからである。
【0023】
また、本発明においては、上記基材が透明であってもよい。本発明においては、上記特性変化層は光触媒の作用により特性が変化することから、上記特性変化パターンを形成する際に、エネルギーの照射によって反対側の特性変化層に影響を及ぼすことがなく、それぞれ目的とするパターンを高精細に形成することができる。また、エネルギー照射の方法によっては、第1特性変化パターンおよび第2特性変化パターンを同時に形成することができる。
【0024】
また、本発明は上述したパターン形成体の、両面の特性変化パターン上に機能性部が形成されたことを特徴とする機能性素子を提供する。本発明によれば、上記特性変化パターンの特性の差を利用して、両面に機能性部を容易に形成することができ、かつ高精細な機能性部を有する機能性素子とすることができるからである。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明は、カラーフィルタやプリント基板をはじめとして各種の用途に使用可能な、両面に高精細なパターンを有するパターン形成体および、パターン形成体の製造方法、およびそのパターンを利用して機能性部が形成された機能性素子に関するものである。以下、それぞれについて詳しく説明する。
【0026】
A.パターン形成体
まず、本発明のパターン形成体について説明する。本発明のパターン形成体は、基材と、上記基材の両面に形成され、かつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層とを有し、両面に形成された2つの上記特性変化層は、それぞれ特性が変化した特性変化パターンを有することを特徴とするものである。
【0027】
本発明のパターン形成体は、例えば図1に示すように、基材1と、その基材1の両面に形成された特性変化層2とを有するものであり、その特性変化層2の表面に特性が異なる特性変化パターン3が形成されているものである。
【0028】
本発明によれば、上記基材の両面に、上記特性変化層が形成されていることから、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、容易にパターン形成体の両面に、上記特性変化層の特性が変化した特性変化パターンを形成することができるのである。また、本発明によれば、上記基材が透明である場合であっても、特性変化層は光触媒を有する層が近傍に配置されていなければ、エネルギー照射されても特性が変化しないことから、片面にエネルギー照射した際に、反対側の面の特性変化層に影響を及ぼすことがなく、それぞれ両面で異なる特性変化パターンを有するパターン形成体とすることができる。これにより、特性変化パターンの特性を利用して、両面に異なるパターンの機能性部を有する機能性素子を形成可能なパターン形成体とすることができるのである。
【0029】
以下、本発明のパターン形成体の各構成について説明する。
【0030】
1.特性変化層
まず、本発明のパターン形成体に用いられる特性変化層について説明する。本発明のパターン形成体に用いられる特性変化層は、後述する基材の両面に形成され、かつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する層であれば、その特性の変化の種類等は特に限定されるものではない。
【0031】
本発明においては中でも特性変化層が光触媒の作用により濡れ性が低下するように濡れ性が変化する濡れ性変化層である場合、および特性変化層が光触媒の作用により分解除去される分解除去層である場合の二つの場合が、特にパターン形成体上に機能性部を形成が容易となる点から好ましい。以下、これらの濡れ性変化層および分解除去層について説明する。
【0032】
(濡れ性変化層)
本発明に用いられる濡れ性変化層は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する層であれば、特に限定されるものではない。
【0033】
このように、エネルギー照射により液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する濡れ性変化層とすることにより、濡れ性変化層表面に、エネルギー照射された領域を親液性領域、エネルギー未照射の領域を撥液性領域とすることができ、この濡れ性の差を利用して、パターン形成体上に、容易に機能性部を形成することが可能となるのである。
【0034】
ここで、親液性領域とは、液体との接触角が小さい領域であり、機能性部を形成する機能性部形成用塗布液等に対する濡れ性の良好な領域をいうこととする。また、撥液性領域とは、液体との接触角が大きい領域であり、上記機能性部形成用塗布液に対する濡れ性が悪い領域をいうこととする。
【0035】
上記濡れ性変化層は、エネルギー照射していない部分、すなわち撥液性領域においては、40mN/mの液体との接触角が、50°以上、中でも90°以上であることが好ましい。これは、エネルギー照射していない領域は、本発明においては撥液性が要求される領域であることから、液体との接触角が小さい場合は、撥液性が十分でなく、例えば上記機能性部形成用塗布液を塗布した際に、撥液性領域上にも機能性部形成用塗布液が残存する可能性があり、好ましくないからである。
【0036】
また、上記濡れ性変化層は、エネルギー照射された部分、すなわち親液性領域においては、40mN/mの液体との接触角が、49°以下、好ましくは10°以下であることが好ましい。エネルギー照射された部分、すなわち親液性領域における液体との接触角が高い場合は、例えば、上記機能性部形成用塗布液等を塗布した際に、親液性領域においても機能性部形成用塗布液をはじいてしまう可能性があり、親液性領域上に機能性部パターニングすることが難しくなる可能性があるからである。
【0037】
なお、ここでいう液体との接触角は、種々の表面張力を有する液体との接触角を接触角測定器(協和界面科学(株)製CA−Z型)を用いて測定(マイクロシリンジから液滴を滴下して30秒後)し、その結果から、もしくはその結果をグラフにして得たものである。また、この測定に際して、種々の表面張力を有する液体としては、純正化学株式会社製のぬれ指数標準液を用いた。
【0038】
また、本発明において上述したような濡れ性変化層を用いた場合、この濡れ性変化層中にフッ素が含有され、さらにこの濡れ性変化層表面のフッ素含有量が、濡れ性変化層に対しエネルギーを照射した際に、上記光触媒の作用によりエネルギー照射前に比較して低下するように上記濡れ性変化層が形成されていてもよい。
【0039】
このような特徴を有する濡れ性変化層であれば、エネルギーをパターン照射することにより、容易にフッ素の含有量の少ない部分からなるパターンを形成することができる。ここで、フッ素は極めて低い表面エネルギーを有するものであり、このためフッ素を多く含有する物質の表面は、臨界表面張力がより小さくなる。したがって、フッ素の含有量の多い部分の表面の臨界表面張力に比較してフッ素の含有量の少ない部分の臨界表面張力は大きくなる。これはすなわち、フッ素含有量の少ない部分はフッ素含有量の多い部分に比較して親液性領域となっていることを意味する。よって、周囲の表面に比較してフッ素含有量の少ない部分からなるパターンを形成することは、撥液性域内に親液性領域のパターンを形成することとなる。
【0040】
したがって、このような濡れ性変化層を用いた場合は、エネルギーをパターン照射することにより、撥液性領域内に親液性領域のパターンを容易に形成することができるので、この親液性領域のみに例えば機能性部形成用塗布液を付着させ、機能性部を形成することが容易に可能な、パターン形成体とすることができるのである。
【0041】
上述したような、フッ素を含む濡れ性変化層中に含まれるフッ素の含有量としては、エネルギーが照射されて形成されたフッ素含有量が低い親液性領域におけるフッ素含有量が、エネルギー照射されていない部分のフッ素含有量を100とした場合に10以下、好ましくは5以下、特に好ましくは1以下であることが好ましい。
【0042】
このような範囲内とすることにより、エネルギー照射部分と未照射部分との濡れ性に大きな違いを生じさせることができる。したがって、このような濡れ性変化層に、例えば機能性部形成用塗布液を塗布することにより、フッ素含有量が低下した親液性領域のみに正確に機能性部を形成することが可能となり、精度良く機能性素子を得ることができるからである。なお、この低下率は重量を基準としたものである。
【0043】
このような濡れ性変化層中のフッ素含有量の測定は、一般的に行われている種々の方法を用いることが可能であり、例えばX線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy, ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)とも称される。)、蛍光X線分析法、質量分析法等の定量的に表面のフッ素の量を測定できる方法であれば特に限定されるものではない。
【0044】
本発明においては、このような濡れ性変化層は、後述する基材の両面に形成されるものであり、スピンコート、スプレーコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法により基材の片面ずつ塗布するものであってもよいが、本発明においては、ディップコートまたは乾式法を用いることが好ましい。これにより、基材の両面に同時に濡れ性変化層を形成することができ、効率よくパターン形成体を製造することができるからである。また、本発明においては、中でも、乾式法により形成されることが好ましい。ここで、乾式法とは、金属、金属酸化物、有機物などをガス化して基材表面に成膜する方法であり、ディップコート法と比較して短時間で均一な薄膜を形成することができるからである。本発明に用いられる濡れ性変化層の形成に利用される乾式法として具体的には、熱CVD法やプラズマCVD法等を含むCVD法、または蒸着法やスパッタリング法、イオンプレーティング法等を含むPVD法等が挙げられる。
【0045】
本発明においては、上記の中でもプラズマCVD法、または熱CVD法等のCVD法であることが好ましい。これにより、濡れ性変化層を均一かつ緻密な層とすることが可能となるからである。
【0046】
