JP4260264B2 - クランクケース換気通路 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンのクランクケース換気通路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
4サイクルエンジンには、ピストンとシリンダとの間を抜けたブローバイガスを吸気系に還流させると共にピストンの往復運動に起因する圧力脈動を抑制するためのクランクケース換気通路が設けられることが通例である(特開昭61−135914号公報参照)。この通路のエンジン本体と吸気系との間は、上記公報に開示されているように、例えばゴムホースで形成されることが一般的であった。
【0003】
一方、新鮮な外気をクランクケース内に導入し、かつクランクケース内のブローバイガスを高効率に吸気系へ環流させるには、それぞれの通路が吸気系とクランクケースとの間で完全に独立していることが好ましい。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、特にV型で各バンクの吸気系が互いに独立しているエンジンの場合、両バンクの通路を完全独立にすると、ブローバイガス通路と新気通路とが各二組必要となるので、エンジン本体と吸気系との間がゴムホースなどで接続された従来構成によると、部品点数並びに組立工数の低減が困難にならざるを得なかった。しかも通路構成が複雑化しがちなため、エンジン全体のコンパクト化も阻害されていた。
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点を解消するべく案出されたものであり、その主な目的は、部品点数並びに組立工数を増大せずに吸気系とクランクケースとの間を互いに独立した通路で連結することができ、しかもエンジンのコンパクト化を推進し得るように改良されたクランクケース換気通路を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このような目的を果たすために、本発明に於いては、クランクケース24内と吸気系との間を互いに独立して連通させるべくブローバイガス通路46と新気通路47とからなるクランクケース換気通路を、シリンダヘッド4、シリンダブロック(アッパブロック1)、並びに吸気マニホルド53のそれぞれに各通路の一部が一体形成されると共に、各通路のシリンダヘッドに形成された部分59・60と吸気マニホルドに形成された部分61・62とを、これらシリンダヘッドと吸気マニホルドとの接合面(H)で直接連通させ、シリンダブロックの吸気マニホルドとの対向面にブローバイガス用通路の一部46aあるいは新気用通路の一部47aが内設された突条64を形成し、前記突条に対応する凹部65を前記吸気マニホルドに形成した。これによれば、ゴムホースなどの別部材を要さずにエンジン本体と吸気系との間を連結できるので、部品点数並びに組立工数の低減が可能となり、しかも通路長を短寸化し得る。また、吸気マニホルドをシリンダブロックに近接配置できるので、エンジンをコンパクトにすることができる。
【0007】
また、通路のシリンダヘッドに形成された部分59・60および吸気マニホルドに形成された部分61・62と、吸気マニホルドに設けられたスロットルボディ54とが、シリンダヘッドのクランク軸方向中央部に配置されていることを特徴とする。この構成によれば、通路と吸気マニホルドとの間を連結する通路長をより短縮することが可能となり、換気効率の向上が図れる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に添付の図面に示された一実施の形態を参照して本発明について詳細に説明する。
【0009】
図1は、本発明が適用された4サイクルV型8気筒エンジンのクランクプーリ側の立面図である。なお、図1においては後記する吸気系については図示省略している。
【0010】
このエンジンEは、シリンダ軸線の狭角が90度に設定されたV字形をなすアッパブロック1と、アッパブロック1の下面に接合されたロワブロック2と、ロワブロック2の下面に接合されたオイルパン3と、アッパブロック1の両シリンダの各上面に接合されたシリンダヘッド4とからなっている。そして各シリンダヘッド4の上方には、それぞれ2本のカム軸5が設けられている。これらのカム軸5は、シリンダヘッド4の上面に接合されたヘッドカバー6で覆われている。そしてアッパブロック1とロワブロック2との接合面には、メインベアリングによってクランク軸7が支持されている。
【0011】
アッパブロック1に於けるクランク軸7の一側方(図1に於ける右方)には空調機のコンプレッサ8が取り付けられ、ロワブロック2に於けるクランク軸7の他側方(図1に於ける左方)には交流発電機9が取り付けられている。これらコンプレッサ8と交流発電機9とは、図には示されていないベルト/プーリ機構を介してクランク軸7に連動連結されている。
