JP4254536B2 - 含フッ素塗料組成物、塗膜及び塗装物 - Google Patents

含フッ素塗料組成物、塗膜及び塗装物 Download PDF

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Description

技術分野
本発明は、含フッ素高分子層と従来よりも厚いフッ素樹脂層とを、その塗膜中における上下を問わず、1コートで形成することができる含フッ素傾斜型塗料組成物に関する。本発明は、また、金属、高分子化合物成形体、ガラス、陶器等からなる被塗装物に強固に接着し、充分な膜厚と透明性とを有する塗膜を1コートで形成することができる含フッ素傾斜型塗料組成物に関し、これらの塗料組成物を塗装して得られる塗装物に関する。
背景技術
フッ素樹脂は、耐食性、耐熱性、耐摩耗性、非粘着性等に優れた特性を有することから、塗料として調製して、例えば、耐食性が要求される化学装置のライニング、耐熱性が要求される電球、耐摩耗性と非粘着性が要求される調理器具又はOA機器用ロール、OA機器用ベルト等の摺動性部材等の種々の用途に用いられている。
フッ素樹脂からなる塗料は、例えば金属、高分子化合物成形体、ガラス、陶器等からなる様々な被塗装物に塗布して塗布膜を得、必要に応じて乾燥した後、焼成することにより、フッ素樹脂からなる塗膜を形成するものである。
フッ素樹脂の優れた特性は、通常、フッ素樹脂からなる塗膜の厚い方が発揮させやすく、耐久性を有するので持続させやすい。塗膜の厚膜化を目的として、国際公開第94/05729号パンフレットには、平均粒子径が10〜1000μmの含フッ素溶融樹脂を特定量含有する水性分散組成物が開示されている。
フッ素樹脂からなる塗膜は、フッ素樹脂が優れた非粘着性を有するので、被塗装物との接着性に劣る傾向にあり、特にガラス、陶器等からなる塗装面に対する接着力は弱かった。そのため、塗膜と被塗装物との接着性を高めることを目的として、種々の方策が講じられてきた。
塗膜と被塗装物との接着性を高めるため、ヒドロキシル基、カルボキシル基等の官能基を有しフッ素を有しない炭化水素系単量体をコモノマーとする共重合体からなるフッ素樹脂を用いた塗料が検討されてきた。しかしながら、この塗料は、耐熱性に劣るので塗装時の焼成や、加熱される電球等としての使用において分解することがあり、耐摩耗性、非粘着性等も不充分であるという問題があった。
塗膜と被塗装物との接着力を高めるため、特開平9−157578号公報には、官能基含有含フッ素エチレン性単量体と官能基非含有含フッ素エチレン性単量体とを共重合し、得られるフッ素樹脂からなる塗料組成物が提案されている。しかしながら、この塗料組成物は、形成される塗膜の厚さが5μm程度であり、耐食性や耐摩耗性が充分でないという問題があった。
被塗装物との接着性のみならず、耐食性、耐摩耗性等をも有する塗膜を得るため、従来、被塗装物に予めプライマーを塗装し、次いでフッ素樹脂からなる塗料を塗装する2コート法が行われていた。しかしながら、2コート法では、被塗装物にプライマーを塗布し、乾燥、加熱等によりプライマー皮膜を形成させる工程が必要となることから、工程の簡略化や省エネルギー化が可能な塗装方法が望まれていた。
工程の簡略化や省エネルギー化等を目的として、フッ素樹脂とバインダー樹脂とからなる1つの塗料を、1回塗装するものである1コート法がある。この方法は、従来の2コート法により得られていたプライマー皮膜とフッ素樹脂からなる塗膜とを、1つの塗料を塗装することによって形成させようというものである。
1コート法により得られる塗膜は、被塗装物側に主としてバインダー樹脂が配置し、被塗装物から遠い塗膜表面側に主としてフッ素樹脂が配置するように形成されており、両成分は塗膜の被塗装物側から表面側にかけて、それぞれ濃度勾配を有するものである。このような濃度勾配を有する塗膜を得ることができる塗料は、傾斜型塗料と称されることがある。
フッ素樹脂からなる傾斜型塗料は、このようにバインダー樹脂とフッ素樹脂とを傾斜的に配置させた塗膜を形成することができるので、バインダー樹脂により被塗装物との接着性を持たせることができ、フッ素樹脂の持つ非粘着性等を生かして幅広い分野で利用されてきた。
しかしながら、被塗装物との接着性のため、バインダー樹脂としてポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルサルホン等の耐熱性樹脂を用いた塗料や、クロム酸等の無機酸を用いた塗料は、被塗装物表面を損ったり、塗膜を着色させたりするので、被塗装物の質感や意匠性が求められる用途には適さないという問題があった。
ガラス基材等に用いるフッ素樹脂からなる塗料に関し、特公平3−80741号公報、特開平5−177768号公報等には、この塗料にシリコーン樹脂を添加する方法、被塗装物表面をシランカップリング剤で処理する方法等が提案されている。しかし、得られる塗膜は、被塗装物への接着性に劣り、また、耐熱性と透光性が低下するので、例えば電球等の用途には適さないという問題があった。
このように、基材への接着性、耐熱性等のみならず、被塗装物の質感、無色透明性等の意匠性をも要求される用途には、従来の1コート法が適さない場合があった。意匠性に劣るという問題は、従来の2コート法を用い、フッ素樹脂からなる塗膜を厚くすることによっても解決することができないものである。
ガラス基材等は、また、衝撃時における飛散防止措置をとることが望ましい。飛散防止を目的として、国際公開第98/52748号パンフレットには、官能基を有する含フッ素単量体と、官能基を有さない含フッ素単量体とを特定のモル比で共重合してなる耐熱性ポリマーが開示されている。
従来の1コート法は、バインダー樹脂を含有する分散媒中に平均粒子径が約0.5μm以下のフッ素樹脂粒子が分散している傾斜型塗料を塗布し、得られる塗布膜を加熱することにより、フッ素樹脂の臨界表面張力が分散媒よりも低いことを利用して、浮力によりフッ素樹脂を表面に浮上させるものである。
しかしながら、従来の1コート法では、分散媒中にバインダー樹脂とフッ素樹脂とを分散させるために界面活性剤が用いられていること等に関係して、フッ素樹脂からなる塗膜表面の層は重ね塗りをしても薄くないとクラックを生じ、充分な膜厚が得られなかった。このため、フッ素樹脂が本来有する耐食性、非粘着性等の優れた特性が充分に発揮されないのみならず、耐久性にも劣るという問題があった。
従来の1コート法では、また、表面張力の差を利用して含有される樹脂の濃度勾配を起させるものであり、表面張力の低い方の成分が塗膜の表面側に浮上するので、臨界表面張力が低い方の材料の上に、これよりも臨界表面張力の高い材料を形成させることができず、適用範囲が限られるという問題があった。
特許第2814911号公報には、フッ素樹脂粒子、界面活性剤及び液状媒体を含有するフッ素樹脂塗料組成物において、平均粒子径5〜50μmのテトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体〔PFA〕粒子20〜80重量%と、平均粒子径0.1〜1μmのPFA粒子80〜20重量%とからなるPFA粒子を用いるものが開示されており、PFA粒子の再分散性が改善されるという記載がある。しかしながら、この公報では、使用するフッ素樹脂粒子は種類が同一であり、また、粒子径の差により傾斜型塗膜が得られることに関して何ら記載も示唆もない。
発明の要約
本発明の目的は、上記の現状に鑑み、1コート法により、任意のフッ素樹脂を2コート法に匹敵する厚さで表面に形成させることができ、従来の表面張力により限定されていた2層の組合せ範囲を拡大して幅広く応用することができる塗料組成物を提供することにある。本発明の目的は、このような塗料組成物であって、更に、被塗装物への高い接着性、耐食性、耐摩耗性、耐熱性、非粘着性及び透明性を兼ね備えた塗膜を得ることができるものを提供し、塗装して得られる各種塗装物を提供することにある。
本発明は、平均粒子径が1〜1000μmである溶融性フッ素樹脂及び平均粒子径が0.005〜0.5μmである含フッ素高分子を配合して得られることを特徴とする含フッ素塗料組成物である。
本発明は、平均粒子径が1〜30μmである溶融性フッ素樹脂及び平均粒子径が0.005〜0.5μmである含フッ素高分子を配合して得られる含フッ素塗料組成物であって、上記溶融性フッ素樹脂の容量は、上記溶融性フッ素樹脂の容量及び含フッ素高分子の容量の合計の35〜95%であることを特徴とする含フッ素塗料組成物である。
本発明は、平均粒子径が1〜1000μmである溶融性フッ素樹脂及び平均粒子径が0.005〜0.3μmである含フッ素高分子を液状媒体に分散してなる含フッ素塗料組成物であって、上記含フッ素高分子は、官能基含有含フッ素エチレン性単量体(a)及び官能基非含有含フッ素エチレン性単量体(b)を共重合することにより得られるものであって、上記官能基含有含フッ素エチレン性単量体(a)は、官能基を有するものであり、上記官能基は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、塩を形成しているカルボキシル基、アルコキシカルボニル基又はエポキシ基であり、上記官能基非含有含フッ素エチレン性単量体(b)は、上記官能基を有しないものであることを特徴とする含フッ素塗料組成物である。
本発明は、上記含フッ素塗料組成物を塗装することにより得られることを特徴とする塗膜である。
本発明は、上記塗膜を有することを特徴とする塗装物である。
以下に本発明を詳細に説明する。
発明の詳細な開示
本発明の含フッ素塗料組成物は、含フッ素高分子及び溶融性フッ素樹脂を配合して得られるものである。上記含フッ素高分子は、上記溶融性フッ素樹脂とは、後述のように平均粒子径が異なるものである点で概念上異なるものである。
本発明の含フッ素塗料組成物は、基材等の被塗装物に塗布し、得られる塗布膜を必要に応じて加熱して乾燥した後、焼成することにより塗膜を形成することができるものである。
本発明の含フッ素塗料組成物は、被塗装物に塗布したときに、得られる上記塗布膜において、上記含フッ素高分子及び上記溶融性フッ素樹脂からなる2つの成分のうち、平均粒子径が相対的に大きい成分の粒子が上記塗布膜中の上層部を構成するように積層する。上記2つの成分のうち平均粒子径が相対的に小さい成分の粒子は、上記積層する粒子の間に入り込み、更に、上記上層部の下に下層部として配置される。上記2つの成分の粒子は、このように上記塗布膜において、充填又はほぼ充填された充填構造を形成することとなる。
本明細書において、塗料組成物又は塗料を被塗装物に塗布して得られる塗布膜中、被塗装物側に位置するものを下層部といい、被塗装物から遠い距離にある側、即ち上記塗布膜の表面側に位置するものを上層部ということがある。
平均粒子径が相対的に小さい成分としては、その粒子が上記積層する粒子の間に入り込むことができるようなものであればよい。従って、これらの粒子が球形であると仮定する場合、上記平均粒子径が相対的に小さい成分の平均粒子径は、上記平均粒子径が相対的に大きい成分の平均粒子径の15%以下であることが必要である。
上記平均粒子径が相対的に小さい成分の平均粒子径は、上記平均粒子径が相対的に大きい成分の粒子間の空隙を充分に確保し得る点から、上記平均粒子径が相対的に大きい成分の0.05〜1%であることが好ましい。0.05%未満であると、上記塗膜中の下層部である被塗装物との接触面を充填することが困難となって、被塗装物との接着力が不充分となることがある。1%を超えると、粒子の形状、形状の揃い方等によっては、上記平均粒子径が相対的に大きい成分の粒子間の空隙に入り込んで上記被塗装物との接触面を充分に充填することができずに被塗装物との接着力が不充分となることがある。