また、プラズマCVD法は、高分子基材に熱的ダメージが加わらない程度の低温(およそ−10〜200℃程度の範囲)で所望の材料を成膜でき、さらに原料ガスの種類・流量、成膜圧力、投入電力によって、得られる膜の種類や物性を制御できるという利点があることから、後述するパターン形成体用基板に熱的ダメージを与える可能性が少ない。これにより、パターン形成体用基板として例えば熱的耐性の弱い高分子基材等を使用することが可能となり、種々の用途に使用できるパターン形成体とすることが可能となるからである。
【0047】
本発明における具体的な濡れ性変化層のプラズマCVD法による成膜方法としては、まず成膜時のパターン形成体用基板の温度が−20〜100℃の範囲内、中でも−10〜30℃の範囲内であることが好ましい。次に原料ガスとして下記のいずれかの材料を用い、プラズマCVD装置のプラズマ発生手段における単位面積当たりの投入電力を有機薄膜が形成可能な大きさで設定し、成膜圧力をパーティクルの発生がない程度の高い圧力(50〜300mTorr)の範囲で設定する。また、マグネット等プラズマの閉じ込め空間を形成しその反応性を高めることにより、その効果がより高く得られる。
【0048】
また、本発明における濡れ性変化層の形成は、常圧プラズマ装置を用いてもよい。これにより、常圧で行うことができることから、低コストで大面積の濡れ性変化層も形成することが可能となる。
【0049】
本発明のプラズマCVD法により形成される濡れ性変化層の原料ガスとしては、例えば有機鎖を有する珪素化合物等が挙げられる。これにより、形成された濡れ性変化層の、エネルギーが未照射の領域を有機鎖により撥液性領域とすることができ、またエネルギーが照射された領域は、光触媒の作用により、この有機鎖が分解された親液性領域とすることができるからである。
【0050】
これらの材料として、具体的には、具体的には、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、テトラメチルシラン(TMS)、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリメチルシラン、テトラメトキシシラン(TMOS)、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、テトラエトキシシラン(TEOS)、ジメチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンを好ましく用いることができる他、テトラメチルジシロキサン、ノルマルメチルトリメトキシシラン等の従来公知のものを、一種または二種以上用いることができる。
【0051】
また、本発明における濡れ性変化層が、熱CVD法を用いて形成される場合、熱CVD法においては、原料となる物質を気化し、基材上に均一になるように材料を送り込み、酸化、還元、置換等の反応を行わせることから、例えば自己組織化単分子膜等を形成することが可能である。
【0052】
ここで、自己組織化単分子膜とは、固体/液体もしくは固体/気体界面で、有機分子同士が自発的に集合し、会合体を形成しながら自発的に単分子膜を形作っていく有機薄膜である。例として、ある特定の材料でできた基板を、その基板材料と化学的親和性の高い有機分子の溶液または蒸気にさらすと、有機分子は基板表面で化学反応し吸着する。その有機分子が、化学的親和性の高い官能基と、基板との化学反応を全く起こさない例えばアルキル基等との2つのパートからなり、親和性の高い官能基がその末端にある場合、分子は反応性末端が基板側を向き、アルキル基等が外側を向いて吸着する。例えばアルキル基同士が集合すると、全体として安定になるため、化学吸着の過程で有機分子同士は自発的に集合する。分子の吸着には、基板と末端官能基との間で化学反応が起こることが必要であることから、いったん基板表面が有機分子でおおわれ単分子膜ができあがると、それ以降は分子の吸着は起こらない。その結果、分子が密に集合し、配向性のそろった有機単分子膜ができるものである。
【0053】
濡れ性変化層が自己組織化単分子膜である場合には、後述する特性変化パターン形成工程において、濡れ性変化層表面に存在する撥水性を有する例えばアルキル基等を、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により除去することにより、容易に表面を親水性とすることが可能であり、効率的に特性変化パターンの形成を行うことが可能となるのである。
【0054】
本発明における熱CVD法の好ましい成膜条件としては、後述するパターン形成体用基板の耐熱温度以下であれば、高ければ高いほどよいが、50℃〜300℃の範囲内であることが好ましい。
【0055】
また、本発明において濡れ性変化層が形成される場合において、好ましい原料としては、フルオロアルキルシラン、アルキルシラン、チオール等が挙げられ、中でもフルオロアルキルシランを含有する層であることが好ましい。濡れ性変化層がフルオロアルキルシランを含有する層である場合には、後述するパターン形成体用基板上に、上述した自己組織化単分子膜を形成することが可能であり、またエネルギー未照射部の表面に存在するフルオロアルキル基の作用により、撥液性を大きなものとすることができることから、親液性領域と撥液性領域との濡れ性の差を大きくすることが可能であるからである。
【0056】
また、上述したような濡れ性変化層がディップコート等により形成される場合に用いられる材料としては、上述した濡れ性変化層の特性、すなわちエネルギー照射により対向する光触媒含有層中の光触媒により濡れ性が変化する材料で、かつ光触媒の作用により劣化、分解しにくい主鎖を有するものであれば特に限定されるものではなく、具体的にはオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。本発明においては、中でも上記オルガノポリシロキサンが、フルオロアルキル基を含有するオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0057】
このようなオルガノポリシロキサンとしては、例えば、(1)ゾルゲル反応等によりクロロまたはアルコキシシラン等を加水分解、重縮合して大きな強度を発揮するオルガノポリシロキサン、(2)撥水牲や撥油性に優れた反応性シリコーンを架橋したオルガノポリシロキサン等のオルガノポリシロキサンを挙げることができる。
【0058】
上記の(1)の場合、一般式:
SiX(4−n)
(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基、アセチル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)
で示される珪素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。なお、ここでYで示される基の炭素数は1〜20の範囲内であることが好ましく、また、Xで示されるアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基であることが好ましい。
【0059】
また、特にフルオロアルキル基を含有するオルガノポリシロキサンが好ましく用いることができ、具体的には、下記のフルオロアルキルシランの1種または2種以上の加水分解縮合物、共加水分解縮合物が挙げられ、一般にフッ素系シランカップリング剤として知られたものを使用することができる。
【0060】
CF(CFCHCHSi(OCH
CF(CFCHCHSi(OCH
CF(CFCHCHSi(OCH
CF(CFCHCHSi(OCH
(CFCF(CFCHCHSi(OCH
(CFCF(CFCHCHSi(OCH
(CFCF(CFCHCHSi(OCH
CF(C)CSi(OCH
CF(CF(C)CSi(OCH
CF(CF(C)CSi(OCH
CF(CF(C)CSi(OCH
CF(CFCHCHSiCH(OCH
CF(CFCHCHSiCH(OCH
CF(CFCHCHSiCH(OCH
CF(CFCHCHSiCH(OCH
(CFCF(CFCHCHSiCH(OCH
(CFCF(CFCHCHSi CH(OCH
(CFCF(CFCHCHSi CH(OCH
CF(C)CSiCH(OCH
CF(CF(C)CSiCH(OCH
CF(CF(C)CSiCH(OCH
CF(CF(C)CSiCH(OCH
CF(CFCHCHSi(OCHCH
CF(CFCHCHSi(OCHCH
CF(CFCHCHSi(OCHCH
CF(CFCHCHSi(OCHCH;および
CF(CFSON(C)CCHSi(OCH
【0061】
上記のようなフルオロアルキル基を含有するポリシロキサンをバインダとして用いることにより、濡れ性変化層のエネルギー未照射部の撥液性が大きく向上し、例えば機能性部形成用塗布液を全面塗布した場合に、この機能性部形成用塗布液の付着を妨げることが可能となり、エネルギー照射部である親液性領域のみに機能性部形成用塗布液を付着させることが可能となる。
【0062】
また、上記の(2)の反応性シリコーンとしては、下記一般式で表される骨格をもつ化合物を挙げることができる。
【0063】
【化1】
Figure 0004612994
【0064】
ただし、nは2以上の整数であり、R,Rはそれぞれ炭素数1〜10の置換もしくは非置換のアルキル、アルケニル、アリールあるいはシアノアルキル基であり、モル比で全体の40%以下がビニル、フェニル、ハロゲン化フェニルである。また、R、Rがメチル基のものが表面エネルギーが最も小さくなるので好ましく、モル比でメチル基が60%以上であることが好ましい。また、鎖末端もしくは側鎖には、分子鎖中に少なくとも1個以上の水酸基等の反応性基を有する。
【0065】
また、上記のオルガノポリシロキサンとともに、ジメチルポリシロキサンのような架橋反応をしない安定なオルガノシリコーン化合物を混合してもよい。
【0066】
本発明においては、このようにオルガノポリシロキサン等の種々の材料を濡れ性変化層に用いることができるのであるが、上述したように、濡れ性変化層にフッ素を含有させることが、濡れ性のパターン形成に効果的である。したがって、光触媒の作用により劣化・分解しにくい材料にフッ素を含有させる、具体的にはオルガノポリシロキサン材料にフッ素を含有させて濡れ性変化層とすることが好ましいといえる。
【0067】
