JP4374210B2 - パターン形成体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カラーフィルタをはじめとして各種の用途に使用可能な、表面に特性の異なるパターンを有するパターン形成体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、基材上に図案、画像、文字、回路等の種々のパターンを形成するパターン形成体の製造方法としては、各種のものが製造されている。
【0003】
例えば、印刷を例に挙げて説明すると、印刷方法の一種である平版印刷に使用する平版印刷版は、インクを受容する親油性部位と、印刷インクを受容しない部位とからなるパターンを有する平版を製造し、この平版を用いて親油性部位に印刷すべきインクの画像を形成し、形成した画像を紙等に転写して印刷している。こうした印刷では、このように印刷版原版に、文字、図形等のパターンを形成してパターン形成体である印刷版を製造し、印刷機に装着して使用している。代表的な平版印刷版であるオフセット印刷用の印刷版原版には、数多くのものが提案されている。
【0004】
オフセット印刷用の印刷版は、印刷版原版にパターンを描いたマスクを介して露光して現像する方法、あるいは電子写真方式によって直接に露光して印刷版原版上に直接に製版する方法等によって作製することができる。電子写真式のオフセット印刷版原版は、導電性基材上に酸化亜鉛等の光導電性粒子および結着樹脂を主成分とした光導電層を設け、これを感光体として電子写真方式によって露光し、感光体表面に親油性の高い画像を形成させ、続いて不感脂化液で処理し非画像部分を親水化することによってオフセット原版、すなわちパターン形成体を得る方法によって作製されている。親水性部分は水等によって浸漬して疎油性とされ、親油性の画像部分に印刷インクが受容されて紙等に転写される。しかしながら、パターン形成に当たっては不感脂化液での処理等の種々の露光後の処理が必要となる。
【0005】
また、レーザーの照射によって、インクに対して受容性の高い部位と撥インク性の部位からなるパターンを形成することが可能なヒートモード記録材料を用いた平版印刷原版を作製する方法も提案されている。ヒートモード記録材料は、現像等の工程が不要で、単にレーザー光によって画像を形成するのみで印刷版を製造することができるという特徴を有しているが、レーザーの強度の調整、レーザーにより変質した固体状物質など残留物等の処理の問題、耐刷性などに課題があった。
【0006】
また、高精細なパターンを形成する方法として、基材上に塗布したフォトレジスト層にパターン露光を行い、露光後、フォトレジストを現像し、さらにエッチングを行ったり、フォトレジストに機能性を有する物質を用いて、フォトレジストの露光によって目的とするパターンを直接形成する等のフォトリソグラフィーによるパターン形成体の製造方法が知られている。
【0007】
フォトリソグラフィーによる高精細パターンの形成は、液晶表示装置等に用いられるカラーフィルタの着色パターンの形成、マイクロレンズの形成、精細な電気回路基板の製造、パターンの露光に使用するクロムマスクの製造等に用いられているが、これらの方法によっては、フォトレジストを用いると共に、露光後に液体現像液によって現像を行ったり、エッチングを行う必要があるので、廃液を処理する必要が生じる等の問題点があり、またフォトレジストとして機能性の物質を用いた場合には、現像の際に使用されるアルカリ液等によって劣化する等の問題点もあった。
【0008】
カラーフィルタ等の高精細なパターンを印刷等によって形成することも行われているが、印刷で形成されるパターンには、位置精度等の問題があり、高精度なパターンの形成は困難であった。
【0009】
一方、高精細なパターンを形成する方法として、光触媒の作用により特性が変化する特性変化層等をコーティング法により基材上に形成し、光触媒を含有する光触媒含有層を有する基板を用いて、エネルギー照射を行うことによりパターンを形成するパターン形成体の製造方法等が本発明者等において検討されてきた(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
上記の方法によれば、容易に高精細なパターンが形成であるが、上記特性変化層の種類によっては、連続してパターン形成体を製造した際に、光触媒含有層の酸化分解力が変化し、形成されたパターンの幅等を一定に制御することが困難である等の問題があった。
【0011】
【特許文献1】
特開2000−249821号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
以上のことから、高精細にパターンを形成することが可能であり、かつ連続してパターン形成体の製造を行う際にも、光触媒含有層の酸化分解力が一定であり、形成されたパターンの形状を制御することが可能なパターン形成体の製造方法の提供が望まれている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化し、かつハロゲンを含有しない特性変化層を有するパターン形成体用基板と、光触媒を含有する光触媒含有層および基体を有する光触媒含有層側基板とを、上記特性変化層および上記光触媒含有層が200μm以下となるように間隙をおいて配置した後、所定の方向からエネルギーを照射することにより、上記特性変化層表面に特性の変化した特性変化パターンを形成するパターン形成工程を有することを特徴とするパターン形成体の製造方法を提供する。
【0014】
本発明によれば、上記パターン形成体用基板が、上記特性変化層を有することから、光触媒含有層側基板を用いてエネルギー照射をすることによって、上記特性変化層の分子が分解等され、表面の特性が変化した上記特性変化パターンを形成することができる。ここで、本発明者等の研究により、上記特性変化層中にハロゲンが含有されている場合には、上記光触媒含有層側基板を連続して上記パターン形成工程に使用することにより、光触媒含有層の酸化分解力が変化するとの知見が得られた。本発明によれば、上記特性変化層中にハロゲンが含有されないことから、光触媒含有層側基板を連続して使用した場合であっても、光触媒含有層の酸化分解力を一定のものとすることができ、安定して高精細なパターン形成体を効率よく連続して製造することが可能となるのである。
【0015】
ここで、本発明においては、上記特性変化層が、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、液体との接触角が低下する濡れ性変化層とすることができる。これにより、上記特性変化パターン上に、例えばインクジェット法等によって、容易に表面の濡れ性を利用して機能性部を形成することが可能なパターン形成体とすることができる。
【0016】
上記発明においては、上記濡れ性変化層が、YnSiX(4−n)(ここで、Yはアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を含み、Xはアルコキシル基を示す。nは0〜3までの整数である。)で示される珪素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンとすることができる。上記のような層を用いることにより、上記濡れ性による特性を発現することができるからである。
【0017】
この際、上記オルガノポリシロキサンを構成するYの炭素数が5〜16の範囲内であることが好ましい。上記Yによりエネルギー照射前の上記濡れ性変化層を撥液性とすることができ、またエネルギー照射に伴う光触媒の作用により効率よく上記Yが分解等されて、親液性とすることが可能となるからである。
【0018】
また、本発明においては、上記濡れ性変化層を単分子膜とすることができる。これにより、上記濡れ性変化層を緻密で均一な膜とすることができ、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性を、均一かつ高精細に変化させることが可能となるからである。
【0019】
この際、上記単分子膜が、有機鎖を有するシラン化合物からなることが好ましい。このようなシラン化合物を用いることにより、容易に上記単分子膜を形成することができるからである。
【0020】
また、上記有機鎖を構成する炭素の数が、5〜16の範囲内であることが好ましい。上記有機鎖によりエネルギー照射前の単分子膜を撥液性とすることができ、またエネルギー照射に伴う光触媒の作用により効率よく上記有機鎖が分解等されて、親液性とすることが可能となるからである。
【0021】
また、本発明においては、上記特性変化層が、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解除去される分解除去層であってもよい。これにより、上記特性変化パターン上に、例えばインクジェット法等によって、容易に表面の凹凸を利用して機能性部を形成することが可能なパターン形成体とすることができるからである。
【0022】
この際、上記分解除去層の表面張力40mN/mの液体との接触角が10°以上であり、上記分解除去層が分解除去されて露出した基材の表面張力40mN/mの液体との接触角が、9°以下であることが好ましい。これにより、分解除去層が分解除去されて露出した基材を親液性領域、分解除去層上を撥液性領域とすることが可能となることから、表面の凹凸だけでなく、濡れ性の差も利用して機能性部を形成することが可能となり、さらに高精細な機能性部を形成することが可能なパターン形成体とすることができるからである。
【0023】
また、本発明においては、上記分解除去層が単分子膜であってもよい。これにより、上記分解除去層を緻密で均一な層とすることができ、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、分解除去層を効率よく、かつ均一に分解除去することが可能となるからである。
【0024】
また、本発明は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層を有するパターン形成体用基板と、光触媒を含有する光触媒含有層および基体を有する光触媒含有層側基板とを、上記特性変化層および上記光触媒含有層が200μm以下となるように間隙をおいて配置した後、所定の方向からエネルギーを照射することにより、上記特性変化層表面に特性の変化した特性変化パターンを形成するパターン形成工程を、異なるパターン形成体用基板に10回以上連続して行うパターン形成体の製造方法であって、10回目に行われる上記パターン形成工程により形成される上記特性変化パターンの幅が、1回目に行われる上記パターン形成工程により形成される上記特性変化パターンの幅に対して、±20μmの範囲内で変化することを特徴とするパターン形成体の製造方法を提供する。
【0025】
本発明によれば、10回目に行われたパターン形成工程により形成された特性変化パターンの幅が、1回目に行われたパターン形成工程により形成された特性変化パターンの幅と比較して、上記範囲内となることから、上記パターン形成工程を10回以上連続して行った場合であっても、特性変化パターンの形状を一定のものとすることができ、安定にパターン形成体を効率よく製造することができるのである。
【0026】
またさらに、本発明は、上述したいずれかの請求項に記載のパターン形成体の製造方法により製造されたパターン形成体の特性変化パターン上に、機能性部が形成されたことを特徴とする機能性素子を提供する。
【0027】
本発明によれば、上述したパターン形成体の製造方法により製造されたパターン形成体の特性変化パターン上に機能性部が形成されたものであることから、上記特性変化層の特性を利用して均一、かつ高精細に容易に機能性部が形成されたものとすることができるのである。