上記平均粒子径が相対的に小さい成分の平均粒子径としては、上記充填構造における粒子の配列等を考慮すると、0.5μm以下である。0.5μmを超えると、後述するように平均粒子径が相対的に小さい成分である含フッ素高分子が通常乳化重合により合成されるところ、このような平均粒子径を有するものを得ることが困難である。好ましくは、0.3μm以下である。上記平均粒子径が相対的に小さい成分の平均粒子径としては、また、造膜性等を考慮すると、0.005μm以上が好ましい。より好ましい下限は、0.01μmであり、より好ましい上限は0.15μmである。
上記平均粒子径が相対的に大きい成分の平均粒子径としては、上記平均粒子径が相対的に小さい成分の平均粒子径及びこの平均粒子径との比率、塗料組成物の分散安定性、塗装の均一性、造膜性、得られる塗膜の厚膜化等を考慮すると、平均粒子径が1〜1000μmであることが好ましい。
本発明の含フッ素塗料組成物は、上記平均粒子径が相対的に大きい成分として上記溶融性フッ素樹脂を用いて上記塗膜中の上層部に形成させ、上記平均粒子径が相対的に小さい成分として上記含フッ素高分子を用いて上記含フッ素高分子を上記塗膜中の下層部に形成させるものである。
従って、本発明の含フッ素塗料組成物は、平均粒子径が1〜1000μmである溶融性フッ素樹脂、及び、平均粒子径が0.005〜0.5μmである含フッ素高分子を配合して得られることを特徴とするものである。平均粒子径がそれぞれ上記範囲内である上記溶融性フッ素樹脂と上記含フッ素高分子とを配合することにより、上述のように、上記充填構造を適切に形成することができ、優れた造膜性を得ることができる。
本発明の含フッ素塗料組成物は、上記溶融性フッ素樹脂として平均粒子径が1〜30μmであるもの、及び、上記含フッ素高分子として平均粒子径が0.005〜0.5μmであるものを配合して得られるものであってよい。
本発明の含フッ素塗料組成物は、得られる塗膜における上記下層部における上記含フッ素高分子の充填性を高くし、被塗装物との接着性をより高めることができる点から、平均粒子径が1〜1000μmである溶融性フッ素樹脂及び平均粒子径が0.005〜0.3μmである含フッ素高分子を配合してなるものであることが好ましい。
上記塗布膜における粒子の配置は、このように、上記塗布膜を形成する2つの成分間の平均粒子径の差に基づくものである。即ち、上記上層部において、上記平均粒子径が相対的に大きい成分の粒子が、隙間の部分の体積が小さくなるように密に詰めて積層され、密な詰め込み構造を形成し、この隙間の部分に、上記平均粒子径が相対的に小さい成分の粒子が入り込み、上記隙間の部分を充填又はほぼ充填することとなる。
上記密な詰め込み構造において、上記平均粒子径が相対的に大きい成分の粒子が占める体積及び上記隙間の部分の体積の合計に対する上記隙間の部分の体積の合計の比率として表される空隙率は、上記平均粒子径が相対的に大きい成分の粒子の真球度、形状の揃い方の程度等による。
なお、上記平均粒子径が相対的に大きい成分の粒子が、同じ大きさの径を有する球形であり、上記隙間の部分の体積が最小となるように密に詰められた場合は、最密構造を形成し、このときの空隙率は、最密充填の場合に25.95%であり、また、立方充填の場合に47.64%であると計算されている。
本発明の含フッ素塗料組成物においては、上記2つの成分の粒子は、実際上、完全な球形ではない。実際上の粒子として、例えば球形に近い粉体である場合、空隙率は33〜66%であるとされている(粉体工学/基礎編、槙書店、1974初版、91頁)。
従って、本発明の含フッ素塗料組成物において、上記平均粒子径が相対的に大きい成分として上記溶融性フッ素樹脂を用い、上記平均粒子径が相対的に小さい成分として上記含フッ素高分子を用いて、上記溶融性フッ素樹脂を表面層に形成させるためには、上記溶融性フッ素樹脂の容量及び上記含フッ素高分子の容量の合計に対する上記溶融性フッ素樹脂の容量は、35%以上であることが必要である。
本明細書において、上記「溶融性フッ素樹脂の容量」とは、上記溶融性フッ素樹脂の粒子が占める体積を意味する。本明細書において、上記「含フッ素高分子の容量」とは、上記含フッ素高分子の粒子が占める体積を意味する。上記溶融性フッ素樹脂の容量又は上記含フッ素高分子の容量は、それぞれ液状媒体に分散された状態にある場合、この液状媒体の体積のうち、上記溶融性フッ素樹脂の粒子が占める体積、又は、上記含フッ素高分子の粒子が占める体積である。
上記平均粒子径が相対的に小さい成分の粒子が上記上層部下に下層部として配置されるためには、上記平均粒子径が相対的に小さい成分として、上記上層部における隙間の部分の容量と上記下層部の容量に相当する容量を占めるように配合するとよい。
上記溶融性フッ素樹脂と上記含フッ素高分子との容量比は、用いる上記溶融性フッ素樹脂の比重と、上記含フッ素高分子の比重とを用いることにより、上記溶融性フッ素樹脂と上記含フッ素高分子との固形分重量比として表すことができる。本発明の含フッ素塗料組成物において用いることのできる一般的な含フッ素高分子の比重は、1.6〜2.2である。
本明細書において、上記「溶融性フッ素樹脂と含フッ素高分子との固形分重量比」とは、上記溶融性フッ素樹脂の固形分の重量と、上記含フッ素高分子の固形分の重量との比を意味する。本明細書において、上記固形分の重量は、液状媒体に分散された状態においては、この液状媒体に分散された状態における溶融性フッ素樹脂の粒子の重量と含フッ素高分子の粒子の重量である。
本発明の含フッ素塗料組成物は、上述のように、平均粒子径が1〜1000μmである溶融性フッ素樹脂及び平均粒子径が0.005〜0.5μmである含フッ素高分子を配合して得られることを特徴とするものであり、この場合、上記溶融性フッ素樹脂の固形分重量は、上記溶融性フッ素樹脂の固形分重量及び上記含フッ素高分子の固形分重量の合計の35〜99.9%であることが好ましい。この範囲内の固形分重量比であると、上記塗膜中の下層部に上記含フッ素高分子を充分に充填させて、得られる塗膜と被塗装物との接着性を優れたものにすることができる。
本発明の含フッ素塗料組成物は、平均粒子径が1〜30μmである溶融性フッ素樹脂及び平均粒子径が0.005〜0.5μmである含フッ素高分子を配合して得られるものである場合、上記溶融性フッ素樹脂が主として上記上層部に含有されるようにする場合、上記溶融性フッ素樹脂の容量が、上記溶融性フッ素樹脂の容量及び上記含フッ素高分子の容量の合計の35〜95%であってもよい。上記溶融性フッ素樹脂の容量が上記溶融性フッ素樹脂の容量及び上記含フッ素高分子の容量の合計の35%未満であると、上記上層部として上記フッ素樹脂層が適切に形成されず、欠陥を生じたものとなるので好ましくなく、95%を超えると、含フッ素高分子の量が少なくなりすぎて、上記下層部として要求される上記含フッ素高分子の接着性等の物性が充分に発揮されない場合がある。好ましくは、上記溶融性フッ素樹脂の容量及び上記含フッ素高分子の容量の合計の50〜95%であり、より好ましくは、70〜95%である。
本発明の含フッ素塗料組成物は、平均粒子径が1〜1000μmである溶融性フッ素樹脂及び平均粒子径が0.005〜0.3μmである含フッ素高分子を配合して得られるものである場合、上記溶融性フッ素樹脂の固形分重量は、上記溶融性フッ素樹脂の固形分重量及び上記含フッ素高分子の固形分重量の合計の70〜99.9%であることが好ましい。この範囲内の平均粒子径及び固形分重量比であると、上記塗膜中の下層部に上記含フッ素高分子を充分量充填させ、被塗装物との接着性を向上することができる。更に好ましい下限は上記溶融性フッ素樹脂の固形分重量及び上記含フッ素高分子の固形分重量の合計の80%であり、更に好ましい上限は98%である。
このように、上記塗布膜を形成する2つの成分が、上述のように充填構造を形成することは、上記2つの成分の平均粒子径の差と、両成分の適切な配合比に基づくものである。
上述の充填構造を有する塗布膜は、次いで、必要に応じて加熱により乾燥した後、焼成する。上記焼成により、上記上層部の成分が融解し、これに伴って上記上層部を構成する上記平均粒子径が相対的に大きい成分の粒子が自らの表面張力により集まって成膜する(フィルム化)。
上記焼成により、上記下層部は、上記下層部を構成する成分の種類や化学構造等に応じて、架橋して硬化膜を形成したり、溶融後架橋せずに冷却されることにより成膜する。上記下層部は、上記上層部の成分を浮上させやすい点から、架橋して硬化膜を形成するものであることが好ましい。
上記焼成により、このように塗膜表面側に上記平均粒子径が相対的に大きい成分を主として含有し、塗膜の被塗装物側に上記平均粒子径が相対的に小さい成分を主として含有するように、塗膜が形成される。なお、上記下層部に上記平均粒子径が相対的に大きい成分の粒子が残存する場合、上記残存する粒子は上記下層部を構成する主成分中に取り込まれたまま膜が形成される。
本明細書において、塗布及び焼成を経て得られる塗膜のうち、上記溶融性フッ素樹脂を主として含有する層をフッ素樹脂層といい、上記含フッ素高分子を主として含有する層を含フッ素高分子層という。上記フッ素樹脂層は、上記含フッ素高分子及び必要に応じて本発明の含フッ素塗料組成物に含有されるその他の成分を少量含有していてもよい。上記含フッ素高分子層は、上記溶融性フッ素樹脂及び上記その他の成分を少量含有していてもよい。
上記フッ素樹脂層及び上記含フッ素高分子層は、通常、これらの両層において上記溶融性フッ素樹脂及び上記含フッ素高分子は、それぞれ濃度勾配を有しているものである。このように濃度勾配を有している塗膜を、傾斜塗膜ということがある。これら両層の境界は、例えば、薄く切断した断面を偏向顕微鏡を用いてフィルターを調製することにより確認することができる。
本発明の含フッ素塗料組成物は、上記機構により塗膜を形成するので、上記フッ素樹脂層として、従来の表面張力差を利用した傾斜型塗料により通常約1μm前後の厚さを有するものしか得られなかったことに比べ、有意に厚いもの、好ましくは3〜15μmの厚さを有するものを得ることができる。
本発明の含フッ素塗料組成物は、また、上記機構により塗膜を形成するので、上記溶融性フッ素樹脂と上記含フッ素高分子の平均粒子径を上述の範囲内で調整することにより、フッ素樹脂層の厚みを調整することができる。
このように、比較的厚い上記フッ素樹脂層を形成することは、従来、1コート法を用いることによっては、実現されていなかったが、本発明の含フッ素塗料組成物は、1コート法により実現することができるものである。
本発明の含フッ素塗料組成物に配合される上記溶融性フッ素樹脂は、上述のように、平均粒子径が通常1〜1000μmであるものである。上記範囲内であると、造膜性に優れ、充分な膜厚を有する塗膜を均一に得ることができる。
1μm未満であると、焼成時に塗膜にクラックが発生しやすく、充分な膜厚を有する塗膜が得られないことがあり、1000μmを超えると、本発明の含フッ素塗料組成物の分散体において、上記溶融性フッ素樹脂及び上記含フッ素高分子からなる粉末が沈降しやすくなるので分散状態が安定せず、均一な塗装が困難になることがある。好ましくは、1〜300μmであり、更に好ましくは、1〜50μmであり、より好ましくは、1〜30μmである。
本発明の含フッ素塗料組成物に配合される上記溶融性フッ素樹脂は、上述のように平均粒子径が1〜30μmであってもよい。1μm未満であると、上記フッ素樹脂層の厚さが充分でなく、30μmを超えると、得られる塗膜表面の平滑性が悪くなる場合がある。従来の傾斜型塗料で得られる塗膜の表面層は厚さが約1μm前後のものであり、チューブ等の用途においては約30μmの厚さのフッ素樹脂層が得られていたが、塗膜の表面側に3〜15μmの厚さのフッ素樹脂層を有するものは従来なかった。しかしながら、塗膜の表面側に3〜15μmの厚さのフッ素樹脂層を有するものは、市場のニーズがあり、このような膜厚を容易に得ることができるので、上記平均粒子径の好ましい下限は2μmであり、より好ましい上限は20μmである。