本発明における濡れ性変化層には、さらに界面活性剤を含有させることができる。具体的には、日光ケミカルズ(株)製NIKKOL BL、BC、BO、BBの各シリーズ等の炭化水素系、デュポン社製ZONYL FSN、FSO、旭硝子(株)製サーフロンS−141、145、大日本インキ化学工業(株)製メガファックF−141、144、ネオス(株)製フタージェントF−200、F251、ダイキン工業(株)製ユニダインDS−401、402、スリーエム(株)製フロラードFC−170、176等のフッ素系あるいはシリコーン系の非イオン界面活性剤を挙げることができ、また、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を用いることもできる。
【0068】
また、濡れ性変化層には上記の界面活性剤の他にも、ポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ジアリルフタレート、エチレンプロピレンジエンモノマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリベンズイミダゾール、ポリアクリルニトリル、エピクロルヒドリン、ポリサルファイド、ポリイソプレン等のオリゴマー、ポリマー等を含有させることができる。
【0069】
このような濡れ性変化層は、上述した成分を必要に応じて他の添加剤とともに溶剤中に分散して塗布液を調製し、この塗布液を基材上の両面に塗布することにより形成することができる。使用する溶剤としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系の有機溶剤が好ましい。また、紫外線硬化型の成分を含有している場合、紫外線を照射して硬化処理を行うことにより濡れ性変化層を形成することができる。
【0070】
本発明において、この濡れ性変化層の厚みは、光触媒による濡れ性の変化速度等の関係より、0.001μmから1μmであることが好ましく、特に好ましくは0.01〜0.1μmの範囲内である。
【0071】
本発明において上述した成分の濡れ性変化層を用いることにより、光触媒含有層中の光触媒の作用により、上記成分の一部である有機基の酸化、分解等の作用を用いて、エネルギー照射部の濡れ性を変化させて親液性とし、エネルギー未照射部との濡れ性に大きな差を生じさせることができる。よって、例えば機能性部形成用塗布液を全面塗布した場合においても、比較的容易にエネルギー照射部である親液性領域内のみに機能性部形成用塗布液を付着させることが可能であり、高精細な機能性素子を低コストで製造することが可能なパターン形成体とすることができる。
【0072】
なお、本発明に用いられる濡れ性変化層は、上述したように光触媒の作用により濡れ性の変化する層であれば特に限定されるものではないが、特に、光触媒を含まない層であることが好ましい。このように濡れ性変化層内に光触媒が含まれなければ、その後導電性パターン形成体として用いた場合に、経時的に影響を受ける心配をする必要がなく、長期間に渡り問題なく使用することが可能だからである。
【0073】
(分解除去層)
次に分解除去層について説明する。本発明に用いられる分解除去層は、エネルギー照射された際に光触媒含有層中の光触媒の作用により、エネルギー照射された部分の分解除去層が分解除去される層であれば、特に限定されるものではない。
【0074】
このように分解除去層は、エネルギー照射した部分が光触媒の作用により分解除去されることから、現像工程や洗浄工程を行うことなく分解除去層のある部分と無い部分とからなるパターン、すなわち凹凸を有するパターンを形成することができる。
【0075】
なお、この分解除去層は、エネルギー照射による光触媒の作用により酸化分解され、気化等されることから、現像・洗浄工程等の特別な後処理なしに除去されるものであるが、分解除去層の材質によっては、洗浄工程等を行ってもよい。
【0076】
また、本発明に用いられる分解除去層は、凹凸を形成するのみならず、この分解除去層が、後述する基材と比較して、液体との接触角が高いことが好ましい。
これにより、分解除去層が分解除去され、基材が露出した領域を親液性領域、上記分解除去層が残存する領域を撥液性領域とすることが可能となり、種々のパターンを形成することが可能となるからである。
【0077】
ここで、親液性領域とは、液体との接触角が小さい領域であり、機能性部を形成する機能性部形成用塗布液に対する濡れ性の良好な領域をいうこととする。また、撥液性領域とは、液体との接触角が大きい領域であり、上記機能性部形成用塗布液に対する濡れ性が悪い領域をいうこととする。
【0078】
また、上記分解除去層は、40mN/mの液体との接触角が、50°以上、中でも90°以上であることが好ましい。これは、本発明は、残存する特性変化層が、撥液性が要求される部分であることから、液体との接触角が小さい場合は、撥液性が十分でなく、例えば機能性部を形成する機能性部形成用塗布液を塗布した場合に、機能性部を形成しない撥液性領域にまで機能性部形成用塗布液が残存する可能性が生じるため好ましくないからである。
【0079】
また、本発明において、後述する基材は、40mN/mの液体との接触角が、エネルギーが照射されていない部分において49°以下、中でも10°以下であることが好ましい。本発明においては基材が、親液性が要求される部分であることから、例えば機能性部形成用塗布液を塗布した際に、親液性領域においても機能性部形成用塗布液をはじいてしまう可能性があり、機能性部をパターニングすることが難しくなる可能性があるからである。ここで、液体との接触角は、上述した方法により測定した値である。
【0080】
この場合、後述する基材は表面を親液性となるように、表面処理したものであってもよい。材料の表面を親液性となるように表面処理した例としては、アルゴンや水などを利用したプラズマ処理による親液性表面処理が挙げられ、基体上に形成する親液性の層としては、例えばテトラエトキシシランのゾルゲル法によるシリカ膜等を挙げることができる。
【0081】
上記のような分解除去層に用いることができる膜としては、具体的にはフッ素系や炭化水素系の撥液性を有する樹脂等による膜を挙げることができる。これらのフッ素系や炭化水素系の樹脂は、撥液性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、これらの樹脂を溶媒に溶解させ、例としてスピンコート法等の一般的な成膜方法により基材の片面ずつに形成する方法であってもよいが、本発明においては、上述した濡れ性変化層の場合と同様に、乾式法により形成されることが、製造効率等の面から好ましい。
【0082】
分解除去層の形成がプラズマCVD法により行なわれる場合には、原料ガスとして用いられる材料としては、炭化水素系材料や、フッ素含有有機材料等を挙げることができる。具体的に炭化水素系材料としては、CH、C、C、およびCを挙げることができる。また、フッ素含有有機材料としては、CF、C、C、C,C,C、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PVDF(ポリビニリデンフルオロエチレン)、PVF(ポリビニルフルオリド)、ETFE(エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体)等を挙げることができる。
【0083】
分解除去層の形成が、熱CVD法により行われる場合には、原料としては、通常の樹脂モノマー等を挙げることができる。
【0084】
なお、プラズマCVD法および熱CVD法の成膜条件、分解除去層の膜厚等については、上述した濡れ性変化層で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0085】
また、分解除去層がディップコート法等、他の方法により形成されてもよく、機能性薄膜、すなわち、自己組織化単分子膜、ラングミュア−ブロケット膜、および交互吸着膜等を用いることにより、欠陥のない膜を形成することが可能であることから、このような成膜方法を用いてもよい。
【0086】
ここで、本発明に用いられる自己組織化単分子膜、ラングミュア−ブロケット膜、および交互吸着膜について具体的に説明する。
【0087】
▲1▼自己組織化単分子膜
本発明に用いられる自己組織化膜形成能のある材料としては、例えば、脂肪酸などの界面活性剤分子、アルキルトリクロロシラン類やアルキルアルコキシド類などの有機ケイ素分子、アルカンチオール類などの有機イオウ分子、アルキルフォスフェート類などの有機リン酸分子などが挙げられる。分子構造の一般的な共通性は、比較的長いアルキル鎖を有し、片方の分子末端に基板表面と相互作用する官能基が存在することである。アルキル鎖の部分は分子同士が2次元的にパッキングする際の分子間力の源である。もっとも、ここに示した例は最も単純な構造であり、分子のもう一方の末端にアミノ基やカルボキシル基などの官能基を有するもの、アルキレン鎖の部分がオキシエチレン鎖のもの、フルオロカーボン鎖のもの、これらが複合したタイプの鎖のものなど様々な分子から成る自己組織化単分子膜が報告されている。また、複数の分子種から成る複合タイプの自己組織化単分子膜もある。また、最近では、デンドリマーに代表されるような粒子状で複数の官能基(官能基が一つの場合もある)を有する高分子や直鎖状(分岐構造のある場合もある)の高分子が一層基板表面に形成されたもの(後者はポリマーブラシと総称される)も自己組織化単分子膜と考えられる場合もあるようである。本発明は、これらも自己組織化単分子膜に含める。
【0088】
▲2▼ラングミュア−ブロジェット膜
本発明に用いられるラングミュア−ブロジェット膜(Langmuir-Blodgett Film)は、基板上に形成されてしまえば形態上は上述した自己組織化単分子膜との大きな相違はない。ラングミュア−ブロジェット膜の特徴はその形成方法とそれに起因する高度な2次元分子パッキング性(高配向性、高秩序性)にあると言える。すなわち、一般にラングミュア−ブロジェット膜形成分子は気液界面上に先ず展開され、その展開膜がトラフによって凝縮されて高度にパッキングした凝縮膜に変化する。実際は、これを適当な基板に移しとって用いる。ここに概略を示した手法により単分子膜から任意の分子層の多層膜まで形成することが可能である。また、低分子のみならず、高分子、コロイド粒子なども膜材料とすることができる。様々な材料を適用した最近の事例に関しては宮下徳治らの総説“ソフト系ナノデバイス創製のナノテクノロジーへの展望” 高分子 50巻 9月号 644-647