【0012】
クランク軸7に於ける上記クランクプーリの軸方向内側位置には、クランクスプロケット10が嵌着され、そのさらに軸方向内側には、ドライブピニオン11が嵌着されている。
【0013】
ドライブピニオン11には、シリンダ軸線の狭角を二等分し且つクランク軸中心を通る垂直面についての対称位置に設けられた2つのドリブンピニオン12が同時に噛合している。そしてこれら2つのドリブンピニオン12には、それぞれ小スプロケット13が一体的に設けられており、この小スプロケット13と両シリンダヘッド4上の各2本のカム軸5に設けられたカムスプロケット14との間に、それぞれカム軸駆動用サイレントチェーン15が巻き掛けられている。これにより、両シリンダヘッド4上の各2本のカム軸5に、クランク軸7の回転力が伝達されるようになっている。
【0014】
アッパブロック1とロワブロック2とは、クランク軸中心が通る水平面から分割され、この分割面についての対称位置に、その軸線をクランク軸7の軸線と平行に延在させた2本のバランス軸16a・16bが枢支されている。
【0015】
これら2本のバランス軸のうち、ロワブロック2側に支持されたもの16bの軸端には、バランス軸スプロケット17が嵌着されている。このバランス軸スプロケット17と、クランクスプロケット10と、ロワブロック2の下面に取り付けられたオイルポンプ(図示せず)に固定されたポンプスプロケット18との間にサイレントチェーン19を巻き掛けることにより、下側バランス軸16bおよびオイルポンプがクランク軸7と連動回転するようになっている。
【0016】
2本のバランス軸16a・16b同士は、上記バランス軸スプロケット17の軸方向内側に嵌着された同一歯数の歯車20a・20b同士の噛み合いにより、互いに逆方向へ同一回転速度(クランク軸の2倍に設定)で回転するようになっている。これにより、V字形配置されたシリンダ軸上でのピストン運動に起因する起振力の水平方向成分が打ち消される。
【0017】
各カム軸5のカムスプロケット14に巻き掛けられたサイレントチェーン15並びにバランス軸スプロケット17及びポンプスプロケット18に巻き掛けられたサイレントチェーン19の各々には、油圧プランジャ21で押付力が自動調節されるチェーンテンショナ22と、振れ止め用のチェーンガイド23とが付設されている。これらのチェーンテンショナ22並びにチェーンガイド23は、アッパブロック1、ロワブロック2、オイルパン3、及びシリンダヘッド4の各クランクプーリ側の端面の適所に、ボルトなどを用いて固定されている。そしてこのエンジンEのクランクプーリ側の端面は、略全面的にチェーンカバー(図示せず)で覆われている。
【0018】
ロワブロック2とオイルパン3との図1に於ける左右両側部の接合面同士には、図2及び図3に示すように、クランクケース24から吸気系へ環流させるブローバイガス中の油分を除去するためのブローバイガスチャンバ25が右側に、吸気系から取り入れた外気をクランクケース24内に導くための新気チャンバ26が左側に、それぞれ形成されている。
【0019】
両チャンバ25・26は、ロワブロック2のクランク軸方向両端壁にその両端が開口しているが、その開口面積に比して大きな断面積にされると共に、クランク軸7に平行な通気流線に直交する向きに互い違いに突設された複数のリブ27によってその内部は迷路状にされている。なお、これらのリブ27は、通路を迷路状にして油分分離機能を高めるのみならず、容積の大きな空洞を形成することによる剛性低下を抑制するのにも役立つ。
【0020】
両チャンバ25・26の上壁は、アッパ・ロワ両ブロック1・2内に形成されたクランクケース24とオイルパン3との間を仕切るべくその内周輪郭がクランク軸7と一体のカウンタウェート28の回転軌跡に対応したバッフル29で画定されている。またブローバイガスチャンバ25は、クランクケース24の左側方に形成されたバランス軸収容室30と側方から見て部分的にオーバーラップした位置に設けられている。このようにすることにより、デッドスペースを有効活用し得るので、エンジン全体の大型化を招かずに比較的大きな容積の油分分離チャンバを形成することができる。
【0021】
なお、新気チャンバ26側は新鮮な外気が通過するので通常はオイル混入はないが、ブローバイガスが逆流した時のことを考慮してこちら側も迷路状にしてある。
【0022】
ロワブロック2の図3に於ける左方の側壁内面に対するバッフル29の接続部には、バランス軸収容室30の底へ向けて斜め下向きの傾斜通路31が形成されている。またバランス軸収容室30は、ロワブロック2とオイルパン3との接合面に形成された左側オイル流路32に、その底に適宜に開けられた垂直通路33を介して開放されている。
【0023】