上記溶融性フッ素樹脂としては、単量体成分として、例えば、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン等のクロロフルオロビニル単量体;テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)等のパーフルオロ単量体等を1種又は2種以上用いて重合することにより得られるもの等が挙げられる。上記単量体成分としては、更に、エチレン、プロピレン等のフッ素原子を有しないビニル単量体の1種又は2種以上を含むものであってもよい。上記パーフルオロ単量体は、主鎖が炭素原子及びフッ素原子並びに場合により酸素原子から構成され、CH又はCHを有しないものであり、パーフルオロビニル単量体及びパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)単量体を含むものである。上記酸素原子は、通常、エーテル酸素である。
上記溶融性フッ素樹脂としては、また、上記単量体成分とともに少量を共重合させるコモノマーとして、ヒドロキシル基、カルボニル基等の官能基を有する単量体を用いてもよく、環状の構造を有する単量体を用いてもよい。上記環状の構造としては、例えば、環状アセタール構造等の環状エーテル構造を有するもの等が挙げられ、好ましくは上記環状エーテル構造を構成する少なくとも2個の炭素原子が上記溶融性フッ素樹脂の主鎖の一部となっているものである。
上記溶融性フッ素樹脂としては、例えば、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体〔ETFE〕、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体〔ECTFE〕、プロピレン/テトラフルオロエチレン共重合体等のアルキレン/フルオロアルキレン共重合体;テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体〔FEP〕、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体〔PFA〕、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)/ヘキサフルオロプロピレン共重合体〔EPA〕等のパーフルオロポリマーが挙げられる。上記パーフルオロポリマーは、上記パーフルオロ単量体を単量体成分とするものである。
上記溶融性フッ素樹脂としては、上に例示したETFE、FEP、PFA、EPA、プロピレン/テトラフルオロエチレン共重合体等のテトラフルオロエチレン系共重合体;ECTFE、ポリクロロトリフルオロエチレン〔PCTFE〕等のクロロトリフルオロエチレン系共重合体;ポリフッ化ビニリデン〔PVdF〕等のフッ化ビニリデン系共重合体等であってもよい。
本明細書において、上記「テトラフルオロエチレン系共重合体」、上記「クロロトリフルオロエチレン系共重合体」、上記「フッ化ビニリデン系共重合体」とは、それぞれテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデンをコモノマーとして用いて共重合されたものを意味する。
上記溶融性フッ素樹脂としては、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記溶融性フッ素樹脂としては、用途により異なるが、上記パーフルオロポリマーが好ましい。上記パーフルオロポリマーは、非粘着性や耐食性に優れ、従来の方法を用いて多くの分野で利用されていたものの、従来の傾斜型塗料としては塗膜表面層を厚く形成することができなかったことから、用途が限定されていた。しかしながら、本発明の含フッ素塗料組成物を用いることにより、上記パーフルオロポリマーを主として含有する上記フッ素樹脂層を1コート法で従来よりも厚く形成することが可能となる。
上記パーフルオロポリマーとしては、コモノマーとしてテトラフルオロエチレンを用いて共重合されたものがより好ましく、その他のコモノマーとしての上記パーフルオロ単量体としては特に限定されない。このようなテトラフルオロエチレン系共重合体としては、耐食性、耐熱性、耐摩耗性、非粘着性等に特に優れる点から、FEP、PFA、EPAが好ましく、FEP、PFAがより好ましい。
上記溶融性フッ素樹脂としては、融点が150〜350℃であるものが好ましい。上記範囲内の融点であると、本発明の含フッ素塗料組成物を塗布した後の焼成において、上記溶融性フッ素樹脂と上記含フッ素高分子との層分離を促進して被塗装物との接着性を向上することができ、また、機械的強度等の塗膜物性に優れた塗膜を得やすい。
上記溶融性フッ素樹脂は、融点が200℃以上のものであることが好ましい。従来の傾斜型塗料では、融点が200℃以上のフッ素樹脂を塗膜表面側に厚く形成することが困難であったが、本発明の含フッ素塗料組成物を用いることによりこのような溶融性フッ素樹脂であっても好適に用いることができる。
上記溶融性フッ素樹脂は、融点が200〜350℃であるものがより好ましい。
上記溶融性フッ素樹脂としては、融点が上記範囲内であり、融点よりも50℃高い温度における溶融粘度が10Pa・s以下であるものが好ましい。このようなものであると、本発明の含フッ素塗料組成物を塗布した後の焼成時に充分な流れ性を有し、上記溶融性フッ素樹脂と上記含フッ素高分子との層分離を充分に行い、被塗装物との接着性を向上することができる。上記温度における溶融粘度は、上記範囲内であれば、例えば10Pa・s以上であってもよく、より好ましい下限は、10Pa・sであり、より好ましい上限は10Pa・sである。
上記溶融性フッ素樹脂は、粉末として調製することができ、上記粉末の見掛密度が、通常、0.3〜1.5g/mlであることが好ましい。0.3g/ml未満であると、上記粉末の分散性が低下し、本発明の含フッ素塗料組成物を塗布した後の焼成時に泡の抱き込みやレベリング性不良が起こりやすく、1.5g/mlを超えると、上記粉末が沈降しやすくなり、本発明の含フッ素塗料組成物における分散安定性が低下しやすい。より好ましい下限は0.5g/mlであり、より好ましい上限は1g/mlである。
本発明の含フッ素塗料組成物は、上記溶融性フッ素樹脂とともに、上記含フッ素高分子を配合して得られるものである。上記含フッ素高分子は、本発明の含フッ素塗料組成物が耐熱性や耐蝕性を重視する用途に用いられる場合に、特に好適である。
上記含フッ素高分子としては、単量体成分として、例えば、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)等の含フッ素ビニル単量体の1種又は2種以上、及び、必要に応じ、エチレン、プロピレン等のその他のビニル単量体の1種又は2種以上を用いて重合することにより得られるもの等が挙げられる。
上記含フッ素高分子としては、例えば、フッ化ビニル/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニル/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン重合体〔PTFE〕、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体、プロピレン/テトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体等が挙げられる。なお、本発明においては、モノマーが全て同じ種類である重合体を上記溶融性フッ素樹脂と上記含フッ素高分子との両方に用いない概念である。
上記含フッ素高分子としては、PTFEである場合、本発明の含フッ素塗料組成物を用いることによりPTFE上に上記目的とするフッ素樹脂を厚く形成することができ、このフッ素樹脂層の優れた効果を特に生かすことができる。
PTFEは、安価であり耐熱性に優れる点から多く用いられるが、非粘着性、薬品浸透性、水蒸気浸透性等の改良が望まれており、これらの特性の改良を目的として、上記溶融性フッ素樹脂を表面に配した塗膜が要求されていた。このような塗膜を形成させ得るものとして従来用いられていたものは、ディスパージョン同士のブレンドであるので、上記溶融性フッ素樹脂を選択的に充分な量で表面に浮上させることができず、上記特性の改良は不充分であった。本発明の含フッ素塗料組成物は、2種類のフッ素樹脂を用いることにより、厚さ3〜15μmの上記フッ素樹脂層を表面側に有する傾斜塗膜を形成することができるので、上記要求を充分に満足するものである。
PTFEとしては、従来のテトラフルオロエチレン単独重合体であってもよいが、上記溶融性フッ素樹脂との接着性に優れる点から、変性PTFEであることが好ましい。上記変性PTFEとしては、単量体成分として、テトラフルオロエチレンとともに、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、クロロトリフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロピレンからなる群より選ばれる少なくとも1つを、単量体成分全量の0.5質量%以下の割合で用いて共重合させることにより得られるものである。
上記含フッ素高分子としては、フッ素ゴムであってもよい。上記含フッ素高分子としてフッ素ゴムを用いる場合、上記フッ素ゴムにより柔軟性を付与することができ、塗膜表面側の上記溶融性フッ素樹脂により非粘着性、耐薬品性等を付与することができる。本明細書において、上記フッ素ゴムとは、上記含フッ素高分子であって、融点を持たず、ガラス転位点が5℃以下のものを意味する。
上記フッ素ゴムとしては特に限定されず、例えば、コモノマーとしてフッ化ビニリデンを含むものであるフッ化ビニリデン系共重合体、コモノマーとしてテトラフルオロエチレンを含むものであるテトラフルオロエチレン系共重合体、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フォスファーゼン系ゴム等が挙げられる。上記フッ化ビニリデン系共重合体としては、例えば、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン/クロロトリフルオロエチレン共重合体等が挙げられる。上記テトラフルオロエチレン系共重合体としては、例えば、テトラフルオロエチレン/プロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体等が挙げられる。
上記フッ素ゴムには、耐熱性や機械強度の向上等のため、通常、架橋剤、受酸剤、架橋促進剤等を併用し、更に必要に応じて顔料等を併用する。上記架橋剤としては、通常、多価アミン、ポリオール、パーオキサイド等が挙げられる。上記受酸剤は、架橋補助のため、発生するフッ化水素酸をトラップするためのものであり、例えば、金属酸化物等が挙げられる。上記架橋促進剤としては、例えば、3級アミン、ホスホニウム化合物等が挙げられる。
上記含フッ素高分子としては、また、被塗装物と化学的に結合することができる官能基を有するものであってもよい。上記被塗装物は、この被塗装物上に本発明の含フッ素塗料組成物が塗布されるものである。上記被塗装物は、本明細書において、基材ということがある。