(2001)に詳しく述べられている。
【0089】
▲3▼交互吸着膜
交互吸着膜(Layer-by-Layer Self-Assembled Film)は、一般的には、最低2個の正または負の電荷を有する官能基を有する材料を逐次的に基板上に吸着・結合させて積層することにより形成される膜である。多数の官能基を有する材料の方が膜の強度や耐久性が増すなど利点が多いので、最近ではイオン性高分子(高分子電解質)を材料として用いることが多い。また、タンパク質や金属や酸化物などの表面電荷を有する粒子、いわゆる“コロイド粒子”も膜形成物質として多用される。さらに最近では、水素結合、配位結合、疎水性相互作用などのイオン結合よりも弱い相互作用を積極的に利用した膜も報告されている。比較的最近の交互吸着膜の事例については、静電的相互作用を駆動力にした材料系に少々偏っているがPaula T. Hammondによる総説“Recent Explorations in Electrostatic Multilayer Thin Film Assembly”Current Opinion in Colloid & Interface Science, 4, 430-442 (2000)に詳しい。交互吸着膜は、最も単純なプロセスを例として説明すれば、正(負)電荷を有する材料の吸着−洗浄−負(正)電荷を有する材料の吸着−洗浄のサイクルを所定の回数繰り返すことにより形成される膜である。ラングミュア−ブロジェット膜のように展開−凝縮−移し取りの操作は全く必要ない。また、これら製法の違いより明らかなように、交互吸着膜はラングミュア−ブロジェット膜のような2次元的な高配向性・高秩序性は一般に有さない。しかし、交互吸着膜及びその作製法は、欠陥のない緻密な膜を容易に形成できること、微細な凹凸面やチューブ内面や球面などにも均一に成膜できることなど、従来の成膜法にない利点を数多く有している。
【0090】
また、分解除去層の膜厚としては、後述する特性変化パターン形成工程において照射されるエネルギーにより分解除去される程度の膜厚であれば特に限定されるものではない。具体的な膜厚としては、照射されるエネルギーの種類や分解除去層の材料等により大きく異なるものではあるが、一般的には、0.001μm〜1μmの範囲内、特に0.01μm〜0.1μmの範囲内とすることが好ましい。
【0091】
2.基材
次に、本発明のパターン形成体に用いられる基材について説明する。本発明においては、この基材の両面に特性変化層が形成されるものである。
【0092】
本発明に用いられる基材としては、最終的に得られるパターン形成体の用途等に応じて適宜選択されるものであり、例えば紙基材の樹脂積層板、ガラス布・ガラス不織布基材の樹脂積層板、セラミック、金属等を用いることができ、板状のものであることが好ましい。
【0093】
また、本発明においては、基材を透明なものとすることができる。フォトリソグラフィー法等においては、フォトレジスト層を両面に形成した場合、基材が透明である場合には、露光により両面同時にフォトレジスト層が感光してしまうことから、フォトレジスト層の形成、露光、現像等の処理を片面ずつ行わなければならなかった。しかしながら、本発明においては、基材が透明であっても、上記特性変化層は、エネルギー照射のみによっては特性が変化せず、特性変化層表面の近傍に配置された光触媒を含有する層の光触媒の作用により特性が変化することから、基材をはさんで反対側の面に形成されている、光触媒を含有する層が近傍に配置されていない特性変化層の特性は変化しない。これにより、それぞれ片面ずつ特性変化層の特性を変化させることができ、目的とするパターンを両面にそれぞれ形成することができるのである。
【0094】
また、基材が透明であることにより、エネルギー照射の方法等によっては、同時に両面の特性変化層の特性を変化させることが可能となり、それぞれ異なる特性変化パターンを同時に形成することができるのである。
【0095】
ここで、両面の特性変化層を同時に変化させる場合には、基材の厚さは50μm〜10000μmの範囲内であることが好ましい。
【0096】
また、本発明においては、基材上に、上記特性変化層の形成が困難である場合や、基材と上記特性変化層との密着性が悪い場合には、基材上に、密着性向上させる密着性向上層を設けてもよい。このような密着性向上層としては、例えば、ポリイミド等が挙げられる。
【0097】
なお、本発明に用いられる基材は、必要とされる部材、例えばカラーフィルタにおけるブラックマトリックス等が形成されているものであってもよい。
【0098】
3.特性変化パターン
次に、本発明の特性変化パターンについて説明する。本発明の特性変化パターンは、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、上述した基材上に形成された両面の特性変化層の、特性が変化したパターンである。
【0099】
本発明においては、この特性変化パターンは、光触媒を含有する光触媒含有層および基体を有する光触媒含有層側基板を用いて、エネルギー照射を行うことにより、上記特性変化層表面にパターンを形成することができる。
【0100】
光触媒含有層における、後述するような二酸化チタンに代表される光触媒の作用機構は、必ずしも明確なものではないが、光の照射によって生成したキャリアが、近傍の化合物との直接反応、あるいは、酸素、水の存在下で生じた活性酸素種によって、有機物の化学構造に変化を及ぼすものと考えられている。本発明においては、このキャリアが光触媒含有層に隣接して配置される特性変化層中の化合物に作用を及ぼすものであると思われる。
【0101】
これにより、本発明においては、上記基材が透明性を有するものであった場合においても、例えば上記特性変化層の片面に上記光触媒含有層側基板を用いてエネルギー照射を行った際に、基材をはさんで裏側の面に形成されている特性変化層に、光触媒の影響を及ぼすことがなく、片面の特性変化層のみの特性を変化させることができ、目的とするパターンを両面にそれぞれ形成することができるのである。
【0102】
上記光触媒含有層側基板については、後述する「B.パターン形成体の製造方法」において詳しく説明するので、ここでの説明は省略する。
【0103】
4.パターン形成体
次に、本発明のパターン形成体について説明する。本発明のパターン形成体は、上述した基材と、その両面に形成された特性変化層とを有するものであって、その両面の特性変化層に、上記特性変化パターンが形成されたものである。
【0104】
本発明によれば、この特性変化パターンの特性の差を利用して、特性変化パターン上に様々な機能性部を形成することが可能であることから、種々の機能性素子を形成可能なパターン形成体とすることができる。
【0105】
ここで、本発明における上記特性変化パターンは、パターン形成体の両面において、同一のパターンであってもよく、また異なるパターンであってもよい。
【0106】
B.パターン形成体の製造方法
次に、本発明のパターン形成体の製造方法について説明する。本発明のパターン形成体の製造方法は、基材の両面に、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層を形成する特性変化層形成工程と、前記特性変化層の一面と、光触媒を含有する光触媒含有層および基体を有する光触媒含有層側基板とを、前記特性変化層および前記光触媒含有層が200μm以下となるように間隙をおいて配置した後、エネルギーを照射し、前記特性変化層の特性が変化した第1特性変化パターンを形成する第1特性変化パターン形成工程と、前記第1特性変化パターンが形成された面と反対側の面の特性変化層と、光触媒を含有する光触媒含有層および基体を有する光触媒含有層側基板とを、前記特性変化層および前記光触媒含有層が200μm以下となるように間隙をおいて配置した後、エネルギーを照射し、前記特性変化層の特性が変化した第2特性変化パターンを形成する第2特性変化パターン形成工程とを有することを特徴とする方法である。
【0107】
本発明のパターン形成体の製造方法は、例えば図2に示すように、まず、基材1の両面に特性変化層2を形成する特性変化層形成工程(図2(a))を行う。次に、基体4と、その基体4上に形成された光触媒を含有する光触媒含有層5とを有する光触媒含有層側基板6を準備し、その光触媒含有層5と上記特性変化層2の片面とを所定の間隙をおいて配置して、例えばフォトマスク7等を用いてエネルギー8の照射を行い(図2(b))、特性変化層2の特性が変化した第1特性変化パターン3を形成する第1特性変化パターン形成工程を行う(図2(c))。次に、上記と同様に、第1特性変化パターン3が形成された面と反対側の面の特性変化層2と、上記基体4および光触媒含有層5を有する光触媒含有層側基板6における光触媒含有層5とを所定の間隙をおいて配置し、フォトマスク7等を用いてエネルギー8を照射し(図2(d))、特性変化層2の特性が変化した第2特性変化パターン3´を形成する第2特性変化パターン形成工程を行う(図2(e))。
【0108】
ここで、上記第1特性変化パターン形成工程および第2特性変化パターン形成工程は、後述する「3.その他」の項で説明するように、上記光触媒含有層側基板の構造によっては、同時に行ってもよい。
【0109】
本発明によれば、上記特性変化層形成工程により、基材の両面に特性変化層が形成されることから、上記第1特性変化パターン形成工程および上記第2特性変化パターン形成工程において、上記光触媒含有層中の光触媒含有層の作用により、パターン形成体の両面に、特性の変化した特性変化パターンを形成することができる。また、本発明によれば、上記基材が透明である場合であっても、特性変化層は近傍に配置された光触媒含有層中の光触媒の作用により特性が変化することから、片面にエネルギー照射した際に、反対側の面の特性変化層に影響を及ぼすことがなく、それぞれ両面で異なる特性変化パターンを有するパターン形成体とすることができるのである。
【0110】
以下、本発明のパターン形成体の製造方法の各工程について説明する。
【0111】
1.特性変化層形成工程
まず、本発明のパターン形成体の製造方法における特性変化層形成工程について説明する。本発明のパターン形成体の製造方法における特性変化層形成工程は、基材の両面に、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層を形成する工程である。