【0028】
【発明の実施の形態】
本発明は、カラーフィルタをはじめとして各種の用途に使用可能な、表面に特性の異なるパターンを有するパターン形成体の製造方法、およびその製造方法により製造されたパターン形成体を用いた機能性素子に関するものである。以下、それぞれについて詳しく説明する。
【0029】
A.パターン形成体の製造方法
まず、本発明のパターン形成体の製造方法について説明する。本発明のパターン形成体の製造方法には、2つの実施態様がある。本発明においては、どちらの実施態様においても、例えば図1に示すように、基材1と、その基材1上に形成された特性変化層2とを有するパターン形成体用基板3と、基体4と、その基体4上に形成された光触媒含有層5とを有する光触媒含有層側基板6とを準備し、上記特性変化層2と、上記光触媒含有層5とを所定の間隙となるように配置して、例えばフォトマスク7を用いてエネルギー8を照射し(図1(a))、特性変化層2の特性が変化した特性変化パターン9を形成する(図1(b))パターン形成工程を有するものである。
【0030】
本発明によれば、いずれの実施態様においても、上記光触媒含有層を連続的に繰り返して使用した場合であっても、光触媒含有層の酸化分解力の変化等が起きることなく、所定のパターンを高精細に形成することが可能である。以下、本発明のパターン形成体の製造方法について、それぞれ実施態様ごとに説明する。
【0031】
1.第1実施態様
まず、本発明のパターン形成体の製造方法における第1の実施態様について説明する。本発明のパターン形成体の製造方法における第1の実施態様は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化し、かつハロゲンを含有しない特性変化層を有するパターン形成体用基板と、光触媒を含有する光触媒含有層および基体を有する光触媒含有層側基板とを、上記特性変化層および上記光触媒含有層が200μm以下となるように間隙をおいて配置した後、所定の方向からエネルギーを照射することにより、上記特性変化層表面に特性の変化した特性変化パターンを形成するパターン形成工程を有する方法である。
【0032】
本実施態様によれば、パターン形成体用基板が上記特性変化層を有することから、上記光触媒含有層側基板を用いてエネルギーを照射することにより、上記特性変化層上の分子が切断や分解等され、容易に特性変化層の特性を変化させることができるのである。またこの際、上記特性変化層中にハロゲンが含有される場合、上記パターン形成工程を連続して行うことによって、光触媒含有層の酸化分解力が向上し、一定の特性変化パターンを形成することが困難となる場合がある。これは、明確ではないが、以下の作用が生じることによるものであると考えられる。
【0033】
上記光触媒含有層を用いて特性変化層にエネルギー照射を行った場合、上記特性変化層上では、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により上記特性変化層を構成している分子の切断や分解等が行われ、分解等された分子はラジカルあるいはイオン等ガスとなり雰囲気中に放出される。この際、上記特性変化層中にハロゲン、特にフッ素が含有される場合には、分解等されたハロゲンによりハロゲンガス雰囲気が形成され、さらには上記ハロゲンガスの一部が光触媒含有層に吸着する。そのため、続けて上記光触媒含有側基板を用いてエネルギー照射を行った場合には、このハロゲンが放出されてラジカル等となり、特性変化層の特性変化に寄与する。このとき、光触媒含有層に吸着していたハロゲンと、新たな特性変化層から生成したハロゲンとを含むハロゲンガス雰囲気が形成され、それらが再び光触媒含有層に吸着する。したがって、連続してパターン形成工程を行った場合、特性変化層の特性変化に寄与するハロゲンラジカルの量が次第に増加し、光触媒含有層の酸化分解力を向上させることとなる。そのため、連続して上記パターン形成工程を、同じ時間エネルギー照射を行った場合、あるいは同じエネルギー量の照射を行った場合、上記特性変化層表面の分子の切断や分解等に寄与するラジカルの量が異なるものとなることから、パターンの幅が太くなる等、連続して一定の特性変化パターンを形成することが困難となると考えられる。
【0034】
ここで、本実施態様においては、上記特性変化層中にハロゲンが含有されないものとすることから、上記光触媒含有層を用いてエネルギー照射を行った場合に、雰囲気中に放出された原子等が上記光触媒含有層に吸着されることがない。これにより、上記光触媒含有層側基板を連続して用いた場合であっても、上記光触媒含有層の酸化分解力が変化しないものとすることができる。したがって、連続して多量にパターン形成体を製造することが可能となり、製造効率やコストの面からも好ましいものとすることができる。またさらに、光触媒含有層に吸着される物質がないことから、エネルギー照射の際、上記光触媒含有層と上記特性変化層との間隙を狭いものとすることができる。これにより、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により生じた活性酸素種が拡散等することなく、特性変化層に到達させることができ、高精細な特性変化パターンが形成されたパターン形成体を製造することができるのである。
【0035】
以下、本実施態様のパターン形成体の製造方法における各構成について説明する。
【0036】
a.パターン形成体用基板
まず、本実施態様に用いられるパターン形成体用基板について説明する。本実施態様に用いられるパターン形成体用基板は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化し、かつハロゲンを含有しない特性変化層を有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば上記特性変化層は基材上に形成されているものであってもよく、また必要に応じて遮光部等が形成されているものであってもよい。以下、本実施態様のパターン形成体用基板に用いられる各部材について説明する。
【0037】
(1)特性変化層
まず、本実施態様に用いられる特性変化層について説明する。本実施態様に用いられる特性変化層は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化し、かつハロゲンを含有しない層である。
【0038】
ここで、特性変化層がハロゲンを含有しないとは、特性変化層を構成する分子中の主鎖や側鎖、または添加剤等にハロゲンを含有しないものであり、本実施態様においては特に、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により分子が切断や分解等される分子鎖に、ハロゲンが含有されないものであることが好ましい。また、上記ハロゲンの中でも、特にフッ素が含有される場合に、エネルギー照射に対する光触媒含有層の酸化分解力が変化するとの知見が得られており、本実施態様においては特にフッ素が含有されないものであることが好ましい。
【0039】
また、本実施態様に用いられる特性変化層は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化するものであれば、その特性変化の種類等は、特に限定されるものではなく、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、例えば液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する層や、分解除去される層、生体物質との付着性が変化する層等、特に限定されるものではない。
【0040】
本実施態様においては中でも特性変化層が光触媒の作用により濡れ性が低下するように濡れ性が変化する濡れ性変化層である場合、および特性変化層が光触媒の作用により分解除去される分解除去層である場合の二つの場合が、特にパターン形成体上に機能性部を形成することが容易となる点から好ましい。以下、これらの濡れ性変化層および分解除去層について説明する。
【0041】
(濡れ性変化層)
本実施態様に用いられる濡れ性変化層は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する層であり、上述したようにハロゲンを含有しないものであれば、特に限定されるものではない。
【0042】
このように、エネルギー照射により液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する濡れ性変化層とすることにより、濡れ性変化層表面に、エネルギー照射された領域を親液性領域、エネルギー未照射の領域を撥液性領域とすることができ、この濡れ性の差を利用して、パターン形成体上に、容易に機能性部を形成することが可能となるのである。
【0043】
ここで、親液性領域とは、液体との接触角が小さい領域であり、例えば機能性部を形成する機能性部形成用塗布液等に対する濡れ性の良好な領域をいうこととする。また、撥液性領域とは、液体との接触角が大きい領域であり、上記機能性部形成用塗布液に対する濡れ性が悪い領域をいうこととする。
【0044】
上記濡れ性変化層は、エネルギー照射していない部分、すなわち撥液性領域においては、40mN/mの液体との接触角が、10°以上、中でも40°以上であることが好ましい。これは、エネルギー照射していない領域は、本実施態様においては撥液性が要求される領域であることから、液体との接触角が小さい場合は、撥液性が十分でなく、例えば上記機能性部形成用塗布液を塗布した際に、撥液性領域上にも機能性部形成用塗布液が残存する可能性があり、好ましくないからである。
【0045】
また、上記濡れ性変化層は、エネルギー照射された部分、すなわち親液性領域においては、40mN/mの液体との接触角が、9°以下、中でも5°以下であることが好ましい。エネルギー照射された部分、すなわち親液性領域における液体との接触角が高い場合は、例えば、上記機能性部形成用塗布液等を塗布した際に、親液性領域においても機能性部形成用塗布液をはじいてしまう可能性があり、親液性領域上に機能性部パターニングすることが難しくなる可能性があるからである。
【0046】
なお、ここでいう液体との接触角は、種々の表面張力を有する液体との接触角を接触角測定器(協和界面科学(株)製CA−Z型)を用いて測定(マイクロシリンジから液滴を滴下して30秒後)し、その結果から、もしくはその結果をグラフにして得たものである。また、この測定に際して、種々の表面張力を有する液体としては、純正化学株式会社製のぬれ指数標準液を用いた。
【0047】
したがって、このような濡れ性変化層を用いた場合は、エネルギーをパターン照射することにより、撥液性領域内に親液性領域のパターンを容易に形成することができるので、この親液性領域のみに例えば機能性部形成用塗布液を付着させ、機能性部を形成することが容易に可能な、パターン形成体とすることができるのである。
【0048】
本実施態様に用いられる濡れ性変化層は、上述したような特性を有し、かつ光触媒の作用により劣化しにくい主鎖を有し、濡れ性変化層を構成する分子中、特にエネルギー照射に伴う光触媒の作用により切断や分解等されて濡れ性の変化に寄与する側鎖に、ハロゲンを含有しないものであれば、特に限定されるものではないが、本実施態様においては、中でも▲1▼上記濡れ性変化層中にオルガノポリシロキサンが含有される場合、および▲2▼上記濡れ性変化層が単分子膜である場合が好ましい。以下、これらの2つの場合についてそれぞれ説明する。
【0049】