上記被塗装物と化学的に結合することができる官能基は、上記含フッ素高分子の分子間や分子内での架橋反応に寄与するものであってもよいが、上記含フッ素高分子は、このような官能基を有することにより、上記含フッ素高分子の分子間や分子内で架橋反応が進行した場合においても、被塗装物との化学的結合がなされ、被塗装物から剥離しにくい。従って、被塗装物との接着性を向上させる点から、上記含フッ素高分子は、官能基を有するものであることが好ましい。
上記被塗装物と化学的に結合することができる官能基としては、例えば、ヒドロキシル基、グリシジル基、カルボニル基、イソシアネート基、チオニル基、アミノ基、燐酸基、アルコキシル基、カルボキシル基、塩を形成しているカルボキシル基、アルコキシカルボニル基、エポキシ基等が挙げられる。このような官能基を有する上記含フッ素高分子を用いると、プライマーを用いずにフッ素樹脂を用いることのみによっても被塗装物に接着した塗膜を形成することができる。
上記官能基は、被塗装物への接着性に特に優れる点から、ヒドロキシル基、カルボキシル基、塩を形成しているカルボキシル基、アルコキシカルボニル基及び/又はエポキシ基であることが好ましい。
本明細書において、上記「塩を形成しているカルボキシル基」とは、1価又は2価の陽イオンを形成することができる原子又は原子団がカルボキシル基の水素の代わりに結合したものを意味する。上記塩を形成しているカルボキシル基は、後述の液状媒体中、特に水又は水溶性溶剤を含む液状媒体中において、イオン化するものであってもよい。上記陽イオンを形成することができる原子又は原子団としては特に限定されず、例えば、K、Na、Ca、Fe、NH等が挙げられ、これらは、上記含フッ素高分子の1分子中、及び/又は、上記含フッ素高分子の複数の分子間において、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
上記エポキシ基は、通常、炭素鎖によって結合している2原子の炭素と1原子の酸素が架橋して結合したものであり、上記酸素と結合している2原子の炭素間の上記炭素鎖における炭素数としては特に限定されない。本発明においては、反応性が高く、被塗装物との化学的結合に寄与しやすい点から、1,2−エポキシ基及び1,3−エポキシ基が好ましく、1,2−エポキシ基がより好ましい。
上記被塗装物と化学的に結合することができる官能基としては、重合開始剤由来の官能基として上記含フッ素高分子が末端に有するものと同じ種類の基である場合があるが、上記重合開始剤由来の官能基として有するものとは別に上記含フッ素高分子が分子中に有することが好ましい。
上記含フッ素高分子としては、また、上記単量体成分とともに少量を共重合させるコモノマーとして、ヒドロキシル基、カルボニル基等の官能基を有する単量体を用いてもよく、環状の構造を有する単量体を用いてもよい。上記環状の構造を有する単量体としては、例えば、上記溶融性フッ素樹脂の単量体成分として説明したものと同様のもの等が挙げられる。
上記含フッ素高分子は、官能基含有含フッ素エチレン性単量体(a)及び官能基非含有含フッ素エチレン性単量体(b)を共重合することにより得られるものであって、上記官能基含有含フッ素エチレン性単量体(a)は、官能基を有するものであり、上記官能基は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、塩を形成しているカルボキシル基、アルコキシカルボニル基又はエポキシ基であり、上記官能基非含有含フッ素エチレン性単量体(b)は、上記官能基を有しないものである。
上記含フッ素高分子は、このような官能基含有含フッ素エチレン性単量体(a)を単量体成分として共重合することにより、上記含フッ素高分子に官能基を導入することができ、しかも上記含フッ素高分子のポリマー鎖中に導入することができる。上記官能基により、従来より接着性があった被塗装物のみならず、従来接着が不可能又は不充分であった種々の被塗装物に対しても優れた接着性を有する塗膜を得ることができる。
上記官能基含有含フッ素エチレン性単量体(a)が含有する官能基として、ヒドロキシル基、カルボキシル基、塩を形成しているカルボキシル基、アルコキシカルボニル基又はエポキシ基のうち、用いる種類や組合せは、被塗装物表面の金属、ガラス等の材質の種類、用途により適宜選択することができるが、耐熱性の点から、ヒドロキシル基が好ましい。
上記官能基含有含フッ素エチレン性単量体(a)としては、官能基を有するものであり、上記官能基は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、塩を形成しているカルボキシル基、アルコキシカルボニル基又はエポキシ基であり、炭素原子に直接結合するフッ素原子を有するビニル基含有単量体であれば特に限定されないが、下記一般式(1)
Figure 0004254536
(式中、X及びXは同一又は異なって、水素原子又はフッ素原子であり、Rfは炭素数1〜40の二価のアルキレン基又は炭素数1〜40のエーテル結合を有する二価の含フッ素アルキレン基であり、Yはメチロール基、カルボキシル基、塩を形成しているカルボキシル基、アルコキシカルボニル基又はエポキシ基であり、上記メチロール基は炭素原子に結合する水素原子の1個又は2個が−CFにより置換されていてもよい)で表される含フッ素エチレン性単量体であることが好ましい。
このような官能基含有含フッ素エチレン性単量体(a)としては特に限定されず、例えば、下記式
Figure 0004254536
で表される化合物等が例示される。
上記官能基含有含フッ素エチレン性単量体(a)としては、官能基の安定性及び種々の被塗装物との接着性の点から、上記一般式(1)におけるYがメチロール基であるものがより好ましい。
上記官能基含有含フッ素エチレン性単量体(a)としては、1種又は2種以上を用いることができ、上記官能基が同一である上記官能基含有含フッ素エチレン性単量体(a)を1種又は2種以上用いてもよいし、用いる2種以上の上記官能基含有含フッ素エチレン性単量体(a)が含有する上記官能基がそれぞれ異なっていてもよい。
上記官能基非含有含フッ素エチレン性単量体(b)は、上記官能基含有含フッ素エチレン性単量体(a)が含有する上記官能基を有しないものであり、炭素原子に直接結合するフッ素原子を有するビニル基含有単量体である。
上記官能基非含有含フッ素エチレン性単量体(b)としては、このようなものであれば特に限定されないが、例えば、テトラフルオロエチレン、下記一般式(2)
Figure 0004254536
(式中、Rfは−CF又は−ORfである。Rfは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基である。)で表される化合物等のパーフルオロオレフィン又はパーフルオロ(アルキルビニルエーテル);クロロトリフルオロエチレン等のフッ素及びフッ素以外のハロゲンを有するパーハロオレフィン;
ビニリデンフルオライド、フッ化ビニル、ヘキサフルオロイソブテン、下記一般式
Figure 0004254536
(式中、Xは水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、nは1〜5の整数である。)で表される化合物、下記一般式
Figure 0004254536
(式中、Xは水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、mは1〜5の整数である。)で表される化合物等の水素を有するハロゲン化オレフィン等が挙げられる。
上記官能基非含有含フッ素エチレン性単量体(b)としては、1種又は2種以上を用いることができる。
上記官能基非含有含フッ素エチレン性単量体(b)としては、得られる塗膜と被塗装物との接着性が優れる点から、テトラフルオロエチレン、上記一般式(2)で表されるパーフルオロオレフィン、及び、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)等の上記一般式(2)で表されるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)が好ましい。
上記官能基非含有含フッ素エチレン性単量体(b)としては、得られる塗膜と被塗装物との接着性が特に優れる点から、テトラフルオロエチレンと、上記一般式(2)で表されるパーフルオロオレフィン又は上記一般式(2)で表されるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)とを組み合わせることがより好ましい。この場合、上記テトラフルオロエチレンのモル数が、上記テトラフルオロエチレンのモル数及び上記一般式(2)で表されるパーフルオロオレフィン又はパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)のモル数の合計の85〜99.7%であることが好ましい。
上記官能基含有含フッ素エチレン性単量体(a)のモル数は、上記官能基含有含フッ素エチレン性単量体(a)のモル数及び上記官能基非含有含フッ素エチレン性単量体(b)のモル数の合計の0.05〜30%であることが好ましい。上記官能基含有含フッ素エチレン性単量体(a)のモル数が0.05%未満であると、得られる塗膜と被塗装物との密着力が低下しやすく、30%を超えると、本発明の含フッ素塗料組成物の塗布後における焼成時に発泡が激しくなり、塗膜欠陥が出やすい。より好ましい上限は10%、更に好ましい上限は5%である。
上記含フッ素高分子は、上記官能基含有含フッ素エチレン性単量体(a)と上記官能基非含有含フッ素エチレン性単量体(b)に加えて、耐熱性を低下させない範囲内で、フッ素原子を有さないエチレン性単量体を共重合してもよい。この場合、フッ素原子を有さないエチレン性単量体は、耐熱性を低下させないために炭素数5以下のエチレン性単量体から選ばれることが好ましく、具体的にはエチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン等が挙げられる。
上記含フッ素高分子の粒子は、コア/シェル形の構造をとっているものであってもよい。上記コア/シェル形の構造としては、コア部分が上記官能基非含有含フッ素エチレン性単量体(b)を重合させて得られる高分子鎖からなり、シェル部分が上記官能基含有含フッ素エチレン性単量体(a)と上記官能基非含有含フッ素エチレン性単量体(b)とを共重合させて得られる高分子鎖からなる粒子であってもよい。コア部分の単量体成分は上記官能基含有含フッ素エチレン性単量体(a)を含有しないことが好ましい。このように官能基をシェル部分のみに導入することにより、用いる上記官能基含有含フッ素エチレン性単量体(a)を少量化することができ、経済的である。このようなコア/シェル形の構造は、例えば特開平4−154842号公報、特開平5−279579号公報等に記載されているような公知の方法を用いてシード重合すること等により、得ることができる。
上記含フッ素高分子としては、官能基含有フッ素樹脂であってもよい。上記官能基含有フッ素樹脂は、単量体成分として、上記含フッ素ビニル単量体の1種又は2種以上、及び、側鎖末端にヒドロキシル基、カルボニル基等の官能基を有する単量体を含み、共重合することにより得られるものである。上記含フッ素高分子は、上記官能基含有フッ素樹脂であると、上記側鎖末端の官能基が反応するので、架橋による硬化や、被塗装物との化学的結合を生じることによる接着性向上を可能にすることができる。
上記含フッ素高分子としては、少なくとも200℃において耐熱性を有するものであることが好ましい。200℃未満の温度で耐熱性を有しないものである場合、耐熱性、高温における柔軟性や耐久性が求められる用途に本発明の含フッ素塗料組成物を好適に用いることが困難となる。上記含フッ素高分子は、本発明の含フッ素塗料組成物の塗布後の焼成温度、塗膜形成後の使用温度に鑑み、通常、200〜350℃で耐熱性を有するものであればよい。