【0112】
本発明においては、上記特性変化層を基材の両面に形成可能であれば、その形成方法等は特に限定されるものではなく、例えば片面ずつ一般的な方法により形成する方法であってもよいが、本発明においては、ディップコート法または乾式法により形成することが好ましい。これにより、特性変化層を両面同時に形成することができることから、製造効率等の面からも好ましいからである。
【0113】
本発明においては、上記の中でも乾式法により形成することが好ましい。これにより、短時間で両面に均一かつ膜厚の薄い層を形成することができることから、製造効率等の面で好ましいからである。本発明に用いられる乾式法として、具体的には、熱CVD法やプラズマCVD法等を含むCVD法、または蒸着法やスパッタリング法、イオンプレーティング法等を含むPVD法等が挙げられ、中でも、プラズマCVD法や、熱CVD法を含むCVD法を用いることが好ましい。これにより、特性変化層を均一かつ緻密な層とすることが可能となるからである。
【0114】
本工程における特性変化層の形成方法や材料、基材の種類等については、上述した「A.パターン形成体」の特性変化層および基材の項で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0115】
2.第1特性変化パターン形成工程
次に、本発明のパターン形成体の製造方法における第1特性変化パターン形成工程について説明する。本発明のパターン形成体の製造方法における第1特性変化パターン形成工程は、上述した特性変化層形成工程により形成された特性変化層の一面と、光触媒を含有する光触媒含有層および基体を有する光触媒含有層側基板とを、前記特性変化層および前記光触媒含有層が200μm以下となるように間隙をおいて配置した後、エネルギーを照射し、前記特性変化層の特性が変化した第1特性変化パターンを形成する工程である。以下、本工程の各構成について説明する。
【0116】
(光触媒含有層側基板)
まず、本工程に用いられる光触媒含有層側基板について説明する。本工程に用いられる光触媒含有層側基板は、光触媒を含有する光触媒含有層および基体を有するものであり、通常、基体と、その基体上に光触媒含有層が形成されているものである。この光触媒含有層側基板は、例えばパターン状に形成された光触媒含有層側遮光部やプライマー層等を有していてもよい。以下、本工程に用いられる光触媒含有層側基板の各構成について説明する。
【0117】
a.光触媒含有層
まず、光触媒含有層側基板に用いられる光触媒含有層について説明する。本発明に用いられる光触媒含有層は、光触媒含有層中の光触媒が、隣接する特性変化層の特性を変化させるような構成であれば、特に限定されるものではなく、光触媒とバインダとから構成されているものであってもよく、光触媒単体で製膜されたものであってもよい。また、その表面の特性は特に親液性であっても撥液性であってもよい。
【0118】
本発明において用いられる光触媒含有層は、例えば図2に示すように、基材4上に全面に形成されたものであってもよいが、例えば図3に示すように、基材4上に光触媒含有層5がパターン上に形成されたものであってもよい。
【0119】
このように光触媒含有層をパターン状に形成することにより、後述するエネルギー照射において説明するように、光触媒含有層を特性変化層と所定の間隔をおいて配置させてエネルギーを照射する際に、フォトマスク等を用いるパターン照射をする必要がなく、全面に照射することにより、特性変化層上の特性が変化したパターンを形成することができる。
【0120】
この光触媒処理層のパターニング方法は、特に限定されるものではないが、例えばフォトリソグラフィー法等により行うことが可能である。
【0121】
また、実際に光触媒含有層に面する特性変化層上の部分のみの、特性が変化するものであるので、エネルギーの照射方向は上記光触媒含有層と特性変化層とが面する部分にエネルギーが照射されるものであれば、いかなる方向から照射されてもよく、さらには、照射されるエネルギーも特に平行光等の平行なものに限定されないという利点を有するものとなる。また、後述する「3.その他」の項で説明するように、このような光触媒含有層を有する光触媒含有層側基板を2つ用意し、上記特性変化層の両面に配置してエネルギー照射することにより、第1特性変化変化パターンおよび第2特性変化パターンを同時に形成することも可能となる。
【0122】
本発明で使用する光触媒としては、光半導体として知られる例えば二酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化タングステン(WO)、酸化ビスマス(Bi)、および酸化鉄(Fe)を挙げることができ、これらから選択して1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0123】
本発明においては、特に二酸化チタンが、バンドギャップエネルギーが高く、化学的に安定で毒性もなく、入手も容易であることから好適に使用される。二酸化チタンには、アナターゼ型とルチル型があり本発明ではいずれも使用することができるが、アナターゼ型の二酸化チタンが好ましい。アナターゼ型二酸化チタンは励起波長が380nm以下にある。
【0124】
このようなアナターゼ型二酸化チタンとしては、例えば、塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(石原産業(株)製STS−02(平均粒径7nm)、石原産業(株)製ST−K01)、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(日産化学(株)製TA−15(平均粒径12nm))等を挙げることができる。
【0125】
光触媒の粒径は小さいほど光触媒反応が効果的に起こるので好ましく、平均粒径が50nm以下であることが好ましく、20nm以下の光触媒を使用するのが特に好ましい。
【0126】
本発明における光触媒含有層は、上述したように光触媒単独で形成されたものであってもよく、またバインダと混合して形成されたものであってもよい。
【0127】
光触媒のみからなる光触媒含有層の場合は、特性変化層上の特性の変化に対する効率が向上し、処理時間の短縮化等のコスト面で有利である。一方、光触媒とバインダとからなる光触媒含有層の場合は、光触媒含有層の形成が容易であるという利点を有する。
【0128】
光触媒のみからなる光触媒含有層の形成方法としては、例えば、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法等の真空製膜法を用いる方法を挙げることができる。真空製膜法により光触媒含有層を形成することにより、均一な膜でかつ光触媒のみを含有する光触媒含有層とすることが可能であり、これにより特性変化層上の特性を均一に変化させることが可能であり、かつ光触媒のみからなることから、バインダを用いる場合と比較して効率的に特性変化層上の特性を変化させることが可能となる。
【0129】
また、光触媒のみからなる光触媒含有層の形成方法の他の例としては、例えば光触媒が二酸化チタンの場合は、基材上に無定形チタニアを形成し、次いで焼成により結晶性チタニアに相変化させる方法等が挙げられる。ここで用いられる無定形チタニアとしては、例えば四塩化チタン、硫酸チタン等のチタンの無機塩の加水分解、脱水縮合、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラメトキシチタン等の有機チタン化合物を酸存在下において加水分解、脱水縮合によって得ることができる。次いで、400℃〜500℃における焼成によってアナターゼ型チタニアに変性し、600℃〜700℃の焼成によってルチル型チタニアに変性することができる。
【0130】
また、バインダを用いる場合は、バインダの主骨格が上記の光触媒の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものが好ましく、例えばオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。
【0131】
このようにオルガノポリシロキサンをバインダとして用いた場合は、上記光触媒含有層は、光触媒とバインダであるオルガノポリシロキサンとを必要に応じて他の添加剤とともに溶剤中に分散して塗布液を調製し、この塗布液を基材上に塗布することにより形成することができる。使用する溶剤としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系の有機溶剤が好ましい。塗布はスピンコート、スプレーコート、ディッブコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法により行うことができる。バインダとして紫外線硬化型の成分を含有している場合、紫外線を照射して硬化処理を行うことにより光触媒含有層を形成することかできる。
【0132】
また、バインダとして無定形シリカ前駆体を用いることができる。この無定形シリカ前駆体は、一般式SiXで表され、Xはハロゲン、メトキシ基、エトキシ基、またはアセチル基等であるケイ素化合物、それらの加水分解物であるシラノール、または平均分子量3000以下のポリシロキサンが好ましい。
【0133】
具体的には、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラメトキシシラン等が挙げられる。また、この場合には、無定形シリカの前駆体と光触媒の粒子とを非水性溶媒中に均一に分散させ、基材上に空気中の水分により加水分解させてシラノールを形成させた後、常温で脱水縮重合することにより光触媒含有層を形成できる。シラノールの脱水縮重合を100℃以上で行えば、シラノールの重合度が増し、膜表面の強度を向上できる。また、これらの結着剤は、単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0134】
バインダを用いた場合の光触媒含有層中の光触媒の含有量は、5〜60重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲で設定することができる。また、光触媒含有層の厚みは、0.05〜10μmの範囲内が好ましい。