▲1▼オルガノポリシロキサンが含有される場合
まず、上記濡れ性変化層中にオルガノポリシロキサンが含有される場合について説明する。本実施態様においては、上記濡れ性変化層中にオルガノポリシロキサンが含有されることにより、上述したように、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が低下するものとすることができる。
【0050】
本実施態様に含有されるオルガノポリシロキサンとしては、例えば、(a)ゾルゲル反応等により、ハロゲンを含有しないアルコキシシラン等を加水分解、重縮合して大きな強度を発揮するオルガノポリシロキサン、(b)撥水牲に優れた、ハロゲンを含有しない反応性シリコーンを架橋したオルガノポリシロキサン等のオルガノポリシロキサンを挙げることができる。
【0051】
上記の(a)の場合、一般式:
YnSiX( 4−n )
(ここで、Yはアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を含み、Xはアルコキシル基、アセチル基、またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)
で示される珪素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。上記珪素化合物は、上記Xが重縮合等することによって、オルガノポリシロキサンが構成され、Yがオルガノポリシロキサンの側鎖となる。本実施態様においては、この側鎖のYの撥液性によりエネルギー照射前の濡れ性変化層表面を撥液性とすることができる。またさらに、エネルギー照射に伴う光触媒の作用によってそのYが分解等されることにより、エネルギー照射された領域を親液性とすることが可能となるのである。ここで、本実施態様においては、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解等されるYにハロゲン(特にフッ素)を有しないものとすることにより、雰囲気中に放出された分子や原子が後述する光触媒含有層に影響を与えることがなく、安定にパターン形成体を連続して製造することが可能となるのである。なお、ここでXで示されるアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基であることが好ましい。また、上記Yで示される基の炭素数は5〜16の範囲内、中でも6〜12の範囲内であることが好ましい。これにより、上記濡れ性変化層を形成した際に、オルガノポリシロキサンを構成するYにより濡れ性変化層表面を撥液性とすることができ、またエネルギー照射に伴う光触媒の作用により、そのYが分解等されることによって、エネルギー照射された領域を親液性とすることが可能となるからである。また、Yで示される基の炭素数が、上記範囲内より多い場合には、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、Yが分解等される効率が低下するからである。また、本実施態様においては、Yで示される基は、上記の中でもアルキル基であることが特に好ましい。
【0052】
上記の(b)の反応性シリコーンとしては、下記一般式で表される骨格をもつ化合物を挙げることができる。
【0053】
【化1】
【0054】
ただし、nは2以上の整数であり、R1,R2はそれぞれ炭素数1〜10の置換もしくはハロゲンで水素が置換されていない非置換のアルキル、アルケニル、アリールあるいはシアノアルキル基であり、モル比で全体の40%以下がビニル、またはフェニルである。また、R1、R2がメチル基のものが表面エネルギーが最も小さくなるので好ましく、モル比でメチル基が60%以上であることが好ましい。また、鎖末端もしくは側鎖には、分子鎖中に少なくとも1個以上の水酸基等の反応性基を有する。本実施態様においては、上記R1およびR2がエネルギー照射に伴う光触媒の作用により、切断や分解等されて、濡れ性変化層表面の濡れ性を変化させることができる。したがって、このようなR1およびR2中にハロゲン(特にフッ素)を有しないものとすることにより、安定にパターン形成体を連続して製造することができるのである。
【0055】
また、上記のオルガノポリシロキサンとともに、ジメチルポリシロキサンのような架橋反応をしない安定なオルガノシリコン化合物を混合してもよい。この際、上記オルガノシリコン化合物についても、ハロゲン(特にフッ素)を分子中に有しないものであることが好ましい。
【0056】
本実施態様における濡れ性変化層には、さらにハロゲンを含有しない界面活性剤を含有させることができる。界面活性剤としては、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を用いることができる。
【0057】
また、濡れ性変化層には上記の界面活性剤の他にも、ハロゲンを含有しないポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ジアリルフタレート、エチレンプロピレンジエンモノマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、スチレンブタジエンゴム、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリベンズイミダゾール、ポリアクリルニトリル、エピクロルヒドリン、ポリサルファイド、ポリイソプレン等のオリゴマー、ポリマー等を含有させることができる。
【0058】
このような濡れ性変化層は、上述した成分を必要に応じて他の添加剤とともに溶剤中に分散して塗布液を調製し、この塗布液を後述する基材上に塗布することにより形成することができる。使用する溶剤としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系の有機溶剤が好ましい。塗布はスピンコート、スプレーコート、ディップコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法により行うことができる。また、紫外線硬化型の成分を含有している場合、紫外線を照射して硬化処理を行うことにより濡れ性変化層を形成することができる。
【0059】
本実施態様において、上述した濡れ性変化層の厚みは、光触媒による濡れ性の変化速度等の関係より、0.001μmから1μmであることが好ましく、特に好ましくは0.01〜0.1μmの範囲内である。
【0060】
▲2▼単分子膜である場合
次に、上記濡れ性変化層が単分子膜である場合について説明する。上記濡れ性変化層が単分子膜であることにより、上記濡れ性変化層を均一かつ緻密な層とすることができ、例えば後述する特性変化パターン上に機能性部を形成する場合、機能性部を均一かつ高精細に形成することが可能となるのである。このような単分子膜としては、例えば自己組織化単分子膜が挙げられる。
【0061】
ここで、自己組織化単分子膜とは、固体/液体もしくは固体/気体界面で、有機分子同士が自発的に集合し、会合体を形成しながら自発的に単分子膜を形作っていく有機薄膜である。例として、ある特定の材料でできた基板を、その基板材料と化学的親和性の高い有機分子の溶液または蒸気にさらすと、有機分子は基板表面で化学反応し吸着する。その有機分子が、化学的親和性の高い官能基と、基板との化学反応を全く起こさない有機鎖との2つのパートからなり、親和性の高い官能基がその末端にある場合、分子は反応性末端が基板側を向き、有機鎖が外側を向いて吸着する。有機鎖同士が集合すると、全体として安定になるため、化学吸着の過程で有機分子同士は自発的に集合する。分子の吸着には、基板と末端官能基との間で化学反応が起こることが必要であることから、いったん基板表面が有機分子でおおわれ単分子膜ができあがると、それ以降は分子の吸着は起こらない。その結果、分子が密に集合し、配向性のそろった有機単分子膜ができるものである。
【0062】
本実施態様においては、上記濡れ性変化層が上記自己組織化単分子膜である場合、エネルギー照射に伴う光触媒の作用によって、濡れ性変化層表面に存在する撥液性を有するハロゲンを有しない有機鎖が、エネルギー照射に伴う光触媒の作用によって除去されることにより、容易に表面を親液性とすることが可能であり、効率的に特性変化パターンの形成を行うことが可能となるのである。本実施態様においては、撥液性を有する上記有機鎖を、ハロゲンを有しないものとすることにより、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、上記有機鎖が切断または分解等されて雰囲気中に放出された分子が、後述する光触媒含有層に影響を与えることがなく、安定にパターン形成体を連続して製造することが可能となるのである。
【0063】
このような濡れ性変化層として用いられる単分子膜を構成する材料としては、上述した特性を有し、ハロゲンを含有しないものであれば、特に限定されるものではないが、本実施態様においては、ハロゲンを有しない有機鎖を有するシラン化合物であることが好ましい。ここで、上記ハロゲンを有しない有機鎖を構成する炭素の数は、5〜16の範囲内、中でも6〜12の範囲内であることが好ましい。これにより、エネルギー照射前の濡れ性変化層を撥液性とすることができ、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により上記有機鎖が分解等され、親液性とすることが可能となるのである。また、本発明においては、上記有機鎖としては、アルキル基、フェニル基、アミノ基、フルオロ基、エポキシ基、ビニル基、スチリル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、ウレイド基、クロロプロピル基、メルカプト基、スクシンイミド基、スルフィド基、イソシアネート基、カルボキシル基、ビシクロ基、イミダゾール基等が挙げられ、上記の中でもアルキル基であることが特に好ましい。
【0064】
上記有機鎖を有するシラン化合物として、具体的には、上述したオルガノポリシロキサンの項で説明した材料等を用いることができる。
【0065】
このような単分子膜からなる濡れ性変化層は、熱CVD法やディップコート法、等により形成することができるが、本実施態様においては、熱CVD法であることが製造効率等の面から好ましい。熱CVD法の好ましい成膜条件としては、後述する基材等の耐熱温度以下であれば、原料となる物質の気化温度以上であり、かつ分解温度以下であれば特に限定されるものではないが、通常50℃〜200℃の範囲内であることが好ましい。
【0066】
また、本実施態様においては、公知である減圧熱CVD法を用いてもよい。この減圧熱CVD処理時における真空度として、十分な材料の蒸気圧が得られるように設定することができる。この蒸気圧は材料の種類により適宜選択されるものであるが、通常0.01Torr〜10Torr、中でも5Torr以下とすることができる。またこの際、基材表面との反応を促進するために、基材を加熱しながら減圧CVD法を行い、濡れ性変化層を形成することが好ましい。この場合の加熱温度は、基材および濡れ性変化層の材料によって適宜選択されるものではあるが、通常40℃〜100℃の範囲内、中でも80℃以下とされる。
【0067】
本実施態様において形成される濡れ性変化層の膜厚としては、その単分子膜の種類にもより決定されるものであるが、通常1nm〜50nmの範囲とされる。
【0068】
(分解除去層)