上記含フッ素高分子は、このように耐熱性に優れたものであることにより、非フッ素系の官能基含有単量体を共重合して得られる共重合体と異なり、上述のように官能基を含有していても、本発明の含フッ素塗料組成物を塗布した後に例えば200〜350℃等の高温で焼成する際であっても、熱分解性が低い。
本発明の含フッ素塗料組成物は、このように熱分解性が低いので、上記官能基を有する耐熱性の含フッ素高分子により、被塗装物との接着力が高く、着色、発泡、ピンホール、レベリング不良等のない塗膜を得ることができる。また、得られる塗装物を高温下で使用する場合であっても、塗膜は被塗装物との接着性を維持し、着色、白化、発泡、ピンホール等の塗膜欠陥を生じにくい。
上記含フッ素高分子としては、上述のように広範な材料を用いることができるので、本発明の含フッ素塗料組成物は応用範囲の広いものである。
上記含フッ素高分子は、上述のように、平均粒子径が0.005〜0.5μmである。上記含フッ素高分子としては、上記塗膜の下層部の充填性を高め、被塗装物との接着性を向上させることができる点から、平均粒子径が0.005〜0.3μmであって、被塗装物と化学的に結合することができる官能基を有するものが好ましい。この場合、上記官能基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、塩を形成しているカルボキシル基、アルコキシカルボニル基及び/又はエポキシ基が好ましく、これらの官能基は、これらの官能基を有する上記官能基含有含フッ素エチレン性単量体(a)を単量体成分として共重合することにより導入したものであることがより好ましい。
上記含フッ素高分子の平均粒子径が0.005〜0.3μmである場合、本発明の含フッ素塗料組成物において、上記含フッ素高分子が被塗装物と化学的に結合することができる官能基を有するものであり、上記溶融性フッ素樹脂の平均粒子径が1〜1000μmであることが好ましい。この場合、上記含フッ素高分子の平均粒子径としては、より好ましい下限は0.01μmであり、より好ましい上限は0.15μmである。
上記溶融性フッ素樹脂及び上記含フッ素高分子は、液状媒体に分散したものであることが好ましい。上記液状媒体としては、通常、溶剤として用いられているものを用いる。本発明の含フッ素塗料組成物は、上記溶剤としては、通常、水又は水溶性溶剤を含むものが、環境問題等で好ましい。上記水溶性溶剤は、水溶性の有機溶剤である。上記溶剤としては、水及び水溶性溶剤の混合物、並びに、水がより好ましい。
上記水溶性溶剤は、上記溶融性フッ素樹脂を濡らす働きを有する。上記水溶性溶剤は、高沸点のものである場合、上記溶融性フッ素樹脂を濡らすことに加え、本発明の含フッ素塗料組成物を塗布した後乾燥する際に上記溶融性フッ素樹脂相互間、上記含フッ素高分子相互間、及び/又は、上記溶融性フッ素樹脂と上記含フッ素高分子との間をつなぎ、クラックの発生を防止するための乾燥遅延剤としても作用する。上記水溶性溶剤が高沸点であっても、配合量が適当であれば、本発明の含フッ素塗料組成物の塗布後における焼成の温度において充分に揮発するので、得られる塗膜の耐熱性、非粘着性等の特性を低下させることはない。
上記水溶性溶剤としては特に限定されず、例えば、沸点が100℃未満である低沸点有機溶剤としてメタノール、エタノール、イソプロパノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン等;沸点が100〜150℃である中沸点有機溶剤としてトルエン、キシレン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルイソブチルケトン、n−ブタノール等;沸点が150℃を超える高沸点有機溶剤としてN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ケトシン、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジメチルカルビトール、ブチルジカルビトール、ブチルセロソルブ、シクロヘキサノール、ジイソブチルケトン、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等が挙げられる。上記高沸点有機溶剤としては、上記溶融性フッ素樹脂との濡れ性が良好であり、取扱いが容易である点から、アルコール系溶剤が好ましい。
これらの水溶性溶剤は、1種又は2種以上を用いることができる。上記水溶性溶剤は、塗膜の下層部の充填性を高め、下層部と上層部との層分離を促進し得る点から、上記高沸点有機溶剤を、上記低沸点有機溶剤及び/又は上記中沸点有機溶剤と混合して用いることが好ましい。
上記水溶性溶剤の配合量は、本発明の含フッ素塗料組成物における液状媒体の0.5〜50%であることが好ましい。低沸点有機溶剤の場合、配合量が少なすぎると泡の抱き込みが起こりやすくなり、配合量が多すぎると本発明の含フッ素塗料組成物が全体として引火性となって水性分散組成物の利点が損なわれることがある。中沸点有機溶剤の場合、配合量が少なすぎると本発明の含フッ素塗料組成物を塗布した後の乾燥時に溶融性フッ素樹脂が粉末に戻り、造膜性がなくなることがあり、配合量が多すぎると焼成後の塗膜に残留して塗膜物性が低下することがある。高沸点有機溶剤の場合、配合量が多すぎると焼成後の塗膜に残留して塗膜物性が低下することがある。より好ましい下限は1%であり、より好ましい上限は45%である。
上記水溶性溶剤の配合量に関し、本発明の含フッ素塗料組成物における液状媒体の量は、例えば上記含フッ素高分子を水性分散体として調製する場合における分散媒を含むものである。
本発明の含フッ素塗料組成物としては、上記塗膜の下層部を充分に充填することができ、被塗装物との接着性を高めることができる点から、平均粒子径が1〜1000μmである溶融性フッ素樹脂及び平均粒子径が0.005〜0.3μmである含フッ素高分子を液状媒体に分散してなる含フッ素塗料組成物であって、上記含フッ素高分子は、官能基含有含フッ素エチレン性単量体(a)及び官能基非含有含フッ素エチレン性単量体(b)を共重合することにより得られるものであって、上記官能基含有含フッ素エチレン性単量体(a)は、官能基を有するものであり、上記官能基は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、塩を形成しているカルボキシル基、アルコキシカルボニル基又はエポキシ基であり、上記官能基非含有含フッ素エチレン性単量体(b)は、上記官能基を含有しないものであることが好ましい。
本発明の含フッ素塗料組成物としては、また、上記塗膜の下層部を充分に充填し、下層部と上層部との層分離を促進することができ、被塗装物との接着性を高めることができる点から、平均粒子径が1〜1000μmである溶融性フッ素樹脂及び平均粒子径が0.005〜0.3μmである含フッ素高分子を配合して得られるものであり、上記含フッ素高分子が被塗装物と化学的に結合することができる官能基を有するものであり、上記溶融性フッ素樹脂の固形分重量は、上記溶融性フッ素樹脂の固形分重量及び上記含フッ素高分子の固形分重量の合計の70〜99.9%であるものが好ましい。この場合、上記官能基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、塩を形成しているカルボキシル基、アルコキシカルボニル基及び/又はエポキシ基が好ましく、これらの官能基は、これらの官能基を含有する上記官能基含有含フッ素エチレン性単量体(a)を単量体成分として共重合することにより導入したものであることがより好ましい。
上記平均粒子径の場合、上記溶融性フッ素樹脂の配合量が99.9重量%を超えると、上記含フッ素高分子の配合量が少なすぎ、被塗装物との接着に寄与する官能基が全体として少なくなるので接着性が不充分となり、上記溶融性フッ素樹脂の配合量が70重量%未満であると、上記含フッ素高分子の配合量が過剰になり、含フッ素高分子の粒子が被塗装物との接触面を充填し、更に積層することにより、被塗装物面上の粒子の官能基が、積層した粒子の官能基と反応して被塗装物との接着に寄与しないので、却って被塗装物との接着性が不充分となる。より好ましい下限は80重量%であり、より好ましい上限は98重量%である。
本発明の含フッ素塗料組成物は、上記溶融性フッ素樹脂及び上記含フッ素高分子と併用して、用途や必要に応じ、顔料、充填剤、粘度調整剤、増粘剤、造膜材、安定剤、分解促進剤、防錆剤、消泡剤等の種々の添加剤を配合することができる。これらの添加剤は、透明性の高い塗膜を得る点から、必要最小限の配合量にとどめることが好ましい。
本発明の含フッ素塗料組成物を調製する方法としては特に限定されず、例えば、従来公知の方法を用いることができ、例えば、上記溶融性フッ素樹脂、上記顔料、上記含フッ素高分子等を必要に応じて次のように前処理を施し、上記溶融性フッ素樹脂と上記含フッ素高分子が上述の容量比又は固形分重量比となるように適切な割合で混合して調製する。
本発明の含フッ素塗料組成物は、水溶性溶剤及び界面活性剤の存在下に、水に溶融性フッ素樹脂及び含フッ素高分子を均一に分散させることによって調製することができる。
上記溶融性フッ素樹脂としては、例えば特開昭63−270740号公報記載の方法等により粉末を製造し、通常、適宜分散剤を用いて溶媒に分散させる。上記分散剤の用い方としては、例えば、上記溶融性フッ素樹脂を低級アルコール、ケトン、芳香族炭化水素等の溶剤で濡らした後、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤等の分散剤で分散させる方法等を用いることができる。
上記溶融性フッ素樹脂の配合量は、本発明の含フッ素塗料組成物の全体重量の15〜80%である。15%未満であると、本発明の含フッ素塗料組成物の粘度が低くなって被塗装物に塗装してもタレを生じやすく、塗膜の膜厚が不充分となることがあり、80%を超えると、本発明の含フッ素塗料組成物が流動しにくくなり、塗装が不可能となることがある。好ましい下限は20%であり、好ましい上限は75%である。上記溶融性フッ素樹脂の配合量は、塗装法や膜厚の調整等を考慮して上記範囲内で適宜選択すればよいが、スプレー塗装やディップ塗装等の場合は比較的低濃度とし、押しつけ塗装等の場合はペースト状となる50%以上とすることが好ましい。
上記顔料は、通常、上記溶剤、上記含フッ素高分子、上記界面活性剤等をバスケットミル、ダイナモミル、ボールミル等の粉砕分散機で粉砕分散してから使用する。
上記含フッ素高分子は、平均粒子径が0.005〜0.5μmと小さいので、そのまま分散することができ、通常、乳化重合等で合成され、界面活性剤を用いて濃縮したものが用いられる。
本発明の含フッ素塗料組成物に用いることができる上記界面活性剤としては上記含フッ素塗料組成物中に本発明の含フッ素塗料組成物の全体重量の15〜80%の溶融性フッ素樹脂の粉末を均一に分散させ得るものであれば特に限定されず、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤の何れをも使用することができる。