ロワブロック2の図3に於ける右方の側壁内面に対するバッフル29の接続部の適所には、ロワブロック2とオイルパン3との接合面に形成された右側オイル流路34に向けて鋳抜き孔35が開けられている。
【0024】
クランク軸7のカウンタウェート28の回転で巻き上げられたクランクケース内のオイルは、これらの通路31・33・35及び流路32・34を経てオイルパン3へと迅速に戻ることができる。
【0025】
図4並びに図5に示すように、クランクプーリ側端壁に於けるブローバイガスチャンバ25の開口は、ロワブロック2の端壁に設けた複数の小孔37からなり、オイルパン3の端壁に設けた孔38を介してオイルパン3内の油面上空間に連通するようになっている。これら小孔37並びに孔38が設けられた部分は、その周囲がリブ39で囲まれると共に、バランス軸スプロケット17とポンプスプロケット18との間にリブ39の端縁に当接するように設けられたチェーンガイド23の支持ベース23aでその前面が塞がれている。
【0026】
オイルミストを含んだブローバイガスは、チェーンガイド23の支持ベース23aの内面とロワブロック2の前面との隙間Gから小孔37を経てブローバイガスチャンバ25に流入するが(図5の矢印参照)、この隙間Gと小孔37とを通過する際にも油分が分離される。
【0027】
また、チェーンガイド23は、ロワブロック2とオイルパン3とにそれぞれ第1・第2締結部F1・F2でその上下各端部が固定されているが、さらに支持ベース23aも第3締結部F3で固定されている。
【0028】
他方、クランクプーリ側端壁に於ける新気チャンバ26の開口周囲には、上記と同様にリブ40が設けられているが、こちら側は図示されていないチェーンカバーの内面に設けられたリブと共働してロワブロック2の端壁の孔41とオイルパン3の端壁の孔42との間に通路が画定されるようになっている。なお、チェーンカバー内全体に新気を導入し得るように、リブ40の一部に切欠部43が設けられている。
【0029】
アッパ・ロワ両ブロック1・2のトランスミッションとの接合面側の端壁には、図6に示すように、ブローバイガスチャンバ25の他端側の孔44と新気チャンバ26の他端側の孔45とが開口している。そして、アッパブロック1に於ける両バンクB間の谷底の部分にクランク軸方向に穿設された各一対のブローバイガス通路46並びに新気通路47と両チャンバ25・26の各他端側の孔44・45との間を接続するための凹所48・49が、この端壁に凹設されている。これらの凹所48・49の周囲の垂直面Vにエンドプレート50を接合することにより、ブローバイガスチャンバ25並びに新気チャンバ26の各々に互いに独立して連通する連結通路51・52が形成されている(図7・8参照)。なお、図には示されていないが、ブローバイガスチャンバ25並びに新気チャンバ26と同様に、通気流線に直交する向きのリブを互い違いに突設してその内部は迷路状にすることにより、これらの通路51・52にも油分分離機能を付与することができる。
【0030】
両バンクB間には、図9〜図11に示すように、狭角の中心に対する対称位置に吸気マニホルド53が配置されている。この吸気マニホルド53は、クランク軸7の軸線と直交する方向に吸気口の軸線を向けてクランク軸方向の中央部に設けられた一対のスロットルボディ54と、両スロットルボディ54の各々に対応し且つクランク軸方向に延在する一対のサージタンク55と、アッパブロック1の両バンクBに挟まれる位置にクランク軸方向に延在する吸気チャンバ56と、各シリンダの吸気ポート57へ向けて吸気チャンバ56の上面から渦巻き状に延出された8本の吸気管58とを備えている。また吸気マニホルド53は、両シリンダヘッド4のバンク内側に形成された水平面H上に接合されている。なお、本実施例に示すエンジンは、各気筒の吸気ポート57への吸気が、サージタンク55から直接的に吸入される状態と、吸気チャンバ56及び渦巻き状の吸気管58を経て吸入される状態とを、エンジンの負荷状況に応じて選択可能になっている。
【0031】
シリンダヘッド4には、アッパブロック1に内設されたブローバイガス通路46並びに新気通路47のシリンダ軸に沿う部分46a・47aの開口に連結される通路59・60が、また吸気マニホルド53には、この通路59・60に連結されるべく、両シリンダヘッド4のバンク内側に形成された水平面H上に開口する通路61・62が、それぞれ形成されており、スロットルボディ54のスロットル弁上流54aから新気を導入すると同時に、スロットルボディ54のスロットル弁下流54bへブローバイガスを環流させるようになっている。つまり、ブローバイガス用通路並びに新気用通路は、シリンダヘッド4、アッパブロック1、並びに吸気マニホルド53のそれぞれに各々の一部が一体形成されると共に、各通路のシリンダヘッド4に形成された部分59・60と吸気マニホルド53に形成された部分61・62とが、シリンダヘッド4と吸気マニホルド53との接合面(水平面H)で直接連通するようになっている。