次に、本発明に用いられる特性変化層が分解除去層である場合について説明する。本発明に用いられる分解除去層が単分子膜である場合には、エネルギー照射された際に光触媒含有層中の光触媒の作用により、エネルギー照射された部分の分解除去層が分解除去される層である。このように分解除去層は、エネルギー照射された部分が光触媒の作用により分解除去されることから、現像工程や洗浄工程を行うことなく分解除去層のある部分と無い部分とからなるパターン、すなわち凹凸を有するパターンを形成することができる。
【0069】
なお、この分解除去層は、エネルギー照射による光触媒の作用により酸化分解され、気化等されることから、現像・洗浄工程等の特別な後処理なしに除去されるものであるが、分解除去層の材質によっては、洗浄工程等を行ってもよい。
【0070】
また、本発明に用いられる分解除去層は、凹凸を形成するのみならず、この分解除去層が、分解除去層が分解除去されて露出する基材と比較して、液体との接触角が高いことが好ましい。これにより、分解除去層が分解除去され、基材が露出した領域を親液性領域、上記分解除去層が残存する領域を撥液性領域とすることが可能となり、表面の凹凸だけでなく、濡れ性の差も利用して、機能性部を形成することが可能となるからである。
【0071】
ここで、親液性領域とは、液体との接触角が小さい領域であり、例えば機能性部を形成する機能性部形成用塗布液に対する濡れ性の良好な領域をいうこととする。また、撥液性領域とは、液体との接触角が大きい領域であり、機能性部形成用塗布液に対する濡れ性が悪い領域をいうこととする。
【0072】
また、上記分解除去層は、40mN/mの液体との接触角が、10°以上、中でも40°以上であることが好ましい。これは、本発明は、残存する分解除去層が、撥液性が要求される部分であることから、液体との接触角が小さい場合は、撥液性が十分でなく、機能性部を形成しない撥液性領域にまで機能性部形成用塗布液が残存する可能性が生じるため好ましくないからである。
【0073】
また、本発明において、後述する基材は、40mN/mの液体との接触角が、エネルギーが照射されていない部分において9°以下、中でも5°以下であることが好ましい。本発明においては基材が、親液性が要求される部分であることから、機能性部形成用塗布液の塗布に際して、親液性領域においても機能性部形成用塗布液をはじいてしまう可能性があり、親液性領域上に機能性部をパターニングすることが難しくなる可能性があるからである。ここで、液体との接触角は、上述した方法により測定した値である。
【0074】
上記のような分解除去層に用いることができる膜としては、具体的には、ハロゲン(特にフッ素)を含有しない炭化水素系の撥液性を有する樹脂等による膜を挙げることができる。このような分解除去層に用いられる膜を、ハロゲンを有しないものとすることにより、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、上記分解除去層を構成する分子が切断または分解等されることによって、雰囲気中に放出される分子が、後述する光触媒含有層に影響を与えることがなく、安定にパターン形成体を連続して製造することが可能となるのである。このような炭化水素系の樹脂は、撥液性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、これらの樹脂を溶媒に溶解させ、例としてスピンコート法等の一般的な成膜方法により形成することが可能である。
【0075】
また、本発明においては、機能性薄膜、すなわち、自己組織化単分子膜、ラングミュア−ブロケット膜、および交互吸着膜等を用いることにより、欠陥のない膜を形成することが可能であることから、このような成膜方法を用いることがより好ましいといえる。
【0076】
ここで、本発明に用いられる自己組織化単分子膜、ラングミュア−ブロケット膜、および交互吸着膜について具体的に説明する。
【0077】
▲1▼自己組織化単分子膜
本発明に用いられるハロゲン(特にフッ素)を含有しない自己組織化膜形成能のある材料としては、例えば、脂肪酸などの界面活性剤分子、アルキルアルコキシド類などの有機ケイ素分子、アルカンチオール類などの有機イオウ分子、アルキルフォスフェート類などの有機リン酸分子などが挙げられる。分子構造の一般的な共通性は、比較的長いアルキル鎖を有し、片方の分子末端に基板表面と相互作用する官能基が存在することである。アルキル鎖の部分は分子同士が2次元的にパッキングする際の分子間力の源である。もっとも、ここに示した例は最も単純な構造であり、分子のもう一方の末端にアミノ基やカルボキシル基などの官能基を有するもの、アルキレン鎖の部分がオキシエチレン鎖のもの、これらが複合したタイプの鎖のものなど様々な分子から成る自己組織化単分子膜が報告されている。また、複数の分子種から成る複合タイプの自己組織化単分子膜もある。また、最近では、デンドリマーに代表されるような粒子状で複数の官能基(官能基が一つの場合もある)を有する高分子や直鎖状(分岐構造のある場合もある)の高分子が一層基板表面に形成されたもの(後者はポリマーブラシと総称される)も自己組織化単分子膜と考えられる場合もあるようである。本発明は、これらも自己組織化単分子膜に含める。
【0078】
▲2▼ラングミュア−ブロジェット膜
本発明に用いられるラングミュア−ブロジェット膜(Langmuir-Blodgett Film)は、基板上に形成されてしまえば形態上は上述した自己組織化単分子膜との大きな相違はない。ラングミュア−ブロジェット膜の特徴はその形成方法とそれに起因する高度な2次元分子パッキング性(高配向性、高秩序性)にあると言える。すなわち、一般にラングミュア−ブロジェット膜形成分子は気液界面上に先ず展開され、その展開膜がトラフによって凝縮されて高度にパッキングした凝縮膜に変化する。実際は、これを適当な基板に移しとって用いる。ここに概略を示した手法により単分子膜から任意の分子層の多層膜まで形成することが可能である。また、低分子のみならず、高分子、コロイド粒子なども膜材料とすることができる。様々な材料を適用した最近の事例に関しては宮下徳治らの総説“ソフト系ナノデバイス創製のナノテクノロジーへの展望” 高分子 50巻 9月号 644-647
(2001)に詳しく述べられている。
【0079】
▲3▼交互吸着膜
交互吸着膜(Layer-by-Layer Self-Assembled Film)は、一般的には、最低2個の正または負の電荷を有する官能基を有する材料を逐次的に基板上に吸着・結合させて積層することにより形成される膜である。多数の官能基を有する材料の方が膜の強度や耐久性が増すなど利点が多いので、最近ではイオン性高分子(高分子電解質)を材料として用いることが多い。また、タンパク質や金属や酸化物などの表面電荷を有する粒子、いわゆる“コロイド粒子”も膜形成物質として多用される。さらに最近では、水素結合、配位結合、疎水性相互作用などのイオン結合よりも弱い相互作用を積極的に利用した膜も報告されている。比較的最近の交互吸着膜の事例については、静電的相互作用を駆動力にした材料系に少々偏っているがPaula T. Hammondによる総説“Recent Explorations in Electrostatic Multilayer Thin Film Assembly”Current Opinion in Colloid & Interface Science, 4, 430-442 (2000)に詳しい。交互吸着膜は、最も単純なプロセスを例として説明すれば、正(負)電荷を有する材料の吸着−洗浄−負(正)電荷を有する材料の吸着−洗浄のサイクルを所定の回数繰り返すことにより形成される膜である。ラングミュア−ブロジェット膜のように展開−凝縮−移し取りの操作は全く必要ない。また、これら製法の違いより明らかなように、交互吸着膜はラングミュア−ブロジェット膜のような2次元的な高配向性・高秩序性は一般に有さない。しかし、交互吸着膜及びその作製法は、欠陥のない緻密な膜を容易に形成できること、微細な凹凸面やチューブ内面や球面などにも均一に成膜できることなど、従来の成膜法にない利点を数多く有している。
【0080】
また、分解除去層の膜厚としては、エネルギーに伴う光触媒の作用により分解除去される程度の膜厚であれば特に限定されるものではない。具体的な膜厚としては、照射されるエネルギーの種類や分解除去層の材料等により大きく異なるものではあるが、一般的には、0.001μm〜1μmの範囲内、特に0.01μm〜0.1μmの範囲内とすることが好ましい。
【0081】
(2)基材
次に、本実施態様のパターン形成体に用いられる基材について説明する。本実施態様においては、上述した特性変化層が自己支持性を有しない場合や、強度が必要な場合、上記分解除去層である場合等に基材が用いられ、この基材上に特性変化層が形成されるものである。ここで、自己支持性とは、他の支持材無しで有形な状態で存在し得ることをいうこととする。
【0082】
本実施態様に用いられる基材としては、最終的に得られるパターン形成体の用途等に応じて適宜選択されるものであり、例えば紙基材の樹脂積層板、ガラス布・ガラス不織布基材の樹脂積層板、セラミック、金属等を用いることができ、板状のものであることが好ましい。
【0083】
また、本発明においては、基材上に、上記特性変化層の形成が困難である場合や、基材と上記特性変化層との密着性が悪い場合には、基材上に、密着性向上させる密着性向上層を設けてもよい。このような密着性向上層としては、例えば、ポリイミド等が挙げられる。
【0084】
なお、本発明に用いられる基材は、必要とされる部材、例えばカラーフィルタにおけるブラックマトリックス等が形成されているものであってもよい。
【0085】
(3)その他
また、本実施態様においては、上述した基材上または特性変化層上に、パターン形成体の用途や種類に応じて、例えばカラーフィルタにおけるブラックマトリックスのような遮光部等、他の部材が形成されているものであってもよい。
【0086】
本実施態様においては、例えば基材上に遮光部が形成され、かつ基材が透明である場合には、後述するエネルギーの照射をパターン形成体用基板の基材側から行うことも可能となり、フォトマスク等を用いることなく、遮光部が形成されていない領域上の特性変化層の特性のみを変化させることが可能となる。
【0087】
b.光触媒含有層側基板
次に、本実施態様に用いられる光触媒含有層側基板について説明する。本実施態様に用いられる光触媒含有層側基板は、光触媒を含有する光触媒含有層および基体を有するものであり、通常、基体と、その基体上に光触媒含有層が形成されているものである。この光触媒含有層側基板は、例えばパターン状に形成された光触媒含有層側遮光部やプライマー層等を有していてもよい。以下、本実施態様に用いられる光触媒含有層側基板の各構成について説明する。
【0088】
(1)光触媒含有層
まず、光触媒含有層側基板に用いられる光触媒含有層について説明する。本実施態様に用いられる光触媒含有層は、光触媒含有層中の光触媒が、上述した特性変化層の特性を変化させるような構成であれば、特に限定されるものではなく、光触媒とバインダとから構成されているものであってもよく、光触媒単体で製膜されたものであってもよい。また、その表面の特性は特に親液性であっても撥液性であってもよい。
【0089】
本実施態様において用いられる光触媒含有層は、例えば図1に示すように、基体4上に光触媒含有層5が全面に形成されたものであってもよいが、例えば図2に示すように、基体4上に光触媒含有層5がパターン上に形成されたものであってもよい。
【0090】
このように光触媒含有層をパターン状に形成することにより、後述するエネルギー照射において説明するように、光触媒含有層を特性変化層と所定の間隔をおいて配置させてエネルギーを照射する際に、フォトマスク等を用いるパターン照射をする必要がなく、全面に照射することにより、特性変化層上の特性が変化したパターンを形成することができる。