上記界面活性剤としては、例えば、ナトリウムアルキルサルフェート、ナトリウムアルキルエーテルサルフェート、トリエタノールアミンアルキルサルフェート、トリエタノールアミンアルキルエーテルサルフェート、アンモニウムアルキルサルフェート、アンモニウムアルキルエーテルサルフェート、アルキルエーテルリン酸ナトリウム、フルオロアルキルカルボン酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤;アルキルアンモニウム塩、アルキルベンジルアンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、プロピレングリコール−プロピレンオキシド共重合体、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、2−エチルヘキサノールエチレンオキシド付加物等の非イオン性界面活性剤;アルキルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミド酢酸ベタイン、イミダゾリウムベタイン等の両性界面活性剤等が挙げられる。なかでも、アニオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤が好ましく、熱分解残量の少ないオキシエチレン鎖を有する非イオン性界面活性剤がより好ましい。
上記界面活性剤の配合量は、通常、溶融性フッ素樹脂の0.01〜50%である。0.01%未満であると、上記溶融性フッ素樹脂の粉末が均一に分散せず、一部浮上することがあり、50%を超えると、得られる塗膜に上記界面活性剤の分解残渣が多く残留して着色したり、耐熱性、非粘着性等の塗膜物性が低下することがある。好ましい下限は0.1%、より好ましい下限は0.2%であり、好ましい上限は30%、より好ましい上限は20%である。
本発明の含フッ素塗料組成物は、必要に応じ、適宜溶媒で希釈し、粘度調整剤等を用いて塗装しやすい粘度に調整して塗料化し、塗装してもよい。
上記含フッ素塗料組成物は、被塗装物上に塗装するために用いられるものであって、上記被塗装物は、金属、高分子化合物成形体、ガラス又は陶器からなるものであることが好ましい。
本明細書において、上記「高分子化合物成形体」とは、高分子化合物を成形することにより得られるものを意味する。上記高分子化合物としては特に限定されず、例えば、樹脂、ゴム等が挙げられるが、本発明の含フッ素塗料組成物の塗布後における焼成の温度と、得られる塗膜の使用温度に耐え得る点から、ポリイミド樹脂等の耐熱性樹脂及びシリコーンゴム等の耐熱性ゴムが好ましい。
本発明の含フッ素塗料組成物は、アルミニウム、ステンレス鋼(SUS)、鉄、耐熱樹脂、耐熱ゴム等の被塗装物に対し、必要に応じて脱脂、粗面化等の表面処理を行った後、スプレー等の方法を用いて塗装し、得られる塗布膜を乾燥後、上記溶融性フッ素樹脂の融点以上で焼成することにより、傾斜塗膜を形成させることができる。
本発明の含フッ素塗料組成物から得られる上記傾斜塗膜としては、上記溶融性フッ素樹脂の配合量によるが、表面層として3〜15μmの厚さを有する塗膜を得ることができる。このような傾斜塗膜は、従来の2コート法を用いて得られる皮膜に匹敵する厚さを有するものである。従って、本発明の含フッ素塗料組成物は、現在2コート法を用いて加工されている分野であっても、1コート法により好適に用いることができる。
本発明の含フッ素塗料組成物から得られる上記傾斜塗膜としては、例えば100μm程度の厚さにすることができる。
本発明の含フッ素塗料組成物から得られる上記傾斜塗膜には、必要に応じ、トップコート等の上塗り塗装を施してもよい。
本発明の含フッ素塗料組成物は、上述のように、相互に異なる平均粒子径、即ち、平均粒子径が1〜1000μmである溶融性フッ素樹脂及び平均粒子径が0.005〜0.5μmである含フッ素高分子の2つの成分を、上記特定の範囲内の容量比又は固形分重量比で配合して得られるものであるので、被塗装物に塗布することにより、1コート法により2コート法に匹敵する厚さでクラックを発生させることなく上記フッ素樹脂層を形成することができる。
本発明の含フッ素塗料組成物により厚膜化が可能となる機構としては明確ではないが、得られる傾斜塗膜において上層部に配置することとなる溶融性フッ素樹脂が上記範囲内のように比較的大きい平均粒子径を有することによるものと考えられる。なお、従来の一般的塗料では、フッ素樹脂の平均粒子径が比較的小さかったので、ある程度以上の膜厚にするとクラックを生じ、クラックは重ね塗りをしても抑制することができず、厚膜化ができなかったものと考えられる。
本発明の含フッ素塗料組成物は、このように、従来よりも厚い上記フッ素樹脂層を形成することができるので、上記溶融性フッ素樹脂の耐熱性、耐久性、耐摩耗性、耐食性、非粘着性等の優れた性質を充分に発揮させることができる。
本発明の含フッ素高分子は、また、上記含フッ素高分子の平均粒子径と上記溶融性フッ素樹脂の平均粒子径を調整することにより、上記含フッ素高分子が上記溶融性フッ素樹脂の臨界表面張力より高い臨界表面張力を有するものであっても、上記フッ素樹脂層の下、上の何れにも上記含フッ素高分子層を形成してなる塗膜を得ることができるものである。従って、本発明の含フッ素塗料組成物によると、得られる塗膜のうち上層部をなす成分の種類と、下層部をなす成分の種類とを任意に選択することができ、塗膜設計の幅や材料選択の余地を広げることができる。
このように、本発明の含フッ素塗料組成物は、従来2コート法又は2コート以上の塗布が必要とされていた用途であっても、1コート法により好適に用いることができる。本発明の含フッ素塗料組成物は、更に、上記含フッ素高分子として幅広い物質群から適宜選択することができ、これらを適切に選択することにより、用途に好適であるように適用し、使用に供することができる。
本発明の含フッ素塗料組成物は、また、1コート法により、被塗装物との接着性を良好にすることができるので、プライマーを塗装する必要がない。被塗装物がガラス、陶器等であっても、接着性を向上させることができるので、従来と異なり、例えば、ガラス基材表面をシランカップリング剤等で処理したり、シリコーン樹脂を塗料組成物中に添加する必要がない。
本発明の含フッ素塗料組成物は、更に、上述のように溶融性フッ素樹脂及び含フッ素高分子を配合して得られるものであり、クロム酸等の無機酸、又は、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルサルホン等の耐熱性樹脂を配合する必要がないことから、透明性の高い塗膜を得ることができるので、例えば、被塗装物の質感や意匠性を重視する用途においても好適に用いることができる。
本発明の含フッ素塗料組成物は、更に、ガラス、陶器等を被塗装物とする場合、衝撃時の飛散を効果的に防止することができる。
従って、本発明の含フッ素塗料組成物は、金属、高分子化合物成形体、ガラス、陶器等からなる様々な基材からなる物品に適用することにより、耐食性、耐摩耗性、耐熱性、非粘着性等を付与することができるとともに、塗膜の透明性、基材そのものの質感、意匠性等が求められる用途に使用することができる。
本発明の含フッ素塗料組成物を好適に適用することができるものとしては、例えば、得られる傾斜塗膜が表裏の性質が異なること等を利用して、例えば電気部品等が挙げられる。
本発明の含フッ素塗料組成物は、また、家電・厨房関係として、炊飯釜、ポット、ジャーポット、ホットプレート、アイロン、フライパン、ホームベーカリー等に用いることができ、工業用として、オフィスオートメーション〔OA〕機器用ロール、OA機器用ベルト、製紙ロール、フィルム製造用カレンダーロール、インジェクション金型等の離型用途;攪拌翼、タンク内面、ベッセル、塔、遠心分離器等の耐蝕用途等に、幅広く応用される。
本発明の含フッ素塗料組成物は、ガラスの飛散防止用途として、例えば、電球等の照明器具;CRTや液晶表示装置等の表示装置;ガラス窓等の建材;ガラス製食器、その他のガラス容器等の食器;ガラス製実験器具等の実験器具;防火ガラス、安全ガラス等の機能的ガラス等の各種ガラス製品、及び、これらの各種ガラス製品の材料に用いることができ、これらの場合、ガラスの透明性を維持することができる。
本発明の含フッ素塗料組成物は、上記溶融性フッ素樹脂により、非粘着性、摺動性等が得られ、上記フッ素樹脂層が厚いことから耐久性に優れるとともに、上記含フッ素高分子として上記弾性体としての含フッ素高分子を用いること等により、硬すぎないように柔軟性を向上することができるので、特に、OA機器ロール又はOA機器用ベルトに好適に用いることができる。
上記含フッ素高分子は、特に上記フッ素ゴムである場合、耐久性と柔軟性とを特に向上することができ、例えば、従来の方法では耐久性や柔軟性が充分に発揮されなかったOA機器用ロール、OA機器用ベルト等について用いる場合、耐久性が飛躍的に向上するとともに、従来よりも優れた柔軟性を発揮することができる。OA機器用ロール、OA機器用ベルト等は、従来、通常シリコーンゴムロール上にPFAが塗装され、良好な耐摩耗性が要求されるので、この点からも本発明の含フッ素塗料組成物は好適に用いることができる。
また、本発明の含フッ素塗料組成物は、上記含フッ素高分子として官能基含有フッ素樹脂を用いる場合、金属、シリコーンゴム、ポリイミドなどの基材に高い接着性を示すので、これらの基材に塗装することにより、OA機器用ロールやOA機器用ベルトとして好適に用いることができる。
近年、OA機器にはますます省エネルギー化が求められているが、高い熱効率でOA機器用ベルトを加熱する方法の一つとして、基材に金属製ベルトを用いた IH(誘導加熱)方式が提案されている。IH方式とは、交番磁場中に置いた磁性金属に、電磁誘導により渦電流が流れ、発熱することを利用したものである。この方法では、まず基材として磁性金属製のベルトを用いた場合、このベルトが発熱し、その後、熱伝導によりベルトの表層部が昇温してトナーを溶融させるに至る。このベルトの表層部は一般にフッ素樹脂層である。ここで、トナーを充分に溶融させて高画質の画像を得るために、基材とフッ素樹脂層等の表層部との間に、中間層としてシリコーンゴム層が設けられることがある。
一方で、OA機器には、起動時間の短縮が期待されており、ベルトの表層部がより短時間で発熱することが求められている。ここで、中間層としてシリコーンゴム層が設けられた構成では、ベルト基材の発熱とベルト表層の加熱に幾らかのタイムラグが生じるという課題がある。また、金属製ベルトは屈曲性に劣り、耐久性の点で不充分であった。
これらの課題は、中間層の少なくとも一部に磁性材料を配合したシリコーンゴム層を設け、表層として本発明の含フッ素塗料組成物からなる皮膜を設けることにより、解決することができる。すなわち、基材ではなく中間層が発熱するので、熱伝導によるタイムラグを抑えることが可能となる。
中間層に磁性材料を配合した場合には、中間層から基材側への熱伝導を防ぐために、熱伝導性の低いポリイミド等を基材とするベルトを用いることが望ましい。ポリイミドは剛性の点でも優れた性質を有しており、金属製ベルトに比較して耐久性が改善され、高速化に対応することも可能となる。
上記含フッ素塗料組成物を塗装することにより得られることを特徴とする塗膜もまた、本発明の一つである。
上記塗膜を有することを特徴とする塗装物もまた、本発明の一つである。
上記塗装物は、上記塗膜が被塗装物上に形成されたものであり、上記被塗装物は、金属、高分子化合物成形体、ガラス又は陶器からなるものであることが好ましい。
上記塗装物は、電球の材料であることが好ましい。
上記塗装物は、防火ガラスの材料又は安全ガラスの材料であることが好ましい。
上記塗装物は、ガラス製食器の材料又はガラス製実験器具の材料であることが好ましい。
上記塗装物は、OA機器用ロール又はOA機器用ベルトであることが好ましい。
発明を実施するための最良の形態
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
実施例1
粉砕で得られた平均粒子径12μmのPFA粉末70g、パーフルオロオクタニック酸のアンモニウム塩5g、イオン交換水100gをSUS製容器に入れ、攪拌機を用いてPFA粉末の表面をよく濡らして分散し、PFA分散体を得た。この分散体に、平均粒子径0.35μmのPTFE乳化重合60質量%分散体50g、界面活性剤としてノニオンHS210(日本油脂社製)濃縮品、増粘剤としてソディムラウリルサルフェート0.5gを添加し、よく分散を行い、塗料を得た。