【0032】
なお、PCVバルブ63は、シリンダヘッド4と吸気マニホルド53との接合面(本実施例では、シリンダヘッド4のブローバイガス用通路59の吸気マニホルド53側の開口)に埋め込まれているので、脱落する恐れはない。
【0033】
上述の如く、スロットルボディ54が吸気マニホルド53のクランク軸方向中央部に置かれており、またスロットル弁下流側54bに連通するブローバイガス用通路61並びにスロットル弁上流側54aに連通する新気用通路62もシリンダヘッド4のクランク軸方向中央部に位置している。これにより、アッパブロック1のクランク軸方向中央部に内設された通路46a・47aと吸気マニホルド53(吸気系)との間を連結する通路長の短縮化が可能となるので、換気効率の向上に寄与し得る。
【0034】
アッパブロック1の吸気マニホルド53との対向面には、ブローバイガス用通路46a並びに新気用通路47aが内設された突条64が形成されている。そして吸気マニホルド53には、互いに隣り合う吸気管58同士の間に突条64に対応する凹部65が形成されている(図12参照)。これにより、吸気マニホルド53をアッパブロック1に近接配置できるので、エンジンのより一層のコンパクト化に寄与し得る。
【0035】
以上述べた通路を介してブローバイガスチャンバ25からのブローバイガスが2つのバンクBの吸気系、つまり吸気マニホルド53へ振り分けられ、かつ2つのバンクBの吸気系、つまり吸気マニホル体53からの新気が合流して新気チャンバ26へと流入するようになっている。なお、図13に示したように、アッパブロック1に於ける両バンクB間の谷底の部分にクランク軸7の軸線に沿って穿設された新気通路47は、シリンダ軸に沿って穿設された通路47bを介して図示されていない動弁室内にも連通しており、動弁室内に滞留するオイルがブローバイガスに接触して劣化することを、動弁室内の換気を行うことによって抑制するようになっている。
【0036】
【発明の効果】
以上詳述したように、本願請求項1の発明によれば、ゴムホースなどの接続部材が不要になるので、部品点数並びに組立工数を低減する上に大きな効果を奏することができる。しかも通路長の短縮化が可能となるので、換気効率を高める上にも効果的である。また請求項2の発明によれば、吸気マニホルドをシリンダブロックに近接配置することができるので、エンジンのコンパクト化に寄与するところ大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用されるV型エンジンのクランクプーリ側の立面図
【図2】図1に示したエンジンのロワブロックのオイルパン接続面を示す底面面
【図3】図2に於けるIII−III線に沿う断面図
【図4】図1に示したエンジンのクランクプーリ側端面の部分的な立面図
【図5】図4のV−V線に沿う要部断面図
【図6】図1に示したエンジンのトランスミッション側端面の部分的な立面図
【図7】図6に於けるVII−VII線に沿う要部断面図
【図8】図6に於けるVIII−VIII線に沿う要部断面図
【図9】図1に示したエンジンの吸気系を含む上面図
【図10】図9におけるX−X線に沿う要部断面図
【図11】図9におけるXI−XI線に沿う要部断面図
【図12】図10におけるXII−XII線に沿う要部断面図
【図13】図1に示したエンジンのアッパブロックの上面図
【符号の説明】
H 水平面(接合面)
1 アッパブロック
4 シリンダヘッド
24 クランクケース
46 ブローバイガス通路
47 新気通路
53 吸気マニホルド
59・60 シリンダヘッドに形成された通路部分
61・62 吸気マニホルド体に形成された通路部分
64 突条
65 凹部
Claims (2)
- クランクケース内と吸気系との間を互いに独立して連通させるべくブローバイガス通路と新気通路とからなるクランクケース換気通路であって、
シリンダヘッド、シリンダブロック、並びに吸気マニホルドのそれぞれに前記各通路の一部が一体形成されると共に、
前記通路の前記シリンダヘッドに形成された部分と前記吸気マニホルドに形成された部分とを、これらシリンダヘッドと吸気マニホルドとの接合面で直接連通させ、
前記シリンダブロックの前記吸気マニホルドとの対向面にブローバイガス用通路の一部あるいは新気用通路の一部が内設された突条を形成し、前記突条に対応する凹部を前記吸気マニホルドに形成したことを特徴とするクランクケース換気通路。 - 前記通路の前記シリンダヘッドに形成された部分および前記吸気マニホルドに形成された部分と、前記吸気マニホルドに設けられたスロットルボディとが、シリンダヘッドのクランク軸方向中央部に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載のクランクケース換気通路。
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