【0091】
この光触媒処理層のパターニング方法は、特に限定されるものではないが、例えばフォトリソグラフィー法等により行うことが可能である。
【0092】
また、実際に光触媒含有層に面する特性変化層上の部分のみの、特性が変化するものであるので、エネルギーの照射方向は上記光触媒含有層と特性変化層とが面する部分にエネルギーが照射されるものであれば、いかなる方向から照射されてもよく、さらには、照射されるエネルギーも特に平行光等の平行なものに限定されないという利点を有するものとなる。
【0093】
このよう光触媒含有層における、後述するような二酸化チタンに代表される光触媒の作用機構は、必ずしも明確なものではないが、光の照射によって生成したキャリアが、近傍の化合物との直接反応、あるいは、酸素、水の存在下で生じた活性酸素種によって、有機物の化学構造に変化を及ぼすものと考えられている。本実施態様においては、このキャリアが光触媒含有層上で特性変化層中の化合物に作用を及ぼすものであると思われる。また、本実施態様においては、上述した特性変化層中にハロゲンが含有しないことから、光触媒含有層側基板を用いてエネルギー照射を行った場合であっても、ハロゲンにより発生したラジカル等が特性変化層に作用を及ぼすことがない。すなわち、光触媒含有層に繰り返しエネルギーを照射した場合にも、エネルギー照射により発生した一定量の活性酸素種のみが特性変化層の特性変化に寄与し、安定して同一の特性変化パターンを形成することができるのである。
【0094】
本実施態様で使用する光触媒としては、光半導体として知られる例えば二酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化ビスマス(Bi2O3)、および酸化鉄(Fe2O3)を挙げることができ、これらから選択して1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0095】
本実施態様においては、特に二酸化チタンが、バンドギャップエネルギーが高く、化学的に安定で毒性もなく、入手も容易であることから好適に使用される。二酸化チタンには、アナターゼ型とルチル型があり本実施態様ではいずれも使用することができるが、アナターゼ型の二酸化チタンが好ましい。アナターゼ型二酸化チタンは励起波長が380nm以下にある。
【0096】
このようなアナターゼ型二酸化チタンとしては、例えば、塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(石原産業(株)製STS−02(平均粒径7nm)、石原産業(株)製ST−K01)、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(日産化学(株)製TA−15(平均粒径12nm))等を挙げることができる。
【0097】
光触媒の粒径は小さいほど光触媒反応が効果的に起こるので好ましく、平均粒径が80nm以下であることが好ましく、20nm以下の光触媒を使用するのが特に好ましい。
【0098】
本実施態様における光触媒含有層は、上述したように光触媒単独で形成されたものであってもよく、またバインダと混合して形成されたものであってもよい。
【0099】
光触媒のみからなる光触媒含有層の場合は、特性変化層上の特性の変化に対する効率が向上し、処理時間の短縮化等のコスト面で有利である。一方、光触媒とバインダとからなる光触媒含有層の場合は、光触媒含有層の形成が容易であるという利点を有する。
【0100】
光触媒のみからなる光触媒含有層の形成方法としては、例えば、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法等の真空製膜法を用いる方法を挙げることができる。真空製膜法により光触媒含有層を形成することにより、均一な膜でかつ光触媒のみを含有する光触媒含有層とすることが可能であり、これにより特性変化層上の特性を均一に変化させることが可能であり、かつ光触媒のみからなることから、バインダを用いる場合と比較して効率的に特性変化層上の特性を変化させることが可能となる。
【0101】
また、光触媒のみからなる光触媒含有層の形成方法の他の例としては、例えば光触媒が二酸化チタンの場合は、基材上に無定形チタニアを形成し、次いで焼成により結晶性チタニアに相変化させる方法等が挙げられる。ここで用いられる無定形チタニアとしては、例えば四塩化チタン、硫酸チタン等のチタンの無機塩の加水分解、脱水縮合、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラメトキシチタン等の有機チタン化合物を酸存在下において加水分解、脱水縮合によって得ることができる。次いで、400℃〜500℃における焼成によってアナターゼ型チタニアに変性し、600℃〜700℃の焼成によってルチル型チタニアに変性することができる。
【0102】
また、バインダを用いる場合は、バインダの主骨格が上記の光触媒の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものが好ましく、例えばオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。
【0103】
このようにオルガノポリシロキサンをバインダとして用いた場合は、上記光触媒含有層は、光触媒とバインダであるオルガノポリシロキサンとを必要に応じて他の添加剤とともに溶剤中に分散して塗布液を調製し、この塗布液を基材上に塗布することにより形成することができる。使用する溶剤としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系の有機溶剤が好ましい。塗布はスピンコート、スプレーコート、ディッブコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法により行うことができる。バインダとして紫外線硬化型の成分を含有している場合、紫外線を照射して硬化処理を行うことにより光触媒含有層を形成することかできる。
【0104】
また、バインダとして無定形シリカ前駆体を用いることができる。この無定形シリカ前駆体は、一般式SiX4で表され、Xはハロゲン、メトキシ基、エトキシ基、またはアセチル基等であるケイ素化合物、それらの加水分解物であるシラノール、または平均分子量3000以下のポリシロキサンが好ましい。
【0105】
具体的には、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラメトキシシラン等が挙げられる。また、この場合には、無定形シリカの前駆体と光触媒の粒子とを非水性溶媒中に均一に分散させ、基材上に空気中の水分により加水分解させてシラノールを形成させた後、常温で脱水縮重合することにより光触媒含有層を形成できる。シラノールの脱水縮重合を100℃以上で行えば、シラノールの重合度が増し、膜表面の強度を向上できる。また、これらの結着剤は、単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0106】
バインダを用いた場合の光触媒含有層中の光触媒の含有量は、5〜60重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲で設定することができる。また、光触媒含有層の厚みは、0.05〜10μmの範囲内が好ましい。
【0107】
また、光触媒含有層には上記の光触媒、バインダの他に、界面活性剤を含有させることができる。具体的には、日光ケミカルズ(株)製NIKKOL BL、BC、BO、BBの各シリーズ等の炭化水素系、デュポン社製ZONYL FSN、FSO、旭硝子(株)製サーフロンS−141、145、大日本インキ化学工業(株)製メガファックF−141、144、ネオス(株)製フタージェントF−200、F251、ダイキン工業(株)製ユニダインDS−401、402、スリーエム(株)製フロラードFC−170、176等のフッ素系あるいはシリコーン系の非イオン界面活性剤を挙げることができ、また、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を用いることもできる。
【0108】
さらに、光触媒含有層には上記の界面活性剤の他にも、ポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ジアリルフタレート、エチレンプロピレンジエンモノマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリベンズイミダゾール、ポリアクリルニトリル、エピクロルヒドリン、ポリサルファイド、ポリイソプレン等のオリゴマー、ポリマー等を含有させることができる。
【0109】
(2)基体
次に、光触媒含有層側基板に用いられる基体について説明する。本実施態様においては、図1に示すように、光触媒含有層側基板は、少なくとも基体4とこの基体4上に形成された光触媒含有層5とを有するものである。この際、用いられる基体を構成する材料は、後述するエネルギーの照射方向や、得られるパターン形成体が透明性を必要とするか等により適宜選択される。
【0110】
また本実施態様に用いられる基体は、可撓性を有するもの、例えば樹脂製フィルム等であってもよいし、可撓性を有さないもの、例えばガラス基板等であってもよい。これは、エネルギー照射方法により適宜選択されるものである。
【0111】
ここで、本実施態様においては、上述したパターン形成体用基板における特性変化層がハロゲンを含有しないことから、上記光触媒含有層を繰り返し使用した場合であっても、光触媒含有層の酸化分解力を一定のものとすることができる。したがって、光触媒含有層側基板を繰り返し使用するものとすることができることから、基体が所定の強度を有し、かつその表面が光触媒含有層との密着性が良好であることが好ましい。
【0112】
なお、基体表面と光触媒含有層との密着性を向上させるために、基体上にアンカー層を形成するようにしてもよい。このようなアンカー層としては、例えば、シラン系、チタン系のカップリング剤等を挙げることができる。
【0113】
(3)光触媒含有層側遮光部
本実施態様に用いられる光触媒含有層側基板には、パターン状に形成された光触媒含有層側遮光部が形成されたものを用いても良い。このように光触媒含有層側遮光部を有する光触媒含有層側基板を用いることにより、エネルギー照射に際して、フォトマスクを用いたり、レーザ光による描画照射を行う必要がない。したがって、光触媒含有層側基板とフォトマスクとの位置合わせが不要であることから、簡便な工程とすることが可能であり、また描画照射に必要な高価な装置も不必要であることから、コスト的に有利となるという利点を有する。
【0114】
このような光触媒含有層側遮光部を有する光触媒含有層側基板は、光触媒含有層側遮光部の形成位置により、下記の二つの態様とすることができる。
【0115】
一つが、例えば図3に示すように、基体4上に光触媒含有層側遮光部10を形成し、この光触媒含有層側遮光部10上に光触媒含有層5を形成して、光触媒含有層側基板とする態様である。もう一つは、例えば図4に示すように、基体4上に光触媒含有層5を形成し、その上に光触媒含有層側遮光部10を形成して光触媒含有層側基板とする態様である。
【0116】
いずれの態様においても、フォトマスクを用いる場合と比較すると、光触媒含有層側遮光部が、上記光触媒含有層と特性変化層との配置部分の近傍に配置されることになるので、基体内等におけるエネルギーの散乱の影響を少なくすることができることから、エネルギーのパターン照射を極めて正確に行うことが可能となる。
【0117】