【0135】
また、光触媒含有層には上記の光触媒、バインダの他に、界面活性剤を含有させることができる。具体的には、日光ケミカルズ(株)製NIKKOL BL、BC、BO、BBの各シリーズ等の炭化水素系、デュポン社製ZONYL FSN、FSO、旭硝子(株)製サーフロンS−141、145、大日本インキ化学工業(株)製メガファックF−141、144、ネオス(株)製フタージェントF−200、F251、ダイキン工業(株)製ユニダインDS−401、402、スリーエム(株)製フロラードFC−170、176等のフッ素系あるいはシリコーン系の非イオン界面活性剤を挙げることができ、また、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を用いることもできる。
【0136】
さらに、光触媒含有層には上記の界面活性剤の他にも、ポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ジアリルフタレート、エチレンプロピレンジエンモノマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリベンズイミダゾール、ポリアクリルニトリル、エピクロルヒドリン、ポリサルファイド、ポリイソプレン等のオリゴマー、ポリマー等を含有させることができる。
【0137】
b.基体
次に、光触媒含有層側基板に用いられる基体について説明する。本発明においては、図2に示すように、光触媒含有層側基板は、少なくとも基体4とこの基体4上に形成された光触媒含有層5とを有するものである。この際、用いられる基体を構成する材料は、後述するエネルギーの照射方向や、得られるパターン形成体が透明性を必要とするか等により適宜選択される。
【0138】
また本発明に用いられる基体は、可撓性を有するもの、例えば樹脂製フィルム等であってもよいし、可撓性を有さないもの、例えばガラス基板等であってもよい。これは、エネルギー照射方法により適宜選択されるものである。
【0139】
なお、基体表面と光触媒含有層との密着性を向上させるために、基体上にアンカー層を形成するようにしてもよい。このようなアンカー層としては、例えば、シラン系、チタン系のカップリング剤等を挙げることができる。
【0140】
c.光触媒含有層側遮光部
本発明に用いられる光触媒含有層側基板には、パターン状に形成された光触媒含有層側遮光部が形成されたものを用いても良い。このように光触媒含有層側遮光部を有する光触媒含有層側基板を用いることにより、エネルギー照射に際して、フォトマスクを用いたり、レーザ光による描画照射を行う必要がない。したがって、光触媒含有層側基板とフォトマスクとの位置合わせが不要であることから、簡便な工程とすることが可能であり、また描画照射に必要な高価な装置も不必要であることから、コスト的に有利となるという利点を有する。
【0141】
このような光触媒含有層側遮光部を有する光触媒含有層側基板は、光触媒含有層側遮光部の形成位置により、下記の二つの態様とすることができる。
【0142】
一つが、例えば図4に示すように、基体4上に光触媒含有層側遮光部9を形成し、この光触媒含有層側遮光部9上に光触媒含有層5を形成して、光触媒含有層側基板とする態様である。もう一つは、例えば図5に示すように、基体4上に光触媒含有層5を形成し、その上に光触媒含有層側遮光部9を形成して光触媒含有層側基板とする態様である。
【0143】
いずれの態様においても、フォトマスクを用いる場合と比較すると、光触媒含有層側遮光部が、上記光触媒含有層と特性変化層との配置部分の近傍に配置されることになるので、基体内等におけるエネルギーの散乱の影響を少なくすることができることから、エネルギーのパターン照射を極めて正確に行うことが可能となる。
【0144】
ここで、本発明においては、図5に示すような光触媒含有層5上に光触媒含有層側遮光部9を形成する態様である場合には、光触媒含有層と特性変化層とを所定の位置に配置する際に、この光触媒含有層側遮光部の膜厚をこの間隙の幅と一致させておくことにより、上記光触媒含有層側遮光部を上記間隙を一定のものとするためのスペーサとしても用いることができるという利点を有する。
【0145】
すなわち、所定の間隙をおいて上記光触媒含有層と特性変化層とを対向させた状態で配置する際に、上記光触媒含有層側遮光部と特性変化層とを密着させた状態で配置することにより、上記所定の間隙を正確とすることが可能となり、そしてこの状態でエネルギーを照射することにより、特性変化層と遮光部とが接触している部分の特性変化層は、特性が変化せず、特性変化パターンを精度良く形成することが可能となるのである。また、この際、エネルギーの照射方向は上記基体側からに限定されず、例えば基材の側面からであってもよい。この場合、後述する「3.その他」の項で説明するように、2つの光触媒含有層側基板を用意し、特性変化層の両面に配置して、基材の両面等からエネルギー照射を行うことにより、第1特性変化パターンおよび第2特性変化パターンを同時に形成することも可能である。
【0146】
このような光触媒含有層側遮光部の形成方法は、特に限定されるものではなく、光触媒含有層側遮光部の形成面の特性や、必要とするエネルギーに対する遮蔽性等に応じて適宜選択されて用いられる。
【0147】
例えば、スパッタリング法、真空蒸着法等により厚み1000〜2000Å程度のクロム等の金属薄膜を形成し、この薄膜をパターニングすることにより形成されてもよい。このパターニングの方法としては、スパッタ等の通常のパターニング方法を用いることができる。
【0148】
また、樹脂バインダ中にカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた層をパターン状に形成する方法であってもよい。用いられる樹脂バインダとしては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ゼラチン、カゼイン、セルロース等の樹脂を1種または2種以上混合したものや、感光性樹脂、さらにはO/Wエマルジョン型の樹脂組成物、例えば、反応性シリコーンをエマルジョン化したもの等を用いることができる。このような樹脂製遮光部の厚みとしては、0.5〜10μmの範囲内で設定することができる。このよう樹脂製遮光部のパターニングの方法は、フォトリソ法、印刷法等一般的に用いられている方法を用いることができる。
【0149】
なお、上記説明においては、光触媒含有層側遮光部の形成位置として、基体と光触媒含有層との間、および光触媒含有層表面の二つの場合について説明したが、その他、基体の光触媒含有層が形成されていない側の表面に光触媒含有層側遮光部を形成する態様も採ることが可能である。この態様においては、例えばフォトマスクをこの表面に着脱可能な程度に密着させる場合等が考えられ、特性変化パターンを小ロットで変更するような場合に好適に用いることができる。
【0150】
d.プライマー層
次に、本発明の光触媒含有層側基板に用いられるプライマー層について説明する。本発明において、上述したように基体上に光触媒含有層側遮光部をパターン状に形成して、その上に光触媒含有層を形成して光触媒含有層側基板とする場合においては、上記光触媒含有層側遮光部と光触媒含有層との間にプライマー層を形成してもよい。
【0151】
このプライマー層の作用・機能は必ずしも明確なものではないが、光触媒含有層側遮光部と光触媒含有層との間にプライマー層を形成することにより、プライマー層は光触媒の作用による特性変化層の特性変化を阻害する要因となる光触媒含有層側遮光部および光触媒含有層側遮光部間に存在する開口部からの不純物、特に、光触媒含有層側遮光部をパターニングする際に生じる残渣や、金属、金属イオン等の不純物の拡散を防止する機能を示すものと考えられる。したがって、プライマー層を形成することにより、高感度で特性変化の処理が進行し、その結果、高解像度のパターンを得ることが可能となるのである。
【0152】
なお、本発明においてプライマー層は、光触媒含有層側遮光部のみならず光触媒含有層側遮光部間に形成された開口部に存在する不純物が光触媒の作用に影響することを防止するものであるので、プライマー層は開口部を含めた光触媒含有層側遮光部全面にわたって形成されていることが好ましい。
【0153】
本発明におけるプライマー層は、光触媒含有層側基板の光触媒含有層側遮光部と光触媒含有層とが接触しないようにプライマー層が形成された構造であれば特に限定されるものではない。
【0154】
このプライマー層を構成する材料としては、特に限定されるものではないが、光触媒の作用により分解されにくい無機材料が好ましい。具体的には無定形シリカを挙げることができる。このような無定形シリカを用いる場合には、この無定形シリカの前駆体は、一般式SiXで示され、Xはハロゲン、メトキシ基、エトキシ基、またはアセチル基等であるケイ素化合物であり、それらの加水分解物であるシラノール、または平均分子量3000以下のポリシロキサンが好ましい。
【0155】
また、プライマー層の膜厚は、0.001μmから1μmの範囲内であることが好ましく、特に0.001μmから0.1μmの範囲内であることが好ましい。
【0156】
(エネルギー照射)
次に、本工程におけるエネルギー照射について説明する。本工程においては、上記特性変化層と、上記光触媒含有層側基板における光触媒含有層とを、所定の間隙をおいて配置し、所定の方向からエネルギーを照射することにより、特性変化層の特性が変化した第1特性変化パターンを形成することができる。また、この際、特性変化層は近傍に配置された光触媒含有層中の光触媒の作用により特性が変化することから、基材をはさんで反対側の面の特性変化層は、エネルギー照射により特性が変化することなく、第1特性変化パターンのみを形成することができるのである。
【0157】
上記の配置とは、実質的に光触媒の作用が特性変化層表面に及ぶような状態で配置された状態をいうこととし、実際に物理的に接触している状態の他、所定の間隔を隔てて上記光触媒含有層と特性変化層とが配置された状態とする。この間隙は、200μm以下であることが好ましい。
【0158】
本発明において上記間隙は、パターン精度が極めて良好であり、光触媒の感度も高く、したがって特性変化層の特性変化の効率が良好である点を考慮すると特に0.2μm〜10μmの範囲内、好ましくは1μm〜5μmの範囲内とすることが好ましい。このような間隙の範囲は、特に間隙を高い精度で制御することが可能である小面積の特性変化層に対して特に有効である。