この塗料をアルミニウム板(150mm×200mm×2mm)にスプレー塗装を行い、80℃で30分間乾燥後、380℃で20分間焼成し、塗膜の厚みが30μmである塗装物を得た。この塗膜を剥がし、ミクロトーム((独)ライカ社製)を用いて断面を薄く切断し、偏向顕微鏡でフィルターを調製し、境界が確認できるように調製しながら1000倍に拡大し、表面層(PFA層)の厚みを測定した。結果を表1に示す。
実施例2
PTFEの代わりに、テトラフルオロエチレン99.95質量部とパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)0.05質量部とを乳化重合して得た平均粒子径0.25μmの変性PTFE60質量%濃縮品を用いること以外は、実施例1と同様にして塗料を調製して塗膜を得、塗膜と表面層の厚みを測定した。結果を表1に示す。
実施例3〜6
溶融性フッ素樹脂の種類と平均粒子径及び変性PTFEの粒子径並びに配合比を表1に示すものにすること以外は実施例2と同様にして塗料を調製して塗膜を得、塗膜と表面層の厚みを作成した。結果を表1に示す。
実施例7
上記含フッ素高分子として、平均粒子径0.2〜0.3μmのフッ化ビニリデン系フッ素ゴム(ダイエルラテックスGL252CR−A、ダイキン工業社製)と受酸剤配合塗料(濃度50質量%、ダイキン工業社製)100gと、実施例1で用いたPFA分散体120g(PFA:フッ素ゴムの配合比70:30)とを分散させ、PFA入リフッ素ゴム塗料を得た。この塗料100質量部に対し、硬化剤(ダイエルラテックスGL200−B液、ダイキン工業社製)3質量部を配合して分散し、アルミニウム箔(厚さ100μm)の上に塗布し、室温で30分間乾燥後、80℃で30分間、320℃で60分間焼成を行い、塗膜を得た。
このアルミニウム箔付き塗膜をミクロトーム((独)ライカ社製)を用いて断面を薄く切断し、偏向顕微鏡でフィルターを調製し、境界が確認できるように調整しながら1000倍に拡大し、表面層(PFA層)の厚みを測定した。結果を表1に示す。
実施例8
PFA分散体に代えて実施例4で用いたFEP分散体を用いること以外は、実施例7と同様にして塗料を調製して塗膜を得、塗膜と表面層の厚みを測定した。結果を表1に示す。
実施例9
上記含フッ素高分子として、平均粒子径0.06μmの柔軟性PFA(テトラフルオロエチレン:パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)の質量比は53:47)の乳化重合物を用いること以外は実施例1と同様にして塗料を調製し、塗布、乾燥を行い、320℃で60分間焼成を行って塗膜を得、塗膜と表面層の厚みを測定した。結果を表1に示す。
実施例10
上記含フッ素高分子として、単量体成分として側鎖にOH基を有する単量体を単量体成分全量の2質量%で用いて乳化重合することにより得た平均粒子径0.07μmのPFA(官能基含有PFA)を用いること以外は実施例1と同様にして塗料を調製し、塗布、乾燥し、330℃で60分間焼成すること以外は実施例1と同様にして塗膜を得た。得られた塗装物はアルミニウムと強固に接着していたため、基材を厚さ100μmのアルミ箔に変え、同様な方法にて塗膜を作成しなおし、実施例7と同様な方法にて塗膜と表面層の厚みを測定した。結果を表1に示す。
比較例1〜比較例4
上記溶融性フッ素樹脂の種類と平均粒子径、上記含フッ素高分子の種類と平均粒子径、及び、配合比を表1に示すものにすること以外は実施例1と同様にして塗料を調製して塗膜を得、塗膜と表面層の厚みを作成した。結果を表1に示す。
Figure 0004254536
なお、用いた配合成分の各比重は、PTFE、PFA及びFEPが2.2、フッ素ゴムが1.75であった。
表1から、平均粒子径が1〜30μmの範囲内であるPFA又はFEPと、平均粒子径が0.005〜0.5μmの範囲内である上記含フッ素高分子とを、容量比が35:65〜95:5となるように配合して塗料を得、得られた実施例1〜10の塗膜は、表面層の厚みが2〜15μmであるのに対し、PFA又はFEPの平均粒子径が1μm未満である比較例1〜4では、表面層は形成が確認できないか又は厚みが1〜2μmであることがわかった。
製造例1 官能基を有する含フッ素高分子の製造
攪拌機、バルブ、圧力ゲージ、温度計を備えた3リットルガラスライニング製オートクレーブに純水1500ml、パーフルオロオクタン酸アンモニウム9.0gを入れ、窒素ガスで充分置換したのち、真空にし、エタンガス20mlを仕込んだ。次いで、下記式(3)
Figure 0004254536
で表されるパーフルオロー(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサ−8−ノネノール)3.8g、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)〔PPVE〕18gを窒素ガスを用いて圧入し、系内の温度を70℃に保った。
攪拌を行いながらテトラフルオロエチレン〔TFE〕ガスを内圧が8.5kgf/cm2Gとなるように圧入した。
次いで、過硫酸アンモニウム0.15gを水5.0gに溶かした溶液を窒素を用いて圧入して反応を開始した。
重合反応の進行に伴って圧力が低下するので、7.5kgf/cmGまで低下した時点でテトラフルオロエチレンガスで8.5kgf/cmまで再加圧し、降圧、昇圧を繰り返した。
テトラフルオロエチレンの供給を続けながら、重合開始からテトラフルオロエチレンガスが約40g消費されるごとに、上記式(3)で表されるヒドロキシル基を有する含フッ素エチレン性単量体の1.9gを計3回(計5.7g)圧入して重合を継続し、重合開始よりテトラフルオロエチレンが約160g消費された時点で供給を止めオートクレーブを冷却し、未反応モノマーを放出し、青みがかった半透明の水性分散体1702gを得た。
得られた水性分散体中のポリマーの濃度は10.9%、動的光散乱法で測定した粒子径は70.7nmであった。
また、得られた水性分散体の一部をとり凍結凝析を行い、析出したポリマーを洗浄、乾燥し白色固体を単離した。得られた共重合体のモル比組成は、19F−NMR分析、IR分析により、TFE/PPVE/(式(3)で示されるヒドロキシル基を有する含フッ素エチレン性単量体)=97.7:1.2:1.1モル%であった。
また赤外スペクトルは3620〜3400cm−1に−OHの特性吸収が観測された。
DSC分析により、Tm=310℃、DTGA分析により1%熱分解温度Td=368℃であった。高化式フローテスターを用いて2mm、長さ8mmのノズルを用い、372℃で予熱5分間、荷重7kgf/cmでメルトフローレートを測定したところ12.0g/10分であった。
調製例1 含フッ素塗料組成物Aの調製
イソプロピルアルコール4重量部、非イオン性界面活性剤(商品名:DS−401、ダイキン工業社製)8重量部、トリエチレングリコール6重量部、エチレングリコール4重量部、純水20重量部、官能基を有する含フッ素高分子12重量部、PFA樹脂粉末(平均粒子径25μm、見掛密度0.8g/ml)26重量部を混合、分散して均一な分散組成物を調製した。これを含フッ素塗料組成物Aとした。含フッ素溶融樹脂と官能基を有する含フッ素高分子の重量配合比は95:5であった。
調製例2 含フッ素塗料組成物Bの調製
イソプロピルアルコール4重量部、非イオン性界面活性剤(商品名:DS−401、ダイキン工業社製)8重量部、トリエチレングリコール6重量部、エチレングリコール4重量部、純水20重量部、官能基を有する含フッ素高分子42重量部、PFA樹脂粉末(平均粒子径25μm、見掛密度0.8g/ml)26重量部を混合、分散して均一な分散組成物を調製した。これを含フッ素塗料組成物Bとした。含フッ素溶融樹脂と官能基を有する含フッ素高分子の重量配合比は85:15であった。
調製例3 含フッ素塗料組成物Cの調製
イソプロピルアルコール4重量部、非イオン性界面活性剤(商品名:DS−401、ダイキン工業社製)8重量部、トリエチレングリコール6重量部、エチレングリコール4重量部、純水20重量部、官能基を有する含フッ素高分子0.2重量部、PFA樹脂粉末(平均粒子径25μm、見掛密度0.8g/ml)26重量部を混合、分散して均一な分散組成物を調製した。これを含フッ素塗料組成物Cとした。含フッ素溶融樹脂と官能基を有する含フッ素高分子の重量配合比は99.92:0.08であった。
調製例4 含フッ素塗料組成物Dの調製
イソプロピルアルコール4重量部、非イオン性界面活性剤(商品名:DS−401、ダイキン工業社製)8重量部、トリエチレングリコール6重量部、エチレングリコール4重量部、官能基を有する含フッ素高分子110重量部、PFA樹脂粉末(平均粒子径25μm、見掛密度0.8g/ml)26重量部を混合、分散して均一な分散組成物を調製した。これを含フッ素塗料組成物Dとした。含フッ素溶融樹脂と官能基を有する含フッ素高分子の重量配合比は68:32であった。
調製例5 含フッ素塗料組成物Eの調製
イソプロピルアルコール4重量部、非イオン性界面活性剤(商品名:DS−401、ダイキン工業社製)8重量部、トリエチレングリコール6重量部、エチレングリコール4重量部、純水20重量部、官能基を有する含フッ素高分子12重量部、FEP樹脂粉末(平均粒子径25μm、見掛密度0.8g/ml)26重量部を混合、分散して均一な分散組成物を調製した。これを含フッ素塗料組成物Eとした。含フッ素溶融樹脂と官能基を有する含フッ素高分子の重量配合比は95:5であった。
調製例6 含フッ素塗料組成物Fの調製
イソプロピルアルコール4重量部、非イオン性界面活性剤(商品名:DS−401、ダイキン工業社製)8重量部、トリエチレングリコール6重量部、エチレングリコール4重量部、純水20重量部、官能基を有する含フッ素高分子42重量部、FEP樹脂粉末(平均粒子径25μm、見掛密度0.8g/ml)26重量部を混合、分散して均一な分散組成物を調製した。これを含フッ素塗料組成物Fとした。含フッ素溶融樹脂と官能基を有する含フッ素高分子の重量配合比は85:15であった。
調製例7 含フッ素塗料組成物Gの調製
イソプロピルアルコール4重量部、非イオン性界面活性剤(商品名:DS−401、ダイキン工業社製)8重量部、トリエチレングリコール6重量部、エチレングリコール4重量部、純水20重量部、官能基を有する含フッ素高分子0.2重量部、FEP樹脂粉末(平均粒子径25μm、見掛密度0.8g/ml)26重量部を混合、分散して均一な分散組成物を調製した。これを含フッ素塗料組成物Gとした。含フッ素溶融樹脂と官能基を有する含フッ素高分子の重量配合比は99.92:0.08であった。
調製例8 含フッ素塗料組成物Hの調製
イソプロピルアルコール4重量部、非イオン性界面活性剤(商品名:DS−401、ダイキン工業社製)8重量部、トリエチレングリコール6重量部、エチレングリコール4重量部、官能基を有する含フッ素高分子110重量部、FEP樹脂粉末(平均粒子径25μm 見掛密度0.8g/ml)26重量部を混合、分散して均一な分散組成物を調製した。これを含フッ素塗料組成物Hとした。含フッ素溶融樹脂と官能基を有する含フッ素高分子の重量配合比は68:32であった。
調製例9 含フッ素塗料組成物Iの調製
PFAディスパージョン(平均粒子径0.3μm、固形分濃度50重量%、商品名:AD−2CR、ダイキン工業社製)50重量部、官能基を有する含フッ素高分子12重量部を混合、分散して均一な分散組成物を調製した。これを含フッ素塗料組成物Iとした。含フッ素溶融樹脂と官能基を有する含フッ素高分子の重量配合比は95:5であった。