ここで、本実施態様においては、図4に示すような光触媒含有層5上に光触媒含有層側遮光部10を形成する態様である場合には、光触媒含有層と特性変化層とを所定の位置に配置する際に、この光触媒含有層側遮光部の膜厚をこの間隙の幅と一致させておくことにより、上記光触媒含有層側遮光部を上記間隙を一定のものとするためのスペーサとしても用いることができるという利点を有する。
【0118】
すなわち、所定の間隙をおいて上記光触媒含有層と特性変化層とを対向させた状態で配置する際に、上記光触媒含有層側遮光部と特性変化層とを密着させた状態で配置することにより、上記所定の間隙を正確とすることが可能となり、そしてこの状態でエネルギーを照射することにより、特性変化層と遮光部とが接触している部分の特性変化層は、特性が変化せず、特性変化パターンを精度良く形成することが可能となるのである。また、この際、エネルギーの照射方向は上記基体側からに限定されず、例えばパターン形成体用基板の基材の側面からであってもよい。
【0119】
このような光触媒含有層側遮光部の形成方法は、特に限定されるものではなく、光触媒含有層側遮光部の形成面の特性や、必要とするエネルギーに対する遮蔽性等に応じて適宜選択されて用いられる。
【0120】
例えば、スパッタリング法、真空蒸着法等により厚み1000〜2000Å程度のクロム等の金属薄膜を形成し、この薄膜をパターニングすることにより形成されてもよい。このパターニングの方法としては、スパッタ等の通常のパターニング方法を用いることができる。
【0121】
また、樹脂バインダ中にカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた層をパターン状に形成する方法であってもよい。用いられる樹脂バインダとしては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ゼラチン、カゼイン、セルロース等の樹脂を1種または2種以上混合したものや、感光性樹脂、さらにはO/Wエマルジョン型の樹脂組成物、例えば、反応性シリコーンをエマルジョン化したもの等を用いることができる。このような樹脂製遮光部の厚みとしては、0.5〜10μmの範囲内で設定することができる。このよう樹脂製遮光部のパターニングの方法は、フォトリソ法、印刷法等一般的に用いられている方法を用いることができる。
【0122】
なお、上記説明においては、光触媒含有層側遮光部の形成位置として、基体と光触媒含有層との間、および光触媒含有層表面の二つの場合について説明したが、その他、基体の光触媒含有層が形成されていない側の表面に光触媒含有層側遮光部を形成する態様も採ることが可能である。この態様においては、例えばフォトマスクをこの表面に着脱可能な程度に密着させる場合等が考えられ、特性変化パターンを小ロットで変更するような場合に好適に用いることができる。
【0123】
(4)プライマー層
次に、本実施態様の光触媒含有層側基板に用いられるプライマー層について説明する。本実施態様において、上述したように基体上に光触媒含有層側遮光部をパターン状に形成して、その上に光触媒含有層を形成して光触媒含有層側基板とする場合においては、上記光触媒含有層側遮光部と光触媒含有層との間にプライマー層を形成してもよい。
【0124】
このプライマー層の作用・機能は必ずしも明確なものではないが、光触媒含有層側遮光部と光触媒含有層との間にプライマー層を形成することにより、プライマー層は光触媒の作用による特性変化層の特性変化を阻害する要因となる光触媒含有層側遮光部および光触媒含有層側遮光部間に存在する開口部からの不純物、特に、光触媒含有層側遮光部をパターニングする際に生じる残渣や、金属、金属イオン等の不純物の拡散を防止する機能を示すものと考えられる。したがって、プライマー層を形成することにより、高感度で特性変化の処理が進行し、その結果、高解像度のパターンを得ることが可能となるのである。
【0125】
なお、本実施態様においてプライマー層は、光触媒含有層側遮光部のみならず光触媒含有層側遮光部間に形成された開口部に存在する不純物が光触媒の作用に影響することを防止するものであるので、プライマー層は開口部を含めた光触媒含有層側遮光部全面にわたって形成されていることが好ましい。
【0126】
本実施態様におけるプライマー層は、光触媒含有層側基板の光触媒含有層側遮光部と光触媒含有層とが接触しないようにプライマー層が形成された構造であれば特に限定されるものではない。
【0127】
このプライマー層を構成する材料としては、特に限定されるものではないが、光触媒の作用により分解されにくい無機材料が好ましい。具体的には無定形シリカを挙げることができる。このような無定形シリカを用いる場合には、この無定形シリカの前駆体は、一般式SiX4で示され、Xはハロゲン、メトキシ基、エトキシ基、またはアセチル基等であるケイ素化合物であり、それらの加水分解物であるシラノール、または平均分子量3000以下のポリシロキサンが好ましい。
【0128】
また、プライマー層の膜厚は、0.001μmから1μmの範囲内であることが好ましく、特に0.001μmから0.1μmの範囲内であることが好ましい。
【0129】
c.光触媒含有層側基板の配置
次に、光触媒含有層側基板の配置について説明する。本実施態様においては、上述した特性変化層は、上述した光触媒含有層側基板における光触媒含有層が所定の間隙をおいて配置されて、エネルギー照射されることにより、表面の特性が変化する。この際の光触媒含有層側基板の配置とは、エネルギーの照射時に光触媒含有層と特性変化層とを光触媒の作用が及ぶように所定の間隔をおいて配置する必要があり、本実施態様においては、上述した光触媒含有層および特性変化層を200μm以下の間隙をおいて配置した後、所定の方向からエネルギーを照射する。この際、光触媒含有層および特性変化層を密着させてもよい。
【0130】
本実施態様において上記間隙は、パターン精度が極めて良好であり、光触媒の感度も高く、したがって特性変化層の特性変化の効率が良好である点を考慮すると特に0.2μm〜10μmの範囲内、好ましくは1μm〜5μmの範囲内とすることが好ましい。このような間隙の範囲は、特に間隙を高い精度で制御することが可能である小面積のパターン形成体に対して特に有効である。
【0131】
一方、例えば300mm×300mmといった大面積のパターン形成体に対して処理を行う場合は、接触することなく、かつ上述したような微細な間隙を光触媒含有層側基板とパターン形成体用基板との間に形成することは極めて困難である。したがって、パターン形成体が比較的大面積である場合は、上記間隙は、10〜100μmの範囲内、特に50〜75μmの範囲内とすることが好ましい。間隙をこのような範囲内とすることにより、パターンがぼやける等のパターン精度の低下の問題や、光触媒の感度が悪化して特性変化の効率が悪化する等の問題が生じることなく、さらに特性変化層上の特性変化にムラが発生しないといった効果を有するからである。
【0132】
このように比較的大面積のパターン形成体をエネルギー照射する際には、エネルギー照射装置内の光触媒含有層側基板とパターン形成体用基板との位置決め装置における間隙の設定を、10μm〜200μmの範囲内、特に25μm〜75μmの範囲内に設定することが好ましい。設定値をこのような範囲内とすることにより、パターン精度の大幅な低下や光触媒の感度の大幅な悪化を招くことなく、かつ光触媒含有層側基板とパターン形成体用基板とが接触することなく配置することが可能となるからである。
【0133】
このように光触媒含有層と特性変化層表面とを所定の間隔で離して配置することにより、酸素と水および光触媒作用により生じた活性酸素種が脱着しやすくなる。すなわち、上記範囲より光触媒含有層と特性変化層との間隔を狭くした場合は、上記活性酸素種の脱着がしにくくなり、結果的に特性変化速度を遅くしてしまう可能性があることから好ましくない。また、上記範囲より間隔を離して配置した場合は、生じた活性酸素種が特性変化層に届き難くなり、この場合も特性変化の速度を遅くしてしまう可能性があることから好ましくない。
【0134】
本実施態様においては、このような配置状態は、少なくともエネルギー照射の間だけ維持されればよい。
【0135】
このような極めて狭い間隙を均一に形成して光触媒含有層と特性変化層とを配置する方法としては、例えばスペーサを用いる方法を挙げることができる。そして、このようにスペーサを用いることにより、均一な間隙を形成することができると共に、このスペーサが接触する部分は、光触媒の作用が特性変化層表面に及ばないことから、このスペーサを上述した特性変化パターンと同様のパターンを有するものとすることにより、特性変化層上に所定の特性変化パターンを形成することが可能となる。
【0136】
本実施態様においては、このようなスペーサを一つの部材として形成してもよいが、工程の簡略化等のため、上記光触媒含有層側基板の欄で説明したように、光触媒含有層側基板の光触媒含有層表面に形成することが好ましい。なお、上記光触媒含有層側基板における説明においては、光触媒含有層側遮光部として説明したが、本実施態様においては、このようなスペーサは特性変化層表面に光触媒の作用が及ばないように表面を保護する作用を有すればよいものであることから、特に照射されるエネルギーを遮蔽する機能を有さない材料で形成されたものであってもよい。
【0137】
d.エネルギー照射
次に、本実施態様におけるエネルギー照射について説明する。本実施態様においては、上述したような配置を維持した状態で、対向する部分へのエネルギー照射が行われることにより、上述した特性変化層上に特性変化パターンが形成されるのである。
【0138】
なお、本実施態様でいうエネルギー照射(露光)とは、光触媒含有層による特性変化層表面の特性を変化させることが可能ないかなるエネルギー線の照射をも含む概念であり、可視光の照射に限定されるものではない。
【0139】
通常このようなエネルギー照射に用いる光の波長は、400nm以下の範囲、好ましくは380nm以下の範囲から設定される。これは、上述したように光触媒含有層に用いられる好ましい光触媒が二酸化チタンであり、この二酸化チタンにより光触媒作用を活性化させるエネルギーとして、上述した波長の光が好ましいからである。
【0140】
このようなエネルギー照射に用いることができる光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ、その他種々の光源を挙げることができる。
【0141】
上述したような光源を用い、フォトマスクを介したパターン照射により行う方法の他、エキシマ、YAG等のレーザを用いてパターン状に描画照射する方法を用いることも可能である。
【0142】
また、エネルギー照射に際してのエネルギーの照射量は、特性変化層表面が光触媒含有層中の光触媒の作用により特性変化層表面の特性の変化が行われるのに必要な照射量とする。
【0143】
この際、光触媒含有層を加熱しながらエネルギー照射することにより、酸化分解力を上昇させることが可能となり、効率的な特性の変化を行うことができる点で好ましい。具体的には30℃〜80℃の範囲内で加熱することが好ましい。
【0144】
本実施態様におけるエネルギー照射方向は、光触媒含有層側遮光部もしくパターン形成体用基板側に遮光部が形成されているか否か等の特性変化パターンの形成方法や、光触媒含有層側基板もしくはパターン形成体用基板が透明であるか否かにより決定される。
【0145】