【0159】
一方、例えば300mm×300mmといった大面積の特性変化層に対して処理を行う場合は、接触することなく、かつ上述したような微細な間隙を光触媒含有層側基板と特性変化層との間に形成することは極めて困難である。したがって、特性変化層が比較的大面積である場合は、上記間隙は、10〜100μmの範囲内、特に50〜75μmの範囲内とすることが好ましい。間隙をこのような範囲内とすることにより、パターンがぼやける等のパターン精度の低下の問題や、光触媒の感度が悪化して特性変化の効率が悪化する等の問題が生じることなく、さらに特性変化層上の特性変化にムラが発生しないといった効果を有するからである。
【0160】
このように比較的大面積の特性変化層をエネルギー照射する際には、エネルギー照射装置内の光触媒含有層側基板と特性変化層との位置決め装置における間隙の設定を、10μm〜200μmの範囲内、特に25μm〜75μmの範囲内に設定することが好ましい。設定値をこのような範囲内とすることにより、パターン精度の大幅な低下や光触媒の感度の大幅な悪化を招くことなく、かつ光触媒含有層側基板と特性変化層とが接触することなく配置することが可能となるからである。
【0161】
このように光触媒含有層と特性変化層表面とを所定の間隔で離して配置することにより、酸素と水および光触媒作用により生じた活性酸素種が脱着しやすくなる。すなわち、上記範囲より光触媒含有層と特性変化層との間隔を狭くした場合は、上記活性酸素種の脱着がしにくくなり、結果的に特性変化速度を遅くしてしまう可能性があることから好ましくない。また、上記範囲より間隔を離して配置した場合は、生じた活性酸素種が特性変化層に届き難くなり、この場合も特性変化の速度を遅くしてしまう可能性があることから好ましくない。
【0162】
本発明においては、このような配置状態は、少なくともエネルギー照射の間だけ維持されればよい。
【0163】
このような極めて狭い間隙を均一に形成して光触媒含有層と特性変化層とを配置する方法としては、例えばスペーサを用いる方法を挙げることができる。そして、このようにスペーサを用いることにより、均一な間隙を形成することができると共に、このスペーサが接触する部分は、光触媒の作用が特性変化層表面に及ばないことから、このスペーサを上述した特性変化パターンと同様のパターンを有するものとすることにより、特性変化層上に所定の特性変化パターンを形成することが可能となる。また、このようなスペーサを用いることにより、光触媒の作用により生じた活性酸素種が拡散することなく、高濃度で特性変化層表面に到達することから、効率よく高精細な特性変化パターンを形成することができる。
【0164】
本発明においては、このような光触媒含有層側基板の配置状態は、少なくともエネルギー照射の間だけ維持されればよい。
【0165】
3.第2特性変化パターン形成工程
次に、本発明においては、第2特性変化パターン形成工程が行われる。本発明の第2特性変化パターン形成工程は、上述した第1特性変化パターン形成工程により第1特性変化パターンが形成された面と反対側の面の特性変化層と、上述した光触媒含有層側基板の光触媒含有層とを所定の間隙をおいて配置した後、エネルギーを照射し、特性変化層の特性が変化した第2特性変化パターンを形成する工程である。これにより、両面に特性の変化した特性変化パターンが形成されたパターン形成体とすることができるのである。この第2特性変化パターンのパターンは、そのパターン形成体の目的に応じて適宜選択されるものであり、第1特性変化パターンと異なるパターンであってもよく、また同じパターンであってもよい。
【0166】
ここで、本工程に用いられる光触媒含有層側基板や、エネルギーの照射等については、上述した第1特性変化パターン形成工程と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0167】
3.その他
本発明においては、上述した第1特性変化パターン形成工程と、第2特性変化パターン工程とを同時に行うことができる。この第1特性変化パターン形成工程と、第2特性変化パターン形成工程とを同時に行う方法としては、例えば図6に示すように、まず、基体4とその基体4の表面に形成された光触媒含有層5とを有する光触媒含有層側基板6および6´を準備する。この光触媒含有層側基板6および6´と、透明な基材1の両面に形成された特性変化層2および2´との間に、スペーサ10それぞれ密着させて配置し、透明な基材1の側面からエネルギー8を照射する(図6(a))。これにより、スペーサ10が接触していない部分のみの特性変化層2および2´の特性を変化させることができ、第1特性変化パターン3および第2特性変化パターン3´を同時に形成することができるのである(図6(b))。この際、エネルギーの照射は側面からに限定されるものではなく、片面から、もしくは両面からであってもよいが、本発明においては、両面から行われることが、感度等の面から好ましい。
【0168】
このようなスペーサとしては、特性変化層の特性を変化させるパターン状に小孔を有するものであり、上記マスクの厚さは、2mm以下、中でも100μm以下であることが好ましい。本発明においてマスクは、上記光触媒含有層と上記濡れ性変化層との間隔を決定するものであることから、上記値よりマスクの厚さが厚い場合は、生じた活性酸素種が特性変化層に届き難くなり、特性変化の速度を遅くしてしまう可能性があるからである。また、マスクの厚さの下限は1μmである。これは、マスクの厚さが上記値より薄い場合には、高精細なマスクを形成することが困難となるからである。
【0169】
また、本発明のマスクに形成される小孔は、目的とするパターン形成体のパターンにより、その形状や大きさ等は適宜選択される。
【0170】
ここで、本発明に用いられるマスクは、その材料等はエネルギー照射による光触媒の作用により発生する活性酸素種を透過させるものでなければ、特に限定されるものではなく、透明なものでも不透明なものであってもよく、また可撓性を有するものであってもよい。
【0171】
本発明に用いられるマスクの材料として、具体的には金属、ガラスやセラミック等の無機物、またはプラスチック等の有機物等を挙げることができ、中でも金属であることが好ましい。本発明においては、上記マスクが金属からなるものであることにより、容易に特性変化層の特性を変化させるパターン状に小孔を形成することが可能であり、また繰り返し用いることが可能な強度を持ち合わせているからである。また、シャドウマスク等も用いることが可能である。
【0172】
ここで、マスクの小孔の形成方法は、マスクの材料により左右されるものであり、特に限定されるものではないが、例えばエッチング法等が挙げられる。
【0173】
また、上述したように光触媒含有層側基板の光触媒含有層がパターン状に形成されている場合には、光触媒含有層に面する特性変化層上の部分のみの、特性が変化するものであるので、シャドウマスク等を用いることなく、両面の特性変化層上に光触媒含有層側基板を配置することにより、第1特性変化パターンおよび第2特性変化パターンを同時に形成することができる。
【0174】
さらに、光触媒含有層上に光触媒含有層側遮光部が形成されている場合においても、光触媒含有層側基板を、光触媒含有層側遮光部を上記スペーサと同様に用いて両面の特性変化層に密着させて配置することにより、第1特性変化パターンおよび第2特性変化パターンを同時に形成することができる。
【0175】
なお、この際用いられるエネルギー等については、上述した第1特性変化パターン形成工程におけるエネルギー照射と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0176】
C.機能性素子
次に、本発明の機能性素子について説明する。本発明の機能性素子は、上述したパターン形成体の、両面の特性変化パターン上に、機能性部が形成されたことを特徴とするものである。
【0177】
本発明によれば、上述したパターン形成体の、特性の変化したパターンに沿って機能性部を形成することから、両面に高精細な機能性部を形成することができるのである。
【0178】
ここで機能性とは、光学的(光選択吸収、反射性、偏光性、光選択透過性、非線形光学性、蛍光あるいはリン光等のルミネッセンス、フォトクロミック性等)、磁気的(硬磁性、軟磁性、非磁性、透磁性等)、電気・電子的(導電性、絶縁性、圧電性、焦電性、誘電性等)、化学的(吸着性、脱着性、触媒性、吸水性、イオン伝導性、酸化還元性、電気化学特性、エレクトロクロミック性等)、機械的(耐摩耗性等)、熱的(伝熱性、断熱性、赤外線放射性等)、生体機能的(生体適合性、抗血栓性等)のような各種の機能を意味するものである。
【0179】
本発明において用いられる機能性部を形成する機能性部形成用組成物としては、上述したように機能性素子の機能、機能性素子の形成方法等によって大きく異なるものであるが、例えば、紫外線硬化型モノマー等に代表される溶剤で希釈されていない組成物や、溶剤で希釈した液体状の組成物等を用いることができる。また、機能性部形成用組成物としては粘度が低いほど短時間にパターンが形成できることから特に好ましい。ただし、溶剤で希釈した液体状組成物の場合には、パターン形成時に溶剤の揮発による粘度の上昇、表面張力の変化が起こるため、溶剤が低揮発性であることが望ましい。
【0180】
本発明に用いられる機能性部形成用組成物としては、上記親液性領域に付着等させて配置されることにより機能性部となるものであってもよく、また親液性領域上に配置された後、薬剤により処理され、もしくは紫外線、熱等により処理された後に機能性部となるものであってもよい。この場合、機能性部形成用組成物の結着剤として、紫外線、熱、電子線等で効果する成分を含有している場合には、硬化処理を行うことにより素早く機能性部が形成できることから好ましい。
【0181】
本発明においては、上記機能性部を形成する機能性部形成工程を行う方法としては、ディップコート、ロールコート、ブレードコート、スピンコート等の塗布手段、インクジェット、電界ジェット、ディスペンサーを用いる方法等を含むノズル吐出手段等の手段を用いることが好ましい。これらの方法を用いることにより、機能性部を均一かつ高精細に形成することが、可能となるからである。
【0182】