調製例10 含フッ素塗料組成物Jの調製
FEPディスパージョン(平均粒子径0.2μm、固形分濃度50重量%、商品名:ND−1、ダイキン工業社製)50重量部、官能基を有する含フッ素高分子12重量部を混合、分散して均一な分散組成物を調製した。これを含フッ素塗料組成物Jとした。含フッ素溶融樹脂と官能基を有する含フッ素高分子の重量配合比は95:5であった。
実施例11
アルミニウム板(A−1050)に含フッ素塗料組成物Aをスプレー塗装し、80〜100℃で30分間乾燥した後に340℃で30分間焼成して、約70μmの塗膜を有するフッ素樹脂被覆塗板を得た。
アルミニウム板に対する塗膜の接着性について、得られた塗膜に1cm間隔で短冊状の切込みを入れ、短冊の一端をアルミニウム板から剥離させ、次いで塗膜面が真上を向くように、治具を用いてテンシロン万能試験機(商品名、オリエンテック社製)にフッ素樹脂被覆塗板を固定し、アルミニウム板から剥離させた短冊の一端を塗膜上方に位置するチャックに取り付け、このチャックをクロスヘッドスピード50mm/分で上方に移動させることにより、短冊はアルミニウム板からほぼ90°方向に剥離させられるが、このときの剥離強度を測定することにより、評価した。結果を表2に示す。
実施例12
含フッ素塗料組成物Aに代えて、含フッ素塗料組成物Bを用いた以外は、実施例11の手順を繰り返した。
実施例13
含フッ素塗料組成物Aに代えて、含フッ素塗料組成物Cを用いた以外は、実施例11の手順を繰り返した。
実施例14
含フッ素塗料組成物Aに代えて、含フッ素塗料組成物Dを用いた以外は、実施例11の手順を繰り返した。
実施例15
含フッ素塗料組成物Aに代えて、含フッ素塗料組成物Eを用いた以外は、実施例11の手順を繰り返した。
実施例16
含フッ素塗料組成物Aに代えて、含フッ素塗料組成物Fを用いた以外は、実施例11の手順を繰り返した。
実施例17
含フッ素塗料組成物Aに代えて、含フッ素塗料組成物Gを用いた以外は、実施例11の手順を繰り返した。
実施例18
含フッ素塗料組成物Aに代えて、含フッ素塗料組成物Hを用いた以外は、実施例11の手順を繰り返した。
比較例5
アルミニウム板(A−1050)の表面に含フッ素塗料組成物1をスプレー塗装し、80〜100℃で30分間乾燥した後に340℃で30分間焼成したが、クラックの発生により30μm以上の皮膜を得ることはできなかった。
比較例6
アルミニウム板(A−1050)の表面に含フッ素塗料組成物Jをスプレー塗装し、80〜100℃で30分間乾燥した後に340℃で30分間焼成したが、クラックの発生により30μm以上の皮膜を得ることはできなかった。
Figure 0004254536
表2より、溶融性フッ素樹脂の平均粒子径が1〜1000μmの範囲内にない比較例5〜6では、クラックが発生して厚膜が得られないが、溶融性フッ素樹脂の平均粒子径が1〜1000μmの範囲内にある実施例11〜18では、剥離強度が比較的大きく、溶融性フッ素樹脂と含フッ素高分子との固形分重量比が70:30〜99.9:0.1の範囲内にある実施例11〜12及び実施例15〜16では、剥離強度がより大きいことがわかった。
実施例19
シリコーンゴムロールに含フッ素塗料組成物Aをスプレー塗装し、80〜100℃で30分間乾燥した後に340℃で30分間焼成して、約30μmの塗膜を有するフッ素樹脂被覆ロールを得た。
得られた塗膜の耐摩耗性について、200℃に加熱したフッ素樹脂被覆ロール表面に荷重1kgでコピー用紙(商品名:再生PPC用紙、富士ゼロックス社製)を押し当て、回転速度300rpmでロールを回転させることによりロール表面を摩耗させ、次いで濡れ指数標準液(31dyne/cm)を滴下してゴニオメーターによる接触角が20°以下になるまでの時間、又は、塗膜がシリコーンゴムロール基材から剥離するまでの時間を耐久性の尺度として、評価した。結果を表3に示す。
実施例20
含フッ素塗料組成物Aに代えて、含フッ素塗料組成物Bを用いた以外は、実施例19の手順を繰り返した。
実施例21
含フッ素塗料組成物Aに代えて、含フッ素塗料組成物Cを用いた以外は、実施例19の手順を繰り返した。
実施例22
含フッ素塗料組成物Aに代えて、含フッ素塗料組成物Dを用いた以外は、実施例19の手順を繰り返した。
Figure 0004254536
表3より、実施例19〜22では、耐摩耗性が比較的良好であり、溶融性フッ素樹脂と含フッ素高分子との固形分重量比が70:30〜99.9:0.1の範囲内にある実施例19〜20では、耐摩耗性がより良好であることがわかった。
実施例23
厚さ1.5mmのガラス板に含フッ素塗料組成物Aをスプレー塗装し、80〜100℃で30分間乾燥した後に340℃で30分間焼成して、約70μmの塗膜を有するフッ素樹脂被覆ガラス板を得た。
得られたフッ素樹脂被覆ガラス板の耐衝撃性について、JIS K 5600−5−3に記載されたデュポン式衝撃変形試験器を用い、水平に支持した試験器に半径6.35mmの撃ち型と受け台を取り付け、この撃ち型と受け台の間にフッ素樹脂被覆ガラス板を挟み、300gのおもりを100mmの高さより撃ち型の上に落としてフッ素樹脂被覆ガラス板の破壊の様子を観察し、ガラスが飛散することによる重量損失を、下記式
重量損失(%)=飛散物の重量(g)/試験前の重量(g)×100
により求めることにより、評価した。結果を表4に示す。
また、フッ素樹脂被覆ガラス板の可視光線透過性について、U−3310形分光光度計(商品名、日立製作所社製)を用い、400〜700nmの代表的な可視線領域の光線透過率を測定することにより、評価した。結果を表5に示す。
実施例24
含フッ素塗料組成物Aに代えて、含フッ素塗料組成物Bを用いた以外は、実施例23の手順を繰り返した。
実施例25
含フッ素塗料組成物Aに代えて、含フッ素塗料組成物Cを用いた以外は、実施例23の手順を繰り返した。
実施例26
含フッ素塗料組成物Aに代えて、含フッ素塗料組成物Dを用いた以外は、実施例23の手順を繰り返した。
実施例27
含フッ素塗料組成物Aに代えて、含フッ素塗料組成物Eを用いた以外は、実施例23の手順を繰り返した。
実施例28
含フッ素塗料組成物Aに代えて、含フッ素塗料組成物Fを用いた以外は、実施例23の手順を繰り返した。
実施例29
含フッ素塗料組成物Aに代えて、含フッ素塗料組成物Gを用いた以外は、実施例23の手順を繰り返した。
実施例30
含フッ素塗料組成物Aに代えて、含フッ素塗料組成物Hを用いた以外は、実施例23の手順を繰り返した。
比較例7
厚さ1.5mmのガラス板にプライマーとしてγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(商品名:A−1100、日本ユニカー社製)をスプレー塗装し、80〜100℃で30分間乾燥した後に、PFA粉体塗料(平均粒子径20μm、見掛密度0.88g/ml、商品名:MP−103、三井・デュポンフロロケミカル社製)を静電塗装し、340℃で30分間焼成して、約70μmの塗膜を有するフッ素樹脂被覆ガラス板を得た。塗膜の耐衝撃性を実施例23に記載の手順に従って評価した。
比較例8
厚さ1.5mmの無垢のガラス板の耐衝撃性を実施例23に記載の手順に従って評価した。
Figure 0004254536
表4から、実施例23〜30は、プライマーを塗装した比較例7と同等又はほぼ匹敵する程度に衝撃時の重量損失を抑制することができ、溶融性フッ素樹脂と含フッ素高分子との固形分重量比が70:30〜99.9:0.1の範囲内にある実施例23〜24及び実施例27〜28では重量損失がより少ないことがわかった。
Figure 0004254536
表5から、実施例23〜30は、プライマーを塗装した比較例7よりも可視線領域の光線透過率を高くすることができ、溶融性フッ素樹脂がPFAである場合、溶融性フッ素樹脂の固形分重量が、溶融性フッ素樹脂の固形分重量及び含フッ素高分子の固形分重量の合計の70%以上である実施例23〜25で光線透過率がより高く、溶融性フッ素樹脂がFEPである場合、500nm以上では上記溶融性フッ素樹脂が70重量%である実施例27〜29で光線透過率がより高いことがわかった。
産業上の利用可能性
本発明の含フッ素塗料組成物は、上述の構成を有するので、1コート法により2コート法に匹敵する厚さで溶融性フッ素樹脂を主として含有する層を形成することができ、耐食性、耐摩耗性、耐熱性、非粘着性等が良好であり、かつ、臨界表面張力の比較的低い溶融性フッ素樹脂を主として含有する層の上に、臨界表面張力のより高い材料を主として含有する層を形成すること、及び、これら両層の上下を逆にして形成することの何れをも可能にすることができる。本発明の含フッ素塗料組成物は、更に、ガラス等を含む被塗装物への高い接着性と、透明性とを有する塗膜を得ることができる。

Claims (14)

  1. 平均粒子径が1〜1000μmである溶融性フッ素樹脂及び平均粒子径が0.005〜0.3μmである含フッ素高分子を液状媒体に分散してなる含フッ素塗料組成物であって、
    前記溶融性フッ素樹脂と前記含フッ素高分子とはモノマーが全て同じ種類である重合体ではなく、
    前記含フッ素高分子は、官能基含有含フッ素エチレン性単量体(a)及び官能基非含有含フッ素エチレン性単量体(b)を共重合することにより得られるものであって、
    前記官能基含有含フッ素エチレン性単量体(a)は、官能基を有するものであり、前記官能基は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、塩を形成しているカルボキシル基、アルコキシカルボニル基及びエポキシ基からなる群より選択される少なくとも1種であり、
    前記官能基非含有含フッ素エチレン性単量体(b)は、前記官能基を有しないものであり、
    前記溶融性フッ素樹脂の固形分重量は、前記溶融性フッ素樹脂の固形分重量及び含フッ素高分子の固形分重量の合計の70〜99.9%であ
    ことを特徴とする含フッ素塗料組成物。
  2. 官能基含有含フッ素エチレン性単量体(a)のモル数は、前記官能基含有含フッ素エチレン性単量体(a)のモル数及び官能基非含有含フッ素エチレン性単量体(b)のモル数の合計の0.05〜30%である請求項記載の含フッ素塗料組成物。
  3. 含フッ素高分子は、官能基含有フッ素樹脂である請求項又は記載の含フッ素塗料組成物。
  4. 含フッ素高分子は、フッ素ゴムである請求項又は記載の含フッ素塗料組成物。
  5. 溶融性フッ素樹脂は、融点が200℃以上のものである請求項又は記載の含フッ素塗料組成物。
  6. 溶融性フッ素樹脂は、パーフルオロポリマーである請求項又は記載の含フッ素塗料組成物。
  7. OA機器用ロール又はOA機器用ベルトに用いられるものである請求項又は記載の含フッ素塗料組成物。
  8. 請求項又は記載の含フッ素塗料組成物を塗装することにより得られることを特徴とする塗膜。
  9. 請求項記載の塗膜を有することを特徴とする塗装物。
  10. 塗膜は、被塗装物上に形成されたものであり、
    前記被塗装物は、金属、高分子化合物成形体、ガラス及び陶器からなる群より選択される少なくとも1種である請求項記載の塗装物。
  11. 電球の材料である請求項10記載の塗装物。
  12. 被塗装物がガラスであり、防火ガラスの材料又は安全ガラスの材料である請求項10記載の塗装物。
  13. 被塗装物がガラスであり、ガラス製食器の材料又はガラス製実験器具の材料である請求項10記載の塗装物。
  14. 被塗装物が金属又は高分子化合物成形体であり、OA機器用ロール又はOA機器用ベルトである請求項10記載の塗装物。
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