すなわち、光触媒含有層側遮光部が形成されている場合は、光触媒含有層側基板側からエネルギー照射が行なわれる必要があり、かつこの場合は光触媒含有層側基板が照射されるエネルギーに対して透明である必要がある。なお、この場合、光触媒含有層上に光触媒含有層側遮光部が形成され、かつこの光触媒含有層側遮光部を上述したようなスペーサとしての機能を有するように用いた場合においては、エネルギー照射方向は光触媒含有層側基板側からでもパターン形成体用基板側からであってもよい。
【0146】
一方、パターン形成体用基板側に遮光部が形成されている場合は、パターン形成体用基板側からエネルギー照射が行われる必要があり、かつこの場合は、パターン形成体用基板が照射されるエネルギーに対して透明である必要がある。なお、この場合も、特性変化層上にパターン形成体用基板側に遮光部が形成され、このパターン形成体用基板側の遮光部が上述したようなスペーサとしての機能を有するように用いられた場合、エネルギー照射方向は光触媒含有層側基板側からでもパターン形成体用基板側からであってもよい。
【0147】
フォトマスクを用いる場合は、フォトマスクが配置された側からエネルギーが照射される。この場合は、フォトマスクが配置された側の基板、すなわち光触媒含有層側基板もしくはパターン形成体側の基板のいずれかが透明である必要がある。
【0148】
上述したようなエネルギー照射が終了すると、光触媒含有層側基板が特性変化層との配置位置から離され、これにより特性変化パターンが形成され、その特性変化パターン内における特性変化の度合いが異なるパターン形成体となるのである。
【0149】
なお、本発明においては上述したように、光触媒含有層を繰り返し使用した場合であっても、酸化分解力が変化しないことから、連続して同様のパターン形成体用基板に対して、上記光触媒含有層側基板を用いてエネルギー照射を行い、パターン形成体を製造することが可能である。
【0150】
2.第2実施態様
次に、本発明のパターン形成体の製造方法における第2実施態様について説明する。本発明のパターン形成体の製造方法における第2実施態様は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層を有するパターン形成体用基板と、光触媒を含有する光触媒含有層および基体を有する光触媒含有層側基板とを、上記特性変化層および上記光触媒含有層が200μm以下となるように間隙をおいて配置した後、所定の方向からエネルギーを照射することにより、上記特性変化層表面に特性の変化した特性変化パターンを形成するパターン形成工程を、異なるパターン形成体用基板に10回以上連続して行うパターン形成体の製造方法であって、10回目に行われる上記パターン形成工程により形成される上記特性変化パターンの幅が、1回目に行われる上記パターン形成工程により形成される上記特性変化パターンの幅に対して、所定の範囲内である方法である。
【0151】
ここで、上記特性変化パターン形成工程を異なるパターン形成体用基板に10回以上連続して行うとは、光触媒含有層を洗浄する工程あるいは上記特性変化層および光触媒含有層が充分に広くなるように間隔をおいて配置した後、所定の方向からエネルギーを照射する工程等、光触媒含有層の酸化分解力を変化させる工程を挟まずに、10個以上のパターン形成体用基板における特性変化層に対して、上記光触媒含有層側基板を用いてエネルギーを照射する工程を行うことをいう。
【0152】
本実施態様によれば、10回目に行われたパターン形成工程により形成された特性変化パターンの幅が、1回目に行われたパターン形成工程により形成された特性変化パターンの幅と比較して、所定の範囲内となることから、上記パターン形成工程を10回以上連続して行った場合であっても、特性変化パターンの形状を一定のものとすることができ、安定にパターン形成体を製造することができるのである。これにより、連続して多量にパターン形成体を製造することができ、コストや製造効率の面からも好ましいものとすることができるのである。
【0153】
ここで、本実施態様においては、10回目に行われる上記パターン形成工程により形成される上記特性変化パターンの幅が、1回目に行われる上記パターン形成工程により形成される上記特性変化パターンの幅に対して、0.75倍〜1.25倍の範囲内、中でも0.8倍〜1.2倍の範囲内であることが好ましく、また、±20μmの範囲内、中でも±10μmの範囲内であることが好ましい。
【0154】
本実施態様においては、上記パターン形成工程を、10回以上、中でも50回以上、特に500回以上行うことが好ましく、また通常上限としては、10000回以下とされる。
【0155】
本実施態様において、上述したような、10回以上連続してパターン形成工程を行い、特性変化パターンの精度を上記範囲内とすることを実現可能とできるのは、通常上記特性変化層中にハロゲンが含有されない場合であり、この特性変化層中にハロゲンが含有されない場合のパターン形成体の製造方法については、第1実施態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0156】
B.機能性素子
次に、本発明の機能性素子について説明する。本発明の機能性素子は、上述したパターン形成体の製造方法により製造されたパターン形成体の特性変化パターン上に、機能性部が形成されたものである。
【0157】
本発明によれば、上記特性変化パターンの例えば濡れ性や、凹凸等の特性の差を利用して、容易に高精細な機能性部を形成することが可能となるのである。また、上述したパターン形成体の製造方法により連続して製造されたパターン形成体の特性変化パターンは、形状が一定であり、連続して製造することができることから、コストや製造効率の面でも好ましい機能性素子とすることができるのである。
【0158】
ここで機能性とは、光学的(光選択吸収、反射性、偏光性、光選択透過性、非線形光学性、蛍光あるいはリン光等のルミネッセンス、フォトクロミック性等)、磁気的(硬磁性、軟磁性、非磁性、透磁性等)、電気・電子的(導電性、絶縁性、圧電性、焦電性、誘電性等)、化学的(吸着性、脱着性、触媒性、吸水性、イオン伝導性、酸化還元性、電気化学特性、エレクトロクロミック性等)、機械的(耐摩耗性等)、熱的(伝熱性、断熱性、赤外線放射性等)、生体機能的(生体適合性、抗血栓性等)のような各種の機能を意味するものである。
【0159】
本発明における機能性部の形成方法は、上記特性変化パターンの特性の変化の種類により適宜選択させるものであるが、例えば上記特性変化層が濡れ性変化層である場合には、ディップコート、ロールコート、ブレードコート、スピンコート等の塗布手段、インクジェット、ディスペンサー等を含むノズル吐出手段等の手段を用いることが可能であり、本発明においては中でも、ノズル吐出手段を用いることが好ましい。上記ノズル吐出手段においては、目的とするパターン状に機能性部を形成する機能性部形成用組成物を塗布することが可能となり、より高精細に機能性部を形成することが可能となるからである。
【0160】
また、上記特性変化層が例えば分解除去層である場合には、インクジェット、ディスペンサー等を含むノズル吐出手段等の手段を用いることが好ましく、これにより分解除去層の凹凸を利用して、高精細な機能性部を形成することが可能となるからである。
【0161】
また、上記特性変化層が例えば密着変化層である場合には、上記方法の他に、蒸着法、無電界めっき等も用いることが可能であり、機能性部形成用組成物を成膜後、密着阻害領域に付着した機能性部形成用組成物を除去することにより、密着性良好領域にのみ機能性部形成用組成物を密着させることができ、機能性部を形成することが可能となるのである。
【0162】
ここで、機能性部形成用組成物の材料としては、溶剤型材料および非溶剤型の材料のどちらも用いることが可能であるが、本発明においては溶剤型の材料であることが好ましい。本発明における機能性部は、上記特性変化パターンに沿って機能性部の膜厚が異なるものであることが好ましく、溶剤型の材料を用いることにより、溶剤が揮発する際に、この機能性部内の膜厚の差を大きいものとすることが可能となるからである。
【0163】
ここで、本発明により形成される機能性素子として、好ましいものは上記機能性部が画素部であるカラーフィルタ、上記機能性部がレンズであるマイクロレンズ、または上記機能性部が、生体分子付着性を有し、かつ生体分子の培地として用いることができる生体分子培養部等であることが好ましい。
【0164】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本実施態様の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本実施態様の技術的範囲に包含される。
【0165】
【実施例】
以下、本発明について、実施例および比較例を通じてさらに詳述する。
【0166】
[実施例1]
ドデシルアルキルシラン(東京化成工業(株)製)0.7gと0.005NのHCl(水溶液)2.36gとからなる溶液を20℃で24時間撹拌した後、溶液をイソプロピルアルコールで100倍(質量基準)に希釈し、濡れ性変化層形成用組成物を得た。この濡れ性変化層形成用組成物を用いて、ガラス基板上にスピンコーティングし、150℃の温度で10分間乾燥させ、透明で均一な濡れ性変化層を有するパターン形成体用基板を得た。
【0167】
次に、ガラス基板上に、Crの薄膜を幅が70μmでピッチが100μmのストライプ状に形成したマスクパターンを有するフォトマスクのマスクパターン側に、二酸化チタンの水分散液(石原産業(株)製、品名:「ST-K03」)をスピンコーティングし、加熱乾燥することにより透明な光触媒含有層を形成し、光触媒含有層側基板とした。
【0168】
上記光触媒含有層側基板における光触媒含有層と、上記光触媒含有層が上記濡れ性変化層とを、50μmのギャップを設けて対向させ、フォトマスク側から超高圧水銀ランプにて、波長が365nmの紫外線を、20mW/cm2の照度で照射することにより露光し、濡れ性変化層の表面に濡れ性変化パターンを形成した。得られた濡れ性変化パターンは、未露光部における水との接触角が105°、および表面張力が40mN/mの液体との接触角は65°であり、露光部における水との接触角が10°以下、および表面張力が40mN/mの液体との接触角が9°以下になるのに210秒を要した。また、未露光部の幅は69μm、露光部の幅は31μmであった。
【0169】
続いて上述したものと同様のパターン形成体用基板に対して、210秒間の露光を、20枚連続して行った。20枚目のパターン形成体用基板において、未露光部の幅は68μm、露光部の幅は32μmであった。
【0170】
[実施例2]
ドデシルアルキルシラン(東京化成工業(株)製)の変わりにヘキサアルキルシラン(G.E東芝シリコーン(株)製 TSL-8241)を用いた以外は、実施例1と同様にしてパターン形成体用基板を得て、実施例1と同様の光触媒含有層側基板を用いて露光を行った。得られた濡れ性変化パターンは、未露光部における水との接触角が90°、および表面張力が40mN/mの液体との接触角は45°であり、露光部における水との接触角が10°以下、および表面張力が40mN/mの液体との接触角が9°以下になるのに120秒を要した。また、未露光部の幅は70μm、露光部の幅は30μmであった。
【0171】
続いて上述したものと同様のパターン形成体用基板に対して、120秒間の露光を、20枚連続して行った。20枚目のパターン形成体用基板において、未露光部の幅は71μm、露光部の幅は29μmであった。
【0172】
[実施例3]