本発明の機能性素子は、例えば機能性部として片面に画素部を形成し、反対側の面にブラックマトリックスを形成したブラックマトリックス付きカラーフィルタや、機能性部として、片面に画素部を形成し、反対側の面にレンズを形成したレンズ付きカラーフィルタ、機能性部として両面に金属配線を形成した導電性パターン等が挙げられる。
【0183】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0184】
【実施例】
以下、本発明について、実施例を通じてさらに詳述する。
【0185】
[実施例1]
1.光触媒含有層側基板の形成
トリメトキシメチルシラン(GE東芝シリコーン(株)製、TSL8113)5gと0.5規定塩酸2.5gとを混合し、8時間攪拌した。これをイソプロピルアルコールにより10倍に希釈しアンカー層用組成物とした。
【0186】
上記アンカー層用組成物を、100μmのライン&スペースのフォトマスク基板上にスピンコーターにより塗布し、150℃で10分間の乾燥処理を行うことにより、透明なアンカー層(厚み0.2μm)を形成した。
【0187】
次に、イソプロピルアルコール30gとトリメトキシメチルシラン(GE東芝シリコーン(株)製、TSL8113)3gと光触媒無機コーティング剤であるST−K03(石原産業(株)製)20gとを混合し、100℃で20分間撹拌した。これをイソプロピルアルコールにより3倍に希釈し光触媒含有層用組成物とした。
【0188】
上記光触媒含有層用組成物を、アンカー層が形成されたフォトマスク基板上にスピンコーターにより塗布し、150℃で10分間の乾燥処理を行うことにより、透明な光触媒含有層(厚み0.15μm)を形成した。
【0189】
2.分解除去層の形成
ポリカーボネートが主成分のユーピロンZ400(三菱ガス化学製)2gをジクロロメタン30gと112トリクロロエタン70gに溶解し分解層除去層用組成物とした。
【0190】
上記分解除去層用組成物を、ガラス基板上にディップコーターにより塗布し、100℃で60分間の乾燥処理を行うことにより、透明な分解除去層(厚み0.2μm)を形成した。
【0191】
3.第1パターン形成工程
前記分解除去層の第1面に光触媒含有層側基板を対向させた後、フォトマスク側から超高圧水銀灯(波長365nm)により40mW/cm2の照度で200秒間露光した。これにより、第1面の前記分解除去層のエネルギー照射部が分解除去された。
【0192】
次いで、機能性部として遮光層組成物をディップコーターにより塗布した後、硬化することにより第1面上の前記分解除去層が分解除去された領域に、遮光層が形成された。
【0193】
4.第2パターン形成工程
前記分解除去層の第2面に光触媒含有層側基板を対向させた後、フォトマスク側から超高圧水銀灯(波長365nm)により40mW/cm2の照度で200秒間露光した。これにより、第2面の前記分解除去層のエネルギー照射部が分解除去された。
【0194】
次いで、機能性部として着色層組成物をインクジェット法により塗布した後、硬化することにより第2面上の前記分解除去層が分解除去された領域に、着色層が形成されたカラーフィルタを得た。
【0195】
[実施例2]
1.光触媒含有層側基板の形成
トリメトキシメチルシラン(GE東芝シリコーン(株)製、TSL8113)5gと0.5規定塩酸2.5gとを混合し、8時間攪拌した。これをイソプロピルアルコールにより10倍に希釈しアンカー層用組成物とした。
【0196】
上記アンカー層用組成物を、100μmのライン&スペースのフォトマスク基板上にスピンコーターにより塗布し、150℃で10分間の乾燥処理を行うことにより、透明なアンカー層(厚み0.2μm)を形成した。
【0197】
次に、イソプロピルアルコール30gとトリメトキシメチルシラン(GE東芝シリコーン(株)製、TSL8113)3gと光触媒無機コーティング剤であるST−K03(石原産業(株)製)20gとを混合し、100℃で20分間撹拌した。これをイソプロピルアルコールにより3倍に希釈し光触媒含有層用組成物とした。
【0198】
上記光触媒含有層用組成物を、アンカー層が形成されたフォトマスク基板上にスピンコーターにより塗布し、150℃で10分間の乾燥処理を行うことにより、透明な光触媒含有層(厚み0.15μm)を形成した。
【0199】
2.濡れ性変化層の形成
フルオロアルキルシランが主成分であるMF-160E(商品名、トーケムプロダクツ(株)製)の5%IPA溶液を用意し、これを240℃に加熱してガラス基板上に付着させて、透明な濡れ性変化層(厚み0.1μm)を形成した。
【0200】
3.第1パターン形成工程
前記濡れ性変化層の第1面に光触媒含有層側基板を対向させた後、フォトマスク側から超高圧水銀灯(波長365nm)により40mW/cm2の照度で100秒間露光した。これにより、第1面の前記濡れ性変化層のエネルギー照射部が親液性領域となった。
【0201】
次いで、機能性部として遮光層組成物をディップコーターにより塗布した後、硬化することにより第1面上の前記親液性領域上に、遮光層を形成した。
【0202】
4.第2パターン形成工程
前記濡れ性変化層の第2面に光触媒含有層側基板を対向させた後、フォトマスク側から超高圧水銀灯(波長365nm)により40mW/cm2の照度で100秒間露光した。これにより、第2面の前記濡れ性変化層のエネルギー照射部が親液性領域となった。
【0203】
次いで、機能性部として着色層組成物をインクジェット法により塗布した後、硬化することにより第2面上の前記親液性領域に着色層を形成し、カラーフィルタを得た。
【0204】
【発明の効果】
本発明によれば、上記基材の両面に上記特性変化層が形成されていることから、エネルギー照射に伴う光触媒の作用によって、容易にパターン形成体の両面に、特性の変化した特性変化パターンを形成することができ、またこの特性変化パターンは両面で異なるものとすることができる。これにより、この特性が変化した特性変化パターンに沿って、容易に両面に様々な機能性部が形成可能なパターン形成体とすることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のパターン形成体の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明のパターン形成体の製造方法の一例を示す工程図である。
【図3】本発明における光触媒含有層側基板の一例を示す概略断面図である。
【図4】本発明における光触媒含有層側基板の他の例を示す概略断面図である。
【図5】本発明における光触媒含有層側基板の他の例を示す概略断面図である。
【図6】本発明のパターン形成体の製造方法におけるエネルギー照射の一例を示す工程図である。
【符号の説明】
1 … 基材
2 … 特性変化層
3 … 特性変化パターン
4 … 基体
5 … 光触媒含有層
6 … 光触媒含有層側基板
7 … フォトマスク
8 … エネルギー
9 … 光触媒含有層側遮光部

Claims (9)

  1. 基材と、前記基材の両面に形成され、かつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により、液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する濡れ性変化層とを有し、両面に形成された2つの前記濡れ性変化層は、それぞれ濡れ性が変化した濡れ性変化パターンを有し、
    前記基材は、透明であり、
    前記濡れ性変化層は、光触媒を含有しないものであることを特徴とするパターン形成体。
  2. 前記濡れ性変化層が、フルオロアルキルシランを含有する層であることを特徴とする請求項1に記載のパターン形成体。
  3. 透明な基材の両面に、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、液体との接触角が低下するように濡れ性が変化し、かつ光触媒を含有しない濡れ性変化層を形成する濡れ性変化層形成工程と、
    前記濡れ性変化層の一面と、光触媒を含有する光触媒含有層および基体を有する光触媒含有層側基板とを、前記濡れ性変化層および前記光触媒含有層が200μm以下となるように間隙をおいて配置した後、エネルギーを照射し、前記濡れ性変化層の濡れ性が変化した第1特性変化パターンを形成する第1特性変化パターン形成工程と、
    前記第1特性変化パターンが形成された面と反対側の面の濡れ性変化層と、光触媒を含有する光触媒含有層および基体を有する光触媒含有層側基板とを、前記濡れ性変化層および前記光触媒含有層が200μm以下となるように間隙をおいて配置した後、エネルギーを照射し、前記濡れ性変化層の濡れ性が変化した第2特性変化パターンを形成する第2特性変化パターン形成工程と、
    を有することを特徴とするパターン形成体の製造方法。
  4. 前記濡れ性変化層形成工程が、乾式法により行なわれることを特徴とする請求項3に記載のパターン形成体の製造方法。
  5. 前記乾式法が、CVD法であることを特徴とする請求項4に記載のパターン形成体の製造方法。
  6. 前記光触媒含有層側基板が、パターン状に形成された光触媒含有層側遮光部を有するものであることを特徴とする、請求項3から請求項5までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の製造方法。
  7. 前記光触媒含有層側基板が、前記基体上にパターン状に形成された光触媒含有層側遮光部と、前記光触媒含有層側遮光部および前記基体上に形成されたプライマー層とを有するものであり、前記プライマー層上に前記光触媒含有層が形成されたものであること特徴とする、請求項3から請求項6までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の製造方法。
  8. 請求項1または請求項2に記載のパターン形成体の、片面の濡れ性変化パターン上に画素部が形成され、かつ反対面の濡れ性変化パターン上に遮光部が形成されたことを特徴とするカラーフィルタ。
  9. 請求項1または請求項2に記載のパターン形成体の、片面の濡れ性変化パターン上に画素部が形成され、かつ反対面の濡れ性変化パターン上にレンズが形成されたことを特徴とするカラーフィルタ。
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