ドデシルアルキルシラン(東京化成工業(株)製)の変わりにフェニルメトキシシラン(G.E東芝シリコーン(株)製 TSL-8172)を用いた以外は、実施例1と同様にしてパターン形成体用基板を得て、実施例1と同様の光触媒含有層側基板を用いて露光を行った。得られた濡れ性変化パターンは、未露光部における水との接触角が60°、および表面張力が40mN/mの液体との接触角は30°であり、露光部における水との接触角が10°以下、および表面張力が40mN/mの液体との接触角が9°以下になるのに150秒を要した。また、未露光部の幅は71μm、露光部の幅は29μmであった。
【0173】
続いて上述したものと同様のパターン形成体用基板に対して、150秒間の露光を、20枚連続して行った。20枚目のパターン形成体用基板において、未露光部の幅は69μm、露光部の幅は31μmであった。
【0174】
[実施例4]
ドデシルアルキルシラン(東京化成工業(株)製)の変わりにγ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン(G.E東芝シリコーン(株)製 TSL-8355)を用いた以外は、実施例1と同様にしてパターン形成体用基板を得て、実施例1と同様の光触媒含有層側基板を用いて露光を行った。得られた濡れ性変化パターンは、未露光部における水との接触角が60°、および表面張力が40mN/mの液体との接触角は25°であり、露光部における水との接触角が10°以下、および表面張力が40mN/mの液体との接触角が9°以下になるのに180秒を要した。また、未露光部の幅は70μm、露光部の幅は30μmであった。
【0175】
続いて上述したものと同様のパターン形成体用基板に対して、180秒間の露光を、20枚連続して行った。20枚目のパターン形成体用基板において、未露光部の幅は71μm、露光部の幅は29μmであった。
【0176】
[実施例5]
デシルアルキルシラン(信越シリコーン(株)製LS-5258)1.5gと、イソプロピルアルコール30gとからなる溶液を容器に入れ、240℃に加熱したオーブンに投入し、デシルアルキルシランを気化させることにより、オーブン内をデシルアルキルシラン雰囲気にした。前記デシルアルキルシラン雰囲気のオーブン内にガラス基板を投入し、ガラス基板表面にデシルアルキルシランを蒸着させた。このようにして作成したパターン形成体用基板を用い、実施例1と同様に露光を行った。得られた濡れ性変化パターンは、未露光部における水との接触角が100°、および表面張力が40mN/mの液体との接触角は65°であり、露光部における水との接触角が10°以下、および表面張力が40mN/mの液体との接触角が9°以下になるのに180秒を要した。また、未露光部の幅は71μm、露光部の幅は29μmであった。
【0177】
続いて上述したものと同様のパターン形成体用基板に対して、180秒間の露光を、20枚連続して行った。20枚目のパターン形成体用基板において、未露光部の幅は69μm、露光部の幅は31μmであった。
【0178】
[比較例1]
ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン(東芝シリコーン製 TSL−8233)1.5gとテトラメトキシシラン(東芝シリコーン製 TSL-8114)3.5gと0.005NのHCl(水溶液)2.36gとからなる溶液を20℃で24時間撹拌した後、溶液をイソプロピルアルコールで100倍(質量基準)に希釈し、濡れ性変化層形成用組成物を得た。この濡れ性変化層形成用組成物を用いて、ガラス基板上にスピンコーティングし、150℃の温度で10分間乾燥させ、透明で均一な濡れ性変化層を有するパターン形成体用基板を得た。
【0179】
前記パターン形成体用基板について実施例1と同様に濡れ性変化パターン形成を行った。得られた濡れ性変化パターンは、未露光部における水との接触角が110°、および表面張力が40mN/mの液体との接触角は80°であり、露光部における水との接触角が10°以下、および表面張力が40mN/mの液体との接触角が9°以下になるのに180秒を要した。また、1枚目露光時の未露光部の幅は70μm、露光部の幅は30μmであった。
【0180】
続いて上述したものと同様のパターン形成体用基板に対して20枚連続して行った場合、20枚目のパターン形成体用基板において、未露光部の幅は20μm、露光部の幅は80μmであり、露光部の幅の広がりが確認された。
【0181】
[比較例2]
ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン(東芝シリコーン製 TSL−8233)の代わりにトリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン(東芝シリコーン製 TSL-8257)を用いた以外は比較例1と同様にしてパターン形成体用基板を作成し、実施例1と同様に露光して、濡れ性変化パターン形成を行った。得られた濡れ性変化パターンは、未露光部における水との接触角110°、および表面張力が40mN/mの液体との接触角は80°であり、露光部における水との接触角が10°以下、および表面張力が40mN/mの液体との接触角が9°以下になるのに150秒を要した。また、1枚目露光時の未露光部の幅は71μm、露光部の幅は29μmであった。
【0182】
続いて上述したものと同様のパターン形成体用基板に対して20枚連続して行った場合、20枚目のパターン形成体用基板において、未露光部の幅は22μm、露光部の幅は78μmであり、露光部の幅の広がりが確認された。
【0183】
【発明の効果】
本発明によれば、上記パターン形成体用基板が、上記特性変化層を有することから、光触媒含有層側基板を用いてエネルギー照射をすることによって、上記特性変化層の分子が分解等され、表面の特性が変化した上記特性変化パターンを形成することができる。ここで、本発明者等の研究により、上記特性変化層中にハロゲンが含有されている場合には、上記光触媒含有層側基板を連続して上記パターン形成工程に使用することにより、光触媒含有層の酸化分解力が変化するとの知見が得られた。本発明によれば、上記特性変化層中にハロゲンが含有されないことから、光触媒含有層側基板を連続して使用した場合であっても、光触媒含有層の酸化分解力を一定のものとすることができ、安定して高精細なパターン形成体を効率よく連続して製造することが可能となるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のパターン形成体の製造方法の一例を示す工程図である。
【図2】本発明のパターン形成体の製造方法に用いられる光触媒含有層側基板の一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明のパターン形成体の製造方法に用いられる光触媒含有層側基板の他の例を示す概略断面図である。
【図4】本発明のパターン形成体の製造方法に用いられる光触媒含有層側基板の他の例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 … 基材
2 … 特性変化層
3 … パターン形成体用基板
4 … 基体
5 … 光触媒含有層
6 … 光触媒含有層側基板
7 … フォトマスク
8 … エネルギー
9 … 特性変化パターン
Claims (14)
- エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化し、かつハロゲンを含有しない特性変化層を有するパターン形成体用基板と、光触媒を含有する光触媒含有層および基体を有し、さらに前記光触媒含有層に接するように形成された光触媒含有層側遮光部を有する光触媒含有層側基板とを、前記特性変化層および前記光触媒含有層が200μm以下となるように間隙をおいて配置した後、所定の方向からエネルギーを照射することにより、前記特性変化層表面に特性の変化した特性変化パターンを形成するパターン形成工程を有することを特徴とするパターン形成体の製造方法。
- 前記光触媒含有層側基板が、前記基体上に光触媒含有層側遮光部が形成され、前記光触媒含有層側遮光部上に前記光触媒含有層が形成されたものであることを特徴とする、請求項1に記載のパターン形成体の製造方法。
- 前記光触媒含有層側基板が、前記基体上に光触媒含有層が形成され、前記光触媒含有層上に前記光触媒含有層側遮光部が形成されたものであることを特徴とする、請求項1に記載のパターン形成体の製造方法。
- 前記特性変化層が、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、液体との接触角が低下する濡れ性変化層であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の製造方法。
- 前記濡れ性変化層が、YnSiX(4−n)(ここで、Yはアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を含み、Xはアルコキシル基、アセチル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)で示される珪素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであることを特徴とする請求項4に記載のパターン形成体の製造方法。
- 前記オルガノポリシロキサンを構成するYの炭素数が5〜16の範囲内であることを特徴とする請求項5に記載のパターン形成体の製造方法。
- 前記濡れ性変化層が単分子膜であることを特徴とする請求項4に記載のパターン形成体の製造方法。
- 前記単分子膜が、有機鎖を有するシラン化合物からなることを特徴とする請求項7に記載のパターン形成体の製造方法。
- 前記有機鎖を構成する炭素の数が、5〜16の範囲内であることを特徴とする請求項8に記載のパターン形成体の製造方法。
- 前記特性変化層が、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解除去される分解除去層であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の製造方法。
- 前記分解除去層の表面張力40mN/mの液体との接触角が10°以上であり、前記分解除去層が分解除去されて露出した基材の表面張力40mN/mの液体との接触角が、9°以下であることを特徴とする請求項10に記載のパターン形成体の製造方法。
- 前記分解除去層が単分子膜であることを特徴とする請求項10または請求項11に記載のパターン形成体の製造方法。
- エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化し、かつハロゲンを含有しない特性変化層を有するパターン形成体用基板と、光触媒を含有する光触媒含有層および基体を有する光触媒含有層側基板とを、前記特性変化層および前記光触媒含有層が200μm以下となるように間隙をおいて配置した後、所定の方向からエネルギーを照射することにより、前記特性変化層表面に特性の変化した特性変化パターンを形成するパターン形成工程を、異なるパターン形成体用基板に10回以上連続して行うパターン形成体の製造方法であって、10回目に行われる前記パターン形成工程により形成される前記特性変化パターンの幅が、1回目に行われる前記パターン形成工程により形成される前記特性変化パターンの幅に対して、±20μmの範囲内で変化することを特徴とするパターン形成体の製造方法。
- 請求項1から請求項13までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の製造方法により製造されたパターン形成体の特性変化パターン上に、機能性部が形成されたことを特徴とする機能性素子。
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